(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007111
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
G02B 7/02 20210101AFI20240111BHJP
G03B 30/00 20210101ALI20240111BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240111BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G03B30/00
G02B7/02 B
G02B7/02 Z
G03B17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108334
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】花戸 宏之
(72)【発明者】
【氏名】上舘 力也
【テーマコード(参考)】
2H044
2H100
【Fターム(参考)】
2H044AA02
2H044AB02
2H044AB10
2H044AB15
2H044AJ04
2H100BB11
(57)【要約】
【課題】接着剤を介してレンズを鏡枠に固定した際に、高温環境下に付した場合であっても、光軸が傾きにくく、クラックが生じにくく、焦点距離に狂いが生じにくく、簡便に作製可能であるレンズユニットを提供する。
【解決手段】レンズユニット1は、鏡枠2と、鏡枠2に収容されるレンズ3とを備える。鏡枠2はレンズ3を内部に収容する筒状部21と筒状部21の一方の開口を覆い且つレンズ3の光軸を中心とする孔2aを有する蓋22とを備える。レンズ3は、レンズ部31と、レンズ部31の外周に延びるフランジ部32とを備える。筒状部21の内壁2bとレンズ3の外周3aとの間には隙間がある。フランジ部32の蓋側端面34は、接着剤5を介して蓋22に接着する接着領域3bと、蓋22に面接触する当接領域3c,3dとを、平行面上または同一平面上に有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡枠と、前記鏡枠に収容されるレンズとを備えるレンズユニットであって、
前記鏡枠は、前記レンズを内部に収容する筒状部と、前記筒状部の一方の開口を覆い且つ前記レンズの光軸を中心とする孔を有する蓋とを備え、
前記レンズは、レンズ部と、前記レンズ部の外周に延びるフランジ部とを備え、
前記筒状部の内壁と前記レンズの外周との間には隙間があり、
前記フランジ部の前記蓋側端面は、接着剤を介して前記蓋に接着する接着領域と、前記蓋に面接触する当接領域とを、平行面上または同一平面上に有する、レンズユニット。
【請求項2】
前記接着領域および前記当接領域は光軸方向に対して垂直に形成されている請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記フランジ部は、前記蓋側に凸である凸部を外周に有し、前記接着領域を前記凸部に有する、請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記凸部の内周側面は前記蓋部に接着していない請求項3に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記当接領域は前記接着領域の外周側に位置する請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記蓋は、前記筒状部の内壁から前記孔方向に延び前記レンズ側に平面を有する板部と、前記板部から前記孔方向であり且つ前記レンズ方向に延びる突起部とを備える、請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記フランジ部は、前記蓋側に凸である凸部を外周に有し、前記凸部の内周側面は前記突起部に当接する請求項6に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記フランジ部は、前記蓋側に凸である凸部を外周に有し、前記接着領域を前記凸部に有し、
前記蓋の前記突起部と前記レンズの前記フランジ部とが嵌合する、請求項6に記載のレンズユニット。
【請求項9】
リフロー実装用である請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項10】
基板と、請求項1または2に記載のレンズユニットとを備え、前記基板上に前記レンズユニットが実装された構造を有するレンズモジュール。
【請求項11】
前記孔を覆う位置に設置された赤外線フィルタを備える、請求項10に記載のレンズモジュール。
【請求項12】
請求項10に記載のレンズモジュールを備えるカメラモジュール。
【請求項13】
請求項1または2に記載のレンズユニットを、リフロー半田付けにより基板上に実装する工程を有するレンズモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レンズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に搭載される撮像装置の高画素化が進んでおり、レンズモジュールに対して優れた解像力が求められている。レンズモジュールには、ホルダー(鏡枠)内にレンズを備えるレンズユニットが用いられる。レンズユニットは、撮像素子チップを実装した基板に組み付けられるので、ホルダー内でレンズの光軸が撮像素子チップに対して傾くことなく位置決めされることが重要である。このような位置決めの技術として、ホルダー内部に、ホルダー内面とレンズ外周面とを隙間無く固定することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
電子部品の基板への実装には、リフロー処理の導入が経済的である。しかし、ホルダー内面とレンズ外周面との間に隙間が生じないように位置決めされたレンズは、レンズユニットを基板に組み付けてからリフロー処理に付すと、レンズとホルダーとの熱膨張係数の違いにより、熱膨張してホルダーの内周面に強く押し付けられて、変形やクラックが生じてレンズ性能、組付け精度に著しい低下が起こり、その結果、撮像素子との焦点距離にも狂いが生じるという問題があった。
【0004】
特許文献2には、レンズとホルダーの間に弾性体を挟んで熱膨張を吸収する構造が提案されている。また、特許文献3~5には、レンズとホルダーとが、ホルダー内面とレンズ外周面との間に隙間を有するように、接着剤を介して固定されたレンズユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-156887号公報
【特許文献2】特開2009-258560号公報
【特許文献3】特開2009-98614号公報
【特許文献4】特開昭61-123809号公報
【特許文献5】特開昭61-121019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のレンズユニットは、弾性体を必要とするため部品数が多くなり、コストが上がるという問題があった。また、レンズとホルダーとが接着剤を介して固定された従来のレンズユニットは、接着剤の塗布態様に応じて、接着剤の塗布ムラや硬化時の収縮に起因した接着層の厚みバラツキなどにより、レンズが傾いて光軸が傾いたり、レンズにクラックが生じたりするという問題があった。特に、特許文献3のレンズユニットは、ホルダー内面とレンズ外周面との間に接着剤を塗布するため、接着剤が収縮した場合にはレンズが外周方向に引っ張られ、クラックが生じるおそれがある。また、不要な部分に接着剤が付着しないよう塗布時の操作に高度な技術を要する。
【0007】
従って、本開示に係る発明の目的は、接着剤を介してレンズを鏡枠に固定した際に、高温環境下に付した場合であっても、光軸が傾きにくく、クラックが生じにくく、焦点距離に狂いが生じにくく、簡便に作製可能であるレンズユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、鏡枠の筒状部の内壁とレンズの外周との間には隙間があり、且つ、レンズにおけるレンズ部の外周側に延びるフランジ部の蓋側端面が、接着剤を介して鏡枠の蓋に接着する接着領域と、上記蓋に面接触する当接領域とを、平行面上または同一平面上に有するレンズユニットによれば、接着剤を介してレンズをホルダーに固定した際に、高温環境下に付した場合であっても、光軸が傾きにくく、クラックが生じにくく、焦点距離に狂いが生じにくく、簡便に作製可能であることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものに関する。
【0009】
すなわち、本開示は、鏡枠と、上記鏡枠に収容されるレンズとを備えるレンズユニットであって、
上記鏡枠は、上記レンズを内部に収容する筒状部と、上記筒状部の一方の開口を覆い且つ上記レンズの光軸を中心とする孔を有する蓋とを備え、
上記レンズは、レンズ部と、上記レンズ部の外周に延びるフランジ部とを備え、
上記筒状部の内壁と上記レンズの外周との間には隙間があり、
上記フランジ部の上記蓋側端面は、接着剤を介して上記蓋に接着する接着領域と、上記蓋に面接触する当接領域とを、平行面上または同一平面上に有する、レンズユニットを提供する。
【0010】
上記レンズユニットにおいて、鏡枠の筒状部の内壁とレンズの外周との間に隙間があることにより、上記レンズが高温環境下で熱膨張した場合であっても筒状部の内壁に接触せず、レンズにクラックが生じにくい。また、上記フランジ部の上記蓋側端面が、接着剤を介して上記蓋に接着する接着領域と、上記蓋に面接触する当接領域とを、平行面上または同一平面上に有することにより、硬化時などにおいて接着剤が収縮した場合であっても上記当接領域が押さえとなることでレンズが蓋側に近づかず、焦点距離が保たれる。また、接着領域と当接領域が平行面上または同一平面上にあることにより、レンズが傾きにくいため光軸が傾きにくい。また、上記レンズユニットはクラックの抑制に弾性体を必要としないため簡便に作製可能である。
【0011】
上記接着領域および上記当接領域は光軸方向に対して垂直に形成されていることが好ましい。このような構造を有することで、接着剤が収縮した場合であっても当接領域がより強固に押さえとして作用し、焦点距離が狂いにくく、光軸が傾きにくい。
【0012】
上記フランジ部は、上記蓋側に凸である凸部を外周に有し、上記接着領域を上記凸部に有することが好ましい。このような構成を有することで、接着剤のレンズ部への流入をより起こりにくくすることができる。
【0013】
上記凸部の内周側面は上記蓋部に接着していないことが好ましい。このような構成を有することで、接着剤が膨張あるいは収縮に伴ってレンズが外周側または内周側に引っ張られてクラックが生じるのを防止することができる。
【0014】
上記当接領域は上記接着領域の外周側に位置することが好ましい。このような構成を有することで、XY方向(光軸に対して垂直方向)へのズレ(横ずれ)をより起こりにくくすることができる。
【0015】
上記蓋は、上記筒状部の内壁から上記孔方向に延び上記レンズ側に平面を有する板部と、上記板部から上記孔方向であり且つ上記レンズ方向に延びる突起部とを備えることが好ましい。このような構成を有することで、XY方向(光軸に対して垂直方向)へのズレ(横ずれ)をより起こりにくくすることができる。
【0016】
上記フランジ部は、上記蓋側に凸である凸部を外周に有し、上記凸部の内周側面は上記突起部に当接することが好ましい。このような構成を有することで、XY方向(光軸に対して垂直方向)へのズレ(横ずれ)をより起こりにくくすることができる。
【0017】
上記フランジ部は、上記蓋側に凸である凸部を外周に有し、上記接着領域を上記凸部に有し、上記蓋の上記突起部と上記レンズの上記フランジ部とが嵌合することが好ましい。このような構成を有することで、XY方向(光軸に対して垂直方向)へのズレ(横ずれ)をより起こりにくくすることができる。
【0018】
上記レンズユニットは、リフロー実装用であることが好ましい。
【0019】
また、本開示は、基板と、上記レンズユニットとを備え、上記基板上に上記レンズユニットが実装された構造を有するレンズモジュールを提供する。
【0020】
上記レンズモジュールは、上記孔を覆う位置に設置された赤外線フィルタを備えていてもよい。
【0021】
また、本開示は、上記レンズモジュールを備えるカメラモジュールを提供する。
【0022】
また、本開示は、上記レンズユニットを、リフロー半田付けにより基板上に実装する工程を有するレンズモジュールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本開示のレンズユニットは、接着剤を介してレンズをホルダーに固定した際に、高温環境下に付した場合であっても、光軸が傾きにくく、クラックが生じにくく、焦点距離に狂いが生じにくく、簡便に作製可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示のレンズユニットの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1に示すレンズユニット1におけるレンズ3の拡大図である。
【
図3】本開示のレンズユニットの他の一実施形態を示す断面図である。
【
図4】本開示のレンズユニットのさらに他の一実施形態を示す断面図である。
【
図5】本開示のレンズモジュールの一実施形態を示す外観図である。
【
図6】本開示のレンズモジュールの一実施形態を示す断面図である。
【
図7】本開示のレンズモジュールの他の一実施形態を示す断面図である。
【
図8】本開示のレンズモジュールを備えるレンズモジュール群の一実施形態を示す断面図である。
【
図9】本開示のレンズモジュールを備えるレンズモジュール群の他の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[レンズユニット]
本開示の一実施形態に係るレンズユニットは、鏡枠と、上記鏡枠に収容されるレンズとを少なくとも備える。
【0026】
図1に、本開示のレンズユニットの一実施形態(第一実施形態)を表す断面図を示す。
図1に示すレンズユニット1は、鏡枠2と、レンズ3およびレンズ4とを備える。
【0027】
レンズ3,4は鏡枠2に収容される。鏡枠2は、筒状部21と、筒状部21の一方の開口を覆う蓋22とを備える。筒状部21はレンズ3,4を内部に収容する。蓋22は、外光をレンズ3,4のレンズ部へ通過させるための、レンズ3,4の光軸を中心とする孔2aを中心に有する。
【0028】
筒状部21は内部にレンズを収容するための空洞を有していればよく、その外枠および空洞の形状は特に限定されない。上記形状としては、円柱、角柱、テーパー形状などが挙げられる。また、空洞の形状と外枠の形状は、同一であってもよく異なっていてもよい。
【0029】
蓋22は、筒状部21の内壁2bから孔2a方向(すなわち蓋22の中央方向)に延びる板部221と、板部221から孔2a方向であり且つレンズ3方向に延びる突起部222とを備える。このような構成を有することで、XY方向(光軸に対して垂直方向)へのズレ(横ずれ)をより起こりにくくすることができる。なお、蓋22は、板部221および突起部222の両方を有している必要はなく、いずれか一方のみを有していてもよい。板部221および突起部222は孔2aの周を隙間無く形成するように環状に形成されている。
【0030】
板部221はレンズ3側(すなわち筒状部21の内部側)に平面を有する。
図1に示す板部221は、レンズ3側に、段差を介して光軸方向(Z方向)の異なる位置に2つの平面を有する。なお、板部221が有する平面の数は特に限定されない。上記平面は光軸に対して垂直であるが、傾斜していてもよい。上記平面は、レンズ3のフランジ部32の蓋側端面34と面接触する領域を有し、また、接着剤5を介して蓋側端面34と接着する領域を有する。具体的には、筒状部21の内壁2b側から、蓋側端面34と面接触する領域を有する第一平面2cと、接着剤5を介して蓋側端面34と接着する領域を有する第二平面2dとをこの順に有し、第二平面2dは第一平面2cと段差を有し、板部221に凹部を形成するように形成されている。上記凹部には接着剤5が充填され、蓋22は接着剤5を介して蓋側端面34と接着する。
【0031】
突起部222は板部221から孔2a方向であり且つレンズ3方向に延びるように形成されており、板部221の先端からレンズ3のレンズ部31にかけて傾斜している。なお、突起部222はレンズ3方向に少なくとも延びており、孔2a方向に延びていなくてもよい。また、突起部222は板部221の先端からではなく、途中からレンズ3方向に延びていてもよく、傾斜を有していなくてもよい。突起部222のレンズ3側先端は、光軸に対して垂直である平面を有する。当該平面はレンズ3のフランジ部32の蓋側端面34と面接触する領域を有する。なお、突起部222のレンズ3側先端は平面を有しなくてもよい。また、レンズ3側先端が有する平面は光軸に対して垂直でなくてもよく、傾斜していてもよい。
【0032】
レンズ3について、
図2を用いて説明する。
図2は、
図1に示すレンズユニット1におけるレンズ3の拡大図である。レンズ3は、レンズ部31と、レンズ部31に連結しレンズ部31の外周に延びるフランジ部32とを備える。レンズ部は、光を屈折させて発散または集束させる部位である。レンズ部31は蓋22側に凸である凸レンズであるが、凹レンズや環状に凸であるレンズであってもよい。
【0033】
フランジ部32は光を屈折させて発散または集束させない部位(非レンズ部)である。フランジ部32は蓋22側に凸である凸部33を外周に有する。フランジ部32の蓋22側の面(蓋側端面)34は、レンズ部31から外周に向かって、第一端面34aと、凸部33上の第二端面34bとをこの順に有し、第一端面34aおよび第二端面34bの間に位置する、凸部の内周側面である第三端面34cをさらに有する。第一端面34aおよび第二端面34bは平行であり、蓋22に接着した状態において光軸に対して垂直である。第二端面34bの高さはレンズ部31の高さよりも高い位置(すなわち蓋22側に近い位置)にある。
【0034】
図1に示すように、レンズ3は鏡枠2の蓋22に接着剤5を介して接着している。具体的には、板部221の内部側における第二平面2dがある凹部には接着剤5が充填されており、レンズ3の第二端面34bは部分的に接着剤5と接着して第二平面2dと接着する接着領域3bを有する。レンズ3の第二端面34bは部分的に板部221の内部側における第一平面2cと面接触して当接する当接領域3cを有する。また、レンズ3の第一端面34aは突起部222のレンズ3側先端と面接触して当接する当接領域3dを有する。レンズ3の第三端面(凸部33の内周側面)34cは突起部222の内部側端面と面接触して当接する当接領域を有し、全面で当接する。このように、蓋22の突起部222とレンズ3のフランジ部32とは嵌合している。第三端面34cは突起部222に当接することで、XY方向(光軸に対して垂直方向)へのズレ(横ずれ)をより起こりにくくすることができる。なお、本明細書における「当接領域」は、2つの部材が接触する領域をいい、接着や溶接等により固定されていない領域をいう。
【0035】
レンズユニット1は接着領域3bをフランジ部32の凸部33に有する。このような構成を有することで、接着剤のレンズ部への流入をより起こりにくくすることができる。また、レンズ3の第三端面(凸部33の内周側面)34cは突起部222の内部側端面と面接触して当接する当接領域を有し、蓋部22に接着していない。このような構成を有することで、接着剤が膨張あるいは収縮に伴ってレンズ3が外周側または内周側に引っ張られてクラックが生じるのを防止することができる。
【0036】
第二平面2dは周方向に亘って連続して環状に設けられていてもよいし、断続的に複数設けられていてもよい。接着剤5は第二平面2dの中央(内周端および外周端の中点)を含む領域に塗布されている。
【0037】
上述のように、第二端面(凸部33の蓋22側端面)34bは接着領域3bおよび当接領域3cを光軸に対して垂直な同一平面上に有する。当接領域3cは接着領域3bの外周側に位置する。このような構成を有することで、XY方向(光軸に対して垂直方向)へのズレ(横ずれ)をより起こりにくくすることができる。また、第一端面34aは当接領域3dを有し、レンズユニット1は接着領域3bおよび当接領域3dを、光軸に対して垂直な平行面上に有する。当接領域3dは接着領域3bの内周側に位置する。なお、本開示のレンズユニットにおいて、当接領域は接着領域の内周側および外周側の少なくとも一方に有していればよく、両方に有していてもよい。
【0038】
レンズ4はレンズ3に積層されており、レンズ3のフランジ部32の、蓋22側とは反対側に接着している。レンズ3およびレンズ4は、接着剤を介して接着していてもよく、接着剤を介さないで接着していてもよい。レンズ4のレンズ部のタイプ(凸レンズなど)は特に限定されない。なお、本開示のレンズユニットにおいて、蓋22に接着するレンズ3を少なくとも備えていればよく、レンズ4を備えなくてもよいし、レンズ3,4に加えてさらにレンズが積層していてもよい。
【0039】
レンズユニット1において、筒状部21の内壁2bと、レンズ3の外周3aとの間には隙間がある。また、筒状部21の内壁2bとレンズ4の外周との間にも隙間がある。なお、本開示のレンズユニットにおいて、筒状部21の内部に位置する全てのレンズについて、筒状部21の内壁2bとの間に隙間があることが好ましい。
【0040】
図3に、本開示のレンズユニットの他の実施形態(第二実施形態)を示す。
図3に示すレンズユニット1は、レンズ3における凸部33の蓋側端面34において、接着領域3bおよび当接領域3cが同一平面上にあるのではなく、段差を介して異なる平行面上にある点で、
図1に示すレンズユニット1とは異なる。
図3に示すレンズユニット1では、当接領域3cを有する凸部33の蓋側端面34は板部221の内部側における第一平面2cに当接しており、接着領域3bを有する凸部33の蓋側端面34は板部221の内部側における第二平面2dがある凹部に進入し接着剤5を介して第二平面2dに接着している。その他の点は
図1に示すレンズユニット1と同様である。
【0041】
図4に、本開示のレンズユニットのさらに他の実施形態(第三実施形態)を示す。
図4に示すレンズユニット1では、板部221の内部側の面は単一の平面2eを有する。そして、レンズ3における凸部33の蓋側端面34は板部221の内部側における平面2eに接着剤5を介して接着する接着領域3bを有しており、接着領域3bと平行面上または同一平面上にある当接領域は接着領域3bの内周側にある当接領域3dのみとなり、接着領域3bの外周側にある当接領域を有しない。その他の点は
図1に示すレンズユニット1と同様である。
【0042】
レンズユニット1において、鏡枠2の筒状部21の内壁2bとレンズ3の外周3aとの間には隙間があることにより、レンズ3が高温環境下で熱膨張した場合であっても筒状部21の内壁2bに接触せず、レンズ3にクラックが生じにくい。また、フランジ部32の蓋側端面34が、接着剤5を介して蓋22に接着する接着領域3bと、蓋22に面接触する当接領域3c,3dとを、平行面上または同一平面上に有することにより、硬化時などにおいて接着剤が収縮した場合であっても当接領域3c,3dが押さえとなることでレンズ3が蓋22側に近づかず、焦点距離が保たれる。また、接着領域3bと当接領域3c,3dが平行面上または同一平面上にあることにより、レンズ3が傾きにくいため光軸が傾きにくい。また、レンズユニット1はクラックの抑制に弾性体を必要としないため簡便に作製可能である。
【0043】
鏡枠2およびレンズ3等のレンズは、それぞれ、公知乃至慣用の材料および製造方法により製造することができる。また、レンズユニット1は、例えば、蓋22の内部側の接着領域3bを構成する領域に接着剤を塗布し、上記当接領域を形成するようにレンズ3を蓋22の上記接着領域の接着剤に貼り合わせた後、必要に応じて紫外線照射や加熱により接着剤を硬化させて接着剤5を形成し、製造することができる。レンズの材質は、特に限定されないが、樹脂またはガラスが挙げられる。また、上記接着剤としては熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂などの硬化型樹脂が挙げられる。
【0044】
上記レンズユニットは、高温熱処理(例えば、リフロー半田付け)により他の部品と一括して基板実装することが可能であることが好ましい。すなわち、上記レンズユニットはリフロー実装用であることが好ましい。上記レンズユニットが高温熱処理(例えば、リフロー半田付け等の260℃以上の高温処理)により基板実装するのに充分な耐熱性を有する場合、リフロー実装が可能であり、上記レンズユニットを備えた装置(例えば後述のレンズモジュールや当該レンズモジュールを備えた光学装置)は、上記装置を別工程で実装する必要がなく、高温熱処理(例えば、リフロー半田付け)により他の部品と一括して基板実装することが可能であり、効率よく、且つ低コストで製造することができる。
【0045】
[レンズモジュール]
上記レンズユニットを基板上に形成することでレンズモジュールを作製することができる。
図5に、
図1に示すレンズユニットを用いたレンズモジュールの一実施形態を表す外観図を示す。
【0046】
図5に示すレンズモジュール10は基板6と、基板6上に設置された鏡枠2とを備える。鏡枠2は基板6上に設置されており、基板6は鏡枠2を直接的にまたは間接的に支持する。基板6は筒状部21の他方の開口を覆う。すなわち、レンズモジュール10は、基板6とレンズユニット1とを備え、基板6上にレンズユニット1が実装された構造を有する。レンズモジュール10は、孔2aを覆う位置に設置された赤外線フィルタ(IRフィルタ)を備えていてもよい。
【0047】
図6に、
図1に示すレンズユニット1を用いたレンズモジュールの一実施形態を表す断面図を示す。
図6は、
図5に示すレンズモジュール10におけるVI-VI’断面において、孔2aを塞ぐように赤外線フィルタ7が設置された態様に相当する。レンズモジュール10はセンサーを備えることが好ましい。基板6上にはセンサーが設置されていてもよいし、基板6がセンサーを兼ね備えるものであってもよい。
図6では赤外線フィルタ7は蓋22の孔2aを覆う位置に設置されているが、センサーを覆うように、すなわちセンサとレンズ3との間、例えば基板6上に設置されていてもよい。
【0048】
基板と筒状部とは接着剤を介して接着していてもよく、接着剤を介さずに接着していてもよい。
図6に示すレンズモジュール10では、基板6と筒状部21とは接着剤を介さずに接着しており、例えばリフロー半田付けにより接着することができる。リフロー半田付けによりにより、レンズユニット1が基板6上に実装したレンズモジュール10を製造することができる。
【0049】
図7に、
図1に示すレンズユニット1を用いたレンズモジュールの他の一実施形態を表す断面図を示す。
図7のレンズモジュール10では、基板6と筒状部21とは、接着剤8を介して接着している。接着剤8は、筒状部21の底面に設けられた凹部23に充填され、接着剤8を介して基板6と筒状部21とが接着している。その他の点は
図6に示すレンズモジュール10と同様である。
図7に示すレンズモジュールは、例えば、筒状部21の凹部23内に接着剤を充填し、接着剤を介して筒状部21の底面と基板6とを貼り合わせ、必要に応じて紫外線照射や加熱により接着剤を硬化させて接着剤8を形成し、製造することができる。凹部23は周方向に亘って連続して環状に設けられていてもよいし、断続的に複数設けられていてもよい。また、筒状部21底面には凹部23が設けられていなくてもよく、この場合例えば筒状部21の底面に部分的または全面に接着剤が塗布され、当該接着剤を介して基板6と筒状部21とが接着していてもよい。
【0050】
上記レンズモジュールは、撮像装置用レンズモジュールを備えた種々の機器、例えば、カメラ、コンピューター、ワードプロセッサー、プリンター、コピー機、ファックス、電話、モバイル機器(携帯電話、スマートフォン、ゲーム機器、タブレット等の携帯情報端末(PDA))、自動車機器、建築用機器、天文用機器などに利用できる。特に、小型の撮像装置用レンズ(さらには高精度のレンズ)、例えば、小型カメラ(例えば、携帯電話用カメラ(いわゆるカメラ付き携帯電話のカメラ)、車載用カメラモジュール等)等のカメラモジュールなどの撮像装置用レンズモジュールとして有用である。このような小型カメラレンズの幅(または直径)は10mm以下程度であってもよい。
【0051】
上記レンズモジュール(特にカメラモジュール)は、2以上のレンズモジュールを隣接して使用されてもよい。上記2以上のレンズモジュールは、全てが本開示のレンズモジュールであってもよいし、1以上が本開示のレンズモジュールであり1以上が他のレンズモジュールであってもよい。3以上のレンズモジュールは、一直線上に配置していてもよいし、二次元上に配置していてもよい。
【0052】
図8に、2つの本開示のレンズモジュールが隣接して設けられたレンズモジュール群の断面図を示す。
図8のレンズモジュール群11は、カメラモジュールであり、2つのレンズモジュール10が隣接して配置しており、鏡枠2は2つの筒状部21を備え、2つの筒状部21は筒状部21の一部の壁を共有している。このような構成であると、2以上のレンズモジュールを配置する場合に省スペース化することができる。
【0053】
図9に、本開示のレンズモジュールと他のレンズモジュールである発光モジュールとが隣接して設けられたレンズモジュール群の断面図を示す。
図9のレンズモジュール群12は、カメラモジュールであり、レンズモジュール10および発光モジュールであるレンズモジュール13が隣接して配置している。レンズモジュール13はレーザーを光源14とするレーザーモジュールであり、光源14が発するレーザー光を拡散させる拡散レンズ15を備える。鏡枠2は2つの筒状部21および筒状部24を備え、2つの筒状部は当該筒状部の一部の壁を共有している。このような構成であると、2以上のレンズモジュールを配置する場合に省スペース化することができる。
【0054】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、上述の各実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0055】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]鏡枠と、前記鏡枠に収容されるレンズとを備えるレンズユニットであって、
前記鏡枠は、前記レンズを内部に収容する筒状部と、前記筒状部の一方の開口を覆い且つ前記レンズの光軸を中心とする孔を有する蓋とを備え、
前記レンズは、レンズ部と、前記レンズ部の外周に延びるフランジ部とを備え、
前記筒状部の内壁と前記レンズの外周との間には隙間があり、
前記フランジ部の前記蓋側端面は、接着剤を介して前記蓋に接着する接着領域と、前記蓋に面接触する当接領域とを、平行面上または同一平面上に有する、レンズユニット。
[付記2]前記接着領域および前記当接領域は光軸方向に対して垂直に形成されている付記1に記載のレンズユニット。
[付記3]前記フランジ部は、前記蓋側に凸である凸部を外周に有し、前記接着領域を前記凸部に有する、付記1または2に記載のレンズユニット。
[付記4]前記凸部の内周側面は前記蓋部に接着していない付記3に記載のレンズユニット。
[付記5]前記当接領域は前記接着領域の外周側に位置する付記1~4のいずれか1つに記載のレンズユニット。
[付記6]前記蓋は、前記筒状部の内壁から前記孔方向に延び前記レンズ側に平面を有する板部と、前記板部から前記孔方向であり且つ前記レンズ方向に延びる突起部とを備える、付記1~5のいずれか1つに記載のレンズユニット。
[付記7]前記フランジ部は、前記蓋側に凸である凸部を外周に有し、前記凸部の内周側面は前記突起部に当接する付記6に記載のレンズユニット。
[付記8]前記フランジ部は、前記蓋側に凸である凸部を外周に有し、前記接着領域を前記凸部に有し、
前記蓋の前記突起部と前記レンズの前記フランジ部とが嵌合する、付記6または7に記載のレンズユニット。
[付記9]リフロー実装用である付記1~8のいずれか1つに記載のレンズユニット。
[付記10]基板と、付記1~9のいずれか1つに記載のレンズユニットとを備え、前記基板上に前記レンズユニットが実装された構造を有するレンズモジュール。
[付記11]前記孔を覆う位置に設置された赤外線フィルタを備える、付記10に記載のレンズモジュール。
[付記12]付記10または11に記載のレンズモジュールを備えるカメラモジュール。
[付記13]付記1~9のいずれか1つに記載のレンズユニットを、リフロー半田付けにより基板上に実装する工程を有するレンズモジュールの製造方法。
【符号の説明】
【0056】
1 レンズユニット
2 鏡枠
21 筒状部
22 蓋
221 板部
222 突起部
23 凹部
24 筒状部
2a 孔
2b 内壁
3 レンズ
3a 外周
3b 接着領域
3c,3d 当接領域
31 レンズ部
32 フランジ部
33 凸部
34 蓋側端面
4 レンズ
5 接着剤
6 基板
7 赤外線フィルタ
8 接着剤
10 レンズモジュール
11,12 レンズモジュール群
13 発光モジュール
14 光源
15 拡散レンズ