(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071245
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】流動媒体回収方法および流動床炉設備
(51)【国際特許分類】
F23C 10/04 20060101AFI20240517BHJP
F23G 5/30 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F23C10/04
F23G5/30 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182086
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000192590
【氏名又は名称】株式会社神鋼環境ソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 卓治
【テーマコード(参考)】
3K064
【Fターム(参考)】
3K064AA18
3K064AB03
3K064AC06
3K064AC13
3K064AD08
3K064BA07
3K064BB05
(57)【要約】
【課題】流動床炉の運転を継続しながらも、炉本体に収容される流動媒体から有価金属を効率よく回収可能な流動媒体回収方法及び流動床炉設備を提供する。
【解決手段】流動床炉設備1から流動媒体13を回収する流動媒体回収方法であって、流動床炉設備1は、流動媒体13を収容する炉本体12と炉本体12から流動媒体13を排出可能な排出口16aとを有し、有価金属を含む処理対象を焼却処理又はガス化する流動床炉10と、排出口16aから排出された流動媒体13を炉本体12に循環させる循環路40と、循環路40に設けられ、流動媒体13を貯留する貯留容器50と、備え、流動媒体13を循環路40に循環させる循環工程と、貯留容器50から流動媒体13を回収する回収工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床炉設備から流動媒体を回収する流動媒体回収方法であって、
前記流動床炉設備は、
前記流動媒体を収容する炉本体と当該炉本体から前記流動媒体を排出可能な排出口とを有し、有価金属を含む処理対象を焼却処理又はガス化する流動床炉と、
前記排出口から排出された前記流動媒体を前記炉本体に循環させる循環路と、
前記循環路に設けられ、前記流動媒体を貯留する貯留容器と、備え、
前記流動媒体を前記循環路に循環させる循環工程と、
前記貯留容器から前記流動媒体を回収する回収工程と、を含む流動媒体回収方法。
【請求項2】
前記回収工程は、前記流動媒体に含まれる前記有価金属の量を計測する計測工程を含んでいる請求項1に記載の流動媒体回収方法。
【請求項3】
前記循環工程は、前記計測工程で計測された前記有価金属の量に基づいて、前記流動媒体の循環速度を変更する請求項2に記載の流動媒体回収方法。
【請求項4】
前記回収工程は、前記流動床炉の停止中に前記貯留容器を取り外して前記流動媒体を回収する請求項1に記載の流動媒体回収方法。
【請求項5】
前記循環工程は、前記貯留容器を負圧に維持している請求項1から4のいずれか一項に記載の流動媒体回収方法。
【請求項6】
流動媒体を収容する炉本体と当該炉本体から前記流動媒体を排出可能な排出口とを有し、有価金属を含む処理対象を焼却処理又はガス化する流動床炉と、
前記排出口から排出された前記流動媒体を前記炉本体に循環させる循環路と、を備え、
前記循環路には、前記流動媒体から前記有価金属を回収するために、前記流動媒体を貯留する貯留容器が設けられている流動床炉設備。
【請求項7】
前記貯留容器は、前記循環路の屈曲部位に設けられており、前記流動媒体の流入部及び流出部を有し、前記流入部によって前記流動媒体が流入する方向と前記流出部によって前記流動媒体が流出する方向とが鈍角で交差するように構成されている請求項6に記載の流動床炉設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床炉設備における流動媒体回収方法および流動床炉設備に関する。
【背景技術】
【0002】
流動床炉を備える流動床炉設備において、流動床炉から抜き出される流動媒体から有価金属を分離するものが知られている。例えば、特許文献1には、流動床炉(文献では、「流動床式のガス化炉」)と、循環路(文献では、「戻し流路」)と、分級部と、比重分離部と、を備える流動床炉設備(文献では、「廃棄物処理設備」)が開示されている。分級部及び比重分離部は、循環路の途中に順に配置されている。流動床炉は、炉底板に金属等の不燃物を含む流動媒体を排出可能な排出口を有する。分級部は、排出口から排出された流動媒体から不燃物を分離する。比重分離部は、分級部によって不燃物が分離された流動媒体から有価金属を分離する。比重分離部によって有価金属と分離された流動媒体は、循環路によって流動床炉に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、特許文献1に記載の流動床炉設備では、流動床炉の炉底から流動媒体を抜き出された流動媒体が、循環路の途中に配置される比重分離部で有価金属と分離された後に流動床炉に戻される。ここで、比重分離部において流動媒体から多くの有価金属を分離するには時間を要する。このため、有価金属と分離された流動床炉から排出された流動媒体を流動床炉に循環させる流動床炉の運転を継続しつつ、流動媒体から有価金属を分離して回収するうえで改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、流動床炉の運転を継続しながらでも、流動媒体から有価金属を効率よく回収可能な流動媒体回収方法および流動床炉設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る流動媒体回収方法の特徴は、流動床炉設備から流動媒体を回収する流動媒体回収方法であって、前記流動床炉設備は、前記流動媒体を収容する炉本体と当該炉本体から前記流動媒体を排出可能な排出口とを有し、有価金属を含む処理対象を焼却処理又はガス化する流動床炉と、前記排出口から排出された前記流動媒体を前記炉本体に循環させる循環路と、前記循環路に設けられ、前記流動媒体を貯留する貯留容器と、備え、前記流動媒体を前記循環路に循環させる循環工程と、前記貯留容器から前記流動媒体を回収する回収工程と、を含む点にある。
【0007】
本方法によれば、循環工程において、流動床炉の排出口から排出された流動媒体を循環路に循環させ、流動媒体の循環路に設けられた貯留容器に、循環路を循環する流動媒体の一部を貯留する。これにより、排出口から排出された流動媒体は、循環路によって循環して流動床炉に戻しつつ、貯留容器に貯留した流動媒体から有価金属を回収することができる。すなわち、流動床炉の運転を継続しながらも、貯留容器から流動媒体を取り出して有価金属を回収することができる。その結果、流動床炉の運転効率を高めることが可能となり、流動媒体から有価金属を効率よく回収することができる。
【0008】
他の特徴は、前記回収工程は、前記流動媒体に含まれる前記有価金属の量を計測する計測工程を含んでいる点にある。
【0009】
循環路に設けられた貯留容器に貯留された流動媒体における有価金属の含有率を高めるためには、循環路に対して流動媒体を複数回循環させる必要がある。そこで、本方法における回収工程は、流動媒体に含まれる有価金属の量を計測する計測工程を含んでいる。計測工程において、流動媒体に含まれる有価金属の量が計測されることで、流動媒体における有価金属の含有率を把握することが可能となる。これにより、循環工程における循環路に対する流動媒体の循環回数等を、貯留容器に貯留された流動媒体における有価金属の含有率が高まるように調整することができる。
【0010】
他の特徴は、前記循環工程は、前記計測工程で計測された前記有価金属の量に基づいて、前記流動媒体の循環速度を変更する点にある。
【0011】
本方法によれば、循環工程において、計測工程で計測される有価金属の量に応じて、流動媒体の循環速度を変更する。例えば、計測工程で計測された有価金属の量が少ないときには、流動媒体における有価金属の含有量を高めるべく、流動媒体の循環速度が高くすることができる。その結果、流動床炉の運転を継続しながらも、流動媒体から有価金属の回収量を増加させることができる。
【0012】
他の特徴は、前記回収工程は、前記流動床炉の停止中に前記貯留容器を取り外して前記流動媒体を回収する点にある。
【0013】
貯留容器に針金等の長尺物等が混入している場合には、流動床炉の運転を継続しながら貯留容器から流動媒体のみを取り出す処理を行い難い。そこで、本方法では、回収工程において、流動床炉の停止中に貯留容器を取り外して流動媒体を回収する。これにより、取り外された貯留容器に貯留された流動媒体に対して、針金等の長尺物等を分離した後、有価金属を回収するための風力分離処理、振動分離処理、磁力分離処理等の各種処理を行い易くなる。その結果、貯留容器に貯留された流動媒体から有価金属を容易に回収することができる。なお、貯留容器の取り外しは、貯留容器全体でもよいし、例えは底部等の貯留容器の一部でもよい。
【0014】
他の特徴は、前記循環工程は、前記貯留容器を負圧に維持している点にある。
【0015】
本方法の如く、循環工程において、貯留容器が負圧に維持されることで、炉本体から連続する循環路よりも貯留容器が低圧になるので、循環路の流動媒体が貯留容器に流入し易くなる。その結果、循環路を循環する流動媒体が貯留容器を介して逆流することなく、炉本体へと戻すことができる。
【0016】
本発明に係る流動床炉設備の特徴構成は、流動媒体を収容する炉本体と当該炉本体から前記流動媒体を排出可能な排出口とを有し、有価金属を含む処理対象を焼却処理又はガス化する流動床炉と、前記排出口から排出された前記流動媒体を前記炉本体に循環させる循環路と、を備え、前記循環路には、前記流動媒体から前記有価金属を回収するために、前記流動媒体を貯留する貯留容器が設けられている点にある。
【0017】
本構成によれば、流動床炉設備は、流動床炉の排出口から排出された流動媒体を循環路に循環させ、流動媒体の循環路に設けられた貯留容器に、循環路を循環する流動媒体の一部を貯留する。これにより、排出口から排出された流動媒体は、循環路によって循環して流動床炉に戻しつつ、貯留容器に貯留した流動媒体から有価金属を回収することができる。すなわち、流動床炉の運転を継続しながらも、貯留容器から流動媒体を取り出して有価金属を回収することができる。その結果、流動床炉の運転効率を高めることが可能となり、流動媒体から有価金属を効率よく回収することができる。
【0018】
他の特徴構成は、前記貯留容器は、前記循環路の屈曲部位に設けられており、前記流動媒体の流入部及び流出部を有し、前記流入部によって前記流動媒体が流入する方向と前記流出部によって前記流動媒体が流出する方向とが鈍角で交差するように構成されている点にある。
【0019】
循環路に設けられる貯留容器は、循環路の屈曲部位に設けることで、循環路を循環する流動媒体の一部を貯留し易くなる。ただし、循環路を循環する流動媒体には不燃物が含まれ、不燃物には例えば針金等の長尺物が含まれることがある。そのため、屈曲部位に設けられた貯留容器では、流動媒体と共に流入した長尺物が流入部と流出部とに亘って滞留して詰まることがあり、その場合には貯留容器において長尺物が流動媒体の流れを阻害する。そこで、本構成では、循環路の屈曲部位に設けられた貯留容器が、流入部によって流動媒体が流入する方向と流出部によって流動媒体が流出する方向とが鈍角で交差するように構成されている。これにより、循環路の屈曲部位に設けられた貯留容器に長尺物が流入したとしても、長尺物は貯留容器の流入部と流出部とに亘って引っ掛かる不都合が防止される。その結果、貯留容器における長尺物の詰まりを容易に防止することができ、循環路において流動媒体を円滑に循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態における流動床炉設備の構成を模式的に示す図である。
【
図2】流動床炉における炉底板の構成を示す部分断面図である。
【
図3】流動床炉における散気管の構成を示す平面図である。
【
図4】第1実施形態における貯留容器の構成を示す縦断面図である。
【
図5】炉底板上に流動媒体が残存した状態の流動床炉の断面図である。
【
図6】第2実施形態における流動床炉設備の構成を模式的に示す図である。
【
図7】第2実施形態における貯留容器の構成を示す縦断面図である。
【
図8】変形例1の貯留容器の構成を示す縦断面図である。
【
図9】変形例1の貯留容器の構成を示す側部縦断面図である。
【
図10】変形例2の貯留容器の構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る流動媒体回収方法および流動床炉設備を詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0022】
〔第1実施形態〕
(流動床炉設備の構成)
流動床炉設備1の構成を、
図1~
図3を参照して説明する。
図1に示すように、流動床炉設備1は、流動床式ガス化炉10(流動床炉の一例、以下、「流動床炉10」と略称する。)と、旋回流溶融炉20と、ダクト30と、を主に備えている。以下、これらの構成要素についてそれぞれ説明する。
【0023】
流動床炉10は、処理対象として、例えば都市ごみ、下水汚泥又は自動車破砕残渣(ASR:Automobile Shredder Residue)等の各種廃棄物、又は廃家電製品等の各種廃棄物や、有価金属を含む家電等の被燃焼物を、可燃性ガス(一酸化炭素、水素、炭化水素等)、未燃物(チャー)及び灰に熱分解するための設備である。処理対象は有価金属を含み、流動床炉10は処理対象を焼却処理又はガス化する。
図1に示すように、流動床炉10は、流動媒体13を収容する炉本体12を備えている。炉本体12(流動床炉10)は、流動媒体13を支持する炉底板16と、炉底板16に隣接して設けられて流動媒体13を排出可能な排出口16aと、を有する。本実施形態では、炉底板16の中央部位に円形の開口が形成されており、排出口16aは当該開口によって構成されている。また、排出口16aには炉底板16の下方に延出される排出管15が接続されている。さらに、流動床炉10は、流動媒体13に向かって流動化ガスを吹き付ける散気機構Aを備えている。本実施形態では、散気機構Aは、炉底板16よりも下部から流動化ガスを吹き付けるように構成されている。図示しないが、散気機構Aは、炉底板16の上方であって炉本体12の側面側から流動化ガスを吹き付ける構成でもよい。
【0024】
炉本体12は、例えば上下方向に延びる円筒形状を有している。炉本体12には、供給口14と、流出口11と、導入口17と、がそれぞれ設けられている。処理対象は供給口14から炉本体12内に供給される。炉本体12内で発生した可燃性ガスは流出口11から炉外へ流出される。散気機構Aとして、炉本体12内における炉底板16よりも下側の空間に風箱18が設けられ、流動媒体13を流動させるための流動化ガス(例えば、空気)が導入口17から風箱18に導入される。
図1に示すように、供給口14は、炉本体12の側部のうち炉底板16よりも上側の部位に設けられている。流出口11は、炉本体12の頂部に設けられている。導入口17は、炉本体12の側部のうち炉底板16よりも下側の部位に設けられている。
【0025】
炉底板16は炉本体12の底部側に配置されている。流動媒体13の排出口16aは炉底板16の内周側に形成されている。炉底板16には多数の散気管19が貫通している。
図1に示すように、炉底板16は、内周側の排出口16aに向かって下向きに傾斜しており、その傾斜角は、流動媒体13の安息角よりも小さい角度となっている。具体的には、流動媒体13の安息角が好ましくは30度~40度であるのに対し、炉底板16の傾斜角は10度~30度となっている。なお、
図5では、炉底板16の傾斜角(角度θ)が、水平方向(
図5中の一点鎖線Y)と炉底板16の表面16cとの間の角として示されている。本実施形態では、炉底板16は、全体が流動媒体13の安息角よりも小さい角度で傾斜しているが、炉底板16はその一部が流動媒体13の安息角よりも小さい角度で傾斜する構成でもよい。
【0026】
流動媒体13は、例えば珪砂やオリビン砂等の流動砂であり、炉底板16上に充填されている。これにより、
図1に示すように、所定の厚さを有する流動層(砂層)が、炉底板16上に形成されている。流動床炉10は、流動媒体13が流動した状態で有価金属(例えば、金、銀、銅、鉛又は亜鉛)を含む処理対象を処理する。
【0027】
排出管15は、流動媒体13を不燃物と共に炉本体12の外へ抜き出すためのものである。
図1に示すように、排出管15は、排出口16aに接続された上端部と、炉本体12の外側に位置する下端部と、を有し、炉本体12の底壁部を貫通して上端部から下端部まで上下に延びている。
【0028】
散気機構Aは、導入口17、風箱18、及び、複数の散気管19によって構成されている。
図2~
図3に示すように、各散気管19は、炉底板16を厚さ方向に貫通する直管部19aと、直管部19aの上端に接続されたU字管部19bと、を有している。
図1に示すように、散気機構Aは、流動媒体13を流動させるために、導入口17から風箱18に導入された流動化ガスを散気管19に流通させて、炉本体12の炉底板16よりも下部から流動媒体13に向かって流動化ガスを吹き付ける。
図3に示すように、炉底板16において複数の散気管19が放射状に配置されている。導入口17から風箱18に導入された流動化ガスは、直管部19a内を上昇した後、U字管部19bの開口から流動媒体13に向けて送り出される(
図3中矢印)。
【0029】
図1に示すように、旋回流溶融炉20は、流動床炉10で発生した可燃性ガスの旋回流100を形成しつつ可燃性ガス及び未燃物を完全燃焼させると共に、可燃性ガスに同伴された灰を溶融させる炉である。旋回流溶融炉20は溶融炉本体23を有する。溶融炉本体23には、可燃性ガスの流入口21及び溶融スラグを炉外へ排出する出滓口22がそれぞれ設けられている。溶融スラグは、流入口21から溶融炉本体23に流入した可燃性ガスの灰が溶融することにより形成される。
【0030】
流入口21は、溶融炉本体23の側部のうち頂部近傍の部位に設けられている。流入口21は、ダクト30により流動床式ガス化炉10の流出口11に接続されている。出滓口22は、溶融炉本体23の底部に設けられている。旋回流溶融炉20において可燃性ガスが燃焼することにより発生した排ガスは、旋回流溶融炉20の後段に配置された各種設備(ボイラ、減温塔、バグフィルタ、触媒反応塔等)を通過した後、煙突(図示しない)から大気中に放出される。
【0031】
流動床炉10は、循環路40を有している。循環路40は、炉本体12の外へ抜き出された流動媒体13を、不燃物から分離した後に炉本体12へ戻すものである。循環路40は、抜出スクリュ41と、分級装置42と、循環エレベータ43と、貯留容器50と、貯留槽45と、第1搬送経路46と、第2搬送経路47と、第3搬送経路48と、を有している。
【0032】
抜出スクリュ41は、回転駆動によって炉本体12の底部から流動媒体13を不燃物と共に抜き出すためのものであり、排出管15の下端部に設けられている。分級装置42は、抜出スクリュ41の下流端に設けられており、篩によって流動媒体13と不燃物とを分離する。なお、流動媒体13から分離された不燃物は、粉砕された後に旋回流溶融炉20においてスラグ化され、又は系外へ搬出される。
【0033】
循環エレベータ43は、分級装置42により不燃物が除去された流動媒体13を、所定の高さまで搬送するものである。
図1に示すように、循環エレベータ43の下部には流動媒体13の入口43Aが設けられており、この入口43Aは第1搬送経路46により分級装置42の出口42A(流動媒体13の出口)と接続されている。また循環エレベータ43の上部には、流動媒体13の出口43Bが設けられている。
【0034】
第2搬送経路47は、循環エレベータ43の出口43Bから炉本体12の供給口14に向けて設けられており、途中に磁選機44及び貯留容器50が配置されている。磁選機44は不燃物の回収経路49に接続されている。第3搬送経路48は、第2搬送経路47から分岐して貯留槽45の入口に接続されている。これにより、循環エレベータ43の出口43Bから出た流動媒体13を、第2搬送経路47を介して炉本体12に戻し、第3搬送経路48を介して貯留槽45に一時的に貯留することもできる。なお、図示は省略するが、循環路40は、循環エレベータ43の出口43Bから出た流動媒体13を、貯留槽45へ導くか又は炉本体12へ導くかを切り替える切替部(バルブ等)をさらに有していてもよい。
【0035】
図1及び
図4に示すように、貯留容器50は、流動媒体13から有価金属を回収するために、流動媒体13を貯留する。貯留容器50は、循環路40の下流側であって流動床炉10の上手側に配置されている。具体的には、貯留容器50は、磁選機44により不燃物が磁選されて取り除かれた流動媒体13の流出口となる循環エレベータ43の出口43Bの下流側に配置されている。
図4に示すように、貯留容器50は、上部51、側部52、及び下部53を有する。上部51には流入部54が設けられ、側部52には下方に傾斜する流出部55が設けられ、下部53には排出部56が設けられている。これにより、貯留容器50において、流動媒体13は上面が安息角θ2に沿って傾斜した状態で堆積しつつ、流出部55が流出するようになる。流入部54及び流出部55は第2搬送経路47に接続されている。排出部56には、開閉弁Vが設けられており、開閉弁Vを開くことで流動媒体13を取り出すことができる。
【0036】
図1に示すように、流動床炉設備1は、集塵装置57と集塵装置57を動作させるファン58とを備え、循環路40に接続されている。集塵装置57は、循環エレベータ43の上部に接続されて循環路40を流れる流動媒体13に含まれる塵を吸引する。また、集塵装置57は、貯留容器50の上部に接続された吸引流路59を介して貯留容器50を流れる流動媒体13に含まれる塵を吸引する。このとき、循環エレベータ43の上部及び循環エレベータ43の下流側に配置される貯留容器50の内部を負圧にする。また、集塵装置57は、第2搬送経路47において磁選機44の下流側であって貯留容器50の上流側に接続されている。これにより、集塵装置57で集塵された流動媒体13は、循環路40に還流する。
【0037】
貯留容器50には、貯留容器50に貯留された流動媒体13の一部を、排出部56から抜き取って流動媒体13に含まれる有価金属の量を計測する計測器61が接続されている。流動床炉設備1は、運転を制御する制御部60を備えている。この制御部60は、CPU等のプロセッサやメモリで構成されており、ソフトウェアとハードウェアとの協働によって機能する。制御部60は、計測器61によって得られた有価金属の量に基づいて、流動媒体13の循環速度を変更可能に構成されている。本実施形態における制御部60は、抜出スクリュ41や循環エレベータ43等の各々の駆動速度を変更可能に構成されている。
【0038】
貯留容器50は、循環路40の第2搬送経路47の途中の屈曲部位Cに設けられている。循環路40に設けられる貯留容器50は、循環路40の屈曲部位Cに設けることで、循環路40を循環する流動媒体13の一部を貯留し易くなる。ただし、循環路40を循環する流動媒体13には不燃物が含まれ、不燃物には例えば針金等の長尺物L(
図4参照)が含まれることがある。そのため、屈曲部位Cに設けられた貯留容器50では、流動媒体13と共に流入した長尺物Lが流入部54と流出部55とに亘って引っ掛かることがあり、その場合には貯留容器50において長尺物Lが流動媒体13の流れを阻害する。
【0039】
そこで、本実施形態における貯留容器50は、流入部54によって流動媒体13が流入する方向と流出部55によって流動媒体13が流出する方向とが鈍角で交差するように構成されて、不燃物に含まれる長尺物Lが詰まらない構造を有している。具体的には、貯留容器50において、流入部54は上部51から上下方向に延設され、流出部55は側部52から下向きに傾斜する方向に延設され、流入部54による流入方向D1と流出部55による流出方向D2とが鈍角である角度θ3で交差している。角度θ3は、100度以上であればよく、120度以上であれば好ましく、150度以上であれば更に好ましい。これにより、
図4に示すように、循環路40の屈曲部位Cに設けられた貯留容器50に長尺物Lが流入したとしても、長尺物Lは貯留容器50の流入部54と流出部55とに亘って滞留し難くなり詰まり難くなる。その結果、貯留容器50における長尺物Lの詰まりを容易に防止することができ、循環路40において流動媒体13を円滑に循環させることができる。
【0040】
貯留槽45は、第2搬送経路47の磁選機44よりも下流側に配置されて循環エレベータ43により上方に搬送された流動媒体13を貯留する。これにより、循環エレベータ43によって上方に搬送された流動媒体13は、磁選機44によって針金等の磁着性を有する長尺物をあらかじめ除去した上で、第3搬送経路48を介して貯留槽45へ落下させて貯留槽45に貯留することができる。
【0041】
<流動床炉における流動媒体回収方法>
(第一回収方法)
流動床炉10における流動媒体13の第一回収方法を説明する。本回収方法は、流動床炉10の運転を継続して炉本体12内から流動媒体13を回収する方法である。
【0042】
図1に示すように、流動床炉10のメンテナンス前、すなわち流動床炉10の定常運転においては、散気管19により送り込まれる流動化ガス(例えば、空気)により流動媒体13が流動した状態で、処理対象が供給口14から炉本体12内に供給される。当該処理対象は、炉本体12内で流動媒体13によって加熱されることにより可燃性ガス、未燃物及び灰に熱分解される。ここで、処理対象には、貴金属(金、銀、銅等)や重金属(鉛、亜鉛等)等の有価金属が相当量含まれている。
【0043】
流動床炉10で発生した可燃性ガスは、未燃物及び灰と共にダクト30を通じて旋回流溶融炉20内に流入する。そして、この旋回流溶融炉20において、可燃性ガス及び未燃物が完全燃焼すると共に灰が溶融する。この定常運転の間、循環路40を作動させることにより、炉本体12内に充填された流動媒体13を不燃物と共に炉外へ抜き出すと共に、不燃物が除去された流動媒体13を炉本体12に戻すことができる。
【0044】
炉本体12内に充填された流動媒体13は、排出口16aを通じて重力により炉本体12の外へ抜き出される。具体的には、抜出スクリュ41を回転駆動させることにより、炉本体12内に充填された流動媒体13を排出口16aに連通する排出管15から炉本体12の外へ抜き出される。
【0045】
炉外へ抜き出された流動媒体13は、分級装置42で不燃物と分離され、循環エレベータ43により上方に搬送された後に貯留容器50に一部が貯留されつつ、炉本体12に戻される。すなわち、第一回収方法では、まず、排出口16aから抜き出された流動媒体13を循環路40に循環させる循環工程が行われる。なお、流動床炉10を停止する場合等においては、炉外へ抜き出された流動媒体13は貯留槽45に貯留される。
【0046】
また、循環工程は、循環路40の循環エレベータ43の上部に接続される集塵装置57及びファン58によって貯留容器50を流動床炉10の炉本体12の内圧に対して負圧に維持している。これにより、炉本体12から連続する循環路40よりも貯留容器50が低圧になるので、循環路40を循環する流動媒体13が貯留容器50に流入し易くなる。
【0047】
次に、回収工程として、貯留容器50から流動媒体13を回収する。そして、回収工程で回収された流動媒体13から所定の方法によって有価金属を回収する。所定の方法としては、熱処理、化学処理又は物理選別等の方法により、流動媒体13に含まれる有価金属を流動媒体13から分離する。熱処理としては、例えば、溶融処理(製錬)、焼成処理又は塩化揮発等が挙げられる。化学処理としては、例えば、酸等の溶媒抽出がある。また物理選別としては、例えば、風力選別、磁力選別、振動選別、渦電流選別、静電選別又は比重選別等が挙げられる。
【0048】
回収工程は、貯留容器50に貯留された流動媒体13に含まれる有価金属の量を計測する計測工程を含んでいる。具体的には、計測工程は貯留容器50に接続された計測器61によって行われる。流動床炉設備1では、貯留容器50の流動媒体13の一部が抜き出されて計測器61に供給されるように構成されている。計測工程は、循環工程と並行して行ってもよいし、循環工程を定期的に停止した際に行ってもよい。計測工程において、計測器61によって流動媒体13に含まれる有価金属の量が計測されることで、流動媒体13における有価金属の含有率を把握する。これにより、循環工程における循環路40に対する流動媒体13の循環回数等を、貯留容器50に貯留された流動媒体13における有価金属の含有率が高まるように調整することができる。
【0049】
循環工程では、計測工程で計測された有価金属の量に基づいて、流動媒体13の循環速度を変更するようにしてもよい。具体的には、計測器61によって計測された有価金属の量に基づき、制御部60が抜出スクリュ41、循環エレベータ43等における各々の駆動速度を変更することで、循環路40における流動媒体13の循環速度を変更する。これにより、例えば、計測工程で計測された有価金属の量が少ないときには、流動媒体13における有価金属の含有量を高めるべく、流動媒体13の循環速度が高くすることができる。
【0050】
(第二回収方法)
流動床炉10における流動媒体13の第二回収方法を説明する。本回収方法は、例えば流動床炉10のメンテナンス時等、流動床炉10を停止した時に炉本体12内から流動媒体13を回収する方法である。
【0051】
流動床炉10のメンテナンス時期が到来すると、まず、炉本体12への処理対象の供給を停止する。続いて風箱18への流動化ガスの供給を停止する。すなわち、散気機構Aを停止する。その後、炉本体12内に充填された流動媒体13を、炉本体12の外へ抜き出す抜出工程が行われる。
【0052】
抜出工程では、炉本体12内に充填された流動媒体13を、排出口16aを通じて重力により炉本体12の外へ抜き出す。具体的には、抜出スクリュ41を回転駆動させることにより、炉本体12内に充填された流動媒体13を排出口16aに連通する排出管15から炉本体12の外へ抜き出す。
【0053】
炉外へ抜き出された流動媒体13は、分級装置42で不燃物と分離され、循環エレベータ43により上方に搬送された後に貯留槽45に貯留される。つまり、抜出工程では、炉本体12から抜き出された流動媒体13が、炉本体12に戻されず、全て貯留槽45に貯留される。
【0054】
図5は、上記抜出工程の後における炉本体12内の様子(炉底板16の近傍の様子)を模式的に示している。上述の通り、炉底板16は、流動媒体13の安息角よりも小さい角度θで排出口16aに向かって下向きに傾斜している。このため、
図5に示すように、抜出工程で炉本体12内の流動媒体13が全て炉外へ抜き出されることはなく、抜出工程の後に炉底板16上において一部の流動媒体13が堆積層13aとして残存する。より詳細には、炉底板16の上面と散気管19のU字管部19bとの間には、流動化ガスの影響を受けにくい領域(不動層)が存在し、この不動層において一定量の流動媒体13が残存する。
【0055】
抜出工程の前に炉本体12内に充填された流動媒体13のうち、大半(例えば99%)が抜出工程で貯留槽45に送られ、残りが炉底板16上に堆積層13aとして残存する。ここで、流動床炉10において、抜出工程後の炉底媒体中に処理対象由来の有価金属(金、銀、銅、鉛、亜鉛等)が高濃度に含まれていることが知られている。
【0056】
このため、第二回収方法では、抜出工程に続く回収工程において、抜出工程で炉本体12内から抜き出した流動媒体13(貯留槽45に貯留された流動媒体13)と分離した状態で、堆積層13aの流動媒体13を別途回収する。具体的には、抜出工程が完了した後に作業者が炉本体12内に立ち入り、堆積層13aを採取することによって堆積層13aの流動媒体13を炉本体12内から直接回収する。
【0057】
その後、作業者は、炉本体12の内部の清掃や点検等のメンテナンス作業を行う。なお、残存した流動媒体13の回収前に炉内の清掃、点検等が行われてもよいし、炉底板16に残存した流動媒体13の回収と炉本体12の内部のメンテナンス作業とが併行して行われてもよい。つまり、散気機構Aを停止させてから回収工程を実施すればよい。
【0058】
このように、第二回収方法では、流動床式ガス化炉10のメンテナンスのタイミングを利用して、処理対象由来の有価金属を高濃度に含んだ流動媒体13を回収する。本実施形態では、計測工程で計測された有価金属の量に基づいて、流動媒体13の循環速度を変更するため、堆積層13aの流動媒体13には高濃度の有価金属が含まれることとなる。
【0059】
最後に、回収工程で回収した流動媒体13から有価金属を分離する。具体的には、熱処理、化学処理又は物理選別等の方法により、炉底媒体に含まれる有価金属を流動媒体13から分離する。熱処理としては、例えば、溶融処理(製錬)、焼成処理又は塩化揮発等が挙げられる。化学処理としては、例えば、酸等の溶媒抽出がある。また物理選別としては、例えば、風力選別、磁力選別、振動選別、渦電流選別、静電選別又は比重選別等が挙げられる。
【0060】
本実施形態では、上記の第一回収方法によって流動床炉10に収容された流動媒体13を回収することで、流動床炉10の運転を継続した状態で流動媒体13から有価金属を効率よく回収することができる。また、上記の第二回収方法によって流動床炉10に収容された流動媒体13を回収することで、流動床炉10を停止した状態において炉底板16に残存する流動媒体13から有価金属を効率よく回収することができる。
【0061】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の流動床炉設備1を
図6及び
図7に基づいて説明する。以下、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。第2実施形態は、貯留容器50が第1搬送経路46に設けられている点で第1実施形態と異なる。また、
図6に示す第2実施形態の流動床炉設備1では、第1実施形態とは異なり、集塵装置57及びファン58が備えられていない。第2実施形態に係る流動床炉10における流動媒体13の回収方法は、基本的に第1実施形態に係る流動床炉10における流動媒体13の回収方法と同様である。
【0062】
第2実施形態では、貯留容器50が循環路40の第1搬送経路46の途中の屈曲部位Cに設けられている。貯留容器50は、上部51、側部52、及び下部53を有する。上部51には流入部54が設けられ、側部52には流出部55が設けられている。流入部54及び流出部55は第1搬送経路46に接続されている。
【0063】
本実施形態においても、貯留容器50は、流入部54によって流動媒体13が流入する方向と流出部55によって流動媒体13が流出する方向とが鈍角で交差するように構成されて、不燃物に含まれる長尺物Lが詰まらない構造を有している。具体的には、貯留容器50において、流入部54は上部51から上下方向に延設され、流出部55は側部52から下向きに傾斜する方向に延設され、流入部54による流入方向D1と流出部55による流出方向D2とが鈍角である角度θ3で交差している。
【0064】
また、貯留容器50には、貯留容器50に貯留された流動媒体13の一部を抜き取って流動媒体13に含まれる有価金属の量を計測する計測器61が接続されている。制御部60は、計測器61によって得られた有価金属の量に基づいて、流動媒体13の循環速度を変更可能に構成されている。具体的には、流動床炉10は、抜出スクリュ41、循環エレベータ43等について、制御部60によって各々の駆動速度が変更可能に構成されている。
図7に示す例では、貯留容器50の下部53に排出部及び開閉弁が設けられていないが、第1実施形態と同じく、貯留容器50の下部に排出部56及び開閉弁Vを設けてもよい。
【0065】
〔貯留容器の変形例1〕
図8及び
図9に示すように、貯留容器50は、内部に水平方向に延びる管状の散気管71が複数並列に配置されていてもよい。流動化ガスは、外部から散気管71に供給されて散気管71の下部に形成された流出孔から流動媒体13に向けて流出する。これにより、貯留容器50の内部において流動媒体13が流動するようになり、流動媒体13に含まれる有価金属が濃縮される。
【0066】
本変形例1の貯留容器50においても、流出部55は貯留容器50の側部52から斜め下方に延出されており、貯留容器50においてオーバーフローした流動媒体13が流出するように構成されている。貯留容器50の下部53は、中央部分に向けて下方に傾斜しており、中央部分に排出部56が設けられている。排出部56は下部にスライドゲートを有して構成されている。スライドゲートは、少なくとも下方に向けて傾斜する底面56aと底面56aの両側に設けられた側面56bとを有する。
図8に示す例では、排出部56においてスライドゲートの上部分が開放されている。図示しないが、排出部56においてスライドゲートが管状に形成されていてもよい。排出部56は、スライドゲートを有することで、貯留容器50から外部に流動媒体13をスムーズに排出することができる。
【0067】
図9に示すように、隣接する散気管71A、71Bは、ピッチPの間隔で配置されている。ピッチPは、2本散気管71A、71Bに亘って針金等の長尺物が滞留しないように幅広に設定されている。
図9に示す例では、貯留容器50に2つの散気管71が配置されているが、貯留容器50には3つ以上の散気管71を配置してもよい。
【0068】
〔貯留容器の変形例2〕
図10に示すように、貯留容器50は、下部53が排出部56に向けて下方に傾斜し、下部53に流動媒体13に向けて突出する散気管72を複数有する形態でもよい。
図10に示される散気管72は、炉本体12の炉底板16に設けられた散気管19と同様の構成である(
図2参照)。下部53の傾斜角(角度θ4)は、水平方向(
図10中の一点鎖線Y)と下部53の表面53aとの間の角として示されている。角度θ4は、炉本体12の炉底板16の傾斜角である角度θ(
図5参照)と同じく、流動媒体13の安息角よりも小さい角度で設定されている。これにより、貯留容器50の内部において、流動媒体13に含まれる有価金属は、散気管72の近くに堆積する流動媒体13に濃縮されて不動層13bを形成するようになる。その結果、排出部56から流動媒体13を排出する際に、不動層13bの流動媒体13を貯留容器50に残存させ易くなるため、貯留容器50に残存した流動媒体13から有価金属の回収を効率よく行うこともできる。
【0069】
図示しないが、下部53の傾斜角(角度θ4)は流動媒体13の安息角よりも大きい角度に設定されていてもよい。この場合には、貯留容器50の流動媒体13は排出部56を介して全て回収してもよい。
【0070】
〔別実施形態〕
(1)上記の実施形態では、貯留容器50が循環路40に固定されている。この場合には、貯留容器50に針金等の長尺物等が混入している場合には、流動床炉10の運転を継続しながら貯留容器50から流動媒体13のみを取り出す処理を行い難い。そこで、循環路40に設けられる貯留容器50は、循環路40から取り外し可能に構成してもよい。この場合の回収工程は、流動床炉10の停止中に貯留容器50を取り外して流動媒体13に対して針金等の長尺物等を分離した後に回収することができる。このようにすると、循環路40から取り外された貯留容器50に貯留された流動媒体13に対して、有価金属を分離するための風力分離処理、振動分離処理、磁力分離処理等の各種処理を行い易くなる。その結果、貯留容器50に貯留された流動媒体13から有価金属を容易に回収することができる。なお、貯留容器50の取り外しは、貯留容器50全体でもよいし、例えは下部53(底部)等の貯留容器50の一部でもよい。
【0071】
(2)上記の実施形態では、貯留容器50に流動媒体13に含まれる有価金属の量を計測する計測器61を接続する例を示した。これに代えて、貯留容器50が配置されていない、第1搬送経路46~第3搬送経路48のいずれかに、流動媒体13の一部を抜き取って流動媒体13に含まれる有価金属の量を計測する計測器が接続され、計測器によって計測された有価金属の量に基づいて流動媒体13の循環速度を変更するようにしてもよい。
【0072】
(3)貯留容器50は、第1搬送経路46又は第2搬送経路47に接続される流入部54及び流出部55のみを有する構成でもよい。この場合、貯留容器50から流動媒体13を定期的に取り出すために、点検口を設けて貯留容器50に貯留された流動媒体13の量を確認できるようにすることが好ましい。
【0073】
(4)上記の実施形態では、炉底板16の傾斜角を流動媒体13の安息角よりも小さい角度θにし、排出口16aから流動媒体13が抜き出されたときに炉底板16に流動媒体13が残留する例を示したが、炉底板16の傾斜角は流動媒体13の安息角よりも大きい角度に設定されていてもよい。この場合には、流動床炉10における流動媒体回収方法は、第一回収方法のみを実施してもよい。
【0074】
(5)上記の第2実施形態では、流動床炉設備1が磁選機44、集塵装置57及びファン58を備えない例を示したが、第2実施形態においても、第1実施形態と同じく、流動床炉設備1が磁選機44、集塵装置57及びファン58を備える構成でもよい。
【0075】
(6)上記の実施形態では、流動床炉10として処理対象をガス化する流動床式ガス化炉10を用いた例を示したが、流動床炉10として処理対象を焼却処理する流動床式焼却炉を適用することもできる。
【0076】
(7)上記の実施形態では、流動床炉10の炉本体12が円筒状に形成された例を示したが、流動床炉10は炉本体12が角筒状であってもよい。
【0077】
(8)上記の実施形態では、排出口16aが炉本体12の平面視における中心側、すなわち、炉底板16の内周側に配置される例を示したが、排出口16aは、炉本体12の平面視において炉底板16の外周側である炉本体12の内面12aと炉底板16との間に配置されてもよい。
【0078】
(9)上記の実施形態では、散気管19が炉底板16から上方に突出する例を示したが、流動床炉10は散気管19が炉底板16から上方に突出しない構成であってもよい。つまり、散気管19は、炉底板16の表面16cから流動化ガスを噴出することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、有価金属を含む処理対象を焼却処理又はガス化する流動床炉および流動床炉における流動媒体回収方法に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 :流動床炉設備
10 :流動床式ガス化炉(流動床炉)
11 :流出口
12 :炉本体
13 :流動媒体
15 :排出管
16 :炉底板
16a :排出口
19 :散気管
20 :旋回流溶融炉
40 :循環路
43 :循環エレベータ
44 :磁選機
45 :貯留槽
46 :第1搬送経路
47 :第2搬送経路
48 :第3搬送経路
49 :回収経路
50 :貯留容器
51 :上部
52 :側部
53 :下部
54 :流入部
55 :流出部
56 :排出部
57 :集塵装置
58 :ファン
60 :制御部
61 :計測器
A :散気機構
C :屈曲部位
D1 :流入方向
D2 :流出方向
L :長尺物
θ :角度
θ2 :角度
θ3 :角度