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特開2024-7142構造体設計支援装置、構造体設計支援方法、プログラムおよび記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007142
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】構造体設計支援装置、構造体設計支援方法、プログラムおよび記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20240111BHJP
   G06F 30/23 20200101ALI20240111BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20240111BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20240111BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/23
G06F30/12
G06T19/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108404
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】河内 毅
【テーマコード(参考)】
5B050
5B146
【Fターム(参考)】
5B050AA03
5B050BA09
5B050BA17
5B050CA01
5B050EA26
5B050FA02
5B050FA05
5B146AA05
5B146DG07
5B146DJ01
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146DJ14
5B146DL08
5B146EC04
(57)【要約】
【課題】特定の部位の剛性に対し影響の大きい部位を特定することが可能な、構造体設計支援装置、構造体設計支援方法、プログラムおよび記録媒体を提供する。
【解決手段】構造体設計支援装置10は、複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、第1状態における位置、第2状態における位置、を表す節点情報を記憶する節点情報記憶部22と;節点のうち選択された1点を基準点として定め、前記節点のうち前記基準点以外の節点である評価点毎に、基準点と評価点との距離の、第1状態と、第2状態との間での変化率の絶対値を算出する変化率計算部12と;を備え、変化率計算部12は、評価点毎の前記変化率の絶対値を、評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、
第1状態における位置、
第2状態における位置、
を表す節点情報を記憶する節点情報記憶部と;
前記節点のうち選択された1点を基準点として定め、前記節点のうち前記基準点以外の節点である評価点毎に、前記基準点と前記評価点との距離の、前記第1状態と、前記第2状態との間での変化率の絶対値を算出する変化率計算部と;
を備え,
前記変化率計算部は、前記変化率計算部が算出した前記評価点毎の前記変化率の絶対値を、前記評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて前記節点情報記憶部に記憶することを特徴とする構造体設計支援装置。
【請求項2】
前記変化率計算部は、前記変化率の絶対値が閾値以上となる前記評価点を大ひずみ評価点として識別可能に前記節点情報記憶部に記憶することを特徴とする、請求項1に記載の構造体設計支援装置。
【請求項3】
前記評価点についての前記変化率の絶対値を前記構造体モデルにおける当該評価点の位置において視認可能な画像を作成する画像作成部をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の構造体設計支援装置。
【請求項4】
前記各大ひずみ評価点のうち、前記大ひずみ評価点間の距離が予め設定された閾値以下である2以上の前記大ひずみ評価点の集合を大ひずみ評価点群として設定する評価点群設定部をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の構造体設計支援装置。
【請求項5】
前記大ひずみ評価点群と、前記大ひずみ評価点群に含まれない前記大ひずみ評価点である孤立大ひずみ評価点と、の合計が2以上であり、
前記基準点と、前記大ひずみ評価点群の中で最も前記変化率の絶対値が大きい前記大ひずみ評価点または前記孤立大ひずみ評価点との相対変位が規制された剛体化条件で、前記構造体モデルの解析処理を行う解析部を備えることを特徴とする、請求項4に記載の構造体設計支援装置。
【請求項6】
前記解析部は、前記剛体化条件での解析処理によって、前記大ひずみ評価点群の中で最も変化率の大きい前記大ひずみ評価点または前記孤立大ひずみ評価点についての剛体化後剛体評価値を算出し、前記剛体化条件を付加しない条件での解析処理による剛体化前剛体評価値と前記剛体化後剛体評価値とに基づいて、前記基準点に対する変位を規制すべき拘束対象点を特定することを特徴とする、請求項5に記載の構造体設計支援装置。
【請求項7】
前記解析処理がモーダル解析処理である、請求項6に記載の構造体設計支援装置。
【請求項8】
前記変化率計算部は、前記評価点のうち、前記構造体モデルを構成する複数の部品に属する評価点について、自己が属する部品を識別する部品識別情報を前記評価点識別情報と関連付けて前記節点情報記憶部に記憶することを特徴とする、請求項1又は2に記載の構造体設計支援装置。
【請求項9】
前記部品に属する全ての前記評価点についての前記変化率の絶対値のそれぞれの値に基づいて当該部品についての部品単位評価値を算出する評価値算出部をさらに備え、
前記評価値算出部は、前記部品単位評価値を前記評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部に記憶することを特徴とする請求項8に記載の構造体設計支援装置。
【請求項10】
複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、
第1状態における位置、
第2状態における位置、
を表す節点情報を記憶する第1の過程と;
前記節点のうち選択された1点を基準点として定め、前記節点のうち前記基準点以外の節点である評価点毎に、前記基準点と前記評価点との距離の、前記第1状態と、前記第2状態との間での変化率の絶対値を算出する第2の過程と;
を有し,
前記第2の過程で、
前記第1の過程で算出した前記評価点毎の前記変化率の絶対値を、前記評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて記憶することを特徴とする構造体設計支援方法。
【請求項11】
コンピュータを、
複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、
第1状態における位置、
第2状態における位置、
を表す節点情報を記憶する節点情報記憶部と;
前記節点のうち選択された1点を基準点として定め、前記節点のうち前記基準点以外の節点である評価点毎に、前記基準点と前記評価点との距離の、前記第1状態と、前記第2状態との間での変化率の絶対値を算出する変化率計算部と;
して機能させ、かつ、
前記評価点毎の前記変化率の絶対値を、前記評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて前記節点情報記憶部に記憶するように、前記変化率計算部を機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体設計支援装置、構造体設計支援方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種構造体の設計段階において、構造体の評価、解析を行うための構造体設計支援装置が各種提案されている。構造体設計支援装置としては、一般にはコンピュータが利用されており、コンピュータに構造体の評価、解析を行わせるためのプログラムや、そのプログラムを実装したシステムが提案されている。このような構造体設計支援装置では、設計対象となる構造体の全体もしくは構造体を構成する各部品を小領域(要素)に分割して表現したモデルを構築し、このモデルを利用して外力の印加に対する応答をシミュレーションし、得られた結果を利用して、設計を行っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、構造体を構成する各部品への外力の印加による他の部品との相対的な位置関係の変化に着目した構造解析の技術が記載されている。具体的には、特許文献1には、複数の部品から構成される構造体に設けられた評価点の、第1状態における位置、第2状態における位置、および前記複数の部品のうちのいずれに属するか、を表す評価点情報を取得する評価点情報取得部と;前記評価点情報取得部が取得した前記評価点情報を用いて、基準部品に属する第1の評価点と、前記第1の評価点が属する前記基準部品とは異なる比較部品に属する第2の評価点との位置関係の、前記第1状態と、前記第2状態との間での変化の大きさを表す評価値を算出する評価値算出部と;を備える構造体設計支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6278122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、構造体の剛性を低下させる部品がどの方向に存在するかを示す指すベクトルを用いて評価しているが、ベクトルの先にある部材が二重構造であるとどの部材が寄与しているが判別できない場合があった。また、複数のベクトルを表示すると、評価が困難になる場合があった。
【0006】
本発明は上記の事情を鑑みなされた発明であり、特定の部位の剛性に対し影響の大きい部位を容易に特定することが可能な、構造体設計支援装置、構造体設計支援方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の構造体設計支援装置は、複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、第1状態における位置、第2状態における位置、を表す節点情報を記憶する節点情報記憶部と;前記節点のうち選択された1点を基準点として定め、前記節点のうち前記基準点以外の節点である評価点毎に、前記基準点と前記評価点との距離の、前記第1状態と、前記第2状態との間での変化率の絶対値を算出する変化率計算部と;を備え,前記変化率計算部は、前記変化率計算部が算出した前記評価点毎の前記変化率の絶対値を、前記評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて前記節点情報記憶部に記憶することを特徴とする。
(2)本発明の態様2は、態様1の構造体設計支援装置において、
前記変化率計算部は、前記変化率の絶対値が閾値以上となる前記評価点を大ひずみ評価点として識別可能に前記節点情報記憶部に記憶してもよい。
(3)本発明の態様3は、態様1又は2の構造体設計支援装置において、前記評価点についての前記変化率の絶対値を前記構造体モデルにおける当該評価点の位置において視認可能な画像を作成する画像作成部をさらに備えてもよい。
(4)本発明の態様4は、態様2の構造体設計支援装置において、前記各大ひずみ評価点のうち、前記大ひずみ評価点間の距離が予め設定された閾値以下である2以上の前記大ひずみ評価点の集合を大ひずみ評価点群として設定する評価点群設定部をさらに備えてもよい。
(5)本発明の態様5は、態様4の構造体設計支援装置において、前記大ひずみ評価点群と、前記大ひずみ評価点群に含まれない前記大ひずみ評価点である孤立大ひずみ評価点と、の合計が2以上であり、前記基準点と、前記大ひずみ評価点群の中で最も前記変化率の絶対値が大きい前記大ひずみ評価点または前記孤立大ひずみ評価点との相対変位が規制された剛体化条件で、前記構造体モデルの解析処理を行う解析部を備えてもよい。
(6)本発明の態様6は、態様5の構造体設計支援装置において、前記解析部は、前記剛体化条件での解析処理によって、前記大ひずみ評価点群の中で最も変化率の大きい前記大ひずみ評価点または前記孤立大ひずみ評価点についての剛体化後剛体評価値を算出し、前記剛体化条件を付加しない条件での解析処理による剛体化前剛体評価値と前記剛体化後剛体評価値とに基づいて、前記基準点に対する変位を規制すべき拘束対象点を特定してもよい。
(7)本発明の態様7は、態様6の構造体設計支援装置において、前記解析処理がモーダル解析処理であってもよい。
(8)本発明の態様8は、態様1または2の構造体設計支援装置において、
前記変化率計算部は、前記評価点のうち、前記構造体モデルを構成する複数の部品に属する評価点について、自己が属する部品を識別する部品識別情報を前記評価点識別情報と関連付けて前記節点情報記憶部に記憶してもよい。
(9)本発明の態様9は、態様8の構造体設計支援装置において、前記部品に属する全ての前記評価点についての前記変化率の絶対値のそれぞれの値に基づいて当該部品についての部品単位評価値を算出する評価値算出部をさらに備え、前記評価値算出部は、前記部品単位評価値を前記評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部に記憶してもよい。
(10)本発明の態様10の構造体設計支援方法は、複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、第1状態における位置、第2状態における位置、を表す節点情報を記憶する第1の過程と;前記節点のうち選択された1点を基準点として定め、前記節点のうち前記基準点以外の節点である評価点毎に、前記基準点と前記評価点との距離の、前記第1状態と、前記第2状態との間での変化率の絶対値を算出する第2の過程と;
を有し,前記第2の過程で、前記第1の過程で算出した前記評価点毎の前記変化率の絶対値を、前記評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて記憶する。
(11)本発明の態様11のプログラムは、
コンピュータを、
複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、
第1状態における位置、
第2状態における位置、
を表す節点情報を記憶する節点情報記憶部と;
前記節点のうち選択された1点を基準点として定め、前記節点のうち前記基準点以外の節点である評価点毎に、前記基準点と前記評価点との距離の、前記第1状態と、前記第2状態との間での変化率の絶対値を算出する変化率計算部と;
して機能させ、かつ、
前記評価点毎の前記変化率の絶対値を、前記評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて前記節点情報記憶部に記憶するように、前記変化率計算部を機能させる。
(12)本発明の態様12のコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、態様11に記載のプログラムを記録する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、特定の部位の剛性に対し影響の大きい部位を容易に特定することが可能な、構造体設計支援装置、構造体設計支援方法、プログラムおよび記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る構造体設計支援装置10の構成を示す概略ブロック図である。
図2】第1実施形態における変化率計算部12の動作を説明するフローチャートである。
図3】第1実施形態におけるデータベースの一例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る構造体設計支援装置10Bの構成を示す概略ブロック図である。
図5】第2実施形態における変化率計算部12Bの動作を説明するフローチャートである。
図6】第2実施形態における評価点群設定部14の動作を説明するフローチャートである。
図7】大ひずみ評価点群と孤立大ひずみ評価点を説明する図である。
図8】第2実施形態における解析部15の動作を説明するフローチャートである。
図9】第3実施形態に係る構造体設計支援装置10Cの構成を示す概略ブロック図である。
図10】第3実施形態における評価値算出部16の動作を説明するフローチャートである。
図11】実施例における構造体設計支援装置10による表示例を示す図である。
図12図11の表示例を別の視点から見た図である。
図13】節点同士で評価した結果を示す図である。
図14図13の結果を別の視点から見た図である。
図15】実施例2-1における剛体化条件を説明するための図である。
図16】比較例2-1における剛体化条件を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、第1実施形態について説明する。なお、以下の実施形態においては、構造体の設計段階における構造解析の目的の一例として、構造体の剛性を向上させることを目的として説明している。しかし、構造体の設計段階における構造解析の目的としては、構造体の剛性の向上に限らず、構造体の剛性を担保した上で軽量化することや、構造体の衝突解析等、ニーズに合わせた構造体の解析を行うことができる。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る構造体設計支援装置10の構成を示す概略ブロック図である。構造体設計支援装置10は、複数の部品からなる構造体の剛性を仮想モデル(以下、構造体モデル)を用いて評価する。当該構造体モデルは、例えば、溶接、かしめ、ボルトなどにより接合された、複数の部品から組み立てられている。構造体設計支援装置10は、処理部21、節点情報記憶部22、および表示部23、を有する。処理部21は、節点情報取得部11、変化率計算部12、画像作成部13を有する。
【0012】
節点情報取得部11は、評価対象となる構造体モデルに設けられた節点の、第1状態における位置、第2状態における位置を表す節点情報を取得する。第1状態は、例えば、構造体モデルに外部からの荷重が負荷されていない状態である。第1状態は、構造体モデルに変形が生じていない状態であってもよい。第2状態は、例えば、構造体モデルに外部からの荷重が負荷されている状態(例えば、想定される最大の荷重が加えられている状態)である。第2状態は、構造体モデルの固有モードの変形が生じている状態であってもよい。節点は、例えば、各状態における構造体の変形を有限要素法で解析したときの有限要素法における要素の頂点である。節点情報は、構造体モデルを有限要素法で解析することで算出される。なお、節点情報は、例えば、有限要素法以外の数値シミュレーションにより算出されたものであってもよい。
【0013】
節点情報記憶部22は、節点情報取得部11が取得した節点情報を記憶する。すなわち、節点情報記憶部22は、複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、第1状態における位置、第2状態における位置を表す節点情報を記憶する。変化率計算部12は、節点のうち選択された1点を基準点として定め、節点のうち基準点以外の節点である評価点毎に、基準点と評価点との距離の、第1状態と、第2状態との間での変化率の絶対値を算出する。変化率計算部12は、評価点毎の変化率の絶対値を、評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶する。評価点識別情報は、例えば、節点を特定する符号(節点ID)である。また、変化率計算部12は、前記変化率計算部は、評価点のうち、構造体モデルを構成する複数の部品に属する評価点について、自己が属する部品を識別する部品識別情報を評価点識別情報と関連付けて前記節点情報記憶部に記憶する。即ち、変化率計算部12は、当該評価点が属する部品を識別する部品識別情報を評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶することが好ましい。部品識別情報は、例えば、部品を特定する符号(部品ID)である。変化率の絶対値、評価点識別情報、および部品識別情報は、節点情報記憶部22において、データベースとして保存されることが好ましい。変化率計算部12による変換率の絶対値の算出方法の詳細は、後述する。
【0014】
画像作成部13は、評価点についての変化率の絶対値を構造体モデルにおける当該評価点の位置において視認可能な画像を作成する。画像作成部13は、例えば、変化率計算部12が算出した各評価点の変化率の絶対値を濃淡で表した構造体モデルの三次元画像を生成する。なお、各評価点の変化率の絶対値を濃淡ではなく、カラーで表してもよい。
【0015】
表示部23は、変化率計算部12の大ひずみ評価点を評価点識別情報とともに表示してもよいし、画像作成部13が作成した三次元画像を表示してもよい。
【0016】
(構造体設計支援方法)
第1実施形態の構造体設計支援方法は、複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、第1状態における位置、第2状態における位置、を表す節点情報を記憶する第1の過程と;前記節点のうち選択された1点を基準点として定め、前記節点のうち前記基準点以外の節点である評価点毎に、前記基準点と前記評価点との距離の、前記第1状態と、前記第2状態との間での変化率の絶対値を算出する第2の過程と;を有し、前記第2の過程で、前記第1の過程で算出した前記評価点毎の前記変化率の絶対値を、前記評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて記憶する。以下、構造体設計支援装置10を用いたときの構造体設計支援方法について説明する。
【0017】
第1の過程では、節点情報記憶部22に、複数の部品から構成される構造体モデルに設けられた節点の、第1状態における位置、第2状態における位置、を表す節点情報を記憶する。
【0018】
以下、第2の過程における変化率の絶対値の算出方法について説明する。図2は、変化率計算部12の動作を説明するフローチャートである。具体的には、第2の過程について説明する。図2では、第1状態が、構造体モデルに荷重がかかっていない非荷重状態であり、第2状態が、構造体モデルに想定する最大の荷重がかかっている最大荷重状態である場合を例に説明する。以下の例は、本発明の一例であり、第1状態は、非荷重状態に限定されない。同様に、第2状態は、最大荷重状態に限定されない。
【0019】
変化率計算部12は、節点情報記憶部22が記憶している節点情報に含まれる節点各々について、ステップS1からS8の処理を行う(ステップS1~S8)。ステップS1において、節点のうち選択された1点を基準点iとして定める。基準点iの設定方法は特に限定されない。基準点iは、例えば、シート取り付け点、荷重の入力点などが挙げられる。また、特許第6278122号公報に記載の方法で、評価値を算出することで基準点iを設定してもよい。ステップS2において、変化率計算部12は、節点情報記憶部22から、基準点iの、第1状態の位置(X座標、Y座標、Z座標)と第2状態の位置とを読み出す。
【0020】
次に、ステップS3において、具体的には、変化率計算部12は、節点のうち前記基準点以外の節点である評価点jを設定する(例えば初期値j=0)。ステップS4において、変化率計算部12は節点情報記憶部22から、評価点jの、第1状態(ここでは、非荷重状態)と第2状態(ここでは、最大荷重状態)の位置とを読み出す。
【0021】
ステップS5において、変化率計算部12は、節点のうち基準点i以外の節点である評価点jとの第1状態での距離F0i,jおよび第2状態での距離F1i,jを算出する。例えば、第1状態での基準点iのX座標がXであり、Y座標がYであり、Z座標がZであり、第1状態での評価点jのX座標がXであり、Y座標がYであり、Z座標がZであるとき、距離F0i,jは、下記の式(1)により算出される。
【0022】
【数1】
【0023】
変化率計算部12は、ステップS2およびステップS4で読み出した位置を用いて、基準点iと、評価点jとの第2状態での距離F1i,jを算出する(ステップS5)。例えば、第2状態での基準点iのX座標がX1iであり、Y座標がY1iであり、Z座標がZ1iであり、第2状態での評価点jのX座標がX1jであり、Y座標がY1jであり、Z座標がZ1jであるとき、距離F1i,jは、下記の式(2)により算出される。
【0024】
【数2】
【0025】
変化率計算部12は、距離F0i,jから距離F1i,jへの変化率dFi,j=(F1i,j-F0i,j)/F0i,jの絶対値を算出する(ステップS6)。
基準点iと評価点jとの元々の距離が大きいほど距離の変化量が大きくなるが、距離F0i,jから距離F1i,jへの変化率dFi,jを用いることで、この距離の影響を低減することができる。
【0026】
ステップS7において、変化率計算部12は、変化率計算部12が算出した評価点jの変化率dFi,jの絶対値を、評価点jを識別する評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶する。変化率計算部12は、例えば、図3に示すようなデータベースとして、変化率計算部12が算出した評価点jの変化率dFi,jの絶対値を、評価点jを識別する評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶する。図3の例では、節点情報記憶部22は、節点ID34728を基準点とし、各節点の第1状態の座標(x0、y0、z0)、第2状態の座標(x1、y1、z1)、第1状態での基準点iと各節点(評価点)jとの距離(単位mm)、第2状態での基準点iと各評価点jとの距離、および距離の変化率の絶対値を記憶している。図3は、基準点に対する距離の変化率の絶対値が構造体モデルの一部領域で同分布しているかを示す。距離の絶対値は寄与度を意味する。
【0027】
次に、処理はステップS8に進む。ステップS8では、変化率計算部12は、評価点jに未処理のものがあるかどうか判定する。評価点jに未処理のものがあれば(ステップS8にてYES)、ステップS3に戻り、未処理の評価点jのうち1点を選択して処理を行う。評価点jに未処理のものがなければ(ステップS8にてNO)、ステップS3からS8のループ、すなわち処理を終了する。
【0028】
このように、構造体設計支援装置10および構造体設計支援方法は、節点情報を用いて、第1状態と第2状態との間での、評価点j毎に、基準点iと評価点jとの距離の、第1状態と、第2状態との間での変化率の絶対値を算出し、算出された変化率の絶対値を評価点jを識別する評価点識別情報と関連付けて記憶する。
【0029】
これにより、第1状態から第2状態に変わった時の基準点iの空間ひずみに対し、寄与(変化率の絶対値)が大きい評価点jを特定することができる。第1状態から第2状態に変わった時の基準点iの空間ひずみに対し寄与が大きい評価点jは、剛性に与える影響が大きい節点である。そのため、この評価点jを強化することで、構造体の剛性が上がることが期待できる。よって、対象とする部位(例えば、シートの取り付け部位)の剛性を上げるために適した部位を、より容易に検出することができる。
【0030】
また、変化率計算部12は、変化率の絶対値が大きいものから順に所定数の評価点jを特定してもよい。所定数は、目標とする構造体の合成に応じて適宜設定することができる。
特定された評価点jは、補強などの対象となる節点となる。この結果を、表示部23に表示させてもよい。
【0031】
これにより、第1状態から第2状態に変わった時に、剛性に与える影響が大きい評価点jがより精密に特定される。状態が変わった時に、基準点iとの相対変位が大きい評価点jは、構造体の剛性を下げてしまっている可能性がある。そのため、この評価点jを強化することで、構造体の剛性がより上がることが期待できる。
【0032】
また、本評価手法を実施し、対策を施す評価点jを求め、そこへ対策を実施するというプロセスを繰り返し実施することにより、より良い構造を設計することができる。繰り返し実施することで、隠れていた対策すべき部分を見つけることができる。
【0033】
以上説明した本実施例の各ステップは、構造体設計支援装置10が自動的に行うように構成されていてもよい。
【0034】
また、図1における構造体設計支援装置10の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより構造体設計支援装置10を実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0035】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信回線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0036】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について図4を参照して説明する。なお、第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。図4は、第2実施形態に係る構造体設計支援装置10Bの構成を示す概略ブロック図である。構造体設計支援装置10Bは、複数の部品からなる構造体の剛性を仮想モデル(以下、構造体モデル)を用いて評価する。構造体設計支援装置10Bは、処理部21B、節点情報記憶部22、および表示部23、を有する。処理部21Bは、節点情報取得部11、変化率計算部12B、画像作成部13、評価点群設定部14および解析部15を有する。
【0037】
変化率計算部12Bは、節点のうち選択された1点を基準点として定め、節点のうち基準点以外の節点である評価点毎に、基準点と評価点との距離の、第1状態と、第2状態との間での変化率の絶対値を算出する。変化率計算部12Bは、評価点毎の変化率の絶対値を、評価点を識別する評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶する。このとき、変化率計算部12Bは、変化率の絶対値が閾値α1以上となる評価点を大ひずみ評価点として識別可能に節点情報記憶部22に記憶する。また、変化率計算部12Bは、当該評価点が属する部品を識別する部品識別情報を評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶することが好ましい。変化率の絶対値、評価点識別情報、および部品識別情報は、節点情報記憶部22において、データベースとして保存されることが好ましい。
【0038】
評価点群設定部14は、各大ひずみ評価点のうち、大ひずみ評価点間の距離が予め設定された閾値β1以下である2以上の大ひずみ評価点の集合を大ひずみ評価点群として設定する。大ひずみ評価点群の設定方法の詳細は、後述する。
【0039】
解析部15は、評価点群設定部14で設定された大ひずみ評価点群と、大ひずみ評価点群に含まれない大ひずみ評価点である孤立大ひずみ評価点と、の合計が2以上であるとき、基準点と、大ひずみ評価点群の中で最も変化率の絶対値が大きい大ひずみ評価点(以下、最大ひずみ評価点と称する場合がある)または孤立大ひずみ評価点との相対変位が規制された剛体化条件で、構造体モデルの解析処理を行う。なお、この場合、最大ひずみ評価点と孤立大ひずみ評価点の合計は2以上である。相対変位が規制された剛体化条件は、例えば、基準点iと最大ひずみ評価点または孤立大ひずみ評価点とを剛体梁で接続する条件である。
また、解析部15は、上述の剛体化条件での解析処理によって、大ひずみ評価点群の中の最大ひずみ評価点または孤立大ひずみ評価点についての剛体化後剛体評価値を算出し、前記剛体化条件を付加しない条件での解析処理による剛体化前剛体評価値と前記剛体化後剛体評価値とに基づいて、前記基準点に対する変位を規制すべき拘束対象点を特定する。
【0040】
(構造体設計支援方法)
以下、第2実施形態における構造体設計支援方法について説明する。第2実施形態における構造体設計支援方法は、上述の第1の過程と、変化率の絶対値を算出する第2の過程と、大ひずみ評価点群を設定する第3の過程と、拘束対象点を特定する第4の過程と、を含む。以下、構造体設計支援装置10Bを用いた、第2の過程、第3の過程、および第4の過程について説明する。
【0041】
第2実施形態における変化率の絶対値の算出(第2の過程)について説明する。図5は、変化率計算部12Bの動作を説明するフローチャートである。変化率計算部12Bは、節点情報記憶部22が記憶している節点情報に含まれる節点各々について、ステップS1からS8の処理を行う(ステップS1~S8)。ステップS1において、節点のうち選択された1点を基準点iとして定める。基準点iの設定方法は特に限定されない。基準点iは、例えば、シート取り付け点、荷重の入力点などが挙げられる。また、後述する方法で、評価値を算出することで基準点iを設定してもよい。ステップS2において、変化率計算部12Bは、節点情報記憶部22から、基準点iの、第1状態の位置(X座標、Y座標、Z座標)と第2状態の位置とを読み出す。
【0042】
次に、ステップS3において、具体的には、変化率計算部12Bは、節点のうち前記基準点以外の節点である評価点jを設定する(例えば初期値j=0)。ステップS4において、変化率計算部12Bは節点情報記憶部22から、評価点jの、第1状態(ここでは、非荷重状態)と第2状態(ここでは、最大荷重状態)の位置とを読み出す。
【0043】
ステップS5において、変化率計算部12Bは、節点のうち基準点i以外の節点である評価点jとの第1状態での距離F0i,jおよび第2状態での距離F1i,jを算出する。
【0044】
変化率計算部12Bは、ステップS2およびステップS4で読み出した位置を用いて、基準点iと、評価点jとの第2状態での距離F1i,jを算出する(ステップS5)。
【0045】
変化率計算部12Bは、距離F0i,jから距離F1i,jへの変化率dFi,j=(F1i,j-F0i,j)/F0i,jの絶対値を算出する(ステップS6)。
【0046】
ステップS7Bにおいて、変化率計算部12Bは、評価点jの変化率dFi,jの絶対値を、評価点jを識別する評価点識別情報と節点情報記憶部22に関連付けて記憶する。このとき、変化率計算部12Bは、変化率の絶対値が、閾値α1以上となる評価点jを大ひずみ評価点として識別可能に節点情報記憶部22に記憶する。閾値α1は、目標とする構造体の剛性に応じて、適宜設定することができる。
【0047】
次に、処理はステップS8に進む。ステップS8では、変化率計算部12Bは、評価点jに未処理のものがあるかどうか判定する。評価点jに未処理のものがあれば(ステップS8にてYES)、ステップS3に戻り、未処理の評価点jのうち1点を選択して処理を行う。評価点jに未処理のものがなければ(ステップS8にてNO)、ステップS3からS8のループ、すなわち処理を終了する。
【0048】
(大ひずみ評価点群の設定方法)
次に、上記で得られた大ひずみ評価点から大ひずみ評価点群を設定する方法(第3の過程)について説明する。大ひずみ評価点群を設定することで、後述するように、拘束対象点の特定方法において、処理数を減らすことができる。図6は、大ひずみ評価点群の設定方法について説明するフローチャートである。評価点群設定部14は、節点情報記憶部22が記憶している節点情報および評価点識別情報に基づいて、ステップS11からS19までの処理を行う(ステップS11~S19)。
【0049】
ステップS11において、評価点群設定部14は、節点情報記憶部22に記憶された大ひずみ評価点のうち選択された1点を基準大ひずみ評価点kとして定める(例えば、初期値k=0)。ステップS12において、評価点群設定部14は、節点情報記憶部22から、基準大ひずみ評価点kの第1状態の位置(X座標、Y座標、Z座標)を読み出す。
【0050】
次に、ステップS13において、評価点群設定部14は、大ひずみ評価点のうち、基準大ひずみ評価点k以外の大ひずみ評価点である比較大ひずみ評価点lを設定する(例えば初期値l=0)。ステップS14において、評価点群設定部14は節点情報記憶部22から、比較大ひずみ評価点lの、第1状態の位置(X座標、Y座標、Z座標)を読み出す。
【0051】
ステップS15において、評価点群設定部14は、基準大ひずみ評価点kと比較大ひずみ評価点lとの第1状態での距離F2k,lを算出する。例えば、第1状態での基準大ひずみ評価点kのX座標がXであり、Y座標がYであり、Z座標がZであり、第1状態での比較大ひずみ評価点lのX座標がXであり、Y座標がYであり、Z座標がZであるとき、距離F2k,lは、下記の式(3)により算出される。
【0052】
【数3】
【0053】
ステップS16において、距離F2k,lが閾値β1以下であれば(ステップS16にてYES)、基準大ひずみ評価点kと比較大ひずみ評価点lとを同じ大ひずみ評価点群として設定する(ステップS17)。閾値β1は、目的に応じて適宜設定することができる。閾値β1の値は、対象部品、有限要素法のメッシュ、設計のフェーズ等に応じた変数とする。閾値β1は、予め設定されていてもよいし、構造体設計支援装置10Bを操作するオペレータによって設定されてもよい。このとき、評価点群設定部14は、いずれかの大ひずみ評価点群に属するかの情報を大ひずみ評価点を識別する大ひずみ評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶する。大ひずみ評価点識別情報は、例えば、大ひずみ評価点を特定する符号(大ひずみ評価点ID)である。いずれかの大ひずみ評価点群に属するかの情報は、大ひずみ評価点群を特定する符号(大ひずみ評価点群ID)である。距離F2k,lが閾値β1以下でなければ(ステップS16にてNo)、ステップS18に進む。
【0054】
次に、処理はステップS18に進む。ステップS18では、評価点群設定部14は、比較大ひずみ評価点lに未処理のものがあるかどうか判定する。比較大ひずみ評価点lに未処理のものがあれば(ステップS18にてYES)、ステップS13に戻り、未処理の比較大ひずみ評価点のうち1点を選択して処理を行う。比較大ひずみ評価点lに未処理のものがなければ(ステップS18にてNO)、ステップS19に進む。
【0055】
ステップS19では、評価点群設定部14は、基準大ひずみ評価点kに未処理のものがあるかどうか判定する。基準大ひずみ評価点kに未処理のものがあれば(ステップS19にてYES)、ステップS11に戻り、未処理の大ひずみ評価点(基準大ひずみ評価点として選択されていない大ひずみ評価点)のうち1点を基準大ひずみ評価点として選択して処理を行う。大ひずみ評価点kに未処理のものがなければ(ステップS18にてNO)、ステップS20に進む。なお、上記の処理において、距離F2k,l算出済みの2点間については、大ひずみ評価点群を設定するための各ステップを省略してもよい。
【0056】
ステップS20では、評価点群設定部14は、いずれの大ひずみ評価点群に属しない大ひずみ評価点を孤立大ひずみ評価点として節点情報記憶部22に記憶し、処理を終了する。また、このとき、評価点群設定部14は、各大ひずみ評価点群の中で最も変化率の絶対が大きい大ひずみ評価点を最大ひずみ評価点として、節点情報記憶部22に記憶してもよい。
【0057】
図7は、大ひずみ評価点群と孤立大ひずみ評価点とを説明する図である。図7は、構造体を構成する部品A1と、部品B1とを含む断面である。部品A1には、節点a1からa5が設けられており、部品B1には、節点b1からb4が設けられている。大ひずみ評価点は、節点b1、節点b2、節点a2および節点a5である。距離F2k,lが閾値β1以下となる、節点b1、節点b2、節点a2の集合が1つの大ひずみ評価点群となる。大ひずみ評価点群に含まれない節点a5は、孤立大ひずみ評価点の例である。
【0058】
(拘束対象点の特定方法)
次に、基準点iの変位などを抑制する上で特に寄与の大きい節点である拘束対象点を特定する方法(第4の過程)について説明する。拘束対象点は、基準点iに対する変位を規制すべき点である。拘束対象点の数は特に限定されず、1以上である。例えば、剛性を向上するために複数の拘束対象点を設定してもよい。
【0059】
図8は、拘束対象点の特定方法のフローチャートである。解析部15は、節点情報記憶部22が記憶している、基準点i、最大ひずみ評価点および孤立大ひずみ評価点の情報に基づき、ステップS31からS34の処理を行う(ステップS31~S34)。
【0060】
ステップS31において、解析部15は、上述した剛体化条件を付加しない条件で構造体モデルに対して解析処理を行い、剛体化前剛体評価値を算出する。解析処理としては、特に限定されず、モーダル解析、剛性解析、静的捩じり剛性、周波数応答解析(伝達関数特定)、衝突解析、走行解析などが挙げられる。解析処理は、公知の方法で行うことができる。解析処理としては、モーダル解析が好ましい。解析処理としてモーダル解析を行う場合は、例えば、剛体化前剛体評価値は固有振動数であるが、剛体化前剛体評価値は、固有振動数に限定されない。
【0061】
ステップS32において、解析部15は、各最大ひずみ評価点と各孤立大ひずみ評価点のうちから選択される解析点nを設定する。ステップS33において、解析部15は、基準点と、解析点nとの相対変位が規制された剛体化条件で、構造体モデルの解析処理を行う。ステップS32における解析処理は、ステップS31の解析処理と同一であり、評価する剛体化後剛体評価値となるパラメータ(例えば、固有振動数)は、ステップS31の剛体化前剛体評価値となるパラメータと同一である。例えば、剛体化前剛体評価値が固有振動数の場合は、剛体化後剛体評価値も固有振動数となる。
【0062】
次にステップ34に進む。ステップ34では、解析点nに未処理のものがあるかどうかを判定する。解析点nに未処理のものがあれば(ステップS34にてYES)、ステップS31に戻り、未処理の解析点nのうち1点を選択して処理を行う。解析点nに未処理の物が無ければ(ステップS34にてNO)、ステップS31~S34までのループを終了する。即ち、処理を終了する。
【0063】
このように、構造体設計支援装置10Bおよび構造体設計支援方法は、節点情報を用いて、第1状態と第2状態との間での、評価点j毎に、基準点iと評価点jとの距離の、第1状態と、第2状態との間での変化率の絶対値を算出し、算出された変化率の絶対値を評価点jを識別する評価点識別情報と関連付けて記憶する。また、構造体設計支援装置10Bおよび構造体設計支援方法は、変化率の絶対値が閾値α1以上である各大ひずみ評価点のうち、大ひずみ評価点間の距離が予め設定された閾値β1以下である2以上の大ひずみ評価点の集合を大ひずみ評価点群として設定する。そして、構造体設計支援装置10Bおよび構造体設計支援方法は、基準点と、大ひずみ評価点群の中で最も変化率の絶対値が大きい前記大ひずみ評価点または前記孤立大ひずみ評価点との相対変位が規制された剛体化条件で、構造体モデルの解析処理を行う。
【0064】
これにより、第1状態から第2状態に変わった時の基準点iの空間ひずみに対し、寄与(変化率の絶対値)が大きい評価点jを特定することができる。また、評価点群設定部14が大ひずみ評価点群を設定することで、解析部15の解析処理を短くすることができる。また、解析部15が、大ひずみ評価点群の中で最も変化率の絶対値が大きい前記大ひずみ評価点または前記孤立大ひずみ評価点との相対変位が規制された剛体化条件で、構造体モデルの解析処理を行うことで、基準点に対する変位を規制すべき拘束対象点を特定することができる。これによって、構造体モデルの設計を容易にすることができる。
【0065】
また、本評価手法を実施し、対策を施す評価点jを求め、そこへ対策を実施するというプロセスを繰り返し実施することにより、より良い構造を設計することができる。繰り返し実施することで、隠れていた対策すべき部分を見つけることができる。
【0066】
以上説明した各ステップは、構造体設計支援装置10Bが自動的に行うように構成されていてもよい。
【0067】
図9における構造体設計支援装置10Bの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより構造体設計支援装置10Bを実現してもよい。
【0068】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について図9を参照して説明する。なお、第3実施形態においては、第1実施形態および第2実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。図10は、第3実施形態に係る構造体設計支援装置10Cの構成を示す概略ブロック図である。構造体設計支援装置10Cは、複数の部品からなる構造体の剛性を仮想モデル(以下、構造体モデル)を用いて評価する。構造体設計支援装置10Cは、処理部21C、節点情報記憶部22、および表示部23、を有する。処理部21Cは、節点情報取得部11、変化率計算部12、画像作成部13、および評価値算出部16を有する。
【0069】
評価値算出部16は、部品に属する全ての評価点jについての変化率の絶対値のそれぞれの値に基づいて当該部品についての部品単位評価値Emiを算出する。部品単位評価値Emiの算出方法は後述する。また、評価値算出部16は、部品単位評価値Emiを評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶する。
【0070】
(構造体設計支援方法)
第3実施形態に係る構造体設計支援方法は、第1の過程、第2の過程、および部品単位評価値を算出する第5の過程を含む。ここでは、構造体設計支援装置10Cを用いて部品単位評価値を算出する方法について説明する。他の過程の説明については省略する。
【0071】
図10は、部品単位評価値の算出方法のフローチャートである。評価値算出部16は、節点情報記憶部22が記憶している各節点の変化値の絶対値に基づいて、部品mの変化率の部品単位評価値Emiを算出する。ステップS41において、部品mを設定する(例えば、初期値m=0)。ステップS42において、評価値算出部16は、節点情報記憶部22から、部品mに属する各評価点jの変化率の絶対値を読み出す。
【0072】
次に、ステップS43において、評価値算出部16は、部品mに属する各評価点jの変化率の絶対値のそれぞれの値に基づいて、部品mについての部品単位評価値Emiを算出する。具体的には、評価値算出部16は、基準点iについて算出した距離の変化率dFi,jの絶対値の、部品mの評価点jに関する平均値を部品単位評価値Emiとして算出する。部品単位評価値Emiは、下記の式(4)により算出される。ただし、jは、部品mに属するjであり、nは、部品mに属する評価点jの個数である。また、ステップ43において、評価値算出部16は、部品単位評価値Emiを評価点識別情報と関連付けて節点情報記憶部22に記憶する。
【0073】
【数4】
【0074】
特異な値となる節点が存在すると部品単位の評価値が影響しやすい。式(4)で示される平均値を部品単位評価値Emiとして用いることで、基準点iに対して寄与が大きい部品を特定しやすくすることができる。
【0075】
次に、処理はステップS44に進む。ステップS44では、評価値算出部16は、部品mに未処理のものがあるかどうか判定する。部品mに未処理のものがあれば(ステップS44にてYES)、ステップS41に戻り、未処理の部品mのうち1つを選択して処理を行う。部品mに未処理のものがなければ(ステップ44にてNO)、ステップS41からS44のループを終了する。
【0076】
このように、構造体設計支援装置10Cおよび構造体設計支援方法は、節点情報を用いて、第1状態と第2状態との間での、評価点j毎に、基準点iと評価点jとの距離の、第1状態と、第2状態との間での変化率の絶対値を算出し、算出された変化率の絶対値を評価点jを識別する評価点識別情報と関連付けて記憶する。また、構造体設計支援装置10Cおよび構造体設計支援方法は、部品mの部品単位評価値Emiを算出する。
【0077】
これにより、第1状態から第2状態に変わった時の基準点iの空間ひずみに対し、寄与(変化率の絶対値)が大きい評価点jを特定することができる。また、評価値算出部16が部品単位評価値Emiを算出することで、例えば剛性の向上に対して寄与の大きい部品を特定しやすくすることができる。
【0078】
以上説明した各ステップは、構造体設計支援装置10Cが自動的に行うように構成されていてもよい。
【0079】
図9における構造体設計支援装置10Cの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより構造体設計支援装置10Cを実現してもよい。
【0080】
(実施例1)
実施例1では、構造体の一例として車体について、構造体設計支援装置10により解析した例を示す。本実施例では、第1状態は、構造体モデルである車体Bに変形が生じていない状態である。第2状態は、車体ねじり変形の固有モードの変形が生じている状態である。
【0081】
図11は、構造体設計支援装置10による表示例を示す図である。図12は、図11の表示例を別の視点から見た図である。図11および図12の表示例は、第1状態が構造体モデルである車体に変形が生じていない状態であり、第2状態が車体ねじり変形の固有モードの変形が生じている状態であるときの車体に対する解析を構造体設計支援装置10が行い、表示したときの表示例である。図12の矢印の点が示すように、基準点に対して寄与が大きい評価点(大ひずみ評価点)は濃淡が濃く表示される。図12に示すように、構造体設計支援装置10を用いることで基準点と締結すべき領域を濃淡が濃い部位として容易に特定することができる。
【0082】
図13は、特許第6278122号公報に記載の方法、即ち節点同士で評価した結果を示す図である。図14は、図13の結果を別の視点で見た図である。図13および図14に示すように、空間歪の高い部位が分かるが、どの部位と締結すべきかが明確ではない。図13および図14の場合は、例えばブラケット、ルーフレールアウタなど、締結すべき部品をさらに検討しなければならない。
【0083】
(実施例2)
次に、大ひずみ評価点に対して、相対変位が規制された剛体化条件で解析した例を示す。本実施例では、基準点と、評価点と、を変位しない剛体梁で接続し、モーダル解析を行った。構造体モデルに対して、第1状態を構造体モデルである車体に変形が生じていない状態とし、第2状態が車体ねじり変形の固有モードの変形が生じている状態としたとして、構造体設計支援装置10Bが解析処理を行った。図15および図16は、剛体化条件を説明するための図である。図15は、基準点と、距離の変化率が大きい大ひずみ評価点と、を剛体梁で接続した構造体モデルの例(実施例2-1)である。図16は、基準点と、距離の変化率が小さい評価点とを剛体梁で接続した構造体モデル(比較例2-1)の例である。これらの剛体化条件で、構造体設計支援装置10Bを用い解析処理を行った結果を表1に示す。表1は、剛体梁を接続しない剛体化条件無の参考例、大ひずみ評価点と基準点とを剛体梁で接続した実施例2-1、変位が小さい評価点と基準点とを剛体梁で接続した比較例2-1の結果を示す。参考例のねじりモードの固有周波数f(Hz)が剛体化前剛体評価値となり、実施例2-1および比較例2-1のねじりモードの固有周波数f(Hz)が剛体化後剛体評価値となる。表1に示す通り、基準点との距離の変化率が大きい大ひずみ評価点と接続した実施例2-1のほうが、固有周波数を大きくなった。一方、比較例2-1は、参考例2-1からの固有周波数fの増分が小さかった。
【0084】
【表1】
【0085】
このように、構造体設計支援装置10による基準点iと評価点jとの距離の変化率の絶対値を用いることで、締結すべき部位を容易に特定することができる。さらに複数の部位が表示される場合、上記に記載の方法で、解析処理をすることで、拘束対象点を明確にすることができる。これによって、より剛性を効率良く向上させることができる。すなわち、構造体設計支援装置10は、特定の部位の剛性に対し影響の大きい部位を、より容易に検出することができる。
【0086】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の各態様は、各種構造体の設計段階において、構造体の評価、解析を行うための構造体設計支援装置、構造体設計支援方法、プログラムおよび記録媒体に広く適用できる。本発明の各態様により、特定の部位の剛性に対し影響の大きい部位を容易に特定することができる構造体設計支援装置、構造体設計支援方法、プログラムおよび記録媒体の実現が可能となる。
【符号の説明】
【0088】
10 構造体設計支援装置、11 節点情報取得部、12 変化率計算部、13 画像作成部、14 評価点群設定部、15 解析部、16 評価値算出部
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