(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071311
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】電鋳バネの製造方法及び電鋳バネ
(51)【国際特許分類】
C25D 1/02 20060101AFI20240517BHJP
F16F 1/02 20060101ALI20240517BHJP
B81C 99/00 20100101ALI20240517BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240517BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20240517BHJP
【FI】
C25D1/02
F16F1/02 B
B81C99/00
B81B3/00
B23K26/364
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182191
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】福本 晃平
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 新悟
【テーマコード(参考)】
3C081
3J059
4E168
【Fターム(参考)】
3C081AA17
3C081BA21
3C081BA42
3C081CA14
3C081CA15
3C081CA17
3C081CA19
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3C081EA45
3J059AB04
3J059AD04
3J059BA01
3J059BB01
3J059BC01
3J059EA07
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3J059EA20
4E168AD01
4E168CB07
4E168DA24
4E168DA25
4E168DA26
4E168DA46
4E168DA47
4E168JA02
4E168JA03
4E168JA04
4E168JA06
(57)【要約】
【課題】 本発明は、電鋳バネの新規な製造方法及び電鋳バネを提供する。
【解決手段】 本発明の電鋳バネの製造方法は、導電性表面を有する芯材に電鋳層を形成する工程、前記電鋳層上に金属層を形成する工程、前記金属層に螺旋状にレーザー照射を行なうことによって前記金属層の一部を除去して、前記電鋳層を螺旋状に露出する工程、前記螺旋状に露出した電鋳層を除去して、バネ形状の電鋳層を芯材上に得る工程、及び前記バネ形状の電鋳層を含む芯材と前記芯材とを分離して電鋳バネを得る工程を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性表面を有する芯材に電鋳層を形成する工程、
前記電鋳層上に金属層を形成する工程、
前記金属層に螺旋状にレーザー照射を行なうことによって前記金属層の一部を除去して、前記電鋳層を螺旋状に露出する工程、
前記螺旋状に露出した電鋳層を除去して、バネ形状の電鋳層を芯材上に得る工程、及び
前記バネ形状の電鋳層と前記芯材とを分離して電鋳バネを得る工程
を含む、電鋳バネの製造方法。
【請求項2】
導電性表面を有する芯材に電鋳層を形成する工程の前に、芯材にめっき処理を行うことによって導電性表面を形成する工程を含む、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項3】
前記電鋳層の除去が、化学研磨によって行われる、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項4】
前記電鋳層の除去後に、前記バネ形状の電鋳層上の残りの金属層を除去する工程をさらに含む、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項5】
前記バネ形状の電鋳層と前記芯材とを分離した後に、所定の幅で切断する工程を含む、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項6】
前記電鋳層を螺旋状に露出する工程が、所定の幅で全周にわたって前記電鋳層を露出する工程を含む、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項7】
螺旋状に形成された電鋳層と、
前記電鋳層の外周に形成された金属層とを備える電鋳バネ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電鋳バネの製造方法及び電鋳バネに関する。
【背景技術】
【0002】
電鋳バネと呼ばれる、ミクロンサイズの微小なバネが知られている。このようなバネは、小型化した電子デバイスに接触させて通電検査を行う際に、電子デバイスに過度な力を与えることなく通電検査をするためのコンタクトプローブに用いることができる。
【0003】
特許文献1及び2は、そのような電鋳バネを備える通電検査治具用接触子の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4572303号公報
【特許文献2】特開第2010-281607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一例は、電鋳バネの新規な製造方法及び電鋳バネを提供することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
導電性表面を有する芯材に電鋳層を形成する工程、
前記電鋳層上に金属層を形成する工程、
前記金属層に螺旋状にレーザー照射を行なうことによって前記金属層の一部を除去して、前記電鋳層を螺旋状に露出する工程、
前記螺旋状に露出した電鋳層を除去して、バネ形状の電鋳層を芯材上に得る工程、及び
前記バネ形状の電鋳層と前記芯材とを分離して電鋳バネを得る工程
を含む、電鋳バネの製造方法である。
【0007】
本発明の一態様は、螺旋状に形成された電鋳層と、
前記電鋳層の外周に形成された金属層とを備える電鋳バネである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の電鋳バネの製造方法の1つの実施形態の前工程を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の電鋳バネの製造方法の1つの実施形態の後工程を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の電鋳バネの製造方法の他の1つの実施形態の後工程を示す図である。
【
図4】
図4は、所定の幅で全周にわたって露出した電鋳層3bを芯材の軸方向に所定の長さで周期的に複数存在させる実施形態の一部の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を以下の実施形態を例として具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。本明細書における各工程において用いられる装置、薬品、反応条件等の各手段について特に詳細な言及がない場合には、これらについては当業者であれば周知の手段を用いることができる。各実施形態は、当業者が通常の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、各実施形態について特記していない構成については、他の実施形態と同じ構成又はその実施形態に適した構成を有することができる。
【0010】
図1は、本発明の電鋳バネの製造方法の1つの実施形態の前工程を示す図である。
図2は、本発明の電鋳バネの製造方法の1つの実施形態の後工程を示す図である。
図3は、本発明の電鋳バネの製造方法の他の1つの実施形態の後工程を示す図である。各工程において、側面図と断面図を示す。なお、側面図で示されている寸法は見やすさのために実際の各要素の寸法及び寸法比とは異なって描かれており、また断面図においても、見やすさのために側面図の断面の寸法を正確に表現していない。
【0011】
図1(a)は、芯材1に導電性表面2を形成することで得られた、導電性表面2を有する芯材1を示している。芯材1に導電性表面2を形成する工程は、導電性表面2を有する芯材1に電鋳層3を形成する工程の前に行うことができる。芯材1が、十分な導電性を有する導電性材料である場合には、この工程を行う必要はないが、芯材1の表面が、電鋳層3を形成するための電鋳工程に必要な導電性を有していない場合には、この工程が必要になる。また、
図2及び
図3で後述する電鋳バネ10に導電性表面2を最終的に残す実施形態では、コンタクトプローブとして用いるための必要な導電性を電鋳バネ10に与えるためにこの工程を行ってもよい。
【0012】
芯材1は、最終の工程で引き抜かれた後に、芯材1の外径がそのまま電鋳バネ10の内径を構成することになるため、製造する電鋳バネ10の径の大きさに応じて、芯材1の径を選択することができる。
【0013】
芯材1は、通常は、線材であり、例えば10μm以上、20μm以上、30μm以上、50μm以上、又は100μm以上の径を有しており、1000μm以下、800μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、又は100μm以下の径を有していてもよい。例えば、芯材1は、10μm以上1000μm以下、又は20μm以上500μm以下の径を有していてもよい。
【0014】
芯材1を構成する材料は、本発明の各工程の処理を行うことができるのであれば特に限定されない。芯材1を構成する材料は、例えば、金属材料、セラミック材料等の無機材料、樹脂材料等の有機材料であってもよい。この中でも特に、金属材料を用いることが好ましく、特に酸化皮膜を有する金属材料、特にステンレスを用いることが好ましい。酸化皮膜を有する金属材料は、他の層との密着性が高くないため、芯材1を引き抜く際に容易に引き抜くことができる。
【0015】
芯材1の表面が、電鋳層3を形成するための電鋳工程に必要な導電性を有していない場合には、芯材1に電鋳層3を形成する工程の前に、芯材1に対して、例えば、めっき、蒸着、溶射等の様々な処理によって導電性表面2を形成する工程を含むことができる。この形成処理の中でも特に、めっき処理が好ましく、例えば酸化皮膜を有する金属材料に、金属めっき処理、例えば金めっき処理を行うことが好ましい。
【0016】
図1(b)は、導電性表面2を有する芯材1に電鋳層3を形成することによって得られた第1の中間物11を示している。第1の中間物11は、芯材1上に導電性表面2及び電鋳層3が積層されたものである。
【0017】
電鋳層3は、電鋳バネ10の本体を構成することになる層である。製造する電鋳バネ10の線径の大きさに応じて、電鋳処理の条件を変更して、電鋳層3の厚みを選択することができる。電鋳処理は、電鋳層3の材料及び厚み等に応じて、周知の条件によって行うことができる。
【0018】
電鋳層3の厚みは、例えば1μm以上、3μm以上、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってもよく、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよい。例えば、電鋳層3の厚みは、1μm以上300μm以下、又は3μm以上50μm以下であってもよい。
【0019】
電鋳層3の材料としては、電鋳バネ10に求められる物性を有する材料であれば特に限定されず、電気伝導性、熱的安定性、高弾性率、かつ高強度を有することが好ましい。そのような材料としては、ニッケル系材料を挙げることができ、例えばニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-鉄合金、ニッケル-マンガン合金、ニッケル-タングステン合金、ニッケル-ホウ素合金等の材料を挙げることができる。
【0020】
図1(c)は、第1の中間物11の電鋳層3上に金属層4を形成することによって得られた第2の中間物12を示している。第2の中間物12は、芯材1上に導電性表面2、電鋳層3及び金属層4が積層されたものである。
【0021】
本発明の製造方法においては、従来技術で用いられるレジストに代えて金属層4を用いる。金属層4を用いることによって、これが最終の電鋳バネ10に残渣等として残ったとしても、従来技術で用いられるレジストが残渣となった場合と比較して、バネの動作及び/又は電気抵抗に影響が出にくい。本発明の製造方法によって得られるようなミクロンサイズの電鋳バネ10においては、特にレジスト残渣の影響が大きくなる場合があるため、金属層4を用いることは有用である。
【0022】
金属層4を形成する方法は特に限定されないが、例えばめっき、蒸着、溶射等の様々な処理によって電鋳層3上に形成することができ、この中でも特に金属層4は、めっき処理によって形成することが好ましい。
【0023】
ここで、例えば「電鋳層上に」とは、本発明の製造方法を実行できる範囲において、電鋳層3の外側に金属層を形成できればよく、電鋳層3と金属層4との間に、他の層が形成されてもよい。「上に」という他の表現についても、これと同様に解釈される。
【0024】
金属層4としては、後のレーザー照射によって螺旋状に除去でき、また後に螺旋状に露出した電鋳層3を除去する工程において金属層4の下にある電鋳層3を保護できるものであれば、特に限定されない。例えば、そのような金属層4としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケル、スズ及びこれらを1種以上含む合金を挙げることができ、好ましくは銅を挙げることができる。
【0025】
図1(d)は、第2の中間物12の金属層4に螺旋状にレーザーLの照射を行なう工程を示している。この工程は、電鋳層3を螺旋状に露出する工程の一部であり、レーザーLによって金属層4を除去する。
【0026】
図1(d)に示すように、レーザーLを一定の場所に照射しながら、金属層4を含む芯材1を、回転させながら矢印方向に移動させることによって、金属層4を螺旋状に加工することができる。しかし、レーザーLの照射方法は、金属層4を螺旋状に加工することができるのであれば、これに限定されるものではない。なお、電鋳バネ10を端部までバネにする場合には、第1の中間物11の端部までレーザーLを照射する必要があり、
図2(h1)及び
図3(h2)に示すように、電鋳バネ10の端部を円筒状にする場合には、バネが開始する位置をレーザーLの照射の起点とする必要がある。
【0027】
用いられるレーザーLとしては、金属層4を除去できれば特に限定されないが、例えば短パルスレーザーを挙げることができる。短パルスレーザーは、ナノ秒(1×10-9秒)以下のパルス幅を有するものを意味し、短パルスレーザーのパルス幅は、例えば、フェムト秒(10-15秒)オーダーからピコ秒(10-12秒)オーダーとすることができる。レーザー光源としては、特に制限されないが、例えば、エキシマレーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:YVO4レーザー、半導体レーザー等を挙げることができる。
【0028】
図2(e1)は、第2の中間物12の金属層4に螺旋状にレーザーLの照射を行なうことによって金属層4の一部を除去して得られた第3の中間物13を示している。第3の中間物13は、芯材1上に導電性表面2、電鋳層3及び金属層4が積層されているものの、金属層4は、一部が螺旋状に除去されており、金属層4が除去されている箇所において螺旋状に露出した電鋳層3aが存在している。
【0029】
本発明の方法においては、レーザーLの照射を行う工程においては、所定の幅で全周にわたって金属層4を除去する工程をさらに含んでもよい。ここで、全周にわたって金属層4を除去するとは、螺旋状ではなく環状に金属層4を除去することをいう。
【0030】
図3(e2)は、第2の中間物12の金属層4に螺旋状にレーザーLの照射を行なうことによって金属層4の一部を除去するとともに、所定の幅で全周にわたって金属層4を除去することによって得られた第4の中間物14を示している。第4の中間物14は、全周にわたって露出した電鋳層3bが存在していること以外は、第3の中間物13と同様である。
【0031】
このように全周にわたって露出した電鋳層3bが存在すると、最終的に芯材1を引き抜くことによって、切断工程を行うことなく、所定の長さを有する電鋳バネ10を製造することが可能になる。したがって、製造したい電鋳バネ10の長さに応じて、全周にわたって金属層4を除去すれば、切断工程の必要なしに電鋳バネ10を製造することができるようになる。
【0032】
図4に示すように、所定の幅で全周にわたって露出した電鋳層3bは、芯材の軸方向に所定の長さで周期的に複数存在させることができる。それにより、所定の長さの電鋳バネ10を複数得ることができる。例えば、
図4においては、所定の幅で全周にわたって露出した電鋳層3bは、3箇所設けられており、その結果、最終的に4つの電鋳バネ10a~10dを製造することができる。
【0033】
図2(f1)は、螺旋状に露出した電鋳層3aを第3の中間物13から除去することによって得られた第5の中間物15を示している。第5の中間物15には、螺旋状に露出していた電鋳層3aが除去されており、電鋳層3はバネ形状となって芯材1上に残っている。第5の中間物15は、芯材1上に導電性表面2、バネ形状の電鋳層3及び電鋳層3上の残りの金属層4が積層されている。また、第5の中間物15は、電鋳層3aが除去されている箇所において螺旋状に露出した導電性表面2aが存在している。
【0034】
図3(f2)は、螺旋状に露出した電鋳層3a及び全周にわたって露出した電鋳層3bを第4の中間物14から除去することによって得られた第6の中間物16を示している。第6の中間物16は、電鋳層3bが除去されていることで、全周にわたって露出した導電性表面2bが存在していること以外は、第5の中間物15と同様である。
【0035】
螺旋状に露出した電鋳層3a及び全周にわたって露出した電鋳層3bを除去する際には、金属層4の除去量を少なくして電鋳層3a,3bを選択的に除去できることが好ましい。
【0036】
そのような除去方法としては、特に限定されないが、電解研磨、化学研磨等のウェットエッチング、及びハロゲンガス等のエッチングガスを用いたドライエッチングを挙げることができるが、特に化学研磨によって行われることが好ましい。従来技術においては、電鋳層を電解研磨によって除去していたが、化学研磨を行うことで寸法の精密性が高い電鋳バネ10を得られる。これは、電解研磨の場合には、直流電流を流す際に、接点の近傍、角張った形状の場所等で強い電流が流れるために、研磨される量が場所によって変化するのに対して、化学研磨の場合には、研磨液が接触する場所で比較的均一に研磨できるためと考えられる。これは、特に電鋳バネ10のようなミクロンサイズのものに対しては、特に影響が大きい。
【0037】
化学研磨をする場合の薬液及び反応条件は、用いる電鋳層3及び金属層4の種類によっても異なるが、周知の薬液及び反応条件を選択して用いることができる。例えば、電鋳層3として、ニッケル系材料を使用し、金属層4として、銅を用いる場合には、薬液として硫酸等の強酸を使用し、30℃~50℃の反応温度で化学研磨を行うことができる。
【0038】
図2(g1)は、バネ形状の電鋳層3上の残りの金属層4を第5の中間物から除去すること、及び芯材1上の螺旋状に露出していた導電性表面2aを第5の中間物から除去すること、によって得られた第7の中間物17を示している。第7の中間物17は、第5の中間物15において存在していた金属層4及び螺旋状に露出していた導電性表面2aが除去されており、残りの箇所において芯材1上に導電性表面2及び電鋳層3が積層されている。第7の中間物17は、導電性表面2aが除去されている箇所において螺旋状に露出した芯材1aが存在している。
【0039】
図3(g2)は、バネ形状の電鋳層3上の残りの金属層4を第6の中間物16から除去すること、並びに芯材1上の螺旋状に露出していた導電性表面2a及び全周にわたって露出していた導電性表面2bを第6の中間物16から除去すること、によって得られた第8の中間物18を示している。第8の中間物18は、全周にわたって露出していた導電性表面2bが除去されていることで露出した芯材1bが存在していること以外は、第7の中間物17と同様である。
【0040】
なお、バネ形状の電鋳層3上の残りの金属層4を除去する工程及び芯材1上の導電性表面2を除去する工程は、得られる電鋳バネ10の物性に問題がない限りは行わなくてもよい。この場合には、残りの金属層4及び芯材1の導電性表面2を除去せずにそのまま残して、第5の中間物15から芯材1を分離して、電鋳層3と外周に形成された金属層4とを備える螺旋状の積層構造を電鋳バネ10としてもよい。また、残りの金属層4を除去する工程を行う場合でも、残っている金属層4の全てを除去する必要はなく、残りの金属層4の少なくとも一部を除去すればよい。
【0041】
残りの金属層4を除去する工程においては、電鋳層3も除去される場合があるが、この工程では、電鋳層3を実質的に除去することなく、金属層4を選択的に除去できることが好ましい。その除去においては、特にその手段は限定されないが、例えば、電鋳層3として、ニッケル系材料を使用し、金属層4として、銅を用いる場合には、アンモニア水等の塩基性溶液を用いて化学研磨によって除去することができる。
【0042】
導電性表面2a,2bを除去する工程は、残りの金属層4を除去する工程の前後又は同時に行うことができるが、この工程は行わなくてもよい。この工程は、他の部分に実質的に影響を与えることなく導電性表面2a,2bを除去できるのであれば、特にその手段は限定されないが、例えば導電性表面2a,2bが金めっき層であれば、加温した純水中で超音波洗浄を行うことによって、導電性表面2a,2bを除去することができる。
【0043】
図2(h1)は、第7の中間物17から芯材1を分離することによって得られた電鋳バネ10を示しており、
図3(h2)は、第8の中間物18から芯材1を引き抜くことによって得られた電鋳バネ10a,10bを示している。
【0044】
図2(h1)及び
図3(h2)においては、内径側に導電性表面2を残す実施形態を示しているが、得られた電鋳バネ10の物性等に問題がない限り、電鋳バネ10の内径側の導電性表面2を除去してもよい。導電性表面2を最終の電鋳バネ10に残す場合、電鋳バネ10に高い導電性を与える事ができるため、コンタクトプローブとして好適に用いることができる。
【0045】
芯材1を分離する方法は、電鋳バネ10を破壊しないようにすれば特に限定されないが、例えば、導電性表面2を電鋳層3の内側に残したまま芯材1を除去するには、芯材1を一方又は両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させることで、芯材1の外周と、導電性表面2の内周との間に隙間が形成され、芯材1を容易に引き抜くことができる。また、導電性表面2a,2bを除去していた場合には、芯材1とバネ形状の電鋳層3との間に隙間ができるため、芯材1を比較的容易に分離することが可能となる。さらに、溶解液中に芯材1を浸漬し、化学的又は電気化学的に芯材を溶解させて除去することもできる。これらは、芯材1等の材料に応じて選択することができる。
【0046】
本発明では、電鋳バネ10を切断して所望の長さとする工程を含んでもよく、この場合、この工程を、芯材1を引き抜く工程の前に行ってもよく、芯材1を引き抜く工程の後に行ってもよい。また、上述のとおり、電鋳バネ10a,10bを所望の長さとするために、レーザー照射の工程において、所定の幅で全周にわたって金属層4を除去してもよい。
【0047】
これによって得られる電鋳バネ10は、例えば、0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、0.5mm以上、又は1.0mm以上の長さを有していてもよく、10mm以下、8.0mm以下、5.0mm以下、3.0mm以下、2.0mm以下、又は1.0mm以下の長さを有していてもよい。例えば、電鋳バネ10は、0.1mm以上10mm以下、又は0.2mm以上5.0mm以下の長さを有していてもよい。
【0048】
本明細書によれば、以下の態様の電鋳バネの製造方法及び電鋳バネが提供される。
(態様1)
態様1は、導電性表面2を有する芯材1に電鋳層3を形成する工程、電鋳層3上に金属層4を形成する工程、金属層4に螺旋状にレーザー照射を行なうことによって金属層4の一部を除去して、電鋳層3を螺旋状に露出する工程、螺旋状に露出した電鋳層3を除去して、バネ形状の電鋳層を芯材上に得る工程、及び前記バネ形状の電鋳層と芯材1とを分離して電鋳バネを得る工程を含む、電鋳バネ10の製造方法である。
【0049】
上記の態様によれば、従来技術で用いられるレジストに代えて金属層4を用いる。金属層4を用いることによって、これが最終の電鋳バネ10に残渣等として残ったとしても、従来技術で用いられるレジストが残渣となった場合と比較して、バネの動作及び/又は電気抵抗に影響が出にくい。
【0050】
(態様2)
態様2は、導電性表面2を有する芯材1に電鋳層3を形成する工程の前に、芯材にめっき処理を行うことによって導電性表面2を形成する工程を含む。
【0051】
上記の態様によれば、電鋳層3を形成するために必要な導電性及び/又はコンタクトプローブとして用いるために必要な導電性を芯材に確実に与えることができる。
【0052】
(態様3)
態様3は、電鋳層3の除去が、化学研磨によって行われる。
【0053】
上記の態様によれば、電解研磨によって電鋳層3を除去する場合と比較して、寸法の精密性が高い電鋳バネ10を得ることができる。
【0054】
(態様4)
態様4は、電鋳層3の除去の後に、前記バネ形状の電鋳層3上の残りの金属層4を除去する工程をさらに含む。
【0055】
上記の態様によれば、最終的に得られる電鋳バネが実質的に電鋳層のみから構成されるため、バネの動作等に影響が出にくい。
【0056】
(態様5)
態様5は、前記バネ形状の電鋳層3と芯材1とを分離した後に、所定の長さに切断する工程を含む。
【0057】
上記の態様によれば、下記の態様6と比較して、電鋳層3を露出する工程が簡略化することができる。
【0058】
(態様6)
態様6は、電鋳層3を螺旋状に露出する工程が、所定の幅で全周にわたって電鋳層3を露出する工程を含む。
【0059】
上記の態様によれば、バネ形状の電鋳層3と芯材1とを分離すれば所定の長さの電鋳バネ10が得られるため、切断工程を行う必要がない。
【0060】
(態様7)
態様7は、螺旋状に形成された電鋳層3と、電鋳層3の外周に形成された金属層4とを備える電鋳バネ10である。
【0061】
上記の態様によれば、従来技術で用いられるレジストに代えて金属層4を用いて製造されているため、従来技術で用いられるレジストが残渣となった場合と比較して、バネの動作及び/又は電気抵抗に影響が出にくい。また、従来技術で用いられるレジストを、金属、特に銅に変更してそのまま残すと、電気抵抗を下げることができ、その結果、電鋳バネをプローブとして使用したときの許容電流を増やすことができる。
【符号の説明】
【0062】
10,10a~10d…電鋳バネ
1…芯材
1a…螺旋状に露出している芯材
1b…全周にわたって露出している芯材
2…導電性表面
2a…螺旋状に露出している導電性表面
2b…全周にわたって露出している導電性表面
3…電鋳層
3a…螺旋状に露出している電鋳層
3b…全周にわたって露出している電鋳層
4…金属層
11~18:第1~第8の中間物
L…レーザー