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特開2024-71288回路遮断器、異常監視システム及び分電盤
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  • 特開-回路遮断器、異常監視システム及び分電盤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071288
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】回路遮断器、異常監視システム及び分電盤
(51)【国際特許分類】
   H01H 83/02 20060101AFI20240517BHJP
   H02B 1/40 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H01H83/02 E
H02B1/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182152
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】322003732
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
【テーマコード(参考)】
5G030
5G211
【Fターム(参考)】
5G030XX15
5G030YY12
5G211AA07
5G211BB03
5G211BB04
5G211BB05
5G211BB06
5G211CC02
5G211DD14
5G211DD15
5G211DD27
5G211DD36
5G211DD37
5G211FF02
5G211GG05
5G211GG06
(57)【要約】
【課題】本開示の課題は、故障の有無を自動的に検知可能とすることである。
【解決手段】回路遮断器A1は、異常検出部20と、故障検知部21と、計時部22と、通信部23と、を備える。異常検出部20は、電路13A、13B、13Cに流れる電流及び電路13A、13B、13Cに印加される電圧の少なくとも一方に生じる異常を検出する。故障検知部21は、異常検出部20の故障の有無を検知する。計時部22は、接点14A、14B、14Cに定格電圧が印加された時点からの経過時間を計時する。通信部23は、外部の通信機器と通信可能である。異常検出部20は、異常を検出する動作を、計時部22が計時する経過時間に応じて定期的に実行する。故障検知部21は、異常検出部20が動作を実行したときに故障の有無を検知する。通信部23は、故障検知部21の検知結果を通信機器に送信する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電路に挿入される接点と、
前記電路に流れる電流及び前記電路に印加される電圧の少なくとも一方に生じる異常を検出する異常検出部と、
前記異常検出部の故障の有無を検知する故障検知部と、
前記接点に定格電圧が印加された時点からの経過時間を計時する計時部と、
外部の通信機器と通信可能な通信部と、
を備え、
前記異常検出部は、前記異常を検出する動作を、前記計時部が計時する前記経過時間に応じて定期的に実行し、
前記故障検知部は、前記異常検出部が前記動作を実行したときに前記故障の有無を検知し、
前記通信部は、前記故障検知部の検知結果を前記通信機器に送信する、
回路遮断器。
【請求項2】
前記通信部は、前記検知結果とともに前記経過時間の値を前記通信機器に送信する、
請求項1記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記通信部は、前記経過時間が所定の上限値を超えたとき、前記上限値を超えたことを示す情報を前記通信機器に送信する、
請求項1又は2記載の回路遮断器。
【請求項4】
前記通信部は、電波を通信媒体とする無線通信を行う、
請求項1又は2記載の回路遮断器。
【請求項5】
前記通信部から前記通信機器に送信される情報を、光又は音の少なくとも一方の媒体で表示する表示部を更に備える、
請求項1又は2記載の回路遮断器。
【請求項6】
前記異常検出部は、前記電路に流れる漏電電流を検出する、
請求項1又は2記載の回路遮断器。
【請求項7】
前記異常検出部は、前記電路に印加される異常な電圧を検出する、
請求項1又は2記載の回路遮断器。
【請求項8】
前記故障検知部は、前記電路にテスト電流を流し、前記異常検出部が前記テスト電流を検出するか否かに応じて前記故障の有無を検知する、
請求項6記載の回路遮断器。
【請求項9】
請求項1又は2の回路遮断器と、
前記回路遮断器の前記通信部と通信可能な前記通信機器と、
を有する、
異常監視システム。
【請求項10】
前記通信機器は、移動体通信によって無線通信を行う通信端末を含む、
請求項9記載の異常監視システム。
【請求項11】
前記通信機器は、前記通信端末と前記無線通信を行う通信装置を含み、
前記通信装置は、故障有りの前記検知結果とともに前記故障に対する対処を促すメッセージを前記通信端末に対して送信する、
請求項10記載の異常監視システム。
【請求項12】
請求項1又は2の回路遮断器と、
前記回路遮断器を含む内部機器を収容するキャビネットと、
を備える、
分電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路遮断器、異常監視システム及び分電盤に関し、より詳細には、故障などの異常を監視できる回路遮断器、前記回路遮断器の異常を監視する異常監視システム、及び前記回路遮断器を備える分電盤に関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器の従来例として、特許文献1記載の漏電遮断器を例示する。特許文献1記載の漏電遮断器(以下、従来例という。)は、漏電検出対象の交流電路を1次巻線とする零相変流器と、この零相変流器の二次出力に基づいて交流電路の漏電の有無を判定する漏電検出部と、を備えている。また、従来例は、零相変流器に巻き回されたテスト巻線に、テストスイッチが押下されたときに漏電動作テストのための模擬漏電電流を供給するテスト装置を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-032420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例では、テストスイッチが人に操作されないと漏電動作テストが実行されないため、長期間にわたってテストスイッチが操作されず、漏電検出部の故障が見過ごされてしまう可能性があった。
【0005】
本開示の目的は、故障の有無を自動的に検知できる回路遮断器、異常監視システム及び分電盤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る回路遮断器は、電路に挿入される接点と、異常検出部と、故障検知部と、計時部と、通信部と、を備える。前記異常検出部は、前記電路に流れる電流及び前記電路に印加される電圧の少なくとも一方に生じる異常を検出する。前記故障検知部は、前記異常検出部の故障の有無を検知する。前記計時部は、前記接点に定格電圧が印加された時点からの経過時間を計時する。前記通信部は、外部の通信機器と通信可能である。前記異常検出部は、前記異常を検出する動作を、前記計時部が計時する前記経過時間に応じて定期的に実行する。前記故障検知部は、前記異常検出部が前記動作を実行したときに前記故障の有無を検知する。前記通信部は、前記故障検知部の検知結果を前記通信機器に送信する。
【0007】
本開示の一態様に係る異常監視システムは、前記回路遮断器と、前記回路遮断器の前記通信部と通信可能な通信機器と、を有する。
【0008】
本開示の一態様に係る分電盤は、前記回路遮断器と、前記回路遮断器を含む内部機器を収容するキャビネットと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の回路遮断器、異常監視システム及び分電盤は、故障の有無を自動的に検知できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の実施形態に係る回路遮断器の回路ブロック図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係る異常監視システムのシステム構成図である。
図3図3は、同上の回路遮断器の正面図である。
図4図4Aは、本開示の実施形態に係る分電盤の正面図である。図4Bは、同上の分電盤の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態に係る回路遮断器A1、異常監視システムS1及び分電盤B1について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、下記の実施形態において説明する各図は模式的な図であり、各構成要素の大きさ及び厚さのそれぞれの比が必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。なお、以下の実施形態で説明する構成は本開示の一例にすぎない。本開示は、以下の実施形態に限定されず、本開示の効果を奏することができれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
(1)概要
実施形態に係る回路遮断器A1は、図1に示すように、電路13A、13B、13Cに挿入される接点14A、14B、14Cと、異常検出部20と、故障検知部21と、計時部22と、通信部23と、を備える。
【0013】
実施形態における電路は、2つの電圧極(電圧線)の電路13A、13Bと1つの接地極(中性線)の電路13Cからなる単相3線式の電路である。ただし、電路は、単相2線式、3相3線式又は3相4線式の電路であっても構わない。
【0014】
3つの電路13A、13B、13Cのそれぞれに接点が1つずつ挿入される。つまり、接点14Aが電路13Aに挿入され、接点14Bが電路13Bに挿入され、接点14Cが電路13Cに挿入されている。なお、これらの接点14A、14B、14Cは、不図示の開閉機構によって開閉される。
【0015】
異常検出部20は、電路13A、13B、13Cに流れる電流及び電路13A、13B、13Cに印加される電圧の少なくとも一方に生じる異常を検出する。電路13A、13B、13Cに流れる電流に生じる異常は、例えば、電路13A、13B、13Cに地絡電流が流れる現象、あるいは電路13A、13B、13Cに定格電流を超える過電流が流れる現象などが想定される。また、電路13A、13B、13Cに印加される電圧に生じる異常は、例えば、中性線の欠相に起因して電路13A、13B、13Cに過電圧が印加される現象などが想定される。
【0016】
故障検知部21は、異常検出部20の故障の有無を検知する。異常検出部20の故障は、例えば、異常検出部20を構成する回路部品の故障、あるいは異常検出部20を構成する回路の断線などを原因として、異常検出部20が正常に動作しない現象である。
【0017】
計時部22は、接点14A、14B、14Cに定格電圧が印加された時点からの経過時間を計時する。接点14A、14B、14Cに定格電圧が印加された時点とは、電路13A、13B、13Cに初めて定格電圧(単相3線式の場合は実効値100V及び200Vの交流電圧)が印加された時点である。つまり、計時部22は、製造工場における検査等において、定格電圧未満の電圧が印加された時点では経過時間の計時を開始しない。
【0018】
通信部23は、外部の通信機器と通信可能である。外部の通信機器とは、例えば、実施形態に係る異常監視システムS1に含まれるサーバ2である。通信部23は、有線又は無線の通信媒体を通じて、外部の通信機器(サーバ2)とデータ通信を行うように構成される。
【0019】
異常検出部20は、異常を検出する動作を、計時部22が計時する経過時間に応じて定期的に実行する。故障検知部21は、異常検出部20が動作を実行したときに故障の有無を検知する。通信部23は、故障検知部21の検知結果(故障有り又は故障なし)を通信機器に送信する。
【0020】
しかして、実施形態に係る回路遮断器A1は、計時部22が計時する経過時間に応じて、故障検知部21が定期的に異常検出部20の故障の有無を検知するので、例えば、人にテストボタンを操作させなくても、故障の有無を自動的に検知できる。
【0021】
また、実施形態に係る異常監視システムS1は、図2に示すように、実施形態に係る回路遮断器A1と、実施形態に係る回路遮断器A1の通信部23と通信可能な通信機器と、を有する。
【0022】
通信機器は、例えば、回路遮断器A1から離れた場所に設置されているサーバ2である。また、通信機器は、スマートフォンのように移動体通信が可能な通信端末3を含んでも構わない。
【0023】
さらに、実施形態に係る分電盤B1は、図2に示すように、回路遮断器A1と、回路遮断器A1を含む内部機器を収容するキャビネット70と、を備える。
【0024】
しかして、実施形態に係る異常監視システムS1及び分電盤B1は、実施形態に係る回路遮断器A1を備えているので、(回路遮断器A1の)故障の有無を自動的に検知できる。
【0025】
(2)詳細
実施形態に係る回路遮断器A1(以下、回路遮断器A1と略す。)は、実施形態に係る分電盤B1(以下、分電盤B1と略す。)の主開閉器(主幹ブレーカとも呼ばれる。)に使用される。なお、主開閉器には、通常、中性線欠相保護機能付の漏電遮断器が用いられる。
【0026】
(2-1)分電盤の詳細
分電盤B1は、単相3線式の配電方式で使用される住宅用分電盤(いわゆる住宅盤)である。ただし、分電盤B1は住宅盤に限定されず、3相3線式又は3相4線式の配電方式で使用されるキャビネット形分電盤などでも構わない。
【0027】
分電盤B1は、内部機器として、回路遮断器A1(主開閉器)と、複数の分岐開閉器C1(分岐ブレーカとも呼ばれる。)と、1次送り分岐開閉器D1と、を備える(図4A参照)。複数の分岐開閉器C1はそれぞれ、配線用遮断器で構成される。ただし、複数の分岐開閉器C1の少なくとも1つが実施形態に係る回路遮断器として構成されても構わない。
【0028】
これら複数の分岐開閉器C1の1次側端子は、分岐線及び母線(図示略)を介して回路遮断器A1の2次側端子12と電気的に接続される。また、1次送り分岐開閉器D1は、回路遮断器A1の1次側端子11(図1参照)と電気的に接続される。ただし、分電盤B1が備える内部機器は、1次送り分岐開閉器D1以外の内部機器、例えば、電流制限器(リミッタとも呼ばれる。)などでも構わない。
【0029】
分電盤B1は、これらの内部機器を収容するキャビネット70を備える(図4A及び図4B参照)。キャビネット70は、ボックス71とカバー72を有する。
【0030】
ボックス71は、電気絶縁性を有する合成樹脂によって前面が開口した箱形に形成される。ボックス71の内底面に金属製の取付板(図示略)が固定される。そして、回路遮断器A1、複数の分岐開閉器C1及び1次送り分岐開閉器D1は、取付板の前面に取り付けられてボックス71に収容される。
【0031】
カバー72は、ボックス71と同様に電気絶縁性を有する合成樹脂により、後面が開口した箱状に形成される。カバー72は、ボックス71の前面の開口を覆うようにボックス71に取り付けられる(図4A参照)。ただし、カバー72の底面には2つの窓(第1の窓721、第2の窓722)が設けられる。第1の窓721は、ボックス71に収容された回路遮断器A1及び1次送り分岐開閉器D1のそれぞれの前面の一部を露出する。第2の窓722は、ボックス71に収容された複数の分岐開閉器C1の前面の一部を露出する。
【0032】
キャビネット70は、住宅の壁に直付け又はボックス71の後端部分を埋め込むようにして設置される。
【0033】
(2-2)回路遮断器の詳細
上述したように、回路遮断器A1は、中性線欠相保護機能付の漏電遮断器である。
【0034】
回路遮断器A1は、電路13A、13B、13Cに挿入される接点14A、14B、14Cと、異常検出部20と、故障検知部21と、計時部22と、を備える。また、回路遮断器A1は、表示部24と、引外し装置25と、を備える(図1参照)。さらに、回路遮断器A1は、これらを収容するケース10を更に備える(図3参照)。
【0035】
(2-2-1)ケース
ケース10は、電気絶縁性を有する合成樹脂によって直方体状に形成される。なお、以下の説明においては、図3における上下方向、左右方向をケース10の上下方向、左右方向と規定し、図3の紙面に垂直な方向を前後方向(紙面の手前方向を前方向)と規定する。
【0036】
ケース10の上端部に端子台100が設けられている。端子台100には、3つの1次側端子11が左右方向に並べて設けられている。これら3つの1次側端子11は、ねじ穴を有する端子板110と、端子板110のねじ穴にねじ込まれる端子ねじ(図示略)と、をそれぞれ有している。左右方向に隣り合う3つの端子板110のそれぞれの間に絶縁壁111が設けられている。なお、左右両端の端子板110がそれぞれ電圧極の1次側端子11であり、中央の端子板110が接地極(中性極)の1次側端子11であり、左右両端の端子板110と中央の端子板110がそれぞれ絶縁壁111で隔絶されている。
【0037】
また、ケース10の右上端部から端子取付部101が上向きに突出している。端子取付部101の右側面から3つの2次側端子12が突出している。これら3つの2次側端子12は、母線となる3本の導電バー(図示略)にねじ止めされて電気的に接続される。なお、端子取付部101内には、3つの電路13A、13B、13Cの一部を形成する3本の電線(図示略)が収容される。
【0038】
ケース10は、3つの1次側端子11と3つの2次側端子12を1組ずつ電気的に接続する3つの電路13A、13B、13Cと、これら3つの電路13A、13B、13Cに1つずつ挿入される3つの接点14A、14B、14Cと、を収容している。
【0039】
3つの2次側端子12は、ケース10の右側面の上部からケース10の前面と略平行に突出している。これら3つの2次側端子12は、前方から見て上下方向に1列に並び、かつ、右方向から見て前後方向に2列に並んでいる。上下両端の2つの2次側端子12が電圧極の端子であり、中央の2次側端子12が中性極の端子である。なお、電圧極の2つの2次側端子12がケース10の後端部に配置され、中性極の2次側端子12がケース10の前端部に配置される。
【0040】
また、図示は省略するが、ケース10は、接点14A、14B、14Cをまとめて開閉する開閉機構を収容している。開閉機構は、ハンドル15の操作に応じて接点14A、14B、14Cを開閉し、かつ、引外し装置25によって接点14A、14B、14Cを強制的に開極する(引き外す)ように構成される。なお、ハンドル15は、ケース10の前面中央に設けられた開口102を通してケース10の外に露出している(図3参照)。
【0041】
さらに、ケース10は、異常検出部20、故障検知部21、計時部22、通信部23などを収容する。
【0042】
(2-2-2)引外し装置
引外し装置25は、漏電などの異常が生じた場合に接点14A、14B、14Cを開極させて電路13A、13B、13Cを遮断する。例えば、引外し装置25は、ソレノイドを備えており、ソレノイドの励磁コイルに通電してプランジャを動かすことにより、開閉機構を駆動して接点14A、14B、14Cを開極させる。
【0043】
(2-2-3)表示部
表示部24は、異常検出部20が異常を検出した場合、及び故障検知部21が故障を検知した場合にその旨を知らせる役割を担っている。例えば、表示部24は、赤色光と緑色光を択一的に発する表示素子を備える。表示素子は、例えば、赤色光を発するLEDと緑色光を発するLEDを1つのパッケージに収容して構成される。
【0044】
表示部24は、異常検出部20が異常を検出した場合、及び故障検知部21が故障を検知した場合に表示素子を赤色に発光させる。また、表示部24は、後述するように故障検知部21による検知結果が良であった場合に表示素子を緑色に発光させる。つまり、表示部24は、表示素子の発する光の色によって異常の有無及び故障の有無を視覚的に表示する。なお、表示素子が発する光は、ケース10の前面に設けられた表示窓103(図3参照)を通してケース10の外に放射される。また、表示部24は、光による表示に代えて、あるいは、光による表示とともに音による表示、例えば、ブザー音の鳴動又は音声メッセージの出力などを行っても構わない。
【0045】
(2-2-4)通信部
通信部23は、電波を通信媒体とする無線通信を行う。例えば、通信部23は、電気通信事業者の携帯電話網を利用したデータ通信規格(セルラーLPWA:Low Power Wide Area)に準拠した無線通信を行う。ただし、通信部23は、Wi-Fi(登録商標)、及びBluetooth(登録商標)等の他のデータ通信規格に準拠した無線通信を行ってもよい。
【0046】
通信部23は、制御回路210から受け取る送信フレームを無線信号によってサーバ2に送信する送信処理と、サーバ2から送信される無線信号を受信し、無線信号に含まれる受信フレームを制御回路210に渡す受信処理と、を実行する。
【0047】
(2-2-5)計時部
計時部22は、例えば、電池などのバックアップ電源を有して計時処理を行う集積回路(RTC:リアルタイムクロック)で構成される。ただし、計時部22は、後述する制御回路210の主構成要素であるマイクロコントローラに内蔵されたRTCであっても構わない。
【0048】
(2-2-6)異常検出部
異常検出部20は、零相変流器200、漏電判定回路201、電圧測定回路202などを有する(図1参照)。
【0049】
(2-2-6-1)零相変流器
零相変流器200は、中心部に開口を有するトロイダルコアに2次巻線(出力巻線)が巻線されて構成される。なお、零相変流器200の2次巻線の端子間に抵抗器(図示略)が電気的に接続される。零相変流器200のトロイダルコアの開口に3つの電路13A、13B、13Cが挿通される。
【0050】
(2-2-6-2)漏電判定回路
漏電判定回路201は、A/D変換機能を有する集積回路(例えば、ASIC:特定用途向け集積回路)で構成される。
【0051】
漏電判定回路201は、零相変流器200のアナログの検出電圧(抵抗器の両端電圧)を量子化してデジタルの検出電圧値に変換する。なお、デジタルの検出電圧値(以下、検出電圧値と略す。)は、漏電判定回路201のバッファメモリ(図示略)に記録される。
【0052】
漏電判定回路201は、バッファメモリから読み出した検出電圧値から漏電電流の実効値を演算する。具体的に、漏電判定回路201は、電力系統の1周期に相当する時間分の検出電圧値(絶対値)の2乗値を積分し、その積分値を1周期に相当する時間で除算した値の平方根(実効値)を算出する。なお、以下の説明では漏電判定回路201で算出する検出電圧の実効値を漏電電流の実効値と呼ぶ。
【0053】
漏電判定回路201は、漏電電流の実効値をしきい値と比較する。そして、漏電判定回路201は、漏電電流の実効値がしきい値以上の場合に漏電電流が既定値以上とみなして漏電有りと判定し、漏電電流の実効値がしきい値未満の場合に漏電電流が既定値未満とみなして漏電なしと判定する。
【0054】
ところで、漏電電流が生じる原因には、主に次の3つの原因があると考えられる。
【0055】
1つ目は、分岐開閉器C1を介して電路13A、13B、13Cに接続されている負荷の絶縁不良などである。負荷の絶縁不良などを原因とする漏電電流は、電源周波数(電力系統の周波数である50Hz又は60Hz)と略等しい周波数の交番電流(以下、通常漏電電流と呼ぶ。)である。なお、通常漏電電流は、負荷の絶縁不良などを解消しない限り流れ続ける。
【0056】
2つ目は、誘導雷の雷サージである。雷サージによる漏電電流は、通常、漏電電流よりも十分に大きく、かつ、短時間しか流れない。
【0057】
3つ目は、インバータ及びコンバータなどのスイッチング素子を使用する機器を負荷とすることである。スイッチング素子を原因とする漏電電流は、スイッチング周波数及びその高調波の周波数に略等しい周波数の交番電流(以下、スイッチング漏電電流と呼ぶ。)である。なお、スイッチング漏電電流は、原因となる負荷が動作している間は流れ続ける。
【0058】
しかして、回路遮断器A1は、通常、漏電電流を検出して漏電有りと判定すれば、接点14A、14B、14Cを開極して電路13A、13B、13Cを遮断することが望ましい。一方、回路遮断器A1は、雷サージによる漏電電流が流れているとき、及びスイッチング漏電電流が流れているときは、漏電なしと判定して電路13A、13B、13Cを遮断しないことが望ましい。
【0059】
そのため、漏電判定回路201は、バッファメモリから読み出した検出電圧値から漏電電流の実効値を演算する際、デジタルフィルタ(ローパスフィルタ)を用いてカットオフ周波数よりも高い周波数の検出電圧値を除去することが望ましい。なお、カットオフ周波数は、電源周波数(50Hz又は60Hz)の3倍から4倍高い周波数(例えば、200Hz)であることが望ましい。
【0060】
しかして、漏電判定回路201は、デジタルフィルタでフィルタリングした検出電圧値の実効値を演算し、当該実効値をしきい値と比較することで漏電の有無を判定する。その結果、漏電判定回路201は、雷サージによる漏電電流及びスイッチング漏電電流によって漏電有りと判定することを回避できる。
【0061】
なお、漏電判定回路201は、漏電有りと判定したときに漏電検出信号(異常検出信号)を出力する。
【0062】
(2-2-6-3)電圧測定回路
電圧測定回路202は、A/D変換機能を有する集積回路(例えば、ASIC:特定用途向け集積回路)で構成される。電圧測定回路202は、一方の電圧極の電路13Aと中性極の電路13Cの電位差(第1電位差)と、他方の電圧極の電路13Bと中性極の電路13Cの電位差(第2電位差)と、を各別に測定する。電圧測定回路202は、更に、第1電位差及び第2電位差の各々の測定値(アナログの電圧値)を量子化してデジタルの測定値に変換する。なお、第1電位差及び第2電位差の各々のデジタルの測定値を第1電位差測定値、第2電位差測定値と呼ぶ場合がある。電圧測定回路202は、第1電位差測定値及び第2電位差測定値をバッファメモリ(図示略)に記録する。
【0063】
電圧測定回路202は、バッファメモリから読み出した第1電位差測定値及び第2電位測定値のそれぞれの実効値を演算する。具体的に、電圧測定回路202は、電力系統の1周期に相当する時間分の第1電位差測定値及び第2電位差測定値(絶対値)の2乗値を積分し、その積分値を1周期に相当する時間で除算した値の平方根(実効値)を算出する。
【0064】
電圧測定回路202は、第1電位差測定値及び第2電位測定値のそれぞれの実効値を、上限値及び下限値と比較する。上限値は、例えば第1電位差測定値及び第2電位測定値のそれぞれの実効値の定格値(100V)よりも高い値(例えば、130V)に設定される。また、下限値は、定格値よりも低い値(例えば、70V)に設定される。電圧測定回路202は、第1電位差測定値及び第2電位測定値のそれぞれの実効値が上限値と下限値の間に収まっているときは正常(異常なし)と判定する。電圧測定回路202は、第1電位差測定値及び第2電位測定値の少なくとも一方の実効値が上限値以上又は下限値以下であるときは異常有りと判定する。例えば、中性線が欠相した場合、第1電位差測定値及び第2電位測定値の少なくとも一方の実効値が上限値を超えて200Vに達することがある。
【0065】
なお、電圧測定回路202は、異常有りと判定したときに異常検出信号を出力する。
【0066】
(2-2-7)故障検知部
故障検知部21は、制御回路210と、電流発生回路211と、を有する(図1参照)。
【0067】
制御回路210は、マイクロコントローラを主構成要素とする。実施形態における制御回路210は、故障検知の処理だけでなく、異常検出部20が異常を検出したときの処理も行う。すなわち、制御回路210は、異常検出部20の漏電判定回路201及び電圧測定回路202のいずれかから異常検出信号を受け取った場合、引外し装置25を制御して接点14A、14B、14Cを開極させる。なお、制御回路210は、異常検出信号に応じて接点14A、14B、14Cを開極させた場合、接点14A、14B、14Cが開極したことを表示部24に表示させる。
【0068】
また、制御回路210は、電流発生回路211を制御して異常検出部20の故障検知の処理を実行する。制御回路210は、後述するように計時部22が計時する経過時間に基づいて定期的に故障検知の処理を実行する。ただし、制御回路210は、ケース10の前面に設けられているテストボタン16が押操作されてトリガスイッチ26がオンすることでトリガ入力を受け付け、トリガ入力を受け付けた場合にも故障検知の処理を開始する。ただし、制御回路210は、後述するように異常検出部20から異常検出信号を受け取った場合に引外し装置25を制御して接点14A、14B、14Cを強制的に開極させる(引き外す)。なお、制御回路210の具体的な制御動作については後述する。
【0069】
電流発生回路211は、制御回路210に制御されて出力線212に擬似漏えい電流(テスト電流Is)を流すように構成される(図1参照)。出力線212は、零相変流器200のトロイダルコアの開口に挿通される。テスト電流Isは、電源周波数(50Hz又は60Hz)よりも十分に高い周波数(例えば、300Hzから500Hz)の交番電流(出力線212に流れる電流の向きが周期的に反転する電流)である。
【0070】
ここで、零相変流器200から出力される検出電圧は、出力線212に流れるテスト電流Isの周波数・大きさに応じた周波数・大きさの電圧を含んでいる。特に、3つの電路13A、13B、13Cに流れる電流が平衡している場合(漏電が生じていない場合)、検出電圧は、出力線212に流れるテスト電流Isの周波数・大きさに応じた周波数・大きさの電圧となる。
【0071】
制御回路210は、電流発生回路211から出力線212にテスト電流Isが流されている間、漏電判定回路201の動作モードを故障検知用の動作モードに切り替える。故障検知用の動作モードにおいて、漏電判定回路201は、ローパスフィルタに代えて、テスト電流Isの周波数を通過域に含むバンドパスフィルタを用いて零相変流器200の検出電圧値をフィルタリングし、フィルタリングした検出電圧値の実効値を演算する。
【0072】
漏電判定回路201は、演算した実効値をしきい値と比較し、実効値がしきい値以上であれば、異常検出信号を制御回路210に出力し、実効値がしきい値未満であれば、異常検出信号を制御回路210に出力しない。
【0073】
制御回路210は、漏電判定回路201の動作モードを故障検知用の動作モードに切り替えている間に異常検出信号を受け取れば、テスト電流Isが検出された(検知結果は良)と判定する。一方、漏電判定回路201の動作モードを故障検知用の動作モードに切り替えている間に異常検出信号を受け取らなければ、制御回路210は、テスト電流Isが検出されない(検知結果は不良)と判定する。そして、制御回路210は、検知結果の良(故障なし)/不良(故障有り)とテストを実行した時間(経過時間)のそれぞれのデータを、通信部23からサーバ2へ送信させる。さらに、制御回路210は、表示部24を制御して検知結果の良否(故障の有無)を表示させる。
【0074】
(2-3)異常監視システムの詳細
実施形態に係る異常監視システムS1(以下、異常監視システムS1と略す。)は、図2に示すように、回路遮断器A1と、回路遮断器A1の通信部23と通信可能な通信機器と、を有する。
【0075】
通信機器は、例えば、回路遮断器A1から離れた場所に設置されているサーバ2である。また、通信機器は、スマートフォンのように移動体通信が可能な通信端末3を含む。
【0076】
サーバ2は、電気通信事業者の携帯電話網を経由して回路遮断器A1の通信部23とデータ通信を行うことができる。サーバ2は、例えば、汎用のコンピュータシステムからなるハードウェアと、コンピュータシステムに種々の処理を行わせるソフトウェアと、で構成される。
【0077】
サーバ2は、回路遮断器A1の通信部23から送信されるデータ(異常検出及び故障検知の情報を含むデータ)を受信する。サーバ2は、受信したデータに異常検出有り又は故障有りの検知結果の情報が含まれている場合、データの送信元である回路遮断器A1と対応付けられている通信端末3に対して異常検出又は故障検知の情報を送信する。
【0078】
通信端末3は、携帯電話網を利用した移動体通信(第4世代移動体通信又は第5世代移動体通信)の機能を有するスマートフォンである。通信端末3は、異常監視システムS1の監視対象である回路遮断器A1が設置されている住宅の住人に携帯される。通信端末3には、住人に異常検出及び故障検知の情報を通知するためのアプリ(以下、通知用アプリと呼ぶ。)がインストールされる。通知用アプリは、例えば、プッシュ通知機能及び電子メールの少なくとも一方を利用してサーバ2から異常検出及び故障検知の情報を受け取ることができる。異常検出及び故障検知の情報を受け取った通知用アプリは、受け取った情報を通信端末3のディスプレイに表示する。なお、通信端末3はスマートフォンに限定されず、携帯電話網を利用した移動体通信の機能を有するタブレット型のパーソナルコンピュータ又はノート型のパーソナルコンピュータであっても構わない。
【0079】
(2-4)回路遮断器及び異常監視システムの動作説明
(2-4-1)回路遮断器の動作説明
回路遮断器A1の異常検出部20は、電路13A、13B、13Cに電圧が印加されている間、一定の間隔(例えば、数秒から数分の間隔)で異常検出の処理を実行する。そして、異常検出部20が異常(漏電及び中性線欠相など)を検出して異常検出信号を制御回路210に出力する。制御回路210は、異常検出信号を受け取ると、引外し装置25を制御して接点14A、14B、14Cを開極し、かつ、表示部24を制御して表示素子を赤色に発光させる。さらに、制御回路210は、異常検出の情報を含む送信フレームを生成して通信部23に渡す。通信部23は、制御回路210から受け取る送信フレームを無線信号によってサーバ2に送信する。
【0080】
また、回路遮断器A1の故障検知部21は、所定の時間間隔(例えば、23時間)で故障検知の処理を実行する。制御回路210は、計時部22が計時する経過時間が23時間経過するごとに電流発生回路211を制御して出力線212にテスト電流Isを流すとともに、漏電判定回路201の動作モードを、異常検出用の動作モードから故障検知用の動作モードに切り替える。
【0081】
制御回路210は、漏電判定回路201の動作モードを故障検知用の動作モードに切り替えている間に異常検出信号を受け取れば、検知結果は良(故障なし)と判定する。一方、漏電判定回路201の動作モードを故障検知用の動作モードに切り替えている間に異常検出信号を受け取らなければ、制御回路210は、検知結果は不良(故障有り)と判定する。そして、制御回路210は、検知結果の良(故障なし)/不良(故障有り)とテスト(故障検知の処理)を実行した時間(経過時間)のそれぞれの情報を含む送信フレームを生成し、当該送信フレームを無線信号によって通信部23からサーバ2へ送信させる。さらに、制御回路210は、表示部24を制御して検知結果の良否(故障の有無)を表示させる。
【0082】
しかして、回路遮断器A1は、異常検出部20を定期的に動作させるので、人がテストボタン16を操作する手間を省きつつ、異常検出部20の異常検出の処理を定期的に実行して異常検出の信頼性の向上を図ることができる。また、回路遮断器A1は、故障検知部21に23時間(あるいは、23時間の整数倍の時間)の時間間隔で故障検知の処理を実行させるので、故障検知の処理が実行される時刻を毎回1時間ずつ早めることができる。その結果、回路遮断器A1は、1日のうちの特定の時間(時刻)に毎回故障検知の処理を実行する場合に比べて、例えば、電気機器から発生する高調波ノイズなどの影響を受けにくくして故障検知の信頼性の向上を図ることができる。さらに、回路遮断器A1は、通信機器(サーバ2)に送信する情報、すなわち、異常検出及び故障検知の情報を表示部24に表示させるので、異常及び故障の発生をより早く住人に知らせることができる。
【0083】
ところで、住宅分電盤の内部機器として使用される回路遮断器(主開閉器、分岐開閉器)の更新推奨時期は13年とされている(一般社団法人日本電機工業会「住宅用分電盤用遮断器の更新推奨時期に関する調査報告書(平成8年3月)」参照)。そのため、回路遮断器A1の制御回路210は、計時部22が計時する経過時間が13年に達した場合、表示部24に交換時期に達したことを表示させるとともに、通信部23からサーバ2に交換時期に達したことを通知させる。例えば、制御回路210は、表示部24を制御して表示素子に緑色光を点滅させることが好ましい。
【0084】
(2-4-2)異常監視システムの動作説明
異常監視システムS1において、サーバ2は、回路遮断器A1の通信部23から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号から送信フレームを取得する。サーバ2は、取得した送信フレームに異常検出の情報が含まれている場合、データの送信元である回路遮断器A1と対応付けられている通信端末3に対して異常検出の情報を送信する。通信端末3は、サーバ2から送信される異常検出の情報を受け取ると、受け取った情報を通知用アプリでディスプレイに表示させる。このとき、通知用アプリは、例えば、「自宅の回路遮断器が漏電を検出してトリップしました。」などのメッセージをディスプレイに表示してもよい。
【0085】
しかして、異常監視システムS1は、異常検出部20による異常検出の情報を通信端末3に送信することにより、通信端末3を携帯する住人に、漏電及び中性線欠相などの異常の発生をいち早く知らせることができる。
【0086】
また、サーバ2は、無線信号から取得した送信フレームに故障検知の情報を含まれている場合、データの送信元である回路遮断器A1と対応付けられている通信端末3に対して故障検知の情報を送信する。通信端末3は、サーバ2から送信される故障検知の情報を受け取ると、受け取った情報を通知用アプリでディスプレイに表示させる。このとき、通知用アプリは、例えば、「自宅の回路遮断器が故障しています。設備業者に故障した回路遮断器の交換を依頼してください。」などのメッセージをディスプレイに表示してもよい。
【0087】
ここで、サーバ2は、回路遮断器A1から受信する故障検知の情報(故障有りの情報)とともに故障が検知されたときの経過時間の情報を通信端末3に送信しても構わない。通信端末3の通知用アプリは、回路遮断器A1の故障を通知するためのメッセージとともに、故障を検知した回路遮断器A1の経過時間をディスプレイに表示する。
【0088】
しかして、異常監視システムS1は、故障を検知した回路遮断器A1の使用者(住人)に経過時間を通知することにより、回路遮断器A1の故障の原因(初期不良又は経年劣化など)を推定するための情報を提供することができる。
【0089】
また、異常監視システムS1において、サーバ2は、回路遮断器A1から交換時期に達したことを通知する無線信号を受信した場合、回路遮断器A1と対応付けられている通信端末3に対して交換時期の情報を送信する。通信端末3は、サーバ2から送信される交換時期の情報を受け取ると、受け取った情報を通知用アプリでディスプレイに表示させる。このとき、通知用アプリは、例えば、「自宅の回路遮断器が交換時期に達しました。設備業者に回路遮断器の交換を依頼することをお勧めします。」などのメッセージをディスプレイに表示してもよい。
【0090】
(3)まとめ
本開示の第1の態様に係る回路遮断器(A1)は、電路(13A、13B、13C)に挿入される接点(14A、14B、14C)と、異常検出部(20)と、故障検知部(21)と、計時部(22)と、通信部(23)と、を備える。異常検出部(20)は、電路(13A、13B、13C)に流れる電流及び電路(13A、13B、13C)に印加される電圧の少なくとも一方に生じる異常を検出する。故障検知部(21)は、異常検出部(20)の故障の有無を検知する。計時部(22)は、接点(14A、14B、14C)に定格電圧が印加された時点からの経過時間を計時する。通信部(23)は、外部の通信機器(サーバ2;通信端末3)と通信可能である。異常検出部(20)は、異常を検出する動作を、計時部(22)が計時する経過時間に応じて定期的に実行する。故障検知部(21)は、異常検出部(20)が動作を実行したときに故障の有無を検知する。通信部(23)は、故障検知部(21)の検知結果を通信機器に送信する。
【0091】
第1の態様に係る回路遮断器(A1)は、計時部(22)が計時する経過時間に応じて、故障検知部(21)が定期的に異常検出部(20)の故障の有無を検知するので、例えば、人にテストボタンを操作させなくても、故障の有無を自動的に検知できる。しかも、第1の態様に係る回路遮断器(A1)は、故障検知部(21)の検知結果を通信部(23)から通信機器に送信させるので、例えば、回路遮断器(A1)が設置されている場所の管理者(住人)に対して、通信機器を通して故障検知の結果を知らせることができる。
【0092】
本開示の第2の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1の態様との組合せにより実現され得る。第2の態様に係る回路遮断器(A1)において、通信部(23)は、検知結果とともに経過時間の値を通信機器に送信することが好ましい。
【0093】
第2の態様に係る回路遮断器(A1)は、故障検知部(21)が検知した故障の原因(初期不良又は経年劣化など)を推定するための情報を提供することができる。
【0094】
本開示の第3の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1又は第2の態様との組合せにより実現され得る。第3の態様に係る回路遮断器(A1)において、通信部(23)は、経過時間が所定の上限値を超えたとき、上限値を超えたことを示す情報を通信機器に送信することが好ましい。
【0095】
第3の態様に係る回路遮断器(A1)は、経過時間が上限値を超えたことを示す情報を通信部(23)から通信機器に送信することにより、耐用年数を超えた状態で使用され続ける状況の回避を図ることができる。
【0096】
本開示の第4の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1-第3のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第4の態様に係る回路遮断器(A1)において、通信部(23)は、電波を通信媒体とする無線通信を行うことが好ましい。
【0097】
第4の態様に係る回路遮断器(A1)は、通信部(23)が有線通信を行う場合に比べて、通信のための初期費用の削減を図ることができる。
【0098】
本開示の第5の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1-第4のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第5の態様に係る回路遮断器(A1)は、通信部(23)から通信機器に送信される情報を、光又は音の少なくとも一方の媒体で表示する表示部(24)を更に備えることが好ましい。
【0099】
第5の態様に係る回路遮断器(A1)は、通信機器に送信される情報、すなわち、故障検知部(21)の検知結果をより早く知らせることができる。
【0100】
本開示の第6の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1-第5のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第6の態様に係る回路遮断器(A1)において、異常検出部(20)は、電路(13A、13B、13C)に流れる漏電電流を検出することが好ましい。
【0101】
第6の態様に係る回路遮断器(A1)は、漏電による不具合の発生を抑制することができる。
【0102】
本開示の第7の態様に係る回路遮断器(A1)は、第1-第6のいずれかの態様との組合せにより実現され得る。第7の態様に係る回路遮断器(A1)において、異常検出部(20)は、電路に印加される異常な電圧を検出することが好ましい。
【0103】
第7の態様に係る回路遮断器(A1)は、例えば、中性線の欠相に伴う異常な電圧による不具合の発生を抑制することができる。
【0104】
本開示の第8の態様に係る回路遮断器(A1)は、第6の態様との組合せにより実現され得る。第8の態様に係る回路遮断器(A1)において、故障検知部(21)は、電路(13A、13B、13C)にテスト電流を流し、異常検出部(20)がテスト電流を検出するか否かに応じて故障の有無を検知することが好ましい。
【0105】
第8の態様に係る回路遮断器(A1)は、テスト電流(擬似的な漏えい電流)を電路(13A、13B、13C)に流すことにより、異常検出部(20)の漏電検出機能が正常か否かを容易に検知することができる。
【0106】
本開示の第9の態様に係る異常監視システム(S1)は、第1-第8のいずれかの態様に係る回路遮断器(A1)と、回路遮断器(A1)の通信部(23)と通信可能な通信機器(サーバ2;通信端末3)と、を有する。
【0107】
第9の態様に係る異常監視システム(S1)は、故障検知部(21)の検知結果を通信部(23)から通信機器に送信させるので、通信機器を通して故障検知の結果を知らせることができる。
【0108】
本開示の第10の態様に係る異常監視システム(S1)は、第9の態様との組合せにより実現され得る。第10の態様に係る異常監視システム(S1)において、通信機器は、移動体通信によって無線通信を行う通信端末(3)を含むことが好ましい。
【0109】
第10の態様に係る異常監視システム(S1)は、例えば、通信端末(3)を所持(携帯)する人に故障検知部(21)の検知結果を速やかに通知することができる。
【0110】
本開示の第11の態様に係る異常監視システム(S1)は、第10の態様との組合せにより実現され得る。第11の態様に係る異常監視システム(S1)において、通信機器は、通信端末(3)と無線通信を行う通信装置(サーバ2)を含むことが好ましい。通信装置は、故障有りの検知結果とともに故障に対する対処を促すメッセージを通信端末(3)に対して送信することが好ましい。
【0111】
第11の態様に係る異常監視システム(S1)は、異常検出部(20)の故障に対する対処を促すことができる。
【0112】
本開示の第12の態様に係る分電盤(B1)は、第1-第8のいずれかの態様に係る回路遮断器(A1)と、回路遮断器(A1)を含む内部機器(分岐開閉器C1;1次送り分岐開閉器D1)を収容するキャビネット(70)と、を備える。
【0113】
第12の態様に係る分電盤(B1)は、故障検知部(21)の検知結果を通信部(23)から通信機器に送信させるので、例えば、回路遮断器(A1)が設置されている場所の管理者(住人)に対して、通信機器を通して故障検知の結果を知らせることができる。
【符号の説明】
【0114】
A1 回路遮断器
B1 分電盤
C1 分岐開閉器(内部機器)
D1 1次送り分岐開閉器(内部機器)
S1 異常監視システム
2 サーバ(通信機器)
3 通信端末(通信機器)
13A、13B、13C 電路
14A、14B、14C 接点
20 異常検出部
21 故障検知部
22 計時部
23 通信部
24 表示部
70 キャビネット
図1
図2
図3
図4