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特開2024-71242圧電体素子、及び圧電体素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071242
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】圧電体素子、及び圧電体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/01 20230101AFI20240517BHJP
   H10N 30/078 20230101ALI20240517BHJP
   H10N 30/097 20230101ALI20240517BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20240517BHJP
   H10N 30/85 20230101ALI20240517BHJP
   H10N 30/00 20230101ALI20240517BHJP
【FI】
H01L41/22
H01L41/318
H01L41/43
H01L41/18 101D
H01L41/18 101Z
H01L41/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182082
(22)【出願日】2022-11-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月15日 ACTSEA2021 にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】符 徳勝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久男
(72)【発明者】
【氏名】脇谷 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】坂元 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】川口 昂彦
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴司
(57)【要約】
【課題】高い圧電特性が得られる圧電体素子及び圧電体素子の製造方法の提供。
【解決手段】基板11、第1電極層12、圧電体層13、及び第2電極層14をこの順で備え、圧電体層13は、Pb(Zr1-XTi)Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなり、Xが0.50~0.65であり且つ正方晶系であるPZT層を有し、第1電極層12は、ニッケル酸ランタン系セラミックスからなるLNO層を有し、基板11は、熱膨張係数が2.59×10-6/Kより大きく、且つPZT層の熱膨張係数より小さい、圧電体素子1。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、第1電極層、圧電体層、及び第2電極層をこの順で備え、
前記圧電体層は、Pb(Zr1-XTi)Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなり、前記Xが0.50~0.65であり且つ正方晶系であるPZT層を有し、
前記第1電極層は、ニッケル酸ランタン系セラミックスからなるLNO層を有し、
前記基板は、熱膨張係数が2.59×10-6/Kより大きく、且つ前記PZT層の熱膨張係数より小さい、圧電体素子。
【請求項2】
前記基板がガラス基板である、請求項1に記載の圧電体素子。
【請求項3】
基板、第1電極層、Pb(Zr1-XTi)Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなるPZT層を有する圧電体層、及び第2電極層をこの順に備える圧電体素子の製造方法であって、
熱膨張係数が2.59×10-6/Kより大きく、且つ前記PZT層の熱膨張係数より小さい前記基板を準備する、基板準備工程と、
前記基板上に、ニッケル酸ランタン系セラミックスからなるLNO層を有する第1電極層を形成する第1電極層形成工程と、
前記第1電極層上に、前記Xが0.50~0.65であり且つ正方晶系である前記PZT層を有する圧電体層を形成する圧電体層形成工程と、
を含む、圧電体素子の製造方法。
【請求項4】
前記基板がガラス基板である、請求項3に記載の圧電体素子の製造方法。
【請求項5】
前記第1電極層形成工程における前記LNO層が、ランタン原子、ニッケル原子、及び炭素数1以上4以下の有機溶媒を含む第1膜を、10℃/秒以上の昇温速度で450℃以上700℃以下の温度まで昇温し、前記温度で保持して多孔質(100)配向の前記LNO層を形成する、溶液法により形成される、請求項3又は請求項4に記載の圧電体素子の製造方法。
【請求項6】
前記第1電極層形成工程における前記LNO層が気相法により形成される、請求項3又は請求項4に記載の圧電体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電体素子、及び圧電体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電特性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Ti、Zr)O)薄膜(以下、「PZT薄膜」という。)を用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスやNEMS(Nano Electro Mechanical Systems)デバイスが注目を集めている。
【0003】
PZT薄膜は、その配向方向により物理定数が異なることが知られている。特に正方晶系、菱面体晶系及びその境界のMPB(Morphotropic phase boundary)組成のPZT薄膜は、c軸配向((001)配向)制御がされることで、高い圧電性及び強誘電性を示す。つまり、c軸配向制御されたPZT薄膜は、高い圧電定数を示すとともに、高い残留分極値Prを示す。
【0004】
例えば、特許文献1には、第1電極と第2電極との間に形成されたペロブスカイト構造であって主に(100)配向の圧電体膜を有する圧電素子の製造方法において、(a)第1圧電体膜を形成し、前記第1圧電体膜の格子定数dを測定し、前記格子定数dが、4.03≦d≦4.08であるか否かを検証する工程と、(b)前記検証結果に基づき、第2圧電体膜の化合物組成比を調整する工程と、(c)前記第2圧電体膜を有する圧電素子を形成する工程と、を有する圧電素子の製造方法、が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、基板、第1電極層、圧電体層、及び第2電極層をこの順で備え、前記第1電極層は、ニッケル酸ランタン系セラミックスからなるLNO層を有し、前記圧電体層は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなるPZT層を有し、特定の式(1)で表される変動率Aが10%以下であり、特定の式(2)で表される変動率Bが10%以下である、圧電体素子、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-250626号公報
【特許文献2】特開2022-41246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来から、高性能な圧電体としてチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1-X,Ti)O;PZT)系セラミックスが用いられている。しかし、より高い圧電特性(具体的には圧電定数d33)を実現することが求められている。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、高い圧電特性が得られる圧電体素子及び圧電体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
【0010】
<1>
基板、第1電極層、圧電体層、及び第2電極層をこの順で備え、
前記圧電体層は、Pb(Zr1-XTi)Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなり、前記Xが0.50~0.65であり且つ正方晶系であるPZT層を有し、
前記第1電極層は、ニッケル酸ランタン系セラミックスからなるLNO層を有し、
前記基板は、熱膨張係数が2.59×10-6/Kより大きく、且つ前記PZT層の熱膨張係数より小さい、圧電体素子。
<2>
前記基板がガラス基板である、<1>に記載の圧電体素子。
<3>
基板、第1電極層、Pb(Zr1-XTi)Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなるPZT層を有する圧電体層、及び第2電極層をこの順に備える圧電体素子の製造方法であって、
熱膨張係数が2.59×10-6/Kより大きく、且つ前記PZT層の熱膨張係数より小さい前記基板を準備する、基板準備工程と、
前記基板上に、ニッケル酸ランタン(LaNiO)系セラミックスからなるLNO層を有する第1電極層を形成する第1電極層形成工程と、
前記第1電極層上に、前記Xが0.50~0.65であり且つ正方晶系である前記PZT層を有する圧電体層を形成する圧電体層形成工程と、
を含む、圧電体素子の製造方法。
<4>
前記基板がガラス基板である、<3>に記載の圧電体素子の製造方法。
<5>
前記第1電極層形成工程における前記LNO層が、ランタン原子、ニッケル原子、及び炭素数1以上4以下の有機溶媒を含む第1膜を、10℃/秒以上の昇温速度で450℃以上700℃以下の温度まで昇温し、前記温度で保持して多孔質(100)配向の前記LNO層を形成する、溶液法により形成される、<3>又は<4>に記載の圧電体素子の製造方法。
<6>
前記第1電極層形成工程における前記LNO層が気相法により形成される、<3>又は<4>に記載の圧電体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、高い圧電特性が得られる圧電体素子及び圧電体素子の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】180°のドメイン反転と90°のドメイン反転とにおける変位量の違いを説明する概略図である。
図2】従来における圧電体素子及び本実施形態に係る圧電体素子における圧電定数d33を示すグラフである。
図3】本開示の実施形態に係る圧電体素子の一態様を示す概略断面図である。
図4】チタンアルコキシドと、ジルコニウムアルコキシドと、キレート化剤である酢酸との部分加水分解反応を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において、本開示の内容について、実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0014】
なお、本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本実施形態において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示に係る圧電体素子は、基板、第1電極層、圧電体層、及び第2電極層をこの順で備える。
圧電体層は、Pb(Zr1-XTi)Oで表されるチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなり、Xが0.50~0.65であり且つ正方晶系であるPZT層を有する。
第1電極層は、ニッケル酸ランタン(LaNiO)系セラミックスからなるLNO層を有する。
基板の熱膨張係数は、基板として一般的なSi(111)の熱膨張係数である2.59×10-6/Kより大きく、且つPZT層の熱膨張係数より小さい。
【0016】
本開示に係る圧電体素子によれば、高い圧電特性が得られる。この効果が奏される理由は、必ずしも明確ではないものの、以下のように推察される。
【0017】
従来から、高性能な圧電体としてチタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr1-XTi)O;PZT)系セラミックスが用いられてきた。ただし、これまでは圧電特性が高いPZTの組成として、正方晶系と菱面体晶系の相境界(MPB:Morphotropic phase boundary)の組成が好ましく、上記式におけるXの値としては、MPB組成の近傍となるX=0.48程度が良いとされてきた。この理由は、圧電特性の発現メカニズムとして、分極軸方向の結晶変位が優勢であると考えられていた為である。
また、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスや電気光学効果を活用したデバイスへの応用などのために、PZTの薄膜化が求められている。例えば、前述の特許文献1には、圧電特性が高いPZT薄膜の組成、つまりMPB組成の近傍となるXの値として0.4~0.5を含む所定の範囲のMPB組成とすることが開示されている。つまり、特許文献1では、TiとZrの量的バランスは特に示されていない。なお、この特許文献1においてもPZT層における組成をMPB組成の近傍としており、圧電特性の発現メカニズムは、前記と同じく分極軸方向の結晶変位が優勢であるとの知見に基づいていると考えられる。
【0018】
これに対して本発明者らは、分極軸方向の結晶変位(c軸方向の結晶学的変位)が優勢であるとの従来メカニズムだけが圧電特性の主な原理ではなく、ドメイン(分域)の反転による変位の方が、より大きな変位、つまり高い圧電特性につながる、との知見を得た。より具体的には、図1に示すごとく、180°のドメイン反転(図1中の(1))に比べ、90°のドメイン反転(図1中の(2))の方が、大きな変位(Displacement)が得られ、圧電特性に大きく寄与する。
【0019】
この知見に基づき、本発明者らは、ドメイン反転を利用した高い圧電特性を有する圧電体素子、及びその製造方法を見出した。つまり、本開示に係る圧電体素子では、PZT層における組成がX=0.50~0.65、つまりTiがより多い組成(Zr/Ti=50/50~35/65)とし、且つ正方晶系とする。これにより、c軸とa軸の長さの比(c/a)がより大きな正方晶系となる。更に、基板として熱膨張係数がSi(111)の熱膨張係数である2.59×10-6/Kより大きく且つPZT層の熱膨張係数より小さい基板とする。
PZT層における組成をX=0.50~0.65とし且つ正方晶系とし、更に基板の熱膨張係数を上記範囲とすることで、ドメイン反転を効率的に発現させることができ、大きな変位を生じさせることができ、高い圧電特性が得られる。具体的には、従来における圧電体素子つまりMPB組成の近傍となるX=0.48程度の圧電体素子における圧電定数d33が、図2に示すごとく50~200pm/V程度(図2では200pm/V未満)である。これに対し、本開示の一実施形態に係る圧電体素子によれば、X=0.50~0.65且つ正方晶系のPZT層において、図2に示すごとく、圧電定数d33として500~600pm/Vという高い値が得られることが確認された。
【0020】
以下、図面を参照して、本開示に係る金圧電体素子、及び圧電体素子の製造方法の実施形態について説明する。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0021】
(1)本開示の実施形態に係る圧電体素子
本開示の実施形態に係る圧電体素子及び圧電体素子の製造方法について説明する
【0022】
(1.1)圧電体素子
まず、本開示の圧電体素子の実施形態を、図3を参照して、第1圧電体素子1を一例に説明する。図3は、本開示の実施形態に係る圧電体素子1の概略断面図である。
【0023】
圧電体素子1は、図3に示すように、基板11と、第1電極層12と、圧電体層13と、第2電極層14とを備える。基板11、第1電極層12、圧電体層13、及び第2電極層14は、この順に積層されている。
【0024】
(1.1.1)基板
基板は、熱膨張係数がSi(111)の熱膨張係数である2.59×10-6/Kより大きく、且つ圧電体層におけるPZT層の熱膨張係数より小さい。基板の熱膨張係数が2.59×10-6/K以下であると、ドメイン反転が生じ難くなり、高い圧電特性を実現することができない。一方、基板の熱膨張係数がPZT層の熱膨張係数以上であると、PZT薄膜中に大きな圧縮応力が残留してやはりドメイン反転が生じ難くなり、またMPB組成がシフトする場合もある。
基板の熱膨張係数の下限値は、高い圧電特性を得る観点から、さらに2.60×10-6/K以上が好ましく、3.00×10-6/K以上がより好ましく、3.50×10-6/K以上がさらに好ましく、ドメイン反転に伴う応力を緩和可能な構造(例えば多孔質層などのバッファー層を有する基板構造)が好ましい。
一方、基板の熱膨張係数の上限値は、上記の観点から、さらに5.00×10-6/K以下が好ましく、4.00×10-6/K以下がより好ましい。
【0025】
ここで、基板の熱膨張係数の測定方法、及びPZT層の熱膨張係数の測定方法について説明する。
結晶の熱膨張係数は、結晶軸方向で異なっている。そして、本開示では一軸配向膜を仮定しており、温度を変えてXRD(X-ray Diffraction)測定することで各軸方向の格子定数を測定可能である。
【0026】
基板は、熱膨張係数が上記範囲を満たす限り、特に限定されるものではない。基板としては、例えば、ガラス基板、半導体単結晶基板、金属基板、セラミックス基板、耐熱性プラスチック基板等が挙げられる。ガラス基板の材料としては、例えば、アミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等が挙げられる。半導体単結晶基板の材料としては、例えば、シリコン、酸化マグネシウム、Sr又はLaをドープしたチタン酸ストロンチウム等が挙げられる。金属基板の材料としては、例えば、ステンレス、チタン、アルミニウム、マグネシウム等が挙げられる。セラミックス基板の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。
これらの中でも、熱膨張係数を上記範囲に制御し易いとの観点から、ガラス基板及び半導体単結晶基板(特にシリコン基板)が好ましく、ガラス基板がより好ましい。
【0027】
基板のサイズ等は、圧電体素子の用途等に応じて適宜調整される。
なお、熱膨張係数を上記範囲に制御し、ドメイン反転を生じ易くする観点から、基板の厚さをより薄く制御することができる。
例えば、ガラス基板を用いる場合における基板の厚さは、熱膨張係数の差に起因する残留応力を上記範囲に制御し易いとの観点から、100μm以上2000μm以下が好ましく、100μm以上500μm以下がより好ましい。
また、シリコン基板を用いる場合における基板の厚さは、熱膨張係数を上記範囲に制御し易いとの観点から、50μm以上1000μm以下が好ましく、100μm以上500μm以下がより好ましい。
【0028】
なお、基板の厚さとは、基板における任意に選択した5カ所の平均厚さを意味する。
【0029】
また、熱膨張係数を上記範囲に制御し、ドメイン反転を生じ易くする観点から、表面に熱膨張係数が異なる下地層を備えた基板とすることができる。下地層としては、ドメイン反転を生じさせ易いとの観点から、例えばZrO層、安定化剤を添加したZrO層、Al層、ムライト層、微構造制御した(LaSr1-X)MnO(LSMO)等のペロブスカイト構造を持った導電性酸化物層等が挙げられる。
【0030】
(1.1.2)第1電極層
本開示の実施形態では、第1電極層12は、ニッケル酸ランタン系セラミックスからなるLNO層12aからなる。
【0031】
ニッケル酸ランタン系セラミックスは、ニッケル酸ランタン(LaNiO)(以下、「LNO」という。)を主成分とする。主成分とは、ニッケル酸ランタン系セラミックスを構成する全成分に対する割合が60質量%以上である成分をいう。
【0032】
LNOは、R-3c(「-3」は3の上にバーを付した記号)の空間群を有し、菱面体に歪んだペロブスカイト型構造(菱面体晶系:a0=5.461Å(a0=ap)、α=60°、擬立方晶系:a0=3.84Å)を有する。LNOは、抵抗率が1×10-3(Ω・cm、300K)で、金属的電気伝導性を有する酸化物である。LNOでは、温度が変化しても金属-絶縁体転移は起こらない。擬立方晶系として扱うことができる。
【0033】
ニッケル酸ランタン系セラミックスは、LNOのみならず、LNOのランタンやニッケルの一部を他の金属(以下、「置換金属」という。)で置換したセラミックスを含む。置換金属は、ストロンチウム、鉄、アルミニウム、マンガン、及びコバルトからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含む。LNOのニッケルの一部を置換金属で置換したセラミックスとしては、例えば、鉄で置換したLaNiO-LaFeO、アルミニウムで置換したLaNiO-LaAlO、マンガンで置換したLaNiO-LaMnO、コバルトで置換したLaNiO-LaCoO、及びそれらの固溶体等が挙げられる。LNOのニッケルの一部は、2種類以上の置換金属で置換されていてもよい。
【0034】
第1電極層の膜厚は、圧電体素子1の用途等に応じて適宜調整され、好ましくは0.1μm以上0.4μm以下である。
【0035】
(1.1.3)圧電体層
本開示の実施形態では、圧電体層13は、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスからなるPZT層13aからなる。
【0036】
チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスは、チタン酸ジルコン酸鉛(以下、「PZT」という。)を主成分とする。主成分とは、チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスを構成する全成分に対する割合が80質量%以上である成分をいう。
【0037】
PZTは、一般式Pb(Zr1-xTi)Oで表される。本開示においてXは0.50~0.65である。つまり、PZTのチタン原子に対するジルコニウム原子の割合(Zr/Ti)は、モル比で(35/65)以上(50/50)以下である。Xは、高い圧電特性を得る観点から、さらに40/60以上45/55以下が好ましい。
Xの調節は、PZT層を形成する際のチタンを含む原料とジルコニウムを含む原料との量の比率の調整により行うことができる。また、ドメイン反転を容易にするためにこれまでに知られているNb等の元素を添加することもできる。
【0038】
また、一般的にPZTは組成により菱面体晶系あるいは正方晶系である。PZTの結晶構造は、ペロブスカイト構造であるが、薄膜の場合、残留応力の状態によって結晶系は大きな影響を受ける。大きな圧縮あるいは引っ張り応力が残留した場合には、MPB組成がシフトすることが分かっている。そこで、本開示では、組成と残留応力の組み合わせにより正方晶系にすることができる。また、ドメインの反転しやすさもこれらにより制御できる。
【0039】
ここで、PZTが正方晶系であるか否かの確認方法について説明する。
結晶相の同定には、通常、X線回折装置(XRD)が用いられる。PZT薄膜の結晶構造についても同様である。そして、正方晶系か菱面体晶系かを判定するには、広角側の回折を測定することで可能である。例えば、汎用のX線回折装置を用いて(400)面及び(004)面の回折ピークを測定することで容易に判定できる。正方晶系ではこれらのピークが分離していて、菱面体晶系に近づくにつれてピークが近づき、菱面体晶系では1本のピークとなる。正方晶系の45/55組成では、明確に2つのピークに分離している。
【0040】
チタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスは、PZTのみならず、PZTを主成分とし、Sr、Nb、及びAlからなる群から選択された少なくとも1種の金属を微量添加したセラミックス、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、亜鉛ニオブ酸鉛(PZN)、ニッケルニオブ酸鉛(PNN)、及び鉄ニオブ酸鉛(PFN)等の緩和型強誘電体から選択される少なくとも一種を含有するセラミックスを含有してもよい。
【0041】
圧電体層の膜厚は、圧電体素子1の用途等に応じて適宜調整され、好ましくは0.5μm以上5.0μm以下である。
【0042】
正方晶系のPZTは、バルクセラミックスの値でa=b=4.036Å、c=4.146Åの格子定数を有する材料である。そのため、a=3.84Åの格子定数を有する擬立方晶構造のLNOは、PZTの(001)面及び(100)面との格子マッチングが良好である。
【0043】
格子マッチングとは、PZTの単位格子とLNOの単位格子との格子整合性を示す。一般的に、ある種の結晶面が表面に露出している場合、その結晶格子と、その表面に成膜する膜の結晶格子とがマッチングしようとする力が働き、界面でエピタキシャルな結晶核を形成しやすいことが知られている。
【0044】
圧電体素子1において、PZT層13aの主配向面である(001)面及び(100)面と、LNO層12aの主配向面S12との格子定数の差が絶対値で±10%以内であることが好ましい。格子定数の差がこの範囲内にあれば、PZT層13aの(001)面又は(100)面のいずれかの面の配向性を高くすることができる。そして、LNO層12aとPZT層13aの界面S12でエピタキシャルな結晶核を形成することができる。なお、格子マッチングによる配向制御において、(001)面及び(100)面のいずれかに選択的に配向した膜を実現することは困難である。しかし、製膜後の冷却過程でPZT層に残留する応力の制御等により主に(100)面配向したPZT層とすることで、ドメイン反転による変位量すなわち圧電特性を大きくすることが可能になる。
【0045】
LNOは後述する製造方法により作製することで、種々の基板の表面に擬立方晶系の(100)面に優先配向した膜を実現することができる。したがって、LNO層12aは、第1電極層12としての働きだけではなく、PZT層13aの配向制御層として機能する。このことから(100)面に配向したLNOの表面(格子定数:3.84Å)と格子マッチングのよい、PZT(格子定数:a=4.036、c=4.146Å)の(001)面又は(100)面が選択的に生成する。
【0046】
(1.1.4)第2電極層
第2電極層14の材質は、導電性材料であればよく、金属、導電性金属酸化物等が挙げられる。金属としては、例えば、金、銀、白金、イリジウム、ルテニウム、銅等が挙げられる。導電性金属酸化物としては、スズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ニオビウムドープ酸化チタン(TNO)等が挙げられる。第2電極層14の膜厚は、圧電体素子1の用途等に応じて適宜調整すればよく、好ましくは0.1μm以上0.4μm以下である。
【0047】
(1.1.5)圧電体素子の用途
圧電体素子1は、各種電子機器に用いるセンサ、アクチュエータ、光学デバイス、マイクロポンプ、セラミックコンデンサ、強誘電体メモリ等に好適に用いられる。センサとしては、角速度センサ、赤外線センサ等が挙げられる。アクチュエータとしては、例えば、圧電アクチュエータ、超音波モータ等が挙げられる。光学デバイスとしては、光導波路、光スイッチ等が挙げられる。
特に本開示の実施形態では、後述するように、製造工程において、基板11の熱履歴の温度が550℃以下となり得る。そのため、基材11として、従来の圧電体素子には用いられなかったアミノシリケートガラス板が用いられ得る。これにより、圧電体素子1は、スマートフォンのタッチパネル等の透明電子部材に好適に用いられる。振動を利用したHAPTICSデバイスとしての応用も考えられる。
【0048】
(1.2)圧電体素子の製造方法
本開示の実施形態に係る圧電体素子の製造方法は、基板準備工程と、第1電極層形成工程と、圧電体層形成工程と、第2電極層形成工程とを含む。第1電極層形成工程、圧電体層形成工程、及び第2電極層形成工程は、この順で実行される。これにより、本開示の実施形態に係る圧電体素子1が得られる。
以下、本開示の実施形態に係る圧電体素子の製造方法について、圧電体素子1を一例に挙げて説明する。
【0049】
(1.2.0)基板準備工程
基板準備工程では、熱膨張係数が前述の範囲である基板を準備する。基板における熱膨張係数は、例えば基板の材質の選択、基板の厚さの調整、基板表面における下地層の形成、等の方法により調整することができる。
【0050】
(1.2.1-1)第1電極層形成工程(溶液法)
第1電極層形成工程は、例えば、第1溶液調製工程と、第1塗布工程と、第1乾燥工程と、第1仮焼工程と、第1本焼成工程とを有する。第1溶液調製工程、第1塗布工程、第1乾燥工程、第1仮焼工程、及び第1本焼成工程は、この順に実行される。これにより、基板11の表面にLNO層12aからなる第1電極層12が形成される。以下、第1電極層形成工程を「LNO層形成工程」という場合がある。
【0051】
(1.2.1-1.1)第1溶液調製工程
第1溶液調製工程では、LNO層(例えばLNO層12a)の原料となるLNO前駆体溶液を調製する。LNO前駆体溶液は、ランタン化合物、ニッケル化合物、及び炭素数1以上4以下の有機溶媒を少なくとも添加して、調製される。
【0052】
ランタン化合物としては、例えば、硝酸ランタン、塩化ランタン、ランタンカルボン酸塩、ランタンアルコキシド等が挙げられる。ランタンカルボン酸塩としては、例えば、酢酸ランタン、オクチル酸ランタン、2-エチルヘキサン酸ランタン等が挙げられる。ランタンアルコキシドとしては、例えば、ランタンイソプロポキシド、ランタンブトキシド、ランタンエトキシド、ランタンメトキシエトキシド等が挙げられる。なかでも、ランタン化合物としては、硝酸ランタンが好ましい。
【0053】
ニッケル化合物としては、例えば、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、ニッケルカルボン酸塩、ニッケルアルコキシド等が挙げられる。ニッケルカルボン酸塩としては、例えば、酢酸ニッケル、オクチル酸ニッケル、2-エチルヘキサン酸ニッケル等が挙げられる。ニッケルアルコキシドとしては、例えば、ニッケルイソプロポキシド、ニッケルブトキシド、ニッケルエトキシド、ニッケルメトキシエトキシド等が挙げられる。なかでも、ニッケル化合物としては、酢酸ニッケルが好ましい。
【0054】
炭素数1以上4以下の有機溶媒は、ランタン化合物及びニッケル化合物の各々に対する溶解度が高く、低温(例えば、300℃)で熱分解する有機溶媒であることが好ましい。具体的に、炭素数1以上4以下の有機溶媒としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルコール、炭素数1以上4以下のエーテル等が挙げられる。炭素数1以上4以下のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール等が挙げられる。炭素数1以上4以下のエーテルとしては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらの炭素数1以上4以下の有機溶媒は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。なかでも、炭素数1以上4以下の有機溶媒としては、アルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。炭素数1以上4以下の有機溶媒の添加量は、ランタン化合物及びニッケル化合物の合計100質量部に対して、好ましくは400質量部以上2000質量部以下、より好ましくは500質量部以上2000質量部以下である。
【0055】
LNO前駆体溶液は、炭素数1以上4以下の有機溶媒とは異なる他の有機溶媒を含有してもよい。他の有機溶媒としては、2-メトキシエタノール、2-アミノエタノール等が挙げられる。これらの他の有機溶媒は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。なかでも、LNO前駆体溶液は、2-メトキシエタノール、及び2-アミノエタノールの少なくとも一方を含有することが好ましい。LNO前駆体溶液が2-メトキシエタノール、及び2-アミノエタノールの少なくとも一方を含有することで、圧電性及び強誘電性がより優れる圧電体素子が得られる。他の有機溶媒の混合割合は、炭素数1以上4以下の有機溶媒100質量部に対して、好ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0056】
(1.2.1-1.2)第1塗布工程
第1塗布工程では、LNO前駆体溶液を基材(例えば基材11)の表面に塗布する。これにより、基材11の表面にLNO塗布膜が形成される。LNO塗布膜は、ランタン原子、ニッケル原子、及び炭素数1以上4以下の有機溶媒を含む。LNO塗布膜は、第1膜の一例である。
LNO塗布膜の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。スピンコート法では、単位時間当たりの回転数を制御することで、LNO塗布膜の膜厚が基板11の表面に均一な薄膜を均一に塗布することができる。例えば、基板11の回転速度を早くすることで膜厚を薄くすることができる。また、ディップコート法では、基板11の引き上げ速度を遅くすることで膜厚を薄くすることができる。
【0057】
LNO塗布膜の膜厚は、好ましくは0.1μm以上0.3μm以下である。
【0058】
(1.2.1-1.3)第1乾燥工程
第1乾燥工程では、LNO塗布膜を乾燥させる。これにより、得られるLNO層(例えばLNO層12a)中の物理吸着水分や有機溶媒の一部は除去され得る。乾燥温度は、好ましくは100℃超200℃未満である。
【0059】
(1.2.1-1.4)第1仮焼工程
第1仮焼工程では、LNO塗布膜を仮焼する。これにより、得られるLNO層(例えばLNO層12a)中に有機成分が残留することを抑制し得る。仮焼温度は、好ましくは200℃以上400℃未満である。
【0060】
(1.2.1-1.5)第1本焼成工程
第1本焼成工程では、急速加熱炉(RTA:Rapid Thermal Annealing)を用いて、LNO塗布膜を10℃/秒以上の昇温速度で450℃以上700℃以下の温度(以下、「第1結晶化温度」という。)まで昇温し、第1結晶化温度を保持して、LNOの結晶化を行う。これにより、(100)面方向に高配向したLNO層(例えばLNO層12a)が得られる。これは、下記の理由によると推測される。
すなわち、LNO前駆体を高温(例えば、700℃)の第1結晶化温度で焼成することで、(100)方向に高配向したLNOが得られることが報告されていた。そのため、従来のLNO前駆体溶液の調製では、LNO前駆体を高温の第1結晶化温度で焼成するために、側鎖が大きい溶媒を用いてLNO前駆体を熱的に安定化させていた。具体的に、側鎖が大きい溶媒として、2-メトキシエタノール及び2-アミノエタノールを用いていた。これらの溶媒は、LNO前駆体溶液の調製過程で、例えば、硝酸ランタン、及び酢酸ニッケルとアルコール交換反応を起こして、熱的に安定なLNO前駆体を生成させる。この熱的に安定なLNO前駆体の側鎖の熱分解を促進させるために、700℃以上の第1結晶化温度でLNO前駆体を焼成していた。そうすることで、(100)方向に高配向したLNOが得られた。
一方、本開示の実施形態では、LNO前駆体を急速昇温(10℃/秒以上)で加熱することで、短時間の間にLNO前駆体を高温に曝す。更に、本開示の実施形態では、従来の溶媒よりも側鎖が小さい炭素数1以上4以下の有機溶媒を用いる。そのため、従来よりも低温の第1結晶化温度でLNO前駆体の側鎖の熱分解は促進され得る。つまり、本開示の実施形態では、炭素数1以上4以下の有機溶媒を用い、かつ10℃/秒以上の昇温速度でLNO前駆体を加熱することで、従来よりも低温の第1結晶化温度でLNO前駆体溶液を焼成しても、(100)方向に高配向したLNO系セラミックス膜が得られる。これにより、LNO系セラミックス膜の高配向性と低温結晶化は実現される。
【0061】
また、LNO層は基板に関係なく、(100)面方向に配向し易い。そのため、基板の選択の自由度が高い。
【0062】
昇温速度は、10℃/秒以上であり、好ましくは30℃/秒以上である。昇温速度が30℃/秒以上であると、圧電性及び強誘電性がより優れる圧電体素子1が得られる。これは、昇温速度が30℃/秒以上であると、LNO前駆体は残留有機物が熱分解する高温に短時間で曝され、LNOは(100)方向により高配向されやすくなる。その結果、PZT層13aがc軸配向制御されやすくなるためと推測される。
【0063】
第1結晶化温度は、450℃以上700℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、より好ましくは500℃以上600℃以下、さらに好ましくは500℃以上550℃以下である。第1結晶化温度が450℃未満であると、得られる圧電体素子1の圧電性及び強誘電性が十分ではない。また、LNO系セラミックスの結晶化を十分に促進させるため、第1結晶化温度の保持時間は、好ましくは10分以上である。
【0064】
LNO層の所望の膜厚は、例えば、第1塗布工程、第1乾燥工程、第1仮焼工程、及び第1本焼成工程を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことで得られる。本開示の実施形態では、1サイクルあたり、0.04μm以上の膜厚のLNO層12aが形成され得る。
【0065】
(1.2.1-2)第1電極層形成工程(気相法)
第1電極層形成工程では、例えば、気相(PVD)法により第1電極層を形成することができる。気相法としては、スパッタリング法、PLD(Pulsed Laser Deposition)法等が挙げられる。
【0066】
ここで、気相法の1種であるスパッタリング法による第1電極層の形成について説明する。
第1電極層形成工程は、例えば、ニッケル酸ランタン(LaNiO、LNO)をターゲットとするスパッタリング法により形成することもできる。特にRF(高周波)マグネトロンスパッタリング法により形成することが好ましい。これにより、基板11の表面にLNO層12aからなる第1電極層12が形成される。
【0067】
(1.2.1-2.1)スパッタリング条件
スパッタリング装置のチャンバー内に設置された基板(例えば基板11)の温度は、例えば200℃以上600℃以下(より好ましくは400℃以上550℃以下)とすることが好ましい。
【0068】
スパッタリングガスとしては、例えばArを含むガスを用いることができ、ArとOとの混合ガスが好適に用いられる。ArとOとの混合ガスにおける混合比(体積比率)としては、好ましくArを70%以上90%以下(より好ましくは75%以上85%以下)含むことが好ましい。
ガス圧は、例えば1.2Pa以上3.0Pa以下(より好ましくは1.5Pa以上2.5Pa以下)とすることが好ましい。
【0069】
スパッタリングの際のRFパワーとしては、例えば50W以上250W以下(より好ましくは100W以上200W以下)とすることが好ましい。
基板の表面にLNO層を堆積させる堆積時間は、例えば100分以上300分以下(より好ましくは150分以上200分以下)とすることが好ましい。
【0070】
LNO層の膜厚としては、好ましくは0.1μm以上0.4μm以下である。
【0071】
(1.2.2)圧電体層形成工程
本開示の実施形態では、圧電体層形成工程は、例えば、第2溶液調製工程と、第2塗布工程と、第2乾燥工程と、第2仮焼工程と、第2本焼成工程とを含む。第2溶液調製工程、第2塗布工程、第2乾燥工程、第2仮焼工程、及び第2本焼成工程は、この順で実行される。これにより、例えば圧電体素子1のように、LNO層12aの表面S12にPZT層13aが形成される。以下、圧電体層形成工程を「PZT層形成工程」という場合がある。
【0072】
(1.2.2.1)第2溶液調製工程
第2溶液調製工程では、Pb溶液とTi-Zr溶液とを混合及び反応させて、PZT層(例えばPZT層13a)の原料となるPZT前駆体溶液を調製する。Pb溶液は、第2溶液の一例である。Ti-Zr溶液は第1溶液の一例である。PZT前駆体溶液は、第3溶液の一例である。
【0073】
Pb溶液と第1Ti-Zr溶液とを混合する際、Pb成分の添加量は、化学量論組成(Pb(Zr1-xTi)O(0.4<x<1))に対して15mol%から20mol%過剰であることが好ましい。これにより、第2本焼成工程において、揮発による鉛成分の不足分を補うことができる。
【0074】
(a)Pb溶液
Pb溶液は、例えば、鉛化合物を第1有機溶媒に加えて、アンモニアガスをバブリングしながら還流することで得られる。鉛化合物が水和物を含む場合は、鉛化合物を乾燥させた後に、乾燥後の鉛化合物を第1有機溶媒に加える。Pb溶液は、鉛、及び第1有機溶媒を含有する。第1有機溶媒は、第2有機溶媒の一例である。
鉛化合物としては、酢酸鉛(II)、鉛ジイソプロキシド、鉛ジブトキシド等が挙げられる。これらの鉛化合物は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
第1有機溶媒としては、エタノール、キシレン、ブタノール、メトキシエタノール等が挙げられる。これらの第1有機溶媒は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0075】
(b)第1Ti-Zr溶液
本開示の実施形態では、第1Ti-Zr溶液は、部分加水分解法により調製される。詳しくは、第1チタンアルコキシド化合物と、第1ジルコニウムアルコキシド化合物と、第2有機溶媒と、炭素数1以上8以下のモノカルボン酸及び炭素数2以上8以下のジカルボン酸の少なくとも一方(キレート化剤)とを少なくとも添加して第1混合溶液を調製し、第1混合溶液に、水を加えて部分加水分解及び重縮合を行うことで調製される。第1混合溶液は、第1溶液の一例である。第2有機溶媒は、第1有機溶媒の一例である。
【0076】
第1チタンアルコキシド化合物及び第1ジルコニウムアルコキシド化合物を混合する際、チタン原子に対するジルコニウム原子の割合(Zr/Ti)は、モル比で、好ましくは(35/65)以上(50/50)以下、より好ましくは(40/60)以上(45/55)以下である。これにより、PZTの組成においてXを0.50~0.65とし、且つ正方晶系に制御することができる。
【0077】
第1チタンアルコキシド化合物としては、チタンイソプロポキシド、チタンテトラプロポキシド等が挙げられる。これらの第1チタンアルコキシド化合物は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0078】
第1ジルコニウムアルコキシド化合物としては、ジルコニウムノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラブトキシド等が挙げられる。これらの第1ジルコニウムアルコキシド化合物は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
【0079】
第2有機溶媒としては、エタノール、キシレン、ブタノール、メトキシエタノール等が挙げられる。これらの第2有機溶媒は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。第2有機溶媒は、第1有機溶媒と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
炭素数1以上8以下のモノカルボン酸及び炭素数2以上8以下のジカルボン酸の少なくとも一方は、後述するように、前駆体分子に立体障害効果を付与できるPZT前駆体のキレート化剤として機能する。
炭素数1以上8以下のモノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、2-メチルブタン酸、3-メチルブタン酸、ヘキサン酸、2-メチルペンタン酸、3-メチルペンタン酸、4-メチルペンタン酸、2-エチルブタン酸、3-エチルブタン酸、ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、3-メチルヘキサン酸、4-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、2,2-ジメチルペンタン酸、2-エチルペンタン酸、3-エチルペンタン酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、3-メチルヘプタン酸、4-メチルヘプタン酸、5-メチルヘプタン酸、6-メチルヘプタン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、3,5-ジメチルヘキサン酸等が挙げられる。これらの炭素数1以上8以下のモノカルボン酸は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
炭素数2以上8以下のジカルボン酸としては、例えば、シユウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸等が挙げられる。これらの炭素数2以上8以下のジカルボン酸は一種単独で使用されてもよいし、二種以上組み合わせて使用されてもよい。
炭素数1以上8以下のモノカルボン酸及び炭素数2以上8以下のジカルボン酸の少なくとも一方の添加量は、Zrイオン及びTiイオンの合計量1molに対して、例えば、1.5molである。
【0081】
水としては、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。水の添加量は、Zrイオン及びTiイオンの合計量1molに対して、例えば1molである。
【0082】
本開示の実施形態では、Pb溶液と、部分加水分解法により調製された第1Ti-Zr溶液と、を混合及び反応させて調製されたPZT前駆体溶液が用いられる。
これにより、得られる圧電体素子の圧電性及び強誘電性は、部分加水分解法により調製されていないTi-Zr溶液を用いた構成よりも優れる。これは、得られる圧電体素子1の厚み方向における組成分布が均一になることが主要因であると推測される。
具体的には、有機溶媒中の反応制御(化学修飾制御法を用いたPZT前駆体の部分加水分解法)により、PZT前駆体溶液中で金属-酸素結合を形成させるための分子設計を実現したことに起因する。
図4は、チタンアルコキシドと、ジルコニウムアルコキシドと、キレート化剤である酢酸との反応による部分加水分解反応過程を説明するための図である。図4に示すように、化学修飾制御法によるペロブスカイト構造のBサイトの反応制御は、酢酸のキレート化による立体障害効果により優先的に加水分解される側鎖基を作り、高重合度で均質性の高いTi-Zr溶液が合成される。この高重合度で均質性の高いTi-Zr溶液をPb溶液と混合及び反応させることで、組成変化が小さいPZT前駆体が得られる。そのため、得られる圧電体素子1の厚み方向における組成分布は、均一になることが分かっている。
また、従来、CSD法では、PZT前駆体を600℃以上の温度(以下、「第2結晶化温度」という。)で焼成して、PZT系セラミックス膜の結晶化を行う必要があった。一方、本開示の実施形態では、部分加水分解法により調製された第1Ti-Zr溶液を含むPZT前駆体溶液と、LNOが(100)面方向に高配向されたLNO層とを用いることで、従来よりも低温の第2結晶化温度でPZT前駆体を焼成しても、PZT系セラミックス膜の結晶化が行えるようになったと考えられる。
【0083】
(1.2.2.2)第2塗布工程
第2塗布工程では、PZT前駆体溶液をLNO層(例えばLNO層12a)の表面(例えば表面S12)に塗布する。これにより、PZT塗布膜が得られる。PZT塗布膜は、鉛原子、チタン原子、ジルコニウム原子、第1有機溶媒、及び第2有機溶媒を含有する。PZT塗布膜は、第3膜の一例である。第1有機溶媒及び第2有機溶媒は、第3有機溶媒の一例である。
PZT前駆体溶液の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法等が挙げられる。
【0084】
(1.2.2.3)第2乾燥工程
第2乾燥工程では、PZT塗布膜を乾燥させる。これにより、PZT塗布膜中の水分、及び残留溶媒は除去され得る。乾燥温度は、好ましくは100℃超200℃未満である。乾燥温度が上記範囲内であれば、得られるPZT膜中に水分が残留することを抑制することができる。
【0085】
(1.2.2.4)第2仮焼工程
第2仮焼工程では、PZT塗布膜を仮焼する。これにより、得られるPZT塗布膜中に有機成分が残留することを抑制することができる。仮焼温度は、好ましくは200℃以上400℃未満である。
【0086】
(1.2.2.5)第2本焼成工程
第2本焼成工程では、急速加熱(RTA)炉を用いて、PZT塗布膜を急速加熱し、第2結晶化温度を保持して、PZT系セラミックスの結晶化を行う。
【0087】
昇温速度は、好ましくは3.3℃/秒以上であり、好ましくは10℃/秒以上である。昇温速度が3.3℃/秒以上であれば、得られる圧電体素子1の圧電性及び強誘電性がより優れる。
【0088】
第2結晶化温度は、好ましくは450℃以上600℃以下である。また、PZT系セラミックスの結晶化を十分に促進させるため、第2結晶化温度の保持時間は、好ましくは1分以上である。
【0089】
PZT層13aの所望の膜厚は、例えば、第2塗布工程、第2乾燥工程、第2仮焼工程、及び第2本焼成工程を1サイクルとして、このサイクルを複数回繰り返すことで得られる。本開示の実施形態では、1サイクルあたり、0.15μm~0.25μmの膜厚のPZT層13aが形成され得る。
【0090】
(1.2.3)第2電極層形成工程
第2電極層形成工程では、圧電体層13の表面に、第2電極層14を形成する。
第2電極層14の形成方法は、特に限定されず、例えば、イオンビーム蒸着法、抵抗加熱蒸着法、スパッタリング法、PLD法等が挙げられる。
【実施例0091】
以下、本開示に係る実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本開示は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0092】
(実施例1)
[基材の準備]
基材として、TFT液晶パネル用ガラス基板(厚さ0.4mm)を準備した。このガラス基板の熱膨張係数は表1に示す値であった。
【0093】
[第1電極層形成工程]
〔LNO前駆体溶液の調製〕
硝酸ランタン六水和物(La(NO・6HO)20質量部をビーカーに秤量し、水和物の除去のために、150℃で1時間以上乾燥させて、第1乾燥物を得た。次いで、第1乾燥物を室温まで冷却させた後、第1乾燥物に、エタノール90質量部及び2-メトキシエタノール10質量部を加えて、室温で3時間攪拌して硝酸ランタンを溶解させ、溶液Aを得た。
酢酸ニッケル四水和物((CHCOO)Ni・4HO)20質量部を第1セパラブルフラスコに秤量し、水和物の除去のため150℃で1時間乾燥させた後、200℃で1時間、計2時間乾燥させて、第2乾燥物を得た。次いで、第2乾燥物に、エタノール90質量部、2-メトキシエタノール5質量部及び2-アミノエタノール5質量部を加え、110℃で30分間攪拌し、溶液Bを得た。
溶液Bを室温まで冷却後、溶液Aを溶液Bが入っている第1セパラブルフラスコに投入し、室温で3時間攪拌して、LNO前駆体溶液を得た。
【0094】
〔LNO層形成工程〕
ガラス基板の表面にLNO前駆体溶液をスピンコート法により塗布し、LNO塗布膜を得た。スピンコートの条件は、回転数2500rpm、30秒とした。
次いで、酸素雰囲気下において、LNO塗布膜を150℃で10分間乾燥した後、150℃から350℃に昇温し、350℃で10分間仮焼した。
次いで、RTAを用いて、昇温速度40℃/秒で、350℃から550℃まで昇温し、550℃で15分間本焼成して、ガラス基板の表面にLNO薄膜を得た。
得られたLNO薄膜の形成方法と同様にして、LNO前駆体溶液のスピンコート法による塗布、乾燥、仮焼及び本焼成を1サイクルとする作業を、得られたLNO薄膜上に3回繰り返した。
これにより、基板の表面に、LNO層として4層のLNO薄膜を得た。
【0095】
[圧電体層形成工程]
〔PZT前駆体溶液の調製〕
酢酸鉛(II)三水和物((CHCOO)Pb・3HO)を第2セパラブルフラスコに秤量し、その水和物の除去のため150℃で3時間乾燥させて、第3乾燥物を得た。次いで、第3乾燥物に、無水エタノールを加え、アンモニアガスをフローさせながら、50℃で2時間加熱攪拌させ、Pb溶液を調製した。
Zr-Ti前駆体溶液は、部分加水分解法により調製した。詳しくは、ジルコニウム-n-プロポキシド(Zr(OC)、及びチタンテトライソプロポキシド(((CHCHO)Ti)を、第3セパラブルフラスコに秤量し、無水エタノールを加えて溶解し、78℃で2時間還流を行い、キレート化剤である酢酸を加え、78℃で1時間還流して、溶液Cを得た。ジルコニウム-n-プロポキシドと、チタンテトライソプロポキシドとの混合割合は、(Zr/Ti)のモル比で(45/55)とした。
次いで、溶液Cを冷却機中に移し、5℃で30分攪拌し、蒸留水を加え1時間部分加水分解反応を行うことで、Zr-Ti前駆体溶液を調製した。酢酸の添加量は、溶液E中において、Zrイオン及びTiイオンの合計量1molに対して1.5molとした。蒸留水の添加量は、溶液C中において、Zrイオン及びTiイオンの合計量1molに対して1molとした。
次いで、Pb溶液とZr-Ti前駆体溶液を混合及び反応させ、冷却器中において、5℃で16時間攪拌することで、PZT前駆体溶液を得た。Pb溶液と、Zr-Ti前駆体溶液との混合割合は、Pb成分を化学量論組成(Pb(Zr0.45Ti0.55)O)に対し20mol%過剰となるようにした。
【0096】
〔PZT層形成工程〕
形成されたLNO層の表面に、PZT前駆体溶液をスピンコート法により塗布し、PZT塗布膜を得た。スピンコートの条件は、回転数2500rpm、30秒とした。
次いで、酸素雰囲気下において、PZT塗布膜を150℃で10分間乾燥した後、150℃から420℃に昇温し、420℃で10分間仮焼した。
次いで、RTAを用いて、昇温速度3.3℃/秒で、420℃から550℃まで昇温し、550℃で15分間本焼成してLNO層の表面に、PZT薄膜を得た。
得られたPZT膜の形成方法と同様にして、PZT前駆体溶液のスピンコート法による塗布、乾燥、仮焼及び本焼成を1サイクルとする作業を、得られたPZT薄膜上に3回繰り返した。
これにより、LNO層の表面に、PZT層としての4層のPZT薄膜が積層された圧電体層を得た。
【0097】
[第2電極層形成工程]
PZT層の表面に、スパッタリング法により、Ptからなる上部電極層を得た。
【0098】
以上のようにして、圧電体素子を得た。
【0099】
(実施例2)
[第1電極層形成工程]での〔LNO層形成工程〕を、下記に示すスパッタリング法によるLNO層の形成に変更したこと以外、実施例1と同様にして圧電体素子を得た。
【0100】
〔スパッタリング法によるLNO層形成工程〕
ニッケル酸ランタン(LaNiO、LNO)をターゲットとするRF(高周波)スパッタリング法により、LNO層を形成した。スパッタリング装置のチャンバー内にガラス基板を設置し、以下の条件によりスパッタを行って、LNO層を得た。
・基板温度/500℃
・スパッタリングガス/Ar:O=8:2(体積比率)
・ガス圧/2.0Pa
・RFパワー/150W
・堆積時間/180分
【0101】
(比較例1)
基板を、Si基板(厚さ0.5mm)に変更したこと以外、実施例1と同様にして圧電体素子を得た。この基板の熱膨張係数は表1に示す値であった。
【0102】
(比較例2)
〔PZT前駆体溶液の調製〕におけるジルコニウム-n-プロポキシドと、チタンテトライソプロポキシドとの混合割合を、(Zr/Ti)のモル比で(53/47)に変更したこと以外、実施例1と同様にして圧電体素子を得た。この基板の熱膨張係数は表1に示す値であった。
【0103】
(圧電定数d33の測定)
第1電極層及び第2電極層に電圧を印加した際の微小変位を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)により測定し、圧電定数d33を求めた。
圧電定数d33が300(pm/V)以上である圧電体素子を、圧電性に優れる圧電体素子と評価した。
【0104】
【表1】

【0105】
実施例1及び実施例2では、何れのPZT層も正方晶系で比較的大きな熱膨張係数の基板ガラスを用いているので、90°ドメインのスイッチングが生じて大きな圧電特性を示した。さらに、LNO層を多孔質にすることで残留圧縮応力を緩和でき、非常に大きな圧電特性を実現した。
【0106】
一方、比較例1及び比較例2では、基板の熱膨張係数が小さかったり、組成が菱面体晶系あるいはMPB組成であったために、前駆体溶液の均質性が高いのでこれまでの文献報告値から見れば大きな圧電定数であったが実施例と比較すると小さな値となった。
【符号の説明】
【0107】
1 圧電体素子
11 基板
12 第1電極層
12a LNO層
13 圧電体層
13a PZT層
14 第2電極層
図1
図2
図3
図4