IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-積層セラミック電子部品及び電子装置 図1
  • 特開-積層セラミック電子部品及び電子装置 図2
  • 特開-積層セラミック電子部品及び電子装置 図3
  • 特開-積層セラミック電子部品及び電子装置 図4
  • 特開-積層セラミック電子部品及び電子装置 図5
  • 特開-積層セラミック電子部品及び電子装置 図6
  • 特開-積層セラミック電子部品及び電子装置 図7
  • 特開-積層セラミック電子部品及び電子装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071168
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品及び電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240517BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01G4/30 201F
H01G4/30 513
H01G4/30 516
H01G4/30 517
H01G4/30 201G
H01G4/30 311E
H01G2/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181978
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】田中 健大
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC04
5E001AC05
5E001AJ01
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC25
5E082GG01
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】 放熱性を向上することができる積層セラミック電子部品及び電子装置を提供する。
【解決手段】 積層セラミックコンデンサ1は、複数の誘電体層22、及び誘電体層を介して設けられた複数の内部電極層23を含む略直方体形状の積層チップ2と、積層体において互いに対向する一対の端面2A,2Bをそれぞれ覆い、積層体の積層方向に沿って複数の内部電極層と接続され、少なくとも一方において、積層方向の一端を含む第1領域Diのポア率が、積層方向の他端を含む第2領域Uiのポア率より低い一対の外部電極30a,30bとを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層、及び前記誘電体層を介して設けられた複数の内部電極層を含む略直方体形状の積層体と、
前記積層体において互いに対向する一対の端面をそれぞれ覆い、前記積層体の積層方向に沿って前記複数の内部電極層と接続され、少なくとも一方において、前記積層方向の一端を含む第1領域のポア率が、前記積層方向の他端を含む第2領域のポア率より低い一対の外部電極とを有することを特徴とする積層セラミック電子部品。
【請求項2】
前記一対の外部電極の少なくとも一方のポア率は、前記第2領域から前記第1領域に向かって低下することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1領域のポア率は、10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項4】
前記第1領域のポア率は、5%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項5】
前記第1領域のポア率は、0.5%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項6】
前記第2領域のポア率は、30%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項7】
前記第2領域のポア率は、10%より大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項8】
前記第1領域は、前記端面から、前記積層方向を向く前記積層体の一方の主面上に回り込んだ第1回り込み部を有し、
前記第2領域は、前記端面から、前記積層方向を向く前記積層体の他方の主面上に回り込んだ第2回り込み部を有し、
前記第1回り込み部の厚みは、前記第2回り込み部の厚みより厚いことを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項9】
前記第1回り込み部の厚みは、前記第2回り込み部の厚みの1.1倍以上であることを特徴とする請求項8に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項10】
前記一対の外部電極の少なくとも一方を覆うメッキ層を有し、
前記メッキ層において、前記積層方向の一端を含む第3領域のポア率が、前記積層方向の他端を含む第4領域のポア率より低いことを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項11】
前記メッキ層のポア率は、前記第4領域から前記第3領域に向かって低下することを特徴とする請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項12】
前記第3領域のポア率は、10%以下であることを特徴とする請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項13】
前記第3領域のポア率は、1%以上であることを特徴とする請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項14】
前記第4領域のポア率は、30%以下であることを特徴とする請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項15】
前記第4領域のポア率は、10%より大きいことを特徴とする請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項16】
前記第4領域の外表面にポアが形成されていることを特徴とする請求項10に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項17】
前記積層体は、前記複数の内部電極層及び前記複数の誘電体層を前記積層方向の両側から挟むように積層され、前記第1領域及び前記第2領域にそれぞれ隣接する第1カバー層及び第2カバー層を含み、
前記第1カバー層及び前記第2カバー層は、色が相違することを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項18】
前記積層体は、前記複数の内部電極層及び前記複数の誘電体層を前記積層方向の両側から挟むように積層され、前記第1領域及び前記第2領域にそれぞれ隣接する第1カバー層及び第2カバー層を含み、
前記第1カバー層及び前記第2カバー層の一方は、前記第1カバー層及び前記第2カバー層の他方から区別するための識別部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミック電子部品。
【請求項19】
回路基板と、
前記回路基板上に設けられ、複数の誘電体層、及び前記誘電体層を介して設けられた複数の内部電極層を含む略直方体形状の積層体と、前記積層体において互いに対向する一対の端面をそれぞれ覆い、前記積層体の積層方向に沿って前記複数の内部電極層と接続され、少なくとも一方において、前記積層方向の一端を含む第1領域のポア率が、前記積層方向の他端を含む第2領域のポア率より低い一対の外部電極とを有する積層セラミック電子部品とを有することを特徴とする電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミック電子部品及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば積層セラミックコンデンサは、内部電極層及び誘電体層が交互に積層された積層チップを有し、その積層方向と直交する方向の端面には外部電極が設けられている(例えば特許文献1参照)。積層セラミックコンデンサの製造工程において、積層チップの端面に導電ペーストを塗布して焼き付けることにより外部電極が形成する。このとき、焼き付け時の積層チップの収縮により外部電極に作用する応力を緩和するため、外部電極にはポアが形成されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-89924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回路基板に実装された積層セラミックコンデンサ内の熱は、外部電極を伝導して回路基板に放熱される。しかし、外部電極内にポアが多いと、外部電極の密度が低下するため、積層セラミックコンデンサから回路基板への熱伝導性が悪化する。
【0005】
そこで本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、放熱性を向上することができる積層セラミック電子部品及び電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層セラミック電子部品は、複数の誘電体層、及び前記誘電体層を介して設けられた複数の内部電極層を含む略直方体形状の積層体と、前記積層体において互いに対向する一対の端面をそれぞれ覆い、前記積層体の積層方向に沿って前記複数の内部電極層と接続され、少なくとも一方において、前記積層方向の一端を含む第1領域のポア率が、前記積層方向の他端を含む第2領域のポア率より低い一対の外部電極とを有することを特徴とする。
【0007】
上記の積層セラミック電子部品において、前記一対の外部電極の少なくとも一方のポア率は、前記第2領域から前記第1領域に向かって低下してもよい。
【0008】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第1領域のポア率は、10%以下であってもよい。
【0009】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第1領域のポア率は、5%以下であってもよい。
【0010】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第1領域のポア率は、0.5%以上であってもよい。
【0011】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第2領域のポア率は、30%以下であってもよい。
【0012】
上記の積層セラミック電子部品において前記第2領域のポア率は、10%より大きくてもよい。
【0013】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第1領域は、前記端面から、前記積層方向を向く前記積層体の一方の主面上に回り込んだ第1回り込み部を有し、前記第2領域は、前記端面から、前記積層方向を向く前記積層体の他方の主面上に回り込んだ第2回り込み部を有し、前記第1回り込み部の厚みは、前記第2回り込み部の厚みより厚くてもよい。
【0014】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第1回り込み部の厚みは、前記第2回り込み部の厚みの1.1倍以上であってもよい。
【0015】
上記の積層セラミック電子部品において、前記一対の外部電極の少なくとも一方を覆うメッキ層を有し、前記メッキ層において、前記積層方向の一端を含む第3領域のポア率が、前記積層方向の他端を含む第4領域のポア率より低くてもよい。
【0016】
上記の積層セラミック電子部品において、前記メッキ層のポア率は、前記第4領域から前記第3領域に向かって低下してもよい。
【0017】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第3領域のポア率は、10%以下であってもよい。
【0018】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第3領域のポア率は、1%以上であってもよい。
【0019】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第4領域のポア率は、30%以下であってもよい。
【0020】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第4領域のポア率は、10%より大きくてもよい。
【0021】
上記の積層セラミック電子部品において、前記第4領域の外表面にポアが形成されていてもよい。
【0022】
上記の積層セラミック電子部品において、前記積層体は、前記複数の内部電極層及び前記複数の誘電体層を前記積層方向の両側から挟むように積層され、前記第1領域及び前記第2領域にそれぞれ隣接する第1カバー層及び第2カバー層を含み、前記第1カバー層及び前記第2カバー層は、色が相違してもよい。
【0023】
上記の積層セラミック電子部品において、前記積層体は、前記複数の内部電極層及び前記複数の誘電体層を前記積層方向の両側から挟むように積層され、前記第1領域及び前記第2領域にそれぞれ隣接する第1カバー層及び第2カバー層を含み、前記第1カバー層及び前記第2カバー層の一方は、前記第1カバー層及び前記第2カバー層の他方から区別するための識別部を有してもよい。
【0024】
本発明の電子装置は、回路基板と、前記回路基板上に設けられ、複数の誘電体層、及び前記誘電体層を介して設けられた複数の内部電極層を含む略直方体形状の積層体と、前記積層体において互いに対向する一対の端面をそれぞれ覆い、前記積層体の積層方向に沿って前記複数の内部電極層と接続され、少なくとも一方において、前記積層方向の一端を含む第1領域のポア率が、前記積層方向の他端を含む第2領域のポア率より低い一対の外部電極とを有する積層セラミック電子部品とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、積層セラミック電子部品の放熱性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】回路基板及び積層セラミックコンデンサを備える電子装置の一例を示す斜視図である。
図2図1のA-A線に沿った積層セラミックコンデンサの断面図である。
図3図1のB-B線に沿った第1実施形態の積層セラミックコンデンサの断面図である。
図4図1のA-A線に沿った第2実施形態の積層セラミックコンデンサの断面図である。
図5図1のA-A線に沿った第3実施形態の積層セラミックコンデンサの断面図である。
図6図1のA-A線に沿った第4実施形態の積層セラミックコンデンサの断面図である。
図7図1のA-A線に沿った第5実施形態の積層セラミックコンデンサの断面図である。
図8】積層セラミックコンデンサの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
図1は、回路基板9及び積層セラミックコンデンサ1を備える電子装置5の一例を示す斜視図である。電子装置5は、例えばコンピュータなどの装置であるが、限定はない。図2は、図1のA-A線に沿った積層セラミックコンデンサ1の断面図である。図3は、図1のB-B線に沿った第1実施形態の積層セラミックコンデンサ1の断面図である。なお、図1及び図2に示される構成は、他の実施形態でも共通である。
【0028】
積層セラミックコンデンサ1は積層セラミック電子部品の一例である。積層セラミックコンデンサ1は回路基板9上に設けられている。積層セラミックコンデンサ1は、略直方体形状を有する積層チップ2と、積層チップ2において互いに対向する一対の端面2A,2Bに設けられた外部電極部3a,3bとを有する。外部電極部3a,3bは、はんだ8により回路基板9の板面9S上の一対のパッド90にそれぞれ接合されている。パッド90は板面9S上に設けられた電極である。なお、積層チップ2は積層体の一例である。
【0029】
図1図3には、互いに直交するX方向、Y方向、及びZ方向が示されている。X方向は、積層セラミックコンデンサ1の長さ(L)方向であり、積層チップ2の一対の端面が対向する方向に一致する。Y方向は、積層セラミックコンデンサ1の幅(W)方向であり、積層チップ2の一対の側面が対向する方向に一致する。Z方向は、積層セラミックコンデンサ1の高さ(T)方向であり、積層セラミックコンデンサ1の積層方向に一致する。
【0030】
積層チップ2は積層体の一例である。積層チップ2は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層22と、内部電極層23とが、交互に積層され、さらに誘電体層22及び内部電極層23を積層方向の両側から挟むように積層された一対のカバー層20,21と含む。各内部電極層23は、誘電体層22を介して他の内部電極層23と対向するように設けられている。
【0031】
カバー層20,21は、積層方向における積層チップ2の上面2C及び下面2Dを構成する。上面2C及び下面2Dは、積層方向を向く積層チップ2の主面の一例である。積層チップ2において、長さ方向における各内部電極層23の一方の端部は、積層方向に沿って交互に端面2A,2Bに引き出されて露出する。
【0032】
内部電極層23は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層23として、Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。内部電極層23の厚みは、例えば1(μm)である。
【0033】
誘電体層22は、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主相とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。例えば、当該セラミック材料として、BaTiO(チタン酸バリウム),CaZrO(ジルコン酸カルシウム),CaTiO(チタン酸カルシウム),SrTiO(チタン酸ストロンチウム),MgTiO(チタン酸マグネシウム),ペロブスカイト構造を形成するBa1-x-yCaSrTi1-zZr(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1)等のうち少なくとも1つから選択して用いることができる。Ba1-x-yCaSrTi1-zZrは、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸カルシウムおよびチタン酸ジルコン酸バリウムカルシウムなどである。誘電体層22の厚みは、例えば1(μm)である。
【0034】
また、カバー層20,21も、誘電体層22と同様にセラミック材料を主成分として形成されている。カバー層20,21の厚みは、例えば100(μm)である。
【0035】
外部電極部3a,3bは、積層チップ2の表面上に直接的に形成された外部電極30a,30bと、外部電極30a,30bを覆うメッキ層31a,31bとをそれぞれ有する。外部電極30a,30bは、Cu,Ni,Al(アルミニウム),Zn(亜鉛),Au(金),Sn(錫)などの金属、またはこれらの2以上の成分を含む組成を主成分とし、外部電極30a,30bの緻密化のためのガラス成分、外部電極30a,30bの焼結性を制御するための共材、などのセラミックを含んでいてもよい。ガラス成分は、Ba(バリウム),Sr(ストロンチウム),Ca(カルシウム),Zn(亜鉛),Al,Si(ケイ素),B(ホウ素)等の酸化物である。共材は、例えば、誘電体層22の主成分と同じ材料を主成分とするセラミック成分である。
【0036】
外部電極30aは回り込み部302,303を有し、外部電極30bは回り込み部300,301を有する。回り込み部302,303は、積層チップ2の端面2Aから下面2D及び上面2Cにそれぞれ回り込んだ部分である。回り込み部300,301は、積層チップ2の端面2Bから下面2D及び上面2Cにそれぞれ回り込んだ部分である。回り込み部300,302は、長さ方向における下面2Dの両端をそれぞれ覆い、回り込み部301,303は、長さ方向における上面2Cの両端をそれぞれ覆う。回り込み部300,302は第1回り込み部の一例であり、回り込み部301,303は第2回り込み部の一例である。
【0037】
また、メッキ層31a,31bは、例えばNi,Cu,Sn等の卑金属を主成分とする。メッキ層31a,31bは、例えばメッキ液中に積層チップ2を浸漬させる電解メッキ法により形成される。なお、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂などの導電性樹脂の膜を外部電極30a,30bとメッキ層31a,31bの間に形成してもよい。
【0038】
外部電極30a,30bは、それぞれ、積層方向の下側の一端を含む下部領域Diと、積層方向の上側の一端を含む上部領域Uiとを含む。上部領域Ui及び下部領域Diは、長さ方向においてカバー層20,21にそれぞれ隣接する。下部領域Diには回り込み部300,302が含まれ、上部領域Uiには回り込み部301,303が含まれる。例えば上部領域Ui及び下部領域Diは、それぞれ、外部電極30a,30bの高さの50(%)を占める。なお、上部領域Ui及び下部領域Diの高さは、これに限定されず、例えばはんだ8に覆われる部分の高さに応じて決定してもよい。下部領域Diは第1領域の一例であり、上部領域Uiは第2領域の一例である。
【0039】
外部電極30a,30bの内部には、それぞれ、複数のポアPiが形成されている。ポアPi内には、例えば外部電極30a,30bの共材やシリコンなどが含まれることがある。ポアPiは、例えば外部電極30a,30bを形成する導電ペーストに、炭素系有機物などの造孔材を添加して焼成することにより形成される。積層セラミックコンデンサ1の製造工程において、ポアPiによって、焼き付け時の積層チップ2の収縮により外部電極30a,30bに作用する応力が緩和される。
【0040】
上部領域Ui及び下部領域Di内のポアPiの分布量は相違する。回路基板9側の下部領域Diのポア率は上部領域Uiのポア率より低い。ここで、ポア率はポアPiの多さを示す指標値の一例である。積層方向及び長さ方向に沿ったメッキ層31a,31bの断面において、上部領域Uiのポア率は、その断面積に対する上部領域Uiに含まれる全ポアPiの断面積の比であり、下部領域Diのポア率は、その断面積に対する下部領域Diに含まれる全ポアPiの断面積の比である。
【0041】
下部領域Diのポア率は上部領域Uiのポア率より低いため、下部領域Diの密度は上部領域Uiより高い。このため、下部領域Diの熱伝導率は上部領域Uiの熱伝導率より高くなる。したがって、積層チップ2内の熱は、下部領域Diを介して回路基板9に伝導しやすい。よって、積層セラミックコンデンサ1の放熱性が、上部領域Ui及び下部領域Diのポア率が実質的に同じである場合より向上する。
【0042】
下部領域Diのポア率は、熱伝導率の観点から、10%以下であると好ましく、さらに5%以下であると、より好ましい。さらに好ましくは、下部領域Diのポア率は3%以下としてもよい。また、下部領域Diのポア率は低すぎると、外部から衝撃が伝わりやすくなるおそれがあるため、0.5%以上であると好ましく、さらに1%以上であると、より好ましい。
【0043】
また、上部領域Uiのポア率は、下部領域Diへ適切に熱伝導するように、10%より大きいと好ましく、さらに15%より大きいと、より好ましい。さらに好ましくは、上部領域Uiのポア率は20%より大きくてもよい。また、上部領域Uiのポア率は高すぎると、電気抵抗が過剰に大きくなるおそれがあるため、30%以下であると好ましく、さらに25%以下であると、より好ましい。さらに好ましくは、上部領域Uiのポア率は22%以下としてもよい。
【0044】
また、外部電極30a,30bは、ポア率が上部領域Uiから下部領域Diに向かって低下するように形成されてもよい。この場合、熱収縮差が小さくなりクラックが抑制されるという利点が得られる。
【0045】
(第2実施形態)
図4は、図1のA-A線に沿った第2実施形態の積層セラミックコンデンサ1aの断面図である。図4において、図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
積層セラミックコンデンサ1aは、上記のメッキ層31a,31bに代えて、ポアPoを含むメッキ層32a,32bを有する。メッキ層32a,32bは、内部にポアPoが形成されていることを除けば、上記のメッキ層31a,31bと同様の構成を有する。ポアPoは、例えばメッキ後に一度表面を荒らし再度メッキする事により形成される。
【0047】
メッキ層31a,31bはポアPoを有しているため、積層セラミックコンデンサ1aを回路基板9にリフロー実装する際、外部電極30a,30b内で気化や分解によってガスが発生してもポアPoを介して外部に放出することができる。
【0048】
メッキ層32a,32bは、それぞれ、積層方向の下側の一端を含む下部領域Doと、積層方向の上側の一端を含む上部領域Uoとを含む。下部領域Doは回り込み部300,302側に位置し、上部領域Uoは回り込み部301,303側に位置する。例えば上部領域Uo及び下部領域Doは、それぞれ、メッキ層32a,32bの高さの50(%)を占める。なお、上部領域Uo及び下部領域Doの高さは、これに限定されず、例えばはんだ8に覆われる部分の高さに応じて決定してもよい。下部領域Doは第3領域の一例であり、上部領域Uoは第4領域の一例である。
【0049】
上部領域Uo及び下部領域Do内のポアPoの分布量は相違する。回路基板9側の下部領域Doのポア率は上部領域Uoのポア率より低い。ここで、ポア率は、ポアPoの多さを示す指標値の一例である。積層方向及び長さ方向に沿ったメッキ層32a,32bの断面において、上部領域Uoのポア率は、その断面積に対する上部領域Uoに含まれる全ポアPoの断面積の比であり、下部領域Doのポア率は、その断面積に対する下部領域Doに含まれる全ポアPoの断面積の比である。
【0050】
下部領域Doのポア率は上部領域Uoのポア率より低いため、下部領域Doの密度は上部領域Uoより高い。このため、下部領域Doの熱伝導率は上部領域Uoの熱伝導率より高くなる。したがって、積層チップ2内の熱は、下部領域Doを介して回路基板9に伝導しやすい。よって、積層セラミックコンデンサ1aの放熱性が、上部領域Uo及び下部領域Doのポア率が実質的に同じである場合より向上する。
【0051】
下部領域Doのポア率は、熱伝導率の観点から、10%以下であると好ましく、さらに5%以下であると、より好ましい。さらに好ましくは、下部領域Doのポア率は3%以下としてもよい。また、下部領域Doのポア率は低すぎると、落下時に衝撃が伝わりやすくなるおそれがあるため、0.1%以上であると好ましく、さらに0.5%以上であると、より好ましい。さらに好ましくは、下部領域Doのポア率は1%以上としてもよい。
【0052】
また、上部領域Uoのポア率は、下部領域Doへ適切に熱伝導するように、10%より大きいと好ましく、さらに15%より大きいと、より好ましい。上部領域Uoのポア率は20%より大きくてもよい。また、上部領域Uoのポア率は高すぎると、はんだの濡れ性が悪化するおそれがあるため、30%以下であると好ましく、さらに25%以下であると、より好ましい。さらに好ましくは、上部領域Uoのポア率は22%以下としてもよい。
【0053】
また、メッキ層32a,32bは、ポア率が上部領域Uoから下部領域Doに向かって低下するように形成されてもよい。この場合、熱収縮差が小さくなりクラックが抑制されるという利点が得られる。
【0054】
また、符号Kで示されるように、上部領域UoのポアPoの一部は、上部領域Uoの外表面に形成されている。このため、積層セラミックコンデンサ1aを回路基板9に実装する際、はんだ8が上部領域Uoまで濡れ上げることが抑制される。
【0055】
(第3実施形態)
図5は、図1のA-A線に沿った第3実施形態の積層セラミックコンデンサ1bの断面図である。図5において、図4と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0056】
積層セラミックコンデンサ1bは、上記の外部電極30a,30bに代えて、回路基板9側の回り込み部300,302の厚みTdを反対側の回り込み部301,303の厚みTuより増した外部電極33a,33bを有する。なお、外部電極33a,33bの内部には、上記の外部電極30a,30bと同様にポアPiが形成されている。
【0057】
このように、回路基板9側の回り込み部300,302の厚みTdは、反対側の回り込み部301,303の厚みTuより厚いため、厚みTd,Tuが等しい場合より、積層チップ2の下面2Dと回路基板9の間の隙間Sを拡張することができる。このため、下面2Dから隙間Sに放出された熱を外部電極33a,33bから放熱しやすくなる。
【0058】
回路基板9側の回り込み部300,302の厚みTdは、熱伝導率の観点から、反対側の回り込み部301,303の厚みTuの1.1倍以上とすると好ましく、さらに1.2倍以上とすると、より好ましい。さらに好ましくは、厚みTdは厚みTuの1.3倍以上としてもよい。なお、本形態のように厚みTd,Tuが相違する構成は、第1形態に適用することも可能である。
【0059】
(第4実施形態)
図6は、図1のA-A線に沿った第4実施形態の積層セラミックコンデンサ1cの断面図である。図6において、図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0060】
積層セラミックコンデンサ1cは、上記のカバー層20に代えて、カバー層21と色が相違するカバー層20aを有する。カバー層20a,21は第1カバー層及び第2カバー層の一例である。
【0061】
カバー層20aは、製造工程において、例えばマンガンやモリブデンなどを顔料として添加された誘電体のスラリーから形成される。これにより、カバー層20aは、回路基板9側のカバー層21とは異なる色を呈する。
【0062】
したがって、積層セラミックコンデンサ1cを回路基板9に実装する際、カバー層20aの色を目印として、積層セラミックコンデンサ1cの向きを決定することができる。具体的には、積層セラミックコンデンサ1cを、色の異なるカバー層20aが上側に向くように回路基板9に実装することができる。
【0063】
よって、カバー層20a,21の色が同一である場合と比べると、積層セラミックコンデンサ1cの実装の利便性が向上する。ここで、カバー層20aに代えて、他方のカバー層21の色を異ならせた場合も上記と同様の効果が得られる。なお、本形態のように色が相違するカバー層20a,21は、第2及び第3形態の積層セラミックコンデンサ1a,1bに適用することも可能である。
【0064】
(第5実施形態)
図7は、図1のA-A線に沿った第5実施形態の積層セラミックコンデンサ1dの断面図である。図7において、図2と共通する構成には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0065】
積層セラミックコンデンサ1dは、カバー層20の表面に、カバー層21から区別するための識別部200を有する。カバー層20,21は第1カバー層及び第2カバー層の一例である。
【0066】
識別部200としては、例えばシール、塗料、及び突起物などのマーカーが挙げられるが、これに限定されない。本形態では、第4形態と同様に積層セラミックコンデンサ1dを回路基板9に実装する際、識別部200を目印として、積層セラミックコンデンサ1dの向きを決定することができる。
【0067】
よって、識別部200が設けられていない場合と比べると、積層セラミックコンデンサ1dの実装の利便性が向上する。ここで、識別部200をカバー層20に代えて、他方のカバー層21に設けた場合も上記と同様の効果が得られる。なお、識別部200は、第2及び第3形態の積層セラミックコンデンサ1a,1bのカバー層20に適用することも可能である。
【0068】
なお、これまで述べたポアPi,Poのポア率の分布形態は、外部電極部3a,3bの一方のみに適用されてもよい。
【0069】
(積層セラミックコンデンサの製造工程)
図8は、積層セラミックコンデンサ1,1a~1dの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【0070】
(グリーンシート成形工程)
まずグリーンシート成形工程St1が行われる。本工程では、例えばセラミック粉末に各種の添加化合物(焼結補助剤など)を添加することで得た誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に誘電体グリーンシートを塗工して乾燥させる。基材は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムである。
【0071】
なお、セラミック粉末の添加化合物としては、Mg(マグネシウム),Mn(マンガン),V(バナジウム),Cr(クロム),希土類元素(Y(イットリウム),Sm(サマリウム),Eu(ユーロピウム),Gd(ガドリニウム),Tb(テルビウム),Dy(ジスプロシウム),Ho(ホルミウム),Er(エルビウム),Tm(ツリウム)およびYb(イッテルビウム))の酸化物、並びに、Co(コバルト),Ni,Li(リチウム),B(ホウ素),Na(ナトリウム),K(カリウム)およびSi(シリコン)の酸化物もしくはガラスが用いられる。
【0072】
(内部電極印刷工程)
次に内部電極印刷工程St2が行われる。本工程では、基材上の誘電体グリーンシートに、有機バインダを含む内部電極形成用の金属の導電ペーストをグラビア印刷などにより印刷することで、内部電極層23に対応する複数の内部電極パターンを互いに離間させて成膜する。導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層22の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0073】
(積層・圧着工程)
次に積層・圧着工程St3が行われる。本工程では、内部電極パターンが印刷された誘電体グリーンシートを積層し、積層方向に加圧することで圧着することにより積層シートを形成する。積層シートの積層方向の両端面には、カバー層20,20a,21に対応する誘電体グリーンシートがそれぞれ積層される。なお、積層セラミックコンデンサ1cの場合、カバー層20aに対応する誘電体グリーンシートは、マンガンやモリブデンなどの顔料が添加された誘電体スラリーから形成される。
【0074】
(切断工程)
次に切断工程St4が行われる。本工程では、圧着された積層シートをブレードにより略直方体形状の複数個の積層チップ2に分断する。
【0075】
(研磨工程)
次に研磨工程St5が行われる。本工程では、焼成前の積層チップ2を例えばバレル研磨などの手法により研磨する。これにより、積層チップ2の角部が丸められる。
【0076】
(外部電極形成工程)
次に外部電極形成工程St6が行われる。本工程では、例えば金属粉末、ガラスフリット、バインダ、および溶剤を含む導電ペーストを積層チップ2の各端面2A,2B、上面2C、下面2D、及び各側面2E,2Fに塗布する。
【0077】
導電ペーストには、塗布に先立ち、ポアPiを形成するために炭素系有機物などの造孔材が添加される。上部領域Ui及び下部領域Di内のポア率を異ならせるため、造孔材の添加量の異なる上部領域Ui用の導電ペーストと、下部領域Di用の導電ペーストが用いられる。
【0078】
導電ペーストの塗布後、乾燥させることにより、外部電極30a,30b,33a,33bが形成される。このとき、導電ペースト内の造孔材の作用によりポアPiが形成される。なお、バインダおよび溶剤は、焼き付けによって蒸発する。導電ペーストの塗布手段としては、例えばスパッタリング法及びディップ法が挙げられる。
【0079】
(焼成工程)
次に焼成工程St7が行われる。本工程では、外部電極30a,30b,33a,33bが形成された積層チップ2を、250~500℃のN雰囲気中で脱バインダ処理した後、還元雰囲気中で1200℃以上の焼成温度で1時間程度焼成することで、積層チップ2内の各粒子が焼結する。
【0080】
(メッキ工程)
次にメッキ工程St8が行われる。本工程では、各外部電極30a,30b,33a,33b上にCu,Ni,Sn等の金属コーティングが行われてメッキ層31a,31b,32a,32bが形成される。
【0081】
積層セラミックコンデンサ1a,1bの場合、各メッキ層32a,32bの上部領域Uo及び下部領域Do内のポア率を異ならせるため、上部領域Uoの形成時にはメッキ後に表面を荒らしてから再度メッキし、下部領域Doの形成時ではそのままメッキする。
このようにして積層セラミックコンデンサ1,1a~1dの製造工程は行われる。
【0082】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1,1a~1d 積層セラミックコンデンサ
2 積層チップ
3a,3b 外部電極部
5 電子装置
30a,30b,33a,33b 外部電極
31a,31b,32a,32b メッキ層
20,20a,21 カバー層
22 誘電体層
23 内部電極層
200 識別部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8