(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071261
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】肥料組成物
(51)【国際特許分類】
C05G 1/00 20060101AFI20240517BHJP
C05G 5/10 20200101ALI20240517BHJP
【FI】
C05G1/00 F
C05G5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182110
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】390011567
【氏名又は名称】株式会社ハイポネックスジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】平尾 浩介
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061BB01
4H061BB21
4H061BB51
4H061CC15
4H061CC36
4H061DD14
4H061EE44
4H061EE45
4H061EE46
4H061EE52
4H061FF06
4H061FF24
4H061GG26
4H061GG41
4H061GG43
4H061HH03
4H061HH44
4H061KK09
4H061LL22
4H061LL25
4H061LL26
(57)【要約】
【課題】土壌における必須栄養素の富化と、植物に対する適時の必須栄養素の供給とを一度に行うことができる肥料組成物を提供する。
【解決手段】肥料組成物において、堆肥と肥料(ただし、堆肥を除く)とを配合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆肥および肥料(ただし、堆肥を除く)を含有する、肥料組成物。
【請求項2】
前記肥料が、窒素、リンおよびカリウムからなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項3】
前記肥料が、窒素、リンおよびカリウムを含む、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項4】
前記肥料における窒素の濃度が1~20質量%であり、五酸化リン相当のリンの濃度が1~60質量%であり、酸化カリウム相当のカリウムの濃度が1~20質量%である、請求項3に記載の肥料組成物。
【請求項5】
前記肥料がマグネシウムをさらに含み、前記肥料におけるマグネシウムの濃度が、酸化マグネシウム相当の濃度が1~40質量%である、請求項3に記載の肥料組成物。
【請求項6】
前記肥料のpHが6~8である、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項7】
前記肥料が固形状の肥料である、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項8】
前記肥料が緩効性または遅効性の肥料である、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項9】
前記肥料組成物における前記肥料の含有量が、固形分として、5~50質量%である、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項10】
前記肥料組成物における前記堆肥の含有量が、固形分として、15~80質量%である、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項11】
前記肥料組成物における水の含有量が、20質量%超35質量%未満である、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項12】
前記堆肥および前記肥料の一方または両方の少なくとも一部が付着する土壌改良資材(ただし、堆肥および肥料を除く)をさらに含む、請求項1に記載の肥料組成物。
【請求項13】
前記肥料組成物における前記土壌改良資材の含有量が、10~50質量%である、請求項12に記載の肥料組成物。
【請求項14】
固体状の肥料組成物である、請求項1に記載の肥料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
植物の正常な生育のためには、炭素、水素および酸素をはじめとする16~17種の元素(必須栄養素)が必要であることが知られおり、中でも、炭素、水素、酸素、窒素、リンおよびカリウムの6元素は、植物の生育のために多量に必要であることから、必須栄養素の中でも多量一次要素と呼ばれている。
【0002】
これらの多量一次要素のうち、炭素、水素および酸素は生育環境中に水や二酸化炭素として存在することから、植物の生育において人為的な供給を必要としない場合がほとんどである。また、窒素、リン酸およびカリウムは、植物の伸長や肥大に寄与することから、「肥料の三要素」とも呼ばれている。しかしながら、三要素の各元素は、植物の生育に多量に必要であるものの、生育環境中に植物が利用可能な状態ではほとんど存在していないため、植物が利用可能な状態で供給する必要がある。
【0003】
植物が利用可能な状態で窒素、リンおよび/またはカリウムを供給するためには、有機質の堆肥等の緩効性または遅効性の土壌改良資材を用いてこれらの元素を富化した土壌で植物を生育することにより植物にこれらの元素を供給する方法、無機質肥料等の即効性の肥料を用いてこれらの元素を植物に供給する方法等が用いられる。しかしながら、緩効性または遅効性の土壌改良資材は、効果が長期にわたり持続するという長所がある反面、即効性が低く、また必須栄養素のすべてを十分に補うことができない場合がある等の短所がある。一方で、無機質肥料等の即効性の肥料は、水に溶けやすく即効性であるために適時に効果を得ることができるという長所がある反面、流れやすく効果の持続性に乏しく、また有機物の量が少ないため、長期間使用すると土壌障害を引き起こす場合がある等の短所がある。
【0004】
このように、いずれの方法もそれぞれ様々な長所を有する一方で、短所も有することから、多くの場合にはこれらの方法が組み合わせて用いられる。すなわち、植物の植え付け前や植え替え前に緩効性または遅効性の土壌改良資材を用いて土壌における必須栄養素を富化し、さらに植え付け後に即効性の肥料を用いて不足している必須栄養素を適宜供給するのが現在の一般的な方法である。
【0005】
しかしながら、このような方法では、異なる時点で少なくとも2回にわたり必須栄養素を供給する工程が必要となることから、人的コスト、経済的コスト、時間的コストが生じるという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、土壌における必須栄養素の富化と、植物に対する適時の必須栄養素の供給とを一度に行うことが技術的課題として存在する。
【0007】
したがって、本発明の目的は、そのような土壌における必須栄養素の富化と、植物に対する適時の必須栄養素の供給とを一度に行うことができる肥料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究した結果、肥料組成物に堆肥と堆肥を除く肥料とを配合することにより、上述した課題を解決できるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0009】
[1]堆肥および肥料(ただし、堆肥を除く)を含有する、肥料組成物。
[2]前記肥料が、窒素、リンおよびカリウムからなる群から選択される1種以上を含む、[1]に記載の肥料組成物。
[3]前記肥料が、窒素、リンおよびカリウムを含む、[1]または[2]に記載の肥料組成物。
[4]前記肥料における窒素の濃度が1~20質量%であり、五酸化リン相当のリンの濃度が1~60質量%であり、酸化カリウム相当のカリウムの濃度が1~20質量%である、[3]に記載の肥料組成物。
[5]前記肥料がマグネシウムをさらに含み、前記肥料におけるマグネシウムの濃度が、酸化マグネシウム相当の濃度が1~40質量%である、[3]または[4]に記載の肥料組成物。
[6]前記肥料のpHが6~8である、[1]~[5]のいずれかに記載の肥料組成物。
[7]前記肥料が固形状の肥料である、[1]~[6]のいずれかに記載の肥料組成物。
[8]前記肥料が緩効性または遅効性の肥料である、[1]~[7]のいずれかに記載の肥料組成物。
[9]前記肥料組成物における前記肥料の含有量が、固形分として、5~50質量%である、[1]~[8]のいずれかに記載の肥料組成物。
[10]前記肥料組成物における前記堆肥の含有量が、固形分として、15~80質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載の肥料組成物。
[11]前記肥料組成物における水の含有量が、20質量%超35質量%未満である、[1]~[10]のいずれかに記載の肥料組成物。
[12]前記堆肥および前記肥料の少なくとも一部が付着する土壌改良資材(ただし、堆肥および肥料を除く)をさらに含む、[1]~[11]のいずれかに記載の肥料組成物。
[13]前記肥料組成物における前記土壌改良資材の含有量が、10~50質量%である、[12]に記載の肥料組成物。
[14]固体状の肥料組成物である、[1]~[13]のいずれかに記載の肥料組成物。
【本発明の効果】
【0010】
本発明によれば、土壌における必須栄養素の富化と、植物に対する適時の必須栄養素の供給とを一度に行うことができる肥料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[肥料組成物]
本発明の肥料組成物は、堆肥および堆肥を除く肥料を有効成分として含む。以下、各成分について具体的に説明する。なお、本明細書において「固形分」とは、対象物から水を除いた固形成分(不揮発性成分)を指す。
【0012】
(堆肥)
肥料組成物において、堆肥は、日本国の肥料の品質の確保等に関する法律において「特殊肥料」に分類される肥料であれば特に制限なく用いることができる。すなわち、堆肥としては、同法の「特殊肥料」に分類される堆肥だけでなく、「特殊肥料」に分類される他の肥料も用いることができる。
【0013】
肥料組成物において、好ましくは、堆肥としては、有機質資材を堆積させ、発酵、腐熟させて得られる肥料(すなわち、日本国の肥料の品質の確保等に関する法律において「特殊肥料」として掲げられる堆肥)が用いられる有機質資材としては、植物由来の有機質資材および動物由来の有機質資材が挙げられ、これらの一方を単独で用いてもよく、両方を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
植物由来の有機質資材としては、植物の全部および/または部分を用いることができ、植物の部分としては、例えば、根、花、葉、枝、幹、樹皮(バーク)、種子、種皮等が挙げられる。具体的な植物由来の有機質資材を用いた堆肥としては、例えば、バーク堆肥、もみ殻堆肥、剪定枝堆肥、腐葉土等が挙げられる。一般的に、植物由来の有機質資材を用いた堆肥は多くの空隙を有することから、肥料組成物に植物由来の有機質資材を用いた堆肥を配合することにより、肥料組成物に良好な通気性、排水性、保水性を付与することができる。そして、肥料組成物がこれらの特性を有することにより、肥料組成物が適用される土壌においてこれらの特性を付与することができる。
【0015】
動物由来の有機質資材としては、動物の全部および/または部分を用いることができ、さらに動物の排泄物(ふん尿)を用いることもできる。動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等の家畜動物が挙げられる。具体的な動物由来の有機質資材を用いた堆肥としては、例えば、牛ふん堆肥、豚ふん堆肥、鶏ふん堆肥等が挙げられる。一般的に、動物由来の有機質資材を用いた堆肥は窒素、リンおよび/またはカリウムを多量に含有することから、肥料組成物に動物由来の有機質資材を用いた堆肥を配合することにより、肥料組成物の窒素、リンおよび/またはカリウムの含有量を増大させることができる。そして、これらの必須栄養素を多量に含有する肥料組成物を土壌に適用することにより、土壌におけるこれらの必須栄養素を効率的に富化することができる。
【0016】
堆肥は、植物の必須栄養素である17元素、窒素、リン、カリウム、カルシウム、酸素、水素、炭素、マグネシウム、硫黄、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、銅、塩素およびニッケル(以下、単に「必須栄養素」ともいう。)からなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む。堆肥は、上述した必須栄養素を、好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より一層好ましくは4種以上、特に好ましくは5種以上含む。必須栄養素の中でも、窒素、リンおよびカリウムは、植物の伸長や肥大に寄与し、植物の生育に特に重要であることから、堆肥は、これらの元素を好ましくは1種以上、より好ましくは2種以上、より一層好ましくは3種すべてを含む。
【0017】
堆肥における窒素の含有量は、後述する堆肥を除く肥料における窒素の含有量、肥料組成物における所望の窒素の総含有量、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。堆肥における窒素の含有量は、堆肥の固形分に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.3~10質量%、より一層好ましくは0.5~5質量%である。
【0018】
堆肥における炭素と窒素との割合(C/N比)は特に制限されず、好ましくは1~40であり、より好ましくは3~25であり、より一層好ましくは5~20である。
【0019】
堆肥におけるリンの含有量は、後述する堆肥を除く肥料におけるリンの含有量、肥料組成物における所望のリンの総含有量、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。堆肥におけるリンの含有量は、五酸化リン(P2O5)相当の含有量として、堆肥の固形分に対して、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは0.3~15質量%、より一層好ましくは0.5~10質量%である。
【0020】
堆肥におけるカリウムの含有量は、後述する堆肥を除く肥料におけるカリウムの含有量、肥料組成物における所望のカリウムの総含有量、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。堆肥におけるカリウムの含有量は、酸化カリウム(K2O)相当の含有量として、堆肥の固形分に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.2~10質量%、より一層好ましくは0.3~5質量%である。
【0021】
堆肥に含有される各必須栄養素の効果の現れ方(土壌への溶出性)は特に制限されず、堆肥における各必須栄養素の含有量、後述する堆肥を除く肥料における各必須栄養素の含有量や溶出性、肥料組成物が適用される土壌の性質、生育対象となる植物の種類等に応じて、即効性、遅効性、緩効性等適宜設定することができる。堆肥が窒素、リンおよび/またはカリウムを含有する場合、好ましくはそれらの少なくとも一種の元素は緩効性または遅効性である。
【0022】
堆肥は、上述した必須栄養素に加えて、他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、ナトリウム、ケイ素、セレン、コバルト、アルミニウム、バナジウム等が挙げられる。
【0023】
堆肥における水の含有量は、後述する堆肥を除く肥料における水の含有量、肥料組成物における所望の水の総含有量等に応じて適宜設定することができる。例えば、肥料組成物の形状が固形状である場合、堆肥と堆肥を除く肥料とを混合し造粒する観点から、堆肥における水の含有量は、堆肥の総質量に対して、好ましくは30~80質量%、より好ましくは40~65質量%、より一層好ましくは40~50質量%である。
【0024】
肥料組成物における堆肥の含有量は、堆肥の組成、後述する堆肥を除く肥料の組成、肥料組成物における所望の組成、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。肥料組成物における堆肥の含有量は、堆肥の固形分として、好ましくは15~80質量%、より好ましくは20~70質量%、より一層好ましくは30~60質量%である。
【0025】
上述したように、肥料組成物が堆肥を含有することにより、肥料組成物が土壌に必須栄養素を供給してその化学性を改善することができる。
【0026】
さらに、堆肥は有機質資材を含有することから、そのような堆肥を含有する肥料組成物は、土壌中に生息する生物(例えば、微生物等)の代謝の基質として有機質資材を供給し、そのような生物の成長、増殖を促進し、土壌の生物相を豊かにすることができる。その結果、堆肥を含有する肥料組成物は、土壌中の有害な生物(例えば、害虫、病原菌等)の繁殖を抑制して、土壌の生物性を改善することができる。
【0027】
さらに、堆肥、特に植物由来の有機質資材を用いた堆肥は一般的に多くの空隙を有することから、肥料組成物が堆肥を含有することにより、肥料組成物が適用される土壌に良好な通気性、排水性、保水性を付与して、土壌の物理性を改善することができる。
【0028】
堆肥は上述した必須栄養素やその他の元素を含む有機資材を適宜選択して調製したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
【0029】
(肥料)
肥料組成物は、上述した堆肥に加えて、上述した堆肥を除く肥料(以下、単に「肥料」ともいう。)を含む。また、肥料には、日本国の肥料取締法において「普通肥料」に分類される肥料だけでなく、「特殊肥料」に分類される肥料も包含される。肥料は有機質肥料であってもよく、無機質肥料であってもよく、またこれらの一方を単独で用いてもよく、両方を組み合わせて用いてもよい。肥料としては、好ましくは無機質肥料が単独で用いられる。
【0030】
肥料は、上述した必須栄養素である17元素から選択される少なくとも1種の元素を含む。肥料は、上述した必須栄養素を、好ましくは2種以上、より好ましくは3種以上、より一層好ましくは4種以上、特に好ましくは5種以上含む。また、肥料は、窒素、リンおよびカリウムからなる群から選択される元素を好ましくは1種以上、より好ましくは2種以上、より一層好ましくは3種すべてを含む。
【0031】
肥料における窒素の含有量は、上述した堆肥における窒素の含有量、肥料組成物における所望の窒素の総含有量、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。肥料における窒素の含有量は、肥料の固形分に対して、好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~15質量%、より一層好ましくは5~10質量%である。肥料において、窒素は、好ましくはその一部がアンモニア態窒素(アンモニウム塩)として含有されている。
【0032】
肥料におけるリンの含有量は、上述した堆肥におけるリンの含有量、肥料組成物における所望のリンの総含有量、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。肥料におけるリンの含有量は、五酸化リン(P2O5)相当の含有量として、肥料の固形分に対して、好ましくは1~60質量%、より好ましくは10~55質量%、より一層好ましくは20~50質量%である。肥料において、リンは、好ましくは少なくともその一部がく溶性リン酸の形態で含有されており、別の一部が水溶性リン酸の形態で含有されている。
【0033】
肥料において、く溶性リン酸および水溶性リン酸のそれぞれの形態でリンが含有されている場合、く溶性リン酸と水溶性リン酸との質量比は、上述した堆肥におけるリンの含有量や形態、肥料組成物が適用される土壌の性質、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。肥料におけるく溶性リン酸と水溶性リン酸との質量比(く溶性リン酸の質量:水溶性リン酸の質量)は、好ましくは1:1~15:1、より好ましくは2:1~12:1、より一層好ましくは3:1~10:1、特に好ましくは4:1~8:1である。肥料におけるく溶性リン酸と水溶性リン酸との質量比が上述した範囲にある場合、肥料の緩効性の程度が十分となり、肥料に含有されるリンを、肥料組成物の適用後、継続的に緩やかに植物に供給することがでる。
【0034】
肥料におけるカリウムの含有量は、上述した堆肥におけるカリウムの含有量、肥料組成物における所望のカリウムの総含有量等に応じて適宜設定することができる。肥料におけるカリウムの含有量は、酸化カリウム(K2O)相当の含有量として、肥料の固形分に対して、好ましくは1~20質量%、より好ましくは2~15質量%、より一層好ましくは5~10質量%である。肥料において、カリウムは、好ましくは少なくともその一部がく溶性カリウムの形態で含有されており、別の一部が水溶性カリウムの形態で含有されている。
【0035】
肥料において、く溶性カリウムおよび水溶性カリウムのそれぞれの形態でカリウムが含有されている場合、く溶性カリウムと水溶性カリウムとの質量比は、上述した堆肥におけるカリウムの含有量や形態、肥料組成物が適用される土壌の性質、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。肥料におけるく溶性カリウムと水溶性カリウムとの質量比(く溶性カリウムの質量:水溶性カリウムの質量)は、好ましくは0.1:1~2:1、より好ましくは0.3:1~1.5:1、より一層好ましくは0.4:1~1.2:1、特に好ましくは0.6:1~1:1である。肥料におけるく溶性カリウムと水溶性カリウムとの質量比が上述した範囲にある場合、肥料の緩効性の程度が十分となり、肥料に含有されるカリウムを、肥料組成物の適用後、継続的に緩やかに植物に供給することがでる。
【0036】
肥料は、窒素、リンおよび/またはカリウムに加えて、カルシウム、マグネシウムおよび硫黄からなる群から選択される元素を好ましく1種以上、より好ましくは2種以上、より一層好ましくは3種すべてをさらに含む。
【0037】
肥料におけるマグネシウムの含有量は、上述した堆肥におけるマグネシウムの含有量、肥料組成物における所望のマグネシウムの総含有量等に応じて適宜設定することができる。肥料におけるマグネシウムの含有量は、酸化マグネシウム(MgO)相当の含有量として、肥料の固形分に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~30質量%、より一層好ましくは10~20質量%である。肥料において、マグネシウムは、好ましくは少なくともその一部がく溶性マグネシウムとして含有されており、別の一部が水溶性マグネシウムの形態で含有されている。
【0038】
肥料において、く溶性マグネシウムおよび水溶性マグネシウムのそれぞれの形態でマグネシウムが含有されている場合、く溶性マグネシウムと水溶性マグネシウムとの質量比は、上述した堆肥におけるマグネシウムの含有量や形態、肥料組成物が適用される土壌の性質、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。肥料におけるく溶性マグネシウムと水溶性マグネシウムとの質量比(く溶性マグネシウムの質量:水溶性マグネシウムの質量)は、好ましくは3:1~30:1、より好ましくは5:1~25:1、より一層好ましくは10:1~20:1である。
【0039】
肥料は、上述した必須栄養素である17元素に加えて、他の元素を含んでいてもよい。他の元素としては、例えば、ナトリウム、ケイ素、コバルト、アルミニウム等が挙げられる。
【0040】
肥料は、上述した必須栄養素およびその他の元素の他に、肥料の調製において通常用いられる成分をさらに含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、日本国の肥料の品質確保等に関する法律施行規則第四条第一項第四号に記載される材料(例えば、固結防止材、沈殿防止材、組成均一化促進材、粒状化促進材、着色材等)、界面活性剤等が挙げられる。
【0041】
肥料に含有される各必須栄養素の効果の現れ方(土壌への溶出性)は特に制限されず、肥料における各必須栄養素の含有量、上述した堆肥における各必須栄養素の含有量や溶出性、肥料組成物が適用される土壌の性質等に応じて、即効性、遅効性、緩効性等適宜設定することができる。肥料が窒素、リンおよび/またはカリウムを含有する場合、好ましくはそれらの少なくとも一種の元素の少なくとも一部は緩効性または遅効性であり、別の一部は即効性である。このように、肥料に含有される窒素、リンおよび/またはカリウムの少なくとも一部が緩効性または遅効性であり、別の一部が即効性であることにより、肥料組成物の適用直後からこれらの必須栄養素が植物を供給することができるだけでなく、適用後、継続的に緩やかにこれらの必須要素を植物に供給することができる。
【0042】
肥料における水の含有量は、上述した堆肥の水の含有量、肥料組成物における所望の水の総含有量等に応じて適宜設定することができる。例えば、肥料組成物の形状が固形状である場合、堆肥と肥料とを混合し造粒する観点から、肥料における水の含有量は、肥料の総質量に対して、好ましくは5質量%以下、より好ましくは5質量%未満、より一層好ましくは3質量%未満、特に好ましくは1質量%未満である。
【0043】
肥料組成物における肥料の含有量は、肥料の組成、上述した堆肥の組成、肥料組成物における所望の組成、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。肥料組成物における肥料の含有量は、肥料の固形分として、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、より一層好ましくは15~30質量%である。
【0044】
肥料の形状は特に制限されず、例えば、液状、固形状(例えば、ペレット状、タブレット上、球状、略球状、粒状、顆粒状、細粒状、粉末状等)が挙げられる。肥料としては、好ましくは固形状の肥料が用いられる。
【0045】
肥料のpHは特に制限されず、上述した堆肥のpH、肥料組成物が適用される土壌の性質、所望の土壌のpH、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができ、強酸性、弱酸性、中性、弱アルカリ性、強アルカリ性等のいずれであってもよい。一般的に、堆肥は中性~アルカリ性であるものが多いため、肥料が酸性である場合には、肥料に含まれる成分と堆肥に含まれる成分とが反応して、それぞれの本来の効果が奏されなくなる場合がある。したがって、肥料は、好ましくは酸性~中性付近であり、pHは、好ましくは5~8、より好ましくは5.5~7.5、より一層好ましくは6~7.5、特に好ましくは6.5~7である。肥料のpHが上述した範囲にあることにより、肥料に含まれる成分と堆肥に含まれる成分とが反応するのを抑制し、それぞれの本来の効果が奏されるようにすることができる。
【0046】
肥料は上述した必須栄養素やその他の元素を適宜選択して調製したものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。肥料の市販品としては、例えば、株式会社ハイポネックスジャパン製のマグァンプ(登録商標)シリーズ等が挙げられる。
【0047】
(土壌改良資材)
肥料組成物は、上述した堆肥および肥料に加えて、上述した堆肥および肥料を除く土壌改良資材(以下、単に「土壌改良資材」ともいう。)をさらに含んでもよい。土壌改良資材は、好ましくは上述した堆肥および/または肥料の少なくとも一部が付着することができる。土壌改良資材として、上述した堆肥および/または肥料の少なくとも一部が付着することができる土壌改良資材が用いられることにより、肥料組成物が固形状である場合、肥料組成物の製造過程において肥料組成物の造粒性を向上させることができ、成形性を向上(崩れやすさを低減)させることができる。
【0048】
土壌改良資材としては、例えば、鉱物由来の土壌改良資材、火山砕屑物、泥炭およびその粉砕物、植物由来の有機質の焼成物等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
鉱物由来の土壌改良資材としては、例えば、ゼオライト、バーミキュライト、パーライト、ベントナイト、珪藻土等が挙げられる。
【0050】
火山砕屑物としては、例えば、鹿沼土等の軽石、赤玉土、黒土等が挙げられる。
【0051】
泥炭およびその粉砕物としては、例えば、ピートモス等が挙げられる。
【0052】
植物由来の有機質の焼成物としては、例えば、もみ殻くん炭等のくん炭等が挙げられる。
【0053】
土壌改良資材は、好ましくは多くの空隙を有する。多くの空隙を有する土壌改良資材を肥料組成物に配合することにより、肥料組成物に良好な通気性、排水性、保水性を付与することができる。そして、肥料組成物がこれらの特性を有することにより、肥料組成物が適用された土壌においてこれらの特性を付与して、土壌の物理性を改善することができる。上記で列挙した各土壌改良資材は一般的に多くの空隙を有することから、これらの土壌改良資材が配合された肥料組成物は良好な通気性、排水性、保水性を有し、土壌の物理性を改善することができる。
【0054】
肥料組成物における土壌改良資材の含有量は、肥料組成物における堆肥および/または肥料の種類や含有量、肥料組成物が適用される土壌の所望の性質、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。肥料組成物における土壌改良資材の含有量は、土壌改良資材の固形分として、好ましくは10~50質量%、より好ましくは15~45質量%、より一層好ましくは20~40質量%である。
【0055】
(その他の成分)
肥料組成物は、上述した各成分に加えて、土壌のpHを調整するための石灰資材、植物を有害な生物(例えば、害虫、病原菌、雑草等)から保護するための農薬等をさらに含んでもよい。
【0056】
石灰資材としては、例えば、生石灰、消石灰、苦土石灰、有機石灰等が挙げられる。石灰資材はいずれもアルカリ性であることから、肥料組成物に配合して土壌に適用することにより土壌のpHを増大させることができる。
【0057】
農薬としては、例えば、殺菌剤、防黴剤、殺虫剤、除草剤、殺鼠剤、植物成長調整剤(例えば、植物ホルモン剤等)等が挙げられる。
【0058】
肥料組成物におけるその他の成分の含有量は特に制限されず、その他の成分の種類、目的とする効果、肥料組成物が適用される土壌の性質、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができる。
【0059】
肥料組成物の形状は特に制限されないが、好ましくは固形状である。具体的な肥料組成物の形状としては、例えば、ペレット状、タブレット状、球状、略球状、粒状、顆粒状、細粒状、粉末状等が挙げられる。肥料組成物の土壌への適用時の取り扱いのしやすさ等の観点から、肥料組成物の形状は、好ましくはペレット状、タブレット状、球状、略球状、粒状であり、特に好ましくはペレット状である。
【0060】
肥料組成物が固形状である場合、その大きさ(粒子径)は特に制限されないが、肥料組成物の土壌への適用時の取り扱いのしやすさ、肥料組成物に含まれる必須栄養素の溶出のしやすさ等の観点から、例えば、粒子径0.5~20mm、1~15mm等である。なお、固形状の肥料組成物について「粒子径」とは、固形状の肥料組成物の粒子における最も長い径を指し、複数の粒子の場合にはそれらの粒子径の平均値を指す。肥料組成物がペレット状である場合、該ペレット状の肥料組成物の平均粒子径は、例えば、2~10mm、3~8mm、4~6mm等とすることができる。また、肥料組成物が粒状である場合、該粒状の肥料組成物の平均粒子径は、例えば、1~10mm、1.5~7mm、2~4mm等とすることができる。
【0061】
肥料組成物が固形状である場合、肥料組成物における水の含有量は特に制限されないが、好ましくは20質量%超35質量%未満、より好ましくは21~34質量%、より一層好ましくは21質量%以上30質量%未満、特に好ましくは25~35質量%である。固形状の肥料組成物における水の含有量が20質量%超であることによって、その製造過程において肥料組成物の造粒性を向上させることができ、成形性を向上(崩れやすさを低減)させることができる。一方、固形状の肥料組成物における水の含有量が35質量%未満であることによって、肥料組成物における微生物(例えば、カビ等の菌類、細菌類等)や害虫等の増殖を抑制することができる。特に、堆肥には有機質資材が含まれていることから、そのような有機質資材を代謝の基質として用いることができる微生物や害虫等が成長、増殖しやすい。したがって、固形状の肥料組成物において水の含有量を上述した範囲とすることは、肥料組成物の保存安定性等の観点から極めて重要であると言える。
【0062】
肥料組成物における水の含有量を増大させる方法としては、例えば、肥料組成物に対して適宜水および/または水を含有する成分を添加する等の方法が挙げられる。一方、
肥料組成物における水の含有量を低減する方法としては、例えば、肥料組成物を乾燥させる等の方法が挙げられる。
【0063】
肥料組成物のpHは特に制限されず、肥料組成物が適用される土壌の性質、所望の土壌のpH、生育対象となる植物の種類等に応じて適宜設定することができ、強酸性、弱酸性、中性、弱アルカリ性、強アルカリ性等のいずれであってもよい。一般的に、植物の正常な生育のためには弱酸性(pH5.5~6.5)の土壌が適しており、酸性の土壌では根の損傷、リンの吸収不全、土壌に生息する微生物の有機質資材の代謝(分解)能の低下等の障害が発生する場合がある。一方で、土壌中のアルカリ成分は水に溶解して土壌中から流失しやすく、特に降雨量が多い日本ではその傾向が顕著であり、土壌が酸性に寄る傾向がある。したがって、肥料組成物は、好ましくは中性付近~強アルカリ性であり、pHは、好ましくは6~12、より好ましくは6~10、より一層好ましくは6.5~8、特に好ましくは7~7.5である。肥料組成物のpHが上述した範囲にあることにより、酸性に寄る傾向がある土壌のpHを増大させて、植物の正常な生育に適したpHに調整することができる。
【0064】
[肥料組成物の製造方法]
肥料組成物は、上述した堆肥および肥料、さらに必要に応じて土壌改良資材および/またはその他の成分を用いて、例えば、以下の手順に従って製造することができる。
まず、堆肥および肥料、土壌改良資材および/またはその他の成分を配合する場合にはさらに土壌改良資材および/またはその他の成分を混合しする。なお、堆肥は、好ましくは少なくともその一部が混合前に乾燥されている。また、各成分の混合時、混合の前および/または後に、必要に応じて水を添加して、または乾燥させて水の含有量を調整してもよいが、各成分の混合後には水を添加しないことが好ましい。次いで、得られた混合物を成形造粒して、肥料組成物を得る。成形造粒は、肥料組成物の製造に通常用いられる装置を用いて行うことができる。例えば、ペレット状の肥料組成物を製造する場合、成形造粒は、ペレット成形装置(例えば、株式会社チヨダマシナリー社製のFMP-500NS)を用いて混合物を押し出して、一定間隔で細断することにより行うことができる。なお、造粒時、造粒の前および/または造粒後に、必要に応じて水を添加して、または乾燥させて水の含有量を調整してもよい。また、上述した各成分の混合および/または成形造粒の過程で、堆肥、肥料および/またはその他の成分の少なくとも一部が土壌改良資材にしてもよく、好ましくは堆肥および/または肥料の少なくとも一部が土壌改良資材に付着する。
【実施例0065】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。
【0066】
本実施例における肥料組成物の各成分の詳細は以下の通りである。
肥料
マグァンプ(登録商標)K 小粒(株式会社ハイポネックスジャパン製)
堆肥
牛ふん堆肥(窒素全量2.1質量%、リン酸全量3.5質量%、カリウム全量2.7質量%)
馬ふん堆肥(窒素全量2.1質量%、リン酸全量1.8質量%、カリウム全量0.2質量%)
土壌改良資材
くん炭(もみ殻を焼成したもの)
ゼオライト(陽イオン交換容量173meq/乾物100g)
ピートモス(有機物含量53.93質量%、腐植酸9.7質量%)
バーミキュライト(単位容積質量132kg/m2)
鹿沼土(粉状のもの)
【0067】
[肥料組成物の調製]
上述した肥料組成物の各成分を、下記表1に示す量でミキサーまたはホイルローダーを用いて混合した。なお、ミキサーを用いる場合には、各成分を計量した後にミキサーに投入して混合を行い、ホイルローダーを用いる場合には、各成分を計量し、ホイルローダーのバケット(ショベル)部で各成分を掬い上げて落とす操作を複数回繰り返すことにより攪拌を行った後に混合を行った。次いで、得られた混合物を、ペレット成形装置(株式会社チヨダマシナリー社製のFMP-500NS)を用いて平均粒子径が4.5mmとなるように造粒して、実施例1~4のペレット状の各肥料組成物を調製した。
【表1】
【0068】
[肥料組成物の効果の評価1]
実施例1および2の肥料組成物について、土壌における必須栄養素の富化および植物に対する必須栄養素の供給の効果を、下記の手順に従って評価した。
基本培養土(調整ピートモス:赤玉土:パーライト=4:3:3(質量比)、基本培養土の容量に対して水を5の容量で添加し、攪拌および抽出した液のpH5.8および導電率0.07mS/cm、株式会社ハイポネックスジャパン 研究開発センター製)と実施例1または実施例2の肥料組成物とを、マグァンプ(登録商標)K 小粒の施用量が下記表2に示す量となるように混合して、肥料組成物および基本培養土の混合物を作製した。次いで、各混合物またはマグァンプ(登録商標)K 小粒を、4L容量のプランターに、下記表2に示す施用量で充填して、評価用の各プランター(表2の処理区1-A~1-D)を作製した。なお、表2の各処理区について、2つのプランターを作製した。
【表2】
【0069】
評価用の各プランターに、小松菜(夏楽天)の種子を等間隔に4か所に播種した。なお、1か所に4~5粒の種子を播種した。ビニル温室内で基本培養土に種子を播種した後、O
2濃度、CO
2濃度および光照射のいずれも調節することなく環境条件(天候)に依存して発芽させ、子葉が展開した後、各か所1株になるように間引きを行った。なお、温度は15~30℃に調整した(昼間は25~30℃で換気扇が作動して降温し、夜間は15℃で暖房が作動して昇温した)。また、基本培養土が乾燥するたびに基本培養土が水で満たされる(基本培養土が十分に湿る)のに十分な量灌水した。種子を播種して約1.5ヵ月経過した後に、生育した小松菜の地上部の生体重を測定した。測定結果を表3に示す。なお、各処理区の測定結果は、同一処理区の2つのプランターのすべての小松菜の地上部の生体重の平均値である。
【表3】
【0070】
表3に示す結果から、実施例1および実施例2の肥料組成物をそれぞれ施用した処理区1-Aおよび1-Bでは、同量のマグァンプ(登録商標)K 小粒を施用した処理区1-Cおよび1-Dと比較して、いずれも小松菜の地上部生体重が大きかった。これらの結果は、処理区1-Aおよび1-Bでは、マグァンプ(登録商標)Kによる小松菜に対する適時の必須栄養素の供給に加えて、堆肥や土壌改良資材による土壌における必須栄養素の富化およびそれに基づく小松菜に対する継続的な必須栄養素の供給が行われ、その結果、小松菜の生育がより促進されたことを示唆するものである。なお、いずれの処理区においても、各処理による障害や、異物による薬害等は確認されなかった。
【0071】
[肥料組成物の効果の評価2]
上述した肥料組成物の効果の評価1と同様の手順により、評価用の各プランター(処理区2-A~2-D)を作製した。なお、各処理区について、2つのプランターを作製した。
【0072】
播種する種子を小松菜(夏楽天)からラディッシュ(赤丸はつか)に代えたこと以外は、上述した肥料組成物の効果の評価1と同様にして、種子の播種、播種後の生育、生育後の地上部の生体重の測定を行った。測定結果を表4に示す。なお、各処理区の測定結果は、同一処理区の2つのプランターのすべてのラディッシュの地上部の生体重の平均値である。
【表4】
【0073】
表4に示す結果から、実施例1および実施例2の肥料組成物をそれぞれ施用した処理区2-Aおよび2-Bでは、同量のマグァンプ(登録商標)K 小粒を施用した処理区2-Cおよび2-Dと比較して、いずれもラディッシュの地上部生体重が大きかった。これらの結果は、処理区2-Aおよび2-Bでは、マグァンプ(登録商標)Kによるラディッシュに対する適時の必須栄養素の供給に加えて、堆肥や土壌改良資材による土壌における必須栄養素の富化およびそれに基づくラディッシュに対する継続的な必須栄養素の供給が行われ、その結果、ラディッシュの生育がより促進されたことを示唆するものである。
【0074】
[肥料組成物の効果の評価3]
4L容量のプランターを容量2.5Lの6号深鉢に代え、6号深鉢への施用量を下記表5に示す量に代えた以外は、上述した肥料組成物の効果の評価1と同様の手順により、評価用の各深鉢(処理区3-A~3-D)を作製した。なお、各処理区について、2つの深鉢を作製した。
【表5】
【0075】
上述した肥料組成物の効果の評価3と同一の時期および場所で、評価用の各プランターに、ペチュニア(プリズムサンシャイン)の苗を1株定植した。定植した後、上述した肥料組成物の効果の評価3と同一の環境下で各苗を生育し、30日目、56日目および100日目に、開花している花を切り落とし、開花数(切り落とした花の数)数を計数した。計数結果を表6に示す。なお、各処理区の計数結果は、同一処理区の2つの深鉢のペチュニアの開花数の平均値である。
【表6】
【0076】
表6に示す結果から、実施例1および実施例2の肥料組成物をそれぞれ施用した処理区3-Aおよび3-Bでは、同量のマグァンプ(登録商標)K 小粒を施用した処理区3-Cおよび3-Dと比較して、いずれもペチュニアの開花数が多かった。これらの結果は、処理区3-Aおよび3-Bでは、マグァンプ(登録商標)Kによるペチュニアに対する適時の必須栄養素の供給に加えて、堆肥や土壌改良資材による土壌における必須栄養素の富化およびそれに基づくペチュニアに対する継続的な必須栄養素の供給が行われ、その結果、ペチュニアの開花数が増大したことを示唆するものである。なお、いずれの処理区においても、各処理による障害や、異物による薬害等は確認されなかった。
【0077】
[肥料組成物の反応性の評価]
実施例3の肥料組成物について、成分の反応性を、下記の手順に従って評価した。
作製直後の実施例3の肥料組成物における窒素成分、リン成分、カリウム成分および水の含有量を、それぞれ下記の手順に従って測定した。
【0078】
肥料組成物中の窒素全量(TN)は、炭素・窒素同時定量装置CNコーダー MT-700 Mark2(株式会社ヤナコ機器開発研究所)を用いて、肥料等試験法に基づく燃焼法により測定した。また、アンモニウム態窒素(AN)は、肥料等試験法に基づく蒸留法により測定した。
【0079】
肥料組成物中のリン酸全量(TP)は、紫外可視分光光度計UV-1200V(株式会社島津製作所製)を用いて、肥料等試験法に基づくバナドモリブデン酸アンモニウム吸光光度法により測定した。また、く溶性リン酸(CP)および水溶性リン酸(WP)は、いずれもマルチタイプICP発光分光分析装置ICPE-9000(株式会社島津製作所製)を用いて、肥料等試験法に基づくICP発光分光分析法により測定した。
【0080】
肥料組成物中のカリウム全量(TK)、く溶性カリウム(CP)および水溶性カリウム(WK)は、いずれも炎光光度計AnA-135(東京光電株式会社製)を用いて、肥料等試験法に基づくフレーム光度法により測定した。
【0081】
肥料組成物中の水の含有量は、赤外線水分計FD-610(株式会社ケツト科学研究所)を用いて、肥料等試験法に基づく水分計による乾燥減量法により測定した。
【0082】
次いで、チャック付き袋 ユニパック(登録商標)I(株式会社生産日本社製)に約700g充填し、チャックを閉めて密封して、評価用の密封肥料組成物を2つ作製した。2つの密封肥料組成物のうち一方(処理区4-A)を室温で、もう一方(処理区4-B)を40℃に設定したインキュベーターEYELA FLI-2000(東京理化機械株式会社製)内でそれぞれ静置して保管した。保管開始から1ヵ月後の各密封肥料組成物における窒素成分、リン成分、カリウム成分および水の含有量を測定した。結果を下記表7-1および7-2に示す。
【0083】
【0084】
【0085】
表7-1および7-2に示す結果から、実施例3の肥料組成物は、室温および高温(40℃)のいずれで保管した場合においても、成分の大きな変化が見られなかった。これらの結果は、実施例3の肥料組成物は、室温(処理区4-A)および高温(処理区4-B)のいずれにおいても成分の化学反応がほとんど発生せず、施用後、様々な温度環境において長期間にわたり安定した効果を奏し得ること、また長期の保管に耐え得ることを示唆するものである。
【0086】
[肥料組成物の水含有量の検討1]
実施例1および2の各肥料組成物について、水含有量と有害生物の発生との関係を、下記の手順に従って検討した。
実施例1および2の各肥料組成物のそれぞれについて、赤外線水分計FD-610(株式会社ケツト科学研究所)を用いて、肥料等試験法に基づく水分計による乾燥減量法により測定した。いずれの肥料組成物も、水含有量は約35質量%であった。次いで、各肥料組成物を恒温乾燥機およびビニル温室での天日干しにより乾燥させて、水含有量が約30質量%、約25質量%および約20質量%の肥料組成物を作製した。各水含有量の肥料組成物を、5L容量のポリエチレン製袋に2.1kg充填し、ヒートシールにより密封して、評価用の各密封肥料組成物を2つ作製した。2つの密封肥料組成物のうち一方を室温で(表8の処理区5-A~5-Dおよび5-I~5-L)、もう一方をビニル温室で(表8の処理区5-E~5-Hおよび5-M~5-P)それぞれ静置して保管した。
【0087】
【0088】
保管開始から3ヵ月後の各密封肥料組成物におけるカビの発生の有無を目視により確認した。結果を下記表9に示す。
【0089】
【0090】
表9に示す結果から、実施例1の肥料組成物については、水含有量が20~35質量%がいずれの場合であっても、室温における長期保管時にカビの発生が認められなかった(処理区5-A~5-D)。一方、水含有量が35質量%である場合には、室温よりも高温のビニル温室における長期保管時にカビの発生が認められたものの(処理区5-E)、水分含有量が20~30質量%である場合には、ビニル温室における長期保管時であってもカビの発生は認められなかった(処理区5-F~5-G)。
【0091】
また、実施例2の肥料組成物については、水含有量が20~35質量%がいずれの場合であっても、室温における長期保管時にカビの発生が認められなかった(処理区5-I~5-L)。一方、水分含有量が30質量%および35質量%である場合には、室温よりも高温のビニル温室における長期保管時にそれぞれカビの発生が認められたものの(処理区5-Mおよび5-N)、水分含有量が20質量%および25質量%である場合には、ビニル温室における長期保管時であってもそれぞれカビの発生は認められなかった(処理区5-Oおよび5-P)。
【0092】
これらの結果は、有害生物の発生を抑制するために、肥料組成物における水の含有量を35質量%未満とすることが好ましく、30質量%未満とすることが特に好ましいことを示唆するものである。
【0093】
[肥料組成物の水含有量の検討2]
肥料組成物における水含有量と成分との関係を、下記の手順に従って検討した。
表10-1に示す組成の実施例1、3および4の各肥料組成物について、造粒によりペレットを成形した直後に、乾燥工程を経ることなく、赤外線水分計FD-610(株式会社ケツト科学研究所)を用いて、肥料等試験法に基づく水分計による乾燥減量法により水含有量を測定した。結果を表10-2に示す。また、各肥料組成物の成分について、上記と同様にして水含有量を測定した。結果を表10-3に示す。
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
表10-3に示す結果から、牛ふん堆肥、馬ふん堆肥、くん炭およびピートモスは水含有量が比較的多く、マグァンプ(登録商標)K、ゼオライトおよびバーミキュライトは水含有量が比較的少ないことが分かる。表10-2および10-3に示す結果から、ゼオライトやバーミキュライト等の水含有量が比較的少ない成分を肥料組成物に配合することにより、肥料組成物の水含有量の増大を抑制することができ、成形後の乾燥工程を経ずとも水含有量を25質量%程度に調整することができることが示唆された。