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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071312
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】電鋳バネの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/00 20060101AFI20240517BHJP
   G01R 1/067 20060101ALI20240517BHJP
   B81C 99/00 20100101ALI20240517BHJP
   B24B 19/00 20060101ALI20240517BHJP
   B23K 26/361 20140101ALI20240517BHJP
   C25D 1/02 20060101ALI20240517BHJP
   C25D 1/20 20060101ALI20240517BHJP
   F16F 1/02 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C25D1/00 381
G01R1/067 C
B81C99/00
B24B19/00 Z
B23K26/361
C25D1/02
C25D1/00 B
C25D1/20
F16F1/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182192
(22)【出願日】2022-11-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006758
【氏名又は名称】株式会社ヨコオ
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 新悟
(72)【発明者】
【氏名】福本 晃平
【テーマコード(参考)】
2G011
3C049
3C081
3J059
4E168
【Fターム(参考)】
2G011AA01
2G011AB01
3C049CA01
3C049CB03
3C081AA17
3C081BA29
3C081CA17
3C081CA30
3C081DA27
3C081EA21
3J059AD04
3J059BA01
3J059BC01
3J059EA20
3J059GA21
3J059GA30
4E168AD03
4E168CB07
4E168DA24
4E168DA25
4E168DA26
4E168DA45
4E168DA46
4E168JA02
(57)【要約】
【課題】 本発明は、電鋳バネの新規な製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の電鋳バネの製造方法は、導電性表面を有する芯材の前記導電性表面上に無機材料層を形成する工程、前記無機材料層の一部を螺旋状に除去して、前記導電性表面を螺旋状に露出する工程、螺旋状に露出した前記導電性表面上に電鋳層を形成する工程、残りの前記無機材料層を除去して、バネ形状の電鋳層を芯材上に得る工程、及び前記バネ形状の電鋳層と前記芯材とを分離して電鋳バネを得る工程を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性表面を有する芯材の前記導電性表面上に無機材料層を形成する工程、
前記無機材料層の一部を螺旋状に除去して、前記導電性表面を螺旋状に露出する工程、
螺旋状に露出した前記導電性表面上に電鋳層を形成する工程、
残りの前記無機材料層を除去して、バネ形状の電鋳層を芯材上に得る工程、及び
前記バネ形状の電鋳層と前記芯材とを分離して電鋳バネを得る工程
を含む、電鋳バネの製造方法。
【請求項2】
導電性表面を有する芯材に無機材料層を形成する工程の前に、芯材にめっき処理を行うことによって導電性表面を形成する工程を含む、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項3】
前記無機材料層の螺旋状の除去が、レーザー照射によって行われる、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項4】
前記電鋳層を形成した後に、前記電鋳層及び/又は前記無機材料層の表面を研削する工程をさらに含む、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項5】
前記バネ形状の電鋳層と前記芯材とを分離した後に、所定の長さに切断する工程を含む、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【請求項6】
前記導電性表面を螺旋状に露出する工程が、所定の幅で全周にわたって前記無機材料層を残す工程を含む、請求項1に記載の電鋳バネの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電鋳バネの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電鋳バネと呼ばれる、ミクロンサイズの微小なバネが知られている。このようなバネは、小型化した電子デバイスに接触させて通電検査を行う際に、電子デバイスに過度な力を与えることなく通電検査をするためのコンタクトプローブに用いることができる。
【0003】
特許文献1及び2は、そのような電鋳バネを備える通電検査治具用接触子の製造方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4572303号公報
【特許文献2】特開第2010-281607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の一例は、電鋳バネの新規な製造方法を提供することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
導電性表面を有する芯材の前記導電性表面上に無機材料層を形成する工程、
前記無機材料層の一部を螺旋状に除去して、前記導電性表面を螺旋状に露出する工程、
螺旋状に露出した前記導電性表面上に電鋳層を形成する工程、
残りの前記無機材料層を除去して、バネ形状の電鋳層を芯材上に得る工程、及び
前記バネ形状の電鋳層と前記芯材とを分離して電鋳バネを得る工程
を含む、電鋳バネの製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の電鋳バネの製造方法の1つの実施形態の前工程を示す図である。
図2図2は、本発明の電鋳バネの製造方法の1つの実施形態の後工程を示す図である。
図3図3は、本発明の電鋳バネの製造方法の他の1つの実施形態の後工程を示す図である。
図4図4は、所定の幅で全周にわたって残された無機材料層3bを芯材の軸方向に所定の長さで周期的に複数存在させる実施形態の一部の工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を以下の実施形態を例として具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。本明細書における各工程において用いられる装置、薬品、反応条件等の各手段について特に詳細な言及がない場合には、これらについては当業者であれば周知の手段を用いることができる。各実施形態は、当業者が通常の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、各実施形態について特記していない構成については、他の実施形態と同じ構成又はその実施形態に適した構成を有することができる。
【0009】
図1は、本発明の電鋳バネ10の製造方法の1つの実施形態の前工程を示す図である。図2は、本発明の電鋳バネ10の製造方法の1つの実施形態の後工程を示す図である。図3は、本発明の電鋳バネ10a,10bの製造方法の他の1つの実施形態の後工程を示す図である。各工程において、側面図と断面図を示す。なお、側面図で示されている寸法は見やすさのために実際の各要素の寸法及び寸法比とは異なって描かれており、また断面図においても、見やすさのために側面図の断面の寸法を正確に表現していない。
【0010】
図1(a)は、芯材1に導電性表面2を形成することで得られた、導電性表面2を有する芯材1を示している。芯材1に導電性表面2を形成する工程は、導電性表面2を有する芯材1に無機材料層3を形成する工程の前に行うことができる。芯材1が、十分な導電性を有する導電性材料である場合には、この工程を行う必要はない。しかし、無機材料層3が例えば銅等の金属めっき層であり、芯材1の表面がその金属めっき層3を形成するための工程に必要な導電性を有していない場合、及び/又は電鋳層4を形成するための電鋳工程に必要な導電性を有していない場合には、この工程が必要になる。また、図2及び図3で後述する電鋳バネ10に導電性表面2を最終的に残す実施形態では、コンタクトプローブとして用いるための必要な導電性を電鋳バネ10に与えるためにこの工程を行ってもよい。
【0011】
芯材1は、最終の工程で引き抜かれた後に、芯材1の外径がそのまま電鋳バネ10の内径を構成することになるため、製造する電鋳バネ10の径の大きさに応じて、芯材1の径を選択することができる。
【0012】
芯材1は、通常は、線材であり、例えば10μm以上、20μm以上、30μm以上、50μm以上、又は100μm以上の径を有しており、1000μm以下、800μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、又は100μm以下の径を有していてもよい。例えば、芯材1は、10μm以上1000μm以下、又は20μm以上500μm以下の径を有していてもよい。
【0013】
芯材1を構成する材料は、本発明の各工程の処理を行うことができるのであれば特に限定されず、例えば、金属材料、セラミック材料等の無機材料、樹脂材料等の有機材料であってもよい。この中でも特に、金属材料を用いることが好ましく、特に酸化皮膜を有する金属材料、特にステンレスを用いることが好ましい。酸化皮膜を有する金属材料は、他の層との密着性が高くないため、芯材1を引き抜く際に容易に引き抜くことができる。
【0014】
芯材1の表面には、後に電鋳層4が形成されるため、芯材1の表面が電鋳層4を形成するための電鋳工程に必要な導電性を有していない場合には、芯材1に無機材料層3を形成する工程の前に、芯材1に対して、例えば、めっき、蒸着、溶射等の様々な処理によって導電性表面2を形成することができる。この中でも特に、めっき処理が好ましく、例えば酸化皮膜を有する金属材料に、金属めっき処理、例えば金めっき処理を行うことが好ましい。金めっき処理を行った場合には特に、無機材料層3をレーザーで螺旋状に除去する場合に、金めっきである導電性表面2がレーザーのシールド層として機能させることができ非常に有利である。
【0015】
図1(b)は、導電性表面2を有する芯材1に無機材料層3を形成することによって得られた第1の中間物11を示している。第1の中間物11は、芯材1上に導電性表面2及び無機材料層3が積層されたものである。
【0016】
無機材料層3を形成する方法は特に限定されないが、例えばめっき、蒸着、溶射等の様々な処理によって導電性表面2上に形成することができ、この中でも特に無機材料層3は、めっき処理によって形成された金属層であることが好ましい。
【0017】
ここで、「導電性表面上に」とは、本発明の製造方法を実行できる範囲において、導電性表面2の外側に無機材料層3を形成できればよく、導電性表面2と無機材料層3との間に、他の層が形成されてもよい。
【0018】
無機材料層3としては、後の工程において螺旋状に除去できるものであれば、特に限定されない。例えば、そのような無機材料層3としては、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケル、スズ及びこれらを1種以上含む合金等の金属層;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等のセラミック層を挙げることができ、好ましくは無機材料層3が最終の電鋳バネ10に残留したとしても電鋳バネ10の導電性に悪影響を与えない金属層、特に銅を挙げることができる。
【0019】
無機材料層3を形成した後、無機材料層3の一部を螺旋状に除去する。この工程は、導電性表面2を螺旋状に露出する工程の一部であり、無機材料層3が螺旋状に除去された溝において後に電鋳層4が形成される。
【0020】
無機材料層3を螺旋状に除去する工程は、特にその手段は限定されず、例えばレーザー加工、旋盤加工、フライス加工、ダイシング等の様々な手段によって行うことができる。
【0021】
図1(c)は、金属層である無機材料層3を螺旋状に除去する工程の一例として、第1の中間物11の無機材料層3に螺旋状にレーザーLの照射を行なって無機材料層3の一部を除去する工程を示している。
【0022】
図1(c)に示すように、レーザーLを一定の場所に照射しながら、第1の中間物11を、回転させながら矢印方向に移動させることによって、無機材料層3を螺旋状に加工することができる。しかし、レーザーLの照射方法は、無機材料層3を螺旋状に加工することができるのであれば、これに限定されるものではない。なお、電鋳バネ10を端部までバネにする場合には、第1の中間物11の端部まで無機材料層3を残す必要があり、図2(h1)及び図3(h2)に示すように、電鋳バネ10の端部を円筒状にする場合には、第1の中間物11の端部までレーザーLを照射する必要がある。
【0023】
用いられるレーザーLとしては、無機材料層3を除去できれば特に限定されないが、例えば短パルスレーザーを挙げることができる。短パルスレーザーは、ナノ秒(1×10-9秒)以下のパルス幅を有するものを意味し、短パルスレーザーのパルス幅は、例えば、フェムト秒(10-15秒)オーダーからピコ秒(10-12秒)オーダーとすることができる。レーザー光源としては、特に制限されないが、例えば、エキシマレーザー、Nd:YAGレーザー、Nd:YVOレーザー、半導体レーザー等を挙げることができる。
【0024】
図2(d1)は、第1の中間物11の無機材料層3の一部を螺旋状に除去して、導電性表面2を螺旋状に露出して得られた第2の中間物12を示している。第2の中間物12は、芯材1上に導電性表面2、及び残りの無機材料層3が積層されている。第2の中間物12の表面には、無機材料層3が除去されずに螺旋状に残っている無機材料層3aと、無機材料層3が除去された箇所において螺旋状に露出した導電性表面2aとが存在している。
【0025】
本発明の方法においては、無機材料層3の一部を除去する工程においては、所定の幅で全周にわたって無機材料層3を残す工程をさらに含んでもよい。ここで、全周にわたって無機材料層3を残すとは、無機材料層3を除去せずに、螺旋状ではなく環状に導電性表面2上に無機材料層3を残すことをいう。
【0026】
図3(d2)は、第1の中間物11から無機材料層3が除去されずに螺旋状に残っている無機材料層3aと、所定の幅で全周にわたって残っている無機材料層3bを有する第3の中間物13を示している。ここで、螺旋状に残っている無機材料層3aと全周にわたって残っている無機材料層3bとは連続しておらず、互いに分離している。また、無機材料層3bを境にして、電鋳層4は左右で互いに分離されている。第3の中間物13は、所定の幅で全周にわたって残った無機材料層3bがあること以外は、第2の中間物12と同様である。
【0027】
このように一周にわたって残った無機材料層3bが存在すると、最終的に芯材1を引き抜く工程によって、切断工程を行うことなく、所定の長さを有する電鋳バネ10を製造することが可能になる。したがって、製造したい電鋳バネ10の長さに応じて、全周にわたる無機材料層3bを残せば、切断工程の必要なしに電鋳バネ10を製造することができるようになる。
【0028】
図4に示すように、所定の幅で全周にわたって残された無機材料層3bは、芯材の軸方向に所定の長さで周期的に複数存在させることができる。それにより、所定の長さの電鋳バネ10を複数得ることができる。例えば、図4においては、所定の幅で全周にわたって残された無機材料層3bは、3箇所設けられており、その結果、最終的に4つの電鋳バネ10a~10dを製造することができる。
【0029】
図2(e1)は、第2の中間物12の螺旋状に露出した導電性表面2a上に電鋳層4を形成することによって得られる第4の中間物14を示している。第4の中間物14においては、螺旋状に露出した導電性表面2a上に電鋳層4bが形成されており、また除去されずに螺旋状に残っている無機材料層3a上にも電鋳層4aが形成されている。
【0030】
図3(e2)は、第3の中間物13の螺旋状に露出した導電性表面2a上に電鋳層4を形成することによって得られる第5の中間物15を示している。第5の中間物15は、全周にわたって残った無機材料層3b上に電鋳層4cが形成されていること以外は、第4の中間物14と同様である。
【0031】
これらの図では、導電性表面2a、螺旋状に残っている無機材料層3a、全周にわたって残っている無機材料層3b上に、それぞれ電鋳層4b,4a,4cが一様に形成されているが、導電性表面2aと無機材料層3との電気伝導率の差等によって、電鋳層4の厚みをそれぞれの場所で変えることができ、無機材料層3の上に電鋳層4を実質的に形成させないようにすることもできる。
【0032】
導電性表面2a上に形成される電鋳層4bは、電鋳バネ10の本体を構成することになる層である。製造する電鋳バネ10の線径の大きさに応じて、電鋳処理の条件を変更して、電鋳層4bの厚みを選択することができる。電鋳処理は、電鋳層4bの材料及び厚み等に応じて、周知の条件によって行うことができる。
【0033】
電鋳層4bの厚みは、例えば1μm以上、3μm以上、5μm以上、10μm以上、又は20μm以上であってもよく、300μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよい。例えば、電鋳層4bの厚みは、1μm以上300μm以下、又は3μm以上50μm以下であってもよい。
【0034】
電鋳層4の材料としては、電鋳バネ10に求められる物性を有する材料であれば特に限定されず、電気伝導性、熱的安定性、高弾性率、かつ高強度を有することが好ましい。そのような材料としては、ニッケル系材料を挙げることができ、例えばニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-鉄合金、ニッケル-マンガン合金、ニッケル-タングステン合金、ニッケル-ホウ素合金等の材料を挙げることができる。
【0035】
図2(f1)は、第4の中間物14の表面を研削することによって得られる第6の中間物16を示している。第6の中間物16においては、導電性表面2a上に形成されている電鋳層4bについては実質的に研削されていない。一方、第6の中間物16においては、第4の中間物14に存在していた螺旋状の残りの無機材料層3a上の電鋳層4aが研削によって除去されており、螺旋状の無機材料層3aが露出している。
【0036】
図3(f2)は、第5の中間物15の表面を研削することによって得られる第7の中間物17を示している。第7の中間物17においては、全周にわたって残った無機材料層3b上の電鋳層4cが研削によって除去されていること以外は、第6の中間物16と同様である。
【0037】
表面の研削は、螺旋状の残りの無機材料層3a及び/又は全周にわたる残りの無機材料層3bを露出するために行われ、これらが露出している場合には行う必要がない。一方、表面の研削によって、電鋳層4bの厚みも高度に均一化することができるため、残りの無機材料層3a,3bが露出していたとしても研削工程を行うことができる。電鋳層4bの厚みも高度に均一化できることは、特に電鋳バネ10のようなミクロンサイズのものに対しては、特に有利である。
【0038】
ここで、「研削」とは、電鋳層4を除去して、螺旋状の残りの無機材料層3a及び/又は全周にわたる残りの無機材料層3bを露出することができれば、特にその方法は限定されず、切削、研磨等の除去方法も含む。
【0039】
図2(g1)は、螺旋状に露出した残りの無機材料層3aを第6の中間物16から除去すること、及びその残りの無機材料層3aの下に位置していた導電性表面2を第6の中間物16から除去すること、によって得られた第8の中間物18を示している。第8の中間物18は、螺旋状に露出していた残りの無機材料層3a及びその下の導電性表面2が除去されており、残りの箇所において芯材1上に導電性表面2及びバネ形状の電鋳層4が積層されている。第8の中間物18は、無機材料層3a及びその下の導電性表面2が除去されている箇所において、芯材1aが螺旋状に露出している。
【0040】
図3(g2)は、螺旋状に露出した残りの無機材料層3a及び全周にわたる残りの無機材料層3bを第5の中間物15から除去すること、及びそれらの無機材料層3a,3bの下に位置していた導電性表面2を第5の中間物から除去すること、によって得られた第9の中間物19を示している。第9の中間物19は、所定の幅で全周にわたって無機材料層3b及びその下の導電性表面2が除去されていることで、芯材1bが全周にわたって露出していること以外は、第8の中間物18と同様である。
【0041】
螺旋状に露出した残りの無機材料層3aを除去する工程、及び/又は所定の幅で全周にわたる残りの無機材料層3bを除去する工程においては、電鋳層4も除去される場合があるが、これらの工程では、電鋳層4の除去量を少なくして残りの無機材料層3a,3bを選択的に除去できることが好ましい。
【0042】
残りの無機材料層3a,3bを除去する工程は、電鋳層4を実質的に除去することなく、無機材料層3a,3bを選択的に除去できれば特にその手段は限定されないが、例えば、電鋳層4として、ニッケル系材料を使用し、無機材料層3a,3bとして、銅を用いる場合には、アンモニア水等の塩基性溶液を用いて化学研磨によって除去することができる。
【0043】
導電性表面2a,2bを除去する工程は、残りの無機材料層3a,3bを除去する工程の後又は同時に行うことができるが、この工程は行わなくてもよい。この工程は、他の部分に実質的に影響を与えることなく導電性表面2a,2bを除去できるのであれば、特にその手段は限定されないが、例えば導電性表面2a,2bが金めっき層であれば、加温した純水中で超音波洗浄を行うことによって、導電性表面2a,2bを除去することができる。
【0044】
図2(h1)は、第8の中間物18から芯材1を分離することによって得られた電鋳バネ10を示しており、図3(h2)は、第9の中間物19から芯材1を分離することによって得られた電鋳バネ10a,10bを示している。
【0045】
図2(h1)及び図3(h2)においては、内径側に導電性表面2を残す実施形態を示しているが、得られた電鋳バネ10の物性等に問題がない限り、電鋳バネ10の内径側の導電性表面2を除去してもよい。導電性表面2を最終の電鋳バネ10に残す場合、電鋳バネ10に高い導電性を与える事ができるため、コンタクトプローブとして好適に用いることができる。
【0046】
芯材1を分離する方法は、電鋳バネ10を破壊しないようにすれば特に限定されないが、例えば、導電性表面2を電鋳層4の内側に残したまま芯材1を除去するには、芯材1を一方又は両方から引っ張って断面積が小さくなるように変形させることで、芯材1の外周と、導電性表面2の内周との間に隙間が形成され、芯材1を容易に引き抜くことができる。また、導電性表面2a,2bを除去していた場合には、芯材1と電鋳バネ10との間に隙間ができるため、芯材1を比較的容易に引き抜くことが可能となる。さらに、溶解液中に芯材1を浸漬し、化学的又は電気化学的に芯材を溶解させて除去することもできる。これらは、芯材1等の材料に応じて選択することができる。
【0047】
本発明では、電鋳バネ10を切断して所望の長さとする工程を含んでもよく、この場合、この工程を、芯材1を引き抜く工程の前に行ってもよく、芯材1を引き抜く工程の後に行ってもよい。また、上述のとおり、電鋳バネ10を所望の長さとするために、レーザー照射の工程において、所定の幅で全周にわたって無機材料層3を残してもよい。
【0048】
これによって得られる電鋳バネ10は、例えば、0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、0.5mm以上、又は1.0mm以上の長さを有していてもよく、10mm以下、8.0mm以下、5.0mm以下、3.0mm以下、2.0mm以下、又は1.0mm以下の長さを有していてもよい。例えば、電鋳バネ10は、0.1mm以上10mm以下、又は0.2mm以上5.0mm以下の長さを有していてもよい。
【0049】
本明細書によれば、以下の態様の電鋳バネの製造方法が提供される。
(態様1)
態様1は、導電性表面2を有する芯材1の前記導電性表面2上に無機材料層3を形成する工程、前記無機材料層3の一部を螺旋状に除去して、前記導電性表面2を螺旋状に露出する工程、螺旋状に露出した前記導電性表面2a上に電鋳層4bを形成する工程、残りの前記無機材料層3を除去して、バネ形状の電鋳層を芯材上に得る工程、及び前記バネ形状の電鋳層と前記芯材1とを分離して電鋳バネを得る工程を含む、電鋳バネ10の製造方法である。
【0050】
上記の態様によれば、従来技術で用いられるレジストを用いていないため、最終の電鋳バネ10にレジスト残渣が残ることはなく、製造して得られる電鋳バネの動作及び/又は電気抵抗にレジストの影響が出ない。
【0051】
(態様2)
態様2は、導電性表面2を有する芯材1に電鋳層3を形成する工程の前に、芯材にめっき処理を行うことによって導電性表面2を形成する工程を含む。
【0052】
上記の態様によれば、電鋳層4bを形成するための電鋳工程を行うための電気伝導性を芯材に与えることが容易になる。
【0053】
(態様3)
態様3は、無機材料層3の螺旋状の除去が、レーザー照射Lによって行われる。
【0054】
上記の態様によれば、無機材料層3を螺旋状に除去する工程を比較的容易に行うことができる。
【0055】
(態様4)
態様4は、電鋳層4を形成した後に、前記電鋳層4及び/又は前記無機材料層3の表面を研削する工程をさらに含む。
【0056】
上記の態様によれば、表面の研削によって、無機材料層3a,3bを確実に表出させることができるため無機材料層3a,3bを除去する工程が容易となり、また電鋳層4bの厚みを高度に均一化することができる。
【0057】
(態様5)
態様5は、前記バネ形状の電鋳層と芯材1とを分離した後に、所定の長さに切断する工程を含む。
【0058】
上記の態様によれば、下記の態様6と比較して、電鋳層4を露出する工程が簡略化することができる。
【0059】
(態様6)
態様6は、電鋳層4を螺旋状に露出する工程が、所定の幅で全周にわたって電鋳層4を露出する工程を含む。
【0060】
上記の態様によれば、切断工程を行う必要がない。
【符号の説明】
【0061】
10,10a~10d…電鋳バネ
1…芯材
1a…螺旋状に露出している芯材
1b…全周にわたって露出している芯材
2…導電性表面
2a…螺旋状に露出している導電性表面
3…無機材料層
3a…螺旋状の残りの無機材料層
3b…全周にわたる残りの無機材料層
4…電鋳層
4a…無機材料層3b上に形成された電鋳層
4b…導電性表面2a上に形成された電鋳層
4c…無機材料層3b上に形成された電鋳層
11~19:第1~第9の中間物
L…レーザー
図1
図2
図3
図4