(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071218
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】車両用補強部材および車両
(51)【国際特許分類】
F16F 9/342 20060101AFI20240517BHJP
F16F 9/346 20060101ALI20240517BHJP
F16F 9/06 20060101ALI20240517BHJP
B62K 21/08 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16F9/342
F16F9/346
F16F9/06
B62K21/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182052
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【弁理士】
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】飯倉 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 猛史
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA04
3J069AA53
3J069CC10
3J069EE15
3J069EE16
3J069EE19
3J069EE28
3J069EE36
(57)【要約】
【課題】車両の走行時に車体に生じる微小な変形や振動を抑制しかつ搭乗者の好みに応じて減衰力のセッティングを変更できる、車両用補強部材および車両を提供する。
【解決手段】車両用補強部材10は、シリンダ12と、シリンダ12内をガス室Gと油室Hとに区画するフリーピストン14と、油室Hを第1油室H1と第2油室H2とに区画するピストン16と、ピストン16に取り付けられるピストンロッド30と、ピストン16に設けられる減衰力発生部24a,24bと、減衰力調整部62とを備える。減衰力調整部62は、シリンダ12に設けられるハウジング部64と、ハウジング部64内に設けられかつピストン16の摺動範囲T外において第1油室H1と第2油室H2とを連通するバイパス油路66と、バイパス油路66の流路面積を変化させる調整弁68とを含む。車両用補強部材10は、二輪車100や四輪車200の車体の2点間に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内をガスが封入されるガス室と作動油が充填される油室とに区画するように前記シリンダに収容されるフリーピストンと、
前記油室を第1油室と前記ガス室および前記第1油室によって挟まれる第2油室とに区画するように前記シリンダに収容されかつ前記シリンダの軸方向に摺動可能なピストンと、
前記ピストンに取り付けられかつ前記第1油室を通って前記シリンダの外部に延びるピストンロッドと、
前記第1油室と前記第2油室との間で前記作動油を流動させることによって減衰力を発生させるために前記ピストンに設けられる減衰力発生部と、
前記減衰力を調整する減衰力調整部とを備え、
前記減衰力調整部は、前記シリンダに設けられるハウジング部と、前記ハウジング部内に設けられかつ前記ピストンの摺動範囲外において前記第1油室と前記第2油室とを連通するバイパス油路と、前記バイパス油路における作動油の流量を調整するために前記バイパス油路の流路面積を変化させる調整弁とを含む、車両用補強部材。
【請求項2】
前記バイパス油路は、前記第1油室に繋がる第1路と、前記第2油室に繋がる第2路と、前記第1路と前記第2路とを連通する第3路とを含み、
前記第1路および前記第2路は前記軸方向に対して直角に前記油室と交わり、前記第3路は前記軸方向に対して平行であり、
前記調整弁は、前記第1路と前記第3路との間または前記第2路と前記第3路との間の流路面積を変化させるために前記ハウジング部に設けられる、請求項1に記載の車両用補強部材。
【請求項3】
前記バイパス油路は、前記第1油室に繋がる第1路と、前記第2油室に繋がる第2路とを含み、
前記第1路は前記軸方向に対して鈍角に前記第1油室と交わり、前記第2路は前記軸方向に対して鋭角に前記第2油室と交わりかつ前記第1路と連通し、
前記調整弁は、前記第1路と前記第2路との間の流路面積を変化させるために前記ハウジング部に設けられるロータリバルブを含む、請求項1に記載の車両用補強部材。
【請求項4】
前記ハウジング部は、開口部を有し、
前記バイパス油路は、前記第1油室に繋がる第1路と、前記第2油室に繋がる第2路とを含み、
前記第1路は前記開口部と前記第1油室とを連通し、
前記第2路は前記開口部と前記第2油室とを連通し、
前記調整弁は、前記開口部を塞ぎかつ前記第1路と前記第2路との間の流路面積を変化させるために前記ハウジング部に設けられる、請求項1に記載の車両用補強部材。
【請求項5】
前記第1路および前記第2路の両方が前記軸方向に対して鈍角に前記油室と交わるか、または前記第1路および前記第2路の両方が前記軸方向に対して鋭角に前記油室と交わる、請求項4に記載の車両用補強部材。
【請求項6】
車体と、
前記車体の2点間に取り付けられる請求項1から5のいずれかに記載の前記車両用補強部材とを含む、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用補強部材および車両に関し、より特定的には車両における車体の2点間に取り付けられる車両用補強部材およびそれを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の操縦安定性や乗心地等を高めるために、車両における車体の2点間に取り付けられかつ粘性的減衰力を利用したダンパが提案されている。また、このようなダンバに対しては、当該減衰力を固定するのではなく、搭乗者の好みに応じて当該減衰力のセッティングを変更したいという要望がある。
【0003】
この種の従来技術の一例として、特許文献1においてステアリングダンパが開示されている。このステアリングダンパは、シリンダ体と、シリンダ体に出没可能に連繋されるロッド体と、ロッド体に連結されながらシリンダ体内に摺動可能に収装されて減衰手段を有するピストン体と、ピストン体によってシリンダ体内に画成される一方室および他方室と、ピストン体が有する減衰手段を迂回して一方室と他方室との連通を許容するバイパス路と、バイパス路における作動油の通過流量を調整するためにバイパス路に設けられる制御手段とを備える。そして、バイパス路における作動油の通過流量を調整することによって、減衰手段による減衰力をセッティングできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたダンパは、二輪車の車体フレーム側たるヘッドパイプとハンドル側たるフォークブラケットとの間に取り付けられるステアリングダンパであり、二輪車におけるハンドルが車体フレームに対して転舵されない中立状態にあるときのフィーリングを改善することを目的としている。そのために、当該ダンパでは、ハンドルが中立状態にあるときにピストン体によってバイパス路を閉鎖して、中立状態での減衰力を、中立以外の状態での減衰力より大きくする。これにより、走行中の二輪車における前輪がシミーなどで細かく振れる場合にも、ハンドルをこれに反応させないことが可能となり、ハンドルのステアリングのフィーリングが改善される。
【0006】
このように、特許文献1では、ハンドルが中立状態にあるときにピストン体によってバイパス路を閉鎖しなければならず、ハンドルの位置やピストン体の位置にかかわらず常にバイパス路を開放して作動油を流通可能とする構成につき、何ら開示されていない。また、特許文献1には、車両の走行時にハンドル以外の車体に生じる微小な変形や振動を抑制する点につき記載されていない。
【0007】
それゆえにこの発明の主たる目的は、車両の走行時に車体に生じる微小な変形や振動を抑制しかつ搭乗者の好みに応じて減衰力のセッティングを変更できる、車両用補強部材およびそれを備える車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、シリンダと、シリンダ内をガスが封入されるガス室と作動油が充填される油室とに区画するようにシリンダに収容されるフリーピストンと、油室を第1油室とガス室および第1油室によって挟まれる第2油室とに区画するようにシリンダに収容されかつシリンダの軸方向に摺動可能なピストンと、ピストンに取り付けられかつ第1油室を通ってシリンダの外部に延びるピストンロッドと、第1油室と第2油室との間で作動油を流動させることによって減衰力を発生させるためにピストンに設けられる減衰力発生部と、減衰力を調整する減衰力調整部とを備え、減衰力調整部は、シリンダに設けられるハウジング部と、ハウジング部内に設けられかつピストンの摺動範囲外において第1油室と第2油室とを連通するバイパス油路と、バイパス油路における作動油の流量を調整するためにバイパス油路の流路面積を変化させる調整弁とを含む、車両用補強部材が提供される。
【0009】
この発明では、シリンダ内においてピストンに設けられる減衰力発生部を介して第1油室と第2油室との間で作動油を流動させることによって、減衰力を発生させる。さらに、第1油室と第2油室とは、減衰力調整部のハウジング部内に設けられるバイパス油路によって連通される。調整弁によってバイパス油路の流路面積を変化させ、バイパス油路における作動油の流量が調整され、減衰力が増減される。これにより、搭乗者の好みに応じて減衰力のセッティングを変更できる。すなわち、調整弁によってバイパス油路を閉じた状態では、作動油がピストンに設けられた減衰力発生部を通過して大きな減衰力が発生するが、調整弁によってバイパス油路を開いた状態では、作動油の一部がバイパス油路に流れるため、調整弁の開き量に応じて減衰力を変化させることができる。また、バイパス油路は、ピストンの摺動範囲外において第1油室と第2油室とを連通するので、シリンダ内におけるピストンの位置にかかわらずピストンがバイパス油路を塞ぐことはなく常にバイパス油路を開放して作動油が流通可能となる。したがって、車両の走行時には常時、減衰力調整部にてセッティングされた減衰力によって、車体に生じる微小な変形や振動を抑制できる。たとえば、この発明に係る車両用補強部材を二輪車に装着した場合、直進安定性を向上させることができ、さらに減衰力調整部によって搭乗者の好みに応じて直進安定性の度合いをセッティングできる。
【0010】
好ましくは、バイパス油路は、第1油室に繋がる第1路と、第2油室に繋がる第2路と、第1路と第2路とを連通する第3路とを含み、第1路および第2路は軸方向に対して直角に油室と交わり、第3路は軸方向に対して平行であり、調整弁は、第1路と第3路との間または第2路と第3路との間の流路面積を変化させるためにハウジング部に設けられる。この場合、第1路および第2路をシリンダの軸方向に対して直交する方向に延びるように形成し、第3路を当該軸方向に対して平行に延びるように形成すればよいので、第1路から第3路を容易に形成できる。
【0011】
また好ましくは、バイパス油路は、第1油室に繋がる第1路と、第2油室に繋がる第2路とを含み、第1路は軸方向に対して鈍角に第1油室と交わり、第2路は軸方向に対して鋭角に第2油室と交わりかつ第1路と連通し、調整弁は、第1路と第2路との間の流路面積を変化させるためにハウジング部に設けられるロータリバルブを含む。この場合、第1路をシリンダの軸方向に対して鈍角に交わるように形成し、第2路を当該軸方向に対して鋭角に交わるように形成することによって、バイパス油路の油路長を短くでき、シリンダに設けられるハウジング部を小さくできる。また、ロータリバルブを回転することによって、第1路と第2路との間の流路面積を容易に調整できる。
【0012】
さらに好ましくは、ハウジング部は、開口部を有し、バイパス油路は、第1油室に繋がる第1路と、第2油室に繋がる第2路とを含み、第1路は開口部と第1油室とを連通し、第2路は開口部と第2油室とを連通し、調整弁は、開口部を塞ぎかつ第1路と第2路との間の流路面積を変化させるためにハウジング部に設けられる。この場合、第1路および第2路をともにハウジング部の1つの開口部から容易に加工できる。また、ハウジング部の開口部は調整弁によって塞がれるので、別途埋め栓は不要であり、部品数を少なくできる。
【0013】
好ましくは、第1路および第2路の両方が軸方向に対して鈍角に油室と交わるか、または第1路および第2路の両方が軸方向に対して鋭角に油室と交わる。この場合、第1路および第2路の両方がシリンダの軸方向に対して鈍角に交わるかまたは鋭角に交わるように形成されるので、シリンダに設けられるハウジング部を小さくできる。
【0014】
また、車体と、車体の2点間に取り付けられる上述の車両用補強部材とを含む、車両が提供される。この発明に係る車両用補強部材は、二輪車や四輪車などの車両に好適に用いることができる。
【0015】
なお、この発明において、軸方向に対する第1路および第2路の角度は、ガス室側を支点として第1油室側を揺動させたときの軸方向に対する角度に相当する。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、車両の走行時に車体に生じる微小な変形や振動を抑制しかつ搭乗者の好みに応じて減衰力のセッティングを変更できる、車両用補強部材およびそれを備える車両が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の一実施形態に係る車両用補強部材を示す断面図である。
【
図2】ピストン、減衰力発生部およびその近傍を示す拡大断面図である。
【
図3】
図1の実施形態において、(a)はバイパス油路を調整弁によって閉じた状態を示す図解図であり、(b)はバイパス油路を調整弁によって開いた状態を示す図解図である。
【
図4】
図1の実施形態における作動油の流れを示す図解図であり、(a)はバイパス油路を閉じた場合を示し、(b)はバイパス油路を開いた場合を示す。
【
図5】この発明に係る車両用補強部材が用いられた二輪車を示す図解図である。
【
図6】この発明に係る車両用補強部材が用いられた四輪車を示す図解図である。
【
図7】この発明の他の実施形態に係る車両用補強部材を示す断面図である。
【
図8】
図7の実施形態において、(a)はバイパス油路を調整弁によって閉じた状態を示す図解図であり、(b)はバイパス油路を調整弁によって開いた状態を示す図解図である。
【
図9】この発明のその他の実施形態に係る車両用補強部材を示す断面図である。
【
図10】
図9の実施形態において、(a)はバイパス油路を調整弁によって閉じた状態を示す図解図であり、(b)はバイパス油路を調整弁によって開いた状態を示す図解図である。
【
図11】この発明のさらにその他の実施形態に係る車両用補強部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。
【0019】
図1を参照して、この発明の一実施形態に係る車両用補強部材10は、単筒式の油圧緩衝器である。車両用補強部材10は、一端開口のシリンダ12を含む。シリンダ12には、フリーピストン14、ピストン16およびガイドロッドハウジング18が収容される。
【0020】
フリーピストン14は、シリンダ12内をガスが封入されるガス室Gと作動油が充填される油室Hとに区画する。ガス室Gにはたとえば高圧窒素ガス等の不活性ガスが封入される。フリーピストン14とシリンダ12との間には、Oリング15が設けられる。
【0021】
図2をも参照して、ピストン16は、シリンダ12の軸方向Xに摺動可能であり、油室Hを第1油室H1と第2油室H2とに区画する。第2油室H2は、ガス室Gと第1油室H1とによって挟まれる。ピストン16のストロークSは短い。すなわち、ピストン16の摺動範囲Tはさほど大きくない。この実施形態では、ピストン16のストロークSは1mm以下であり、ピストン16の摺動範囲Tは10mm程度である。ピストン16の外周面には、ピストンリング20が取り付けられ、ピストン16とピストンリング20との間には、Oリング22が設けられる。
【0022】
ピストン16には、第1油室H1と第2油室H2との間で作動油を流動させることによって減衰力を発生させるために、伸び側の減衰力発生部24aおよび縮み側の減衰力発生部24bが設けられる。
【0023】
伸び側の減衰力発生部24aは、油路26aと減衰弁28aとを含む。油路26aは、第1油室H1と第2油室H2とを連通するためにピストン16を貫通する。減衰弁28aは、複数の環状のバルブプレートを積層して構成され、ピストン16の第2油室H2側の主面において油路26aを開閉可能に設けられる。減衰力発生部24aは、ピストン16が第1油室H1側に移動し車両用補強部材10が伸長動作した場合に機能する。この場合、第1油室H1の作動油が油路26aを通って第2油室H2に向かって流動すると、減衰弁28aの弾性的な付勢力より大きい第1油室H1内の作動油の油圧によって、減衰弁28aが弾性変形し開弁する。すると、作動油は、開弁された油路26aを通って減衰弁28aからの弾性的な抵抗力を受けながら流動する。この作動油の流動によって、減衰力が発生し衝撃力が緩和される。
【0024】
同様に、縮み側の減衰力発生部24bは、油路26bと減衰弁28bとを含む。油路26bは、第1油室H1と第2油室H2とを連通するためにピストン16を貫通する。減衰弁28bは、複数の環状のバルブプレートを積層して構成され、ピストン16の第1油室H1側の主面において油路26bを開閉可能に設けられる。減衰力発生部24bは、ピストン16が第2油室H2側に移動し車両用補強部材10が圧縮動作した場合に機能する。この場合、第2油室H2の作動油が油路26bを通って第1油室H1に向かって流動すると、減衰弁28bの弾性的な付勢力より大きい第2油室H2内の作動油の油圧によって、減衰弁28bが弾性変形し開弁する。すると、作動油は、開弁された油路26bを通って減衰弁28bからの弾性的な抵抗力を受けながら流動する。この作動油の流動によって、減衰力が発生し衝撃力が緩和される。
【0025】
ピストン16にはピストンロッド30の一端部が取り付けられ、ナット32で固定される。ここで、ピストン16の第1油室H1側では、減衰弁28bとピストンロッド30との間に、コントロールワッシャ34およびプレーンワッシャ36が介挿され、ピストン16の第2油室H2側では、減衰弁28aとナット32との間に、コントロールワッシャ38およびプレーンワッシャ40が介挿される。
【0026】
ガイドロッドハウジング18は、ピストンロッド30を案内するために、シリンダ12内における開口端の近傍に設けられる。ピストン16に取り付けられたピストンロッド30は、第1油室H1を通りガイドロッドハウジング18に挿通されて、シリンダ12の外部に延びる。ガイドロッドハウジング18とピストンロッド30との間には、スライドメタル42が介挿される。これにより、ピストンロッド30は、ガイドロッドハウジング18に対して摺動可能となる。ガイドロッドハウジング18の第1油室H1側には、ロッドシール44、スタティックシール46およびシールリテーナ48が設けられ、これによって、第1油室H1からオイルが漏れないように、シリンダ12とピストンロッド30との間がシールされる。シリンダ12内には、サークリップ50,52が設けられ、これによって、ガイドロッドハウジング18、ロッドシール44、スタティックシール46およびシールリテーナ48がシリンダ12内の所定の位置に固定される。ガイドロッドハウジング18の外部側主面には、ダストシール54が設けられ、これによって外部からシリンダ12内への異物の侵入が防止される。第1油室H1において、プレーンワッシャ36とシールリテーナ48との間には、ガス反力キャンセル用のスプリング56が設けられる。
【0027】
ピストンロッド30の他端部は、ゆるみ止め用のナット58と螺合され、かつジョイント60に螺入される。
【0028】
車両用補強部材10はさらに、減衰力を調整する減衰力調整部62を含む。減衰力調整部62は、シリンダ12に設けられるハウジング部64と、ハウジング部64内に設けられかつピストン16の摺動範囲T外において第1油室H1と第2油室H2とを連通するバイパス油路66と、バイパス油路66における作動油の流量を調整するためにバイパス油路66の流路面積を変化させる調整弁68とを含む。
【0029】
ハウジング部64は、シリンダ12の開口端側に一体的に形成される。
【0030】
バイパス油路66は、第1油室H1に繋がる第1路70と、第2油室H2に繋がる第2路72と、第1路70と第2路72とを連通する第3路74とを含む。第1路70および第2路72はそれぞれ、摺動範囲Tより軸方向Xの外方において第1油室H1および第2油室H2に繋がる。第1路70は軸方向Xに対して直角に第1油室H1と交わり、第2路72は軸方向Xに対して直角に第2油室H2と交わり、第3路74は軸方向Xに対して平行である。第1路70および第2路72の端部はそれぞれ、埋め栓76,78によって塞がれる。
【0031】
調整弁68は、第1路70と第3路74との間の流路面積を変化させるためにハウジング部64に設けられる。調整弁68の先端部にはOリング80が嵌められる。ハウジング部64における調整弁68の頭部近傍には、調整弁68の抜け止め用のサークリップ82が取り付けられる。さらに、調整弁68の頭部には、セットスクリュ84によってコントロールハンドル86が固定され、コントロールハンドル86によって調整弁68の位置を調整できる。調整弁68を進退させることによって、
図3(a)に示すようにバイパス油路66が閉じられ、または
図3(b)に示すようにバイパス油路66が開かれる。
【0032】
バイパス油路66が閉じられた場合には、
図4(a)に示すように、作動油はピストン16に設けられた減衰力発生部24a,24bのみを通って第1油室H1と第2油室H2との間を移動する。これにより、大きな減衰力が得られる。
【0033】
一方、バイパス油路66が開かれた場合には、
図4(b)に示すように、作動油は、ピストン16に設けられた減衰力発生部24a,24bだけではなくバイパス油路66を通って第1油室H1と第2油室H2との間を移動する。これにより、バイパス油路66が閉じられた場合より減衰力を小さくできる。
【0034】
図5を参照して、車両用補強部材10は、二輪車100に適用される。二輪車100は、車体102と、車体102に設けられる2つの車輪104とを含む。車体102は、2つの車輪104の間に設けられる平面視略U字型のフレーム106を含む。この実施形態では、フレーム106の前部の2点間、フレーム106の一側部(左側部)の2点間、およびフレーム106の他側部(右側部)の2点間がそれぞれ、車両用補強部材10によって連結される。このように、車両用補強部材10が車体102の2点間に取り付けられる。
【0035】
また、
図6を参照して、車両用補強部材10は、四輪車200に適用される。四輪車200は、車体202と、車体202に設けられる4つの車輪204とを含む。車体202は、前後方向に延びる一対のサイドメンバ206,208を含む。この実施形態では、サイドメンバ206,208の前端部同士および後端部同士がそれぞれ、車両用補強部材10によって連結される。このように、車両用補強部材10が車体202の2点間に取り付けられる。
【0036】
このような車両用補強部材10によれば、シリンダ12内においてピストン16に設けられる減衰力発生部24a,24bを介して第1油室H1と第2油室H2との間で作動油を流動させることによって、減衰力を発生させる。さらに、第1油室H1と第2油室H2とは、減衰力調整部62のハウジング部64内に設けられるバイパス油路66によって連通される。調整弁68によってバイパス油路66の流路面積を変化させ、バイパス油路66における作動油の流量が調整され、減衰力が増減される。これにより、搭乗者の好みに応じて減衰力のセッティングを変更できる。すなわち、調整弁68によってバイパス油路66を閉じた状態では、作動油がピストン16に設けられた減衰力発生部24a,24bを通過して大きな減衰力が発生するが、調整弁68によってバイパス油路66を開いた状態では、作動油の一部がバイパス油路66に流れるため、調整弁68の開き量に応じて減衰力を変化させることができる。また、バイパス油路66は、ピストン16の摺動範囲T外において第1油室H1と第2油室H2とを連通するので、シリンダ12内におけるピストン16の位置にかかわらずピストン16がバイパス油路66を塞ぐことはなく常にバイパス油路66を開放して作動油が流通可能となる。したがって、車両用補強部材10を二輪車100や四輪車200に装着した場合、車両の走行時には常時、減衰力調整部62にてセッティングされた減衰力によって、車体102,202に生じる微小な変形や振動を抑制できる。また、車両用補強部材10を二輪車100に装着した場合、直進安定性を向上させることができ、さらに減衰力調整部62によって搭乗者の好みに応じて直進安定性の度合いをセッティングできる。
【0037】
第1路70および第2路72をシリンダ12の軸方向Xに対して直交する方向に延びるように形成し、第3路74を軸方向Xに対して平行に延びるように形成すればよいので、第1路70から第3路74を容易に形成できる。
【0038】
車両用補強部材10は、二輪車100や四輪車200などの車両に好適に用いることができる。
【0039】
図7を参照して、この発明の他の実施形態に係る車両用補強部材10aについて説明する。車両用補強部材10aは、減衰力調整部62に代えて減衰力調整部62aを含む点を除いて、車両用補強部材10と同様に構成される。
【0040】
減衰力調整部62aは、シリンダ12に設けられるハウジング部64aと、ハウジング部64a内に設けられかつピストン16の摺動範囲T(
図2参照)外において第1油室H1と第2油室H2とを連通するバイパス油路66aと、バイパス油路66aにおける作動油の流量を調整するためにバイパス油路66aの流路面積を変化させる調整弁68aとを含む。
【0041】
ハウジング部64aは、シリンダ12の略中央部に一体的に形成される。
【0042】
バイパス油路66aは、第1油室H1に繋がる第1路70aと、第2油室H2に繋がる第2路72aとを含む。第1路70aおよび第2路72aはそれぞれ、摺動範囲Tより軸方向Xの外方において第1油室H1および第2油室H2に繋がる。第1路70aは軸方向Xに対して鈍角に第1油室H1と交わり、第2路72aは軸方向Xに対して鋭角に第2油室H2と交わりかつ第1路70aと連通する。第1路70aおよび第2路72aの端部はそれぞれ、埋め栓76a,78aによって塞がれる。
【0043】
調整弁68aは、第1路70aと第2路72aとの間の流路面積を変化させるためにハウジング部64aに設けられるロータリバルブからなる。調整弁68aは、軸方向Xに対して直交する方向に延びるように設けられる。調整弁68aを回転させることによって、
図8(a)に示すようにバイパス油路66aが閉じられ、または
図8(b)に示すようにバイパス油路66aが開かれる。
【0044】
車両用補強部材10aの他の構成については、車両用補強部材10と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0045】
車両用補強部材10aによれば、第1路70aをシリンダ12の軸方向Xに対して鈍角に第1油室H1と交わるように形成し、第2路72aを軸方向Xに対して鋭角に第2油室H2と交わるように形成することによって、バイパス油路66aの油路長を短くでき、シリンダ12に設けられるハウジング部64aを小さくできる。また、ロータリバルブからなる調整弁68aを回転することによって、第1路70aと第2路72aとの間の流路面積を容易に調整できる。
【0046】
図9を参照して、この発明のその他の実施形態に係る車両用補強部材10bについて説明する。車両用補強部材10bは、シリンダ12および減衰力調整部62に代えてシリンダ12bおよび減衰力調整部62bを含む点を除いて、車両用補強部材10と同様に構成される。
【0047】
シリンダ12bとシリンダ12とは、形状および大きさがやや異なるが、実質的には同様に構成される。
【0048】
減衰力調整部62bは、シリンダ12bに設けられるハウジング部64bと、ハウジング部64b内に設けられかつピストン16の摺動範囲T(
図2参照)外において第1油室H1と第2油室H2とを連通するバイパス油路66bと、バイパス油路66bにおける作動油の流量を調整するためにバイパス油路66bの流路面積を変化させる調整弁68bとを含む。
【0049】
ハウジング部64bは、シリンダ12bの中央部からやや開口端寄りに一体的に形成される。ハウジング部64bは、開口部88bを有する。
【0050】
バイパス油路66bは、第1油室H1に繋がる第1路70bと、第2油室H2に繋がる第2路72bとを含む。第1路70bおよび第2路72bはそれぞれ、摺動範囲Tより軸方向Xの外方において第1油室H1および第2油室H2に繋がる。第1路70bは開口部88bと第1油室H1とを連通し、第2路72bは開口部88bと第2油室H2とを連通する。第1路70bが軸方向Xに対して鈍角に第1油室H1と交わり、第2路72bが軸方向Xに対して鈍角に第2油室H2と交わる。
【0051】
調整弁68bは、開口部88bを塞ぎかつ第1路70bと第2路72bとの間の流路面積を変化させるためにハウジング部64bに設けられる。調整弁68bにはOリング80bが嵌められる。ハウジング部64bにおける調整弁68bの頭部近傍には、調整弁68bの抜け止め用のサークリップ82bが取り付けられる。さらに、調整弁68bの頭部には、セットスクリュ84bによってコントロールハンドル86bが固定され、コントロールハンドル86bによって調整弁68bの位置を調整できる。調整弁68bを進退させることによって、
図10(a)に示すようにバイパス油路66bが閉じられ、または
図10(b)に示すようにバイパス油路66bが開かれる。
【0052】
車両用補強部材10bの他の構成については、車両用補強部材10と同様であるので、その重複する説明は省略する。
【0053】
車両用補強部材10bによれば、第1路70bおよび第2路72bをともにハウジング部64bの1つの開口部88bから容易に加工できる。また、ハウジング部64bの開口部88bは調整弁68bによって塞がれるので、別途埋め栓は不要であり、部品数を少なくできる。
【0054】
第1路70bおよび第2路72bの両方がシリンダ12bの軸方向Xに対して鈍角に油室Hと交わるように形成されるので、シリンダ12bに設けられるハウジング部64bを小さくできる。
【0055】
図11を参照して、この発明のその他の実施形態に係る車両用補強部材10cについて説明する。車両用補強部材10cは、減衰力調整部62bに代えて減衰力調整部62cを含む点を除いて、車両用補強部材10bと同様に構成される。
【0056】
減衰力調整部62cは、シリンダ12bに設けられるハウジング部64cと、ハウジング部64c内に設けられかつピストン16の摺動範囲T(
図2参照)外において第1油室H1と第2油室H2とを連通するバイパス油路66cと、バイパス油路66cにおける作動油の流量を調整するためにバイパス油路66cの流路面積を変化させる調整弁68cとを含む。
【0057】
ハウジング部64cは、シリンダ12bの中央部からやや開口端寄りに一体的に形成される。ハウジング部64cは、開口部88cを有する。
【0058】
バイパス油路66cは、第1油室H1に繋がる第1路70cと、第2油室H2に繋がる第2路72cとを含む。第1路70cおよび第2路72cはそれぞれ、摺動範囲Tより軸方向Xの外方において第1油室H1および第2油室H2に繋がる。第1路70cは開口部88cと第1油室H1とを連通し、第2路72cは開口部88cと第2油室H2とを連通する。第1路70cおよび第2路72cの両方が軸方向Xに対して鋭角に油室Hと交わる。
【0059】
調整弁68cは、開口部88cを塞ぎかつ第1路70cと第2路72cとの間の流路面積を変化させるためにハウジング部64cに設けられる。調整弁68cにはOリング80cが嵌められる。ハウジング部64cにおける調整弁68cの頭部近傍には、調整弁68cの抜け止め用のサークリップ82cが取り付けられる。さらに、調整弁68cの頭部には、セットスクリュ84cによってコントロールハンドル86cが固定され、コントロールハンドル86cによって調整弁68cの位置を調整できる。調整弁68cを進退させることによって、バイパス油路66cが開閉される。
【0060】
車両用補強部材10cの他の構成については、車両用補強部材10bと同様である。
【0061】
車両用補強部材10cによれば、第1路70cおよび第2路72cをともにハウジング部64cの1つの開口部88cから容易に加工できる。また、ハウジング部64cの開口部88cは調整弁68cによって塞がれるので、別途埋め栓は不要であり、部品数を少なくできる。
【0062】
第1路70cおよび第2路72cの両方がシリンダ12cの軸方向Xに対して鋭角に油室Hと交わるように形成されるので、シリンダ12cに設けられるハウジング部64cを小さくできる。
【0063】
車両用補強部材10a~10cも、二輪車や四輪車などの車両に好適に用いることができる。
【0064】
なお、
図1に示す実施形態では、調整弁68は、第1路70と第3路74との間の流路面積を変化させるためにハウジング部64に設けられたが、これに限定されない。調整弁は、第2路と第3路との間の流路面積を変化させるためにハウジング部に設けられてもよい。
【0065】
図9に示す実施形態では、第1路70bおよび第2路72bの両方が軸方向Xに対して鈍角に油室Hと交わるように構成されたが、これに限定されない。
図9に示す実施形態において、第1路が軸方向Xに対して鈍角に第1油室H1と交わり、第2路が軸方向Xに対して鋭角に第2油室H2と交わるように、減衰力調整部が変形されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
10,10a,10b,10c 車両用補強部材
12,12b シリンダ
14 フリーピストン
16 ピストン
24a,24b 減衰力発生部
30 ピストンロッド
62,62a,62b,62c 減衰力調整部
64,64a,64b,64c ハウジング部
66,66a,66b,66c バイパス油路
68,68a,68b,68c 調整弁
70,70a,70b,70c 第1路
72,72a,72b,72c 第2路
74 第3路
88b,88c 開口部
100 二輪車
102,202 車体
106 フレーム
200 四輪車
206,208 サイドメンバ
G ガス室
H 油室
H1 第1油室
H2 第2油室
S ピストンのストローク
T ピストンの摺動範囲
X 軸方向