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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071337
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
H02M3/28 B
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023076568
(22)【出願日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2022181761
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 俊之
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB27
5H730BB61
5H730BB98
5H730DD04
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE59
5H730EE60
5H730FD01
5H730XC02
5H730XC12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】起動時のスイッチング周波数を抑制する電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1は、電流共振コンバータと、電流共振コンバータの共振経路に直列接続され、静電容量が可変である可変容量回路22と、電流共振コンバータの起動時に、電流共振コンバータの出力電圧に基づいて、静電容量を変更する制御回路12と、を含む。制御回路12は、電流共振コンバータを起動するための起動信号が第1レベルから第2レベルに変化した場合に、静電容量の変更を開始し、起動信号が前記第2レベルから第1レベルに変化した場合に、静電容量の変更を終了する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流共振コンバータと、
前記電流共振コンバータの共振経路に直列接続され、静電容量が可変である可変容量回路と、
前記電流共振コンバータの起動時に、前記電流共振コンバータの出力電圧に基づいて、前記静電容量を変更する制御回路と、
を含む、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、
前記電流共振コンバータを起動するための起動信号が第1レベルから第2レベルに変化した場合に、前記静電容量の変更を開始し、
前記起動信号が前記第2レベルから前記第1レベルに変化した場合に、前記静電容量の変更を終了する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、
前記出力電圧が相対的に低い場合に、前記静電容量を相対的に大きくし、
前記出力電圧が相対的に高い場合に、前記静電容量を相対的に小さくする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記可変容量回路は、
第1コンデンサと、
一端が前記第1コンデンサの一端に電気的に接続された第2コンデンサと、
寄生容量及び寄生ダイオードを有し、第1端子が前記第2コンデンサの他端に電気的に接続され、第2端子が前記第1コンデンサの他端に電気的に接続され、制御端子に前記制御回路からスイッチング信号が入力されるスイッチング素子と、
を含む、
ことを特徴とする、請求項3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御回路は、
前記出力電圧が相対的に低い場合に、前記スイッチング信号のデューティを相対的に大きくし、
前記出力電圧が相対的に高い場合に、前記スイッチング信号のデューティを相対的に小さくする、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記出力電圧が相対的に低い場合に、前記電流共振コンバータの共振周波数を相対的に低くし、
前記出力電圧が相対的に高い場合に、前記電流共振コンバータの共振周波数を相対的に高くする、
ことを特徴とする、請求項3に記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御回路は、
電流が前記スイッチング素子の前記第2端子の側から前記第1端子の側の方向に流れる場合に、前記スイッチング素子をオン状態に制御する、
ことを特徴とする、請求項4に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LLCコンバータ(電流共振コンバータ)は、ブリッジ回路のスイッチング周波数を変更することにより、出力電圧を目標電圧にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-192281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、LLCコンバータは、起動時に出力電圧をゼロボルトから徐々に上昇させるソフトスタート動作を行う場合がある。ソフトスタート開始直後では、トランス電圧は、出力電圧に相当する電圧が印加されるので、ほぼゼロボルトである。従って、ブリッジ回路の出力電圧が全て共振インダクタに印加され、共振インダクタには定常時よりも大きな電流が流れるので、共振コンデンサにも定常時より大きな電圧が印加される。これを回避する方法として、起動時にスイッチング周波数を定常時よりも高い周波数でソフトスタートさせる手法がある。しかし、スイッチング損失の増加や高いスイッチング周波数に対応可能な回路設計が必要となり、高耐圧の部品を選定することが必要になるなどの問題がある。
【0005】
特許文献1には、出力電圧に基づいて共振回路の静電容量を可変するスイッチング電源装置が、記載されている。但し、特許文献1は、スイッチング電源装置の起動時については、考慮されていない。
【0006】
本開示は、起動時のスイッチング周波数を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の電源装置は、
電流共振コンバータと、
前記電流共振コンバータの共振経路に直列接続され、静電容量が可変である可変容量回路と、
前記電流共振コンバータの起動時に、前記電流共振コンバータの出力電圧に基づいて、前記静電容量を変更する制御回路と、
を含む、
ことを特徴とする。
【0008】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
前記電流共振コンバータを起動するための起動信号が第1レベルから第2レベルに変化した場合に、前記静電容量の変更を開始し、
前記起動信号が前記第2レベルから前記第1レベルに変化した場合に、前記静電容量の変更を終了する、
ことを特徴とする。
【0009】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
前記出力電圧が相対的に低い場合に、前記静電容量を相対的に大きくし、
前記出力電圧が相対的に高い場合に、前記静電容量を相対的に小さくする、
ことを特徴とする。
【0010】
前記電源装置において、
前記可変容量回路は、
第1コンデンサと、
一端が前記第1コンデンサの一端に電気的に接続された第2コンデンサと、
寄生容量及び寄生ダイオードを有し、第1端子が前記第2コンデンサの他端に電気的に接続され、第2端子が前記第1コンデンサの他端に電気的に接続され、制御端子に前記制御回路からスイッチング信号が入力されるスイッチング素子と、
を含む、
ことを特徴とする。
【0011】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
前記出力電圧が相対的に低い場合に、前記スイッチング信号のデューティを相対的に大きくし、
前記出力電圧が相対的に高い場合に、前記スイッチング信号のデューティを相対的に小さくする、
ことを特徴とする。
【0012】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
前記出力電圧が相対的に低い場合に、前記電流共振コンバータの共振周波数を相対的に低くし、
前記出力電圧が相対的に高い場合に、前記電流共振コンバータの共振周波数を相対的に高くする、
ことを特徴とする。
【0013】
前記電源装置において、
前記制御回路は、
電流が前記スイッチング素子の前記第2端子の側から前記第1端子の側の方向に流れる場合に、前記スイッチング素子をオン状態に制御する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、起動時のスイッチング周波数を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、第1の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1の実施の形態の電源装置の起動時の各部の波形を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態の電源装置のスイッチング周波数と、出力電圧と、の関係を示す図である。
図4図4は、第2の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
図5図5は、第1及び第2の実施の形態の電源装置の各部の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0017】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【0018】
電源装置1は、入力電圧Vinの供給を直流電源2から受けて、直流の出力電圧Voutを負荷3に出力する。
【0019】
電源装置1は、LLCコンバータ11と、制御回路12と、を含む。
【0020】
LLCコンバータ11は、ブリッジ回路21と、可変容量回路22と、トランス23と、整流回路24と、コンデンサ25と、電圧センサ26と、を含む電流共振コンバータである。
【0021】
実施の形態では、電流共振コンバータの一例としてLLCコンバータを用いたが、本開示はこれに限定されない。本開示は、LLCコンバータ以外の電流共振コンバータにも適用可能である。
【0022】
ブリッジ回路21は、第1アーム31と、第2アーム32と、を含む。実施の形態では、ブリッジ回路21は、フルブリッジ回路としたが、本開示はこれに限定されない。ブリッジ回路21は、例えば、ハーフブリッジ回路であっても良い。
【0023】
第1アーム31は、トランジスタQ1及びQ2を含む。第2アーム32は、トランジスタQ3及びQ4を含む。
【0024】
本開示では、各トランジスタがMOSFETであることとしたが、これに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイスなどでも良い。
【0025】
各トランジスタは、積極的に電流を流すことができる寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する、又は、逆並列にダイオードが接続されている。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。
【0026】
トランジスタQ1のドレインは、第1入力端子21aに電気的に接続されている。第1入力端子21aは、直流電源2の高電位側端子に電気的に接続されている。トランジスタQ1のソースは、第1出力端子21cに電気的に接続されている。トランジスタQ2のドレインは、第1出力端子21c及びトランジスタQ1のソースに電気的に接続されている。トランジスタQ2のソースは、第2入力端子21bに電気的に接続されている。第2入力端子21bは、直流電源2の低電位側端子に電気的に接続されている。
【0027】
トランジスタQ3のドレインは、第1入力端子21aに電気的に接続されている。トランジスタQ3のソースは、第2出力端子21dに電気的に接続されている。トランジスタQ4のドレインは、第2出力端子21d及びトランジスタQ3のソースに電気的に接続されている。トランジスタQ4のソースは、第2入力端子21bに電気的に接続されている。
【0028】
可変容量回路22は、第1コンデンサ41と、第2コンデンサ42と、トランジスタQ5と、を含む。トランジスタQ5は、寄生容量43と、寄生ダイオード44と、を含む。
【0029】
トランジスタQ5が、本開示の「スイッチング素子」の一例に相当する。トランジスタQ5のドレインが、本開示の「第1端子」の一例に相当する。トランジスタQ5のソースが、本開示の「第2端子」の一例に相当する。トランジスタQ5のゲートが、本開示の「制御端子」の一例に相当する。
【0030】
第1コンデンサ41の一端は、第1出力端子21cに電気的に接続されている。第2コンデンサ42の一端は、第1コンデンサ41の一端及び第1出力端子21cに電気的に接続されている。
【0031】
トランジスタQ5のドレインは、第2コンデンサ42の他端に電気的に接続されている。トランジスタQ5のソースは、第1コンデンサ41の他端に電気的に接続されている。
【0032】
トランジスタQ5がオン状態の場合、可変容量回路22の静電容量は、第1コンデンサ41の静電容量と、第2コンデンサ42の静電容量と、の和になる。トランジスタQ5がオフ状態の場合、可変容量回路22の静電容量は、第1コンデンサ41の静電容量と、第2コンデンサ42及び寄生容量43の直列接続の静電容量と、の和になる。
【0033】
(第2コンデンサ42の静電容量)>(第2コンデンサ42及び寄生容量43の直列接続の静電容量)である。つまり、可変容量回路22の静電容量は、トランジスタQ5がオン状態の場合に相対的に大きくなり、トランジスタQ5がオフ状態の場合に相対的に小さくなる。
【0034】
従って、可変容量回路22の静電容量の時間平均は、トランジスタQ5のゲートに入力される第1スイッチング信号S1のデューティが相対的に大きい場合に相対的に大きくなり、第1スイッチング信号S1のデューティが相対的に小さい場合に相対的に小さくなる。
【0035】
第1スイッチング信号S1が、本開示の「スイッチング信号」の一例に相当する。
【0036】
トランス23は、1次巻線23aと、2次巻線23bと、コア23cと、を含む。1次巻線23a及び2次巻線23bは、コア23cに巻回されている。1次巻線23aは、励磁インダクタンス23dを含む。
【0037】
LLCコンバータ11は、ブリッジ回路21とトランス23との間に、インダクタンス23eを含む。インダクタンス23eは、トランス23の漏れインダクタンスでも良い。
【0038】
インダクタンス23eの一端は、第1コンデンサ41の他端及びトランジスタQ5のソースに電気的に接続されている。インダクタンス23eの他端は、1次巻線23aの一端に電気的に接続されている。1次巻線23aの他端は、第2出力端子21dに電気的に接続されている。
【0039】
可変容量回路22、インダクタンス23e及び励磁インダクタンス23dが、LLCコンバータ11の共振経路51を構成する。
【0040】
共振経路51の共振周波数は、次の式(1)で表される。式(1)において、fは共振周波数であり、Lは励磁インダクタンス23d及びインダクタンス23eのインダクタンスであり、Cは可変容量回路22の静電容量である。
【数1】
【0041】
従って、共振経路51の共振周波数は、可変容量回路22の静電容量が相対的に大きい場合に相対的に低くなり、可変容量回路22の静電容量が相対的に小さい場合に相対的に高くなる。
【0042】
つまり、共振経路51の共振周波数は、トランジスタQ5のゲートに入力される第1スイッチング信号S1のデューティが相対的に大きい場合に相対的に低くなり、第1スイッチング信号S1のデューティが相対的に小さい場合に相対的に高くなる。
【0043】
なお、実施の形態では、共振経路51がトランス23の1次側にあることとしたが、本開示はこれに限定されない。共振経路51は、トランス23の2次側にあっても良い。
【0044】
また、実施の形態では、可変容量回路22は、ブリッジ回路21と、インダクタンス23eと、の間に直列に挿入されていることとしたが、本開示はこれに限定されない。可変容量回路22は、例えば、インダクタンス23eと、励磁インダクタンス23dと、の間に直列に挿入されても良い。
【0045】
ブリッジ回路21は、トランジスタQ1及びQ4がオン状態、且つ、トランジスタQ2及びQ3がオフ状態の場合、正方向の直流電圧をトランス23の1次巻線23aに出力する。
【0046】
ブリッジ回路21は、トランジスタQ1及びQ4がオフ状態、且つ、トランジスタQ2及びQ3がオン状態の場合、負方向の直流電圧をトランス23の1次巻線23aに出力する。
【0047】
ブリッジ回路21は、トランジスタQ1からトランジスタQ4までがオフ状態の場合、トランス23の1次巻線23aを開放する。若しくは、トランジスタQ2及びQ3の寄生ダイオードを通じて直流電源2にトランス23の電流が還流される。若しくは、トランジスタQ4及びQ1の寄生ダイオードを通じて直流電源2にトランス23の電流が還流される。
【0048】
整流回路24は、トランス23の2次巻線23bに誘起される電圧を整流して、コンデンサ25に出力する。整流回路24は、ブリッジダイオードが例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0049】
コンデンサ25は、整流回路24で整流された電圧を平滑化する。コンデンサ25の電圧が、出力電圧Voutである。電圧センサ26は、出力電圧Voutを表す信号S21を制御回路12に出力する。
【0050】
制御回路12は、第1制御部61と、第2制御部62と、を含む。制御回路12には、電源装置1の起動時にハイレベルとなり、一定時間(起動時間)経過後にローレベルとなる信号S31が外部から入力される。
【0051】
第1制御部61は、誤差アンプ71と、基準電圧源72と、コンパレータ73と、三角波電圧源74と、ANDゲート回路75と、レベルシフト回路76と、を含む。
【0052】
誤差アンプ71の反転入力端子(-端子)には、信号S21が入力される。誤差アンプ71の非反転入力端子(+端子)には、目標電圧に応じた基準電圧V11が基準電圧源72から入力される。誤差アンプ71は、基準電圧V11と、出力電圧Voutと、の差に応じた電圧V12を、コンパレータ73の非反転入力端子(+端子)に出力する。誤差アンプ71は、正方向及び負方向にリミッタ機能を有する。
【0053】
コンパレータ73の反転入力端子(-端子)には、トランジスタQ1及びQ4、又は、トランジスタQ2及びQ3に同期した三角波電圧V13が三角波電圧源74から入力される。
【0054】
コンパレータ73は、三角波電圧V13が電圧V12よりも高い場合には、ローレベルの信号S11を出力し、電圧V12が三角波電圧V13よりも高い場合には、ハイレベルの信号S11を出力する。
【0055】
コンパレータ73は、出力電圧Voutが相対的に低い場合に信号S11のデューティを相対的に大きくし(可変容量回路22の静電容量大、共振経路51の共振周波数低)、出力電圧Voutが相対的に高い場合に信号S11のデューティを相対的に小さくする(可変容量回路22の静電容量小、共振経路51の共振周波数高)。
【0056】
ANDゲート回路75は、2入力1出力の論理積回路である。ANDゲート回路75の一方の入力端子には、信号S11が入力される。ANDゲート回路75の他方の入力端子には、信号S31が入力される。
【0057】
先述したように、信号S31は、電源装置1の起動時にハイレベルとなり、一定時間(起動時間)経過後にローレベルとなる。従って、ANDゲート回路75は、信号S31がハイレベル(電源装置1の起動時から一定時間内)、且つ、信号S11がハイレベルの場合に、ハイレベルの信号S12を出力し、その他の場合に、ローレベルの信号S12を出力する。
【0058】
レベルシフト回路76は、信号S12をレベルシフトした第1スイッチング信号S1を、トランジスタQ5のゲートに出力する。
【0059】
つまり、第1制御部61は、電源装置1の起動時から一定時間内では、出力電圧Voutに応じて共振経路51の共振周波数を変更し、電源装置1の起動時から一定時間経過した後では、共振経路51の共振周波数を一定にする。
【0060】
第2制御部62には、信号S21及び信号S31が入力される。第2制御部62は、信号S31がハイレベルになった場合、第2スイッチング信号S2をブリッジ回路21に出力し、出力電圧Voutを目標電圧(ソフトスタートさせるための目標電圧)に維持する。なお、第2制御部62は、信号S31がローレベルになっても(電源装置1の起動時から一定時間が経過した後でも)、第2スイッチング信号S2の出力を継続する。
【0061】
図2は、実施の形態の電源装置の起動時の各部の波形を示す図である。スイッチング周波数は定常時より高い周波数で、負荷は無負荷の場合の波形例である。
【0062】
図2(a)は、トランジスタQ5のゲート-ソース間電圧を表す波形101を示す。波形101aは、信号S31がハイレベルになった(電源装置1が起動した)タイミングtでの波形101を拡大したものである。波形101bは、タイミングtの後のタイミングtでの波形101を拡大したものである。波形101cは、タイミングtの後のタイミングtでの波形101を拡大したものである。波形101a、101b及び101cで示すように、トランジスタQ5のデューティは、出力電圧の上昇(時間の経過)とともに、小さくなって行く。
【0063】
図2(b)は、可変容量回路22の静電容量を可変せずに固定(トランジスタQ5をオフに固定)した場合の、可変容量回路22の電圧を表す波形102を示す。この場合、可変容量回路22の電圧の最大値は、タイミングtの直後で152V程度である。
【0064】
図2(c)は、可変容量回路22の静電容量を可変した場合の、可変容量回路22の電圧を表す波形103を示す。この場合、可変容量回路22の電圧の最大値は、タイミングtの直後で98V程度である。
【0065】
従って、電源装置1は、可変容量回路22の静電容量を可変することによって、第1コンデンサ41として低耐圧の部品を選定することが可能となる。
【0066】
図2(d)は、可変容量回路22の静電容量を可変せずに固定した場合の出力電圧Voutを表す波形104、及び、可変容量回路22の静電容量を可変した場合の出力電圧Voutを表す波形105を示す。波形104と波形105とは、タイミングtから立ち上がり、ほぼ重なっている。
【0067】
従って、電源装置1は、可変容量回路22の静電容量を可変せずに固定した場合と比べて、可変容量回路22の静電容量を可変しても、出力電圧Voutの立ち上がり特性がほぼ変わらない。
【0068】
図2(e)は、トランジスタQ1からトランジスタQ4までのゲート-ソース間電圧を表す波形106を示す図である。トランジスタQ1からトランジスタQ4までは、タイミングtからスイッチング動作を開始する。
【0069】
図3は、実施の形態の電源装置のスイッチング周波数と、出力電圧と、の関係を示す図である。出力に負荷抵抗が接続されている場合の特性例である。図3において、横軸は、トランジスタQ1からトランジスタQ4までのスイッチング周波数(kHz)を表し、縦軸は、出力電圧Vout(V)を表す。
【0070】
線111は、可変容量回路22の静電容量を可変せずに固定(トランジスタQ5をオフに固定)した場合の、トランジスタQ1からトランジスタQ4までのスイッチング周波数と、出力電圧Voutと、の関係を示す。
【0071】
トランジスタQ5をオフに固定した場合、可変容量回路22の静電容量は最小となり、共振経路51の共振周波数は最高となる。このため、電源装置1の起動時(出力電圧Voutが0V時)に、スイッチング周波数は、点111aで示すように、100kHzとなる。そして、スイッチング周波数は、出力電圧の上昇に伴って、低くなって行く。
【0072】
線112は、可変容量回路22の静電容量を可変せずに固定(トランジスタQ5をオンに固定)した場合の、トランジスタQ1からトランジスタQ4までのスイッチング周波数と、出力電圧Voutと、の関係を示す。
【0073】
トランジスタQ5をオンに固定した場合、可変容量回路22の静電容量は最大となり、共振経路51の共振周波数は最低となる。このため、電源装置1の起動時(出力電圧Voutが0V時)に、スイッチング周波数は、点112aで示すように、90kHzとなる。そして、スイッチング周波数は、出力電圧の上昇に伴って、低くなって行く。
【0074】
線113は、可変容量回路22の静電容量を可変した場合の、トランジスタQ1からトランジスタQ4までのスイッチング周波数と、出力電圧Voutと、の関係を示す。
【0075】
先に図2(a)の波形101で説明したように、トランジスタQ5のデューティは、タイミングtで最も大きく、時間の経過とともに、小さくなって行く。つまり、可変容量回路22の静電容量は、タイミングtで最も大きく、出力電圧の上昇(時間の経過)とともに、小さくなって行く。
【0076】
このため、可変容量回路22の静電容量を可変した場合、電源装置1の起動時(出力電圧Voutが0V時)に、スイッチング周波数は、トランジスタQ5をオンに固定した場合(点112a参照)と同様に、90kHzとなる。
【0077】
このように、電源装置1は、可変容量回路22の静電容量を可変することによって、スイッチング周波数の最大値を抑制(90kHz)できるので、スイッチング損失を抑制できる。
【0078】
また、電源装置1は、高いスイッチング周波数に対応可能な回路設計が不要となる。
【0079】
点112aから点113aまでは、誤差アンプ71のリミッタ機能が作用していることにより、トランジスタQ5のデューティは最大値に維持されており、線113は線112にほぼ重なっている。
【0080】
点113aから点113bまでは、誤差アンプ71のリミッタ機能が作用しておらず、出力電圧Voutの上昇に伴ってトランジスタQ5のデューティが減少して行き、可変容量回路22の静電容量が小さくなって行く。これにより、線113は、線112から離れて線111に近づいて行く。
【0081】
点113b以降は、誤差アンプ71のリミッタ機能が作用していることにより、トランジスタQ5のデューティが最小値に維持されており、線113は線111にほぼ重なっている。電源装置1は、点113b以降は、共振経路51の共振周波数が高く維持されるので、スイッチング周波数と共振周波数とが離れることを抑制でき、損失を抑制できる。
【0082】
(まとめ)
電源装置1は、起動時に、出力電圧Voutに応じて可変容量回路22の静電容量を可変することにより、可変容量回路22の電圧を抑制できる(図2(c)の波形103参照)。これにより、電源装置1は、第1コンデンサ41として低耐圧の部品を選定することが可能となる。
【0083】
また、電源装置1は、起動時に、出力電圧Voutに応じて可変容量回路22の静電容量を可変することにより、スイッチング周波数の最大値を抑制できる(図3の点112a参照)。これにより、電源装置1は、スイッチング損失を抑制できる。また、電源装置1は、高いスイッチング周波数に対応可能な回路設計が不要となる。
【0084】
また、電源装置1は、点113b(図3参照)以降は、共振経路51の共振周波数が高く維持されるので、スイッチング周波数と共振周波数とが離れることを抑制でき、損失を抑制できる。
【0085】
<第2の実施の形態>
図4は、第2の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【0086】
電源装置1Aは、電源装置1(図1参照)と比較して、LLCコンバータ11に代えて、LLCコンバータ11Aを含む。また、電源装置1Aは、制御回路12に代えて、制御回路12Aを含む。
【0087】
LLCコンバータ11Aは、LLCコンバータ11と比較して、可変容量回路22に代えて、可変容量回路22Aを含む。可変容量回路22Aは、可変容量回路22と比較して、抵抗45を更に含む。抵抗45は、トランジスタQ5の電流を検出するための電流検出抵抗である。なお、可変容量回路22Aは、抵抗45に代えて、電流センサを含むこととしても良い。
【0088】
抵抗45の一端45aは、トランジスタQ5のソースに電気的に接続されている。抵抗45の他端45bは、第1コンデンサ41の他端に電気的に接続されている。
【0089】
トランジスタQ5のドレインの側からソースの側の方向に電流が流れる場合、(抵抗45の一端45aの電位)>(抵抗45の他端45bの電位)となる。トランジスタQ5のソースの側からドレインの側の方向に電流が流れる場合、(抵抗45の一端45aの電位)<(抵抗45の他端45bの電位)となる。
【0090】
制御回路12Aは、制御回路12と比較して、第1制御部61に代えて、第1制御部61Aを含む。
【0091】
第1制御部61Aは、第1制御部61と比較して、コンパレータ77と、電圧源78と、ORゲート回路79と、を更に含む。
【0092】
コンパレータ77の非反転入力端子(+端子)は、抵抗45の他端45bに電気的に接続されている。コンパレータ77の反転入力端子(-端子)は、電圧源78の高電位側端に電気的に接続されている。電圧源78の低電位側端は、抵抗45の一端45aに電気的に接続されている。電圧源78は、電圧V14をコンパレータ77の反転入力端子(-端子)に出力する。
【0093】
コンパレータ77は、抵抗45の他端45bと一端45aとの間の電位差(電圧)が電圧V14以上の場合に、ハイレベルの信号S14を出力する。コンパレータ77は、抵抗45の他端45bと一端45aとの間の電位差が電圧V14未満の場合に、ローレベルの信号S14を出力する。
【0094】
なお、コンパレータ77の反転入力端子(-端子)に電圧V14が入力されることとしたのは、抵抗45に流れる微少な電流(ノイズ電流)によって信号S14が頻繁に反転することを抑制するためである。
【0095】
ORゲート回路79は、2入力1出力の論理和回路である。ORゲート回路79には、レベルシフト回路76から出力される信号S13及びコンパレータ77から出力される信号S14が入力される。ORゲート回路79は、信号S13と信号S14との論理和である第1スイッチング信号S1をトランジスタQ5のゲートに出力する。
【0096】
なお、抵抗45に代えて絶縁タイプの電流センサを用いる場合には、電圧源78の低電位側端は、基準電位に接続できる。そして、ORゲート回路79とレベルシフト回路76との順番を入れ替えることができる。つまり、ORゲート回路79は、信号S12と信号S14との論理和である出力信号をレベルシフト回路76に出力し、レベルシフト回路76は、ORゲート回路79の出力信号の電圧レベルを変換して第1スイッチング信号S1を出力することとしても良い。
【0097】
図5は、第1及び第2の実施の形態の電源装置の各部の波形を示す図である。図5(a)は、第1の実施の形態の電源装置1の各部の波形を示す。図5(b)は、第2の実施の形態の電源装置1Aの各部の波形を示す。
【0098】
線221は、ブリッジ回路21の中の1つのトランジスタ(例えば、トランジスタQ1(図1参照))のゲート信号の波形を示す。
【0099】
線222は、信号S12(図1及び図4参照)の波形を示す。
【0100】
線223は、トランジスタQ5(図1及び図4参照)のドレインの側からソースの側の方向に流れる電流の波形を示す。
【0101】
線224は、トランジスタQ5(図1及び図4参照)のドレイン-ソース間電圧の波形を示す。
【0102】
線225は、信号S14(図4参照)の波形を示す。
【0103】
線226は、第1スイッチング信号S1(図4参照)の波形を示す。
【0104】
図5(a)を参照すると、第1の実施の形態の電源装置1では、タイミングtにおいて、線221で示すように、トランジスタQ1のゲート信号がハイレベルになる。それとともに、線222で示すように、信号S12がハイレベルになり、トランジスタQ5がオン状態になる。従って、線224で示すように、トランジスタQ5のドレイン-ソース間電圧は、ゼロになる。また、線223で示すように、トランジスタQ5のドレインからソースの方向に電流が流れる。
【0105】
次に、タイミングtにおいて、線222で示すように、信号S12がローレベルになり、トランジスタQ5がオフ状態になる。従って、線223で示すように、トランジスタQ5には、電流が流れない。また、線224で示すように、トランジスタQ5のドレイン-ソース間電圧は、上昇し、その後下降する。
【0106】
次に、タイミングtにおいて、線224で示すように、トランジスタQ5のドレイン-ソース間電圧がゼロになる。また、線223で示すように、電流が寄生ダイオード44のアノードからカソードの方向に流れる。この電流により、矢印227で指し示す損失が、寄生ダイオード44で発生する。
【0107】
次に、タイミングtにおいて、線221で示すように、トランジスタQ1のゲート信号がハイレベルになる。それとともに、線222で示すように、信号S12がハイレベルになり、トランジスタQ5がオン状態になる。従って、線224で示すように、トランジスタQ5のドレイン-ソース間電圧は、ゼロになる。また、線223で示すように、トランジスタQ5のドレインからソースの方向に電流が流れる。
【0108】
以上のように、第1の実施の形態の電源装置1では、タイミングtからタイミングtまでの期間で、矢印227で指し示す損失が、寄生ダイオード44で発生する。
【0109】
一方、図5(b)を参照すると、第2の実施の形態の電源装置1Aでは、タイミングtにおいて、信号S12(線222)がハイレベルであるので、線226で示すように、第1スイッチング信号S1がハイレベルになる。これにより、トランジスタQ5がオン状態になる。従って、線224と同様に、トランジスタQ5のドレイン-ソース間電圧は、ゼロになる。また、線223と同様に、トランジスタQ5のドレインからソースの方向に電流が流れる。
【0110】
次に、タイミングtにおいて、信号S12(線222)がローレベルであり、且つ、信号S14(線225)がローレベルであるので、線226で示すように、第1スイッチング信号S1がローレベルになる。従って、線223と同様に、トランジスタQ5には、電流が流れない。また、線224と同様に、トランジスタQ5のドレイン-ソース間電圧は、上昇し、その後下降する。
【0111】
次に、タイミングtにおいて、線224と同様に、トランジスタQ5のドレイン-ソース間電圧がゼロになる。また、線223と同様に、電流が寄生ダイオード44のアノードからカソードの方向に流れる。コンパレータ77は、この電流を検出し、ハイレベルの信号S14を出力する。信号S14がハイレベルになると、ORゲート回路79は、線226で示すように、ハイレベルの第1スイッチング信号S1を出力する。これにより、トランジスタQ5がオン状態になる。従って、線224と同様に、トランジスタQ5のドレイン-ソース間電圧は、ゼロになる。また、電流が、線223と同様に、トランジスタQ5のソースからドレインに向かって流れる。この電流により、矢印227で指し示す損失が、トランジスタQ5のオン抵抗で発生する。
【0112】
(まとめ)
第1の実施の形態の電源装置1では、タイミングtからタイミングtの期間で、電流が、寄生ダイオード44のアノードからカソードへ流れ、損失が、寄生ダイオード44で発生する。
【0113】
一方、第2の実施の形態の電源装置1Aでは、タイミングtからタイミングtの期間で、電流が、トランジスタQ5のソースからドレインへ流れ、損失が、トランジスタQ5のオン抵抗で発生する。
【0114】
トランジスタQ5のオン抵抗での損失は、寄生ダイオード44での損失よりも少ない。従って、電源装置1Aは、電源装置1と比較して、損失を抑制し、効率を向上させることができる。
【0115】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0116】
1、1A 電源装置
2 直流電源
3 負荷
11、11A LLCコンバータ
12、12A 制御回路
21 ブリッジ回路
22、22A 可変容量回路
23 トランス
24 整流回路
25 コンデンサ
26 電圧センサ
31 第1アーム
32 第2アーム
41 第1コンデンサ
42 第2コンデンサ
43 寄生容量
44 寄生ダイオード
61、61A 第1制御部
62 第2制御部
71 誤差アンプ
72 基準電圧源
73、77 コンパレータ
74 三角波電圧源
75 ANDゲート回路
76 レベルシフト回路
78 電圧源
79 ORゲート回路
Q1、Q2、Q3、Q4、Q5 トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5