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特開2024-71268結晶化度測定装置、結晶化度測定方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071268
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】結晶化度測定装置、結晶化度測定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/207 20180101AFI20240517BHJP
   G01N 23/2055 20180101ALI20240517BHJP
【FI】
G01N23/207
G01N23/2055 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182119
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 秀穂
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA14
2G001BA18
2G001CA01
2G001FA29
2G001KA08
2G001LA05
2G001MA03
2G001MA04
(57)【要約】
【課題】対象物質の結晶部分の結晶性低下を考慮して、対象物質の結晶化度をより正確に測定すること。
【解決手段】結晶化度測定装置10は、対象物質の結晶部分及び非晶質部分を含む試料のX線散乱パターンを取得するX線散乱パターン取得部101と、X線散乱パターンから、前記結晶部分の回折パターンと、連続パターンと、を取得するパターン分解部102と、X線散乱パターン、及び前記対象物質の化学式情報に基づいて、前記対象物質に係る積分強度を算出する対象物質強度算出部103と、前記結晶部分及び前記非晶質部分を含む前記対象物質の散乱パターンを、前記連続パターンから算出する対象物質パターン算出部104と、前記結晶部分の回折パターンと、前記対象物質の散乱パターンと、に基づいて前記結晶部分の構造不整パラメータを決定する構造不整パラメータ決定部105と、を含む。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物質の結晶部分及び非晶質部分を含む試料のX線散乱パターンを取得するX線散乱パターン取得手段と、
前記X線散乱パターンから、前記結晶部分の回折パターンと、連続パターンと、を取得するパターン分解手段と、
前記X線散乱パターン、及び前記対象物質の化学式情報に基づいて、前記対象物質に係る積分強度を算出する対象物質強度算出手段と、
前記結晶部分及び前記非晶質部分を含む前記対象物質の散乱パターンを、その積分強度が前記対象物質強度算出手段により算出される積分強度と一致するようにして、前記連続パターンから算出する対象物質パターン算出手段と、
前記結晶部分の回折パターンと、前記対象物質の散乱パターンと、に基づいて前記結晶部分の構造不整パラメータを決定する構造不整パラメータ決定手段と、
決定される前記構造不整パラメータに応じて算出された前記対象物質の結晶化度を出力する結晶化度出力手段と、
を含む結晶化度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の結晶化度測定装置において、
前記構造不整パラメータ決定手段は、
前記結晶部分の回折パターンに前記構造不整パラメータを含む構造不整因子を乗算してなる補正パターンを所与の積分範囲で積分した値を分子とし、前記対象物質の散乱パターンを前記所与の積分範囲で積分した値を分母とする仮結晶化度を、複数の前記構造不整因子のそれぞれについて、前記所与の積分範囲を変更しながら算出する仮結晶化度算出手段と、
複数の前記構造不整パラメータのそれぞれについて、前記所与の積分範囲を変更しながら算出される、複数の前記仮結晶化度を所定の評価式に代入して評価値を算出し、該評価値に基づいて1の前記構造不整パラメータを選択するパラメータ選択手段と、
を含む、結晶化度測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の結晶化度測定装置において、
前記構造不整因子は次式により与えられ、λは入射X線の波長であり、kは前記構造不整パラメータである、結晶化度測定装置。
【数1】
【請求項4】
請求項3に記載の結晶化度測定装置において、
前記評価値は次式Sであり、fnはn番目の積分範囲に係る前記仮結晶化度であり、D0はフィッティングパラメータである、結晶化度測定装置。
【数2】
【請求項5】
請求項1に記載の結晶化度測定装置において、
前記試料は、1以上の結晶性フィラーを含み、
前記パターン分解手段は、前記X線散乱パターンから、前記1以上の結晶性フィラーの回折パターンを取得し、
前記対象物質強度算出手段は、
1の前記結晶性フィラーの回折パターンの積分強度を算出する結晶性フィラー強度算出手段を含み、
前記1の前記結晶性フィラーに係る積分強度に、前記試料に含まれる前記結晶性フィラー及び前記対象物質の化学式情報に応じた比を乗じることにより、前記対象物質に係る積分強度を算出する、
結晶化度測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の結晶化度測定装置において、
前記試料は1以上の非結晶性フィラーを含む、結晶化度測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の結晶化度測定装置において、
前記連続パターンはバックグラウンドを含み、
前記対象物質パターン算出手段は、前記連続パターンから前記バックグラウンドを減算するバックグラウンド減算手段を含む、結晶化度測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の結晶化度測定装置において、
前記バックグランド減算手段は、
前記バックグランドの積分強度を、前記試料のX線散乱パターンの積分強度と、前記試料に含まれる物質の化学式情報と、に基づいて算出するバックグラウンド強度算出手段と、
前記バックグラウンドを、その積分強度が前記バックグラウンド強度算出手段により算出される積分強度と一致するようにして算出するバックグランド算出手段と、
を含む、結晶化度測定装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の結晶化度測定装置において、
前記対象物質パターン算出手段は、前記バックグランドが減算された前記連続パターンに対し、前記対象物質強度算出手段により算出される積分強度に応じた比を乗算することにより、前記対象物質の散乱パターンを算出する、結晶化度測定装置。
【請求項10】
対象物質の結晶部分及び非晶質部分を含む試料のX線散乱パターンを取得するX線散乱パターン取得ステップと、
前記X線散乱パターンから、前記結晶部分の回折パターンと、連続パターンと、を取得するパターン分解ステップと、
前記X線散乱パターン、及び前記対象物質の化学式情報に基づいて、前記対象物質に係る積分強度を算出する対象物質強度算出ステップと、
前記結晶部分及び前記非晶質部分を含む前記対象物質の散乱パターンを、その積分強度が前記対象物質強度算出手段により算出される積分強度と一致するようにして、前記連続パターンから算出する対象物質パターン算出ステップと、
前記結晶部分の回折パターンと、前記対象物質の散乱パターンと、に基づいて前記結晶部分の構造不整パラメータを決定する構造不整パラメータ決定ステップと、
決定される前記構造不整パラメータに応じて算出された前記対象物質の結晶化度を出力する結晶化度出力ステップと、
を含む結晶化度測定方法。
【請求項11】
対象物質の結晶部分及び非晶質部分を含む試料のX線散乱パターンを取得するX線散乱パターン取得手段、
前記X線散乱パターンから、前記結晶部分の回折パターンと、連続パターンと、を取得するパターン分解手段、
前記X線散乱パターン、及び前記対象物質の化学式情報に基づいて、前記対象物質に係る積分強度を算出する対象物質強度算出手段、
前記結晶部分及び前記非晶質部分を含む前記対象物質の散乱パターンを、その積分強度が前記対象物質強度算出手段により算出される積分強度と一致するようにして、前記連続パターンから算出する対象物質パターン算出手段、
前記結晶部分の回折パターンと、前記対象物質の散乱パターンと、に基づいて前記結晶部分の構造不整パラメータを決定する構造不整パラメータ決定手段、及び
決定される前記構造不整パラメータに応じて算出された前記対象物質の結晶化度を出力する結晶化度出力手段
としてコンピュータを動作させるためのプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は結晶化度測定装置、結晶化度測定方法及びプログラムに関し、特にX線回折を用いる結晶化度の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子には結晶性高分子と非晶質性高分子が存在するが、結晶性高分子といえども、すべてが結晶構造になっている訳ではなく、結晶質部分と非晶質部分とが混在する。結晶性高分子の全重量に対する結晶質部分の重量の割合を結晶化度という。機械的性質や化学的性質など、結晶性高分子の性質を知る上で結晶化度は重要な情報である。
【0003】
結晶化度の各種測定方法のうちX線回折を用いる方法は、原理的に試料の大きさを問わない点や、試料を非破壊で実行可能である点等、大きな実用上のメリットがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線回折を用いる方法においては、ある対象物質の結晶化度は、当該対象物質における結晶質部分からの散乱パターン(この場合は特に回折パターンとなる。)の積分強度を、結晶質部分及び非晶質部分からの散乱パターンの各積分強度の和(すなわち対象物質全体の散乱パターンの積分強度)で除した値となることが知られている。
【0005】
このため、結晶化度を求める為に、少なくとも結晶質部分からの回折パターンを観測パターン全体から正確に抽出する必要がある。しかしながら、対象物質の結晶部分といっても、その結晶性は実際には低下していると考えられる。このため、対象物質の結晶部分の回折パターンの強度は実際よりも低く観測され、これにより対象物質の結晶化度は実際よりも低く計算されると考えられる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、対象物質の結晶部分の結晶性低下を考慮して、対象物質の結晶化度をより正確に測定できる、結晶化度測定装置、結晶化度測定方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る結晶化度測定装置は、対象物質の結晶部分及び非晶質部分を含む試料のX線散乱パターンを取得するX線散乱パターン取得手段と、前記X線散乱パターンから、前記結晶部分の回折パターンと、連続パターンと、を取得するパターン分解手段と、前記X線散乱パターン、及び前記対象物質の化学式情報に基づいて、前記対象物質に係る積分強度を算出する対象物質強度算出手段と、前記結晶部分及び前記非晶質部分を含む前記対象物質の散乱パターンを、その積分強度が前記対象物質強度算出手段により算出される積分強度と一致するようにして、前記連続パターンから算出する対象物質パターン算出手段と、前記結晶部分の回折パターンと、前記対象物質の散乱パターンと、に基づいて前記結晶部分の構造不整パラメータを決定する構造不整パラメータ決定手段と、決定される前記構造不整パラメータに応じて算出された前記対象物質の結晶化度を出力する結晶化度出力手段と、を含む。
【0008】
(2)(1)に記載の結晶化度測定装置において、前記構造不整パラメータ決定手段は、前記結晶部分の回折パターンに前記構造不整パラメータを含む構造不整因子を乗算してなる補正パターンを所与の積分範囲で積分した値を分子とし、前記対象物質の散乱パターンを前記所与の積分範囲で積分した値を分母とする仮結晶化度を、複数の前記構造不整因子のそれぞれについて、前記所与の積分範囲を変更しながら算出する仮結晶化度算出手段と、複数の前記構造不整パラメータのそれぞれについて、前記所与の積分範囲を変更しながら算出される、複数の前記仮結晶化度を所定の評価式に代入して評価値を算出し、該評価値に基づいて1の前記構造不整パラメータを選択するパラメータ選択手段と、を含んでよい。
【0009】
(3)(2)に記載の結晶化度測定装置において、前記構造不整因子は次式により与えられてよい。ここで、λは入射X線の波長であり、kは前記構造不整パラメータである。
【0010】
【数1】
【0011】
(4)(3)に記載の結晶化度測定装置において、前記評価値は次式Sであってよい。ここで、fnはn番目の積分範囲に係る前記仮結晶化度であり、D0はフィッティングパラメータである。
【0012】
【数2】
【0013】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の結晶化度測定装置において、前記試料は、1以上の結晶性フィラーを含んでよい。前記パターン分解手段は、前記X線散乱パターンから、前記1以上の結晶性フィラーの回折パターンを取得してよい。前記対象物質強度算出手段は、1の前記結晶性フィラーの回折パターンの積分強度を算出する結晶性フィラー強度算出手段を含んでよい。また、前記1の前記結晶性フィラーに係る積分強度に、前記試料に含まれる前記結晶性フィラー及び前記対象物質の化学式情報に応じた比を乗じることにより、前記対象物質に係る積分強度を算出してよい。
【0014】
(6)(5)に記載の結晶化度測定装置において、前記試料は1以上の非結晶性フィラーを含んでよい。
【0015】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の結晶化度測定装置において、前記連続パターンはバックグラウンドを含んでよい。前記対象物質パターン算出手段は、前記連続パターンから前記バックグラウンドを減算するバックグラウンド減算手段を含んでよい。
【0016】
(8)(7)に記載の結晶化度測定装置において、前記バックグランド減算手段は、前記バックグランドの積分強度を、前記試料のX線散乱パターンの積分強度と、前記試料に含まれる物質の化学式情報と、に基づいて算出するバックグラウンド強度算出手段と、前記バックグラウンドを、その積分強度が前記バックグラウンド強度算出手段により算出される積分強度と一致するようにして算出するバックグランド算出手段と、を含んでよい。
【0017】
(9)(7)又は(8)に記載の結晶化度測定装置において、前記対象物質パターン算出手段は、前記バックグランドが減算された前記連続パターンに対し、前記対象物質強度算出手段により算出される積分強度に応じた比を乗算することにより、前記対象物質の散乱パターンを算出してよい。
【0018】
(10)本発明に係る結晶化度測定方法は、対象物質の結晶部分及び非晶質部分を含む試料のX線散乱パターンを取得するX線散乱パターン取得ステップと、前記X線散乱パターンから、前記結晶部分の回折パターンと、連続パターンと、を取得するパターン分解ステップと、前記X線散乱パターン、及び前記対象物質の化学式情報に基づいて、前記対象物質に係る積分強度を算出する対象物質強度算出ステップと、前記結晶部分及び前記非晶質部分を含む前記対象物質の散乱パターンを、その積分強度が前記対象物質強度算出手段により算出される積分強度と一致するようにして、前記連続パターンから算出する対象物質パターン算出ステップと、前記結晶部分の回折パターンと、前記対象物質の散乱パターンと、に基づいて前記結晶部分の構造不整パラメータを決定する構造不整パラメータ決定ステップと、決定される前記構造不整パラメータに応じて算出された前記対象物質の結晶化度を出力する結晶化度出力ステップと、を含む。
【0019】
(11)本発明に係るプログラムは、対象物質の結晶部分及び非晶質部分を含む試料のX線散乱パターンを取得するX線散乱パターン取得手段、前記X線散乱パターンから、前記結晶部分の回折パターンと、連続パターンと、を取得するパターン分解手段、前記X線散乱パターン、及び前記対象物質の化学式情報に基づいて、前記対象物質に係る積分強度を算出する対象物質強度算出手段、前記結晶部分及び前記非晶質部分を含む前記対象物質の散乱パターンを、その積分強度が前記対象物質強度算出手段により算出される積分強度と一致するようにして、前記連続パターンから算出する対象物質パターン算出手段、前記結晶部分の回折パターンと、前記対象物質の散乱パターンと、に基づいて前記結晶部分の構造不整パラメータを決定する構造不整パラメータ決定手段、及び決定される前記構造不整パラメータに応じて算出された前記対象物質の結晶化度を出力する結晶化度出力手段としてコンピュータを動作させるためのプログラムである。このプログラムは、コンピュータ可読情報記憶媒体に格納されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る結晶化度測定装置の構成図である。
図2A】試料の観測パターンの一例を模式的に示す図である。
図2B】対象物質の結晶質部分の回折パターンを模式的に示す図である。
図2C】結晶性フィラーの回折パターンの一例を模式的に示す図である。
図2D】連続パターンの一例を模式的に示す図である。
図3A】対象物質全体が非晶質化している場合における試料のX線散乱パターンの一例を模式的に示す図である。
図3B図3Aに示されるX線散乱パターンに基づいて作成された参照連続パターンを模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る結晶化度測定装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る結晶化度測定装置の構成を示す図である。同図に示すように結晶化度測定装置10は、X線回折装置12、演算装置14、記憶部16及び表示部18を含んでいる。なお、他のX線回折装置から取得される観測パターンに基づいて結晶化度を算出する場合には、結晶化度測定装置10はX線回折装置12を含む必要がない。この場合には、結晶化度測定装置10は演算装置14、記憶部16及び表示部18から構成されてよく、記憶部16には他のX線回折装置から取得される観測パターンが事前に記憶される。
【0023】
X線回折装置12は、X線回折測定を行う。具体的にはX線回折装置12は、既知の波長のX線を試料に入射し、散乱X線の強度を測定する。回折角度2θの値ごとのX線強度のデータは観測パターンとしてX線回折装置12から演算装置14に出力される。なお、演算装置14に出力される観測パターンは、ローレンツ偏光因子による補正(Lp補正)を施したものであってよい。X線回折装置12は、10度程度の十分に小さな最小角2θLから、120度程度の十分に大きな最大角2θHまで、各回折角度で散乱X線の強度を測定可能である。なお、本明細書において、X線回折装置12で測定するX線強度のプロファイル(回折角度の変化に対するX線強度の変化を示すデータ)を「X線散乱パターン」又は「観測パターン」と記す。X線散乱パターンは、試料が結晶質の場合には、特に「X線回折パターン」となる。
【0024】
本実施形態では、X線散乱パターンの測定対象となる試料には、一部が結晶状態となり残りが非晶質状態となり得る粉状又は流動性の高分子等の対象物質が含まれる。試料には、1又は複数のフィラーが混合される。試料作成時、試料を構成する物質の種類や重量比は既知である。各物質の化学式や化学式量も既知である。
【0025】
以下では、一例として試料がバルク固体状とする。このような試料が合成されるとき、粉状あるいは流動性を持つ高分子と、複数のフィラー等が混合される。こうした混合物に成型および加熱処理が加えられ、試料である製品の樹脂材が作られる。なお、本発明はバルク固体状の試料のみならず、粉状の試料にも適用できるのは勿論である。
【0026】
このような試料として、以下では高性能エンジニアリングとして知られるPPS(Poly Phenylene Sulfide(ポリフェニレンサルファイド))樹脂を対象物質とする試料の結晶化度測定を一例として取り上げる。この試料には、結晶性のフィラーとして炭酸カルシウム(CaCO3)、非結晶性のフィラーとしてE-ガラス繊維が混合されているものとする。但し、本発明は、上記試料以外にも種々の試料中の種々の対象物質の結晶化度測定に適用されてよい。例えば結晶性フィラーや非結晶性フィラーは試料に混合されなくてよい。或いは、複数種類の結晶性フィラーが試料に混合されてもよい。同様に、複数種類の非結晶性フィラーが試料に混合されてもよい。
【0027】
演算装置14は、例えば公知のコンピュータシステムにより構成されており、CPUやメモリを含んでいる。演算装置14にはSSD(Solid State Disk)やHDD(Hard Drive Disk)などのコンピュータ可読情報記憶媒体により構成された記憶部16が接続されている。記憶部16には、本発明の一実施形態に係る結晶化度測定プログラムが記憶されており、このプログラムを演算装置14が実行することにより、本発明の一実施形態に係る装置や方法が具現化される。記憶部16にはさらに、試料に含まれる各物質の化学式情報(化学式、化学式量、当該物質に含まれる原子それぞれの電子数)、各物質の重量比も記憶されている。
【0028】
表示部18は、演算装置14による演算結果を表示する表示デバイスである。例えば表示部18は、対象物質の結晶化度を数値やグラフにより表示する。
【0029】
ここで、結晶化度測定装置10による結晶化度の算出手順について説明する。結晶化度の算出は、(1)パターン分解、(2)構造不整パラメータの算出、(3)各成分に由来するパターンの積分強度の算出、(4)対象物質全体(PPS)のパターンの算出、に大きく分かれる。
【0030】
(1)パターン分解: X線回折装置12から試料のX線散乱パターンである観測パターンy(2θ)Total_obsを取得すると、それを複数のパターンに分解する。図2Aは、観測パターンy(2θ)Total_obsを模式的に示している。同図に示すように、観測パターンy(2θ)Total_obsは1又は複数の結晶成分に由来する多数のピークと、なだらかな連続パターンと、を含んでいる。上述のように試料は、PPSの結晶部分及び非晶質部分、結晶性フィラーである炭酸カルシウム、及び非結晶性フィラーであるE-ガラス繊維を含んでいる。そこで、次式(1)に示すように観測パターンy(2θ)Total_obsを、PPSの結晶部分の回折パターンy(2θ)P_Cと、結晶性フィラーの回折パターンy(2θ)CFと、連続パターンy(2θ)Hと、に分解する。
【0031】
【数3】
【0032】
図2Bは、PPSの結晶部分の回折パターンy(2θ)P_Cを模式的に示している。図2Cは、結晶性フィラーの回折パターンy(2θ)CFを模式的に示している。また図2Dは、連続パターンy(2θ)Hを模式的に示している。
【0033】
パターン分解では、例えばリートベルト法や全パターン分解(Whole-Powder-Pattern Decomposition: WPPD)などの全パターンフィッティング(Whole-Powder-Pattern Fitting: WPPF)方法を用いる。このとき、パターンy(2θ)P_C及びパターンy(2θ)CFについては、PPS及び炭酸カルシウムの格子定数その他の結晶構造の情報(構造パラメータ)に基づいて、それらパターンを特定する。
【0034】
連続パターンy(2θ)Hについては、既知の参照連続パターンy(2θ)H 100に基づいて、同パターンを特定する。すなわち、連続パターンy(2θ)Hは、次式(2)のように仮定する。ここで、Scは可変パラメータであるスケール因子である。a(2θ)は可変パラメータを含む補助関数である。この補助関数は、可変パラメータにより形状変更可能な多項式その他の関数である。
【0035】
【数4】
【0036】
式(2)を式(1)に代入することにより、観測パターンy(2θ)Total_obsは、次式(3)のように表すことができる。
【0037】
【数5】
【0038】
参照連続パターンy(2θ)H 100は、試料を事前に高温で十分に溶融させ、PPSを完全に非晶質化させてから測定したX線散乱パターンに基づいて作成されている。図3Aは、このようにPPSを完全に非晶質化させた試料のX線散乱パターンを示している。同パターンには結晶性フィラーに起因するピークが含まれているので、それらのピークを除去することにより、図3Bに示される参照連続パターンy(2θ)H 100を得ることができる。参照連続パターンy(2θ)H 100は、PPSの非晶質部分に起因する連続パターン、非結晶性フィラーに起因する連続パターン、及びバックグランドを含んでおり、連続パターンy(2θ)Hに類似していると考えられる。そこで本実施形態では、参照連続パターンに乗ずるスケール因子Sc、及び補助関数a(2θ)をフィッティングさせることで、連続パターンy(2θ)Hを得るようにしている。
【0039】
なお、上記のようにして得られたパターンy(2θ)P_C及びパターンy(2θ)CFは、式(4)及び(5)によって補正されてよい。式(4)及び(5)は、観測パターンy(2θ)Total_obsから連続パターンy(2θ)Hを減算した値を、y(2θ)P_C及びy(2θ)CFの値により比例分配することにより、y(2θ)CF obs及びy(2θ)P_C obsを求めるものである。これらの値を、y(2θ)P_C及びy(2θ)CFの代わりに用いれば、より正確に結晶化度DOCを求めることができる。
【0040】
【数6】
【0041】
【数7】
【0042】
(2)構造不整パラメータの算出: 結晶化度DOCは次式(6)により表される。ここで、wP_CはPPCの結晶部分の重量比であり、wP_NCはPPCの非晶質部分の重量比である。
【0043】
【数8】
【0044】
ところで、試料中にK種類の物質が含まれているとき、k番目の物質に由来する積分強度Ykと、同物質の重量比wkと、には次式(7)に示される関係がある。この関係は、例えばJ. Appl. Cryst. (2016). 49, 1508-1516や特許第6231726号公報、国際公開2017/149913等でも説明されている。なお、積分強度Ykを算出する際、k番目の物質の散乱パターンにLp補正因子を乗じたものを被積分関数としている。また、積分範囲は全範囲、例えば10度程度の2θLから120度程度の2θHまでである。
【0045】
【数9】
【0046】
ここで、akの逆数は次式(8)により示される。Nk Aはk番目の物質の化学式中に含まれる原子の数である。nkiはk番目の物質の化学式中に含まれるi番目の原子の電子数である。Mkは試料に含まれるk番目の物質の化学式量である。これら原子数Nk A、電子数nki、化学式量Mkを本明細書では化学式情報という。
【0047】
【数10】
【0048】
式(7)及び(6)により、結晶化度DOCは次式(9)により表される。ここで、YP_CはPPCの結晶部分の積分強度であり、YP_NCはPPCの非晶質部分の積分強度であり、YPはPPC全体の積分強度である。
【0049】
【数11】
【0050】
ところで、PPSのように結晶部分と非晶質部分が混在する物質においては、結晶部分といえども、その結晶性は低下していると考えられる。それ故にy(2θ)P_Cは実際よりも低く観測されていると考えられる。そこで、次式(10)に示すように、補正パターンy(2θ)P_C Dを用いてPPCの結晶部分の積分強度を算出する。そしてこうして算出される補正された積分強度を式(9)の分子として用い、より正確な結晶化度DOCを求める。
【0051】
【数12】
【0052】
ここで、補正パターンy(2θ)P_C Dは、元のパターンy(2θ)P_Cに次式(11)に示される構造不整因子を乗じたものである。
【0053】
【数13】
【0054】
同式(11)において、λは入射X線の波長であり、kは構造不整パラメータである。構造不整パラメータkは結晶化度低下の程度を示しており、次のようにして決定する。
【0055】
すなわち、積分範囲を2θLから2θnとして、PPSの結晶部分の部分的な積分強度を式(12)により算出する。また、PPS全体の部分的な積分強度を式(13)により算出する。ここで、2θnは、積分範囲の上限となる回折角であり、例えば60度程度から120度程度の範囲をN分割した場合におけるn番目の角度を示している。また、G(2θ)はLp補正因子である。「部分的な積分強度」とは、一部の積分範囲についての積分により求めた強度の意味である。なお、式(13)の被積分関数のうち、PPS全体の散乱パターンを示すy(2θ)Pの求め方については後述する。
【0056】
【数14】
【0057】
【数15】
【0058】
そして、式(12)及び(13)を用いて、式(14)及び(15)に示すようにして、仮結晶化度fnを定義する。
【0059】
【数16】
【0060】
【数17】
【0061】
この仮結晶化度fnは、nの値が大きくなるにつれて、真の結晶化度の値を跨いで上下しつつ、最終的には真の結晶化度の値に収束すると考えられる。積分強度の値に大きな影響を与える、大きなピークが低角度領域に飛び飛びに存在するからである。そのため、次式(16)に示される評価値Sが最小化されるときに、構造不整パラメータkの値が確からしいと考えられる。ここで、D0はフィッティング(可変)パラメータであり、フィッティング完了時には、真の結晶化度に近似した値となる。
【0062】
【数18】
【0063】
本実施形態では、構造不整パラメータk及びパラメータD0のペアを変更しながら、評価値Sの値を複数回演算し、最も小さな評価値Sを与える構造不整パラメータkを特定する。この処理では、例えば最適化アルゴリズムの一種であるネルダー-ミード法(シンプレックス法/アメーバ法)が用いられてよい。構造不整パラメータkの値が特定されれば、そのKの値を用い、2θLから2θHまでを積分範囲とし、式(14)により真の結晶化度DOCを求める。あるいは、上記D0の値を真の結晶化度DOCとしてもよい。
【0064】
(3)試料中の各成分の積分強度の算出: 上記の式(13)の被積分関数のうち、PPS全体の散乱パターンを示すy(2θ)Pを求めるために、試料中の各成分の積分強度を算出する。
【0065】
まず、観測パターンy(2θ)Total_obsの積分強度YTotal_obsを次式(17)により算出する。
【0066】
【数19】
【0067】
さらに、結晶性フィラーの回折パターンy(2θ)CFの積分強度YCFを次式(18)により算出する。
【0068】
【数20】
【0069】
次に、式(7)を変形して次式(19)を得ることができる。これにより、試料に含まれる全物質の積分強度の総和YTotalを、単一物質の積分強度であるYCF(式(18))から導出できる。
【0070】
【数21】
【0071】
したがって、式(17)及び(19)を次式(20)に代入することにより、バックグラウンドの積分強度BPを求めることができる。
【0072】
【数22】
【0073】
さらに、式(7)を変形して次式(21)を得ることができる。これにより、PPS全体の積分強度YPについても、単一物質の積分強度であるYCFから導出できる。
【0074】
【数23】
【0075】
(4)PPS全体の散乱パターンy(2θ)Pの算出: ここではPPS全体の散乱パターンy(2θ)Pを連続パターンy(2θ)Hから導出する。その前提として、バックグラウンドパターンb(2θ)Pを求める。ここでは、次式(22)により、既知のalpha-SiO2のバックグラウンドのパターンb(2θ)Siをスケーリングすることにより、バックグラウンドパターンb(2θ)Pを得る。
【0076】
【数24】
【0077】
ここで、BSiは次式(23)により求めることができる。
【0078】
【数25】
【0079】
なお、alpha-SiO2のバックグラウンドパターンb(2θ)Siを選択したのは、本実施形態の試料全体の平均化学組成に対して計算されたakと、alpha-SiO2に対して計算されたakの値が近いからである。
【0080】
次に式(24)を用いて、バックグラウンドパターンb(2θ)Pを連続パターンy(2θ)Hから減算し、補正された連続パターンy(2θ)H_NCを得る。
【0081】
【数26】
【0082】
このパターンy(2θ)H_NCは、PPSの非晶質部分に由来するパターンと、非結晶フィラーに由来するパターンと、を含んでいる。PPSの非晶質部分に由来するパターンと、非結晶フィラーに由来するパターンとは、大きな形状差はない。また、PPS全体の散乱パターンy(2θ)Pは、式(13)により積分して計算に用いるだけである。そこで、次式(24)により、補正された連続パターンy(2θ)H_NCをスケーリングして、PPS全体のパターンy(2θ)Pを得る。
【0083】
【数27】
【0084】
ここで、積分強度YH_NCは次式(26)により計算できる。
【0085】
【数28】
【0086】
以上により、PPS全体の散乱パターンy(2θ)Pを得ることができ、それにより構造不整パラメータkを算出することができる。そして、算出されたkを用いて、より正確な結晶化度DOCを得ることができる。
【0087】
ここで、結晶化度測定装置10の詳細について説明する。図4は、結晶化度測定装置10の機能ブロック図である。同図に示すように、結晶化度測定装置10は、機能的には、観測パターン取得部101、パターン分解部102、対象物質強度算出部103、対象物質パターン算出部104、構造不整パラメータ決定部105及び結晶化度出力部106を含んでいる。パターン分解部102はパターン再計算部102aを含んでいる。対象物質強度算出部103は結晶性フィラー強度算出部103aを含んでいる。対象物質パターン算出部104はバックグラウンド減算部104aを含んでおり、バックグラウンド減算部104aはバックグラウンド強度算出部104b及びバックグラウンド算出部104cを含んでいる。また、構造不整パラメータ決定部105は仮結晶化度算出部105a及びパラメータ選択部105bを含んでいる。これらの機能は上述の結晶化度測定プログラムをコンピュータシステムである演算装置14で実行することにより実現されている。
【0088】
観測パターン取得部101は、X線回折装置12から試料のX線散乱パターンである観測パターンy(2θ)Total_obsを取得する。
【0089】
パターン分解部102は、全パターンフィッティングの方法を用いて、観測パターンy(2θ)Total_obsを、PPSの結晶部分の回折パターンy(2θ)P_Cと、結晶性フィラーに起因するパターンy(2θ)CFと、連続パターンy(2θ)Hと、に分解する。パターン分解部102では、パターンy(2θ)P_C及びパターンy(2θ)CFについては、PPS及び炭酸カルシウムの構造パラメータに基づいて、それらパターンを特定する。また、連続パターンy(2θ)Hについては、参照連続パターンy(2θ)H 100に基づいて、同パターンを特定する。
【0090】
パターン分解部102は、パターン再計算部102aを含んでいる。パターン再計算部102aは、式(4)及び(5)により、y(2θ)CF obs及びy(2θ)P_C obsを観測パターンy(2θ)Total_obsから計算する。以降の処理では、パターン分解により得られたy(2θ)CF及びy(2θ)P_Cの代わりに、y(2θ)CF obs及びy(2θ)P_C obsが用いられる。
【0091】
対象物質強度算出部103は、PPS全体(結晶部分及び非晶質部分を含む)について積分強度YPを算出する。対象物質強度算出部103の結晶性フィラー強度算出部103aには、観測パターンy(2θ)Total_obsから得られた結晶性フィラーの回折パターンy(2θ)CFがパターン分解部102から与えられている。そこで、結晶性フィラー強度算出部103aは、結晶性フィラーの回折パターンの積分強度YCFを式(18)により算出する。対象物質強度算出部103は、こうして算出される結晶性フィラーの回折パターンの積分強度YCFに、試料に含まれる結晶性フィラー及び対象物質の化学式情報に応じた比を乗じることにより、対象物質に係る積分強度YPを算出する。具体的には、式(21)により積分強度YPを算出する。
【0092】
対象物質パターン算出部104は、PPS全体(結晶部分及び非晶質部分を含む)の散乱パターンy(2θ)Pを、その積分強度がYPに一致するようにして連続パターンy(2θ)Hから算出する。
【0093】
対象物質パターン算出部104のバックグラウンド減算部104aは、式(24)により補正された連続パターンy(2θ)H_NCを得る。このとき、バックグラウンド強度算出部104bは、バックグランドb(2θ)Pの積分強度BPを、試料のX線散乱パターンの積分強度y(2θ)Total_obsと、試料に含まれる物質(PPS、炭酸カルシウム及びE-ガラス繊維)の化学式情報と、に基づいて算出する。具体的には、式(17)~(20)に基づいてBPを算出する。そして、バックグラウンド算出部104cは、バックグラウンドb(2θ)Pを、その積分強度がバックグラウンド強度算出部104bにより算出される積分強度BPと一致するようにして算出する。具体的には、参照バックグラウンドであるb(2θ)Siを用いて、式(22)によりバックグラウンドb(2θ)Pを算出する。
【0094】
対象物質パターン算出部104は、補正された連続パターンy(2θ)H_NCに対し、対象物質強度算出部103により算出される積分強度YPに応じた比を乗算することにより、対象物質の散乱パターンy(2θ)Pを算出する。具体的には、式(25)によりy(2θ)Pを算出する。
【0095】
構造不整パラメータ決定部105は、PPSの結晶部分の回折パターンy(2θ)P_Cと、PPS全体の散乱パターンy(2θ)Pと、に基づいてPPSの結晶部分の構造不整パラメータkを決定する。仮結晶化度算出部105aは、式(14)及び(15)に従って、仮結晶化度fnを算出する。
【0096】
仮結晶化度算出部105aは、構造不整パラメータkとパラメータD0のペアについて、それらの値を変更しながら、仮結晶化度fn(1~N)、及び式(16)に示される評価値Sを算出する。パラメータ選択部105bは、そのうち評価値Sが小さな値となる構造不整パラメータk及びパラメータD0の値のペアを選択する。
【0097】
結晶化度出力部106は、パラメータ選択部105bにより選択される構造不整パラメータkに応じた結晶化度を真の結晶化度DOCとして出力する。結晶化度出力部106は、例えば表示部18に表示することにより結晶化度DOCを出力する。
【0098】
以上説明した結晶化度測定装置10によれば、構造不整パラメータkを適切に決定することができ、決定された構造不整パラメータkを用いて、より正確な結晶化度DOCを得ることができる。
【0099】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能であり、そのような変形もまた本発明の範囲に属する。
【0100】
例えば、上記実施形態では、対象物質であるPPSの積分強度YPを結晶性フィラーの積分強度YCFから求めた(式(21)。その他にも、バックグラウンドの積分強度BPが既知の場合には、式(20)により、観測パターンの積分強度YTotal_obsから積分強度YTotalを求め(式(20))、式(19)と同様にして、該積分強度YTotalから対象物質であるPPSの積分強度YPをはじめ、すべての物質の積分強度を求めることができる。
【0101】
また、上記実施形態では、補正された連続パターンy(2θ)H_NCをスケーリングしてy(2θ)Pを得るようにした。その他にも、連続パターンy(2θ)H_NCをスケーリングして、PPSの非晶質部分のパターンy(2θ)P_NCを得て、該パターンy(2θ)P_NCとy(2θ)P_Cを加算することにより、y(2θ)Pを得るようにしてもよい。

図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4