(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071192
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】杭撤去時における地盤の埋戻しシステムおよび地盤の埋戻し方法
(51)【国際特許分類】
E02D 13/00 20060101AFI20240517BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
E02D3/12 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182017
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正美
【テーマコード(参考)】
2D040
2D050
【Fターム(参考)】
2D040AB09
2D050AA01
(57)【要約】
【課題】施工性に影響を与えない原地盤に相当する地質の埋戻しを行うことが可能な杭撤去時における地盤の埋戻しシステムおよび地盤の埋戻し方法を提供する。
【解決手段】杭撤去時において、杭を撤去した地盤に形成される空洞300を埋め戻す埋戻しシステムS1であって、杭を撤去した空洞内に残存する泥水301を回収する泥水回収手段100と、ベントナイトと珪砂との混合物から成る埋戻し材500を、空洞内に供給する埋戻し材供給手段200と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭撤去時において、杭を撤去した地盤に形成される空洞を埋め戻す埋戻しシステムであって、
杭を撤去した前記空洞内に残存する泥水を回収する泥水回収手段と、
ベントナイトと珪砂との混合物から成る埋戻し材を、前記空洞内に供給する埋戻し材供給手段と、
を備えることを特徴とする杭撤去時における地盤の埋戻しシステム。
【請求項2】
前記ベントナイトの混合量の下限値は、前記空洞の孔壁を安定に維持し、圧密状態とするために前記埋戻し材の全体重量に対して1%以上であると共に、
前記珪砂の混合量の下限値は、珪砂を堆積による圧密状態にするために前記泥水に前記ベントナイトを加えた比重に対して、前記比重を更に0.1以上増加させる量であることを特徴とする請求項1に記載の杭撤去時における地盤の埋戻しシステム。
【請求項3】
前記ベントナイトの混合量の上限値は、前記埋戻し材を流動体として吐出可能な最大量であり、前記埋戻し材の全体重量に対して20%以下であると共に、
前記珪砂の混合量の上限値は、前記埋戻し材を流動体として吐出可能な最大量であり、前記埋戻し材の全体重量に対して30%以下であることを特徴とする請求項1に記載の杭撤去時における地盤の埋戻しシステム。
【請求項4】
前記埋戻し材供給手段は、
前記埋戻し材を混練する混練手段と、
混練された前記埋戻し材を前記空洞内に圧送する圧送手段と、
圧送された前記埋戻し材を撹拌する撹拌手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の杭撤去時における地盤の埋戻しシステム。
【請求項5】
前記撹拌手段は、下端部に前記埋戻し材を放出する放出部を備えたオーガーロットで構成されることを特徴とする請求項4に記載の杭撤去時における地盤の埋戻しシステム。
【請求項6】
前記オーガーロットは、前記埋戻し材を撹拌する際に該オーガーロットを昇降させる昇降手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の杭撤去時における地盤の埋戻しシステム。
【請求項7】
杭撤去時において、杭を撤去した地盤に形成される空洞を埋め戻す埋戻し方法であって、
杭を撤去した前記空洞内に残存する泥水を回収する泥水回収工程と、
ベントナイトと珪砂との混合物から成る埋戻し材を、前記空洞内に供給する埋戻し材供給工程と、
を有することを特徴とする杭撤去時における地盤の埋戻し方法。
【請求項8】
前記ベントナイトの混合量の下限値は、前記空洞の孔壁を安定に維持し、圧密状態とするために前記埋戻し材の全体重量に対して1%以上であると共に、
前記珪砂の混合量の下限値は、珪砂を堆積による圧密状態にするために前記泥水に前記ベントナイトを加えた比重に対して、前記比重を更に0.1以上増加させる量であることを特徴とする請求項7に記載の杭撤去時における地盤の埋戻し方法。
【請求項9】
前記ベントナイトの混合量の上限値は、前記埋戻し材を流動体として吐出可能な最大量であり、前記埋戻し材の全体重量に対して20%以下であると共に、
前記珪砂の混合量の上限値は、前記埋戻し材を流動体として吐出可能な最大量であり、前記埋戻し材の全体重量に対して30%以下であることを特徴とする請求項8に記載の杭撤去時における地盤の埋戻し方法。
【請求項10】
前記埋戻し材を混練する混練工程と、
混練された前記埋戻し材を前記空洞内に圧送する圧送工程と、
圧送された前記埋戻し材を撹拌する撹拌工程と、
撹拌された前記埋戻し材を所定時間に亘って静置する静置工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項8に記載の杭撤去時における地盤の埋戻し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場等での杭撤去時における地盤の埋戻しシステムおよび地盤の埋戻し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に埋設されていた既存杭を撤去した際に、地盤に形成された空洞をセメントなどの固化材を添加した埋戻し材で埋め戻すことが従来から行われている。
【0003】
このような埋戻しに関する技術は種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ここで、従来においては、埋戻し材としては、ベントナイトと水の混合物、セメントミルク、高炉セメントと水の混合物などが用いられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上述のようなセメント系の埋戻し材は品質が不安定となり易く、埋戻しを行った際に、周囲の原地盤の地質と比べて硬くなり過ぎたり、硬化しない場合があるという不都合があった。
【0007】
特に、硬くなり過ぎた場合には、次に杭を施工する際の掘削時の作業性が悪くなり、鉛直性を確保できないという問題があった。
【0008】
また、硬化しなかった場合にも掘削時の鉛直性に影響を与えたり、孔壁崩壊などの問題を生じる虞があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、施工性に影響を与えない原地盤に相当する地質の埋戻しを行うことが可能な杭撤去時における地盤の埋戻しシステムおよび地盤の埋戻し方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本実施の形態の一態様は、杭撤去時において、杭を撤去した地盤に形成される空洞を埋め戻す埋戻しシステムであって、杭を撤去した前記空洞内に残存する泥水を回収する泥水回収手段と、ベントナイトと珪砂との混合物から成る埋戻し材を、前記空洞内に供給する埋戻し材供給手段と、を備えることを要旨とする。
【0011】
これにより、次に杭を施工する際などに、施工性や作業性に影響を与えない原地盤に相当する地質の埋戻しを行うことが可能となる。
【0012】
前記ベントナイトの混合量の下限値は、前記空洞の孔壁を安定に維持し、圧密状態とするために前記埋戻し材の全体重量に対して1%以上であると共に、前記珪砂の混合量の下限値は、珪砂を堆積による圧密状態にするために前記泥水に前記ベントナイトを加えた比重に対して、前記比重を更に0.1以上増加させる量であるようにできる。
【0013】
これにより、埋め戻した地盤の地質を原地盤により近づけることができる。
【0014】
また、前記ベントナイトの混合量の上限値は、前記埋戻し材を流動体として吐出可能な最大量であり、前記埋戻し材の全体重量に対して20%以下であると共に、前記珪砂の混合量の上限値は、前記埋戻し材を流動体として吐出可能な最大量であり、前記埋戻し材の全体重量に対して30%以下であるようにできる。
【0015】
これにより、埋め戻した地盤の地質を原地盤により近づけることができる。
【0016】
また、前記埋戻し材供給手段は、前記埋戻し材を混練する混練手段と、混練された前記埋戻し材を前記空洞内に圧送する圧送手段と、圧送された前記埋戻し材を撹拌する撹拌手段と、を備えるようにできる。
【0017】
これにより、地盤の埋戻しシステムを比較的容易に構築することができる。
【0018】
また、前記撹拌手段は、下端部に前記埋戻し材を放出する放出部を備えたオーガーロットで構成されるようにできる。
【0019】
これにより、地盤の埋戻しシステムの一部を既存の設備等を用いて比較的容易に構築することができる。
【0020】
また、前記オーガーロットは、前記埋戻し材を撹拌する際に該オーガーロットを昇降させる昇降手段をさらに備えるようにできる。
【0021】
これにより、空洞部内に埋戻し材を均一に投入することができ、埋め戻した地盤の地質を原地盤により近づけることができる。
【0022】
本実施の形態の他の態様は、杭撤去時において、杭を撤去した地盤に形成される空洞を埋め戻す埋戻し方法であって、杭を撤去した前記空洞内に残存する泥水を回収する泥水回収工程と、ベントナイトと珪砂との混合物から成る埋戻し材を、前記空洞内に供給する埋戻し材供給工程と、を有することを要旨とする。
【0023】
これにより、次に杭を施工する際などに、施工性や作業性に影響を与えない原地盤に相当する地質の埋戻しを行うことが可能となる。
【0024】
前記ベントナイトの混合量の下限値は、前記空洞の孔壁を安定に維持し、圧密状態とするために前記埋戻し材の全体重量に対して1%以上であると共に、前記珪砂の混合量の下限値は、珪砂を堆積による圧密状態にするために前記泥水に前記ベントナイトを加えた比重に対して、前記比重を更に0.1以上増加させる量であるようにできる。
【0025】
これにより、埋め戻した地盤の地質を原地盤により近づけることができる。
【0026】
また、前記ベントナイトの混合量の上限値は、前記埋戻し材を流動体として吐出可能な最大量であり、前記埋戻し材の全体重量に対して20%以下であると共に、前記珪砂の混合量の上限値は、前記埋戻し材を流動体として吐出可能な最大量であり、前記埋戻し材の全体重量に対して30%以下であるようにできる。
【0027】
これにより、埋め戻した地盤の地質を原地盤により近づけることができる。
【0028】
また、前記埋戻し材を混練する混練工程と、混練された前記埋戻し材を前記空洞内に圧送する圧送工程と、圧送された前記埋戻し材を撹拌する撹拌工程と、撹拌された前記埋戻し材を所定時間に亘って静置する静置工程と、をさらに有するようにできる。
【0029】
これにより、埋め戻した地盤の地質を原地盤により近づけるように施工することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、施工性に影響を与えない原地盤に相当する地質の埋戻しを行うことが可能な杭撤去時における地盤の埋戻しシステムおよび地盤の埋戻し方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】実施の形態に係る地盤の埋戻しシステムの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】埋戻しシステムを用いた地盤の埋戻し手順を示すフローチャートである。
【
図3】埋戻しシステムを用いた地盤の埋戻し工程の概要を示す説明図である。
【
図4A】実施の形態に係る地盤の埋戻しシステムに適用される埋戻し材のPロート試験結果を示す図表である。
【
図4B】実施の形態に係る地盤の埋戻しシステムに適用される埋戻し材の混合体比重計測の例を示す図表である。
【
図5A】埋戻しシステムを用いた地盤の埋戻し工程の実施例を示す工程図である。
【
図5B】埋戻しシステムを用いた地盤の埋戻し工程の続きを示す工程図である。
【
図6】埋戻しシステムを用いた地盤の埋戻しを適用可能な範囲の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る地盤の埋戻しシステム(以降、単に埋戻しシステムという)S1について説明する。
【0033】
ここで、
図1は、本実施の形態に係る埋戻しシステムS1の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0034】
(埋戻しシステムの機能構成)
本実施の形態に係る埋戻しシステムS1は、杭(図示せず)を撤去した空洞内に残存する泥水を回収する泥水回収手段100と、ベントナイトと珪砂(主に石英粒からなる砂)との混合物から成る埋戻し材を、空洞内に供給する埋戻し材供給手段200とから構成される。
【0035】
ここで、埋戻し材の配合は、比重が1.05~1.25g/cm3の泥水に対して、ベントナイトの添加量が20~60kg/m3、珪砂の添加量が10~20kg/m3の範囲であるようにされる。
【0036】
なお、埋戻し材の詳細な配合比等については後述する。
【0037】
泥水回収手段100は、バキューム装置等で構成することができる。
【0038】
埋戻し材供給手段200は、埋戻し材を混練する混練手段201と、混練された埋戻し材を空洞内に圧送する圧送手段202と、圧送された埋戻し材を撹拌する撹拌手段203とを備える。
【0039】
また、撹拌手段203は、下端部に埋戻し材を吐出する吐出部を備えたオーガーロット600で構成される。なお、オーガーロット600の構成例については後述する。
【0040】
オーガーロット600は、埋戻し材を撹拌する際にオーガーロット600自体を昇降させる昇降手段211をさらに備える。
【0041】
このような構成の埋戻しシステムS1を用いることにより、次に杭を施工する際などに、施工性に影響を与えない原地盤に相当する地質の埋戻しを行うことが可能となる。
【0042】
(地盤の埋戻し手順について)
図2のフローチャートおよび
図3に示す地盤の埋戻し工程の概要の説明図に基づいて、埋戻しシステムS1を用いた地盤の埋戻し手順について説明する。
【0043】
まず、
図3(a)に示すように、既存杭(図示せず)を除去すると、地盤に縦穴状の空洞300が形成され、その空洞300内には泥水301が溜まった状態となる。
【0044】
この状態で、埋戻しシステムS1を用いて、空洞300内に残存する泥水301を回収する泥水回収工程S10を実行する。
【0045】
次いで、ベントナイトと珪砂との混合物から成る埋戻し材500を混練して生成する混練工程S11と、混練された埋戻し材500を空洞300内に圧送する圧送工程S12と、圧送された埋戻し材を撹拌する撹拌工程S13とから成る埋戻し材供給工程S20を順次実行する。
【0046】
なお、実際の埋戻しシステムS1の運用では、泥水回収工程S10と埋戻し材供給工程S20とを同時並行的に行うことができる。
【0047】
即ち、
図3(b)に示すように、バキューム装置等で構成される泥水回収手段100による泥水回収工程S10を行うと同時に、埋戻し材供給手段200を稼働させることにより埋戻し材供給工程S20を並行して行うようにできる。これにより、より効率的に地盤の埋戻しを行うことが可能となる。
【0048】
そして、
図3(c)に示すように、泥水301の全てが埋戻し材500によって置換された状態で、オーガーロット600で構成される撹拌手段203によって埋戻し材500の撹拌工程S13を行う。これにより、空洞300内における埋戻し材500の均質化を図ることができる。
【0049】
次に、
図3(d)に示すように、空洞300内の埋戻し材500を例えば1日以上に亘って静置する静置工程S14を行う。これにより、余分な水分が地盤を介して脱水されて、埋め戻した地盤の地質を原地盤により近づけることができる。
【0050】
そして、
図3(e)に示すように、静置工程S14で沈み込んだ上部に土砂501を詰めて地盤の埋戻し工程は完了する。
【0051】
このような地盤の埋戻し工程の実施により、従来のセメント系の埋戻し材では実現できなかった、次に杭を施工する際などに施工性に影響を与えない原地盤に相当する地質の埋戻しを行うことができる。
【0052】
即ち、埋戻し材500に含まれるベントナイトによって粘性を高め、珪砂によって比重と密度を高めることにより、埋戻された箇所は排水され堆積されることで圧密状態となり固化し、50~500kN/m2程度の強度を有する原地盤に相当した地質に近づけることができる。これにより、次に杭を施工する際などの施工性を向上させることができる。
【0053】
(埋戻し材について)
図4A、
図4Bを参照して、実施の形態に係る地盤の埋戻しシステムS1に適用される埋戻し材としての混合体について説明する。
【0054】
なお、本実施の形態では、2種類の混合体(A)、混合体(B)を想定した。
【0055】
泥水(A)は、設計比重:1.1、計測比重:1.04、Pロート(秒-平均):7.21とした。
【0056】
また、泥水(B)は、設計比重:1.25、計測比重:1.26、(粘度)Pロート(秒-平均):7.22とした。
【0057】
ここで、「Pロート」とは、プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験を指す。
【0058】
そして、混合体(A)について、ベントナイトと珪砂から成るベントナイトミルク(BM)を所定量に亘って変化させて添加した場合のPロート試験結果を
図4Aの図表に示す。
【0059】
より具体的には、
図4Aの図表に示すように、ベントナイト添加量を0~350gの範囲で変化させた。
【0060】
その結果、混合体(A)について、泥水の比重は1.1であり、全体重量からのベントナイトの添加割合は、0.0~35.0%の間で変化した。
【0061】
また、混合体(A)について、Pロートは、ベントナイト添加量「0~200g」の範囲で、7.01~19.41秒となった。
【0062】
また、混合体(A)について、ベントナイト添加量「250~350g」の範囲では、Pロートは計測不能であった。これは、ベントナイト多量により液体としての性質を失ったためであると考えられる。
【0063】
なお、ベントナイト添加量「0g」と「5g」では、Pロートは共に7.01秒であるので、ベントナイト添加量「5g」では水と変わらず、効果はないものと判断される。
【0064】
一方、混合体(B)について、泥水の比重は1.25であり、全体重量からのベントナイトの添加割合は、0.0~25.9%の間で変化した。
【0065】
また、混合体(B)について、Pロートは、ベントナイト添加量「0~200g」の範囲で、7.01~21.33秒となった。
【0066】
また、混合体(B)について、ベントナイト添加量「250~350g」の範囲では、Pロートは計測不能であった。これは、ベントナイト多量により液体としての性質を失ったためであると考えられる。
【0067】
なお、ベントナイト添加量「0g」と「5g」では、Pロートは共に7.01秒であるので、ベントナイト添加量「5g」では水と変わらず、ベントナイト添加による効果はないものと判断される。
【0068】
以上の結果から、混合体から成る埋戻し材について、全体重量に対して20%までのベントナイトの添加は可能であるが、それ以上は液状ではなくなり、使用できないことが分かった。
【0069】
また、混合体(A)についての混合体比重計測の結果は、
図4Aの図表(a)に示す通りである。
【0070】
即ち、比重1.1のベントナイト泥水について、珪砂添加量を40~500gの範囲で変化させたところ、比重は、1.17~2.10の範囲で変化した。
【0071】
そして、泥水比重の変化が+0.1未満である場合には、珪砂が堆積せずに浮遊する情報となり、圧密になりにくいことが分かった。
【0072】
また、全体重量に対して30%まで珪砂を添加できるが、それ以上になると砂分が多くなり使用できないことが分かった。
【0073】
一方、混合体(B)についての混合体比重計測の結果は、
図4Aの図表(b)に示す通りである。
【0074】
即ち、比重1.25のベントナイト泥水について、珪砂添加量を40~500gの範囲で変化させたところ、比重は、1.32~2.10の範囲で変化した。
【0075】
そして、泥水比重の変化が+0.1未満である場合には、珪砂が堆積せずに浮遊する情報となり、圧密になりにくいことが分かった。
【0076】
また、全体重量に対して30%まで珪砂を添加できるが、それ以上になると砂分が多くなり使用できないことが分かった。
【0077】
以上の結果から、混合体から成る埋戻し材について、ベントナイト添加量は10~20%が最適であることが分かった。
【0078】
また、ベントナイト添加量が10%以下では、ほぼ水の状態と同じであるため、ベントナイト添加の効果が無く、また20%以上では、液状でなくなるため送給できないことが分かった。
【0079】
また、珪砂の添加量については、元の泥水比重より+0.1以上の比重を確保するとよいことが分かった。
【0080】
但し、珪砂を30%以上入れると液状では無くなり送給できなくなることから、珪砂添加量の上限は30%であると判断される。
【0081】
(埋戻し工程の実施例について)
次に、
図5A、
図5Bの工程図を参照して、埋戻し工程の実施例について説明する。
【0082】
図5Aの(a)は、既存杭の撤去が完了し、地盤に縦穴状の空洞300が形成され、その空洞300内には泥水301が溜まった状態を示す。
【0083】
この状態から、
図5Aの(b)に示すように、空洞300の上方からオーガーロット600を降下させて挿入する。
【0084】
ここで、オーガーロット600は、例えば、回転軸となる中空管部602と、中空管部602の周面から張り出されるスクリュー部601とを備え、スクリュー部601の先端部には中空管部602に連通して、外部から供給される埋戻し材500を吐出する吐出孔601aが形成されている。
【0085】
次いで、
図5Aの(c)に示すように、オーガーロット600のスクリュー部601が空洞300の底部付近に達するまで降下させると共に、中空管部602を図示しない駆動部によって回転させて泥水301を撹拌する。
【0086】
続いて、
図5Aの(d)に示すように、泥水301の水面付近に泥水回収手段100としてポンプ装置700を設置する。
【0087】
そして、
図5Aの(e)に示すように、ポンプ装置700を稼働させて泥水301の回収を開始し、ホース700aを介して外部の水槽(タンク)701に吸引した泥水301を回収する。
【0088】
また、
図5Aの(e)に示すように、ポンプ装置700による泥水301の回収を行うと同時に、埋戻し材供給手段200を稼働する。
【0089】
より具体的には、混練手段201によって、ベントナイトと珪砂との混合物から成る埋戻し材500を生成し、その埋戻し材500を、圧送手段202を介してオーガーロット600に供給する。
【0090】
供給された埋戻し材500は、中空管部602を介してスクリュー部601の吐出孔601aから空洞300の下方側に吐出される。
【0091】
なお、図示しない制御装置により、ポンプ装置700によって回収される泥水301の量と、圧送手段202によって圧送される埋戻し材500の量は同量となるように調整される。
【0092】
これにより、空洞300内の泥水301は、時間の経過とともに徐々に埋戻し材500に置換されていく。
【0093】
なお、オーガーロット600のスクリュー部601は、埋戻し材500が吐出される最中も回転し、置換されつつある泥水301および埋戻し材500を撹拌する。
【0094】
そして、空洞300内において、泥水301の全てが埋戻し材500に置換された時点で、
図5Aの(g)に示すように充填完了となる。
【0095】
このような状態で、
図3(d)、(e)に示すような静置等を行って、埋戻し工程を完了してもよい。
【0096】
また、さらに
図5Bの(h)~(j)に示すように、昇降手段211の稼働により、オーガーロット600を昇降させつつ、スクリュー部601を回転させて機械撹拌(ターニング)を行うようにできる。
【0097】
これにより、充填された埋戻し材500の均質化を図ることができ、埋め戻した地盤の地質を原地盤により近づけることができる。
【0098】
(埋戻し方法の適応範囲について)
図6(a)、(b)を参照して、本発明に係る埋戻し方法の適応範囲について説明する。
【0099】
図中、符号800は既存杭の領域、符号L1は既存杭を撤去した際のケーシング径、符号L2は新設する杭の領域をそれぞれ示す。
【0100】
そして、
図6(a)、(b)に示すように、新設する杭の領域L2の円内に、既存杭の領域800と、既存杭を撤去した際のケーシング径L1が収まっている状態が、杭を新設し易く本発明に係る埋戻し方法の適応範囲として相応しい。
【0101】
これ以外の例えば新設する杭の領域L2から既存杭を撤去した際のケーシング径L1がはみ出すような場合には、杭を新設する際に孔壁が崩壊するなどの不具合を生じ易くなる。
【0102】
上述のように、本実施の形態に係る地盤の埋戻しシステムS1によれば、施工性に影響を与えない原地盤に相当する地質の埋戻しを行うことが可能となる。
【0103】
以上、本発明の地盤の埋戻しシステム等を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0104】
例えば、地盤の埋戻しシステムS1に適用される埋戻し材(混合体)の比重の最低限は、泥水にベントナイトを加えた量より大きければよいので、比重が+0.1以下となる量の珪砂であってもよい。
【0105】
また、現実的には、杭を撤去した前記空洞内に埋戻し材(混合体)が堆積するのに時間を要するため、効率の観点から+0.1以上の比重となるように珪砂を添加するとよいと考えられる。
【符号の説明】
【0106】
S1 地盤の埋戻しシステム
100 泥水回収手段
200 埋戻し材供給手段
201 混練手段
202 圧送手段
203 撹拌手段
211 昇降手段
300 空洞
301 泥水
500 埋戻し材(ベントナイトと珪砂との混合物から成る埋戻し材)
600 オーガーロット
601 スクリュー部
601a 吐出孔
602 中空管部