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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071183
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】充電管理システム及び電動作業機械
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240517BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240517BHJP
   B60L 53/30 20190101ALI20240517BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J13/00 301A
B60L53/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182003
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 薫
【テーマコード(参考)】
5G064
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AC09
5G064BA02
5G064CB08
5G064DA11
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA08
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD06
5H125AA12
5H125AC11
5H125AC23
5H125BC21
5H125BE02
5H125CC06
5H125CD02
5H125DD03
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】複数の電動作業機械を運用する場合の充電待ち時間の増大を抑制することが可能な充電管理システムを提供する。
【解決手段】充電状態取得部が、複数の電動作業機械のそれぞれから、蓄電装置の充電状態を取得する。処理部が、充電状態取得部で取得された複数の電動作業機械の充電状態の履歴に基づいて、複数の電動作業機械の充電状態が、充電すべき充電推奨レベル以下になったら充電を行うという規則の下で、充電装置の混雑状況を予測し、予測結果を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電動作業機械のそれぞれから、蓄電装置の充電状態を取得する充電状態取得部と、
前記充電状態取得部で取得された前記複数の電動作業機械の充電状態の履歴に基づいて、前記複数の電動作業機械の充電状態が、充電すべき充電推奨レベル以下になったら充電を行うという規則の下で、充電装置の混雑状況を予測し、予測結果を出力する処理部と
を備えた充電管理システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記複数の電動作業機械のそれぞれの充電待ち時間が短くなるように、前記複数の電動作業機械のそれぞれの充電開始推奨時刻を決定し、出力する請求項1に記載の充電管理システム。
【請求項3】
前記処理部で決定した前記複数の電動作業機械のそれぞれの前記充電開始推奨時刻を示す情報を、前記複数の電動作業機械のそれぞれに通知する充電開始推奨時刻通知部を、さらに備えた請求項2に記載の充電管理システム。
【請求項4】
前記処理部は、前記複数の電動作業機械のそれぞれの作業計画を考慮して、前記充電開始推奨時刻を決定する請求項3に記載の充電管理システム。
【請求項5】
前記作業計画は、前記複数の電動作業機械のそれぞれの作業終了予定時刻を含み、
前記処理部は、前記複数の電動作業機械のそれぞれについて決定した前記充電開始推奨時刻から充電を開始し、前記作業終了予定時刻における充電状態の予測値が前記充電推奨レベルより高い場合、前記作業終了予定時刻における充電状態の予測値が充電推奨レベルより高い状態が維持される条件の下で、充電状態が目標充電レベルに到達する前に充電を終了させるように充電終了時刻を決定し、前記充電終了時刻を表す情報を前記複数の電動ショベル10のそれぞれに通知する請求項4に記載の充電管理システム。
【請求項6】
蓄電装置と、
前記蓄電装置からの電力によって駆動される電動機と、
前記蓄電装置の充電状態を測定し、測定結果を充電管理システムに送信する制御装置と
を備えた電動作業機械。
【請求項7】
前記制御装置は、前記充電管理システムから、充電開始推奨時刻を示す情報を受信すると、オペレータに充電開始推奨時刻を通知する請求項6に記載の電動作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電管理システム及び電動作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式の電動ショベル等の電動作業機械を稼働させる場合、電動作業機械に搭載された蓄電装置を充電する必要がある。作業エリア内で複数台の電動作業機機械が運用され、充電装置が電動作業機械の台数より少ない場合、充電待ち時間が発生する場合がある。充電待ち時間が長くなると、複数の電動作業機械の効率的な運用ができなくなる。充電の待ち時間を短くするためには、急速充電装置の台数を増やせばよいが、高額の投資が必要になる。
【0003】
特許文献1に、バッテリ交換式の複数の電動ショベルに、効率的にバッテリを供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-160051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリ交換式の複数の電動ショベルを運用する場合には、バッテリを運搬する台車や、交換用の複数のバッテリを準備しなければならない。この技術を適用するには、運用に際して大きな設備投資が必要になるため、小規模の作業現場においては実用的とはいえない。本発明の目的は、複数の電動作業機械を運用する場合の充電待ち時間の増大を抑制することが可能な充電管理システム及び電動作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
複数の電動作業機械のそれぞれから、蓄電装置の充電状態を取得する充電状態取得部と、
前記充電状態取得部で取得された前記複数の電動作業機械の充電状態の履歴に基づいて、前記複数の電動作業機械の充電状態が、充電すべき充電推奨レベル以下になったら充電を行うという規則の下で、充電装置の混雑状況を予測し、予測結果を出力する処理部と
を備えた充電管理システムが提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
蓄電装置と、
前記蓄電装置からの電力によって駆動される電動機と、
前記蓄電装置の充電状態を測定し、測定結果を充電管理システムに送信する制御装置と
を備えた電動作業機械が提供される。
【発明の効果】
【0008】
充電装置の混雑状況から、充電装置が空いている時間帯に充電を行うように充電計画を変更することが可能である。その結果、充電待ち時間の増大を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施例による充電管理システムのブロック図、充電管理システムによって管理される複数の電動作業機械、例えば電動ショベル、及び充電装置の概略図である。
図2図2は、3台の電動ショベルの蓄電装置の充電状態の時間変化の一例を示すグラフ、及び充電装置で充電中または充電装置の充待ちをしている電動ショベルの台数の時間変化を示すグラフである。
図3図3は、図1に示した実施例による充電管理システムの処理部が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
図4図4は、他の実施例による充電管理システムのブロック図、充電管理システムによって管理される複数の電動作業機械、例えば電動ショベル、及び充電装置の概略図である。
図5図5は、3台の電動ショベルの蓄電装置の充電状態の時間変化の一例を示すグラフである。
図6図6は、図4に示した実施例による充電管理システムの処理部が実行する手順のフローチャートである。
図7図7は、複数の電動ショベルのそれぞれの制御装置が実行する手順を示すフローチャートである。
図8図8は、3台の電動ショベルの充電状態の時間変化の一例を示すグラフである。
図9図9は、さらに他の実施例による充電管理システムのブロック図、充電管理システムによって管理される複数の電動作業機械、例えば電動ショベル、及び充電装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1図3を参照して、一実施例による充電管理システムについて説明する。
図1は、実施例による充電管理システム30のブロック図、充電管理システム30によって管理される複数の電動作業機械、例えば電動ショベル10、及び充電装置の概略図である。作業エリア内で複数の電動ショベル10が稼働している。作業エリアは、例えば産業廃棄物処理場である。例えば、運搬車両が産業廃棄物を保管ヤードに運び入れ、保管ヤードに産業廃棄物を下ろす。電動ショベル10は、産業廃棄物を保管ヤードから粉砕機まで搬送する。
【0011】
電動ショベル10のそれぞれは、蓄電装置11、電動機12、制御装置13、及び表示装置14を搭載している。電動機12は、制御装置13の制御下で、蓄電装置11からの電力によって駆動される。表示装置14は、制御装置13の制御下で、電動ショベル10の操作に有益な種々の情報を表示する。制御装置13は、蓄電装置11の充電状態(SOC)を測定し、測定結果を充電管理システム30に送信する。
【0012】
充電装置20は、複数の電動ショベル10のそれぞれの蓄電装置11を急速充電する。蓄電装置11の台数は、電動ショベル10の台数より少ない。また、電動ショベル10の台数分の普通充電設備25が設置されている。普通充電設備25は、例えば電動ショベル10が稼働しない夜間等に、電動ショベル10の蓄電装置11を充電する。翌日の作業開始時刻までに、全ての電動ショベル10の蓄電装置11が満充電になる。充電装置20は、作業時間中に蓄電装置11の充電状態が低下した場合に、蓄電装置11を短時間で充電するときに使用される。
【0013】
充電管理システム30は、充電状態取得部31、処理部32、及び出力部33を含む。充電状態取得部31は、複数の電動ショベル10のそれぞれから、一定の周期で蓄電装置11の充電状態を取得する。電動ショベル10と充電管理システム30との間のデータ通信には、例えばWiFi等の近距離無線通信を用いることができる。
【0014】
処理部32は、電動ショベル10の充電状態の履歴に基づいて、複数の電動ショベル10のそれぞれの充電状態が、充電すべき充電推奨レベル以下になったら充電を行うという規則の下で、充電装置20の混雑状況を予測し、予測結果を出力部33に出力する。処理部32による予測方法の具体例については、後に図2を参照して説明する。
【0015】
出力部33は、表示装置、通信装置等を含む。充電装置20の混雑状況の予測結果が、表示装置に画像として表示される。または、充電装置20の混雑状況の予測結果を示す情報が、通信装置を介して外部の装置に送信される。
【0016】
次に、図2を参照して、充電装置20の混雑状況を予測する方法の一例について説明する。図2は、3台の電動ショベル10の蓄電装置11の充電状態の時間変化の一例を示すグラフ、及び充電装置20で充電中または充電装置20の充待ちをしている電動ショベル10の台数の時間変化を示すグラフである。2つのグラフの横軸は、電動ショベル10の稼働開始からの経過時間を表し、上のグラフの縦軸は充電状態(SOC)を表し、下のグラフの縦軸は充電中及び充電待ちの台数を表す。
【0017】
複数の電動ショベル10のそれぞれの蓄電装置11の充電完了時の充電状態(以下、目標充電レベルという。)のレベルをSOCHと標記し、追加の充電をすべき充電状態(以下、充電推奨レベルという。)をSOCLと標記する。例えば、目標充電レベルSOCHを80%に設定し、充電推奨レベルSOCLを10%に設定する。充電状態を示すグラフ中の太い実線、細い実線、及び破線は、それぞれ電動ショベルA、電動ショベルB、及び電動ショベルCの蓄電装置11の充電状態(以下、単に「電動ショベルの充電状態」という場合がある。)を示す。
【0018】
図2に示した例では、以下の条件の下で充電状態の予測を行う。電動ショベルA、B、Cの充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下したら、作業を停止して、充電を開始する。また、充電装置20は1台のみである。1台の電動ショベルが充電中の期間に、他の電動ショベルの充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下したら、充電中の電動ショベルの充電状態が目標充電レベルSOCHに到達するまで充電待ちの状態にする。充電中の電動ショベルの充電状態が目標充電レベルSOCHに到達したら、充電待ち中の電動ショベルの充電を直ちに開始する。
【0019】
作業開始時点では、すべての電動ショベルA、B、Cの充電状態がSOCHに等しくなっている。電動ショベルA、B、Cを稼働させると、充電状態が徐々に低下する。充電状態は、周期的に電動ショベルA、B、Cから取得される。充電状態の低下の傾きは、電動ショベルA、B、Cの作業負荷、空調設備の動作の有無等に依存する。作業負荷は、例えばスロットルボリュームの設定値、電動機の回転数等で表すことができる。図2では、電動ショベルAの作業負荷が最も大きく、電動ショベルCの作業負荷が最も小さい例を示している。
【0020】
このため、電動ショベルAの充電状態が最も早く充電推奨レベルSOCLまで低下する(時刻t)。充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下した電動ショベルAは、直ちに充電を開始すると仮定する。この時点で、充電中及び充電待ちの台数が1台になる、電動ショベルAの充電が開始されると、電動ショベルAの充電状態が上昇する。充電状態が目標充電レベルSOCHに達する(時刻t)と、充電を終了する。
【0021】
電動ショベルAの充電期間中に、電動ショベルBの充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下する(時刻t)。ところが、充電装置20は1台しかないため、電動ショベルBは充電することができず、充電待ちの状態になる。さらに、電動ショベルCの充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下する(時刻t)。この時点で、電動ショベルAが充電中、電動ショベルB及び電動ショベルCの2台が、充電待ちの状態になる。すなわち、充電中及び充電待ちの台数が3台になる。
【0022】
電動ショベルAの充電が終了(時刻t)すると、電動ショベルAによる作業が開始され、電動ショベルAの充電状態が低下し始めるとともに、電動ショベルBの充電が開始される。電動ショベルBの充電期間中は、電動ショベルCが充電待ちの状態である。電動ショベルBの充電が終了する(時刻t)と、電動ショベルBによる作業が開始され、電動ショベルBの充電状態が低下し始めるとともに、電動ショベルCの充電が開始される。この時点で、充電中及び充電待ちの台数が1台になる。電動ショベルCの充電が終了する(時刻t)と、電動ショベルCによる作業が開始され、電動ショベルCの充電状態が低下し始める。この時点で、充電中及び充電待ちの台数がゼロになる。
【0023】
その後、電動ショベルAの充電状態が、充電推奨レベルSOCLまで低下する(時刻t)と、電動ショベルAの充電が開始される。作業終了時刻tでは、すべての電動ショベルA、B、Cの運転が停止される。その後、普通充電設備25(図1)によって、電動ショベルA、B、Cの充電が行われる。
【0024】
次に、図3を参照して、充電管理システム30の処理部32(図1)が実行する処理について説明する。図3は、充電管理システム30の処理部32(図1)が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【0025】
充電管理システム30の処理部32は、複数の電動ショベル10(図1)から充電状態の情報の取得を開始する(ステップSA1)。充電状態の情報の取得は、一定の周期で繰り返される。その後、電動ショベル10の充電状態の履歴に基づいて、今後の充電装置20の混雑状況を予測する(ステップSA2)。この予測は、図2を参照して説明した方法により行う。例えば、現時点までの充電状態の履歴に基づいて、経過時間に対する充電状態の低下の傾きが変化しないと仮定したときに、充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下する時刻を求める。複数の電動ショベル10のそれぞれの充電状態が充電推奨レベルSOCLに達した時刻に、充電の要請が発生するとし、充電装置20の混雑状況を予測する。混雑状況は、例えば図2の下側のグラフに示したように、充電中及び充電待ちの電動ショベル10の予測台数の時間変化で表される。
【0026】
処理部32は、充電装置20の混雑状況の予測結果を出力部33(図1)に出力する(ステップSA3)。例えば、出力部33は表示装置であり、処理部32は、充電中及び充電待ちの電動ショベル10の予測台数の時間変化を、表示装置にグラフの形式で表示する。
【0027】
ステップSA2及びステップSA3を、作業終了時刻まで一定の周期で繰り返し実行する(ステップSA4)。作業終了時刻になると、電動ショベル10からの充電状態の情報の取得を停止する(ステップSA5)。
【0028】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、複数の電動ショベル10の全体の運転管理を行っている管理者が、出力部33に表示された充電装置20の混雑状況の予測を見て、混雑が緩和されるように複数の電動ショベル10の充電開始時刻を調整することができる。充電開始時刻を調整することにより、複数の電動ショベル10のそれぞれの充電待ち時間がなくなるか、または短くなる。その結果、高価な急速充電装置の台数を増やすことなく、複数の電動ショベル10の全体としての作業効率を高めることができる。
【0029】
次に、図4図7を参照して、他の実施例による充電管理システムについて説明する。以下、図1図3を参照して説明した実施例による充電管理システムと共通の構成については説明を省略する。図1図3を参照して説明した実施例による充電管理システムは、充電装置20の混雑状況を予測して予測結果を表示するが、本実施例による充電管理システム30は、さらに、充電装置20の混雑状況を緩和させるための充電スケジュールを提案する。
【0030】
図4は、本実施例による充電管理システム30のブロック図、充電管理システム30によって管理される複数の電動作業機械、例えば電動ショベル10、及び充電装置の概略図である。充電管理システム30は、充電状態取得部31、処理部32、及び出力部33の他に、充電開始推奨時刻通知部34を含む。処理部32は、充電装置20の混雑状況を緩和させるための複数の電動ショベル10のそれぞれの充電開始時刻(以下、充電開始推奨時刻という。)を決定する。充電開始推奨時刻通知部34は、複数の電動ショベル10のそれぞれに、充電電開始推奨時刻を示す情報を送信する。
【0031】
電動ショベル10のそれぞれは、充電管理システム30から受信した充電開始推奨時刻をオペレータに通知する。例えば、電動ショベル10の制御装置13が、充電開始推奨時刻に充電を開始することを促すメッセージを表示装置14に表示する。
【0032】
次に、図5を参照して充電開始推奨時刻を決定する一例について説明する。図5は、3台の電動ショベル10の蓄電装置11の充電状態の時間変化の一例を示すグラフである。横軸は、電動ショベル10の稼働開始からの経過時間を表し、縦軸は充電状態(SOC)を表す。図2に示したグラフと同様に、グラフ中の太い実線、細い実線、及び破線は、それぞれ電動ショベルA、電動ショベルB、及び電動ショベルCの充電状態を示す。
【0033】
電動ショベルCの充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下した時点(時刻t)で、電動ショベルBの充電が終了するように、電動ショベルBの充電開始の時刻tを決定する。さらに、電動ショベルBの充電開始の時刻tまでに電動ショベルAの充電が終了するように、電動ショベルAの充電開始の時刻tを決定する。すなわち、電動ショベルA、Bについては、充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下していなくても、充電を開始するように、充電開始推奨時刻を設定する。
【0034】
電動ショベルAの充電が終了する(時刻t)と、直ちに電動ショベルBの充電を開始する。電動ショベルCの充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下した時点(時刻t)で、電動ショベルBの充電が終了しているため、電動ショベルCは、直ちに充電を開始することができる。
【0035】
その後も、充電待ちが発生すると予測される場合には、充電待ちが発生しないように、充電時間が重複すると予測される2つの電動ショベル10の一方の充電開始を早めるように、充電開始推奨時刻を決定する。図5に示した例では、時刻tからtまでの期間に、電動ショベルAの充電時間(太い破線で示す範囲)と電動ショベルBの充電時間とが重複すると予測される。この場合、電動ショベルBの充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下すると予測される時刻tにおいて、電動ショベルAの充電が終了するように、電動ショベルAの充電開始推奨時刻を、電動ショベルAの充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下する時刻tから前倒しして時刻tに決定する。
【0036】
図6は、本実施例による充電管理システム30の処理部32が実行する手順のフローチャートである。ステップSA1、SA2,SA4、SA5の処理は、図3に示したフローチャートのステップSA1、SA2,SA4、SA5の処理と同一である。本実施例では、ステップSA3(図3)の代わりにステップSA31の処理を実行する。
【0037】
ステップSA31において、処理部32は、複数の電動ショベル10の充電開始推奨時刻を決定し、電動ショベル10のそれぞれに通知する。
【0038】
図7は、複数の電動ショベル10のそれぞれの制御装置13が実行する手順を示すフローチャートである。制御装置13は、電動ショベル10の蓄電装置11の充電状態を示す情報を充電管理システム30に送信する処理を開始する(ステップSB1)。充電状態を示す情報の送信は、一定の周期で周期的に繰り返される。充電管理システム30から、充電開始推奨時刻を示す情報を受信したか否かを判定する(ステップSB2)。充電開始推奨時刻を示す情報を受信していない場合は、受信するまで待機する。
【0039】
充電開始推奨時刻を示す情報を受信したら、充電開始推奨時刻をオペレータに通知する(ステップSB3)。例えば、制御装置13は、充電開始推奨時刻に充電を開始することを促すメッセージを表示装置14(図4)に表示する。作業終了時刻まで、ステップSB2及びステップSB3を繰り返す。作業終了時刻になると、充電状態を示す情報を充電管理システム30に送信する処理を停止する(ステップSB5)。
【0040】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、複数の電動ショベル10のそれぞれのオペレータが、充電開始推奨時刻に充電を介するように促されることにより、待ち時間が無いか、または待ち時間が短い充電開始時刻を知ることができる。充電開始推奨時刻に、複数の電動ショベル10のそれぞれが充電を開始すると、全体として充電待ち時間が短くなり、複数の電動ショベル10の効率的な運用が可能になる。
【0041】
充電期間は、電動ショベル10を操作するオペレータの休憩時間と考えることができる。充電開始推奨時刻がわかると、オペレータは次の休憩までの時間を知ることができる。これにより、現在の作業の進め方を調整することが可能になる。
【0042】
次に、本実施例の変形例による充電管理システムについて説明する。
上記実施例では、電動ショベル10のオペレータに充電開始推奨時刻が通知されると、オペレータは通知された時刻に充電を開始するように作業を見直すことになる。ところが、作業の内容によっては、充電開始推奨時刻までに現在の作業が終わらず、充電開始推奨時刻を経過し得も現在の作業を継続したい場合がある。このような場合は、オペレータが電動ショベル10を操作して、充電管理システムに、充電開始推奨時刻には充電を開始できないことを通知するようにするとよい。
【0043】
この通知を受けた充電管理システムは、全体の充電スケジュールを見直し、充電開始推奨時刻を再度決定するようにするとよい。見直された充電開始推奨時刻を、複数の電動ショベル10に通知するとよい。これにより、特定の電動ショベル10が、充電開始推奨時刻に充電を開始できない場合の充電待ち時間の増大を抑制することができる。
【0044】
また、複数の電動ショベル10を操縦するオペレータの間で、複数の電動ショベル10の充電開始推奨時刻を共有し、複数のオペレータが相談して、充電開始の順序を取り決めるようにしてもよい。例えば、複数の電動ショベル10のそれぞれに、オペレータ間で通話またはチャットできる機能を持たせるとよい。通話またはチャットの機能を利用して、オペレータの間で、充電の順番を決めることができる。
【0045】
次に、図8を参照してさらに他の実施例による充電管理システムについて説明する。以下、図4図7を参照して説明した実施例による充電管理システムと共通の構成については説明を省略する。
【0046】
図8は、3台の電動ショベル10の充電状態の時間変化の一例を示すグラフである。横軸は、電動ショベル10の稼働開始からの経過時間を表し、縦軸は充電状態(SOC)を表す。図5に示したグラフと同様に、グラフ中の太い実線、細い実線、及び破線は、それぞれ電動ショベルA、電動ショベルB、及び電動ショベルCの充電状態を示す。
【0047】
図5に示した実施例では、3台の電動ショベルA、B、Cの間で充電時間が重ならないよう充電開始推奨時刻を決定している。このため、電動ショベル10によっては、作業終了時刻tにおいて充電状態の予測値が十分高い場合がある。これに対して図8に示した実施例では、作業終了時刻tにおいて、充電状態の予測値がほぼ充電推奨レベルSOCLになるまで蓄電装置11(図4)を使い切るように充電開始推奨時刻及び充電量を決定する。
【0048】
例えば、充電状態が目標充電レベルSOCHに達するまで充電すると、作業終了時刻tまでに充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下しないと予測される場合は、充電状態が目標充電レベルSOCHに達する前に充電を終了する。充電終了時刻は、作業終了時刻tにおいて充電状態の予測値が充電推奨レベルSOCLまで低下する条件を満たすように設定される。
【0049】
例えば、時刻t11で電動ショベルCの充電を開始し、充電状態が目標充電レベルSOCHに達する前の時刻t12に充電を終了する。同様に、電動ショベルAについては、時刻t13で充電を開始し、充電状態が目標充電レベルSOCHに達する前の時刻t14に充電を終了する。電動ショベルBについては、時刻t15で充電を開始し、充電状態が目標充電レベルSOCHに達する前の時刻t16に充電を終了する。
【0050】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例では、作業終了時刻tにおいて充電状態の予測値が充電推奨レベルSOCLまで低下するように充電時間が調整される。このため、全体として、充電時間が短くなり、電動ショベル10の稼働時間を長くすることができる。作業終了時刻tに充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下しても、複数の電動ショベル10の蓄電装置11を普通充電することにより、翌日の作業開始までには、充電状態を目標充電レベルSOCHまで高めることができる。
【0051】
次に、図8に示した実施例の変形例による充電管理システムについて説明する。
図8に示した実施例では、複数の電動ショベル10の作業終了時刻tが同一であるが、作業終了時刻tが同一ではない場合もある。例えば、作業計画によって、複数の電動ショベル10のそれぞれの作業終了時刻が個別に設定されている。この場合、電動ショベル10のそれぞれについて、作業計画で決められた作業終了時刻に充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下するように、充電推奨時刻を決定するとよい。
【0052】
次に、図8に示した実施例の他の変形例による充電管理システムについて説明する。図8に示した実施例では、作用終了予定時刻に充電状態の予測値がほぼ充電推奨レベルSOCLまで低下するように、充電時間を設定しているが、必ずしも、充電状態の予測値がほぼ充電推奨レベルSOCLまで低下しなくてもよい。例えば、作業終了予定時刻における充電状態の予測値が充電推奨レベルSOCLより高い場合、作業終了予定時刻における充電状態の予測値が充電推奨レベルSOCLより高い状態が維持される条件の下で、充電状態が目標充電レベルSOCHに到達する前に充電を終了させるように充電終了時刻を決定するとよい。この場合、充電終了時刻を表す情報を複数の電動ショベル10のそれぞれに通知するとよい。
【0053】
次に、図9を参照してさらに他の実施例による充電管理システムについて説明する。以下、図1図8を参照して説明した複数の実施例のそれぞれによる充電管理システムと共通の構成については説明を省略する。
【0054】
図9は、本実施例による充電管理システム30のブロック図、充電管理システム30によって管理される複数の電動作業機械、例えば電動ショベル10、及び充電装置の概略図である。図1図8を参照して説明した複数の実施例においては、急速充電装置として固定式の充電装置20を用いている。これに対して本実施例では、急速充電装置として、移動式の充電装置21を用いている。
【0055】
次に、本実施例の優れた効果について説明する。
本実施例においても、他の実施例と同様に、複数の電動ショベル10のそれぞれの充電開始推奨時刻が決定されている。移動式の充電装置21を、次に充電推奨開始時刻がおとずれる電動ショベル10の近くまで移動させておくことにより、電動ショベル10の充電状態が充電推奨レベルSOCLまで低下すると、電動ショベル10を固定式の充電装置の場所まで走行させることなく、直ちに充電を開始することができる。このため、作業効率をさらに高めることができる。
【0056】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0057】
10 電動ショベル
11 蓄電装置
12 電動機
13 制御装置
14 表示装置
20 充電装置
21 移動式の充電装置
25 普通充電設備
30 充電管理システム
31 充電状態取得部
32 処理部
33 出力部
34 充電開始推奨時刻通知部
図1
図2
図3
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図9