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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071299
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】接着剤組成物及び接着剤層付き積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/26 20060101AFI20240517BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240517BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240517BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20240517BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240517BHJP
   B32B 27/00 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C09J123/26
C09J163/00
C09J11/04
C09J7/35
B32B27/32 Z
B32B27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182164
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】沖村 祐弥
(72)【発明者】
【氏名】平川 真
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AA34A
4F100AA34H
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03G
4F100AK03J
4F100AK49B
4F100AK53A
4F100AK53G
4F100AK53J
4F100AL04A
4F100AL04G
4F100AL04J
4F100AL07A
4F100AL07G
4F100AL07J
4F100AT00
4F100BA02
4F100CB012
4F100CB01A
4F100CB01G
4F100EH462
4F100EH46A
4F100EH46G
4F100EJ422
4F100EJ42A
4F100EJ42G
4F100GB41
4F100JG05
4J004AA07
4J004AA13
4J004AA18
4J004AB05
4J004CA08
4J004CE01
4J004FA08
4J040DA091
4J040DA161
4J040EC261
4J040HA176
4J040JB02
4J040LA09
4J040NA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】得られる硬化物が十分に高い誘電率を示し、この硬化物は接着性に優れ、耐熱性にも優れ、また柔軟性及び耐屈曲性にも優れ、さらに、低吸水性で高周波電子部品の長期信頼性のさらなる向上にも寄与する接着剤組成物を提供すること。また、この接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体を提供すること。
【解決手段】酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、Ba、Ti、Sr、Pb、Zr、La、Ta、Ca及びBiの少なくとも2種を含む複合金属酸化物(C)と、を含み、全固形分中、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が10質量%以上であり、硬化反応後の硬化物の誘電率が2.9以上である、接着剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
Ba、Ti、Sr、Pb、Zr、La、Ta、Ca及びBiの少なくとも2種を含む複合金属酸化物(C)と、を含み、
全固形分中、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が10質量%以上であり、
硬化反応後の硬化物の誘電率が2.9以上である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記複合金属酸化物(C)の誘電率が100以上である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記複合金属酸化物(C)の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量100質量部に対し、50~700質量部である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記複合金属酸化物(C)がチタン酸化合物である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記チタン酸化合物が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸カルシウムの少なくとも1種である、請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が、0.1~50mgKOH/gである、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボン酸化合物によるグラフト変性ポリオレフィン樹脂である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂(B)が、脂環骨格を有する多官能エポキシ樹脂である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量100質量部に対し、5~25質量部である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
基材フィルムと、請求項1~9のいずれか1項に記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付き積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及び接着剤層付き積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や情報機器端末等の移動体通信機器においては、大量のデータを高速で通信するために、信号の高周波数化が進み、さらに、機器に搭載する高周波電子部品(例えば基板アンテナ、レンズアンテナ及びキャパシタ等)の集積化も進んでいる。高速大容量の通信が求められるなかで、高周波電子部品にはさらなる高性能化と小型化が求められている。
このような高周波電子部品に用いられる接着剤(樹脂組成物)には高周波数領域において高い誘電率が求められる。この要求に応えるため、例えば特許文献1には、特定構造のエポキシ樹脂を1種類以上と、誘電体とを、各特定量含有させた樹脂組成物が記載されている。特許文献1記載の技術によれば、この樹脂組成物を硬化させることにより、所望の誘電特性、可撓性及び接着性を示す硬化物が得られるとされる。
また、特許文献2には、エックス線回析によって求まる結晶歪みが0.04%以上である誘電体無機フィラーと特定の熱可塑性樹脂とをそれぞれ特定量で含有する誘電体樹脂組成物が記載されている。特許文献2記載の技術によれば、上記誘電体無機フィラーが1GHz以上の高周波領域において高い比誘電率と小さな誘電正接を有し、上記誘電体樹脂組成物の成形体の比誘電率を高めることができ、また誘電正接を小さく抑えることができるとされる。
さらに、特許文献3には、両端短絡型共振法による比誘電率が25以上、誘電正接が0.003未満で、比誘電率の温度係数(ppm/℃)を特定範囲に制御した高誘電性樹脂組成物を、特定のセラミックス粉末とポリフェニレンサルファイド樹脂を用いて調製したことが記載されている。特許文献3記載の技術によれば、この高誘電性樹脂組成物が特に優れた高誘電率かつ低誘電正接を示し、また、温度環境変化に対して誘電率が変化しにくいとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-185051号公報
【特許文献2】特開2005-093096号公報
【特許文献3】特開2007-227099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが、上記各特許文献に記載された技術について検討したところ、特許文献1に記載の樹脂組成物は、樹脂成分がエポキシ樹脂を主体としており、その硬化物の弾性率が高く、脆い性状となること、さらに、この硬化物は吸水性が高く、この硬化物を有する高周波電子部品には長期信頼性の問題が生じやすいことがわかってきた。また、特許文献2及び3に記載の樹脂組成物については、特定の熱可塑性樹脂と強誘電体との組合せにより、その硬化物(成形体)等は高誘電率と柔軟性とを合わせ持つことができる。しかし、本発明者らが検討を進めると、耐熱性を十分に高めることが難しいことがわかってきた。すなわち、熱に晒されると柔らかくなり基板等から硬化物が剥がれやすく、また、はんだ処理によって硬化物にふくれが生じやすいという問題も明らかになってきた。
【0005】
上記した事情に鑑み、本発明は、得られる硬化物が十分に高い誘電率を示し、この硬化物は接着性に優れ、耐熱性にも優れ、また柔軟性及び耐屈曲性にも優れ、さらに、低吸水性で高周波電子部品の長期信頼性のさらなる向上にも寄与する接着剤組成物を提供することを課題とする。また、本発明はこの接着剤組成物を用いた接着剤層付き積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は下記手段により解決される。
[1]
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
Ba、Ti、Sr、Pb、Zr、La、Ta、Ca及びBiの少なくとも2種を含む複合金属酸化物(C)と、を含み、
全固形分中、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が10質量%以上であり、
硬化反応後の硬化物の誘電率が2.9以上である、接着剤組成物。
[2]
前記複合金属酸化物(C)の誘電率が100以上である、[1]に記載の接着剤組成物。
[3]
前記複合金属酸化物(C)の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量100質量部に対し、50~700質量部である、[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]
前記複合金属酸化物(C)がチタン酸化合物である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[5]
前記チタン酸化合物が、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸カルシウムの少なくとも1種である、[4]に記載の接着剤組成物。
[6]
前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価が、0.1~50mgKOH/gである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[7]
前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボン酸化合物によるグラフト変性ポリオレフィン樹脂である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[8]
前記エポキシ樹脂(B)が、脂環骨格を有する多官能エポキシ樹脂である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[9]
前記エポキシ樹脂(B)の含有量が、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量100質量部に対し、5~25質量部である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の接着剤組成物。
[10]
基材フィルムと、[1]~[9]のいずれか1つに記載の接着剤組成物からなる接着剤層と、を備える接着剤層付き積層体。
【0007】
本発明及び本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば、「A~B」と記載されている場合、その数値範囲は、「A以上B以下」である。
本発明及び本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルの一方又は両方を意味する。
本発明及び本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記述する。)により測定された標準ポリスチレン換算値である。
【0008】
本発明及び本明細書において、「接着剤層」という場合、硬化前の状態、Bステージの状態(すなわち、一部が硬化し始めた半硬化状態にあり、加熱等により硬化がさらに進行する状態)、又は、硬化反応を進行させて十分に架橋構造を形成させた後の状態の層を意味する。また、「硬化物」又は「硬化膜」という場合、接着剤組成物を硬化反応させて十分に架橋構造を形成させた後の状態にある物又は膜を意味する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着剤組成物は、得られる硬化物が十分に高い誘電率を示し、この硬化物は接着性に優れ、耐熱性にも優れ、また柔軟性及び耐屈曲性にも優れ、さらに、低吸水性で高周波電子部品の長期信頼性のさらなる向上にも寄与する。また、本発明の接着剤層付き積層体は、接着剤層を硬化して得られる硬化膜が十分に高い誘電率を示し、この硬化膜は接着性に優れ、耐熱性にも優れ、また柔軟性及び耐屈曲性にも優れ、さらに、低吸水性で高周波電子部品の長期信頼性のさらなる向上にも寄与する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の接着剤組成物について好ましい実施形態を説明するが、本発明は、本発明で規定すること以外は、下記の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、Ba、Ti、Sr、Pb、Zr、La、Ta、Ca及びBiの少なくとも2種を含む複合金属酸化物(C)とを含み、全固形分中、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が10質量%以上であり、硬化反応後の硬化物の誘電率が2.9以上であることを特徴とする。本発明の接着剤組成物を構成する各成分について、順に説明する。
【0012】
<酸変性ポリオレフィン樹脂(A)>
本発明の接着剤組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の1種又は2種以上を含有する。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、α,β-不飽和カルボン酸化合物を変性剤として用いたものが好ましい。すなわち、α,β-不飽和カルボン酸化合物をポリオレフィンにグラフト重合して得られる樹脂であることが好ましい。グラフト重合(グラフト変性)の方法それ自体は常法により行うことができる。通常は、ラジカル開始剤(ラジカル発生剤)を用いたラジカル反応により、α,β-不飽和カルボン酸化合物をポリオレフィンにグラフト重合反応させる。例えば、ポリオレフィンをトルエン等の溶媒に加熱溶解し、α,β-不飽和カルボン酸化合物及びラジカル開始剤を添加する溶液法が採用されてもよく、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等を使用して、ポリオレフィン、α,β-不飽和カルボン酸化合物及びラジカル開始剤を溶融混練する溶融法が採用されてもよい。ポリオレフィン、α,β-不飽和カルボン酸化合物及びラジカル開始剤は、グラフト重合反応の反応系に一括添加してもよく、逐次添加してもよい。また、α,β-不飽和カルボン酸化合物のグラフト効率を向上させるための変性助剤、樹脂安定性の調整のための安定剤等を更に使用することができる。
【0013】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を構成するポリオレフィン(変性前のポリオレフィン)は、オレフィン由来の構造単位を有するものであれば特に限定されない。例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、及び4-メチル-1-ペンテン等の炭素原子数2~20のオレフィンの単独重合体又は共重合体が好ましい。なかでも、上記ポリオレフィンは炭素原子数2~6のオレフィンの単独重合体又は共重合体が好ましい。上記ポリオレフィン中の各構造単位の含有割合は特に制限されない。上記ポリオレフィンは、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、又はエチレン-プロピレン-ブテン共重合体の少なくとも1種が好ましい。
上記ポリオレフィンは、プロピレン単位を含むことが好ましい。この場合、上記ポリオレフィンは、プロピレン単位からなる単独重合体であってもよく、プロピレン単位を含む共重合体であってもよい。
上記ポリオレフィンがプロピレン単位を含む場合、全構造単位に占めるプロピレン単位の含有割合が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましい。上記ポリオレフィンが構造単位としてプロピレン単位を含む共重合体である場合、全構造単位に占めるプロピレン単位の含有割合は50~98モル%が好ましく、60~98モル%がより好ましい。共重合体におけるプロピレン単位の含有割合をこのような範囲内とすることにより、2つの部材を接着した後の接着部に、より高い柔軟性及び耐屈曲性を付与することができる。
上記ポリオレフィンの分子量は特に制限されない。例えば、重量平均分子量(Mw)を30000~250000とすることが好ましく、50000~200000とすることがより好ましい。本発明において重量平均分子量は、後述する実施例に記載の方法により決定することができる。
【0014】
本発明において「α,β-不飽和カルボン酸化合物」との用語は、α,β-不飽和カルボン酸及びα,β-不飽和カルボン酸から導かれる化合物を包含する意味で用いている。α,β-不飽和カルボン酸化合物としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、アコニット酸、及びノルボルネンジカルボン酸、これらの酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、及びエステル等が挙げられる。上記α,β-不飽和カルボン酸化合物は、より高い接着性を実現する観点から、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水アコニット酸、及び無水シトラコン酸の少なくとも1種が好ましく、無水イタコン酸及び無水マレイン酸の少なくとも1種がより好ましい。上記ポリオレフィンのグラフト変性において、グラフト重合の反応系には、α,β-不飽和カルボン酸化合物の1種又は2種以上を用いることができる。
【0015】
本発明において、上記ポリオレフィンのグラフト変性では、変性剤として、α,β-不飽和カルボン酸化合物に加えて、他の変性剤の1種又は2種以上を用いることができる。他の変性剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸化合物、芳香族ビニル化合物、及びシクロヘキシルビニルエーテル化合物等が挙げられる。これらの他の化合物は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、及びイソシアネート含有(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
上記芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン、及びα-メチルスチレン等が挙げられる。
これらの化合物は、単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。α,β-不飽和カルボン酸化合物以外の変性剤を併用する場合、上記のなかでも、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル及び(メタ)アクリル酸ステアリルの少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0017】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中に占めるα,β-不飽和カルボン酸化合物由来の構造部(「グラフト部I」と称す)の割合が0.1~20質量%であることが好ましく、0.2~18質量%がより好ましい。また、当該割合は0.2~15質量%でもよく、0.3~10質量%でもよく、0.6~8質量%でもよい。グラフト部Iの量を上記のように制御することにより、溶媒に対する溶解性をより高めることができ、金属や樹脂等からなる被着体に対する接着性もより高めることができる。
【0018】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中に占める上記グラフト部Iの割合は、アルカリ滴定法により求めることができる。また、α,β-不飽和カルボン酸化合物が酸基を持たない場合(例えばイミド等の場合)、例えばフーリエ変換赤外分光法で求めることもできる。
【0019】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が、グラフト部に(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の構造部(「グラフト部II」と称す)を含む場合、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中に占めるグラフト部IIの割合が、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。また、当該割合は15質量%以下でもよく、10質量%以下でもよく、5質量%以下でもよい。当該割合の下限は特に制限されず、例えば、0.1質量%以上とすることが好ましく、0.3質量部以上であることがより好ましい。グラフト部IIの量を上記のように制御することにより、溶媒に対する溶解性をより高めることができ、本発明の接着剤組成物が酸変性ポリオレフィン樹脂(A)以外の樹脂又はエラストマーを含む場合には、これらとの相溶性をより高めることができ、被着体に対する接着性もより向上させることができる。
【0020】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中に占める上記グラフト部IIの割合は、例えばフーリエ変換赤外分光法で求めることができる。
【0021】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を得るためのグラフト重合反応に用いるラジカル開始剤は特に制限されず、例えば、有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物として、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、及びクメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。上記グラフト重合反応には、1種又は2種以上のラジカル開始剤を用いることができる。
【0022】
上記変性助剤としては、例えば、ジビニルベンゼン、ヘキサジエン、及びジシクロペンタジエン等が挙げられる。上記安定剤としては、例えば、ヒドロキノン、ベンゾキノン、及びニトロソフェニルヒドロキシ化合物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0023】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは30000~250000であり、より好ましくは50000~200000である。このような分子量範囲に制御することにより、溶媒への溶解性を十分に担保でき、被着体に対する初期接着性もより高めることができ、硬化反応後には十分な耐溶剤性を示すものとすることができる。
【0024】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸価は、好ましくは0.1~50mgKOH/gであり、より好ましくは0.5~40mgKOH/g、さらに好ましくは1.0~30mgKOH/gであり、さらにより好ましくは2.0~30mgKOH/gであり、5.0~30mgKOH/gであることが特に好ましく、10~30mgKOH/gであることが最も好ましい。このような酸価の範囲に制御することにより、接着剤組成物に十分な硬化反応性が付与される。酸価は後述の[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0025】
本発明の接着剤組成物において、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量は、接着剤組成物の全固形分中(溶媒を除く)、10質量%以上であり、11質量%以上が好ましく、12質量%以上がより好ましい。当該含有量は、10~70質量%がさらに好ましく、11~65質量%が特に好ましく、12~60質量%が最も好ましい。
【0026】
<エポキシ樹脂(B)>
本発明の接着剤組成物は、エポキシ樹脂(B)として、エポキシ樹脂の1種又は2種以上を含有する。エポキシ樹脂(B)は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシ基等の反応性基と反応し、被着体に対する接着性を高め、また、接着剤硬化物の耐熱性をより高める成分である。エポキシ樹脂(B)の種類に特に制限はなく、エポキシ系接着剤に用いられるエポキシ樹脂を広く適用することができる。
【0027】
エポキシ樹脂(B)の例としては、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及びそれらに水素添加したもの;
オルトフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、及びトリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;
エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、及びポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;
トリグリシジルイソシアヌレート、及びテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;
エポキシ化ポリブタジエン、及びエポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂;
エポキシ樹脂(B)の例として、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また、エポキシ樹脂(B)の例としては、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、tert-ブチルカテコール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びビスフェノールS型エポキシ樹脂等を用いることもできる。
【0029】
エポキシ樹脂(B)として、一分子中に2個以上(好ましくは2~10個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~4個)のエポキシ基を有するもの(本明細書において、「多官能エポキシ樹脂」ということがある。)を用いると、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)との反応で十分な架橋構造を形成し、高い耐熱性を発現させることができる。
【0030】
上記のエポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記エポキシ樹脂の中でも、接着剤層付き積層体の貯蔵安定性を向上させる観点から、グリシジルアミノ基を有しないエポキシ樹脂が好ましい。また、電気特性に優れた接着剤組成物が得られることから、脂環骨格を有するエポキシ樹脂が好ましく、なかでも、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂がより好ましい。また、電気特性及び耐熱性に優れた接着剤組成物が得られることから、脂環骨格を有する多官能エポキシ樹脂が好ましく、なかでも、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ樹脂がより好ましい。
【0031】
本発明の接着剤組成物に含まれるエポキシ樹脂(B)の含有量は、架橋点密度や耐熱性の観点から、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対し、1~35質量部が好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることがさらに好ましく、7~20質量部であることが特に好ましい。
【0032】
<複合金属酸化物(C)>
本発明の接着剤組成物に含まれる複合金属酸化物(C)は、Ba、Ti、Sr、Pb、Zr、La、Ta、Ca及びBiの少なくとも2種を含む金属酸化物である。複合金属酸化物(C)は、本発明の接着剤組成物において誘電体フィラーとして機能する。複合金属酸化物(C)は、好ましくはBa、Ti、Ca及びSrの少なくとも2種を含有する。なかでもチタン酸化合物であることが好ましい。チタン酸化合物としては、例えば、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ネオジム、チタン酸ビスマス、チタン酸鉛、チタン酸ニッケル、チタン酸亜鉛、チタン酸ジルコン酸バリウム、及びチタン酸ジルコン酸鉛等が挙げられ、中でもチタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、及びチタン酸カルシウムの少なくとも1種が好ましい。
【0033】
本発明の接着剤組成物中、複合金属酸化物(C)の含有量は、高誘電性と良好な接着性に加え、塗工性も考慮すると、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量100質量部に対し、40~900質量部であることが好ましく、より好ましくは40~850質量部であり、さらに好ましくは40~800質量部であり、さらにより好ましくは50~700質量部であり、特に好ましくは100~700質量部であり、特により好ましくは150~700質量部であり、特にさらに好ましくは200~700質量部であり、最も好ましくは250~680質量部である。
【0034】
複合金属酸化物(C)の誘電率(ε)は、例えば複合金属酸化物(C)を加熱、焼成することにより得られる焼結体の誘電特性から類推できる。焼結体の誘電特性は以下の手順によって測定する。複合金属酸化物(C)をポリビニルアルコール及び水と混合してペースト状組成物を作製した後、ペレット成型器の中に充填して乾燥させ、ペレット状固形物を得る。そのペレット状固形物を、例えば900~1200℃程度まで加熱、焼成することにより、バインダー樹脂を分解、除去し、複合金属酸化物(C)を焼結させることで焼結体ペレットを得ることができる。この焼結体ペレットに上下電極を形成し、JIS K 6911:2006に準じて静電容量を測定する。静電容量と焼結体ペレットの寸法より誘電率(ε)を計算する。なお、本発明及び本明細書において単に「誘電率」という場合、比誘電率を意味する。
【0035】
複合金属酸化物(C)の誘電率(ε)(測定周波数:1MHz)は、100以上であることが好ましく、120以上であることがより好ましく、150以上であることがさらに好ましい。複合金属酸化物(C)の誘電率(ε)の上限値は特に制限されず、通常は15000以下である。
【0036】
本発明に係る接着剤組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、エポキシ樹脂(B)と、複合金属酸化物(C)とを組合せて含有し、かつ酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量を特定量以上に制御することによって、その硬化物は十分に高い誘電率を示しながら、接着性、耐熱性、柔軟性及び耐屈曲性にも優れ、さらに低吸水性も実現できる。
本発明の接着剤組成物は、ベース樹脂として酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を含有し、さらにエポキシ樹脂(B)を含有することにより、硬化物の接着性、柔軟性及び耐屈曲性に加えて、複合金属酸化物(C)との相互作用により、複合金属酸化物(C)の高誘電特性を、接着剤組成物ないしその硬化物の電気特性として効果的に引き出すことができる。この理由は定かではないが、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)に特有の構造(例えばカルボキシ基の極性)やエポキシ樹脂の極性基等に起因して、樹脂組成物ないしその硬化物中では複合金属酸化物(C)が、誘電率の高い小粒径の状態で、均一分散できることが一因と考えられる。
【0037】
<硬化促進剤>
本発明の接着剤組成物は、硬化促進剤を含有することが好ましい。硬化促進剤は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)との反応を促進させたり、エポキシ樹脂(B)の自己重合を促進させたりする目的で使用するものである。上記硬化促進剤としては、例えば、第三級アミン系硬化促進剤、第三級アミン塩系硬化促進剤、及びイミダゾール系硬化促進剤等が挙げられる。
第三級アミン系硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、テトラメチルグアニジン、トリエタノールアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、トリエチレンジアミン、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン等が挙げられる。
第三級アミン塩系硬化促進剤としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩、及びフェノールノボラック樹脂塩、
また、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネンの、ギ酸塩、オクチル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、o-フタル酸塩、フェノール塩、及びフェノールノボラック樹脂塩等が挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-メチル-4-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。上述の硬化促進剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記硬化促進剤の含有量は、硬化促進剤の種類に応じて適宜に設定すればよい。上記硬化促進剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して、0.01~1.0質量部が好ましく、0.03~0.5質量部がより好ましく、0.05~0.4質量部がさらに好ましい。上記硬化促進剤の含有量が上記範囲内であると、優れた接着性及び耐熱性を有する。
【0039】
[接着剤組成物の特性]
本発明に係る接着剤組成物は、硬化反応後の硬化物の誘電率が2.9以上であり、好ましくは3.5以上であり、より好ましくは4.0以上であり、さらに好ましくは6.0以上であり、特に好ましくは8.0以上である。当該誘電率の上限値は、特に限定されないが、通常は100.0以下であり、80.0以下であってもよく、60.0以下であってもよく、40.0以下であってもよく、30.0以下であってもよい。即ち、上記誘電率は、2.9~100であることが好ましく、3.5~80.0がより好ましく、4.0~60.0がさらに好ましく、6.0~40.0であることがさらにより好ましく、8.0~30.0であることが特に好ましい。
本発明において、接着剤組成物の硬化物の誘電率とは、誘電率2.9~80.0の範囲においては、誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した誘電率の値を意味する。ただし、誘電率80.0を超過する場合の誘電率の測定法は上記の限りではない。
【0040】
本発明に係る接着剤組成物の硬化物の剥離強度は、6.0~20.0N/cmであることが好ましく、7.0~20.0N/cmであることがより好ましい。剥離強度は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定される。
【0041】
本発明に係る接着剤組成物の硬化物の吸水率は、0.3%以下が好ましく、0.2%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。吸水率が上記した範囲内であることにより、接着剤組成物で形成した硬化物を備える物品の長期信頼性が向上する。
上記吸水率は、ASTM D570の試験方法に準拠して、室温(25℃)、24時間水中に浸漬し、浸漬前の硬化物の質量及び24時間浸漬後の硬化物の質量を測定し、下記式(2)に従い算出することができる。
吸水率(%)=[(24時間浸漬後の硬化物の質量-浸漬前の硬化物の質量)/浸漬前の硬化物の質量]×100…(2)
【0042】
本発明に係る接着剤組成物の硬化物の弾性率は、0.1~3.0GPaであることが好ましく、0.3~2.5GPaであることがより好ましく、0.5~2.0GPaであることがさらに好ましく、0.7~1.5GPaであることが特に好ましい。弾性率(引張試験)は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定することができる。
【0043】
本発明に係る接着剤組成物の硬化物の耐熱性は、後述の[実施例]の項に記載の方法により決定されるはんだ耐熱性において、30秒以上が好ましく、50秒以上がより好ましく、70秒以上がさらに好ましく、90秒以上が特に好ましい。
【0044】
<その他の成分>
本発明の接着剤組成物には、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)及び複合金属酸化物(C)以外に、接着性向上や溶液特性の改善等種々の目的で、添加剤が配合されてもよい。例えば、カップリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、複合金属酸化物(C)とは異なる充填材、レベリング剤、消泡剤、増粘剤、染料等が挙げられる。かかる添加剤は、原料の溶媒への溶解時あるいは溶解後に添加することが可能である。
【0045】
カップリング剤の例としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトシキシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、及び3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシラン系カップリング剤(シランカップリング剤)、チタネート系カップリング剤(チタネートカップリング剤)、アルミネート系カップリング剤(アルミネートカップリング剤)、並びに、ジルコニウム系カップリング剤(ジルコニウムカップリング剤)等が挙げられる。これらは単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
酸化防止剤の例としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、及び3,9-ビス{2-〔3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のフェノール系酸化防止剤、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、及びジミリスチル-3,3’-ジチオプロピオネート等のイオウ系酸化防止剤、並びに、トリスノニルフェニルホスファイト、及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
紫外線吸収剤の例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、及び2-〔(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル〕-ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、及び2-ヒドロキシ-4-n-オクチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート等のサリシレート系紫外線吸収剤、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤、及び2-エトキシ-2’-エチルオキザリックアシッドビスアニリド等のオキザリックアニリド系紫外線吸収剤、ビス-〔2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペジリニル〕セバケート、及びビス-〔N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル〕セバケート等のヒンダードアミン系紫外線吸収剤、並びに、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0048】
難燃剤の例としては、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、及びビス(テトラブロモフタルイミド)エタン等の臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、及びクレジルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル系難燃剤、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジキシレニル)ホスフェート、及びビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等の芳香族縮合リン酸エステル、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル系難燃剤、赤リン等の赤リン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及び三酸化アンチモン等の無機系難燃剤、シリコーン系難燃剤、並びに、ホウ素系難燃剤等が挙げられる。これらは単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
充填材の例としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ、銅粉、アルミニウム粉、及び銀粉等が挙げられる。これらは単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
上記接着剤組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、複合金属酸化物(C)及び必要によりその他の成分を混合することにより製造することができる。混合方法は特に限定されず、接着剤組成物が均一になればよい。接着剤組成物は、溶液又は分散液の状態で好ましく用いられることから、通常は、溶媒も使用される。
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、及びジアセトンアルコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、及びイソホロン等のケトン類、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、及びメシチレン等の芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテ-ト、及び3-メトキシブチルアセテート等のエステル類、並びに、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これらは単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
接着剤組成物が溶媒を含む溶液又は分散液(樹脂ワニス)であると、基材フィルムへの塗工及び接着剤層の形成を円滑に行うことができ、所望の厚さの接着剤層を容易に得ることができる。
【0051】
接着剤組成物が溶媒を含む場合、接着剤層の形成を含む作業性等の観点から、固形分濃度は、好ましくは20~80質量%であり、より好ましくは30~70質量%の範囲である。
【0052】
[接着剤層付き積層体]
本発明に係る接着剤層付き積層体は、上記接着剤組成物からなる接着剤層と、当該接着剤層の少なくとも一方の面に接する基材フィルムとを備える。
【0053】
本発明に係る接着剤層付き積層体の一態様として、カバーレイフィルムが挙げられる。カバーレイフィルムは、基材フィルムの少なくとも一方の表面に接着剤層が形成されているものである。
【0054】
接着剤層付き積層体がカバーレイフィルムの場合の基材フィルムとしては、ポリイミドフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、アラミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルム等が挙げられる。これらの中でも、接着性及び電気特性の観点から、ポリイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、及び液晶ポリマーフィルムが好ましい。
【0055】
このような基材フィルムは市販されており、ポリイミドフィルムについては、例えば、東レ・デュポン社製「カプトン(登録商標)」、東洋紡績社製「ゼノマックス(登録商標)」、宇部興産社製「ユーピレックス(登録商標)-S」、及びカネカ社製「アピカル(登録商標)」等を使用することができる。
また、ポリエチレンナフタレートフィルムについては、例えば、帝人デュポンフィルム社製「テオネックス(登録商標)」等を用いることができる。
さらに、液晶ポリマーフィルムについては、例えば、クラレ社製「ベクスター(登録商標)」、及びプライマテック社製「バイアック(登録商標)」等を用いることができる。基材フィルムは、該当する樹脂を所望の厚さにフィルム化して用いることもできる。
【0056】
カバーレイフィルムを製造する方法としては、例えば、上記接着剤組成物(好ましくは溶媒を含有する樹脂ワニス)を、ポリイミドフィルム等の基材フィルムの表面に塗布して樹脂ワニス層を形成した後、この樹脂ワニス層から上記溶媒を除去することによって、接着剤層が形成されたカバーレイフィルムを製造することができる。
上記溶媒を除去するときの乾燥温度は、40~250℃であることが好ましく、70~170℃であることがより好ましい。乾燥は、接着剤組成物が塗布された積層体を、熱風乾燥、遠赤外線加熱、及び高周波誘導加熱等がなされる炉の中を通過させることにより行われる。
なお、必要に応じて、接着剤層の表面には、保管等のため、離型性フィルムを積層してもよい。上記離型性フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、及びフッ素系樹脂フィルム等の通常のものが用いられる。
【0057】
接着剤層付き積層体の別の態様としては、ボンディングシートが挙げられる。ボンディングシートも、基材フィルムの表面に上記接着剤層が形成されたものであるが、基材フィルムは離型性フィルムが用いられる。また、ボンディングシートは、2枚の離型性フィルムの間に接着剤層を備える態様であってもよい。ボンディングシートを使用するときに、離型性フィルムをはく離して使用する。離型性フィルムは、上記と同様なものを用いることができる。
【0058】
このような離型性フィルムも市販されており、例えば、東レフィルム加工社製「ルミラー(登録商標)」、東洋紡績社製「東洋紡エステル(登録商標)フィルム」、AGC社製「アフレックス(登録商標)」、及び三井化学東セロ社製「オピュラン(登録商標)」等を用いることができる。
【0059】
ボンディングシートを製造する方法としては、例えば、離型性フィルムの表面に上記接着剤組成物(好ましくは溶媒を含有する樹脂ワニス)を塗布し、上記カバーレイフィルムの場合と同様にして乾燥する方法が挙げられる。
【0060】
基材フィルムの厚さは、接着剤層付き積層体を薄膜化するため、5~100μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましく、5~30μmであることがさらに好ましい。
【0061】
接着剤層の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましく、10~50μmであることがさらに好ましい。
上記基材フィルム及び接着剤層の厚さは用途により選択されるが、電気特性を向上させるために基材フィルムは、より薄くなる傾向にある。本発明の接着剤層付き積層体において、接着剤層の厚さ(D1)と、基材フィルム(1枚)の厚さ(D2)との比の値(D1/D2)は、1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。さらに、接着剤層の厚さが、基材フィルムの厚さよりも厚いことが好ましい。
【0062】
接着剤層付き積層体の別の態様としては、銅張積層板が挙げられる。銅張積層板は、上記接着剤層を用いて、例えば、基材フィルムとしてのポリイミドフィルムと、銅箔とが貼り合わされた積層体である。即ち、銅張積層板は、基材フィルム、接着剤層及び銅箔の順に構成された積層体である。銅張積層板において、接着剤層及び銅箔は、基材フィルムの両面に形成されていてもよい。即ち、銅張積層板は、基材フィルムの一面側及び他面側に、接着剤層及び銅箔を、この順に備える積層体であってもよい。本発明の接着剤組成物は、銅を含む物品との接着性にも優れるので、銅張積層板は、一体化物として安定性に優れる。なお、本発明の銅張積層板に含まれる接着剤層は、硬化物からなるものであってよいし、未硬化物からなるものであってもよい。
銅張積層板における接着剤層の厚さは、好ましくは5~45μmであり、より好ましくは10~35μmである。
【0063】
銅張積層板を製造する方法としては、例えば、上記カバーレイフィルムの接着剤層と銅箔とを面接触させ、80~150℃で熱ラミネートを行い、さらにアフターキュアにより接着剤層を硬化する方法を適用することができる。アフターキュアの条件は、例えば、100~200℃、30分~4時間とすることができる。なお、上記銅箔は、特に限定されず、電解銅箔、及び圧延銅箔等を用いることができる。
【0064】
[接着剤層付き物品]
本発明の接着剤組成物を用いて接着剤層を備える物品(接着剤層付き物品)を提供することができる。例えば、接着剤層を備える電磁波シールド材である。これにより、電磁波のノイズによる電子機器の誤動作や、通信電波の傍受による機密情報の漏洩等を防止することができる。本発明の電磁波シールド材を製造する方法としては、例えば、接着剤層を備える高誘電性ボンディングシートと、シールド材とを接合する方法を適用することができる。
電磁波シールド材における接着剤層の厚さは、5~100μmであることが好ましく、10~70μmであることがより好ましい。
【0065】
接着剤層付き物品の別の態様としては、例えば、上記接着剤組成物からなる接着剤層を備える基板アンテナ、レンズアンテナ、コンデンサ(キャパシタ)、静電容量型センサ、及び圧電フィルムスピーカー等が挙げられる。
【実施例0066】
本発明を、実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、下記において、「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0067】
[酸変性ポリオレフィン樹脂の調製]
(酸変性ポリオレフィン樹脂aの調製)
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位75モル%及びブテン単位25モル%からなるプロピレン-ブテンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸22質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド6質量部をトルエン溶媒に溶かして、この溶液を、1Lオートクレーブ中で140℃に昇温し、この温度で、更に3時間撹拌した。次いで、得られた反応液を冷却し、この反応液を、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、遠心分離により、残留する未反応物等を分離、精製した。そして、回収した樹脂を、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、酸変性ポリオレフィン樹脂aを製造した。酸変性ポリオレフィン樹脂aは、重量平均分子量が65000、酸価が30mgKOH/gであった。
【0068】
(酸変性ポリオレフィン樹脂bの調製)
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位75モル%及びブテン単位25モル%からなるプロピレン-ブテンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸15質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド6質量部をトルエン溶媒に溶かして、この溶液を、1Lオートクレーブ中で140℃に昇温し、この温度で、更に3時間撹拌した。次いで、得られた反応液を冷却し、この反応液を、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、遠心分離により、残留する未反応物等を分離、精製した。そして、回収した樹脂を、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、酸変性ポリオレフィン樹脂bを製造した。酸変性ポリオレフィン樹脂bは、重量平均分子量が95000、酸価が15mgKOH/gであった。
【0069】
(酸変性ポリオレフィン樹脂cの調製)
メタロセン触媒を重合触媒として製造した、プロピレン単位75モル%及びブテン単位25モル%からなるプロピレン-ブテンランダム共重合体100質量部、無水マレイン酸30質量部及びジ-t-ブチルパーオキサイド6質量部をトルエン溶媒に溶かして、この溶液を、1Lオートクレーブ中で140℃に昇温し、この温度で、更に3時間撹拌した。次いで、得られた反応液を冷却し、この反応液を、多量のメチルエチルケトンが入った容器に注ぎ、樹脂を析出させた。その後、遠心分離により、残留する未反応物等を分離、精製した。そして、回収した樹脂を、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、酸変性ポリオレフィン樹脂cを製造した。酸変性ポリオレフィン樹脂cは、重量平均分子量が55000、酸価が40mgKOH/gであった。
【0070】
[接着剤組成物の調製]
<実施例1>
酸変性ポリオレフィン樹脂aを100質量部、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂(商品名:HP-7200、DIC社製)を14質量部、イミダゾール系硬化促進剤(商品名:キュアゾールC11Z、四国化成工業社製)を0.3質量部、酸化防止剤(商品名:アデカスタブAO-80、ADEKA社製)を2.0質量部、紫外線吸収剤(商品名:Tinuvin(登録商標)479、BASFジャパン社製)を2.0質量部、チタン酸ストロンチウム(商品名:ST-A、富士チタン工業社製、誘電率:300)を29.5質量部として、メチルシクロヘキサン/トルエン/2-プロパノール=66/28/6(質量比)の混合溶媒717.3質量部に投入して混合し、接着剤組成物を調製した。
【0071】
<実施例2>
チタン酸ストロンチウムの投入量を62.3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0072】
<実施例3>
チタン酸ストロンチウムの投入量を140.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0073】
<実施例4>
チタン酸ストロンチウムの投入量を240.2質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0074】
<実施例5>
チタン酸ストロンチウムの投入量を373.6質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0075】
<実施例6>
チタン酸ストロンチウムの投入量を560.4質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0076】
<実施例7>
チタン酸ストロンチウム62.3質量部をチタン酸バリウム(商品名:BT-05、堺化学工業社製、誘電率:4590)659.3質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0077】
<実施例8>
チタン酸ストロンチウム62.3質量部をチタン酸カルシウム(商品名:CT-3、共立マテリアル社製、誘電率:180)450.5質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0078】
<実施例9>
ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂の投入量を7質量部に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0079】
<実施例10>
ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂の投入量を20質量部に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0080】
<実施例11>
酸変性ポリオレフィン樹脂aを酸変性ポリオレフィン樹脂bに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0081】
<実施例12>
酸変性ポリオレフィン樹脂aを酸変性ポリオレフィン樹脂cに変更したこと以外は、実施例6と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0082】
<比較例1>
エポキシ樹脂(商品名:エピコート828、三菱ケミカル社製)を100質量部、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名:SR-2EGS、阪本薬品工業社製)を25質量部、変性脂肪族ポリアミン(商品名:フジキュアFXJ-8074-D、T&K TOKA社製)を48.5質量部、アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A-1100、日硝産業社製)を1.5質量部、チタン酸ストロンチウム(商品名:ST-A、富士チタン工業社製、誘電率:300)を77.8質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0083】
<比較例2>
エポキシ樹脂(商品名:エピコート807、三菱ケミカル社製)を100質量部、m-フェニレンジアミン(商品名:エピキュアZ、三菱ケミカル社製)を19質量部、エポキシシラン系カップリング剤(商品名:KBM-402、信越化学工業社製)を1.84質量部、チタネート系カップリング剤(商品名:KR-46B、味の素ファインテクノ社製)を0.79質量部、チタン酸ストロンチウム(商品名:ST-A、富士チタン工業社製、誘電率:300)を340.8質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0084】
<比較例3>
酸変性ポリオレフィン樹脂(商品名:アウローレン500S、日本製紙社製)を100質量部、ジオクチルスズジラウレート(キシダ化学社製)を0.1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デュラネートTKA-100、旭化成社製)を10質量部、チタン酸ストロンチウム(商品名:ST-A、富士チタン工業社製、誘電率:300)を62.6質量部として、メチルシクロヘキサン/トルエン/2-プロパノール=66/28/6(質量比)の混合溶媒567質量部に投入して混合し、接着剤組成物を調製した。
【0085】
<比較例4>
アクリルポリマー(商品名:UH-2041、東亞合成社製)を100質量部、ジオクチルスズジラウレート(キシダ化学社製)を0.1質量部、ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:デュラネートAE-700-100、旭化成社製)を102質量部、チタン酸ストロンチウム(商品名:ST-A、富士チタン工業社製、誘電率:300)を53.4質量部として混合し、接着剤組成物を調製した。
【0086】
<比較例5>
チタン酸ストロンチウム62.3質量部に代えてシリカ(商品名:エクセリカSE-1、トクヤマ社製)を197.8質量部投入したこと以外は、実施例2と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0087】
<比較例6>
チタン酸ストロンチウム62.3質量部に代えて窒化ホウ素(商品名:PCTP-2、サンゴバン社製)を252.7質量部投入したこと以外は、実施例2と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0088】
<比較例7>
チタン酸ストロンチウムの投入量を1307.7質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0089】
<比較例8>
チタン酸ストロンチウムを投入しないこと以外は、実施例1と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0090】
<比較例9>
ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂(商品名:HP-7200、DIC社製)、及びイミダゾール系硬化促進剤(商品名:キュアゾールC11Z、四国化成工業社製)を投入しないこと以外は、実施例6と同様にして、接着剤組成物を調製した。
【0091】
[評価方法]
<重量平均分子量(Mw)の測定方法>
下記の条件で、GPC測定を行い、酸変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量Mwを求めた。重量平均分子量Mwは、GPCにより測定したリテンションタイムを標準ポリスチレンのリテンションタイムを基準にして換算した。
装置:アライアンス2695(Waters社製)
カラム:TSKgel SuperMultiporeHZ-H 2本、TSKgelSuperHZ2500 2本、(東ソー社製)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン 0.35ml/分
検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0092】
<酸変性ポリオレフィン樹脂の酸価の測定方法>
酸変性ポリオレフィン樹脂1gをトルエン30mlに溶解し、京都電子工業社製の自動滴定装置「AT-510」にビュレットとして同社製「APB-510-20B」を接続したものを使用した。滴定試薬としては0.01mol/Lのベンジルアルコール性KOH溶液を用いて電位差滴定を行い、酸変性ポリオレフィン樹脂1gあたりのKOHのmg数を算出した。
【0093】
<誘電率の測定方法>
(実施例1~12、比較例5~9で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、180℃で30分間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、ネットワークアナライザー85071E-300(アジレント・テクノロジー社製)を使用し、スプリットポスト誘電体共振器法(SPDR法)で、温度23℃、周波数10GHzの条件で測定した。
【0094】
(比較例1、2で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、130℃で5分間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、前記と同様の装置を使用し、前記と同様の条件で測定した。
【0095】
(比較例3で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、40℃で1日養生した。この養生により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、前記と同様の装置を使用し、前記と同様の条件で測定した。
【0096】
(比較例4で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ38μmの離型ポリエチレンテレフタレートフィルムを用意し、その一方の表面に、接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成した。次に、この被膜をオーブン内に静置して、80℃で1時間加熱処理をした。この加熱処理により、被膜の硬化反応(架橋反応)は十分に進行する。その後、上記離型フィルムを剥がして、試験片(50×50mm)を作製した。
誘電率(ε)は、前記と同様の装置を使用し、前記と同様の条件で測定した。
【0097】
(複合金属酸化物(C))
複合金属酸化物(C)をポリビニルアルコール及び水と混合してペースト状組成物を作製した後、ペレット成型器の中に充填して乾燥させ、ペレット状固形物を得た。そのペレット状固形物を、900~1200℃程度まで加熱、焼成することにより、バインダー樹脂を分解、除去し、複合金属酸化物(C)を焼結させることで焼結体ペレットを得た。この焼結体ペレットに上下電極を形成し、JIS K 6911:2006に準じて静電容量を測定した。静電容量と焼結体ペレットの寸法より誘電率を計算した。
【0098】
<剥離強度の測定方法>
(実施例1~12、比較例5~9で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度120℃、圧力0.5MPaの条件でラミネートした。
次いで、この積層体(ポリイミド付き銅張積層板/接着剤層/銅箔)を、温度180℃及び圧力3MPaの条件で30分間加熱圧着し、剥離強度評価用基板を得た。この評価用基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°剥離強度(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0099】
(比較例1、2で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度120℃、圧力0.5MPaの条件でラミネートした。
次いで、この積層体(ポリイミド付き銅張積層板/接着剤層/銅箔)を、温度130℃及び圧力3MPaの条件で3分間加熱圧着し、剥離強度評価用基板を得た。この評価用基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°剥離強度(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0100】
(比較例3で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度80℃、圧力0.4MPa、及び速度0.5m/分の条件でラミネ-トを行った。次に、この被膜をオーブン内に静置して、40℃で1日養生し、剥離強度評価用基板を得た。この評価用基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°剥離強度(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0101】
(比較例4で調製した接着剤組成物の硬化物)
厚さ35μmの圧延銅箔を用意し、その表面に接着剤組成物を、ロ-ル塗布した。次いで、この塗膜付きフィルムをオーブン内に静置して、90℃で3分間乾燥させて厚さ50μmの被膜(接着剤層)を形成し、接着剤層付き銅箔を得た。その後、厚さ57μmのポリイミド層付き銅張積層板を、ポリイミド層側が接着剤層付き銅箔の接着剤層の表面に面接触するように重ね合わせ、温度80℃、圧力0.4MPa、及び速度0.5m/分の条件でラミネ-トを行った。次に、この被膜をオーブン内に静置して、80℃で1時間加熱処理をし、剥離強度評価用基板を得た。この評価基板を切断して、所定の大きさの接着試験片を作製した。接着性を評価するために、JIS C 6481:2015に準拠し、温度23℃及び引張速度50mm/分の条件で、接着試験片から圧延銅箔を剥がすときの90°剥離強度(N/cm)を測定した。測定時の接着試験片の幅は10mmとした。
【0102】
(はんだ耐熱性試験)
剥離強度の測定で作製した接着試験片について、JIS C 6481:2015「プリント配線板用銅張積層板試験方法」に準拠して、次の条件で試験を行った。各接着試験片を25mm角に裁断し、120℃、60分の加熱処理を行った。その後、ポリイミド層付き銅張積層板を上にして、温度260℃のはんだ浴に浮かべて、接着試験片表面の発泡状態を観察した。接着試験片をはんだ浴に浮かべてから、接着試験片に発泡が生じるまでの時間(秒)を目視観察により評価した。
【0103】
<柔軟性の測定方法>
(引張試験)
上述の誘電率の測定と同様にして試験片を作製し、島津製作所社製「オートグラフAG-Xplus」を用いて、治具間距離40mm、標線間距離20mm、引張速度5mm/分、23℃で引張試験を行った。歪みはカメラを用いてリアルタイムに計測した。原点から降伏点までの歪みを10分割し、各区間の接線の傾きを最小二乗法で計算し、引張弾性率を算出した。
【0104】
<耐屈曲性の測定方法>
(折り曲げ試験)
上記引張試験と同様にして得た試験片を用いた。JIS K5600-5-1:2018に準拠した耐屈曲性試験(円筒形マンドレル法)に基づいて、試験片を直径2mmの鉄棒に巻きつけ、割れが生じるか否かを目視で観察した。割れが確認されなかったものを「○」、割れが確認されたものを「×」として評価した。
【0105】
<吸水率の測定方法>
上述の誘電率の測定と同様にして試験片を作製した。この試験片を、ASTMD570の試験方法を用い、室温(25℃)、24時間水中に浸漬し、浸漬前の試験片の質量および24時間浸漬後の試験片の質量を測定し、上述した式(2)より吸水率(%)を算出した。
【0106】
実施例1~12及び比較例1~9に係る接着剤組成物の組成を表1、2に示し、実施例1~12及び比較例1~9に係る接着剤組成物ないしその硬化物の試験結果を表3に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
(表1の注)
・表中の数値:質量部
【0109】
【表2】

【0110】
(表2の注)
表中の数値:質量部
「ジオクチルスズジラウレート」は、表2中からは割愛した。
【0111】
【表3】
【0112】
複合金属酸化物(C)を含まず、シリカ粒子を配合した比較例5では、硬化物の誘電率を所望のレベルへと高めることはできなかった。フィラー自体を配合していない比較例8についても同様である。また、複合金属酸化物(C)を含まず、窒化ホウ素を配合した比較例6は、剥離強度に劣る結果となった。
また、ベース樹脂(マトリクス樹脂)をエポキシ樹脂のみとして、硬化剤を用いて反応させる系とした場合には、硬化物は硬く脆い性状となり、柔軟性及び耐屈曲性に著しく劣る結果となった(比較例1、2)。
加えて、エポキシ樹脂を用いずに、酸変性ポリオレフィン樹脂とポリイソシアネートとの組合せを採用すると、剥離強度と耐熱性に劣る結果となり(比較例3)、アクリルポリマーとポリイソシアネートとの組合せを採用した場合には、剥離強度と耐熱性に劣ることに加え、吸水性も高かった(比較例4)。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の含有量が本発明の規定よりも少なければ、十分な接着力を得ることができなかった(比較例7)。
また、ベース樹脂を、酸変性ポリオレフィン樹脂のみで構成した場合には、耐熱性に劣る結果となった(比較例9)。
これらに対し、本発明の規定を満たす接着剤組成物はいずれも、得られる硬化物が複合金属酸化物(C)の高誘電特性を十分に引き出し高い誘電率を示し、この硬化物は柔軟性及び耐屈曲性も備え、被着体への接着力にも優れ、十分に高い耐熱性を有し、また吸水しにくいものであった(実施例1~12)。