(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071097
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】施工方法及び二酸化炭素排出量の削減方法
(51)【国際特許分類】
C09K 17/10 20060101AFI20240517BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20240517BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240517BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C09K17/10 P
C09K17/02 P
E02D3/12 102
C02F11/00 101Z
C02F11/00 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181842
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506149380
【氏名又は名称】株式会社東洋スタビ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】長澤 正明
(72)【発明者】
【氏名】前田 敏也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 尚典
(72)【発明者】
【氏名】西田 茉佑子
(72)【発明者】
【氏名】宗宮 郷
(72)【発明者】
【氏名】衣川 剛央
【テーマコード(参考)】
2D040
4D059
4H026
【Fターム(参考)】
2D040AB05
2D040AC04
2D040CA01
2D040CA04
4D059AA30
4D059CC04
4D059DA66
4D059DA70
4H026CA01
4H026CA05
4H026CB01
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】土の固化に使用される地盤固化材の使用量を低減することで、CO2排出量の低減につながる。しかしながら、地盤固化材の使用量を低減すると、地盤の強度が低下する。そこで、本発明は、地盤の強度を維持しつつ、CO2排出量を低減できる施工方法及び二酸化炭素排出量の削減方法を目的とする。
【解決手段】地盤を構成する土と、溶融スラグとを混合して一次混合物を得、前記一次混合物に、セメント及びセメント系固化材から選ばれる1種以上の地盤固化材を添加し、混合して前記地盤を固化する、施工方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を構成する土と、溶融スラグとを混合して一次混合物を得、前記一次混合物に、セメント及びセメント系固化材から選ばれる1種以上の地盤固化材を添加し、混合して前記地盤を固化する、施工方法。
【請求項2】
前記一次混合物における前記溶融スラグの体積と、前記土の体積との割合が、1:99~50:50である、請求項1に記載の施工方法。
【請求項3】
前記一次混合物の総体積1m3に対する、前記地盤固化材の添加量が200kg以下である、請求項1又は2に記載の施工方法。
【請求項4】
前記土が粘性土である、請求項1又は2に記載の施工方法。
【請求項5】
地盤を構成する土と、溶融スラグと、を混合して一次混合物を得、前記一次混合物に、セメント及びセメント系固化材から選ばれる1種以上の地盤固化材を添加し、混合して、前記地盤を固化する施工方法における二酸化炭素排出量の削減方法であって、
前記溶融スラグを使用しない場合の前記地盤固化材の使用量に対して、前記地盤固化材の使用量を低減し、前記地盤固化材の製造に由来する二酸化炭素排出量を低減できる、二酸化炭素排出量の削減方法。
【請求項6】
前記一次混合物に、二酸化炭素を固定化できる二酸化炭素固定化物をさらに添加する、請求項5に記載の二酸化炭素排出量の削減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工方法及び二酸化炭素排出量の削減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を構成する土を固化させる地盤改良方法(施工方法)としては、セメント又はセメント系固化材(以下、地盤固化材ともいう。)を用いる方法が知られている(例えば、非特許文献1、2参照)。
非特許文献1~2によれば、セメントの水和反応による硬化、及び水分の結合水としての固定化による含水比の低下等によって、土(地盤)の強度が改善される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】セメント系固化材による地盤改良マニュアル、第5版、44-45ページ、一般社団法人セメント協会発行
【非特許文献2】道路土工の土質安定処理技術、10-11ページ、株式会社高速道路総合技術研究所発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1~2で用いられる地盤固化材を製造する際は、大量の二酸化炭素(CO2)が排出される。CO2排出量の低減は、地球規模で行われるべき目標である。土の固化に使用される地盤固化材の使用量を低減することで、CO2排出量の低減につながる。
しかしながら、地盤固化材の使用量を低減すると、地盤の強度が低下する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、地盤の強度を維持しつつ、CO2排出量を低減できる施工方法及び二酸化炭素排出量の削減方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を有する。
[1]地盤を構成する土と、溶融スラグとを混合して一次混合物を得、前記一次混合物に、セメント及びセメント系固化材から選ばれる1種以上の地盤固化材を添加し、混合して前記地盤を固化する、施工方法。
[2]前記一次混合物における前記溶融スラグの体積と、前記土の体積との割合が、1:99~50:50である、[1]に記載の施工方法。
[3]前記一次混合物の総体積1m3に対する、前記地盤固化材の添加量が200kg以下である、[1]又は[2]に記載の施工方法。
[4]前記土が粘性土である、[1]又は[2]に記載の施工方法。
【0007】
[5]地盤を構成する土と、溶融スラグと、を混合して一次混合物を得、前記一次混合物に、セメント及びセメント系固化材から選ばれる1種以上の地盤固化材を添加し、混合して、前記地盤を固化する施工方法における二酸化炭素排出量の削減方法であって、
前記溶融スラグを使用しない場合の前記地盤固化材の使用量に対して、前記地盤固化材の使用量を低減し、前記地盤固化材の製造に由来する二酸化炭素排出量を低減できる、二酸化炭素排出量の削減方法。
[6]前記一次混合物に、二酸化炭素を固定化できる二酸化炭素固定化物をさらに添加する、[5]に記載の二酸化炭素排出量の削減方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の施工方法及び二酸化炭素排出量の削減方法によれば、地盤の強度を維持しつつ、CO2排出量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】地盤固化材として高炉セメントを用いた場合の材齢3日後の一軸圧縮強度を示すグラフである。
【
図2】地盤固化材として高炉セメントを用いた場合の材齢7日後の一軸圧縮強度を示すグラフである。
【
図3】地盤固化材として高炉セメントを用いた場合の材齢28日後の一軸圧縮強度を示すグラフである。
【
図4】地盤固化材としてセメント系固化材を用いた場合の材齢3日後の一軸圧縮強度を示すグラフである。
【
図5】地盤固化材としてセメント系固化材を用いた場合の材齢7日後の一軸圧縮強度を示すグラフである。
【
図6】地盤固化材としてセメント系固化材を用いた場合の材齢28日後の一軸圧縮強度を示すグラフである。
【
図7】地盤固化材として高炉セメントを用いた場合の材齢3日後の含水比と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
【
図8】地盤固化材として高炉セメントを用いた場合の材齢7日後の含水比と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
【
図9】地盤固化材として高炉セメントを用いた場合の材齢28日後の含水比と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
【
図10】地盤固化材としてセメント系固化材を用いた場合の材齢3日後の含水比と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
【
図11】地盤固化材としてセメント系固化材を用いた場合の材齢7日後の含水比と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
【
図12】地盤固化材としてセメント系固化材を用いた場合の材齢28日後の含水比と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
≪施工方法≫
本発明の施工方法は、地盤を構成する土と、溶融スラグとを混合して一次混合物を得、前記一次混合物に、セメント及びセメント系固化材から選ばれる1種以上の地盤固化材を添加し、混合して地盤を固化する方法である。
本発明の施工方法は、土と溶融スラグとの一次混合物に地盤固化材を添加することで、溶融スラグを使用しない場合に比べて、地盤固化材の使用量を減らしても、所定の強度(例えば、構造体の一軸圧縮強度で200kN/m2以上)を有する地盤を得ることができる。このため、地盤の強度を維持しつつ、地盤固化材の使用量を低減でき、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量を低減できる。
加えて、本発明の施工方法は、一次混合物に、二酸化炭素を固定化できる二酸化炭素固定化物をさらに添加し、混合することにより、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量をさらに低減し、相殺できる。
【0011】
<土>
本明細書において、「土」とは、土壌のことをいい、粘性土、砂質土、礫質土を含む。
粘性土は、粒径が小さい土の総称である。
本明細書において、「粘性土」とは、粒径が75μm以下の土粒子(細粒分)を50質量%以上含む土をいう。
「砂質土」とは、粒径が75μm超の粒子(粗粒分)を50質量%以上含み、粒径が2.0mm以下の土をいう。
「礫質土」とは、粒径が2.0mm超の土をいう。礫質土の粒径は、一般に75mm以下である。
粘性土は比較的地盤の強度が低く、地盤の強度を高める必要がある場合が多い。このため、土としては、粘性土が好ましい。
【0012】
<溶融スラグ>
溶融スラグは、産業廃棄物や汚泥の焼却灰等を1300℃以上の高温で溶融させたものを冷却し、固化したものである。産業廃棄物としては、例えば、都市ゴミ等が挙げられる。汚泥としては、例えば、有機汚泥、下水汚泥等が挙げられる。
なお、溶融スラグは、後述する高炉スラグとは異なるものである。
【0013】
溶融スラグは、例えば、コンクリート二次製品、埋戻し材、目土、肥料等に活用される。
溶融スラグとしては、市販品を用いてもよく、溶融スラグの市販品としては、例えば、日鉄エンジニアリング株式会社のエヌエスエコサンド(登録商標)等が挙げられる。
【0014】
<地盤固化材>
地盤固化材は、地盤に配合することで、土の固化を図り、地盤の強度を改善するものである。
地盤固化材としては、セメント及びセメント系固化材から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0015】
セメントとしては、ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント、特殊セメント等が挙げられる。
ポルトランドセメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩等の各種ポルトランドセメントが挙げられる。
【0016】
普通ポルトランドセメントは、工事用又は製品用として最も多く使用される、一般的なセメントである。
早強ポルトランドセメントは、早期に高い強度が得られ、しかも長期にわたって強度増進を示すセメントである。
超早強ポルトランドセメントは、早強ポルトランドセメントよりもさらにエーライト(C3S)を多くし、粉末度を細かくしたセメントである。超早強ポルトランドセメントは、早強ポルトランドセメントの3日強度を1日で発現する。
中庸熱ポルトランドセメントは、水和熱を下げるためにC3Sとアルミネート(C3A)を減じビーライト(C2S)を多くしてあり、初期強度は小さいが、長期強度が大きいセメントである。
低熱ポルトランドセメントは、水和熱を下げるために、中庸熱ポルトランドセメントよりもさらにC2Sが多く、C2S含有量が40質量%以上のセメントである。低熱ポルトランドセメントは、高強度域での強度発現が良好であり、低水粉体比のコンクリートで高流動性が得られやすいという特徴を有する。
耐硫酸塩ポルトランドセメントは、C3Aを少なくして硫酸塩との反応性を小さくしてあるセメントである。耐硫酸塩ポルトランドセメントは、硫酸塩を含む土壌地帯での工事に適し、耐海水性にも優れている。
【0017】
混合セメントとしては、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント等が挙げられる。
高炉セメントは、高炉スラグを混合したセメントである。高炉スラグは、鉄鉱石に含まれるシリカ等の鉄以外の成分やコークスの灰分が、副原料の石灰石と結合したものである。高炉スラグは、潜在水硬性があって、ポルトランドセメントの刺激によって次第に硬化する。高炉セメントは、初期強度は小さいが、長期強度は大きい。
高炉セメントは、高炉スラグの混合量によって、高炉セメントA種、高炉セメントB種、高炉セメントC種に分類されている(JIS R5211:2009)。
高炉セメントA種・・・高炉スラグ混合量5~30質量%
高炉セメントB種・・・高炉スラグ混合量10~60質量%
高炉セメントC種・・・高炉スラグ混合量60~70質量%
【0018】
シリカセメントは、純度の高い珪石等の粉末を混合したセメントである。シリカセメントは、オートクレーブ養生をする製品に使用される。
フライアッシュセメントは、微粉炭を燃焼したときに生ずるフライアッシュを混合したセメントである。フライアッシュセメントは、長期強度が大きく、耐久性に富んだ構造物を得られる。
【0019】
エコセメントは、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥等の廃棄物を、製品1tに対して乾燥重量で500kg以上使用して作られるセメントである。エコセメントは、セメント中の塩化物イオンの量に応じて普通エコセメントと、速硬エコセメントとに分類される。
普通エコセメントは、製造過程で脱塩素化させたもので、セメント中の塩化物イオン量が0.1%以下のエコセメントである。普通エコセメントは、凝結時間、モルタル圧縮強さともに、普通ポルトランドセメントに類似する性質を有する。
速硬エコセメントは、セメント中の塩化物イオン量が0.5%以上1.5%以下のエコセメントである。速硬エコセメントは、速硬性を有し、早期強度の発現性を生かしたセメントである。
【0020】
特殊セメントは、JIS規格外品として製造され、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント、コロイドセメント、油井セメント、低発熱セメント、高ビーライトセメント等が挙げられる。
高ビーライトセメントは、低発熱用セメントとして、セメント成分のうち発熱の大きいアルミネート(C3A)相をできる限り抑え、水和熱の小さいビーライト(C2S)が主成分となるように調整したセメントである。高ビーライトセメントは、水和熱を抑制できるため、流動性の良いコンクリートを作りやすい。高ビーライトセメントは、大型構造物用として好適に用いられる。
【0021】
ポルトランドセメントは、製造工程における焼成の際の石灰石の熱分解(CaCO3→CaO+CO2↑)と焼成に要する燃料から二酸化炭素が発生する。一方、高炉セメントの混合材である高炉スラグ微粉末は、焼成が不要なため、その混合量に比例してセメント製造時に発生する二酸化炭素排出量を低減できる。
このため、本実施形態のセメントとしては、高炉セメントが好ましく、高炉スラグ混合量が多い高炉セメントB種又は高炉セメントC種がより好ましい。
セメントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、混合セメント、例えば、高炉セメントを用いる代わりに、施工時に高炉セメント以外のセメントと、高炉スラグとを混合して用いてもよい。
【0022】
セメント系固化材は、地盤を効果的に改良するために、セメントを母体として、各種の有効成分を添加した固化材をいう。
有効成分としては、例えば、硫酸塩を含有する無機化合物等が挙げられる。
セメント系固化材は、市販品を用いてもよく、セメント系固化材の市販品としては、例えば、太平洋セメント株式会社のジオセット(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0023】
地盤固化材としては、地盤の強度をより高められることから、セメント系固化材が好ましく、CO2排出量をより低減できることから、高炉セメントを母体とするセメント系固化材がより好ましく、高炉セメントB種又は高炉セメントC種を母体とするセメント系固化材がさらに好ましく、高炉セメントC種を母体とするセメント系固化材が特に好ましい。
【0024】
本実施形態の施工方法では、土と溶融スラグとを混合して、一次混合物を得る。溶融スラグの含水比は土に比べて低いので、一次混合物の含水比を低減できる。また、土に細粒分の少ない溶融スラグを混合することで、一次混合物の粒度組成が変化して締固め効果が期待できる。これらにより、地盤固化材の添加による地盤強化の効率をより高められる。
【0025】
一次混合物における溶融スラグの体積と、土の体積との割合は、例えば、1:99~50:50が好ましく、10:90~50:50がより好ましく、25:75~50:50がさらに好ましい。溶融スラグの体積と土の体積との割合が上記下限値以上であると、所定の強度の地盤を得るための地盤固化材の使用量をより低減でき、CO2排出量をより低減できる。加えて、溶融スラグの体積と土の体積との割合が上記下限値以上であると、同じ量の地盤固化材を使用した場合に、地盤の強度をより高められる。溶融スラグの体積と土の体積との割合が上記上限値以下であると、処理できる土の量をより増やすことができる。このため、より多くの改良地盤を得ることができる。
【0026】
一次混合物を得る方法は、特に限定されず、土と溶融スラグとを撹拌して混合する方法が挙げられる。この際、土を原位置で掘り起こしてから溶融スラグを添加し、撹拌してもよく、土の表面に溶融スラグを散布した後、土と溶融スラグとを撹拌して混合して一次混合物を得てもよい。
土と溶融スラグとを混合する混合機械としては、例えば、バックホー、自走式土質改良機、ホイール式スタビライザ、クローラ式スタビライザ、泥上車、ソイルライマー等が挙げられる。
【0027】
一次混合物に地盤固化材を添加して混合する。この際、一次混合物の総体積1m3に対する地盤固化材の添加量は、例えば、200kg以下が好ましく、180kg以下がより好ましく、150kg以下がさらに好ましい。一次混合物の総体積1m3に対する地盤固化材の添加量が上記上限値以下であると、地盤固化材の使用量をより低減でき、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量をより低減できる。
地盤の強度を維持する観点から、一次混合物の総体積1m3に対する地盤固化材の添加量は、例えば、20kg以上が好ましく、30kg以上がより好ましく、50kg以上がさらに好ましい。
【0028】
本実施形態の施工方法における、地盤固化材の使用量の低減量は、溶融スラグを使用しない場合の地盤固化材の使用量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、50質量%超が特に好ましい。地盤固化材の使用量の低減量が上記下限値以上であると、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量をより低減できる。
地盤の強度を維持する観点から、地盤固化材の使用量の低減量の上限値は、例えば、80質量%が好ましい。
地盤固化材の使用量の低減量は、例えば、土と地盤固化材とを混合した後7日間経過後の混合物(構造体)の一軸圧縮強度が200kN/m2となる場合の地盤固化材の使用量と、一次混合物と地盤固化材とを混合した後7日間経過後の構造体の一軸圧縮強度が200kN/m2となる場合の地盤固化材の使用量とから算出できる。
構造体の一軸圧縮強度は、一般社団法人セメント協会が規定する標準試験方法の「セメント系固化材による改良体の強さ試験方法 L-01:2006」に記載された方法に準拠して測定できる。
【0029】
<二酸化炭素固定化物>
本実施形態の施工方法は、一次混合物に、二酸化炭素を固定化できる二酸化炭素固定化物をさらに添加することが好ましい。一次混合物に、二酸化炭素固定化物をさらに添加し、混合することで、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量をさらに低減でき、相殺できる。
二酸化炭素固定化物としては、二酸化炭素を固定化できる物質であれば特に限定されず、例えば、バイオ炭等が挙げられる。
なお、本明細書において、バイオ炭とは、燃焼しない水準に管理された酸素濃度の下、350℃超の温度でバイオマスを加熱して作られる固形物のことをいう。
【0030】
一次混合物に二酸化炭素固定化物を添加する場合、地盤固化材に二酸化炭素固定化物を混合して添加する。地盤固化材と混合する二酸化炭素固定化物の添加量は、二酸化炭素固定化物の二酸化炭素固定量によって異なるが、例えば、バイオ炭の場合、地盤固化材100kgに対して、18kg以上が好ましく、20kg以上がより好ましく、25kg以上がさらに好ましい。二酸化炭素固定化物の添加量が上記下限値以上であると、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量をさらに低減できる。二酸化炭素固定化物の添加量の上限値は特に限定されず、例えば、地盤固化材100kgに対して、100kg以下とされる。
【0031】
≪二酸化炭素排出量の削減方法≫
本発明の二酸化炭素排出量の削減方法は、地盤を構成する土と、溶融スラグと、を混合して一次混合物を得、前記一次混合物に、セメント及びセメント系固化材から選ばれる1種以上の地盤固化材を添加し、混合して、前記地盤を固化する施工方法における二酸化炭素排出量を削減する方法である。
本発明の二酸化炭素排出量の削減方法は、溶融スラグを使用しない場合の地盤固化材の使用量に対して、地盤固化材の使用量を低減し、地盤固化材の製造に由来する二酸化炭素排出量を低減するものである。
土、溶融スラグ及び地盤固化材は、上述した施工方法における土、溶融スラグ及び地盤固化材と同様である。
【0032】
本実施形態の二酸化炭素排出量は、溶融スラグを製造する工程、地盤固化材を製造する工程及び上述した施工方法(以下、地盤改良工程ともいう。)で排出される二酸化炭素の排出量の総量である。
溶融スラグを製造する工程では、産業廃棄物や汚泥を焼却して焼却灰とする際、焼却灰を溶融する際に二酸化炭素が排出される。この排出量をX(kg)とする。なお、溶融スラグ1kgを製造する際に排出される二酸化炭素の質量は、製造時に得られる熱利用を考慮するとほぼゼロとなる。
地盤固化材を製造する工程では、セメントを焼成する際に大量の二酸化炭素が排出される。この排出量をY(kg)とする。なお、地盤固化材1kgを製造する際に排出される二酸化炭素の質量は、470gである。
地盤改良工程では、土と溶融スラグと地盤固化材とを混合する際に二酸化炭素が排出される。この排出量をZ(kg)とする。
本実施形態の二酸化炭素排出量の総量をS(kg)とすると、S=(X+Y+Z)で表される。
地盤の強度を高める観点から、溶融スラグの添加量を増加することで、地盤固化材の使用量を低減できるが、二酸化炭素排出量としては、Xが増加する。しかし、X<<Yの関係があるため、Sとしては、Xが増加する量よりも、Yが減少する量の方が極めて大きく、結果として、Sが減少する。
このように、所定の強度の地盤を得る際の地盤固化材の添加量を低減することで、二酸化炭素排出量を大幅に削減できる。
加えて、一次混合物に、二酸化炭素を固定化できる二酸化炭素固定化物をさらに添加し、混合することにより、Sがさらに減少し、二酸化炭素排出量を0(ゼロ)あるいは-(マイナス)にすることができる。
【0033】
本実施形態の二酸化炭素排出量の削減方法における、地盤固化材の使用量の低減量は、溶融スラグを使用しない場合の地盤固化材の使用量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、50質量%超が特に好ましい。地盤固化材の使用量の低減量が上記下限値以上であると、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量をより低減できる。
地盤固化材の使用量の低減量は、例えば、土と地盤固化材とを混合した後7日間経過後の混合物(構造体)の一軸圧縮強度が200kN/m2となる場合の地盤固化材の使用量と、土と溶融スラグと地盤固化材とを混合した後7日間経過後の構造体の一軸圧縮強度が200kN/m2となる場合の地盤固化材の使用量とから算出できる。
構造体の一軸圧縮強度は、一般社団法人セメント協会が規定する標準試験方法の「セメント系固化材による改良体の強さ試験方法 L-01:2006」に記載された方法に準拠して測定できる。
【0034】
土と溶融スラグとの一次混合物における溶融スラグの体積と、土の体積との割合は、例えば、1:99~50:50が好ましく、10:90~50:50がより好ましく、25:75~50:50がさらに好ましい。溶融スラグの体積と土の体積との割合が上記下限値以上であると、所定の強度の地盤を得るための地盤固化材の使用量をより低減でき、CO2排出量をより低減できる。加えて、溶融スラグの体積と土の体積との割合が上記下限値以上であると、同じ量の地盤固化材を使用した場合に、地盤の強度をより高められる。溶融スラグの体積と土の体積との割合が上記上限値以下であると、処理できる土の量をより増やすことができる。このため、より多くの改良地盤を得ることができる。
【0035】
一次混合物の総体積1m3に対する、地盤固化材の使用量は、200kg以下が好ましく、180kg以下がより好ましく、150kg以下がさらに好ましい。地盤固化材の使用量が上記上限値以下であると、二酸化炭素排出量をより低減できる。地盤固化材の使用量の下限値は、所定の強度の地盤を得る観点から、例えば、20kgとされる。
【0036】
本実施形態の二酸化炭素排出量の削減方法は、一次混合物に、二酸化炭素を固定化できる二酸化炭素固定化物をさらに添加することが好ましい。一次混合物に、二酸化炭素固定化物をさらに添加し、混合することで、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量をさらに低減でき、相殺できる。
二酸化炭素固定化物としては、二酸化炭素を固定化できる物質であれば特に限定されず、例えば、バイオ炭等が挙げられる。
【0037】
一次混合物に二酸化炭素固定化物を添加する場合、地盤固化材に二酸化炭素固定化物を混合して添加する。地盤固化材と混合する二酸化炭素固定化物の添加量は、二酸化炭素固定化物の二酸化炭素固定量によって異なるが、例えば、バイオ炭の場合、地盤固化材100kgに対して、18kg以上が好ましく、20kg以上がより好ましく、25kg以上がさらに好ましい。二酸化炭素固定化物の添加量が上記下限値以上であると、地盤固化材の製造に由来するCO2排出量をさらに低減できる。二酸化炭素固定化物の添加量の上限値は特に限定されず、例えば、地盤固化材100kgに対して、100kg以下とされる。
【0038】
本発明の施工方法は、土と溶融スラグとの一次混合物に地盤固化材を添加し、混合するため、地盤固化材の使用量を低減しても、所定の強度の地盤を製造できる。
本発明の施工方法は、溶融スラグを使用しない場合の地盤固化材の使用量に対して、地盤固化材の使用量を低減できるため、地盤固化材の製造によって排出される二酸化炭素排出量を低減できる。
本発明の施工方法は、溶融スラグを使用することで、廃棄物の焼却灰を有効活用でき、地球環境負荷の低減に寄与する。
本発明の二酸化炭素排出量の削減方法は、溶融スラグを使用することで、地盤改良工程における地盤固化材の使用量を低減でき、地盤固化材の製造によって排出される二酸化炭素排出量を低減できる。
本発明の二酸化炭素排出量の削減方法は、地盤固化材の製造によって排出される二酸化炭素排出量を低減することで、地球環境負荷の低減に寄与する。
【実施例0039】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。使用した材料は以下の通りである。
【0040】
[使用材料]
<土>
粘性土(ローム土、一軸圧縮強度121kN/m2)。
<溶融スラグ>
溶融スラグ:エヌエスエコサンド(登録商標)、日鉄エンジニアリング株式会社。
<地盤固化材>
セメント:高炉セメントB種、UBE三菱セメント株式会社。
セメント系固化材:ジオセット(登録商標)200、太平洋セメント株式会社。
【0041】
≪地盤の一軸圧縮強度≫
地盤の一軸圧縮強度は、一般社団法人セメント協会が規定する標準試験方法の「セメント系固化材による改良体の強さ試験方法 L-01:2006」に記載された方法に準拠して測定した。具体的には、以下の手順で測定した。
【0042】
[実施例1]
土と溶融スラグとを体積比50:50で混合した一次混合物500gを用意し、一次混合物の体積1m
3に対して、地盤固化材(高炉セメント)を50kg、100kg、150kgとなる割合で、それぞれの一次混合物に添加し、室温20℃の室内にてミキサー(容量4.7Lのホバート型ソイルミキサー、自転運動120~300rpm、公転運動30~125rpm)で均一になるように撹拌し、混合して改良土を得た。
得られた改良土を、直径5cm、高さ10cmの円柱状のカラーがセットされたモールドに入れ、1.5kgランマーを用いて突固めながら供試体を作製した。突固め方法は、質量1.5kgのハンマーを20cmの高さから自由落下させ、3層で突固めた。突固め回数は、各層12回とした。
1層当りに突固める改良土の量は、突固め後の供試体高さの1/3程度となるように、モールドに加える改良土の量を加減した。各層の突き終り面には、へら等で刻みを付し、その上の層との密着を図った。3層突固め後は、カラーを取り外してモールド上部の余分の土をストレートエッジで注意深く削り取った。砂粒等のために表面にできた穴は改良土の細粒分で埋め、モールド上面と同じ高さになるように平滑に仕上げた。
作製した供試体にポリエチレンフィルムをかぶせ、輪ゴムで緊結して表面の乾燥を防ぎ、翌日まで静置養生した。材齢1日後、モールドから供試体を取り出し、水分蒸発が無いように温度20±3℃、相対湿度95%以上の恒温恒湿槽内で密封養生した。材齢3日後、7日後、28日後のそれぞれの供試体について、JIS A1216:1998「土の一軸圧縮試験方法」に記載の方法に準拠して、一軸圧縮試験を行った。一軸圧縮強度は、同一条件の供試体3本の測定結果を算術平均した値とした。結果を
図1~3に示す。
【0043】
[実施例2]
土と溶融スラグとの体積比を75:25にした以外は、実施例1と同様に供試体を作製し、一軸圧縮強度を測定した。結果を
図1~3に示す。
【0044】
[比較例1]
溶融スラグを使用せず、土のみ(体積比100:0)とした以外は、実施例1と同様に供試体を作製し、一軸圧縮強度を測定した。結果を
図1~3に示す。
【0045】
図1に示すように、材齢3日の場合、地盤固化材を100kg/m
3の割合で添加することで、一軸圧縮強度、すなわち地盤強度が高められることが確認できた。一次混合物における溶融スラグの割合が多いほど、一軸圧縮強度を高められることが確認できた。
図2に示すように、材齢7日の場合、材齢3日の場合に比べて一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。また、実施例1の方が、実施例2よりも一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。
図3に示すように、材齢28日の場合、材齢7日の場合に比べて一軸圧縮強度がより高められていることが確認できた。また、実施例1の方が、実施例2よりも顕著に一軸圧縮強度が高められていた。
また、一軸圧縮強度を300kN/m
2以上にするためには、比較例1の場合には、地盤固化材を150kg/m
3以上の割合で添加する必要があるが、実施例2の場合は、120kg/m
3ほどの添加量で足り(地盤固化材の低減量20質量%)、実施例1の場合は、75kg/m
3ほどの添加量で足りることが分かった(地盤固化材の低減量50質量%)。つまり、所定の強度(一軸圧縮強度で300kN/m
2)の地盤を得るためには、一次混合物に含まれる溶融スラグの量が多いほど、添加する地盤固化材の質量を低減できることが分かった。これは、溶融スラグの含水比は土に比べて低く、一次混合物の含水比を低減できるためと考えられる。加えて、土に細粒分の少ない溶融スラグを混合することで、一次混合物の粒度組成が変化して締固め効果が期待でき、地盤固化材の添加による地盤強化の効率をより高めることができるためと考えられる。
【0046】
[実施例3]
地盤固化材として、セメント系固化材を用いた以外は、実施例1と同様に供試体を作製し、一軸圧縮強度を測定した。結果を
図4~6に示す。
【0047】
[実施例4]
地盤固化材として、セメント系固化材を用いた以外は、実施例2と同様に供試体を作製し、一軸圧縮強度を測定した。結果を
図4~6に示す。
【0048】
[比較例2]
地盤固化材として、セメント系固化材を用いた以外は、比較例1と同様に供試体を作製し、一軸圧縮強度を測定した。結果を
図4~6に示す。
【0049】
[実施例5]
土と溶融スラグとの体積比が75:25になるように屋外のヤードに溶融スラグを散布し、土と溶融スラグとの一次混合物の総体積1m
3に対するセメント系固化材の質量が100kgになるように、セメント系固化材をさらに散布した。一次混合物とセメント系固化材とをクローラ式スタビライザを用いて撹拌し、混合して改良土を得た。
得られた改良土を用いて、実施例1と同様に供試体を作製し、材齢3日後及び材齢7日後の供試体について、実施例1と同様に一軸圧縮強度を測定した。なお、一軸圧縮強度は、異なる4か所のヤードについて、1か所それぞれ3個ずつの供試体を作製し、3個の算術平均とした。結果を
図4~5に示す。
【0050】
図4に示すように、材齢3日の場合、地盤固化材を100kg/m
3の割合で添加することで、一軸圧縮強度を高められることが確認できた。また、地盤固化材の添加量を150kg/m
3とすることで、実施例3~4の供試体は、実施例1~2の供試体に比べて1.3倍以上の強度を実現できていることが確認できた。これは、セメント系固化材は、高炉セメントよりも地盤の強度をより高められることを意味する。
実施例5の供試体は、一軸圧縮強度のばらつきが大きいことが確認できた。これは、ヤードの土(粘性土)の土質のばらつきによるものと考えられる。
【0051】
図5に示すように、材齢7日の場合、材齢3日の場合に比べて一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。また、実施例3の方が、実施例4よりも一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。特に、地盤固化材を150kg/m
3の割合で添加した場合、実施例3の供試体は、実施例1の供試体に比べて、一軸圧縮強度が2倍以上であった。
実施例5の供試体は、実施例4の供試体に比べて、一軸圧縮強度のばらつきが大きかった。
【0052】
図6に示すように、材齢28日の場合、材齢7日の場合に比べて一軸圧縮強度がより高められていることが確認できた。また、実施例3の方が、実施例4よりも顕著に一軸圧縮強度が高められていた。
例えば、一軸圧縮強度を400kN/m
2以上にするためには、比較例2の場合には、地盤固化材を150kg/m
3以上の割合で添加する必要があるが、実施例4の場合は、100kg/m
3ほどの添加量で足り(地盤固化材の低減量33質量%)、実施例3の場合は、75kg/m
3ほどの添加量で足りることが分かった(地盤固化材の低減量50質量%)。つまり、所定の強度(一軸圧縮強度で400kN/m
2)の地盤を得るためには、一次混合物に含まれる溶融スラグの量が多いほど、添加する地盤固化材の質量を低減できることが分かった。
【0053】
[実験例1~4]
(含水比と一軸圧縮強度との関係)
各例の供試体の含水比をJIS A1216:1998「土の一軸圧縮試験方法」に記載の含水比測定器具を用いて測定した。
実施例1、実施例2及び比較例1の改良土に150kg/m
3の地盤固化材(高炉セメント)を添加して作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例1として、
図7~9に示す。
実施例1、実施例2及び比較例1の改良土に100kg/m
3の地盤固化材(高炉セメント)を添加して作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例2として、
図7~9に示す。
実施例1、実施例2及び比較例1の改良土に50kg/m
3の地盤固化材(高炉セメント)を添加して作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例3として、
図7~9に示す。
実施例1、実施例2及び比較例1の改良土に地盤固化材を添加せずに作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例4として、
図7~9に示す。
【0054】
図7に示すように、材齢3日の場合、地盤固化材の添加量が多く、かつ、含水比が低い供試体ほど、一軸圧縮強度を高められることが確認できた。
なお、含水比は、溶融スラグの使用量が多いほど低く、各実験例とも、実施例1、実施例2、比較例1の順で、含水比が低かった。
また、実験例4のうち、実施例1の改良土に地盤固化材を添加しなかった供試体は、一軸圧縮強度が低下した。
【0055】
図8に示すように、材齢7日の場合、材齢3日の場合に比べて一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。また、含水比が低いほど、一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。
【0056】
図9に示すように、材齢28日の場合、材齢7日の場合に比べて一軸圧縮強度がより高められていることが確認できた。また、含水比が低いほど、一軸圧縮強度が顕著に高められていることが確認できた。
実験例4の供試体の一軸圧縮強度は、材齢によらないことが確認できた。
【0057】
[実験例5~10]
各例の供試体の含水比をJIS A1216:1998「土の一軸圧縮試験方法」に記載の含水比測定器具を用いて測定した。
実施例3、実施例4及び比較例2の改良土に150kg/m
3の地盤固化材(セメント系固化材)を添加して作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例5として、
図10~12に示す。
実施例3、実施例4及び比較例2の改良土に100kg/m
3の地盤固化材(セメント系固化材)を添加して作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例6として、
図10~12に示す。
実施例3、実施例4及び比較例2の改良土に50kg/m
3の地盤固化材(セメント系固化材)を添加して作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例7として、
図10~12に示す。
実施例3、実施例4及び比較例2の改良土に地盤固化材を添加せずに作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例8として、
図10~12に示す。
実施例5の供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例9として、
図10~12に示す。
屋外の異なる2か所のヤードの土を採取して作製した供試体の含水比と一軸圧縮強度との関係を実験例10として、
図10~12に示す。
含水比は、実験例1~4の場合と同様の方法で測定した。
【0058】
図10に示すように、材齢3日の場合、実験例5では、一軸圧縮強度を高められることが確認できた。実験例6のうち、含水比が最も低い供試体では、一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。
なお、含水比は、溶融スラグの使用量が多いほど低く、各実験例とも、実施例3、実施例4、比較例2の順で、含水比が低かった。
実験例7、8は、含水比によらず、同程度の一軸圧縮強度であった。
実験例9、10では、含水比が低いほど、一軸圧縮強度が高いことが確認できた。
【0059】
図11に示すように、材齢7日の場合、実験例5、6のうち、実施例3、4の改良土を用いた供試体については、材齢3日の場合と比べて、一軸圧縮強度が顕著に高められていることが確認できた。
実験例7については、実施例3、4の改良土を用いた供試体で、一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。
そのほかの実験例では、材齢3日の場合と比べて、一軸圧縮強度の向上が見られなかった。
【0060】
図12に示すように、材齢28日の場合、実験例5、6のうち、実施例3の改良土を用いた供試体については、材齢7日の場合と比べて、一軸圧縮強度が顕著に高められていることが確認できた。
実験例5、6のうち、実施例4の改良土を用いた供試体については、一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。
実験例7のうち、実施例3、4の改良土を用いた供試体で、一軸圧縮強度が高められていることが確認できた。
そのほかの実験例では、供試体の一軸圧縮強度は、材齢によらないことが確認できた。
【0061】
実験例1~10に示すように、土に溶融スラグを混合し一次混合物を得、含水比を低下させることで、一次混合物に地盤固化材を添加し、撹拌し混合した場合の供試体の一軸圧縮強度を高められることが確認できた。
また、溶融スラグを多く使用することで、地盤固化材の添加量を低減しても、供試体の一軸圧縮強度を高められることが確認できた。
このように、地盤固化材の使用量を低減することで、地盤固化材の製造によって排出される二酸化炭素排出量を低減でき、地球環境負荷の低減に寄与することが確認できた。