(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071374
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】周波数変調と位相シフトを用いたビームステアリング方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20240517BHJP
H01Q 3/26 20060101ALI20240517BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G01S7/02 216
H01Q3/26 Z
H01Q3/36
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193733
(22)【出願日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】10-2022-0151504
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】523430984
【氏名又は名称】コリア アストロノミー アンド スペース サイエンス インスティテュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨ,チウン
【テーマコード(参考)】
5J021
5J070
【Fターム(参考)】
5J021AA05
5J021AA09
5J021AA11
5J021AB01
5J021DB03
5J021FA06
5J021FA13
5J021GA02
5J021GA05
5J070AB17
5J070AD05
5J070AD10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】フェーズドアレイアンテナのグレーティングローブの減少のためのビームステアリング装置を提供する。
【解決手段】複数のアンテナ素子の配列において所定角度回転させることで、信号の受信時に発生するグレーティングローブが互いに重ならないようにする。このために、アンテナ素子に伝達される信号の位相を調整して出力するか、または前記アンテナ素子から信号を受信して位相を調整して出力する複数のフェーズシフタと、ベースバンド(Baseband)波形のIQ信号を生成して前記フェーズシフタに出力するか、または前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する信号プロセッサと、複数の前記アンテナ素子を介して所定のビーム方向に信号が出力されるように複数のアンテナ素子別に出力される信号の時間遅延を行い、複数の前記アンテナ素子を介して所定のビーム方向に信号が受信されるように時間遅延を行う制御部とを含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝達される信号を所定のビーム方向に外部に出力し、外部から受信される信号を受信する複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子にそれぞれ連結され、アンテナ素子に伝達される信号の位相を調整して出力するか、または前記アンテナ素子から信号を受信して位相を調整して出力する複数のフェーズシフタと、
ベースバンド(Baseband)波形のIQ信号を生成して前記フェーズシフタに出力するか、または前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する信号プロセッサと、
所定のビーム方向に信号が出力または受信されるように前記複数のアンテナ素子、前記複数のフェーズシフタ、および前記信号プロセッサを制御する制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記複数のアンテナ素子を介して送信するときに発生するグレーティングローブ(Grating Lobe)と、受信するときに発生するグレーティングローブまたはサイドローブ(Side Lobe)とが互いに重ならないように、送信時の複数のアンテナ素子の配列と受信時の複数のアンテナ素子の配列を互いに異なるように設定する、ビームステアリング装置。
【請求項2】
前記制御部は、
送信時のメインビーム指向角度がθ
0、φ
0であるとき、下記式(1)および式(2)に基づいて送信時に生成されるグレーティングローブの指向角度である複数のθ
pq、φ
pqを算出し、送信可能な可視(visible)領域を特定して第1グレーティングローブチャートを生成し、
送信時の複数のアンテナ素子の配列を中心から所定の角度別に回転させ、前記所定の角度別にメインビーム指向角度であるθ
0、φ
0に対して受信される複数のグレーティングローブ指向角度であるθ
pq、φ
pqを下記式(1)および式(2)に基づいて算出し、受信可能な可視(visible)領域を特定して第2グレーティングローブチャートを生成し、
前記第1グレーティングローブチャートの可視領域での各グレーティングローブと、第2グレーティングローブチャートの可視領域での各グレーティングローブとの相対距離が最も離れる角度を算出する、請求項1に記載のビームステアリング装置。
(ここで、p、q=-n、-(n-1)、...、-1、0、1、...、n(nは自然数)(ただし、p=0 & q=0はメインビームであるので除外)であり、dxはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のx軸間隔(x軸アンテナ素子間隔)であり、dyはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のy軸間隔(y軸アンテナ素子間隔)であり、λはビーム波長である。)
【請求項3】
前記複数のアンテナ素子の配列は、
送信および受信時の両方とも四角配列(rectangular array)または三角配列(triangular array)であるか、または
送信および受信時のいずれか一方が四角配列であり、いずれか他方が三角配列である、請求項2に記載のビームステアリング装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1グレーティングローブチャートおよび第2グレーティングローブチャートを生成するとき、
指向可能な全てのメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して複数のグレーティングローブ指向角度(θpq、φpq)を算出し、可視領域でのグレーティングローブ間の相対距離を算出する、請求項3に記載のビームステアリング装置。
【請求項5】
前記制御部は、
算出された送信時に出力するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)と、受信時に受信するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して、複数のフェーズシフタを介した位相シフトおよび前記信号プロセッサの周波数変調により時間遅延を行う、請求項4に記載のビームステアリング装置。
【請求項6】
前記信号プロセッサは、
前記IQ信号を生成して前記フェーズシフタに伝達する送信部と、
前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する受信部と、を含み、
前記送信部は、
前記IQ信号を生成するIQ信号生成部と、
前記制御部の制御に応じて前記IQ信号の周波数を変調させるための変調信号を生成する変調信号生成部と、
キャリア信号を生成するキャリア信号生成部と、
前記制御部の制御に応じて受信した前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを組み合わせて周波数変調を行う周波数変調部と、を含む、請求項5に記載のビームステアリング装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記周波数変調部が前記IQ信号と前記変調信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、
前記周波数変調部が前記IQ信号と変更して生成されたキャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、および
前記周波数変調部が正弦波関数(Sinusoidal Function)が乗算された前記IQ信号と前記キャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うこと
のうち少なくとも1つにより周波数変調を行う、請求項6に記載のビームステアリング装置。
【請求項8】
伝達される信号を所定のビーム方向に外部に出力し、外部から受信される信号を受信する複数のアンテナ素子と、
前記複数のアンテナ素子にそれぞれ連結され、アンテナ素子に伝達される信号の位相を調整して出力するか、または前記アンテナ素子から信号を受信して位相を調整して出力する複数のフェーズシフタと、
ベースバンド(Baseband)波形のIQ信号を生成して前記フェーズシフタに出力するか、または前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する信号プロセッサと、
所定のビーム方向に信号が出力または受信されるように前記複数のアンテナ素子、前記複数のフェーズシフタ、および前記信号プロセッサを制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、
前記複数のアンテナ素子を介して送信するときに発生するグレーティングローブ(Grating Lobe)と、受信するときに発生するグレーティングローブとが互いに重ならないように、送信時に出力するメインローブ(Main Lobe)のビーム指向方向と受信時のメインローブのビーム指向方向を互いに異なるように設定する、ビームステアリング装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記複数のアンテナ素子が四角配列(rectangular array)である場合、
送信時には、出力するメインローブのビーム指向角度がθ
0、φ
0であるとき、生成される複数のグレーティングローブ指向角度(θ
pq、φ
pq)をグレーティングローブチャート上に表示し、前記グレーティングローブチャート上に表示されたグレーティングローブのうち特定のグレーティングローブ位置(p、q)を選択し、最終的に出力するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出し、
受信時には、送信時の前記グレーティングローブ位置(p、q)とグレーティングローブチャートの原点を基準として対向するグレーティングローブ位置(-p、-q)を選択し、最終的に受信するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出する、請求項8に記載のビームステアリング装置。
(ここで、p、q=-n、-(n-1)、...、-1、0、1、...、n(nは自然数)(ただし、p=0 & q=0はメインビームであるので除外)であり、dxはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のx軸間隔(x軸アンテナ素子間隔)であり、dyはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のy軸間隔(y軸アンテナ素子間隔)であり、λはビーム波長である。)
【請求項10】
前記制御部は、
算出された送信時に出力するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)と、受信時に受信するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して、複数のフェーズシフタを介した位相シフトおよび前記信号プロセッサの周波数変調により時間遅延を行う、請求項9に記載のビームステアリング装置。
【請求項11】
前記制御部は、
前記複数のアンテナ素子が三角配列(triangular array)である場合、
送信時には、出力するメインローブのビーム指向角度がθ
0、φ
0であるとき、生成される複数のグレーティングローブ指向角度(θ
pq、φ
pq)をグレーティングローブチャート上に表示し、前記グレーティングローブチャート上に表示されたグレーティングローブのうち特定のグレーティングローブ位置(p、q(ここで、pおよびqのいずれか1つは0))を選択し、最終的に出力するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出し、
受信時には、送信時の前記グレーティングローブ位置とグレーティングローブチャートの原点を基準として対向するグレーティングローブ位置(-p、-q(ここで、pおよびqのいずれか1つは0))を選択し、最終的に受信するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出する、請求項8に記載のビームステアリング装置。
(ここで、p、q=-n、-(n-1)、...、-1、0、1、...、n(nは自然数)(ただし、p=0 & q=0はメインビームであるので除外)であり、dxはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のx軸間隔(x軸アンテナ素子間隔)であり、dyはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のy軸間隔(y軸アンテナ素子間隔)であり、λはビーム波長である。)
【請求項12】
前記制御部は、
算出された送信時に出力するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)と、受信時に受信するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して、複数のフェーズシフタを介した位相シフトおよび前記信号プロセッサの周波数変調により時間遅延を行う、請求項11に記載のビームステアリング装置。
【請求項13】
前記信号プロセッサは、
前記IQ信号を生成して前記フェーズシフタに伝達する送信部と、
前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する受信部と、を含み、
前記送信部は、
前記IQ信号を生成するIQ信号生成部と、
前記制御部の制御に応じて前記IQ信号の周波数を変調させるための変調信号を生成する変調信号生成部と、
キャリア信号を生成するキャリア信号生成部と、
前記制御部の制御に応じて受信した前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを組み合わせて周波数変調を行う周波数変調部と、を含む、請求項12に記載のビームステアリング装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記周波数変調部が前記IQ信号と前記変調信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、
前記周波数変調部が前記IQ信号と変更して生成されたキャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、および
前記周波数変調部が正弦波関数(Sinusoidal Function)が乗算された前記IQ信号と前記キャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うこと
のうち少なくとも1つにより周波数変調を行う、請求項13に記載のビームステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数変調と位相シフトを用いたビームステアリング方法および装置に関し、より詳細には、ビームステアリング装置を介して信号を受信するとき、複数のアンテナ素子の配列において所定角度回転させることで、信号の受信時に発生するグレーティングローブが互いに重ならないようにする、周波数変調と位相シフトを用いたビームステアリング方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズドアレイアンテナは、複数のアンテナ素子を一次元または空間上に配列した後、各素子の位相を調節するフェーズシフタを介して各素子の位相を電気的に制御すると、合成されたビームの方向を迅速に制御できるようになる原理を利用したものであり、ビームを指向するに際して機械的駆動に関係なくアンテナアレイの位相を制御することで、信頼性が高く、迅速かつ正確な指向が可能になるなどの様々な利点がある。
【0003】
このような利点により、戦闘機や艦船に搭載されたレーダビームの指向速度を改善するほか、近年、航空機や衛星搭載合成開口レーダ(SAR)の送受信アンテナ、移動通信の中継技術など、その活用範囲が次第に拡大している。
【0004】
図1は、従来のフェーズドアレイアンテナの概略的な構成図を示す。
図1に示すように、従来のフェーズドアレイアンテナは、M個のアンテナ素子1と、アンテナ素子1それぞれに入力される信号の位相を調整するフェーズシフタ2と、前記フェーズシフタ2に伝達するベースバンド(Baseband)形態のIQ信号を生成および周波数をUp-convertingする送信器3と、前記送信器3およびフェーズシフタ2を制御して目的とする方向にビームが出力されるようにする制御器4と、を含む。
【0005】
なお、アンテナ素子1が外部信号を受信することができ、受信される信号をフェーズシフタ2が受信し、制御器4の制御に応じて位相を調整し、調整された信号が受信器(図面に表示せず)に受信され、IQ信号が抽出される。
【0006】
このようなフェーズドアレイアンテナを用いたビームステアリング装置において、仮に複数のアンテナ素子1が二次元平面上に配列される場合、フェーズドアレイアンテナのアレイ要素は、下記のように表すことができる。
【0007】
【0008】
図2は、一般的なビームパターンの例を示す図であり、
図3は、d/λによるビームパターンの例を示す図である。
図面を参照すると、
図2の(a)および(b)は、ビームパターン、すなわち、アンテナ指向性(Directivity)を示す図であり、(a)の場合は、正常なビームパターンとして、グレーティングローブ(Grating Lobe)6なしにメインローブ(Main Lobe)5だけが形成されたビームパターンであり、(b)の場合は、グレーティングローブ6がメインローブ5の両側に形成された不良なビームパターンを示す図である。
【0009】
このようにビームパターンにグレーティングローブ6が発生すると、所望しない方向にステアリングビームが出力され、目的とする方向に出力されるべきステアリングビームのゲインが低下し、所望しない方向にビームが放射される問題が発生する。
【0010】
【0011】
さらに、
図3の(a)の場合、d/λ=0.5である場合とd/λ=0.7である場合のビームパターンであり、d/λ=0.5の場合は、グレーティングローブ6が発生せず、30°にメインローブ5が存在するが、d/λ=0.7の場合は、30°のメインローブ5のほか、約-70°にグレーティングローブ6が存在するビームパターンを有する。
【0012】
さらに、
図3の(b)のようにd/λ=1.5である場合、ビームステアリングを行わなくても、約40°および-40°にグレーティングローブ6を有することになる。
【0013】
それだけでなく、広帯域信号を用いるフェーズドアレイアンテナは、ビームステアリング角が大きくなるにつれ、ステアリングビームのゲインが低下し、ビーム幅が広くなる問題が発生する。
【0014】
さらに、グレーティングローブの発生リスクによりフェーズドアレイアンテナ素子の大きさが制限され、このため、アンテナ素子の面積が大きくなるほど、アンテナゲインが大きくなり、メインローブのビーム幅も狭くなり得る利点を生かすことができなくなる。
【0015】
したがって、アンテナ素子の大きさを増大させてもグレーティングローブが発生しないようにすると、送信電力を増加させなくてもより遠くまで信号を送受信することができるため、グレーティングローブの発生を制限できるビームステアリング装置の開発が切実に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】韓国登録実用新案第20-0406784号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ビームステアリング装置を介して信号を受信するとき、複数のアンテナ素子の配列において所定角度回転させることで、信号の受信時に発生するグレーティングローブが互いに重ならないようにする、周波数変調と位相シフトを用いたビームステアリング方法および装置を提供することにその目的がある。
【0018】
さらに、本発明の他の目的は、グレーティングローブ間の相対距離が最も離れる回転角度を算出することで、グレーティングローブの発生による影響を最小化することができる、周波数変調と位相シフトを用いたビームステアリング方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記の課題を解決するために以下のような特徴を有する。
本発明は、伝達される信号を所定のビーム方向に外部に出力し、外部から受信される信号を受信する複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子にそれぞれ連結され、アンテナ素子に伝達される信号の位相を調整して出力するか、または前記アンテナ素子から信号を受信して位相を調整して出力する複数のフェーズシフタと、ベースバンド(Baseband)波形のIQ信号を生成して前記フェーズシフタに出力するか、または前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する信号プロセッサと、所定のビーム方向に信号が出力または受信されるように前記複数のアンテナ素子、前記複数のフェーズシフタ、および前記信号プロセッサを制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記複数のアンテナ素子を介して送信するときに発生するグレーティングローブ(Grating Lobe)と、受信するときに発生するグレーティングローブまたはサイドローブ(Side Lobe)とが互いに重ならないように、送信時の複数のアンテナ素子の配列と受信時の複数のアンテナ素子の配列を互いに異なるように設定する。
【0020】
ここで、前記制御部は、送信時のメインビーム指向角度がθ0、φ0であるとき、下記式(1)および式(2)に基づいて送信時に生成されるグレーティングローブの指向角度である複数のθpq、φpqを算出し、送信可能な可視(visible)領域を特定して第1グレーティングローブチャートを生成し、送信時の複数のアンテナ素子の配列を中心から所定の角度別に回転させ、前記所定の角度別にメインビーム指向角度であるθ0、φ0に対して受信される複数のグレーティングローブ指向角度であるθpq、φpqを下記式(1)および式(2)に基づいて算出し、受信可能な可視(visible)領域を特定して第2グレーティングローブチャートを生成し、前記第1グレーティングローブチャートの可視領域での各グレーティングローブと、第2グレーティングローブチャートの可視領域での各グレーティングローブとの相対距離が最も離れる角度を算出する。
【0021】
【0022】
(ここで、p、q=-n、-(n-1)、...、-1、0、1、...、n(nは自然数)(ただし、p=0 & q=0はメインビームであるので除外)であり、dxはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のx軸間隔(x軸アンテナ素子間隔)であり、dyはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のy軸間隔(y軸アンテナ素子間隔)であり、λはビーム波長である。)
【0023】
また、前記複数のアンテナ素子の配列は、送信および受信時の両方とも四角配列(rectangular array)または三角配列(triangular array)であるか、または送信および受信時のいずれか一方が四角配列であり、いずれか他方が三角配列である。
【0024】
さらに、前記制御部は、前記第1グレーティングローブチャートおよび第2グレーティングローブチャートを生成するとき、指向可能な全てのメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して複数のグレーティングローブ指向角度(θpq、φpq)を算出し、可視領域でのグレーティングローブ間の相対距離を算出する。
【0025】
また、前記制御部は、算出された送信時に出力するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)と、受信時に受信するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して、複数のフェーズシフタを介した位相シフトおよび前記信号プロセッサの周波数変調により時間遅延を行う。
【0026】
さらに、前記信号プロセッサは、前記IQ信号を生成して前記フェーズシフタに伝達する送信部と、前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する受信部と、を含み、前記送信部は、前記IQ信号を生成するIQ信号生成部と、前記制御部の制御に応じて前記IQ信号の周波数を変調させるための変調信号を生成する変調信号生成部と、キャリア信号を生成するキャリア信号生成部と、前記制御部の制御に応じて受信した前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを組み合わせて周波数変調を行う周波数変調部と、を含む。
【0027】
また、前記制御部は、前記周波数変調部が前記IQ信号と前記変調信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、前記周波数変調部が前記IQ信号と変更して生成されたキャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、および前記周波数変調部が正弦波関数(Sinusoidal Function)が乗算された前記IQ信号と前記キャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うことのうち少なくとも1つにより周波数変調を行う。
【0028】
一方、本発明の他の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナのビームステアリング装置は、伝達される信号を所定のビーム方向に外部に出力し、外部から受信される信号を受信する複数のアンテナ素子と、前記複数のアンテナ素子にそれぞれ連結され、アンテナ素子に伝達される信号の位相を調整して出力するか、または前記アンテナ素子から信号を受信して位相を調整して出力する複数のフェーズシフタと、ベースバンド(Baseband)波形のIQ信号を生成して前記フェーズシフタに出力するか、または前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する信号プロセッサと、所定のビーム方向に信号が出力または受信されるように前記複数のアンテナ素子、前記複数のフェーズシフタ、および前記信号プロセッサを制御する制御部と、を含み、前記制御部は、前記複数のアンテナ素子を介して送信するときに発生するグレーティングローブ(Grating Lobe)と、受信するときに発生するグレーティングローブとが互いに重ならないように、送信時に出力するメインローブ(Main Lobe)のビーム指向方向と受信時のメインローブのビーム指向方向を物理的回転により互いに異なるように設定する。
【0029】
ここで、前記制御部は、前記複数のアンテナ素子が四角配列(rectangular array)である場合、送信時には、出力するメインローブのビーム指向角度がθ0、φ0であるとき、生成される複数のグレーティングローブ指向角度(θpq、φpq)をグレーティングローブチャート上に表示し、前記グレーティングローブチャート上に表示されたグレーティングローブのうち特定のグレーティングローブ位置(p、q)を選択し、最終的に出力するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出し、受信時には、送信時の前記グレーティングローブ位置(p、q)とグレーティングローブチャートの原点を基準として対向するグレーティングローブ位置(-p、-q)を選択し、最終的に受信するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出する。
【0030】
【0031】
(ここで、p、q=-n、-(n-1)、...、-1、0、1、...、n(nは自然数)(ただし、p=0 & q=0はメインビームであるので除外)であり、dxはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のx軸間隔(x軸アンテナ素子間隔)であり、dyはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のy軸間隔(y軸アンテナ素子間隔)であり、λはビーム波長である。)
【0032】
また、前記制御部は、前記複数のアンテナ素子が三角配列(triangular array)である場合、送信時には、出力するメインローブのビーム指向角度がθ0、φ0であるとき、生成される複数のグレーティングローブ指向角度(θpq、φpq)をグレーティングローブチャート上に表示し、前記グレーティングローブチャート上に表示されたグレーティングローブのうち特定のグレーティングローブ位置(p、q(ここで、pおよびqのいずれか1つは0))を選択し、最終的に出力するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出し、受信時には、送信時の前記グレーティングローブ位置とグレーティングローブチャートの原点を基準として対向するグレーティングローブ位置(-p、-q(ここで、pおよびqのいずれか1つは0))を選択し、最終的に受信するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出する。
【0033】
【0034】
(ここで、p、q=-n、-(n-1)、...、-1、0、1、...、n(nは自然数)(ただし、p=0 & q=0はメインビームであるので除外)であり、dxはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のx軸間隔(x軸アンテナ素子間隔)であり、dyはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のy軸間隔(y軸アンテナ素子間隔)であり、λはビーム波長である。)
【0035】
さらに、前記制御部は、算出された送信時に出力するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)と、受信時に受信するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して、複数のフェーズシフタを介した位相シフトおよび前記信号プロセッサの周波数変調により時間遅延を行う。
【0036】
また、前記信号プロセッサは、前記IQ信号を生成して前記フェーズシフタに伝達する送信部と、前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する受信部と、を含み、前記送信部は、前記IQ信号を生成するIQ信号生成部と、前記制御部の制御に応じて前記IQ信号の周波数を変調させるための変調信号を生成する変調信号生成部と、キャリア信号を生成するキャリア信号生成部と、前記制御部の制御に応じて受信した前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを組み合わせて周波数変調を行う周波数変調部と、を含む。
【0037】
さらに、前記制御部は、前記周波数変調部が前記IQ信号と前記変調信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、前記周波数変調部が前記IQ信号と変更して生成されたキャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、および前記周波数変調部が正弦波関数(Sinusoidal Function)が乗算された前記IQ信号と前記キャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うことのうち少なくとも1つにより周波数変調を行う。
【発明の効果】
【0038】
本発明によると、送信時と受信時のアンテナ素子の配列を回転により異にすることで、グレーティングローブまたはサイドローブ(Side Lobe)が互いに重ならず、グレーティングローブ間の相対距離が最も離れる回転角度を算出することで、グレーティングローブの発生による影響を最小化できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】従来のフェーズドアレイアンテナの概略的な構成図を示す。
【
図2】一般的なビームパターンの例を示す図である。
【
図3】d/λによるビームパターンの例を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るビームステアリング装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、アンテナ素子の配列が四角配列である場合のグレーティングローブチャートを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る、アンテナ素子の配列が三角配列である場合のグレーティングローブチャートを示す図である。
【
図7】送信時のアンテナ素子の配列が四角配列であり、受信時のアンテナ素子の配列が三角配列である場合のメインローブおよびグレーティングローブを示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る、複数のアンテナ素子の配列が送信および受信時の両方とも四角配列である場合に回転角度を算出する様子を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る、複数のアンテナ素子の配列が送信および受信時の両方とも三角配列である場合に回転角度を算出する様子を示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る、複数のアンテナ素子の配列が送信時に四角配列であり、受信時に三角配列である場合に回転角度を算出する様子を示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る信号プロセッサの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明と本発明の動作上の利点および本発明の実施により達成される目的を説明するために本発明の好ましい実施形態を例示し、それを参照して説明する。
【0041】
先ず、本出願で用いられた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとするものではない。単数の表現は、文脈上、明らかに他を意味しない限り、複数の表現を含んでもよい。また、本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数値、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数値、ステップ、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除するものではないことを理解しなければならない。
【0042】
本発明を説明するにあたり、関連する公知の構成または機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を曖昧にする恐れがあると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態に係るビームステアリング装置の構成を概略的に示すブロック図であり、
図5は、本発明の一実施形態に係る、アンテナ素子の配列が四角配列である場合のグレーティングローブチャートを示す図であり、
図6は、本発明の一実施形態に係る、アンテナ素子の配列が三角配列である場合のグレーティングローブチャートを示す図である。
【0044】
また、
図7は、送信時のアンテナ素子の配列が四角配列であり、受信時のアンテナ素子の配列が三角配列である場合のメインローブおよびグレーティングローブを示す図であり、
図8は、本発明の一実施形態に係る、複数のアンテナ素子の配列が送信および受信時の両方とも四角配列である場合に回転角度を算出する様子を示す図である。
【0045】
さらに、
図9は、本発明の一実施形態に係る、複数のアンテナ素子の配列が送信および受信時の両方とも三角配列である場合に回転角度を算出する様子を示す図であり、
図10は、本発明の一実施形態に係る、複数のアンテナ素子の配列が送信時に四角配列であり、受信時に三角配列である場合に回転角度を算出する様子を示す図であり、
図11は、本発明の一実施形態に係る信号プロセッサの構成を示すブロック図である。
【0046】
図面を参照すると、本発明の一実施形態に係るフェーズドアレイアンテナのビームステアリング装置1000は、伝達される信号を所定のビーム方向に外部に出力し、外部から受信される信号を受信する複数のアンテナ素子100と、前記複数のアンテナ素子100にそれぞれ連結され、アンテナ素子に伝達される信号の位相を調整して出力するか、または前記アンテナ素子から信号を受信して位相を調整して出力する複数のフェーズシフタ200と、ベースバンド(Baseband)波形のIQ信号を生成して前記フェーズシフタに出力するか、または前記フェーズシフタから受信した信号から前記IQ信号を抽出する信号プロセッサ300と、所定のビーム方向に信号が出力または受信されるように前記複数のアンテナ素子100、前記複数のフェーズシフタ200、および前記信号プロセッサ300を制御する制御部400と、を含む。
【0047】
ここで、前記アンテナ素子100は、
図5~
図10に示すように、二次元の平面上に複数配列されるが、この際、四角配列(rectangular array)形態で配列されるか、または三角配列(triangular array)形態で配列されることができ、送信および受信時のアンテナ素子100の配列が互いに異なるように構成されることができる。
さらに、各アンテナ素子100には、入力される信号の位相をシフトさせるフェーズシフタ200が連結される。
【0048】
前記アンテナ素子100はフェーズシフタ200から信号を受信してそれぞれ出力するが、この際、複数のアンテナ素子100から出力される信号が互いに相殺または補強されて所定のビーム方向に出力される。
このようなビーム方向は、前記制御部400が目的とする方位角(φ)および高度角(θ)にメインローブ(Main Lobe)が形成されるように出力される。
【0049】
このようなアンテナ素子100間の間隔は、
図7~
図10において、本発明の一例により出力される信号の波長をλとするとき、1.5λに設定し、このような前記アンテナ素子100間の間隔は、0.5λ以上を有するように構成されることが好ましい。
【0050】
【0051】
【0052】
このような前記信号プロセッサ300は、前記IQ信号を生成して前記フェーズシフタ200に伝達する送信部310と、前記フェーズシフタ200から受信した信号から前記IQ信号を抽出する受信部320と、を含み、ここで、前記送信部310は、前記IQ信号を生成するIQ信号生成部311と、前記制御部400の制御に応じて前記IQ信号の周波数を変調させるための変調信号を生成する変調信号生成部312と、キャリア信号を生成するキャリア信号生成部313と、前記制御部400の制御に応じて受信した前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを組み合わせて周波数変調を行う周波数変調部314と、を含む。
【0053】
このような前記送信部310は、デジタル形態の送信部およびアナログ形態の送信部でそれぞれ構成され、デジタル形態の送信部は、キャリア信号生成部313により生成されたキャリア信号(一例として、2.5GHz)がデジタル波形合成器(DDS)に伝達され、IQ信号生成部311により生成されたIQ信号と合成され、合成されたIQ信号は、前記変調信号生成部312により生成された変調信号と合成され、デジタルアナログコンバータ(DAC)に伝送されることで、最終的にフェーズシフタ200に伝達される。
【0054】
さらに、前記IQ信号は、ベースバンド(Baseband)波形として、Quadarature signalまたはcomplex signalとも称され、IおよびQの2つからなることができる。
【0055】
このようなIQ信号は、特定の時間での値を1つの複素数で表せる二次元信号と定義することができる。例えば、I信号およびQ信号それぞれが-225~225MHzの波形に形成され、前記変調信号が一例として400~850MHzの波形に形成されることができる。
【0056】
一方、前記制御部400は、所定のビーム方向に信号が出力または受信されるように前記複数のアンテナ素子100、前記複数のフェーズシフタ200、および前記信号プロセッサ300を制御する。このような前記制御部400は、本発明の一実施形態によると、前記複数のアンテナ素子100を介して送信するときに発生するグレーティングローブ(Grating Lobe)と、受信するときに発生するグレーティングローブとが互いに重ならないように、送信時の複数のアンテナ素子の配列と受信時の複数のアンテナ素子の配列を互いに異なるように設定する。
【0057】
このようなアンテナ素子の配列が互いに異なるように設定する例として、前記制御部400は、送信時のアンテナ素子の配列に対して、受信時のアンテナ素子の配列が、アンテナ素子の配列中心から一定角度回転した方向に構成されるようにすることができる。
【0058】
【0059】
したがって、本発明の一実施形態では、このような送信時に発生するグレーティングローブと、受信時に発生するグレーティングローブとが互いに同一の位置で発生して重ならないようにするために、受信時のアンテナ素子の配列を回転させる。
【0060】
このような回転は、
図8~
図10の各(a)に示すように、複数のアンテナ素子100の中心から時計方向に0°~90°の範囲で回転させることができ、
図8~
図10の(a)に示すように、グレーティングローブチャート上で送受信可能な可視(visible)領域において、送信時に生成されるグレーティングローブと、受信時に生成されるグレーティングローブとの相対距離が最も大きい回転角度を算出することができる。
【0061】
このようなグレーティングローブ間の相対距離が最も大きいほどグレーティングローブの影響が最小化されることができるため、最も好ましくは、グレーティングローブ間の相対距離が最も大きい回転角度を制御部400が算出し、受信時に当該回転角度に基づいてアンテナ素子の配列中心を基準に時計方向に回転させる。
【0062】
このように制御部400が複数のアンテナ素子配列を回転させるために、アンテナ素子100が設けられる平面には、中心を基準に一定角度回転させる回転駆動部(図示せず)が設けられることが好ましい。これにより、制御部は、前記回転駆動部を制御し、前述したように、グレーティングローブ間の相対距離が最も大きい回転角度だけアンテナ素子の配列を回転させることができる。
【0063】
このような制御部400がグレーティングローブ間の相対距離が最も大きい回転角度を算出する過程を見ると、先ず、送信時のメインローブのビーム指向角度がθ0、φ0であるとき、下記式(1)および式(2)に基づいて送信時に生成される複数のグレーティングローブ指向角度θpq、φpqを算出する。
【0064】
【0065】
ここで、p、q=-n、-(n-1)、...、-1、0、1、...、n(nは自然数)(ただし、p=0 & q=0はメインビームであるので除外)であり、dxはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のx軸間隔(x軸アンテナ素子間隔)であり、dyはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のy軸間隔(y軸アンテナ素子間隔)であり、λはビーム波長である。
【0066】
次に、制御部400は、送信時に算出された複数のグレーティングローブ中で送受信可能な可視(visible)領域を定義し、指向可能な全てのメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して前述した過程のように複数のグレーティングローブ指向角度(θpq、φpq)を算出する。
【0067】
さらに、前記制御部400は、前記複数のアンテナ素子100の配列をその中心から時計方向に0°~90°の範囲に順次回転させ、前述したように、受信時に生成される複数のグレーティングローブ指向角度θpq、φpqを算出する。
【0068】
また、算出された複数のグレーティングローブ中で可視領域を定義し、前述した送信時のグレーティングローブと受信時のグレーティングローブとの相対距離を算出する。
【0069】
これにより、回転角度別に算出された送信時のグレーティングローブと受信時のグレーティングローブとの相対距離のうち最も大きい値を探し、当該値を有する回転角度を算出する。
このような方式で算出された最も大きい値を有する回転角度が、
図8では37°であり、
図9では41°であり、
図10では26°である。
【0070】
さらに、制御部400は、送信時のグレーティングローブと受信時のグレーティングローブとの相対距離のうち最も大きい値を有する回転角度を算出するために、送信時のメインビーム指向角度がθ0、φ0であるとき、前述した式(1)および式(2)に基づいて送信時に生成されるグレーティングローブの指向角度である複数のθpq、φpqを算出し、送信可能な可視(visible)領域を特定して第1グレーティングローブチャートを生成する。
【0071】
次に、送信時の複数のアンテナ素子の配列を中心から所定の角度別に回転させ、前記所定の角度別にメインビーム指向角度であるθ0、φ0に対して受信される複数のグレーティングローブ指向角度であるθpq、φpqを下記式(1)および式(2)に基づいて算出し、受信可能な可視(visible)領域を特定して第2グレーティングローブチャートを生成する。
【0072】
これにより、前記第1グレーティングローブチャートの可視領域での各グレーティングローブと、第2グレーティングローブチャートの可視領域での各グレーティングローブとの相対距離が最も大きい値を有する回転角度を算出することができる。
【0073】
一方、制御部400は、算出された送信時に出力するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)と、受信時に受信するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して、複数のフェーズシフタ200を介した位相シフトおよび前記信号プロセッサ300の周波数変調により時間遅延を行うことができる。
【0074】
ここで、信号プロセッサ300は、前記IQ信号を生成して前記フェーズシフタ200に伝達する送信部310と、前記フェーズシフタ200から受信した信号から前記IQ信号を抽出する受信部320と、を含み、ここで、前記送信部310は、前記IQ信号を生成するIQ信号生成部311と、前記制御部400の制御に応じて前記IQ信号の周波数を変調させるための変調信号を生成する変調信号生成部312と、キャリア信号を生成するキャリア信号生成部313と、前記制御部400の制御に応じて受信した前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを組み合わせて周波数変調を行う周波数変調部314と、を含む。
【0075】
さらに、前記制御部400は、前記周波数変調部314が前記IQ信号と前記変調信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、前記周波数変調部が前記IQ信号と変更して生成されたキャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、および前記周波数変調部が正弦波関数(Sinusoidal Function)が乗算された前記IQ信号と前記キャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うことのうち少なくとも1つにより周波数変調を行うことができる。
設定に応じてこれらの組み合わせにより周波数変調が行われてもよいことはもちろんである。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
これにより、前記制御部400は、算出された位相シフト値および周波数変調値により、フェーズシフタ200と信号プロセッサ300それぞれが位相シフトと周波数変調を行って時間遅延を行うことができる。
【0086】
また、前記信号プロセッサ300の受信部320は、前記制御部400の制御に応じて前記フェーズシフタ200から受信した信号からキャリア信号を除去するキャリア信号除去部321と、受信した信号から変調信号を抽出するための変調信号抽出部322と、前記IQ信号を抽出するIQ信号抽出部323と、前記制御部400の制御に応じて前記送信部の周波数変調と同期化し、前記フェーズシフタ200から受信した信号から前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを分離する周波数変調部324とから構成されることができる。
【0087】
このような制御部400の位相シフトおよび周波数変調による時間遅延は、送受信信号の帯域が狭帯域である場合には位相シフトによる時間遅延だけで十分であり、広帯域信号である場合には位相シフトおよび周波数変調を同時に行うように設定されることができる。
【0088】
ここで、狭帯域信号は、信号が占める帯域幅(B)が搬送波周波数(fc)に比べて遥かに小さい場合をいい、広帯域信号は、搬送波周波数と類似するか小さくない場合をいう。
【0089】
一方、本発明の他の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナのビームステアリング装置1000は、伝達される信号を所定のビーム方向に外部に出力し、外部から受信される信号を受信する複数のアンテナ素子100と、前記複数のアンテナ素子100にそれぞれ連結され、アンテナ素子に伝達される信号の位相を調整して出力するか、または前記アンテナ素子100から信号を受信して位相を調整して出力する複数のフェーズシフタ200と、ベースバンド(Baseband)波形のIQ信号を生成して前記フェーズシフタ200に出力するか、または前記フェーズシフタ200から受信した信号から前記IQ信号を抽出する信号プロセッサ300と、所定のビーム方向に信号が出力または受信されるように前記複数のアンテナ素子100、前記フェーズシフタ200、および前記信号プロセッサ300を制御する制御部400と、を含む。
【0090】
ここで、前記制御部400は、前記複数のアンテナ素子100を介して送信するときに発生するグレーティングローブ(Grating Lobe)と、受信するときに発生するグレーティングローブとが互いに重ならないように、送信時に出力するメインローブ(Main Lobe)のビーム指向方向と受信時のメインローブのビーム指向方向を互いに異なるように設定する。
【0091】
このために、前記制御部400は、前記複数のアンテナ素子100が四角配列(rectangular array)である場合、送信時には、出力するメインローブのビーム指向角度がθ0、φ0であるとき、生成される複数のグレーティングローブ指向角度(θpq、φpq)をグレーティングローブチャート上に表示し、前記グレーティングローブチャート上に表示されたグレーティングローブのうち特定のグレーティングローブ位置(p、q)を選択し、最終的に出力するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出し、受信時には、送信時の前記グレーティングローブ位置(p、q)とグレーティングローブチャートの原点を基準として対向するグレーティングローブ位置(-p、-q)を選択し、最終的に受信するメインローブのビーム指向角度を下記式(1)および式(2)に基づいて算出する。
【0092】
【0093】
ここで、p、q=-n、-(n-1)、...、-1、0、1、...、n(nは自然数)(ただし、p=0 & q=0はメインビームであるので除外)であり、dxはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のx軸間隔(x軸アンテナ素子間隔)であり、dyはグレーティングローブチャート上でグレーティングローブ間のy軸間隔(y軸アンテナ素子間隔)であり、λはビーム波長である。
【0094】
また、前記制御部400は、前記複数のアンテナ素子100が三角配列(triangular array)である場合、送信時には、出力するメインローブのビーム指向角度がθ0、φ0であるとき、生成される複数のグレーティングローブ指向角度(θpq、φpq)をグレーティングローブチャート上に表示し、前記グレーティングローブチャート上に表示されたグレーティングローブのうち特定のグレーティングローブ位置(p、q(ここで、pおよびqのいずれか1つは0))を選択し、最終的に出力するメインローブのビーム指向角度を前述した式(1)および式(2)に基づいて算出し、受信時には、送信時の前記グレーティングローブ位置とグレーティングローブチャートの原点を基準として対向するグレーティングローブ位置(-p、-q(ここで、pおよびqのいずれか1つは0))を選択し、最終的に受信するメインローブのビーム指向角度を前述した式(1)および式(2)に基づいて算出する。
【0095】
さらに、前記制御部400は、算出された送信時に出力するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)と、受信時に受信するメインローブのビーム指向角度(θ0、φ0)に対して、複数のフェーズシフタ200を介した位相シフトおよび前記信号プロセッサ300の周波数変調により時間遅延を行うことができる。
【0096】
ここで、前記信号プロセッサ300は、前記IQ信号を生成して前記フェーズシフタ200に伝達する送信部310と、前記フェーズシフタ200から受信した信号から前記IQ信号を抽出する受信部320と、を含み、ここで、前記送信部310は、前記IQ信号を生成するIQ信号生成部311と、前記制御部400の制御に応じて前記IQ信号の周波数を変調させるための変調信号を生成する変調信号生成部312と、キャリア信号を生成するキャリア信号生成部313と、前記制御部400の制御に応じて受信した前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを組み合わせて周波数変調を行う周波数変調部314と、を含む。
【0097】
さらに、前記制御部400は、前記周波数変調部314が前記IQ信号と前記変調信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、前記周波数変調部が前記IQ信号と変更して生成されたキャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うこと、および前記周波数変調部が正弦波関数(Sinusoidal Function)が乗算された前記IQ信号と前記キャリア信号を組み合わせて周波数変調を行うことのうち少なくとも1つにより周波数変調を行うことができる。
【0098】
また、前記信号プロセッサ300の受信部320は、前記制御部400の制御に応じて前記フェーズシフタ200から受信した信号からキャリア信号を除去するキャリア信号除去部321と、受信した信号から変調信号を抽出するための変調信号抽出部322と、前記IQ信号を抽出するIQ信号抽出部323と、前記制御部400の制御に応じて前記送信部の周波数変調と同期化し、前記フェーズシフタ200から受信した信号から前記IQ信号、前記変調信号、および前記キャリア信号のうち少なくとも2つを分離する周波数変調部324とから構成されることができる。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、前述した特定の実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、添付の特許請求の範囲の思想および範囲を逸脱することなく本発明に対する複数の変更および修正が可能であり、このような全ての適切な変更および修正は、等価物として本発明の範囲に属するとみなされるべきである。
【符号の説明】
【0100】
100:アンテナ素子
200:フェーズシフタ
300:信号プロセッサ
310:送信部
311:IQ信号生成部
312:変調信号生成部
313:キャリア信号生成部
314:周波数変調部
320:受信部
321:キャリア信号除去部
322:変調信号抽出部
323:IQ信号抽出部
324:周波数変調部
400:制御部
1000:ビームステアリング装置