(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071306
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】制振装置及び制振方法
(51)【国際特許分類】
F16F 15/073 20060101AFI20240517BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20240517BHJP
F16F 1/18 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F16F15/073
F16F15/02 C
F16F15/02 E
F16F1/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182181
(22)【出願日】2022-11-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [公開の事実(1)に関する刊行物等](刊行物1)刊行物名:ITERブランケット遠隔保守装置用 同調質量ダンパ試験装置の基本設計 仕様書 作成者名:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、公知日:令和3年11月16日~令和3年12月6日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り [公開の事実(1)に関する刊行物等] (刊行物1)刊行物名:ITERブランケット遠隔保守装置用 同調質量ダンパ試験装置の基本設計 仕様書 作成者名:国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構、公知日:令和3年11月16日~令和3年12月6日
(71)【出願人】
【識別番号】301032942
【氏名又は名称】国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】野口 悠人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智之
(72)【発明者】
【氏名】武田 信和
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 学
(72)【発明者】
【氏名】吉田 治
(72)【発明者】
【氏名】青山 優也
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA02
3J048AC01
3J048AD07
3J048BC04
3J048BE12
3J048BF05
3J048CB18
3J048EA38
3J059BA14
3J059BB07
3J059BD03
3J059GA50
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、振動減衰機構に油、グリス及び樹脂系材料等の流体を用いることなく質量体の振動を減衰し、制振対象物の制振を行うことができる制振装置及び制振方法を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、制振対象物の振動と同調して振動する質量体と、前記質量体を懸架する弾性体と、前記質量体の振動を減衰させる振動減衰機構と、を備え、前記振動減衰機構は、前記質量体の振動に伴って摺動する摺動部を有し、前記摺動部での摺動によって前記質量体の振動を減衰させることを特徴とする、制振対象物の振動を減衰させる制振装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象物の振動と同調して振動する質量体と、
前記質量体を保持する弾性体と、
前記質量体の振動を減衰させる振動減衰機構と、を備え、
前記振動減衰機構は、前記質量体の振動に伴って摺動する摺動部を有し、前記摺動部での摺動によって前記質量体の振動を減衰させることを特徴とする、制振装置。
【請求項2】
前記弾性体は、板バネであることを特徴とする、請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記弾性体を支持する支持部を備え、前記支持部は、前記板バネを傾動可能に支持することを特徴とする、請求項2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記板バネは、板バネを2以上積層してなる重ね板バネであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の制振装置。
【請求項5】
前記重ね板バネは、長手方向の長さの異なる板バネを備え、前記質量体側に配置された板バネの長手方向の長さが、前記質量体と反対側に配置された板バネの長手方向の長さよりも小さいことを特徴とする、請求項4に記載の制振装置。
【請求項6】
前記質量体の質量を調整する質量調整機構を備えることを特徴とする、請求項1に記載の制振装置。
【請求項7】
前記質量体は、主質量体と、1又は複数の調整質量体を備え、前記質量調整機構は、前記調整質量体の総質量を調整することを特徴とする、請求項6に記載の制振装置。
【請求項8】
前記振動減衰機構は、前記質量体の振動を減衰させる減衰力を調整する減衰力調整部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の制振装置。
【請求項9】
前記質量体を囲う外郭部を備え、前記減衰力調整部は、前記外郭部の外側から減衰力を調整する調整具を備えることを特徴とする、請求項8に記載の制振装置。
【請求項10】
前記振動減衰機構は、前記摺動部に押圧力を与える加圧部材を備え、前記加圧部材は皿バネ又はコイルバネを備えることを特徴とする、請求項8又は9に記載の制振装置。
【請求項11】
弾性体によって支持された質量体を、制振対象物の振動と同調させて振動させる工程と、
前記質量体の振動に伴って摺動する摺動部での摺動によって、前記質量体の振動を減衰させる工程と、
を備えることを特徴とする、制振方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の振動を抑制するための制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
構造体の振動を抑制するための制振装置が知られている。
例えば、特許文献1には、振動する構造体(制振対象物)に、バネなどを介して質量体を付加することにより、質量体が構造体の振動に同調して振動することで、構造体の振動を抑制する制振装置が開示されている。
また、この制振装置には、質量体の振動を減衰するための減衰部材として、オイルダンパーを使用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載された制振装置は、質量体の振動を減衰する減衰部材としてオイルダンパーを使用しているため、真空環境下で使用する制振対象物に適用すると、オイル漏れやオイルの揮発が生じるなどの問題がある。
そこで、本発明の課題は、振動減衰機構に油、グリス及び樹脂系材料等の流体を用いることなく質量体の振動を減衰し、制振対象物の制振を行うことができる制振装置及び制振方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、減衰装置に摺動することで質量体の振動を減衰させる摺動具を用いることで、流体を用いることなく、質量体の振動を減衰することで制振対象物の振動を抑制することができることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の制振装置及び制振方法である。
【0006】
上記課題を解決するための本発明の制振装置は、制振対象物の振動と同調して振動する質量体と、前記質量体を保持する弾性体と、前記質量体の振動を減衰させる振動減衰機構と、を備え、前記振動減衰機構は、前記質量体の振動に伴って摺動する摺動部を有し、前記摺動部での摺動によって前記質量体の振動を減衰させることを特徴とする。
この制振装置によれば、質量体の振動を減衰させる振動減衰機構が、質量体の振動に伴って摺動する摺動部を有しており、摺動部での摺動によって前記質量体の振動を減衰させることができるため、振動減衰機構として、油、グリス及び樹脂系材料等の流体を用いる必要がなく、真空環境下においても制振装置を使用することができるという効果がある。また、油などの可燃物を使用しないため、安全性にも優れるという効果もある。
【0007】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、弾性体は、板バネであること特徴とする。
この制振装置によれば、板バネを弾性体として用いることで、弾性体にコイルバネを適用した場合と比較して弾性体の全高を低くすることが可能であるため、制振装置全体の全高を低くすることができる。そのため、設置高さに制約のある制振対象物への取り付けが容易となる。
【0008】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、弾性体は、コイルバネであることを特徴とする。
この制振装置によれば、弾性体にコイルバネを使うことで弾性体の線形性を高めることができ、制振効果の解析を容易にすることが可能である。
【0009】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、弾性体を支持する支持部を備え、前記支持部は、板バネを傾動可能に支持することを特徴とする。
この制振装置によれば、板バネが往復運動する際に、支持部における板バネの変形ストレスを解消し、板バネの耐久性を向上することができる。
【0010】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、板バネは、板バネを2以上積層してなる重ね板バネであることを特徴とする。
この制振装置によれば、板バネを重ねることにより、容易に弾性体の張力を変更することができ、さらに、板バネ同士の摩擦により質量体の振動を減衰する作用も得ることができる。また、重ね板バネが往復運動する際に、弾性体にかかる応力が各板バネに分散されるため、弾性体の耐久性が向上するという効果がある。
【0011】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、重ね板バネは、長手方向の長さの異なる板バネを備え、質量体側に配置された板バネの長手方向の長さが、質量体と反対側に配置された板バネの長手方向の長さよりも小さいことを特徴とする。
この制振装置によれば、重ね板バネが往復運動する際に、重ね板バネが質量体を囲うように変形するため、質量体を重ね板バネの近くに配置することが可能となり、制振装置を小型化することができる。
【0012】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、質量体の質量を調整する質量調整機構を備えることを特徴とする。
この制振装置によれば、制振対象物の質量や振動量に応じて、質量体の質量を調整することが可能であるため、制振装置が設けられる制振対象物の質量や振動量が変化した場合であっても、制振装置自体に大きな改修を行うことなく、最適な制振を行うことができる。
【0013】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、質量体は、主質量体と、1又は複数の調整質量体を備え、質量調整機構は、調整質量体の総質量を調整することを特徴とする。
この制振装置によれば、質量体の質量を調整する際に、取り扱い性に優れた調整質量体の総質量を調整するため、より簡易的に質量体の質量を調整することができる。
【0014】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、振動減衰機構は、質量体の振動を減衰させる減衰力を調整する減衰力調整部を備えることを特徴とする。
この制振装置によれば、質量体の質量に応じて、質量体の振動を減衰させる減衰力を調整することが可能であるため、質量体の質量を変えた場合であっても、簡易的な操作で最適な制振を行うことができる。
【0015】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、質量体を囲う外郭部を備え、減衰力調整部は、前記外郭部の外側から減衰力を調整する調整具を備えることを特徴とする。
この制振装置によれば、外郭部の外側から減衰力を調整することができるため、簡易的な操作で減衰力を調整することができる。
【0016】
更に、本発明の制振装置の一実施態様としては、振動減衰機構は、摺動部に押圧力を与える加圧部材を備え、前記加圧部材は皿バネ又はコイルバネを備えることを特徴とする。
皿バネは、耐荷重や耐久性に優れることから、皿バネを使用する場合、摺動部に対して大きな押圧力を与えることが可能となり、強い減衰力を得ることができる。また、加圧部材の耐久性も優れるという効果や、押圧力が安定するという効果もある。
コイルバネは、押圧力の調整が容易になるという効果がある。
【0017】
また、上記課題を解決するための本発明の制振方法は、弾性体によって支持された質量体を、制振対象物の振動と同調させて振動させる工程と、前記質量体の振動に伴って摺動する摺動部での摺動によって、前記質量体の振動を減衰させる工程と、を備えることを特徴とする。
この制振方法によれば、質量体の振動に伴って摺動する摺動部での摺動によって質量体の振動を減衰させることができるため、振動減衰機構として、油、グリス及び樹脂系材料等の流体を用いる必要がなく、真空環境下に設置された制振対象物を制振することができるという効果がある。また、油などの可燃物を使用しないため、安全性にも優れるという効果もある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、減衰装置に油、グリス及び樹脂系材料等の流体を用いることなく質量体の振動を減衰し、制振対象物の制振を行うことができる制振装置及び制振方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施態様である制振装置の構造を示す概略説明図(正面図)である。
【
図2】本発明の第1の実施態様である制振装置の構造を示す概略説明図(斜視図)である。
【
図3】本発明の第1の実施態様である制振装置の構造を示す概略説明図(上面図)である。
【
図4】本発明の第1の実施態様である制振装置の動作を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施態様である制振装置の使用例を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の第2の実施態様である制振装置の構造を示す概略説明図(正面図)である。
【
図7】本発明の第3の実施態様である制振装置の構造を示す概略説明図(正面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る制振装置及び制振方法の実施態様を詳細に説明する。また、本発明に係る制振方法については、本発明に係る制振装置の動作に係る説明に置き換えるものとする。
なお、実施態様に記載する制振装置及び制振方法については、本発明に係る制振装置、制振方法を説明するために例示したに過ぎず、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明に係る制振装置は、制振対象物として振動する構造体に設置され、構造体の振動に対して質量体が同調して振動することで、構造体の振動を制振する装置である。具体的には、質量体を保持するバネ等の弾性体が制振装置の外郭部に支持されることにより、構造体が振動した際に、それに伴って質量体も振動することにより構造体の振動を吸収する装置である。
ここで、本発明に係る制振対象物は、建築物や機械設備等の構造体が想定される。特に、真空環境下、放射線環境下に設置された構造体や、燃焼装置などの燃焼操作を伴う構造体に好適に利用することができる。
例えば、ITER(国際熱核融合実験炉)において核融合反応で発生する中性子を遮断するブランケットの据付及び保守作業を遠隔で行うITERブランケット遠隔保守装置等である。ここで、ITER内は中性子により放射化されているため、放射線損傷の影響を受けるゴムを用いた免振装置を使用することができない。また、ITERにおける真空容器内の真空清浄性を保つために、油等の液体により振動を減衰する制振装置を使用することができない。しかし、本発明に係る制振装置は、弾性体に耐放射線性の高いバネを用い、油等の液体を使用せず摺動することで振動を減衰する振動減衰機構を備えていることにより、放射線環境下で真空容器を用いるITER内において使用されるITERブランケット遠隔保守装置の制振に使用することが可能となる。
【0022】
[第1の実施態様]
図1を参照し、本発明の第1の実施態様の制振装置100Aについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施態様における制振装置100Aの全体の構成を示す概略説明図である。
【0023】
制振装置100Aは、
図1に示すように、制振装置100Aの外郭を構成する外郭部10、振動することで構造体の振動を抑制する質量体部30A、質量体30Aを吊架するように保持する弾性体20A、弾性体20Aを外郭部10に支持する支持部40A-1、40A-2、質量体部30Aの振動を減衰する振動減衰機構50-1、50-2を備える。
【0024】
制振装置100Aの特徴を説明すると、制振装置100Aが取り付けられた構造体(非図示)が振動すると、制振装置100Aの弾性体20Aに保持された質量体30Aが構造体の振動に同調して振動する。その際、振動減衰機構50-1、50-2によって、質量体30Aの振動が減衰されることで構造体自体の振動も減衰されるため、構造体の制振が可能となるというものである。
以下、各構成について詳細に説明する。
【0025】
<外郭部>
外郭部10は、制振装置100Aの外郭を構成するものである。外郭部は、内部に質量体を保持する弾性体を支持することができればどのような形状でもよく、例えば、ケーシング(筐体)や、枠体などが挙げられる。
本発明の第1の実施態様の制振装置100Aは、外郭部10として、内部に、質量体30A、弾性体20A、振動減衰機構50-1、50-2を配置するケーシングを備えている。
【0026】
外郭部10の大きさは特に限定されないが、後述する質量体30Aの動作の妨げとならない程度の大きさであることが好ましい。これによれば、制振装置を最小化することが可能となり、最小限のスペースに、制振装置100Aを取り付けることが可能となるため、様々な大きさの構造体に制振装置100を取り付けることができる。
【0027】
また、外郭部10の質量についても、特に限定されないが軽量であることが好ましい。これによれば、制振装置100A全体の質量を軽くすることができるため、制振装置100Aの自体の振動による運動エネルギーを低くすることが可能となる。そのため、後述する質量体の質量を低くすることができるため、結果として所定の性能を維持したまま制振装置100Aをコンパクトに製作することが可能となる。
【0028】
また、外郭部10の材質についても、特に限定されないが、樹脂やステンレス素材であることが好ましい。これによれば、錆の発生による制振装置100Aの損傷を防ぐことができる。また、外郭部10の材質について耐放射線性樹脂であることが挙げられる。これにより、制振装置100Aを放射線環境において使用するITERブランケット遠隔保守装置等の設備や装置の制振に好適に使用することができる。
【0029】
外郭部10は、振動減衰機構50-1、50-2の減衰力調整部52-1、52-2(
図3参照。)が固定されている。振動減衰機構の詳細については後述する。
【0030】
<支持部>
支持部40A-1、40A-2は、弾性体20Aを支持するための部材である。支持部の機構は、弾性体を支持することができればよく、特に制限されないが、例えば、板バネからなる弾性体を傾動可能に支持する機構が好ましい。板バネを傾動可能に支持することにより、板バネが往復運動する際に、支持部における板バネの変形ストレスを解消し、板バネの耐久性を向上することができる。
【0031】
第1の実施態様の制振装置100Aにおける支持部40A-1、40A-2では、外郭部10に固定された固定基台41A-1、41A-2と、弾性体20Aと固定基台41A-1、41A-2を連結する連結具42A-1、42A-2により形成されている。連結具42A-1、42A-2は、固定基台41A-1、41A-2に対して、ボルトやピン等により回動可能に係合されている。弾性体20Aが往復運動すると、ボルトやピン等を支点として連結具42A-1、42A-2が回動し、板バネからなる弾性体20Aを傾動することができる。
【0032】
また、固定基台41A-1、41A-2は外郭部10と一体的に形成されたものでもよいし、外郭部10とは別部品として製作されたものを後に、ボルトナット等の係止具や溶接により外郭部10と接合するものとしてもよい。
固定基台41A-1、41A-2を外郭部10と一体的に形成するものとした場合、固定基台41A-1、41A-2の強度を高めることが可能となるため、固定基台41A-1、41A-2が破断するリスクを低下させることができる。
また、固定基台41A-1、41A-2を外郭部10とは別部品として作製する場合、、固定基台41A-1、41A-2の外郭部10に対する位置を変更することができる。そのため、外郭部10以外の他の構成である弾性体20A、質量体30A及び振動減衰機構50-1、50-2の構造を変更する場合であっても容易に対応することができる。
【0033】
固定基台41A-1、41A-2の材質は、どのようなものであって構わない。例えば、外郭部10と同一であってもよい。これによれば、外郭部10と同一の工程で固定基台41A-1、41A-2を作製することで、制振装置100Aの製造コストを抑えることができる。
また、固定基台41A-1、41A-2の材質を外郭部10と異なるものとしてもよい。これによれば、ケーシング11を軽量な材質で作製し、質量体30Aが振動することによる応力が集中する固定基台41A-1、41A-2のみを、質量のある高強度な材質で作製することで、必要な強度を確保しつつ制振装置100全体の質量を抑えることができる。
【0034】
<弾性体>
弾性体20Aは、支持部40A-1、40A-2により外郭部10に連結され、後述する質量体30Aを往復運動可能に支持するものである。弾性体は、質量体を往復運動可能に支持するものであれば、どのような構造でもよいが、例えば、コイルバネや板バネなどのバネを利用することができる。特に、板バネは、コイルバネと比較して弾性体の全高を低くすることが可能であり、制振装置全体の全高を低くすることができる。そのため、設置高さに制約のある制振対象物への取り付けが容易となる。
【0035】
第1の実施態様の制振装置100Aでは、弾性体20Aとして、長手方向の長さの異なる板バネを2以上積層してなる重ね板バネを備える。これによれば、大きさ、形状又は張力の異なる複数の板バネを組み合わせることにより、最適な張力の弾性体20Aとすることができるため、質量体30Aの重さを変更する際にも、それに併せて簡単に弾性体20Aの張力の調整を行うことができる。
また、弾性体20Aは、耐放射線の高い素材であることが好ましい。これにより、制振装置100Aを放射線環境下で好適に使用することができる。
【0036】
重ね板バネ(弾性体20A)は、
図1に示すように、質量体側に配置された板バネの長手方向の長さが、質量体と反対側に配置された板バネの長手方向の長さよりも小さいことが好ましい。これにより、重ね板バネが往復運動する際に、重ね板バネが質量体30Aを囲うように変形するため(例えば、
図4(b)に図示する状態。)、質量体30Aを重ね板バネの近くに配置することが可能となり、制振装置を小型化することができる。
【0037】
<質量体>
質量体30Aは、制振装置100Aが取り付けられた構造体の振動と同調して振動することで、構造体の振動を吸収する質量体である。
図1に示すように、質量体部30Aは、主質量体31、調整質量体32-1、32-2、質量体ベース33A及び固定具34Aを備えている。また、制振装置100における質量体の総質量は、主質量体31、調整質量体32-1、32-2、質量体ベース33及び固定具34Aの質量を合計したものである。
【0038】
(主質量体)
主質量体31は、質量体30Aの質量の大部分を担うものであり、構造体の振動を吸収するための主部材である。
質量体31は、所定の往復運動による構造体の振動の吸収を行うことができれば、どのようなものであって構わない。例えば、比重の重い金属が好ましく、中でもタングステン等の高比重の金属が更に好ましい。これによれば、所定の質量の主質量体31の体積を小さくすることができるため、結果として制振装置100Aをコンパクトにすることができる。
【0039】
また、主質量体31は、ボルトナット等の係止具により、後述する質量体ベース33Aに係止されるものとしてもよい。これによれば、主質量体31の質量を変更する場合等、主質量体31を交換する際に容易に主質量体31を制振装置100Aから脱着することができるため、制振装置100Aの性能の調整やメンテナンスが容易に行える。
【0040】
(調整質量体)
調整質量体32-1、32-2は、質量体30Aの総質量の調整を行うための補助的な質量体であり、質量体の質量を調整する質量調整機構としての役割を担うものである。調整質量体は、主質量体より取り扱い性に優れるものであり、例えば、把持しやすい形状や、脱着が容易な構造、主質量体より軽量であるなどの特徴を有するものである。調整質量体の数は、1つでも複数でもよい。
質量調整機構によれば、制振対象物の質量や振動量に応じて、質量体の質量を調整することが可能であるため、制振装置が設けられる制振対象物の質量や振動量が変化した場合であっても、制振装置自体に大きな改修を行うことなく、最適な制振を行うことができる。
【0041】
調整質量体32-1、32-2は、所定の往復運動による構造体の振動の吸収を行うことができれば、どのようなものであって構わない。例えば、比重の重い金属が好ましく、中でもタングステン等の高比重の金属が更に好ましい。これによれば、所定の質量の調整質量体32-1、32-2の体積を小さくすることができるため、結果として制振装置100Aをコンパクトにすることができる。なお、調整質量体32-1、32-2の材質は、主質量体31と同一であっても異なっていてもよい。
【0042】
また、調整質量体32-1、32-2は、ボルトナット等の係止具により、後述する質量体ベース33Aに係止されるものとしてもよい。これによれば、質量体30Aの総質量を調整する際に、調整質量体32-1、32-2を容易に脱着することができるため、制振装置100Aの性能の調整やメンテナンスが容易に行える。
さらに、調整質量体32-1、32-2は、小分けに分割された複数の調整質量体としてもよい。
図1、2に示すように調整質量体32-1、32-2を複数個に分けることにより、構造体の振動量や弾性体20Aの張力に併せて質量体30Aの総質量を細かく調整することができる。
【0043】
(質量体ベース)
質量体ベース33Aは、主質量体31と調整質量体32-1、32-2を保持する基盤であり、固定具34Aにより弾性体20Aに固定されている。
また、質量体ベース33Aも固有の質量をもち、それ自体で主質量体31と調整質量体32-1、32-2とは別の質量体としても機能する。
また、質量体ベース33Aは、後述する振動減衰機構50-1、50-2の摺動部51-1、51-2を構成する第1摺動プレート53A-1、53A-2、第2摺動プレート53B-1、53B-2(
図3参照。)を備えている。
【0044】
質量体ベース33Aの形状は、どのようなものであって構わない。例えば、
図2、3に示すように、質量体ベース33Aを板状に作製し、主質量体31及び調整質量体32-1、32-2を質量体ベース33の両面に挟んで対称に取り付ける態様が挙げられる。これにより、複数の質量体(主質量体、調整質量体)をコンパクトに取り付けることが可能となり、また、質量バランスに優れるため、質量体30Aの往復運動を安定して行うことができる。
【0045】
(固定具)
固定具34Aは、弾性体20Aと質量体30Aを固定するものである。
固定具34Aは、弾性体20Aと質量体30Aを固定することができればどのようなものであって構わない。例えば、
図1、2に示すように、弾性体20Aと質量体30Aとは別部品としてもよいし、固定具34Aを弾性体20A又は質量体30Aと一体としてもよい。
【0046】
<振動減衰機構>
振動減衰機構50-1、50-2は、構造体の振動に同調して振動する質量体30Aの振動を減衰することで、構造体の振動を減衰するものである。減衰力調整機構は、質量体の振動を減衰することができればよく、設置位置や数は、特に制限されない。
図1に示すように、第1の実施態様における振動減衰機構50-1、50-2は、質量体30Aの正面図において左右対称な位置に2か所設置されている。
また、振動減衰機構50-1、50-2は、
図2に示すように、それぞれに摺動部51-1、51-2と減衰力調整部52-1、52-2を備えている。
【0047】
(摺動部)
摺動部は、質量体側に固定された摺動プレートと、外郭部側に固定された摺動パットからなり、摺動プレートと摺動パットが摺動することにより、質量体の振動を減衰するものである。摺動部の数や、位置は特に制限されない。
第1の実施態様における摺動部51-1、51-2は、
図3に示すように、質量体ベース33Aの両面に形成されており、摺動部51-1は、正面側に第1摺動パット54A-1と第1摺動プレート53A-1、背面側に第2摺動パット54B-1と第2摺動プレート53B-1を備えており、摺動部51-2は、正面側に第1摺動パット54A-2と第1摺動プレート53A-2、背面側に第2摺動パット54B-2と第2摺動プレート53B-2を備えている。
【0048】
摺動プレートは、質量体ベース33Aに固定された部材であり、外郭部10側に固定された摺動パットと摺動することにより、質量体30Aの振動を減衰するものである。摺動プレートは、摺動パットとの摩擦力により、質量体30Aの振動を減衰することができればどのような構造であってもよく、質量体ベース33Aに別部品として設置してもよいし、質量体ベース33Aの表面を摺動プレートとして使用してもよい。
【0049】
また、摺動プレートは、質量体ベース33Aから取り外し可能に設置されているものとしてもよい。これによると、摺動プレートが摩耗することで所定の性能を発揮しなくなった場合や、質量体30Aの振動の大きさに併せて、摺動部の減衰力を変更する場合に、摺動プレートを容易に交換することが可能となるため、制振装置100Aのメンテナンス性能を向上させることができる。
【0050】
摺動パットは、外郭部10に固定され、質量体ベース33Aに固定された摺動プレートに向けて押圧する部材であり、摺動プレートとの摩擦によって質量体30Aの振動を減衰するものである。摺動パットは、摺動プレートとの摩擦力により、質量体30Aの振動を減衰することができればどのような構造であってもよい。
【0051】
摺動プレート及び摺動パットの材質は、摺動部に求められる所定の減衰力に応じて選択される。例えば、摺動部の減衰力を高めるためには、摩擦係数の高い素材を選択し、逆に減衰力を低く設定したい場合は、摩擦係数の低い素材を選択することができる。
【0052】
(減衰力調整部)
減衰力調整部は、摺動パットに与える押圧力を調整するための機構である。減衰力調整部の具体的な態様は特に限定されないが、例えば、第1の実施態様の減衰力調整部52-1、52-2では、摺動パットに押圧力を与える加圧部材58-1、58-2と、当該加圧部材の押圧力を調整する調整具55-1、55-2と、当該加圧部材の一端を押さえる押え具57-1、57-2と、当該加圧部材の他端側で調整具を固定する座金56-1、56-2を備えている。
【0053】
図3に示すように、減衰力調整部52-1、52-2は、ケーシング(外郭部10)の正面に形成された第1外筒11A-1、11A-2と、ケーシングの背面に形成された第2外筒11B-1、11B-2に設置されている。第1外筒11A-1、11A-2には、加圧部材58-1、58-2を収容する内筒12-1、12-2が挿入されており、加圧部材58-1、58-2の一端には押え具57-1、57-2が係合している。他方、第2外筒11B-1、11B-2には、座金56-1、56-2が挿入されている。
調整具55-1、55-2は、押え具57-1、57-2と座金56-1、56-2の外側から、ケーシング、加圧部材58-1、58-2、第1摺動パット54A-1、54A-2、第1摺動プレート53A-1、53A-2、質量体ベース33A、第2摺動プレート53B-1、53B-2、及び第2摺動パット54B-1、54B-2を挿通するボルト及びナットにより構成され、ボルトナットの締め付けの程度により加圧部材の長さを調整することができる。
【0054】
加圧部材は、摺動パットに押圧力を加える部材であり、例えば、皿バネ、板バネ、コイルバネなどが挙げられる。皿バネは、耐荷重が高いことから、摺動部に対して大きな押圧力を与えることが可能となり、強い減衰力を得ることができる。また、耐久性にも優れており、加圧部材の交換頻度を低減することができる。さらには、押圧力が安定するという効果もある。コイルバネを使用する場合、押圧力の調整が容易になる。
【0055】
調整具は、加圧部材による押圧力を調整する部材である。例えば、第1の実施態様の調整具55-1、55-2では、外郭部10の外側から加圧部材58-1、58-2の長さを調整することにより、押圧力を調整することができる。このように、外郭部の外側から減衰力を調整することができると、制振装置を分解することなく、簡易的な操作で減衰力を調整することができる。
【0056】
<制振装置の動作>
次に、
図4(a)、(b)を用いて制振装置100Aの全体の動きを説明する。
構造体(非図示)に取り付けられた制振装置100Aは、構造体が振動することに伴って、内部に支持された質量体30Aが構造体の振動に同調して振動する。例えば、
図4(a)、(b)に示すように、構造体が振動すると、制振装置100A内の質量体30Aが支持部40A-1、40A-2を支点に下方向に移動し(
図4(a)参照。)、次いで、弾性体20Aの張力により質量体30Aが上方向に移動する(
図4(b)参照。)。
質量体30Aによる上下方向の往復運動が始まると、質量体ベース33Aに固定された摺動プレートと外郭部10に固定された摺動パットが摺動し、その摩擦力により質量体30Aの往復運動が減衰し、構造体の振動が制振される。
【0057】
また、本実施態様における制振装置100Aが適用される事例を、
図5(a)及び
図5(b)を例に説明する。
図5(a)は、ITER(国際熱核融合実験炉)において核融合反応で発生する中性子を遮断するブランケットの据付及び保守作業を遠隔で行うITERブランケット遠隔保守装置Mの概略図である。
【0058】
ITERブランケット遠隔保守装置Mでは、軌道M2が設けられており、軌道M2に沿ってブランケット遠隔保守ロボットM1が移動する。ここで、軌道M2は、遠隔保守ロボットM1が移動することにより振動が発生する以外にも地震等の外的要因により振動することがある。この振動により、軌道M2が破損する場合があるが、ITER内は放射線環境下であるため、修理することは容易なことではない。
【0059】
そのため、
図5(b)に示すように、軌道M2(制振対象物)内に制振装置100Aを設置することで、軌道M2の振動を制振し、遠隔保守ロボットM1が移動することによる振動によるダメージの蓄積により軌道M2が破損することや、地震等の外的要因により軌道M2が破損することを防止することができる。
また、制振装置100Aは、減衰装置として、振動減衰機構50-1、50-2として、質量体30Aの振動に伴って摺動する摺動部51-1、51-2を有し、摺動部51-1、51-2での摺動によって質量体30Aの振動を減衰させることから、油等により振動を減衰させる制振装置と異なり、真空環境下に設置する必要のあるITERブランケット遠隔保守装置Mに好適に使用することができる。
【0060】
また、弾性体20Aを板バネとすることや、支持部40A-1、40A-2として板バネを傾動可能に支持する機構(例えば、チルト機構)を適用することで制振装置100Aをコンパクトなものとすることができるため、設置スペースの限られる軌道M2内にも設置することができる。
【0061】
[第2の実施態様]
図6を参照し、本発明の第2の実施態様の制振装置100Bについて説明する。
図6は、本発明の第2の実施態様における制振装置100Bの構成を示す概略説明図である。
第2の実施態様の制振装置100Bは、第1の実施態様の制振装置100Aの弾性体20A、支持部40A-1、40A-2、質量体33Aを、それぞれ弾性体20B-1、20B-2、支持部40B-1、40B-2、質量体33Bに変更したものである。その余の外郭部10、振動減衰機構50-1、50-2は同一である。
【0062】
<質量体>
第2の実施態様の制振装置100Bの質量体30Bは、質量体ベース33Bと、質量体ベース33Bの略中央に配置された主質量体31、質量体ベース33Bの両側端に振動減衰機構50-1、50-2、質量体ベース33Bの上部及び下部の略中央に固定具34B-1及び34B-2を備える。
質量体30Bは、固定具34B-1、34B-2を介して、弾性体20B―1、20B-2に固定される。制振装置に対して横方向の振動が生じると、質量体が横方向に振動するため、固定具に対して負荷がかかる。質量体30Bのように、上部及び下部で弾性体20B-1、20B-2と固定される場合には、固定具にかかる負荷が低減され、固定具の破損を抑制することができる。
【0063】
<弾性体>
第2の実施態様の制振装置100Bは、外郭部10(ケーシング)内の対向する位置に、二つの弾性体20B-1、20B-2を備えるものである。
二つの弾性体20B-1、20B-2を備えることにより、制振装置の体積を大きくすることなく、よりバネの張力を高めた制振装置を作製することができる。
【0064】
<支持部>
また、第2の実施態様の制振装置100Bは、二つの弾性体20B-1、20B-2に対して、それぞれ支持部40B-1、40B-2を備えるものである。また、支持部40B-1、40B-2は、それぞれ固定基台41B-1、41B-2、保持具43-1、43-2、固定シャフト44-1、44-2を備える。
【0065】
図6に示すように、保持具43-1、43-2は、板バネ状の弾性体20B-1、20B-2の一端を挟持することにより、固定基台41B-1、41B-2に弾性体20B-1、20B-2を支持する。また、弾性体20B-1、20B-2の他端は、後述する固定シャフト44-1、44-2に支持されている。
保持具43-1、43-2は、それぞれ2つの半円柱状の部材からなり、2つの円柱状の部材の間に弾性体の一端を挟持する。これにより、板バネからなる弾性体20B-1、20B-2を傾動可能に支持することができる。
【0066】
固定シャフト44-1、44-2は、弾性体20B-1、20B-2の他端を回動可能に支持するものである。回動可能に支持することにより、質量体30Bが振動する際に、板バネからなる弾性体20B-1、20B-2の他端における変形ストレスを低減し、弾性体20B-1、20B-2の破損を抑制することができる。
【0067】
[第3の実施態様]
図7を参照し、本発明の第3の実施態様の制振装置100Cについて説明する。
図7は、本発明の第3の実施態様における制振装置100Cの構成を示す概略説明図である。
第3の実施態様の制振装置100Cは、第1の実施態様の制振装置100Aの弾性体20A、支持部40A-1、40A-2、固定具34Aを、それぞれ弾性体20C-1、20C-2、20C-3、20C-4、支持部40C-1、40C-2、40C-3、40C-4、固定具34C-1、34C-2、34C-3、34C-4に変更したものである。その余の外郭部10、振動減衰機構50-1、50-2、主質量体31、調整質量体32-1、32-2、質量体ベース33Aは同一である。
【0068】
<弾性体>
第3の実施態様の制振装置100Cは、コイルバネからなる複数の弾性体20C-1、弾性体20C-2、弾性体20C-3、弾性体20C-4を備えるものである。弾性体にコイルバネを使うことで弾性体の線形性を高めることができ、制振効果の解析を容易にすることが可能である。
具体的には、弾性体20C-1及び弾性体20C-3は、質量体30Aにおける一端部(質量体30Aにおける調整質量体32-1の設置部分)を、上下方向から弾性的に保持している。一方、弾性体20C-2及び弾性体20C-4は、質量体30Aにおける他端部(質量体30Aにおける調整質量体32-2の設置部分)を、上下方向から弾性的に保持している。
つまり、弾性体20C-1、20C-2の個々の上端は、支持部40C-1、40C-2により外郭部10にそれぞれ固定され、弾性体20C-1、20C-2の個々の下端は、固定具34C-1、34C-2により質量体30Aにそれぞれ固定されている。一方、弾性体20C-3、20C-4の個々の下端は、支持部40C-3、40C-4により外郭部10にそれぞれ固定され、弾性体20C-3、20C-4の個々の上端は、固定具34C-3、34C-4により質量体30Aにそれぞれ固定されている。
【0069】
なお、上述した実施態様は、制振装置及び制振方法の一例を示すものである。本発明に係る制振装置及び制振方法は、上述した実施態様に限られるものではなく、請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、上述した実施態様に係る制振装置及び制振方法を変形してもよい。
【0070】
例えば、第2の実施態様である制振装置100Bに第1実施態様における制振装置100Aの調整質量体を用いることができる。これにより、第2の実施態様における制振装置100Bのおいても、構造体の振動量や弾性体20B-1、20B-2の張力に併せて質量体30Bの総質量を細かく調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明に係る制振装置及び制振方法は、建築物や機械設備等の制振に好適に用いることができる。
また、本発明の制振装置及び制振方法は省スペース化を図れるため、設置スペースが限られる小型の構造物の制振に好適に用いられる。さらに、本発明の制振装置及び制振方法は、減衰装置に放射線損傷の影響を受ける油等の液体を用いないため、核融合炉などの高い放射線環境下かつ高真空となる環境下で稼働する装置(例えば、遠隔保守装置など)の制振に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
100A,100B,100C…制振装置、10…外郭部、11A-1,11A-2…第1外筒、11B-1,11B-2…第2外筒、12-1,12-2…内筒、20A,20B-1,20B-2,20C-1,20C-2,20C-3,20C-4…弾性体、30A,30B…質量体、31…主質量体、32-1,32-2…調整質量体、33A,33B…質量体ベース、34A,34B-1,34B-2,34C-1,34C-2,34C-3,34C-4…固定具、40A-1,40A-2,40B-1,40B-2,40C-1,40C-2,40C-3,40C-4…支持部、41A-1,41A-2,41B-1,41B-2…固定基台、42A-1,42A-2…連結具、43-1,43-2…保持具、44-1,44-2…固定シャフト、50-1,50-2…振動減衰機構、51-1,51-2…摺動部、52-1,52-2…減衰力調整部、53A-1,53A-2…第1摺動プレート、53B-1,53B-2…第2摺動プレート、54A-1,54A-2…第1摺動パット、54B-1,54B-2…第2摺動パット、55-1,55-2…調整具、56-1,56-2…座金、57-1,57-2…押え具、58-1,58-2…加圧部材、M…ブランケット遠隔保守装置、M1…ブランケット遠隔保守ロボット、M2…軌道