(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071142
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】膜分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 61/36 20060101AFI20240517BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20240517BHJP
B01D 63/06 20060101ALI20240517BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240517BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
B01D61/36
B01D71/02
B01D63/06
B01D69/10
B01D69/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181935
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】599016431
【氏名又は名称】学校法人 芝浦工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩平
(72)【発明者】
【氏名】平塚 裕一
(72)【発明者】
【氏名】門田 洋一
(72)【発明者】
【氏名】野村 幹弘
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA07
4D006GA27
4D006HA77
4D006KA02
4D006KA31
4D006KA52
4D006KA53
4D006KA54
4D006KA55
4D006KA57
4D006KA72
4D006KB13
4D006KB18
4D006KB21
4D006KB30
4D006MA02
4D006MA10
4D006MA34
4D006MB10
4D006MC03
4D006MC18
4D006MC54
4D006PA01
4D006PB03
4D006PB08
4D006PC80
(57)【要約】
【課題】膜蒸留を利用した分離膜の耐久性と処理能力を高め、浄化水の回収率を向上させることができる膜分離装置を提供する。
【解決手段】膜分離装置1は、被処理水d0が供給される供給流路11と、浄化水cが回収される回収流路12との間に、膜蒸留部10を備える。膜蒸留部10は、筒状の外皮21内が、軸方向xに延びる多数のセル22に区画されたセラミック構造体2からなり、セラミック構造体2において、供給流路11に連通して第1流路41となるセル22と、回収流路に連通して第2流路42となるセル22とが、疎水性多孔質壁3からなるセル壁を介して隣接配置されており、疎水性多孔質壁3において、第1流路41に面する側から、第2流路42に面する側へ、蒸気圧差又は圧力差により水蒸気vを透過させて、被処理水d0を浄化水cと濃縮水dとに分離するよう構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水(d0)が供給される供給流路(11)と、浄化水(c)が回収される回収流路(12)との間に、膜蒸留部(10)を備える膜分離装置(1)であって、
上記膜蒸留部は、筒状の外皮(21)内が、軸方向(x)に延びる多数のセル(22)に区画されたセラミック構造体(2)からなり、
上記セラミック構造体において、上記供給流路に連通して第1流路(41)となる上記セルと、上記回収流路に連通して第2流路(42)となる上記セルとが、疎水性多孔質壁(3)からなるセル壁を介して隣接配置されており、
上記疎水性多孔質壁において、上記第1流路に面する側から、上記第2流路に面する側へ、蒸気圧差又は圧力差により水蒸気(v)を透過させて、上記被処理水を上記浄化水と濃縮水(d)とに分離するよう構成されている、膜分離装置。
【請求項2】
上記疎水性多孔質壁は、多数の細孔(32)を有するセラミック基材(31)と、上記セラミック基材の表面を被覆する疎水膜(33)とを有する、請求項1に記載の膜分離装置。
【請求項3】
上記セラミック構造体は、上記第2流路となる上記セルに対して、上記第1流路となる上記セルと反対側に隣接する上記セルを、冷媒流路(13)に連通する第3流路(43)としており、上記疎水性多孔質壁は、上記第1流路に面する側と、上記第2流路に面する側との温度差により、蒸気圧差を発現させて水蒸気を透過させる、請求項2に記載の膜分離装置。
【請求項4】
上記冷媒流路の冷媒は、上記供給流路から上記第1流路へ供給される前の上記被処理水である、請求項3に記載の膜分離装置。
【請求項5】
上記第1流路となる上記セルを、両端が開口する開放セルとし、上記セラミック構造体の一方の端面において上記供給流路と接続して、上記被処理水を上記セラミック構造体の上記一方の端面側から他方の端面側へ向けて供給し、
上記第2流路及び上記第3流路となる上記セルを、両端が閉鎖された栓詰めセルとし、上記第2流路と上記回収流路とを、上記セラミック構造体の側面に開口する第1開口部(24)を介して接続すると共に、上記第3流路と上記冷媒流路とを、上記セラミック構造体の側面に開口する第2開口部(25)を介して接続している、請求項3又は4に記載の膜分離装置。
【請求項6】
上記セルは上記軸方向から見た形状が四角形状である四角形セルであり、上記軸方向から見て四角形セルの一辺と平行な第1の方向(y)に、上記第1流路となる複数の上記セルが互いに隣接して整列しており、
上記第1の方向に、上記第2流路となる複数の上記セルが互いに隣接して整列しており、
上記第1の方向に、上記第3流路となる複数の上記セルが互いに隣接して整列しており、
上記軸方向から見て、上記第1の方向と直交する第2の方向(z)には、上記第1流路となる上記セルの列を挟んで両側に、上記第2流路となる上記セルの列が配置され、それら両側の上記セルの列の外側に、上記第3流路となる上記セルの列が配置されると共に、
上記第2流路となる上記セルの列、及び、上記第3流路となる上記セルの列において、隣り合う上記セルは、セル壁を貫通する連通口(23、26)を介して、互いに連通している、請求項3又は4に記載の膜分離装置。
【請求項7】
上記第1流路から上記濃縮水が導出される導出流路(11a)を、上記供給流路と接続して、上記被処理水を循環させる循環流路(11b)を、さらに有する、請求項1又は2に記載の膜分離装置。
【請求項8】
上記膜蒸留部は、上記回収流路に設けられた真空ポンプ(P4)により、上記第2流路となる上記セルが減圧されており、上記疎水性多孔質壁は、上記第1流路に面する側と、上記第2流路に面する側との圧力差により、水蒸気を透過させる、請求項1又は2に記載の膜分離装置。
【請求項9】
上記セラミック構造体は、ケーシング(6)に収容されており、
上記ケーシング内は、上記供給流路に連通する常圧室(63)と、上記回収流路に連通する減圧室(64)とに区画されると共に、上記第1流路となる上記セルは、少なくとも上記常圧室に連通し、上記第2流路となる上記セルは、上記減圧室のみに連通するように配置されている、請求項8に記載の膜分離装置。
【請求項10】
上記常圧室は、上記減圧室に対して鉛直方向の上方に配置されており、
上記セラミック構造体は、上記第1流路となる上記セルを、上記常圧室に面する端面及び上記減圧室に面する端面に開口する開放セルとし、上記第2流路となる上記セルを、上記常圧室に面する端面が閉鎖され上記減圧室に面する端面が開口する片栓詰めセルとすると共に、上記常圧室に面する端面において、開口部と閉鎖部が互い違いとなるように、上記第1流路となる上記セルと上記第2流路となる上記セルとを互いに隣接して配置している、請求項9に記載の膜分離装置。
【請求項11】
上記減圧室には、底面側に上記濃縮水が導出される導出流路(11a)が接続され、上記導出流路よりも鉛直方向の上方に、上記回収流路が接続されると共に、上記導出流路を上記供給流路と接続して、上記被処理水を循環させる循環流路(11b)を、さらに有する、請求項10に記載の膜分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場排水等の被処理水を複数の工程により順次処理し、浄化水を回収して再利用する水処理システムが提案されている。水処理システムには、一般に、逆浸透法を用いた逆浸透膜分離装置が設けられ、前処理した被処理水側の圧力を浸透圧よりも高くすることで、被処理水中の水を、逆浸透膜に透過させて分離している。また、水の有効利用と環境保全の観点から、液体排出をゼロにするZLD(すなわち、Zero Liquid Discharge)の導入が進められている。その場合には、最終段において、排水を蒸発させて回収する蒸留工程が設けられることになり、消費エネルギが高くなる課題がある。
【0003】
蒸留工程の負担低減のためには、前段の膜分離工程において、排水の高濃縮化を図ることが求められる。ただし、逆浸透法では、被処理水が高濃度になると、逆浸透膜に加わる圧力をより高くする必要があり、逆浸透膜の耐圧に限界がある。そこで、膜分離工程において、異なる方式を併用して、被処理水を高濃度化することが考えられる。例えば、熱駆動方式で消費エネルギが比較的低い膜蒸留法を用いることが検討されており、実用化に際し、被処理水の浄化効率を高めることが重要となる。
【0004】
浄化効率を高めるには、分離膜の処理面積を増加させることが有効であり、そのための手段として、例えば、平膜をらせん状に巻き回して多層構造とした装置や、平膜を重ねて平板状の積層構造とした装置が知られている。前者としては、例えば、特許文献1に記載されるように、細長い膜箔を所定長で折り返しながら、支持管の周りに巻き取って円筒形装置としたものがあり、2つの箔層の間にスペーサが配置されて流路が形成される。具体的には、スペーサは樹脂製のメッシュ状層を備え、その両端を管状支持体で保持することにより、膜箔に張力を与え、流路全体に流体が流れるように構成される。後者としては、例えば、平膜の周囲をフレームで保持したものを積層して、層間に流路を形成した装置があり、それぞれ巻き数や積層数に応じた処理能力を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される装置は、所定のらせん形に加工するために、一般に、加工性の良好な樹脂材料が用いられる。樹脂材料は、被処理水となる排水が、酸やアルカリ等の薬液を含む場合には、薬液との化学反応により劣化するおそれがある。また、柔らかい薄膜を加工して構成されることから、流体の流れ等によって変形が生じやすくなり、局所ストレスが発生したり、安定した処理ができなくなったりする懸念がある。その結果、耐久性が低下し、または、処理能力が十分発揮できずに、浄化効率が低下する。あるいは、耐久性や処理能力を高めようとして、装置構成が複雑となったり大型化したりする。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、膜蒸留を利用した分離膜の耐久性と処理能力を高め、浄化水の回収率を向上させることができる膜分離装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、
被処理水(d0)が供給される供給流路(11)と、上記被処理水から分離される浄化水(c)が回収される回収流路(12)との間に、膜蒸留部(10)を備える膜分離装置(1)であって、
上記膜蒸留部は、筒状の外皮(21)内が、軸方向(x)に延びる多数のセル(22)に区画されたセラミック構造体(2)からなり、
上記セラミック構造体において、上記供給流路に連通して第1流路(41)となる上記セルと、上記回収流路に連通して第2流路(42)となる上記セルとが、疎水性多孔質壁(3)からなるセル壁を介して隣接配置されており、上記疎水性多孔質壁において、上記第1流路に面する側から、上記第2流路に面する側へ、蒸気圧差又は圧力差により水蒸気(v)を透過させて、上記被処理水を上記浄化水と濃縮水(d)とに分離するよう構成されている、膜分離装置にある。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の膜分離装置において、膜蒸留部の第1流路へ被処理水が供給されると、隣接する第2流路との間の疎水性多孔質壁を、蒸気圧差又は圧力差により水蒸気が透過して、第2流路から浄化水として回収される。水蒸気が分離された被処理水は、濃縮水として回収される。このとき、膜蒸留部の第1、第2流路及び疎水性多孔質壁が、セラミック構造体にて構成されているので、耐圧強度が向上し、被処理水に含まれる薬液等との反応による劣化のおそれも小さい。また、セラミック構造体は、多数のセルの内部空間を、第1、第2流路としており、それらを区画する疎水性多孔質壁が分離膜となるので、蒸留面積が増加する。これらにより、膜蒸留部の耐久性が向上し、また、被処理水の処理能力が向上して、浄化効率を高めることが可能になる。
【0010】
以上のごとく、上記態様によれば、膜蒸留を利用した分離膜の耐久性と処理能力を高め、浄化水の回収率を向上させることができる膜分離装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1における、膜分離装置を構成する膜蒸留部の正面図及び断面図。
【
図2】実施形態1における、膜分離装置を構成する膜蒸留部の斜視図。
【
図3】実施形態1における、膜蒸留部の流路構成の説明図及びその部分拡大図。
【
図4】実施形態1における、膜分離装置の概略構成図。
【
図5】実施形態1における、膜分離装置を適用した水処理システムの説明図。
【
図6】実施形態1における、膜分離装置の他の構成例を示す概略図。
【
図7】実施形態1における、膜蒸留部のセル形状の他の例を示す模式図。
【
図8】実施形態1における、膜蒸留部のスリット位置の他の例を示す模式図。
【
図9】実施形態2における、膜蒸留部の正面図及び断面図。
【
図10】
図9のA部拡大断面図及びそのX-X線矢視断面図。
【
図11】実施形態2における、膜分離装置の概略構成図。
【
図12】
図9のB部拡大断面図及びその部分拡大図。
【
図13】
図10のY-Y線矢視断面図及びZ-Z線矢視断面図。
【
図16】実施形態2における、膜蒸留部の被処理水の流れを説明するための図。
【
図17】実施形態2における、膜蒸留部の冷媒の流れを説明するための図。
【
図19】実施形態3における、膜分離装置の概略構成図。
【
図20】実施形態3における、膜蒸留部の流路構成の説明図及びその部分拡大図。
【
図21】実施形態3における、膜蒸留部の端面の栓詰め構造を示す概略図。
【
図22】実施形態4における、膜分離装置の概略構成図。
【
図23】実施形態4における、膜蒸留部の流路構成の説明図及びその部分拡大図。
【
図24】実施形態4における、膜蒸留部の端面の栓詰め構造を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
膜分離装置に係る実施形態について、
図1~
図8を参照して説明する。
図2に示すように、本形態の膜分離装置1は、膜分離法の1つである膜蒸留法に基づくもので、被処理水d0が供給される供給流路11と、被処理水d0から分離される浄化水cが回収される回収流路12と、それらの間に設けられる膜蒸留部10とを備える。膜蒸留部10は、分離膜及び流路を構成するセラミック構造体2からなる。セラミック構造体2は、筒状の外皮21内が、軸方向xに延びる多数のセル22に区画されており、各セル22の内部空間は、被処理水d0又は浄化水c等の流体が流通する流路となっている。
【0013】
図1に示すように、セラミック構造体2において、多数のセル22は、供給流路11に連通する第1流路41と、回収流路12に連通する第2流路42とを構成する。第1流路41となるセル22と、第2流路42となるセル22とは、セル壁となる疎水性多孔質壁3を介して、隣接して配置されている。疎水性多孔質壁3は、膜蒸留のためのセラミック分離膜として機能すると共に、多数のセル22を区画している。セラミック構造体2において、多数のセル22は、外皮21の近傍を除いて、セル壁となる疎水性多孔質壁3に囲まれて、同じ断面形状を有している。
【0014】
図2、
図3に示すように、疎水性多孔質壁3は、第1流路41に面する側から、第2流路42に面する側へ、蒸気圧差により、水蒸気vを透過させて、被処理水d0を浄化水cと濃縮水dとに分離するよう構成されている。疎水性多孔質壁3は、好適には、多数の細孔32を有するセラミック基材31と、セラミック基材31の表面を被覆する疎水膜33とを有し、液体を透過させずに、水蒸気vを透過させるよう構成されている。セラミック基材31は、セラミック構造体2の基材を構成するものであり、その形状を維持しつつ水蒸気vの透過を妨げない、所定の多孔質に構成される。多数の細孔32は、隣接するセル22間を連通して、透過する水蒸気vの通路を形成する。
【0015】
このように、膜蒸留部10の第1、第2流路41、42及び疎水性多孔質壁3が、セラミック構造体2にて構成されているので、耐圧強度が向上し、薬液等との反応による劣化のおそれも小さい。また、セラミック構造体2の多数のセル22の内部を流路とし、それらを区画する疎水性多孔質壁3が分離膜となるので、蒸留面積が増加し、耐久性及び処理能力が向上する。
【0016】
疎水膜33は、少なくとも第1流路41に面するセラミック基材31の表面を被覆して、セラミック基材31に疎水性を付与し、液体状の水(以下、液水と称する)が細孔32内に浸入することを阻止する。好適には、セラミック基材31を構成するセラミック粒子表面のほぼ全体が、疎水膜33にて被覆されることにより、セラミック基材31の細孔32にて形成される水蒸気vの通路の疎水性が向上する。
【0017】
セラミック基材31は、例えば、アルミナ、シリカ、SiC、ジルコニア、コージェライト等のセラミック材料によって構成することができる。疎水膜33は、疎水性材料、好適には、炭化水素系又はフッ素系の撥水性材料によって構成することができる。疎水性多孔質壁3は、セラミック基材31となるセラミック材料の孔は微細であり、かつ、その表面に接触角が大きい疎水性材料の疎水膜33が形成されるため、液体が侵入するために必要な圧力が高くなる。そのため、疎水性多孔質壁3の内部へ、被処理水d0が液体の状態で浸み込み、反対側へ透過することはない。
【0018】
好適には、
図1において、第2流路42となるセル22に対して、第1流路41となるセル22とは反対側に隣接するセル22にて、被処理水d0よりも低温の冷媒rが流通する第3流路43を設けることができる。これにより、第1流路41と第2流路42との間に温度差が付与され、両流路に面する疎水性多孔質壁3の両側に蒸気圧差が生じる。そして、この蒸気圧差によって、冷媒rよりも高温の被処理水d0から蒸発した水蒸気vが、疎水性多孔質壁3を透過する(
図3の左図参照)。水蒸気vは、第2流路42において、第3流路43に隣接する壁面に到達すると、低温の冷媒rによって冷却された壁面で冷やされ、凝縮して液水wとなる。
【0019】
より詳細には、第1流路41内の高温の被処理水d0が、第1流路41に隣接する第2流路42内の空気を温めると、その中に多くの水蒸気vが存在することとなる。第3流路43内の冷媒rが、第3流路43に隣接する第2流路42内の空気を冷やすことで、冷やされた空気温度における飽和蒸気量を超えた水蒸気vが凝縮して液水wとなる。
【0020】
これにより、被処理水d0は、第1流路41を通過する間に、水蒸気vが分離されて、より濃縮された濃縮水dとなる。第2流路42の液水wは、壁面を伝って移動し回収される。このように、被処理水d0が流通する第1流路41と、冷媒rが流通する第3流路43との間に、エアギャップとなる第2流路42が配置される方式は、エアギャップ膜蒸留法(AGMD)と称される。
【0021】
具体的には、セラミック構造体2において、例えば、第1流路41又は第3流路43となるセル22は、両端が開口している開放セルであり、第2流路42となるセル22は、両端が閉鎖された栓詰めセルとして構成することができる。セラミック構造体2の一方の端面において、第1流路41には、一方の端部開口に供給流路11が接続される。供給流路11から供給される被処理水d0は、セラミック構造体2の一方の端面側から他方の端面側へ向けて流れ、第1流路41の他方の端部開口から導出流路11aへ、濃縮された被処理水d0(すなわち、濃縮水d)が導出される。第3流路43は、例えば、第1流路41と流れ方向を逆方向としており、被処理水d0の導出側に設けられる一方の端部開口を、冷媒流路13の導入側として、冷媒流路13の導出側が接続される、他方の端部開口へ向けて、冷媒rが供給される構成とすることができる。
【0022】
より具体的には、セラミック構造体2のセル22は、例えば、軸方向xから見た形状が四角形状である四角形セルとすることができ、四角形の隣り合う二辺に対応する方向(例えば、
図1中に示す水平方向y及び垂直方向z)において、互いに平行に整列して配置されている。具体的には、軸方向xから見て四角形セルの一辺と平行な第1の方向(ここでは、水平方向y)において、第1流路41となる複数のセル22は、互いに隣接して整列している。なお、ここでいう「水平」は便宜的な表現であり、必ずしも
図1における水平方向yを水平にした状態で、セラミック構造体2が用いられることを示すものではない。
【0023】
また、第1の方向と直交する第2の方向(ここでは、垂直方向z)において、第1流路41又は第3流路43となるセル22は、第2流路42となるセル22を挟んで、交互に配置されており、第2流路42となるセル22のみ、両端が栓詰めされている。なお、水平方向yにおいて、第2流路42となる複数のセル22は、互いに隣接して整列しており、同様に、第3流路43となる複数のセル22も、互いに隣接して整列している。
【0024】
第2流路42となるセル22は、例えば、隣り合う他のセル22との間のセル壁に形成された、連通口としてのスリット23を介して、当該他のセル22と連通している。水平方向yに隣接する複数のセル22が、言い換えれば、第1流路41と第3流路43との間に挟まれる各列のセル22同士が、互いにスリット23を介して連通する構成とすることができる。スリット23は、具体的には、各列において隣り合うセル22間を、凝縮水が流通可能となるように、セル壁を貫通して設けられる。好適には、セル壁の強度を維持可能な適度な大きさに形成される。
【0025】
第2流路42のスリット23は、各列の複数のセル22について、それぞれ軸方向xの同等位置に、同等幅及び長さで設けられ、凝縮した液水wを、セラミック構造体2の外部へ導出するための流路となる。好適には、各セル22の軸方向xにおいて、低温の冷媒rの供給側(すなわち、被処理水d0の導出側)の端部に近い位置において、セル壁を切り欠いて、軸方向xに延びるスリット23を形成することができる。より低温となる供給側の冷媒rと接する位置に、スリット23が配置されることにより、水蒸気vを効率よく凝縮させて回収することができる。
【0026】
図2において、セラミック構造体2の外周側面となる外皮21には、各列のスリット23に対応する位置に略同等形状のスリットからなる第1開口部24が設けられる。第2流路42において凝縮した液水wは、各列のスリット23を経て第1開口部24から導出されて、浄化水cとして回収流路12へ回収される。液水wの凝縮熱は、第3流路43を通過する冷媒rが受け取り、ある程度温められて、セラミック構造体2の外部へ導出される。
【0027】
図4に示すように、膜分離装置1は、好適には、被処理水d0を加熱する加熱部5を、さらに有する。加熱部5は、第3流路43を通過後かつ第1流路41に導入前の被処理水d0を加熱するように配置されている。これにより、加熱された被処理水d0を供給流路11へ供給して、冷媒rとの温度差を大きくすることができる。さらに、加熱前の被処理水d0を、冷媒rとして使用することができる。図中には、膜蒸留部10に設けられる流路への流体の流れを模式的に示しており、被処理水d0は、まず、冷媒流路13に供給され、膜蒸留部10の第3流路43において、常温の冷媒rとして使用された後に、加熱部5を経由して、供給流路11へ供給される。なお、図中に白抜矢印で示すように、膜蒸留部10において、熱移動が生じ、水蒸気vが凝縮して液水wとなる際の凝縮熱にて、冷媒rが温められる。
【0028】
第3流路43の導入側において、冷媒流路13には、バルブV1及びポンプP1が配置されて、バルブV1により流量を調整しながら、被処理水d0を膜蒸留部10へ送出している。前述したように、膜蒸留部10において、被処理水d0が流通する第1流路41と、冷媒rが流れる第3流路43とは、第2流路42を挟んで対向すると共に、流れ方向は、逆方向となっている。第2流路42に接続される回収流路12には、浄化水cを送り出すポンプP2が設けられる。
【0029】
加熱部5は、冷媒流路13の導出側と、供給流路11との間に設けられて、被処理水d0を所望の温度となるように、例えば、40℃以上に加熱する。さらに好ましくは、被処理水d0を、60℃以上に加熱する。これにより、第1流路41と第2流路42との間に、膜蒸留の発現に必要な所望の温度差が付与される。加熱部5の具体的な構成例については、後述する。このようにすると、膜分離装置1に供給される被処理水d0を利用して、エアギャップ膜蒸留方式の膜蒸留部10を構成し、効率よく浄化水cを回収できる。ここで、所望の温度差とは、第2流路42内の温められた空気が冷やされることにより、空気内の水蒸気vが凝縮して所望の量の液水wが得られる温度差である。
【0030】
このような膜分離装置1は、
図5に示す水処理システム100に適用されて、膜分離工程に用いられるセラミック膜分離装置300を構成することができる。膜分離工程には、セラミック膜分離装置300の前段に、逆浸透膜分離装置200が設けられる。水処理システム100は、例えば、工場Fから排出される工場排水等を浄化処理するシステムとして構成されるものであり、セラミック膜分離装置300には、逆浸透膜分離装置200で処理された1次濃縮水d1が、被処理水d0として供給される。なお、工場排水に限らず、工場Fにおける各種工程で使用される洗浄液の分離・回収のためのシステムや、さらには、海水淡水化のためのシステム等に適用することもできる。
【0031】
工場排水等の被処理水d0は、前処理装置101にて前処理された後に、前処理水dpとして逆浸透膜分離装置200へ供給され、第1浄化水c1が回収されると共に、分離された1次濃縮水d1が、セラミック膜分離装置300に供給される。ここでは、逆浸透膜分離装置200とセラミック膜分離装置300との間に、加熱部5を配置しているが、便宜的なものであり、前述した
図4のように、セラミック膜分離装置300の内部に組み込むことができる。いずれの場合も、加熱された1次濃縮水d1が、被処理水d0として膜蒸留部10に供給され、膜蒸留部10において、第2浄化水c2が回収される。被処理水d0から第2浄化水c2が分離された濃縮水dは、2次濃縮水d2として、後段の蒸発装置400及び晶析装置500に順次送られる。
【0032】
前処理装置101は、被処理水d0中の多種の含有物質を除去する装置であり、例えば、工場排水の場合には、油分分離、生物処理、凝集処理、分離膜等の種々の処理を、適宜行うことができる。工場排水中の含有物質としては、例えば、油、高COD物質、重金属、フッ化物、リン酸化合物、Cl、SO4、Na、Mg、CaCO3(炭酸カルシウム)等がある。なお、高COD物質は、化学的酸素要求量(COD)が高い物質をいう。前処理装置101によって工場排水から含有物質を一定程度以上除去した後の前処理水dpが、逆浸透膜分離装置200に供給される。この前処理水dpには、主として塩分が含有されており、この塩分を、逆浸透膜分離装置200以降の工程において除去する。
【0033】
逆浸透膜分離装置200は、例えば、酢酸セルロース、芳香族ポリアミド等の有機膜を、逆浸透膜として備える。逆浸透膜分離装置200においては、前処理水dp側であって1次濃縮水d1側の圧力を、浸透圧よりも高くするように加圧することで、前処理水dp中の水を、逆浸透膜に透過させる。これにより、第1浄化水c1を得る。ただし、1次濃縮水d1の濃度が高くなると、浸透圧が高くなるため、逆浸透膜の耐圧強度等を考慮すると、1次濃縮水d1の濃縮には限界がある。それゆえ、1次濃縮水d1における塩分濃度は、一定程度(例えば約8%)までしか高められない。
【0034】
そこで、水処理システム100において、逆浸透膜分離装置200の後段に、セラミック膜分離装置300として、本形態の膜分離装置1を設けている。前述したように、膜分離装置1は、セラミック構造体2を膜蒸留部10に用いて、1次濃縮水d1から蒸発した水蒸気vを疎水性多孔質壁3に透過させ、第2浄化水c2を得ている。セラミック構造体2のセル22内を流路とし、セル22を区画するセル壁を疎水性多孔質壁3とすることにより、耐圧強度に優れると共に、処理面積が大きい膜分離装置とすることができる。
【0035】
これにより、2次濃縮水d2の濃度を高めて、後段の蒸発工程の負担を低減することができる。蒸発装置400は、加熱又は減圧することによって、あるいは加熱と減圧とを組み合わせることによって、2次濃縮水d2を蒸発させ、蒸留水c3として回収する。晶析装置500は、蒸留水c3が蒸発した後に残った3次濃縮水d3を、加熱することによって蒸発させ、蒸留水c4として回収する。
【0036】
水処理システム100の各装置において取り出された第1浄化水c1、第2浄化水c2、蒸留水c3、蒸留水c4は、回収されて再利用することができる。なお、晶析装置500では、蒸留水c4が蒸発した後に、不純物d4の結晶が残る。不純物d4としては種々の物質が残り得るので、その種類によって、有価物として利用したり、産業廃棄物として廃棄したりすることができる。
【0037】
図6に変形例として示すように、好適には、上記
図4に示した膜分離装置1において、膜蒸留部10から導出される濃縮水d(2次濃縮水d2)を循環させる、循環式のエアギャップ膜蒸留方式の装置とすることができる。具体的には、被処理水d0(1次濃縮水d1)が供給される流路のバルブV1とポンプP1との間に、被処理水d0を貯留するタンクT1と、被処理水d0を所定の低温の冷媒rとするためのチラーC1とが設けられる。タンクT1には、導出流路11aが接続され、被処理水d0の循環流路11bを形成する。1次濃縮水d1と2次濃縮水d2を貯留するタンクを別々に設けることもできる。
【0038】
これにより、被処理水d0を膜蒸留部10へ送る前に、チラーC1にて常温より低い一定温度に維持し、より低温の冷媒rとして冷媒流路13から第3流路43へ送り出すことができる。冷媒rは、膜蒸留部10において、第2流路42との間のセル壁を冷却し、水蒸気vが凝縮する際の凝縮熱を受け取り、さらに、加熱部5において、所望の温度となるように温められる。加熱部5は、例えば、熱交換器51や電気式ヒータ等の加熱器52であり、いずれか一方又は両方が設けられる。熱交換器51において、冷媒rと熱交換を行う熱交換媒体には、例えば、水処理システム100又は外部の装置にて発生する廃熱を含む流体が用いられる。そして、温められた冷媒rは再び第1流路41に供給され、被処理水d0として機能する。
【0039】
第2流路42で凝縮した液水wは、浄化水c(2次浄化水c2)として回収され、被処理水d0は、凝縮した液水wの分だけ濃縮されて、濃縮水d(2次濃縮水d2)として、タンクTへ戻される。このようにして、被処理水d0を濃縮して膜蒸留部10へ循環させることができ、これを繰り返すことで、さらに濃縮された濃縮水dとすることができ、浄化水cの回収効率を高めることができる。また、冷媒rとして第3流路43へ循環させる際に、チラーC1で冷却することにより、加熱部5を通過して、第1流路41へ供給される被処理水d0との温度差をより大きくして、浄化水cの回収効率を高めることができる。
【0040】
このように、本形態の膜分離装置1は、エアギャップ膜蒸留方式の装置として構成され、疎水性多孔質壁3を水蒸気vが通過する際の駆動力として、温水側の蒸気圧と冷水側の蒸気圧との差を利用する。すなわち、エアギャップとなる第2流路42の両側に、高温の被処理水d0が流れる第1流路41と、冷媒r(低温の被処理水d0)が流れる第3流路43とを配置して、疎水性多孔質壁3の第1流路41側の界面で生じる水蒸気vを、第2流路42側へ透過させて、膜蒸留を行う。これにより、安定した処理を継続して行うことができ、浄化効率を向上させることができる。
【0041】
また、本形態では、被処理水d0を冷却して冷媒rとして機能させ、さらに冷媒rを加熱して被処理水d0として機能させる循環式の膜分離装置1としている。これにより、被処理水d0と別の冷媒rを用意する必要がないという効果以外にも、以下の効果を奏する。すなわち、被処理水d0は、第1流路41を通過するにつれて、温度が低下するため、その被処理水d0を冷媒rとして機能させるようにするために、被処理水d0に追加して与える冷却エネルギを少なくできる。さらに冷媒rは、第3流路43を通過するにつれて、潜熱で温度がある程度上昇しているため、その冷媒rを被処理水d0として機能させるようにするために、冷媒rに追加して与える加熱エネルギを少なくできる。これにより、浄化水cを回収する水処理システム100における消費エネルギを低減することができる。
【0042】
図7に示すように、膜蒸留部10に形成される第1~第3流路41~43の流路形状は、四角形に限らず、例えば、六角形とすることもできる。その場合にも、第1流路41と第2流路42との間の疎水性多孔質壁3において、膜蒸留により水蒸気v透過させて回収することができる。このように、膜蒸留部10の流路形状、すなわち、セラミック構造体2のセル22の断面形状は、四角形、六角形等の多角形、円形その他、任意の断面形状とすることができる。
【0043】
また、膜蒸留部10の第2流路42に形成されるスリット23の配置も、特に制限されるものではなく、例えば、
図8に示すように、スリット23を、軸方向xの複数個所に設けてもよい。ここでは、一例として、軸方向xの一方の端部側の2個所を切り欠いて、同等形状のスリット23を配置した例を示している。第3流路43を挟んで、隣り合う第2流路42についても、同等位置にスリット23が配置される。なお、連通口としては、切り欠き状のスリット23に限らず、例えば、スリット23と同等の開口面積を有する長方形穴、楕円形穴、円形穴等の任意形状の貫通穴としてもよい。このように、連通口の形状や個数は、隣り合うセル22間を連通して、所望の開口面積又は流量が確保されるように、任意に設定することができる。その場合には、外皮21に設けられる第1開口部24も同等形状とすることができる。
【0044】
スリット23を介して互いに連通する各列の複数の第2流路42については、軸方向xにおけるスリット23は、同等位置に設けられる。このようにすると、スリット23の配置が偏らず、あるいは、軸方向xに配置されるスリット23の数を増加させて、セラミック構造体2の外周側面に設けられる第1開口部24から、効率よく浄化水cを回収することができる。なお、スリット23は、一対の第1開口部24の間に貫通流路が形成されるよう配置してもよいし、流路が貫通しない配置でもよい。後者の場合には、一対の第1開口部24の一方と連通する2つの流路が形成されるように、スリット23が配置される。例えば、水平方向yの中間位置のセル壁の1つにスリット23を設けない構成とすると、中間位置を挟んで両側へ、第2流路42で凝縮した液水wが流れる2つの流路となる。この2つの流路は、必ずしも一直線上に配置されている必要はなく、軸方向xにおいて、異なる位置にあってもよい。その場合には、スリット23を設けないセル壁を、中間位置に設けず、例えば、2つの流路が軸方向xに重なるように配置してもよい。このように、連通口及び第1開口部24にて形成される流路は、浄化水cを回収流路12へ回収できるように構成されていればよい。
【0045】
(実施形態2)
本形態は、
図9~
図18に示すごとく、膜分離装置1の詳細構成例である。本形態においても、膜分離装置1は、エアギャップ膜蒸留法を利用した膜蒸留部10を備えており、前述した
図5の水処理システム100におけるセラミック膜分離装置300として、好適である。ここでは、前述した
図6の循環式の装置構成へ適用した例として、以下、相違点を中心に説明する。その他の膜分離装置1の基本構成は、実施形態1と同様である。
なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0046】
図9、
図10に示すように、本形態において、膜蒸留部10を構成するセラミック構造体2は、内部に形成される流路のうち第1流路41のみが、両端が開口する開放セルにて構成される。第2流路42及び第3流路43は、両端が閉鎖された栓詰めセルにて構成される。セラミック構造体2の側面には、第2流路42に連通する第1開口部24に加えて、第3流路43に連通する第2開口部25が設けられる。セラミック構造体2の内部には、第2流路42となるセル22のスリット23に加えて、第3流路43となるセル22に、複数のスリット26が設けられる。
【0047】
図11に示すように、膜蒸留部10を構成するセラミック構造体2の全体が、ケーシング6に収容されている。ケーシング6は一端閉鎖の筒状体である本体部61と、本体部61の開口側外周に覆着固定される蓋状の大径部62とからなる。大径部62の内部には、セラミック構造体2の一方の端面側にテーパ状の流路14が形成されている。テーパ状の流路14の小径側には、供給流路11となる配管が接続される。流路14の大径側は、セラミック構造体2の外径と概略一致する大きさを有し、流路14を介して、セラミック構造体2内部の多数の第1流路41(図略)と、供給流路11とが連通する。流路14との接続端部外周には、シール部材S1が装着されて液密封止される。
【0048】
セラミック構造体2の外周には、本体部61が取り付けられる。本体部61の閉鎖端面には、中央部を貫通する開口部にて、第1流路41の導出側に連通する導出流路11aが設けられる。本体部61には、閉鎖側の端部外周に開口し、第1開口部24を介して第2流路42(図略)に連通する流路15が設けられ、図示しない回収流路12と接続される。これにより、第2流路42の第1開口部24から導出される浄化水cは、セラミック構造体2の外周面と本体部61の内周面との間の空間部を介して、流路15から回収流路12へ回収される。
【0049】
また、本体部61の筒部外周には、対向位置に、冷媒流路13となる一対の配管が取り付けられ、その一方から他方へ向けて冷媒rが供給される。筒部内周面と、セラミック構造体2の外周面との間には、第3流路43の第2開口部25に連通する空間部が形成され、この空間部に供給される冷媒rが、第3流路43を流通して、反対側から導出される。なお、第3流路43と連通する空間部と、第1流路41と連通する空間部との間は、セラミック構造体2の外周に装着されるシール部材S2によって、液密的に区画されている。また、セラミック構造体2は、導出流路11a側の端面外周にもシール部材S3が装着されて、液密封止されている。
【0050】
図10において、具体的には、セラミック構造体2の端面に、3列おきに第1流路41となる開放セルが配置されており、第1流路41を挟んでその両側に、第2流路42となる栓詰めセルが配置されている。第2流路42を挟んで、第1流路41と反対側には、第3流路43となる栓詰めセルが配置されている。3つの流路の位置関係は、例えば、
図12に示すようになっている。また、第2流路42には、軸方向xの一方の端部側に、軸方向xに延びるスリット23が形成され、隣接する第2流路42が、スリット23を介して互いに連通している(例えば、
図13の右図参照)。さらに、第1開口部24及び空間部を介して、回収流路12に接続される流路15に連通する。
【0051】
また、第3流路43には、軸方向xの複数個所に、軸方向xに延びるスリット26が均等配置され、対向する位置に第2開口部25が配置される(例えば、
図9では、5個所)。これにより、同じ列の第3流路43が、スリット26を介して互いに連通すると共に(例えば、
図13の左図参照)。第2開口部25及び空間部を介して、冷媒流路13に連通している。なお、軸方向xにおいて、第3流路43のスリット26は、第2流路42のスリット23と、重ならない位置に設けられ、流体の流通経路の分離が容易となるようにしている。スリット26に代えて、任意形状の貫通穴からなる連通口を設けてもよく、第2開口部25の形状を同様に変更することもできる。
【0052】
図12に示すように、セラミック構造体2は、円筒状の外皮21に隣接する部分を除いて、概略正方形の四角形の断面形状を有するセル22からなる。第2、第3流路42、43の端部を封止する栓は、端面から内方にある一定の深さとしており、剥離等が生じず、膜蒸留の処理面積が確保できる長さに設定される(例えば、2mm程度)。セラミック構造体2、セル22のサイズは、例えば、以下のようにした。
セラミック構造体2:直径102mm、長さ200mmの円柱状
外皮21の厚み:1mm
セル22の壁厚b:63.5μm(2.5mil;milli inch length)
セルピッチc:0.847mm(900cpsi;cells per square inch)
セル22の一辺の長さa:c-b
【0053】
このとき、第2流路42に設けられるスリット23、第3流路43に設けられるスリット26の高さ(垂直方向zの長さ)は、流路の高さ、すなわち、セル22の一辺の長さaよりも小さく、長さaの1/2よりも大きいことが好ましい(例えば、0.5mm)。長さaの1/2よりも小さいと、流体の通過する際の圧力損失が高くなる。また、スリット23、スリット26の幅(軸方向xの長さ)は、広いと強度が低下し、狭いと流路面積が確保しにくいので、これらが両立するように、適宜設定される(例えば、20mm)。複数のスリット26の間隔(軸方向xの長さ)は、広いとスリット26の流路面積が確保しにくくなり、狭いと強度が低下するので、これらが両立するように、適宜設定される(例えば、10mm)。スリット23が複数設けられる場合や、スリット23とスリット26の間隔も、同様に設定される。
【0054】
また、セラミック構造体2の端面と、スリット23、スリット26との距離(軸方向xの長さ)は、栓詰めセルの栓の深さ以上であり、端面部の強度を確保するためにより長い方がよい。ただし、長すぎると、スリットの数が制約されるため、流体を流す十分な面積が得られるように、適宜設定される(例えば、10mm)。このように、スリット23、スリット26を同じ寸法とした場合、セラミック構造体2の長さに対して、最大で6個のスリットを配置することができる。水蒸気vが凝縮した液水wが流れるスリット23は、冷媒rが流れるスリット26よりも、一般に流量が少ないため、より少ない数に設定することができる。
【0055】
本形態においても、
図14、
図15に示すように、温水側と冷水側の温度差を駆動力として膜蒸留を発現させ、膜分離を行うことができる。また、
図16~
図18に、セラミック構造体2内の各流路における流れ方向を矢印で示す。
図16に示すように、第1流路41には、軸方向xの一端側から他端側へ、加熱された被処理水d0が供給される。
図17、
図18に示すように、第3流路43には、冷却された冷媒rが供給され、各流路に面する複数のスリット26を介して一方向へ流れる。これにより、第2流路42を流れる冷却された冷媒rにより、第1流路41と隣接する壁面のほぼ全体を冷却することができる。
【0056】
図14において、エアギャップとなる第2流路42は、供給流路11に連通する第1流路41と、冷媒流路13に連通する第3流路43との間に配置されている。第1流路41には、図中に矢印で示す方向に、加熱された被処理水d0が流れており、第3流路43には、被処理水d0の流れと交差する方向に、冷却された冷媒rがスリット26を介して流通している。第1流路41と第2流路42の間には、疎水性多孔質壁3が配置されており、膜蒸留用のセラミック分離膜として機能する。このとき、疎水性多孔質壁3における互いに反対面側の面、すなわち、第1流路41側の面と、第2流路42側の面との間には、温度差が生じている。これに伴う蒸気圧差によって、図中に矢印で示すように、疎水性多孔質壁3を水蒸気vが透過する。
【0057】
図15に詳細構造を示すように、疎水性多孔質壁3は、多孔質のセラミック基材31にて構成され、内外表面が疎水性材料にて被覆されることにより、細孔32内への液体の侵入を抑止しながら水蒸気vを透過させることができる。図中に水蒸気vの動きを示すように、第1流路41側で発生した水蒸気vは、細孔32内を透過して、第2流路42側へ移動する。第2流路42では、第3流路43に隣接する壁面が、冷媒rにて冷却されて低温となっており、水蒸気vが冷やされて凝縮し液水wとなる(例えば、
図14参照)。この液水wは、壁面を伝って移動し、第2流路42に開口するスリット23から、セラミック構造体2外周の空間部を経て、外部の回収流路12へ移動する。
【0058】
このように、本形態においても、膜分離装置1は、高温の被処理水d0が流れる第1流路41側の蒸気圧と、冷媒r(低温の被処理水d0)が流れる第3流路43側の蒸気圧との差を利用して、膜蒸留を行う。これにより、安定した処理を継続して行うことができ、浄化効率を向上させることができる。また、ケーシング6内にセラミック構造体2を収容して、セラミック構造体2の端面又は外周側面に開口する流路を、ケーシング6の端面又は内周側に設けられる流路を介して、外部の流路に接続する構成としたので、コンパクトな構成で、エアギャップ方式の膜分離装置1を実現し、浄化効率を向上させることが可能になる。
【0059】
(実施形態3)
本形態は、
図19~
図21に示すごとく、膜分離装置1の膜蒸留部10と、膜蒸留部10に接続される流路の他の構成例である。特に、本形態においては、膜分離装置1が真空膜蒸留(VMD)を利用するものである場合につき、説明する。真空膜蒸留法では、膜分離装置1が冷媒流路13を有さず、膜蒸留部10は、回収流路12に連通する第2流路42を減圧することにより、圧力差を駆動力として膜蒸留を行う。それ以外の膜分離装置1の基本構成は、上記実施形態と同様であり、前述した水処理システム100において、セラミック膜分離装置300として、好適に用いられる。以下、相違点を中心に説明する。
【0060】
図19において、本形態の膜分離装置1は、膜蒸留部10を構成するセラミック構造体2の全体が、ケーシング6に収容されている。ケーシング6及びセラミック構造体2は、軸方向xが鉛直方向となるように配置されており、ケーシング6の頂面に、供給流路11が接続されている。ケーシング6内は、軸方向xにおいて、常圧室63及び減圧室64の2室に区画されている。ここでは、鉛直上方を常圧室63、鉛直下方を減圧室64としており、両室の間において、セラミック構造体2の外周には、シール部材65が配置されて2室の間を液密封止している。
【0061】
常圧室63側のケーシング6の頂面には、加熱部5を通過することにより加熱された被処理水d0(1次濃縮水d1)の投入口66が設けられる。また、減圧室64側のケーシング6には、底面に近い端部側壁に、濃縮水d(2次濃縮水d2)の取出口67が設けられ、取出口67よりも上方に、水蒸気vの取出口68が設けられる。被処理水d0の取出口67と、導出流路11aとの間には、液送ポンプP3を備える循環流路11bが接続され、被処理水d0を供給流路11へ循環させるようになっている。これを繰り返すことで、所定の濃縮水dとした後、次工程へ送られる。この濃縮工程は、バッチ式もしくは連続式として行うことができる。
【0062】
水蒸気vの取出口68は、凝縮器53を介して、真空ポンプP4を備えるタンクT2に接続される。凝縮器53は、水蒸気vの取出口68に続く回収流路12aと供給流路11との間で熱交換を行う熱交換器として構成され、水蒸気vを凝縮した液水wは、浄化水c(2次浄化水c2)としてタンクT2へ回収される。
【0063】
図20において、セラミック構造体2は、常圧室63及び減圧室64に面する端面に開口する開放セルからなる第1流路41と、常圧室63に面する端面のみ栓詰めされた片栓詰めセルからなる第2流路42と、を有する。このとき、
図21に示すように、セラミック構造体2は、常圧室63側の一方の端面において、例えば、開口部と閉鎖部が互い違いとなるように、第1流路41と第2流路42となるセル22が、千鳥格子状に交互に配置される。減圧室64側の他方の端面は、いずれのセル22も栓詰めされない。
【0064】
このとき、常圧室63側から第1流路41に、加熱された被処理水d0が流入すると、自重により第1流路41を通過して、減圧室64へ流出する。一方、第1流路41と隣接する第2流路42は、減圧室64に連通しており、両流路の間の疎水性多孔質壁3において、第1流路41側の面と第2流路42側の面との間に、圧力差が生じる。これにより、第1流路41側の界面で蒸発した水蒸気vが、疎水性多孔質壁3を透過し、第2流路42へ移動する。
【0065】
第2流路42へ移動した水蒸気vは、開口側から減圧室64内に流入し、取出口68から回収流路12aへ導出される。取出口68は、ケーシング6の底面から十分離れた位置、例えば、セラミック構造体2の端面近傍に設けられることが望ましい。このようにすると、水蒸気vが、減圧室64から速やかに導出される一方、ケーシング6の底面側に、濃縮水d(2次濃縮水d2)が貯留される十分な空間が形成される。
【0066】
このように、本形態の膜分離装置1は、真空膜蒸留方式の装置として構成され、疎水性多孔質壁3を水蒸気vが通過する際の駆動力として、高温の被処理水d0が流れる第1流路41側の蒸気圧と、減圧された第2流路42側の圧力との差を利用して、膜蒸留を行う。その場合には、膜蒸留部10に冷媒流路13が不要になり、セラミック構造体2の内部にも第3流路43が不要になるので、流路構造を簡易にすることができる。このようにしても、コンパクトな構成で、安定した処理を継続して行うことができ、浄化効率を向上させることができる。
【0067】
(実施形態4)
本形態は、
図22~
図24に示すごとく、真空膜蒸留(VMD)を利用する膜分離装置1の他の構成例である。本形態においては、実施形態3と同様の膜蒸留部10において、ケーシング6に接続される流路の配置を変更している。それ以外の膜分離装置1の基本構成は、上記実施形態と同様であり、以下、相違点を中心に説明する。
【0068】
図22において、膜分離装置1は、膜蒸留部10を構成するセラミック構造体2の全体が、2室に区画されたケーシング6に収容されている。ケーシング6内は、ここでは、鉛直上方を減圧室64、鉛直下方を常圧室63としており、ケーシング6の頂面に、水蒸気vの取出口68を設けている。水蒸気vの取出口68は、回収流路12aに接続され、凝縮器53を介して、真空ポンプP4を備えるタンクT2に接続される。
【0069】
常圧室63には、底面に近い側壁に被処理水d0の取出口67が設けられ、取出口67よりも上方に、被処理水d0の供給流路11が接続される。取出口67は、加熱部5よりも上流側の供給流路11に、液送ポンプP3を介して接続され、供給流路11へ濃縮された被処理水d0を循環させる循環流路11bが形成されている。これを繰り返した後、濃縮水d(2次濃縮水d2)の導出流路11aから、次工程へ送られる。
【0070】
図23において、セラミック構造体2は、第1流路41が下方の常圧室63に開口し、減圧室64に面する端面のみ栓詰めされたセル22(片栓詰めセル)からなり、第2流路42が上方の減圧室64に開口し、常圧室63に面する端面のみ栓詰めされたセル22(片栓詰めセル)からなる。このとき、
図24に示すように、セラミック構造体2は、例えば、常圧室63側の一方の端面において、開口部と閉鎖部が互い違いとなるように、第1流路41と第2流路42となるセル22が、千鳥格子状に交互に配置される。その場合には、減圧室64側の他方の端面において、開口部と閉鎖部が逆となるように、互い違いの千鳥格子状となる。
【0071】
このとき、常圧室63に供給流路11から加熱された被処理水d0が流入すると、常圧室63側で水蒸気vが発生し、常圧室63に開口する第1流路41へ流入する。第1流路41に隣接する第2流路42は、減圧室64に開口しており、疎水性多孔質壁3において、第1流路41側の蒸気圧と減圧室64側の圧力との差により、疎水性多孔質壁3を透過して、第2流路42へ移動する。水蒸気vは、第2流路42内を上昇して、開口側の減圧室64へ流入し、さらに、真空ポンプP4で吸引されて、取出口68から回収流路12aへ導出され、凝縮器53を経て、浄化水c(2次浄化水c2)のタンクT2へ回収される。
【0072】
本形態においても、真空膜蒸留法を利用して、被処理水d0から浄化水cを分離して回収することができる。また、水蒸気vの移動方向が、被処理水d0とは反対方向であり、セラミック構造体2の内部を、被処理水d0が流れない構成となっているので、水蒸気vを、被処理水d0から容易に分離して回収することができる。このようにしても、コンパクトな構成で、安定した処理を継続して行うことができ、浄化効率を向上させることができる。
【0073】
上記実施形態では、膜分離装置1は、エアギャップ膜蒸留法、及び、真空膜蒸留法を利用した膜蒸留部10を備える構成としたが、これらに限らず、蒸気圧差や圧力差に基づく他の膜蒸留法を利用した膜分離装置1とすることもできる。例えば、直接接触膜蒸留法(DCMD)は、供給流路11に連通する第1流路41と、回収流路12に連通する第2流路42とを、疎水性多孔質壁3を介して隣接させると共に、第2流路42に冷媒rを流通させる。このようにしても、疎水性多孔質壁3の両側に温度差を付与して、蒸気圧差を生じさせることができる。あるいは、スイープガス膜蒸留法(SGMD)を利用して、第2流路42にスイープガスを流通させることにより、圧力差を生じさせるようにしてもよい。
【0074】
なお、冷媒rを用いる場合には、加熱前の被処理水d0に限らず、水、オイル等の液体であれば、特に限定されるものではない。例えば、膜分離装置1が適用されるシステムにおいて、他の工程等で用いられる流体を利用することもできる。また、工場排水を処理するための水処理システム100への適用例について説明したが、これに限らず、任意の排水その他の水処理に利用することができる。
【0075】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。また、各実施形態に記載の内容を組み合わせることもできる。
本発明の特徴を以下の通り示す。
[1]被処理水(d0)が供給される供給流路(11)と、浄化水(c)が回収される回収流路(12)との間に、膜蒸留部(10)を備える膜分離装置(1)であって、
上記膜蒸留部は、筒状の外皮(21)内が、軸方向(x)に延びる多数のセル(22)に区画されたセラミック構造体(2)からなり、
上記セラミック構造体において、上記供給流路に連通して第1流路(41)となる上記セルと、上記回収流路に連通して第2流路(42)となる上記セルとが、疎水性多孔質壁(3)からなるセル壁を介して隣接配置されており、
上記疎水性多孔質壁において、上記第1流路に面する側から、上記第2流路に面する側へ、蒸気圧差又は圧力差により水蒸気(v)を透過させて、上記被処理水を上記浄化水と濃縮水(d)とに分離するよう構成されている、膜分離装置。
[2]上記疎水性多孔質壁は、多数の細孔(32)を有するセラミック基材(31)と、セラミック基材31の表面を被覆する疎水膜(33)とを有する、[1]に記載の膜分離装置。
[3]上記セラミック構造体は、上記第2流路となる上記セルに対して、上記第1流路となる上記セルと反対側に隣接する上記セルを、冷媒流路(13)に連通する第3流路(43)としており、上記疎水性多孔質壁は、上記第1流路に面する側と、上記第2流路に面する側との温度差により、蒸気圧差を発現させて水蒸気を透過させる、[1]又は[2]に記載の膜分離装置。
[4]上記冷媒流路の冷媒は、上記供給流路から上記第1流路へ供給される前の上記被処理水である、[3]に記載の膜分離装置。
[5]上記第1流路となる上記セルを、両端が開口する開放セルとして、上記セラミック構造体の一方の端面において上記供給流路と接続し、上記第1流路へ供給される上記被処理水を上記セラミック構造体の他方の端面に向けて流通させ、
上記第2流路及び上記第3流路となる上記セルを、両端が閉鎖された栓詰めセルとし、上記第2流路と上記回収流路とを、上記セラミック構造体の側面に開口する第1開口部(24)を介して接続すると共に、上記第3流路と上記冷媒流路とを、上記セラミック構造体の側面に開口する第2開口部(25)を介して接続している、[3]又は[4]に記載の膜分離装置。
[6]上記セルは上記軸方向から見た形状が四角形状である四角形セルであり、上記軸方向から見て四角形セルの一辺と平行な第1の方向(y)に、上記第1流路となる複数の上記セルが互いに隣接して整列しており、
上記第1の方向に、上記第2流路となる複数の上記セルが互いに隣接して整列しており、
上記第1の方向に、上記第3流路となる複数の上記セルが互いに隣接して整列しており、
上記軸方向から見て、上記第1の方向と直交する第2の方向(z)には、上記第1流路となる上記セルの列を挟んで両側に、上記第2流路となる上記セルの列が配置され、それら両側の上記セルの列の外側に、上記第3流路となる上記セルの列が配置されると共に、
上記第2流路となる上記セルの列、及び、上記第3流路となる上記セルの列において、隣り合う上記セルは、セル壁を貫通する連通口(23、26)を介して、互いに連通している、[3]~[5]のいずれか1項に記載の膜分離装置。
[7]上記第1流路から上記濃縮水が導出される導出流路(11a)を、上記供給流路と接続して、上記被処理水を循環させる循環流路(11b)を、さらに有する、[1]~[6]のいずれか1項に記載の膜分離装置。
[8]上記膜蒸留部は、上記回収流路に設けられた真空ポンプ(P4)により、上記第2流路となる上記セルが減圧されており、上記疎水性多孔質壁は、上記第1流路に面する側と、上記第2流路に面する側との圧力差により、水蒸気を透過させる、[1]又は[2]に記載の膜分離装置。
[9]上記セラミック構造体は、ケーシング(6)に収容されており、
上記ケーシング内は、上記供給流路に連通する常圧室(63)と、上記回収流路に連通する減圧室(64)とに区画されると共に、上記第1流路となる上記セルは、少なくとも上記常圧室に連通し、上記第2流路となる上記セルは、上記減圧室のみに連通するように配置されている、請求項[8]に記載の膜分離装置。
[10]
上記常圧室は、上記減圧室に対して鉛直方向の上方に配置されており、
上記セラミック構造体は、上記第1流路となる上記セルを、上記常圧室に面する端面及び上記減圧室に面する端面に開口する開放セルとし、上記第2流路となる上記セルを、上記常圧室に面する端面が閉鎖され上記減圧室に面する端面が開口する片栓詰めセルとすると共に、上記常圧室に面する端面において、開口部と閉鎖部が互い違いとなるように、上記第1流路となる上記セルと上記第2流路となる上記セルとを互いに隣接して配置している、[9]に記載の膜分離装置。
[11]
上記減圧室には、底面側に上記濃縮水が導出される導出流路(11a)が接続され、上記導出流路よりも鉛直方向の上方に、上記回収流路が接続されると共に、上記導出流路を上記供給流路と接続して、上記被処理水を循環させる循環流路(11b)を、さらに有する、[10]に記載の膜分離装置。
【符号の説明】
【0076】
1 膜分離装置
10 膜蒸留部
11 供給流路
12 回収流路
2 セラミック構造体
21 外皮
22 セル
3 疎水性多孔質壁
41 第1流路
42 第2流路