(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071376
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】向上したクロマトグラフィベースライン安定性
(51)【国際特許分類】
G01N 30/02 20060101AFI20240517BHJP
G01N 30/26 20060101ALI20240517BHJP
G01N 30/64 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G01N30/02 E
G01N30/26 E
G01N30/64 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023193893
(22)【出願日】2023-11-14
(31)【優先権主張番号】18/055,064
(32)【優先日】2022-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591025358
【氏名又は名称】ダイオネックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ロン リン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン リウ
(57)【要約】
【課題】イオン交換デバイスを提供する。
【解決手段】イオン交換デバイスは、主チャネル部材と、第1の再生剤フローチャネル部材と、第2の再生剤フローチャネル部材と、第1のイオン交換膜と、第2のイオン交換膜と、第1の電極及び第2の電極と、を備える。第1及び第2の再生剤フローチャネルは、一貫した流れを有するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換デバイスであって、
主チャネル部材であって、前記主チャネル部材を通って延在する主チャネルを含み、前記主チャネル部材が、主チャネル入口ポートと、主チャネル出口ポートと、を有し、前記主チャネル部材が、溶離剤が前記主チャネル入口ポートから、前記主チャネルを通り、次いで前記主チャネル出口ポートへと流れるように構成されている、主チャネル部材と、
第1の再生剤フローチャネル部材であって、前記第1の再生剤フローチャネル部材を通って延在する第1の再生剤フローチャネルを含み、前記第1の再生剤フローチャネルが、第1の再生剤フロー入口ポートと、第1の再生剤フロー出口ポートと、を有し、前記第1の再生剤フローチャネル部材が、第1の再生剤が前記第1の再生剤フロー入口ポートから、前記第1の再生剤フローチャネルを通り、次いで前記第1の再生剤フロー出口ポートへと流れるように構成されている、第1の再生剤フローチャネル部材と、
第2の再生剤フローチャネル部材であって、前記第2の再生剤フローチャネル部材を通って延在する第2の再生剤フローチャネルを含み、前記第2の再生剤フローチャネルが、第2の再生剤フロー入口ポートと、第2の再生剤フロー出口ポートと、を有し、前記第2の再生剤フローチャネル部材が、第2の再生剤が前記第2の再生剤フロー入口ポートから、前記第2の再生剤フローチャネルを通り、次いで前記第2の再生剤フロー出口ポートへと流れるように構成されている、第2の再生剤フローチャネル部材と、
正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成されている、第1のイオン交換膜であって、前記主チャネルと前記第1の再生剤フローチャネルとの間に配設されている、第1のイオン交換膜と、
正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成されている、第2のイオン交換膜であって、前記主チャネルと前記第2の再生剤フローチャネルとの間に配設されている、第2のイオン交換膜と、
前記第1の再生剤フローチャネル及び前記第2の再生剤フローチャネル内にそれぞれ配設されている、第1の電極及び第2の電極と、
フロースプリッタと、第1及び第2の背圧管とを含む、背圧部材と、
を備え、
前記フロースプリッタが、フロースプリッタ入口ポートと、第1及び第2のフロースプリッタ出口ポートとを有し、前記フロースプリッタ入口ポートが、前記第1及び第2のフロースプリッタ出口ポートの両方と流体接続しており、
前記第1のフロースプリッタ出口ポートが、前記第1の再生剤フロー入口ポートと流体接続している前記第1の背圧管と流体接続しており、
前記第2のフロースプリッタ出口ポートが、前記第2の再生剤フロー入口ポートと流体接続している前記第2の背圧管と流体接続しており、
前記第1及び第2の再生剤フローチャネルが、1時間の期間にわたって±5%以下で変化する、0.001mL/分~20mL/分の範囲の一貫した再生剤流量を有するように構成されている、イオン交換デバイス。
【請求項2】
前記第1及び第2のイオン交換部材が、反対の電荷のイオンを通過させるように構成されている、請求項1に記載のイオン交換デバイス。
【請求項3】
前記デバイスが、前記第1の再生剤フローチャネル内の流量が前記第2の再生剤フローチャネル内の流量と異なるように構成されている、請求項1に記載のイオン交換デバイス。
【請求項4】
前記デバイスが、前記第1の再生剤フローチャネル内の流量が前記第2の再生剤フローチャネル内の流量と同じであるように構成されている、請求項1に記載のイオン交換デバイス。
【請求項5】
前記第1の電極がカソードである、請求項1に記載のイオン交換デバイス。
【請求項6】
前記イオン交換デバイスが塩変換器である、請求項1に記載のイオン交換デバイス。
【請求項7】
前記第1及び第2の電極の各々の長さが、それぞれ前記第1及び第2の再生剤チャネルの長さよりも短い、請求項6に記載のイオン交換デバイス。
【請求項8】
前記デバイスが、前記主チャネル内の溶離剤の流れが前記第1及び第2の再生剤の流れと同じ方向であるように構成されている、請求項6に記載のイオン交換デバイス。
【請求項9】
前記イオン交換デバイスがサプレッサである、請求項1に記載のイオン交換デバイス。
【請求項10】
前記デバイスが、前記主チャネル内の溶離剤の流れが前記第1及び第2の再生剤の流れと反対方向であるように構成されている、請求項9に記載のイオン交換デバイス。
【請求項11】
クロマトグラフィシステムを用いて試料を分析する方法であって、
試料を前記クロマトグラフィシステムのクロマトグラフィカラムに注入することと、
移動相を前記クロマトグラフィカラムに流入させて、異なる時間において前記試料を前記クロマトグラフィカラムから溶出する1つ以上の分析物に分離することと、
前記移動相を前記クロマトグラフィカラムからイオン交換デバイスに流入させることと、を含み、
前記イオン交換デバイスが、主チャネルと、第1及び第2の再生剤フローチャネルと、第1及び第2のイオン交換膜と、第1及び第2の電極と、を備え、
前記第1及び第2の交換膜が、前記主チャネルと前記第1及び第2の再生剤フローチャネルとの間にそれぞれ配設され、前記第1及び第2の電極が、前記第1及び第2の再生剤フローチャネル内にそれぞれ配設され、
両方の再生剤フローチャネルを通る再生剤相の流量が、1時間の期間にわたって±5%以下で変化する、0.001mL/分~20mL/分の範囲であり、
前記方法が、さらに、
前記電極にわたって電圧を発生させて、前記試料又は移動相からのイオンを前記イオン交換膜のうちの1つを横切って再生剤フローチャネル内に通過させ、かつ再生剤フローチャネルからのイオンを前記主チャネル内の前記移動相内に通過させることと、を含む、方法。
【請求項12】
前記第1の再生剤フローチャネル内の前記再生剤相の流量が、前記第2の再生剤フローチャネル内の前記再生剤相の流れと異なる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン交換デバイスが塩変換器である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の再生剤フローチャネルが、前記第2の再生剤フローチャネルと流体接続している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記イオン交換デバイスがサプレッサである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の電極がカソードである、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記試料が、アミン水酸化物又はアンモニウムを含み、前記アミン水酸化物又はアンモニウムが、前記イオン交換デバイス内で塩形態に変換される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記移動相が、酸を含み、前記イオン交換デバイス内で水に変換される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記移動相が、塩基を含み、前記イオン交換デバイス内で水に変換される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記試料が、弱酸を含み、前記イオン交換デバイス内で塩形態に変換される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記試料を前記イオン交換デバイスから検出器に流すことを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
塩変換デバイスであって、
主チャネル部材であって、前記主チャネル部材を通って延在する主チャネルを含み、前記主チャネル部材が、主チャネル入口ポートと、主チャネル出口ポートと、を有し、前記主チャネル部材が、溶離剤が前記主チャネル入口ポートから、前記主チャネルを通り、次いで前記主チャネル出口ポートへと流れるように構成されている、主チャネル部材と、
第1の再生剤フローチャネル部材であって、前記第1の再生剤フローチャネル部材を通って延在する第1の再生剤フローチャネルを含み、前記第1の再生剤フローチャネルが、第1の再生剤フロー入口ポートと、第1の再生剤フロー出口ポートと、を有し、前記第1の再生剤フローチャネル部材が、第1の再生剤が前記第1の再生剤フロー入口ポートから、前記第1の再生剤フローチャネルを通り、次いで前記第1の再生剤フロー出口ポートへと流れるように構成されている、第1の再生剤フローチャネル部材と、
第2の再生剤フローチャネル部材であって、前記第2の再生剤フローチャネル部材を通って延在する第2の再生剤フローチャネルを含み、前記第2の再生剤フローチャネルが、第2の再生剤フロー入口ポートと、第2の再生剤フロー出口ポートと、を有し、前記第2の再生剤フローチャネル部材が、第2の再生剤が前記第2の再生剤フロー入口ポートから、前記第2の再生剤フローチャネルを通り、次いで前記第2の再生剤フロー出口ポートへと流れるように構成されている、第2の再生剤フローチャネル部材と、
正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成されている、第1のイオン交換膜であって、前記主チャネルと前記第1の再生剤フローチャネルとの間に配設されている、第1のイオン交換膜と、
正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成されている、第2のイオン交換膜であって、前記主チャネルと前記第2の再生剤フローチャネルとの間に配設されている、第2のイオン交換膜と、
前記第1の再生剤フローチャネル及び前記第2の再生剤フローチャネル内にそれぞれ配設されている、第1の電極及び第2の電極と、
を備え、
前記第1及び第2の再生剤フローチャネルが、一貫した流れを有するように構成されている、塩変換デバイス。
【請求項23】
前記第1の再生剤フロー出口ポートが、前記第2の再生剤フロー入口ポートと流体接続している、請求項22に記載の塩変換デバイス。
【請求項24】
前記主チャネル出口ポートが、前記第1の再生剤フロー入口ポートと流体接続している、請求項22に記載の塩変換デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔背景技術〕
イオンクロマトグラフィ(ion chromatography、IC)は十分に確立された分析手法であり、過去40年ほどにわたり、無機アニオン及び小さな有機アニオンの定量に好適な方法である。ICは、無機カチオン、並びに炭水化物及びアミノ酸の定量にも広く使用されている。
【0002】
サプレッサは、ICシステムの構成要素のうちの1つとして使用され得る。サプレッサの機能は、溶離液のバックグラウンド導電率を低減させること、及び、イオン交換プロセスを介して分析物の導電率を高めることであり、結果として、その後の導電率検出の応答性が増加する。最も一般的な商用サプレッサは、試料を運ぶ溶離液チャネルが、2つのイオン交換膜によって、水流を運ぶ隣接再生剤チャネルから分離されている、3チャネルのサンドイッチ型設計の形態をとる。平板電極が、再生剤チャネルの各々に配置される。定電流が、2つの電極間に流れる。再生剤チャネル内の水の電気分解により、溶離液の抑制に使用される、水素イオン及び水酸化物イオンが生成される。再生剤チャネル内の水の継続的な供給は、サプレッサの性能の安定性にとって重要である。
【0003】
塩変換器は、ICシステムの構成要素のうちの1つとして使用され得る。塩変換器の機能は、酸形態又は塩基形態であり得る分析物イオンを塩形態に変換することである。弱酸又は弱塩基の塩形態の導電率信号は、より容易に測定される。
【発明の概要】
【0004】
イオン交換デバイスは、主チャネル部材と、第1の再生剤フローチャネル部材と、第2の再生剤フローチャネル部材と、第1のイオン交換膜と、第2のイオン交換膜と、第1の電極及び第2の電極と、を備える。
【0005】
主チャネル部材は、主チャネル部材を通って延在する主チャネルを含む。主チャネル部材は、主チャネル入口ポートと、主チャネル出口ポートと、を有する。主チャネル部材は、溶離剤が主チャネル入口ポートから、主チャネルを通り、次いで主チャネル出口ポートへと流れるように構成されている。
【0006】
第1の再生剤フローチャネル部材は、第1の再生剤フローチャネル部材を通って延在する第1の再生剤フローチャネルを含む。第1の再生剤フローチャネルは、第1の再生剤フロー入口ポートと、第1の再生剤フロー出口ポートと、を有する。第1の再生剤フローチャネル部材は、第1の再生剤が第1の再生剤入口ポートから、第1の再生剤フローチャネルを通り、次いで第1の再生剤フロー出口ポートへと流れるように構成されている。
【0007】
第2の再生剤フローチャネル部材は、第2の再生剤フローチャネル部材を通って延在する第2の再生剤フローチャネルを含む。第2の再生剤フローチャネルは、第2の再生剤フロー入口ポートと、第2の再生剤フロー出口ポートと、を有する。第2の再生剤フローチャネル部材は、第2の再生剤が第2の再生剤入口ポートから、第2の再生剤フローチャネルを通り、次いで第2の再生剤フロー出口ポートへと流れるように構成されている。
【0008】
第1のイオン交換膜は、正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成されている。第1のイオン交換膜は、主チャネルと第1の再生剤フローチャネルとの間に配設される。第2のイオン交換膜は、正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成されている。第2のイオン交換膜は、主チャネルと第2の再生剤フローチャネルとの間に配設される。
【0009】
第1の電極及び第2の電極は、それぞれ、第1の再生剤チャネル及び第2の再生剤チャネル内に配設される。電極からの電流は、イオンを再生剤フローチャネル及び主チャネルの中及び外へ移動させる。
【0010】
第1及び第2の再生剤フローチャネルは、一貫した流れを有するように構成されている。
【0011】
試料は、クロマトグラフシステムで分析され得る。分析する方法は、以下の工程を含む:試料をクロマトグラフィシステムのクロマトグラフィカラムに注入すること。移動相をクロマトグラフィカラムに流入させて、異なる時間において試料をクロマトグラフィカラムから溶出する1つ以上の分析物に分離すること。移動相をクロマトグラフィカラムからイオン交換デバイスに流入させること。イオン交換デバイスは、主チャネルと、第1及び第2の再生剤フローチャネルと、第1及び第2のイオン交換膜と、第1及び第2の電極と、を備える。交換膜は、主チャネルとそれらのそれぞれの再生剤フローチャネルとの間に配設され、電極は、それらのそれぞれの再生剤チャネル内に配設される。両方の再生剤フローチャネルを通して一貫した流れで再生剤相を流すこと。電極にわたって電圧を発生させて、試料又は移動相からのイオンをイオン交換膜のうちの1つを横切って再生剤フローチャネル内に通過させ、かつ再生剤フローチャネルからのイオンを移動相の試料に通過させること。
【0012】
これら及び他の目的、並びに利点は、添付の図面及びその説明から明らかになるであろう。
【0013】
本明細書に組み込まれ、かつ、この明細書の一部を成している、添付の図面は、実施形態を例示しており、上に提示された概略的な説明及び以下に提示される実施形態の詳細な説明とともに、本開示の原理を解説する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】イオンクロマトグラフィ(IC)システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ICシステムを示す。溶離剤生成器14は、EGC、EG40、及びEG50などのThermo Scientific(Sunnyvale、Calif.USA)によって製造されているものを含む、任意の好適なタイプのものであり得る。溶離剤生成器14は、Dionexによって製造されている連続再生トラップカラム(continuously regenerated trap column、CR-TC)又は高圧脱ガスアセンブリなどの他の構成要素と組み合わせて使用され得る。生成された溶離剤は、導電性である。CR-TCカラム又は脱ガスアセンブリの存在によって、生成された溶離剤は、CR-TCカラムを通って、高圧脱ガスアセンブリに流入する。代替的に、溶離剤は、手作業で調製され、高圧ポンプ12を使用して溶離剤リザーバ(図示せず)から引き込まれ得る。この場合、溶離剤生成器14は不要である。
【0016】
好適な試料は、例えば、試料注入弁16を通して導入されて、溶離剤の溶液中を、典型的にはクロマトグラフィ分離媒体でパックされるクロマトグラフィカラム18の形態であるクロマトグラフィ分離手段に流入する。分離媒体は、恒久的に取り付けられたイオン交換サイトを本質的に有しないイオン交換樹脂、モノリス型、又は多孔質疎水性クロマトグラフィ樹脂の形態であり得る。
【0017】
カラム18を出た溶液は、カラム18と直列に配置されたサプレッサなどのイオン交換デバイス20に方向付けられる。サプレッサ20は、カラム18からの溶離剤の電解質の導電率は抑制するが、分離したイオンの導電率は抑制しない。分離したイオンの導電率は、通常、抑制プロセスにおいて強化される。例えば、例示的なアニオンCl-は、それをHCl形態の酸に変換することによって強化することができる。溶離剤は、サプレッサ20を通過した後、中和されて、その弱イオン化された形態を生成する。例えば、例示的な溶離剤OH-は、それをヒドロニウムイオンと反応させて水を形成することによって、中和させることができる。典型的には、サプレッサ20は、イオン種が流れる主チャネルと、再生剤が流れる再生剤チャネルと、を含む。デバイスは、ICの抑制、並びに試料の前処理及び他の用途に使用され得、したがって、主チャネルは、イオン種の流れによって溶離剤を方向付け得るか、又は代替的に、単にイオン種を含む液体を方向付け得ることが理解されるであろう。
【0018】
次いで、抑制された溶離剤は、分解されたイオン種を検出するために、典型的には導電率セル22の形態の検出手段に方向付けられる。導電率セル22では、イオン種の存在は、イオン性物質の量と比例した電気信号を生成する。そのような信号は、典型的には、セル22から導電率メーターへと方向付けられ、したがって、分離したイオン種の濃度の検出が可能になる。導電率セル22は、データを収集及び処理するための、又はシステムを制御するためのコンピュータ又はデータ収集システムなどのデバイスに電気的に接続され得る。
【0019】
導電率セル22を通過した後に、溶離剤は、サプレッサ20上の再生剤チャネルに再方向付けされ、したがって、サプレッサ20に水源を提供し、米国特許第5,352,360号に記載されているものと同様の水の外部供給の必要性を排除し得、この文献の内容は、全ての目的に対して参照により本明細書に組み込まれる。抑制された溶離剤は、廃棄又は他のデバイスに方向付けられて、水を提供し得るか、又はガスなどの成分を除去し得る。導電率セル22内の溶離剤の脱気を防止するために、システム10は、1つ又は複数の背圧コイル24を含み得、溶離剤は、サプレッサ20上の再生剤チャネルに再方向付けられる前に、背圧コイルを通って流れる。1つ又は複数の背圧コイル24は、抑制中に発生したガスの脱気を防止し、かつ導電率セル22内の泡の形成を防止し、したがって、ノイズを低減し、かつ検出の精度を向上させる。
【0020】
図2は、イオン交換デバイスであるサプレッサ(20)を示す。主チャネル(111)は、溶離剤が主チャネル入口ポートから、主チャネルを通り、次いで主チャネル出口ポートへと流れるように構成されている。第1の再生剤フローチャネル(121)は、第1の再生剤が第1の再生剤入口ポート(123)から、第1の再生剤フローチャネル(121)を通り、次いで第1の再生剤フロー出口ポート(124)へと流れるように構成されている。第2の再生剤フローチャネル(131)は、第2の再生剤が第2の再生剤入口ポート(133)から、第2の再生剤フローチャネル(131)を通り、次いで第2の再生剤フロー出口ポート(134)へと流れるように構成されている。第1のイオン交換膜(122)は、正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成され、主チャネル(111)と第1の再生剤フローチャネル(121)との間に配設される。第2のイオン交換膜(132)は、正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成され、主チャネル(111)と第2の再生剤フローチャネル(131)との間に配設される。第1の電極及び第2の電極(
図2に図示せず)は、それぞれ、第1の再生剤チャネル及び第2の再生剤チャネル内に配設される。
【0021】
イオン交換デバイスは、主チャネル部材と、第1の再生剤フローチャネル部材と、第2の再生剤フローチャネル部材と、第1のイオン交換膜と、第2のイオン交換膜と、第1の電極及び第2の電極と、を備える。
【0022】
主チャネル部材は、主チャネル部材を通って延在する主チャネルを含む。主チャネル部材は、主チャネル入口ポートと、主チャネル出口ポートと、を有する。主チャネル部材は、溶離剤が主チャネル入口ポートから、主チャネルを通り、次いで主チャネル出口ポートへと流れるように構成されている。
【0023】
第1の再生剤フローチャネル部材は、第1の再生剤フローチャネル部材を通って延在する第1の再生剤フローチャネルを含む。第1の再生剤フローチャネルは、第1の再生剤フロー入口ポートと、第1の再生剤フロー出口ポートと、を有する。第1の再生剤フローチャネル部材は、第1の再生剤が第1の再生剤入口ポートから、第1の再生剤フローチャネルを通り、次いで第1の再生剤フロー出口ポートへと流れるように構成されている。
【0024】
第2の再生剤フローチャネル部材は、第2の再生剤フローチャネル部材を通って延在する第2の再生剤フローチャネルを含む。第2の再生剤フローチャネルは、第2の再生剤フロー入口ポートと、第2の再生剤フロー出口ポートと、を有する。第2の再生剤フローチャネル部材は、第2の再生剤が第2の再生剤入口ポートから、第2の再生剤フローチャネルを通り、次いで第2の再生剤フロー出口ポートへと流れるように構成されている。
【0025】
第1のイオン交換膜は、正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成されている。第1のイオン交換膜は、主チャネルと第1の再生剤フローチャネルとの間に配設される。第2のイオン交換膜は、正又は負である1つの電荷のみのイオンを通過させ、かつバルク液体の流れを遮断するように構成されている。第2のイオン交換膜は、主チャネルと第2の再生剤フローチャネルとの間に配設される。
【0026】
第1の電極及び第2の電極は、それぞれ、第1の再生剤チャネル及び第2の再生剤チャネル内に配設される。電極からの電流は、イオンを再生剤フローチャネル及び主チャネルの中及び外へ移動させる。
【0027】
第1及び第2の再生剤フローチャネルは、動作中に一貫した流れを有するように構成されており、この流れは、溶離剤の流れより小さいか、等しいか、又は大きくてもよい。溶離剤流量は、典型的には、0.001mL/分~20mL/分、例えば、0.001mL/分~0.005mL/分、0.005mL/分~0.01mL/分、0.01mL/分~0.05mL/分、0.05mL/分~0.1mL/分、0.1mL/分~0.5mL/分、0.5mL/分~1mL/分、1mL/分~2mL/分、2mL/分~3mL/分、3mL/分~4mL/分、4mL/分~5mL/分、5mL/分~6mL/分、6mL/分~7mL/分、7mL/分~8mL/分、8mL/分~9mL/分、9mL/分~10mL/分、10mL/分~12mL/分、12mL/分~14mL/分、14mL/分~16mL/分、16mL/分~18mL/分、18mL/分~20mL/分の範囲である。
【0028】
一貫した溶離剤流量は、±0.5%~±0.4%、±0.4%~±0.3%、±0.3%~±0.2%、及び±0.2%~±0.1%など、±0.5%以下だけ変化するものである。それは、1時間、30分、15分、10分、5分、2分、又は1分の期間にわたって一貫している。一貫した溶離剤流量は、標的分析物の再現可能なクロマトグラフィ分離を達成するのに役立つ。一貫した再生剤流量は、±5%~±4%、±4%~±3%、±3%~±2%、及び±2%~±1%など、±5%以下だけ変化するものである。それは、1時間、30分、15分、10分、5分、2分、又は1分の期間にわたって一貫している。一貫した再生剤流量は、向上したベースライン安定性を提供するのに役立つ。
【0029】
イオン交換デバイスは、分析物、溶離剤、又はその両方のイオンを交換する。例えば、分析物の塩形態は、遊離酸に変換されるか、又はその逆であってもよい。別の例は、溶離剤が、Na+イオンをH+イオンと交換することによってH2Oに変換されるNaOHなどの強塩基を含有し得ることである。サプレッサは、イオン交換デバイスの一例である。サプレッサは、典型的には、分析物の導電率を高めて導電率計による検出をより容易にする一方で、また、溶離剤の導電率を低下させる。塩変換器は、イオン交換デバイスの一例である。塩変換器は、イオンを溶離剤及び分析物の両方とイオンを交換するために使用され得るが、次いで、対イオンを分析物と再交換して、それをその塩形態に変換して戻す。弱酸アニオン又は弱塩基カチオンについては、それをその元の塩形態に変換して戻すことは、測定される導電率信号を強化する。
【0030】
再生剤は、交換されるイオンの供給源であり、除去されるイオンの行き先である。交換イオンは、電気分解によって水から形成され得る。イオンは、一方の再生剤フローチャネルから主チャネルに移動し、除去されたイオンは、主チャネルから他方の再生剤フローチャネルに移動する。
【0031】
いくつかの実施形態では、イオン交換デバイスは、第1及び第2のイオン交換部材が反対電荷のイオンを通過させるように構成されている。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1の再生剤フロー出口ポートは、第2の再生剤フロー入口ポートと流体接続している。いくつかの実施形態では、主チャネル出口ポートは、第1の再生剤フロー入口ポートと流体接続している。
【0033】
いくつかの実施形態では、イオン交換デバイスは、加えて、フロースプリッタと、第1及び第2の背圧管と、を含む、背圧部材を備える。フロースプリッタは、フロースプリッタ入口ポートと、第1及び第2のフロースプリッタ出口ポートと、を有する。フロースプリッタ入口ポートは、第1及び第2のフロースプリッタ出口ポートの両方と流体接続している。第1のフロースプリッタ出口ポートは、第1の再生剤フロー入口ポートと流体接続している第1の背圧管と流体接続している。第2のフロースプリッタ出口ポートは、第2の再生剤フロー入口ポートと流体接続している第2の背圧管と流体接続している。いくつかの実施形態では、第1の再生剤フローチャネル内の流量は、第2の再生剤フローチャネル内の流量と異なる。いくつかの実施形態では、第1の再生剤フローチャネル内の流量は、第2の再生剤フローチャネル内の流量と同じである。
【0034】
電極は、印加された電場下で、イオンを一方の再生剤フローチャネルから主チャネルへ、及び主チャネルから他方の再生剤フローチャネルへ移動させるために使用される。いくつかの実施形態では、第1の電極は、カソードである。
【0035】
試料は、クロマトグラフシステムで分析され得る。分析する方法は、以下の工程を含む:試料をクロマトグラフィシステムのクロマトグラフィカラムに注入すること。移動相をクロマトグラフィカラムに流入させて、異なる時間において試料をクロマトグラフィカラムから溶出する1つ以上の分析物に分離すること。移動相をクロマトグラフィカラムからイオン交換デバイスに流入させること。イオン交換デバイスは、主チャネルと、第1及び第2の再生剤フローチャネルと、第1及び第2のイオン交換膜と、第1及び第2の電極と、を備える。交換膜は、主チャネルとそれらのそれぞれの再生剤フローチャネルとの間に配設され、電極は、それらのそれぞれの再生剤チャネル内に配設される。両方の再生剤フローチャネルを通して一貫した流れで再生剤相を流すこと。電極にわたって電圧を印加して、水を電解し、試料又は移動相からのイオンをイオン交換膜のうちの1つを横切って再生剤フローチャネル内に通過させ、かつ再生剤フローチャネルからのイオンを移動相の試料に通過させること。
【0036】
いくつかの実施形態では、試料は、アミン水酸化物又はアンモニウムを含み、アミン水酸化物又はアンモニウムは、イオン交換デバイス内で塩形態に変換される。いくつかの実施形態では、移動相は、酸を含み、イオン交換デバイス内で水に変換される。いくつかの実施形態では、移動相は、塩基を含み、イオン交換デバイス内で水に変換される。いくつかの実施形態では、試料は、弱酸を含み、イオン交換デバイス内で塩形態に変換される。
【0037】
いくつかの実施形態では、方法は、試料をイオン交換デバイスから検出器に流すことを更に含む。
【0038】
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形を含み、特定の数値への言及は、文脈が明確に指示しない限り、少なくともその特定の数値を含む。したがって、例えば、「ある材料」への言及は、当業者に知られているそのような材料及びその同等物のうちの少なくとも1つへの言及であり、以下同様である。
【0039】
修飾語「約」も、2つの端点の絶対値によって定義される範囲を開示しているとみなされるべきである。例えば、表現「約2~約4」はまた、範囲「2~4」を開示する。単一の数を修飾するために使用される場合、用語「約」は、示された数のプラス又はマイナス10%を指し得、示された数を含む。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を示し得、「約1」は0.9~1.1を意味する。
【0040】
リストが与えられた場合、特に断らない限り、そのリストの各個々の要素及びそのリストのあらゆる組み合わせは、別個の実施形態として解釈されるものと理解されるものとする。例えば、「A、B、又はC」として与えられた実施形態のリストは、実施形態「A」、「B」、「C」、「A又はB」、「A又はC」、「B又はC」又は「A、B、又はC」を含むと解釈されるものとする。
【0041】
この場合、全ての範囲は包括的であり、組み合わせることが可能である。すなわち、範囲で示された値への言及は、その範囲内のあらゆる値を含む。例えば、400~450ppmとして定義される範囲は、独立した実施形態として400ppm及び450ppmを含む。400~450ppmの範囲及び450~500ppmの範囲が、400~500ppmの範囲になるように組み合わせられ得る。
【0042】
明確さのために、別個の実施形態との関連で本明細書において説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることも理解されたい。すなわち、明らかに相容れない、又は除外されない限り、各個々の実施形態は、任意の他の実施形態と組み合わせ可能であるとみなされ、そのような組み合わせは別の実施形態であるとみなされる。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態との関連で説明されている本発明の様々な特徴は、別々に又は任意のサブコンビネーションで提供されてもよい。特許請求の範囲は、いかなる任意選択的な要素も除外するように起草され得ることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求される要素の記載、又は「否定的な」制限の使用に関連して、「単独で」、「のみ」等の、そのような排他的用語を使用するための先行詞としての役割を果たすことを意図している。最後に、実施形態は、一連のステップの一部又はより一般的な構造の一部として説明することができるが、上述の各ステップは、それ自体独立した実施形態とみなすこともできる。
【0043】
本開示では、いくつかの実施形態を説明によって例示し、例示した実施形態をかなり詳細に説明したが、出願人の意図は、添付された特許請求の範囲の範囲をかかる詳細に制限又は多少なりとも限定するものではない。追加の利点及び改変が、当業者には容易に明らかとなろう。更に、個別のリストからの特徴を組み合わせることができ、実施例からの特徴を開示全体に一般化することができる。
【0044】
実施例
実施例1
2mm Thermo Scientific Dionex SC-CERS500ユニットを、Thermo Fisher Scientific製のIonPac CS12A(2×250mm)カラムと併せてカチオン分析のための塩変換器として使用した。使用した溶離剤は、20mM MSAであり、溶離剤発生器モジュールによって発生させた。流量は、0.25mL/分であった。SC-CERS500ユニットに印加した電流は、15mAであった。平均ベースラインノイズは、
図3に示すように2.86nS/cmである。
【0045】
一実施形態では、SC-CERS500サプレッサの流体接続が改変された。第1の再生剤チャネルの入口は、導電率検出器セルの出口ポートに流体的かつ直接的に接続された。第1の再生剤チャネルの出口ポートは、第2の再生剤チャネルの入口に流体接続された。第2の再生剤チャネルの出口は、廃棄物に接続された。平均ベースラインノイズは、
図4に示すように0.76nS/cmである。
【0046】
実施例2
2mm SC-CERS500サプレッサを、Thermo Fisher Scientific製のIonPac CS12A(2×250mm)カラムと併せてカチオン分析のための塩変換器として、実施例1に記載されるように流体的に改変した。使用した溶離剤は、20mM MSAであり、溶離剤発生器モジュールによって発生させた。流量は、0.25mL/分であった。印加した電流は、15mAであった。リチウム、ナトリウム、アンモニウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウムの分離を
図5に示す。ピーク1:リチウム、ピーク2:ナトリウム、ピーク3:アンモニウム、ピーク4:カリウム、ピーク5:マグネシウム、ピーク6:カルシウム。
【外国語明細書】