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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000714
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】管切断機
(51)【国際特許分類】
   B23D 21/02 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
B23D21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099575
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000157005
【氏名又は名称】関電プラント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100148987
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 礼子
(72)【発明者】
【氏名】田邉 一裕
(72)【発明者】
【氏名】天王 悟詞
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄輔
(57)【要約】
【課題】種々の厚さの被切断物に適用可能な管切断機を提供する。
【解決手段】管状の被切断物を長手方向に沿って切断する切断機構と、被切断物を切断方向に沿って保持する保持機構とを備え、切断機構と保持機構との相対的な移動により、被切断物に切断機構を接近させて被切断物を切断する管切断機である。切断機構は、被切断物の内径側に挿入される棒状体に設けられ、被切断物の内径側から外径方向に食い込む内側刃部と、内側刃部よりも外径側に設けられ、被切断物の外径側から内径方向に食い込む外側刃部とを備え、外側刃部及び内側刃部が、被切断物を挟んだ状態で相互に押圧し合いながら、長手方向に沿って被切断物を相対的に移動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の被切断物を長手方向に沿って切断する切断機構と、被切断物を切断方向に沿って保持する保持機構とを備え、前記切断機構と保持機構との相対的な移動により、被切断物に切断機構を接近させて被切断物を切断する管切断機において、
前記切断機構は、被切断物の内径側に挿入される棒状体に設けられ、被切断物の内径側から外径方向に食い込む内側刃部と、前記内側刃部よりも外径側に設けられ、被切断物の外径側から内径方向に食い込む外側刃部とを備え、前記外側刃部及び内側刃部が、被切断物を挟んだ状態で相互に押圧し合いながら、長手方向に沿って被切断物を相対的に移動することを特徴とする管切断機。
【請求項2】
前記外側刃部及び内側刃部は、被切断物の相対的な移動により従動回転する円形刃であることを特徴とする請求項1に記載の管切断機。
【請求項3】
前記棒状体の外径は前記被切断物の内径よりも小さく、前記棒状体に、前記被切断物の内径側から当接しつつ、被切断物の相対的な移動により従動回転する送りローラを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の管切断機。
【請求項4】
前記保持機構の上方側に前記切断機構が配置され、前記保持機構は被切断物を、上下方向に沿って延びるように保持するとともに、前記外側刃部及び前記内側刃部が下降することにより、被切断物を切断することを特徴とする請求項3に記載の管切断機。
【請求項5】
前記外側刃部が前記内側刃部に接近及び離間する調整機構を備えたことを特徴とする請求項4に記載の管切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状の被切断物を長手方向に沿って切断する管切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放射性物質として扱う廃棄物の中には、放射性物質として扱う必要のないものが含まれることがあった。そこで、放射性物質として扱う必要のないものを、一般廃材と同様に再利用したり、処分したりすることができるクリアランス制度がある。すなわち、クリアランス制度とは、放射性廃棄物として扱う必要のない廃棄物であれば、使用条件や行き場等の条件を一切付けずに、普通の再生利用品として、あるいは産業廃棄物として同じ扱いができる制度である。
【0003】
例えば原子力発電所において、放射性物質を含む汚染物質を流通させるために使用された配管を除却することがある。除去すべき配管の放射性物質の汚染レベルによっては、前記クリアランス制度の対象となって、一般廃材と同様に再利用したり、処分したりすることができる場合がある。そこで、配管の放射性物質の汚染レベルを測定するため、又は配管内面を除染するために、配管を長手方向に沿って切断する装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1のものは、第1刃部と第2刃部を備え、第1刃部が、配管の外径側から配管に当接しつつ、配管の長手方向に沿って相対的に移動する。これにより、第1刃部が、配管の外径側から内径方向に食い込んで、配管の外径側は、第1刃部にて内径方向に応力集中することにより、配管の外径側は押し潰されて塑性変形し、食込部が長手方向に沿って形成される。この食込部に、第2刃部が配管の内径側から当接しつつ長手方向に沿って配管を相対的に移動する。これにより、第1刃部では完全に切断できなかった部位を、補助的な第2刃部にて切断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-24043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のものは、まず、第1刃部にて配管の外径部に食込部を形成するものであるため、配管の厚さが大きくなると(例えば4mmを超える管厚)、配管からの反力により十分な食込部が形成されない可能性がある。十分な食込部が形成されないと、切断精度が悪くなり、場合によっては切断できない可能性がある。また、第1刃部で十分な食込部が形成されないと、第2刃部への負担が大きくなり、装置寿命が短くなるおそれもある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて、種々の厚さの被切断物に適用可能な管切断機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の管切断機は、管状の被切断物を長手方向に沿って切断する切断機構と、被切断物を切断方向に沿って保持する保持機構とを備え、前記切断機構と保持機構との相対的な移動により、被切断物に切断機構を接近させて被切断物を切断する管切断機において、前記切断機構は、被切断物の内径側に挿入される棒状体に設けられ、被切断物の内径側から外径方向に食い込む内側刃部と、前記内側刃部よりも外径側に設けられ、被切断物の外径側から内径方向に食い込む外側刃部とを備え、前記外側刃部及び内側刃部が、被切断物を挟んだ状態で相互に押圧し合いながら、長手方向に沿って被切断物を相対的に移動するものである。
【0009】
本発明の管切断機によれば、外側刃部及び内側刃部が、被切断物を挟んだ状態で相互に押圧し合いながら、長手方向に沿って被切断物を相対的に移動する。すなわち、被切断物の外径側は、外側刃部にて内径方向に応力集中することにより、被切断物の外径側は押し潰されて塑性変形し、食込部が形成されると同時に、被切断物の内径側は、内側刃部にて内径方向に応力集中することにより、被切断物の内径側は押し潰されて塑性変形する。このように、外側刃部と内側刃部とは、外径側と内径側とで相互に押圧し合い、切断部が形成される。また、外側刃部と内側刃部とは、応力が被切断物の内外で相殺されるため、反力受けが不要となる。この切断部が被切断物の長手方向に沿って形成されることにより、被切断物を切断することができる。
【0010】
前記外側刃部及び内側刃部は、被切断物の相対的な移動により従動回転する円形刃であるのが好ましい。これにより、外側刃部及び内側刃部は、被切断物との当接箇所が均一なものとなり、刃部の長寿命化を図ることができる。また、被切断物を長手方向に沿って案内することができ、被切断物を正確に移動しながら被切断物を塑性変形させることができる。
【0011】
前記構成において、前記棒状体の外径は前記被切断物の内径よりも小さく、前記棒状体に、前記被切断物の内径側から当接しつつ、被切断物の相対的な移動により従動回転する送りローラを備えるのが好ましい。これにより、棒状体は、配管の内部で送りローラに支持されながら安定した姿勢を維持しつつ被切断物の内径側をスムーズに移動できる。また、被切断物と棒状体との接触面を小さくすることができ、棒状体の駆動エネルギーを低減できる。さらには、棒状体の、被切断物と接触することによる摩耗を低減したり、摩擦熱の発生を抑制したりすることができ、装置の長寿命化を図ることができる。
【0012】
前記構成において、前記保持機構の上方側に前記切断機構が配置され、前記保持機構は被切断物を、上下方向に沿って延びるように保持するとともに、前記外側刃部及び前記内側刃部が下降することにより、被切断物を切断することが好ましい。これにより、外側刃部及び内側刃部は、効率良く被切断物と相対的に移動できるとともに、省スペースな装置とすることができる。
【0013】
前記外側刃部が前記内側刃部に接近及び離間する調整機構を備えるものであるのが好ましい。これにより、被切断物の厚さによって、外側刃部の被切断物への当接位置が最適な位置となるように調節したり、長期的な使用により外側刃部の摩耗が生じて外径寸法が減少しても、外側刃部を被切断物へ接近させたりすることができ、装置としての汎用性、利便性が高いものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の管切断機では、被切断物の外径側と内径側とで相互に押圧し合うことによる切断部が被切断物の長手方向に沿って形成されて被切断物を切断することができるため、厚さの大きな被切断物であっても切断可能となり、種々の厚さの被切断物に適用可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の管切断機を示す簡略斜視図である。
図2】前記管切断機の正面図である。
図3】前記管切断機の側面図である。
図4】前記管切断機の一部を示す平面図である。
図5】前記管切断機を構成する内側刃部及び外側刃部を示す拡大正面図である。
図6】前記図5のA-A断面図である。
図7】前記管切断機の内側刃部及び外側刃部が配管に挿入される順序を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施の形態を図1図7に基づいて説明する。
【0017】
図1に本発明の管切断機を示す。この管切断機は、管状の被切断物を長手方向に沿って切断する切断機構1と、被切断物を切断方向に沿って保持する保持機構2とを備える。本実施形態における被切断物3は、例えば原子力発電所において、放射性物質を含む汚染物質を流通させるために使用された配管である。配管を長手方向(図1では上下方向)に沿って切断することにより、配管の放射性物質の汚染レベルを測定したり、配管内面を除染したりすることができる。
【0018】
保持機構2は、図2及び図3に示すように、平板状の板状部4と管保持部5とから構成される。管保持部5は、板状部4のほぼ中央部に設けられており、板状部4の上面に載置される載置板6と、載置板6から鉛直方向に立設する一対の鉛直板8とから構成される。一対の鉛直板8の間には円筒部7が設けられ、円筒部7の内径側の穴部7aに配管3の端部を挿入することにより、配管3を立設させて保持することができる。
【0019】
切断機構1は、図2及び図3に示すように、駆動部10及び切断部11とから構成されている。駆動部10は、本実施形態では、図1及び図4に示すように、4つのボールねじ機構12a、12b、12c、12dにて構成されている。ボールねじ機構12a~12dは、図2図4に示すように、スプライン軸13a~13dと、ナット14a~14dとから構成されている。ナット14a~14dは、ハウジング15a~15dの内側に挿入されており、図4に示すように、ナット上部のフランジ部にスプロケット16a~16dが設けられている。夫々のスプロケット16a~16dが無端状チェーン17に巻回されて、図示省略のモータによりナット14a~14dに回転力が付与されてボールねじ機構12a~12dが駆動される。夫々のハウジング15a~15dは支持板18の上面に固定されており、4つのナット14a~14dが、スプライン軸13a~13dを一体的に上下動可能となっている。
【0020】
支持板18のほぼ中央部には、図4に示すような穴部19が設けられており、この穴部19には棒状体20が挿通されている。棒状体20は、支持板18の上面で、4つのハウジング15a~15dの間に固定された固定ブロック21を介して支持板18に固定されている。
【0021】
棒状体20は、外径が配管3の内径よりも小さい(図6参照)。すなわち、棒状体20が配管3の内部に挿入される際には、棒状体20の外径面24は、配管3の内径面よりも内径側に配置され、棒状体20と配管3との間に隙間が形成される。棒状体20は、図6に示すように、その内側に180度対称となる位置に一対のシャフト22a、22bが設けられており、これらシャフト22a、22bに、夫々図示省略の軸受を介して送りローラ23a、23bが回転可能に設けられている。送りローラ23a、23bは、棒状体20の外径面24よりも外径側に突出している。これにより、棒状体20が配管3に挿入される際には、送りローラ23a、23bのみが配管3に当接する。送りローラ23a、23bは、配管3と当接しつつ、配管3の相対的な移動により従動回転する。
【0022】
切断機構1の切断部11は、図5に示すように、棒状体20の内外に設けられる。すなわち、切断部11は、配管3の内径側から外径方向に食い込む第1内側刃部25a及び第2内側刃部25bと、支持板18の下面側で、内側刃部25a、25bよりも外径側に設けられ、配管3の外径側から内径方向に食い込む第1外側刃部26a及び第2外側刃部26bとを備えている。
【0023】
棒状体20は、図6に示すように、その内側に180度対称となる位置に一対のシャフト27a、27bが設けられており、これらシャフト27a、27bに、夫々図示省略の軸受を介して円形刃である第1内側刃部25a及び第2内側刃部25bが回転可能に設けられている。内側刃部25a、25bは、配管3と当接しつつ、配管3の相対的な移動により従動回転する。内側刃部25a、25bは、図6に示すように、軸方向中央部において外径側に突出した先細り形状となっており、内側刃部25a、25bの先端縁28a、28bは僅かにアール形状となっている。これにより、内側刃部25a、25bに当接した箇所は応力集中するとともに、刃先の割れを抑制することができ、内側刃部256、25bの長寿命化を図ることができる。
【0024】
また、支持板18の下面には、図5及び図6に示すように、棒状体20に対して対称となる位置で夫々、一対の支持片30a、30bが設けられている。支持片30a、30bには、夫々シャフト31a、31bが保持されており、このシャフト31a31bには図示省略の軸受を介して円形刃である第1外側刃部26a及び第2外側刃部26bが回転可能に取り付けられている。外側刃部26a、26bは、配管3と当接しつつ、配管3の相対的な移動により従動回転する。外側刃部26a、26bは、内側刃部25a、25bと同様の構成であり、軸方向中央部において外径側に突出した先細り形状となっており、外側刃部26a、26bの先端縁33a、33bは僅かにアール形状となっている。これにより、外側刃部26a、26bに当接した箇所は応力集中するとともに、刃先の割れを抑制することができ、外側刃部26a、26bの長寿命化を図ることができる。
【0025】
第1内側刃部25aと第1外側刃部26aとが対向し、第2内側刃部25bと第2外側刃部26bとが対向する。すなわち、第1内側刃部25a及び第1外側刃部26aは、夫々の先端縁28a、33a同士の距離が切断すべき配管3の厚さよりも接近した状態に配置されている。また、第2内側刃部25b及び第2外側刃部25bは、夫々の先端縁28b、33b同士の距離が切断すべき配管3の厚さよりも接近した状態に配置されている。これにより、配管3は、第1外側刃部25a及び第1内側刃部26aに挟まれるとともに、第2外側刃部26a及び第2内側刃部26bに挟まれる。これにより、配管3の外径側は、外側刃部26a、26bにて内径方向に応力集中することにより、配管3の外径側は押し潰されて塑性変形し、これらに対向する位置において、配管3の内径側は、内側刃部25a、25bにて内径方向に応力集中することにより、配管3の内径側は押し潰されて塑性変形する。このようにして、外側刃部26a、26bと内側刃部25a、25bとは、外径側と内径側とで相互に押圧し合い、切断部が形成される。この切断部が配管3の長手方向に沿って形成されることにより、配管3を切断することができる。また、外側刃部26a(26b)と内側刃部25a(25b)とは、外径側と内径側とで相互に押圧し合うことになり、応力が配管3の内外で相殺され、反力受けが不要となる。
【0026】
支持片30a、30bには、図5に示すように、外側刃部26a、26bが内側刃部25a、25bに対して接近及び離間する調整機構34a、34bが設けられている。調整機構34a、34bとしては、本実施形態ではボルト・ナット機構(アジャスターボルト)にて構成されている。すなわち、水平方向に延びるアジャスターボルトに螺合するナットを回転させることにより、支持片30a(30b)と外側刃部26a(26b)が一体的に水平方向(図示例では左右方向)に移動する。
【0027】
次に、この管切断機を使用して配管を切断する方法を説明する。まず、図1に示すように、保持機構2の管保持部5に配管3の端部を挿入することにより、配管3を立設させて保持する。この場合、配管3の上端縁は、図1及び図7(a)に示すように、棒状体20の下端部よりも下方に位置している。
【0028】
駆動部10の駆動により、ナット14a~14dを回転させて、支持板18をスプライン軸13a~13dに沿って下方に移動させる。すなわち、図1の矢印に示すように、支持板18と、棒状体20(内側刃部25a、25b)と、外側刃部26a、26bとが、一体的に下方に移動する。
【0029】
その後、図7(b)に示すように、棒状体20の先端部が配管3の内径側に挿入され、配管3が、棒状体20の内側刃部25a、25bと外側刃部26a、26bとの間に入り込む。このとき、配管3の内径側は内側刃部25a、25bに当接し、配管3の外径側は外側刃部26a、26bに当接し、配管3は、内側刃部25a、25b及び外側刃部26a、26bにて挟まれた状態となる。棒状体20の外径は配管3の内径よりも小さいものであるため、棒状体20が配管3の内部に挿入される際には、棒状体20の外径面24は、配管3の内径面よりも内径側に配置され、棒状体20と配管3との間に隙間が形成される(図6参照)。このとき、棒状体20に設けられた送りローラ23a、23bが配管3に当接する。
【0030】
内側刃部25a、25b及び外側刃部26a、26bが配管3に当接すると、配管3の外径側は、外側刃部26a、26bにて内径方向に応力集中することにより、配管3の外径側は押し潰されて塑性変形し、食込部(配管3が薄肉又は切断された箇所)が形成されるとともに、配管3の内径側は、内側刃部25a、25bにて外径方向に応力集中することにより、配管3の外径側は押し潰されて塑性変形し、食込部が形成される。このように、内側刃部25a、25bと外側刃部26a、26bとは、外径側と内径側とで互いに押圧し合い、外径側の食込部と内径側の食込部が繋がって切断部が形成される。このとき、内側刃部25a、25bと外側刃部26a、26bとは、応力が配管3の内外で相殺されるため、反力受けが不要となる。本実施形態では、棒状体20に対して対称となる位置に、一対の内側刃部25a、25b及び外側刃部26a、26bが設けられているため、切断部は周方向に沿って約180°離れた位置で2カ所形成される。
【0031】
図7(c)に示すように、支持板18と、棒状体20(内側刃部25a、25b)と、外側刃部26a、26bとが、さらに下方に移動する。すなわち、配管3の相対的な移動により送りローラ23a、23b、内側刃部25a、25b及び外側刃部26a、26bが従動回転し、送りローラ23a、23b、内側刃部25a、25b及び外側刃部26a、26bは、長手方向に沿って配管3を移動することにより、2カ所の切断部が、配管3の長手方向に沿って連続的に形成され、配管3を切断することができる。
【0032】
この場合、内側刃部25a、25b及び外側刃部26a、26bは、配管3の相対的な移動により従動回転する円形刃であることから、配管3との当接箇所が均一なものとなり、刃部の長寿命化を図ることができる。また、配管3を長手方向に沿って案内することができ、配管3を正確に移動しながら配管3を塑性変形させることができる。また、配管3の相対的な移動により従動回転する送りローラ23a、23bを備えたことにより、棒状体20は、配管3の内部で送りローラ23a、23bに支持されながら安定した姿勢を維持しつつ配管3の内径側をスムーズに移動できるとともに、配管3と棒状体20との接触面を小さくすることができ、棒状体20の駆動エネルギーを低減できる。また、棒状体20の、配管3と接触することによる摩耗を低減したり、摩擦熱の発生を抑制したりすることができ、装置の長寿命化を図ることができる。
【0033】
調節機構34a、34bにより、外側刃部26a、26bの水平方向位置を変更することができる。例えば、長期的な使用により外側刃部26a、26bの摩耗が生じて外径寸法が減少した場合、外側刃部26a、26bを配管3へ接近させたり、厚さの大きい配管3を切断する場合、外側刃部26a、26bを配管3から離間させたりすることができる。これにより、外側刃部26a、26bの配管3への当接位置が最適な位置とすることができ、装置としての汎用性、利便性が高いものとなる。
【0034】
本発明の管切断機では、配管3の外径側と内径側とで相互に押圧し合うことによる切断部が被切断物の長手方向に沿って形成されて被切断物を切断することができるため、例えば管厚4mm以上の厚さの大きな配管3であっても切断可能となり、種々の厚さの被切断物に適用可能なものとなる。
【0035】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態では、切断機構1を移動させて保持機構2を待機させたが、切断機構1を待機させて保持機構2を移動させても、切断機構1と保持機構2との両方を移動させてもよい。実施形態では、切断機構1を保持機構2の上方に配置し、切断機構1を上下方向に移動させるものとしたが、切断機構1と保持機構2とを水平方向に配置し、切断機構1を水平方向に移動させてもよい。実施形態では、駆動部10をボールねじ機構12としたが、往復動が可能な機構であれば、シリンダ機構、リニアモーター機構等の種々の機構にて構成することができる。外側刃部、内側刃部、送りローラの数は、夫々任意の数とすることができる。
【実施例0036】
本発明の構成を備えた管切断機を用いて、種々の管厚のステンレス鋼(配管)を切断した。すなわち、配管の内径側に挿入される棒状体と、棒状体に設けられ、配管の内径側から外径方向に食い込む円形刃である内側刃部と、内側刃部よりも外径側に設けられ、配管の外径側から内径方向に食い込む円形刃である外側刃部とを備え、外側刃部及び内側刃部が、配管を挟んだ状態で相互に押圧し合いながら、長手方向に沿って配管を相対的に移動する管切断機にてステンレス鋼を切断する実験を行った。棒状体の外径は配管の内径よりも小さいもととし、棒状体に、配管の内径側から当接しつつ、配管の相対的な移動により従動回転する送りローラを設けた。これにより、最大10.7mmの管厚のステンレス鋼を切断することができた。また、従来の装置の消費電力が平均7.0Aであったのに対し、本実施例における装置の消費電力は平均5.7Aであり、消費電力を低減することができた。
【符号の説明】
【0037】
1 切断機構
2 保持機構
3 配管
20 棒状体
23a、23b 送りローラ
24 外径面
25a、25b 内側刃部
26a、26b 外側刃部
34a、34b 調整機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7