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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071200
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】光学式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G01D5/347 110C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182032
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000215833
【氏名又は名称】帝国通信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】末崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 涼
(72)【発明者】
【氏名】外川 純也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 仁
【テーマコード(参考)】
2F103
【Fターム(参考)】
2F103CA03
2F103DA13
2F103EA19
2F103EA20
2F103EB01
2F103EB12
2F103EB32
(57)【要約】
【課題】製造が容易で、且つ正確な信号が得られる光学式エンコーダを提供すること。
【解決手段】光反射面62を設けた回転体60と、光反射面62に向けて光を発射する発光素子33Aa,33Baと、光反射面62で反射された光を受光する受光素子33Ab,33Bbとを有する。光反射面62に、発光素子33Aa,33Baから受けた光を反射する高反射部615a及び低反射部615bを形成する。高反射部615aと低反射部615bによって反射された光を受光素子33Ab,33Bbが受光する受光量に応じて回転体60の回転状態を検出する。高反射部615aと低反射部615bは、何れも印刷によって形成される。低反射部615bを高反射部615aの上に積層して印刷形成する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転自在に軸支され且つ光反射面を設けた回転体と、
前記回転体の光反射面に向けて光を発射する発光素子と、
前記回転体の光反射面で反射された光を受光する受光素子と、
を有し、
前記回転体の光反射面に、前記発光素子から受けた光を反射する高反射部及び低反射部を形成し、これら高反射部と低反射部によって反射された光を前記受光素子が受光する受光量に応じて前記回転体の回転状態を検出する光学式エンコーダにおいて、
前記光反射面上の前記高反射部と前記低反射部は、何れも印刷によって形成されていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式エンコーダであって、
前記低反射部は、前記光反射面上に印刷形成された前記高反射部の表面に積層して印刷形成されていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学式エンコーダであって、
前記回転体の光反射面には、この回転体を軸支する軸受部となる凹部が形成されていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光学式エンコーダであって、
前記高反射部と前記低反射部は、何れもパッド印刷によって形成されていることを特徴とする光学式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を用いて電気的出力信号を変化させる光学式エンコーダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学式エンコーダに用いる回転体は、例えば特許文献1の図1に示す回転体(11)のように、円板(13)の下面に形成されたスケール部(14)の下面(反射面)に、反射部(15a)と非反射部(15b)とを交互に円周状に配列するように形成され、このスケール部(14)に照射した光の反射の状態を光センサ(16)で検出し、これによって、回転体(11)の回転の状態を検出するように構成されていた。
【0003】
そして、上記回転体(11)への反射部(15a)と非反射部(15b)の形成は、円板(13)の下面にアルミなどの金属材料を蒸着によってスケール部(14)を形成し、このスケール部(14)の下面をフォトエッチングすることによって行われていた。
【0004】
また従来、反射部と非反射部の形成方法は、上記方法に限られず、反射面となる回転体の下面に金属板を貼り付け、またはメッキによって金属層を形成し、その後これらをエッチングする方法などもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07-209023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述のように、反射面に金属層や金属板を形成したり、これをエッチングしたりする作業は煩雑であり、また製造設備も大掛かりになり、製造コストの増大を招いていた。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、製造が容易で製造コストの低減化が図れ、また正確な信号を得ることができる光学式エンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回転軸を中心に回転自在に軸支され且つ光反射面を設けた回転体と、前記回転体の光反射面に向けて光を発射する発光素子と、前記回転体の光反射面で反射された光を受光する受光素子と、を有し、前記回転体の光反射面に、前記発光素子から受けた光を反射する高反射部及び低反射部を形成し、これら高反射部と低反射部によって反射された光を前記受光素子が受光する受光量に応じて前記回転体の回転状態を検出する光学式エンコーダにおいて、前記光反射面上の前記高反射部と前記低反射部は、何れも印刷によって形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、高反射部と低反射部を何れも印刷によって形成したので、容易に高反射部と低反射部を形成することができる。また印刷に用いる設備は、蒸着やエッチングなどに用いる設備に比べて安価な設備とすることができる。これらのことから製造コストの低減化を図ることができる。
【0009】
また本発明は、上記特徴に加え、前記低反射部は、前記光反射面上に印刷形成された前記高反射部の表面に積層して印刷形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、同一面(光反射面)に印刷層を2層積層することで、高反射部と低反射部を形成できるので、その製造を容易に行うことができる。
また高反射部上に低反射部を積層したので、例えば高反射部の印刷を、外周辺がにじみ易くて精緻な形状に印刷し難い金属粉を混錬したメタリック色彩のインクを用いて行ったような場合でも、この高反射部を精緻な形状の不要な下層側に印刷してその上に精緻な形状の開口部を有する低反射部を印刷することで、当該開口部に高反射部を露出させ、これによって高反射部の外周辺を精緻に形成することができ、より精度の高い出力信号を得ることができる。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記回転体の光反射面には、この回転体を軸支する軸受部となる凹部が形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、回転体を軸支するための軸の代わりに軸受部となる凹部を設けたので、光反射面から突出する部分がなくなる。このため光反射面への印刷作業を、より容易に行うことが可能になる。
【0011】
また本発明は、上記特徴に加え、前記高反射部と前記低反射部は、何れもパッド印刷によって形成されていることを特徴としている。
本発明によれば、高反射部と低反射部を、他の印刷方法によって形成した場合に比べて、その反射面の表面をより滑らか(平滑)に形成することができ、反射の状態、即ち受光素子が受光する反射光の状態をより良くすることができる。即ち、仮にスクリーン印刷によって高反射部と低反射部を形成した場合、スクリーンの網目の状態がその反射面の表面に反映され、僅かではあるがその表面が波打つようになる虞があるが、本発明を用いればその虞を解消できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造が容易で製造コストの低減化が図れ、また正確な信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】光学式エンコーダ(エンコーダ)1の概略断面図である。
図2】エンコーダ1の分解斜視図である。
図3】エンコーダ1の斜視図である。
図4】回路基板30を示す斜視図である。
図5】回転体60を下側から見た斜視図である。
図6】回転体60の底面図である。
図7】反射部615の形成方法説明図である。
図8】回転体60の側断面図である。
図9】フォトセンサ33A(又は33B)と、高反射部615a及び低反射部615bの関係を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の1実施形態にかかる光学式エンコーダ(以下単に「エンコーダ」という)1の概略断面図(図3のA-A概略断面図)、図2はエンコーダ1の分解斜視図、図3はエンコーダ1の斜視図である。これらの図に示すように、エンコーダ1は、回路基板30を収納したケース10と、回転体60と、カバー80とを具備して構成されている。なお以下の説明において、「上」とは回路基板30から回転体60を見る方向をいい、「下」とはその反対方向をいうものとするが、これは、エンコーダ1を使用する際の方向を限定する趣旨ではない。
【0015】
図4は回路基板30を示す斜視図である。同図に示すように回路基板30は、硬質で略矩形状の絶縁基板31を有し、この絶縁基板31の中央に、貫通する位置決め孔313を形成し、その周囲を囲む位置に複数(この例では2つ)の貫通孔315を設けている。また絶縁基板31の上側の面(以下「上面」という)311の所定位置には、フォトIC33が設置され、また絶縁基板31の1辺近傍の上面には、複数本(この例では6本)の端子板39の一端が並列に当接されている。
【0016】
フォトIC33は、2組のフォトセンサ33A,33Bと、当該2組のフォトセンサ33A,33Bの出力信号を処理する図示しない信号処理回路と、を具備している。各フォトセンサ33A,33Bは、それぞれ発光素子33Aa,33Baと受光素子33Ab,33Bbとを有しており、それぞれ発光素子33Aa,33Baから発射された光を受光素子33Ab,33Bbが受光することで、出力電圧が発生する。信号処理回路は、前記2組のフォトセンサ33A,33Bの出力信号を矩形状の電気信号に変換し且つその電流値を増幅して出力する回路である。
【0017】
ケース10は、図1図2に示すように、合成樹脂を上面が開放された略箱型に成形して構成されている。ケース10の上面側には、矩形凹状の収納部11が形成されている。収納部11の底面には、このケース10内にインサート成形した前記回路基板30の上面が露出している。回路基板30の上面中央には、ケース10の一部を構成する円形で柱状の軸部13が立設している。軸部13の中央には円形の穴14が形成されている。軸部13の回路基板30の下面側には、ケース10の外周の側壁部17を構成する部分と連結する底部(連結部)15が設けられている。言い換えれば、ケース10は、回路基板30の下面側の底部15と、回路基板30の周囲を囲むように形成される側壁部17と、底部19から回路基板30の中央を貫通してその上面側に突出する軸部13とを具備して構成されており、ケース10の1つの側壁部17からは、6本の端子板39の先端側部分がその外方に向けて突出している。各端子板39の回路基板30に当接した部分は、ケース10を構成する合成樹脂によって固定され、回路基板30の各接続パターンとの接続状態を良好に保持している。また側壁部17の2つの角部の上面からは小突起状の位置決め部19が突出している。
【0018】
ケース10を製造するには、ケース10の形状のキャビティーを有する金型内に、回路基板30と端子板39とを収納し、その際、各端子板39の一端側の部分を回路基板30の図示しない各接続パターンに当接しておく。そしてこの状態でキャビティー内に溶融した合成樹脂を注入し、合成樹脂が固化した後に金型を取り外せば、回路基板30と端子板39をインサート成形したケース10が完成する。このときケース10の軸部13と底部15は、回路基板30に設けた2つの貫通孔315を通して接続されている。
【0019】
図5は回転体60を下側から見た斜視図、図6は回転体60の底面図、図8は回転体60の側断面図(図1の断面より回転方向に90度回転した位置での断面図)である。これらの図及び図1図3に示すように、回転体60は合成樹脂製であり、円板状の本体部61と、本体部61の上面中央から突出する円形柱状のつまみ部(シャフト)63とを一体に成形して構成されている。本体部61の下面は光反射面62となっている。本体部61の外径寸法は、前記ケース10の収納部11に収納される寸法に形成されている。本体部61下面の光反射面62の中央には、円形の凹部からなる軸受部611が形成されている。光反射面62の軸受部611の周囲を囲む位置には、円周状の反射部615が形成されている。
【0020】
反射部615は、複数組の高反射部615aと低反射部615bを、連続して円周状に等間隔に、エンドレスに交互に形成して構成されており、円周状の反射軌跡面(反射トラック面)となっている。高反射部615aと低反射部615bは、何れも印刷によって形成されている。さらに具体的に言えば、光反射面62上に印刷形成された高反射部615aの表面に、低反射部615bを積層するように印刷して構成されている。
【0021】
図7は、反射部615の形成方法説明図であり、図7(a-1),(b-1),(c-1)はそれぞれ底面図、図7(a-2),(b-2),(c-2)はそれぞれ断面概略図(図7(a-1)に示すB-B部分における)である。図7(a-1),(a-2)に示すように、反射部615を印刷する前の回転体60を用意する。
【0022】
次に図7(b-1),(b-2)に示すように、光反射面62上の略全体(外周近傍部分と軸受部611の周囲の部分を除く)に、メタリック色彩の加飾用インキを印刷することで高反射部615aを形成する。印刷方法としてこの実施形態では、パッド印刷を用いている。即ち、凹版を使用して版上のインキをシリコンパッドに一次転写し、シリコンパッド上のインキを被印刷物である光反射面62に二次転写するパッド印刷を用いることで高反射部615aを形成する。
【0023】
この実施形態では、高反射部615a用のインキとして、アルミ粉と樹脂と溶剤と硬化剤を混錬したメタリック色彩(銀色の金属光沢を有する色彩)の加飾用インキを用いている。この結果、高反射部615aは鏡面状に形成され、光を効果的に反射する面となる。
【0024】
次に図7(c-1),(c-2)に示すように、高反射部615aを形成した光反射面62の上に、暗色の加飾用インキを印刷することで低反射部615bを形成する。印刷方法としてこの実施形態では、上記高反射部615aと同様にパッド印刷を用いている。
【0025】
この実施形態では、上記低反射部615b用のインキとして、カーボンブラック粉と樹脂と溶剤と硬化剤を混錬した暗色(黒色の色彩)の加飾用インキを用いている。この結果、低反射部615bは反射し難い暗色(黒色)に形成された面となる。
【0026】
低反射部615bは、前記高反射部615a全体を覆い、且つ、リング状に等間隔に扇形状の開口部A1を設け、この開口部A1内に前記高反射部615aを露出させる形状に形成されている。さらに具体的に説明すれば、露出している扇形状の高反射部615aと、当該露出している高反射部615aに挟まれる扇形状の低反射部615bは、何れも回転体60の回転軸L(図6図8)から放射状に延びる線上に高反射部615aと低反射部615bの左右両側辺が位置するように形成されている。低反射部615bは高反射部615aの外周側をリング状に連結する外輪部(外側連結部)615bxと、高反射部615aの内周側をリング状に連結する内輪部(内側連結部)615byとを有している。即ち、高反射部615aは、その左右両側と外周側と内周側全体が低反射部615bによって囲まれている。
【0027】
本実施形態において、高反射部615aと低反射部615bの形成に何れもパッド印刷を用いたのは、他の印刷方法によって形成した場合に比べて、それらの表面をより滑らか(平滑)にすることができ、反射光の状態をより良くすることができるからである。即ち、仮にスクリーン印刷によって高反射部615aと低反射部615bを形成した場合、スクリーンの網目の状態が反映され、僅かではあるがその表面が波打つようになる虞があるが、本実施形態を用いればその虞を解消できるからである。
【0028】
また光反射面62上に印刷形成された高反射部615aの表面に低反射部615bを積層して印刷形成したのは、以下の理由による。即ち、この実施形態のように、高反射部615aを、金属粉を混錬したメタリック色彩のインクを用いて形成した場合は、その外周辺がにじみ易くて必ずしもその外周辺を精緻に形成できない。一方、この実施形態のように低反射部615bの印刷をカーボン粉を混錬したインクを用いて行ったような場合は、その外周辺はにじみ難く精緻に形成できる。そこで、高反射部615aを精緻な外周辺形状の不要な下層側に形成してその上に精緻な形状(内周辺)の開口部A1を有する低反射部615bを形成することで、当該開口部A1に高反射部615aを露出させ、これによって高反射部615aの露出している外周辺を精緻に形成した。これによって、より精度の高いオンオフ信号(出力信号)を得ることができた。
【0029】
また、この回転体60によれば、この回転体60の下側を軸支するための突出する軸の代わりに軸受部611となる凹部を設けたので、光反射面62から突出する部分が無くなる。このため、光反射面62への上記印刷作業を容易に行うことが可能になる。なお、回転体60の上側はつまみ部63(下記する軸受部811)によって軸支される。
【0030】
カバー80は、金属板製であって、略矩形状で前記ケース10の収納部11を覆う寸法形状のカバー本体部81と、カバー本体部81の対向する一対の両側辺に接続されて略直角に下方向に折り曲げられる側面部83,83とを有して構成されている。カバー本体部81の中央には、円筒状の軸受部811が形成され、その中央は貫通孔となっている。また、カバー本体部81の2つの角部近傍には、前記ケース10の位置決め部19を挿入する小孔からなる位置決め部813が形成されている。各側面部83の下辺の中央部分には、下方向に向かって突出する他部材取付部831が形成され、また他部材取付部831の両側には、下方向に向かって突出するケース取付部833が形成されている。
【0031】
次に、このエンコーダ1を組み立てるには、前記ケース10の収納部11内に回転体60の本体部61を収納する。このとき、ケース10の軸部13を、回転体60の軸受部611に挿入し、これによって回転体60を回転自在に支持すると同時に、軸部13の上面を軸受部611の底面に当接させることで、本体部61の下面と、フォトIC33の発光素子33Aa,33Ba及び受光素子33Ab,33Bbとの間の離間距離を所定の離間距離とする。つまりケース10の軸部13と回転体60の軸受部611によって、回転体60の回転動作と、発光素子33Aa,33Ba及び受光素子33Ab,33Bbと反射部615間の離間距離の正確な設定と、を同時に行っている。
【0032】
次に、前記回転体60の本体部61を収納したケース10の上面にカバー80のカバー本体部81を被せてケース10の収納部11を塞ぐ。このとき同時に回転体60のつまみ部63をカバー80の軸受部811に挿入し、回転体60を回転自在に軸支する。そして、カバー80の各ケース取付部833を、ケース10の下面側に折り曲げれば、カバー80がケース10に固定され、図3に示すエンコーダ1が完成する。なお上記組立手順はその一例であり、他の各種異なる組立手順を用いて組み立てても良いことはいうまでもない。
【0033】
以上のように構成されたエンコーダ1において、まず何れかの端子板39に電圧を印可して回路基板30上の電気回路を起動しておく。ここで図9は、2つの内の一方のフォトセンサ33A(又は33B)と、高反射部615a及び低反射部615bの関係を示す概略説明図である。なお図示の都合上、回転体60の回転方向Eと、フォトセンサ33A(又は33B)に設けた一対の発光素子33Aa(又は33Ba)と受光素子33Ab(又は33Bb)の配列方向とを同一に示しているが、実際には両者の方向は直交している。同図に示すように、フォトセンサ33A(又は33B)の発光素子33Aa(又は33Ba)から回転体60下面の反射部615(615a,615b)に光が照射され、照射された部分が高反射部615aの場合は当該光の多くは反射されてフォトセンサ33A(又は33B)の受光素子33Ab(又は33Bb)に受光され、一方照射された部分が低反射部615bの場合は当該光の多くは反射されずフォトセンサ33A(又は33B)の受光素子33Ab(又は33Bb)に受光されない。従って、回転体60を回転すると、受光素子33Ab(又は33Bb)での受光状態に応じて、フォトセンサ33A(又は33B)からの出力信号が変化する。具体的には、高反射部615aと低反射部615bによる反射状態の相違に応じたオンオフ信号が得られる。
【0034】
ところで、この実施形態においては、高反射部615aの外周全体を囲むように、低反射部615bが形成されているので、より正確なオンオフ信号を得ることができる。即ち、各高反射部615aは、黒色の低反射部615bによってその外周辺と内周辺を含めて孤立している。このため、フォトセンサ33A(又は33B)の発光素子33Aa(又は33Ba)から発射された光の一部が外輪部615bx又は内輪部615byに相当する位置に照射されて反射されても、この反射光の光量を小さくでき、当該反射光がさらに他の部材に反射した後に受光素子33Ab(又は33Bb)に入射して誤動作する虞を確実に防止できる。このことから、より正確なオンオフ信号を得ることができる。
【0035】
両フォトセンサ33A,33Bは、回転体60の回転軸L1を中心にした同一円周上に位置し、且つ2つのフォトセンサ33A,33Bにそれぞれ対向する位置にある異なる高反射部615a(または低反射部615b)に対して円周方向に少しずれた位置となるように配置されている。このため、回転体60が回転した際に一方のフォトセンサ33A(又は33B)が対向する位置にある高反射部615a(または低反射部615b)を通過するタイミングと、他方のフォトセンサ35B(又は33A)が対向する位置にある高反射部615a(または低反射部615b)を通過するタイミングとが少しずれる。そしてこの出力信号は、端子板39に出力される。このようにして得られた出力信号を用いれば、位相がずれた一対のオンオフ波形を解析することで、回転体60の回転方向や回転速度などを測定することができる。
【0036】
なお、上記各実施形態では、何れも発光素子と受光素子を一体化したフォトIC(フォトセンサ)を用いた例を説明したが、発光素子と受光素子、さらには信号処理回路は別々の素子として構成し、これらをそれぞれ設置しても良い。
【0037】
以上説明したように、エンコーダ1は、回転軸Lを中心に回転自在に軸支され且つ光反射面62を設けた回転体60と、回転体60の光反射面62に向けて光を発射する発光素子33Aa,33Baと、回転体60の光反射面62で反射された光を受光する受光素子33Ab,33Bbと、を有し、回転体60の光反射面62に、発光素子33Aa,33Baから受けた光を反射する高反射部615a及び低反射部615bを形成し、これら高反射部615aと低反射部615bによって反射された光を受光素子33Ab,33Bbが受光する受光量に応じて回転体60の回転状態を検出し、且つ光反射面62上の高反射部615aと低反射部615bを、何れも印刷によって形成した構成としている。このように、高反射部615aと低反射部615bを何れも印刷によって形成したので、これら高反射部615aと低反射部615bの形成を容易に行うことができる。また印刷に用いる設備は、蒸着やエッチングなどに用いる設備に比べて安価な設備とすることができる。これらのことから製造コストの低減化を図ることができる。
【0038】
また上記エンコーダ1においては、光反射面62上に印刷形成した高反射部615aの表面に低反射部615bを積層して印刷形成している。このように同一面(光反射面62)に印刷層を2層積層することで、高反射部615aと低反射部615bを形成したので、その製造を容易に行うことができる。
【0039】
また高反射部615a上に低反射部615bを積層したので、高反射部615aの印刷を、外周辺がにじみ易くて精緻な形状に印刷し難い金属粉を混錬したメタリック色彩のインクを用いて行ったような場合でも、この高反射部615aを精緻な形状の不要な下層側に印刷してその上に精緻な形状の内周辺の開口部A1を有する低反射部615bを印刷することで、当該開口部A1に高反射部615aを露出させ、これによって高反射部615aの外周辺を精緻に形成することができ、より精度の高い出力信号を得ることができた。
【0040】
またこのエンコーダ1においては、回路基板30の上面中央から突出するケース10の軸部13が、回転体60の下面中央に設けた凹状の軸受部611に回動自在に軸支されるが、両者の接触面積は小さいので、摩耗の少ない構造となっている。同時にこの軸部13の上面は軸受部611の底面に当接することで回転体60を上下方向に支えるので、回路基板30の上面と回転体60の下面の間の隙間寸法を正確に所望の寸法とすることができる。これによって、フォトセンサ33A,33Bの発光素子33Aa,33Baから発射された光を反射部615で反射して受光素子33Ab,33Bbに受光する機構を、精度よく構成することができ、精度のよい出力信号を得ることができる。
【0041】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。例えば、上記実施形態では、高反射部を銀色のメタリック色彩としたが、銀色以外のメタリック色彩としても良いし、さらにはメタリック色彩以外の色彩であっても良く、要は低反射部よりも明度の高い色彩であれば良い。一方上記実施形態では、低反射部を黒色に形成したが、黒色以外の色彩であっても良く、要は高反射部よりも明度の低い色彩であれば良い。また上記実施形態では高反射部の外周全体を低反射部で囲む構成としたが、場合によっては外周部分(外側連結部615bx)や内周部分(内側連結部615by)はこれを省略しても良い。また上記実施形態では、高反射部と低反射部を何れもパッド印刷によって形成したが、場合によってはスクリーン印刷など、他の各種印刷方法によって形成してもよい。また場合によっては、低反射部の上に高反射部を積層して印刷しても良い。
【0042】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
1 光学式エンコーダ(エンコーダ)
10 ケース
30 回路基板
33 フォトIC
33A,33B フォトセンサ
33Aa,33Ba 発光素子
33Ab,33Bb 受光素子
60 回転体
62 光反射面
611 軸受部(凹部)
615 反射部
615a 高反射部
615b 低反射部
L 回転軸
80 カバー
図1
図2
図3
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図9