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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071171
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】マニピュレータ
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20240517BHJP
   B25J 19/06 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
B25J5/00 A
B25J19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181984
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】大脇 光博
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS09
3C707CS08
3C707CS10
3C707CT05
3C707CV09
3C707CW09
3C707DS01
3C707ES03
3C707FS01
3C707FS08
3C707FT02
3C707KS34
3C707KX03
3C707MS11
3C707MT05
3C707WA16
3C707WL04
(57)【要約】
【課題】作業性を確保しつつ、転倒を防止することができるマニピュレータを提供すること。
【解決手段】マニピュレータ1は、走行体2と、走行体2に接続されたアーム部3と、を備える。アーム部3は、移動対象物10を保持する保持部31を有する。また、アーム部3は、走行体2に対して保持部31を移動させることができるよう構成されている。また、マニピュレータ1は、マニピュレータ1に下方向Z1の力を作用させる作用部4を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体(2)と、
該走行体に接続されたアーム部(3)と、を備えたマニピュレータ(1)であって、
上記アーム部は、移動対象物(10)を保持する保持部(31)を有すると共に、上記走行体に対して上記保持部を移動させることができるよう構成されており、
上記マニピュレータに下方向(Z1)の力(F1)を作用させる作用部(4)を備える、マニピュレータ。
【請求項2】
上記作用部と、上記走行体が走行する床(11)との距離を調整する距離調整部(5)を有する、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項3】
上記作用部は、真空ポンプ(41)と、該真空ポンプに接続された吸引部(42)とを有し、上記作用部は、上記吸引部によって、上記走行体が走行する床(11)を吸引することにより、上記マニピュレータに下方向の力を作用させる、請求項1又は2に記載のマニピュレータ。
【請求項4】
上記作用部、及び上記走行体が走行する床(11)は、それぞれ磁性体を有し、上記作用部と上記床とが磁力によって互いに引き付けられることにより、上記作用部は上記マニピュレータに下方向の力を作用させる、請求項1又は2に記載のマニピュレータ。
【請求項5】
上記作用部は、上記マニピュレータの外部に上方向(Z2)の力(F2)を作用させることにより、上記マニピュレータに下方向の力を作用させる、請求項1に記載のマニピュレータ。
【請求項6】
所定のタイミングにて上記マニピュレータに下方向の力を作用させるよう上記作用部を制御する制御部(14)と、上記マニピュレータに作用する下方向の力を計測する計測センサ(13)と、を備え、上記作用部は、上記制御部が送信した作動信号を受けたときに、作動するよう構成されており、
上記制御部が上記作用部に上記作動信号を送信した際に、上記計測センサによって計測された値であるセンサ計測値が所定の値未満であるとき、上記マニピュレータの少なくとも一部の動きを停止させる停止部(15)、
及び、上記制御部が上記作用部に上記作動信号を送信した際に、上記センサ計測値が所定の値未満であるとき、異常状態であると判断すると共に、上記異常状態であることを報知対象に報知する状態報知部(16)、のうち、少なくとも一つを備える、請求項1又は2に記載のマニピュレータ。
【請求項7】
上記作用部は、上記マニピュレータの外部に設けられた支持部(12)に支持させることが可能な被支持部(43)を有し、上記支持部に上記被支持部を支持させることにより、上記被支持部に下方向の力を作用させる、請求項1に記載のマニピュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、車両と、車両に取付けられたマニピュレータアームとからなるマニピュレータが知られている。特許文献1に記載のマニピュレータは、作業スペースが狭く、かつ床の耐荷重の小さい作業現場で使用できるよう、小型軽量化を図ると共に、マニピュレータの重心が車両を中心とする所定領域内に位置するように車両を移動させることにより、転倒防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05-004177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のマニピュレータは、小型軽量化を図っているため、車両を支持している複数の支持点、つまり複数の車輪の接地部分に囲まれた領域が狭くなりやすく、上記所定領域が狭くなりやすい。また、特許文献1に記載のマニピュレータは、マニピュレータアームによってワークを把持する際、マニピュレータの重心が上記所定領域内に位置するように車両を移動させるため、マニピュレータアームの姿勢が制限されやすい。それゆえ、特許文献1に記載のマニピュレータは、作業性確保の観点から、改善の余地があるといえる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、作業性を確保しつつ、転倒を防止することができるマニピュレータを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、走行体(2)と、
該走行体に接続されたアーム部(3)と、を備えたマニピュレータ(1)であって、
上記アーム部は、移動対象物(10)を保持する保持部(31)を有すると共に、上記走行体に対して上記保持部を移動させることができるよう構成されており、
上記マニピュレータに下方向(Z1)の力(F1)を作用させる作用部(4)を備える、マニピュレータにある。
【発明の効果】
【0007】
上記マニピュレータは作用部を備える。それゆえ、移動対象物を保持した保持部をアーム部によって移動させた際や、保持部が移動対象物を保持した際の転倒を防止することができる。その結果、作業性を確保しつつ、転倒を防止することができる。
【0008】
以上のごとく、上記態様によれば、作業性を確保しつつ、転倒を防止することができるマニピュレータを提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1における、マニピュレータの外観図。
図2】実施形態1における、マニピュレータに作用する下方向の力と、床に作用する上方向の力とを示す図。
図3】実施形態2における、マニピュレータの外観図。
図4】実施形態2における、作用部付近の外観図であって、距離調整部によって作用部を床に当接させた様子を示す図。
図5】実施形態2における、マニピュレータに作用する下方向の力と、床に作用する上方向の力とを示す図。
図6】実施形態3における、作用部付近の外観図。
図7】実施形態4における、作用部付近の外観図。
図8】実施形態5における、作用部付近の外観図。
図9】実施形態5における、作用部付近の外観図であって、距離調整部によって作用部と床との間の距離を調整した後の図。
図10】実施形態6における、作用部付近の外観図。
図11】実施形態6における、作用部付近の外観図であって、距離調整部によって作用部と床との間の距離を調整した後の図。
図12】実施形態7における、作用部付近の外観図。
図13】実施形態7における、作用部付近の外観図であって、距離調整部によって作用部と床との間の距離を調整した後の図。
図14】実施形態8における、作用部付近の外観図であって、距離調整部によって作用部を床に当接させた様子を示す図。
図15】実施形態8における、異常状態と正常状態とを示すグラフ。
図16】実施形態8における、停止部によってアーム部の動作を制御するときのフローチャート。
図17】実施形態8における、状態報知部によって異常状態の報知を制御するときのフローチャート。
図18】実施形態9における、マニピュレータの外観図。
図19】実施形態10における、マニピュレータの外観図。
図20】実施形態11における、マニピュレータの外観図。
図21】実施形態12における、マニピュレータの外観図。
図22】実施形態13における、作用部付近の外観図。
図23】実施形態13における、被支持部に作用する下方向の力と、支持部に作用する上方向の力とを示す図。
図24】実施形態14における、作用部付近の外観図。
図25】実施形態14における、被支持部に作用する下方向の力と、支持部に作用する上方向の力とを示す図。
図26】実施形態15における、マニピュレータの外観図。
図27】実施形態16における、作用部付近の外観図。
図28】実施形態17における、作用部付近の外観図。
図29】実施形態18における、作用部付近の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
マニピュレータに係る実施形態について、図1図2を参照して説明する。
本形態のマニピュレータ1は、図1図2に示すごとく、走行体2と、走行体2に接続されたアーム部3と、を備える。アーム部3は、移動対象物10を保持する保持部31を有すると共に、走行体2に対して保持部31を移動させることができるよう構成されている。また、マニピュレータ1は、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる作用部4を備える。
【0011】
本形態のマニピュレータ1は、例えば、工場、倉庫、病院、スーパーマーケット等における、移動の対象となる物である移動対象物10の搬送等の手段として用いることができる。
【0012】
また、本明細書において、重力方向に平行な方向を上下方向Zという。また、上下方向Zにおける、重力方向を下方向Z1とし、その反対側を上方向Z2という。
【0013】
マニピュレータ1は、走行体2によって移動できるよう構成されている。走行体2は、筐体22と、複数の車輪21とを備えている。筐体22の下端部に車輪21が設けられている。また、走行体2は、筐体22の内側に、車輪21を駆動させる駆動部(図示略)を備える。駆動部は、例えば、モーターとすることができる。マニピュレータ1は、走行体2によって、床11の上を任意の方向へ移動することができる。
【0014】
図1に示すごとく、走行体2の上端部には、アーム部3が接続されている。アーム部3は、基部32と第1アーム部33と第2アーム部34と保持部31とを有する。基部32は、走行体2の上端部に接続されている。第1アーム部33の一端は基部32に接続されており、第1アーム部33の他端は、第2アーム部34の一端に接続している。第2アーム部34の他端には保持部31が接続されている。
【0015】
基部32と第1アーム部33との互いの接続部、第1アーム部33と第2アーム部34との互いの接続部、第2アーム部34と保持部31との互いの接続部には、それぞれ、関節部302、303、304が設けられている。関節部302が設けられていることにより、第1アーム部33は、基部32に対し、任意の方向に回動および屈曲することができる。第2アーム部34は、関節部303によって、第1アーム部33に対し、任意の方向に回動および屈曲することができる。また、保持部31は、関節部304によって、第2アーム部34に対し、任意の方向に回動および屈曲することができる。これにより、マニピュレータ1は、走行体2に対し、保持部31を任意の方向に移動させることができる。
【0016】
それぞれの関節部302、303、304には、第1アーム部33、第2アーム部34、及び保持部31を回動及び屈曲させるためのアクチュエータ(図示略)が設けられている。アクチュエータは、モーター(図示略)等によって構成されている。
【0017】
また、走行体2と基部32との間には接続部301が設けられている。接続部301は、基部32が、走行体2に対し、回動可能となるように構成されている。接続部301には、走行体2に対し基部32を回動させるアクチュエータ(図示略)が設けられている。
【0018】
本形態において、保持部31は、一対の指部311を備える。保持部31は、移動対象物10を一対の指部311によって把持できるよう構成されている。
【0019】
また、本形態において、走行体2の下端部には、作用部4が設けられている。作用部4は、真空ポンプ41と、真空ポンプ41に接続された吸引部42とを有する。作用部4は、吸引部42によって、走行体2が走行する床11を吸引することにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。
【0020】
作用部4は、真空ポンプ41が発生させる負圧によって、吸引部42を床11に吸着させることができる。吸引部42における床11と接する部分の材質は、例えば、ナイロン、ニトリルゴム、シリコーンゴム等とすることができる。本形態において、吸引部42における床11と接する部分の材質は、ナイロンである。
【0021】
本形態において、作用部4は、常に、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させるわけではなく、保持部31により移動対象物10を保持する場合や、アーム部3を伸展させる場合など、所定のタイミングにてマニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。
【0022】
また、作用部4がマニピュレータ1に作用させる下方向Z1の力F1とは、作用部4がマニピュレータ1に作用させる力のうち、下方向Z1の力F1の成分を意味する。そのため、例えば、作用部4が、マニピュレータ1に対し、上下方向Zに対して傾斜した方向の力を作用させることにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させることもできる。
【0023】
また、マニピュレータ1は、アーム部3による移動対象物10の把持、及び走行体2によるマニピュレータ1の移動を、自律して行うよう構成されている。マニピュレータ1は、マニピュレータ1の動作の制御を行う制御部14と、ステレオカメラ等の検知センサ(図示略)とを有する。マニピュレータ1は、制御部14によって、アーム部3の動作や走行体2の制御を行う。また、マニピュレータ1は、検知センサによって移動対象物10やその他の外部を検知することができる。制御部14は、プロセッサとメモリとを備えている。
【0024】
次に、マニピュレータ1が、移動対象物10を搬送する場合の具体例について説明する。マニピュレータ1は、まず、自律的に移動を開始し、移動対象物10が載置された棚(図示略)に向かうと共に、その棚の近傍にて停止する。
【0025】
次に、作用部4を作動させる。つまり、真空ポンプ41によって負圧を発生させることにより、吸引部42を床11に吸着させる。その結果、図2に示すごとく、床11が吸引部42に吸引されることにより、床11の一部に、上方向Z2の力F2が作用する。つまり、作用部4は、床11に対し、重力方向とは反対側の方向の力を作用させる。その結果、床11からの反作用により、マニピュレータ1に作用する下方向Z1の力が増大する。つまり、マニピュレータ1に作用する下方向Z1の力として、重力に、作用部4がマニピュレータ1に作用させる下方向Z1の力F1が加わる。
【0026】
その後、マニピュレータ1は、移動対象物10へ向けてアーム部3を伸展させることにより、保持部31を移動対象物10に近づける。次いで、保持部31の一対の指部311によって移動対象物10を把持する。その後、マニピュレータ1の重心を走行体2の中心に近づかせるため、移動対象物10を把持した保持部31を、走行体2の中心に近づくようにアーム部3を屈曲させる。
【0027】
マニピュレータ1は、アーム部3を屈曲させた後、作用部4を停止させる。つまり、吸引部42による床11の吸引を停止する。その後、マニピュレータ1は、移動対象物10の搬送先まで自律的に移動する。マニピュレータ1は、搬送先に到着した後、走行体2を停止させると共に、再び作用部4を作動させる。その後、マニピュレータ1は、搬送先の棚へ向けてアーム部3を伸展させ、移動対象物10を搬送先に載置する。
【0028】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記マニピュレータ1は作用部4を備える。それゆえ、移動対象物10を保持した保持部31をアーム部3によって移動させた際や、保持部31が移動対象物10を保持した際の転倒を防止することができる。その結果、作業性を確保しつつ、転倒を防止することができる。
【0029】
マニピュレータ1は、移動対象物10の保持やアーム部3の伸展によって重心が移動する。ここで、本形態のマニピュレータ1は、移動対象物10の保持やアーム部3を伸展させる際、作用部4を作動させ、マニピュレータ1に下方向Z1の力を作用させることができる。そのため、アーム部3の伸展等によって、マニピュレータ1の重心が移動したとしても、転倒を抑制することができる。つまり、移動対象物10を保持したまま、アーム部3を伸展させた場合や、重量が比較的大きい移動対象物10を保持した場合であっても、転倒を防止することができる。その結果、作業性を確保しつつ、転倒を防止することができる。
【0030】
また、マニピュレータ1が作用部4を備えるため、マニピュレータ1を小型化させた場合であっても、転倒を防止しやすい。それゆえ、マニピュレータ1の小型化を図りつつ、転倒を防止することができる。そのため、比較的狭い場所であっても、移動及び作業を行うことが可能となり、工場、病院などにおいて、マニピュレータ1を人と協働させやすい。その結果、作業性を向上させることができる。
【0031】
また、作用部4が、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させることにより、走行体2の筐体22を床11に近づけることができる。それゆえ、マニピュレータ1の重心が下側に移動しやすい。それゆえ、マニピュレータ1の転倒を一層防止しやすい。
【0032】
作用部4は、真空ポンプ41と吸引部42とを有する。また、作用部4は、吸引部42によって床11を吸引することにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。それゆえ、マニピュレータ1の転倒を確実に防止することができる。その結果、作業性を確保しつつ、転倒を確実に防止することができる。
【0033】
以上のごとく、本形態によれば、作業性を確保しつつ、転倒を防止することができるマニピュレータ1を提供することができる。
【0034】
実施形態1において、マニピュレータ1は、移動する際、作用部4を停止させる。ただし、マニピュレータは、作用部を作動させた状態のまま、移動する構成とすることもできる。つまり、吸引部を床に吸着させた状態にて、走行体を走行させることができる。この場合、吸引部における床と接する部分の材質を、摩擦係数が比較的小さいナイロン等の樹脂系素材とすることにより、マニピュレータの移動性を確保することができる。また、マニピュレータが走行する際、作用部の吸引力を調整し、移動対象物を把持するときの吸引力よりも、吸引力を低下させることにより、マニピュレータの移動性を確実に確保しつつ、移動中のマニピュレータの転倒を防止することができる。
【0035】
(実施形態2)
本形態は、図3図5に示すごとく、作用部4の位置を移動させる距離調整部5を備えた形態である。
【0036】
本形態において、マニピュレータ1は、図3図5に示すごとく、作用部4と、走行体2が走行する床11との距離を調整する距離調整部5を有する。
【0037】
距離調整部5は、走行体2の筐体22内に設けられている。本形態において、距離調整部5は、モーター等を備えたアクチュエータである。距離調整部5の下端部には、作用部4が固定されている。距離調整部5は、図3図4に示すごとく、作用部4を上下方向Zに移動させることにより、作用部4と床11との間の距離を調整する。
【0038】
次に、マニピュレータ1が移動対象物10を搬送する場合の具体例について説明する。
マニピュレータ1は、まず、移動対象物10が載置された棚(図示略)に向かうと共に、その棚の近傍にて停止する。
【0039】
次に、マニピュレータ1は、距離調整部5を作動させ、図4に示すごとく、作用部4を下方向Z1に移動させる。これにより、作用部4の吸引部42と床11とを互いに当接させる。その後、作用部4を作動させ、図5に示すごとく、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。
【0040】
次に、マニピュレータ1は、アーム部3を伸展させると共に、保持部31によって移動対象物10を把持する。その後、マニピュレータ1は、移動対象物10を把持したまま、アーム部3を屈曲させ、アーム部3を元の位置に戻した後、作用部4を停止させる。次に、距離調整部5を作動させることにより、図3に示すごとく、作用部4を上方向Z2に移動させ、吸引部42を床11から離す。その後、マニピュレータ1は、搬送先まで自律的に移動する。つまり、マニピュレータ1は、吸引部42が床11から充分に離れた状態にて移動を行う。
【0041】
マニピュレータ1は、搬送先に到着した後、停止する。そして、図4に示すごとく、距離調整部5によって、作用部4を下方向Z1に移動させると共に、作用部4を作動させる。その後、マニピュレータ1は、搬送先へ向けてアーム部3を伸展させ、移動対象物10を搬送先に載置する。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0042】
マニピュレータ1は距離調整部5を有する。それゆえ、例えば、車輪21の外径が大きく、作用部4を設置した走行体2の筐体22と床11との間の距離が大きい場合であっても、距離調整部5によって作用部4と床11との間の距離を小さくすることができる。これにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を確実に作用させることができる。その結果、マニピュレータ1の転倒を確実に防止することができる。また、マニピュレータ1が移動する際、距離調整部5によって、作用部4を床11から充分に離すことにより、マニピュレータ1の移動性を確実に確保することができる。その結果、作業性を確実に確保することができる。
【0043】
また、距離調整部5によって、吸引部42と床11とを確実に、互いに当接させることができる。そのため、マニピュレータ1に下方向Z1の強い力F1を作用させることができる。その結果、マニピュレータ1の転倒を一層防止することができる。
【0044】
マニピュレータ1は、距離調整部5を作動させ、作用部4を下方向Z1に移動させる。それゆえ、マニピュレータ1の重心を下方向Z1に移動させることができる。その結果、マニピュレータ1の転倒を一層防止することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0045】
(実施形態3)
本形態は、図6に示すごとく、磁力によってマニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる形態である。
【0046】
本形態において、作用部4及び床11は、それぞれ磁性体を有する。作用部4と床11とが磁力によって互いに引き付けられることにより、作用部4はマニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。
【0047】
本形態において、作用部4は電磁コイル44である。電磁コイル44は、走行体2の下端部に設置されている。電磁コイル44は、上下方向Zにおいて、床11から離れた位置に設置される。電磁コイル44は、磁性体としての鉄心(図示略)と、鉄心の周りに導線を巻回してなるコイル部(図示略)とを有する。
【0048】
また、床11は、例えば、鉄、フェライト、ネオジム磁石等の磁性体とすることができる。本形態において、床11は鉄板からなる。マニピュレータ1は、電磁コイル44のコイル部に通電することにより、電磁コイル44と床11とが互いに引き合う磁力を発生させる。これにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1が作用する。
【0049】
次に、本形態のマニピュレータ1による移動対象物10の搬送について説明する。
まず、マニピュレータ1は、移動対象物10が載置された棚の近傍に移動した後、作用部4である電磁コイル44に通電することにより、作用部4と床11とを磁力によって互いに引き付けさせる。これにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1が作用する。その後、マニピュレータ1は、アーム部3を伸展させ、移動対象物10を保持する。
【0050】
次に、マニピュレータ1は、アーム部3を屈曲させ、アーム部3を元の位置に戻した後、作用部4への通電を停止し、作用部4と床11とを互いに引き付ける磁力の発生を停止する。その後、マニピュレータ1は、搬送先へ向かって移動し、搬送先の近傍に停止する。そして、再び作用部4に通電することにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。その後、マニピュレータ1は、搬送先に移動対象物10を載置して搬送を終える。
その他は、実施形態1と同様である。
【0051】
本形態において、作用部4及び床11は、それぞれ磁性体を有する。そして、作用部4と床11とが磁力によって互いに引き付けられることにより、作用部4はマニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。それゆえ、マニピュレータ1の転倒を確実に防止することができる。
【0052】
また、作用部4は電磁コイル44からなる。それゆえ、電磁コイル44への通電を調整することにより、磁力の発生の調整を迅速かつ容易に行うことができる。それゆえ、作業性を一層向上させることができる。
【0053】
また、作用部4は電磁コイル44であるため、作用部4が床11から離れた状態であっても、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を充分に作用させることができる。それゆえ、作用部4と床11との間の距離を調整することなく、作用部4を作動させやすい。その結果、作業性を一層向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0054】
実施形態3において、作用部4は電磁コイル44であると共に、床11は磁性体の鉄板からなる。ただし、作用部を電磁コイルにすると共に、床に電磁コイルを設置し、双方の電磁コイルに通電することにより、マニピュレータに下方向の力を作用させる構成とすることもできる。
【0055】
実施形態3において、マニピュレータ1は、走行体2によって走行する際に、電磁コイルへの通電を停止させる。ただし、マニピュレータは、電磁コイルに通電し、磁力を発生させたまま、走行体によって走行する構成とすることもできる。この場合、例えば、重量が比較的大きい移動対象物を搬送する際、移動中のマニピュレータの転倒を確実に防止することができる。
【0056】
(実施形態4)
本形態は、図7に示すごとく、床11に電磁コイル111が設置された形態である。
【0057】
作用部4は、走行体2の下端部に設置されている。本形態において、作用部4は、例えば、鉄、フェライト、ネオジム磁石等の磁性体からなる。
【0058】
本形態のマニピュレータ1は、移動対象物10を搬送する際、移動対象物10が載置された棚に向かって移動すると共に、棚の近傍の床11に設置された電磁コイル111を認識し、作用部4が電磁コイル111の上方に位置するように停止する。その後、例えば、マニピュレータ1の制御部14からの指令により、床11に設置された電磁コイル111を通電する。これにより、作用部4と電磁コイル111との間に、互いに引き合う磁力を発生させ、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。その後、マニピュレータ1は、アーム部3を伸展させ、移動対象物10を保持する。
【0059】
次に、マニピュレータ1は、アーム部3を屈曲させ、アーム部3を元の位置に戻す。その後、マニピュレータ1の制御部14から電磁コイル111に指令を送り、電磁コイル111への通電を停止し、磁力の発生を停止する。これにより、作用部4と床11とを互いに引き付ける磁力の発生を停止する。
その他の構成及び作用効果は、実施形態3と同様である。
【0060】
実施形態4において、作用部4は、走行体2の下端部に設置されている。ただし、例えば、走行体の筐体を鉄等からなる磁性体とすることにより、走行体の筐体と床に設置された電磁コイルとが磁力によって互いに引き付けられる構成とすることができる。この場合、走行体の筐体が作用部となる。
【0061】
(実施形態5)
本形態は、図8図9に示すごとく、実施形態3に対し、距離調整部5を備えた形態である。
【0062】
図8図9に示すごとく、作用部4である電磁コイル44は、距離調整部5の下端部に固定されている。本形態の距離調整部5は、実施形態2の距離調整部5と同様の構成を有する。距離調整部5は、作用部4が固定された下端部を上下方向Zに移動させることにより、作用部4と床11との間の距離を調整する。
その他は、実施形態3と同様である。
【0063】
マニピュレータ1は、作用部4である電磁コイル44と、距離調整部5とを備える。それゆえ、電磁コイル44と床11との間の距離を調整することができる。そのため、移動対象物10を保持する際、図9に示すごとく、距離調整部5によって、作用部4と、磁性体からなる床11との間の距離を小さくすることにより、作用部4と床11とを互いに強く引き付けさせることができる。その結果、マニピュレータ1に作用する下方向Z1の力F1を大きくすることができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0064】
(実施形態6)
本形態は、図10図11に示すごとく、走行体2にアクティブサスペンションを設けた形態である。すなわち、本形態において、距離調整部5は、アクティブサスペンションである。
【0065】
本形態において、走行体2の筐体22内には、複数のアクティブサスペンションが設けられている。距離調整部5であるアクティブサスペンションは、例えば、油圧や空気圧などで上下方向Zに伸縮できるよう構成されている。マニピュレータ1は、図10図11に示すごとく、アクティブサスペンションの伸縮により、作用部4と床11との間を調整するよう構成されている。つまり、アクティブサスペンションを収縮させることにより、走行体2を床11に近づける。これにより、作用部4と床11との間の距離を小さくすることができる。
その他の構成及び作用効果は、実施形態3と同様である。
【0066】
(実施形態7)
本形態は、図12図13に示すごとく、車輪21を変形できるよう構成された形態である。
【0067】
本形態において、車輪21は、図12図13に示すごとく、ホイール部211とタイヤ部212とを有する。ホイール部211は、例えば、アクチュエータを用いることによって、図12図13に示すごとく、所定の2種類の形状に変形できるよう構成されている。また、タイヤ部212は、ゴム等の、ゴム弾性を備えた素材からなる。タイヤ部212は、ホイール部211の変形に追随して形状が変形する。
【0068】
車輪21が変形することにより、作用部4と床11との間の距離が変化する。つまり、車輪21の中心軸に沿った方向から見たときの車輪21の形状が、図12に示すごとく、略円形状である場合と比較し、図13に示すように略三角形状であるとき、作用部4と床11との間の距離が小さくなっている。つまり、車輪21は、距離調整部5でもある。
その他は、実施形態3と同様である。
【0069】
本形態において、車輪21は、所定の2種類の形状に変形できるよう構成されている。そのため、車輪21の形状を変更させることにより、作用部4と床11との間の距離を調整することができる。それゆえ、保持部31によって移動対象物10を保持する際、車輪21の形状を変更させると共に、作用部4を作動させることにより、マニピュレータ1に作用する下方向Z1の力F1を大きくすることができる。その結果、転倒を一層防止することができる。
【0070】
また、車輪21の形状の変形によって、マニピュレータ1の重心を下側に移動させることができる。それゆえ、マニピュレータ1の転倒を、より一層防止することができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0071】
(実施形態8)
本形態は、図14図17に示すごとく、異常状態が発生したと判断した際に、安全対策を実施できるよう構成された形態である。
【0072】
マニピュレータ1は、図14に示すごとく、制御部14と、計測センサ13と、を備える。制御部14は、所定のタイミングにてマニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させるよう作用部4を制御する。計測センサ13は、マニピュレータ1に作用する下方向Z1の力F1を計測する。また、作用部4は、制御部14が送信した作動信号を受けたときに、作動するよう構成されている。
【0073】
また、マニピュレータ1は、停止部15及び状態報知部16のうち、少なくとも一つを備える。停止部15は、制御部14が作用部4に作動信号を送信した際に、計測センサ13によって計測された値であるセンサ計測値が所定の値未満であるとき、マニピュレータ1の少なくとも一部の動きを停止させる。状態報知部16は、制御部14が作用部4に作動信号を送信した際に、センサ計測値が所定の値未満であるとき、異常状態であると判断すると共に、異常状態であることを報知対象に報知する。本形態において、マニピュレータ1は、停止部15及び状態報知部16の双方を備える。また、本形態において、状態報知部16の報知対象は、マニピュレータ1と協働する作業者である。
【0074】
本形態において、計測センサ13は、マニピュレータ1の重量を測定するセンサである。計測センサ13は、マニピュレータ1に作用する下方向Z1の力である重力と、作用部4が発生させる力との双方を計測する。計測センサ13は、走行体2に設けられている。計測センサ13は、例えば、走行体2の車輪21、車軸、サスペンション等に組み付けることができる。
【0075】
制御部14は、センサ計測値を取得するよう構成されている。そして、制御部14は、作用部4に作動信号を送信した際に、センサ計測値が所定の値未満であるとき、アーム部3の動きを停止させると共に、異常状態であると判断する。つまり、制御部14は、停止部15及び状態報知部16の一部でもある。
【0076】
具体的には、制御部14が作動信号を送信することにより、図15に示すごとく、作用部4が停止状態から作動状態に切り替わり、センサ計測値が増加する。このとき、作用部4が正常に作動した場合、センサ計測値は、図15の破線にて示したグラフのように、予め定めた基準値を上回る。一方、例えば、作用部4の吸引部42が異物を吸着した場合、センサ計測値は、図15の実線にて示したグラフのように、予め定めた基準値を下回ることがある。この場合、制御部14は、異常状態と判断し、アーム部3の動きを停止させる。
【0077】
次に、図16に示したフローチャートに基づいて、アーム部3の動作を停止する制御を行う場合の説明を行う。まず、ステップS11に示すように、作用部4を作動させる。その後、計測センサ13は、ステッS12にて、マニピュレータ1の荷重を複数回計測する。
【0078】
次に、ステップS13において、制御部14は、複数回計測したマニピュレータ1の荷重の平均値が、基準値を上回るか否か判断する。ここで、制御部14は、マニピュレータ1の荷重の平均値が、基準値を上回る場合、正常であると判断し、アーム部3の動作を停止させることなく、制御を終了する。一方、ステップS13において、マニピュレータ1の荷重の平均値が、基準値以下である場合、ステップS14へと進み、停止部15である制御部14は、アーム部3の動作を停止させる。その後、異常状態が解消するまで、アーム部3の動作を停止させた状態を維持する。
【0079】
また、本形態において、状態報知部16は、図14に示すごとく、スピーカー(図示略)とディスプレイ161とを有する。状態報知部16は、異常状態であると判断したとき、報知対象であるマニピュレータ1の周囲の作業者に異常状態を伝えるため、スピーカーから異常状態である旨の音を発すると共に、ディスプレイ161に異常状態である旨の画像を表示する。
【0080】
次に、図17に示したフローチャートに基づいて、異常状態を報知する制御を行う場合の説明を行う。
ステップS21、S22は、図16に示したフローチャートのS11、S12と同様の内容を行う。そして、ステップS23において、制御部14は、マニピュレータ1の荷重の平均値が、基準値を上回る場合、正常であると判断し、異常状態を報知することなく、制御を終了する。一方、ステップS23において、マニピュレータ1の荷重の平均値が、基準値以下である場合、ステップS24へと進む。そして、状態報知部16は、報知対象である作業者に異常状態を伝えるため、スピーカーから音を発すると共に、ディスプレイ161に画像を表示する。その後、異常状態が解消するまで、状態報知部16は、スピーカー及びディスプレイ161を作動させる。
その他は、実施形態2と同様である。
【0081】
マニピュレータ1は、制御部14と計測センサ13とを備える。また、マニピュレータ1は、停止部15及び状態報知部16のうち、少なくとも一つを備える。それゆえ、異常状態を検知した後、所定の安全のための行動をとることができる。具体的には、マニピュレータ1が停止部15を備える場合、アーム部3の動作を停止させることにより、作用部4が充分に機能しない状態において、アーム部3が移動対象物10を把持することを防ぐことができる。その結果、マニピュレータ1の転倒を確実に防止することができる。また、マニピュレータ1が状態報知部16を備える場合、異常状態であることを報知対象に報知することにより、報知対象に異常状態を解消させることができる。そのため、安全性及び作業性を向上させることができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0082】
(実施形態9)
本形態は、作用部4によって磁力を発生させた際の斥力により、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる形態である。
【0083】
本形態において、天井17には、図18に示すごとく、磁石171が設置されている。磁石171は、例えば、フェライト、ネオジム磁石、電磁コイルである。
【0084】
また、作用部4は電磁コイル44である。マニピュレータ1は、移動対象物10を保持する際、天井17の磁石171の下側に位置するよう停止する。そして、電磁コイル44に通電することにより、作用部4と磁石171との間に斥力を発生させる。つまり、作用部4は、マニピュレータ1の外部に上方向Z2の力F2を作用させることにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。
その他は、実施形態3と同様である。
【0085】
作用部4は、マニピュレータ1の外部に上方向Z2の力F2を作用させることにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。それゆえ、マニピュレータ1の転倒を防止することができる。
その他、実施形態3と同様の作用効果を有する。
【0086】
(実施形態10)
本形態は、図19に示すごとく、回転翼45が発生させる斥力により、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる形態である。すなわち、本形態において、作用部4は、回転翼45である。
【0087】
図19に示すごとく、本形態においては、回転翼45を作動させることにより、上方向Z2に向かう気流AFを発生させる。つまり、マニピュレータ1は、回転翼45を作動させることにより、外部の空気に対し、上方向Z2の力F2を作用させ、その反作用により、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。
その他の構成及び作用効果は、実施形態9と同様である。
【0088】
(実施形態11)
本形態は、図20に示すごとく、アーム部3によって、天井17を押圧することにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる形態である。
【0089】
本形態のマニピュレータ1は、アーム部3を2つ有する。一方のアーム部3は、伸縮可能な棒状部35を有する。
【0090】
本形態のマニピュレータ1は、棒状部35を上方向Z2に伸ばすことにより、アーム部3の先端部によって天井17を押圧し、天井17に上方向Z2の力F2を作用させる。このときの反作用により、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。つまり、棒状部35を備えたアーム部3は、作用部4でもある。
その他の構成及び作用効果は、実施形態9と同様である。
【0091】
(実施形態12)
本形態は、図21に示すごとく、棒状部46によって、天井17を押圧することにより、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる形態である。
【0092】
本形態において、走行体2には、図21に示すごとく、伸縮可能な棒状部46が設けられている。棒状部46の先端部には、キャスター部47が取り付けられている。キャスター部47は、棒状部46に対し、回転可能に取り付けられている。
【0093】
本形態のマニピュレータ1は、棒状部46を上方向Z2に伸ばすことにより、棒状部46に取り付けられたキャスター部47によって天井17を押圧し、天井17に上方向Z2の力F2を作用させる。このときの反作用により、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。つまり、キャスター部47を備えた棒状部46は、作用部4でもある。
その他は、実施形態11と同様である。
【0094】
本形態のマニピュレータ1は、棒状部46を上方向Z2に伸ばすことにより、キャスター部47によって天井17を押圧し、このときの反作用により、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させる。また、キャスター部47は、棒状部46に対し、回転可能に取り付けられている。そのため、走行体2を走行させつつ、マニピュレータ1に下方向Z1の力F1を作用させやすい。その結果、比較的、重量が大きい移動対象物10を搬送する際や、アーム部3を伸展させた状態にて走行体2を走行させた場合であっても、マニピュレータ1の転倒を確実に抑制することができる。
その他、実施形態11と同様の作用効果を有する。
【0095】
(実施形態13)
本形態は、図22図23に示すごとく、外部に設けられた支持部12に支持させることができる被支持部43を備えた形態である。
【0096】
作用部4は、図22図23に示すごとく、マニピュレータ1の外部に設けられた支持部12に支持させることが可能な被支持部43を有する。マニピュレータ1は、支持部12に被支持部43を支持させることにより、被支持部43に下方向の力を作用させる。
【0097】
本形態において、支持部12は、図22図23に示すごとく、床11に設けられている。支持部12は、床11の床面に沿って、レール状に延設されている。支持部12は、支持部12の延設方向に直交する断面形状が略T字形状となっている。つまり、支持部12は、床11から上方向Z2へ向かって突設された第1レール部121と、第1レール部121の上端部から、上下方向Z及び支持部12の延設方向の双方に直交する方向の両側に向かって形成された第2レール部122とを備える。
【0098】
また、走行体2の下端部には、支持部12の形状に対応するように凹設された被支持部43が形成されている。被支持部43は、被支持部43の内側に支持部12の一部が配置できるよう構成されている。マニピュレータ1は、被支持部43の内側に支持部12の一部を配置した状態にて、支持部12の延設方向に沿って移動することができる。
【0099】
また、被支持部43を形成する被支持部形成面は、上側を向くと共に、支持部12の第2レール部122と上下方向Zに対向する上向面431を有する。
【0100】
本形態においては、移動対象物10が載置された棚(図示略)の近傍の床11に、支持部12が設けられている。そして、棚の近傍に移動したマニピュレータ1は、被支持部43の内側に支持部12の一部が配置されるように、支持部12の延設方向に沿って移動する。これにより、保持部31によって移動対象物10を保持する際、被支持部43の内側に支持部12の一部が配置される。
その他は、実施形態1と同様である。
【0101】
作用部4は、被支持部43を有する。マニピュレータ1は、支持部12に被支持部43を支持させることにより、被支持部43に下方向Z1の力F1を作用させる。つまり、マニピュレータ1が、棚に載置された移動対象物10を保持したときに、万が一、走行体2が傾こうとした場合であっても、支持部12によって被支持部43を支持させることができる。具体的には、図23に示すごとく、走行体2が傾こうとした際、被支持部43の上向面431が、支持部12の第2レール部122に支持される。そして、上向面431が第2レール部122に支持されることにより、第2レール部122に上方向Z2の力F2が作用すると共に、被支持部43に下方向Z1の力F1が作用する。その結果、マニピュレータ1の転倒を防止することができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0102】
(実施形態14)
本形態は、図24図25に示すごとく、実施形態13に対し、支持部12と被支持部43との形状を変更した形態である。
【0103】
本形態においては、複数の支持部12が、図24図25に示すごとく、床11に形成されている。それぞれの支持部12は、床面から下方向Z1へ向かって凹設された凹部である。
【0104】
また、走行体2には、棒状の被支持部43が複数設けられている。被支持部43は、図24図25に示すごとく、走行体2の下面から下方向Z1へ向かって突出できるよう構成されている。被支持部43は、走行体2が走行する際、走行体2の筐体22内に配置されるよう構成されている(図示略)。
【0105】
本形態においては、移動対象物10が載置された棚(図示略)の近傍の床11に、支持部12が設けられている。そして、走行体2によって棚の近傍に移動したマニピュレータ1は、被支持部43を、走行体2の下面から下方向Z1へ突出させ、図24図25に示すごとく、支持部12に被支持部43を挿通させる。
その他は、実施形態13と同様である。
【0106】
本形態においては、被支持部43を、走行体2の下面から下方向Z1へ突出させ、支持部12に被支持部43を挿通させる。そのため、マニピュレータ1が、棚に載置された移動対象物10を保持したときに、図25に示すごとく、万が一、走行体2が傾こうとした場合であっても、支持部12に被支持部43を支持させることができる。そのため、支持部12に上方向Z2の力F2が作用すると共に、被支持部43に下方向Z1の力F1が作用する。その結果、マニピュレータ1の転倒を防止することができる。
その他、実施形態13と同様の作用効果を有する。
【0107】
(実施形態15)
本形態は、図26に示すごとく、実施形態14に対し、支持部12と被支持部43との形状を変更した形態である。
【0108】
本形態において、外部の棚18には、支持部12が形成されている。支持部12は、図26に示すごとく、棚18の側面から、上下方向Zに直交する一方向である横方向Yに沿って突出している。また、走行体2には、上下方向Zに直交する一方向に沿って凹設された被支持部43が形成されている。被支持部43は、走行体2の側面の一部が、走行体2の内側へ向かって後退することにより形成されている。
【0109】
走行体2によって棚18の近傍に移動したマニピュレータ1は、さらに、横方向Yに沿って移動しながら、図26に示すごとく、被支持部43に支持部12を挿通させる。
その他は、実施形態14と同様である。
【0110】
走行体2には、上下方向Zに直交する一方向に沿って凹設された被支持部43が形成されている。また、マニピュレータ1は、被支持部43に支持部12を挿通させる。そのため、マニピュレータ1が、棚18に載置された移動対象物10を保持したときに、万が一、走行体2が傾こうとした場合であっても、支持部12に被支持部43を支持させることができる。その結果、マニピュレータ1の転倒を防止することができる。
その他、実施形態14と同様の作用効果を有する。
【0111】
(実施形態16)
本形態は、図27に示すごとく、実施形態13に対し、支持部12と被支持部43との形状を変更した形態である。
【0112】
本形態において、支持部12は、図27に示すごとく、床11に設けられている。支持部12は、床面から上方向Z2へ向かって突設された床側突設部123と、床側突設部123の上端部から、上下方向Zに直交する一方向に沿って延設された床側延設部124と、を備える。
【0113】
また、被支持部43は、走行体2の下端部に設けられている。被支持部43は、走行体2の下面から下方向Z1へ向かって突設された走行体側突設部432と、走行体側突設部432の下端部から、上下方向Zに直交する一方向に沿って延設された走行体側延設部433と、を備える。
【0114】
走行体2によって棚の近傍に移動したマニピュレータ1は、図27に示すごとく、さらに、支持部12の床側延設部124の下面と、被支持部43の走行体側延設部433の上面とが、上下方向Zに互いに対向するように移動する。
その他は、実施形態13と同様である。
【0115】
被支持部43は、走行体側突設部432と走行体側延設部433とを備える。また、マニピュレータ1は、支持部12の床側延設部124の下面と、被支持部43の走行体側延設部433の上面とが、上下方向Zに互いに対向するように移動する。そのため、マニピュレータ1が、棚に載置された移動対象物10を保持したときに、万が一、走行体2が傾こうとした場合であっても、床側延設部124に走行体側延設部433を支持させることができる。その結果、マニピュレータ1の転倒を防止することができる。
その他、実施形態13と同様の作用効果を有する。
【0116】
(実施形態17)
本形態は、図28に示すごとく、車輪21が被支持部43となった形態である。
【0117】
本形態において、支持部12は、床11に形成されている。支持部12は、図28に示すごとく、床面の一部が下方向Z1へ向かって後退することにより形成されている。支持部12は、床面に沿って溝状に延設されている。本形態において、支持部12は、床11に2つ形成されている。
【0118】
また、2つの支持部12の内側には、それぞれ、被支持部43である車輪21の一部が配置されている。マニピュレータ1は、車輪21の一部を支持部12の内側に配置させた状態にて、支持部12の延設方向に沿って、床11を移動することができる。
その他は、実施形態14と同様である。
【0119】
支持部12の内側には、被支持部43である車輪21の一部が配置されている。それゆえ、マニピュレータ1が、棚に載置された移動対象物10を保持したときに、万が一、走行体2が傾こうとした場合であっても、支持部12に車輪21を支持させることができる。その結果、マニピュレータ1の転倒を防止することができる。
その他、実施形態14と同様の作用効果を有する。
【0120】
(実施形態18)
本形態は、図29に示すごとく、実施形態13に対し、支持部12と被支持部43との形状を変更した形態である。
【0121】
本形態において、外部には、図29に示すごとく、上下方向Zに直交する方向に沿って延設された棒状の支持部12が設けられている。支持部12は、例えば、建物の壁部に固定されている。
【0122】
また、走行体2は、支持部12を一対の指部にて把持することができる被支持部43を備える。マニピュレータ1は、被支持部43によって支持部12を把持したまま、支持部12の延設方向に沿って、走行体2を走行させることができる。
その他は、実施形態13と同様である。
【0123】
走行体2は、支持部12を把持することができる被支持部43を備える。それゆえ、マニピュレータ1が、棚に載置された移動対象物10を保持したときに、万が一、走行体2が傾こうとした場合であっても、支持部12に被支持部43を支持させることができる。その結果、マニピュレータ1の転倒を防止することができる。
その他、実施形態13と同様の作用効果を有する。
【0124】
上記実施形態1~18において、保持部31は、一対の指部311を備える。ただし、保持部は、移動対象物の形状等に合わせ、任意の構成を採用することができる。保持部は、例えば、吸引部による吸着や、磁力による引力により、移動対象物を保持する構成を採用することもできる。また、保持部は3本以上の指部を備える構成とすることもできる。
【0125】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0126】
1…マニピュレータ、2…走行体、3…アーム部、31…保持部、4…作用部、10…移動対象物、F1…力、Z1…下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29