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特開2024-71258車両データ収集装置及び車両データ収集システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071258
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】車両データ収集装置及び車両データ収集システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240517BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/09 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182106
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今西 裕人
(72)【発明者】
【氏名】石田 良介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 義幸
(72)【発明者】
【氏名】前田 功治
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC03
5H181CC04
5H181FF10
(57)【要約】
【課題】通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、車両データの収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することを目的とする。
【解決手段】車両データ収集装置5は、収集要求に応じた各ECUへの設定情報である収集設定を決定する設定部40と、収集設定に基づいて収集条件を設定し、収集条件が成立するか否かを判定する収集条件判定部51と、収集設定に基づいて収集データを設定し、収集データを各ECUから取得する収集データ出力部52と、収集設定に基づいて、収集条件成立前の収集データと収集条件成立以降の収集データとを保持する多段保持部53と、保持された収集データの送信を待機させる送信待機部60と、送信待機部60に待機された収集データを要求元に送信する送信部31と、を備える。収集要求は、多段保持部53の収集データの保持数に関する設定値を含む。設定部40は、多段保持部53の収集データの保持数を当該設定値から変更して収集設定を決定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両データの収集要求に応じて電子制御装置から前記車両データを収集する車両データ収集装置であって、
前記収集要求に応じた前記電子制御装置への設定情報である収集設定を決定する設定部と、
前記収集設定に基づいて前記車両データの収集条件を設定し、設定された前記収集条件が成立するか否かを判定する収集条件判定部と、
前記収集設定に基づいて収集対象の前記車両データである収集データを設定し、設定された前記収集データを前記電子制御装置から取得して出力する収集データ出力部と、
前記収集設定に基づいて、前記収集条件の成立前に出力された前記収集データと前記収集条件の成立以降に出力された前記収集データとを保持する多段保持部と、
前記多段保持部に保持された前記収集データの前記収集要求の要求元への送信を待機させる送信待機部と、
前記送信待機部に待機された前記収集データを前記要求元に送信する送信部と、を備え、
前記収集要求は、前記多段保持部の前記収集データの保持数に関する設定値を含み、
前記設定部は、前記多段保持部の前記収集データの保持数を前記設定値から変更して前記収集設定を決定する
ことを特徴とする車両データ収集装置。
【請求項2】
前記多段保持部は、
予め定められた動作周期毎に、保持された前記収集データを古い順から削除すると共に、前記収集データ出力部から出力された前記収集データを順次保持することによって、前記多段保持部に保持された前記収集データである保持データを前記動作周期毎に更新し、
前記収集条件が成立してから前記動作周期が所定回だけ経過した場合、前記保持データの更新を停止して、前記保持データを前記送信待機部に送信し、
前記送信待機部は、前記多段保持部から送信された前記保持データを格納して、前記要求元との通信が確立するまで待機させ、
前記送信部は、前記要求元との通信が確立した場合、前記送信待機部に格納された前記保持データである前記送信待機部の待機データを、前記要求元に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両データ収集装置。
【請求項3】
前記収集要求は、前記収集条件の成立前に出力された前記収集データを前記多段保持部に保持する数に関する第1設定値と、前記収集条件の成立以降に出力された前記収集データを前記多段保持部に保持する数に関する第2設定値と、を含み、
前記設定部は、前記多段保持部の前記収集データの保持数を前記第1設定値及び前記第2設定値から変更して前記収集設定を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両データ収集装置。
【請求項4】
前記収集要求は、前記多段保持部において、前記収集条件の成立前に出力された前記収集データと前記収集条件の成立以降に出力された前記収集データとの何れを優先して保持するかを設定する前後優先度を含み、
前記設定部は、前記多段保持部を構成するメモリの容量及び前記前後優先度に基づいて前記第1設定値及び前記第2設定値の少なくとも1つを変更することによって、前記多段保持部の前記保持数を変更するよう前記収集設定を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両データ収集装置。
【請求項5】
前記収集条件判定部は、複数の前記収集条件のそれぞれが成立するか否かを判定可能であり、
前記収集要求は、前記多段保持部において、複数の前記収集条件のうち何れの前記収集条件を優先して前記収集データを保持するかを設定する条件優先度を含み、
前記設定部は、前記多段保持部を構成するメモリの容量及び前記条件優先度に基づいて前記第1設定値及び前記第2設定値の少なくとも1つを変更することによって、前記多段保持部の前記保持数を変更するよう前記収集設定を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両データ収集装置。
【請求項6】
前記収集要求は、前記多段保持部において、前記第1設定値及び前記第2設定値によって設定された前記収集データの保持形式の維持を優先するか否かを設定する形式優先度を含み、
前記設定部は、前記多段保持部を構成するメモリの容量及び前記形式優先度に基づいて前記第1設定値及び前記第2設定値の少なくとも1つを変更することによって、前記多段保持部の前記保持数を変更するよう前記収集設定を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の車両データ収集装置。
【請求項7】
前記形式優先度は、前記第1設定値及び前記第2設定値によって設定された前記収集データの保持形式の維持を優先する形式優先と、前記第1設定値及び前記第2設定値によって設定された前記収集データの保持形式の維持を優先しない形式非優先と、を含み、
前記設定部は、前記形式優先度が前記形式優先であり、且つ、前記第1設定値及び前記第2設定値によって設定された前記収集データの保持形式を維持することが困難である場合、前記収集データを収集対象から除外するよう前記収集設定を決定する
ことを特徴とする請求項6に記載の車両データ収集装置。
【請求項8】
前記収集設定に基づいて前記車両データの一次収集条件を設定し、設定された前記一次収集条件が成立するか否かの判定を、前記収集条件判定部の判定に先立って行う一次収集条件判定部を更に備え、
前記収集条件判定部は、前記一次収集条件判定部によって前記一次収集条件が成立すると判定された場合、前記収集条件が成立するか否かの判定を開始する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両データ収集装置。
【請求項9】
前記設定部は、前記要求元から前記収集要求の解除が通知された後に、新たな前記収集要求に応じて前記車両データを収集するよう、新たな前記収集設定を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両データ収集装置。
【請求項10】
前記多段保持部に保持された前記収集データが前記送信待機部に送信中であるか否かを判定する送信中判定部と、
前記多段保持部を構成するメモリに電力を供給する電力供給部と、を更に備え、
前記電力供給部は、前記多段保持部に保持された前記収集データが前記送信待機部に送信中であると判定された場合、前記メモリへの電力供給を継続する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両データ収集装置。
【請求項11】
前記収集データ出力部は、前記多段保持部を構成するメモリの容量が不足している場合、当該多段保持部とは異なる他の多段保持部に前記収集データを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両データ収集装置。
【請求項12】
前記収集データ出力部は、前記多段保持部を構成するメモリの容量が不足している場合、前記送信待機部に前記収集データを送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両データ収集装置。
【請求項13】
前記要求元は、前記電子制御装置を搭載する車両の外部に設けられたサーバ装置、前記車両に接続された記録装置、及び、前記車両に搭載され前記電子制御装置とは異なる他の電子制御装置の少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項1に記載の車両データ収集装置。
【請求項14】
車両データの収集を車両に要求するサーバ装置と、前記サーバ装置からの要求に応じて前記車両の電子制御装置から前記車両データを収集する車両と、を有する車両データ収集システムであって、
前記サーバ装置は、
前記車両データの収集要求を生成し、生成された前記収集要求を前記車両に送信する要求部を備え、
前記車両は、
前記収集要求に応じた前記電子制御装置への設定情報である収集設定を決定する設定部と、
前記収集設定に基づいて前記車両データの収集条件を設定し、設定された前記収集条件が成立するか否かを判定する収集条件判定部と、
前記収集設定に基づいて収集対象の前記車両データである収集データを設定し、設定された前記収集データを前記電子制御装置から取得して出力する収集データ出力部と、
前記収集設定に基づいて、前記収集条件の成立前に出力された前記収集データと前記収集条件の成立以降に出力された前記収集データとを保持する多段保持部と、
前記多段保持部に保持された前記収集データの前記収集要求の要求元への送信を待機させる送信待機部と、
前記送信待機部に待機された前記収集データを前記要求元に送信する送信部と、を備え、
前記収集要求は、前記多段保持部の前記収集データの保持数に関する設定値を含み、
前記設定部は、前記多段保持部の前記収集データの保持数を前記設定値から変更して前記収集設定を決定する
ことを特徴とする車両データ収集システム。
【請求項15】
前記サーバ装置と通信可能に接続された端末装置を更に有し、
前記車両は、前記収集設定を前記サーバ装置に送信する収集設定送信部を更に備え、
前記サーバ装置は、
複数の前記車両から送信された複数の前記収集設定を受信する収集設定受信部と、
複数の前記収集設定に対して統計処理を行う統計処理部と、
前記統計処理部の統計処理結果を前記端末装置に送信する統計処理結果送信部と、を更に備え、
前記端末装置は、前記サーバ装置から送信された前記統計処理結果を表示する
ことを特徴とする請求項14に記載の車両データ収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両データ収集装置及び車両データ収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、販売後の車両からデータを収集し、車両の外部に設けられたサーバ装置へ送信する車両データ収集装置が開発されている。車両データ収集装置は、サーバ装置からの要求に応じて、車両に搭載された任意の電子制御装置(Electronic Control Unit;以下「ECU」とも称する)の内部やECU間でやり取りする制御信号等の車両データを走行中等に収集する。そして、車両データ収集装置は、取集された車両データを、携帯電話通信網等を介してサーバ装置へ送信する。
【0003】
サーバ装置は、多数の車両から車両データを収集し、様々な用途に利用する。例えば、サーバ装置は、自動運転の車両からヒヤリハット発生時のセンサデータを収集することによって、AI(Artificial Intelligence)の学習に利用することができる。また、サーバ装置は、ソフトウェアの入出力データを収集することによって、ソフトウェアの検証に利用することができる。
【0004】
特許文献1には、車両データ収集システムの一例が開示されている。特許文献1に開示されたシステムのサーバ装置は、車両データの収集条件を判定し、収集条件が成立したことが検出されると、収集対象のECUに対して、収集対象の車両データを送信するよう要求する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-132368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載に開示されたシステムでは、収集条件の成立が検出されてから車両データの送信が要求されるので、収集条件が成立前の車両データを収集することができない。例えば、ヒヤリハットが発生した自動運転の車両から車両データを収集して、ヒヤリハットの発生を抑制するようAIを学習させたい場合、ヒヤリハットの発生後だけでなく、ヒヤリハットの発生に至るまでの過程で得られる車両データを収集することが重要である。特許文献1に開示されたシステムは、収集条件の成立前の車両データを収集することができないので、ヒヤリハットの発生に至るまでの過程で得られる車両データを収集することができない。
【0007】
収集条件が成立前の車両データを収集するためには、収集条件の成立前から車両データを蓄積する必要がある。収集条件の成立前から車両データを蓄積するために、例えば、何れかのECUに不揮発性メモリを設ける場合、車両データの出力元のECUから不揮発性メモリが設けられたECUまで車両データを頻繁に送信する必要があり、通信を圧迫してしまう。また、例えば、不揮発性メモリを各ECUに設ける場合、ECU間の通信圧迫は避けられる。しかしながら、サーバ装置からの要求を受信するまで車両データの出力元のECUが定まらず、出力元となり得る全てのECUに対して不揮発性メモリを設ける必要があるので、コスト増加を招いてしまう。また、車両データを蓄積するために各ECUが備える揮発性メモリを用いる場合、蓄積に割当可能な揮発性メモリの容量は車両毎に異なるので、容量が小さい車両が収集できない収集方式は諦めるか、容量が小さい車両からの収集自体を諦める必要があるので、車両データを柔軟に収集することが困難である。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、車両データの収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の車両データ収集装置は、車両データの収集要求に応じて電子制御装置から前記車両データを収集する車両データ収集装置であって、前記収集要求に応じた前記電子制御装置への設定情報である収集設定を決定する設定部と、前記収集設定に基づいて前記車両データの収集条件を設定し、設定された前記収集条件が成立するか否かを判定する収集条件判定部と、前記収集設定に基づいて収集対象の前記車両データである収集データを設定し、設定された前記収集データを前記電子制御装置から取得して出力する収集データ出力部と、前記収集設定に基づいて、前記収集条件の成立前に出力された前記収集データと前記収集条件の成立以降に出力された前記収集データとを保持する多段保持部と、前記多段保持部に保持された前記収集データの前記収集要求の要求元への送信を待機させる送信待機部と、前記送信待機部に待機された前記収集データを前記要求元に送信する送信部と、を備え、前記収集要求は、前記多段保持部の前記収集データの保持数に関する設定値を含み、前記設定部は、前記多段保持部の前記収集データの保持数を前記設定値から変更して前記収集設定を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、車両データの収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の車両データ収集装置を有する車両データ収集システムの概略構成を示す図。
図2図1に示す車両の概略構成を示す図。
図3図2に示す車両データ収集装置の機能的構成を示す図。
図4図3に示す通信機能を構成する通信プログラムのフローチャート。
図5図3に示す設定機能を構成する設定プログラムのフローチャート。
図6図3に示す判定機能を構成する判定プログラムのフローチャート。
図7図3に示す収集機能を構成する収集プログラムのフローチャート。
図8図3に示す待機機能を構成する待機プログラムのフローチャート。
図9図3に示す多段保持部の動作を説明する図。
図10図3に示す設定部が前後優先度に基づいて収集設定を決定した場合の多段保持部の動作を説明する図。
図11図3に示す設定部が条件優先度に基づいて収集設定を決定した場合の多段保持部の動作を説明する図。
図12図3に示す設定部が形式優先度に基づいて収集設定を決定した場合の多段保持部の動作を説明する図。
図13図3に示す車両データ収集装置の動作例を説明する図。
図14図3に示す車両データ収集装置の動作例を説明する図。
図15図3に示す車両データ収集装置の動作例を説明する図。
図16】実施形態2の車両データ収集装置の概略構成を示す図。
図17】実施形態3の車両データ収集装置の概略構成を示す図。
図18】実施形態4の車両データ収集装置の機能的構成を示す図。
図19図18に示す車両データ収集装置の動作例を示す図。
図20】実施形態5の車両データ収集装置を説明するタイミングチャート。
図21】実施形態6の車両データ収集装置の機能的構成を示す図。
図22】実施形態7の車両データ収集装置の機能的構成を示す図。
図23】実施形態8の車両データ収集装置の機能的構成を示す図。
図24】実施形態9の車両データ収集システムの概略構成を示す図。
図25図24に示す車両データ収集システムの機能的構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0013】
以下に説明する各実施形態では、自動運転機能を有する電気自動車に搭載されたコントロールユニット(ECU)に本発明を適用した場合を例に挙げて説明している。しかしながら、本発明は、自動運転機能を有していない電気自動車、ハイブリッド車、エンジン車、又は、建設現場を走行する建設車両等の、各種車両に搭載されたコントロールユニット(ECU)にも適用することができる。
【0014】
[実施形態1]
図1図15を用いて、実施形態1の車両データ収集装置5について説明する。
【0015】
図1は、実施形態1の車両データ収集装置5を有する車両データ収集システム1の概略構成を示す図である。図1に示す破線矢印は、信号又はデータの流れを示している。
【0016】
車両データ収集システム1は、管理者が管理者設定を入力する端末装置2と、端末装置2と有線又は無線で通信可能に接続されたサーバ装置3と、サーバ装置3と携帯電話通信網等の無線通信網を介して接続された車両4と、を有する。
【0017】
端末装置2は、ディスプレイ及びキーボード等のユーザインターフェースを備えている。管理者は、GUI(Graphical User Interface)を介して管理者設定を端末装置2に入力することができる。管理者設定は、管理者が入力する車両データ収集の設定であり、車両データの収集を試みる車両の範囲と、各車両に伝達する要求と、を含んでいる。端末装置2は、入力された管理者設定を、サーバ装置3に送信する。
【0018】
サーバ装置3は、CPU(Central Processing Unit)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、ハードディスクドライブ及びネットワークアダプタ等を含んで構成され、CPUがサーバプログラムを実行することによってサーバ装置3の各種機能を実現する。
【0019】
サーバ装置3は、端末装置2から送信された管理者設定に基づいて車両データの収集要求を生成し、生成された収集要求を車両4に送信する要求部100を備える。具体的には、要求部100は、端末装置2から送信された管理者設定に含まれる要求をシリアライズし、要求バイト列を演算する。更に、要求部100は、管理者設定に含まれる範囲に基づき、車両4を含む複数の車両を選出し、携帯電話通信網を介して要求バイト列を送信する。これにより、サーバ装置3は、管理者設定に含まれる範囲と対応する複数の車両に対して、管理者設定に含まれる要求に応じた車両データの収集要求を、車両4に伝達することができる。
【0020】
管理者設定に含まれる範囲は、車種によって規定された範囲であってもよい。これにより、サーバ装置3は、特定車種の車両4にのみ、車両データの収集要求を伝達することができる。管理者設定に含まれる範囲は、車格によって規定された範囲であってもよい。これにより、サーバ装置3は、特定車格の車両4にのみ、車両データの収集要求を伝達することができる。管理者設定に含まれる範囲は、車両4の存在する地域によって規定された範囲であってもよい。これにより、サーバ装置3は、特定市町村、特定道路、特定交差点といった、特定地域に存在する車両4にのみ、車両データの収集要求を伝達することができる。管理者設定に含まれる範囲は、自動車登録番号のリストによって規定された範囲であってもよい。これにより、サーバ装置3は、特定自動車登録番号の車両4にのみ、車両データの収集要求を伝達することができる。
【0021】
車両4は、サーバ装置3からの要求に応じて車両4に搭載されたECUから車両データを収集する。収集された車両データは、車両4とサーバ装置3との通信が確立されるまで一時的に車両4側において待機された後、シリアライズされて待機データバイト列に変換され、携帯電話通信網を介してサーバ装置3へ送信される。これにより、サーバ装置3は、車両データを収集することができる。
【0022】
図2は、図1に示す車両4の概略構成を示す図である。図2に示す破線矢印は、信号又はデータの流れを示している。
【0023】
車両4は、車両4を駆動するモータ6と、車両4を制動するブレーキ7と、車両4を操舵するステアリング8と、車両4の前方を撮影するカメラ9と、車両4の周囲を計測するLiDAR10(Light Detection And Ranging)10と、モータ6へ動作を指令するパワートレインECU11と、ブレーキ7へ動作を指令するブレーキECU12と、ステアリング8への動作を指令するステアリングECU13と、車両4の自動運転指令値を演算する自動運転ECU14と、車両外部からの不正侵入を防ぐゲートウェイECU15と、車両外部と通信するテレマティクスECU16と、を備えている。更に、車両4は、サーバ装置3からの車両データの収集要求に応じて、ECUから車両データを収集する車両データ収集装置5を備えている。
【0024】
モータ6は、モータ6に供給された電気エネルギを運動エネルギに変換して動力を発生させる。発生された動力は、減速機により減速された後に駆動輪に伝えられ、車両4を駆動する駆動力となる。ブレーキ7は、車輪と共に回転するディスクロータにブレーキパッドを押し付けることによって摩擦力を発生させる。これにより、回転する車輪の運動エネルギを熱エネルギに変換し、車両4を制動させることができる。ステアリング8は、駆動輪の角度を変えることによって進行方向を変更し車両4を操舵することができる。カメラ9は、撮像素子に入射する光の強さを電荷に変換することによって車両4の前方を撮影して、画像データを出力することができる。LiDAR10は、レーザを車両4の周囲に照射し、反射光を検出することによって車両4の周囲との距離を計測し、計測結果を点群データとして出力することができる。
【0025】
パワートレインECU11は、CPU及びDRAM等を含んで構成され、CPUがパワートレイン制御プログラムを実行することによって、モータ6への指令値を演算する。ブレーキECU12は、CPU及びDRAM等を含んで構成され、CPUがブレーキ制御プログラムを実行することによって、ブレーキ7への指令値を演算する。ステアリングECU13は、CPU及びDRAM等を含んで構成され、CPUがステアリング制御プログラムを実行することによって、ステアリング8への指令値を演算する。これにより、車両4は、加減速及び旋回といった車両4の走行を制御することができる。
【0026】
自動運転ECU14は、CPU、DRAM及びFlashメモリ等を含んで構成され、CPUが自動運転制御プログラムを実行することによって、自動運転指令値を演算する。この際、自動運転ECU14は、カメラ9から送信された画像データ又はLiDAR10から送信された点群データに基づいて、自動運転指令値を演算する。更に、CPUが自動運転制御プログラムを実行することによって、自動運転ECU14は、演算された自動運転指令値を、パワートレインECU11、ブレーキECU12及びステアリングECU13に送信する。これにより、車両4は、自律走行することができる。
【0027】
ゲートウェイECU15は、CPU及びDRAM等を含んで構成され、CPUがゲートウェイ制御プログラムを実行することによって、車両外部との通信を監視すると共に車両外部から不正侵入を防ぐ。テレマティクスECU16は、CPU、DRAM及び通信アンテナ等を含んで構成され、CPUが通信プログラムを実行することによって、携帯電話通信網を介してサーバ装置3と通信することができる。
【0028】
図3は、図2に示す車両データ収集装置5の機能的構成を示す図である。
【0029】
車両データ収集装置5は、車両データの収集要求の要求元(本実施形態ではサーバ装置3)と通信する通信機能20と、各ECUに対して車両データの収集に関する設定を行う設定機能21と、車両データの収集条件の成立を判定する判定機能22と、を備える。更に、車両データ収集装置5は、車両データを収集する収集機能23と、収集機能23によって収集された車両データ(以下「収集データ」とも称する)のサーバ装置3への送信を待機させる待機機能24と、を備える。
【0030】
車両データ収集装置5の各機能20~24は、各ECUに実装されている。車両データ収集装置5の各機能20~24は、各ECUのハードウェア及びソフトウェアによって構成される。例えば、通信機能20は、テレマティクスECU16に実装される。通信機能20は、テレマティクスECU16に含まれるCPU、メモリ及び通信プログラムによって構成される。例えば、設定機能21は、ゲートウェイECU15に実装される。設定機能21は、ゲートウェイECU15に含まれるCPU、メモリ及び設定プログラムによって構成される。例えば、判定機能22は、パワートレインECU11、ブレーキECU12、ステアリングECU13、自動運転ECU14又はゲートウェイECU15に実装される。判定機能22は、パワートレインECU11、ブレーキECU12、ステアリングECU13、自動運転ECU14又はゲートウェイECU15に含まれるCPU、メモリ及び判定プログラムによって構成される。例えば、収集機能23は、パワートレインECU11、ブレーキECU12、ステアリングECU13、自動運転ECU14又はゲートウェイECU15に実装される。収集機能23は、パワートレインECU11、ブレーキECU12、ステアリングECU13、自動運転ECU14又はゲートウェイECU15に含まれるCPU、メモリ及び収集プログラムによって構成される。待機機能24は、自動運転ECU14に実装される。待機機能24は、自動運転ECU14に含まれるCPU、メモリ及び待機プログラムによって構成される。車両データ収集装置5の各機能20~24は、各ECUのCPUが、各機能20~24を構成するプログラムを実行することによって実現される。各ECUのCPUは、各機能20~24を構成するプログラムを、各ECUの制御プログラムと並列して実行する。
【0031】
通信機能20は、車両データの要求元であるサーバ装置3から収集要求を受信する受信部30を備える。更に、通信機能20は、収集された車両データ(収集データ)を要求元であるサーバ装置3に送信する送信部31を備える。通信機能20の詳細については、図4を用いて後述する。
【0032】
設定機能21は、受信部30により受信された車両データの収集要求に基づいて各ECUに応じた収集設定を決定する設定部40を備える。
【0033】
収集設定は、車両データの収集に関する各ECUへの設定情報である。収集設定は、受信された収集要求に応じた各ECUへの設定情報である。具体的には、収集設定は、収集機能23を構成する各ECU(すなわち、パワートレインECU11、ブレーキECU12、ステアリングECU13、自動運転ECU14、ゲートウェイECU15)の仕様に基づき、当該各ECUが収集機能23の収集プログラムを実行可能となるよう、受信された収集要求の内容を、当該各ECUに応じて変更して得られた設定情報である。収集要求は、多段保持部53の収集データの保持数に関する設定値を含む。設定部40は、多段保持部53の収集データの保持数を、収集要求に含まれる当該設定値から変更して収集設定を決定することができる。設定機能21の詳細については、図5を用いて後述する。
【0034】
判定機能22は、設定部40により決定された収集設定に基づいて車両データの収集条件を設定し、設定された収集条件が成立するか否かを判定する収集条件判定部51を備える。更に、判定機能22は、収集条件判定部51が収集条件の成立を判定する際の判定対象となる車両データを判定データとして当該収集設定に基づいて設定し、設定された判定データをECUから取得して出力する判定データ出力部50を備える。
【0035】
収集条件判定部51は、判定データ出力部50により出力された判定データに対して、設定された収集条件が成立するか否かを判定する。収集条件判定部51は、収集条件が成立すると判定された場合、成立した収集条件を示す成立条件を、多段保持部53に送信する。判定機能22の詳細については、図6を用いて後述する。
【0036】
収集機能23は、設定部40により決定された収集設定に基づいて収集対象の車両データを収集データとして設定し、設定された収集データをECUから取得して出力する収集データ出力部52を備える。更に、収集機能23は、収集条件の成立前に出力された収集データと収集条件の成立以降に出力された収集データとを、当該収集設定に基づいて保持する多段保持部53を備える。
【0037】
多段保持部53は、収集機能23を構成するECUに含まれるメモリと、収集プログラムの一部とを含んで構成される。多段保持部53を構成するメモリは、揮発性メモリであり、例えばリングバッファである。多段保持部53は、設定部40により設定された収集設定と、収集条件判定部51から送信された成立条件とに基づいて、予め定められた動作周期毎に、保持された収集データを古い順から削除すると共に、収集データ出力部52から出力された収集データを順次保持する。このようにして、多段保持部53は、多段保持部53を構成するメモリに保持された収集データ(以下「保持データ」とも称する)を、当該動作周期毎に更新する。また、多段保持部53は、当該成立条件を受信してから(すなわち、収集条件が成立してから)当該動作周期が所定回だけ経過した場合、保持データの更新を停止して、多段保持部53の保持データを送信待機部60に送信する。収集機能23の詳細については、図7を用いて後述する。
【0038】
待機機能24は、収集データの要求元への送信を待機させる送信待機部60を備える。送信待機部60は、待機機能24を構成するECUに含まれるメモリと、待機プログラムとを含んで構成される。送信待機部60を構成するメモリは、不揮発性メモリであり、例えばFlashメモリである。送信待機部60は、多段保持部53から送信された保持データを、送信待機部60を構成するメモリに格納して、要求元であるサーバ装置3と車両4との通信が確立するまで待機させる。サーバ装置3と車両4との通信が確立すると、送信待機部60を構成するメモリに格納された保持データ(以下「待機データ」とも称する)は、送信部31によって要求元であるサーバ装置3に送信される。待機機能24の詳細については、図8を用いて後述する。
【0039】
図4は、図3に示す通信機能20を構成する通信プログラムのフローチャートである。通信機能20を構成するECUのCPUは、車両4の電源がオンの期間中、図4に示す通信プログラムを予め定められた動作周期毎に繰り返し実行する。
【0040】
ステップS001において、通信機能20の受信部30は、サーバ装置3から新たな収集要求の要求バイト列を受信しているか否かを判定する。新たな要求バイト列を受信していると判定された場合、受信部30は、ステップS002に進む。新たな要求バイト列を受信していないと判定された場合、受信部30は、ステップS003に進む。
【0041】
ステップS002において、受信部30は、受信された要求バイト列をデシリアライズして収集要求を復元する。デシリアライズはシリアライズの逆変換である。復元された収集要求は、サーバ装置3から送信された収集要求と同一の内容となる。受信部30は、復元された収集要求を設定部40に送信し、送信が完了するとステップS003に進む。
【0042】
ステップS003において、通信機能20の送信部31は、送信待機部60が新たな待機データを待機させているか否かを判定する。新たな待機データを待機させていると判定された場合、送信部31は、ステップS004に進む。新たな待機データを待機させていないと判定された場合、送信部31は、図4に示す通信プログラムを終了する。
【0043】
ステップS004において、送信部31は、車両4とサーバ装置3との通信が確立されているか否かを判定する。車両4とサーバ装置3の間は、携帯電話通信網を介して接続されている。送信部31は、車両4とサーバ装置3との間で確認用パケットを送り合うことによって、当該通信が確立されているか否かを判定する。当該通信が確立されていると判定された場合、送信部31は、ステップS005に進む。当該通信が確立されていないと判定された場合、送信部31は、図4に示す通信プログラムを終了する。
【0044】
ステップS005において、送信部31は、送信待機部60の待機データをシリアライズして待機データバイト列を演算する。
【0045】
ステップS006において、送信部31は、演算された待機データバイト列をサーバ装置3に送信する。これにより、サーバ装置3は、車両データを収集することができる。ステップS006の後、送信部31は、図4に示す通信プログラムを終了する。
【0046】
図5は、図3に示す設定機能21を構成する設定プログラムのフローチャートである。設定機能21を構成するECUのCPUは、車両4の電源がオンの期間中、図5に示す設定プログラムを予め定められた動作周期毎に繰り返し実行する。
【0047】
ステップS101において、設定機能21の設定部40は、受信部30から新たな収集要求を受信しているか否かを判定する。新たな収集要求を受信していると判定された場合、設定部40は、ステップS102に進む。新たな収集要求を受信していないと判定された場合、設定部40は、図5に示す設定プログラムを終了する。
【0048】
ステップS102において、設定部40は、受信された収集要求から、収集設定を演算し、決定する。設定部40は、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足している場合、多段保持部53の収集データの保持数を、収集要求に含まれる設定値から変更して収集設定を決定する。設定部40は、決定された収集設定を、判定データ出力部50、収集条件判定部51、収集データ出力部52及び多段保持部53に送信する。これにより、車両データ収集装置5は、管理者設定に含まれる範囲に応じて選出された複数の車両の仕様(特に各ECUの仕様)が異なる場合であっても、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集機能23の収集プログラムが実行可能となる。よって、車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができる。ステップS102の後、設定部40は、図5に示す設定プログラムを終了する。
【0049】
図6は、図3に示す判定機能22を構成する判定プログラムのフローチャートである。判定機能22を構成するECUのCPUは、車両4の電源がオンの期間中、図6に示す判定プログラムを予め定められた動作周期毎に繰り返し実行する。
【0050】
ステップS201において、判定機能22の判定データ出力部50は、設定部40から新たな収集設定を受信しているか否かを判定する。新たな収集設定を受信していると判定された場合、判定データ出力部50は、ステップS202に進む。新たな収集設定を受信していないと判定された場合、判定データ出力部50は、ステップS204に進む。
【0051】
ステップS202において、判定データ出力部50は、受信された収集設定に基づいて判定データを設定する。具体的には、判定データ出力部50は、判定機能22を構成するECUの制御信号において、収集設定と合致する制御信号を特定する。そして、判定データ出力部50は、特定された制御信号を、収集条件判定部51が収集条件の成立を判定する際の判定対象となる車両データとして、判定データに設定する。
【0052】
ステップS203において、判定機能22の収集条件判定部51は、受信された収集設定に基づいて収集条件を設定する。具体的には、収集条件判定部51は、収集設定と合致するように判定データの判定条件式を特定し、特定された判定条件式を収集条件に設定する。
【0053】
ステップS204において、判定データ出力部50は、判定データをECUから取得して収集条件判定部51に出力する。具体的には、判定データ出力部50は、判定機能22を構成するECUの制御信号において、設定された判定データと合致する制御信号を取得する。そして、判定データ出力部50は、取得された制御信号を判定データとして収集条件判定部51に出力する。
【0054】
ステップS205において、収集条件判定部51は、設定された収集条件が成立するか否かを判定する。具体的には、収集条件判定部51は、判定データ出力部50から出力された判定データが、特定された判定条件式を満たすか否かを判定することによって、収集条件が成立するか否かを判定する。収集条件が成立すると判定された場合、収集条件判定部51は、ステップS206に進む。収集条件が成立しないと判定された場合、収集条件判定部51は、図6に示す判定プログラムを終了する。なお、収集条件は複数設定される場合がある。この場合、収集条件判定部51は、設定された何れかの収集条件が成立すると判定された場合、ステップS206に進み、設定された何れも収集条件が成立しないと判定された場合、図6に示す判定プログラムを終了する。
【0055】
ステップS206において、収集条件判定部51は、成立した収集条件を示す成立条件を、多段保持部53に送信する。ステップS206の後、収集条件判定部51は、図6に示す判定プログラムを終了する。
【0056】
図7は、図3に示す収集機能23を構成する収集プログラムのフローチャートである。収集機能23を構成するECUのCPUは、車両4の電源がオンの期間中、図7に示す収集プログラムを予め定められた動作周期毎に繰り返し実行する。
【0057】
ステップS301において、収集機能23の収集データ出力部52は、設定部40から新たな収集設定を受信しているか否かを判定する。新たな収集設定を受信していると判定された場合、収集データ出力部52は、ステップS302に進む。新たな収集設定を受信していないと判定された場合、収集データ出力部52は、ステップS304に進む。
【0058】
ステップS302において、収集データ出力部52は、受信された収集設定に基づいて収集データを設定する。具体的には、収集データ出力部52は、収集機能23を構成するECUの制御信号において、収集設定と合致する制御信号を特定する。そして、収集データ出力部52は、特定された制御信号を、収集対象の車両データとして収集データに設定する。
【0059】
ステップS303において、収集機能23の多段保持部53は、受信された収集設定に基づいて、設定された収集データを保持する多段保持部53の保持動作を設定する。具体的には、多段保持部53は、受信された収集設定に基づいて、多段保持部53に保持される収集データの数を設定する。多段保持部53に保持される収集データの数は、収集条件の成立前に出力された収集データを多段保持部53に保持する数と、収集条件の成立以降に出力された収集データを多段保持部53に保持する数との合計である。
【0060】
受信部30から送信される収集要求は、収集条件の成立前に出力された収集データを多段保持部53に保持する数に関する第1設定値と、収集条件の成立以降に出力された収集データを多段保持部53に保持する数に関する第2設定値と、を含む。
【0061】
収集条件の成立前に出力された収集データが多段保持部53に保持される数は、収集機能23を構成するECUのCPUの動作周期を収集条件の成立時(成立条件の受信時)から何回分遡った時までに出力された収集データを多段保持部53に保持させるのかによって規定される。同様に、収集条件の成立以降に出力された収集データが多段保持部53に保持される数は、収集機能23を構成するECUのCPUの動作周期が収集条件の成立時(成立条件の受信時)から何回分経過した時までに出力される収集データを多段保持部53に保持させるのかによって規定される。そこで、収集要求に含まれる第1設定値には、収集条件の成立時(成立条件の受信時)から遡るべき当該動作周期の回数が規定されている。同様に、収集要求に含まれる第2設定値には、収集条件の成立時(成立条件の受信時)から経過するべき当該動作周期の回数が規定されている。
【0062】
設定部40は、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足する場合、多段保持部53の収集データの保持数を、収集要求に含まれる第1設定値及び第2設定値から変更して収集設定を決定し、決定された収集設定を多段保持部53に送信する。多段保持部53は、受信された収集設定に基づいて、変更された第1設定値が示す動作周期の回数に対応する収集データの数を、収集条件の成立前に出力された収集データの保持数に設定し、変更された第2設定値が示す動作周期の回数に対応する収集データの数を、収集条件の成立以降に出力された収集データの保持数に設定する。
【0063】
ステップS304において、多段保持部53は、収集条件判定部51から新たな成立条件を受信してから、動作周期が、第2設定値に基づき設定された回数だけ経過したか否かを判定する。新たな成立条件を受信してから、動作周期が、第2設定値に基づき設定された回数だけ経過したと判定された場合、多段保持部53は、ステップS305に進む。新たな成立条件を受信していない、又は、新たな成立条件を受信してから、動作周期が、第2設定値に基づき設定された回数だけ経過していないと判定された場合、多段保持部53は、ステップS306に進む。
【0064】
ステップS305において、多段保持部53は、保持データを送信待機部60へ低優先度で送信する。多段保持部53から送信待機部60までCAN(Control Area Network)を介する場合、多段保持部53は、他のメッセージよりも優先順位の低いID(Identifier)を保持データに割り当てる。多段保持部53から送信待機部60までTSN(Time-Sensitive Networking)を介する場合、多段保持部53は、保持データを低優先ウィンドウで送信する。これにより、多段保持部53は、他の通信を圧迫することなく、保持データを送信待機部60へ送信することができる。
【0065】
ステップS306において、収集データ出力部52は、収集データをECUから取得して多段保持部53に出力する。具体的には、収集データ出力部52は、収集機能23を構成するECUの制御信号において、設定された収集データと合致する制御信号を取得する。そして、収集データ出力部52は、取得された制御信号を収集データとして多段保持部53に出力する。
【0066】
ステップS307において、多段保持部53は、多段保持部53の保持データを更新する。具体的には、多段保持部53は、保持された収集データを古い順から削除すると共に、収集データ出力部52から出力された収集データを順次保持する。ステップS307の後、多段保持部53は、図7に示す収集プログラムを終了する。
【0067】
図8は、図3に示す待機機能24を構成する待機プログラムのフローチャートである。待機機能24を構成するECUのCPUは、車両4の電源がオンの期間中、図8に示す待機プログラムを予め定められた動作周期毎に繰り返し実行する。
【0068】
ステップS401において、待機機能24の送信待機部60は、多段保持部53から新たな保持データを受信しているか否かを判定する。新たな保持データを受信していると判定された場合、送信待機部60は、ステップS402に進む。新たな保持データを受信していないと判定された場合、送信待機部60は、図8に示す待機プログラムを終了する。
【0069】
ステップS402において、送信待機部60は、送信待機部60を構成するメモリに、受信された保持データを格納して、要求元であるサーバ装置3と車両4との通信が確立するまで、待機データとして待機させる。ステップS402の後、送信待機部60は、図8に示す待機プログラムを終了する。
【0070】
図9は、図3に示す多段保持部53の動作を説明する図である。図9は、収集データとして1種類の車両データのみを収集し、且つ、収集機能23を構成するECUの揮発性メモリが、収集要求の実行に必要な容量を備えている場合の例を示している。
【0071】
上記のように、多段保持部53の収集データの保持数は、収集要求に含まれる第1設定値B1及び第2設定値A1によって規定される。設定部40は、第1設定値B1及び第2設定値A1に基づいて収集設定を決定する。本実施形態では、第1設定値B1が示す動作周期の回数を「B1」とし、第2設定値A1が示す動作周期の回数を「A1」とする。
【0072】
収集条件判定部51から新たな成立条件を受信していない場合、又は、新たな成立条件を受信してから動作周期がA1回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データを受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B1+A1)回分の収集データよりも古い収集データを削除し、新しい収集データを順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データを動作周期(B1+A1)回分だけ保持することになる。
【0073】
収集条件判定部51から新たな成立条件を受信してから動作周期がA1回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件を受信する前の収集データを動作周期B1回分、成立条件を受信した後の収集データを動作周期A1回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件の成立前に出力された収集データを動作周期B1回分だけ収集し、収集条件の成立以降に出力された収集データを動作周期A1回分だけ収集することができる。
【0074】
図10は、図3に示す設定部40が前後優先度に基づいて収集設定を決定した場合の多段保持部53の動作を説明する図である。図10は、収集データとして1種類の車両データのみを収集し、且つ、収集機能23を構成するECUの揮発性メモリが、収集要求の実行に必要な容量を備えていない場合の例を示している。
【0075】
収集要求は、第1設定値B2及び第2設定値A2並びに前後優先度を含む。前後優先度は、多段保持部53において、収集条件の成立前に出力された収集データと、収集条件の成立以降に出力された収集データとの何れを優先して保持するかを設定する情報である。
【0076】
前後優先度は、前方優先と、後方優先と、同率と、を含む。前方優先は、収集条件の成立以降に出力された収集データよりも、収集条件の成立前に出力された収集データを優先して保持することを設定する情報である。後方優先は、収集条件の成立前に出力された収集データよりも、収集条件の成立以降に出力された収集データを優先して保持することを設定する情報である。同率は、収集条件の成立前に出力された収集データよりと、収集条件の成立以降に出力された収集データとに優先関係が無いことを設定する情報である。
【0077】
前後優先度は、車両データの収集目的に応じて設定される。例えば、自動運転の車両からヒヤリハット発生時のセンサデータを収集することで、AIの学習に利用する場合、ヒヤリハットの発生に至るまでの過程が重要であるので、前後優先度は前方優先となるように設定され得る。
【0078】
設定部40は、多段保持部53を構成するECUのメモリの容量、及び、前後優先度に基づいて第1設定値B2及び第2設定値A2の少なくとも1つを変更することによって、多段保持部53の収集データの保持数を変更するよう収集設定を決定する。
【0079】
例えば、多段保持部53を構成するメモリの容量が、動作周期(B2+A2)回分の収集データを保持するには不足しており、且つ、収集要求に含まれる前後優先度が後方優先の場合、設定部40は、第1設定値をB2より少ないB2’に変更して、収集設定を決定する。
【0080】
収集条件判定部51から新たな成立条件を受信していない場合、又は、新たな成立条件を受信してから動作周期がA2回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データを受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B2’+A2)回分の収集データよりも古い収集データを削除し、新しい収集データを順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データを動作周期(B2’+A2)回分だけ保持することになる。
【0081】
収集条件判定部51から新たな成立条件を受信してから動作周期がA2回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件を受信する前の収集データを動作周期B2’回分、成立条件を受信した後の収集データを動作周期A2回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件の成立前に出力された収集データを動作周期B2’回分だけ収集し、収集条件の成立以降に出力された収集データを動作周期A2回分だけ収集することができる。
【0082】
また、例えば、多段保持部53を構成するメモリの容量が、動作周期(B2+A2)回分の収集データを保持するには不足しており、且つ、収集要求に含まれる前後優先度が前方優先の場合、設定部40は、第2設定値をA2より少ないA2’に変更して、収集設定を決定する。
【0083】
収集条件判定部51から新たな成立条件を受信していない場合、又は、新たな成立条件を受信してから動作周期がA2’回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データを受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B2+A2’)回分の収集データよりも古い収集データを削除し、新しい収集データを順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データを動作周期(B2+A2’)回分だけ保持することになる。
【0084】
収集条件判定部51から新たな成立条件を受信してから動作周期がA2’回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件を受信する前の収集データを動作周期B2回分、成立条件を受信した後の収集データを動作周期A2’回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件の成立前に出力された収集データを動作周期B2回分だけ収集し、収集条件の成立以降に出力された収集データを動作周期A2’回分だけ収集することができる。
【0085】
また、例えば、多段保持部53を構成するメモリの容量が、動作周期(B2+A2)回分の収集データを保持するには不足しており、且つ、収集要求に含まれる前後優先度が同率の場合、設定部40は、第1設定値をB2より少ないB2’’に変更し、第2設定値をA2より少ないA2’’に変更して、収集設定を決定する。
【0086】
収集条件判定部51から新たな成立条件を受信していない場合、又は、新たな成立条件を受信してから動作周期がA2’’回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データを受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B2’’+A2’’)回分の収集データよりも古い収集データを削除し、新しい収集データを順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データを動作周期(B2’’+A2’’)回分だけ保持することになる(B2’’=A2’’)。
【0087】
収集条件判定部51から新たな成立条件を受信してから動作周期がA2’’回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件を受信する前の収集データを動作周期B2’’回分、成立条件を受信した後の収集データを動作周期A2’’回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件の成立前に出力された収集データを動作周期B2’’回分だけ収集し、収集条件の成立以降に出力された収集データを動作周期A2’’回分だけ収集することができる。
【0088】
このように、車両データの収集要求は、車両データの収集目的に応じて前後優先度を含ませることができる。これにより、車両データ収集装置5は、管理者設定に含まれる範囲に応じて選出された複数の車両の仕様が異なり、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足する場合であっても、収集機能23の収集プログラムが実行可能となるよう収集要求の内容を変更して収集設定を決定することができる。よって、車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができる。
【0089】
図11は、図3に示す設定部40が条件優先度に基づいて収集設定を決定した場合の多段保持部53の動作を説明する図である。図11は、収集条件C31の成立に伴って成立条件C31を受信時に収集データD31が出力され、収集条件C32の成立に伴って成立条件C32を受信時に収集データD32が出力され、且つ、収集機能23を構成するECUの揮発性メモリが、収集要求の実行に必要な容量を備えていない場合の例を示している。
【0090】
収集要求は、収集データD31向けとして、第1設定値B31及び第2設定値A31並びに前後優先度を含み、収集データD32向けとして、第1設定値B32及び第2設定値A32並びに前後優先度を含む。更に、収集要求は、条件優先度を含む。条件優先度は、多段保持部53において、複数の収集条件のうち何れの収集条件を優先して収集データを保持するかを設定する情報である。
【0091】
条件優先度は、車両データの収集目的に応じて設定される。例えば、成立条件C32に比べて成立条件C31の発生頻度が低い場合、条件優先度は、成立条件C31優先となるように設定され得る。
【0092】
設定部40は、多段保持部53を構成するメモリの容量、及び、条件優先度に基づいて第1設定値B31,B32及び第2設定値A31,A32の少なくとも1つを変更することによって、多段保持部53の収集データD31,D32の保持数を変更するよう収集設定を決定する。
【0093】
例えば、多段保持部53を構成するメモリの容量が、動作周期(B31+A31)回分の収集データD31と、動作周期(B32+A32)回分の収集データD32と、を保持するには不足しており、且つ、収集要求に含まれる条件優先度が成立条件C31であり、収集データD32向けの前後優先度が後方優先の場合、設定部40は、収集データD32向けの第1設定値をB32より少ないB32’に変更して、収集設定を決定する。なお、設定部40は、収集データD32向けの第2設定値はA32のまま変更せず、収集データD31向けの第1設定値はB31のまま変更せず、収集データD31向けの第2設定値はA31のまま変更せずに、収集設定を決定する。
【0094】
収集条件判定部51から新たな成立条件C31を受信していない場合、又は、新たな成立条件C31を受信してから動作周期がA31回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データD31を受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B31+A31)回分の収集データD31よりも古い収集データD31を削除し、新しい収集データD31を順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データD31を動作周期(B31+A31)回分だけ保持することになる。
【0095】
収集条件判定部51から新たな成立条件C31を受信してから動作周期がA31回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件C31を受信する前の収集データD31を動作周期B31回分、成立条件C31を受信した後の収集データD31を動作周期A31回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件C31の成立前に出力された収集データD31を動作周期B31回分だけ収集し、収集条件C31の成立以降に出力された収集データD31を動作周期A31回分だけ収集することができる。
【0096】
一方、収集条件判定部51から新たな成立条件C32を受信していない場合、又は、新たな成立条件C32を受信してから動作周期がA32回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データD32を受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B32’+A32)回分の収集データD32よりも古い収集データD32を削除し、新しい収集データD32を順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データD32を動作周期(B32’+A32)回分だけ保持することになる。
【0097】
収集条件判定部51から新たな成立条件C32を受信してから動作周期がA32回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件C32を受信する前の収集データD32を動作周期B32’回分、成立条件C32を受信した後の収集データD32を動作周期A32回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件C32の成立前に出力された収集データD32を動作周期B32’回分だけ収集し、収集条件C32の成立以降に出力された収集データD32を動作周期A32回分だけ収集することができる。
【0098】
また、例えば、多段保持部53を構成するメモリの容量が、動作周期(B31+A31)回分の収集データD31と、動作周期(B32+A32)回分の収集データD32と、を保持するには不足しており、且つ、収集要求に含まれる条件優先度が成立条件C32であり、収集データD31向けの前後優先度が前方優先の場合、設定部40は、収集データD31向けの第2設定値をA31より少ないA31’に変更して、収集設定を決定する。なお、設定部40は、収集データD31向けの第1設定値はB31のまま変更せず、収集データD32向けの第1設定値はB32のまま変更せず、収集データD32向けの第2設定値はA32のまま変更せずに、収集設定を決定する。
【0099】
収集条件判定部51から新たな成立条件C31を受信していない場合、又は、新たな成立条件C31を受信してから動作周期がA31回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データD31を受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B31+A31’)回分の収集データD31よりも古い収集データD31を削除し、新しい収集データD31を順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データD31を動作周期(B31+A31’)回分だけ保持することになる。
【0100】
収集条件判定部51から新たな成立条件C31を受信してから動作周期がA31’回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件C31を受信する前の収集データD31を動作周期B31回分、成立条件C31を受信した後の収集データD31を動作周期A31’回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件C31の成立前に出力された収集データD31を動作周期B31回分だけ収集し、収集条件C31の成立以降に出力された収集データD31を動作周期A31’回分だけ収集することができる。
【0101】
一方、収集条件判定部51から新たな成立条件C32を受信していない場合、又は、新たな成立条件C32を受信してから動作周期がA32回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データD32を受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B32+A32)回分の収集データD32よりも古い収集データD32を削除し、新しい収集データD32を順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データD32を動作周期(B32+A32)回分だけ保持することになる。
【0102】
収集条件判定部51から新たな成立条件C32を受信してから動作周期がA32回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件C32を受信する前の収集データD32を動作周期B32回分、成立条件C32を受信した後の収集データD32を動作周期A32回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件C32の成立前に出力された収集データD32を動作周期B32回分だけ収集し、収集条件C32の成立以降に出力された収集データD32を動作周期A32回分だけ収集することができる。
【0103】
このように、車両データの収集要求は、車両データの収集目的に応じて条件優先度を含ませることができる。これにより、車両データ収集装置5は、管理者設定に含まれる範囲に応じて選出された複数の車両の仕様が異なり、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足する場合であっても、収集機能23の収集プログラムが実行可能となるよう収集要求の内容を変更して収集設定を決定することができる。よって、車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができる。
【0104】
図12は、図3に示す設定部40が形式優先度に基づいて収集設定を決定した場合の多段保持部53の動作を説明する図である。図12は、収集条件C31の成立に伴って成立条件C31を受信時に収集データD31が出力され、収集条件C32の成立に伴って成立条件C32を受信時に収集データD32が出力され、且つ、収集機能23を構成するECUの揮発性メモリが、収集要求の実行に必要な容量を備えていない場合の例を示している。
【0105】
収集要求は、収集データD31向けとして、第1設定値B31及び第2設定値A31並びに前後優先度及び形式優先度を含み、収集データD32向けとして、第1設定値B32及び第2設定値A32並びに前後優先度及び形式優先度を含む。更に、収集要求は、条件優先度を含む。形式優先度は、多段保持部53において、第1設定値及び第2設定値によって設定された収集データの保持形式の維持を優先するか否かを設定する情報である。
【0106】
形式優先度は、形式優先と、形式非優先と、を含む。形式優先は、第1設定値及び第2設定値によって設定された収集データの保持形式の維持を優先することを設定する情報である。形式非優先は、第1設定値及び第2設定値によって設定された収集データの保持形式の維持を優先しないことを設定する情報である。
【0107】
形式優先度は、車両データの収集目的に応じて設定される。例えば、車両データをAIの学習に利用する場合、車両データを決められた形式で収集したい場合が多いので、形式優先度は形式優先となるように設定され得る。例えば、車両データをソフトウェアの検証に利用する場合、収集条件が成立時の車両データを漏れなく収集したい場合が多いので、形式優先度は形式非優先となるように設定され得る。
【0108】
設定部40は、多段保持部53を構成するメモリの容量、及び、形式優先度に基づいて第1設定値B31,B32及び第2設定値A31,A32の少なくとも1つを変更することによって、多段保持部53の収集データD31,D32の保持数を変更するよう収集設定を決定する。この際、設定部40は、形式優先度が形式優先であり、且つ、第1設定値B31,B32及び第2設定値A31,A32によって設定された収集データD31,D32の保持形式を維持することが困難である場合、収集データD31,D32を収集対象から除外するよう収集設定を決定する。
【0109】
例えば、多段保持部53を構成するメモリの容量が、動作周期(B31+A31)回分の収集データD31と、動作周期(B32+A32)回分の収集データD32と、を保持するには不足しており、且つ、収集要求に含まれる条件優先度が成立条件C31であり、収集データD32向けの前後優先度が後方優先であり、収集データD32向けの形式優先度が形式非優先である場合、設定部40は、収集データD32向けの第1設定値をB32より少ないB32’に変更して、収集設定を決定する。なお、設定部40は、収集データD32向けの第2設定値はA32のまま変更せず、収集データD31向けの第1設定値はB31のまま変更せず、収集データD31向けの第2設定値はA31のまま変更せずに、収集設定を決定する。
【0110】
収集条件判定部51から新たな成立条件C31を受信していない場合、又は、新たな成立条件C31を受信してから動作周期がA31回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データD31を受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B31+A31)回分の収集データD31よりも古い収集データD31を削除し、新しい収集データD31を順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データD31を動作周期(B31+A31)回分だけ保持することになる。
【0111】
収集条件判定部51から新たな成立条件C31を受信してから動作周期がA31回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件C31を受信する前の収集データD31を動作周期B31回分、成立条件C31を受信した後の収集データD31を動作周期A31回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件C31の成立前に出力された収集データD31を動作周期B31回分だけ収集し、収集条件C31の成立以降に出力された収集データD31を動作周期A31回分だけ収集することができる。
【0112】
一方、収集条件判定部51から新たな成立条件C32を受信していない場合、又は、新たな成立条件C32を受信してから動作周期がA32回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データD32を受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B32’+A32)回分の収集データD32よりも古い収集データD32を削除し、新しい収集データD32を順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データD32を動作周期(B32’+A32)回分だけ保持することになる。
【0113】
収集条件判定部51から新たな成立条件C32を受信してから動作周期がA32回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件C32を受信する前の収集データD32を動作周期B32’回分、成立条件C32を受信した後の収集データD32を動作周期A32回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件C32の成立前に出力された収集データD32を動作周期B32’回分だけ収集し、収集条件C32の成立以降に出力された収集データD32を動作周期A32回分だけ収集することができる。車両データ収集装置5は、形式優先度が形式非優先に設定されることによって、収集条件が成立時の車両データを漏れなく収集することができる。
【0114】
また、例えば、多段保持部53を構成するメモリの容量が、動作周期(B31+A31)回分の収集データD31と、動作周期(B32+A32)回分の収集データD32と、を保持するには不足しており、且つ、収集要求に含まれる条件優先度が成立条件C31であり、収集データD32向けの前後優先度が後方優先であり、収集データD32向けの形式優先度が形式優先である場合、収集データD32向けの第1設定値B32によって設定された収集データD32の保持形式を維持することが困難である。したがって、設定部40は、収集データD32を収集対象から除外し、収集データD31だけを第1設定値B31及び第2設定値A31に基づいて収集するよう収集設定を決定する。
【0115】
収集条件判定部51から新たな成立条件C31を受信していない場合、又は、新たな成立条件C31を受信してから動作周期がA31回だけ経過していない場合、多段保持部53は、新たな収集データD31を受信すると、多段保持部53に保持された動作周期(B31+A31)回分の収集データD31よりも古い収集データD31を削除し、新しい収集データD31を順次保持して、保持データを更新する。多段保持部53は、過去から現在までの収集データD31を動作周期(B31+A31)回分だけ保持することになる。
【0116】
収集条件判定部51から新たな成立条件C31を受信してから動作周期がA31回だけ経過した場合、多段保持部53は、成立条件C31を受信する前の収集データD31を動作周期B31回分、成立条件C31を受信した後の収集データD31を動作周期A31回分だけ保持することになる。多段保持部53は、保持データの更新を停止すると共に、保持データを送信待機部60に低優先度で送信する。これにより、車両データ収集装置5は、収集条件C31の成立前に出力された収集データD31を動作周期B31回分だけ収集し、収集条件C31の成立以降に出力された収集データD31を動作周期A31回分だけ収集することができる。車両データ収集装置5は、形式優先度が形式優先に設定されることによって、決められた形式で収集できる場合にのみ車両データを収集することができるので、収集機能23を構成するECUの揮発性メモリの容量を不必要に圧迫したり、当該ECUと他のECUとの通信を不必要に圧迫したりすることを防ぐことができる。
【0117】
このように、車両データの収集要求は、車両データの収集目的に応じて形式優先度を含ませることができる。これにより、車両データ収集装置5は、管理者設定に含まれる範囲に応じて選出された複数の車両の仕様が異なり、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足する場合であっても、収集機能23の収集プログラムが実行可能となるよう収集要求の内容を変更して収集設定を決定することができる。よって、車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができる。
【0118】
図13は、図3に示す車両データ収集装置5の動作例を説明する図である。図13は、車両データを画像認識AIの学習に利用するため、歩行者へ過剰接近するというヒヤリハット発生時に、カメラ9から受信する画像データを収集する場合の例を示している。
【0119】
自動運転ECU14に実装された判定データ出力部50は、判定データとして歩行者との距離を設定する(ステップS202)。自動運転ECU14に実装された収集条件判定部51は、歩行者との距離が所定距離以下になると歩行者への過剰接近が発生したと判定するように、収集条件を設定する(ステップS203)。自動運転ECU14に実装された収集データ出力部52は、収集データとしてカメラ9から受信する画像データを設定する(ステップS302)。これにより、図13に示す車両データ収集装置5は、歩行者へ過剰接近するというヒヤリハット発生時の画像データを収集することができる。
【0120】
図14は、図3に示す車両データ収集装置5の動作例を説明する図である。図14は、ブレーキ7を制御するソフトウェアの検証に車両データを利用するため、歩行者へ過剰接近するというヒヤリハット発生時に、当該ソフトウェアへの入力であるブレーキ7の目標液圧及び実液圧と、当該ソフトウェアからの出力である液圧シリンダ制御モータの制御電圧と、を収集する場合の例を示している。
【0121】
自動運転ECU14に実装された判定データ出力部50は、判定データとして歩行者との距離を設定する(ステップS202)。自動運転ECU14に実装された収集条件判定部51は、歩行者との距離が所定距離以下になると歩行者への過剰接近が発生したと判定するように、収集条件を設定する(ステップS203)。ブレーキECU12に実装された収集データ出力部52は、収集データとして、ブレーキ7の目標液圧及び実液圧、並びに、液圧シリンダ制御モータの制御電圧を設定する(ステップS302)。これにより、図14に示す車両データ収集装置5は、歩行者へ過剰接近するというヒヤリハット発生時の当該目標液圧及び当該実液圧並びに当該制御電圧を収集することができる。なお、車両データ収集装置5は、図13に示す例と図14に示す例とを同時に実施してもよい。これにより、車両データ収集装置5は、歩行者へ過剰接近するというヒヤリハット発生時の当該目標液圧及び当該実液圧並びに当該制御電圧と、画像データとを同時に収集することができる。
【0122】
図15は、図3に示す車両データ収集装置5の動作例を説明する図である。車両4のセキュリティ強化のため、不正アクセス疑惑が発生した時に車両4の外部から車両4に送信される外部信号データを収集する場合の例を示している。
【0123】
ゲートウェイECU15に実装された判定データ出力部50は、判定データとして、テレマティクスECU16からゲートウェイECU15に送信される外部信号データを設定する(ステップS202)。ゲートウェイECU15に実装された収集条件判定部51は、外部信号データのシグネチャが不正シグニチャにマッチすると不正アクセス疑惑が発生したと判定するように、収集条件を設定する(ステップS203)。ゲートウェイECU15に実装された収集データ出力部52は、収集データとして、テレマティクスECU16からゲートウェイECU15に送信される外部信号データを設定する(ステップS302)。これにより、図15に示す車両データ収集装置5は、不正アクセス疑惑発生時の外部信号データを収集することができる。
【0124】
以上のように、実施形態1の車両データ収集装置5は、収集要求に応じた各ECUへの設定情報である収集設定を決定する設定部40と、収集設定に基づいて車両データの収集条件を設定し、設定された収集条件が成立するか否かを判定する収集条件判定部51と、収集設定に基づいて収集対象の車両データである収集データを設定し、設定された収集データを各ECUから取得して出力する収集データ出力部52と、収集設定に基づいて、収集条件の成立前に出力された収集データと収集条件の成立以降に出力された収集データとを保持する多段保持部53と、多段保持部53に保持された収集データの要求元への送信を待機させる送信待機部60と、送信待機部60に待機された収集データを要求元に送信する送信部31と、を備える。収集要求は、多段保持部53の収集データの保持数に関する設定値を含む。設定部40は、多段保持部53の収集データの保持数を当該設定値から変更して収集設定を決定する。
【0125】
これにより、実施形態1の車両データ収集装置5は、収集データを蓄積する機能を、不揮発性メモリを含んで構成される送信待機部60とは別に、揮発性メモリを含んで構成される多段保持部53として備えることができる。したがって、実施形態1の車両データ収集装置5は、収集データ出力部52から送信待機部60まで収集データを頻繁に送信する必要がなく、収集データの出力元となり得る全てのECUに対して不揮発性メモリを設ける必要がない。加えて、実施形態1の車両データ収集装置5は、多段保持部53の収集データの保持数を、各ECUに応じて、収集要求に含まれる設定値から変更することができる。したがって、実施形態1の車両データ収集装置5は、多段保持部53を構成するメモリの容量に応じて、収集条件が成立する前後の収集データを蓄積することができる。ゆえに、実施形態1の車両データ収集装置5は、管理者設定に含まれる範囲に応じて選出された複数の車両の仕様が異なる場合であっても、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを収集することができる。よって、車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができる。
【0126】
更に、実施形態1の車両データ収集装置5において、多段保持部53は、予め定められた動作周期毎に、保持された収集データを古い順から削除すると共に、収集データ出力部52から出力された収集データを順次保持することによって、多段保持部53に保持された収集データである保持データを動作周期毎に更新する。多段保持部53は、収集条件が成立してから動作周期が所定回だけ経過した場合、保持データの更新を停止して、保持データを送信待機部60に送信する。送信待機部60は、多段保持部53から送信された保持データを格納して、要求元との通信が確立するまで待機させる。送信部31は、要求元との通信が確立した場合、送信待機部60に格納された保持データである送信待機部60の待機データを、要求元に送信する。
【0127】
これにより、実施形態1の車両データ収集装置5は、既存の揮発性メモリ及びプログラムを用いて多段保持部53を構成することができるので、コスト増加を更に抑制することができる。加えて、実施形態1の車両データ収集装置5は、要求元との通信エラーが発生することを抑制することができるので、通信圧迫の発生を更に抑制することができる。よって、実施形態1の車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加の発生を更に抑制することができ、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟且つ容易に収集することができる。
【0128】
更に、実施形態1の車両データ収集装置5において、収集要求は、収集条件の成立前に出力された収集データを多段保持部53に保持する数に関する第1設定値と、収集条件の成立以降に出力された収集データを多段保持部53に保持する数に関する第2設定値と、を含む。設定部40は、多段保持部53の収集データの保持数を第1設定値及び第2設定値から変更して収集設定を決定する。
【0129】
これにより、実施形態1の車両データ収集装置5は、収集条件の成立前に出力された収集データを多段保持部53に保持する数と、収集条件の成立以降に出力された収集データを多段保持部53に保持する数とを、柔軟且つ容易に変更することができる。よって、実施形態1の車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを更に柔軟且つ容易に収集することができる。
【0130】
なお、実施形態1の車両データ収集装置5は、設定部40が収集設定を決定する前に、先行車との車間距離等の、EDR(Event Data Recorder)又はドライブレコーダの利用を補助するような車両データを収集するように初期設定されていてもよい。これにより、実施形態1の車両データ収集装置5は、収集設定が決定される前であっても車両データ収集装置5の機能を有効活用することができる。
【0131】
[実施形態2]
図16を用いて、実施形態2の車両データ収集装置5について説明する。実施形態2の車両データ収集装置5において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0132】
図16は、実施形態2の車両データ収集装置5の概略構成を示す図である。図16に示す破線矢印は、信号又はデータの流れを示している。
【0133】
実施形態2の車両データ収集装置5において、車両データの収集要求の要求元は、車両4に接続された記録装置110である。すなわち、実施形態2の車両データ収集システム1では、要求部100が、サーバ装置3ではなく記録装置110に備えられている。
【0134】
記録装置110は、ゲートウェイECU15に有線で接続される。記録装置110は、CPU、DRAM及びFlashメモリ等を含んで構成され、CPUが記録装置制御プログラムを実行することによって、要求部100の機能を実現する。
【0135】
実施形態2の車両データ収集装置5は、記録装置110から送信された車両データの収集要求を、ゲートウェイECU15に実装された通信機能20の受信部30によって受信し、ゲートウェイECU15に実装された設定機能21の設定部40に送信する。そして、実施形態2の車両データ収集装置5では、自動運転ECU14に実装された判定機能22が収集設定に基づいて判定データ及び収集条件を設定すると共に、自動運転ECU14に実装された収集機能23が収集設定に基づいて収集データを設定し保持する。そして、実施形態2の車両データ収集装置5では、自動運転ECU14に実装された待機機能24の送信待機部60が、保持された収集データを待機させる。そして、実施形態2の車両データ収集装置5では、ゲートウェイECU15に実装された通信機能20の送信部31が、送信待機部60によって待機された収集データを記録装置110に送信する。
【0136】
これにより、実施形態2の車両データ収集装置5は、車両4がサーバ装置3と通信しない場合、又は、車両4とサーバ装置3との通信が確立しない場合であっても、車両データを記録装置110にて収集することができる。よって、実施形態2の車両データ収集装置5は、車両4がサーバ装置3と通信しない場合、又は、車両4とサーバ装置3との通信が確立しない場合であっても、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができる。
【0137】
[実施形態3]
図17を用いて、実施形態3の車両データ収集装置5について説明する。実施形態3の車両データ収集装置5において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0138】
図17は、実施形態3の車両データ収集装置5の概略構成を示す図である。図17に示す破線矢印は、信号又はデータの流れを示している。
【0139】
実施形態3の車両データ収集装置5において、車両データの収集要求の要求元は、車両に搭載されたECUであるIVI(In-Vehicle Infotainment)ECU120である。すなわち、実施形態3の車両データ収集システム1では、要求部100が、サーバ装置3ではなくIVIECU120に備えられている。
【0140】
IVIECU120は、ゲートウェイECU15に有線で接続される。記録装置110は、CPU、DRAM及びFlashメモリ等を含んで構成され、CPUがIVI制御プログラムを実行することによって、要求部100の機能を実現する。
【0141】
実施形態3の車両データ収集装置5は、IVIECU120から送信された車両データの収集要求を、ゲートウェイECU15に実装された通信機能20の受信部30によって受信し、ゲートウェイECU15に実装された設定機能21の設定部40に送信する。そして、実施形態3の車両データ収集装置5では、自動運転ECU14に実装された判定機能22が収集設定に基づいて判定データ及び収集条件を設定すると共に、自動運転ECU14に実装された収集機能23が収集設定に基づいて収集データを設定し保持する。そして、実施形態3の車両データ収集装置5では、自動運転ECU14に実装された待機機能24の送信待機部60が、保持された収集データを待機させる。そして、実施形態3の車両データ収集装置5では、ゲートウェイECU15に実装された通信機能20の送信部31が、送信待機部60によって待機された収集データをIVIECU120に送信する。
【0142】
これにより、実施形態3の車両データ収集装置5は、車両4の外部に新たな装置が設けられていなくても、車両データを車両4に搭載された他のECUにて収集することができるの。よって、実施形態3の車両データ収集装置5は、車両4の外部に新たな装置が設けられていなくても、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができる。
【0143】
[実施形態4]
図18及び図19を用いて、実施形態4の車両データ収集装置5について説明する。実施形態4の車両データ収集装置5において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0144】
図18は、実施形態4の車両データ収集装置5の機能的構成を示す図である。
【0145】
実施形態4の車両データ収集装置5は、判定機能22に先立って車両データの一次収集条件の成立を判定する一次判定機能300を更に備える。
【0146】
一次判定機能300は、パワートレインECU11、ブレーキECU12、ステアリングECU13、自動運転ECU14又はゲートウェイECU15に実装される。一次判定機能300は、パワートレインECU11、ブレーキECU12、ステアリングECU13、自動運転ECU14又はゲートウェイECU15に含まれるCPU、メモリ及び一次判定プログラムによって構成される。
【0147】
一次判定機能300は、設定部40により決定された収集設定に基づいて車両データの一次収集条件を設定し、設定された一次収集条件が成立するか否かの判定を、収集条件判定部51の判定に先立って行う一次収集条件判定部302を備える。更に、一次判定機能300は、一次収集条件判定部302が一次収集条件の成立を判定する際の判定対象となる車両データを一次判定データとして当該収集設定に基づいて設定し、設定された一次判定データをECUから取得して出力する一次判定データ出力部301を備える。
【0148】
一次収集条件判定部302は、一次判定データ出力部301により出力された一次判定データに対して、設定された一次収集条件が成立するか否かを判定する。一次収集条件判定部302は、一次収集条件が成立すると判定された場合、成立した一次収集条件を示す一次成立条件を、収集条件判定部51に送信する。収集条件判定部51は、一次成立条件を受信すると、収集条件が成立するか否かの判定を開始する。
【0149】
図19は、図18に示す車両データ収集装置5の動作例を示す図である。図19は、自動運転の効率向上を図るため、赤信号において電費悪化が発生した場合に、カメラ9から受信する画像データを収集する場合の例を示している。
【0150】
自動運転ECU14に実装された一次判定データ出力部301は、一次判定データとして信号色を設定する。自動運転ECU14に実装された一次収集条件判定部302は、信号色が赤になると赤信号であると判定するように、一次収集条件を設定する。パワートレインECU11に実装された判定データ出力部50は、判定データとしてモータ6の消費電力を設定する。パワートレインECU11に実装された収集条件判定部51は、モータ6の消費電力が所定以上になると電費悪化が発生したと判定するように収集条件を設定し、且つ、一次成立条件として赤信号を受信すると当該消費電力の判定を開始するように、収集条件を設定する。自動運転ECU14に実装された収集データ出力部52は、収集データとして、カメラ9から受信する画像データを設定する。これにより、図19に示す車両データ収集装置5は、赤信号において電費悪化が発生した時の画像データを収集することができる。
【0151】
このように、実施形態4の車両データ収集装置5は、判定機能22に先立って車両データの一次収集条件の成立を判定する一次判定機能300を更に備える。これにより、実施形態4の車両データ収集装置5は、収集条件が成立するか否かの判定に必要な判定データが複数のECUに跨る場合であっても、判定データ自体をECU間で送受信せずに、収集条件が成立するか否かの判定を確実に行うことができる。よって、実施形態4の車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟且つ確実に収集することができる。
【0152】
[実施形態5]
図20を用いて、実施形態5の車両データ収集装置5について説明する。実施形態5の車両データ収集装置5において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0153】
図20は、実施形態5の車両データ収集装置5を説明するタイミングチャートである。
【0154】
実施形態5の車両データ収集装置5は、サーバ装置3からの収集要求R1に基づいて車両データを収集している間に、他のサーバ装置から新たな収集要求R2を受信しても、新たな収集要求R2に応答せずに、収集要求R2を棄却する。そして、実施形態5の車両データ収集装置5は、収集要求R1の要求解除を受信した後に、新たな収集要求R3を受信すると、収集要求R3に基づいて車両データの収集を開始する。すなわち、実施形態5の車両データ収集装置5の設定部40は、要求元から収集要求R1の解除が通知された後に、新たな収集要求R3に応じて車両データを収集するよう、新たな収集設定を決定する。
【0155】
これにより、実施形態5の車両データ収集装置5は、管理者の知らない間に収集設定が上書きされることを防ぐことができる。よって、実施形態5の車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟且つ確実に収集することができる。
【0156】
[実施形態6]
図21を用いて、実施形態6の車両データ収集装置5について説明する。実施形態6の車両データ収集装置5において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0157】
図21は、実施形態6の車両データ収集装置5の機能的構成を示す図である。
【0158】
実施形態6の車両データ収集装置5は、収集機能23が、収集データ出力部52及び多段保持部53の他に、送信中判定部400及び電力供給部401を更に備える。送信中判定部400は、多段保持部53に保持された収集データ(保持データ)が送信待機部60に送信中であるか否かを判定し、判定結果を電力供給部401に送信する。電力供給部401は、多段保持部53を構成するメモリに電力を供給する。電力供給部401は、多段保持部53に保持された収集データが送信待機部60に送信中であることを示す判定結果(以下「送信中判定」とも称する)を送信中判定部400から受信すると、多段保持部53を構成するメモリへの電力供給を継続する。
【0159】
これにより、実施形態6の車両データ収集装置5は、揮発性メモリを含んで構成された多段保持部53に保持された収集データの送信完了前に車両4の電源がオフにされても、多段保持部53への電力供給が途絶えて当該収集データが消失することを防ぐことができる。よって、実施形態6の車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟且つ確実に収集することができる。
【0160】
[実施形態7]
図22を用いて、実施形態7の車両データ収集装置5について説明する。実施形態7の車両データ収集装置5において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0161】
図22は、実施形態7の車両データ収集装置5の機能的構成を示す図である。
【0162】
実施形態7の車両データ収集装置5は、多段保持部53とは異なる他の多段保持部を更に備える。実施形態7の収集データ出力部52は、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足している場合、他の多段保持部に収集データを送信する。
【0163】
例えば、図22は、収集機能23が自動運転ECU14及びパワートレインECU11に実装されており、自動運転ECU14に実装された多段保持部53を構成するメモリの容量が、収集要求の実行に必要な容量に対して不足している場合の例を示している。この場合、実施形態7の車両データ収集装置5では、自動運転ECU14に実装された収集データ出力部52が、パワートレインECU11に実装された多段保持部53に、収集データを送信することができる。
【0164】
これにより、実施形態7の車両データ収集装置5は、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足している場合であっても、車両データを確実に保持して収集することができる。よって、実施形態7の車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟且つ確実に収集することができる。
【0165】
[実施形態8]
図23を用いて、実施形態8の車両データ収集装置5について説明する。実施形態8の車両データ収集装置5において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0166】
図23は、実施形態8の車両データ収集装置5の機能的構成を示す図である。
【0167】
実施形態8の車両データ収集装置5は、収集データ出力部52が、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足している場合、送信待機部60に収集データを送信する。
【0168】
例えば、図23は、収集機能23が自動運転ECU14に実装されており、自動運転ECU14に実装された多段保持部53を構成するメモリの容量が、収集要求の実行に必要な容量に対して不足している場合の例を示している。この場合、実施形態8の車両データ収集装置5では、自動運転ECU14に実装された収集データ出力部52が、送信待機部60に収集データを送信することができる。
【0169】
これにより、実施形態8の車両データ収集装置5は、多段保持部53を構成するメモリの容量が不足している場合であっても、車両データを確実に送信待機部60に送信して収集することができる。よって、実施形態7の車両データ収集装置5は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟且つ確実に収集することができる。
【0170】
[実施形態9]
図24及び図25を用いて、実施形態9の車両データ収集システム1について説明する。実施形態9の車両データ収集システム1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0171】
図24は、実施形態9の車両データ収集システム1の概略構成を示す図である。図24に示す破線矢印は、信号又はデータの流れを示している。
【0172】
実施形態9の車両データ収集装置5は、設定部40によって決定された収集設定を、シリアライズして収集設定バイト列を演算し、携帯電話通信網を介してサーバ装置3に送信する。サーバ装置3は、車両4を含む複数の車両から受信される複数の収集設定バイト列をそれぞれデシリアライズして、複数の収集設定を復元する。そして、サーバ装置3は、複数の収集設定に対して統計処理を行い、統計処理結果を端末装置2に送信する。端末装置2は、サーバ装置3から送信された統計処理結果を可視化し、端末装置2のディスプレイに表示する。
【0173】
図25は、図24に示す車両データ収集システム1の機能的構成を示す図である。
【0174】
実施形態9の車両データ収集装置5は、通信機能20として、設定部40により決定された収集設定をサーバ装置3に送信する収集設定送信部500を更に備える。実施形態9のサーバ装置3は、複数の車両に搭載された車両データ収集装置5から送信された複数の収集設定を受信する収集設定受信部501と、複数の収集設定に対して統計処理を行う統計処理部502と、統計処理部502の統計処理結果を端末装置2に送信する統計処理結果送信部503と、を更に備える。
【0175】
これにより、実施形態9の車両データ収集システム1は、車両データ収集装置5が収集機能23の収集プログラムを実行可能となるように収集要求の内容を変更して収集設定を決定しても、車両4を含む複数車両において内容が変更された複数の収集設定を、車両データの収集が完了する前に予め管理者に把握させることができる。したがって、実施形態9の車両データ収集システム1は、通信圧迫及びコスト増加を抑制しながら、収集条件が成立する前後の車両データを柔軟に収集することができると共に、ユーザの利便性を向上させることができる。
【0176】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0177】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0178】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0179】
1…車両データ収集システム、2…端末装置、3…サーバ装置、4…車両、5…車両データ収集装置、31…送信部、40…設定部、50…判定データ出力部、51…収集条件判定部、52…収集データ出力部、53…多段保持部、60…送信待機部、100…要求部、110…記録装置、120…IVIECU、301…一次判定データ出力部、302…一次収集条件判定部、400…送信中判定部、401…電力供給部、500…収集設定送信部、501…収集設定受信部、502…統計処理部、503…統計処理結果送信部
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