(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071385
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】レーザー力細胞学を利用した高度な生物物理的および生化学的細胞モニタリングおよび定量化
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240517BHJP
A61K 35/12 20150101ALN20240517BHJP
A61K 48/00 20060101ALN20240517BHJP
A61P 31/00 20060101ALN20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20240517BHJP
A61P 37/02 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C12Q1/02
A61K35/12
A61K48/00
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024026734
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2020550828の分割
【原出願日】2019-03-20
(31)【優先権主張番号】62/645,652
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520228197
【氏名又は名称】ルマサイト, インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】シーン ハート
(72)【発明者】
【氏名】コリン ヘバート
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット マッコイ
(57)【要約】
【課題】中和アッセイおよび外来性物質試験といった先進的感染性アッセイの性能および客観的解析を強化を目的とする。
【解決手段】生物物理的および生化学的細胞モニタリングおよび定量のための知的アルゴリズム、方法論およびコンピュータ実装方法論に向けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学力および/または流体力を利用した差次的刺激に対する細胞応答を測定する方法であって、
様々な既知レベルの刺激または分析物で処理した生物学的細胞を含む最初のサンプルのセレクションを受け取り、
該サンプルに対して光学力ベースの測定を実施し、
応答メトリック(RM)を開発して、1もしくは複数の光学力または流体力ベースのパラメータに基づいて前記刺激に対する細胞応答を記述する
ことを含む方法。
【請求項2】
前記応答メトリックが追加の未知サンプルの応答を測定するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
許容可能な目標値の範囲内に入るRMを有することに基づいて、感染性の正確な測定値が決定されるまでサンプルの希釈液を分析することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
測定される前記サンプルが、細胞核、ミトコンドリア、または他の細胞以下の成分もしくは画分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記光学力および流体力がレーザー力細胞学に基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記最初のサンプルの応答メトリックを目標値と比較し、
最初の結果と期待応答または既知応答を支配するアルゴリズムに基づき、2番目のサンプルを選択し、
前記二番目のサンプルの応答メトリックを目標値と比較し、
目標応答メトリックまたは他の既定されたエンドポイントに適合するサンプルが同定されるまで、後続のサンプルを同様な方法で選択する
ことを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光学力ベースの測定が、レーザー力細胞学を利用して、線速度、サイズ、周長、サイズ(面積、直径、体積ほか)、サンプル当たりのトラップされる細胞の数、サンプル当たりのビーム放出細胞の数、凝集体の数(サイズおよび/または形状または他のパラメータに基づく)、破片サイズの粒子の数(サイズおよび/または形状または他のパラメータに基づく)、正規化速度、最小x位置、光保持時間、光トラップ時間、光学力、光学トルク、配向、光動力学および流体動力学、有効屈折率、偏心度、短軸、主軸、変形能、偏心変形能、正軸および短軸変形能、伸び率、コンパクト係数、真円度、グレースケール特徴を含む画像、全体像、画像成分または画像から導出されるパラメータ、形態学的特徴、または他のレーザー力細胞学から導出されるパラメータを含むパラメータを評価することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記生物学的細胞が、植物細胞(藻類細胞ほか)、原核細胞(細菌)、真核細胞、酵母、真菌、カビ細胞、赤血球、神経細胞、卵細胞(卵子)、精子、白血球、好塩基球、好中球、好酸球、単核、リンパ球、マクロファージ、血小板、小胞、エクソソーム、間質細胞、スフェロイドなどの多細胞構成体、間葉細胞、および人工多能性幹細胞(iPSC)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分析物がウイルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分析物が細菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記分析物がウイルスおよび抗体を含む中和血清(中和アッセイ)である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記分析物が細菌および抗体を含む中和血清である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記分析物が毒素および前記毒素を中和することができる(またはできない)血清中の抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分析物がウイルスおよび抗ウイルス性化合物または抗ウイルス性物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞が単層中もしくは懸濁液中に存在するかまたはマトリックス中に包埋されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞がアルギン酸塩、ゼラチンまたは他の同様な半固体懸濁液により懸濁される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記細胞が進行中のプロセスからサンプリングされ、そして追加のインキュベーションを伴わずに直接分析される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
較正用物体を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記較正用物体がビーズ、粒子、生物製剤、脂質、小胞、生存細胞、または固定細胞を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ビーズまたは粒子が、有機材料、ポリマー、金属、合金、ガラス、サファイアまたはダイヤモンドを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記較正用物体がナノメートルからミリメートルにサイジングされた球状または非球状である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記較正用物体が1つ以上のサンプルと混合されそして同時に分析される、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記較正用物体が、細胞の明視野画像解析、蛍光測定、または1以上の光学力ベースの測定に基づいて細胞サンプルから識別することができる、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
様々な濃度の薬剤(treatment)に対する細胞応答に基づいて較正曲線を作成し、次いでそれを用いて未知レベルのサンプルを予測する方法であって、
薬剤を添加しそしてサンプル細胞をインキュベートし、
流体力および/または光学力ベースの測定により、細胞を含む複数のサンプルおよび既知範囲の薬剤を分析して、応答メトリックを決定し、
希釈による傾向に基づいて最適応答メトリックと時間を決定し、
生成されたデータを利用して将来のサンプルを予測する
ことを含む方法。
【請求項25】
前記光学力ベースの測定がレーザー力細胞学を利用する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
測定される前記サンプルが細胞核、ミトコンドリア、または他の細胞以下の成分または画分である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記刺激がウイルス感染であり、そして前記濃度がウイルス力価である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
単変量メトリック、全母集団ヒストグラムデータ、サブセット母集団ヒストグラムデータ、K平均クラスタリング、PLS、PCA、ニューラル・ネットワーク、または多変量メトリックを構築するための他の多変量アルゴリズムもしくは機械学習アルゴリズムをはじめとする追加の解析を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
生物製剤分子の生産の間または他の進行中のバイオプロセスの間の細胞変化に基づいて較正曲線を作成する方法であって、ここで前記較正曲線は細胞応答を目的の生成物または細胞学的性質に相関させ、次いでその較正曲線を用いて将来のプロセスの結果を予測するものであり、該方法が
薬剤を添加しそしてサンプル細胞をインキュベートし、
光学力ベースの測定により、細胞を含む複数のサンプルおよび既知範囲の生成物濃度を分析して、応答メトリックを決定し、
希釈による傾向に基づいて最適応答メトリックを決定し、
生成されたデータを利用して将来のサンプルを予測する
ことを含む方法。
【請求項30】
前記光学力ベースの測定がレーザー力細胞学を利用する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
測定される前記サンプルが細胞核、ミトコンドリアまたは他の細胞以下の成分もしくは画分である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記生成物がウイルスベースの生成物、例えばワクチン、細胞溶解ウイルス、タンパク質、核酸またはウイルスベクターである、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記生成物が非ウイルス的に生産されたタンパク質、核酸、ポリマーまたは脂質である、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞学的性質が生産性、生存力または標的分子を生産する能力である、請求項29に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞学的性質が、分化状態、腫瘍などの特定細胞型を殺傷する能力、別の細胞型を活性化する能力、または別の細胞型の生化学的状態を改変する能力である、請求項29に記載の方法。
【請求項36】
単変量メトリック、全母集団ヒストグラムデータ、サブセット母集団ヒストグラムデータ、K平均クラスタリング、PLS、PCA、ニューラル・ネットワーク、または多変量メトリックを構築するための他の多変量アルゴリズムもしくは機械学習アルゴリズムをはじめとする追加の解析を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
絶対力価/感染性を計算するための方法であって、
光学力ベースの測定により、細胞およびウイルス原液の既知範囲の希釈液を含有する複数のサンプルを分析して、感染メトリックを決定し;
最大感染メトリックを示すサンプルを同定し;
最大感染メトリックを100%感染と設定し;
感染時の細胞の数、未感染細胞の割合(%)、感染を記述する数学的分布、およびその希釈液の箇所に添加されたウイルス原液の量に基づいて、各希釈液に添加されたウイルスの量(感染単位/mL)を計算し;そして
特定範囲内に入る希釈液のみを使用して、未知サンプルの総力価を予測する
ことを含む方法。
【請求項38】
前記光学力ベースの測定がレーザー力細胞学を利用する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
測定される前記サンプルが細胞核、ミトコンドリア、または他の細胞以下の成分もしくは画分である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記感染を記述する分布が、ポアソン分布、ベイジアン分布、または他の数学的分布である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
力価を計算しそして未知力価のサンプルを用いて未知ウイルス系から較正曲線を作成する場合に、感染メトリックを生成するため、感染後インキュベーション時間とレーザー力細胞学パラメータの両方を決定することを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項42】
ビーズまたは粒子のような較正用物体が、機器が一貫した方式で挙動しているという信頼性を高めるために用いられることを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記感染メトリックまたはより複雑な感染メトリックの一成分として、ヒストグラム、散布図および/または多変量データが全体的にもしくは部分的に使用される、請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記感染メトリックを生成するためにK平均クラスタリングが用いられる、請求項37に記載の方法。
【請求項45】
光学力ベースの測定の使用を含む外来性物質の存在を検出する方法であって、
追加のインキュベーションを伴わずにバイオリアクターまたは他の容器から直接細胞をサンプリングし、
細胞集団に対して光学力ベースの測定を行い、
測定された細胞応答と、正常な操作条件の下でのプロセスを記述する事前データセットとに基づいて、外来性物質を検出する
ことを含む方法。
【請求項46】
光学力ベースの測定の使用を含む外来性物質の存在を検出する方法であって、
懸濁培養物中または付着培養物中で増殖している細胞と試験サンプルを混合しそしてインキュベートし;そして
レーザー力細胞学によって試験サンプル培地中の外来性物質を検出する
ことを含む方法。
【請求項47】
前記試験サンプルと比較するための対照としてブランク細胞サンプルが用いられる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
バイオリアクターまたは他の生産プロセスから馴化培地が得られる、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
細胞が馴化培地に曝露される時間の量を、アッセイの最適化の一部として調整することができる、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)、ベビーハムスター腎臓(BHK)、または他の関連細胞もしくはその変異体である、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞が、Vero、HEK-293、MDCK、EB66、AGE1、WI-38、MRC-5、MARC 145、CRFK、A549、HL60、U937、SK-MEL-28、HCC2429、HEp-2、または他の関連細胞もしくはその変異体を含むがそれに限定されない、請求項48に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞がHeLa細胞である、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞が、遺伝物質を添加、変更または除去することによりまたは該細胞の生物学的もしくは物理学的状態を変更することにより、広範囲にまたは特異的にウイルス感染に感受性となるように化学的にまたは遺伝学的に改変される、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
前記細胞が、遺伝物質を添加、変更または除去することによりまたは該細胞の生物学的もしくは物理学的状態を変更することにより、広範囲にまたは特異的に細菌感染に感受性であるように化学的にまたは遺伝学的に改変される、請求項48に記載の方法。
【請求項55】
前記細胞が、遺伝物質を添加、変更または除去することによりまたは細胞の生物学的もしくは物理学的状態を変更することにより、広範囲にまたは特異的にウイルス感染に感受性であり、かつLFCを使った測定にとって良好な特徴を有するように、化学的にまたは遺伝学的に改変される、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記細胞が、遺伝物質を追加、変更または除去することによりまたは細胞の生物学的もしくは物理学的状態を変更することにより、毒素または特定の分子もしくは分子クラスに感受性であるように化学的にまたは遺伝学的に改変される、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記細胞がマクロファージ細胞である、請求項48に記載の方法。
【請求項58】
前記マクロファージが、その食作用活性または細胞応答に作用する化学薬品またはバイオ薬品で処理される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
後続の分析のために目的の細胞を選別しそして収集することを更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項60】
前記後続の分析が、ラマン分光法、蛍光分光法、質量分析法、ポリメラーゼ連鎖反応、単一細胞シーケンシング、次世代シーケンシング、およびフローサイトメトリー、蛍光サイトメトリー、質量サイトメトリーまたは画像サイトメトリーを含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
外来性物質の属性を決定するために光学力ベースの測定データに基づいて外来性物質を分類することを更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項62】
前記外来性物質が、ウイルス、細菌、細胞内細菌、マイコプラズマ、真菌、原生動物、寄生虫、または小分子を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項63】
人工ニューラル・ネットワーク、パターン認識、および予測解析ツールの使用を含む、前記物質を分類するステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項64】
前記人工ニューラル・ネットワークが、外来性物質を分類するために複数のレーザー力細胞学パラメータを使用する、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記複数のレーザー力細胞学パラメータが、線速度、サイズ、周長、サイズ(面積、直径、体積など)、サンプルあたりのトラップされた細胞の数、サンプルあたりのビーム放出細胞数、凝集体の数(サイズおよび/または形状または他のパラメータに基づく)、破片サイズの粒子の数(サイズおよび/または形状または他のパラメータに基づく)、正規化速度、最小x位置、光保持時間、光トラップ時間、光学力、光学トルク、配向、光動力学および流体動力学、有効屈折率、偏心、短軸、長軸、変形能、偏心変形能、短軸および長軸変形能、伸び率、コンパクト係数、真円度、グレースケール特徴を含む画像、全体像、画像成分または画像から導出されたパラメータ、形態学的特徴、または他のレーザー力細胞学から導出されたパラメータを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
分析を高速化するために前記複数の細胞系を同時に分析することができる、請求項46に記載の方法。
【請求項67】
光学力ベースの測定を使った外来物質試験方法であって、
小型バイオリアクター中で細胞系を増殖させ、
大規模プロセス用バイオリアクターから小型バイオリアクター中に馴化培地のサンプルをポンプで送り出し、そして
光学力ベースの測定を利用することにより、馴化培地中の外来性物質を検出する
ことを含む方法。
【請求項68】
前記細胞系が、前記大規模プロセス用バイオリアクター中に存在する任意の外来性物質による増殖と感染を促進するために懸濁細胞系であることができる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
細胞応答を生物学的状態と相関させる方法であって、
患者または他の生物学的源から細胞を受け取り;
患者からの細胞に対して光学力ベースの測定を実行し;
光学力ベースの測定データを出力し、ここで分析した細胞からのデータが、生物学的状態を示すために比較データと組み合わせて使用される
ことを含む方法。
【請求項70】
前記比較データが、疾患もしくは治療などの異なる状態および/または時点の下で同一患者から得られる、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記比較データが、異なる患者または複数の患者から得られる、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記生物学的状態が、感染症の診断および/または病原体の同定を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記生物学的状態が、ワクチンまたは抗体の効力を含む治療効果の評価を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項74】
前記生物学的状態が、免疫または薬剤耐性の評価を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項75】
前記生物学的状態が、癌、細胞の転移能の評価を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項76】
正常な細胞特性のベースラインを確立するために、同一患者から経時的にサンプルが収集される、請求項69に記載の方法。
【請求項77】
前記生物学的状態が、細胞療法または遺伝子療法による治療を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項78】
前記レーザー力細胞学が、線速度、サイズ、周長、サイズ(面積、直径、体積など)、サンプルあたりのトラップされた細胞の数、サンプルあたりのビーム放出細胞数、凝集体の数(サイズおよび/または形状または他のパラメータに基づく)、破片サイズの粒子の数(サイズおよび/または形状または他のパラメータに基づく)、正規化速度、最小x位置、光保持時間、光トラップ時間、光学力、光学トルク、配向、光動力学および流体動力学、有効屈折率、偏心、短軸、長軸、変形能、偏心変形能、短軸および長軸変形能、伸び率、コンパクト係数、真円度、グレースケール特徴を含む画像、全体像、画像成分もしくは画像から導出されたパラメータ、形態学的特徴、または他のレーザー力細胞学から導出されたパラメータを含むパラメータの評価を含む、請求項69に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は一般に、光学力および/または流体力、並びに知的アルゴリズムを利用して差次的刺激に対する細胞応答を測定し、生物物理学的および生化学的細胞モニタリングおよび定量化のための方法論をもたらすことに関し;幾つかの実施形態では、本明細書の方法論がコンピュータで実行される。本明細書に記載の実施形態は、中和アッセイと外来性物質試験(AAT)を含む高度な感染性試験の高性能でかつ客観的な解析の実施可能性を含む。本明細書に記載の方法は、レーザー力細胞学(LFC)のような光学力ベースの測定を利用する。具体的には、本開示は、中和アッセイや他の機能アッセイのためのマルチウェルプレートの自動スキャニングおよび分析のための自動化アルゴリズムと感染メトリック計算を記載する。加えて、このようなアッセイに利用することができる感染モデルを拡張するため、並びに外来性物質(AA)サンプルと培養物をモニタリングし、評価しそして定量する能力を拡張するために、懸濁細胞またはマトリックス包埋細胞を使用することができる。
【背景技術】
【0002】
現在、血清ウイルス中和アッセイは、ウイルス感染および/または複製を阻害するためのin vivoで誘起される免疫能を分析するためのゴールドスタンダード(究極の判断基準)である。中和アッセイは、培養中細胞におけるウイルス感染および/またはその後の複製を低減するまたは阻止する、血清由来抗体の効力を測定するために用いられる。基本的には、感染性ウイルス剤とin vivoで誘起された血清抗体との組み合わせを用いてヒトまたは動物細胞をin vitroで処理し、血清由来抗体が細胞内のウイルス剤の感染および/または複製に対して特異的でかつ有効であるか否かを調べる。これらのタイプの分析実験には、追加分析が必要である。プラークアッセイとプラーク減少中和試験(PRNT)は共に、サンプルの単位容量あたりの感染性ウイルス粒子の数を測定し、後者の試験は更に、中和血清または他の薬剤の結果として感染単位の減少を測定する。該アッセイは、ウイルス含有溶液をプレート中の増殖している付着細胞の上にのせ、オーバーレイ(典型的にはアガロース)を適用してウイルスの自由な拡散を防止し、次いで、単一の感染性ウイルス粒子の結果として死細胞または透明になった細胞(プラーク)の領域が出現するために3日~15日間待つことを含む。同様に、組織培養感染用量50(TCID50)は、エンドポイント希釈アッセイを行うことによる、特定の容量中の感染性ウイルスの濃度の1つの尺度(評価基準)である。TCID50は、培養液中の細胞を接種したウェルの特定バッチの50%を感染させるのに必要なウイルスの希釈度として定義される。これらの方法は数十年間にわたり使用されてきたが、実験とオペレータとの間の結果の信頼性と再現性に関して、それらの方法を実行するのに固有の課題がある。懸濁液中の細胞を分析することに関して、多数のサンプルの必要性(希釈度計算のため)、時間のかかる主観的な分析技術、並びに細胞の処理に起因する細胞死および/または感染パラメータの変化といった望ましくない結果というアッセイの制限も存在する。多数の希釈が必要とされる理由は、現行の方法論のダイナミックレンジに制限があるためと、現行の方法論が高度に変動的であるためである。
【0003】
従来技術は、光学密度および種々の制約を使用して、各サンプルの最大光学密度を分析してプロットするなどの中和力価を決定するための方法および装置を記載している(米国特許公開第2013/0084560号公報、これは参考により本明細書中に組み込まれる)。この米国特許公開第2013/0084560号は、しかしながら、光学密度のみを使用しており、マイクロ流体力および/または光学力を利用せず、また、自動リアルタイムグリッド検索アルゴリズムを利用することで、実験の結果を決定するためにどのサンプルを読み取り/解析する必要があるかを計算することによる、追加の知能の利用を組み入れてもいない。別の半自動化システムは、米国特許第4,329,424号明細書に記載されている。しかし、この方法は、抗原を利用し、光学力は利用せず、完全に自動化されていない。
【0004】
更に、米国特許第8,777,347号明細書は、実験操作に必要とされる安全対策を減らすためにフローサイトメトリーによってモニタリングされる、不活性化された蛍光標識ウイルスの使用を記載しており、そして欧州特許第1140974号明細書は、偽ウイルス粒子レポーター遺伝子の使用を記載している。その両引用文献は、アッセイに使用するサンプル細胞または感染性物質の面倒なタグ付けまたは標識のために、多数のサンプルを分析しなければならないという点で制限をうける。細胞および感染性物質の修飾は、感染力および/または機能を活性化する、差別化する、または変更することが示されている。従って、分析にそのような修飾を要する伝統的方法に代わる理想的代替法として、無標識(label-free)分析が必要とされている。
【0005】
更に、国際公開第WO19890006705号パンフレットは、レトロウイルスを検出しそして中和抗体を測定するための、プラーク転写アッセイの使用を記載しているが、その教示は実験者を単層細胞タイプの使用のみに限定する。実際には、当業者に周知のように、単層を形成する細胞に全てのウイルスが感染するわけではない。必要とされるのは、感染試験と分析のための懸濁細胞またはマトリックス包埋細胞の使用を可能にし、それによりウイルス感染の実験において多種多様な細胞型を使用可能にする方法と装置である。
【0006】
米国特許第6,778,263号明細書のような先行技術は、較正用物体(オブジェクト)(例えばビーズまたはセル)の使用を記載しているが、そのような教示は、時間差積分(TDI)検出器のみの状況下での較正用物体の使用を記載しているという点で制限をうける。TDI検出器の機能は、被検体(specimen)の流れと同期して、固体検出器(電荷結合素子アレイなど)内の光子誘起電荷の線をシフトさせることに頼っており、このシステムの性能を向上させるために較正用物体が使用される。さらに、従来技術の較正ビーズは、フローの較正とTDI検出器の位置合わせに限定されているだけでなく、それらはデータ補正、正規化、定量化、または屈折率(例えばビーズ/人工細胞の屈折率の比)のような物理的もしくは化学的情報の計算用に分析情報を較正するためには使用されない。光学力、光学トルク、光動力学、有効屈折率、サイズ、形状、または関連する測定値などの測定値を説明する較正物体の教示または使用が欠けており、ここで前記物体は、ポリマー、ガラス、生物製剤、脂質、小胞または細胞(生存または固定)ベースの物体である。さらに、目的の粒子に関連した特性を持つが、目的のサンプルに関するデータ収集を妨害しない、較正用物体の教示もまた欠如している。
【0007】
生物物理学的および生化学的プロファイルのような多数の識別特徴に関して、生物学的成分とシステムを効率的に特徴づけるための改良された方法および装置が必要とされている。特定の実施形態では、このような方法および装置は、ウイルスベースのワクチン接種または創薬試験から誘導されたものなどのサンプルに適用可能な知的アルゴリズムと方法を含むべきであり、それらのアルゴリズムと方法論は、完全なまたは枯渇した細胞単離物を、細胞型間、被験者のグループ間、または試験間でも、感染性パラメータの偏差について検査できるようにする。他のサンプル処理としては、血清抗体の評価、抗ウイルス性化合物、抗菌性化合物、毒素、毒性工業原料、または化学物質(TIM/TIC)、寄生虫、並びにCAR T細胞や腫瘍溶解性ワクチンなどの遺伝子療法または細胞療法用製剤の評価を含むことができる。また、マルチファセット光学力ベースの測定を用いて感染性物質の感染力を測定するために使用される細胞系または初代細胞を含む、細菌に対して感受性であるように設計された細胞(低い反応閾値)を用いる細菌の中和アッセイも必要とされる。そのような方法と装置は、理想的には、馴化培地のようなバイオ生産用液体またはバイオリアクターもしくは他のそのような容器から得られるもののような目的の別のサンプルの分析を通した外来性物質試験に有用である、感染性測定結果の定量を可能にするだろう。
【発明の概要】
【0008】
感染性アッセイ(例えば中和アッセイ、TCID50および臨床試料操作)などの生物学的細胞および系の特徴付けのための現在利用可能な手順と分析方法は、広範な希釈、潜在的に有害なタグ付け手順を必要とし、実験内および実験間並びに試験内および試験間の比較を困難にし、そして下流の細胞用途を限定されたものにする、高度に変動的な結果をもたらす。本発明は、光学力をベースにした技術(レーザー力細胞学(LFC)など)を使用して、タグ未標識の細胞サンプルの改良型自動スキャンのための知的解析プログラムを含む、生物物理学的および生化学的な細胞モニタリングと定量化に関連する新規方法を提供することにより、上記のような制限を克服する。この方法は、分析の間、正規化され一貫性のある細胞評価を可能にしながら、サンプル希釈、最終的にサンプル検体の要件を減縮し、更には分析に要する時間およびそれに伴うコストの削減をもたらす。さらに、本開示は、中和または他の機能アッセイのための感染モデルのダイナミックレンジを拡張する、分析用の懸濁細胞またはマトリックス包埋細胞の使用を可能にする。さらに、本発明の方法は、コンピュータで実行することができ、それによって効率、信頼性および再現性を向上させることができる。
【0009】
レーザー力細胞学(LFC)の大前提は、マイクロ流体力学と光誘起圧力の組み合わせを利用して、光学力または圧力、サイズ、速度、およびその他のパラメータを含む光学測定値を1細胞あたりのベースで取得することである。LFCは好適な一実施形態であるが、本発明によれば、他の光力学ベースの技術を利用してもい。中和、TCID50、並びにウイルス力価と感染性(両者は互いに同義語である)を決定するための他のアッセイのスキャニングと分析、並びにウイルス力価と感染性を決定するための他のアッセイ(両者は互いに同義語である)および濃度測定へのLFCの応用、非免疫処置血清のみで処置した細胞(対照またはプラセボ)と比較した時の、抗体含有血清と共におよび/または着目のウイルスと共に共培養された細胞の細胞変性効果を示唆する細胞特性の変化を、測定することによって行われる。さらに、血清の不在下でウイルスと共に共培養した細胞を用いて、初代細胞または細胞培養源から派生した細胞の感染率を決定することができる。以降、中和アッセイへのいずれの参照も、通常の応用としてTCID50またはプラークアッセイへの参照を含むと見なされるだろう。
【0010】
本発明は、サンプルの読取りと分析に関する客観的な使用容易さを向上させながら、実験の主観性、時間およびコスト要件に関連した課題を軽減する。これは、知的アルゴリズム(IA)を使用して、人的計算とは無関係に希釈度および/または力価測定および要件をスキャンしそして自動的にかつアルゴリズム的に計算することにより可能であり、特定の実施形態ではコンピュータ実行プロセスにより可能である。知的アルゴリズムは、感染性や感染メトリック(例えば低、中または高感染性範囲)のような可変結果を包含するファジー理論を含む、複雑な命令セットを必要とするものである。IAは、ニューラル・ネットワーク(NN)(誤差逆伝搬または確率的NN)を含む人工知能(AI)概念または機械学習の概念も含み、較正データを現サンプルに適用してサンプリング用の最適グリッド検索パターンを良好に推定することができる。本明細書中に開示される新規方法論は、最終的に実験あたりに要する希釈の数を減らし、それによって実験者の調達、時間および高度に訓練された人員による結果分析の必要性、並びに中和アッセイ力価の定量に現在必要とされているような、レポーター遺伝子、抗体または他の染色/標識機序の使用を排除する。
【0011】
本発明は、光学力および/または流体力を利用して、差次的刺激に対する細胞応答の測定を最適化し、生物学的系の一貫した信頼性のある特性評価の送達を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、連続希釈液(100)を選択し、細胞培養ウェルプレート上でTCID50/mLまたは中和率(%)を計算し、そしてその結果を感染メトリック/mL "IM" (120)として定義するための知的アルゴリズム(IA)プロセスの一例である。さらにIA(100)は、細胞の細胞変性効果%(%CPE)の定量測定と結果の解析(140)を用いて、希釈液と複製物との間の補間を可能にする。
【
図2】
図2は、光学力ベース技術の一実施形態であるRadiance
TM(商標)が、本開示中の
図1に記載されるように、中和アッセイ(200)とTCID50アッセイ(220)への適用のために(100)を使用してどのようにサンプル含有培養プレートを操作するかを詳述した図を表す。
【
図3】
図3は、内部較正標準として使用することができる細胞サンプルに添加された較正ビーズの使用を示す概略図である。
【
図4】
図4は、外来性物質試験(AAT)のためのバイオリアクターサンプリングと分析へのRadiance
TM(商標)の使用を示す。
【
図5】
図5は、Rasiance
TM(商標)を使ったAAT評価とモニタリングの戦略を表す。
【
図6】
図6は、ウイルスCPEとCHO細胞中でのその複製の概略表である。
【
図7】
図7は、同時に複数の細胞型を使ったAATのLFC多重化アッセイの実施可能性を示す。
【
図8】
図8は、大量生産バイオリアクターから直接サンプリングすることによるAATのLFC分析を表す。
【
図9】
図9は、CMでスパイクした懸濁細胞を処理する小型バイオリアクターを使ったAATのLFC分析の描写である。
【
図10】
図10は、AATのLFCマクロファージアッセイを示す模式図である。
【
図11】
図11は、本明細書中で使用される知的アルゴリズムの開発を示す要約を提供する。
【
図12】
図12は、本明細書中で使用される知的アルゴリズムを示すフローチャートを提供する(IMは感染メトリックであり、OLDRは最適線形ダイナミックレンジである)。
【
図13】
図13は、知的アルゴリズムを適用する潜在的な事例を表すグラフを提供する。
図13(A)中間力価、
図13(B)高力価、
図13(C)低力価、
図13(D)低力価(過度な希釈)、および
図13(E)高力価(不十分な希釈)。
【
図14】
図14は、力価を計算した後、未知力価のサンプルを用いてウイルス系から較正曲線を作成するための概要を提供する。
【
図15】
図15は、力価を計算しそして未知力価のサンプルを有する未知の(または十分に理解されていない)ウイルス系から較正曲線を作成するための概要を提供する。
【
図16】
図16は、水疱性口内炎ウイルスに感染したVero細胞の感染メトリック対MOIを示すグラフである。
図16(A) MOI 0.125、
図16(B) MOI 0.5、
図16(C) MOI 4。
【
図17】
図17は、付着性HEK 293細胞におけるアデノウイルス感染(Ad5)の様々な測定を示す4つのグラフに代表的データを提供する。
図17(A)サイズ対速度の散布図、
図17(B)速度対頻度を示すヒストグラム、
図17(C)一定範囲のMOI値についての多変量感染メトリックを示す棒グラフ、および
図17(D)ウイルス力価(PFU/mL)に多変量感染メトリックを関連付けた散乱図。
【
図18】
図18は、Radiance
TM(商標)データのK平均クラスター分析を示す。
【
図19】
図19は、絶対力価/感染性を計算するための概略図である。
【
図21】
図21は、感染性と絶対力価の結果を示すグラフである。
【
図22】
図22は、ANNを使ったウイルスのLFC判定を示す。
【
図23】
図23は、プラセボ患者についての疾患検出またはワクチン効力のバイオマーカーとして細胞応答を評価するためのステップを要約した図である。
【
図24】
図24は、患者被験者についての疾患検出またはワクチン効力のバイオマーカーとして細胞応答を評価するためのステップを要約した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、様々な特徴を有する特定の実施形態を参照して記載される。本発明の範囲または精神から逸脱することなく本発明の実施に様々な修正と改変を成し得ることは当業者に明白であろう。当業者は、それらの特徴が、所定の用途または設計の要件および仕様に基づいて、単独でまたは任意の組み合わせで使用できることを認識するだろう。当業者は、本発明の実施形態のシステムとデバイスを本発明の方法のいずれかと共に使用できること、および本発明のいずれかの方法が本発明のシステムとデバイスのいずれかを使って実施できることを認識するだろう。様々な特徴を含む実施形態は、それらの様々な特徴から成るかまたはそれから本質的に成ることができる。本発明の他の実施形態は、本発明の明細書およびプラクチスを検討することから当業者に明白であろう。提供される本発明の記載は、単に例示的な性質のものであり、従って本発明の本質から逸脱しない変形は本発明の範囲内にあると意図される。
【0014】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明が下記の説明中に与えられるまたは添付の図面中に描写される構成要素の構成と配置の細部に本発明の適用が限定されないと理解すべきである。本発明は、他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施もしくは実行することができる。また、本明細書中で使用される表現法および専門用語は、説明目的であり、限定するものとして解釈してはならないことを理解すべきである。
【0015】
別段に定義されない限り、本明細書中で用いられる全ての技術用語および科学用語は、本技術および方法により包含される当業者により一般に理解または使用されるものと同じ意味を有する。
【0016】
2018年3月20日出願の米国仮特許出願第62/645,652号を含む、本明細書中に言及されるテキストと参考文献は、その全内容が本明細書中に援用される。
【0017】
一実施形態では、光学力および/または流体力を利用して、差次的な刺激に対する細胞応答を測定する方法であって、そのような方法は、様々な既知レベルの刺激または分析物で処理した生物学的細胞を含む初期サンプルの選択を受け取り、そのサンプルに対して光学力ベースの測定を実施し、1もしくは複数の光学力もしくは流体力ベースのパラメータに基づいた前記刺激に対する細胞応答を記述する応答メトリック(RM)を開発することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、コンピュータで実行され得る。
【0018】
図1に描写される通り、知的アルゴリズム(100)は、細胞の変化、例えば限定されないが、細胞変性効果(CPE)(例えばウイルス、細菌または毒素の作用の%CPE)を読み取り(検出し)、分析し、そして推測するために用いるべく設計される。あるいは、例えば限定されないが、有効屈折率またはサイズ正規化速度をはじめとする任意のLFCで測定されたパラメータが、マルチウェルプレート(96ウェルプレートが好ましい態様であるが、「ウェルプレート」は以降、任意のウェルプレート、例えば限定されないが任意数のウェルまたはパターンを含むウェルプレート、または容器(例えば
図4参照)を意味するものと解釈することができる)中に含まれるサンプルの細胞変化(%CPEの代わりに)を記述するために用いられる。一実施形態では、アルゴリズムソフトウェアが機器分析を開始し、開始ウェル位置における細胞変化、すなわち%CPEの検出を開始する。種々の態様において、この開始位置は、経験に基づいてまたは別の予めプログラムされたホーミング座標に基づいて、ユーザーにより選択することができる。種々の実施形態では、このアルゴリズムは、観測されたデータ、該データの傾向および/またはソフトウェアに予めロードされている実験レイアウトに基づいて、より高いまたは低い希釈度を有するウェルを自動的に選択するだろう。具体的には、サンプリングは、ユーザーのインプット(入力情報)または事前の知識に基づいて、中間の希釈度または未処理の対照の位置から開始する。分析すべき次のサンプルは、最初のサンプルの定量的結果に基づいて選択される。より具体的には、感染性測定の場合、これは%CPEを指すことができる。よって、%CPEが目標(ターゲット)感染性値(例えば50%)より高い場合、次の分析サンプルは、より大きい希釈率を含むもの(例えばウイルスや中和剤のような分析物がより低い濃度のもの)であるだろう。サンプルの移動間隔の大きさは、測定値の大きさに依存する。例えば、最大(100%)に近いCPE値は、2~3つ分の希釈度だけ下に移動することを許可する。一方、所望の値(50%)に近いCPE値は、1つ分(1)の希釈度だけ下に移動することを要求するだろう。逆に、初期測定値が目標値よりも低い場合は、次の測定サンプルはより小さい希釈率(より高い濃度の分析物)であり、そして間隔の大きさは、同様に測定値の大きさに基づくだろう。サンプリングされる次の希釈液は、目標希釈度が同定されるまでまたはプレート(一部または全体)が分析を終了するまで、同様な方式で選択される。その後、感染力の正確な測定値が決定できるまで、同じ希釈度の複製物がサンプリングされる。事前の知識または予想される感染性レベルもしくは分析物のレベルの理解が限られる場合、サンプリングを中間位置で開始し、そして目標感染性値が同定されるまで、測定値に基づいて自動化方式で進行される。かくして、本明細書中に提供される新規方法は、伝統的な中和アッセイにより要求される数に比較して、要求されるサンプル希釈液の数を削減し、さらに知的アルゴリズムの適用によりウェルプレート分析に要する時間を減縮し、そして光学力ベースの技術、例えばレーザー力細胞学(LFC)の使用により大きなダイナミックレンジを利用可能にする。一実施形態では、使用される光学力ベースの技術はレーザー力細胞学(LFC)を含むが、しかしながら、本明細書中に記載の本発明と共に別の光学力ベースの技術、例えば限定されないが、光学クロマトグラフィー、交差型光学クロマトグラフィー、レーザー分離、直交レーザー分離、光ピンセット、光学トラッピング、ホログラフィック光トラッピング、光学的操作、およびレーザー照射圧を使用することができる。
【0019】
別の実施形態では、IA(100)は、種々の時点、希釈度、または1以上のサンプリング時点における試薬の変動をはじめとする所定の条件について自動的に検索するように設定することができる。従って、IA(100)は、光学力測定(すなわちLFC)を使って最低希釈度をモニタリングし、濃度およびサンプリング要件を推定し、予測し、そして次の分析への推定値を計算し、そして感染メトリック/mL("IM")(120)の計算を可能にすることができる。本明細書中で用いる場合、感染メトリック("IM")または応答メトリック("RM")という用語は、細胞計数、速度(飛行時間の間の速度変化と位置の変化を含む)、光学力、サイズ、形状、アスペクト比。偏心、変形能、配向、回転(頻度と位置)、屈折率、容積、粗度、細胞の複雑さ、コントラストに基づく画像測定値(例えば空間周波数、時間と空間の強度変化)、3D細胞画像またはスライス、レーザー散乱、蛍光、ラマンまたは他の分光計測、並びに細胞もしくは細胞集団に関して行った、サンプル中の細胞変化またはウイルス/細菌感染力のレベルを反映している別の測定またはその任意組み合わせ、を考慮に入れた特定のパラメータまたは値を指す。一実施形態では、RadianceTM(商標)〔LumaCyteTM(商標)社(米国バージニア州シャルロッテビル)から入手可能であるレーザー力細胞学機器〕のようなデバイスが光学力ベースの測定に使用されるが、当業者に明らかなように、LFCを含む光学力測定を実施できる他のデバイスや方法も、本発明に関連した使用に適当であるだろう。(明確化のため、感染メトリック(IM)と応答メトリック(RM)は、実施される測定のタイプによって互換的に用いることができる。)
【0020】
図1において(120)と表記された1つのIA実施形態は、様々なレベルの感染性のサンプル数を測定して、測定されるRadiance
TM(商標)特異的パラメータが感染によってどのように変化するかを決定することにより具現化される。
図1に示す通り、LFC機器("Radiance
TM")関連ソフトウェアは、それらのパラメータを1細胞ベースで測定したときに各サンプルについて(120)を自動計算する。(120)は、従来のTCID50、pfu/mL、感染多重度(MOI)または他の既知の感染値と同等であり得るが、細胞集団についての追加の定量的情報も含む。単一細胞マルチパラメータ解析は、細胞集団とウイルス株感染率におけるより高感度のシフトまたはその間の差異を検出することができるデータを導出する。種々の細胞系やウイルス株への(120)の適用は、代替法として、感染モデルとワクチン接種または非ワクチン接種サンプルからの血清との間の差異(variance)または類似性を相関させるように正規化することも可能である。ここで、血中の薬物またはワクチン誘起抗体のレベルを細胞への効果として調べることができる。さらに、細胞の細菌感染またはウイルス感染の結果を、様々な傾向研究と細胞集団比較研究の間でおよび研究全体に渡り更に比較することができる。
【0021】
(100)を分析ウェルからの外挿データに合わせることにより、%CPE(140)の定量測定を用いた希釈と複製との間の補間(内挿)を行い、観測された現象に直接相関する高精度でかつ高感度の分析のために、隙間のlogまたは指数データ点を決定することができる。この予測アルゴリズム測定法は、将来の実験とサンプル操作のために所望の希釈または複製戦略(stratagem)をユーザーに知らせることができる。
【0022】
図11、
図12および
図13は、感染性を測定するための実施例1Aの詳細に関するさらなる詳細を提供する。この実施形態は、Radiance
TM測定に基づく感染性ウイルス力価(感染力)の計算を記載しているが、アルゴリズムは同様な方法で他のシステムに適用することができる。
図11は、この特定の実施形態の仮定と目標を列挙する図である。具体的には、この仮定は、Radiance
TM測定に基づき感染メトリックが同定されていること、対照(非感染;コントロール)値と感染メトリックの最大値がウイルス/細胞の組み合わせについて既知であること、および較正曲線に対する適合のタイプが既知であることを含む。IAの目標は、感染性ウイルス力価または感染性の正確さ、精度およびシグナル対ノイズ比(S/N比)を最大にするRIMの1または複数の値を取得することである。これを確証するRIMの値には一定範囲があり、それは以前のデータに基づいて計算され、較正曲線の作成に利用される。この範囲は、較正曲線の最適線形ダイナミックレンジ(OLDR)の項であり、1個のウイルス/細胞系当たりに対して調整することができる。さらに、複数の値がOLDR内で測定され、その後、その全ての値が感染性ウイルス力価または感染性を計算するために用いられる。
【0023】
図12は、例示的アルゴリズムを説明するフローチャートを示す。第一ステップはサンプルを測定することであり、その最初のサンプルは通常、希釈値の範囲の中間にある。RIMの値がOLDRの外側にある場合、異なるウェルがサンプリングされ、IMが低すぎる場合にはより高濃度のウイルス(分析物)の方に移動し、IMが高過ぎる場合にはより低濃度のウイルス(分析物)の方に移動する。一旦IMの値がOLDR内に入ると、そのサンプルが真にOLDR内に存在するか否かを確認するチェックが行われる。これを行う理由は、
図13に示されており、これはウイルス(分析物)の濃度の変化に従ったIMの変動を示す、いくつかの例示的なグラフを示している。いくつかの場合(図中A.中力価に示される)、IMの値は高濃度の分析物ではプラトー(平坦)であり、その場合、単一の測定値が実際にOLDR内に存在するかどうかについての混乱の可能性が低いだろう。他の場合(図中B.高力価に示される)では、OLDRの外側にある非常に高濃度でのIMの値は、実際にOLDR内に存在する値と同一であるかまたはそれより低くてもよい。従って、
図12の例示的アルゴリズムの一部としてチェックを行い、値がOLDR内にあることを確証しなければならない。チェックの第一部分は、IMの必ずしも一部でないサンプルの他の特性および測定値が、サンプルが真にOLDR内にあるか否かを決定するために使用できるかどうかを調べることである。これは、該システムの生物学に関する従来の知識に加えて、LFCシステムで行われた他の測定結果に基づくことができる。OLDRを確認するために他のメトリックが利用可能である場合、その試験の結果に従ってアルゴリズムが進行する。他のメトリックがOLDRを確認した場合、測定は完了し、力価(感染力)を計算することができる。他のメトリックがOLDRを確認できない場合、次の最高濃度のウイルス(分析物)についてIMが測定される。OLDRを確認するために利用可能な他のメトリックが存在しない場合には、同じステップが実行される。より高いウイルス濃度のIMに基づいて、アルゴリズムはそれに応じて進行する。IMが較正曲線の事前知識(情報)に基づいて期待量だけ変化した場合、その値が真にOLDR内にあることが確認され、測定が完了する。そうでない場合には、値はOLDRの外側にあり、高過ぎる可能性があり、従って測定される次のサンプルはウイルス濃度で3段階低い位置にある。
【0024】
図13には、ウイルス(分析物)濃度の変化に伴うIMの変動の潜在的傾向または事例を説明する追加の例が示されている。既に説明した2つの事例に加えて、13Cはサンプリングされた容量において、より少ない値がOLDR内に存在するように低いウイルス初期濃度を示す。一方で13Dは、測定された希釈液の全てがOLDRの外側にあるように初期濃度が低いことを示す。最後に、13Eは、全ての値がOLDRの外側にもあるように高い初期濃度を示す。
【0025】
図2の概略図は、以前に特許付与されたレーザー解析およびソーティング(選別)技術(Radiance
TM)を示しており、これは参照により本明細書中に援用され、多数の患者血清-ウイルス希釈液と目的の細胞とを含む中和アッセイからサンプルが誘導され、そしてLFC(200)により分析されるという背景技術および好ましい実施態様の適用のための技術である。中和アッセイには、血清とウイルスが一定期間に渡りウェルプレート中でインキュベートされ、その後で細胞と組み合わされ、次のインキュベーションが行われる。インキュベーション期間の後、サンプルが(120)の計算を含む感染性の値を決定するためにRadiance
TMにより分析される。伝統的な中和アッセイは、アッセイ性能のために付着細胞の使用を本質的に必要とする。ウイルスは懸濁状態での増殖と感染を要求する(生理学的要求)多数の哺乳類と昆虫細胞系に感染するため、これは中和アッセイ研究に利用するモデルを制限する可能性がある。Radiance
TMは、サンプルを処理および測定するための技術に平板型のウェルプレートまたは付着細胞を必要としないことにより、中和アッセイや他の感染性アッセイにおける懸濁細胞の分析を可能にする。懸濁細胞(160)の使用はさらに、潜在的により均一な感染と、長時間に渡る同一のウェルのサンプリング(定期的サンプリング)を可能にする。別の実施形態では、細胞はサンプリング前に、長いインキュベーション時間の間の組織培養プレート表面への付着を減らすためにそして/または生体内(in vivo)条件を代表するような物理的環境を提供するために、アルギン酸塩、ゼラチンまたは他の同様な半固体懸濁液中に懸濁させることができる。懸濁マトリックスの潜在的使用は、希釈細胞を、別の細胞からの潜在的に干渉性の接触シグナルから相対的単離された形で感染させることができるようにし、従来技術により現在具体化されているものよりも感染モデルに対し一層正確に生理学的関連性を持つものにできる。さらに、Radiance
TMおよびIA(100)は、ウイルスまたは他の病原体について中和%を計算できるようにする。一実施形態では、Radiance
TMおよびIA(100)は、TCID50またはプラークアッセイ(220)においてCPEまたはプラーク形成能を自動的に分析し採点するために、並びにAATに利用することができ、そこでは細菌、ウイルスまたは別の病原体の存在を検出するために感染細胞が定期的にサンプリングされる。この場合、ウイルスまたは他の分析物(analyte)は、中和血清と共にはインキュベートされず、代わりに細胞と直接混合されるだろう。
【0026】
細胞変化は、ウイルス、細菌、原生動物、または真菌感染、細胞の分化、壊死、アポトーシス、老化、成熟、悪性(癌性組織、細胞、循環しているかしていない物質)による変化について、任意のタイプの細胞または粒子、エキソソーム、抗体、タンパク質または小分子に対してLFCを使用して測定することができる。動物または植物系の細胞は、それらがLFCを使って検出可能な方法で応答し変化するという点でセンチネル(前哨)細胞としてふるまうことができる。細胞もしくは他の生物学的粒子の生化学的性質または他の性質は、上述したような様々な外的もしくは内的変化または障害により変化しうる。そのようなわずかな変化を検出および測定できるLFCの能力(応答メトリック(RM))により、それは動物、植物、原生動物または真菌系における粒状物質のバイオマーカー発見と同定のためのツールになりうる。それらのバイオマーカーは、疾患または生物学的プロセスのいずれかに関連した新規のまたは改変した細胞状態を検出するのに重要である。
図23と24はそれらの概念の例を提供しており、ここでヒト患者は疾患を有するかまたは処置(限定されないが例えば、薬品、ワクチン、細胞または遺伝子治療)を施され、そしてそれらの血液細胞(赤血球、白血球、血小板-分離されているかされていない)、エキソソーム、または他の細胞もしくは生物学的成分が、前記の疾患または処置に応答して変化する(処置患者の場合)。LFCはそれらの変化を検出することができ、その変化は次いで将来のモニタリングのためのバイオマーカーの基礎を形成することができる。
【0027】
1以上のタイプおよび/またはサイズの内部較正用物体(ビーズまたは粒子)(240)は、
図3に示されるように、実験用サンプルが一貫した形式で挙動することの確実性を増加させるために使用することができる。同時較正は、プレート分析を通してシステム性能をモニタリングすることにより高められた力価決定性能をもたらし、サンプル間の誤差と標準偏差を減らし、実験パラメータに従って拒絶もしくは許可するそして/または標準化することを可能にし、実験間および/または実験内の一貫性を保証する(固定、凍結乾燥または人工サンプルのいずれにせよ)。較正用物体(オブジェクト)は、特定の実施形態では、サンプルの性質に応じて、そして必要とされる較正の所望のレベルに応じて、プレート上の各列の初めにまたはプレート上で1回使用され得る。本発明は、光学力、光学トルク、光動力学、有効屈折率、サイズ、形状、または単独でのもしくは細胞との混合状態での較正用物体の関連測定値のような測定結果を説明する。ここで前記物体は、ポリマー、ガラス、金属、合金、生物製剤、脂質、ベシクルまたは細胞(生存もしくは固定細胞)ベースである。較正用物体は着目の粒子に関連する性質を有するが、着目のサンプルに関するデータ収集と干渉してはならない。較正用物体は、単独で使用してもよく、着目のサンプルと混合してもよく、異なるタイプの較正用物体と混合してもよく、またはその3つの任意組み合わせを用いてもよい。上述した光学力および他の測定は、システムの性能を較正する、検証する、または強化するため、並びに異なるシステムと交差してデータを標準化または比較するために用いることができる。
【0028】
一実施形態では、様々な薬剤濃度に対する細胞応答に基づいて較正曲線を作成し、次いで未知のレベルのサンプルの特性を推定するためにそのような曲線を使用する方法が提供される。そのような方法は、薬剤(treatment)を加え、サンプル細胞をインキュベートし、光学力ベースの測定により、細胞および既知範囲の薬剤を含む複数のサンプルを分析し、応答メトリックを決定し、希釈による傾向に基づいて光学応答メトリックと時間を決定し、そして生成データを将来のサンプルの予測に利用するというステップを含む。
【0029】
代表的な較正曲線を作成するのに必要なステップの2つの実施形態が
図14と
図15に示される。
図14は、既知のまたは十分解明されたウイルスサンプルから力価を計算しそして未知力価のサンプル用に較正曲線を作成するためのプロセスを記載する。十分に解明されたとは、力価を計算するためのIMとインキュベーション時間の両方が予備実験に基づいて既に確立されていることを意味する。この場合、未知のウイルス原液の希釈液が作成され、細胞に添加された後、指定の時間に渡りインキュベーションされる。次いで細胞が収得され、Radiance
TM(商標)または光学力ベースの測定を行うことができる同様な機器を使って解析される。次いで、
図19に記載される絶対力価/感染性アルゴリズムに基づいて、力価(感染性)が計算される。いったん力価が算出されれば、決定されたその力価を用いて各希釈度でのウイルス濃度を算出することにより、較正曲線を作成することもできる。次いでこの較正曲線を将来の未知サンプルの測定に利用することができる。
【0030】
図15は、未知のまたは十分に解明されていないウイルス系から力価を計算しそして未知力価のサンプル用に較正曲線を作成するためのプロセスを記載している。この例では、ウイルスと細胞系は既知であるが、IMとインキュベーション時間は未知である。よって、感染後のインキュベーション時間と、感染メトリックを計算するためにどのLFCパラメータが使用されるかの両方を決定するために、実験を行わなければならない。それらのメトリックを生成するためには
図15~18に記載のように幾つかの方法があるが、IMを計算するのにどのパラメータを用いるかに関係なく、全体的な目標は、できる限り広いウイルス濃度範囲に渡って感染性ウイルス力価と良く相関するパラメータ(またはパラメータのセット)を明らかにすることである。この一例は、
図16に示され、それはLFCパラメータのうちの1つであるサイズ正規化速度のヒストグラムを示しており、そして添加されるウイルス量(MOI)に関してどのように変化するかを示している。この例では、Vero細胞を水疱性口内炎ウイルス(VSV)で感染させている。図示する通り、サイズ平均化速度はMOIが増加するにつれて増加し、最初のヒストグラムでのMOI 0.125から最後のヒストグラムでのMOI 4.0まで増加する。速度の標準偏差と組み合わせたサイズ正規化速度を用いて、そのMOIと強く相関し、よってウイルス濃度と強く相関するIMを発見した。
図17は、別のウイルス系である、ヒトアデノウイルス5(Ad5)が感染したヒト胎児腎臓(HEK293)細胞からのデータを示す。それはIMを明らかにするための別の技術、部分最小二乗法(PLS)解析も示している。この場合、必要なできる限り多くのパラメータを多変量IMを開発するためにPLS計算法に加えることができる。PLSモデルのインプットは、LFC機器により測定された任意パラメータについての平均、標準偏差または中央値といった、母集団全体の統計であることができるが、更により複雑なインプット、例えば速度のような特定のパラメータについての母集団ヒストグラムであることもできる。このヒストグラムのビンは、ビン間の標準距離に基づいて簡単に決定することができ、あるいはクラスタリングアルゴリズム、例えば
図18に示されるK平均クラスタリングに基づいて調整することができる。K平均クラスタリングの場合、ビンの数並びに使用するパラメータを規定することができる。また一般に、母集団全体またはその一部のみのいずれかを用いて、母集団ヒストグラムを規定することができる。
【0031】
図19は、感染メトリックとインキュベーション時間が既知である場合に、未知サンプルの力価(感染性)を計算するための1つの特定方法を記載する。
図15に記載されるように、細胞に異なる希釈度のウイルスを感染させ、次いで、指定された感染後インキュベーション期間の後にそれを分析するというように、各サンプルについて感染メトリックを計算する。ウイルス濃度が或る一定濃度より上では、本質的に全ての細胞が、感染の第一ラウンド中に感染された状態になるだろう。ウイルス感染を記述するために多数の分布が開発されてきたが、頻繁に使われる1つの特定例はポアソン分布である。一般に、感染メトリックは、所定のウイルス濃度よりも高い最大値またはプラトーを有する。従って、未知のサンプルを分析する時の第一ステップは、最大感染メトリックを同定すること、並びにウイルス感染の予測分布に基づき既知の様式で起こるであろう、感染メトリックがその最大値よりも下に減少し始める時点を同定することである。この分布を解釈すること並びに細胞の数と添加されるウイルス量を明らかにすることにより、感染単位の数のウイルスを添加することができる。最大感染メトリックの地点が決定されたら、これがMOI 4で起こることが示された特定例では、次のステップは未感染の対照細胞のベースライン感染メトリックを減算することである。100%の細胞が最大感染の点として感染されると仮定すると、それにより感染メトリックを線形方式でスケーリングすることによって、より低いウイルス濃度で感染した細胞の割合を計算することができる。次のステップは、各希釈時に感染単位/mLで添加されるウイルスの量を、感染時の細胞数、各希釈時の未感染細胞の割合、ポアソン分布(別の分布も使用可能であるが)、およびその希釈時に添加されたウイルスの量に基づいて算出することである。この関係の式は以下の通りである;
【0032】
【0033】
ここで、P(0)は、未感染細胞の割合であり、nは感染時の細胞数であり、vは元のウイルス原液の容積(mL)である。ポワソン分布に基づいて、以下のように仮定される:
【数2】
【0034】
次のステップの一部として、計算のための最適範囲内に入る希釈度を決定する。一般に、これは0.5%~40%感染である。それらの希釈度が決定されると、OLDR内の2~3個の希釈度からの平均力価に基づいて、総力価(感染単位/mL)を計算することができる。
【0035】
希釈度と力価との間の関係を示す特定のデータを
図20と
図21に示す。
図20は、等分目盛りと対数目盛りの両方における、希釈度と力価との間の相関、並びにこの特定のデータセットに関するMOIと感染メトリックとの間の関係を示す。
図21は、この計算に基づく5つの独立した実験から予測された絶対力価/感染性を示す。既知力価と予測力価との間の平均差は0.096 log
10である。
【0036】
光学力測定に基づく感染性の分析は、RadianceTM(ラジアンス(商標))のようなデバイス上で複数のフォーマットで可能である。サンプルハウジングの形態としては、限定されるものではないが、6、12、24、48または96ウェルプレートのような様々なウェルプレート数またはサイズ構成(平底またはU字底)のウェルプレート、細胞培養、フローまたは懸濁培養のためのウェルプレートもしくはマイクロ流体構造の上の、その中の、もしくはそれと独立した、1または複数の細胞の液滴のための、ウェル、スペース、溝または他の隆起したもしくは窪んだ特徴を有するパターン化表面のウェルプレート、より大量のサンプルを収容することができる細胞培養皿、フラスコ、ビーカー、バイオリアクターまたはチューブのような他の容器が挙げられる。サンプル調製のフォーマットを変更できることにより、ユーザーが1回の調製で分析されるサンプルサイズ、適用/希釈および/またはサンプルの大きさを変更することを含む、任意の数の複数の実験デザインを利用できるようになる。
【0037】
当業者に既知であるように、ワクチン並びに細胞療法および遺伝子療法用製剤のような生物学的製剤の製造に関連する1つの重大な懸案事項は、外来性物質(内因性または外因性)の偶発的な導入(取込み)である。バイオリアクター馴化培地またはバイオ生産に用いられる他の液体中の外来性物質(AA)を検出するためにLFCを使用して得られるような光学力ベースの測定値の使用は、本明細書に記載される新規方法の重要な可能性である。本発明の方法は、細菌、ウイルスもしくは他の複製/生体汚染物質の品質の批判的評価、およびそれらの汚染物質が製剤の生産を危うくするのを予防することを可能にする。LFCを利用した先進AATの最終目標は、患者の潜在的感染につながる可能性のある、薬剤製品中の起こり得る混入を防ぐことである。生物学的培養におけるウイルス感染性を測定するためにLFCを利用する全体的プロセスは
図4に示されており、バイオリアクターまたは他の製造プロセスからの馴化培地(CM)は、懸濁培養または付着培養中に増殖細胞と混合され、FDAガイドラインのもとでは現在14日以上を要する現行法よりも短い期間の間インキュベートされる。同細胞は、対照としてブランクサンプルを用いてモニタリングされる。細胞が馴化培地にさらされる時間量は、アッセイ最適化の一部として調整することができる。
【0038】
一実施形態において、LFCを使用してAAをモニタリングする際の防御の最前線は、LFCを使用し、応答性細胞として直接バイオ生産に用いられるCHO細胞系または他の細胞系を使用することである。全てのウイルスがCHO細胞(および他の産生細胞株)中で細胞変性効果を引き起こすわけではないが、多くはそれを引き起こし、これは生産の間のCHO細胞に起こる変化のリアルタイムモニタリングの基礎を形づくる。LFCを用いて測定される変数の偏差は、AAによる混入可能性の指標として用いることができる。これは
図5に示され、その図にはRadiance
TM/LFCを利用するAATの全体的戦略が与えられる。生産に使用されるCHO細胞はサンプリングシステムによって常にモニタリングされ、該システムは、細胞を取り出し、それらをLFC分析用にRadiance
TMに導入して、AAをモニタリングする1つの方法としてそれらの固有特性の変化を正確に測定する。AAが存在する場合にはCPEを可視でき、これは、タンパク質生産をモニタリングするために使用されるLFCで測定される変数に見られるどの変化とも異なる。サンプルは、バイオリアクターから取り出し、オンライン分析とは対照的にLFCを使用してRadiance
TMにおいて別個に測定することができる。馴化培地(CM)を取り出し、濃縮(例えば、潜在的AAを濃縮するための遠心分離)を用いてまたは用いずに細胞と共にインキュベートすることができる。インキュベーション期間後またはインキュベーション期間中、AAの徴候について細胞をモニタリングすることができる。Radiance
TMは、潜在的に感染した細胞を選別し、分光法(蛍光、ラマンまたはその他)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、次世代シーケンシング(NGS)技術、質量分析(MS)、サイトメトリー(フロー、蛍光、質量または画像)または他の方法を含む別法を用いて分析用にそれらを収集することができる。
【0039】
CHO細胞に細胞変性効果を引き起こさないウイルスの場合、他の細胞系を検出に用いることができる。
図6はウイルスの部分的一覧を示し、細胞変性効果および複製に従ってそれらを分類している。これは、次の4つの細胞系が、潜在的ウイルスの適正なカバレージ(被覆率)を提供しうることを示す:Vero細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、MRC-5細胞、およびヒト腎臓線維芽(324K)細胞。パネルは、これら4つの細胞系に限定されるものではなく、他の既存の細胞系を用いることができ、更に、特異的感受性のために改変された新たに開発された細胞系を用いることもできる。
【0040】
さらなる実施形態では、本明細書に記載の方法を使用して、データの特定のパターンに基づいてウイルスまたは他のAAを分類することができる。人工神経ネットワーク(ANN)、パターン認識、または予測分析の別法をはじめとする幾つかの方法をこの目的で使用することができる。LFCデータを使用したこの使用の具体的なデータ例を
図22に示す。ここで、ANNは、インプット(入力情報)として約17個のLFCパラメータを使用して3種の潜在的なウイルスのうちの1つとしてテストサンプルを分類するために用いられる。
【0041】
特定の実施形態では、分析を加速するために、多数の細胞株を馴化培地(CM)または他の被験物質を有するインビトロ前哨(sentinel)細胞株と同時に試験することができる。特定の実施形態では、前哨細胞は、モニタリングまたは検出を行っている状態に対して感受性である細胞(ウイルス、細菌、マイコプラズマ、感染または他のAA)であり、それらの反応は、LFCを用いて測定することができる。
図7は、各ウェルにおける複数のインビトロ前哨細胞系を使った多重化(マルチプレックス化)アッセイまたはバイオサンプリングシステムを示す。Radiance
TM/LFC中の細胞を、パラメータ空間によって、または他のタグ、蛍光、視覚による明視野顕微鏡下での同定、または他の手段を使用して区別する能力は、細胞を一緒にインキュベートし、同時に分析を実行することによって、スループットを大幅に増加させるだろう。Radiance
TM/LFCにおいて異なるパラメータを有するように設計された細胞は、互いに混同しないように設計され、アッセイを多重化(マルチプレックス化)するために使用することができる。異なる特性を有するように細胞を修飾することによって多重化する方法は、蛍光をベースにした緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、およびマクロファージラインまたは他の細胞株に組み込まれた他の遺伝子修飾を使用して、そのうちのいずれがAAによる細胞変性または他の効果の存在を報告しているかを判定することができる。LFCを用いて分析された細胞は、例えば、染色、色素、抗体結合ビーズ標識、親和性結合ビーズまたは分子、ナノ粒子(Au、Ag、Pt、ガラス、ダイヤモンド、ポリマー、または他の材料)を用いて標識することもできる。ナノ粒子は、次の2つの目的を達成するように異なる形状(球状、四面体、正二十面体、ロッドまたは立方体形状など)およびサイズを有する:(1)細胞中への侵入を変化させること、および(2)LFCを使用して測定可能な光学力を変化させること。
【0042】
特定の実施形態では、ナノ粒子は細胞と共にインキュベートされ、そしてその取込みは細胞タイプに正常なように起こるか、あるいは、ナノ粒子の取込みが化学的にまたは物理的に強化され(例えばエレクトロポレーションまたはリポソームによって促進される)ナノ粒子の取込み率を高めることができる。細胞は、ナノ粒子および試験されるウイルスと共にインキュベートされ、細胞中へのウイルス取込みの増加分は、LFCを用いて測定される光学力の差をより大きくし、かくしてウイルスの検出感度を向上させる。別の実施形態では、ナノ粒子は、細胞への暴露前にウイルスと共にインキュベートすることができる。
【0043】
別の代替的な実施形態では、指定された数のビーズを貧食するマクロファージは、LFCにおいて異なる特性を有するが、依然としてAAの存在を報告するであろう。さらに、核、ミトコンドリア、または他のオルガネラのような、細胞の特定部分のみを分析することができる。これは、AAだけでなく、感染性を含む他の細胞ベースのアッセイの性能も高めるために使用することができる。
【0044】
種々の態様において、細胞は、in vitroセンチネル細胞として使用するために異なるウイルス、細菌、真菌、または他のAA感受性を有するように遺伝子操作されてもよく、一実施形態では、RadianceTM(商標)/LFCで使用されるパネルにおいて、AA検出に上手く合わせたアプローチを可能にする。特定のクラスのウイルス、細菌、または他のAAによる感染に対して細胞株をより許容状態にすることができ、従って病原体タイプの選択性を有する迅速な検出をもたらすことができる。LFCを使用して可能な限り広いウイルス属性と組み合わせるこの技術は、ウイルス、細菌または別のタイプのAAのより良好な同定を可能にするだろう。
【0045】
本明細書に記載の新規方法は、
図8に示すように、LFC/Radiance
TM(810)を直接使用する分析を通して、生産用バイオリアクター(800)から取り出された細胞上でAATが直接行われうることを示している。産生細胞系(CHO等)においてCPEまたは他の効果を生じないAAについては、追加の懸濁細胞系をミニ分析用バイオリアクター(910)に使用して、生産用バイオリアクター中に存在するAAによる増殖と感染を高速化することができる。
【0046】
例えば、Radiance
TM(920)を用いた後続のサンプリングのためにミニバイオリアクター(910)中で増殖させた細胞系を用いて、
図9に示すように、AAについてCMを試験することができる。CMのサンプルは大規模プロセス用バイオリアクター(900)から小型バイオリアクター中にポンプで送り込まれるが、それはLFC技術(920)(例えばRadiance
TM)を使って定期的にサンプリングし、外来物質が存在するかどうかを定期的に確かめることができる。必要であれば、小型バイオリアクターは、生産プロセスの様々な時点でサンプリングするために用いることができる。小型バイオリアクターは、種々の態様で、感染の徴候についての細胞系の分光学的分析のための光学窓(検出窓)を有するだろう。その窓は、ウイルス感染もしくはマイコプラズマまたはプリオン、または細菌、真菌もしくは原生動物感染の同定を提供するためにも利用できる。
【0047】
図10は、本実施例では、CM中に存在するAAの検出のための、マクロファージ細胞(ウイルス、細菌、栄養胞子およびほとんどの他の物質などの外来性物質を貧食する白血球)の、本実施例ではin vitroセンチネル細胞としての、使用を示す。マクロファージは、LFCを介して検出可能なユニークな方法で外来物質の存在に応答し、そしてその外来物質(ウイルス、ウイルス封入体、細菌胞子もしくは栄養細胞、エキソソーム、または他の生物学的物質)を貧食することができ、それらがその外来性物質を取り込むときにそれらの膜の内側でAAを濃縮することによってそれらの屈折率を増加させる。これは、AAに対するLFC応答を増加させ、マクロファージを便利でかつLFCで検出可能な容器またはビヒクルへと改変し、更に追加の分析のための別の技術に予め濃縮されたAAをソート(選別)して送達するのにも役立つ。本出願では、バイオ生産細胞(CHOまたはその他の細胞)を排除することが重要であるだろう。なぜならそれらはマクロファージにより取り込まれず、アッセイ結果(アウトカム)に影響を及ぼすからである。恐らくCHO細胞
2は、一般に、それらがマクロファージ
3と同じサイズであるかまたはそれより大きいために取り込まれないだろう。代替的なマクロファージ活性化(特に、プレート結合、プレート組成、培地添加物、リポ多糖類(LPS)、細菌性もしくはウイルス性タンパク質などの生体分子の添加といった既知の活性化因子)を用いて、遺伝子またはタンパク質発現の変化を伴う食作用活性または表現型の状態を選択的にコントロールすることができる。
【0048】
ウイルス、細菌または他の生物体の検出における特異性は、LFC/RadianceTMが測定する多数のパラメータ、例えばサイズ、速度(光学力に関連する)、サイズ正規化速度、細胞容積、有効屈折率、偏心、変形能、細胞粒度、回転、配向、光学的複雑さ、膜のグレースケール、またはLFC/RadianceTM(商標)を使って測定される他のパラメータの使用を通して可能になる。これは、AATスクリーニング目的でのウイルスまたは他の生物体のクラスを規定するための画像を含む、多変量パラメータ空間の使用を意味する。光学分光法との連結は、ラマン、蛍光、化学発光、円二色性、または他の方法を含む追加の特異性を提供するだろう。
【0049】
当業者は、開示された特徴が、所与の適用または設計の要件と仕様に基づいて、単独で、任意の組み合わせで使用できること、または省略できることを理解するだろう。ある1つの実施形態が特定の特徴を「含む」と言及する時、その実施形態は、代わりに、その特徴のうちのいずれか1つまたは複数「から成る」または「本質的にから成る」ことができることは理解すべきである。本発明の他の実施形態は、本発明の明細書および実施を考慮することから当業者に明白であろう。
【0050】
ある範囲の値が本明細書において提供される場合には、その範囲の上限と下限の間の各値も特に開示されることに留意されたい。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して、範囲内に含まれるか、または除外され得る。単数形は、文脈が明確に異なることを指示しない限り、複数の指示対象を包含する。本明細書および実施例は、本質的に例示的なものと見なされ、その変形は本発明の本質から逸脱しないことを意図する。さらに、本開示において引用される全ての参考文献は、その全体が参照により個別に組み込まれ、そのようなものは、本発明の実施可能な開示を補うための有効な方法を提供すること、並びに当業者の技術レベルを詳述する背景を提供することを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の全ての発明。
【外国語明細書】