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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071381
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】抗体-薬物複合体の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/52 20060101AFI20240517BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G01N33/52 Z
G01N21/78 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024023000
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2020509083の分割
【原出願日】2018-09-05
(31)【優先権主張番号】62/556,153
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】アンドリア スキナー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア クリーバ
(57)【要約】
【課題】本開示は、公知の方法よりも優れた利点をもたらすADC産物のDARを評価する方法を提供する。
【解決手段】具体的には、本開示の方法は、ハイスループットアプリケーションに使用することができ、及び/または、当該評価を行っている間にADC試料の希釈を必要とせずに使用することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体-薬物複合体を含む試料における薬物/抗体比(DAR)を決定する方法であって:
前記試料を、サイズ排除クロマトグラフマトリックスに適用する;
第1の光波長(λ1)で、前記試料の吸光度の検出を行い、前記第1の波長は、前記抗体の所定の吸光度最大値である;
第2の光波長(λ2)で、前記試料の吸光度の検出を行い、前記第2の波長は、前記薬物の所定の吸光度最大値である;
前記第1及び第2の波長での前記試料の全吸光度を決定する;及び、
以下の式1を使用して、DARを計算する、ことを含み:
【数1】
式中、
【数2】

は、前記第1の波長での前記抗体の吸光係数であり;
【数3】
は、前記第2の波長での前記抗体の吸光係数であり;
【数4】
は、前記第1の波長での前記薬物の吸光係数であり;
【数5】
は、前記第2の波長での前記薬物の吸光係数であり;
総面積λ1は、前記第1の波長での前記試料の総吸光度であり;及び、
総面積λ2は、前記第2の波長での前記試料の総吸光度である、前記方法。
【請求項2】
抗体-薬物複合体を含む試料における薬物/抗体比(DAR)を決定する方法であって:
前記抗体-薬物複合体を含む試料の全吸光度を測定するものであって:
前記抗体-薬物複合体を含む前記試料を、サイズ排除クロマトグラフマトリックスに適用する;
第1の光波長(λ1)で、前記試料の吸光度の検出を行い、前記第1の波長は、前記抗体の所定の吸光度最大値である;
第2の光波長(λ2)で、前記試料の吸光度の検出を行い、前記第2の波長は、前記薬物の所定の吸光度最大値である;
前記第1及び第2の波長での前記試料の全吸光度を決定することで、前記全吸光度を測定する;
前記抗体を含む試料の全吸光度を測定するものであって:
前記抗体を含む前記試料を、サイズ排除クロマトグラフマトリックスに適用する;
前記第1の光波長(λ1)で、前記抗体を含む試料の吸光度を検出する;
前記第2の光波長(λ2)で、前記抗体を含む試料の吸光度を検出する;
前記第1及び第2の波長での前記抗体を含む試料の全吸光度を決定することで、前記全吸光度を測定する;及び
以下の式2を使用して、DARを計算する、ことを含み:
【数6】
式中、
【数7】
は、前記第1の波長での前記抗体の吸光係数であり;
【数8】
は、前記第1の波長での前記薬物の吸光係数であり;
【数9】
は、前記第2の波長での前記抗体の吸光係数であり;
【数10】
は、前記第1の波長での前記抗体を含む前記試料の総吸光度であり;
【数11】
は、前記第2の波長での前記抗体を含む前記試料の総吸光度であり;
【数12】
は、前記第1の波長での前記抗体-薬物複合体を含む前記試料の総吸光度であり;及び、
【数13】
は、前記第2の波長での前記抗体-薬物複合体を含む前記試料の総吸光度である、前記方法。
【請求項3】
抗体-薬物複合体を含む試料における薬物/抗体比(DAR)を決定する方法であって:
前記試料を容器に入れる;
プローブを前記容器に対して移動させて、前記プローブを前記容器の底部に接触させる;
前記溶液を通る事前に選択した光路長を充足する所定の増分に従って、前記プローブを前記容器に対して移動させて、前記プローブを、前記容器の底部から前記試料を通るようにして移動させる;
第1の光波長(λ1)で、前記試料の吸光度の検出を行い、前記第1の波長は、前記抗体の所定の吸光度最大値である;
前記試料に対して前記プローブを移動させ、そして、前記第1の波長で測定するステップを反復する;
前記第1の光波長と光路長での吸光度から回帰直線を生成して、前記回帰直線の勾配を得る;
前記回帰直線の勾配を、前記第1の波長での前記抗体の吸光係数で割って、前記抗体の濃度を決定する;
第2の光波長(λ2)で、前記試料の吸光度の検出を行い、前記第2の波長は、前記薬物の所定の吸光度最大値である;
前記試料に対して前記プローブを移動させ、そして、前記第2の波長で測定するステップを反復する;
前記第2の光波長と光路長での吸光度から回帰直線を生成して、前記回帰直線の勾配を得る;
前記回帰直線の勾配を、前記第2の波長での前記薬物の吸光係数で割って、前記薬物の濃度を決定する;及び
決定した薬物の濃度と、決定した抗体の濃度とを使用して、DARを算出する;
ことを含む前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年9月8日に出願した、米国仮出願第62/556,153号の優先権を主張するものであって、本明細書の一部を構成するものとして、同出願の全内容を援用する。
【背景技術】
【0002】
抗体-薬物複合体(ADC)は、薬物分子の新たなクラスである。特定の標的を探し出して、強力な薬物を送達するという、それらが具備している能力は、標的をベースとした治療薬を開発する上で魅力的な選択肢である。ADCは、選択した化学リンカーを介して、強力な薬物分子をモノクローナル抗体に対して化学的に結合させることで生成する。モノクローナル抗体に結合した薬物分子の平均数を、薬物/抗体比(「DAR」)と称する。DARは、産物の有効性、安全性、及び/または、安定性に影響を及ぼし得るので、ADC産物の重要な品質特性である。したがって、信頼性が高く、かつ、ハイスループットな方法において、ADC産物のDARを評価する方法が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、公知の方法よりも優れた利点をもたらすADC産物のDARを評価する方法を提供する。具体的には、本開示の方法は、ハイスループットアプリケーションに使用することができ、及び/または、当該評価を行っている間にADC試料の希釈を必要とせずに使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
UV-Vis及びランベルト・ベールの法則
従来、DARは、UV-Vis分光法を使用して測定を行っていた(例えば、Chen,Methods Mol. Biol.1045:267-73(2013)を参照されたい)。この分析の基礎は、物質の吸光度と濃度との間の直接比例関係に関するランベルトの法則:
A=εcl、
であり、式中、Aは吸光度、εは吸光係数(物質の物理定数)、lは被検物質を含むセルを通る光路長、及び、cは、濃度である。
【0005】
UV-Vis分光法を使用するADC産物のDAR測定は、抗体の吸収極大(例えば、280nmなど)と、薬物の吸収極大(例えば、252nmなど)との差異を利用している。例えば、平均DARは、共役物質について280nmと252nmで測定した吸収の差異を使用して計算することができる。UV-Vis法は、当該技術分野では広く利用されているが、製剤スクリーニング研究に必要なスループットを欠いている。また、試料希釈をせずに使用することができず、試料希釈に起因する誤差が発生する。
【0006】
したがって、本開示は、少なくとも一部は、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、UPLC)、及び、勾配分光法を使用してDARを測定する代替方法に基づくものである。これらの方法は、再現性、精度、及び、感度に関して、UV-Vis分光法に対して、特徴決定と比較を行った。生成したデータは、UPLCをベースとしたDAR方法の使用を支持しており、従来のUV-Vis法のスループット制限を解消する。さらに、当該勾配分光法に基づいた方法を使用して、試料を希釈せずに、ADC試料を分析することができる。
【0007】
UPLCをベースとした方法
ある実施形態では、サイズ排除を使用してDARを決定する。一部の実施形態では、本明細書で開示した方法は、抗体-薬物複合体を含む試料を、サイズ排除クロマトグラフマトリックスに適用することを含む。一部の実施形態では、本明細書で開示した方法は、サイズ排除クロマトグラフマトリックスに、抗体-薬物複合体を含む試料に適用して、移動させることを含む。一部の実施形態では、ADC試料の総量を、分析のためにサイズ排除マトリックスに適用する。例えば、次のUPLCをベースとした方法論を使用して、DARを評価した。
【表1】
【0008】
280nmで収集したデータを、Empower’s Apex Track積分法と、ピーク肩検出とを使用して積分した。保持時間の積分範囲は、分子によるが、通常は、3~9分以内である。最大の高さと面積を持つピークを、「ネイティブ」、「メイン」、または「モノマー」ピークと分類した。「ネイティブ」ピークよりも早く溶出するあらゆるピークを、「HMW」ピークと分類した。「ネイティブピーク」より遅く溶出するあらゆるピークを、「LMW」ピークと分類した。
【0009】
各種の相対パーセンテージを、すべてのピークの総面積に対する個々のピークの面積の比率から計算した。以下の相対パーセント面積を、純度の指標として報告した:%総HMW、%ネイティブ(または、メインまたはモノマー)、及び、%総LMW。すべてのピークの総面積を合計し、そして、後続のDAR計算で使用した。しかしながら、一部の実施形態では、ネイティブピークの面積だけを使用する。
【0010】
252nmで収集したデータを、Empower’s Apex Track積分法と、ピーク肩検出とを使用して積分した。保持時間の積分範囲は、分子によるが、通常は、3~9分以内である。すべてのピークの総面積を合計し、そして、後続のDAR計算で使用した。しかしながら、一部の実施形態では、ネイティブピークの面積だけを使用する。
【0011】
DARは、280nmの合計ピーク面積(ADCのAmax)、及び、252nmの合計ピーク面積(薬物のAmax)から決定した。252nmは、ADCに使用する薬物複合体の一般的なAmaxであるが、例えば、公知の方法を使用して、特定の複合体に対して適切な波長を選択することができる。抗体に結合した薬物の量は、適用可能であれば、参照標準として裸の抗体を使用して、これらの2つの波長での合計ピーク面積の差異によって決定することができる。
【0012】
以下の(ランベルト・ベールの法則から導出した)2つの方程式を検証して、一貫性を実証した。
【数1】
【0013】
式1では、裸の抗体参照標準を使用する必要はない。しかしながら、252nmでの抗体と薬物の双方についての吸光係数(ε)を体系的に決定することが必要である。所定の波長での吸光係数は、公知の濃度の抗体または薬物のいずれかの溶液を使用して、所定の波長での吸光度を測定することで、ランベルト・ベールの法則から容易に計算することができる。
【数2】
【0014】
式2では、252nmでの抗体の吸光係数を決定する必要はないが、裸の抗体参照標準についてのUPLCデータを収集する必要がある。
【0015】
UPLCを例示したが、その他のサイズ排除クロマトグラフィー技術を、本明細書に記載した方法で使用することができる。サイズ排除クロマトグラフィーは、一般的には、サイズで分子を分離することを指し、当該クロマトグラフィーの溶出時間は、特定の分子に対して特徴的である。さらなる方法として、例えば、SEC-HPLC、逆相(RP)HPLC、RP-UPLCがある。
【0016】
一部の実施形態では、ADC試料は、サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、HPLCまたはUPLC)による分析の前に希釈しない。一部の実施形態では、ADC試料の総量を、サイズ排除クロマトグラフマトリックスに適用するので、ADC試料をサイズ排除クロマトグラフィーで分析する前に希釈をする必要はない。一部の実施形態では、約1μg/μL~約500μg/μLのADCを含有する試料を分析する。
【0017】
勾配分光法に基づいた方法
一部の実施形態では、ADC試料での抗体及び薬物の濃度を計算してDARを決定する。例えば、勾配分光法は、様々な光路長で溶液の吸光度を決定するための公知の方法である。次いで、様々な光路長での吸光度の値を使用して、ランベルト・ベールの法則に基づいて、溶液に含まれる化合物の濃度を計算することができる。勾配分光法を使用する方法とシステムは公知であり(例えば、米国公開第20120130649号を参照されたい)、また、市販されている(例えば、SoloVPE(C Technologies,Inc.,Bridgewater,NJを参照されたい))。このような方法とシステムを、ADC製剤に含まれる抗体と薬物の濃度を測定するために適応させ、そこからDARを決定した。
【0018】
例えば、ADC試料を、容器に入れることができる;プローブを当該容器に対して移動させて、当該プローブを当該容器の底部に接触させることができる;当該溶液を通る事前に選択した光路長を充足する所定の増分に従って、当該プローブを当該容器に対して移動させて、当該プローブを、当該容器の底部から当該試料を通るようにして移動させることができる;当該抗体の吸光度最大値で、吸光度を読み取ることができる;当該試料に対して当該プローブを繰り返し移動させて、測定を行うことができる;当該吸光度と光路長から回帰直線を生成して、当該回帰直線の勾配を得ることができる;及び、当該回帰直線の勾配を、当該抗体の吸光係数で割って、当該抗体の濃度を決定することができる。次いで、当該薬物の吸収極大を使用して、これらのステップを反復して、薬物の濃度を決定することができる。DARは、決定した薬物濃度と、抗体濃度とから計算することができる。
【0019】
一部の実施形態では、ADC試料は、勾配分光法で分析する前に希釈しない。一部の実施形態では、約0.1μg/μL~約500μg/μLのADCを含む試料を分析する。
【0020】
抗体-薬物複合体
本明細書で使用する用語「抗体-薬物複合体」とは、抗体を、生物学的に活性な細胞傷害性ペイロードまたは薬物に結合させて作り出すタンパク質のことを指す。抗体-薬物複合体(ADC)は、一般的には、当業者に公知の化学修飾/カップリング反応で作り出す。本明細書に記載した方法を使用して、あらゆる抗体-薬物複合体を分析することができる。
【0021】
一部の実施形態では、抗体-薬物複合体として、抗腫瘍抗体がある(例えば、Adler et al., Hematol. Oncol. Clin. North Am. 26:447-81 (2012);Li et al., Drug Discov. Ther. 7:178-84 (2013);Scott et al., Cancer Immun. 12:14 (2012);及び、Sliwkowski et al., Science 341:1192-1198 (2013)を参照されたい。)。表1は、公知の利用可能な抗体剤が標的とする特定のヒトポリペプチド抗原の非包括的リストであり、抗体剤が有用であると提案されている特定のがんの兆候を示している。表1の抗体のいずれもが、本開示の方法を使用して評価する抗体-薬物複合体に使うことができる。
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】
【0022】
一部の実施形態では、抗体-薬物複合体は、アポトーシス促進剤、細胞増殖抑制剤、及び/または、細胞傷害剤の1つ以上の薬物を含み、例えば、具体的には、望ましくない細胞増殖に関連する1つ以上の疾患、障害、または、病態の処置での使用のために利用する、及び/または、同使用において推奨を受けている作用物質がある。数多くの実施形態では、薬物は、がんの処置に有用な化学療法剤である。一部の実施形態では、化学療法剤を、1つ以上のアルキル化剤、1つ以上のアントラサイクリン、1つ以上の細胞骨格撹乱剤(例えば、タキサン、マイタンシン、及び、それらの類似体などの微小管標的化剤)、1つ以上のエポチロン、1つ以上のヒストンデアセチラーゼ阻害剤(HDAC)、1つ以上のトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、トポイソメラーゼI、及び/または、トポイソメラーゼIIの阻害剤)、1つ以上のキナーゼ阻害剤、1つ以上のヌクレオチド類似体、または、ヌクレオチド前駆体類似体、1つ以上のペプチド抗生物質、1つ以上の白金をベースとした作用物質、1つ以上のレチノイド、1つ以上のビンカアルカロイド、及び/または、以下の1つ以上の1つ以上の類似体(すなわち、関連する抗増殖活性を共有するもの)とし得る、または、これらを含む。一部の特定の実施形態では、化学療法剤は、アクチノマイシン、オールトランスレチノイン酸、アウリスタチン、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、クルクミン、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、マイタンシン、及び/または、その類似体(例えば、DMI)、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、メイタンシノイド、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及び、それらの組み合わせの1つ以上とし得る、または、これらを含む。
【0023】
一部の実施形態では、本開示の方法を使用して評価を受ける抗体-薬物複合体は、hLL1-ドキソルビシン、hRS7-SN-38、hMN-14-SN-38、hLL2-SN-38、hA20-SN-38、hPAM4-SN-38、hLL1-SN-38、hRS7-Pro-2-P-Dox、hMN-14-Pro-2-P-Dox、hLL2-Pro-2-P-Dox、hA20-Pro-2-P-Dox、hPAM4-Pro-2-P-Dox、hLL1-Pro-2-P-Dox、P4/D10-ドキソルビシン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ブレンツキシマブベドチン、トラスツズマブエムタンシン、イノツズマブオゾガマイシン、グレムタモマブベドチン、SAR3419、SAR566658、BIIB015、BT062、CMC-544、SAR3419、CDX-011、SGN-75、SGN-CD19A、AMG-172、AMG-595、BAY-94-9343、ASG-5ME、ASG-22ME、ASG-16M8F、MDX-1203、MLN-0264、抗PSMA ADC、RG-7450、RG-7458、RG-7593、RG-7596、RG-7598、RG-7599、RG-7600、RG-7636、ABT-414、IMGN-853、IMGN-529、IMGN-901、ボルセツズマブマホドチン、または、ロルボツズマブメルタンシンである(例えば、Sassoon et al.,Methods Mol.Biol.1045:1-27(2013);Bouchard et al.,Bioorganic Med.Chem.Lett.24:5357-5363(2014)を参照されたい)。
【0024】
用途
本開示の方法には様々な用途があり、例えば、原薬または製剤の製造における異なる段階での品質管理、原薬または製剤の製造の完了前、及び/または、完了後(例えば、充填/仕上げ環境、または、施設への流通の前後)、原薬または製剤の商取引に向けた出荷の前後(例えば、薬局、介護者、患者、または、その他の消費者に流通させる前)でのADC調製物の分析がある。一部の事例では、ADC製剤とは、原薬(医薬品有効成分、または、「API」)、または、製剤(ヒト患者などの対象での使用のために製剤したAPI)である。一部の事例では、ADC製剤は、介護者、または、その他の消費者に向けて流通させる前の製造または使用の段階から;シリンジ、ペン、バイアル、または、複数回投与バイアルなどの個々の剤形に包装する前から;試験証明書、Material Safety Data Sheet(MSDS)、または、分析証明書(CofA)の作成に先駆けて、バッチを商業流通させることが可能であると判断する前にある。
【0025】
本明細書に記載した方法での評価は、ADC製剤を、製造する、流通させる、及び、監視する、ならびに、安全で効果的な使用を提供するプロセスでの数多くの活動またはステップを案内する、制御する、または、実施する上で有用である。したがって、ある実施形態では、例えば、評価に応答して、例えば、基準(例えば、特定のDAR、平均DAR、及び/または、DAR範囲)が満たされるか否かに応じて決定が下され、または、ステップを実施する。本明細書に記載した方法は:(a)ADC製剤を、製剤原料または製剤へと加工し得るかどうかの決定;(b)ADC製剤を、再処理し得る(例えば、当該調製物を、従前のプロセスステップに改めて供し得る)かどうかの決定;及び/または、(c)当該ADC製剤が、原薬または製剤への加工に適していないとの決定を下すことを含み得る。一部の実施形態では、方法は:ステップ(a)で示した加工作業、ステップ(b)で示した再処理、または、ステップ(c)で示したように、例えば、ラベル付けする、または、使用不能にすることで、当該製剤を商品として流通できなくする、ことを含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体-薬物コンジュゲートを含む試料中の薬物/抗体比(DAR)を測定する方法であって、以下の:
前記試料を容器に入れ;
プローブを前記容器の底に接触させ;
前記プローブを、前記容器の底から、試料を通して所定の増分だけ移動させ、その結果前記試料を通過する予め選択された光路長を取得し
前記抗体の吸収極大である第一の光波長(λ1)および第二の光波長(λ2)において前記試料の吸光度を検出し、ここで前記第一の光波長は抗体の所定の吸光度極大であり、第二の光波長は薬物の所定の吸光度極大であり;
前記プローブを前記試料に対して移動させ、吸光度測定を行う工程を繰り返し;
第一の光波長における吸光度と光路長から回帰直線を作成し、回帰直線の勾配を取得し;
前記回帰直線の勾配を、第一の光波長における抗体の消光係数で割ることにより、抗体の濃度を決定し;
第二の光波長における吸光度と光路長から回帰直線を作成し、前記回帰直線の勾配を取得し;
前記回帰直線の勾配を、第二の光波長における薬剤の消光係数で割ることにより、薬物の濃度を決定し;そして
決定された薬物濃度と決定された抗体濃度を用いてDARを計算すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記サイズ排除クロマトグラフィーが、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)、逆相(RP)UPLC、または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料が、0.1μg/μL~500μg/μLの抗体-薬物-コンジュゲート(ADC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が抗腫瘍抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬物がアポトーシス促進剤、細胞増殖促進剤または細胞毒性剤である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記薬物が化学療法剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
化学療法剤が、微小管標的化剤、エポチロン、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチド類似体、ヌクレオチド前駆体類似体、ペプチド抗生物質、白金ベースの作用物質、レチノイド、またはビンカアルカロイドを含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記化学療法剤が、アクチノマイシン、オールトランスレチノイン酸、オーリスタチン、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、クルクミン、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン エポチロン、エトポシド、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イマチニブ、イリノテカン、メイタンシン、メクロレタミン、メルカプトプリン、メトトレキサート、 ミトキサントロン、メイタンシノイド、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、テニポシド、チオグアニン、トポテカン、バルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、またはビノレルビンを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が、アデカツムマブ、アドトラスツズマブ・エムタンシン、アレムツズマブ、アナツモマブ、アポリズマブ、バビツキシマブ、ベバシズマブ、ベクツモマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブ・ベドチン、カンツズマブ、カツマキソマブ、セツキシマブ、ダラツムマブ、デノスマブ、エドロコロマブ、エピツモマブ、エタラシズマブ、ファルレツズマブ、ゲムツズマブ・オザガミシン、グレムバツムマブ、イピリムマブ、イビリツモマブ、ラベツズマブ、ロルヴォツズマブ、ルカツムマブ、マパツムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ニモツズマブ、オピヌツズマブ、オファツムマブ、オレゴヴォマブ、パニツムマブ、ペムツモマブ、ペルツズマブ、リツキシマブ、シbロツズマブ、トシツモマブ、トラスツズマブ、ヴェルツズマブ、又はボロシキシマブを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記DARに基づいて、以下の:
(i)前記組成物を原薬または製剤に製剤化する工程
(ii)前記組成物を再処理する工程;または
(iii)商業的放出のために組成物を使用不能にする工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【外国語明細書】