(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007126
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】多層液状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/03 20060101AFI20240111BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240111BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20240111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K8/03
A61K8/31
A61K8/37
A61K8/34
A61K8/19
A61Q1/00
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108365
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 美子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB011
4C083AC011
4C083AC022
4C083AC092
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC332
4C083AC421
4C083AC422
4C083AD042
4C083AD352
4C083DD05
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】振盪時に容易に均一な分散状態となり、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性に優れ、塗布時に塗り広げやすく、肌なじみが早く、塗布後の肌のべたつきがなく、肌の保湿感に優れた多層液状化粧料を提供する。
【解決手段】次の成分(A)~(E):
(A)25℃で液状の炭化水素油、
(B)25℃で液状のトリグリセリド油、
(C)ポリオール、
(D)pH調整剤、
(E)水
を含有し、
水層中の成分(C)の割合が25質量%以上である多層液状化粧料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(E):
(A)25℃で液状の炭化水素油、
(B)25℃で液状のトリグリセリド油、
(C)ポリオール、
(D)pH調整剤、
(E)水
を含有し、
水層中の成分(C)の割合が25質量%以上である多層液状化粧料。
【請求項2】
水層に対する油層の質量割合(油層)/(水層)が0.1~1である請求項1記載の多層液状化粧料。
【請求項3】
水層がpH5以下である請求項1又は2記載の多層液状化粧料。
【請求項4】
成分(D)が、無機酸及びその塩、炭素数6以下の有機酸及びその塩から選ばれる1種又は2種以上を含む請求項1~3のいずれか1記載の多層液状化粧料。
【請求項5】
成分(B)が、少なくとも(b1)炭素数10以下のアルキル鎖を含む25℃で液状のトリグリセリド、及び(b2)炭素数10より大きいアルキル鎖を含む25℃で液状のトリグリセリドを含む、請求項1~4のいずれか1記載の多層液状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は多層液状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
静置時には、複数の層に分離しており、使用時に振盪して均一な分散状態にしてから皮膚に適用する多層型化粧料が知られている。
例えば、特許文献1には、特定のノニオン性界面活性剤、多価アルコール、特定の液状油を含有する多層型化粧料が、振盪時に均一な分散状態となり、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、外観の審美性及び使用感に優れることが記載されている。
また、特許文献2には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、クエン酸ナトリウム、水溶性高分子を含有する二層型化粧料が、違和感がなく、使用前の再乳化性、使用後の二層分離性に優れ、美しい外観で安全性が高いことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-119703号公報
【特許文献2】特開2001-97841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の多層型化粧料は、身体全体の広い範囲に塗り広げる際に、十分にのびず、肌になじみにくいという課題があった。
また、多層型化粧料は、使用する一定時間は均一な分散状態を保持し、使用後は使用前と同じ状態の多層に完全に分離することが求められるが、振盪後、油層と水層が容易に分離せず長時間白濁してしまい、審美性においても課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、液状の炭化水素油と、液状のトリグリセリド油を、特定量のポリオール、pH調整剤を組合わせて用いることにより、振盪時に容易に均一な分散状態となり、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性に優れ、塗布時に塗り広げやすく、肌なじみが早く、塗布後の肌のべたつきがなく、肌の保湿感に優れた多層液状化粧料が得られることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)~(E):
(A)25℃で液状の炭化水素油、
(B)25℃で液状のトリグリセリド油、
(C)ポリオール、
(D)pH調整剤、
(E)水
を含有し、
水層中の成分(C)の割合が25質量%以上である多層液状化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の多層液状化粧料は、振盪時に容易に均一な分散状態となり、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性に優れたものである。また、塗布時に塗り広げやすく、肌なじみが早く、塗布後の肌のべたつきがなく、肌の保湿感に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)は、25℃で液状の炭化水素油である。
液状とは、流動性があることをいい、ペースト状も含まれる。
成分(A)の炭化水素油としては、例えば、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン等が挙げられる。
成分(A)としては、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させる観点から、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィン、軽質流動イソパラフィンから選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、スクワラン、流動パラフィン、流動イソパラフィンから選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、スクワラン、流動イソパラフィンから選ばれる1種以上を含むのがさらに好ましく、スクワランを含むのがよりさらに好ましい。
【0009】
成分(A)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させる観点から、全組成中に4~40質量%であるのが好ましく、10~30質量%がより好ましく、17~25質量%がさらに好ましく、19~23質量%がよりさらに好ましい。
【0010】
成分(B)は、25℃で液状のトリグリセリド油である。
液状とは、流動性があることをいい、ペースト状も含まれる。
成分(B)としては、例えば、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリオレイン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、トリ(パルミチン酸/ステアリン酸)グリセリル、トリ(オレイン酸/リノール酸)グリセリル;オリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドウフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油、月見草油等の植物油などが挙げられる。
【0011】
成分(B)としては、少なくとも(b1)炭素数10以下のアルキル鎖を含む25℃で液状のトリグリセリド、及び(b2)炭素数10より大きいアルキル鎖を含む25℃で液状のトリグリセリドを含むのが好ましい。
成分(b1)としては、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリン等が挙げられる。
成分(b1)としては、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させる観点から、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリンが好ましい。
成分(b1)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させる観点から、全組成中に1~20質量%であるのが好ましく、4~15質量%がより好ましく、4.5~10.7質量%がさらに好ましく、5.2~7.3質量%がよりさらに好ましい。
【0012】
成分(b2)としては、トリミリスチン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン、トリオレイン酸グリセリン、トリイソステアリン酸グリセリン、トリ(パルミチン酸/ステアリン酸)グリセリル、トリ(オレイン酸/リノール酸)グリセリル;オリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ダイズ油、メドウフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油、月見草油等の植物油などが挙げられる。
成分(b2)としては、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させる観点から、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ダイズ油から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、オリーブ油、マカデミアナッツ油から選ばれる1種以上を含むのがより好ましく、マカデミアナッツ油を含むのがさらに好ましい。
成分(b2)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させ、塗布中の適度なマッサージ感を向上させる観点から、全組成中に0.5~10質量%であるのが好ましく、1~5質量%がより好ましく、2.3~3.2質量%がさらに好ましい。
【0013】
成分(B)として、成分(b1)及び(b2)を組合わせて用いる場合、成分(b2)に対する成分(b1)の質量割合(b1)/(b2)は、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させ、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、塗布後の肌の保湿感を向上させる観点から、0.5~10であるのが好ましく、1~4がより好ましく、1.5~3がさらに好ましい。
【0014】
また、本発明において、成分(A)及び成分(b1)の合計量に対する成分(b2)の質量割合(b2)/〔(A)+(b1)〕は、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させ、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、塗布後の肌の保湿感を向上させ、低温保存時の安定性を向上させる観点から、0.03~0.4であるのが好ましく、0.05~0.2がより好ましく、0.08~0.15がさらに好ましい。
【0015】
成分(B)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、塗布中の適度なマッサージ感を向上させる観点から、全組成中に2~24質量%であるのが好ましく、4~17質量%がより好ましく、5~13.3質量%がさらに好ましく、7~11質量%がよりさらに好ましい。
【0016】
本発明において、成分(B)に対する成分(A)の質量割合(A)/(B)は、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させ、塗布時の塗り広げやすさを向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、塗布後の肌の保湿感を向上させる観点から、0.5~5が好ましく、0.7~3がより好ましく、1.9~2.5がさらに好ましい。
【0017】
成分(C)のポリオールは、分子内に2個以上の水酸基をもつ化合物であり、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良い。
2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール等が挙げられる。3価アルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。4価アルコールとしては、ジグリセリン、エリスリトール等が挙げられる。5価以上の多価アルコールとしては、トリグリセリン等のポリグリセリン;グルコース、マルトース、マルチトース、ショ糖、キシリトール、ソルビトール、マルビトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンエチルグルコシド、ポリオキシエチレンプロピレングルコシド等の糖類及び糖アルコールが挙げられる。
【0018】
成分(C)のポリオールとしては、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させ、振盪時に均一な分散状態となる分散性を向上させ、振盪後に静置した際の多層への分離の速さを向上させる観点から、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン及びエリスリトールから選ばれる1種又は2種以上を含むことが好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセリン及びジグリセリンから選ばれる1種又は2種以上を含むことがより好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上を含むことがさらに好ましく、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール及びグリセリンから選ばれる1種又は2種以上を含むことがよりさらに好ましく、グリセリンを含むのがことさら好ましい。
【0019】
成分(C)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させ、塗布時の肌へのなじみの早さを向上させ、塗布後の肌のべたつきを低減させ、塗布後の肌の保湿感を向上させ、振盪時に均一な分散状態となる分散性を向上させ、振盪後に静置した際の多層への分離の速さを向上させる観点から、全組成中に5~50質量%であるのが好ましく、15~40質量%がより好ましく、22~34質量%がさらに好ましく、26~30質量%がよりさらに好ましい。
【0020】
本発明において、水層中の成分(C)の割合は、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させ、振盪時に均一な分散状態となる分散性を向上させ、振盪後に静置した際の油層の均一性を向上させる観点から、25質量%以上であり、25~60質量%が好ましく、28~55質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい。
【0021】
成分(D)のpH調整剤としては、通常の化粧料に用いられるものであればいずれでも良く、無機酸及びその塩、炭素数6以下の有機酸及びその塩が好ましく、炭素数6以下の有機酸及びその塩がより好ましい。
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、リン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含むのがより好ましい。
また、炭素数6以下の有機酸及びそれらの塩としては、水溶性の有機酸及びそれらの塩が好ましく、例えば、炭素数1~6の脂肪酸、ヒドロキシ酸、ジカルボン酸、酸性アミノ酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらのうち、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、酒石酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、アジピン酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上を含むのが好ましく、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、コハク酸及びそれらの塩から選ばれる1種又は2種以上を含むのがより好ましく、クエン酸及びそれらの塩から選ばれる1種以上を含むのがさらに好ましい。
成分(D)のpH調整剤としては、酸とそれらの塩を同時に含むことが好ましく、酸とそれらの塩を含む場合は、塩の含有量に対する酸の含有量の質量割合(酸)/(塩)は、1~5が好ましく、1~3がより好ましく、1~2がさらに好ましく、1~1.5がよりさらに好ましい。
【0022】
成分(D)は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、含有量は、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させる観点から、全組成中に0.015~0.12質量%であるのが好ましく、0.02~0.09質量%がより好ましく、0.05~0.08質量%がさらに好ましい。
【0023】
成分(E)の水の含有量は、振盪時に均一な分散状態となる分散性を向上させる観点から、全組成中に10~60質量%であるのが好ましく、30~50質量%がより好ましく、38~45質量%がさらに好ましい。
【0024】
本発明の多層液状化粧料は、前記成分以外に、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、前記成分以外の油性成分、界面活性剤、ポリオール以外の保湿剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、増粘剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、抗菌剤、防腐剤、制汗剤、薬剤、粉体、色剤、香料、動植物抽出液等を含有することができる。なお、これらの成分は、各剤としての用途に限られず、目的に応じて他の用途として転用、例えば、制汗剤を香料として使用したり、他の用途との兼用、例えば、制汗剤と香料としての効果を奏するものとして使用したりすることもできる。
【0025】
本発明の多層液状化粧料は、所定の成分を適宜混合することによって製造することができ、例えば、全油性成分を混合して油層を調製し、全水性成分を混合して水層を調製し、前記油層及び前記水層を所定の比率で混合することにより、製造することができる。
【0026】
本発明の多層液状化粧料は、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させる観点から、全水層成分に対する全油層成分の質量割合(油層)/(水層)が、0.1~1であるのが好ましく、0.2~0.7がより好ましく、0.35~0.55がさらに好ましい。
【0027】
本発明の多層液状化粧料は、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性を向上させ、振盪時に均一な分散状態となる分散性を向上させ、振盪後に静置した際の油層の均一性を向上させる観点から、水層がpH5以下であるのが好ましく、pH3~5がより好ましく、pH4~5がさらに好ましく、pH4.5~5がよりさらに好ましい。
本発明において、pHは、水層のみのpHのことであり、pHメーターを用い、25℃において、水層を希釈せずそのまま測定される。
【0028】
本発明の多層液状化粧料は、静置時において、各層が透明であるのが好ましい。
透明とは、多層液状化粧料を透明なガラス容器に入れ、背面に文字を置いた際に正面から観察して文字が明瞭に見えることを示す。
【0029】
また、本発明の多層液状化粧料は、液状のものであり、静置時において、いずれの層においても、25℃における粘度が、1mPa・s以上であるのが好ましく、3mPa・s以上がより好ましく、5mPa・s以上がさらに好ましく、500mPa・s以下が好ましく、300mP a・s以下がより好ましく、100mPa・s以下がさらに好ましい。
本発明において、粘度は、B型粘度計(ビスメトロン粘度計:型式VS-A1(芝浦システム製)、ローターNo.1、30回転/分、30秒)を用いて測定される。
【0030】
本発明の多層液状化粧料は、静置時には互いに相溶しない状態で、少なくとも成分(A)及び(B)を含む油層と、少なくとも成分(C)、(D)及び(E)を含む水層を有する、二層以上の多層分離状態を保ち、使用時に振盪することで、均一な分散状態とすることができ、徐々に元の多層分離状態に復帰する化粧料である。例えば、油層-水層からなる二層型化粧料、油層-油層-水層からなる三層型化粧料などが挙げられる。
【0031】
本発明の多層液状化粧料は、少なくとも油層と水層を有するが、この場合、静置時には、容器の開口部側(上側)に油層、容器の底部側(下側)に水層が存在しているようになる。
【0032】
本発明の多層液状化粧料は、外観の審美性に優れ、塗布後の肌のべたつきがなく、保湿感に優れることから、保温、抗老化、美白、パック、マッサージ、サンスクリーン、化粧下地、ファンデーション、リップクリーム、クレンジング料等の皮膚、好ましくは頭皮を除く皮膚、より好ましくは顔、身体、手足等のいずれかに塗布して使用することができ、皮膚化粧料として好適である。
特に、塗り広げやすさ、塗布時の肌なじみの早さに優れる観点から、マッサージ化粧料として好適であり、ボディ用マッサージ化粧料がより好適である。
【実施例0033】
実施例1~9、比較例1~2
表1に示す組成の二層液状化粧料(ボディ用オイル組成物)を製造し、水層のpHを測定するとともに、塗布時の塗り広げやすさ、塗布時の肌なじみの早さ、塗布後の肌のべたつきのなさ、塗布後の肌の保湿感、審美性を評価した。結果を表1に併せて示す。なお、各実施例、比較例の二層液状化粧料はいずれも、二層に分離した状態では、油層、水層とも透明な外観であった。
【0034】
(製造方法)
成分(A)及び(B)を含む油性成分を混合して油層を調製し、成分(C)、(D)及び(E)を含む水性成分を混合して水層を調製した。前記油層と前記水層を混合することにより、二層液状化粧料を製造した。
【0035】
(評価方法)
(1)pH:
pH測定器(堀場ハンディ型D71)を用いて、25℃において電極を水層に投入し、30秒間静置後に測定した。
【0036】
(2)塗布時の塗り広げやすさ、塗布時の肌なじみの早さ、塗布後の肌のべたつきのなさ、塗布後の肌の保湿感:
評価者3名により、各二層液状化粧料を、まず、片腕について手首~上腕・肩までの全体に片手で0.5g塗布し、次に片脚について足先~ひざまでと、ひざ上~ふともも付け根までの各部位に各0.5gを塗布した。その際の、塗布時の塗り広げやすさ、塗布時の肌なじみの早さ、塗布後の肌のべたつきのなさ、塗布後の肌の保湿感を、以下の基準で評価した。結果は、評価者3名の合計の点で示した。
なお、肌なじみの早さとは、二層液状化粧料が、塗布当初は軽く伸ばせ、塗布時間とともに伸ばしている手に抵抗感を感じ、肌と塗布した手の密着感が高くなることを示す。
【0037】
(2-1)塗布時の塗り広げやすさ:
4:塗り広げやすい。
3:やや塗り広げやすい。
2:やや塗り広げにくい。
1:塗り広げにくい。
【0038】
(2-2)塗布時の肌なじみの早さ:
4:肌なじみが早い。
3:肌なじみがやや早い。
2:肌なじみがやや遅い。
1:はだなじみが遅い。
【0039】
(2-3)塗布後の肌のべたつきのなさ:
4:べたつかない。
3:ほとんどべたつかない。
2:ややべたつく。
1:べたつく。
【0040】
(2-4)塗布後の肌の保湿感:
4:保湿感がある。
3:やや保湿感がある。
2:やや保湿感がない。
1:保湿感がない。
【0041】
(3)審美性:
各二層液状化粧料10gを容器(マイティバイアルNo.4、マルエル社製)に入れ、その容器を片手で持ち、上下に10回振って混合後、静置して、どのくらいの時間で分離するかを目視で評価した。なお、分離した状態の水層、油層は、どちらも目視で明らかに透明となった状態のことを示す。また、分離するまでの時間は、10秒単位で示した。1分30秒~5分で分離するのが好ましく、2分~3分で分離するのがより好ましく、2分10秒~2分50秒で分離するのがさらに好ましい。
【0042】
【0043】
処方例1~4
実施例1~9と同様にして、表2に示す組成の二層液状化粧料を製造した。
処方例1~4の二層液状化粧料はいずれも、透明性に優れ、振盪時に容易に均一な分散状態となり、静置時には各層の界面が明瞭に分離し、審美性に優れたものであり、また、塗布時に塗り広げやすく、肌なじみが早く、塗布後の肌のべたつきがなく、肌の保湿感に優れたものである。
【0044】