(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000713
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/30 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A47K13/30 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099572
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】390010168
【氏名又は名称】東芝ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】庭山 晃一
【テーマコード(参考)】
2D037
【Fターム(参考)】
2D037AA02
2D037AB01
2D037AD01
2D037AD12
2D037AD14
2D037AD16
(57)【要約】
【課題】消臭効果を向上することができる便座装置を提供する。
【解決手段】本発明の便座装置は、吸気口と排気口の間に設けた脱臭用通路を備え、脱臭用通路に、活性炭を有する脱臭フィルタ61と、悪臭の分子を吸着して化学反応で消臭する消臭成分がグラフト重合法により導入された第一の不織布62と、銅イオンを付着させた第二の不織布63とを設けている。これにより、臭気を含む空気が脱臭フィルタ61を通過することより活性炭に臭気物質が吸着され、グラフト重合法により導入したスルホン酸などの消臭成分が導入された不織布62により、尿臭のものであるアンモニア臭が消臭され、不織布63を通過する際、銅イオンによるイオン反応により便臭の元である硫化水素臭を消臭することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と排気口の間に設けた脱臭用通路を備え、
前記脱臭用通路に、活性炭を有する脱臭フィルタと、悪臭の分子を吸着して化学反応で消臭する消臭成分がグラフト重合法により導入された一方の不織布と、銅イオンを付着させた他方の不織布とを設けたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記脱臭フィルタよりも前記排気口側に前記一方と他方の不織布を配置したことを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記吸気口から吸いこんだ空気を前記排気口から排気する排気手段を備え、
前記排気手段の駆動用モータの電流値の変化を検出する電流値検出手段と、
この電流値検出手段により検出した電流値の変化が一定値以上になると報知する報知手段とを備えることを特徴とする請求項1又は2記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭フィルタを備えた便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気口を形成する吸気部と、排気口を形成する排気部と、前記吸気口から空気を吸気するファン装置と、前記吸気口と前記排気口とを連通し空気を流通させる脱臭風路とを備えた脱臭装置(例えば特許文献1)がある。この脱臭装置の前記脱臭風路には、水脱臭部と、ファン装置と、酸化触媒とが設けられており、前記ファン装置の駆動により吸気口から脱臭風路内に空気を吸気し、前記水脱臭部の水溜め部の水により吸気口から空気と一緒に吸い込まれた埃や紙片等の粉塵を捕捉し、前記酸化触媒により硫化水素やメチルメルカプタンなどの臭気成分を脱臭するように構成されている。
【0003】
また、上記特許文献1には、通常、脱臭装置の吸気口には、粉塵を捕捉するためのメッシュフィルタが設けられるが、本実施形態においては、水溜め部により粉塵を捕捉することができ、メッシュフィルタを設けなくともよいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1では、粉塵を捕捉するためのメッシュフィルタが不要となるが、水溜め部に給水すると共に水溜め部から排水するために構造が複雑になり、また、水溜め部自体を交換することができず、水溜め部の掃除が煩雑となることが予想される。さらに、水溜め部は粉塵を捕捉することはできるものの、水溜め部には消臭機能はなく、酸化触媒だけで臭気成分を酸化分解するため、従来に比べて消臭効果を向上することは難しい。
【0006】
そこで本発明は、消臭効果を向上することができる便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便座装置は、吸気口と排気口の間に設けた脱臭用通路を備え、前記脱臭用通路に、活性炭を有する脱臭フィルタと、悪臭の分子を吸着して化学反応で消臭する消臭成分がグラフト重合法により導入された一方の不織布と、銅イオンを付着させた他方の不織布とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の便座装置によれば、脱臭フィルタを備えた便座装置において消臭効果を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態において、便座装置の構成例を概略的に示す斜視図である。
【
図2】同上、便座装置を底面側から見た斜視図である。
【
図3】同上、便座に本体を取り付ける作業を説明する斜視図である。
【
図6】同上、一部を切り欠いた脱臭ユニットの斜視図である。
【
図8】同上、脱臭ユニットの着脱を説明する斜視図である。
【
図10】同上、脱臭ファンと脱臭ファン制御手段と報知手段のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい便座装置の第1の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
【実施例0011】
図1~
図10は、本発明の第1の実施形態における便座装置を示している。
図1は、トイレ室S内の便器1周辺に設置される便座装置10の一構成例を示している。
図2は、便座装置10の本体11と便座12と便座蓋13を下側(底面側)から見た斜視図である。便器1は、排泄物を受ける上面を開口した凹状のボウル部2を有し、このボウル部2が便器1の内面を形成する。なお、ボウル部2が便器1の便鉢である。便座12は平面視で略O型をなし、便座蓋13は、便座12を覆い、便座12の中央開口部12Aを開閉可能な形状をなす。便座装置10の本体11は、便器1の後部に位置する便器後部3(
図3)の上面に着脱可能に固定される。
【0012】
本体11は、本体主部となる中空なケーシング15を備え、このケーシング15は、便器1の便器後部3の上面に取付固定される本体下面部16と、この本体下面部16の上面を覆い下面が開口したケーシング上部17と、により合成樹脂製の外郭部材が構成される。ケーシング15には、何れも合成樹脂製の便座12と便座蓋13が回動可能に取り付けられており、便座蓋13は便座12の中央開口部12Aが開閉自在なものであって、
図1に示すように便座蓋13を開けた状態で、便座12を便器1側に倒すことで、使用者(図示せず)は便座12に臀部を載せて着座することができる。
【0013】
便座12の下面には、使用位置である便座12を便器1側に倒したときに、便器1の上面に直接当接する凸状の便座脚部18が、複数個間隔を開けて配設され、この例では前側左右と後側左右の4箇所に配置されている。便座脚部18の一つには、着座検知手段となる機械式の着座スイッチ19が内蔵されており、便座脚部18が便器1に当接して着座スイッチ19が押されるか否かによって、使用者が便座12に着座したのか否かを検知できる。なお、着座スイッチ19は、中央前側左右一方の便座脚部18に設けられている。
【0014】
21は、ケーシング15の側部に設けられた合成樹脂製の本体操作部である。本体操作部21には、後述するように、例えば、おしりボタンやビデボタンなどの洗浄ボタンと、止ボタンを含む各種の操作ボタンが設けられ、これらの操作ボタンを介して使用者の操作が入力される。また、前記本体操作部21には、電源ランプや、脱臭ランプや、節電ランプや、便座ランプなどの表示ランプが設けられ、これらの表示ランプの表示形態により便座装置10の各部の動作状態を使用者に知らせるようになっている。
【0015】
ケーシング15の前方下部には、いわゆる可動式の洗浄ノズル25が設けられる。ノズル装置に相当する洗浄ノズル25は、本体11の前後方向に沿って直線的に延びる筒状をなしており、本体11の前後方向に沿って往復移動可能に配設される。洗浄ノズル25の先端部周面には、洗浄ノズル25を便座12の下方から突出した位置に前進させたときに、便座12に着座する使用者の局部に向けて洗浄液が無駄なく噴出するように、一個乃至複数個の噴出口(図示せず)が設けられる。また、ケーシング15の底部をなす本体下面部16には、洗浄ノズル25を便座12の下方位置に後退させたときに、ケーシング15内に収容した洗浄ノズル25を保護するために、本体11の下方に向けて凸状のノズルガード26が一体に形成される。洗浄ノズル25の材料は、清潔性を維持するためにステンレス製とするのが好ましいが、それ以外の材料であっても構わない。また、本実施形態では何れも図示しないが、使用者の第1局部に洗浄液を噴出するおしり洗浄ノズルと、使用者の第1局部とは異なる第2局部に洗浄液を噴出するビデ洗浄ノズルと、により洗浄ノズル25が構成される。おしり洗浄ノズルとビデ洗浄ノズルは、同一軸または別々な軸に沿ってそれぞれが可動する。このように便座装置10は洗浄ノズル25を備えた洗浄便座装置である。
【0016】
洗浄ノズル25に水道水を供給するために、ケーシング15の後方側部には、トイレ室Sに予め設置された給水栓(図示せず)に連通する本体給水口31が設けられる。なお、前記止水栓と本体給水口31とが給水ホース32(
図1)により接続される。洗浄ノズル25は、本体給水口31から供給される液体としての水道水をそのまま、若しくは水道水から生成された除菌水を洗浄液として噴出する。水道水から除菌水を生成するために、ケーシング15の内部に除菌装置(図示せず)をさらに組み込んでもよい。
【0017】
図2に示すように、本体下面部16には、取付凹部41が上方に凹んで設けられ、この取付凹部41は、左右に比べて中央部41Tが後側に位置するように後側に突出した前縁部41Aと、この前縁部41Aの左右端部から後側に向かって形成された左,右縁部41L,41Rを備え、これら左,右縁部41L,41Rの後端間に後開口部42を有する。
図3に示すように、便器後部3の上面に、本体11を固定するための固定プレート43を固定し、この固定プレート43に取付凹部41の後開口部42を合わせ、本体11を後方にスライドして取付凹部41に固定プレート43を嵌入することにより、便器後部3に本体11が固定され、逆に、本体11を前方にスライドして取付凹部41から固定プレート43を抜き取ることにより、便器後部3から本体11を取り外すことができる。このように便器後部3は、本体11を取り付ける便器1の取付部分である。
【0018】
ケーシング15には便器1内の臭気を低減除去するために、脱臭装置51が内蔵される。このため便器1の上面に対向してケーシング15の前方下面に吸気口52を設け、ケーシング上部17の後部に設けた排気口53との間に脱臭用通路54を設け、この脱臭用通路54の途中に脱臭ファン55を設け、脱臭用通路54の排気口53側に脱臭ユニット56を設けている。なお、脱臭ファン55には軸流ファンなどが用いられる。吸気口52は、ケーシング15に形成した複数の透孔52T(
図5)からなり、網目状をなす。脱臭ユニット56は、排気口53に臨んでケーシング15の内部に着脱可能に設けられ、脱臭ファン55は脱臭ユニット56と前記吸気口52との間に配設されている。なお、
図5に示すように、脱臭用通路54は、上流側に前記吸気口52が設けられた曲線通路54Aと、この曲線通路54Aに連結された下流側の直線通路54Bとを有し、この直線通路54Bに前記脱臭ファン55と脱臭ユニット56とが間隔を置いて設けられる。
【0019】
脱臭ファン55が動作している間は、便器1内の臭気を前記吸気口52から吸い込んで、脱臭ファン55の下流の脱臭ユニット56へ強制的に送り出し、ここで臭気を取り除いて排気口53から臭気を低減した空気を排出させる。
【0020】
前記脱臭ユニット56は、フィルタケース57内に、脱臭用通路54の上流側から、活性炭を主として有する脱臭フィルタ61と、悪臭の分子を吸着して化学反応で消臭する消臭成分をグラフト重合処理により設けた一方の不織布たる第一の不織布62と、銅イオンを付着させた他方の不織布たる第二の不織布63とが着脱可能に設けられている。
【0021】
前記フィルタケース57は、合成樹脂などからなり、4つの側面部64,64,64,64を有する角型の筒部65を備えると共に、筒部65の一側を通気用蓋体66により塞ぐと共に、この蓋体66には、横方向に長いスリット状の通気口67が複数上下に並んで設けられている。なお、
図6に示すように、通気口67は斜め下向きに形成され、脱臭ユニット56を通過した空気が通気口67から斜め下向きに噴き出す。そして、筒部65の他側の開口部68からフィルタケース57内に、第二の不織布63、第一の不織布62、脱臭フィルタ61の順で挿入され、重ね合わされた第一及び第二の不織布62,63は、蓋体66と脱臭フィルタ61により挟持される。なお、挿入する順は、第一の不織布62、第二の不織布63、脱臭フィルタ61でもよく、脱臭フィルタ61と脱臭ファン55との間には空間があり、脱臭フィルタ61に脱臭ファン55の送風が直接当たるように構成している。
【0022】
前記蓋体66の縁部66Fは前記筒部65の外周から突出し、筒部65を吸気口52から脱臭用通路54に挿入すると、前記縁部66Fの内面が前記吸気口52の周囲に当接して位置決めされる。また、対向する一対の側面部64,64には、筒部65の他側に係合受部たる縦溝部69,69を設け、この縦溝部69の一側に弾性係止部70が設けられ、この弾性係止部70が前記吸気口52に設けた係止受け部(図示せず)に着脱可能に係脱する。具体的には、弾性係止部70の操作部71を筒部65の内側に押すと、弾性係止部70が弾性変形して前記係止受け部との係止が解除される。一方、筒部65を吸気口52に挿入すると、弾性係止部70が弾性変形した後、復帰して前記係止受け部に係止する。
【0023】
また、筒部65の他側には、縦溝部69を設けた側面部以外の一対の側面部64,64の他側縁に、半円状の切欠き部72,72を形成している。
【0024】
脱臭フィルタ61は、筒部65に対応して断面略正方形形状をなすと共に筒部65に比べて小さく形成され、且つ厚さが一定のブロック状のフィルタ本体73と、このフィルタ本体73の4つの側面を覆うように設けた角筒状の外装材74とを備え、この外装材74はクッション性を有する。フィルタ本体73は、活性炭からなり、その微細孔に多くの物質を吸着させることができる。また、フィルタ本体73には、複数の通孔75,75・・・が、その厚さ方向に貫通して設けられている。活性炭は通気性を有し、大部分の炭素の他、酸素、水素、カルシウム等を含む多孔質の物質である。活性炭は、石炭や、ヤシ殻などの炭素物質を原料として高温でガスや薬品と反応させて作られる微細孔を持つ炭素である。
【0025】
なお、変形例として、前記脱臭フィルタ61は、前記通孔75を有するフィルタ本体を、活性炭以外の材質の支持体により構成し、この支持体に活性炭を固着したものなど活性炭を有するものであればよい。
【0026】
前記外装材74の対向する一対の側面には、前記縦溝部69に挿入する係合部たる凸部76を設けている。そして、凸部76を前記縦溝部69に合わせて、筒部65内に脱臭フィルタ61を挿入し、挿入した状態でクッション性を有する外装材74が筒部65の内面に圧接又は当接し、外装材74のクッション性によって筒部65に脱臭フィルタ61が抜け止め状態で装着される。一方、脱臭フィルタ61の切欠き部72,72に露出した部分を、指で挟むようにして筒部65から脱臭フィルタ61を取り外すことができる。
【0027】
第一の不織布62は、該不織布を構成する繊維の表面に、消臭成分である酸素及び/又は硫黄含有官能基、例えば、スルホン酸基、スルホン酸塩基、スルホフルオライド基、水酸基、カルボキシル基、又はカルボニル基などがグラフト重合処理により導入され、それらポリマーによるイオン反応により消臭効果が得られ、特に、尿臭の元であるアンモニアに対して効果を有する。不織布に対するグラフト重合処理は、慣用されている方法により行うことができるが、通常、消臭成分を不織布に吹き付けて行い(含浸法)、また、消臭成分を含む液漕を設け、該液中に浸漬させながら移動させてもよい(浸漬法)。
【0028】
第二の不織布63は、銅イオンを含浸添着してなり、銅イオンの水溶液に不織布を浸漬した後、乾燥する工程を経る。なお、第二の不織布63に銅イオンを付着する方法は各種の方法を用いることができる。そして、特に、第二の不織布63は、便臭の元である硫化水素などを銅のイオン反応により分解及び吸着できる。
【0029】
前記フィルタ本体73は黒色、前記第一の不織布62は白色、前記第二の不織布63は第一の不織布62と異なる色で、この例では青が混ざった青みがかった白色をなす。なお、第一と第二の不織布63は、前記筒部65に対応して、略同一形状の方形をなす。また、第一の不織布62に比べて第二の不織布63は網目が大きく、このように第一の不織布62に比べて第二の不織布63は開口率が高く、通気性が高い。
【0030】
前記脱臭ファン55は、ケーシング81内に、ファン82とこのファン82を回転駆動する駆動用モータ83(
図10)とを備え、ファン82の回転によりケーシング81の上流側の吸気口52から吸気した空気を、ケーシング81の下流側の排気口53から噴き出す。
【0031】
便座装置10は脱臭ファン制御手段85を備え、この脱臭ファン制御手段85は、例えば演算制御装置としてのマイクロコンピュータや、記録媒体となるメモリや、アナログ/デジタル変換用の入出力インターフェースなどを主体として構成され、脱臭ファン制御手段85には、本体操作部21及び脱臭ファン55の駆動用モータ83がそれぞれ電気的に接続されている。
【0032】
図10などに示すように、脱臭ファン制御手段85には、駆動用モータ83の駆動を制御し、駆動用モータ83の電流値の変化を検出する電流値検出手段86と、一定値である設定値を記憶し、前記電流値検出手段86により検出した電流値の変位を前記設定値と比較する比較手段87と、この比較手段87により電流値の変位が一定値である前記設定値以上になると報知する報知手段たる発光表示部88を備える。この場合、脱臭ファン制御手段85は、脱臭装置51を使用する前、即ち、脱臭ユニット56又は/及び吸気口52などに埃や異物が蓄積される前の駆動用モータ83の初期の電流値を基準電流値として記憶し、脱臭装置51の経時的な使用により低下した駆動用モータ83の電流値と前記基準電流値とを前記比較手段87が比較する。
【0033】
脱臭装置51の使用により、脱臭ユニット56又は/及び吸気口52に埃や異物が蓄積され、その結果圧力損失が増加することにより、脱臭ファン55の回転数が上がり、電流値が下がるためその電流値の変動を脱臭ファン制御手段85が読み取り、脱臭ファン制御手段85は、電流値の一定の変位を検出すると、発光表示部88を点滅又は点灯するように制御して脱臭ユニット56又は吸気口52に詰まりが発生したことを報知する。
【0034】
図9は、前記本体操作部21を示し、本体操作部21の上面部に複数のボタン91-1~91-13が配置されている。本体操作部21の上面部の前側(
図9中で左側)には、前側から後側に向かって止ボタン91-1と、おしりボタン91-2と、ビデボタン91-3と、ムーブボタン91-4が配置され、中央右側のノズル位置調節用の前ボタン91-5及び後ボタン91-6と、中央左側の水勢調節用の弱ボタン91-7及び強ボタン91-8と、この強ボタン91-8の後側の温水温度調節ボタン91-9と、前記後ボタン91-6の後側の便座温度調節ボタン91-10と、前記温水温度調節ボタン91-9の後側のメモリーボタン91-11と、前記便座温度調節ボタン91-10の前側の掃除洗浄ボタン91-12と、前記メモリーボタン91-11の後側の節電ボタン91-13と、前記掃除洗浄ボタン91-12の後側のお手入れ表示部92とを備え、このお手入れ表示部92に近接して報知手段たる発光表示部88が設けられおり、この発光表示部88はLEDなどからなる。なお、
図9に示す本体操作部21の配置構成は一例に過ぎず、便座装置10の仕様に応じて適宜変更、追加、削除が可能である。また、お手入れ表示部92をボタンにより構成し、発光表示部88が点滅又は点灯したら、お手入れ表示部92を押して消灯できるように構成してもよい。
【0035】
なお、各ボタンを用いて洗浄条件を設定し、この洗浄条件で洗浄液を噴射している使用中に、前記メモリーボタン91-11を押すとその使用中の設定を図示しない制御手段が記憶し、記憶後、メモリーボタン91-11を押すと、その記憶した洗浄条件で便座装置10を駆動することができる。前記掃除洗浄ボタン91-12を押すと、洗浄ノズル25が出没、洗浄液により洗浄される。前記節電ボタン91-13を押すと、温水温度と便座温度の待機温度を低くして節電したり、図示しない温水ヒータと便座ヒータを所定時間停止して節電したりする。なお、これらの制御はいずれも図示しない制御手段により行われる。
【0036】
次に、脱臭装置51による便器1内の臭気の処理について説明する。制御手段により、使用者が便座12に着座したことを着座スイッチ19が検知すると、便器1内からの臭気を取り除くために脱臭ファン55の動作を自動的に開始させ、その後に使用者が便座12に着座していないことを着座スイッチ19が検知すると、所定時間(例えば1分)が経過した後に脱臭ファン55の動作を停止させる。便座12と便座蓋13を閉じた状態で脱臭ファン55を駆動すると、臭気を含む空気が、便器1のボウル部2の中央上方に位置する吸気口52から脱臭用通路54内に吸引され、脱臭ユニット56を通って脱臭された状態で外部に排気される。
【0037】
この場合、臭気を含む空気が脱臭フィルタ61を通過することより、活性炭が臭気物質を吸着し、特に上流側に配置した脱臭フィルタ61に臭気を含む空気が直接的に当たることにより臭気物質の吸着効果に優れたものとなる。この後、脱臭フィルタ61を通過した空気は、第一の不織布62を通過する際、放射線グラフト重合法により導入したスルホン酸などの化学反応により尿臭のものであるアンモニア臭が消臭され、次に、第二の不織布63を通過する際、銅イオンによるイオン反応により便臭の元である硫化水素臭を消臭することができる。なお、放射線としては、α線、β線、γ線、電子線、紫外線、プラズマなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0038】
また、脱臭装置51の使用により、脱臭ユニット56又は/及び吸気口52に埃や異物が溜まる。脱臭ユニット56又は/及び吸気口52に目詰まりが生じると、通路が狭められ圧力損失が増加し、脱臭ファン55の回転数が上がり、駆動用モータ83の電流値が下がる。脱臭ファン制御手段85は、電流値検出手段86により前記電流値の変化を検出し、比較手段87により電流値の変化を設定値と比較し、この電流値の変位が設定値以上になると発光表示部88を点滅又は点灯し、脱臭ユニット56又は/及び吸気口52に埃や異物が溜まったことを使用者に知らせる。
【0039】
吸気口52はケーシング15の前方下面に設けられ、また、脱臭フィルタ61は脱臭用通路54に収納されているため、外さないと確認できないのに対して、埃や異物の付着を発光表示部88が報知するため、脱臭ユニット56をわざわざ取り外したり、便座12を便器1から外して吸気口52の埃の溜まり具合を確認したりする手間を削減することができる。なお、吸気口52又は/脱臭フィルタ61に溜まった埃は、掃除機などにより吸引して除去することができる。
【0040】
脱臭フィルタ61が劣化したり、目詰まりが解消できなかったりした場合、弾性係止部70の操作部71を押して、脱臭ユニット56を排気口53から取り外し、フィルタケース57内の脱臭フィルタ61を交換する。この際、不織布62,63の片方又は両方を交換することができ、不織布62,63は色が異なるため、交換すべき不織布62,63を間違えることなく、交換することができる。
【0041】
筒部65内で蓋体66の内面に沿って不織布62,63を入れたら、凸部76を縦溝部69に合わせて、筒部65内に脱臭フィルタ61を挿入し、挿入した状態でクッション性を有する外装材74が筒部65の内面に圧接又は当接し、筒部65に脱臭フィルタ61が抜け止め状態で装着される。これにより不織布62,63が蓋体66と脱臭フィルタ61に挟着保持される。
【0042】
以上のように、本実施形態の便座装置10は、吸気口52と排気口53の間に設けた脱臭用通路54を備え、脱臭用通路54に、活性炭を有する脱臭フィルタ61と、悪臭の分子を吸着して化学反応で消臭する消臭成分がグラフト重合法により導入された一方の不織布である第一の不織布62と、銅イオンを付着させた他方の不織布である第二の不織布63とを設けている。
【0043】
そのため、臭気を含む空気が脱臭フィルタ61を通過することより活性炭に臭気物質が吸着され、グラフト重合法により導入したスルホン酸などの消臭成分が導入された不織布62により尿臭の元であるアンモニア臭が消臭され、不織布63を通過する際、銅イオンによるイオン反応により便臭の元である硫化水素臭を消臭することができる。このように2枚の不織布62,63毎に、臭気成分としてアンモニア,硫化水素を消臭することができ、活性炭を有する脱臭フィルタ61と組み合わせて、トイレにおける尿臭,便臭を効果的に消臭することができる。
【0044】
上述の便座装置10では、脱臭フィルタ61よりも排気口53側に第一,第二の不織布62,63を配置している。
【0045】
この場合、上流側に配置した脱臭フィルタ61に臭気を含む空気が直接的に当たることにより、活性炭による臭気物質の吸着効果に優れたものとなる。これに対して、臭気を含む空気は不織布62,63を通過する際、化学反応により消臭されるため、活性炭を主とする脱臭フィルタ61の下流に不織布62,63を配置しても消臭効果が損なわれることがなく、脱臭フィルタ61により埃も捕捉されるから、不織布62,63の目詰まりを防止できる。
【0046】
上述の便座装置10では、吸気口52から吸いこんだ空気を排気口53から排気する排気手段たる脱臭ファン55を備え、脱臭ファン55の駆動用モータ83の電流値の変化を検出する電流値検出手段86と、この電流値検出手段86により検出した電流値の変化が一定値以上になると報知する報知手段たる発光表示部88とを備える。
【0047】
この場合、脱臭装置51の使用により、脱臭ユニット56又は/及び吸気口52などに埃や異物が蓄積され、その結果圧力損失が増加することにより、脱臭ファン55の回転数が上がり、電流値が下がるためその電流値の変化を脱臭ファン制御手段85が読み取り、脱臭ファン制御手段85は、電流値の一定の変化を検出すると、発光表示部88により脱臭ユニット56又は吸気口52などに詰まりが発生したことを報知する。この報知により、脱臭ユニット56をわざわざ取り外したり、便座装置10を便器1から取り外したりして、埃の溜まり度合いを確認する手間を削減することができる。
【0048】
上述の便座装置10は、一方と他方の不織布62,63と脱臭フィルタ61を着脱可能に収納するフィルタケース57を備え、このフィルタケース57が脱臭用通路54に着脱可能に設けられている。
【0049】
この場合、脱臭用通路54からフィルタケース57を取り外して、不織布62,63と脱臭フィルタ61の交換や付着した埃などを除去することができる。
【0050】
上述の便座装置10は、フィルタケース57は、排気口53側に通気口67を有する通気用蓋体66を有し、この蓋体66の吸気口52側と脱臭フィルタ61との間に一方と他方の不織布62,63を挟持する。
【0051】
この場合、不織布62,63を蓋体66と脱臭フィルタ61の間に挟持してフィルタケース57に保持することができ、不織布62,63の交換が容易となる。
【0052】
また、第一の不織布62は白色、第二の不織布63は第一の不織布62と異なる色で、この例では青が混ざった青みがかった白色をなすから、見た目で違いが判り、2枚の不織布62,63の片方のみを交換する際、間違えることを防止できる。
【0053】
また、直線通路54Bに脱臭ファン55と脱臭ユニット56とを設けたから、脱臭ファン55により脱臭ユニット56の脱臭フィルタ61に略均一に空気を送り、その活性炭により臭気を効率よく吸着処理することができる。
【0054】
以上、本発明は上記実施形態やその変形例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。実施形態では、脱臭用通路54の下流側に第二の不織布63を配置すると共に、上流側に第一の不織布62を配置したが、脱臭用通路54の下流側に第一の不織布62を配置すると共に、上流側に第二の不織布63を配置してもよい。また、実施形態では、2枚の不織布を用いる例を示したが、3枚以上でもよく、3枚以上の場合は、少なくとも1枚が他の不織布と消臭する成分が異なることが好ましく、例えば、第一の不織布62、第二の不織布63、第一の不織布62の順で重ね合わせて使用してもよい。さらに、第一の不織布62と第二の不織布63とを通気性を損なうことなく張り合わせて一体にして用いてもよい。また、報知手段は、実施形態で示した発光表示部以外でも、警報音で報知するものや、液晶ディスプレイなどの文字による報知するものなどでもよい。さらに、不織布は、グラフト重合法に用いることができれば、各種材質のものを用いることができる。また、実施例では、脱臭フィルタ61に不織布62,63の一方を重ね合わせるようにして配置したが、脱臭フィルタ61と不織布62,63とを離して配置してもよい。