(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071360
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】酸化ガリウム単結晶成長用粉末およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 29/16 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
C30B29/16
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192557
(22)【出願日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】10-2022-0151628
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516060196
【氏名又は名称】コリア インスティテュート オブ セラミック エンジニアリング アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】Korea Institute of Ceramic Engineering and Technology
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ベ,シ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ソン ミン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ユン ジ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミョン ヒョン
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BB10
4G077CF03
4G077EC02
4G077EC05
(57)【要約】
【課題】本発明の一実施例は、原料-結晶変換率が最大化された酸化ガリウム単結晶成長用粉末およびその製造方法を提供することに目的がある。
【解決手段】本発明は、酸化ガリウム単結晶成長用粉末およびその製造方法に関し、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、酸化ガリウムからなり、かさ密度が0.7g/cm
3以上1.0g/cm
3以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガリウム単結晶成長用粉末であって、酸化ガリウムからなり、かさ密度が0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下である、酸化ガリウム単結晶成長用粉末。
【請求項2】
前記酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、BET比表面積が1.5m2/g以上4.0m2/g以下である、請求項1に記載の酸化ガリウム単結晶成長用粉末。
【請求項3】
前記酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、D50粒子径が20μm以下の酸化ガリウム粒子からなる、請求項1に記載の酸化ガリウム単結晶成長用粉末。
【請求項4】
前記酸化ガリウム粒子の縦横比が、1~1.5である、請求項3に記載の酸化ガリウム単結晶成長用粉末。
【請求項5】
前記酸化ガリウム粒子は、酸化ガリウムである、請求項3に記載の酸化ガリウム単結晶成長用粉末。
【請求項6】
ガリウムを加熱し、気化させる気化段階と、
気化した前記ガリウムを酸化させる酸化段階と、
酸化した酸化ガリウムを冷却し、結晶化する結晶化段階と、
結晶化した前記酸化ガリウムを捕集し、酸化ガリウム粉末を取得する捕集段階と、
捕集した前記酸化ガリウム粉末のかさ密度を0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下とする高密度化段階と、を含む酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法。
【請求項7】
前記高密度化段階は、
前記酸化ガリウム粉末を1,200℃~1,300℃の温度で熱処理する熱処理段階を含む、請求項6に記載の酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理段階は、5時間以上行われる、請求項7に記載の酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法。
【請求項9】
前記酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、BET比表面積が1.5m2/g以上4.0m2/g以下である、請求項6に記載の酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法。
【請求項10】
前記酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、D50粒子径が20μm以下の酸化ガリウム粒子からなる、請求項6に記載の酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ガリウム単結晶成長用粉末およびその製造方法に関し、より詳細には、原料から単結晶への変換効率が最大化された酸化ガリウム単結晶成長用粉末およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ガリウム(Ga2O3)は、バンドキャップが広く、降伏電圧が高いため、次世代の電力素子用素材として脚光を浴びている。特に、最近、電気自動車の普及拡大に伴い、電力素子の需要が高まっており、高性能が要求されるにつれて、酸化ガリウムの需要が急増することが予想される。
【0003】
酸化ガリウム電力素子に関して、酸化ガリウム単結晶基板上に形成され、酸化ガリウム単結晶基板を製造するための単結晶成長技術が多様に研究されている。
【0004】
酸化ガリウム単結晶成長方法のうち、EFG(Edge-defined Film-fed Growth)法は、ルツボに酸化ガリウム粉末を装入し、溶融した後、スリットを介して酸化ガリウム溶融液を上昇させて、酸化ガリウム単結晶を成長させる。EFG法は、単結晶の欠陥制御が容易であり、比較的成長速度が速いため、高品質の板状単結晶を効率的に成長させることができる。
【0005】
大面積の酸化ガリウム単結晶を成長させるためには、ルツボ中に酸化ガリウムの溶融液を最大限多く形成することが重要である。しかしながら、ルツボの体積が限定されているので、ルツボ中に装入しうる酸化ガリウム粉末の量が限定され、装入した酸化ガリウム粉末による溶融液から成長する酸化ガリウム単結晶の量も限定される。
【0006】
特に、酸化ガリウムは、1,800℃以上の高温で溶融するので、優れた耐熱性と耐火性を有するイリジウムルツボが使用されるが、イリジウムは、高価な素材なので、該イリジウムルツボの体積を大きくするには限界がある。
【0007】
なお、ルツボ中に多量の酸化ガリウム単結晶成長用粉末を装入しても、様々な原因によって全ての原料が単結晶に転換されないことがある。
【0008】
これより、制限されたルツボ中で最大限多量の酸化ガリウム単結晶成長用粉末を装入し、同時に、酸化ガリウム単結晶成長用粉末から最大限多量の単結晶を成功裏に成長させることができる技術の開発が要求される。
【0009】
なお、前述した背景技術は、発明者が本発明の創出のために保有していた、又は、本発明の創出過程で習得した技術情報であり、本発明の出願前に一般公衆に公開された公知技術ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一実施例は、原料-結晶変換率が最大化された酸化ガリウム単結晶成長用粉末およびその製造方法を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述のような技術的課題を達成するための技術的手段としての、本発明の一態様によれば、酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、酸化ガリウムからなり、かさ密度が0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下である。
【0013】
本発明の他の一態様によれば、前記酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、BET比表面積が1.5m2/g以上4.0m2/g以下であってもよい。
【0014】
本発明の他の一態様によれば、前記酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、D50粒子径が20μm以下の酸化ガリウム粒子からなってもよい。
【0015】
本発明の他の一態様によれば、前記酸化ガリウム粒子の縦横比が、1~1.5であってもよい。
【0016】
本発明の他の一態様によれば、前記酸化ガリウム粒子は、酸化ガリウムであってもよい。
【0017】
前述のような技術的課題を達成するための技術的手段としての、本発明の他の態様によれば、酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法は、ガリウムを加熱し、気化させる気化段階と、気化した前記ガリウムを酸化させる酸化段階と、酸化した酸化ガリウムを冷却し、結晶化する結晶化段階と、結晶化した前記酸化ガリウムを捕集し、酸化ガリウム粉末を取得する捕集段階と、捕集した前記酸化ガリウム粉末のかさ密度を0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下とする高密度化段階と、を含む。
【0018】
本発明の他の一態様によれば、前記高密度化段階は、前記酸化ガリウム粉末を1,200℃~1,300℃の温度で熱処理する熱処理段階を含んでもよい。
【0019】
本発明の他の一態様によれば、前記熱処理段階は、5時間以上行われ得る。
【0020】
本発明の他の一態様によれば、前記酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、BET比表面積が1.5m2/g以上4.0m2/g以下であってもよい。
【0021】
前記酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、D50粒子径が20μm以下の酸化ガリウム粒子からなってもよい。
【発明の効果】
【0022】
前述した本発明の課題解決手段のうちいずれか1つによれば、限定されたルツボ中に十分な量の酸化ガリウム単結晶成長用粉末を装入することができ、優れた原料-結晶変換率を有する酸化ガリウム単結晶成長用粉末およびその製造方法を提供することができる。
【0023】
また、本発明の課題解決手段のうちいずれか1つによれば、原料-結晶変換率を最大化し、酸化ガリウム単結晶成長用粉末の使用効率を最大化することができ、これによって、酸化ガリウム単結晶の製造コストを削減させることができる。
【0024】
本発明において得ることができる効果は、以上で言及した効果に制限されず、言及していない他の効果は、下記の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法において熱処理前の粉末の粒子形態の特性を比較するための走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図3】
図3は、
図2の実施例1による酸化ガリウム粉末を熱処理した実施例による酸化ガリウム単結晶成長用粉末のSEM写真である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末を用いた酸化ガリウム単結晶成長方法を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、添付の図面を参照して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように本発明の実施例を詳細に説明する。しかしながら、本発明は、様々な異なる形態で具体化することができ、ここで説明する実施例に限定されない。また、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分を省略し、明細書全般において同様の部分に対しては、同様の参照符号を付けた。
【0027】
明細書全般において、任意の部分が他の部分と「連結」されているというとき、これは、「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材または素子を介して「間接的に連結」されている場合をも含む。また、任意の部分がある構成要素を「含む」というとき、これは、特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0028】
以下、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明することとする。
【0029】
本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、酸化ガリウム単結晶インゴット(Ingot)または基板を製造するための原料であり、酸化ガリウム粒子で構成される。
【0030】
酸化ガリウム粒子は、(Alpha)相、(Beta)相、(Gamma)相、(Delta)相または(Epsilon)相で構成されてもよい。好ましくは、酸化ガリウム粒子は、β相であってもよい。
【0031】
酸化ガリウム粒子は、1~10の縦横比を有する。 好ましくは、1~1.5の縦横比を有する。
【0032】
本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、1~1.5の低い縦横比を有する酸化ガリウム粒子で構成されるので、丸い形態で構成され、低い凝集性を有していてもよい。
【0033】
本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、微細粒子で構成されてもよい。具体的には、D50粒子径が20μm以下の微細粒子で構成されてもよい。
【0034】
ここで、Dn粒子径は、粒子の径による面積累積分布のn%箇所における粒子径を意味する。例えば、D50は、粒子の径による面積累積分布の50%箇所における粒子径であり、メディアン(median)粒子径と称される。上述した粒子径は、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象粉末を分散媒中に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置に導入し、粒子がレーザービームを通過するとき、粒子のサイズによる回折パターンの差を測定し、粒度分布を算出する。
【0035】
本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、所定のかさ密度またはBET比表面積を有する。
【0036】
具体的には、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下のかさ密度を有する。
【0037】
また、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、1.5m2/g以上4.0m2/g以下のBET比表面積を有する、
【0038】
本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、上述した範囲のかさ密度またはBET比表面積を有するので、酸化ガリウム単結晶の成長時に優れた原料-結晶変換率を有し、ルツボに充填された量に比べて、多くの酸化ガリウム単結晶を成長させることができる。これに関する詳細な説明は後述する。
【0039】
以下、
図1を参照して本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法を説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0041】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法は、熱気化合成法(Thermal Vaporized Synthesis)によって製造される。
【0042】
具体的には、ガリウムを加熱し、気化(S110)する。
【0043】
まず、固体状のガリウムを反応器内に提供する。この場合、ガリウム金属は、板状または微粒子状で提供することができる。
【0044】
次に、固体状のガリウムが気化するように反応器を加熱する。例えば、1,000℃~1,600℃の温度で反応器を加熱することができる。上述した範囲内で固体状のガリウムが気化し、反応器内に気化したガリウム液滴が浮遊することができる。
【0045】
その後、気化したガリウムを酸化(S120)する。
【0046】
具体的には、反応器内に気化したガリウムを酸化するための酸素(O2)を供給する。酸素は、0.5~70m/secの流量で供給することができる。上述した流量で酸素を供給する場合、気化したガリウムが酸素と反応し、酸化することによって、酸化ガリウムを形成することができる。
【0047】
その後、酸化した酸化ガリウムを冷却し、結晶化(S130)する。
【0048】
酸化ガリウムの冷却は、反応器に連結した移送管で行われ得る。例えば、酸素が反応器内に流入するにつれて反応器内の圧力が上昇し、圧縮した気体が相対的に圧力の低い移送管に流動しつつ、酸化ガリウムが共に移送管に流動することができる。
【0049】
酸化ガリウムは、移送管で、自然冷却方式で急速冷却することができる。酸化ガリウムを急速冷却することにより、迅速な結晶化が行われ、縦横比が1~1.5の丸い粒子状に結晶化することができる。
【0050】
その後、結晶化した酸化ガリウムを捕集し、酸化ガリウム粉末を取得(S140)する。
【0051】
移送管を移動しながら結晶化した酸化ガリウム粒子は、移送管に連結した捕集部で蓄積され、粉末状に取得することができる。この場合、酸化ガリウム粒子を捕集部に捕集できるように、捕集部を低い圧力に維持することができる。
【0052】
捕集部で取得する酸化ガリウム粒子は、200nm以下の微細粒子で構成されてもよい。例えば、酸化ガリウム粒子のD50粒子径は、100~150nmであってもよい。
【0053】
その後、取得した酸化ガリウム粉末のかさ密度を0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下となるように高密度化(S150)する。
【0054】
高密度化過程は、取得した酸化ガリウム粉末が優れた原料-結晶変換率を有するように酸化ガリウムのかさ密度またはBET比表面積を調節する段階を意味し得る。
【0055】
具体的には、取得した酸化ガリウム粉末を熱処理することによって、酸化ガリウム粉末のかさ密度を0.7g/cm3以上1.0g/cm3以下となるように処理することができる。
【0056】
上述した熱処理は、高耐熱性および高耐火性を有する物質からなるルツボに酸化ガリウム粉末を装入した後、加熱する方式で行われ得る。この場合、ルツボは、アルミナからなるルツボであってもよいが、これに限定されるものではなく、高耐熱性および高耐火性を有する材質であれば、特に限定されない。
【0057】
熱処理は、1,200℃~1,300℃の温度で行われ得、加熱時間を含んで5時間以上行われ得る。
【0058】
もし、1,200℃未満の温度で熱処理が行われる場合、かさ密度が0.7g/cm3より低くなることがあり、1,300℃超過の温度で熱処理が行われる場合、かさ密度が1.0g/cm3を超過することがある。なお、かさ密度が0.7g/cm3より低いか、または1.0g/cm3を超える場合、酸化ガリウム粉末から酸化ガリウム単結晶に成長する原料-結晶変換率が低下し得る。これに関する詳細な説明を後述する。
【0059】
なお、上述した熱処理は、常圧で行われ得るが、これに限定されず、高圧で行われることもできる。この場合、酸化ガリウム粉末の全方向から同一に印加される熱間等方圧加圧法(Hot Isostatic Processing;HIP)を用いて印加することができる。
【0060】
上述した熱処理が行われることにより、酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、所定範囲のBET比表面積を有することができる。例えば、熱処理によって1.5m2/g以上4.0m2/g以下のBET比表面積を有する酸化ガリウム単結晶成長用粉末を取得することができる。
【0061】
また、上述した熱処理が行われることにより、酸化ガリウム粒子のサイズが変化することができる。例えば、熱処理後の酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、D50粒子径が20μm以下の粒子で構成されてもよい。しかしながら、熱処理にもかかわらず、酸化ガリウム粒子の縦横比は、1~1.5の割合を維持することができる。
【0062】
上述したように、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、特定のかさ密度、BET比表面積を有する。また、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、1~1.5の丸い形態の酸化ガリウム粒子で構成され、D50粒子径が20μm以下であるという特徴を有する。上述した特徴を有する酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、優れた原料-結晶変換率を有することができる。
【0063】
以下、実験例により本発明を詳細に説明する。
【0064】
ただし、下記実験例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0065】
まず、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末の単結晶変換率を測定するために、下記製造例によって酸化ガリウム単結晶成長用粉末を準備した。
【0066】
<製造例>
【0067】
まず、固体状の金属ガリウムを1,000℃の温度で加熱し、50m/secの流速で空気を注入し、酸化を誘導した後、自然冷却を通じて結晶化を誘導し、実施例1の酸化ガリウム粉末を取得した。
【0068】
なお、上述した実施例1の対照群(比較例)として、市販の中国Lumi-m社の酸化ガリウム粉末を準備した。
【0069】
<実験例1>熱処理前の粒子特性の比較
【0070】
実施例1による酸化ガリウム粉末と比較例による酸化ガリウム粉末の粒子形態の特性を比較するために、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて各粉末を撮影した。
【0071】
図2は、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末の製造方法において熱処理前の粉末の粒子形態の特性を比較するための走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0072】
図2の実施例1を参照すると、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、熱処理前の低い縦横比の丸い微細粒子で構成され、一次粒子が凝集せず、均一に分散していることが分かる。
【0073】
なお、
図2の比較例を参照すると、一般的な酸化ガリウム粉末は、大きい縦横比の針状粒子で構成され、一次粒子が凝集した二次粒子の形態で存在することが分かる。
【0074】
具体的には、比較例の平均粒子径が5.38μmと測定され、実施例1の平均粒子径は、0.67μmと測定され、実施例1の平均粒子径が、比較例に比べて、1/10レベルであることが分かる。また、比較例のメディアン粒子径は、1.81μmと測定され、実施例1のメディアン粒子径は、0.13μmと測定され、メディアン粒子径も、1/10レベルであることが分かる。
【0075】
これは、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末が気化法で製造されたためであると思われ、湿式法で製造された一般的な酸化ガリウム単結晶成長用粉末に比べて、低い縦横比を有し、粒子の凝集が抑制されることが分かる。
【0076】
<実験例2>熱処理後の粒子特性の比較
【0077】
実施例1の酸化ガリウム粉末を下記表1の温度で熱処理することによって、実施例2-2~実施例2-8の酸化ガリウム単結晶成長用粉末を取得した。なお、実施例2-1の酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、熱処理を行わない、すなわち、実施例1の酸化ガリウム単結晶成長用粉末を意味する。
【0078】
熱処理は、アルミナルツボで行われ、5℃/minの速度でルツボの温度を上昇させた後、熱処理温度に到達後、所定の時間維持させた後、自然冷却する方式で行われた。この場合、温度上昇時点から熱処理温度到達後に所定の時間の間温度を維持する総時間は、全て、5時間と同じであった。
【0079】
【0080】
図3は、
図2の実施例1による酸化ガリウム粉末を熱処理した実施例による酸化ガリウム単結晶成長用粉末のSEM写真である。
【0081】
具体的には、
図3は、実施例2-1、実施例2-2、実施例2-3、実施例2-4および実施例2-8の酸化ガリウム単結晶成長用粉末のSEM写真である。
【0082】
図3から明らかなように、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、熱処理前の酸化ガリウム粉末に比べて(実施例2-1)、低い縦横比の特性をほとんど維持することが分かり、熱処理後にも凝集が相当部分抑制されることが分かる。
【0083】
特に、実施例2-2~実施例2-8を参照すると、熱処理が行われたにも関わらず、熱処理前の粒子特性を良好に維持していることが分かる。なお、熱処理温度が上昇するにつれて、粒子のサイズが増加することが分かるが、これは、熱によって一部の粒子の結晶が成長することによって発生したと思われる。
【0084】
なお、実施例2-1~実施例2-8に対して粒子の粒度を測定し、粒度は、Malvern社のparticle size analyzer(PSA) Mastersizer 2000装置を用いて測定した。その結果は、下記表2の通りである。
【0085】
【0086】
前記表2から明らかなように、熱処理温度が増加するにつれて粒子径が全般的に上昇することが分かる。
【0087】
なお、実施例2-4~実施例2-7から明らかなように、1,200℃~1,300℃の温度で熱処理時に、D50粒子径は、11.875μm~19.547μmであることが分かり、熱処理後にも、D50粒子径が20μm以内に維持されることが分かる。
【0088】
<実験例3>原料-結晶変換率の測定
【0089】
本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、特定範囲のかさ密度またはBET比表面積を有し、上述した特徴を有する酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、優れた原料-結晶変換率を有する。
【0090】
本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末のかさ密度またはBET比表面積の特徴と原料-結晶変換率の関係を分析するために、まず、実施例2-1~実施例2-8の粉末のかさ密度およびBET比表面積を測定した。
【0091】
かさ密度は、ルツボに満杯になるように実施例による粉末を充填した後、粉末の充填重量をルツボの内部体積で除することによって算出した。
【0092】
また、BET比表面積は、ASTM D 3663によって測定し、Micrometrics社のTristar II装置を用いて測定した。
【0093】
なお、実施例2-1~実施例2-8の原料-結晶変換率を測定するために、実施例2-1~実施例2-8の粉末を用いて酸化ガリウム単結晶を成長させた。
【0094】
本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、様々な成長方法を用いて単結晶インゴット(または基板)に加工することができる。例えば、チョクラルスキー(Czochralski)、浮遊帯法(Floating zone method)、ブリッジマン法(Bridgman method)、垂直ブリッジマン法(Vertical Bridgman method;VB)、EFG(Edgedefined Film-fed Growth)法など様々な方法が使用できる。
【0095】
本明細書では、一例として、EFG法による酸化ガリウム単結晶の製造方法を
図4を参照して例示的に説明する。しかしながら、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末がEFG法にのみ適用可能なものではなく、上述した様々な単結晶成長方法を用いて単結晶インゴットに加工することができる、
【0096】
図4は、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末を用いた酸化ガリウム単結晶成長方法を説明するための概念図である。
【0097】
図4を参照すると、EFG装置は、酸化ガリウム単結晶成長用粉末を溶融させるための空間を提供するルツボ210と、該ルツボ210を囲むヒーター220と、該ルツボ210の中心部に配置されたモールド231と、該モールド231の内部空間であり、且つルツボ210の内部空間と連通するスリット235と、を含む。
【0098】
ルツボ210は、熱伝導度に優れ、酸化ガリウムの溶融点でも変形または溶融しない高耐熱性素材で構成されてもよく、例えば、イリジウムで構成されてもよい。
【0099】
ヒーター220は、ルツボ210を加熱できる部材であり、例えば、誘導起電力を用いてルツボ210に熱を発生させるコイルで構成されてもよい。しかしながら、これに限定されるものではなく、ヒーター220は、抵抗方式で直接熱を発生させるように構成されてもよい。
【0100】
モールド231は、スリット235の外壁を構成し、スリット235に上昇した酸化ガリウム溶融液Mが漏水したり蒸発しないように適切な厚さで形成することができる。モールド231は、ルツボ210と同じ材質で構成されてもよい。
【0101】
スリット235は、酸化ガリウム溶融液Mを上昇させて、単結晶に成長を誘導し、スリット235の断面形状は、最終成形される酸化ガリウム単結晶インゴットSの断面形状に対応することができる。
【0102】
酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、ルツボ210の内部空間に装入し、ヒーター220によりルツボ210を加熱すると、溶融し、酸化ガリウム溶融液Mを形成することができる。
【0103】
本実験例では、イリジウムルツボを用いて実施例2-1~実施例2-8の酸化ガリウム単結晶成長用粉末150gをそれぞれ1,800℃以上の温度で溶融した。
【0104】
酸化ガリウム溶融液Mは、毛細管力によってルツボ210の内部空間と連通するスリット235に上昇することができる。毛細管力によってスリット235の上端部まで上昇した酸化ガリウム溶融液Mは、単結晶の成長を開始する種結晶と接触し、種結晶が上昇する方向に沿って成長し、酸化ガリウム単結晶インゴットSを形成することができる。
【0105】
本実験例では、β-Ga2O3種結晶を用いてb軸方向に酸化ガリウム単結晶を成長させた。
【0106】
また、実施例2-1~実施例2-8に対して原料-結晶変換率を測定した。単結晶変換率は、下記数式1によって算出した。
【0107】
【0108】
実施例2-1~実施例2-8に対する実験結果は、下記表3の通りである。
【0109】
【0110】
前記表3を参照すると、実施例2-4~実施例2-7の酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、0.7~1.0g/cm3のかさ密度を有し、1.5~4.0m2/gのBET比表面積を有する。
【0111】
実施例2-4~実施例2-7の酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、実施例2-1~実施例2-3および実施例2-8の酸化ガリウム単結晶成長用粉末に比べて、優れた原料-結晶変換率を有することが分かる。すなわち、ルツボに装入した150gの粉末のうち、87%以上の原料が酸化ガリウム単結晶に成長したことが分かる。特に、熱処理しない実施例2-1の酸化ガリウム単結晶成長用粉末に比べて、15%以上原料-結晶変換率が向上したことが分かる。
【0112】
本発明の発明者らは、酸化ガリウム単結晶成長用粉末が特定のかさ密度または特定のBET比表面積を有する場合、粉末の充填率を最大化できると同時に、原料-結晶変換率を最大化することができることを発見した。
【0113】
すなわち、酸化ガリウム単結晶成長用粉末のかさ密度が0.7~1.0g/cm3であり、BET比表面積が1.5~4.0m2/gである場合、ルツボ中に多量の粉末を充填することができると同時に、原料-結晶変換率を最大化することができる。
【0114】
もし、かさ密度が0.7g/cm3未満の場合、ルツボ中に酸化ガリウム単結晶成長用粉末を十分に多量で充填しないことがあり、そのため、原料-結晶変換率が低下し得る。
【0115】
また、かさ密度が1.0g/cm3を超える場合、ルツボ中に酸化ガリウム単結晶成長用粉末を十分に多量で充填することができるが、BET比表面積が低すぎ、酸化ガリウム単結晶成長用粉末が十分に溶融しないことがある。そのため、溶融均一度が低下し得、酸化ガリウム結晶化を妨害することができる。これによって、原料-結晶変換率が低下し得る。
【0116】
なお、本発明の一実施例に係る酸化ガリウム単結晶成長用粉末は、縦横比が1~1.5であることを特徴とし、D50が20μm以下の粒子で構成された特徴を有するので、上述した範囲のかさ密度およびBET比表面積を満足させることができ、これによって、優れた原料-結晶変換率を有することができる。
【0117】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型と説明されている各構成要素は、分散して実施されてもよく、同様に分散したものと説明されている構成要素も、結合された形態で実施されてもよい。
【0118】
本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは、後述する特許請求範囲によって示され、特許請求範囲の意味および範囲並びらその均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。