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特開2024-71103弾性波デバイス、及び、弾性波デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071103
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】弾性波デバイス、及び、弾性波デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240517BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20240517BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H3/08
H01L23/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181860
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】李 鉄
(72)【発明者】
【氏名】塩井 伸一
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA29
5J097BB02
5J097BB11
5J097HA04
5J097JJ04
5J097JJ06
5J097KK10
(57)【要約】
【課題】弾性波デバイスをバンプによらずに、かつ、ギャップを形成させることなくモジュール基板に実装できるようにする。
【解決手段】一面2aに機能素子6を形成させてなるデバイスチップ2と、前記機能素子6の形成領域を囲うように形成された支持層3と、前記支持層3上に形成されて前記形成領域を気密封止するキャビティ5を形成するカバー層4とを備える。前記デバイスチップ2の側面2cに、前記機能素子6に接続された外部接続端子9を位置させている。モジュール基板11の実装面11aに対し前記カバー層4の外面4aを密着させた状態で、前記外部接続端子9と前記実装面11aにおける前記カバー層4の前記外面4aの密着領域11bの外側に形成された前記モジュール基板11側の接続端子11cとを導電材料12によりつなぎ合わせ可能としてなる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面にIDT電極を含む機能素子を形成させてなるデバイスチップと、
前記一面において前記機能素子の形成領域を囲うように形成された支持層と、
前記支持層上に形成されて前記デバイスチップと前記支持層と共働して前記形成領域を気密封止するキャビティを形成するカバー層とを備える弾性波デバイスであって、
前記デバイスチップにおける前記一面と前記一面に対して背中合わせの位置にある他面との間の側面に、前記機能素子に接続された外部接続端子を位置させており、 モジュール基板の実装面に対し前記カバー層の外面を密着させた状態で、前記外部接続端子と前記実装面における前記カバー層の前記外面の密着領域の外側に形成された前記モジュール基板側の接続端子とを導電材料によりつなぎ合わせ可能としてなる、弾性波デバイス。
【請求項2】
前記外部接続端子は、前記デバイスチップの前記一面における、前記一面と前記側面とが接する外縁と前記支持層との間に位置されるブランク領域において、このブランク領域と前記側面とに亘るように形成された金属膜によって形成されてなる、請求項1に記載の弾性波デバイス。
【請求項3】
前記デバイスチップは四角形の板状を呈すると共に、その四つの隅部の全部又は一部に前記ブランク領域を形成させてなる、請求項2に記載の弾性波デバイス。
【請求項4】
ウエハ上に設定されてそれぞれ前記デバイスチップの前記一面となる複数の四角形領域にそれぞれ前記機能素子を形成させた状態から、所定の位置において前記四角形領域の境界線と前記支持層との間に前記ブランク領域を形成させるように前記支持層及び前記カバー層を形成させた後、
隣り合う前記四角形領域間に有底溝を形成し、
次いで、前記ブランク領域と前記有底溝とに亘るように前記外部接続端子となる金属膜を形成し、
この後、前記有底溝の溝底にダイシングを施して前記四角形領域の数分の前記弾性波デバイスを生成するようにしてなる、請求項2又は請求項3に記載の弾性波デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適した弾性波デバイスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用される弾性波デバイスDとして図13に示されるものがある。図13中、符号100はデバイスチップ、符号101はデバイスチップ100の一面に形成された共振器101、符号102はデバイスチップ100に形成された合成樹脂製の支持層、符号103は支持層102上に形成されて前記共振器101を気密封止するキャビティ104(内部空間、中空構造部)を形成する合成樹脂製のカバー層、符号105は前記共振器101を含むデバイスチップ100に形成された回路に電気的に接続されたバンプである。
【0003】
かかる弾性波デバイスDは前記バンプ105を利用して、他の電子デバイスと一緒にモジュール基板Maに実装されてモジュールMを構成する。バンプ105は典型的にはモジュール基板Ma側に形成された電極に超音波接合などにより接合され、この接合後、弾性波デバイスDはモジュール基板Ma上に形成される封止樹脂層Mbによって封止される。
【0004】
図13に示される従来の弾性波デバイスでは、デバイスチップ100の一面上にバンプ105が接合されるバンプパッド106の形成領域を必要とさせる。
また、図13に示される従来の弾性波デバイスは、モジュール基板Maに対しては前記バンプ105によって接合されるため、モジュール基板Maとの間に通常30ないし80μmのギャップGを形成させた状態で、モジュール基板Maに実装されることとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種の弾性波デバイスを前記のようなバンプによらずにモジュール基板に実装できるようにしてデバイスチップ上にバンプパッドを形成する必要がないようにすると共に、この種の弾性波デバイスを前記のようなギャップを形成させることなく、モジュール基板に実装できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、第一の観点から、弾性波デバイスを、一面にIDT電極を含む機能素子を形成させてなるデバイスチップと、
前記一面において前記機能素子の形成領域を囲うように形成された支持層と、
前記支持層上に形成されて前記デバイスチップと前記支持層と共働して前記形成領域を気密封止するキャビティを形成するカバー層とを備える弾性波デバイスであって、
前記デバイスチップにおける前記一面と前記一面に対して背中合わせの位置にある他面との間の側面に、前記機能素子に接続された外部接続端子を位置させており、
モジュール基板の実装面に対し前記カバー層の外面を密着させた状態で、前記外部接続端子と前記実装面における前記カバー層の前記外面の密着領域の外側に形成された前記モジュール基板側の接続端子とを導電材料によりつなぎ合わせ可能としてなる、ものとした。
【0007】
前記外部接続端子を、前記デバイスチップの前記一面における、前記一面と前記側面とが接する外縁と前記支持層との間に位置されるブランク領域において、このブランク領域と前記側面とに亘るように形成された金属膜によって形成されたものとすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0008】
また、前記デバイスチップは四角形の板状を呈すると共に、その四つの隅部の全部又は一部に前記ブランク領域を形成させるようにすることが、この発明の態様の一つとされる。
【0009】
また、前記課題を達成するために、この発明にあっては、第二の観点から、弾性波デバイスの製造方法を、
ウエハ上に設定されてそれぞれ前記デバイスチップの前記一面となる複数の四角形領域にそれぞれ前記機能素子を形成させた状態から、所定の位置において前記四角形領域の境界線と前記支持層との間に前記ブランク領域を形成させるように前記支持層及び前記カバー層を形成させた後、
隣り合う前記四角形領域間に有底溝を形成し、
次いで、前記ブランク領域と前記有底溝とに亘るように前記外部接続端子となる金属膜を形成し、
この後、前記有底溝の溝底にダイシングを施して前記四角形領域の数分の前記弾性波デバイスを生成するようにしてなる、ものとした。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかる弾性波デバイスにあっては、モジュール基板の実装面に対し前記カバー層の外面を密着させた状態で、前記デバイスチップの側面に位置された外部接続端子と前記モジュール基板側の接続端子とを導電材料によりつなぎ合わせ可能としてなることから、第一に、従来の弾性波デバイスのように、デバイスチップの一面上にバンプ用の電極(バンプパッド)を必要としない利点を有する。これは、デバイスチップの小型化に寄与する。
また、第二に、この発明にかかる弾性波デバイスは、モジュール基板への実装にあたって、従来の弾性波デバイスのようなバンプを必要とせず、前記カバー層をモジュール基板の実装面に密着させた状態で、モジュール基板に実装することができる利点を有する。モジュール基板の実装面に対しては弾性波デバイスなどの実装後に合成樹脂によるモールディング(封止樹脂層の形成)が施されるが、カバー層は実装面に密着されるため、カバー層を薄くしてもこのモールディングの際の樹脂の注入圧によるカバー層の変形が生じることがない。したがって、カバー層を可及的に薄く構成可能となる。これは、弾性波デバイスの低背化、ひいては、前記通信モジュールなどの低背化に寄与する。
また、第三に、この発明にかかる弾性波デバイスは、前記カバー層を実装面に面的に密着させた状態で、モジュール基板に実装されることから、この面的に密着させた箇所からモジュール基板側に弾性波デバイスの駆動により生じる熱を効果的に逃すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、この発明の一実施の形態にかかる弾性波デバイスの平面構成図である。
図2図2は、前記弾性波デバイスの断面構成図であり、図1におけるA-A線位置で断面にして示している。
図3図3は、前記弾性波デバイスのデバイスチップに形成される共振器の一例を示した構成図である。
図4図4は、前記弾性波デバイスのデバイスチップに形成される回路の一例を示した構成図である。
図5図5は、前記弾性波デバイスをモジュール基板に実装した状態を示した断面構成図である。
図6図6は、前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した平面構成図である。
図7図7は、図6の工程に続く前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した平面構成図である。
図8図8は、図7の要部拡大構成図である。
図9図9は、図7の工程に続く前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した要部拡大平面構成図である。
図10図10は、図9の工程に続く前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した断面構成図である。
図11図11は、図10の工程に続く前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した断面構成図である。
図12図12は、図11の工程に続く前記弾性波デバイスの製造過程の一工程を示した断面構成図である。
図13図13は、従来の弾性波デバイスを含んで構成されるモジュールの一例を示した断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図12に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる弾性波デバイス1は、モバイル通信機器などにおいて周波数フィルタなどとして使用するのに適したものである。
【0013】
かかる弾性波デバイス1は、
デバイスチップ2と、
前記デバイスチップ2の一面2aに形成されたIDT電極6bなどの機能素子6と、
前記一面2aにおいて前記機能素子6を囲うように形成された支持層3(ウォール/Wall)と、
前記支持層3上に形成されて前記デバイスチップ2と前記支持層3と共働して前記機能素子6を気密封止するキャビティ5(内部空間、中空構造部)を形成するカバー層4(ルーフ/Roof)とを備えたものとなっている。
【0014】
典型的には、前記デバイスチップ2は、一辺を0.5ないし1mmとし、厚さを0.15ないし0.2mmとする四角形(図示の例では長方形)の板状をなすように構成される。
また、典型的には、支持層3は、前記デバイスチップ2の一面2aに直交する向きの厚さ(デバイスチップ2の一面2aを基準とした支持層3の高さ)を10~30μmとするように構成される。
また、典型的には、カバー層4は、厚さを15~35μmとするように構成される。
これらから構成される弾性波デバイス1は、典型的には、厚さを0.25ないし0.35mm程度とする。
【0015】
弾性波デバイスの断面構造を図2に示す。図中符号6は機能素子、符号5はキャビティ、符号3は支持層、符号4はカバー層、符号7は機能素子に接続されて機能素子と共に後述の回路を構成する配線(Wiring)である。
【0016】
デバイスチップ2の一面2a上には複数の機能素子6が形成されている。デバイスチップ2の一面2aにおける各機能素子6の形成領域はそれぞれ、支持層3で囲繞されると共に、この支持層3上に形成されるカバー層4で蓋がされた形態となっており、これにより弾性波デバイス1は複数の前記キャビティ5を備えたものとなっている。
支持層3及びカバー層4は、絶縁材料、典型的には、合成樹脂から構成される。
【0017】
デバイスチップ2は、弾性波を伝搬させる機能を持つ。デバイスチップ2には、典型的には、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウムが用いられ、また、デバイスチップ2は、これらにサファイア、シリコン、アルミナ、スピネル、水晶またはガラスなどを積層させて、構成される場合もある。
【0018】
図3に機能素子6の一例としての共振器6aを示す。共振器6aはIDT電極6bと、IDT電極6bを挟むようにして形成される反射器6eとを有する。IDT電極6bは、電極対からなり、各電極対は弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指6c同士をこれらの一端側においてバスバー6dで接続させてなる。反射器6eは、弾性波の伝搬方向xに長さ方向を交叉させるように平行配列された複数の電極指6fの端部間をバスバー6gで接続させてなる。
かかる機能素子6は、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって構成される。
【0019】
図4に一つのデバイスチップ2上に備えられる回路の一例の概念を示す。符号6aaは入出力ポート(例えば後述の外部出力端子9)間に直列に接続された共振器6a、符号6abは入出力ポート間に並列に接続された共振器6a、符号8はグランドを示す。機能素子6の数や配置は必要に応じて変更される。すなわち、図4の回路によってラダー型フィルタが構成されるようになっている。
かかる回路を構成する前記配線7も、典型的には、フォトリソグラフィ技術により形成された導電性金属膜によって構成される。
【0020】
この実施の形態にかかる弾性波デバイス1においては、前記デバイスチップ2における前記一面2aと前記一面2aに対して背中合わせの位置にある他面2bとの間の側面2cに、前記機能素子6に前記配線7を介して電気的に接続された外部接続端子9を位置させている。
【0021】
この実施の形態にあっては、前記外部接続端子9は、前記デバイスチップ2の前記一面2aにおける、前記一面2aと前記側面2cとが接する外縁2dと前記支持層3との間に位置されるブランク領域10(デバイスチップ2の一面2a上の前記支持層3及びカバー層4が形成されていない領域)において、このブランク領域10の前記一面2aと前記側面2cとに亘るように形成された金属膜9aによって形成されている。
【0022】
図示の例では、デバイスチップ2の一面2aは、機能素子6の形成領域を除いて、概ね支持層3によって被覆された状態となっている。それと共に、図示の例では、デバイスチップ2の一面2aの前記外縁2d側において、デバイスチップ2の一面2aを支持層3によって覆っていないブランク領域10が4箇所形成されている。このブランク領域10においてはカバー層4も形成されていない。
【0023】
図示の例では、前記デバイスチップ2は四角形の板状を呈すると共に、その四つの隅部2eの一部に前記ブランク領域10を形成させている。図示は省略するがブランク領域10は、四つの隅部2eの全部に形成させていても構わない。
図示の例では、デバイスチップ2の四つの隅部2eのうちの三つにブランク領域10を形成させている。
【0024】
ブランク領域10では、ブランク領域10にあるデバイスチップ2の外縁2dと実質的に平行をなす支持層3の厚さ方向に沿った第一外面3aが、デバイスチップ2の外縁2dよりもデバイスチップ2の中心2f(図1参照)側に位置して、前記第一外面3aと外縁2dとの間に間隔が形成されている。また、デバイスチップ2の中心2fを周回する方向でのブランク領域10の二箇所の端末10aにはそれぞれ、前記第一外面3aに実質的に直交する支持層3の厚さ方向に沿った第二外面3bが形成されている。この第一外面3aと二箇所の第二外面3bとデバイスチップ2の外縁2dとに囲まれた箇所が前記ブランク領域10となっている。
【0025】
弾性波デバイス1をデバイスチップ2の前記一面2aに直交する向きから見た状態(図1)において、デバイスチップ2の隅部2eに形成されたブランク領域10は、デバイスチップ2の角2gにおいて直角に屈曲し、かつ、この角2gと二箇所の前記第二外面3bとの間をデバイスチップ2の辺2hに沿わせた、L型状となっている。
図示の例では、デバイスチップ2の四つの隅部2eのうちのブランク領域10が形成されていない隅部2eの近傍には、デバイスチップ2の辺2hに沿った直線的なブランク領域10が形成されている(図1における左下のブランク領域10)。
【0026】
ブランク領域10では、支持層3の前記第一外面3aとデバイスチップ2の外縁2dとの間となる箇所まで、配線7が延び出している。すなわち、ブランク領域10に前記配線7の一部7aが位置されるようになっている。
【0027】
外部接続端子9は、ブランク領域10に位置される前記配線7の一部7aを覆って、ブランク領域10と前記側面2cとに亘るように形成されている。図示の例では、外部接続端子9はブランク領域10の全体を覆い、かつ、ブランク領域10の直下においてデバイスチップ2の厚さ方向2i(図2参照)中程の位置よりもやや一面2a側に近い位置までの範囲でデバイスチップ2の側面2cを覆っている。
【0028】
図示の例では、四箇所のブランク領域10のぞれぞれにおいて、前記のように外部接続端子9が形成されている。
【0029】
そして、この実施の形態にあっては、モジュール基板11の実装面11aに対し前記カバー層4の外面4aを密着させた状態で、前記外部接続端子9と前記実装面11aにおける前記カバー層4の前記外面4aの密着領域11bの外側に形成された前記モジュール基板11側の接続端子11cとを導電材料12によりつなぎ合わせ可能としている(図5)。
【0030】
具体的には、以上に説明した弾性波デバイス1と、その他の一又は二以上のデバイスとが実装されてモバイル通信機器などの通信モジュールなどとなるモジュール基板11におけるデバイスが実装される実装面11aに対し、弾性波デバイス1は前記カバー層4の外面4aを実装面11aに密着させた状態で、前記外部接続端子9とモジュール基板11側の接続端子11cとをハンダなどの導電材料12を介して接続させることで、モジュール基板11側に電気的に接続可能となる。カバー層4の外面4aにモジュール基板11の実装面11aに対する粘着機能を付与させておけば、両者の密着性を安定的に確保できる。かかる粘着機能の付与は、カバー層4の外面4aが弱粘着性を持つようにする表面加工により、あるいは、カバー層4の外面4aが弱粘着性を持つようにカバー層4を粘着性を持つ材料から構成することにより、実現できる。
【0031】
ブランク領域10において配線7に接続されてデバイスチップ2の側面2cを覆いこの側面2cに位置される外部接続端子9に対して、この側面2cの外側に形成される導電材料12によって弾性波デバイス1はモジュール基板11側に電気的に接続される。
すなわち、この実施の形態にかかる弾性波デバイス1とモジュール基板11とは、デバイスチップ2の側面2cに位置される外部接続端子9を利用して、前記カバー層4を実装面11aに密着させた状態で、モジュール基板11に実装することができる。外部接続端子9はブランク領域10において配線7に接続されていれば足り、ブランク領域10の幅、すなわち、支持層3の第一外面3aとデバイスチップ2の外縁2dとの間の距離は可及的に小さくすることが可能である。
これにより、この実施の形態にかかる弾性波デバイス1にあっては、第一に、従来の弾性波デバイス1(図13)のように、デバイスチップ2の一面2a上にバンプ用の電極(バンプパッド)を必要としない利点を有する。これは、デバイスチップ2の小型化に寄与する。
また、第二に、モジュール基板11への実装にあたって、従来の弾性波デバイス1(図13)のようなバンプを必要とせず、前記カバー層4を実装面11aに密着させた状態で、モジュール基板11に実装することができる利点を有する。モジュール基板11の実装面11aに対しては弾性波デバイス1などの実装後に合成樹脂によるモールディングが施されるが、カバー層4は実装面11aに密着されるため、カバー層4を薄くしてもこのモールディングの際の樹脂の注入圧によるカバー層4の変形が生じることがない。したがって、カバー層4を可及的に薄く構成可能となる。これは、弾性波デバイス1の低背化、ひいては、前記通信モジュールなどの低背化に寄与する。
また、第三に、この実施の形態にかかる弾性波デバイス1は、前記カバー層4を実装面11aに面的に密着させた状態で、モジュール基板11に実装されることから、この面的に密着させた箇所からモジュール基板11側に弾性波デバイス1の駆動により生じる熱を効果的に逃すことが可能となる。
【0032】
以上に説明した弾性波デバイス11は、以下のようにすることで、適切且つ合理的に製造し得る。この実施の形態にかかる弾性波デバイス11の製造ステップの要部を図6図12に示す。
【0033】
先ず、ウエハ13上に設定されてそれぞれ前記デバイスチップ2となる複数の四角形領域14(図6参照)にそれぞれ、前記機能素子6及び配線7を形成させる(ステップ1/図7図8)。典型的には、一つの四角形領域14に複数の機能素子6が形成される。図7では配線7は一部のみを模式的に表している。
四角形領域14の大きさなどは必要に応じて適宜設定される。図6中の一点鎖線は、設定される四角形領域14の境界を理解しやすいように示した仮想の境界線である。隣り合う四角形領域14間には、後述の有底溝16が形成される隙間15が形成される。この隙間15は格子状のものとして観念される。
【0034】
次いで、前記四角形領域14に前記支持層3及び前記カバー層4を形成させると共に、所定の位置において前記境界線と前記支持層3との間に前記ブランク領域10を形成させる(ステップ2/図9)。図示の例では、一つの四角形領域14において、四つのブランク領域10を形成させている。ブランク領域10には前記のように配線7が延び出している(図9においては、カバー層4の記載を省略している。また、ブランク領域10に位置される配線7の一部7aにハッチングを付している。)。
【0035】
次いで、隣り合う前記四角形領域14間に有底溝16(トレンチ)を形成する(ステップ3/図10)。有底溝16は隙間15内に形成され格子状をなす。有底溝16は、典型的には、レーザー加工やエッチングにより形成される。
【0036】
次いで、前記ブランク領域10と前記有底溝16とに亘るように前記外部接続端子9となる導電性を備えた金属膜9aを形成する(ステップ4/図11)。金属膜9aは、典型的には、蒸着、スパッタ、メッキにより形成される。
【0037】
次いで、前記有底溝16の溝底にダイシングを施して前記四角形領域14の数分の前記弾性波デバイス1を生成する(ステップ5/図12)。
ダイシングは、前記有底溝16に沿って、かつ、有底溝16の左右の溝壁との間にそれぞれ間隔を開けるようにして、施される。ダイシングされた部分を図12において符号17で示す。このダイシングによって、前記ウエハ13から前記四角形領域14の数分の弾性波デバイス1が切り分けられる。
このように生成される弾性波デバイス1の側面2cは、弾性波デバイス1の中心2fを巡るいずれの箇所においても、前記有底溝16の溝底であった段差面2caと、この段差面2caと前記一面2aとの間に位置される上側垂直面2cbと、この段差面2caと前記他面2bとの間に位置される下側垂直面2ccとから構成される。金属膜9aは前記一面2aにおけるブランク領域10にある部分と、上側垂直面2cbと、段差面2caとに亘って形成されることとなる。
【0038】
なお、当然のことながら、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0039】
1 弾性波デバイス
2 デバイスチップ
2a 一面
2b 他面
2c 側面
2ca 段差面
2cb 上側垂直面
2cc 下側垂直面
2d 外縁
2e 隅部
2f 中心
2g 角
2h 辺
2i 厚さ方向
3 支持層
3a 第一外面
3b 第二外面
4 カバー層
4a 外面
5 キャビティ
6 機能素子
6a、6aa、6ab 共振器
6b IDT電極
6c 電極指
6d バスバー
6e 反射器
6f 電極指
6g バスバー
7 配線
7a 配線の一部
8 グランド
9 外部接続端子
9a 金属膜
10 ブランク領域
10a 端末
11 モジュール基板
11a 実装面
11b 密着領域
11c 接続端子
12 導電材料
13 ウエハ
14 四角形領域
15 隙間
16 有底溝
x 伝搬方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13