(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071121
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ラジアル・スラスト軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/46 20060101AFI20240517BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20240517BHJP
F16C 19/30 20060101ALI20240517BHJP
F16C 33/66 20060101ALI20240517BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16C33/46
F16C19/26
F16C19/30
F16C33/66 Z
F16C37/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181893
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 都至
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117EA01
3J117FA03
3J117GA02
3J701AA13
3J701AA24
3J701AA27
3J701AA32
3J701AA52
3J701AA53
3J701AA62
3J701AA83
3J701BA34
3J701BA44
3J701CA08
3J701CA14
3J701DA14
3J701EA67
3J701FA33
3J701FA53
3J701FA60
(57)【要約】
【課題】効率的な冷却および円滑な転動体の転動を確保することができるラジアル・スラスト軸受を提供する。
【解決手段】ラジアル・スラスト軸受は、複数のラジアル転動体と、ラジアル保持器と、複数のスラスト転動体と、スラスト保持器と、外輪と、内輪と、を備える。外輪には、外部から複数のラジアル転動体の軌道領域に至る貫通穴が設けられている。ラジアル保持器は、軸方向に間隔をあけて配置される一対の環状部と、ラジアル転動体を収容するポケットを形成するようにそれぞれ周方向に間隔をあけて配置され、一対の環状部に連結される複数の柱部と、を含む。柱部の外径面には、軸方向に延び、内径側に凹む溝部が設けられている。溝部は、柱部の軸方向の少なくともいずれか一方の端部に開口を有する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を受けるラジアル・スラスト軸受であって、
ラジアル方向の荷重が負荷される複数のラジアル転動体と、
前記複数のラジアル転動体を保持するラジアル保持器と、
スラスト方向の荷重が負荷される複数のスラスト転動体と、
前記複数のスラスト転動体を保持するスラスト保持器と、
前記ラジアル転動体の転動面と接触する第1外輪軌道面を有する外輪と、
前記ラジアル転動体の転動面と接触する第1内輪軌道面を有する内輪と、を備え、
前記外輪は、前記スラスト転動体の転動面と接触する第2外輪軌道面を含み、
前記内輪は、前記スラスト転動体の転動面と接触する第2内輪軌道面を含み、
前記外輪には、外部から前記複数のラジアル転動体の軌道領域に至る貫通穴が設けられており、
前記ラジアル保持器は、
軸方向に間隔をあけて配置される一対の環状部と、
前記ラジアル転動体を収容するポケットを形成するようにそれぞれ周方向に間隔をあけて配置され、前記一対の環状部に連結される複数の柱部と、を含み、
前記柱部の外径面には、軸方向に延び、内径側に凹む溝部が設けられており、
前記溝部は、前記柱部の軸方向の少なくともいずれか一方の端部に開口を有する、ラジアル・スラスト軸受。
【請求項2】
前記溝部を構成する壁面は、軸方向に見て円弧状の曲面を含む、請求項1に記載のラジアル・スラスト軸受。
【請求項3】
前記溝部は、前記柱部の軸方向の一方側端部にのみ開口を有する、請求項1または請求項2に記載のラジアル・スラスト軸受。
【請求項4】
前記溝部を構成する軸方向他方側の壁面は、球面の一部を含む、請求項3に記載のラジアル・スラスト軸受。
【請求項5】
前記柱部は、前記一対の環状部の外径側および内径側において、前記ポケットが配置される側に突出する突出領域を有する、請求項1または請求項2に記載のラジアル・スラスト軸受。
【請求項6】
前記貫通穴は、周方向に間隔をあけて前記外輪の外径面に開口を有するように複数設けられている、請求項1または請求項2に記載のラジアル・スラスト軸受。
【請求項7】
前記貫通穴を構成する壁面は、径方向に真っ直ぐに設けられている、請求項1または請求項2に記載のラジアル・スラスト軸受。
【請求項8】
前記貫通穴を構成する壁面は、外径面側が大きくなるようテーパ状に設けられている、請求項1または請求項2に記載のラジアル・スラスト軸受。
【請求項9】
前記複数のスラスト転動体は、軸方向において、前記ラジアル転動体の軸方向の両端側に複列で配置されており、
前記スラスト保持器は、複列で配置される前記複数のスラスト転動体を保持するように一対設けられている、請求項1または請求項2に記載のラジアル・スラスト軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラジアル・スラスト軸受に関するものである。
【背景技術】
【0002】
針状ころを保持する保持器を含むスラスト針状ころ軸受が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示のスラスト針状ころ軸受に含まれる保持器には、ポケット間に位置する柱部の軸方向の側面に、潤滑油の流れを妨げる凸部または凹部が形成されている。また、複列ころ軸受に用いられる保持器が知られている(例えば特許文献2参照)。特許文献2に開示の保持器は、単一の円環部と、円環部の一側面から軸方向一方側へ延びる複数の柱部と、円環部の他側面から軸方向他方側へ延びる複数の柱部と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-1026号公報
【特許文献2】特開2019-65919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を受けることが必要な状況において、双方の荷重を受けることができるラジアル・スラスト軸受が用いられている。このようなラジアル・スラスト軸受は、ラジアルころ軸受およびスラストころ軸受をそれぞれ用いた場合と比較して、例えば軸受を小型化しやすいため、好適に用いられる。ここで、モータ等の発熱源が近接した状況や高速回転で使用され、軸受が高温となってしまう状況において、ラジアル・スラスト軸受が用いられる場合がある。このような場合において、ラジアル・スラスト軸受を効率的に冷却しながら、転動体を円滑に転動させることが求められる。
【0005】
そこで、効率的な冷却および円滑な転動体の転動を確保することができるラジアル・スラスト軸受を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従ったラジアル・スラスト軸受は、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を受ける。ラジアル・スラスト軸受は、ラジアル方向の荷重が負荷される複数のラジアル転動体と、複数のラジアル転動体を保持するラジアル保持器と、スラスト方向の荷重が負荷される複数のスラスト転動体と、複数のスラスト転動体を保持するスラスト保持器と、ラジアル転動体の転動面と接触する第1外輪軌道面を有する外輪と、ラジアル転動体の転動面と接触する第1内輪軌道面を有する内輪と、を備える。外輪は、スラスト転動体の転動面と接触する第2外輪軌道面を含む。内輪は、スラスト転動体の転動面と接触する第2内輪軌道面を含む。外輪には、外部から複数のラジアル転動体の軌道領域に至る貫通穴が設けられている。ラジアル保持器は、軸方向に間隔をあけて配置される一対の環状部と、ラジアル転動体を収容するポケットを形成するようにそれぞれ周方向に間隔をあけて配置され、一対の環状部に連結される複数の柱部と、を含む。柱部の外径面には、軸方向に延び、内径側に凹む溝部が設けられている。溝部は、柱部の軸方向の少なくともいずれか一方の端部に開口を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記ラジアル・スラスト軸受によれば、効率的な冷却および円滑な転動体の転動を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1におけるラジアル・スラスト軸受の外観を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受を軸方向から見た概略平面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受を外径側から見た概略側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受の一部を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受の分解図である。
【
図6】
図6は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受の一部を拡大して示す拡大図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すラジアル・スラスト軸受において、後述する外輪を取り外した状態を示す図である。
【
図8】
図8は、ラジアル保持器の外観斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すラジアル保持器において、IXで示す領域の拡大図である。
【
図10】
図10は、外輪を取り外した状態のラジアル・スラスト軸受の一部を径方向から拡大して見た図である。
【
図11】
図11は、ラジアル保持器の一部を示す拡大断面図である。
【
図12】
図12は、ラジアル保持器の一部を外径側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
本開示のラジアル・スラスト軸受は、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を受ける。ラジアル・スラスト軸受は、ラジアル方向の荷重が負荷される複数のラジアル転動体と、複数のラジアル転動体を保持するラジアル保持器と、スラスト方向の荷重が負荷される複数のスラスト転動体と、複数のスラスト転動体を保持するスラスト保持器と、ラジアル転動体の転動面と接触する第1外輪軌道面を有する外輪と、ラジアル転動体の転動面と接触する第1内輪軌道面を有する内輪と、を備える。外輪は、スラスト転動体の転動面と接触する第2外輪軌道面を含む。内輪は、スラスト転動体の転動面と接触する第2内輪軌道面を含む。外輪には、外部から複数のラジアル転動体の軌道領域に至る貫通穴が設けられている。ラジアル保持器は、軸方向に間隔をあけて配置される一対の環状部と、ラジアル転動体を収容するポケットを形成するようにそれぞれ周方向に間隔をあけて配置され、一対の環状部に連結される複数の柱部と、を含む。柱部の外径面には、軸方向に延び、内径側に凹む溝部が設けられている。溝部は、柱部の軸方向の少なくともいずれか一方の端部に開口を有する。
【0010】
本開示に係るラジアル・スラスト軸受によると、ラジアル方向の荷重を受ける複数のラジアル転動体およびスラスト方向の荷重を受ける複数のスラスト転動体を含むため、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を一つの軸受で適切に受けることができる。そうすると、軸受の小型化を図ることができる。また、ラジアル転動体を保持するラジアル保持器およびスラスト転動体を保持するスラスト保持器を含むため、転動時においてそれぞれの転動体の姿勢を安定させることができる。
【0011】
ここで、ラジアル・スラスト軸受については、熱源の近くで使用される場合や高速回転により軸受自体が高温となってしまう場合がある。このような場合において、ラジアル転動体およびスラスト転動体を安定して転動させるためには、軸受を冷却する必要がある。本開示のラジアル・スラスト軸受に含まれる外輪には、外部から複数のラジアル転動体の軌道領域に至る貫通穴が設けられているため、この貫通穴を利用して、オイルエアやオイルミストといった流動性を有する潤滑剤を軸受内部に送り込むことができる。したがって、軸受内部の冷却および潤滑性能の向上を図ることができる。ここで、ラジアル保持器の柱部の外径面には、柱部の軸方向の少なくともいずれか一方の端部に開口を有する溝部が設けられている。溝部は、軸方向に延び、内径側に凹んでいる。そうすると、貫通穴を通ってラジアル保持器の外径面に至った潤滑剤を、溝部を利用して軸方向の開口側に供給することができる。このような構成のラジアル・スラスト軸受によれば、溝部を利用した潤滑剤の供給により軸受内部の冷却を効率的に行うことができ、供給された潤滑剤のラジアル転動体およびスラスト転動体の潤滑性能の向上を図ることができる。以上より、上記ラジアル・スラスト軸受によれば、効率的な冷却および円滑な転動体の転動を確保することができる。
【0012】
上記ラジアル・スラスト軸受において、溝部を構成する壁面は、軸方向に見て円弧状の曲面を含んでもよい。このようにすることにより、貫通穴を通じて供給された潤滑剤が溝部から円滑に軸方向に排出されるため、溝部内に潤滑剤が残存するおそれを低減することができる。したがって、より効率的な冷却およびより円滑な転動体の転動を確保することができる。
【0013】
上記ラジアル・スラスト軸受において、溝部は、柱部の軸方向の一方側端部にのみ開口を有してもよい。このようにすることにより、軸方向の一方側に熱源が配置される場合において、熱源が配置される側に溝部の開口を配置して、積極的に熱源側に潤滑剤を供給することができる。したがって、より効率的な冷却を図ることができる。
【0014】
上記ラジアル・スラスト軸受において、溝部を構成する軸方向他方側の壁面は、球面の一部を含んでもよい。このようにすることにより、溝部のうちの閉塞された領域側において、溝部内に潤滑剤が残存するおそれを低減することができる。したがって、より効率的な冷却およびより円滑な転動体の転動を確保することができる。
【0015】
上記ラジアル・スラスト軸受において、柱部は、一対の環状部の外径側および内径側において、ポケットが配置される側に突出する突出領域を有してもよい。このようにすることにより、この突出領域により、ポケット内に収容される転動体の脱落を防止することができる。
【0016】
上記ラジアル・スラスト軸受において、貫通穴は、周方向に間隔をあけて外輪の外径面に開口を有するように複数設けられていてもよい。このようにすることにより、潤滑剤を貫通穴から供給すると共に貫通穴から潤滑剤を排出することができる。したがって、さらに効率的な冷却を行うことができる。
【0017】
上記ラジアル・スラスト軸受において、貫通穴を構成する壁面は、径方向に真っ直ぐに設けられていてもよい。このようにすることにより、潤滑剤を軸受内に供給する際の抵抗を低減することができる。したがって、円滑に潤滑剤を外部からラジアル転動体の軌道領域に供給することができる。
【0018】
上記ラジアル・スラスト軸受において、貫通穴を構成する壁面は、外径面側が大きくなるようテーパ状に設けられていてもよい。このようにすることにより、勢いよく溝部内に潤滑剤を供給することができ、潤滑剤の軸受内部への供給を素早く行うことができる。
【0019】
上記ラジアル・スラスト軸受において、複数のスラスト転動体は、軸方向において、ラジアル転動体の軸方向の両端側に複列で配置されてもよい。スラスト保持器は、複列で配置される複数のスラスト転動体を保持するように一対設けられていてもよい。このようにすることにより、より大きなスラスト荷重を複列に配置された複数のスラスト転動体で受けることができる。したがって、スラスト方向の耐荷重を大きくすることができる。
【0020】
[実施形態の具体例]
次に、本開示のラジアル・スラスト軸受の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0021】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態である実施の形態1について説明する。
図1は、本開示の実施の形態1におけるラジアル・スラスト軸受の外観を示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受を軸方向から見た概略平面図である。
図2は、
図1に示す矢印Zと逆の向きから見た図である。
図1および以下に示す図において、Z方向は、軸方向を示す。すなわち、図示はしないが、ラジアル・スラスト軸受により支持される軸は、Z方向に延びる。X方向およびY方向は、軸方向から見た場合のラジアル・スラスト軸受の中心からの径方向を示す。X方向は、軸方向に垂直な平面において、Y方向と直交する方向である。
図3は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受を外径側から見た概略側面図である。
図4は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受の一部を示す概略断面図である。
図4は、X-Z平面に沿って切断した場合の断面図である。
図5は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受の分解図である。
図6は、
図1に示すラジアル・スラスト軸受の一部を拡大して示す拡大図である。
図7は、
図6に示すラジアル・スラスト軸受において、後述する外輪を取り外した状態を示す図である。
【0022】
図1~
図7を参照して、本開示の実施の形態1に係るラジアル・スラスト軸受11は、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重の双方を受けることができる軸受である。ラジアル・スラスト軸受11は、外輪12と、内輪13と、ラジアル方向の荷重が負荷される複数のラジアル転動体としての複数のラジアルころ14と、スラスト方向の荷重が負荷される複数のスラスト転動体としての複数のスラストころ15およびスラスト方向の荷重が負荷される複数のスラスト転動体としての複数のスラストころ16と、複数のラジアルころ14を保持するラジアル保持器17と、複数のスラストころ15を保持するスラスト保持器18と、複数のスラストころ16を保持するスラスト保持器19と、を備える。なお、ラジアルころ14、スラストころ15およびスラストころ16については、全て同じ形状のころを用いることにしてもよい。すなわち、ころが配置される位置によって、ラジアルころ14かスラストころ15、スラストころ16かに分類される。
【0023】
複数のスラストころ15、複数のスラストころ16は、軸方向に間隔をあけて複列に設けられている。本実施形態においては、複数のスラストころ15、複数のスラストころ16は、軸方向において、ラジアルころ14の軸方向の両端側に複列で配置されている。スラスト保持器18およびスラスト保持器19は、複列で配置されるスラストころ15、スラストころ16をそれぞれ保持するように一対設けられている。このような構成のラジアル・スラスト軸受11は、より大きなスラスト荷重を複列に配置された複数のスラストころ15および複数のスラストころ16で受けることができる。したがって、スラスト方向の耐荷重を大きくすることができる。このようなラジアル・スラスト軸受11は、例えば、旋回軸受として好適に用いられる。
【0024】
外輪12は、軸方向に貫通する穴が径方向の中央に設けられた円板状である。外輪12の内径面は、ラジアルころ14の転動面21と接触する第1外輪軌道面31となる。すなわち、外輪12は、ラジアルころ14の転動面21と接触する第1外輪軌道面31を有する。外輪12には、軸方向に貫通する取り付け穴32が周方向に間隔をあけて複数設けられている。すなわち、取り付け穴32は、外輪12の軸方向の一方側の端面33から他方側の端面34に至る。これらの取り付け穴32は、丸穴状であって、外輪12と他の部材との取り付け等に利用される。
【0025】
外輪12には、外部から複数のラジアルころ14の軌道領域に至る貫通穴35が設けられている。貫通穴35は、周方向に間隔をあけて複数設けられている。貫通穴35は、給脂穴とも呼ばれ、外輪12の外径面36に開口を有するように設けられている。貫通穴35は、径方向に貫通するように設けられている。貫通穴35を構成する壁面は、径方向に真っ直ぐに設けられている。複数の貫通穴35は、周方向において、取り付け穴32とその位置をずらして設けられている。すなわち、軸方向に見て、取り付け穴32が設けられている位置と貫通穴35が設けられている位置とは、周方向にずれている。貫通穴35についても、丸穴状である。貫通穴35の径は、取り付け穴32の径よりも小さく構成されている。これらの貫通穴35は、ラジアル・スラスト軸受11の冷却や潤滑性の付与のためにオイルエアやオイルミストといった潤滑剤を軸受内に供給または軸受外へ排出するために用いられる。複数の貫通穴35のうち、オイルエアの送気に用いる貫通穴35とオイルエアの排気に用いる貫通穴35との割合については、冷却性能や潤滑性能、発熱源から発せられる熱量等により任意に調整される。
【0026】
外輪12は、スラストころ15の転動面22と接触する第2外輪軌道面37を含む。外輪12は、スラストころ16の転動面23と接触する第2外輪軌道面38を含む。第2外輪軌道面37と第2外輪軌道面38とは、軸方向に間隔をあけて配置されている。
【0027】
内輪13は、二つの軌道輪41、軌道輪42を組み合わせて構成されている。第1軌道輪41および第2軌道輪42は共に、軸方向に貫通する穴48、穴49が径方向の中央に設けられた円板状である。第1軌道輪41と第2軌道輪42とは、軸方向において接触するようにして組み合わされる。ラジアル・スラスト軸受11は、内輪13の内径側の穴48、穴49に配置される軸(不図示)を支持する。第1軌道輪41の外径面の一部は、ラジアルころ14の転動面21と接触する第1内輪軌道面43となる。すなわち、内輪13は、ラジアルころ14の転動面21と接触する第1内輪軌道面43を有する。第1外輪軌道面31と第1内輪軌道面43との間の径方向の空間が、複数のラジアルころ14が転動する軌道領域となる。
【0028】
第1軌道輪41は、スラストころ15の転動面22と接触する第2内輪軌道面44を含む。第2軌道輪42は、スラストころ16の転動面23と接触する第2内輪軌道面45を含む。第2内輪軌道面44と第2内輪軌道面45とは、軸方向において対向するように設けられている。第2外輪軌道面37と第2内輪軌道面44との間の軸方向の空間が、複数のスラストころ15が転動する軌道領域となる。第2外輪軌道面38と第2内輪軌道面45との間の軸方向の空間が、複数のスラストころ16が転動する軌道領域となる。
【0029】
第1軌道輪41には、軸方向に貫通する連結穴46が設けられている。連結穴46は周方向に間隔をあけて複数設けられている。連結穴46は、第2内輪軌道面44よりも内径側に設けられている。第2軌道輪42には、軸方向に貫通する連結穴47が設けられている。連結穴47は周方向に間隔をあけて複数設けられている。連結穴47は、第2内輪軌道面45よりも内径側に設けられている。連結穴47が設けられる周方向の間隔は、連結穴46が設けられる周方向の間隔と同じである。連結穴46、連結穴47を利用して、ボルトにより、第1軌道輪41と第2軌道輪42とを連結することができる。
【0030】
複数のスラストころ15を保持するスラスト保持器18は、第2外輪軌道面37と第2内輪軌道面44との間に配置される。スラスト保持器18は、円板状であって、複数のスラストころ15を保持するポケットが周方向に間隔をあけて設けられている。複数のスラストころ16を保持するスラスト保持器19は、第2外輪軌道面38と第2内輪軌道面45との間に配置される。スラスト保持器19は、円板状であって、複数のスラストころ16を保持するポケットが周方向に間隔をあけて設けられている。
【0031】
次に、ラジアル保持器17の構成について説明する。
図8は、ラジアル保持器17の外観斜視図である。
図8においては、ラジアルころ14も併せて図示している。
図9は、
図8に示すラジアル保持器17において、IXで示す領域の拡大図である。
図10は、外輪を取り外した状態のラジアル・スラスト軸受11の一部を径方向から拡大して見た図である。
図11は、ラジアル保持器17の一部を示す拡大断面図である。
図11は、X-Y平面で切断した場合の断面図である。
図12は、ラジアル保持器17の一部を外径側から見た図である。
【0032】
図8~
図12を併せて参照して、ラジアル保持器17は、複数のラジアルころ14を保持する。ラジアル保持器17は、軸方向に間隔をあけて配置される環状部51、環状部52と、複数の柱部53と、を含む。環状部51、環状部52は、一対設けられている。複数の柱部53はそれぞれ、軸方向に延びる形状であって、一対の環状部51、環状部52に連結される。複数の柱部53は、ラジアルころ14を収容するポケット54を形成するようにそれぞれ周方向に間隔をあけて配置される。各ポケット54には、ラジアルころ14が一つずつ収容されている。柱部53は、一対の環状部51、環状部52の外径側および内径側において、ポケット54が配置される側に突出している突出領域55、突出領域56を有する。この突出領域55、突出領域56により、ポケット54内に収容されるラジアルころ14の脱落を防止することができる。なお、ポケット54内へのラジアルころ14の収容は、いずれかの突出領域55、突出領域56を弾性変形させて径方向に押し込むことにより実施される。
【0033】
ここで、柱部53の外径面57には、軸方向に延び、内径側に凹む溝部61が設けられている。溝部61は、各柱部53に設けられている。溝部61は、柱部53の軸方向の少なくともいずれか一方の端部に開口62を有する。本実施形態においては、溝部61は、柱部53の軸方向の一方側端部にのみ開口62を有する。溝部61を構成する壁面63は、軸方向に見て円弧状の曲面を含む。本実施形態においては、溝部61を構成する壁面63は、軸方向に見て半円弧状の曲面である。また、溝部61を構成する軸方向他方側の壁面64は、球面の一部を含む。本実施形態においては、溝部61を構成する軸方向他方側の壁面64は、球面の一部である。なお、溝部61の周方向の幅、径方向の深さ、閉塞された溝部61が形成される位置等については、任意に設定される。
【0034】
このような構成のラジアル・スラスト軸受11によると、ラジアル方向の荷重を受ける複数のラジアルころ14およびスラスト方向の荷重を受ける複数のスラストころ15および複数のスラストころ16を含むため、ラジアル方向の荷重およびスラスト方向の荷重を一つの軸受で適切に受けることができる。そうすると、軸受の小型化を図ることができる。また、ラジアルころ14を保持するラジアル保持器17、スラストころ15を保持するスラスト保持器18およびスラストころ16を保持するスラスト保持器19を含むため、転動時においてそれぞれのころの姿勢を安定させることができる。
【0035】
ここで、ラジアル・スラスト軸受11については、熱源の近くで使用される場合や高速回転により軸受自体が高温となってしまう場合がある。このような場合において、ラジアルころ14、スラストころ15およびスラストころ16を安定して転動させるためには、軸受を冷却する必要がある。本開示のラジアル・スラスト軸受11に含まれる外輪12には、外部から複数のラジアルころ14の軌道領域に至る貫通穴35が設けられているため、この貫通穴35を利用して、オイルエアやオイルミストといった流動性を有する潤滑剤を軸受内部に送り込むことができる。したがって、軸受内部の冷却および潤滑性能の向上を図ることができる。ここで、ラジアル保持器17の柱部53の外径面57には、柱部53の軸方向一方側の端部に開口62を有する溝部61が設けられている。溝部61は、軸方向に延び、内径側に凹んでいる。そうすると、貫通穴35を通ってラジアル保持器17の外径面57に至った潤滑剤を、溝部61を利用して軸方向の開口62側に供給することができる。本実施形態においては、特に
図10を参照して、第2軌道輪42側に積極的に潤滑剤を矢印24で示すように供給することができる。なお、閉塞された側、すなわち、第1軌道輪41側においては、矢印25で示すように潤滑剤が滞留し、破線の矢印26で示すように外径側に潤滑剤が徐々に供給される。このような構成のラジアル・スラスト軸受11によれば、溝部61を利用した潤滑剤の供給により軸受内部の冷却を効率的に行うことができ、供給された潤滑剤のラジアルころ14、スラストころ15およびスラストころ16の潤滑性能の向上を図ることができる。以上より、上記ラジアル・スラスト軸受11によれば、効率的な冷却および円滑なころの転動を確保することができる。
【0036】
本実施形態においては、溝部61を構成する壁面63は、軸方向に見て円弧状の曲面を含む。よって、貫通穴35を通じて供給された潤滑剤が溝部61から円滑に軸方向に排出されるため、溝部61内に潤滑剤が残存するおそれを低減することができる。したがって、より効率的な冷却およびより円滑なころの転動を確保することができる。
【0037】
本実施形態においては、溝部61は、柱部53の軸方向の一方側端部にのみ開口62を有する。よって、軸方向の一方側に熱源が配置される場合において、熱源が配置される側に溝部61の開口62を配置して、積極的に熱源側に潤滑剤を供給することができる。したがって、より効率的な冷却を図ることができる。
【0038】
本実施形態においては、溝部61を構成する軸方向他方側の壁面64は、球面の一部を含む。よって、溝部61のうちの閉塞された領域側において、溝部61内に潤滑剤が残存するおそれを低減することができる。したがって、より効率的な冷却およびより円滑なころの転動を確保することができる。
【0039】
本実施形態においては、貫通穴35を構成する壁面は、径方向に真っ直ぐに設けられている。よって、潤滑剤を軸受内に供給する際の抵抗を低減することができる。したがって、円滑に潤滑剤を外部からラジアルころ14の軌道領域に供給することができる。
【0040】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態において、溝部は、柱部の軸方向の双方の端部に開口を有するよう構成してもよい。このようにすることにより、柱部の軸方向の双方の端部側に潤滑剤を供給することができる。よって、軸受内部の全体に潤滑剤を供給して、冷却および潤滑性能の向上を図りやすくなる。このような構成は、例えば、軸方向のいずれか一方にのみ熱源が配置されない場合に好適である。
【0041】
また、上記実施の形態においては、貫通穴を構成する壁面は、径方向に真っ直ぐに設けられていることとしたが、これに限らない。例えば、貫通穴を構成する壁面は、外径面側が大きくなるようテーパ状に設けられていてもよい。このようにすることにより、勢いよく溝部内に潤滑剤を供給することができ、潤滑剤の軸受内部への供給を素早く行うことができる。
【0042】
なお、上記実施の形態においては、複数のスラストころは、複列で配置されることとしたが、これに限らず、複数のスラストころは、単列で配置されることとしてもよい。
【0043】
また、上記実施の形態においては、転動体としてころを用いることとしたが、これに限らず、転動体としてボールを用いることにしてもよい。
【0044】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
11 ラジアル・スラスト軸受、12 外輪、13 内輪、14 ラジアルころ、15,16 スラストころ、17 ラジアル保持器、18,19 スラスト保持器、21,22,23 転動面、24,25,26 矢印、31 第1外輪軌道面、32 取り付け穴、33,34 端面、35 貫通穴、36,57 外径面、37,38 第2外輪軌道面、41 軌道輪(第1軌道輪)、42 軌道輪(第2軌道輪)、43 第1内輪軌道面、44,45 第2内輪軌道面、46,47 連結穴、48,49 穴、51,52 環状部、53 柱部、54 ポケット、55,56 突出領域、61 溝部、62 開口、63,64 壁面。