(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071111
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B62D25/08 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181873
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】平井 豪
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA15
3D203BB06
3D203DA12
3D203DA51
(57)【要約】
【課題】車体前後方向に位置調節可能な運転座席と、運転座席の前下方に位置する操作ペダルと、が備えられた作業車において、背が低い運転者にとっても、背が高い運転者にとっても操作ペダルの操作が行い易い、かつ、その状態が楽に得られるようにする。
【解決手段】操作ペダル24の対車体姿勢の変更が可能なペダル支持機構25が備えられ、運転座席6とペダル支持機構25との連係機構27が備えられている。運転座席6が前側に調節された場合の操作ペダル24の非操作状態での対車体姿勢が、運転座席6が後側に調節された場合の操作ペダル24の非操作状態での対車体姿勢よりも上向きになるように、運転座席6が後側に調節された場合の操作ペダル24の非操作状態での対車体姿勢が、運転座席6が前側に調節された場合の操作ペダル24の非操作状態での対車体姿勢よりも下向きになるようにペダル支持機構25が連係機構27によって操作される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前後方向に位置調節可能な運転座席と、
前記運転座席の前下方に設けられ、車体横幅方向に延びる支点軸芯を揺動支点にして揺動操作される操作ペダルと、
前記操作ペダルの非操作状態における対車体姿勢の変更が可能な状態で前記操作ペダルを支持するペダル支持機構と、
前記運転座席と前記ペダル支持機構とを連係させた連係機構と、が備えられ、
前記運転座席が前側に位置調節された場合、この場合の前記操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢が、前記運転座席が後側に位置調節された場合の前記操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢よりも上向きの対車体姿勢にされるように前記ペダル支持機構が前記連係機構によって操作され、前記運転座席が後側に位置調節された場合、この場合の前記操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢が、前記運転座席が前側に位置調節された場合の前記操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢よりも下向きの対車体姿勢にされるように前記ペダル支持機構が前記連係機構によって操作される作業車。
【請求項2】
前記操作ペダルに、前記支点軸芯を有する回転支軸が備えられ、
前記ペダル支持機構は、前記回転支軸を回転可能に支持する状態で前記支点軸芯に平行な枢支軸芯を介して車体に揺動可能に支持されるペダル支持部材である請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記連係機構は、前記運転座席と前記ペダル支持部材とを連動連結するリンク機構である請求項2に記載の作業車。
【請求項4】
前記リンク機構は、前記運転座席に連結されると共に前記運転座席の位置変更によって揺動操作される座席側揺動リンク、前記ペダル支持部材に連結されると共に前記ペダル支持部材を揺動操作するペダル側揺動リンク、前記座席側揺動リンク及び前記ペダル側揺動リンクに連結されて前記座席側揺動リンクと前記ペダル側揺動リンクとを連動させる連動リンクを備えている請求項3に記載の作業車。
【請求項5】
前記連動リンクは、前記操作ペダルの下方を車体前後方向に通されている請求項4に記載の作業車。
【請求項6】
前記操作ペダルとして、エンジンのアクセル装置を操作するアクセルペダル、および、走行用ブレーキを操作するブレーキペダルが備えられ、
前記ペダル支持機構として、前記アクセルペダルを支持する第1ペダル支持機構、および、前記ブレーキペダルを支持する第2ペダル支持機構が備えられ、
前記連係機構として、前記第1ペダル支持機構と前記運転座席とを連係させる第1連係機構、および、前記第2ペダル支持機構と前記運転座席とを連係させる第2連係機構が備えられている請求項1に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、車体前後方向に位置調節可能な運転座席(リクライニングシート)が備えられた作業車(トラクタ)がある。この種の作業車には、運転座席の前下方に設けられ、車体横幅方向に延びる支点軸芯を揺動支点にして揺動操作される操作ペダルが備えられたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した作業車では、一般に、背が高い運転者にあっては、運転座席を後側に位置調節して操作ペダルを操作され、背が低い運転者にあっては、運転座席を前側に位置調節して操作ペダルを操作される。背が高い運転者にとっても背が低い運転者にとっても操作ペダルを操作し易い作業車を要望されている。
【0005】
本発明は、背が低い運転者にとっても背が高い運転者にとっても操作ペダルを操作し易い、かつ、操作ペダルを操作し易い状態が楽に得られる作業車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による作業車は、
車体前後方向に位置調節可能な運転座席と、前記運転座席の前下方に設けられ、車体横幅方向に延びる支点軸芯を揺動支点にして揺動操作される操作ペダルと、前記操作ペダルの非操作状態における対車体姿勢の変更が可能な状態で前記操作ペダルを支持するペダル支持機構と、前記運転座席と前記ペダル支持機構とを連係させた連係機構と、が備えられ、前記運転座席が前側に位置調節された場合、この場合の前記操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢が、前記運転座席が後側に位置調節された場合の前記操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢よりも上向きの対車体姿勢にされるように前記ペダル支持機構が前記連係機構によって操作され、前記運転座席が後側に位置調節された場合、この場合の前記操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢が、前記運転座席が前側に位置調節された場合の前記操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢よりも下向きの対車体姿勢にされるように前記ペダル支持機構が前記連係機構によって操作される。
【0007】
本構成によると、連係機構の作用により、運転座席が前側に位置調節されると、この場合の操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢が、運転座席が後側に位置調節された場合の操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢よりも上向きの対車体姿勢になる。運転座席が後側に位置調節されると、この場合の操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢が、運転座席が前側に位置調節された場合の操作ペダルの非操作状態での対車体姿勢よりも下向きの対車体姿勢になる。背が低い運転者の場合、一般に、運転座席が前側に位置調節され、操作ペダルを下向き気味に踏込み操作されるが、背が低い運転者にとっては、操作ペダルは、運転座席の前側への調節のために下向き気味の踏込み操作力が効率よく伝わり易い対車体姿勢になっているので操作ペダルを操作し易い。背が高い運転者の場合、一般に、運転座席が後側に位置調節され、操作ペダルを前向き気味に踏込み操作されるが、背が高い運転者にとっては、操作ペダルは、運転座席の後側への調節のために前向き気味の踏込み操作力が効率よく伝わり易い対車体姿勢になっているので操作ペダルを操作し易い。
運転座席の位置調節を行えば、ペダル支持機構が連係機構によって操作されて操作ペダルの対車体姿勢が変更されるので、運転座席の位置調節を行うだけで楽に操作ペダルを操作し易い状態が得られる。
【0008】
本発明においては、
前記操作ペダルに、前記支点軸芯を有する回転支軸が備えられ、前記ペダル支持機構は、前記回転支軸を回転可能に支持する状態で前記支点軸芯に平行な枢支軸芯を介して車体に揺動可能に支持されるペダル支持部材であると好適である。
【0009】
本構成によると、ペダル支持機構がベダル支持部材を備えるだけの簡素な構造で済むので、背が高い低いにかかわらず操作ペダルを操作し易いものを安価に得ることができる。
【0010】
本発明においては、
前記連係機構は、前記運転座席と前記ペダル支持部材とを連動連結するリンク機構であると好適である。
【0011】
本構成によると、運転座席の位置変更の動力をリンク機構によってペダル支持機構に伝えてペダル支持機構を操作できるので、ペダル支持機構を操作する特別なアクチュエータを設けずに済み、背が高い低いにかかわらず操作ペダルを操作し易いものを安価に得ることができる。
【0012】
本発明においては、
前記リンク機構は、前記運転座席に連結されると共に前記運転座席の位置変更によって揺動操作される座席側揺動リンク、前記ペダル支持部材に連結されると共に前記ペダル支持部材を揺動操作するペダル側揺動リンク、前記座席側揺動リンク及び前記ペダル側揺動リンクに連結されて前記座席側揺動リンクと前記ペダル側揺動リンクとを連動させる連動リンクを備えていると好適である。
【0013】
本構成によると、リンク機構が座席側揺動リンク、連動リンクおよびペダル側揺動リンクを備えるだけの簡素な構造で済むので、背が高い低いにかかわらず操作ペダルを操作し易いものを安価に得ることができる。
【0014】
本発明においては、
前記連動リンクは、前記操作ペダルの下方を車体前後方向に通されていると好適である。
【0015】
本構成によると、連動リンクを操作ペダルの操作に対する障害にならないように配置し易い。
【0016】
本発明においては、
前記操作ペダルとして、エンジンのアクセル装置を操作するアクセルペダル、および、走行用ブレーキを操作するブレーキペダルが備えられ、前記ペダル支持機構として、前記アクセルペダルを支持する第1ペダル支持機構、および、前記ブレーキペダルを支持する第2ペダル支持機構が備えられ、前記連係機構として、前記第1ペダル支持機構と前記運転座席とを連係させる第1連係機構、および、前記第2ペダル支持機構と前記運転座席とを連係させる第2連係機構が備えられていると好適である。
【0017】
本構成によると、第1ペダル支持機構をアクセルペダルに対応した第1連係機構によって運転座席に連係させて、第2ペダル支持機構をブレーキペダルに対応した第2連係機構によって運転座席に連係させて、アクセルペダルおよびブレーキペダルのそれぞれを背が高い低いにかかわらず操作し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】運転座席が後側に位置調節された場合のアクセルペダル、第1ペダル支持機構および第1連係機構の状態を示す側面図である。
【
図4】運転座席が前側に位置調節された場合のアクセルペダル、第1ペダル支持機構および第1連係機構の状態を示す側面図である。
【
図5】運転座席が後側に位置調節された場合のブレーキペダル、第2ペダル支持機構および第2連係機構を示す側面図である。
【
図6】運転座席が前側に位置調節された場合のブレーキペダル、第2ペダル支持機構および第2連係機構を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、多目的作業車(「作業車」の一例)の走行車体に関し、
図1,2に示される矢印Fの方向を「車体前側」、
図1,2に示される矢印Bの方向を「車体後側」、
図1に示される矢印Uの方向を「車体上側」、
図1に示される矢印Dの方向を「車体下側」、
図2に示される矢印Lの方向を「車体左側」、
図2に示される矢印Rの方向を「車体右側」とする。車体左右方向が車体横幅方向に対応する。
【0020】
〔多目的作業車の全体の構成〕
図1,2に示されるように、多目的作業車は、左右一対の駆動および操向可能な前車輪1、および、左右一対の駆動可能な後車輪2によって支持される走行車体3を備えている。走行車体3の前部に、フロントリッド4、および、フロントリッド4よりも後側に位置する運転部5が設けられている。運転部5には、運転座席6、前車輪1を操向操作するステアリングホィール7、搭乗空間を囲うロプス8が備えられている。運転部5の後方に荷台9が設けられている。荷台9の下方に、エンジン10、無段変速装置11およびミッションケース12が設けられている。エンジン10の出力が無段変速装置11に入力されて変速され、無段変速装置11の出力がミッションケース12に入力され、ミッションケース12に収容された走行ミッション(図示せず)から後車輪2および前車輪1に伝達される。走行ミッションから前車輪1への動力伝達は、ミッションケース12の前部から前輪用出力軸13が突出され、前輪用出力軸13と前輪駆動ケース14の入力軸15とが回転軸16によって連結されることによって行われる。
【0021】
〔運転座席〕
図1,2に示されるように、運転部5の搭乗空間における車体左横側部分に運転座席6が設けられている。本実施形態では、運転座席6は、搭乗空間における車体左横側部分に設けられているが、搭乗空間における車体右横側部分あるいは中央部に設けることが可能である。
図3,4に示されるように、運転座席6は、走行車体3に備えられた座席支持部17に位置調節機構18を介して取付けられている。走行車体3に対する運転座席6の取付位置を車体前後方向に調節することが位置調節機構18によって可能にされている。
【0022】
具体的には、
図3に示されるように、位置調節機構18は、座席支持部17に備えられたガイドレール19、運転座席6の下部に備えられた座席支持体20を有している。座席支持体20は、ガイドレール19に車体前後方向にスライド可能に支持されている。ガイドレール19に対する座席支持体20のスライド可能なスライド範囲が、運転座席6の位置調節が可能な調節範囲T(
図3,4参照)として設定されている。ガイドレール19の車体前後方向での任意の位置において座席支持体20をガイドレール19に固定するロック状態と、ガイドレール19に対する座席支持体20の固定を解除する解除状態とに切換え可能な位置決め機構21がガイドレール19と座席支持体20にわたって設けられている。位置決め機構21をロック状態と解除状態とに換え操作可能な位置決めレバー22が運転座席6の横側方に設けられている。
【0023】
運転座席6の位置調節は、次の操作要領に基づいて行う。
位置決めレバー22によって位置決め機構21を解除状態に切り換えながら運転座席6を車体前側あるいは車体後側に向けてスライド操作する。運転座席6が調節目標の取付位置に位置すると、位置決めレバー22によって位置決め機構21をロック状態に切り換える。すると、座席支持体20が位置決め機構21によってガイドレール19に固定されて運転座席6が調節目標の取付位置で座席支持部17に固定される。
【0024】
〔アクセルペダル〕
図1,2に示されるように、エンジン10にアクセル装置23が備えられ、アクセル装置23を操作するためのアクセルペダル24が運転座席6の前下方に設けられている。
図3に示されるように、アクセルペダル24は、アクセルペダル24の背面部から上向きに延びるペダルアーム24a、および、ペダルアーム24aの上部に連結された回転支軸24bを備えている。アクセルペダル24は、回転支軸24bが第1ペダル支持機構25に支持されることにより、車体横幅方向に延びる状態で回転支軸24bに備えられた支点軸芯Z1を揺動支点にして揺動操作可能な状態で第1ペダル支持機構25に支持されている。第1ペダル支持機構25は、車体に備えられた支持部26に支持されている。アクセルペダル24は、第1ペダル支持機構25を介して車体に支持されている。
【0025】
アクセルペダル24は、回転支軸24bに連動された回転角センサ(図示せず)、回転角センサに連係されたアクセル制御装置(図示せず)、および、アクセル装置23に備えられたアクセルアクチュエータ(図示せず)を介してアクセル装置23に連係され、アクセル装置23のアクセルペダル24による操作が可能にされている。すなわち、アクセルペダル24が操作されると、第1ペダル支持機構25に対する回転支軸24bの回転角がアクセルペダル24の操作ストロークとして回転角センサによって検出され、回転角センサの検出情報に基づいてアクセル制御装置がアクセルアクチュエータを制御し、アクセルアクチュエータがアクセル装置23をアクセルペダル24の操作位置に対応した回転速度の状態に操作する。
【0026】
アクセルペダル24は、非操作状態(足が外された状態)であるときは、
図3,4に実線で示される姿勢で第1ペダル支持機構25に支持され、操作限界まで踏込み操作されたときは、
図3,4に二点鎖線で示される姿勢で第1ペダル支持機構25に支持される。
【0027】
第1ペダル支持機構25は、支持部26に対する取付姿勢の変更が可能な状態で支持部26に支持されている。第1ペダル支持機構25は、支持部26に対する取付姿勢が変更されることにより、アクセルペダル24の車体に対する姿勢を変更するように構成されている。第1ペダル支持機構25と運転座席6のうちの座席支持体20とが第1連係機構27によって連係されている。
【0028】
図3に、運転座席6が調節可能な取付位置のうちの最も後の取付位置に位置調節された場合の第1連係機構27および第1ペダル支持機構25それぞれの状態、アクセルペダル24の非操作状態での車体に対する姿勢(対車体姿勢)が示されている。運転座席6が最も後の取付位置に位置調節された場合、非操作状態にあるアクセルペダル24は、直線A1で示される対車体姿勢になる。
図4に、運転座席6が調節可能な取付位置のうちの最も前の取付位置に位置調節された場合の第1連係機構27および第1ペダル支持機構25それぞれの状態、アクセルペダル24の非操作状態での車体に対する姿勢(対車体姿勢)が示されている。運転座席6が最も前の取付位置に位置調節された場合、非操作状態にあるアクセルペダル24は、直線A2で示される対車体姿勢になる。
【0029】
図3,4に示されるように、アクセルペダル24が直線A1で示される対車体姿勢であるときのアクセルペダル24の運転部床58に対する傾斜角α1が、アクセルペダル24が直線A2で示される対車体姿勢であるときのアクセルペダル24の運転部床58に対する傾斜角α2よりも急角度である。
図3,4に示されるように、運転座席6が前側に位置調節された場合、第1ペダル支持機構25が第1連係機構27によって操作されて座席前側用に作動し、運転座席6が前側に位置調節された場合のアクセルペダル24の非操作状態での対車体姿勢が、運転座席6が後側に位置調節された場合のアクセルペダル24の非操作状態での対車体姿勢よりも上向きにされる。運転座席6が後側に位置調節された場合、第1ペダル支持機構25が第1連係機構27によって操作されて座席後側用に作動し、運転座席6が後側に位置調節された場合のアクセルペダル24の非操作状態での対車体姿勢が、運転座席6が前側に位置調節された場合のアクセルペダル24の非操作状態での対車体姿勢よりも下向きにされる。
【0030】
運転座席6が調節目標の取付位置に固定されると、第1ペダル支持機構25が第1連係機構27を介しての運転座席6による支持によって支持部26に固定される。これにより、アクセルペダル24が操作されても第1ペダル支持機構25が動かず、アクセルペダル24の踏み操作が可能になる。
【0031】
具体的には、
図3に示されるように、第1ペダル支持機構25は、単一の第1ペダル支持部材28によって構成されている。第1ペダル支持部材28は、ペダル支持部28aを備え、ペダル支持部28aにてアクセルペダル24の回転支軸24bを回転可能に支持している。アクセルペダル24は、回転支軸24bの軸芯でなる支点軸芯Z1を揺動支点にして揺動操作可能な状態で第1ペダル支持部材28に支持されている。
【0032】
図3に示されるように、第1ペダル支持部材28の回転支軸24bよりも下側に位置する部位が枢支軸29を介して支持部26に支持されている。第1ペダル支持部材28は、支点軸芯Z1に平行な状態で枢支軸29に備えられた枢支軸芯P1を揺動支点にして揺動操作可能な状態で支持部26に支持されている。
図3,4に示されるように、第1ペダル支持部材28は、枢支軸芯P1を揺動支点して揺動操作されると、支持部26に対する取付姿勢が変更されてアクセルペダル24の非操作状態での対車体姿勢を変更する。
【0033】
図3に示されるように、第1連係機構27は、第1リンク機構30によって構成されている。第1リンク機構30は、運転座席6のうちの座席支持体20に連結軸31を介して揺動可能に連結された第1座席側揺動リンク32、第1ペダル支持部材28のうちの枢支軸芯P1よりも上側に位置する部位に連結軸33を介して揺動可能に連結された第1ペダル側揺動リンク34、第1ペダル側揺動リンク34と第1座席側揺動リンク32とを連動させる第1連動リンク35を備えている。
【0034】
図3に示されるように、第1座席側揺動リンク32は、座席支持体20から下向きに延ばされている。第1座席側揺動リンク32の車体上下方向での中間部が車体に備えられた支持部36に支点軸37を介して支持されている。第1座席側揺動リンク32は、支点軸37を揺動支点にして揺動可能な状態で車体に支持されている。
【0035】
第1ペダル側揺動リンク34は、連結軸33から下向きに延ばされている。第1ペダル側揺動リンク34のうちの連結軸33よりも下側の部位が車体に備えられた支持部38に支点軸39を介して支持されている。第1ペダル側揺動リンク34は、支点軸39を揺動支点にして揺動可能な状態で車体に支持されている。
【0036】
図3に示されるように、第1連動リンク35の前部が第1ペダル側揺動リンク34のうちの支点軸39よりも下側に位置する部位に連結軸40を介して揺動可能に連結されている。第1連動リンク35の後部が第1座席側揺動リンク32のうちの支点軸37よりも下側に位置する部位に連結軸41を介して揺動可能に連結されている。第1連動リンク35は、第1座席側揺動リンク32と第1ペダル側揺動リンク34を連動連結している。
【0037】
第1リンク機構30においては、
図3に示されるように、運転座席6が後側に移動されると、運転座席6の移動によって第1座席側揺動リンク32が支点軸37を揺動支点にして時計回りの揺動方向(矢印aで示される揺動方向)に揺動操作されて第1連動リンク35が第1座席側揺動リンク32によって前側に移動操作され、第1ペダル側揺動リンク34が第1連動リンク35によって押し操作されて支点軸39を揺動支点にして時計回りの揺動方向(矢印bで示される揺動方向)に揺動操作される。すなわち、第1リンク機構30は、運転座席6の後側への移動を第1座席側揺動リンク32、第1連動リンク35および第1ペダル側揺動リンク34によって第1ペダル支持部材28に伝達して第1ペダル支持部材28を座席後側用に揺動操作する。これにより、
図3に示されるように、運転座席6が後側に位置調節されると、運転座席6の後側への移動が第1リンク機構30によって第1ペダル支持部材28に伝達されて支持部26に対する第1ペダル支持部材28の取付姿勢を座席後側用に調節される。
【0038】
第1リンク機構30においては、
図4に示されるように、運転座席6が前側に移動されると、運転座席6の移動によって第1座席側揺動リンク32が支点軸37を揺動支点にして反時計回りの揺動方向(矢印cで示される揺動方向)に揺動操作されて第1連動リンク35が第1座席側揺動リンク32によって後側に移動操作され、第1ペダル側揺動リンク34が第1連動リンク35によって支点軸39を揺動支点にして反時計回りの揺動方向(矢印dで示される揺動方向)に揺動操作される。すなわち、第1リンク機構30は、運転座席6の前側への移動を第1座席側揺動リンク32、第1連動リンク35および第1ペダル側揺動リンク34によって第1ペダル支持部材28に伝達して第1ペダル支持部材28を座席前側用に揺動操作する。これにより、
図4に示されるように、運転座席6が前側に位置調節されると、運転座席6の前側への移動が第1リンク機構30によって第1ペダル支持部材28に伝達されて支持部26に対する第1ペダル支持部材28の取付姿勢を座席前側用に調節される。
【0039】
〔ブレーキペダル〕
図1,2に示されるように、前輪駆動ケース14に、左の前車輪1に制動作用する左前の走行用ブレーキ45、および、右の前車輪1に制動作用する右前の走行用ブレーキ45が備えられている。ミッションケース12に、左の後車輪2に制動作用する左後の走行用ブレーキ46、および、右の後車輪2に制動作用する右後の走行用ブレーキ46が備えられている。
図1,2に示されるように、左右の前車輪1の走行用ブレーキ45、および、左右の後車輪2の走行用ブレーキ46を操作するための一つのブレーキペダル47が運転座席6の前下方に設けられている。
【0040】
図5に示されるように、ブレーキペダル47は、ブレーキペダル47の背面部から上向きに延びるペダルアーム47a、および、ペダルアーム47aの上部に連結された回転支軸47bを備えている。ブレーキペダル47は、アクセルペダル24を支持する第1ペダル支持機構25の構成と同じ構成を有する第2ペダル支持機構48に支持されている。第2ペダル支持機構48によるブレーキペダル47の支持は、回転支軸47bが第2ペダル支持機構48のペダル支持部48aに取付けられることによって行われる。ブレーキペダル47は、車体横幅方向に延びる支点軸芯Z2を揺動支点にして揺動操作可能な状態で第2ペダル支持機構48に支持され、かつ、第2ペダル支持機構48を介して車体の支持部49に支持されている。支点軸芯Z2は、回転支軸47bに備えられている。
【0041】
ブレーキペダル47は、第2ペダル支持機構48に対する回転支軸47bの回転角をブレーキペダル47の操作ストロークとして検出する回転角センサ(図示せず)、各走行用ブレーキ45,46を操作するブレーキアクチュエータ(図示せず)、回転角センサの検出情報を基にブレーキアクチュエータを制御するブレーキ制御装置(図示せず)を介して各走行用ブレーキ45,46に連係され、各走行用ブレーキ45,46のブレーキペダル47による操作が可能にされている。
【0042】
ブレーキペダル47は、非操作状態(足が外された状態)であるときは、
図5、6に実線で示される姿勢で第2ペダル支持機構48に支持され、操作限界まで踏込み操作されたときは、
図5,6に二点鎖線で示される姿勢で第2ペダル支持機構48に支持される。
【0043】
図5,6に示されるように、第2ペダル支持機構48は、アクセルペダル24の第1ペダル支持機構25と同様に、車体に備えられた支持部49に対する取付姿勢の変更が可能な状態で支持部49に支持されている。第2ペダル支持機構48は、支持部49に対する取付姿勢が変更されることにより、ブレーキペダル47の車体に対する姿勢を変更するように構成されている。
【0044】
第2ペダル支持機構48と運転座席6のうちの座席支持体20とが第2連係機構50によって連係されている。第2連係機構50は、アクセルペダル24の第1連係機構27の構成と同じ構成を備えている。
【0045】
図5に、運転座席6が調節可能な取付位置のうちの最も後の取付位置に位置調節された場合の第2連係機構50および第2ペダル支持機構48それぞれの状態、ブレーキペダル47の非操作状態での車体に対する姿勢(対車体姿勢)が示されている。運転座席6が最も後の取付位置に位置調節された場合、非操作状態にあるブレーキペダル47は、直線B1で示される対車体姿勢になる。
図6に、運転座席6が調節可能な取付位置のうちの最も前の取付位置に位置調節された場合の第2連係機構50および第2ペダル支持機構48それぞれの状態、ブレーキペダル47の非操作状態での車体に対する姿勢(対車体姿勢)が示されている。運転座席6が最も前の取付位置に位置調節された場合、非操作状態にあるブレーキペダル47は、直線B2で示される対車体姿勢になる。
【0046】
図5,6に示されるように、ブレーキペダル47が直線B1で示される対車体姿勢であるときのブレーキペダル47の運転部床58に対する傾斜角β1は、ブレーキペダル47が直線B2で示される対車体姿勢であるときのブレーキペダル47の運転部床58に対する傾斜角β2よりも急角度である。
図5,6に示されるように、運転座席6が後側に位置調節された場合、第2ペダル支持機構48が第2連係機構50によって操作されて座席後側用になり、運転座席6が後側に位置調節された場合のブレーキペダル47の非操作状態での対車体姿勢が、運転座席6が前側に位置調節された場合のブレーキペダル47の非操作状態での対車体姿勢よりも下向きにされ、運転座席6が前側に位置調節された場合、第2ペダル支持機構48が第2連係機構50によって操作されて座席前側用になり、運転座席6が前側に位置調節された場合のブレーキペダル47の非操作状態での対車体姿勢が、運転座席6が後側に位置調節された場合のブレーキペダル47の非操作状態での対車体姿勢よりも上向きにされる。
【0047】
運転座席6が調節目標の取付位置に固定されると、第2ペダル支持機構48が第2連係機構50を介しての運転座席6による支持によって支持部49に固定される。これにより、ブレーキペダル47が操作されても第2ペダル支持機構48が動かず、ブレーキペダル47の踏み操作が可能になる。
【0048】
具体的には、
図5,6に示されるように、第2ペダル支持機構48は、アクセルペダル24の第1ペダル支持部材28の構成と同じ構成を備える第2ペダル支持部材51によって構成されている。第2ペダル支持部材51は、支点軸芯Z2に平行な枢支軸芯P2を揺動支点にして揺動操作可能な状態で支持部49に支持されている。
【0049】
第2ペダル支持部材51は、枢支軸芯P2を揺動支点して揺動操作されると、支持部49に対する取付姿勢が変更されてブレーキペダル47の非操作状態での対車体姿勢を変更する。
【0050】
図5,6に示されるように、第2連係機構50は、アクセルペダル24の第1リンク機構30の構成と同じ構成を有する第2リンク機構52によって構成されている。
【0051】
第2リンク機構52においては、
図5に示されるように、運転座席6が後側に移動されると、運転座席6の移動によって第2座席側揺動リンク53が支点軸54を揺動支点にして時計回りの揺動方向(矢印aで示される揺動方向)に揺動操作されて第2連動リンク55が第2座席側揺動リンク53によって前側に移動操作され、第2ペダル側揺動リンク56が第2連動リンク55によって押し操作されて支点軸57を揺動支点にして時計回りの揺動方向(矢印bで示される揺動方向)に揺動操作される。すなわち、第2リンク機構52においては、運転座席6の後側への移動が第2座席側揺動リンク53、第2連動リンク55および第2ペダル側揺動リンク56によって第2ペダル支持部材51に伝達されて第2ペダル支持部材51が支持部49に対して時計回りの揺動方向に揺動操作される。
【0052】
これにより、
図5に示されるように、運転座席6が後側に位置調節されると、運転座席6の後側への移動が第2リンク機構52によって第2ペダル支持部材51に伝達されて支持部49に対する第2ペダル支持部材51の取付姿勢を座席後側用に調節される。
【0053】
第2リンク機構52においては、
図6に示されるように、運転座席6が前側に移動されると、運転座席6の移動によって第2座席側揺動リンク53が支点軸54を揺動支点にして反時計回りの揺動方向(矢印cで示される揺動方向)に揺動操作されて第2連動リンク55が第2座席側揺動リンク53によって後側に移動操作され、第2ペダル側揺動リンク56が第2連動リンク55によって引き操作されて支点軸57を揺動支点にして反時計回りの揺動方向(矢印dで示される揺動方向)に揺動操作される。すなわち、第2リンク機構52においては、運転座席6の前側への移動が第2座席側揺動リンク53、第2連動リンク55および第2ペダル側揺動リンク56によって第2ペダル支持部材51に伝達されて第2ペダル支持部材51が支持部49に対して反時計回りの揺動方向に揺動操作される。
【0054】
これにより、
図6に示されるように、運転座席6が前側に位置調節されると、運転座席6の前側への移動が第2リンク機構52によって第2ペダル支持部材51に伝達されて支持部49に対する第2ペダル支持部材51の取付姿勢を座席前側用に調節される。
【0055】
背が低い運転者にあっては、運転座席6が前側に位置調節されて着座され、アクセルペダル24およびブレーキペダル47が下向き気味に踏込み操作されるが、運転座席6が前側に位置調節された場合のアクセルペダル24およびブレーキペダル47の非操作状態での対車体姿勢が、運転座席6が後側に位置調節された場合のアクセルペダル24およびブレーキペダル47の対車体姿勢よりも上向きになっており、踏込み操作力がアクセルペダル24およびブレーキペダル47に効率よく伝わる状態でアクセルペダル24およびブレーキペダル47を操作することができる。
【0056】
背が高い運転者にあっては、運転座席6が後側に位置調節されて着座され、アクセルペダル24およびブレーキペダル47が前向き気味に踏込み操作されるが、運転座席6が後側に位置調節された場合のアクセルペダル24およびブレーキペダル47の非操作状態での対車体姿勢が、運転座席6が前側に位置調節され場合のアクセルペダル24およびブレーキペダル47の対車体姿勢よりも下向きになっており、踏込み操作力がアクセルペダル24およびブレーキペダル47に効率よく伝わる状態でアクセルペダル24およびブレーキペダル47を操作することができる。
【0057】
本実施形態では、第1連動リンク35がアクセルペダル24の下方を車体前後方向に通され、第2連動リンク55がブレーキペダル47の下方を車体前後方向に通されているが、アクセルペダル24を横方向に迂回して前後方向に通る第1連動リンク35の採用が可能であり、ブレーキペダル47を横方向に迂回して前後方向に通る第2連動リンク55の採用が可能である。
【0058】
本実施形態では、第1連動リンク35が運転部床58の下方を車体前後方向に通され、第2連動リンク55が運転部床58の下方を車体前後方向に通されているが、運転部床58の上方を前後方向に通ると共にカバー部材によって覆われた第1連動リンク35および第2連動リンク55の採用が可能である。
【0059】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、操作ペダルがアクセルペダル24およびブレーキペダル47である例を示したが、これに限らず、差動機構をロック状態に操作するためのデフロックペダルなど、操作対象がアクセル装置23、走行用ブレーキ45、46と異なる各種のペダルが操作ペダルとして採用されたものであってもよい。
【0060】
(2)第1ペダル支持機構25として単一の第1ペダル支持部材28を採用し、第2ペダル支持機構48として単一の第2ペダル支持部材51を採用した例を示したが、これに限らず、第1ペダル支持機構25および第2ペダル支持機構48としては、車体側部材と、車体側部材とは別のペダル側部材とを組み合わせて構成されたものであってもよい。
【0061】
(3)第1連係機構として第1リンク機構30が採用され、第2連係機構50として第2リンク機構52が採用された例を示したが、これに限らない。第1ペダル支持機構25を操作するアクチュエータ、運転座席6の位置調節された位置を検出する位置検出センサ、位置検出センサによる検出結果に基づいてアクチュエータを操作する制御装置によって第1ペダル支持機構25と運転座席6とを連係させる電気式連係機構を第1連係機構27として採用したものであってもよい。第2ペダル支持機構48を操作するアクチュエータ、運転座席6の位置調節された位置を検出する位置検出センサ、位置検出センサによる検出結果に基づいてアクチュエータを操作する制御装置によって第2ペダル支持機構48と運転座席6とを連係させる電気式連係機構を第2連係機構50として採用したものであってもよい。
【0062】
(4)上記した実施形態では、第1ペダル支持機構25および第2ペダル支持機構48を別々に設け、第1連係機構27および第2連係機構50を別々に設け、運転座席6の位置調節に連係してのアクセルペダル24の対車体姿勢の変更と、運転座席6の位置調節に連係してのブレーキペダル47の対車体姿勢の変更とが別々に行われるように構成した例を示したが、アクセルペダル24およびブレーキペダル47の各別操作を可能にしながらアクセルペダル24およびブレーキペダル47を纏めて支持するペダル支持機構、このペダル支持機構を運転座席6に連係させる連係機構を設け、運転座席6の位置調節に連係してのアクセルペダル24の対車体姿勢の変更に併せて、運転座席6の位置調節に連係してのブレーキペダル47対車体姿勢の変更が行わるように構成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、車体前後方向に位置調節可能な運転座席と、運転座席の前下方に設けられ、車体横幅方向に延びる支点軸芯を揺動支点にして揺動操作される操作ペダルと、が備えられた作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
6 運転座席
10 エンジン
23 アクセル装置
24 アクセルペダル(操作ペダル)
24b 回転支軸
25 第1ペダル支持機構(ペダル支持機構)
27 第1連係機構(連係機構)
28 ペダル支持部材(第1ペダル支持部材)
30 第1リンク機構(リンク機構)
32 第1座席側揺動リンク(座席側揺動リンク)
34 第1ペダル側揺動リンク(ペダル側揺動リンク)
35 第1連動リンク(連動リンク)
45 走行用ブレーキ
46 走行用ブレーキ
47 ブレーキペダル(操作ペダル)
47b 回転支軸
48 ペダル支持機構(第2ペダル支持機構)
50 第2連係機構(連係機構)
51 第2ペダル支持部材(ペダル支持部材)
52 第2リンク機構(リンク機構)
53 第2座席側揺動リンク(座席側揺動リンク)
55 第2連動リンク(連動リンク)
56 第2ペダル側揺動リンク(ペダル側揺動リンク)
P1 枢支軸芯
P2 枢支軸芯
Z1 支点軸芯
Z2 支点軸芯