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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071412
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】サーバシステム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20240517BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G06F1/20 A
G06F1/20 C
H05K7/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037841
(22)【出願日】2024-03-12
(62)【分割の表示】P 2023068351の分割
【原出願日】2022-09-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.https://biz.kddi.com/beconnected/feature/2022/220119/に掲載した。(掲載日:令和4年1月19日) 2.日本経済新聞電子版に掲載した。(掲載日:令和4年3月18日)(URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC24BTP0U2A120C2000000/) 3.日本経済新聞電子版に掲載した。(掲載日:令和4年5月30日)(URL:https://www.nikkei.com/telling/DGXZTS00001540X20C22A5000000/) 4.日本経済新聞に掲載した。(発行日:令和4年6月20日) 5.取引先であるSK hynix NAND Product Solutions Japan合同会社(ソリダイム・ジャパン)に公開した。(営業公開日:令和4年2月16日)
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真人
(72)【発明者】
【氏名】谷岡 功基
(72)【発明者】
【氏名】北山 真太郎
(57)【要約】
【課題】外気の温度が高い場合でも、サーバ装置の運用に問題が生じないサーバシステムを提供し、もってサーバシステムの総消費電力量の削減を行うとともに、サーバシステムの環境適応性を向上させる。
【解決手段】サーバシステムSは、サーバ装置6と液体Lを収容する液浸装置1と、液体Lとの間で熱交換する冷却水Rを循環させる冷却水循環装置3と、冷却水Rと外気との間で熱交換する熱交換器5を有し、液浸装置1は、液体Lが流入する流入部11と液体Lが流出する流出部12を有し、サーバ装置6の耐熱温度が75℃以上であり、流入部11に流入する液体Lの温度が45℃以上60℃以下であっても、流出部12から流出する液体Lの温度は60℃以上75℃未満である。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ装置の少なくとも一部と、前記サーバ装置の少なくとも一部を冷却する冷却用液体と、を収容する液浸装置と、
前記冷却用液体との間で熱交換する冷却水を循環させる冷却水循環装置と、
前記冷却水が液体の状態で前記冷却水と外気との間で熱交換する熱交換器と、
を有し、
前記液浸装置は、
前記冷却用液体が前記冷却水循環装置から流入する流入部と、
前記サーバ装置との間で熱交換をした後の前記冷却用液体が前記冷却水循環装置に流出する流出部と、
を有し、
前記サーバ装置の耐熱温度が75℃以上であり、
前記流入部に流入する前記冷却用液体の温度が45℃以上60℃以下であっても、前記流出部から流出する前記冷却用液体の温度は60℃以上75℃未満であるサーバシステム。
【請求項2】
120℃で24時間保たれた状態での前記冷却用液体の揮発量は5質量%以下である、
請求項1に記載のサーバシステム。
【請求項3】
前記冷却用液体は、酸化防止剤を含む、
請求項1に記載のサーバシステム。
【請求項4】
前記冷却用液体は、オイルの臭いを抑える添加剤を含む、
請求項1に記載のサーバシステム。
【請求項5】
前記サーバ装置は、
プロセッサを有する演算処理装置と、プロセッサを有しない記憶装置と、を有するサーバ装置本体部と、
前記サーバ装置本体部を外部装置に接続するためのネットワーク装置と、
を有し、
前記サーバ装置本体部と前記ネットワーク装置とを接続するケーブルは耐熱性及び耐油性を備える、
請求項1に記載のサーバシステム。
【請求項6】
前記液浸装置内で、前記サーバ装置本体部と前記ネットワーク装置とが光ケーブル以外のケーブルで接続されている、
請求項5に記載のサーバシステム。
【請求項7】
前記ケーブルの材料には、スチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、及びポリ塩化ビニルのいずれも含まれない、
請求項5に記載のサーバシステム。
【請求項8】
前記冷却用液体の引火点は250℃以上である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のサーバシステム。
【請求項9】
前記冷却用液体は、前記冷却水よりも動粘度が高いオイルである、
請求項1から7のいずれか一項に記載のサーバシステム。
【請求項10】
前記冷却用液体の動粘度は、50mm/s以下である、
請求項9に記載のサーバシステム。
【請求項11】
前記冷却用液体の動粘度は、35mm/s以下である、
請求項10に記載のサーバシステム。
【請求項12】
前記冷却用液体の熱伝導率は、0.13W/(m・K)以上である、
請求項1から7のいずれか一項に記載のサーバシステム。
【請求項13】
前記冷却用液体の熱伝導率は、0.15W/(m・K)以上である、
請求項12に記載のサーバシステム。
【請求項14】
前記ケーブル及び前記サーバ装置への印刷には顔料インクが用いられている、
請求項5に記載のサーバシステム。
【請求項15】
前記サーバ装置本体部は、前記演算処理装置を冷却するためのヒートシンクをさらに有し、前記演算処理装置と前記ヒートシンクとは、鉄製の癒着材を介して接続されている、
請求項5に記載のサーバシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サーバ装置を液体中に浸漬して冷却する技術が知られている。特許文献1には、チラーにより外気に排熱される一次冷却系冷媒と液浸槽冷却液とが熱交換器によって熱交換されることで冷却された液浸槽冷却液によって液浸槽内のICT機器が冷却される液浸冷却システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6919442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年データセンター等に用いるサーバ機器は、その性能の向上とともに、空間当たりの消費電力量が増大し、その排熱処理をどう行うかが課題となってきた。消費電力量が大きなサーバが密集した状態では、通常の空冷によって熱を取りきることが難しくなるため、上記の液浸冷却などの技術が考えられてきた。
【0005】
液浸冷却には、冷却した液体で直接熱源を冷却する一相式の液浸冷却と、気化熱を利用して冷却を行う二相式の液浸冷却が存在しており、前者では、冷却した液体の流入温度と発熱したIT機器の温度との温度ギャップにより冷却を実現しているため、安定した温度が保てる室内で利用しなければならなかった。また、後者においては、冷却するための液体の沸騰によって発熱体の熱を奪うため、液体の沸点を熱源の温度に合わせる必要があり、その典型的な沸点は50~60℃程度である。そして、気化した液体を効率よく凝縮させるための装置は、よりコンパクトに、小さな空間で作動させようとすればするほど、より低い温度で稼働させる必要がある。
【0006】
結局、いずれの方式の液浸冷却であっても、25℃程度に空調が整えられたサーバルーム内で稼働させる必要があった。サーバルームを空調で冷却すると、大きなエネルギーが消費されるので、空調をできるだけ使用しないことが求められる。
【0007】
しかしながら、外気の温度が高くなった場合、消費エネルギーの削減が必要であるからと言って空調を行わないこととすると、外気との熱交換による液体と熱交換する冷却水の温度低下は十分に行うことができず、液体を十分に冷やすことができなくなる。その結果、二相式の液浸冷却では、蒸発量が増加してしまって凝縮が間に合わなくなり、サーバ装置の冷却に問題が生じてしまうという問題が生じていた。また、一相式の液浸冷却では、機器の動作可能温度まで、システム全体の温度を下げきれないという問題が生じていた。
【0008】
外部の温度が高い状態において、サーバを冷却するための液体の温度を十分に下げるために冷却水の温度を強制的に下げるという手段も考え得る。しかし、冷却水の温度を下げるには、凝縮器や蒸発器などを用いた大型の冷凍機を稼働させるための電力が必要となる。その結果、この場合にもサーバシステムの電力消費量が大きくなってしまう。
【0009】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、外気の温度が高い場合でも、サーバ装置の運用に問題が生じないサーバシステムを提供し、もってサーバシステムの総消費電力量の削減を行うとともに、サーバシステムの環境適応性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様においては、サーバ装置の少なくとも一部と、前記サーバ装置の少なくとも一部を冷却する冷却用液体と、を収容する液浸装置と、前記冷却用液体との間で熱交換する冷却水を循環させる冷却水循環装置と、前記冷却水が液体の状態で前記冷却水と外気との間で熱交換する熱交換器と、を有し、前記液浸装置は、前記冷却用液体が前記冷却水循環装置から流入する流入部と、前記サーバ装置との間で熱交換をした後の前記冷却用液体が前記冷却水循環装置に流出する流出部と、を有し、前記サーバ装置の耐熱温度が75℃以上であり、前記流入部に流入する前記冷却用液体の温度が45℃以上60℃以下であっても、前記流出部から流出する前記冷却用液体の温度は60℃以上75℃未満であるサーバシステムを提供する。
【0011】
120℃で24時間保たれた状態での前記冷却用液体の揮発量は5質量%以下であってもよい。
【0012】
前記冷却用液体は、酸化防止剤を含んでいてもよい。前記冷却用液体は、オイルの臭いを抑える添加剤を含んでいてもよい。
【0013】
前記サーバ装置は、プロセッサを有する演算処理装置と、プロセッサを有しない記憶装置と、を有するサーバ装置本体部と、前記サーバ装置本体部を外部装置に接続するためのネットワーク装置と、を有し、前記サーバ装置本体部と前記ネットワーク装置とを接続するケーブルは耐熱性及び耐油性を備えていてもよい。これにより、ケーブルがサーバ装置を冷却するための液体である比較的高温のオイルに溶け出す可能性が低減するため好ましい。
【0014】
前記液浸装置内で、前記サーバ装置本体部と前記ネットワーク装置とが光ケーブル以外のケーブルで接続されていてもよい。前記ケーブルの材料には、スチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、及びポリ塩化ビニルのいずれも含まれなくてもよい。これらの材料は、耐熱性や耐油性が低いため、ケーブルの材料として、いずれも含まれていないことが好ましい。
【0015】
前記冷却用液体の引火点は250℃以上であってもよい。前記冷却用液体は、前記冷却水よりも動粘度が高いオイルであってもよい。オイルに比べて動粘度の低い冷却水を外気による冷却に用いるので、細い配管を用いてより表面積を稼いで、熱をより分散して効率よく冷却することが可能となる。
【0016】
前記冷却用液体の動粘度は、50mm/s以下であってもよい。前記冷却用液体の動粘度は、35mm/s以下であってもよい。オイルの動粘度は低ければ低いほど良いが、熱伝導率や比熱、引火点を確保するため、これらの値以下であればサーバ装置を冷却するための液体としての利用が許容される。
【0017】
前記冷却用液体の熱伝導率は、0.13W/(m・K)以上であってもよい。前記冷却用液体の熱伝導率は、0.15W/(m・K)以上であってもよい。
【0018】
前記ケーブル及び前記サーバ装置への印刷には顔料インクが用いられていてもよい。顔料インクは、熱により融着して印刷がされるものであるが、当該温度はサーバ装置を冷却するための液体の温度と比較して極めて高いため、液体中に印字された文字が溶け出す心配はない。
【0019】
前記サーバ装置本体部は、前記演算処理装置を冷却するためのヒートシンクをさらに有し、前記演算処理装置と前記ヒートシンクとは、鉄製の癒着材を介して接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外気の温度が高い場合でも、サーバ装置の運用に問題が生じないサーバシステムを提供し、もってサーバシステムの総消費電力量の削減を行うとともに、サーバシステムの環境適応性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係るサーバシステムの構成を模式的に示す。
図2】試作したサーバシステムに用いられた液体であるPAO 8 cStの物性値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[サーバシステムSの構成]
図1は、本実施形態に係るサーバシステムSの構成を模式的に示す図である。
【0023】
サーバシステムSは、液浸装置1、液体流路2、冷却水循環装置3、冷却水流路4、及び熱交換器5を有する。液浸装置1は、サーバ装置6の少なくとも一部及び液体Lを収容する装置である。液体Lは、サーバ装置6の少なくとも一部を冷却する液体である。液体Lは、例えばオイルである。液体Lは、例えばポリアルファオレフィンを含む。
【0024】
詳細については後述するが、サーバシステムSは、液浸装置1の流入部11に流入する液体Lの温度が45℃以上60℃以下である場合に、液浸装置1の流出部12から流出する液体Lの温度が60℃以上75℃未満になるように構成されている。サーバ装置6の耐熱温度・稼働可能温度を75℃とすることにより、サーバ装置6の周りの液体Lの温度を60℃以下の程度とすることで、液浸装置1内のサーバ装置6の温度を動作可能温度とすることができる。このため、強制冷却のための特殊な装置を動作させることなく、サーバシステムSの運用が可能となる。具体的には、液体Lの温度を60℃以下の程度とすることにより、40℃以下程度の外気温で直接冷却した冷却水によって、強制冷却のための特殊な装置を動作させることなく、液体Lを効率よく45℃程度まで冷却することが可能となる。
【0025】
その結果として、強制冷却のための特殊な装置を設けなくてもサーバシステムSを連続的に稼働することができる。つまり、サーバ装置6の運用温度を上げることによって、サーバの技術分野においては半ば常識的であった、サーバルームの空調や、冷却水・冷媒の冷凍機の利用を廃することが可能となり、もって、総消費電力を大きく低減することが可能となるという、格別の効果が得られるものである。
以下、サーバ装置6の構成を詳細に説明する。
【0026】
サーバ装置6は、サーバ装置本体部61及びネットワーク装置62を有する。サーバ装置本体部61は、演算処理装置611、記憶装置612及びネットワーク装置62と接続される通信装置613を有する。演算処理装置611は、プロセッサを有する装置である。演算処理装置611は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶装置612に記憶されたプログラムを実行する。
【0027】
記憶装置612は、プロセッサを有しない装置である。記憶装置612は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及びSSD(Solid State Drive)を含んでいる。記憶装置612は、演算処理装置611が実行するプログラムを記憶している。
【0028】
通信装置613は、サーバ装置本体部61をネットワーク装置62と、電気ケーブル63を用いて電気的に接続するための装置である。通信装置613は、例えばLANカードを含む。
【0029】
ネットワーク装置62は、サーバ装置本体部61を外部装置に接続するための装置である。ネットワーク装置62は、例えばリピーターハブ、スイッチングハブやルーター等である。
【0030】
液浸装置1は、流入部11及び流出部12を有する。流入部11は、液体Lが冷却水循環装置3から流入する開口部を有する。流出部12は、サーバ装置6との間で熱交換をした後の液体Lが冷却水循環装置3に流出する開口部を有する。液浸装置1内では、流入部11から流入した液体Lとサーバ装置6とが熱交換することでサーバ装置6が冷却される。一方、流入部11から液浸装置1に流入した液体Lは、液浸装置1内でサーバ装置6と熱交換することでサーバ装置6によって加熱され、流出部12から流出する。
【0031】
液体流路2は、液体Lを通す流路である。液体流路2は、冷却水循環装置3を経由して、液浸装置1に接続されている。液体流路2の一端は流入部11に接続されている。液体流路2の他端は、流出部12に接続されている。液体流路2の一部は、冷却水循環装置3内に設けられている。流出部12から流出した液体Lは、冷却水循環装置3内の液体流路2を流れて流入部11から液浸装置1に流入する。
【0032】
冷却水循環装置3は、液体Lとの間で熱交換する冷却水Rを循環させる装置である。冷却水循環装置3内には、液体流路2の一部、及び冷却水流路4の一部が設けられている。冷却水循環装置3は、液体流路2内を流れる液体Lと冷却水流路4内を流れる冷却水Rとを熱交換することで液体Lを冷却する。液体Lは、冷却水循環装置3内に設けられたポンプ(不図示)によって液体流路2内を流れることで液浸装置1及び冷却水循環装置3を循環している。冷却水循環装置3内に流入した液体Lは、冷却水流路4内を流れる冷却水Rと熱交換することで冷却され、液浸装置1に向かって流出する。冷却水循環装置3内で冷却されて液浸装置1に流れる液体Lの温度は例えば60℃以下である。
【0033】
冷却水流路4は、冷却水Rを通す流路である。冷却水流路4の一部は、冷却水循環装置3内に設けられている。冷却水流路4の他の一部は、熱交換器5内に設けられている。冷却水Rは、冷却水循環装置3及び熱交換器5を循環する。冷却水循環装置3内に流入した冷却水Rは、液体流路2内を流れる液体Lと熱交換することで液体Lによって加熱された後、冷却水循環装置3から熱交換器5に向かって流出する。
【0034】
熱交換器5は、冷却水Rが液体の状態で冷却水Rと外気との間で熱交換する機器である。熱交換器5は、例えばフリークーリングである。熱交換器5には、例えば凝縮器や蒸発器などを用いた冷凍機が設けられていない。熱交換器5内には、冷却水流路4の他の一部が設けられている。熱交換器5は、冷却水流路4内を流れる冷却水Rと外気とを熱交換することで冷却水Rを冷却する。熱交換器5に流入した冷却水Rは、外気と熱交換することで冷却された後、冷却水循環装置3に向かって流出する。この間、冷却水Rは液体の状態である。
【0035】
液体流路2の断面積は、一例として、冷却水流路4の断面積と比べて大きい。このようにすることによって、外気との高効率な熱交換を保ったまま、ポンプの電力を減少させ、熱交換器5内の冷却水流路4の根詰まりの可能性を低減させることができる。
【0036】
演算処理装置611、記憶装置612、通信装置613及びネットワーク装置62のいずれも耐熱温度が75℃以上である。また、流入部11に流入する液体Lの温度はサーバ装置6の稼働中においては、45℃以上60℃以下である。また、流入部11に流入する液体Lの温度が45℃以上60℃以下である場合に、流出部12から流出する液体Lの温度は60℃以上75℃未満である。
【0037】
サーバシステムSにおいては、このようにいずれも耐熱温度が75℃以上である演算処理装置611、記憶装置612及び通信装置613を有するサーバ装置本体部61、ネットワーク装置62、及び液体Lを収容する液浸装置1が設けられている。そして、サーバ装置6の稼働中に液浸装置1の流入部11に流入する液体Lの温度が45℃以上60℃以下である場合に、液浸装置1の流出部12から流出する液体Lの温度は60℃以上75℃未満である。
【0038】
液浸装置1に収容されるサーバ装置6の耐熱温度が75℃以上なので、サーバシステムSにおいては、サーバ装置6を45℃以上と高温の液体Lでも冷却できる。したがって、流入部11に流入する液体Lの温度を例えば冷凍機を用いて低温(例えば45℃以下)にまで冷却する必要がない。また、流出部12から流出する液体Lの温度が外気よりも高い温度であるため、外気の温度が高い場合でも、例えば冷凍機を用いることなく外気と熱交換された冷却水Rにより液体Lを冷却することができる。
【0039】
したがって、サーバシステムSにおいては、外気の温度が高い場合でも、サーバ装置6の運用に問題が生じないサーバシステムSを提供し、もってサーバシステムSの総消費電力量の削減を行うとともに、サーバシステムSの環境適応性を向上させることができる。
【0040】
[サーバ装置6の詳細]
サーバ装置6は、電気ケーブル63を有する。電気ケーブル63は、サーバ装置本体部61の通信装置613とネットワーク装置62とを接続する部品である。電気ケーブル63は耐熱性及び耐油性を備える。サーバシステムSにおいて、電気ケーブル63に耐熱性と耐油性が供えられていることで、高温の液体L中でも電気ケーブル63の一部(例えば被覆等の可撓性の領域の物質など)が液体L中に溶け出しづらくすることができる。
【0041】
耐熱性及び耐油性を備える電気ケーブル63の材料には、例えば、スチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、及びポリ塩化ビニルのいずれも含まれないようにするとよい。サーバシステムSにおいては、このような電気ケーブル63が設けられていることで、電気ケーブル63を、高アニリン点油による影響を受けづらい材質で製造されているものとすることができる。例えばポリアルファオレフィン系のオイルは、高アニリン点油と同傾向の性質を示すため、高アニリン点油に含まれる。その結果、サーバシステムSにおいては、60℃のポリアルファオレフィン系のオイル中においても、電気ケーブル63の劣化を防ぐことができる。
【0042】
サーバ装置本体部61とネットワーク装置62との接続を、光ファイバーによらずに、電気ケーブル63のみで行うことによって、液体L中にこれら装置を配置した際に、光の屈折や散乱によって、接続にエラーが起きるという問題を避けることができる。また、ネットワーク装置62から、外部への通信の接続についても、液浸装置1から外に出るまでを電気ケーブルによる配線とし、液体L外部で電気信号から光信号に変換することによって、液体Lによる光接続の接続エラーを避けることができる。
【0043】
電気ケーブル63及びサーバ装置6への印刷には例えば顔料インクが用いられている。顔料インクは、例えば染料インクと比べて、印刷時により高い温度で溶かして用いられる。サーバシステムSにおいては、このように耐熱性に優れる顔料インクが用いられることで、高温の液体L中でも印刷が溶け出しづらくすることができる。
【0044】
サーバ装置本体部61は、ヒートシンク614を有する。ヒートシンク614は、演算処理装置611を冷却するための部品である。ヒートシンク614は、例えば銅製であり、例えば空冷ファンにより冷却されるサーバ装置に設けられているヒートシンクに比べて、フィンの幅が広い。ヒートシンク614には、例えば空冷のためのファンが設けられていない。
【0045】
演算処理装置611とヒートシンク614は、鉄製の癒着材を介して接続されている。サーバシステムSにおいては、このようにヒートシンク614が設けられていることで、ヒートシンク614と発熱体を熱的に接続するグリスが用いられていないため、高温の液体L中にグリスが溶け出すのを防ぐことができる。
【0046】
[液体Lの詳細]
以下、液体Lの望ましい物性値を説明する。液体Lの引火点は、例えば250℃以上である。サーバ装置6は、液体L中に浸かっているために、高温での動作中において基本的に発火をすることはないが、例えば演算処理装置611のチップなどが損傷することにより、微小な発火等が起きたとしても、延焼の可能性を少なくすることができる。
【0047】
液体Lは、例えば冷却水Rよりも動粘度が高いオイルである。サーバシステムSにおいては、このように液体Lとしてオイルが用いられることで、オイルの絶縁性により安全性を向上させることができる。
【0048】
液体Lの動粘度は、例えば50mm/s以下である。より好ましくは、液体Lの動粘度は、例えば35mm/s以下であってもよい。サーバシステムSにおいては、このような動粘度を有する液体Lが用いられることで、動粘度が小さいほど小さいポンプ動力で液体Lを循環させることができるため電力消費を削減できる。
【0049】
液体Lの熱伝導率は、例えば0.13W/(m・K)以上である。より好ましくは、液体Lの熱伝導率は、例えば0.15W/(m・K)以上であってもよい。サーバシステムSにおいては、このような熱伝導率を有する液体Lが用いられることで、熱伝導率が高い方が液体Lの吸熱能力(熱を取り除く速さ)に優れているため、冷却効率を向上させることができる。
【0050】
120℃で24時間保たれた状態での液体Lの揮発量は、例えば5質量%以下であることが望ましい。サーバシステムSにおいては、このような揮発量を有する液体Lが用いられることで、高温環境で液体Lが蒸発しづらいため、メンテナンスコストを大きく下げることができる。
【0051】
液体Lは、例えば酸化防止剤を含む。サーバシステムSにおいては、このように液体Lに酸化防止剤が含まれることで、液体Lが酸化しづらくなるため、液体Lの組成(化学式)が変化し液体Lの性能が変化するのを防ぐことができる。
【0052】
液体Lは、例えばオイルの臭いを抑える添加剤を含む。サーバシステムSにおいては、液体Lにこのような添加剤が含まれることで、オイルの臭いを抑えることができるため、例えばオイルの香りによる保守員への心理的な影響を抑えることができる。
【0053】
[実施例]
図2は、試作したサーバシステムSに用いられた液体LであるPAO 8 cStの物性値を示す図である。PAO 8 cStは、ポリアルファオレフィン系のオイルの一種である。
【0054】
液体Lの15℃における密度は、0.8317g/cmである。液体Lの40℃における比熱は、2.2kJ/(kg・K)である。液体Lの40℃における熱伝導率は、0.137W/(m・K)である。液体Lの引火点(COC法による測定値)は、260℃以上である。液体Lの40℃における動粘度は、46.91mm/sである。液体Lの100℃における動粘度は、7.959mm/sである。液体Lの25℃における比誘電率は、2.12である。120℃で24時間保たれた状態での液体Lの揮発量は、3.7wt%以下である。
【0055】
また、図2に示す液体Lは、サーバシステムSの製品展開時における通年での運用を想定し、夏期の外気最高温度、冬期の同最低温度の条件下でも、データセンターが継続的に運転が可能となる様に計画し、その設計に耐えうるものである。サーバの稼働条件は、外気最高温度は国内最高温度が41.1℃であることから温度の上限を42℃とし、同最低温度はヒートポンプ給湯器の寒冷地仕様が暖房極低温条件:外気温-7℃での性能表示を規定(JISC9220など)していることから-7℃で設定した。
【0056】
そして、サーバ装置6を冷却するための液体Lについて、各種の物性は、そのほかのポリアルファオレフィン系のオイルやシリコーンオイルを用いたり、周知の各種添加材等を用いたりして適宜の調整を加えることができる。そのようにすることによって達成した上記の好ましい物性値の液体によれば、サーバシステムSをより効率的に冷却することが可能となる。
【0057】
[本実施形態に係るサーバシステムSによる効果]
本実施形態に係るサーバシステムSは、上述したように、いずれも耐熱温度が75℃以上である演算処理装置611、記憶装置612、及びネットワーク装置62を有するサーバ装置6及び液体Lを収容する液浸装置1を有する。そして、液浸装置1の流入部11に流入する液体Lの温度が45℃以上60℃以下である場合に、液浸装置1の流出部12から流出する液体Lの温度は60℃以上75℃未満である。
【0058】
その結果、サーバシステムSにおいては、サーバ装置6が稼働可能な温度が高いのでサーバ装置6を高温の液体Lで冷却できる。したがって、流入部11に流入する液体Lの温度を例えば冷凍機を用いて低温(例えば45℃以下)にまで冷却する必要がない。また、流出部12から流出する液体Lの温度が高温であるため、外気の温度が高い場合でも、例えば冷凍機を用いることなく外気と熱交換された冷却水Rを用いて液体Lを冷却することができる。
【0059】
したがって、サーバシステムSにおいては、外気の温度が高い場合でも、サーバ装置6の運用に問題が生じないサーバシステムSを提供し、もってサーバシステムSの総消費電力量の削減を行うとともに、サーバシステムSの環境適応性を向上させることができる。
【0060】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」及び目標13「気候変動に具体的な対策を」に貢献することが可能となる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0062】
S・・・サーバシステム
1・・・液浸装置
11・・・流入部
12・・・流出部
2・・・液体流路
3・・・冷却水循環装置
4・・・冷却水流路
5・・・熱交換器
6・・・サーバ装置
61・・・サーバ装置本体部
611・・・演算処理装置
612・・・記憶装置
613・・・通信装置
614・・・ヒートシンク
62・・・ネットワーク装置
63・・・電気ケーブル
図1
図2