(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071365
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置
(51)【国際特許分類】
C10G 9/00 20060101AFI20240517BHJP
C10G 1/10 20060101ALI20240517BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20240517BHJP
C08J 11/16 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C10G9/00
C10G1/10 ZAB
C08J11/12
C08J11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193141
(22)【出願日】2023-11-13
(31)【優先権主張番号】10-2022-0151305
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】515215276
【氏名又は名称】エスケー ジオ セントリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ジョ サン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン ス キル
(72)【発明者】
【氏名】ナ イク ファン
(72)【発明者】
【氏名】イ ホ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ジェ フム
(72)【発明者】
【氏名】ムン セ ラ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヒ ヨン
【テーマコード(参考)】
4F401
4H129
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401AA27
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4F401FA07Z
4H129AA03
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4H129DA03
4H129DA04
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4H129KC02Y
4H129KD28Y
4H129NA02
4H129NA04
4H129NA22
4H129NA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廃プラスチック熱分解油の精製方法および装置を提供する。
【解決手段】廃プラスチック熱分解油原料1をロータリーキルン型反応器100に装入し、前記反応器を昇温して、廃プラスチック熱分解油原料を熱処理するステップと、前記ステップの生成物からガス成分2を回収するステップと、回収されたガス成分から高沸点ワックス成分3を分離し、分離された高沸点ワックス成分を前記反応器に再供給するステップと、高沸点ワックス成分が除去されたガス成分から精製油10を回収するステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の精製方法を提供する。また、ロータリーキルン型反応器と、前記反応器からガス成分を受け入れるガス分離器200と、ガス分離器からの軽質ガス成分を受け入れる凝縮器300と、を含み、ガス分離器で分離された高沸点ワックス成分が、前記反応器に再供給されるように構成された再供給ラインを含む精製装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチック熱分解油原料をロータリーキルン型反応器に装入し、前記ロータリーキルン型反応器を昇温して、廃プラスチック熱分解油原料を熱処理する(S1)ステップと、
前記(S1)ステップの生成物からガス成分を回収する(S2)ステップと、
回収された前記ガス成分から高沸点ワックス成分を分離し、分離された前記高沸点ワックス成分を、前記(S1)ステップの前記ロータリーキルン型反応器に再供給する(S3)ステップと、
前記高沸点ワックス成分が除去されたガス成分から精製油を回収する(S4)ステップと、
を含む、廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項2】
前記廃プラスチック熱分解油原料は、ナフサ:10~30重量%、KERO:20~30重量%、LGO:10~30重量%、およびVGO:30~50重量%を含む液状熱分解油である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項3】
前記(S1)ステップは、前記ロータリーキルン型反応器を第3温度に昇温して熱処理する、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項4】
前記第3温度は400~600℃である、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項5】
前記(S1)ステップにおいて、第3温度に昇温時の昇温速度は0.5℃/分~5℃/分である、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項6】
前記(S1)ステップの前に、
前記ロータリーキルン型反応器を第1温度に昇温して、前記廃プラスチック熱分解油原料を第1熱処理する(S1-1)ステップと、
前記ロータリーキルン型反応器を第2温度に昇温して、前記廃プラスチック熱分解油原料を第2熱処理する(S1-2)ステップと、
をさらに含み、前記ロータリーキルン型反応器の温度は、前記ロータリーキルン型反応器を前記第1温度から前記第3温度に順次加熱することによって、上昇する、請求項3に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項7】
前記第1温度は50~150℃である、請求項6に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項8】
前記第2温度は220~300℃である、請求項6に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項9】
前記(S1)ステップにおける熱処理は、添加剤を投入して行われる、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項10】
前記添加剤は、金属酸化物触媒、または活性金属が金属酸化物担体に担持された複合触媒を含む、請求項9に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項11】
前記(S1)ステップの前に、
廃プラスチックを熱分解反応器に装入し、非酸化雰囲気における300~600℃の温度で熱分解して廃プラスチック熱分解油原料を製造する(S0)ステップをさらに含む、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項12】
前記(S0)ステップの前記熱分解反応器は、ロータリーキルン型反応器を含む、請求項11に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項13】
前記(S4)ステップで回収された精製油は、前記(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料に対して塩素含量が50%以上低減されたものである、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項14】
前記(S4)ステップで回収された精製油は、前記(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料に対して窒素、硫黄、および酸素の含量がそれぞれ20%以上低減されたものである、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項15】
前記(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料の軽質留分に対する、前記(S4)ステップで回収された精製油の軽質留分の比率は、重量比で1.3以上である、請求項1に記載の廃プラスチック熱分解油の精製方法。
【請求項16】
廃プラスチック熱分解油原料を受け入れるように構成されたロータリーキルン型反応器と、
前記ロータリーキルン型反応器からのガス成分を受け入れるように構成されたガス分離器と、
前記ガス分離器からの軽質ガス成分を受け入れるように構成された凝縮器と、
前記ガス分離器で分離された高沸点ワックス成分が、前記ロータリーキルン型反応器に再供給されるように構成された再供給ラインと、
を含む、廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項17】
前記ロータリーキルン型反応器は、原料投入口から排出口の方向に第1領域、第2領域、および第3領域を順次含む、請求項16に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【請求項18】
前記ロータリーキルン型反応器は、バッチ式反応器を含む、請求項16に記載の廃プラスチック熱分解油の精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置に関する。
【背景技術】
【0002】
廃プラスチックは、石油を原料として製造されたものであり、リサイクル度が低く、ゴミとして廃棄処分されることが多い。このような廃棄物は、自然状態で分解されるのに長時間がかかるため、土壌を汚染させ、深刻な環境汚染を引き起こす。廃プラスチックをリサイクルするための方法として、廃プラスチックを熱分解して利用可能なオイルに転換させる方法があり、そのオイルを廃プラスチック熱分解油という。
【0003】
しかし、廃プラスチックを熱分解して得られた熱分解油は、一般的な方法で原油から製造されるオイルと比較して塩素、窒素、金属などの不純物含量が高い(多い)ため、ガソリン、ディーゼル油などの高付加価値燃料として直ちに用いることができず、後処理工程を経る必要がある。
【0004】
従来の後処理工程として、廃プラスチック熱分解油を水素化触媒下で水素化処理して塩素、窒素、またはその他の金属不純物を除去する工程が行われているが、この過程で廃プラスチック熱分解油に含まれた高含量の塩素により過剰なHClが生成され、これは装置の腐食および反応異常、製品の性状悪化などの問題を引き起こす。特に前記HClと窒素化合物が反応してアンモニウム塩(NH4Cl)が生成され、アンモニウム塩は反応器の腐食を引き起こして耐久性を低下させるだけでなく、差圧発生、反応器の閉塞、工程効率の低下などの様々な工程的問題を引き起こす。
【0005】
一方、廃プラスチック熱分解油は、様々な沸点および様々な分子量分布を有する炭化水素オイル混合物であり、前記炭化水素混合物の沸点および分子量分布特性に応じて熱分解油中の不純物の組成や反応活性が異なるため、石油化学産業または現場で直ちに用いることができず、沸点別の分離工程または軽質化工程などの高付加価値化工程を行う必要がある。炭化水素オイル混合物の中でもオレフィン、特にエチレン、プロピレンなどの軽質オレフィンは、石油化学産業で広く用いられている。
【0006】
廃プラスチック熱分解油の高付加価値化のための軽質化工程として水素化分解工程が行われているが、廃プラスチック熱分解油には原油、天然ガス、またはナフサ留分などと比較して塩素、窒素、硫黄、酸素、または金属などの不純物が過剰に含まれており、水素化分解過程で前記不純物により反応活性が著しく低下するという問題があり、水素化処理工程とは別に水素化分解工程を別途に行う必要があるため、工程効率が低下するという問題もある。
【0007】
そこで、水素化処理または水素化分解などの後処理工程を用いることなく、熱分解油中の不純物を効果的に除去するとともに熱分解油の軽質化を図ることができる技術が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示の目的は、廃プラスチック熱分解油中の不純物を効果的に低減するとともに熱分解油の高付加価値化が可能な廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置を提供することにある。
【0009】
本開示の他の目的は、反応器を腐食または閉塞させずに安定して実施することができる廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、廃プラスチック熱分解油原料をロータリーキルン型反応器に装入し(charge)、前記ロータリーキルン型反応器を昇温して、廃プラスチック熱分解油原料を熱処理する(S1)ステップと、前記(S1)ステップの生成物からガス成分を回収する(S2)ステップと、前記回収されたガス成分から高沸点ワックス成分を分離し、分離された前記高沸点ワックス成分を、前記(S1)ステップのロータリーキルン型反応器に再供給する(S3)ステップと、前記高沸点ワックス成分が除去されたガス成分から精製油を回収する(S4)ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の精製方法を提供する。
【0011】
前記廃プラスチック熱分解油原料は、ナフサ:10~30重量%、KERO:20~30重量%、LGO:10~30重量%、およびVGO:30~50重量%を含む液状熱分解油であることが好ましい。
【0012】
前記(S1)ステップは、前記ロータリーキルン型反応器を第3温度に昇温して熱処理することが好ましい。
前記第3温度は400~600℃であることが好ましい。
前記(S1)ステップにおいて、第3温度に昇温時の昇温速度は0.5℃/分~5℃/分であることが好ましい。
【0013】
前記(S1)ステップの前に、前記ロータリーキルン型反応器を第1温度に昇温して、前記廃プラスチック熱分解油原料を第1熱処理するステップ(S1-1)と、前記ロータリーキルン型反応器を第2温度に昇温して、前記廃プラスチック熱分解油原料を第2熱処理するステップ(S1-2)と、をさらに含み、前記ロータリーキルン型反応器の温度は、前記ロータリーキルン型反応器を前記第1温度から前記第3温度に順次加熱することによって上昇することが好ましい。
【0014】
前記第1温度は50~150℃であることが好ましい。
前記第2温度は220~300℃であることが好ましい。
前記(S1)ステップにおける熱処理は、添加剤を投入して行われることが好ましい。
前記添加剤は、金属酸化物触媒、または活性金属が金属酸化物担体に担持された複合触媒を含むことが好ましい。
【0015】
前記(S1)ステップの前に、廃プラスチックを熱分解反応器に装入し、非酸化雰囲気における300~600℃の温度で熱分解して廃プラスチック熱分解油原料を製造する(S0)ステップをさらに含むことが好ましい。
前記熱分解反応器は、ロータリーキルン型反応器を含むことが好ましい。
【0016】
(S4)ステップで回収された精製油は、(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料に対して塩素含量が50%以上低減されたものであることが好ましい。
【0017】
(S4)ステップで回収された精製油は、(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料に対して窒素、硫黄、および酸素の含量が20%以上低減されたものであることが好ましい。
【0018】
(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料の軽質留分に対する、(S4)ステップで回収された精製油の軽質留分の比率は、重量比で1.3以上であることが好ましい。
【0019】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油を受け入れるように構成されたロータリーキルン型反応器と、前記ロータリーキルン型反応器からのガス成分を受け入れるように構成されたガス分離器と、前記ガス分離器からの軽質ガス成分を受け入れるように構成された凝縮器と、前記ガス分離器で分離された高沸点ワックス成分が、前記ロータリーキルン型反応器に再供給されるように構成された再供給ラインを含む、廃プラスチック熱分解油の精製装置を提供する。
【0020】
前記ロータリーキルン型反応器は、原料投入口から排出口の方向に第1領域、第2領域、および第3領域を順次含むことが好ましい。
前記ロータリーキルン型反応器は、バッチ式反応器を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置は、廃プラスチック熱分解油中の不純物を効果的に低減することができる。
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置は、廃プラスチック熱分解油の軽質化効率を向上させることができる。
【0022】
本開示に係る廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置は、反応器を腐食または閉塞させずに安定して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態に係る廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置のブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る、ロータリーキルン型反応器100からチャーなどを含む固形成分5を分離し、前記固形成分5を高沸点ワックス成分3とともにロータリーキルン型反応器100に再供給する工程を含む廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置のブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る、熱分解反応器400にて廃プラスチック6を熱分解して廃プラスチック熱分解油原料1を製造する工程を含む廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置のブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る、凝縮器300から回収した精製油10を高沸点ワックス成分3とともにロータリーキルン型反応器100に再供給する工程を含む熱分解油の精製方法および精製装置のブロック図である。
【
図5】
図5(a)は一実施形態に係るロータリーキルン型反応器を示した図であり、
図5(b)は他の一実施形態に係る第1領域、第2領域、および第3領域を含むロータリーキルン型反応器を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書で用いられる技術用語および科学用語において、特に定義しない限り、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有し、下記の説明および添付図面において、本開示の要旨を不要に曖昧にする恐れがある公知の機能および構成に関する説明は省略する。
【0025】
本明細書で用いられる用語の個数は、特に指示しない限り、複数を含むものと解釈されてもよい。
本明細書で用いられる数値範囲は、下限値および上限値とその範囲内での全ての値、定義される範囲の形態と幅から論理的に誘導される増分、そのうち限定された全ての値および互いに異なる形態に限定された数値範囲の上限および下限の全ての可能な組み合わせを含む。本明細書において、特に定義しない限り、実験誤差または値の四捨五入により発生し得る数値範囲外の値も定義された数値範囲に含まれる。
【0026】
本明細書で言及される「含む」は、「備える」、「含有する」、「有する」、「特徴とする」などの表現と等価の意味を有する開放型の記載であって、追加的に列挙されていない要素、材料、または工程を排除するものではない。
【0027】
本明細書で言及される%の単位とは、特に定義しない限り、重量%を意味する。
本明細書で言及されるppm単位とは、特に定義しない限り、質量ppmを意味する。
【0028】
本明細書で言及される沸点とは、特に定義しない限り、1気圧での沸点を意味する。
本明細書で言及される密度とは、特に定義しない限り、1気圧、25℃での密度を意味する。
【0029】
本明細書で言及される高沸点ワックス成分とは、特に定義しない限り、反応過程または移送過程で水に溶解せずに固体状態で存在し得る炭化水素混合物を意味する。
本明細書で言及される不純物とは、特に定義しない限り、塩素不純物、窒素不純物、酸素不純物、または硫黄不純物を含む意味である。
【0030】
廃プラスチックを熱分解して得られた熱分解油は、一般的な方法で原油から製造されるオイルと比較して塩素、窒素、金属などの不純物含量が高い(多い)ため、ガソリン、ディーゼル油などの高付加価値燃料として直ちに用いることができず、後処理工程を経る必要がある。
【0031】
従来の後処理工程として、水素化触媒下で廃プラスチック熱分解油を水素化処理して塩素、窒素、およびその他の金属不純物を除去する工程が行われているが、廃プラスチック熱分解油に含まれた高含量の塩素不純物により過剰なHClが生成され、これは装置の腐食および反応異常、製品の性状悪化などの問題を引き起こす。特に前記HClと窒素化合物が反応してアンモニウム塩(NH4Cl)が生成され、これは反応器の腐食を引き起こして耐久性を低下させるだけでなく、差圧発生、工程効率の低下などの様々な工程的問題を引き起こす。また、廃プラスチック熱分解油の高付加価値化のための軽質化工程として水素化分解工程が行われているが、上述したように、廃プラスチック熱分解油には原油、天然ガス、ナフサ留分などと比較して塩素、窒素、または金属などの不純物が過剰に含まれており、水素化分解過程で前記不純物により反応活性が著しく低下するという問題があり、水素化処理工程とは別に水素化分解工程を別途に行うため、工程効率も低下するという問題がある。
【0032】
そこで、本開示は、廃プラスチック熱分解油原料をロータリーキルン型反応器に装入し、前記ロータリーキルン型反応器を昇温して、廃プラスチック熱分解油原料を熱処理する(S1)ステップと、前記(S1)ステップの生成物からガス成分を回収する(S2)ステップと、前記回収されたガス成分から高沸点ワックス成分を分離し、分離された高沸点ワックス成分を前記(S1)ステップのロータリーキルン型反応器に再供給する(S3)ステップと、前記高沸点ワックス成分が除去されたガス成分から精製油を回収する(S4)ステップと、を含む、廃プラスチック熱分解油の精製方法を提供する。これにより、廃プラスチック熱分解油中の不純物を効果的に除去するとともに軽質化度を向上させて熱分解油の高付加価値化を実現することができ、反応器を腐食または閉塞させずに工程を安定して実施することができる。
【0033】
詳細には、前記(S1)ステップは、廃プラスチック熱分解油原料1をロータリーキルン型反応器100に装入し、前記ロータリーキルン型反応器を昇温して、廃プラスチック熱分解油原料を熱処理するステップであり、この際、前記廃プラスチック熱分解油原料1は、後述する(S0)ステップで廃プラスチックを高温熱分解して生成された液状の炭化水素オイル混合物であってもよい。
【0034】
反応器の下方から加熱しつつ回転させて反応を行うロータリーキルン型反応器100および液状熱分解油の固有の特性を考慮すると、固体成分の廃プラスチックではなく、液状成分の廃プラスチック熱分解油を原料とすることで、不純物の除去効率および軽質化効率が著しく向上する。
【0035】
すなわち、本開示は、固体成分の廃プラスチックを原料とし、それより熱分解油を製造するのではなく、廃プラスチック熱分解油を原料とし、それより精製油10を製造する精製方法に関し、具体的に、不純物の除去および軽質化効率が著しく向上した廃プラスチック熱分解油の精製方法に関する。
【0036】
前記廃プラスチック熱分解油原料1は、炭化水素オイルの他に様々な不純物を含んでもよい。例えば、塩素化合物、窒素化合物、硫黄化合物、酸素化合物、金属化合物などの不純物を含んでもよく、具体的に、窒素500ppm以上、塩素100ppm以上、硫黄30ppm以上、酸素0.7重量%以上、オレフィン20体積%以上、および共役ジオレフィン(Conjugated diolefin)1体積%以上を含んでもよい。
【0037】
前記廃プラスチック熱分解油原料1中に存在する炭化水素オイル混合物は、炭素数8以下および沸点150℃以下のナフサ、炭素数9~17および沸点150~265℃のKERO、炭素数18~20および沸点265~340℃のLGO、および炭素数21以上および沸点340℃以上のVGOが様々な範囲で含まれていてもよい。通常、ナフサまたはKEROなどの軽質留分よりもLGOまたはVGO/ARなどの重質留分が過剰に含まれている。ただし、これは一例にすぎず、前記廃プラスチック熱分解油原料1の組成が必ずしもこれに限定されるものではなく、上記組成の100重量%の範囲内で多様に存在してもよい。
【0038】
一実施形態において、前記廃プラスチック熱分解油原料1は、ナフサ:10~30重量%、KERO:20~30重量%、LGO:10~30重量%、およびVGO:30~50重量%を含む液状熱分解油であることが好ましい。また、前記廃プラスチック熱分解油原料1は、炭素数8以下および沸点150℃以下のナフサ:10~30重量%、炭素数9~17および沸点150~265℃のKERO:20~30重量%、炭素数18~20および沸点265~340℃のLGO:10~30重量%、および炭素数21以上および沸点340℃以上のVGO:30~50重量%を含む液状熱分解油であることがより好ましい。上記組成比を満たす液状熱分解油を用いる場合、不純物の除去効率および軽質化効率が向上して有利である。
【0039】
以下、
図1~
図4を参照して、本開示の廃プラスチック熱分解油の精製方法および精製装置について説明する。
(S1)ステップにおいて、前記廃プラスチック熱分解油原料1をロータリーキルン型反応器100に装入した後に前記ロータリーキルン型反応器を昇温して、廃プラスチック熱分解油原料1を熱処理すると、チャーを含む固形成分5と、ガス成分である熱分解ガスが生成される。前記熱処理により、廃プラスチック熱分解油原料1に含まれた塩素、窒素、硫黄、または酸素などの不純物を除去することができる。
【0040】
一実施形態において、前記(S1)ステップは、前記ロータリーキルン型反応器100を第3温度に昇温して熱処理してもよい。
一実施形態において、前記第3温度は400~600℃である。前記ロータリーキルン型反応器100を第3温度まで昇温して熱処理することで、不純物を除去し、軽質化を行うことができる。好ましくは、前記第3温度は400~550℃、より好ましくは、400~500℃である。また、後述するように、前記(S1)ステップの前に、(S1-1)ステップおよび(S1-2)ステップの熱処理工程をさらに行うことで高沸点ワックス成分3の生成を最小化することができ、前記(S2)~(S4)ステップとの連携時に軽質化効率をさらに向上させることができる。
【0041】
一実施形態において、前記(S1)ステップにおいて、第3温度に昇温時の昇温速度は0.5℃/分~5℃/分である。前記昇温速度で昇温して熱処理する場合、不純物の除去効率および軽質化効率を向上させることができる。好ましくは、前記昇温速度は0.5℃/分~3℃/分であり、より好ましくは、0.5℃/分~2℃/分である。
【0042】
前記(S2)ステップは、前記(S1)ステップの生成物からガス成分を回収するステップであり、具体的に、ロータリーキルン型反応器100の出口で固形成分5とガス成分2がそれぞれ分離され、ガス成分2を回収することができる。
図2に示すように、前記分離された固形成分5は、(S3)ステップで分離された高沸点ワックス成分3とともに、(S1)ステップの反応器100に再供給されて再処理されてもよい。これにより、廃棄物の処理コストを節減して経済性を向上させるとともに工程効率を向上させることができる。
【0043】
前記(S2)ステップで回収されたガス成分2には様々な分子量分布を有する炭化水素オイル混合物が含まれるが、この中には高沸点ワックス成分3も含まれている。前記高沸点ワックス成分3とは、反応過程または移送過程で水に溶解しないかまたは沸点が相対的に高い炭化水素混合物を意味し、例えば、炭素数20以上の高い分子量を有するワックス成分を意味し得る。ただし、これは一例にすぎず、高沸点ワックス成分3の基準は、熱分解油の生産条件または使用環境など、分離して除去しようとする環境に応じて異なり得る。前記高沸点ワックス成分3をそのまま含む状態で精製工程を行って精製油10を回収する場合、反応器100の閉塞または移送上の困難などの問題が発生し得、回収された精製油10中の重質留分の含量が高く(多く)、廃プラスチック熱分解油の高付加価値化を実現するのに困難なことがある。
図1に示すように、前記回収されたガス成分2から高沸点ワックス成分3を分離し、分離された高沸点ワックス成分3を前記(S1)ステップのロータリーキルン型反応器100に再供給する(S3)ステップ、および前記高沸点ワックス成分3が除去されたガス成分4から精製油10を回収する(S4)ステップにより、不純物の除去および軽質化度が向上した精製油10を得ることができ、反応器の閉塞などの工程トラブルの問題を解決することができる。この際、(S3)ステップの高沸点ワックス成分3を分離し、分離された高沸点ワックス成分3を前記ロータリーキルン型反応器100に再供給する工程は、1回以上繰り返し行ってもよい。
【0044】
すなわち、前記(S1)~(S4)ステップを含む一連の過程により、反応器の閉塞などの工程トラブルなしに、不純物が著しく低減されるとともに軽質化度が著しく向上した精製油10を得ることができる。
【0045】
前記(S1)ステップにおいて、ロータリーキルン型反応器100を第3温度に昇温する前に予備熱処理工程を行うことで、不純物の除去効率および軽質化効率をさらに向上させることができる。
【0046】
一実施形態において、前記(S1)ステップの前に、前記ロータリーキルン型反応器100を第1温度に昇温して、前記廃プラスチック熱分解油原料を第1熱処理する(S1-1)ステップと、前記ロータリーキルン型反応器を第2温度に昇温して、前記廃プラスチック熱分解油原料を第2熱処理する(S1-2)ステップと、をさらに含み、前記ロータリーキルン型反応器の温度は、前記ロータリーキルン型反応器を前記第1温度から前記第3温度に順次加熱することによって、上昇することが好ましい。
【0047】
一実施形態において、前記(S1-1)ステップの第1温度は50~150℃であってもよい。詳細には、前記第1温度で、無酸素雰囲気下で20~300分間、第1熱処理を行ってもよい。廃プラスチック熱分解油原料1には、熱分解油の凝集により形成された固形成分または廃プラスチック熱分解過程で溶融していない固形成分などの固形不純物が存在し得る。そこで、前記(S1-1)ステップの第1熱処理工程を行うことで、廃プラスチック熱分解油の均一性および均質性を向上させ、工程効率を向上させることができる。前記第1温度は、好ましくは70~130℃、より好ましくは90~110℃である。
【0048】
前記(S1-2)ステップの第2温度は220~300℃であり、好ましくは、前記第2温度で、且つ、無酸素雰囲気下で120~360分間、第2熱処理を行ってもよい。前記第2温度で、特定の時間維持(holding)する第2熱処理を行うことで、廃プラスチック熱分解油原料1から塩素解離反応などの不純物除去反応を十分に行うことができ、解離した塩素と熱分解したオレフィンの再合成反応を抑制することができる。前記第2温度は、好ましくは230~290℃、より好ましくは240~280℃である。
【0049】
このように、前記(S1)ステップの前に、(S1-1)および(S1-2)ステップの予備熱処理を行うことで、ロータリーキルン型反応器100の多段昇温工程により、塩素、窒素、硫黄、または酸素などの不純物を効果的に除去することができる。また、高沸点ワックス成分3の生成を最小化することができ、前記(S2)~(S4)ステップとの連携時に工程効率をさらに向上させることができる。前記(S1-1)および(S1-2)ステップは、後述する(S0)ステップの後に行ってもよい。
【0050】
一実施形態において、前記(S1-1)、(S1-2)、および(S1)ステップを含む多段昇温工程を行う場合、ロータリーキルン型反応器100の圧力は0.02MPa以下に維持され、好ましくは0.01MPa以下に維持されることができる。
【0051】
前記(S1-1)、(S1-2)、および(S1)ステップを含む多段昇温工程は、様々な態様で行ってもよい。例えば、第1態様として、ロータリーキルン型反応器100全体を昇温して行ってもよい。
図5(a)に示すように、ロータリーキルン型反応器100全体を昇温してもよい。好ましくは、ロータリーキルン型反応器100全体を第1温度に昇温して第1熱処理する(S1-1)ステップ、第2温度に昇温して第2熱処理する(S1-2)ステップ、および第3温度に昇温して熱処理する(S1)ステップを順次行ってもよい。
【0052】
他の一実施形態である第2態様として、ロータリーキルン型反応器100を、その原料投入口から排出口の方向に第1温度~第3温度に順次加熱し、昇温することが好ましい。前記ロータリーキルン型反応器100の温度を、その原料投入口から排出口の方向に第1温度から第3温度に順次加熱し、上昇させることで、反応器内に最適な温度勾配を形成し、圧力上昇および熱分解効率低下の問題を解決することができる。従来、ロータリーキルン型反応器100を用いた熱分解技術の場合、圧力上昇を回避するために排出口側から加熱して反応器を昇温する工程が行われているが、この場合、不均一な加熱により熱分解効率が低下するという問題がある。本開示の前記第2態様の場合、
図5(b)に示すように、前記ロータリーキルン型反応器100の原料投入口から排出口の方向に、バーナ1が位置する第1領域、バーナ2が位置する第2領域、およびバーナ3が位置する第3領域を形成し、第1領域で第1温度に昇温して第1熱処理する(S1-1)ステップ、第2領域で第2温度に昇温して第2熱処理する(S1-2)ステップ、および第3領域で第3温度に昇温して熱処理する(S1)ステップを順次行ってもよい。これにより、最適な温度勾配を形成することができるためさらに有利であり、高沸点ワックス成分3の生成を最小化することで、前記(S2)~(S4)ステップとの連携時に工程効率をさらに向上させることができる。
【0053】
一実施形態において、前記(S1)ステップにおける熱処理は、添加剤を投入して行われてもよい。添加剤を投入して行うことで、不純物の除去効率および軽質化効率をさらに向上させることができる。前記添加剤としては、廃プラスチック熱分解油原料1の熱分解工程に利用可能な公知の添加剤を用いてもよい。
【0054】
一実施形態において、前記添加剤は、金属酸化物触媒または活性金属が金属酸化物担体に担持された複合触媒を含んでもよい。前記金属酸化物触媒は、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カリウム、または酸化ナトリウムなどであってもよい。不純物の除去効率および軽質化効率の面で、活性金属が金属酸化物担体に担持された複合触媒が好ましい。前記活性金属は、銅、モリブデン、タングステン、またはニッケルから選択された少なくとも1つ以上の金属を含んでもよい。前記金属酸化物担体は、上述した金属酸化物触媒を含んでもよい。不純物の除去効率および軽質化効率を考慮すると、銅が酸化カルシウム担体に担持された複合触媒が最も好ましい。
【0055】
一実施形態において、前記(S1)ステップの前に、廃プラスチック6を熱分解反応器400に装入し、300~600℃の温度で、且つ、非酸化雰囲気下で熱分解して廃プラスチック熱分解油原料1を製造する(S0)ステップをさらに含んでもよい。
図3に示すように、前記固体成分の廃プラスチック6を熱分解反応器400に装入し熱分解して廃プラスチック熱分解油原料1を製造してもよく、製造された廃プラスチック熱分解油原料1をロータリーキルン型反応器100に装入して前記(S1)ステップの熱処理工程を行ってもよい。前記廃プラスチックは、生活系プラスチック廃棄物(生活系廃プラスチック)、または産業系プラスチック廃棄物(産業系廃プラスチック)であってもよい。前記生活系廃プラスチックは、PE、PP以外のPVC、PS、PET、PBTなどが混合されたプラスチックであり、好ましくは、PE、PPとともに、PVCを3重量%以上含む混合廃プラスチックである。前記産業系廃プラスチックは、産業界で製造工程中に発生するスクラップや不良品などの産業系廃棄物であり、PE/PPが大半を占める。前記非酸化雰囲気は、廃プラスチックが酸化(燃焼)しない雰囲気であり、前記雰囲気で安定して効率的な熱分解を行うことができる。前記熱分解は、非酸化雰囲気における300~600℃の温度で150分~350分間行ってもよく、上記維持時間を満たす場合、非酸化雰囲気造成の活性化および十分な熱分解を行うことができる。
【0056】
一実施形態において、前記熱分解反応器400は、ロータリーキルン型反応器100を含んでもよい。前記(S0)ステップは、従来公知の熱分解反応器400、例えば、ロータリーキルン型反応器100、オートクレーブ反応器、連続式反応器、オーガー反応器、または流動層反応器などの反応器を用いて行ってもよく、特にロータリーキルン型反応器100を用いて行うことが工程効率の向上の面で有利である。
【0057】
前記(S4)ステップは、前記高沸点ワックス成分3が除去されたガス成分から精製油10を回収するステップであり、高沸点ワックス成分3が除去されたガス成分4を冷却および液化工程により凝縮することで精製油10を回収することができる。具体的に、前記凝縮された成分には、熱分解ガスが液化した油分層とともに、熱処理過程で生成された水蒸気を含む副産物が液化して形成された水分層を含んでもよく、油水分離により最終的に精製油10を得ることができる。前記油水分離により油分層と水分層を分離し、それより油分層(精製油)を直ちに回収するか、または水分層の吸着後に回収することで油分層(精製油)を回収することができる。前記油分層と水分層の効果的な分離のために電場を印加してもよく、電場の印加による静電付着により、油分層と水分層を短時間で分離することができる。また、前記油水分離効率を高めるために添加剤を必要に応じて付加してもよく、前記添加剤としては、当該分野で周知の通常の抗乳化剤であってもよい。一実施形態において、
図4に示すように、前記(S4)ステップで回収された精製油10を(S1)ステップのロータリーキルン型反応器100に再供給して再処理してもよい。これにより、不純物の除去効率および軽質化効果をさらに向上させることができる。前記再供給する工程は、1回以上繰り返し行ってもよい。
【0058】
一実施形態において、前記(S4)ステップで回収された精製油10は、(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料1に対して塩素含量が50%以上低減されたものであってもよい。前記(S1)~(S4)ステップを含む一連の過程により、塩素含量が50%以上低減された精製油10を得ることができる。好ましくは塩素含量が60%以上低減された精製油10を得ることができ、より好ましくは塩素含量が70%以上低減された精製油10を得ることができ、さらに好ましくは90%以下低減された精製油10を得ることができる。
【0059】
一実施形態において、前記(S4)ステップで回収された精製油10は、(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料1に対して窒素、硫黄、および酸素の含量が20%以上低減されたものであってもよい。前記(S1)~(S4)ステップを含む一連の過程により、塩素だけでなく、窒素、硫黄、および酸素の含量が低減された精製油10を得ることができる。好ましくは、窒素、硫黄、および酸素の含量が30%以上低減された精製油10を得ることができ、より好ましくは、窒素、硫黄、および酸素の含量が40%以上低減された精製油10を得ることができ、さらに好ましくは、70%以下低減された精製油10を得ることができる。
【0060】
一実施形態において、前記(S1)ステップの廃プラスチック熱分解油原料1の軽質留分に対する、前記(S4)ステップで回収された精製油10の軽質留分の比率は、重量比で1.3以上であってもよい。通常、廃プラスチック熱分解油原料1にはH-ナフサまたはKEROなどの軽質留分よりもLGOまたはVGO/ARなどの重質留分が過剰に含まれているが、前記(S1)~(S4)ステップを含む一連の過程により、軽質化度が向上した精製油10を得ることができる。廃プラスチック熱分解油原料1の軽質留分に対する精製油10の軽質留分の比率は、重量比で、好ましくは、1.5以上であり、より好ましくは、1.7以上であり、さらに好ましくは、3以下である。
【0061】
また、本開示は、廃プラスチック熱分解油原料1を受け入れるように構成されたロータリーキルン型反応器100と、前記ロータリーキルン型反応器100からのガス成分を受け入れるように構成されたガス分離器200と、前記ガス分離器からの軽質ガス成分4を受け入れるように構成された凝縮器300と、を含み、前記ガス分離器で分離された高沸点ワックス成分3が、前記ロータリーキルン型反応器100に再供給されるように構成された再供給ラインと、を含む、廃プラスチック熱分解油の精製装置を提供する。前記ロータリーキルン型反応器100は、回転しつつ均一に熱を加えるため、熱処理効率が高いという利点がある。上述したように、ロータリーキルン型反応器100に固体成分である廃プラスチックではなく、液状成分である廃プラスチック熱分解油を原料として導入することで、不純物の除去効率および軽質化効率が著しく向上する。
【0062】
一実施形態において、前記ロータリーキルン型反応器100は、原料投入口から排出口の方向に第1領域、第2領域、および第3領域を順次含むことができる。上述したように、前記ロータリーキルン型反応器は、第1領域、第2領域、および第3領域を含んで多段昇温工程を行うことができる。具体的に、第1領域で(S1-1)ステップを、第2領域で(S1-2)ステップを、第3領域で(S1)ステップを行うことができる。この場合、最適な温度勾配を形成することができ、不純物の除去効率および軽質化効率をさらに向上させることができる。他の一実施形態において、ロータリーキルン型反応器100全体を昇温して多段昇温工程を行うことができ、多段昇温工程の具体的な内容は、前記(S1-1)、(S1-2)、および(S1)ステップを含む多段昇温工程に関する段落で上述した。
【0063】
一実施形態において、前記ロータリーキルン型反応器100は、バッチ式反応器を含むことができる。バッチ式反応器は、熱分解中に原料投入の問題が発生した場合に全体工程が中断される連続式反応器の欠点を防止することができ、全体的な工程安定性に優れることができる。非限定的な一例として連続式ロータリーキルン型反応器100も用いることができる。
【0064】
前記ロータリーキルン型反応器100は、ガス分離器200と連結され、ロータリーキルン型反応器100の出口で熱分解生成物中の固形成分5であるチャーまたは炭化物と熱分解ガス成分が分離され、熱分解ガス成分のみがガス分離器200の上段部に流入することができる。
【0065】
ガス分離器200としては、従来公知のガス分離器200を用いることができ、例えば、蒸留方式で設計することができる。ガス分離器200の壁面方向の流れ方向、温度勾配などを調節して熱分解ガス成分から低沸点熱分解ガスと高沸点ワックス成分3を分離することができるが、これは一例にすぎず、従来公知の方式で設計することができる。高沸点ワックス成分3は、ガス分離器200の下段部に排出され、効率的な排出のために、ガス分離器200の下段部に外部冷却手段が設けられることができる。分離された高沸点ワックス成分3は、ガス分離器200の下段部から前記ロータリーキルン型反応器100の入口に連結された再供給ラインを介して、前記ロータリーキルン型反応器100に再供給されることができる。
【0066】
ガス分離器200にて高沸点ワックス成分3が除去された熱分解ガス成分は、凝縮器300にて冷却および液化し、回収タンクにて精製油10を回収することができる。前記凝縮器300は、冷却水が流動する領域を含み、凝縮器300に流入した熱分解ガスは、冷却水により液化して熱分解油に転換されることができる。凝縮器300内に生成された熱分解油が所定の水位まで上昇すると、移送されて回収タンクに貯蔵されることができる。前記回収タンクに回収された液状熱分解油は、油分層と水分層を含むことができ、油水分離器にて油水分離が行われ、液状熱分解油中に油分層と水分層を形成することができる。前記油分層と水分層が分離されると、油分層を直ちに回収するか、または水分層の吸着後に回収することで、塩素が最小化された油分層(精製油)を回収することができる。前記油分層と水分層の効果的に分離するために電場印加装置を設けることができる。前記水分層を排出して吸着する場合、密度プロファイラを用いて密度を検知することで、前記水分層の吸着時に前記油分層がともに吸着するのを防止することができ、水分層のみを効果的に吸着することができる。
【0067】
前記廃プラスチック熱分解油精製装置について以下に説明されていない事項は、上述した廃プラスチック熱分解油の精製方法に記載された内容を参照すればよい。
【0068】
以下、本開示を実施例により詳しく説明するが、これらはより詳しく説明するためのものであり、権利範囲が下記の実施例により限定されるものではない。
【0069】
〔実施例1〕
ロータリーキルン型反応器、ガス分離器、および凝縮器を含む精製装置を介して、廃プラスチック熱分解油の精製工程を行った。ロータリーキルン型反応器に装入される原料は、生活系廃プラスチックを熱分解して製造された液状熱分解油を原料として用いた。
【0070】
先ず、PE、PPとともに、PVCを3重量%以上含む生活系混合プラスチックを250℃の条件で押出し、生活系廃プラスチックペレットを500g製造した。前記生活系廃プラスチックペレットを熱分解反応器に投入した後、非酸化雰囲気で、400℃で250分間熱分解して廃プラスチック熱分解油原料を得た。
【0071】
前記廃プラスチック熱分解油原料に含まれた不純物である塩素、窒素、硫黄、および酸素の含量をICPおよびXRF分析により測定し、塩素含量は564ppm、窒素含量は1083ppm、硫黄含量は105ppm、および酸素含量は0.9重量%と測定された。
【0072】
上記で得られた廃プラスチック熱分解油原料をロータリーキルン型反応器に投入した後、熱処理工程を行って精製油を得た。具体的に、ロータリーキルン型反応器は、1.48度の傾斜角、0.9Nrpmの回転数、0.5%以下の酸素濃度の条件で運転し、0.75℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、熱処理工程を200分間行った。
【0073】
前記熱処理工程生成物から熱分解ガス成分のみを回収してガス分離器に供給した。ガス分離器にて、熱分解ガス成分に含まれた高沸点ワックス成分は、ガス分離器の下段部に分離され、前記分離された高沸点ワックス成分は、ガス分離器の下段部から前記ロータリーキルン型反応器の入口に連結された再供給ラインを介して、前記ロータリーキルン型反応器に1回再供給して熱処理工程を繰り返し行った。
【0074】
最終的に、前記ガス分離器の上部で高沸点ワックス成分が除去された熱分解ガスを回収し、凝縮器を経て、回収タンクにて精製油(廃プラスチック熱分解油)を回収した。
【0075】
〔実施例2〕
実施例1において、前記ロータリーキルン型反応器に添加剤を追加投入して熱処理工程を行ったことを除いては、実施例1と同様の条件で反応を行った。具体的に、前記添加剤としては、サイズ(D50)が48.9μm、BET比表面積が6.4m2/gであり、Cu(活性金属)/CaO(金属酸化物担体)の複合触媒からなる添加剤を用いた。
【0076】
〔実施例3〕
実施例1において、前記ロータリーキルン型反応器の昇温速度を6℃/分とし、500℃まで昇温して200分間熱処理工程を行ったことを除いては、実施例1と同様の条件で反応を行った。
【0077】
〔実施例4〕
実施例1において、前記ロータリーキルン型反応器に多段昇温工程を適用して熱処理工程を行ったことを除いては、実施例1と同様の条件で反応を行った。具体的に、1℃/分の昇温速度で100℃まで昇温した後、50分間維持して第1熱処理工程を行った。その後、0.9℃/分の昇温速度で250℃まで昇温した後、150分間維持して第2熱処理工程を行った。その後、0.75℃/分の昇温速度で500℃まで昇温して200分間、熱処理工程を行った。
【0078】
〔比較例1〕
実施例1において、ロータリーキルン型反応器から生成された熱分解ガスの高沸点ワックス成分の分離および再供給工程を経ず、直ちに凝縮器を介して回収タンクにて精製油を回収したことを除いては、実施例1と同様の条件で反応を行った。
【0079】
〔比較例2〕
実施例1において、ロータリーキルン型反応器に投入される原料として、廃プラスチック熱分解油ではなく、生活系廃プラスチックペレットを適用したことを除いては、実施例1と同様の条件で反応を行った。具体的に、前記実施例1の生活系廃プラスチックペレット500gをロータリーキルン型反応器に投入した後に熱処理工程を行った。ロータリーキルン型反応器は、1.48度の傾斜角、0.9Nrpmの回転数、0.5%以下の酸素濃度の条件で運転し、0.75℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、熱処理工程を200分間行った。前記熱処理工程生成物から熱分解ガス成分のみを回収してガス分離器に供給した。ガス分離器にて、熱分解ガス成分に含まれた高沸点ワックス成分は、ガス分離器の下段部に分離され、前記分離された高沸点ワックス成分は、ガス分離器の下段部から前記ロータリーキルン型反応器の入口に連結された再供給ラインを介して、前記ロータリーキルン型反応器に1回再供給して熱処理工程を繰り返し行った。最終的に、前記ガス分離器の上部で高沸点ワックス成分が除去された熱分解ガスを回収し、凝縮器を経て、回収タンクにて廃プラスチック熱分解油を回収した。
【0080】
〔評価例〕
〔不純物の除去効果〕
原料および得られた精製油それぞれに含まれた塩素、窒素、硫黄、および酸素の含量をICPおよびXRF分析により測定し、不純物の除去効果を評価した。
【0081】
〔軽質化効果〕
ガスクロマトグラフィー法(ASTM D86)により、原料および精製油それぞれに含まれたナフサとKERO成分を定量して合算重量を測定し、軽質化度を評価した。
前記分析結果を下記表1に示した。
【0082】
【0083】
〔結果の解釈〕
前記表1に示すように、本開示に係る実施例1~4は、いずれも廃プラスチック熱分解油原料から不純物である塩素、窒素、硫黄、および酸素が効果的に低減され、軽質留分(ナフサおよびKERO)の含量が増加した精製油を得ることができることを確認することができる。
【0084】
詳細には、実施例2は、ロータリーキルン型反応器に前記Cu/CaO添加剤を追加して熱処理工程を行うことで、不純物である塩素、窒素、硫黄、および酸素の低減効果および軽質化効果に最も優れることを確認することができる。
【0085】
実施例3は、前記ロータリーキルン型反応器の昇温速度を6℃/分として熱処理工程を行うことで、不純物である塩素、窒素、硫黄、および酸素の低減効果および軽質化効果が実施例1に比べてやや低下するが、比較例1および比較例2に比べて優れることを確認することができる。
【0086】
実施例4は、前記ロータリーキルン型反応器に多段昇温工程を適用して熱処理工程を行うことで、実施例1に比べて不純物である塩素、窒素、硫黄、および酸素の低減効果および軽質化効果にさらに優れることを確認することができる。
【0087】
比較例1は、ロータリーキルン型反応器から生成された熱分解ガスの高沸点ワックス成分の分離および再供給工程を行わないため、不純物である塩素、窒素、硫黄、および酸素の低減効果および軽質化効果が著しく低いことを確認することができる。
【0088】
比較例2は、反応原料として廃プラスチック熱分解油ではなく生活系廃プラスチックペレットを適用するため、不純物である塩素、窒素、硫黄、および酸素の低減効果および軽質化効果が著しく低いことを確認することができる。
【0089】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で製造されてもよく、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述された実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的なものではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0090】
1:廃プラスチック熱分解油原料、2:ガス成分、3:高沸点ワックス成分、4:軽質ガス成分、5:固形成分、6:廃プラスチック、10:精製油、100:ロータリーキルン型反応器、200:ガス分離器、300:凝縮器、400:熱分解反応器