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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071361
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】包装容器および包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/00 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B65D33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192731
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】P 2022181599
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】井口 依久乃
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和貴
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 幸子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慶太
(72)【発明者】
【氏名】和田 晴希
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB28
3E064BA01
3E064BA21
3E064BB03
3E064BC18
3E064GA04
3E064HM03
3E064HN05
3E064HP02
3E064HP03
(57)【要約】
【課題】展開することにより喫食に適した形状に変形でき、展開後の形状保持性に優れた包装容器を提供する。
【解決手段】包装容器1は、一方向に延びる開封線を形成可能に構成された第一部材10と、第一部材よりも柔軟な第二部材とが、重ねた状態で周縁部を接合することにより形成されている。包装容器1の周縁部において、互いに係合可能な係止部41及び被係止部42が、開封線から等距離の位置に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる開封線を形成可能に構成された第一部材と、前記第一部材よりも柔軟な第二部材とが、重ねた状態で周縁部を接合することにより形成された包装容器であって、
前記周縁部において、互いに係合可能な係止部及び被係止部が、前記開封線から等距離の位置に設けられている、
包装容器。
【請求項2】
前記第一部材は、紙を含む第一基材層を有する、
請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記係止部および被係止部は、前記第一部材を周壁とし、前記第二部材を底面として上部に開口を有する前記包装容器の展開形態において、上側に延びて係合する部位と、下側に延びて係合する部位とを有する、
請求項1に記載の包装容器。
【請求項4】
前記第一部材は平面視矩形であり、
前記係止部および被係止部は、前記第一部材を貫通して前記第一部材の四辺のうち前記開封線と交差する辺に達する切り込みにより形成されている、
請求項1に記載の包装容器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の包装容器と、
前記包装容器内に密閉状態で収容された内容物と、
を備える、
包装体。
【請求項6】
前記第一部材は平面視矩形であり、
前記係止部および被係止部は、前記第一部材の四辺のうち前記開封線と交差する辺の両端部に形成されている、
請求項1に記載の包装容器。
【請求項7】
前記係止部は、
前記第一部材と接続されて一方向に延びる基部と、
前記基部に接続された先端部と、を有し、
前記先端部は、前記基部に向かって突出する部位を有する、
請求項1に記載の包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器、より詳しくは、開封して展開することにより容器としても使用可能な包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
食品を収容する包装容器においては、例えば、自立性を有するパウチ等のように、食器に移し替えずに喫食を可能とすることによって、食器を洗う等の手間を省くことが試みられている。
しかし、パウチ等の場合、内容物を多く入れすぎると開封時に内容物があふれ出やすくなるため、上記のような用途を意図する場合は充填率を抑える必要があり、流通コストがかさみやすい。
【0003】
このような問題に関連して、特許文献1には、可撓部と剛性部とが接合されて構成された包装容器が記載されている。この包装容器は、剛性部を切断して開封し、展開することで、剛性部を周壁とし、上部に開口を有する形状に変形できる。
特許文献1に記載の包装容器は、展開前後で形状が大きく変化するため、充填率を抑える必要性が少ないという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/077194号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らは、特許文献1に係る包装容器には展開後の形状保持性に問題点があることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、展開することにより喫食に適した形状に変形でき、展開後の形状保持性に優れた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、一方向に延びる開封線を形成可能に構成された第一部材と、第一部材よりも柔軟な第二部材とが、重ねた状態で周縁部を接合することにより形成された包装容器である。
この包装容器においては、周縁部において、互いに係合可能な係止部及び被係止部が、開封線から等距離の位置に設けられている。
【0008】
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る包装容器と、包装容器内に密閉状態で収容された内容物とを備える包装体である。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る包装容器は、展開することにより喫食に適した形状に変形でき、展開後の形状保持性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係る包装容器を示す平面図である。
図2】同包装容器の底面図である。
図3図1のI-I線における模式断面図である。
図4】展開中の同包装容器を示す図である。
図5】係止部と被係止部とが係合した状態を示す模式図である。
図6】(a)、(b)は、係止部および被係止部の他の例を示す図である。
図7】(a)、(b)は、実験例に係る係止部および被係止部を示す図である。
図8】本発明の第一実施形態に係る包装容器の展開形態を示す斜視図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る包装容器を示す模式断面図である。
図10】同包装容器を第一部材側から見た図である。
図11】同包装容器の係止部および被係止部を拡大して示す図である。
図12】同包装容器の展開形態における係止部および被係止部を示す図である。
図13】実験例における係止部の形状およびパラメータを示す図である。
図14】同係止部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る包装容器1を示す平面図であり、図2は、包装容器1の底面図である。包装容器1は、シート状の第一部材10とシート状の第二部材20とを接合することにより形成されている。
【0012】
第一部材10は、平面視形状が四角形であり、第二部材20よりも高い剛性を有する。
図3は、図1のI-I線における模式断面図である。本実施形態の第一部材10は、第一基材層11と、第一基材層11上に設けられたヒートシール層12との2層を有する。第一基材層11の材質としては、合成樹脂や紙等を例示できるが、紙や、紙パウダーを含有するプラスチック等を使用すると、包装容器1におけるプラスチックの使用量を削減でき、環境負荷を低減できるため、好ましい。
第一部材の平面視形状は、必ずしも幾何学的な四角形である必要はない。例えば、角が丸まっていたり、四辺に相当する部分が完全な直線でなかったりしても問題ない。
【0013】
第一部材10は、2層構成のものには限られない。例えば、第一基材層11とヒートシール層12との間に耐油層、耐水層、水蒸気や酸素等に対するバリア性を有するバリア層等を設けることにより、収容された内容物の保存性を高めることができる。
【0014】
第二部材20は、合成樹脂で形成されており、第一部材10よりも柔軟に構成されている。図3に示すように、第二部材20は、第二基材層21と、第二基材層21上に設けられたヒートシール層22との2層を有する。第二基材層21の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリアミド(Ny)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を例示できる。
ヒートシール層22は、熱融着によりヒートシール層12と接合できる。一例において、ヒートシール層12および22は、同一の樹脂材料で形成される。
【0015】
第二部材20も、2層構成のものには限られない。例えば、第二基材層21とヒートシール層22との間に上述したバリア層等を設けることにより、内容物の保存性を高めることができる。あるいは、水蒸気や酸素等に対するバリア性を有する材料で第二部材20が形成されてもよい。
【0016】
第一部材10と第二部材20とを、ヒートシール層12とヒートシール層22とが対向するように重ね合わせ、平面視における周縁部を熱融着により接合する。その後、接合された周縁部の範囲内に後述する係止部と被係止部を形成すると、包装容器1が完成する。
【0017】
包装容器1の平面視において、対向する2つの辺の周縁には、それぞれ係止部41と被係止部42が、辺の中央から概ね等距離の位置に設けられている。
本実施形態において、係止部41および被係止部42は、熱融着により一体となった第一部材10および第二部材20を貫通する略半円弧状の切込みにより形成されており、凸となる向きを揃えて設けられている。
【0018】
包装容器1内に食品等の内容物を収容する場合は、周縁部の一部を未接合状態にしておき、工場や店頭において未接合部位から包装容器内に内容物を充填した後、未接合部位を熱融着により封止すると、包装容器1内に内容物が密閉状態で収容された包装体とすることができる。
すなわち、本実施形態に係る包装容器1は、周縁部の一部が未接合状態で流通されてもよい。
【0019】
包装容器1の使用時の動作について説明する。
包装容器を開封する際は、第一部材10の中央部に、一辺と平行に延びる開封線を形成する。本実施形態においては、図2に示すように、第一部材10の第二部材に対向する面に、開封用のテープ30が貼り付けられており、図1に示すように、テープ30の一端が包装容器1の平面視において、第一部材10から突出している。テープ30は、第二部材20のヒートシール層22とも接合されているため、開封前における包装容器の密閉性は保たれているが、ヒートシール層22またはテープ30に対する公知のイージーピール処理等により、第二部材20とテープ30との接合強度は第一部材10とテープ30との接合強度よりも弱くなっている。このため、テープ30は容易に第二部材20から剥離できる。
【0020】
使用者が突出したテープ30の端部を把持して第一部材側に引くと、テープ30は第一部材10を引き裂きながら第二部材20から離間する。その結果、平面視矩形の包装容器の辺と概ね平行に延びる開封線が第一部材10に形成される。第一部材10は、形成された開封線を挟んで並ぶ2つの領域に分けられ、係止部41と被係止部42とは、開封線から概ね等距離の位置にある。
【0021】
開封線を上側にして包装容器1を卓上等の設置面に置き、第一部材10の2つの領域を設置面に対して立ち上がるように展開すると、図4に示すように、開封線の中間部において2つの領域が離間する。さらに、開封線を挟むように位置していた係止部41と被係止部42との2つの組において、それぞれ係止部41と被係止部42とを接近させて図5に示すようにかみ合わせる。
上述した動作により、包装容器1は、第一部材10の2つの領域を周壁とし、第二部材20を底面とした、上部に大きな開口を有する形態(以下、「展開形態」と称する。)に変形する。
内容物が食品である場合、使用者は、展開形態の包装容器1を食器として使用し、内容物を喫食することができる。
【0022】
本実施形態に係る包装容器1は、展開前は内容物が充填されていても平坦な状態を保ちやすく、輸送効率がよい。その一方で、展開形態では上部に大きな開口が形成されるため、充填率を高めにしても開封時や展開時に内容物があふれ出しにくい。
【0023】
発明者らは、展開形態の包装容器1において、周壁として機能する第一部材10が展開前の平坦な状態に戻ろうとし、その結果、容器として十分機能できなくなることがあることを見出した。この現象は、第一部材と第二部材とが、周縁全体にわたり接合されている場合に特に起きやすかった。そして、係止部と被係止部とを係合させることによって第一部材のこのような動作を抑制し、展開形態を安定して持続させることを実現した。
本実施形態の包装容器1においては、係止部41と被係止部42との係合によって、使用者が手で保持しなくても包装容器1の展開形態を長時間持続させることができる。このため、上述した食器としての使用にも好適である。
【0024】
上述した係止部41および被係止部42は、同一の形状どうしが係合する例であるが、係止部と被係止部とが同一形状であることは必須ではない。図6に、係止部および被係止部の他の例を示す。
(a)に示す例では、係止部41Aが切込みにより形成されている一方、被係止部42Aは、第一部材10および第二部材20を貫通する穴となっている。切込みに囲まれた部位を係止部として穴に通すことにより、係止部41Aと被係止部42Aとがしっかりと係合する。
(b)に示す例では、係止部41Bの形状は係止部41Aに近いが、被係止部42Bは、開放された切り欠きとなっている。この構成は、係止部41Aと被係止部42Aとの組よりも係合操作が簡便であり、ブランクの形成時に抜きカスが生じないという利点がある。この例では、ブランクの打ち抜き時に係止部41Bを第一部材の矩形の辺よりも突出させてもよい。このようにすると、係合動作がより簡便となり、係合力を強くすることも容易である。
【0025】
本実施形態の包装容器において、開封線を形成可能とする構成は、上述した態様には限定されない。たとえば、第一部材にミシン目を設ける等により、テープ30を用いずに第一部材の一部を除去可能に構成してもよい。
また、開封時に第一部材が完全に2つに分断されない構成であってもよい。例えば、第一部材において、第二部材と接合されていない部位に切込み等を設け、この切込みからテープ30の端部を突出させたり、ミシン目を接合された平面視周縁部を除く領域のみに設けたりすると、第二部材の2つの領域は、平面視周縁部において接続状態が保持され、完全に分断されない。このような構成であっても、接続部位を折り曲げることにより、展開形態に変形できるため、使用には支障ない。
包装容器1を開封可能とする具体的構造は、収容対象となる内容物に応じて設定される気密性や水密性等に基づいて、適宜決定できる。
【0026】
本実施形態では、テープ30の端部を包装容器の平面視において突出させることで把持しやすくしているが、これは本発明において必須ではない。例えば、テープを平面視において突出しない長さとしつつ、テープの端部を囲み包装容器の周縁に達する一部範囲のみ第一部材と第二部材とを非接合の状態にすることによっても、第一部材と第二部材との間に位置するテープの端部を把持しやすくすることができる。
【0027】
包装容器1の展開時においては、図5に示すように、開封線の中間部において第一部材10が折れ曲がる。この折れ曲がり動作を補助するために、形成される折れ線と平行な罫線をエンボスやレーザー加工等により設けてもよい。罫線は、折れ線が形成されることが想定される想定位置にそって1本設けてもよいし、想定位置を挟むように2本以上設けてもよい。
【0028】
本発明に係る包装容器について、実験例を用いてさらに説明する。本発明の技術的範囲は、実験例の具体的内容のみによって何ら限定されない。
この実験例においては、係止部および被係止部の態様による操作性や機能性の違いを中心に検討した。
【0029】
(実験例1)
第一部材として、耐水紙(坪量200g/m)の一方の面に、12μmのPETフィルムおよび50μmのポリエチレンフィルムが順次ドライラミネーションにより積層された積層体を準備し、長辺200mm×短辺120mmの長方形にカットした。
第一部材の幅方向中央部にミシン目を形成し、長手方向に延びる幅5mmの開封線を形成できるように構成した。
第二部材として、15μmのナイロンフィルムと50μmのポリエチレンフィルムとがドライラミネーションにより積層された積層体を準備し、第一部材と同形同大にカットした。
【0030】
第一部材と第二部材とを、ポリエチレン層を対向させつつ重ねて、平面視における周縁部のうち、長辺の一方を除く三辺を、10mm幅で熱融着により封止した。その後、短辺の熱融着範囲内にトムソン刃を用いて係止部および被係止部を形成した。
係止部及び被係止部の態様として、実施形態で示した係止部41、被係止部42(パターンa)、図6の(a)に示した係止部41A、被係止部42A(パターンb)、および図6の(b)に示した係止部41B、被係止部42B(パターンc)の3種類に加え、図7の(a)に示す係止部41C、被係止部42C(パターンd)、および図7の(b)に示した係止部41D、被係止部42D(パターンe)の2種類を加えた、計5つの態様を準備した。パターンdは、容器の下方に向かって延びる係止部41Cを穴である被係止部42Cに通す態様である。パターンeは、重なった係止部41Dおよび被係止部42Dをいずれかの方向に折り込むことにより係合させる態様である。
【0031】
以上により、実験例1から5に係る充填前の包装容器を、各例につき複数作製した。
各例の包装容器を用いて、容器としての使用性と係止部及び被係止部の性能とについて、以下の手順で検討した。
【0032】
各包装容器の開放された辺から、内容物を充填した後、10mm幅で熱融着により封止した。内容物は、軽量(レタスサラダ80g)、および中等量(チャーハン200g)の2種類準備し、軽量の充填容器と中等量の充填容器をそれぞれの例について作製した。
第一部材を上側にして各例の包装容器をテーブルに置き、ミシン目に沿って開封線を形成した後、展開させつつ係止部と被係止部とを係合させ、展開形態にした。その後、包装容器を観察しながらスプーンやフォークで内容物を喫食した。
【0033】
使用性については、以下の観点で官能的に評価した。
・保形性:喫食している間、包装容器に触れなくても展開形態を維持できるか
・変形容易性:展開形態にスムーズに移行できるか
・把持容易性:包装容器を手で把持しながら喫食することが容易か
・喫食容易性:スプーンによる内部空間へのアクセスが容易か
なお、保形性については、軽量および中等量の充填容器で評価し、他の項目については中等量の充填容器のみ行った。
【0034】
係止部及び被係止部の性能については、以下の観点について評価した。
・操作性:係止部と被係止部とを片手で係合させることができるかを、以下の基準で官能的に評価した。
◎(excellent):片手による一段階の操作で係止部と被係止部とを係合させることができる
〇(good):片手による二段階の操作で係止部と被係止部とを係合させることができる
△(fare):係止部と被係止部との係合に両手での操作が必要
・係合の強さ:中等量の充填容器を展開形態にしてテーブルに置き、係止部と被係止部との係合が自然に解除されるまでの時間を計測した。評価は以下の3段階とした。
◎(excellent):手を触れない状態で係合状態が10秒以上持続する
〇(good):手を触れない状態で係合状態が8秒以上持続する
△(fare):手を触れない状態では8秒以内に係合が解除されるため、手での保持が必要
結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
表1に示すように、すべての実験例において、使用性のすべての項目が良好であり、喫食という目的に鑑みて十分な性能を発揮していた。
係止部および被係止部の性能については、実験例4および5に対して、実験例1、3は、操作性の面で、実験例2は、係合強さの面で、それぞれ優れていた。実験例1では、展開形態において、係止部41が下側に延び、被係止部42が上側に延びて互いに係合している。実験例2および3では、係止部41Aおよび被係止部42Aが、それぞれ、上側に延びて係合する部位と下側に延びて係合する部位の両方を有している。このように係止部と被係止部との係合が2方向において行われることが、十分な係合強さを確保する点で有利であると考えられた。また、係止部及び被係止部がいずれも平面視矩形の第一部材の四辺のうち開封線(あるいは開封線の延長線)と交差する辺に達する切込みで形成されており、穴に通さずに係合させる態様となっていることが、操作性を向上させる点で効果的であると考えられた。また、実験例4、5では、係止部または被係止部を折り曲げる動作が必要であるのに対し、実験例1から3では、係止部及び被係止部が延びる向きを変えることなく両者を係合させることができる点も、操作性に差が生じた要因であると考えられた。
【0037】
本発明の第二実施形態について、図9から図14を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと同様の構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
図9に示す本実施形態の包装容器51は、第二部材20に代えて第二部材20Aを備える。第二部材20Aは、ヒートシール層22に加えてヒートシール層23を有し、第二基材層21の両面にヒートシール層が設けられている。そして、第一部材10側に折り返された第二部材20Aの左右方向端部のヒートシール層23が第一部材10のヒートシール層12と接合されている。
つまり、包装容器51においても。第二部材20Aの周縁が第一部材10に接合されているが、上述したように、開封線と平行に延びる辺における接合態様が第一実施形態とは異なっている。また、この接合態様により、充填のために開放しておく周縁として開封線と平行に延びる辺は使用できず、開封線と直角をなして延びる辺の一方が未接合状態とされる。
【0039】
図10に、包装容器51を第一部材10側から見た状態を示す。包装容器51には、係止部41と被係止部42の組に代えて、係止部141と被係止部142の組が設けられている。係止部141および被係止部142は包装容器51の左右方向端部に近い位置にあり、係止部と被係止部との距離は第一実施形態よりも長くなっている。充填のために開放しておく周縁であっても、係止部および被係止部が設けられた部位においては第一部材と第二部材とを接合しておく必要があるため、このような位置に係止部141および被係止部142を設けることで、充填のために開放しておく部分を広く確保することができ、店頭等での充填作業を簡便にすることができる。
【0040】
図11に、係止部141および被係止部142を拡大して示す。係止部141は、第一部材と接続された基部141aと、基部141aに接続された先端部141bとを有する。基部141aは、一定の幅で包装容器51の上下方向の周縁に向かって延びている。本実施形態の先端部141bは、略三角形であり、その底辺は基部141aの幅よりも長い。先端部141bは、底辺を基部141a側に位置させて頂点の一つを基部141aから最も離れたところに位置させている。基部141aを形成する切り込みは、先端部141bの後端よりも前方に延びている。これにより、先端部141bの後部のうち、切り込みの先端よりも基部141a側にあって基部141aの両側に位置する部位141cは、基部141aに向かって突出しており、基部141aに対して第一部材10の厚さ方向に相対移動できる。
被係止部142は、上述した被係止部42Aと同様の、幅を有する打ち抜きスロットである。被係止部142の長辺の長さW1は、先端部141bの底辺により規定される係止部141の幅W2より長いか、わずかに短い程度であり、先端部141bをそのままあるいは少し変形させて通すことができる。
【0041】
包装容器51の使用時の動作について説明する。
包装容器51を第一実施形態と同様の操作で展開すると、係止部141および被係止部142が周壁の下端部付近に位置する。使用者は、被係止部142が形成された側を手前にし、奥側から係止部141を被係止部142に通し、先端部141bを被係止部142から突出させる。これにより、係止部141と被係止部142とが係合し、包装容器51が展開形態となる。
【0042】
包装容器の展開形態においては、上述したように包装容器51が平坦な状態に戻ろうとする力が働く。この力は、係止部141を被係止部142から引き抜く方向に作用するが、このとき被係止部142側の第一部材10が、図12に示すように、係止部141の部位141cと基部142aとの間の切込みに進入して食い込む。その結果、係止部141が被係止部142から抜けることが防止され、係合状態が良好に維持される。平坦な状態に戻ろうとする力は、周壁の下端部で最も大きくなるため、本実施形態に係る包装容器51では、上述した食い込みがより強くなり、展開形態を安定させることができる。
【0043】
本実施形態に関する発明者らの検討では、係止部の形状により使用性や性能が様々に変化することが見出された。以下、この点について、実験例を用いてさらに説明する。
【0044】
(実験例6~9の準備)
第一部材として、耐水紙(坪量120g/m)の一方の面に、12μmのPETフィルムおよび30μmのポリエチレンフィルムが順次ドライラミネーションにより積層された積層体を準備し、長辺180mm×短辺130mmの長方形にカットした。
幅5mmのPETフィルムの一方の面にイージーピール層を、もう一方の面に第一部材のポリエチレンフィルムと同一材質のポリエチレン層を形成したテープを準備した。これを第一部材の幅方向(包装容器の左右方向)中央部に熱融着により接合し、長手方向に延びる幅5mmの開封線を形成できるように構成した。
第二部材として、15μmのナイロンフィルムの両面に第一部材と同一の30μmのポリエチレンフィルムとがドライラミネーションにより積層された積層体を準備し、長辺180mm×短辺150mmの長方形にカットした。
【0045】
この実験においては、内容物の充填を省略した。
第二部材の長辺を10mm幅で折り返し、折り返した側を第一部材のポリエチレン層側に向けて重ね、平面視における四辺をヒートシールにより10mm幅で接合した。
その後、短辺の両端部付近の熱融着範囲内に、トムソン刃を用いて係止部および被係止部を形成した。係止部の形状は、図13に示すように先端部141bが略五角形のものとし、基部141aの延びる方向における部位141cの長さL1と、基部の141aのうち、先端部141bから突出する部位の長さL2とを変化させた実験例5から8の4つのサンプルを作製した。被係止部は長方形のスロットとし、寸法は各例で共通とした。
【0046】
各例のサンプルについて、テープを引いて第一部材に開封線を形成し、展開させつつ係止部と被係止部とを係合させ、展開形態にした。評価項目は以下の2点とした。
・操作性:係合動作(係止部を被係止部に通す操作)のしやすさ
・形状保持性:展開形態で一定時間放置した際の外観の変化の有無
各例における係止部のパラメータおよび、評価結果について、表2に示す。表2において、○は、良好であったことを示し、△は、○には及ばないが実用上問題ない水準であったことを示す。
【0047】
【表2】
【0048】
表2に示されるように、L1が相対的に短い実験例6および7では、L1が相対的に長い実験例8および9に対して形状保持性が劣っていたが、その保持性は実験例1から5と同程度であり、実用上問題はなかった。これは、実験例8および9において、上述した食い込みが十分に発現したことによると推測された。
また、L2が相対的に短い実験例6および9では、実用上問題はないものの、L2が相対的に長い実験例7および8に対して若干操作性が劣っていた。これは、実験例6および9では、先端部から突出する基部が短いために係止部を立ち上げにくいことが影響していると推測された。
実験例6から9の結果から、本実施形態に係る係止部においては、L1が2mm以上であることが好ましく、L2はL1以上であることが好ましく、2mm以上あることがより好ましいと考えられた。
【0049】
本実施形態に係る係止部および被係止部については、以下のような変更も可能である。
・係止部の形状は、上述したものには限られない。図14に示す係止部141Aは、先端部141bが先細り形状でなく、先端まで同一幅とされた例である。また、係止部141Bは、基部141aを形成する切込みを先端部内に進入させずに部位141cが形成されている例である。これらのような形状の係止部が適用されても、本実施形態に係る包装容器は上述した効果を奏することができる。
・被係止部は、上述した一定幅を有するスロットに代えて、実質的に幅を持たない切込み(スリット)であってもよい。ただし、被係止部がスロットであると、図12に示したように、被係止部142を通過した先端部141bの先端を、もう一度被係止部142を通して反対側に位置させることができる。このようにすると、被係止部側の第一部材と係止部とが平行に近い状態が保たれて抜けにくくなり、展開形態をより安定させやすいという利点がある。
【0050】
第二実施形態で示した係止部および被係止部の位置や形状等の態様、および第一部材と第二部材等の接合態様は、第一実施形態にも適用できる。同様に、第一実施形態で示した係止部および被係止部の位置や形状等の態様を第二実施形態に適用することもできる。
【0051】
本発明の各実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【0052】
・第一部材と第二部材とは、完全に同形同大である必要はない。例えば、第一部材が第二部材より一回り大きくてもよい。この場合、係止部および被係止部を、第二部材が存在しない部位に設けてもよい。
【0053】
・上述した罫線は、開封線の中間部でない場所に設けられてもよい。例えば、図8に示すように、係止部および被係止部が設けられた部位の付近に、上述した罫線L1と反対の方向に折りやすくなる罫線L2を形成すると、周壁において係止部41および被係止部42が設けられた部位が帯状に突出する。このため、突出した部位において重なる2枚の第一部材をまとめて把持することで、展開形態の容器を運搬しやすくなり、かつ運搬時における係止部と被係止部との意図しない係合解除も好適に抑制できる。
【0054】
・包装容器に収容される内容物に特に制限はなく、食品に限らず、多岐にわたる物品の容器に適用できる。内容物の態様にも特に制限はなく、粉体、粒体に加え、第一部材の構成を適宜変更することにより、液体、ゲル状など、あらゆる態様に対応できる。
【0055】
・本発明に係る包装容器は、内容物が収容されない状態で流通されてもよい。このような態様で流通することにより、アウトドアで飲食等に使用する容器としても利用できる。
【0056】
・係止部が基部と先端部とを有する場合、基部は第一部材と先端部とを接続していれば十分機能するため、必ずしも一定幅で延びる必要はない。
【符号の説明】
【0057】
1、51 包装容器
10 第一部材
11 第一基材層
20、20A 第二部材
41、41A、41B、41C、41D、141、141A、141B 係止部
42、42A、42B、42C、42D、142 被係止部
141a 基部
141b 先端部
141c (先端部の)部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14