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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007114
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】冷凍餃子用バッター液および冷凍餃子
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20240111BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20240111BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240111BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20240111BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20240111BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L35/00
A23L29/256
A23L29/231
A23L29/281
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108344
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】504254286
【氏名又は名称】株式会社餃子計画
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 真次
【テーマコード(参考)】
4B025
4B036
4B041
【Fターム(参考)】
4B025LB09
4B025LG14
4B025LG27
4B025LG28
4B025LG32
4B025LK02
4B025LP01
4B025LP10
4B025LP12
4B036LF11
4B036LH11
4B036LH12
4B036LH13
4B036LH15
4B036LK02
4B036LP12
4B036LP17
4B036LP19
4B041LC02
4B041LC10
4B041LH02
4B041LH05
4B041LH10
4B041LK17
4B041LK18
4B041LP01
4B041LP16
(57)【要約】
【課題】乳化剤を使用することなく、簡単かつ安価に綺麗な焼き色を付けて調理することができる冷凍餃子用バッター液および冷凍餃子を提供する。
【解決手段】冷凍保存する前に、餃子の少なくとも焼き面となる部分に付着させてから当該餃子とともに冷凍されるバッター液であって、澱粉含有物、澱粉、あるいはこれらの分解組成物、の中から選択される少なくとも1種以上によって構成される増粘剤と、動物由来原料または植物由来原料からなる増粘安定剤と、水と、油と、を混合して構成され、増粘剤0.5~5質量%、増粘安定剤0.2~1.3質量%、水分量70~90質量%、油分量5~29質量%、序剤0~0.1質量%となされた冷凍餃子用バッター液。餃子の少なくとも焼き面に、上記バッター液を付着させた後、冷凍されてなる冷凍餃子。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍保存する前に、餃子の少なくとも焼き面となる部分に付着させてから当該餃子とともに冷凍されるバッター液であって、
澱粉含有物、澱粉、あるいはこれらの分解組成物、の中から選択される少なくとも1種以上によって構成される、加熱によって粘性を増す増粘剤と、
動物由来原料または植物由来原料からなる、冷却によって粘性を増す増粘安定剤と、
水と、
油と、
必要な場合には増粘安定剤用の助剤と、を混合して構成され、
増粘剤0.5~5質量%、動物由来原料の増粘安定剤0.2~1.3質量%または植物由来原料の増粘安定剤0.2~1.0質量%、水分量70~90質量%、油分量5~29質量%、増粘安定剤用の序剤0~0.1質量%となされ、
前記各成分の範囲で、増粘剤および増粘安定剤の粘性を引き出した状態で混合攪拌されてなることを特徴とする冷凍餃子用バッター液。
【請求項2】
前記動物由来原料からなる増粘安定剤がゼラチンである請求項1に記載の冷凍餃子用バッター液。
【請求項3】
前記植物由来原料からなる増粘安定剤がカラギーナンおよび/またはペクチンである請求項1に記載の冷凍餃子用バッター液。
【請求項4】
前記各成分量の範囲で、水またはお湯に増粘剤と増粘安定剤とを加えて攪拌した後、油を加えてさらに攪拌し、冷蔵温度に冷却して静置後、再度攪拌することで、増粘剤および増粘安定剤の粘性を引き出して流動性を有する状態に構成される請求項1に記載の冷凍餃子用バッター液。
【請求項5】
前記各成分の範囲で、水に増粘剤と増粘安定剤とを加えて加熱攪拌した後、油を加えてさらに攪拌、または加熱攪拌し、冷蔵温度に冷却して静置後、再度攪拌することで、増粘剤および増粘安定剤の粘性を引き出して流動性を有する状態に構成される請求項1に記載の冷凍餃子用バッター液。
【請求項6】
液温が2~15℃の環境下において、液を攪拌した後に、ロータリーフロー粘度計を用いて測定した粘度が、35mPa・s以上44000mPa・s以下となされた請求項1に記載の冷凍餃子用バッター液。
【請求項7】
冷蔵環境から常温に以降後、2時間経過しても相分離しない請求項1に記載の冷凍餃子用バッター液。
【請求項8】
餃子の少なくとも焼き面に、請求項1ないし7の何れか一に記載のバッター液を付着させた後、冷凍されてなることを特徴とする冷凍餃子。
【請求項9】
生餃子の少なくとも焼き面に、バッター液を付着させた後、トレーの各区画に入れ、加熱処理後、冷凍されてなる請求項8に記載の冷凍餃子。
【請求項10】
トレーの各区画にバッター液を充填した後、各区画に生餃子を設け、これらをトレーごと加熱処理した後、冷凍されてなる請求項8に記載の冷凍餃子。
【請求項11】
加熱処理済みの餃子の少なくとも焼き面に、請求項1ないし7の何れか一に記載のバッター液を付着させた後、トレーの各区画に入れて冷凍されてなることを特徴とする冷凍餃子。
【請求項12】
トレーの各区画に請求項1ないし7の何れか一に記載のバッター液を充填した後、各区画に加熱処理済みの餃子を設けて冷凍されてなることを特徴とする冷凍餃子。
【請求項13】
餃子1個に対して2g~8gの割合でバッター液を付着させてなる請求項8に記載の冷凍餃子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍餃子用のバッター液と、それを用いた冷凍餃子とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、焼き餃子は、油を引いて鉄板の上で焼かれるが、水を加えて蒸し焼きにされる。この際、焼き面にサクサクとした食感を持たせるため、小麦粉や片栗粉などの澱粉を水に溶かしたものを加えて蒸し焼きにすることで、焼き面に優れた食感のいわゆる羽根と呼ばれる焼き皮を形成していた。
【0003】
このような焼き餃子は冷凍食品でも存在するが、冷凍食品は、手軽に調理できることが特徴であるのに、上記したような調理作業が必要となると調理が煩わしくなってしまう。
【0004】
そこで、従来より、加熱調理した餃子を冷凍する前に、当該餃子の少なくとも焼き面に、澱粉と油脂と水とをブレンドしたバッター液を付着させてから冷凍することで、調理時には、冷凍された餃子を焼くだけて調理できるようになされた焼き餃子用の冷凍餃子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6402626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の冷凍餃子の場合、バッター液は、澱粉と油脂と水とをブレンドしたものであり、油脂と水とは混ざり合わず、澱粉は液体中に分散しているだけなので、バッター液が経時的に分離してしまう。したがって、工場などで大量生産する場合、バッター液を付着させて冷凍するまでの間に分離しないように少量ずつバッター液を調製して使用するか、もしくは、常にバッター液を攪拌しながら使用するように注意する必要があり、作業工程が煩わしくなってしまい、コスト高になる。そのため、これらバッター液中に乳化剤を添加して分離しないようにすることも考えられているが、この乳化剤のように油脂と水とを一体化する食品添加物は、消化時に胃に負担をかけてしまうことが懸念され、食後の胃もたれなどによって、冷凍餃子は胃もたれを起こす食品だといった悪い印象を与えてしまい売上が低下してしまうことが懸念される。
【0007】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、乳化剤を使用することなく、簡単かつ安価に綺麗な焼き色を付けて調理することができる冷凍餃子用バッター液および冷凍餃子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の冷凍餃子用バッター液は、冷凍保存する前に、餃子の少なくとも焼き面となる部分に付着させてから当該餃子とともに冷凍されるバッター液であって、澱粉含有物、澱粉、あるいはこれらの分解組成物、の中から選択される少なくとも1種以上によって構成される、加熱によって粘性を増す増粘剤と、動物由来原料または植物由来原料からなる、冷却によって粘性を増す増粘安定剤と、水と、油と、必要な場合には増粘安定剤用の助剤と、を混合して構成され、増粘剤0.5~5質量%、動物由来原料の増粘安定剤0.2~1.3質量%または植物由来原料の増粘安定剤0.2~1.0室量%、水分量70~90質量%、油分量5~29質量%、増粘安定剤用の序剤0~0.1質量%となされ、前記各成分の範囲で、増粘剤および増粘安定剤の粘性を引き出した状態で混合攪拌されてなるものである。
【0009】
前記冷凍餃子用バッター液は、前記動物由来原料からなる増粘安定剤がゼラチンであってもよい。
【0010】
前記冷凍餃子用バッター液は、前記植物由来原料からなる増粘安定剤がカラギーナンおよび/またはペクチンであってもよい。
【0011】
前記冷凍餃子用バッター液は、前記各成分量の範囲で、水またはお湯に増粘剤と増粘安定剤とを加えて攪拌した後、油を加えてさらに攪拌し、冷蔵温度に冷却して静置後、再度攪拌することで、増粘剤および増粘安定剤の粘性を引き出して流動性を有する状態に構成されるものであってもよい。
【0012】
前記冷凍餃子用バッター液は、前記各成分の範囲で、水に増粘剤と増粘安定剤とを加えて加熱攪拌した後、油を加えてさらに攪拌、または加熱攪拌し、冷蔵温度に冷却して静置後、再度攪拌することで、増粘剤および増粘安定剤の粘性を引き出して流動性を有する状態に構成されるものであってもよい。
【0013】
前期冷凍餃子用バッター液は、液温が2~15℃の環境下において、液を攪拌した後に、ロータリーフロー粘度計を用いて測定した粘度が、35mPa・s以上44000mPa・s以下となされたものであってもよい。
【0014】
前記冷凍餃子用バッター液は、冷蔵環境から常温に移行後、2時間経過しても相分離しないものであってもよい。
【0015】
上記課題を解決するための本発明の冷凍餃子は、餃子の少なくとも焼き面に、前記バッター液を付着させた後、冷凍されてなるものである。
【0016】
前記冷凍餃子は、生餃子の少なくとも焼き面に、バッター液を付着させた後、トレーの各区画に入れ、加熱処理後、冷凍されてなるものであってもよい。
【0017】
前記冷凍餃子は、トレーの各区画にバッター液を充填した後、各区画に生餃子を設け、これらをトレーごと加熱処理した後、冷凍されてなるものであってもよい。
【0018】
前記冷凍餃子は、加熱処理済みの餃子の少なくとも焼き面に、請求項5記載のバッター液を付着させた後、トレーの各区画に入れて冷凍されてなるものであってもよい。
【0019】
前記冷凍餃子は、トレーの各区画に請求項5記載のバッター液を充填した後、各区画に加熱処理済みの餃子を設けて冷凍されてなるものであってもよい。
【0020】
前記冷凍餃子は、餃子1個当たり2g~8gの割合でバッター液を付着させてなるものであってもよい。
【0021】
前記増粘剤としては、穀類、いも類、根・幹、豆類、等の澱粉含有物、またはこれらから得られる各種澱粉、またはこれらの分解組成物からなるものを使用することができる。具体的な澱粉としては、例えば、コーンスターチ(とうもろこし)、ワキシーコーンスターチ(もち種のとうもろこし)、馬鈴薯(じゃがいも)澱粉、甘藷(さつまいも)澱粉、片栗粉、小麦澱粉、米(上新粉、白玉粉)澱粉、サゴ(サゴ椰子)澱粉、タピオカ(キャッサバ)澱粉、葛澱粉、わらび澱粉、蓮根澱粉、緑豆澱粉、その他豆類(小豆、いんげん、えんどう)澱粉、等の中から選択される1種、または2種以上を自由に組み合わせたものを用いることができる。また、澱粉含有物または澱粉の分解組成物としては、アミロース、アミロペクチンや、当該分解組成物を含むものを使用することができる。前記増粘剤は、バッター液全体の0.5質量%~5質量%の範囲で使用される。0.5質量%未満の場合、調理完成後にしっかりとした焼き皮を形成することができなくなってしまう。5質量%を超える場合、バッター液の粘度が高くなりすぎて取り扱い性が悪くなったり、焼き上がりの焼き皮が分厚くなったりしてしまい食感が低下してしまう。
【0022】
この増粘剤は、粘性を持たせた状態にしてから使用する。この粘性は、基本的には、増粘剤を温水に溶かす、または、増粘剤を水に加えた後、加熱攪拌する、といった具合に熱を加えることによって粘性を引き出すことができるものを指すが、品質改良により、水に溶かすことによって粘性を引き出すことができるようになされたものも含む。
【0023】
前記増粘安定剤としては、動物由来原料からなるもの、または植物由来原料からなるもの、を使用することができる。具体的には、動物由来原料であるゼラチン、植物由来原料であるカラギーナン、ペクチン、ジェランガム、キサンタンガム等の中から選択される1種、または2種以上を自由に組み合わせたものを用いることができる。前記増粘安定剤は、動物由来原料の増粘安定剤の場合には、バッター液全体の0.2質量%~1.3質量%の範囲で使用される。0.2質量%未満の場合、十分なゲル化効果が得られず、1.3質量%を超えると、粘度が固くなりすぎてバッター液が固まってしまったり、調理完成後の焼き皮に焼きムラができたり、焼き皮の食感が低下してしまう。植物由来原料の増粘安定剤を使用する場合には、バッター液全体の0.2質量%~1.0質量%の範囲で使用される。0.2質量%未満の場合、十分なゲル化効果が得られず、1.0質量%を超えると、粘度が固くなりすぎてバッター液が固まってしまったり、増粘安定剤の溶け残りが生じ、その溶け残りが原因で、調理完成後の焼き皮に焼きムラができたり、焼き皮の食感が低下してしまう。この増粘安定剤を使用する際は、冷却することによって増粘作用を生じるので、冷却によりゲル化させて使用する。また、ゲル化を促進させる助剤を併用してもよい。この助剤としては、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、リン酸カルシウム、等の中から選択される1種、または2種以上を自由に組み合わせたものを使用することができる。また、ゲル化具合を後に酸などを添加して調整しても良いが、不用意に添加する成分が増えるだけなので、前記助剤のみで調整することが好ましい。助剤を使用する場合、使用量としては、バッター液全体の0~0.1質量%の範囲で使用される。0.1質量%を超えると、粘度が高くなり過ぎてしまうとともに、調理後の餃子の焼き色が低下してしまう。また、助剤の使用量が増えてしまうと、増粘剤に悪影響があり、冷蔵温度から10℃、15℃と温度上昇して行った際の経時的な粘度低下が、助剤の使用量が少ない場合と比較して激しくなり、バッター液全体の粘度の安定性が無くなってしまう。
【0024】
前記水としては、通常の水を使用することができる。ただし、この水に溶かす増粘剤は、その種類によっては溶かすだけでは増粘せずに熱を必要とするものがあるので、そのような場合は、溶解後に加熱する、または水を、所定の温度、例えば60~80℃程度の温度、に温めたお湯にしてから溶解して使用するものであってもよい。また、水にカルシウム等のミネラル分が多く含まれている場合、ゲル化に影響を与えるので、軟水を使用することが好ましい。日本の場合、水道水は軟水なので、通常に水を使用する分には、全く問題無く使用することができる。前記水は、バッター液全体の70質量%~90質量%の範囲で使用される。70質量%未満の場合、調理後の焼き皮が製品全体に十分に広がらず、製品の見た目が低下してしまう。90質量%を超える場合、焼き皮を形成する成分の絶対量が少なくなってしまうので、焼き皮が薄くなり過ぎてしまったりすることになってしまう。
【0025】
前記油としては、特に限定されるものではなく、例えば、菜種(キャノーラ)油、大豆油、トウモロコシ油、紅花油、ひまわり油、パーム油、ラード、ショートニング、バター、ごま油、オリーブ油、亜麻仁油、グレープシード油、エゴマ油、綿実油、しそ油、米油、落花生油、マーガリン、等の中から選択される1種、または2種以上を自由に組み合わせたものであっあてもよい。前記油は、バッター液全体の5質量%~29質量%の範囲で使用される。5質量%未満の場合、調理時の油分が不足して焦げつきの原因となってしまう。29質量%を超える場合、調理後の製品が油っぽくなってしまう。
【0026】
前記バッター液は、前記各成分を混合して得られるが、これら成分のうち、増粘剤は、加熱することによってゲル化するものが多く、増粘安定剤は冷却することによってゲル化するものが多いので、調製時は、まず、水と増粘剤と増粘安定剤とを混ぜ合わせて加熱する、または、お湯と増粘剤と増粘安定剤とを混ぜ合わせて増粘剤をゲル化させるとともに、油を加えてさらに攪拌し、当該油を十分に分散させる。ついで、この液を冷却することで、増粘安定剤をゲル化させるとともに、増粘剤のゲル化を促進させる。そして、再度攪拌して全体を十分に分散させた後、冷却してバッター液を落ち着かせたら完成する。この際、バッター液としては、冷蔵最低温度である2℃から、製造ラインでのバッター液の使用上限を想定した温度である15℃までの、2℃~15℃の条件下で、ロータリーフロー粘度計を用いて測定される粘度が20mPa・s以上60000mPa・s以下、より好ましくは35mPa・s以上44000mPa・s以下となるように調製したものを使用することが好ましい。20mPa・s未満の場合は、バッター液に餃子を浸けた際に、十分な量のバッター液を餃子に付着させることができず、60000mPa・sを超えると、粘性が高くなり過ぎで、バッター液を餃子に付着させる作業がやり難くなる。上記設定は、冷蔵温度から製造工場温度に取り出して2時間の使用環境下で上記の要件を満たすものであってもよい。
【0027】
このようにして調製されるバッター液は、餃子の焼き面に付着させた状態で冷凍される。この際、バッター液は、餃子の焼き面より下に、当該バッター液が冷凍された状態で付着するものであってもよいし、餃子をバッター液に浸漬させて餃子の焼き面よりも上にバッター液を付着させた状態で冷凍したものであってもよいし、焼き面よりも下にも焼き面よりも上にもバッター液を付着させて冷凍させたものであってもよい。付着させるバッター液の量としては、特に限定されるものではないが、一般的な平均20gのサイズの餃子1個に対して2g~8g、好ましくは4g~6gの範囲で使用するのが良い。2g未満の場合、十分な焼き皮を形成することができず、8gを超えた場合、餃子に対して焼き皮が分厚くなってしまい食感が低下してしまう。より具体的には、バッター液を付着させる餃子は、1個が6g~45gのものが使用される。6g~15gがミニ餃子、16g~25gが一般的なサイズの餃子、それ以上がいわゆるジャンボ餃子と言われるサイズのもので、バッター液は餃子1個の重量に対して1割~4割、好ましくは2割~3割程度の重量で使用される。
【0028】
この餃子へのバッター液の付着は、専用の塗布装置で餃子の焼き面にバッター液を塗布した後、これらをトレーの各区画に入れて冷凍するものであってもよいし、トレーの各区画にバッター液を入れておいて、それらの各区画の中に餃子を入れて一緒に冷凍するものであってもよいし、トレーの各区画に餃子を入れておいて、それらの各区画に所定量のバッター液を充填して一緒に冷凍するものであってもよい。
【0029】
また、餃子は、バッター液とともにトレーに入れた後、加熱調理してから冷凍するものであってもよいし、あらかじめ加熱調理した餃子をバッター液とともにトレーに入れて冷凍するものであってもよい。後者の場合、バッター液は加熱調理されないまま冷凍されることとなるので、バッター液を調製する工程中、増粘剤をゲル化させるために加熱する際に、十分に加熱して熱処理しておくことが好ましい。
【0030】
このようにして構成された冷凍餃子は、澱粉含有物、澱粉、あるいはこれらの分解組成物、の中から選択される少なくとも1種以上によって構成される増粘剤が加熱によってゲル化するのに対し、増粘安定剤が冷却によってゲル化するので、何れも冷凍餃子を作る冷蔵環境下の温度域において、バッター液は、ゲル化状態を長時間にわたって保ちやすい。したがって、調理工場での長時間作業に使用することが可能となる。しかも、乳化剤のように、水分と油分とが一体化するように乳化させるようなものは含んでいないので、食後の消化に時間がかかり、胃もたれなどを生じることもない。
【発明の効果】
【0031】
以上述べたように、本発明によると、加熱によって粘性を増す増粘剤と冷却によって粘性を増す増粘安定剤とを併用しているので、油と水との分散状態が長期間にわたって維持されることとなり、餃子の焼き面にバッター液を付着させて冷凍する作業が長時間になる場合であっても、油と水とを分離させることなく簡単に、バッター液を餃子に付着させて冷凍状態にすることができる。また、バッター液は、水分量、油分量、増粘剤、増粘安定剤の使用量を特定しているので、冷凍餃子を焼いた際の焼き色や食感にも優れたものとなる。しかも、乳化剤を使用していないので、食後の胃もたれなどを生じることもなく、冷凍餃子を美味しく調理して頂くことができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施の形態を説明する。
[実施例1]
-生餃子の調製-
挽き肉、野菜(キャベツ等)、香辛料、等を混ぜ合わせた具材を、餃子の皮で包んで一つが約20gとなった生餃子(株式会社餃子計画社製)を用意した。
【0033】
-バッター液の調製-
80度程度に温めたお湯を80gに、増粘剤(たかい食品社製GM-600F)4gと、増粘安定剤としてのゼラチン1gとを添加してミキサーで攪拌した後、米油15gを混ぜ合わせてさらに攪拌した。
得られたバッター液の中間体を冷蔵庫の冷蔵室で2時間冷却して粘度を向上させた後、再度、ミキサーで攪拌し、その後、冷蔵庫の冷蔵室で2時間冷却してバッター液を調製した。
【0034】
-冷凍餃子の調製-
生餃子の焼き面となる部分から、当該生餃子の下半分を、上記バッター液に浸漬し、バッター液を6g付着させた生餃子を、複数の区画のある餃子用のトレーに納めた。
次いで、このバッター液が付着した生餃子を、トレーごと加熱処理した後、急速冷凍して冷凍餃子を得た。
【0035】
-冷凍餃子の調理-
フライパンの上に油を引くことなく冷凍餃子を並べ、蓋をせずに中火で加熱調理した。
フライパン内の水分が蒸発して底面に皮膜が形成された時点で調理完成とした。
【0036】
[実施例2]
バッター液のゼラチンの量を0.5gに変更した以外は、上記実施例1と同様にして実施例2に係る冷凍餃子を調製し、調理した。
【0037】
[比較例1]
増粘剤(たかい食品社製GM-600F)4gと、米油16gとを混ぜ合わせた中に、80度程度に温めたお湯を80g添加してミキサーで攪拌したものをバッター液として使用した以外は、上記実施例1と同様にして比較例1に係る冷凍餃子を調製し、調理した。
【0038】
[比較例2]
増粘剤(たかい食品社製GM-600F)4gと、米油16gとを混ぜ合わせた中に、水80gを添加してミキサーで攪拌したものを加熱し、放冷したものをバッター液として使用した以外は、上記実施例1と同様にして比較例2に係る冷凍餃子を調製し、調理した。
【0039】
-評価-
[バッター液の粘度測定]
バッター液は、上記したように冷蔵庫で2時間冷却して調製した直後の状態1と、それを常温に放置して約10℃になった状態2と、同じく常温に放置して約15℃になった状態3とのそれぞれの状態において、各3回粘度を測定して平均を求めた。この粘度の測定は、ロータリーフロー粘度計(BAOSHISHAN社製 デジタル式粘度計NDJ-8S)を用いて行った。測定は、粘度が低い場合はNo.1、高い場合はNo.4となるように、粘度毎にメーカー所定のローターを所定の回転数で回転させ、測定時間30秒で粘度を測定した。結果を表1に示す。
[バッター液の観察]
餃子に浸漬する前のバッター液の状態を観察した。結果を表2に示す。
【0040】
[焼き餃子の評価]
調理完成した焼き餃子を、皿の上に引っくり返して載せて焼き面に出来た羽根と呼ばれる焼き皮を観察した。また、実際に食べて考察した。結果を表2に示す。
【0041】
【表1】

【表2】
【0042】
[実施例3,4、比較例3,4]
増粘剤を、たかい食品社製TM-400Fに変更した以外は、上記実施例1,2、比較例1,2と同様にバッター液を調製するとともに冷凍餃子を調製し、調理した。
上記実施例1,2、比較例1,2と同様にバッター液の評価と焼き餃子の評価とを行った。結果を表3に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
[実施例5,6、比較例5,6]
増粘剤を、たかい食品社製JM-600Fに変更した以外は、上記実施例1,2、比較例1,2と同様にバッター液を調製するとともに冷凍餃子を調製し、調理した。
上記実施例1,2、比較例1,2と同様にバッター液の評価と焼き餃子の評価とを行った。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】
【0046】
表1ないし表4の結果から、実施例および比較例に係る全ての焼き餃子は、増粘安定剤であるゼラチンの有無に関わらず、綺麗な焼き皮が出来て良好な食感も得られた。しかし、バッター液については、比較例に係る冷凍餃子に使用したものは、全て経時的に分離してしまい、長時間にわたって使用できないことがわかった。
【0047】
[実施例7-11、比較例7]
表4に示すように、使用するゼラチンの量を変更して実施例1と同じ要領で各バッター液を調製し、状態1、状態2、状態3の各粘度を測定した。
各バッター液は、製造途中のバッター液の中間体を冷蔵庫の冷蔵室で2時間冷却して粘度を向上させた状態Sでどのようになっているのかを観察した。この粘度を向上させたバッター液の中間体を再度、ミキサーで攪拌し、その後、冷蔵庫の冷蔵室で2時間冷却してバッター液として調製した後の状態1も観察した。結果を表5に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
表5の結果から、増粘安定剤としてゼラチンを0.3~1.0%の範囲で使用すれば分離することなく粘度のある良好な状態で安定してバッター液を使用できることが確認できた。1.3%の場合であっても、固まったバッター液をミキサーで再度攪拌すれば、粘度のある良好な状態に戻すことができた。1.5%の場合は、ゼリー状に固くなり過ぎるので、再攪拌して使用する状態にしても、冷蔵温度や10℃の温度域では、固く、使用に不向きであった。したがって、0.3%~1.3%、より好ましくは0.5%~1.0%の範囲で使用するのが良いことが確認できた。
【0050】
[実施例12-22、比較例8-11]
上記実施例1の増粘安定剤であるゼラチンを、表6に示すように、カッパ型カラギーナンと乳酸カルシウムとの組み合わせによるものに変更して各バッター液を調製した。このバッター液は、80度程度に温めたお湯に、増粘剤(たかい食品社製GM-600F)とカッパ型カラギーナン(三晶株式会社製 商品名CSW-2)と乳酸カルシウムとを添加してミキサーで攪拌した後、油を混ぜ合わせてさらに攪拌して2時間冷却して粘度を向上させた後、再度、ミキサーで攪拌し、その後、冷蔵庫の冷蔵室で2時間冷却して調製した。その後、上記実施例1と同様に冷凍餃子を調製し、調理した。バッター液の各状態での粘度と使用状態と調理完成した焼き餃子の状態とを考察して評価を行った。結果を表6に示す。
【0051】
【表6】
【0052】
上記表6のカラギーナンと乳酸カルシウムとの組み合わせを、表7に示すように、ペクチン(三晶株式会社製 商品名Explorer60CS)のみによるものに変更してバッター液を調製した。その後、上記実施例1と同様に冷凍餃子を調製し、調理した。バッター液の使用状態と調理完成した焼き餃子の状態とを考察して評価を行った。結果を表7に示す。
【0053】
【表7】
【0054】
上記表6のカラギーナンと乳酸カルシウムとの組み合わせを、表8に示すように、ペクチン(三晶株式会社製 商品名Explorer60CS)と乳酸カルシウムとの組み合わせによるものに変更してバッター液を調製した。その後、上記実施例1と同様に冷凍餃子を調製し、調理した。バッター液の各状態での粘度と使用状態と調理完成した焼き餃子の状態とを考察して評価を行った。結果を表8に示す。
【0055】
【表8】
【0056】
表6ないし表8の結果から、増粘安定剤としては、動物性のゼラチンだけでなく、植物性のカラギーナンやペクチンであっても使用できることが確認できた。また、ペクチンのみを用いた場合には、カラギーナンと乳酸カルシウムとを用いた場合と比較すると、ペクチンの使用量が少ない実施例16~19では、時間の経過とともにバッター液の粘度が低下する傾向にあったが(粘度のデータは記載なし)、これについても実施例20~22に示すように、ペクチンと乳酸カルシウムとの併用に変更することで、粘度低下を作業可能範囲内の低下に抑えて長時間の作業に好適な粘度に調整することができることも確認できた。したがって、動物性原料を使用できないハラール認定を受けた冷凍餃子を作る場合や、ベジタリアンやビーガン向けの冷凍餃子を作る場合にもこれらのバッター液を使用できることが確認できた。
【0057】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。