(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071315
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】まくらぎ間隔割付装置
(51)【国際特許分類】
E01B 29/06 20060101AFI20240517BHJP
B05C 1/06 20060101ALI20240517BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
E01B29/06
B05C1/06
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201641
(22)【出願日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2022182144
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】390007607
【氏名又は名称】大鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】318010498
【氏名又は名称】株式会社高萩自工
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 士
(72)【発明者】
【氏名】緑川 和彦
【テーマコード(参考)】
2D057
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
2D057BA11
4F040AA26
4F040AB04
4F040BA04
4F040CA09
4F040DA02
4F040DA14
4F042AA22
4F042BA08
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】まくらぎを配置すべき位置を示す印を、より効率的にレールに付けることができるまくらぎ間隔割付装置を提供する。
【解決手段】まくらぎ間隔割付装置1は、道床に敷設されたレールR上を走行しながら、まくらぎMを配置すべき位置を示す印をレールRに付ける装置である。同装置は、レールRに沿って移動する走行ローラーと、走行ローラーの移動距離を測定する距離測定装置と、レールRに印を付けるマーキング装置と、距離測定装置によって測定された距離が設定値に達したときにマーキング装置にレールRへの印付けを実行させる制御装置とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道床に敷設されたレール上を走行しながら、まくらぎを配置すべき位置を示す印を前記レールに付けるまくらぎ間隔割付装置であって、
前記レールに沿って移動する走行ローラーと、
前記走行ローラーの移動距離を測定する距離測定装置と、
前記レールに印を付けるマーキング装置と、
前記距離測定装置によって測定された距離が設定値に達したときに前記マーキング装置に前記レールへの印付けを実行させる制御装置と、を備える、まくらぎ間隔割付装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記距離測定装置が前記走行ローラーの移動距離の測定を終了すると、測定された移動距離の範囲内で前記レールに印を付けるべき位置を計算し、計算により得られた値を前記設定値として記憶する、請求項1に記載のまくらぎ間隔割付装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記距離測定装置が前記走行ローラーの移動距離を測定しているときに、固定点を設定する固定点設定指令をユーザーが入力すると、前記固定点設定指令が入力されたときの距離を前記設定値として記憶し、前記レールへの印付けを開始させるマーキング開始指令をユーザーが入力すると、前記マーキング開始指令が入力された後に前記距離測定装置によって測定された距離が、前記固定点設定指令が入力されたときの距離に達したときに前記マーキング装置に前記レールへの印付けを実行させる、請求項1または2に記載のまくらぎ間隔割付装置。
【請求項4】
前記レールの頭部の内側に配置されるガイドローラーと、
前記レールの幅方向に対して傾いた水平な中心線まわりに回転しながら前記レール上を移動することにより、前記ガイドローラーと前記レールの前記頭部の内側の側面との間隔を減少させる誘導ローラーと、をさらに備える、請求項1または2に記載のまくらぎ間隔割付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、まくらぎを配置すべき位置でレールに印を付けるまくらぎ間隔割付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、レール側面に塗料によるマークを施すレール用マーク塗布機が開示されている。この塗布機では、操作片を操作すると、スプレー罐から供給された塗料が含浸した塗布材がレールの側面に接触し、レールの側面にマークが施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のレール用マーク塗布機では、レールに印を付けるべき位置を同塗布機のユーザーが認識し、その位置でユーザーが操作片を操作して、塗料をレールの側面に塗る必要があり、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、まくらぎを配置すべき位置を示す印を、より効率的にレールに付けることができるまくらぎ間隔割付装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、道床に敷設されたレール上を走行しながら、まくらぎを配置すべき位置を示す印を前記レールに付けるまくらぎ間隔割付装置であって、前記レールに沿って移動する走行ローラーと、前記走行ローラーの移動距離を測定する距離測定装置と、前記レールに印を付けるマーキング装置と、前記距離測定装置によって測定された距離が設定値に達したときに前記マーキング装置に前記レールへの印付けを実行させる制御装置と、を備える、まくらぎ間隔割付装置を提供する。
【0007】
前記実施形態において、以下の特徴の少なくとも1つを、前記まくらぎ間隔割付装置に加えてもよい。
【0008】
前記制御装置は、前記距離測定装置が前記走行ローラーの移動距離の測定を終了すると、測定された移動距離の範囲内で前記レールに印を付けるべき位置を計算し、計算により得られた値を前記設定値として記憶する。
【0009】
前記制御装置は、前記距離測定装置が前記走行ローラーの移動距離を測定しているときに、固定点を設定する固定点設定指令をユーザーが入力すると、前記固定点設定指令が入力されたときの距離を前記設定値として記憶し、前記レールへの印付けを開始させるマーキング開始指令をユーザーが入力すると、前記マーキング開始指令が入力された後に前記距離測定装置によって測定された距離が、前記固定点設定指令が入力されたときの距離に達したときに前記マーキング装置に前記レールへの印付けを実行させる。
【0010】
前記まくらぎ間隔割付装置は、前記レールの頭部の内側に配置されるガイドローラーと、前記レールの幅方向に対して傾いた水平な中心線まわりに回転しながら前記レール上を移動することにより、前記ガイドローラーと前記レールの前記頭部の内側の側面との間隔を減少させる誘導ローラーと、をさらに備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、まくらぎを配置すべき位置を示す印を、より効率的にレールに付けることができるまくらぎ間隔割付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るまくらぎ間隔割付装置の使用例について説明するための概略図である。
【
図7】誘導ローラーおよびガイドローラーを示すまくらぎ間隔割付装置の背面図である。
【
図8】誘導ローラーの中心線がレールの幅方向(
図8における紙面の上下方向)に対して後方に傾いた状態を示すまくらぎ間隔割付装置の底面図である。
【
図10】マーキング装置の動作を示す概略図である。
【
図11-12】まくらぎ間隔割付装置がレールに付ける印のパターンの一例について説明するための軌道の概略平面図である。
【
図13-14】まくらぎ間隔割付装置がレールに付ける印のパターンの一例について説明するための軌道の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
以下では、特に断りがない限り、基準状態のまくらぎ間隔割付装置1について説明する。基準状態は、道床に敷設された水平な一対のレールRのうちの一方の上にまくらぎ間隔割付装置1が配置され、ハンドル2を支持する支柱4が鉛直であり、レールRの頭部の外側の側面に印が付けられる状態である。「外側」および「内側」は、道床に敷設された水平な一対のレールRを基準としている。
【0015】
以下では、まくらぎ間隔割付装置1が配置されたレールRの長さ方向を、まくらぎ間隔割付装置1の前後方向と、同レールRの幅方向を、まくらぎ間隔割付装置1の左右方向と、それぞれ定義する。上下方向は、左右方向および前後方向の両方に直交する方向(鉛直方向)である。
図2における紙面の左右方向がまくらぎ間隔割付装置1の前後方向であり、
図2において紙面に直交する方向がまくらぎ間隔割付装置1の左右方向である。以下では、まくらぎ間隔割付装置1の右側が、レールRの外側である例について説明する。
【0016】
最初に、まくらぎ間隔割付装置1の概要について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係るまくらぎ間隔割付装置1の使用例について説明するための概略図である。
図1に示すように、まくらぎ間隔割付装置1は、道床に敷設された一対のレールRのうちの一方の上を、ユーザーによって押されながらまたは引っ張られながら走行する手動式の車である。まくらぎ間隔割付装置1は、片方のレールR上を走行しながら、まくらぎMを配置すべき位置でレールRに印を付ける。
図1は、レールRへの印付けだけでなく、レールR上の始点から終点までの距離の測定と、レールRに印を付けるべき位置の設定も、まくらぎ間隔割付装置1が行う例を示している。
【0018】
図1に示す例では、距離の測定を開始させる測定開始指令をユーザーがまくらぎ間隔割付装置1に入力した後、ユーザーが片方のレールRに沿って歩きながら、同レールR上でまくらぎ間隔割付装置1を走行させると、距離の測定を停止させる測定停止指令をユーザーがまくらぎ間隔割付装置1に入力するまで、距離の測定が行われる。その後、レールRに印を付けるべき位置を設定させるマーキング位置設定指令をユーザーがまくらぎ間隔割付装置1に入力すると、まくらぎ間隔割付装置1は、ユーザーによって指定されたパターンにしたがってレールRに印が付けられるように、測定された距離の範囲内でレールRに印を付けるべき位置を設定する。
【0019】
距離の測定を行った後は、距離の測定を開始した始点までユーザーがまくらぎ間隔割付装置1を戻す。そして、レールRに印を付けるべき位置の設定を終えた状態で、レールRへの印付けを開始させるマーキング開始指令をユーザーがまくらぎ間隔割付装置1に入力し、距離の測定を停止した終点までユーザーがまくらぎ間隔割付装置1を片方のレールR上で走行させると、まくらぎ間隔割付装置1は、レールR上を走行しながら、設定した1つ以上の位置でレールRに印を付ける。つまり、同じ始点から同じ終点までまくらぎ間隔割付装置1を2回走行させると、距離の測定とレールRへの印付けとが行われる。
【0020】
まくらぎMを配置すべき位置でレールRに印を付けた後は、そのまくらぎMを配置するスペースを道床に確保するために、敷設済みのまくらぎMを道床から取り除く。その後、レールRの長さ方向におけるまくらぎMの中央(まくらぎMの幅方向におけるまくらぎMの中央)が印の真下に位置するように、まくらぎMを道床に配置する。レールRに印が付けられた全ての位置でこのような作業を行う。したがって、まくらぎ間隔割付装置1によってレールRに印を付けさせることによりまくらぎ間隔の割付を行い、この割付にしたがって敷設済みのまくらぎMを別のまくらぎMに交換する。
【0021】
まくらぎMの交換は、木製まくらぎからPC(プレストレストコンクリート)まくらぎなどのコンクリート製まくらぎへの交換であってもよいし、同種のまくらぎへの交換であってもよい。まくらぎMの交換に際して、敷設されたまくらぎMの本数を増加または減少させてもよいし、同数に維持してもよい。敷設済みのまくらぎMは、長期間の使用や地震等の影響により当初の位置からずれている場合がある。レールRに印を付けてそれを目安にまくらぎMを配置すれば、まくらぎMの本数を変えずに同種のまくらぎMに交換する場合であっても、交換されたまくらぎMを適切な位置に配置することができる。
【0022】
次に、まくらぎ間隔割付装置1の構造について説明する。
【0023】
図2は、まくらぎ間隔割付装置1の左側面図である。
図3および
図4は、まくらぎ間隔割付装置1の右側面図である。
図5は、まくらぎ間隔割付装置1の背面図である。
図6は、まくらぎ間隔割付装置1の底面図である。
図3および
図4は、まくらぎ間隔割付装置1を内側から見た図である。
図3は、支柱4が鉛直な状態を示している。
図4は、支柱4が水平な状態を示している。
図5では、走行ローラー24、測定ローラー23、およびガイドローラー25等の図示を省略している。
【0024】
図2に示すように、まくらぎ間隔割付装置1は、ユーザーによって握られるハンドル2と、ユーザーによってハンドル2に加えられた力を受けてレールRに沿って転がる複数のローラーと、複数のローラーが取り付けられた走行フレーム13とを備えている。ハンドル2は、支柱4を介して走行フレーム13に支持されている。後述するタッチパネルディスプレイ8を収容したインターフェースボックス7も、支柱4を介して走行フレーム13に支持されている。ハンドル2およびインターフェースボックス7は、走行フレーム13よりも上方に配置されている。
【0025】
ハンドル2は、アッパーブラケット3を介して支柱4に取り付けられている。支柱4は、ロワーブラケット9を介して走行フレーム13に取り付けられている。インターフェースボックス7は、中間ブラケット5およびチルトブラケット6を介して支柱4に取り付けられている。中間ブラケット5は、アッパーブラケット3およびロワーブラケット9の間で支柱4に取り付けられている。チルトブラケット6は、中間ブラケット5を介して支柱4に取り付けられている。
【0026】
図3および
図4は、ハンドル2およびインターフェースボックス7が、左右に水平に延びる直線まわりに走行フレーム13に対して支柱4と共に回転可能である例を示している。この例では、支柱4は、
図3に示す鉛直な姿勢と
図4に示す水平な姿勢との間で走行フレーム13に対して回転可能である。ハンドル2は、支柱4の中心線まわりに支柱4に対して回転可能である。インターフェースボックス7は、支柱4の中心線まわりに支柱4に対して回転可能であり、支柱4の中心線に直交する方向に支柱4に対して回転可能である。したがって、ユーザーの好みに応じてハンドル2およびインターフェースボックス7の位置および姿勢を調整することができる。
【0027】
まくらぎ間隔割付装置1は、距離などの情報がユーザーによって入力される入力装置と、距離などの情報を表示する表示装置と、を備えている。
図2~
図5は、入力装置と表示装置とを兼ねるタッチパネルディスプレイ8がまくらぎ間隔割付装置1に設けられており、インターフェースボックス7に収容された状態で支柱4に支持された例を示している。入力装置は、タッチパネル以外の電気的な入力装置であってもよいし、ボタンなどの物理的な入力装置であってもよい。表示装置は、フラットパネルディスプレイ以外の電気的な表示装置であってもよいし、アナログメーターなどの物理的な表示装置であってもよい。
【0028】
図5および
図6に示すように、まくらぎ間隔割付装置1は、レールR上での移動距離を測定する距離測定装置21と、レールRに印を付けるマーキング装置31と、レールRへの印付けを開始させるマーキング開始指令がユーザーによって入力されると、距離測定装置21によって測定された距離が設定値に達したときにマーキング装置31にレールRへの印付けを実行させる制御装置12とを備えている。マーキング装置31は、走行フレーム13に取り付けられた保護カバー10によって覆われており、制御装置12は、走行フレーム13に取り付けられた制御ボックス11(
図4参照)に収容されている。
【0029】
図6に示すように、距離測定装置21は、レールR上で転がりながらレールRに沿って移動する測定ローラー23と、測定ローラー23の回転角を検出することにより、測定ローラー23の移動距離を測定する回転角センサー22とを含む。回転角センサー22の検出値は、制御装置12に入力される。回転角センサー22は、光学式または磁気式のエンコーダであってもよいし、これら以外のセンサーであってもよい。距離測定装置21は、レールRに接触する測定ローラー23を利用して走行ローラー24の移動距離を測定するのではなく、レールRに非接触で走行ローラー24の移動距離を測定してもよい。
【0030】
図6は、測定ローラー23がレールRの頭部の上で左右に延びる円柱状である例を示している。測定ローラー23は、レールRの頭部の内側で上下に延びる円柱状であってもよい。走行フレーム13は、鉛直な姿勢で左右に間隔を空けて互いに平行に配置された2つのサイドプレート14を含む。測定ローラー23は、2つのサイドプレート14の間に配置されている。回転角センサー22は、2つのサイドプレート14の内側(
図6における紙面の下側)に配置されている。
【0031】
図5に示すように、マーキング装置31は、レールRに接触することによりレールRに印を付けるマーカー43と、マーカー43を移動させることにより、マーカー43をレールRに接触させるアクチュエータ32と、アクチュエータ32の動力をマーカー43に伝達する伝達機構33とを含む。
図5は、マーカー43がチョークであり、アクチュエータ32が電動モーター32であり、伝達機構33が電動モーター32の回転をマーカー43の往復運動に変換するクランク機構を含む例を示している。レールRに印を付けられるのであれば、マーカー43は、フェルトペンなどの筆記具であってもよいし、スタンプなどのチョークおよび筆記具以外の部材であってもよい。
【0032】
制御装置12は、コンピューターである。
図4に示すように、コンピューターは、プログラムなどの情報を記憶する記憶装置12bと、記憶装置12bに記憶されたプログラムを実行するCPU12a(central processing unit:中央処理装置)と、外部装置と有線または無線で通信する通信モジュール12cとを含む。制御装置12は、タッチパネルディスプレイ8、距離測定装置21、およびマーキング装置31などの外部装置との間で電気信号の送受信を行う。制御装置12は、タッチパネルディスプレイ8に入力された情報や距離測定装置21の測定値を受信する。制御装置12は、さらに、タッチパネルディスプレイ8に表示すべき情報をタッチパネルディスプレイ8に送信し、レールRへの印付けを実行させるマーキング指令をマーキング装置31に送信する。
【0033】
ユーザーがマーキング開始指令を入力装置に入力した後にまくらぎ間隔割付装置1をレールR上で走行させると、制御装置12は、距離測定装置21に距離の測定を開始させる。制御装置12は、距離測定装置21によって測定された距離が設定値に達したときにマーキング装置31にレールRへの印付けを実行させる。これにより、ユーザーによって指定されたパターンにしたがってレールRに印が付けられる。設定値は、ユーザーによって指定された指定値であってもよいし、同指定値に基づいて制御装置12が計算した計算値であってもよい。
【0034】
ユーザーによって指定された印付けのパターンは、等間隔で、つまり、走行を開始した始点と最初の印との間隔(第1間隔)、最後の印と走行を停止した終点との間隔(最終間隔)、および最も近い2つの印の間隔(中間間隔)が等しくなるように印を付けるパターンであってもよいし、不等間隔で印を付けるパターンであってもよい。後者の場合、全ての間隔が異なっていてもよいし、全ての間隔のいくつかが、残りの間隔とは異なる等しい値であってもよい。
【0035】
測定された距離の範囲内でレールRに印を付けるべき位置を設定する場合、この範囲内に付けられる全ての印の位置を制御装置12によって計算してもよいし、同全ての印の位置をユーザーが指定してもよい。もしくは、測定された距離の範囲内に付けられる1つ以上の印の位置がユーザーによって指定され、残りの印の位置が制御装置12によって計算されてもよい。
【0036】
例えば、まくらぎ間隔割付装置1に距離を測定させながらまくらぎ間隔割付装置1をレールR上で走行させているときに、不動点とも言われる固定点を設定する固定点設定指令をユーザーが入力装置に入力すると、同指令が入力された位置(同指令が入力された位置までの始点からの距離)でレールRに印が付けられるように設定されてもよい。このように設定されるまくらぎ間隔割付装置1のモードは、不動点介在モードに相当する(
図12参照)。
【0037】
図6に示すように、複数のローラーは、レールRの上方に配置される1つ以上の走行ローラー24を含む。複数のローラーは、さらに、レールRの上方に配置される1つ以上の測定ローラー23と、レールRの上方に配置される1つ以上の誘導ローラー27とを含む。走行ローラー24、測定ローラー23、および誘導ローラー27は、いずれもレールRの上面に沿って転がるローラーである。
図6は、2つの走行ローラー24と4つの誘導ローラー27と1つの測定ローラー23とが設けられた例を示している。
【0038】
図6に示す例では、測定ローラー23が、前側の走行ローラー24の後方に配置されており、4つの誘導ローラー27が、測定ローラー23と後ろ側の走行ローラー24との間に配置されている。4つの誘導ローラー27は、2つの対を形成している。対を形成する2つの誘導ローラー27の中心線は、左右に延びる水平な1つの直線上に配置されている。2つの対の誘導ローラー27は、前後に間隔を空けて互いに平行に配置されている。誘導ローラー27については以下にてさらに説明する。
【0039】
複数のローラーは、走行ローラー24等に加えて、レールRの内側に配置される1つ以上のガイドローラー25を含む。ガイドローラー25は、レールRの頭部の内側の側面に沿って転がるローラーである。
図6は、4つのガイドローラー25が設けられた例を示している。4つのガイドローラー25は、走行ローラー24、測定ローラー23、および誘導ローラー27よりも内側に配置されている。4つのガイドローラー25は、前後に延びる水平な1つの直線上に配置されている。4つのガイドローラー25のうちの2つは、前側の走行ローラー24の内側に配置されており、残り2つのガイドローラー25は、後ろ側の走行ローラー24の内側に配置されている。
【0040】
走行ローラー24、測定ローラー23、および誘導ローラー27は、水平な直線まわりに走行フレーム13に対して回転可能である。ガイドローラー25は、鉛直な直線まわりに走行フレーム13に対して回転可能である。2つの走行ローラー24、1つの測定ローラー23、および4つの誘導ローラー27は、走行フレーム13の2つのサイドプレート14の間に位置するように走行フレーム13に取り付けられている。4つのガイドローラー25のうちの前側の2つは、2つのサイドプレート14の内側に位置するように、フロントブラケット26fを介して内側のサイドプレート14に取り付けられている。残り2つのガイドローラー25は、2つのサイドプレート14の内側に位置するように、リアブラケット26rを介して内側のサイドプレート14に取り付けられいる。
【0041】
走行ローラー24は、レールRの上面に沿って転がる円柱状のローラー部24rと、ローラー部24rの外周面の端から全周にわたって一定の突出量でローラー部24rの径方向に突出した円板状のフランジ部24fとを含む。フランジ部24fは、ローラー部24rと同軸であり、ローラー部24rよりも大きい外径を有している。フランジ部24fは、ローラー部24rよりも左右方向に短い。ローラー部24rがレールRの頭部の上に配置されると、フランジ部24fは、レールRの頭部の外側に配置される。レールRに対する走行ローラー24の内側への移動は、フランジ部24fとレールRとの接触によって規制される。
【0042】
ガイドローラー25は、上端から下端まで外径が一定の鉛直な円筒状の外周面を有している。ガイドローラー25の外周面の下端は、走行ローラー24のフランジ部24fの下端よりも下方に配置されている。ローラー部24rがレールRの頭部の上に配置されると、ガイドローラー25は、レールRの頭部の内側に配置される。レールRに対する走行ローラー24の外側への移動は、ガイドローラー25とレールRとの接触によって規制される。ガイドローラー25は、レールRの頭部の内側の側面に沿って転がりながら、レールRの長さ方向に移動する。
【0043】
次に、誘導ローラー27について説明する。
【0044】
図7は、誘導ローラー27およびガイドローラー25を示すまくらぎ間隔割付装置1の背面図である。
図8は、誘導ローラー27の中心線がレールRの幅方向(
図8における紙面の上下方向)に対して後方に傾いた状態を示すまくらぎ間隔割付装置1の底面図である。
図7では、走行ローラー24および測定ローラー23等の図示を省略している。
【0045】
前述のように、4つの誘導ローラー27は、2つの対を形成している。対を形成する2つの誘導ローラー27の中心線は、左右に延びる水平な1つの直線上に配置されている。
図7に示すように、一方の対の誘導ローラー27は、一方の対の誘導ローラー27の中心線に沿って延びる1本のスイングシャフト28に取り付けられている。他方の対の誘導ローラー27は、他方の対の誘導ローラー27の中心線に沿って延びる1本のスイングシャフト28に取り付けられている。各誘導ローラー27は、対応するスイングシャフト28に対して回転可能である。
【0046】
スイングシャフト28は、左右に延びる水平な姿勢で回転ストッパー29を介して走行フレーム13に支持されている。スイングシャフト28および回転ストッパー29は、走行フレーム13の2つのサイドプレート14の間に配置されている。スイングシャフト28は、回転ストッパー29から外側に水平に延びている。スイングシャフト28は、回転ストッパー29を通る鉛直な直線まわりに走行フレーム13に対して前後に回転可能である。スイングシャフト28が走行フレーム13に対して後方に回転すると、回転ストッパー29が内側のサイドプレート14に接触し、スイングシャフト28の回転が規制される。スイングシャフト28が走行フレーム13に対して前方に回転したときも同様である。
【0047】
対の誘導ローラー27は、回転ストッパー29を通る鉛直な直線まわりにスイングシャフト28と共に走行フレーム13に対して前後に回転可能である。回転ストッパー29が走行フレーム13に接触すると、対の誘導ローラー27の中心線が左右方向に対して斜めに傾いた状態でスイングシャフト28の回転が規制される。まくらぎ間隔割付装置1をレールR上で前方に走行させると、二対の誘導ローラー27の中心線が後方に斜めに傾く。このとき、ガイドローラー25をレールRの頭部の内側の側面に近づける力がまくらぎ間隔割付装置1に働く。これにより、ガイドローラー25をレールRの頭部の内側の側面に接触させた状態でまたは近づけた状態で、まくらぎ間隔割付装置1を前方に走行させることができる。
【0048】
次に、マーキング装置31について説明する。
【0049】
図9は、マーキング装置31の概略図である。
図9(a)は、マーキング装置31の左側面図である。
図9(b)は、マーキング装置31の背面図である。
図10は、マーキング装置31の動作を示す概略図である。マーキング装置31の状態は、
図9(b)、
図10(a)、
図10(b)、
図10(c)の順番で変化し、これとは逆の順番で、
図10(c)に示す状態から
図9(b)に示す状態に戻る。
【0050】
前述のように、マーキング装置31は、レールRに接触するマーカー43と、アクチュエータ32の一例である電動モーター32と、クランク機構を含む伝達機構33とを含む。電動モーター32は、2つのサイドプレート14の間で左右に水平に延びる姿勢で走行フレーム13に取り付けられている。電動モーター32の回転軸は、外側のサイドプレート14の外側(
図9(b)における紙面の右側)に配置されている。クランク機構は、外側のサイドプレート14の外側で電動モーター32に連結されている。
【0051】
クランク機構は、電動モーター32の中心線まわりに回転する第1アーム34と、電動モーター32の回転に伴って上下に直線的に往復するスライダー40と、第1アーム34の回転を上下方向へのスライダー40の直線運動に変換する第2アーム35とを含む。第1アーム34、第2アーム35、およびスライダー40は、外側のサイドプレート14の外側に配置されている。スライダー40は、外側のサイドプレート14に沿って上下に延びる直線状のガイドレール38に取り付けられている。スライダー40は、ガイドレール38に沿って走行フレーム13に対して上下に移動する。
【0052】
電動モーター32が回転すると、スライダー40は、上死点(
図9(a)に示す位置)と下死点との間で、走行フレーム13に対して上下に往復する。スライダー40は、電動モーター32の回転角に応じた移動量で上下に移動する。制御装置12は、電動モーター32を制御することにより、上下方向へのスライダー40の位置、ひいては、上下方向へのマーカー43の位置を調節する。
図9(a)は、スライダー40と走行フレーム13とが第1バネ39によって連結された例を示している。スライダー40が上死点から移動すると、スライダー40を上死点に戻す力が第1バネ39からスライダー40に加わる。
【0053】
第1アーム34は、第1連結ピン36を介して第2アーム35に連結されている。第2アーム35は、第2連結ピン37を介してスライダー40に連結されている。第1アーム34および第2アーム35は、第1連結ピン36まわりに相対的に回転可能である。第2アーム35およびスライダー40は、第2連結ピン37まわりに相対的に回転可能である。第1アーム34および第2アーム35の少なくとも一方は、長さ方向に伸縮可能であってもよい。
図9および
図10は、第2アーム35が伸縮可能なターンバックルであり、第1アーム34の長さが不変である例を示している。第1アーム34および第2アーム35の少なくとも一方の長さが変わると、スライダー40の上死点および下死点の位置が変わる。これにより、上下方向へのマーカー43の位置を微調整することができる。
【0054】
マーカー43は、マーカー43を保持するホルダー42を介してスライダー40に連結されている。マーカー43およびホルダー42は、スライダー40と共に走行フレーム13に対して上下に移動する。ホルダー42は、スライダー40から下方に突出している。マーカー43は、ホルダー42から下方に突出している。マーカー43は、スライダー40よりも下方に配置されている。マーカー43およびホルダー42は、ガイドレール38と平行に上下に延びている。
【0055】
ホルダー42は、前後に延びる水平な直線まわりにスライダー40に対して回転可能である。ホルダー42がスライダー40に対して回転すると、マーカー43もスライダー40に対して回転する。ホルダー42は、ホルダー42とスライダー40との間に介在する第2バネ41によって、マーカー43が内側に移動する方向に押されている。ホルダー42は、サイドプレート14に固定された固定ガイド45とホルダー42に固体された可動ガイド44とを介して、サイドプレート14に支持されている。可動ガイド44は、第2バネ41の力によって固定ガイド45に押し付けられている。
【0056】
固定ガイド45は、上下および前後に延びる鉛直な平坦面と、固定ガイド45の平坦面の下端から左右方向におけるまくらぎ間隔割付装置1の中央に向かって斜め下に延びる平坦な傾斜面とを含む。可動ガイド44は、固定ガイド45の平坦面または傾斜面と平行に向かい合う平坦面と、可動ガイド44の平坦面から下方に離れるにしたがって可動ガイド44の平坦面から外側に離れるように可動ガイド44の平坦面に対して傾いた平坦な傾斜面とを含む。
【0057】
可動ガイド44は、第2バネ41の力によって固定ガイド45に押し付けられている。可動ガイド44は、固定ガイド45の平坦面または傾斜面に押し付けられながら、固定ガイド45の平坦面または傾斜面に沿って下方に移動する。可動ガイド44は、第2バネ41の力によってサイドプレート14の鉛直で平坦な表面に押し付けられながら、同表面に沿って下方に移動することもできる。可動ガイド44が固定ガイド45の傾斜面に沿って下方に移動すると、マーカー43およびホルダー42がスライダー40に対して回転し、マーカー43の下端部に相当するマーカー43の先端部が、左右方向におけるまくらぎ間隔割付装置1の中央に近づく。
【0058】
図9(b)に示すように、スライダー40が上死点に配置されているとき、マーカー43の下端部に相当するマーカー43の先端部は、外側のサイドプレート14よりも外側に配置されている。このとき、マーカー43の先端部は、レールRの頭部の外側の側面よりも外側に配置されており、レールRの上面よりも上方に配置されている。
図10(a)に示すように、スライダー40を上死点から下方に移動させると、マーカー43の先端部は、レールRの頭部の外側の側面に向かって斜め下方に移動する。
【0059】
マーカー43は、
図9(b)に示す位置から、
図10(a)および
図10(b)に示す位置を経て、
図10(c)に示す位置に到達し、これとは逆の順番で
図9(b)に示す位置に戻る。
図9(b)に示すマーカー43の位置は、マーカー43の下端がレールRの上面よりも上方に位置するマーカー非接触位置である。
図10(c)に示すマーカー43の位置は、マーカー43がレールRに接触するマーカー接触位置である。マーカー非接触位置は、スライダー40が上死点に配置されているときのマーカー43の位置である。マーカー接触位置は、スライダー40が上死点と下死点との間に配置されているときのマーカー43の位置である。
【0060】
電動モーター32は、マーカー非接触位置とマーカー接触位置との間でマーカー43を移動させる。制御装置12は、距離測定装置21によって測定された距離が設定値に達すると、マーカー43をマーカー非接触位置とマーカー接触位置との間で往復させ、レールRに印を付ける。その後、距離測定装置21によって測定された距離が、次の設定値に達すると、制御装置12は、再び、マーカー43をマーカー非接触位置とマーカー接触位置との間で往復させ、レールRに印を付ける。このようにして、ユーザーによって指定されたパターンにしたがってレールRに印が付けられる。
【0061】
次に、レールRに付ける印のパターンについて説明する。
【0062】
図11は、まくらぎ間隔割付装置1がレールRに付ける印のパターンの第1の例について説明するための軌道の概略平面図である。
図12は、まくらぎ間隔割付装置1がレールRに付ける印のパターンの第2の例について説明するための軌道の概略平面図である。
【0063】
図11は、レールRの継目から継目までの距離(レールRの一端からレールRの他端までの距離)を測定する継目間測定モードの一例を示している。
図12は、ある区間内のいくつかのまくらぎMを交換し、同区間内の残りのまくらぎMを交換しない不動点介在モードの一例を示している。
図12では、交換されないまくらぎMを黒色で塗りつぶしている。まくらぎ間隔割付装置1の基準位置が交換されないまくらぎMの上に到達すると、前述の固定点設定指令がユーザーによって入力装置に入力される。
【0064】
図11に示すように、レールRの継目付近では継目から離れた位置に比べてまくらぎMの間隔を減少させることがある。例えば、レールRの継目と継目に最も近い1番目のまくらぎMとの間隔(
図11に示す間隔a)を最も小さくし、1番目と2番目、2番目と3番目のまくらぎMの間隔(
図11に示す間隔b)を2番目に小さくし、継目から3番目の2本のまくらぎMの間では、最も大きな間隔(
図11に示す間隔c)で1本以上のまくらぎMを均等に配置することがある。
【0065】
間隔aは、継目とまくらぎMの中央との間隔であり、間隔bおよび間隔cは、まくらぎMの中央とまくらぎMの中央との間隔である。間隔bは、間隔aよりも大きく、間隔cよりも小さい(間隔a<間隔b<間隔c)。間隔cは、最大間隔であり、間隔aは、最小間隔であり、間隔bは、中間間隔である。以下では、まくらぎMの間隔が段階的に増加または減少する区間を継目区間ともいい、それ以外の区間を非継目区間ともいう。前記の例では、レールRの継目から3番目のまくらぎMの中央までの区間が、継目区間に相当する。継目区間に含まれる間隔の数や組み合わせは、前記に限られない。
【0066】
レールRの継目から継目までの範囲内でレールRに印を付ける場合、非継目区間の前および後ろの少なくとも一方に継目区間が設けられるようにまくらぎ間隔割付装置1を設定することができ、非継目区間の前および後ろのいずれにも継目区間が設けられないようにまくらぎ間隔割付装置1を設定することができる。
【0067】
例えば、非継目区間の前および後ろの両方に継目区間を設ける場合、ユーザーは、入力装置を操作してまくらぎ間隔割付装置1のモードをそのように設定する。さらに、ユーザーは、入力装置を操作して、間隔a、間隔b、および間隔cを入力する。間隔a、間隔b、および間隔cの少なくとも一つは、まくらぎ間隔割付装置1に予め登録された値から選択されてもよい。以下では、ユーザーによって入力または選択された間隔cを「指定間隔c」ともいう。
【0068】
まくらぎ間隔割付装置1によってレールRに印を付けるときは、
図1に示すように、始点から終点までまくらぎ間隔割付装置1をレールR上で走行させ、始点から終点までの距離をまくらぎ間隔割付装置1に測定させる。前記のように設定されている場合、距離が測定されると、まくらぎ間隔割付装置1は、非継目区間の前および後ろの両方に継目区間が設けられるように、測定された距離の範囲内でレールRに印を付けるべき位置を設定する。
【0069】
具体的には、制御装置12は、測定された距離から2つの継目区間の長さ((間隔a+2×間隔b)×2)を引き、非継目区間の長さ(以下、「非継目区間長」)を求める。その後、制御装置12は、非継目区間長が指定間隔c(ユーザーによって入力または選択された間隔c)で割り切れるか否かを計算する。非継目区間長が指定間隔cで割り切れる場合、マーキング装置31は、指定間隔cを設定間隔cとして扱う。割り切れない場合、制御装置12は、割り算の商に1を加えた値で非継目区間長を割り、その商を間隔cに設定する(この間隔cを「設定間隔c」という。)。設定間隔cは、指定間隔c以下の値である。
【0070】
例えば、非継目区間長を指定間隔cで割った値が「27.2」である場合、商に相当する27に1を加えた28で非継目区間長を割ったときの商を設定間隔cに設定する。28は、非継目区間に配置すべきまくらぎMの本数を表すまくらぎ本数である。まくらぎ本数は、表示装置に表示されてもよい。同様に、間隔a、間隔b、指定間隔c、および設定間隔cの少なくとも一つは、表示装置に表示されてもよい。
【0071】
レールRに印を付けるべき位置の設定を終えた状態で、マーキング開始指令をユーザーが入力装置に入力し、ユーザーがまくらぎ間隔割付装置1を始点から終点まで走行させると、最初に間隔aでレールRに印が付けられ、その後、間隔bで2回レールRに印が付けられる。つまり、マーキング開始指令が入力された後に距離測定装置21によって測定された距離が間隔aに達すると、制御装置12は、マーキング装置31にレールRへの印付けを実行させ、その後、測定された距離が間隔aと間隔bとの和(間隔a+間隔b)に達すると、制御装置12は、マーキング装置31にレールRへの印付けを実行させる。
【0072】
間隔bで2回レールRに印が付けられた後は、間隔cでレールRに印が付けられる。間隔cでの印付けが終わると、間隔bで2回レールRに印が付けられ、最後に間隔aでレールRに印が付けられる。このようにして、継目区間、非継目区間、継目区間の順番で、始点から終点までの範囲内でレールRに印が付けられる。前述のように、設定間隔cは、指定間隔c以下の値である。したがって、非継目区間では、指定間隔c以下の値で均等にレールRに印が付けられる。
【0073】
図12に示すように、交換しないまくらぎM(黒色で塗りつぶしたまくらぎM)がレールRに印を付けるべき区間にある場合、ユーザーは、まくらぎ間隔割付装置1をレールR上で走行させているときに、まくらぎ間隔割付装置1の基準位置が交換しないまくらぎMの上に到達すると、固定点設定指令を入力装置に入力する。
図12に示す例では、交換しないまくらぎMが2本あるので、ユーザーは、固定点設定指令を2回入力することになる。
【0074】
図12は、非継目区間の前および後ろの両方に継目区間が設けられるようにレールRに印を付ける例を示している。この例では、交換しない2本のまくらぎMが、非継目区間に配置されている。この場合、非継目区間を便宜的に第1~3非継目区間の3つに分割する。第1非継目区間は、非継目区間の始点(
図12における左から3本目のまくらぎMの中央)から1本目の交換しないまくらぎMの中央までの区間である。第2非継目区間は、交換しない2本のまくらぎMの中央の間の区間である。第3非継目区間は、2本目の交換しないまくらぎMの中央から非継目区間の終点(
図12における右から3本目のまくらぎMの中央)までの区間である。
【0075】
固定点設定指令を入力しながら距離を測定すべき区間の終点までまくらぎ間隔割付装置1を走行させた後、マーキング位置設定指令をユーザーがまくらぎ間隔割付装置1に入力すると、制御装置12は、ユーザーによって入力または選択された指定間隔cで第1非継目区間の長さを割り、割り切れれば、指定間隔cを、割り切れなければ、割り算の商に1を加えた値で第1非継目区間の長さを割った商を、設定間隔cに設定する。
【0076】
第2~3非継目区間についても第1非継目区間と同様に計算し、第2~3非継目区間ごとに設定間隔cに設定する。したがって、第1非継目区間に対応する第1設定間隔cと、第2非継目区間に対応する第2設定間隔cと、第3非継目区間に対応する第3設定間隔cとが設定される。第1~3設定間隔cは、等しくても異なっていてもよいし、第1~3設定間隔cのいくつかが、第1~3設定間隔cの残りとは異なる等しい値であってもよい。
【0077】
図12に示す例の場合、レールRに印を付けるべき位置の設定を終えた状態で、マーキング開始指令をユーザーが入力装置に入力し、ユーザーがまくらぎ間隔割付装置1を始点から終点まで走行させると、始点付近では、間隔a、間隔b、間隔bの順番でレールRに印が付けられ、終点付近では、間隔b、間隔b、間隔aの順番でレールRに印が付けられる。その間の区間では、第1~3非継目区間にそれぞれ対応する第1~3設定間隔cでレールRに印が付けられる。
【0078】
図13は、まくらぎ間隔割付装置1がレールRに付ける印のパターンの第3の例について説明するための軌道の概略平面図である。
図14は、まくらぎ間隔割付装置1がレールRに付ける印のパターンの第4の例について説明するための軌道の概略平面図である。
図13および
図14は、最も近い2つの固定点の間を等分割する固定点間等分割モードについて説明するための図である。固定点間等分割モードは、不動点介在モードの一例でもある。
図12と同様に、黒色のまくらぎMは、交換しないまくらぎMを、白色のまくらぎMは、交換したまくらぎMを示している。
【0079】
図13は、非継目区間(左から4本目から右から4本目までの区間)のまくらぎMを3本に1本の割合で交換した例を示している。
図14は、
図13に示す黒色のまくらぎMを2本に1本の割合で交換した例を示している。つまり、
図13および
図14は、まくらぎMを2回に分けて交換する例を示している。
図13に示す1回目の交換では、敷設されたまくらぎMの本数を同数に維持し、
図14に示す2回目の交換では、敷設されたまくらぎMの本数を減少させる。このような2回の交換は、木製まくらぎからPCまくらぎへの交換の際に行われることがある。
【0080】
図13に示す1回目の交換では、固定点を設定しない
図12に示す例と同様に、始点付近では、間隔a、間隔b、間隔bの順番で、終点付近では、間隔b、間隔b、間隔aの順番で、その間の区間では、設定間隔cでレールRに印が付けられる。まくらぎMを交換する際は、始点側および終点側の2本ずつのまくらぎMを交換し、左から4本目から右から4本目までのまくらぎMを3本に1本の割合で交換する。
【0081】
図14に示す2回目の交換では、
図13における左から2本目から右から2本目のまくらぎMまでの距離をまくらぎ間隔割付装置1に測定させる。このとき、2回目の交換で交換しないまくらぎM(
図13に示す白色のまくらぎM)の位置で、ユーザーが固定点設定指令を入力装置に入力する。
図13では、左から2本目から右から2本目のまくらぎMの間に、交換しないまくらぎMが10本あるので(右からおよび左から2番目の2本のまくらぎMは除く)、ユーザーは、固定点設定指令を10回入力することになる。
【0082】
固定点設定指令を入力しながら距離を測定すべき区間の終点までまくらぎ間隔割付装置1を走行させた後は、最も近い2つの固定点の間を等分割する位置でレールRに印が付けられるように、レールRに印を付けるべき位置を設定させる固定点間等分割指令をユーザーが入力装置に入力する。固定点間等分割指令は、距離を測定する前に入力されてもよい。
【0083】
図14は、最も近い2つの固定点の間を二等分する位置でレールRに印が付けれ、この印を目印にしてまくらぎMを交換した例を示している。
図13および
図14中の「x」は、最も近い2つの固定点間の距離を示している。
図14中の「x/2」は、同距離の半分の位置でレールRに印が付けられ、この位置に交換されたまくらぎMが配置されたことを示している。レールRに印を付けるべき位置を設定する際に、制御装置12は、最も近い2つの固定点の間を三等分してもよいし、まくらぎMを配置できるスペースがあるのであれば、4つ以上に均等に分割してもよい。
【0084】
次に、本実施形態に係る効果について説明する。
【0085】
本実施形態では、道床に敷設されたレールRに沿って転がしながら走行ローラー24を移動させる。距離測定装置21は、走行ローラー24の移動距離を測定し、制御装置12は、距離測定装置21によって測定された距離が制御装置12の記憶装置12bに記憶された設定値に達すると、マーキング装置31にレールRへの印付けを実行させる。したがって、ユーザーは、レールRに印を付けるべき位置を認識する必要がなく、レールR上でまくらぎ間隔割付装置1を走行させることで、適切な位置でレールRに印を付けることができる。これにより、より効率的にレールRに付けることができる。
【0086】
本実施形態では、距離測定装置21が走行ローラー24の移動距離の測定を終了すると、制御装置12は、測定された移動距離の範囲内でレールRに印を付けるべき位置を計算し、計算により得られた値を設定値として記憶する。まくらぎ間隔割付装置1を再び始点から終点まで走行させると、制御装置12は、距離測定装置21によって測定された距離が計算により得られた値に達すると、マーキング装置31にレールRへの印付けを実行させる。したがって、レールRに印を付けるべき位置を計算しなくてもよいし、計算により得られた値をまくらぎ間隔割付装置1に入力しなくてもよい。
【0087】
本実施形態では、距離測定装置21が走行ローラー24の移動距離を測定しているときに、固定点を設定する固定点設定指令をユーザーが入力すると、固定点設定指令が入力されたときの距離を、制御装置12の記憶装置12bに設定値として記憶させる。その後、レールRへの印付けを開始させるマーキング開始指令をユーザーが入力すると、制御装置12は、マーキング開始指令が入力された後に距離測定装置21によって測定された距離が、固定点設定指令が入力されたときの距離に達したときにマーキング装置31にレールRへの印付けを実行させる。
【0088】
ある区間内のいくつかのまくらぎMを交換し、同区間内の残りのまくらぎMを交換しない場合がある。例えば、敷設済みの木製の複数のまくらぎMのいくつかだけを交換する場合や、地上子などの設備がまくらぎMの近傍にあり、その位置を変更すべきでない場合などである。このような場合、交換しない1本以上のまくらぎMの位置で固定点設定指令を入力し、その後、レールRに印を付けて、固定点以外の位置でまくらぎMを交換すれば、1本以上のまくらぎMを交換せずに残しながら、交換したまくらぎMを適切な位置に配置することができる。
【0089】
本実施形態では、水平な誘導ローラー27の中心線をレールRの幅方向に対して傾けている。誘導ローラー27が、誘導ローラー27の中心線まわりに回転すると、まくらぎ間隔割付装置1をレールRに対して外側に移動させる力が発生する。この力によってガイドローラー25がレールRの頭部の内側の側面に近づき、両者の間隔が減少する。これにより、横移動ストッパーとしてのガイドローラー25がレールRの頭部の内側の側面に接した状態または近づいた状態で、まくらぎ間隔割付装置1をレールRに沿って走行させることができる。したがって、まくらぎ間隔割付装置1の走行を安定させることができ、距離測定装置21による移動距離の測定精度を高めることができる。さらに、レールRに擦れながら移動する部材が横移動ストッパーである場合に比べて、走行時にまくらぎ間隔割付装置1に加わる抵抗を減らすことができ、まくらぎ間隔割付装置1をスムーズに走行させることができる。
【0090】
まくらぎ間隔割付装置1を用いずにレールRに印を付ける手順の一例は次の通りである。すなわち、巻尺等のメジャーを用いてレールRの長さを測定し、その後、電卓などの計算機を用いてまくらぎMを配置すべき位置を計算する。その計算結果にしたがってレールRに印を付ける。このような作業は、少なくとも3人の作業員が必要となる。さらに、このような作業は、前屈姿勢で行うことがあり、作業者への負担が大きい。まくらぎ間隔割付装置1を用いれば、作業員を減らすことができる上に、前屈姿勢になる必要がなく、作業員への負担を軽減できる。したがって、距離の測定からマーキングまでの作業に関して省人化および省力化を達成できる。
【0091】
次に、他の実施形態について説明する。
【0092】
レールRに等間隔で印を付ける等間隔割付モードにまくらぎ間隔割付装置1が設定されており、印の間隔が設定されている場合、まくらぎ間隔割付装置1を始点から終点まで2回走行させなくてもよい。
【0093】
具体的には、マーキング開始指令をユーザーが入力装置に入力し、まくらぎ間隔割付装置1の走行を開始させると、制御装置12は、レールRへの印付けを停止させるマーキング停止指令をユーザーが入力装置に入力するまで、まくらぎ間隔割付装置1の移動距離が設定された間隔に達するたびにマーキング装置31にレールRへの印付けを実行させてもよい。
【0094】
始点から終点までの距離を測定した後にまくらぎ間隔割付装置1を始点から終点まで走行させながらレールRに印を付けるのではなく、まくらぎ間隔割付装置1を終点から始点まで後進させながら(バックさせながら)レールRに印を付けてもよい。
【0095】
誘導ローラー27は、誘導ローラー27の中心線が走行フレーム13に対して前後に移動可能な可動式ではなく、誘導ローラー27の中心線がレールRの幅方向に対して傾いた状態で走行フレーム13に固定された固定式であってもよい。誘導ローラー27をまくらぎ間隔割付装置1から省略してもよい。ガイドローラー25をまくらぎ間隔割付装置1から省略してもよい。
【0096】
前述の全ての構成の2つ以上を組み合わせてもよい。
【0097】
本発明の実施形態について詳細に説明してきたが、これらは本発明の技術的内容を明らかにするために用いられた具体例に過ぎず、本発明はこれらの具体例に限定して解釈されるべきではなく、本発明の精神および範囲は添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0098】
1:まくらぎ間隔割付装置、2:ハンドル、3:アッパーブラケット、4:支柱、5:中間ブラケット、6:チルトブラケット、7:インターフェースボックス、8:タッチパネルディスプレイ、9:ロワーブラケット、10:保護カバー、11:制御ボックス、12:制御装置、12a:CPU、12b:記憶装置、12c:通信モジュール、13:走行フレーム、14:サイドプレート、21:距離測定装置、22:回転角センサー、23:測定ローラー、24:走行ローラー、24f:フランジ部、24r:ローラー部、25:ガイドローラー、26f:フロントブラケット、26r:リアブラケット、27:誘導ローラー、28:スイングシャフト、29:回転ストッパー、31:マーキング装置、32:アクチュエータ(電動モーター)、33:伝達機構、34:第1アーム、35:第2アーム、36:第1連結ピン、37:第2連結ピン、38:ガイドレール、39:第1バネ、40:スライダー、41:第2バネ、42:ホルダー、43:マーカー、44:可動ガイド、45:固定ガイド、a:間隔、b:間隔、c:間隔、M:まくらぎ、R:レール
【手続補正書】
【提出日】2023-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】