(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071151
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】機能部材
(51)【国際特許分類】
E04D 13/10 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
E04D13/10 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181949
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】503367376
【氏名又は名称】ケイミュー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 俊文
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
(57)【要約】
【課題】施工しやすく、建築板に破損が生じにくい機能部材を提供する。
【解決手段】機能部材1は、基板部2と、機能部3と、取付部4と、を備える。基板部2は、一部を重ねるようにして配置された複数の建築板100の重ね部101において、複数の建築板100の間に配置される。機能部3は、重ね部101の外方に位置するよう基板部2の一端22に設けられる。取付部4は、基板部2の他端23に開口部5を有し、複数の建築板100を固定する固定具102が導入されて係止される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部を重ねるようにして配置された複数の建築板の重ね部において、前記複数の建築板の間に配置される基板部と、
前記重ね部の外方に位置するよう前記基板部の一端に設けられる機能部と、
前記基板部の他端に開口部を有し、前記複数の建築板を固定する固定具が導入されて係止される取付部と、を備える、
機能部材。
【請求項2】
前記取付部は、前記開口部から前記固定具が導入される導入路と、
前記導入路から続く係止部と、を備える、
請求項1に記載の機能部材。
【請求項3】
前記取付部は、前記導入路に導入された前記固定具を前記係止部の方に導くガイド部をさらに備える、
請求項2に記載の機能部材。
【請求項4】
前記ガイド部の最深部は、前記係止部の内側に位置している、
請求項3に記載の機能部材。
【請求項5】
前記開口部がテーパー状に開拡している、
請求項1~4のいずれか1項に記載の機能部材。
【請求項6】
前記係止部は、前記固定具が保持される保持部を有し、
前記保持部は、前記基板部の幅方向の略中央に位置している、
請求項2~4のいずれか1項に記載の機能部材。
【請求項7】
前記基板部は、接着剤が通過する孔部を厚み方向で貫通して有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の機能部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能部材に関する。より詳細には、本発明は、雪止め金具などとして使用可能な機能部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コロニアル(登録商標)等の足場兼用屋根材等支止具が記載されている。この支止具は、細長形状等の基板を構成する前方部に引掛け部または小孔部を形成し、前記基板の後方部に支止部材を引掛ける嵌挿部を有する握持部を形成すると共に、握持部の外側面部に、前記基板の後方端部を上方に折曲せしめて形成した補強部の端縁部を接着したものである。また、前記引掛け部は、前記基板の前方部の側面部より内側へ切り込んだ若干傾斜状の部分で形成されている。
【0003】
特許文献1の支止具は、基板の前方部を上方にして重なり合っている屋根材の間に形成の隙間より挿し込むと、下方の屋根材を固着している止め釘に基板があたる。この後、基板に形成されている引掛け部内に止め釘を嵌挿するか、あるいは小孔部に引掛け、支止具を手前方向に引くようにする。その結果、止め釘に引掛った支止具は止め釘から離脱しなくなり、屋根に取り付けることができる。
【0004】
特許文献2には、屋根用雪止め金具が記載されている。この屋根用雪止め金具は、細長の薄金属板の先端部分を起立せしめて雪止め部又は雪止め部材取付部に形成すると共に、基部に基部端側が連続するコ状に切り込みを入れ、当該切り込み部分の内側を下方に折曲して引掛け部を形成し、引掛け部の先端部分を上方に折曲して、先端部分を跳ね上げ部に形成したものである。
【0005】
特許文献2の屋根用雪止め金具は、基部を重合する屋根部材の間隙に差し入れた後に屋根裾方に引っぱり出すと、引掛け部は、屋根部材の上方端面に跳ね上がり部が衝突し、屋根部材の下面に入り込み、金具の抜け離脱が防止され、屋根に取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平4-113626号公報
【特許文献2】実用新案登録第3058749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の支止具では、引掛け部が基板の側面部に開口しているため、基板が屋根材の下に隠れた状態では、引掛け部の位置がわかりにくい。このため、引掛け部を止め釘に引っ掛けにくく、施工しにくいという問題があった。
【0008】
特許文献2の屋根用雪止め金具では、基部を重合する屋根部材の間隙に差し入れた後に引っぱり出すときに、屋根部材の木口にあたって、引掛け部が屋根部材の下に入り込みにくいことがあり、施工しにくいという問題があった。また、基板を屋根部材の間隙に差し入れるときに、引掛け部が屋根部材の表面や、下地材に擦れて傷つけたり、雪の重さで引掛け部が引っ掛かっている箇所に屋根部材の破損が生じたりするおそれがあった。
【0009】
本発明は、上記事由に鑑みてなされており、施工しやすく、建築板や、下地材に破損が生じにくい機能部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る機能部材は、基板部と、機能部と、取付部と、を備える。前記基板部は、一部を重ねるようにして配置された複数の建築板の重ね部において、前記複数の建築板の間に配置される。前記機能部は、前記重ね部の外方に位置するよう前記基板部の一端に設けられる。前記取付部は、前記基板部の他端に開口部を有し、前記複数の建築板を固定する固定具が導入されて係止される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基板部の他端に開口部を有するので、基板部が建築板に隠れていても固定具を導入する開口部の位置が把握しやすい。従って、固定具に対して取付部が係止しやすく、施工しやすい。また取付部は、建築板を固定する固定具に係止されるため、基板部から建築板に力がかかりにくく、建築板が破損しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1Aは、本発明の実施形態に係る機能部材を示す平面図である。
図1Bは、同上の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る機能部材の施工状態を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る機能部材の施工状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る機能部材の施工方法を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る機能部材の施工方法を示す斜視図である。
【
図7】
図7A~Eは、本発明の実施形態に係る機能部材の取付部の係止方法を示す平面図である。
【
図8】
図8Aは、本発明の実施形態に係る機能部材の施工方法を示す断面図である。
図8Bは、本発明の実施形態に係る機能部材の施工状態の一部を示す断面図である。
【
図9】
図9A~Cは、本発明の実施形態に係る機能部材の取付部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態に係る機能部材1について、図面を参照して説明する。各図は模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさは必ずしも実際の寸法を反映しているとは限らない。図中にX軸、Y軸及びZ軸を規定する矢印を図示しているが、これらの矢印は、説明の都合上図示しているだけであり、機能部材1の方向を限定する趣旨ではなく、実体を伴わない。X軸、Y軸及びZ軸は、相互に直交する。
【0014】
(実施形態)
1.機能部材
図1A及び
図1Bは、本実施形態の機能部材1を示している。この機能部材1は雪止め金具として形成されている。なお、本実施形態の機能部材1は、後述のように、屋根に設置される設備を固定するための固定部材として形成することもできる。
【0015】
機能部材1は、金属製の部材であって、例えば、ステンレス鋼板、鉄板及びアルミニウム板などの金属板を切削加工したり曲げ加工したりして形成することができる。この場合、金属板の厚みは、0.8~1.5mmであればよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
機能部材1は、平面視において、X軸に沿って長く形成され、Y軸に沿って短く形成されている。機能部材1の平面形状は、X軸に沿った仮想の中央線Lについて対称(線対称)である。なお、X軸に沿った方向を長手方向といい、Y軸に沿った方向を短手方向又は幅方向という場合がある。
【0017】
機能部材1は、基板部2と機能部3と取付部4とを備えている。
【0018】
基板部2は、機能部材1を施工した際に、建築板100の重ね部101に配置される部分である。基板部2は、平面視で短冊のような長方形の平板状に形成されている。基板部2の長手方向の一端22には、機能部3が突出して設けられている。また基板部2の長手方向の他端部(機能部3と反対側の端部)は、取付部4として形成されている。また基板部2は複数の孔部21を有している。複数の孔部21は、基板部2の長手方向の中央部よりも機能部3に近い部分に設けられている。各孔部21は、基板部2を厚み方向で貫通するように形成されている。複数の孔部21は、接着剤103を通過させるための孔である。すなわち、基板部2の表面または裏面のいずれか片面に接着剤103を塗布した場合、この接着剤103が、複数の孔部21を通って基板部2の他の片面に達することができる。
【0019】
図2Bは、機能部3を示している。機能部3は機能部材1の役割を決める部分であって、機能部材1が雪止め金具である場合、機能部3は、屋根に積もった雪が屋根から落ちないように堰き止める部分である。機能部3は、接続部31、突出部32、頂部33、支持部34及び脚部35を備えている。
【0020】
接続部31は、基板部2の一端22から外側(取付部4と反対側)に向かって突出する部分である。接続部31は、基板部2と同一平面上に形成されている。突出部32は、接続部31から上方(基板部2の表面が向く方向)に向かって突出して形成されている。頂部33は、突出部32の上端から基板部2の長手方向に沿って基板部2の反対側に向かって突出して形成されている。支持部34は、頂部33から基板部2と反対側に向かって斜め下方に突出して形成されている。脚部35は、支持部34の下端から基板部2の長手方向に沿って基板部2の反対側に向かって突出して形成されている。
【0021】
機能部3は、補強部36を有している。補強部36は、接続部31と突出部32の境界部分を補強するための部材で形成されており、一対の補強部36が、接続部31と突出部32との表面にわたって設けられている。また基板部2と接続部31との境界部分には、深さライン37が設けられている。深さライン37は、基板部2の短手方向(幅方向)の全長にわたって形成されており、例えば、刻印等で凹状に形成され、平面視では線に見える。深さライン37は、基板部2を重ね部101に差し込む深さ(長さ)の目安となる線である。また基板部2と脚部35とは同一平面上に形成されている。
【0022】
本実施形態のように、基板部2と機能部3は一枚の金属板を折り曲げ加工して形成することができるが、これに限られることはなく、基板部2と機能部3を別々に形成した後、溶接や連結具などにより一体化してもよい。
【0023】
図2Aは、取付部4を示している。取付部4は、基板部2の一部で構成される。取付部4は、基板部2の機能部3を設けた側の一端22と反対側の端部(他端部)が取付部4として形成されている。基板部2と取付部4とは同一平面上に形成されている。取付部4は、開口部5、導入路6及び係止部7を有している。開口部5、導入路6及び係止部7は、取付部4を厚み方向で貫通する切欠きにより形成することができる。取付部4は、建築板100を固定する固定具102が前記切欠きに導入されて係止される(引っ掛かる)部分である。
【0024】
開口部5は、取付部4に固定具102を導入する入り口である。開口部5は、基板部2の長手方向の他端23に開口するように形成されている。また開口部5は、基板部2の長手方向の他端23から中央部の方に向かって、徐々に幅狭となるように、テーパー状に形成されている。
【0025】
導入路6は、開口部5に導入された固定具102を係止部7へと導く通路である。導入路6は、基板部2の幅方向の略中央部に位置している。導入路6は基板部2の長手方向に沿ってまっすぐに形成されている。従って、仮想の中央線Lは、導入路6の幅方向の中央部を通っている。導入路6はその一端が開口部5の幅方向の略中央部と接続されており、開口部5と導入路6とは連続するようにつながっている。導入路6は、テーパー状の開口部5の最も幅狭の部分に接続されている。また、導入路6の他端には、一対の導入口61が設けられており、各導入口61のそれぞれに、係止部7が連続するようにつながっている。すなわち、取付部4には一対の係止部7が形成されている。一対の係止部7は、中央線Lに対して対称に形成されている。
【0026】
取付部4は、ガイド部8を備えている。ガイド部8は、導入路6に導入された固定具102を係止部7の方に導きやすくする部分である。ガイド部8は、導入路6及び係止部7を構成する切欠きの開口縁部で構成される。ガイド部8は、一つの始点部82と二つの最深部81とを有している。始点部82は、導入路6内に位置し、仮想の中央線L上に位置している。従って、始点部82は、開口部5と導入路6との接続部分と対向している。二つの最深部81のうち、一方の最深部81は一方の係止部7内に位置している。また二つの最深部81のうち、他方の最深部81は他方の係止部7内に位置している。すなわち、一対の係止部7内に最深部81が一つずつ設けられている。
【0027】
平面視において、ガイド部8は、仮想の中央線Lに対して傾斜している。X軸に沿った方向において、各最深部81は始点部82に比べて基板部2の他端23よりも遠い位置にある。言い換えると、各最深部81は始点部82に比べて基板部2の長手方向の中央部に近い位置にある。従って、機能部材1と固定具102を相対的に見た場合において、固定具102は、始点部82の位置からいずれか一方の最深部81に向かってガイド部8にガイドされながら移動しやすい。
【0028】
一対の係止部7のそれぞれには、保持部9が設けられている。保持部9は係止部7の中で基板部2の幅方向の中央部に近い位置に設けられている。X軸に沿った方向において、保持部9は、最深部81とほぼ対向する位置に設けられている。また保持部9は、X軸に沿った方向において、最深部81よりも開口部5に近い位置に設けられ、さらに導入口61よりも開口部5に近い位置に設けられている。
【0029】
ガイド部の最深部81が、係止部7の導入路6側の端部71より係止部7の内側、すなわち、ガイド部の最深部81を通り仮想の中央線Lに平行な最深部仮想線811が、係止部7の導入路6側の端部71を通り仮想の中央線Lに平行な端部仮想線711より係止部7の内側に位置している。そのため、機能部材1を押し込むことで固定具102がガイド部8に沿っていずれかの最深部81にまで移動して固定具102を自然に係止部7内へと導入することができ、固定具102を係止部7の方に導きやすくなり、その後、機能部材1を機能部3側に引っ張って、係止部7へ固定具102を係止しやすい。
【0030】
本実施形態のように、取付部4を基板部2の一部で構成することができるが、これに限られることはなく、基板部2と取付部4を別々に形成した後、溶接や連結具などにより一体化してもよい。
【0031】
2.機能部材の施工方法
図3及び
図4は、機能部材1を施工した状態を示している。本実施形態では、機能部材1は、雪止め金具であるため、機能部材1は屋根に施工されている。
図3における建築板100は屋根材である。建築板100としては、例えば、化粧スレート板(セメント硬化物で形成される窯業系の薄板材)を使用することができ、具体的には、カラーベスト(登録商標)やコロニアル(登録商標)などを使用することができる。
【0032】
屋根は、複数の建築板100を有して形成されている。複数の建築板100は、野地板等の屋根下地104の上に配置され、釘やビスなどの複数の固定具102で屋根下地104に固定される。また複数の建築板100は、平面視において、千鳥配置で施工されている。すなわち、屋根の傾斜方向(例えば、軒棟方向)で隣接する複数の建築板100は、屋根の傾斜方向で上側の建築板100aが下側の建築板100bに対して、屋根の傾斜方向と直交する方向で略半ピッチずれて配置されている。
【0033】
建築板100は、暴露部110と、非暴露部111とを有しており、屋根の傾斜方向で隣接する建築板100は、暴露部110と非暴露部111とが重なった状態で施工される。すなわち、屋根の傾斜方向で隣接する複数の建築板100は、屋根の傾斜方向で上側の建築板100aの暴露部110が、屋根の傾斜方向で下側の建築板100bの非暴露部111の表面に重なっている。このようにして、複数の建築板100は、一部(暴露部110と非暴露部111)を重ねるようにして配置され、暴露部110と非暴露部111とが重なった重ね部101が形成される。
【0034】
本実施形態の機能部材1は、上記のように施工された複数の建築板100を固定する固定具102に対して取付部4を係止することにより取り付けられる。ここで、取付部4を係止する固定具102は、屋根の傾斜方向で隣接する複数の建築板100のうち、上側の建築板100aを固定する固定具102である。上側の建築板100aを固定する固定具102は、下側の建築板100bの上端部112の直ぐ上に位置している。
【0035】
図5に示すように、機能部材1は、屋根の傾斜方向の下側(例えば、軒側)から重ね部101に差し込まれる。つまり、機能部材1は、重ね部101において、上側の建築板100aの暴露部110と下側の建築板100bの非暴露部111との間に差し込まれる。このとき、機能部材1は、長手方向と屋根の傾斜方向とが略平行になるように支持された状態で、差し込まれる。また機能部材1は、基板部2の他端23を重ね部101側に向けて、屋根の傾斜方向における重ね部101の下方から差し込まれる。従って、機能部材1は、開口部5を差し込み方向の前側にして、重ね部101に差し込まれる。また機能部材1は、固定具102に取付部4を係止しやすいように、開口部5を所望の固定具102の位置に合わせて差し込まれる。
【0036】
そして、
図6のように、基板部2の他端23側を上側の建築板100aの下端部113と下側の建築板100bの表面との間から差し込んでいくと、基板部2の他端23が固定具102に達し、取付部4が固定具102に係止され、機能部材1を屋根面に固定することができる。このとき、機能部材1の基板部2は重ね部101において、上側の建築板100aの暴露部110と、下側の建築板100bの非暴露部111の間に配置される。また機能部3は、重ね部101の外方(屋根の傾斜方向における下方)に位置し、下側の建築板100bの暴露部110上に配置される。
【0037】
図7A~
図7Eは、固定具102に対する取付部4の係止方法を示している。機能部材1は、
図7Aに示すように、長手方向と略平行な方向で固定具102に向かって移動される(矢印イ参照)。これにより、固定具102が開口部5に導入されるが、開口部5は基板部2の他端23に向かってテーパー状に開拡しているので、真っ直ぐな開口部5に比べて、固定具102が導入しやすい。また固定具102を開口部5の開口縁部に当てた状態で機能部材1を移動させることにより、自然と固定具102が導入路6に導入される。
【0038】
次に、機能部材1は、
図7Bに示すように、長手方向と略平行な方向で他端23の方にさらに移動される(矢印ロ参照)。これにより、ガイド部8の始点部82に固定具102が当たるまで機能部材1が移動される。
【0039】
次に、機能部材1は、
図7Cに示すように、長手方向と略平行な方向からずれた方向に移動される(矢印ハ参照)。これにより、固定具102にガイド部8が当たった状態で機能部材1が移動される。この場合、二つのガイド部8のうちの一方だけに沿って固定具102が当たった状態で、機能部材1が移動される。従って、二つの係止部7の一方だけに固定具102が導入される。そして、係止部7に導入された固定具102は、最深部81に当たった状態になる。
【0040】
次に、機能部材1は、
図7Dに示すように、長手方向と略平行な方向で、差し込み方向と反対方向(一端22の方)に移動される(矢印ニ参照)。これにより、固定具102が最深部81から離れるように機能部材1が移動される。また固定具102は、保持部9の開口縁部の周辺に当たる。
【0041】
最後に、機能部材1は、
図7Eに示すように、長手方向と略平行な方向からずれた方向に移動される(矢印ホ参照)。これにより、固定具102に保持部9が当たった状態になり、引っ掛かる。このとき、取り付け状態は、上側の建築板100aの下端部113と機能部材1の深さライン37の位置を目視で確認することで行うことができる。このようにして、取付部4が固定具102に係止され、機能部材1が固定具102から外れにくくなる。
【0042】
なお、固定具102は、二つの保持部9のうちのいずれに保持されるようにしてもよい。
【0043】
図8A及び
図8Bに示すように、機能部材1は接着されてもよい。これにより、機能部材1は重ね部101に強固に固定することができる。機能部材1を接着する場合は、
図8Aに示すように、基板部2の裏面(下面)に接着剤103を塗布する。このとき、接着剤103は、孔部21を形成した箇所において、基板部2の裏面に塗布される。基板部2を差し込んでいく際、治具を用いて上側の建築板100aを少し持ち上げておくのが望ましく、基板部2が差し込みやすくなるとともに、接着剤103が下側の建築板100bの暴露部110に付着しにくくなる。機能部材1を所定位置に係止できたら治具を外して上側の建築板100aを元に戻す。これにより、接着剤103は、孔部21を通って基板部2の表面(上面)にも達することになる。従って、基板部2は、
図8Bのように、重ね部101の部分で、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの両方に接着されることになる。
【0044】
なお、接着剤103は基板部2の裏面に塗布しないで、表面に塗布してもよく、この場合、接着剤103は孔部21を通って基板部2の裏面に達することになる。これにより、上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に基板部2を差し込んでいくと、接着剤103が上側の建築板100aで押圧され、孔部21を通って基板部2の裏面に達することになる。
【0045】
また接着剤103は、重ね部101の上側の建築板100aと下側の建築板100bとの間に基板部2を差し込む前に基板部2に塗布していても、差し込んだ後に基板部2と建築板100の間に塗布してもよい。差し込んだ後に基板部2と建築板100の間に塗布する際にも治具を用いてよく、また、基板部2と建築板100の隙間に差し込める専用のノズルを用いて接着剤を塗布してもよい。
【0046】
本実施形態の機能部材1は、基板部2の他端23に開口部5を有するので、基板部2が建築板100に隠れていても固定具102を導入する開口部5の位置が把握しやすい。すなわち、特許文献1のものでは、引掛け部が、基板の側面部に形成されているため、側面部の長手方向のどの位置に引掛け部があるのかが把握しにくい。一方、本実施形態では、基板部2の機能部3とは反対側の端部(他端23)に開口部5が形成されているため、基板の長手方向よりも寸法の短い幅方向と平行な端部に開口部5が形成されることになり、開口部5の位置が把握しやすい。また本実施形態の機能部材1は、取付部4が、建築板100を固定する固定具102に係止されるため、基板部2から建築板100に力がかかりにくく、建築板100が破損しにくい。
【0047】
(変形例)
実施形態は、本発明の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態は、本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0048】
実施形態では、機能部材1が雪止め金具である場合を説明したが、これには限定されない。例えば、機能部材1は、屋根に付設する設備を固定するための固定部材として形成することができる。屋根に付設する設備としては、太陽電池パネル、温水器及びアンテナなどを例示することができる。機能部材1が固定部材である場合は、機能部に設備を直接固定したり、設備を取り付けるレールなどの部材を固定したりすることができる。
【0049】
また実施形態では、建築板100が屋根材であって、機能部材1を屋根面に施工する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、建築板100が壁材である場合、機能部材1は壁面に施工することができる。この場合、機能部材1は、壁に付設する設備を固定するための固定部材として形成することができる。
【0050】
また実施形態では、建築板(屋根材)100を施工した後に、機能部材1を施工する場合について説明したが、これには限定されない。例えば、建築板100を順次施工していく途中で、機能部材1も施工することができる。この場合、建築板100を重ねる前に機能部材1を所定の位置に配置し、固定具102を取付部4に係止されるように配置して建築板100を固定する。
【0051】
また実施形態では、接着剤103を使用したが、これに限定されない。接着剤103を使用しないで機能部材1を施工した場合は、建築板100に対する機能部材1の位置調整が容易に行える。また、接着剤103を使用しないで機能部材1を施工した場合、取付部4と固定具102との係止を解除して、機能部材1を取り外すことができ、機能部材1の交換が容易に行える。
【0052】
【0053】
図9Aは、基板部2の他端23に開口部5を形成したが、開口部5はテーパー状には形成されていない。開口部5は仮想の中央線L上に形成されている。また実施形態のガイド部8に対応する構成は備えていない。また保持部9は、平面視で長方形の係止部7の隅部分に形成されている。
【0054】
図9Bは、基板部2の他端23に開口部5を形成したが、開口部5はテーパー状には形成されていない。開口部5は、基板部2の幅方向の一方に位置ずれして形成されている。開口部5に連続するようにつながる導入路6は基板部2の長手方向に沿って機能部3側にまっすぐに伸びた後、仮想の中央線Lに向かって鈍角に屈曲し、仮想の中央線Lの手前まで形成されている。また、導入路6の他端には、一つの導入口61が設けられており、導入口61に連続するようにつながる係止部7は、基板部2の長手方向に傾斜して基板部2の他端23側に伸び、仮想の中央線Lまで形成されている。すなわち、取付部4には一つの係止部7が形成されている。取付部4は、ガイド部8を備えている。ガイド部8は、一つの始点部82と一つの最深部81とを有している。始点部82は、導入路6が屈曲する箇所に位置している。最深部81は、導入路6と係止部7の境界付近に位置している。開口部5は仮想の中央線L上に形成されていないが、係止部7内の保持部9が仮想の中央線L上に形成されている。また保持部9は一つだけ設けられている。
【0055】
図9Cは、基板部2の他端23に開口部5を形成したが、開口部5はテーパー状には形成されていない。基板部2の幅方向の一方に位置ずれして形成されている。開口部5に連続するようにつながる導入路6は、仮想の中央線Lに向かってやや斜めに機能部3側にまっすぐに伸びた後、仮想の中央線Lを横切るよう曲線部83を介して略直角に屈曲して伸びて形成されている。また、導入路6の他端には、曲線部83を介して導入口61に連続するようにつながる係止部7が、基板部2の長手方向に傾斜して基板部2の他端23側に伸び、仮想の中央線Lまで形成されている。開口部5は仮想の中央線L上に形成されていないが、保持部9が仮想の中央線L上に形成されている。また係止部7及び保持部9は一つだけ設けられている。またガイド部8は曲線状に形成されている。
【0056】
図9B及び
図9Cでは、保持部9が仮想の中央線L上に形成されているため、固定具102に対して機能部材1の幅方向の中央部が支持されることになり、機能部材1をバランスよく安定して取り付けることができる。
【0057】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る機能部材1は、基板部2と、機能部3と、取付部4と、を備える。基板部2は、一部を重ねるようにして配置された複数の建築板100の重ね部101において、複数の建築板100の間に配置される。機能部3は、重ね部101の外方に位置するよう基板部2の一端22に設けられる。取付部4は、基板部2の他端23に開口部5を有し、複数の建築板100を固定する固定具102が導入されて係止される。
【0058】
この態様によれば、基板部2の他端23に開口部5を有する取付部4を設けているので、基板部2が建築板100に隠れていても固定具102を導入する開口部5の位置が把握しやすい。従って、固定具102に対して取付部4が係止しやすく、施工しやすい。また取付部4は、建築板100を固定する固定具102に係止されるため、基板部2から建築板100に力がかかりにくく、建築板100が破損しにくい。
【0059】
第2の態様は、第1の態様に係る機能部材1であって、取付部4は、開口部5から固定具102が導入される導入路6と、導入路6から続く係止部7と、を備える。
【0060】
この態様によれば、固定具102を開口部5から導入路6に導入した後、係止部7に係止させることができ、機能部材1の固定具102への取り付けを容易に行うことができる。
【0061】
第3の態様は、第2の態様に係る機能部材1であって、取付部4は、導入路6に導入された固定具102を係止部7の方に導くガイド部8をさらに備える。
【0062】
この態様によれば、ガイド部8により固定具102が係止部7の方に導きやすくなって、係止部7へ固定具102を係止しやすい。
【0063】
第4の態様は、第3の態様に係る機能部材1であって、ガイド部8の最深部81は、係止部7の内側に位置している。
【0064】
この態様によれば、ガイド部の最深部81が、係止部7の導入路6側の端部71より係止部7の内側、すなわち、ガイド部の最深部81を通り仮想の中央線Lに平行な最深部仮想線811が、係止部7の導入路6側の端部71を通り仮想の中央線Lに平行な端部仮想線711より係止部7の内側に位置している。そのため、機能部材1を押し込むことで固定具102がガイド部8に沿って最深部81にまで移動して固定具102を自然に係止部7内へと導入することができ、固定具102を係止部7の方に導きやすくなり、その後、機能部材1を機能部3側に引っ張って、係止部7へ固定具102を係止しやすい。
【0065】
第5の態様は、第1~4のいずれか1つの態様に係る機能部材1であって、開口部5がテーパー状に開拡している。
【0066】
この態様によれば、開口部5から固定具102が導入しやすい。
【0067】
第6の態様は、第2~4のいずれか1つの態様に係る機能部材1であって、係止部7は、固定具102が保持される保持部9を有し、保持部9は、基板部2の幅方向の略中央に位置している。
【0068】
この態様によれば、保持部9に保持された固定具102が、基板部2の幅方向の略中央に位置しているため、機能部材1を傾くことなくバランスよく取り付けやすい。
【0069】
第7の態様は、第1~4のいずれか1つの態様に係る機能部材1であって、基板部2は、接着剤103が通過する孔部21を厚み方向で貫通して有する。
【0070】
この態様によれば、基板部2の片面に塗布した接着剤103が孔部21を通して他の片面にまで達することになり、重ね部101を構成する複数の建築板100に基板部2を接着することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 機能部材
2 基板部
21 孔部
3 機能部
4 取付部
5 開口部
6 導入路
7 係止部
8 ガイド部
81 最深部
9 保持部
100 建築板
101 重ね部
102 固定具
103 接着剤