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  • 特開-垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071099
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ
(51)【国際特許分類】
   B64D 1/22 20060101AFI20240517BHJP
   B64C 29/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B64D1/22
B64C29/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181847
(22)【出願日】2022-11-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-03-17
(71)【出願人】
【識別番号】522145247
【氏名又は名称】有國 秀頼
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100195877
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻木 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】有國 秀頼
(57)【要約】
【課題】 衝撃が一気にかかることなく、エネルギー吸収を漸増かつ迅速に行うことにより、重大な事故等を防ぐことができる垂直離着陸飛行体用吊り下げロープを提供すること。
【解決手段】 垂直離着陸飛行体用吊り下げロープは、第1~第N(Nは2以上の整数)の高弾性ロープを備え、第K(Kは1~Nの整数)の高弾性ロープの長さをLとするとL<L<・・<Lであり、第1~第Nの高弾性ロープは、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれ、第1~第N-1の高弾性ロープの各々の弾性限界での長さが第Nの高弾性ロープの長さ(L)以上である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第N(Nは2以上の整数)の高弾性ロープを備え、
第K(Kは1~Nの整数)の高弾性ロープの長さをLとするとL<L<・・<Lであり、
前記第1~第Nの高弾性ロープは、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれ、
第1~第N-1の高弾性ロープの各々の弾性限界での長さが第Nの高弾性ロープの長さ(L)以上であることを特徴とする垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープにおいて、
前記第1~第Nの高弾性ロープは長さを除いて同じであることを特徴とする垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープにおいて、
前記第1~第Nの高弾性ロープを覆う伸縮カバーを備えることを特徴とする垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は垂直離着陸飛行体用吊り下げロープに関する。
【背景技術】
【0002】
物体の落下、吊り下げ又は牽引等の際に生じる衝撃を吸収できなければ、重大な事故等につながることがある。例えば、落下としては人体や落石、吊り下げとしてはヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体、牽引としては故障車両等が挙げられる。
【0003】
ゴムやバネ等の高弾性ロープを用いてエネルギーの吸収を緩やかに行うと、例えば、人体であれば制動距離が長くなりすぎ、地面に激突したり、反動で壁に衝突したりすることがある。ヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体の吊り下げであれば吊り下げロープの伸縮振動の振幅が大きくて収まりにくく、機体が不安定になったり、機体制御のために過剰に燃料を消費したりすることがある。ヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体でこれを回避するには、吊り下げロープの伸縮振動を吸収するように精密に対応して振幅を減衰していく必要があり、高度な操縦技術を要する。
【0004】
なお、理化学事典第5版は、「高弾性」を「一般に可逆弾性の限界(弾性限界)が大きい物質の弾性をいう。(中略)ほとんどの結晶性物質、固い合成樹脂などの弾性はこれに属さない(中略)高弾性をもつ物質の多くは高分子物質である」と記述する。本願明細書及び特許請求の範囲等では、「高弾性」は上記意味を有し、バネの弾性も含む。
【0005】
一方、低弾性(高弾性率)ロープを用いてエネルギーの吸収を速やかに行うと、衝撃が大きく、重大な事故等を防げないことがある。例えば、人体であれば命綱や安全ベルトの装着部での内臓破裂、ヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体であれば機体の不安定化や吊り下げロープの破断といったものが挙げられる。ヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体でこれを回避するには、低弾性(高弾性率)ロープに荷重がかかる直前に上昇速度を減速する必要があり、高度な操縦技術を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6038592号公報
【特許文献2】特許第7130889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに対し、特許文献1は、第1のロープと、この第1のロープに並列に接続される第2のロープとを備え、前記第1のロープは、前記第2のロープに対する余長を有し、且つ、その余長が確保された状態で前記第2のロープが接続され、前記第2のロープは、前記第1のロープに較べて縦弾性係数が小さく且つ同じ長さで比較したときに、その破断に至る伸びしろが前記第1のロープに較べて長いエネルギー吸収型のロープであることを特徴とする衝撃吸収機構を開示する。特許文献1(0073)は、また、エネルギー吸収ロープ51を双方共に用いる衝突吸収機構50を開示する。さらに、特許文献2は、第1~第N(Nは2以上の整数)の高弾性ロープを備え、第K(Kは1~Nの整数)の高弾性ロープの長さをLKとするとL<L<・・<Lであり、前記第1~第Nの高弾性ロープは、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれ、第1~第N-1の高弾性ロープの各々の弾性限界での長さが第Nの高弾性ロープの長さ(L)未満であることを特徴とする垂直離着陸飛行体用吊り下げロープを開示する。
【0008】
特許文献1は、エネルギー量の最も高い衝突初期における衝突エネルギーを、エネルギー吸収型の第2のロープで吸収した後、残りのエネルギーを第1のロープで吸収する。しかし、特許文献1は、近隣の道路等に対する落石を防止するため、第1のロープには汎用鋼製ロープを用いる。したがって、鋼製の第1のロープに荷重がかかると、一気に衝撃がかかり、重大な事故等を防げないことがある。例えば、人体であれば命綱や安全ベルトの装着部での内臓破裂、ヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体であれば機体の不安定化や吊り下げロープの破断といったものが挙げられる。ヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体でこれを回避するには、第1のロープに荷重がかかる直前に上昇速度を減速する必要があり、高度な操縦技術を要する。また、特許文献1の衝撃吸収機構50は落石防止用であり、垂直離着陸飛行体の吊り下げロープに用いることについて記載も示唆もない。
【0009】
特許文献2は、第Nの高弾性ロープに荷重がかかる前に第1~K-1の高弾性ロープが弾性限界に至るため、第1~K-1の高弾性ロープに急激な荷重がかかり、エネルギー吸収がスムーズかつ十分に行えない。場合によっては第1~K-1の高弾性ロープが切断することがある。ヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体でこれを確実に回避するには、第Nの高弾性ロープに荷重がかかる前に上昇速度を減速する必要があり、高度な操縦技術を要する。
【0010】
本開示は上記実状を鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、衝撃が一気にかかることなく、エネルギー吸収を漸増かつ迅速に行うことにより、重大な事故等を防ぐことができる垂直離着陸飛行体用吊り下げロープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一の態様は、
第1~第N(Nは2以上の整数)の高弾性ロープを備え、
第K(Kは1~Nの整数)の高弾性ロープの長さをLとするとL<L<・・<Lであり、
前記第1~第Nの高弾性ロープは、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれ、
第1~第N-1の高弾性ロープの各々の弾性限界での長さが第Nの高弾性ロープの長さ(L)以上であることを特徴とする垂直離着陸飛行体用吊り下げロープに関する。
【0012】
本開示の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープの引っ張り方向に衝撃が加わると、第K(Kは1~Nの整数)の高弾性ロープの長さLはL<L<・・<Lであり、第1~第Nの高弾性ロープは、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれているため、最も短い第1の高弾性ロープから順に荷重がかかり、それぞれの高弾性ロープでエネルギー吸収が開始される。第1~第N-1の高弾性ロープの各々の弾性限界での長さが第Nの高弾性ロープの長さ(L)以上であるため、第1~第Nの高弾性ロープの全てが順次エネルギー吸収に参加する。その結果、エネルギー吸収を漸増かつ迅速に行うことができ、衝撃が一気にかかることない。また、本開示の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープは構造が簡単なため、低コストで製造することができる。さらに、本開示の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープをヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体の吊り下げロープに用いると、吊り下げロープの弾性率が漸増するため、伸縮振動の振幅が小さく、かつ、収まりやすい。その結果、吊り下げロープに荷重がかかる直前に機体の上昇速度を減速したり、吊り下げロープの伸縮振動を吸収するように精密に対応したりする必要がなく、高度な操縦技術を要さない。
【0013】
本開示の一の態様では、
前記第1~第Nの高弾性ロープは長さを除いて同じであることが好ましい。高弾性ロープの調達や製造プロセスを簡素することができ、製造コストを低減することができる。
【0014】
前記第1~第Nの高弾性ロープを覆う伸縮カバーを備えることが好ましい。第1~第Nの高弾性ロープを覆う伸縮カバーを備えることにより、第1~第Nの高弾性ロープの劣化を防ぐことができる。また、複数の高弾性ロープを一体的にとりまとめることができるため、取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
【0017】
図1は本開示の一実施形態を示す。本開示の一実施形態の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ10は、第1の高弾性ロープ11、第2の高弾性ロープ12・・・第N(Nは2以上の整数)の高弾性ロープ13を備え、第K(Kは1~Nの整数)の高弾性ロープの長さをLとするとL<L<・・<Lであり、第1~第Nの高弾性ロープは、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれ、第1~第N-1の高弾性ロープの各々の弾性限界での長さが第Nの高弾性ロープの長さ(L)以上である。
【0018】
本実施形態の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープの引っ張り方向に衝撃が加わると、第K(Kは1~Nの整数)の高弾性ロープの長さLはL<L<・・<Lであり、第1~第Nの高弾性ロープは、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれているため、最も短い第1の高弾性ロープから順に荷重がかかり、それぞれの高弾性ロープでエネルギー吸収が開始される。第1~第N-1の高弾性ロープの各々の弾性限界での長さが第Nの高弾性ロープの長さ(L)以上であるため、第1~第Nの高弾性ロープの全てが順次エネルギー吸収に参加する。その結果、エネルギー吸収を漸増かつ迅速に行うことができ、衝撃が一気にかかることない。また、本開示の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープは構造が簡単なため、低コストで製造することができる。さらに、本開示の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープをヘリコプターやドローン等の垂直離着陸飛行体に用いると、吊り下げロープの弾性率が漸増するため、伸縮振動の振幅が小さく、かつ、収まりやすい。その結果、吊り下げロープに荷重がかかる直前に機体の上昇速度を減速したり、吊り下げロープの伸縮振動を吸収するように精密に対応したりする必要がなく、高度な操縦技術を要さない。
【0019】
本開示の一実施態様では、第1~第Nの高弾性ロープは長さを除いて同じであることが好ましい。高弾性ロープの調達や製造プロセスを簡素することができ、製造コストを低減することができる。
【0020】
本開示の一実施態様では、第1~第Nの高弾性ロープを覆う伸縮カバーを備えることが好ましい。第1~第Nの高弾性ロープを覆う伸縮カバーを備えることにより、第1~第Nの高弾性ロープの劣化を防ぐことができる。また、複数の高弾性ロープを一体的にとりまとめることができるため、取り扱いが容易になる。
【0021】
本開示の一実施態様では、低弾性ロープをさらに備え、低弾性ロープの長さは第Nの高弾性ロープの長さ(L)より長く、かつ、第Nの高弾性ロープの弾性限界の長さ以下であり、低弾性ロープの引張り強度は第1~第Nの高弾性ロープのいずれよりも大きく、低弾性ロープは第1~第Nの高弾性ロープと、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれていてもよい。例えば、垂直離着陸飛行体が本開示の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープを用いて荷物を吊り下げて飛行しているときに第1~第Nの高弾性ロープのいずれかが切断した場合、荷物の落下を防ぐことができる。
【0022】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれる。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語とともに記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、本実施形態の構成も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ、11 第1の高弾性ロープ、12 第2の高弾性ロープ、13 第Nの高弾性ロープ
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-01-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1~第N(Nは2以上の整数)の高弾性ロープを備え、
第K(Kは1~Nの整数)の高弾性ロープの長さをLとするとL<L<・・<Lであり、
前記第1~第Nの高弾性ロープは、一端同士と他端同士がそれぞれ結合されて並列につながれ、
第1~第N-1の高弾性ロープの各々の弾性限界での長さが第Nの高弾性ロープの長さ(L)以上であり、
前記第1~第Nの高弾性ロープは長さを除いて同じであることを特徴とする垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ。
【請求項2】
請求項1に記載の垂直離着陸飛行体用吊り下げロープにおいて、
前記第1~第Nの高弾性ロープを覆う伸縮カバーを備えることを特徴とする垂直離着陸飛行体用吊り下げロープ。