(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071445
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】養子療法用の免疫細胞集団を単離、培養、および遺伝子操作するための方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20240517BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240517BHJP
C12N 1/02 20060101ALI20240517BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240517BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240517BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240517BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240517BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
C12N1/02
C12M1/00 A
C12M1/26
A61P35/00
A61P37/04
A61K35/17
C12N15/13
C12N15/31
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043330
(22)【出願日】2024-03-19
(62)【分割の表示】P 2021135398の分割
【原出願日】2015-04-23
(31)【優先権主張番号】61/983,415
(32)【優先日】2014-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516316897
【氏名又は名称】ジュノー セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ラムズボーグ クリス
(72)【発明者】
【氏名】ボニーハディ マーク エル.
(72)【発明者】
【氏名】チャン カルバン
(72)【発明者】
【氏名】ボーシェーヌ パスカル
(57)【要約】
【課題】遺伝子操作および細胞療法のための細胞および組成物を調製するための方法、細胞、および組成物の提供。例えば細胞および細胞集団の単離、加工、インキュベーション、および遺伝子操作のための、合理化された細胞調製方法が提供される。該方法によって産生された細胞および組成物、ならびにそれらの使用方法も提供される。
【解決手段】閉鎖されたシステムにおいて、CD4+細胞およびCD8+細胞が富化されかつ第1の選択集団の細胞および第2の選択集団の細胞を含む富化された組成物を産生する方法を提供する。該方法は、他の方法と比較して少ない段階および/もしくは資源ならびに/または低減された取り扱い手順を使用して、養子療法用の複数の異なる細胞集団を調製することが可能である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)閉鎖されたシステムにおいて第1の選択を行う段階であって、第1の選択が、初代ヒトT細胞を含有する試料から、(i)CD4+細胞および(ii)CD8+細胞の一方を富化することを含み、それによって、該富化が、第1の選択集団および選択されなかった集団を生成させる、段階;ならびに
(b)閉鎖されたシステムにおいて第2の選択を行う段階であって、第2の選択が、選択されなかった集団から、(i)CD4+細胞および(ii)CD8+細胞のもう一方を富化することを含み、それによって、該富化が、第2の選択集団を生成させる、段階
を含む、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞を富化するための方法であって、
CD4+細胞およびCD8+細胞が富化されかつ該第1の選択集団の細胞および該第2の選択集団の細胞を含む富化された組成物を産生する、方法。
【請求項2】
(c)第1の選択集団の細胞および第2の選択集団の細胞を組み合わせることによって、富化された組成物を産生する段階
をさらに含み、かつ/または
富化された組成物中のCD4+細胞およびCD8+細胞が、CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比で存在する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
組み合わせることが、閉鎖されたシステムにおいて行われる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
(a)閉鎖されたシステムにおいて第1の選択を行う段階であって、第1の選択が、初代ヒトT細胞を含有する試料から、(i)CD4+細胞および(ii)CD8+細胞の一方を富化することを含み、それによって富化が第1の選択集団および選択されなかった集団を生成させる、段階;ならびに
(b)閉鎖されたシステムにおいて第2の選択を行う段階であって、第2の選択が、選択されなかった集団から、(i)CD4+細胞および(ii)CD8+細胞のもう一方を富化することを含み、それによって富化が第2の選択集団を生成させる、段階;
(c)該第1の選択集団の細胞および該第2の選択集団の細胞を含む培養開始組成物を培養槽内で刺激条件下にてインキュベートすることによって、被刺激細胞を生成させる段階;ならびに
(d)遺伝子操作された抗原受容体を、(c)において生成した該被刺激細胞に導入する段階
を含む、遺伝子操作されたT細胞を産生するための方法であって、
それによって、遺伝子操作された抗原受容体を発現しているCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含むアウトプット組成物を生成させる、方法。
【請求項5】
段階(c)の前に、第1および第2の選択細胞集団の細胞を組み合わせて、培養開始組成物を産生する段階をさらに含み、かつ/または培養開始組成物中のCD4+細胞およびCD8+細胞が、CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比で存在する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
組み合わせることが、閉鎖されたシステムにおいて行われる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
段階の1つまたは複数が、自動化された様式で実施され、かつ/または閉鎖されたシステムが自動化されている、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、10:1もしくは約10:1から1:10もしくは約1:10の間、5:1もしくは約5:1から1:5もしくは約1:5の間、または2:1もしく約2:1から1:2もしくは約1:2の間である、請求項2~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、1:1または約1:1である、請求項2~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
試料が、ヒト対象から得られ、
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞の比と異なり、かつ/または
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞の比より、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、もしくは少なくとも50%大きいかまたはそれ未満である、
請求項2~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
第1および/または第2の選択において細胞を富化することが、細胞表面マーカーの発現に基づき正の選択または負の選択を行うことを含む、請求項1~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
第1および/または第2の選択において細胞を富化することが、非T細胞表面マーカーを発現している細胞を枯渇させることを含む負の選択を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
非T細胞マーカーが、CD14を含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
第1または第2の選択において細胞を富化することが、1種または複数種の細胞表面マーカーの発現に基づき複数の正または負の選択段階を行って、CD4+細胞またはCD8+細胞を富化することを含む、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
第1および/または第2の選択において細胞を富化することが、免疫親和性に基づく選択を含む、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
細胞表面マーカーと特異的に結合することが可能な抗体と細胞を接触させて、該抗体と結合している細胞を回収し、それによって正の選択を行うことによって、または該抗体と結合していない細胞を回収し、それによって負の選択を行うことによって、免疫親和性に基づく選択が行われ、該回収された細胞からCD4+細胞またはCD8+細胞が富化され、抗体が磁性粒子上に固定化されている、請求項15記載の方法。
【請求項17】
第1の選択および第2の選択が、操作可能に接続される別々の分離槽内で実施される、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
分離槽が、チュービングによって操作可能に接続されている、請求項17記載の方法。
【請求項19】
免疫親和性に基づく選択が、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスに固定化または結合された抗体と細胞を接触させることによって行われ、該抗体が、CD4+細胞またはCD8+細胞の正または負の選択を行うために細胞表面マーカーと特異的に結合することが可能である、請求項15~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
抗体が、マトリックス上に固定化された結合試薬と可逆的結合を形成することが可能な1種または複数種の結合パートナーをさらに含み、その際、該抗体が、接触の間に該マトリックスと可逆的に結合され、かつ
該マトリックス上の該抗体によって特異的に結合された細胞表面マーカーを発現している細胞が、結合試薬と結合パートナーとの間の可逆的結合の破壊によって該マトリックスから回収されることが可能である、
請求項19記載の方法。
【請求項21】
結合パートナーが、ビオチン、ビオチン類似体、および結合試薬と結合することが可能なペプチドより選択され、
該結合試薬が、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体または変異タンパク質、アビジン、およびアビジン類似体または変異タンパク質より選択される、
請求項17記載の方法。
【請求項22】
結合パートナーが、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含み、かつ/または
結合試薬が、SEQ ID NO:12、13、15、もしくは16に示されるアミノ酸配列を含むストレプトアビジン変異タンパク質である、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
第1の選択および/または第2の選択において試料中の細胞をアフィニティクロマトグラフィーマトリックスと接触させた後に、競合試薬を添加して、結合パートナーと結合試薬との間の結合を破壊することによって、該マトリックスから選択細胞を回収する段階
をさらに含む、請求項19~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
競合試薬が、ビオチンまたはビオチン類似体である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
第1および/または第2の選択における1種または複数種の抗体が、結合および細胞表面マーカーに関して3×10-5sec-1よりも大きいまたは約3×10-5sec-1よりも大きい解離速度定数(koff)を有する、請求項20~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
第1および/または第2の選択における1種または複数種の抗体が、細胞表面マーカーに関して解離定数(Kd)が約10-3~10-7の範囲または約10-7~約10-10の範囲の親和性を有する、請求項20~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
第1および/または第2の選択のクロマトグラフィーマトリックスが、カラムである分離槽内に充填されている、請求項20~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
アフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、少なくともまたは少なくとも約50×106細胞/mL、100×106細胞/mL、200×106細胞/mL、または400×106細胞/mLを吸着する、および/または選択することが可能である、請求項19~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
第1および第2の選択段階が、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスの使用を含み、第1および第2の選択段階において使用される該マトリックスが、培養開始比を達成するために十分な相対量である、請求項19~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
CD4+細胞を富化することが、CD4の表面発現に基づく正の選択を含む、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
CD8+細胞を富化することが、CD8の表面発現に基づく正の選択を含む、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
CD8+細胞を富化することを含む第1および第2の選択の一方が、
セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化すること、ならびに/または
CD28、CD62L、CCR7、CD127、およびCD27より選択されるマーカーを発現している細胞を富化すること
をさらに含む、請求項1~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
第1の選択が、CD8+細胞を富化することを含み、第2の選択が、CD4+細胞を富化することを含み、かつ
第1の選択が、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化すること、ならびに/またはCD28、CD62L、CCR7、CD127、およびCD27より選択されるマーカーを発現している細胞を富化することをさらに含む、
請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することおよび/またはマーカーを発現している細胞を富化することが、
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CD62Lを発現している細胞を選択すること、ならびに/または
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CD27を発現している細胞を選択すること、ならびに/または
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CCR7を発現している細胞を選択すること、ならびに/または
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CD28を発現している細胞を選択すること、ならびに/または
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CD127を発現している細胞を選択すること
を含む、請求項32または請求項33または請求項35記載の方法。
【請求項35】
第1の選択が、CD4+細胞を富化することを含み、第2の選択が、CD8+細胞を富化することを含み、かつ
第2の選択が、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することをさらに含む、
請求項1~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
(i)第1の選択が、CD4の表面発現に基づく正の選択によりCD4+細胞を富化することによって、CD4+初代ヒトT細胞が富化された第1の選択集団および選択されなかった試料を生成させることを含み;
(ii)第2の選択が、CD8+細胞を富化することを含み、かつ第2の選択試料からセントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することをさらに含み、ここで該セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することが、
ナイーブT細胞上に存在する表面マーカーを発現している細胞を枯渇させるための負の選択、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択、または
セントラルメモリーT細胞上に存在しかつナイーブT細胞上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択
を含み、それによって、TCM細胞が富化されたCD8+初代ヒトT細胞を生成させる、
請求項35記載の方法。
【請求項37】
ナイーブT細胞上に存在するマーカーが、CD45RAを含み、かつ
セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することが、CD45RAを発現している細胞を枯渇させるための負の選択、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択を含む、
請求項36記載の方法。
【請求項38】
セントラルメモリーT細胞上に存在しかつナイーブT細胞上に存在しない表面マーカーが、CD45ROを含み;
セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することが、CD45ROを発現している細胞についての正の選択、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択を含む、
請求項37記載の方法。
【請求項39】
セントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーが、CD62L、CCR7、CD27、CD127、およびCD44からなる群より選択される、請求項36~38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
セントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーが、CD62Lである、請求項39記載の方法。
【請求項41】
富化された組成物または培養開始組成物中のCD8+集団が、セントラルメモリーT(TCM)細胞を少なくとも50%含む、またはナイーブT(TN)細胞を20%未満含む、またはCD62L+細胞を少なくとも80%含む、請求項32~40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
初代ヒトT細胞を含有する試料の細胞を、CD4と特異的に結合する第1の免疫親和性試薬およびCD8と特異的に結合する第2の免疫親和性試薬と、インキュベーション組成物中で、免疫親和性試薬が試料中の細胞表面のCD4分子およびCD8分子とそれぞれ特異的に結合する条件で、接触させる段階、ならびに
該第1および/または該第2の免疫親和性試薬と結合している細胞を回収することによって、CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む、富化された組成物を生成させる段階
を含む、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を富化するための方法であって、
該第1および/または該第2の免疫親和性試薬が、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、該富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満および/またはインキュベーション組成物中のCD8+細胞の70%未満を含有することによって、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が富化された組成物を産生する、方法。
【請求項43】
(a)初代ヒトT細胞を含有する試料から初代ヒトT細胞を富化する段階であって、
試料の細胞を、CD4と特異的に結合する第1の免疫親和性試薬およびCD8と特異的に結合する第2の免疫親和性試薬と、インキュベーション組成物中で、該免疫親和性試薬が該試料中の細胞の表面のCD4分子およびCD8分子とそれぞれ特異的に結合する条件で、接触させることと、
該第1および/または該第2の免疫親和性試薬と結合している細胞を回収することによって、CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む、富化された組成物を生成させることと
を含み、該第1および/または該第2の免疫親和性試薬が、該インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、該富化された組成物が、該インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満および/または該インキュベーション組成物中のCD8+細胞の70%未満を含有する、段階;ならびに
(b)培養開始組成物中の該富化された組成物の細胞を培養槽内で刺激条件にてインキュベートすることによって、被刺激細胞を生成させる段階であって、該細胞が、培養開始比または実質的に培養開始比である、段階;ならびに
(c)遺伝子操作された抗原受容体を(b)の被刺激細胞に導入することによって、遺伝子操作された抗原受容体を発現しているCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含むアウトプット組成物を生成させる段階
を含む、遺伝子操作されたT細胞を産生するための方法。
【請求項44】
初代ヒトT細胞を富化することが、閉鎖されたシステムにおいて行われる、請求項42または請求項43記載の方法。
【請求項45】
第1および第2の免疫親和性試薬が、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満、およびインキュベーション組成物中の全CD8+細胞の70%未満を含む、請求項42~44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
第1の免疫親和性試薬が、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の60%未満、50%未満、40%未満、30%未満もしくは20%未満を含み、かつ/または
第2の免疫親和性試薬が、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD8+細胞の60%未満、50%未満、40%未満、30%未満もしくは20%未満を含む、
請求項42~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
試料が、CD3+ T細胞を少なくとも1×109個含む、請求項42~46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
インキュベーション組成物中の第1および第2の免疫親和性試薬の一方の濃度が、もう一方の濃度よりも大きく、その際、より大きい濃度が、それぞれCD4+細胞またはCD8+細胞の富化された組成物において、CD4+細胞またはCD8+細胞のもう一方の収率と比較して、より高い収率を生じ、それによって、富化された組成物における培養開始比が生成される、請求項42~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
第1および第2の免疫親和性試薬の一方の濃度が、第1および第2の免疫親和性試薬のもう一方の濃度と比較して、少なくとも1.2倍、1.4倍、1.6倍、1.8倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、または10倍大きく、かつ/または
富化された濃度におけるより高い収率が、1.2倍、1.4倍、1.6倍、1.8倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、または10倍大きい、
請求項48記載の方法。
【請求項50】
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、10:1もしくは約10:1から1:10もしくは約1:10の間、5:1もしくは約5:1から1:5もしくは約1:5の間、または2:1もしくは約2:1から1:2もしくは約1:2の間である、請求項42~49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、1:1または約1:1である、請求項42~50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞との比と異なり、かつ/または
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞との比よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、もしくは少なくとも50%大きいもしくは小さい、
請求項42~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
培養開始組成物中の細胞の95%超または98%超が、CD4+細胞およびCD8+細胞である、請求項42~52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
免疫親和性試薬のそれぞれが、抗体を含む、請求項42~53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
抗体が、球体の外表面に固定化されている、請求項54記載の方法。
【請求項56】
球体が、磁気ビーズである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
抗体が、球体に固定化された結合試薬と可逆的結合を形成することが可能な1種または複数種の結合パートナーを含み、その際、該抗体が、該球体に可逆的に固定化され、
前記方法が、試料中の細胞を第1および第2の免疫親和性試薬と接触させた後に、競合試薬を添加して、該結合パートナーと該結合試薬との間の結合を破壊することによって、該球体から選択細胞を回収する段階をさらに含む、
請求項55または請求項56記載の方法。
【請求項58】
結合パートナーが、ビオチン、ビオチン類似体、または結合試薬と結合することが可能なペプチドより選択され、
該結合試薬が、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体または変異タンパク質、アビジン、アビジン類似体または変異タンパク質より選択される、
請求項57記載の方法。
【請求項59】
結合パートナーが、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、かつ/または
結合試薬が、SEQ ID NO:12、13、15、もしくは16に示されるアミノ酸配列を含むストレプトアビジン変異タンパク質である、
請求項58記載の方法。
【請求項60】
結合試薬が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン変異タンパク質の1つまたは複数のモノマーを含むマルチマーであり、かつ
結合パートナーが、結合試薬の少なくとも1つのモノマーとそれぞれ可逆的に結合することが可能な少なくとも2つのモジュールの連続した配置を含むペプチドである、
請求項58または請求項59記載の方法。
【請求項61】
結合パートナーが、SEQ ID NO:7~10のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、請求項60記載の方法。
【請求項62】
競合試薬が、ビオチンまたはビオチン類似体である、請求項57~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
第1および/または第2の選択における1種または複数種の抗体が、抗体と細胞表面マーカーとの間の結合に関して3×10-5sec-1よりも大きい、または約3×10-5sec-1よりも大きい解離速度定数(koff)を有する、請求項42~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
第1および/または第2の選択における1種または複数種の抗体が、約10-3~10-7の範囲内の解離定数(Kd)または約10-7~約10-10の範囲内の解離定数を有する親和性を有する、請求項42~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項65】
1つまたは複数の段階が、自動化された様式で実施され、かつ/または閉鎖されたシステムが、自動化されている、請求項42~63のいずれか一項記載の方法。
【請求項66】
第1の選択および/または第2の選択を行う前に、試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の比を決定する段階、ならびに
CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む組成物を産生するように、該試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の該比に基づき、第1および/または第2の選択を調整する段階
を含む、
請求項2、3および5~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
第1および/または第2の選択が、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスを含む免疫親和性に基づく選択を含み、
該第1および/または該第2の選択を調整する段階が、該第1および/または該第2の選択において培養開始比を達成するために十分な量の該アフィニティクロマトグラフィーマトリックスを選ぶことを含む、
請求項66記載の方法。
【請求項68】
試料の細胞を、第1および第2の免疫親和性試薬と接触させる前に、試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の比を決定する段階;ならびに
CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む富化された組成物を産生するように、該試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の比に基づき、該第1および/または該第2の免疫親和性試薬の濃度を選ぶ段階
を含む、請求項42~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
2:1または約2:1から1:5または約1:5の間であるCD4+細胞とCD8+細胞の比を含むアウトプット組成物を生じる、請求項1~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
アウトプット組成物中のCD4+細胞とCD8+細胞の比が、1:1または約1:1である、請求項69記載の方法。
【請求項71】
試料が、対象から得られる、請求項1~70のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
対象が、遺伝子操作されたT細胞または養子細胞療法用の細胞を投与される対象である、請求項71記載の方法。
【請求項73】
対象が、遺伝子操作されたT細胞または養子療法用の細胞を投与される対象以外の対象である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
試料が、血液または血液由来試料である、請求項1~73のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
試料が、白血球試料である、請求項1~74のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
試料が、アフェレーシス、末梢血単核細胞(PBMC)、または白血球アフェレーシス試料である、請求項1~75のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
組成物を培養槽内で刺激条件にてインキュベートすることが、遺伝子操作された抗原受容体を導入する前、間、および/または後に行われる、請求項4~41または43~76のいずれか一項記載の方法。
【請求項78】
組成物を培養槽内で刺激条件にてインキュベートすることが、遺伝子操作された抗原受容体を導入する前、間、および後に行われる、請求項4~41または43~76のいずれか一項記載の方法。
【請求項79】
刺激条件が、組成物のT細胞が増殖する条件を含む、請求項4~41または43~78のいずれか一項記載の方法。
【請求項80】
刺激条件が、TCR複合体の1種または複数種の成分の1種または複数種の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能な薬剤を含む、請求項4~41または43~79のいずれか一項記載の方法。
【請求項81】
TCR複合体の1種または複数種の成分が、CD3ゼータ鎖を含む、請求項80記載の方法。
【請求項82】
刺激条件が、抗CD3抗体、および抗CD28抗体、抗4-1BB抗体、および/またはサイトカインの存在を含む、請求項4~41または43~81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
抗CD3抗体および/または抗CD28抗体が、固体支持体の表面に存在する、請求項82記載の方法。
【請求項84】
サイトカインが、IL-2、IL-15、IL-7、および/またはIL-21を含む、請求項83記載の方法。
【請求項85】
遺伝子操作された抗原受容体が、T細胞受容体(TCR)または機能的非TCR抗原受容体を含む、請求項4~41または43~84のいずれか一項記載の方法。
【請求項86】
受容体が、処置されるべき疾患または状態の細胞によって発現される抗原と特異的に結合する、請求項85記載の方法。
【請求項87】
抗原受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項85または86のいずれか一項記載の方法。
【請求項88】
CARが、細胞外抗原認識ドメイン、およびITAM含有配列を含む細胞内シグナル伝達ドメイン、およびT細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、請求項87記載の方法。
【請求項89】
(a)請求項1~88のいずれか一項記載のCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含むアウトプット組成物を産生する段階;ならびに
(b)対象にアウトプット組成物の細胞を投与する段階
を含む、処置方法。
【請求項90】
細胞が単離される試料が、細胞が投与される対象に由来する、請求項89記載の方法。
【請求項91】
請求項1~88のいずれか一項記載の方法によって産生される細胞の組成物。
【請求項92】
薬学的に許容される担体を含む、請求項91記載の組成物。
【請求項93】
請求項91または92記載の細胞の組成物を対象に投与する段階を含む、処置方法。
【請求項94】
遺伝子操作された抗原受容体が、疾患または状態に関連する抗原と特異的に結合する、請求項93記載の方法。
【請求項95】
疾患または状態が、がんである、請求項94記載の処置方法。
【請求項96】
対象における疾患または状態を処置することに使用するための、請求項91または請求項92記載の組成物。
【請求項97】
対象における疾患または障害を処置するための医薬の製造のための、請求項91または請求項92記載の組成物の使用。
【請求項98】
遺伝子操作された抗原受容体が、疾患または状態に関連する抗原と特異的に結合する、請求項96記載の組成物または請求項97記載の使用。
【請求項99】
疾患または状態が、がんである、請求項96~98のいずれか一項記載の組成物または使用。
【請求項100】
a)表面上に固定化された第1の結合剤を含む第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであって、結合剤が、第1の細胞型上に存在する第1の細胞表面マーカーと特異的に結合し、第1のアフィニティマトリックスが、第2の細胞表面マーカーと特異的に結合する第2の結合剤を含まず、ここで、
該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第1の操作可能な接続を介して細胞試料を含む貯蔵リザーバに操作可能に接続され、第1の操作可能な接続により、貯蔵リザーバから該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスへ細胞を通過させることが可能となる、
該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第2の操作可能な接続を介してアウトプット槽に操作可能に接続される、
第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス;
b)表面上に固定化された第2の結合剤を含む第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであって、第2の結合剤が、第2の細胞型上に存在する第2の細胞表面マーカーと特異的に結合し、ここで、
該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第3の操作可能な接続を介して第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスに操作可能に接続され、第3の操作可能な接続により、該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過しかつ該第1の結合剤と結合しなかった細胞を、該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスへ通過させることが可能となる、
該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第4の操作可能な接続を介してアウトプット槽に操作可能に接続され、第4の操作可能な接続により、該第1および/または該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスと結合しかつそこから溶出した細胞を通過させることが可能となり、
該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第5の操作可能な接続を介して廃棄物槽に操作可能に連結され、第5の操作可能な接続により、該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過しかつ該第1の結合剤と結合せずおよび該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過しかつ該第2の結合剤と結合しなかった細胞を通過させることが可能となる、
第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス;
c)アウトプット槽;ならびに
d)廃棄物槽
を含む、ターゲット細胞の精製のための閉鎖された装置システムであって、
閉鎖されたシステム内で、
(i)該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスと結合し、そこから回収された細胞、および
(ii)該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過し、それと結合せず、該第2のクロマトグラフィーマトリックスと結合し、そこから回収された細胞
の、該アウトプット槽内における単一組成物での収集を可能にするように構成された、
閉鎖された装置システム。
【請求項101】
操作可能な接続の1つまたは複数が、貯蔵リザーバ、第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス、第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス、および/または培養槽を接続しているチュービングを含む、請求項100記載の閉鎖された装置。
【請求項102】
チュービングが、ストップコック、バルブまたはクランプに接続される、請求項101記載の閉鎖された装置。
【請求項103】
(a)第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、CD4+アフィニティクロマトグラフィーマトリックスまたはCD8+アフィニティクロマトグラフィーマトリックスの一方であり、
(b)第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、CD4+アフィニティクロマトグラフィーマトリックスまたはCD8+アフィニティクロマトグラフィーマトリックスのもう一方である、
請求項100~102のいずれか一項記載の閉鎖された装置システム。
【請求項104】
d)表面上に固定化された第3の結合剤を含む第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであって、結合剤が、第3の細胞表面マーカーと特異的に結合し、第3の結合剤が、第3の細胞表面マーカーを発現している細胞と結合することが可能であり、ここで、
第3の操作可能な接続が、第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを第1のマトリックスとさらに操作可能に接続し、
該第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第6の操作可能な接続を介してアウトプット容器に操作可能に連結されており、そのため該第6の操作可能な接続により、第1のマトリックスと結合しかつそこから回収されおよび第3のマトリックスと結合しかつそこから回収された細胞を、該アウトプット容器へ通過させることが可能となり、
第5の操作可能な接続が、該第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを廃棄物容器とさらに操作可能に接続しており、そのため該第5の操作可能な接続により、第3のカラムを通過しかつそれと結合しなかった細胞を、該廃棄物容器に送ることが可能となる、
第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス
をさらに含む、請求項100~103のいずれか一項記載の閉鎖された装置システム。
【請求項105】
d)表面上に固定化された第3の結合剤を含む第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであって、結合剤が、第3の細胞表面マーカーと特異的に結合し、該第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、該第3の細胞表面マーカーを発現している細胞と結合することが可能であり、ここで、
第2の操作可能な接続が、該第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを第1のマトリックスおよびアウトプット容器とさらに操作可能に接続しており、そのため該第2の操作可能な接続により、該第1のマトリックスと結合しかつそこから回収されおよび該第3のマトリックスと結合しかつそこから回収された細胞を、該アウトプット容器に送ることが可能となる、
第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス
をさらに含む、請求項100~103のいずれか一項記載の閉鎖された装置システム。
【請求項106】
第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、CD8と特異的に結合する結合剤を含み、
第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、CD4と特異的に結合する結合剤を含み、
第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現したマーカーと特異的に結合する結合剤を含む、
請求項104または105記載の閉鎖された装置システム。
【請求項107】
第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスの結合剤が、CD62L、CD45RA、CD45RO、CCR7、CD27、CD127、およびCD44より選択される細胞表面マーカーと選択的に結合する、請求項106記載の閉鎖された装置システム。
【請求項108】
アフィニティクロマトグラフィーマトリックスのうち1つまたは複数または全てが、1種または複数種の競合試薬を含む溶出緩衝液リザーバとさらに操作可能に接続されている、請求項100~107のいずれか一項記載の閉鎖された装置システム。
【請求項109】
競合試薬が、ビオチン、ビオチン類似体、およびクロマトグラフィーマトリックスと結合することが可能なペプチドからなる群の1つまたは複数である、請求項100~107のいずれか一項記載の閉鎖された装置システム。
【請求項110】
第3、第4、または第6の操作可能な接続のうち1つまたは複数または全てが、競合剤除去チャンバーをさらに含む、請求項100~107のいずれか一項記載の閉鎖された装置システム。
【請求項111】
競合剤除去チャンバーが、結合試薬をさらに含む、請求項110記載の閉鎖された装置システム。
【請求項112】
結合試薬が、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体または変異タンパク質、アビジン、およびアビジン類似体または変異タンパク質からなる群のうち1つまたは複数を含む、請求項111記載の閉鎖された装置システム。
【請求項113】
結合剤のうち1種または複数種または全てが、抗体である、請求項100~112のいずれか一項記載の閉鎖された装置システム。
【請求項114】
抗体が、Fabである、請求項113記載の閉鎖された装置システム。
【請求項115】
結合剤のうち1種または複数種または全てが、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスと可逆的に結合している、請求項100~113のいずれか一項記載の閉鎖された装置システム。
【請求項116】
抗体が、Fabである、請求項17~41または54~88のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年4月23日に提出された米国仮特許出願第61/983,415号の優先権を主張し、同出願の内容が、その全体で参照により組み入れられる。
【0002】
配列リストの参照による組み入れ
本出願は、電子形式の配列リストを添えて出願される。配列リストは、2015年4月22日に作成された、名称735042000240seqlist.txtでサイズ13キロバイトのファイルとして提供される。電子形式の配列リスト内の情報は、その全体で参照により組み入れられる。
【0003】
分野
本開示は、一部の局面では、細胞を調製するための方法、細胞、および組成物、ならびに遺伝子操作および細胞療法のための組成物に関する。一部の態様では、例えば細胞および細胞集団の単離、加工、インキュベーション、および遺伝子操作のための合理化された細胞調製方法が提供される。該方法によって産生される細胞および組成物、ならびにそれらの使用方法も提供される。細胞は、T細胞のような免疫細胞を含むことができ、概して、複数の単離されたT細胞集団またはT細胞サブタイプを含む。一部の局面では、該方法は、他の方法と比較して少ない段階および/もしくは資源ならびに/または削減された取り扱いを使用して、養子療法用の複数の異なる細胞集団を調製ことが可能である。
【背景技術】
【0004】
背景
様々な方法が、治療用途の細胞を調製するために利用可能である。例えば、T細胞および他の免疫細胞を含めた細胞を単離、加工、および操作するために、複数の方法が利用可能である。そのような細胞を単離するため、ならびに高親和性T細胞受容体(TCR)およびキメラ抗原受容体(CAR)のような遺伝子操作された抗原受容体を発現させるために、複数の方法が利用可能である。そのような細胞を対象に養子移入するために、複数の方法が利用可能である。細胞療法用途の細胞の調製(例えば単離、加工、培養、および操作)のための改良法が必要である。特に、改良された効率、安全性、可変性、および資源の保全を有する細胞、例えば複数の単離された細胞型またはサブタイプの調製および操作のための方法が必要である。そのような必要性に対処する方法、細胞、組成物、キット、およびシステムが提供される。
【発明の概要】
【0005】
概要
細胞および細胞集団の調製および操作のための方法、ならびに該方法によって産生される細胞および組成物が提供される。一部の態様では、細胞は、養子免疫治療方法に関連するような、免疫療法のために使用することができる。一部の局面では、提供された方法は、単一試料、例えば単一のアフェレーシス試料、白血球アフェレーシス試料または末梢血単核細胞(PBMC)を含有する試料のような、同じ出発試料からのCD4+細胞およびCD8+細胞またはそれらの亜集団の単離、選択、または富化を含む。一部の態様では、該方法は、単一の工程の流れの中でのCD4+細胞集団およびCD8+集団のような少なくとも2つの細胞集団の選択または富化を含み、その工程の流れでは、工程におけるCD4+またはCD8+の一方の第1の選択または富化から陰性画分の試料が廃棄されず、その後、CD4+細胞またはCD8+細胞のもう一方について第2の選択が行われる。一部の態様では、第1および第2の選択は、同時にまたは順次に起こることができる。
【0006】
一部の局面では、CD4+細胞およびCD8+細胞のような両方の細胞集団の選択、富化および/または単離は、例えば同じ槽内でもしくは同じ装置を使用して同時に、または第1および第2の選択を行うのに使用される槽、例えばカラム、チャンバーが操作可能に接続されているシステムもしくは装置の一環として順次に、行われる。一部の態様では、同時および/または順次の富化または選択は、第1および/または第2の選択または富化の一環として調製される陽性画分または陰性画分をいずれも取り扱うことなく、単一の工程の流れとして生じ得る。一部の局面では、異なる集団の単離、培養、および/または操作は、同じ出発組成物または材料から、例えば同じ試料から実施される。
【0007】
一部の態様では、該方法は、初代ヒトT細胞を含有する試料からCD4+細胞またはCD8+細胞の一方を富化することによって第1の選択を行って、第1の選択集団および選択されなかった集団を生成させる段階、ならびに選択されなかった集団からCD4+細胞またはCD8+細胞のもう一方を富化することによって第2の選択を行う段階を含み、その際、該方法は、CD4+細胞が富化された細胞およびCD8+が富化された細胞を含有する細胞組成物を産生する。
【0008】
一部の態様では、第2の選択は、第1の選択によって生成された選択されなかった集団から、もう一方のT細胞サブタイプを富化することによって実施される。したがって、一部の態様では、提供された方法は、第1の選択からの陰性画分が廃棄されるのではなく、むしろ別の細胞型を富化するためのさらなる選択のための基礎原料として使用される点で、他の選択方法と異なる。概して、第1の選択で富化されたT細胞サブセットが、CD4+サブセットである場合(すなわち第1の選択が、CD4+細胞を富化する場合)、当然、第1の選択は、第2の選択で富化されるべきもう一方のサブタイプの細胞を富化しないように設計されることになる。例えば、一部の態様では、第1の選択は、CD4+細胞を富化し、CD8+細胞を富化せず、第2の選択は、第1の選択から回収された陰性画分からCD8+細胞を富化する。同様に、概して、第1の選択で富化されたT細胞サブセットがCD8+サブセットである場合(すなわち第1の選択が、CD8+細胞を富化する場合)、当然、第1の選択が、第2の選択で富化されるべきもう一方のサブタイプの細胞を富化しないように設計されることになる。例えば、一部の態様では、第1の選択は、CD8+細胞を富化し、CD4+細胞を富化せず、第2の選択は、第1の選択から回収された陰性画分からCD4+細胞を富化する。
【0009】
一部の態様では、該方法は、任意の以前の選択段階からの選択集団および/または選択されなかった集団から細胞を富化し得る、第3、第4などのさらなる選択をさらに伴う。例えば、一部の態様では、所与の段階(例えば、第2の選択段階からの選択集団または選択されなかった集団のいずれかからの細胞が、さらに富化される。例えば、一部の態様では、選択されたCD8+細胞から、休止細胞またはセントラルメモリー細胞のようなCD8+細胞サブタイプが、さらに富化される。
【0010】
一部の態様では、
(a)培養開始組成物を提供する段階であって、該組成物が、閉鎖されたシステムにおいて第1の選択を行うことによって産生され(第1の選択は、初代ヒトT細胞を含有する試料からCD4+細胞およびCD8+細胞の一方を富化することによって、第1の選択集団および選択されなかった集団を生成させることを含む)、かつ、閉鎖されたシステムにおいて第2の選択を行うことによって産生される(第2の選択は、選択されなかった集団からCD4+細胞およびCD8+細胞のもう一方を富化することによって、第2の選択集団を生成させることを含む)、段階;
(b)第1の選択集団の細胞および第2の選択集団の細胞を含む培養開始組成物を培養槽内で刺激条件にてインキュベートすることによって、被刺激細胞を生成させる、段階;ならびに
(d)遺伝子操作された抗原受容体を、(b)において生成した被刺激細胞に導入する段階
を含む、遺伝子操作されたT細胞を産生するための方法が提供され、その際、それによって該方法は、遺伝子操作された抗原受容体を発現しているCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含むアウトプット組成物を生成させる。
【0011】
一部の態様では、CD4+細胞集団およびCD8+細胞集団のような第1および第2の細胞集団の同時の富化または選択を含む方法も提供される。一部の態様では、該方法は、初代ヒトT細胞を含有する試料の細胞を、インキュベーション組成物中で、CD4と特異的に結合する第1の免疫親和性試薬およびCD8と特異的に結合する第2の免疫親和性試薬と、免疫親和性試薬が試料中の細胞表面のCD4分子およびCD8分子とそれぞれ特異的に結合する条件で接触させる段階、ならびに第1および/または第2の免疫親和性試薬と結合している細胞を回収することによって、CD4+細胞およびCD8+細胞を含む、富化された組成物を生成させる段階を含む。一部の態様では、該方法は、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度である、第1および/または第2の免疫親和性試薬の濃度を含むことにより、富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、もしくはそれ未満、またはインキュベーション組成物中のCD8+細胞の70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、もしくはそれ未満を含有するように行われる。
【0012】
一部の態様では、CD4+ T細胞およびCD9+ T細胞の富化された組成物を提供する段階であって、初代ヒトT細胞を含有する試料の細胞を、インキュベーション組成物中で、CD4と特異的に結合する第1の免疫親和性試薬およびCD8と特異的に結合する第2の免疫親和性試薬と、免疫親和性試薬が試料中の細胞表面のCD4分子およびCD8分子とそれぞれ特異的に結合する条件で、接触させることによって、富化された組成物が産生される段階;ならびに第1および/または第2の免疫親和性試薬と結合している細胞を回収することによって、CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む富化された組成物を生成させる段階を含む、CD4+およびCD8+ T細胞を富化するための方法が提供され、その際、第1および/または第2の免疫親和性試薬は、最適以下の収率濃度でインキュベーション組成物中に存在し、その際、富化された組成物は、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満および/またはインキュベーション組成物中のCD8+の70%未満を含有することによって、CD4+およびCD8+ T細胞が富化された組成物を産生する。
【0013】
そのように提供された任意の態様の一部の態様では、該方法は、例えばナイーブT細胞、休止T細胞、またはセントラルメモリーT細胞上に発現したCD4、CD8、または他の細胞表面マーカーのような細胞表面マーカーと特異的に結合する抗体と、細胞を接触させることのような、免疫親和性に基づく選択により行われる。一部の態様では、固体支持体は、球体、例えばマイクロビーズまたはナノビーズのようなビーズである。一部の態様では、ビーズは、磁気ビーズであり得る。一部の態様では、固体支持体は、カラムクロマトグラフィーを行うためのカラムまたは他の槽であり得る。
【0014】
一部の態様では、抗体は、固体表面に固定化された結合試薬と可逆的結合を形成することが可能な1種または複数種の結合パートナー、例えば、球体またはクロマトグラフィーマトリックスを含み、その際、抗体は、固体表面に可逆的に固定化される。一部の態様では、固体表面上の抗体により結合される細胞表面マーカーを発現している細胞は、結合試薬と結合パートナーとの間の可逆的結合の破壊によってマトリックスから回収されることが可能である。一部の態様では、結合試薬は、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン類似体もしくは変異体、例えばSEQ ID NO:11~16のいずれかに示されるストレプトアビジン、類似体もしくは変異体、またはSEQ ID NO:11~16のいずれかに示される配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の配列同一性を示し、ビオチンもしくはペプチドのような結合パートナーとの結合性を保持するアミノ酸配列である。一部の態様では、結合パートナーは、ビオチン、ビオチン類似体または結合試薬と結合することが可能なペプチドである。一部の態様では、結合パートナーは、結合試薬と結合することが可能なペプチド、例えばストレプトアビジン結合性ペプチド、例えばSEQ ID NO:1~10のいずれかに示される配列を含むペプチドである、またはそれを含有する。一部の態様では、該方法は、第1および/または第2の選択の一環として、その上に固定化された抗体を含む固体支持体に試料中の細胞を接触させた後に、競合試薬を添加して、結合パートナーと結合試薬との間の結合を破壊することによって、固体表面から選択細胞を回収する段階を含む。一部の態様では、競合試薬は、ビオチンまたはビオチン類似体である。
【0015】
一部の態様では、該方法は、培養開始比で存在する、CD8+細胞に対して選択もしくは富化されたCD4+細胞、またはその亜集団を含有する、選択または富化された組成物を生成させる。一部の態様では、CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比は、10:1もしくは約10:1から1:10もしくは約1:10の間、5:1もしくは約5:1から1:5もしくは約1:5の間、または2:1もしくは約2:1から1:2もしくは約1:2の間、例えば1:1または約1:1である。抗体コーティングビーズ(例えば磁気ビーズ)または1種もしくは複数種のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスのような、十分な量または十分な相対量の免疫親和性に基づく試薬を選んで、または選択して、CD4、CD8またはその亜集団が富化または選択された細胞を含有する、培養開始組成物のような生成した組成物中に、培養開始比を達成または産生することは、熟練の技術者の水準の範囲内である。そのような方法の例は、下のサブセクションに記載される。
【0016】
一部の態様では、細胞は、リンパ球、例えばT細胞(例えばCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞ならびに単離されたその亜集団)、ならびにNK細胞のような免疫系細胞を含む。一部の態様では、細胞は、複数の細胞集団または細胞型との組み合わせで存在し、それらは、一部の局面では、組成部中に特定の比または数の細胞または細胞型で含まれる。例えば、該方法に関連する使用のための細胞型および集団の培養開始比ならびに所望のアウトプット比および用量のような適切な比および数を選択または決定することによって、該方法を最適化するための方法も、提供される。
【0017】
該方法における使用のための、および該方法によって産生される、細胞、細胞集団、およびその組成物も、提供される。該方法を実施するためのシステム、デバイス、装置、試薬、化合物、およびキットも提供される。該方法によって産生される細胞および組成物のための治療法および使用、例えば養子細胞療法のための方法も、提供される。
【0018】
一部の態様では、養子細胞療法用の細胞を産生するための方法、遺伝子操作用の細胞を産生するための方法、および遺伝子操作された細胞を産生するための方法が提供される。一部の局面では、細胞は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞ならびに/またはそれらのサブタイプのようなT細胞である。一部の局面では、細胞療法は、T細胞療法である。
【0019】
一部の態様では、該方法は、(a)試料から細胞集団を単離する段階、および(b)単離された集団の細胞を収容する培養槽内で培養開始組成物をインキュベートする段階によって実施される。一部の局面では、該方法は、例えば、(c)培養槽内の細胞に遺伝子操作された抗原受容体を導入することよって、インキュベートされた細胞または培養槽内の細胞を遺伝子操作する段階をさらに含む。
【0020】
一部の態様では、該方法は、(a)複数の細胞集団を特定の培養開始比または特定の細胞数で収容する培養槽内で培養開始組成物をインキュベートする段階;および(b)例えば、培養槽内の細胞に遺伝子操作された抗原受容体を導入することなどによって細胞を遺伝子操作する段階によって、実施される。
【0021】
一部の態様では、遺伝子操作された抗原受容体は、培養槽内の異なる細胞型または亜集団のような、培養槽内の細胞内に、例えば培養槽内のCD4+細胞およびCD8+細胞に導入される。
【0022】
一部の局面では、該方法は、遺伝子操作もしくは養子細胞療法のための、または遺伝子操作された抗原受容体を発現している細胞を含む、アウトプット組成物を産生する。
【0023】
一部の態様では、単離は、試料からCD4+初代ヒトT細胞集団および/またはCD8+初代ヒトT細胞集団を単離することを含む、またはそれによって実施される。一部の局面では、それは、CD4+細胞の亜集団を枯渇させるもしくは富化する段階、および/またはCD8+細胞の亜集団を枯渇させるもしくは富化する段階を含む。したがって、一部の局面では、培養開始組成物は、単離されたCD4+初代ヒトT細胞およびCD8+初代ヒトT細胞を含む。
【0024】
一部の局面では、富化するまたは枯渇させる段階は、細胞上の表面マーカーを認識する抗体または他の結合分子と結合させることのような、免疫親和性に基づく選択によって実施される。一部の局面では、抗体または他の分子は、磁気応答粒子または磁性粒子、例えばビーズにカップリングされる。一部の局面では、選択は、正および/または負の選択段階を含む。
【0025】
一部の態様では、CD8+初代ヒトT細胞集団の単離は、CD8+細胞の亜集団を枯渇させるまたは富化することを含む。一部の態様では、CD4+初代ヒトT細胞集団の単離は、CD4+細胞の亜集団を枯渇させるまたは富化することを含む。一部の局面では、T細胞集団の単離は、TCM細胞を富化することを含む。一部の局面では、CD8+初代ヒトT細胞集団および/またはCD4+初代ヒトT細胞集団の単離は、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することを含む。一部の局面では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化は、CD45RAのような、ナイーブT細胞上に存在する表面マーカーを発現している細胞の負の選択、もしくはCD45ROのような、セントラルメモリーT細胞上に存在し、ナイーブT細胞上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択;ならびに/またはCD62L、CCR7、CD27、CD127、および/もしくはCD44のような、セントラルメモリーT(TCM)細胞に存在し、別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択を含む。
【0026】
一部の態様では、単離は、(i)CD4の表面発現に基づき試料を正の選択に供して、単離されたCD4+集団である陽性画分および第1の陰性画分を生じること;ならびに(ii)非T細胞マーカーおよびナイーブT細胞上に存在する表面マーカーの表面発現に基づき、第1の陰性画分を負の選択に供することによって、第2の陰性画分を生成させる段階;ならびに(iii)セントラルメモリーT(TCM)細胞の表面に存在し、別のメモリーT細胞亜集団の表面に存在しないマーカーの表面発現に基づき、第2の陰性画分を正の選択に供することを含む。
【0027】
一部の局面では、ナイーブT細胞上に存在するマーカーは、CD45RAを含む。一部の局面では、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在し、別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーは、CD62L、CCR7、CD27、CD127、および/またはCD44を含む。
【0028】
一部の局面では、単離または選択は、同じ分離槽内で実施される。一部の局面では、単離は、(i)試料を第1の選択に供することによって、CD4+初代ヒトT細胞集団およびCD8+初代ヒトT細胞集団の一方と選択されなかった試料とを生成させること;ならびに(ii)選択されなかった試料を第2の選択に供することによって、CD4+初代ヒトT細胞集団およびCD8+初代ヒトT細胞集団のもう一方を生成させることを含む。一部の局面では、CD4+初代ヒトT細胞集団は、第1の選択で生成され、CD8+初代ヒトT細胞集団は、第2の選択で生成される。一部の局面では、第1および/または第2の選択は、複数の正の選択段階または負の選択段階を含む。
【0029】
一部の局面では、初代ヒトT細胞集団、初代ヒトCD4+ T細胞集団、または初代ヒトCD8+ T細胞集団のような1つまたは複数の集団の単離は、CD62L、CCR7、CD44、またはCD27の表面発現に基づく正の選択を含む。一部の局面では、初代ヒトT細胞集団、初代ヒトCD4+ T細胞集団、または初代ヒトCD8+ T細胞集団のような1つまたは複数の集団の単離は、CD45RAの表面発現に基づく負の選択またはCD45ROの表面発現に基づく正の選択を含む。
【0030】
一部の態様では、複数の細胞集団、例えばCD4+集団およびCD8+集団の単離のような様々な単離は、同じ分離槽内で実施される。一部の局面では、分離槽は、チューブ、チュービングセット、チャンバー、ユニット、ウェル、培養槽、バッグ、および/またはカラムである、またはそれらを含む。一部の局面では、分離槽は、分離の間に細胞を封じ込めた環境または無菌環境内に維持する。
【0031】
一部の態様では、インキュベートする段階は、刺激条件下で実施される。一部の局面では、培養開始組成物は、CD4+初代ヒトT細胞集団およびCD8+初代ヒトT細胞集団を培養開始比で含む。一部の局面では、培養開始比は、インキュベーション後に、または操作、凍結保存後のような幾分遅い時間に、またはベッドサイドでの解凍のような投与直前の時間に、CD4+細胞とCD8+細胞との所望のアウトプット比(または所望の総数のT細胞もしくは亜集団数)を得るように設計される。
【0032】
一部の態様では、所望のアウトプット比は、5:1もしくは約5:1から1:5もしくは約1:5の間(もしくは約1:5よりも大きく、約5:1未満)、例えば1:3もしくは約1:3から3:1もしくは約3:1の間(もしくは約1:3よりも大きく、約3:1未満)、例えば、2:1もしくは約2:1から1:5もしくは約1:5の間(もしくは約1:5よりも大きく、約2:1未満)である、または2:1もしくは約2:1から1:5もしくは約1:5の範囲である。一部の局面では、所望のアウトプット比は、3:1、2.9:1、2.8:1、2.7:1、2.6:1、2.5:1、2.4:1、2.3:1、2.2:1、2.1:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9: 1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5、またはおよそそれらの比である。
【0033】
一部の局面では、該方法は、アウトプット組成物においてCD4+細胞とCD8+細胞との比のような、2つの異なる細胞型または集団の比を招き、その比は、5:1もしくは約5:1から1:5もしくは約1:5の間(もしくは約1:5よりも大きく、約5:1未満)、例えば1:3もしくは約1:3から3:1もしくは約3:1の間(もしくは約1:3よりも大きく、約3:1未満)、例えば2:1もしくは約2:1から1:5もしくは約1:5の間(もしくは約1:5よりも大きく、約2:1未満)であるか、またはその比は、3:1、2.9:1、2.8:1、2.7:1、2.6:1、2.5:1、2.4:1、2.3:1、2.2:1、2.1:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9: 1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5であるか、またはおよそそれらの比である。
【0034】
一部の局面では、所望のアウトプット比は、1:1または約1:1である。
【0035】
一部の局面では、該方法は、アウトプット組成物において所望のアウトプット比もしくは細胞数を生じ、そのような所望のアウトプット比もしくは数の特定の許容差内もしくは誤差範囲内であるアウトプット組成物における比もしくは数を生じ、かつ/または少なくとももしくは約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、もしくは95%を超える時間のような、該方法が行われる時間の特定パーセンテージでそのような比もしくは数を生じる。
【0036】
一部の局面では、許容差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内である。一部の局面では、アウトプット比は、所望の比の20%以内であり、および/または該方法が行われる時間の少なくとも80%でその比の中に収まる。
【0037】
一部の態様では、許容差および/または所望のアウトプット比もしくは数は、1つまたは複数の対象に複数の試験比または数で異なる細胞型を投与すること、例えばCD4+細胞およびCD8+細胞を投与すること、ならびに1つまたは複数のパラメーターを評価することによって決定される、または決定されている。一部の局面では、所望のアウトプット比もしくは数または許容差の決定は、対象への投与後に1つまたは複数の結果を評価することを含む。一部の局面では、結果は、疾患症状の寛解ならびに安全性および/または低毒性もしくは無毒性を示す結果の中より選択される結果を含む。
【0038】
一部の態様では、培養開始比は、CD4+初代ヒトT細胞集団および/またはCD8+初代ヒトT細胞集団のような、単離された様々な細胞型の増殖速度または生存能に基づき選択される。一部の態様では、培養開始比は、試料が由来する対象のような、試料の起源に基づき選択される。例えば、一部の局面では、試料は、対象に由来し、培養開始比は、対象を冒す疾患もしくは状態、および/または養子細胞療法を用いた投与のための同時処置のような、対象が受けている、受けた、もしくは受けるであろう処置に基づき選択される。一部の局面では、培養開始比は、単離または培養されている1種または複数種の細胞または細胞のサブタイプの表現型、例えばCD4+細胞集団および/またはCD8+細胞集団の表現型、例えば細胞表面マーカーの発現またはサイトカインもしくはケモカインのような1種もしくは複数種の因子の合成もしくは分泌に基づき選択される。
【0039】
一部の態様では、該方法は、インキュベーション段階の前に培養開始比を選択する段階を含む。一部の局面では、選択は、CD4+初代ヒトT細胞および/または単離されたCD8+初代ヒトT細胞のような、1種または複数種の単離された細胞集団またはインキュベートされている細胞集団の増殖速度または生存能を測定することによって実施される。一部の局面では、選択は、単離されたCD4+初代ヒトT細胞および/または単離されたCD8+初代ヒトT細胞の表現型を評価することによって実施される。一部の局面では、表現型は、表面マーカーの発現およびサイトカインまたは他の因子の分泌より選択される。一部の局面では、培養開始比が、試料が由来する対象を冒している疾患または状態に基づき選択される場合のように、選択する段階は、試料の起源を評価することによって実施される。
【0040】
一部の態様では、該方法は、インキュベーションの開始に続く時点で培養槽内に存在する、CD4+細胞とCD8+細胞との中間の比のような、細胞の中間の比または数を決定する段階をさらに含む。一部の局面では、該方法は、中間の比に基づいて、1つもしくは複数のパラメーターを調整する段階、および/またはインキュベーションを実施するための時間を増加もしくは減少させる段階、および/または操作する段階をさらに含む。一局面では、調整する段階は、培養槽内のCD4+細胞またはCD8+細胞を増加または富化することのような、培養槽内の1つもしくは複数の細胞集団の数を増加もしくは減少させるまたはそれを富化すること、温度を調整すること、培養槽に刺激薬を添加すること、培養槽内の1種または複数種の刺激薬の濃度を調整すること、ならびに/あるいは培養槽に細胞の亜集団を添加および/または培養槽から除去することを含む。一部の局面では、決定する段階および/または調整する段階は、無菌環境または封じ込めた環境内でインキュベートされている組成物を維持しながら実施される。一部の局面では、決定および/または調整する段階は、中で段階が行われるデバイスに装着されたコンピュータによって制御される様式のような、自動化された様式で実施される。
【0041】
一部の局面では、単離する、インキュベートする、および/または操作する段階は、無菌環境もしくは封じ込めた環境で、および/または段階が行われるデバイスに装着されたコンピュータによって制御される様式のような、自動化された様式で実施される。
【0042】
一部の局面では、培養開始組成物中のCD8+集団は、少なくとも50%のセントラルメモリーT(TCM)細胞を含む、または20%未満のナイーブT(TN)細胞を含む。
【0043】
一部の態様では、試料は、対象から得られる。一部の局面では、対象は、遺伝子操作された細胞、例えばT細胞、もしくは養子細胞療法用の細胞が投与される対象、またはそのような投与を必要とする対象である。他の局面では、対象は、遺伝子操作された細胞、例えばT細胞、もしくは養子療法用の細胞が投与される対象以外の対象、またはそのような治療を必要としない対象である。白血球試料、アフェレーシス試料、白血球アフェレーシス試料、末梢血単核細胞(PBMC)試料、および全血のような血液および血液由来試料が試料に含まれる。
【0044】
一部の局面では、インキュベーションまたは操作のための刺激条件は、培養開始組成物のT細胞が増殖または増大する条件が含まれる。例えば、一部の局面では、CD3ゼータ鎖のようなTCR複合体の1種もしくは複数種の成分の1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能な、またはそのような複合体もしくは成分を経由する活性化シグナル伝達を活性化することが可能な、薬剤の存在下で、インキュベーションは実施される。一部の局面では、インキュベーションは、抗CD3抗体、および抗CD28抗体、抗4-1BB抗体、例えば、ビーズのような固体支持体とカップリングした抗体もしくは固体支持体の表面に存在する抗体のような、ならびに/またはIL-2、IL-15、IL-7、および/もしくはIL-21のようなサイトカインの存在下で実施される。
【0045】
一部の態様では、遺伝子操作された抗原受容体は、高親和性TCRのようなT細胞受容体(TCR)、またはキメラ抗原受容体(CAR)のような機能的非TCR抗原受容体である、またはそれを含む。一部の局面では、受容体は、処置されるべき疾患または状態の細胞によって発現される抗原と特異的に結合する。一部の局面では、CARは、細胞外抗原認識ドメインを含む。一部の局面では、それは、ITAM含有配列およびT細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。
【0046】
遺伝子操作された細胞および養子細胞療法用の細胞を含む、任意の方法または態様によって産生される、薬学的組成物を含む細胞および組成物も提供される。対象にそのような細胞および組成物を投与するための方法ならびにそのような方法における細胞および組成物の使用も、提供される。例えば、細胞産生方法に従って細胞を産生すること、およびアウトプット組成物の細胞またはそれに由来する組成物を対象に投与することによって実施される処置方法が、提供される。提供される細胞または組成物を対象に投与する段階を含む処置方法が、提供される。一部の局面では、細胞が単離される試料は、細胞が投与される対象に由来する。一部の局面では、試料は、異なる対象に由来する。したがって、該方法は、自己方法および同種方法を含む。一部の態様では、該方法は、対象における疾患または状態の1つまたは複数の症状を寛解させる、治療する、または予防する。一部の局面では、疾患または状態は、がんまたは随伴症状である。一部の態様では、がんには、白血病、リンパ腫、例えば、慢性リンパ性白血病(CLL)、ALL、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、難治性濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、低悪性度B細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、結腸がん、肺がん、肝臓がん、乳房がん、前立腺がん、卵巣がん、皮膚(黒色腫を含む)がん、骨のがん、および脳がん、卵巣がん、上皮がん、腎細胞がん、膵臓腺がん、ホジキンリンパ腫、子宮頸がん、結腸直腸がん、神経膠芽腫、神経芽腫、ユーイング肉腫、髄芽腫、骨肉腫、滑膜肉腫、ならびに/または中皮腫が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1A】提供された方法の態様における使用のための閉鎖されたシステムの一態様の略図を提供する。示された例示的なシステムは、細胞試料5、洗浄緩衝液リザーバ6、溶出緩衝液リザーバ7、第1のFabリザーバ18、第2のFabリザーバ19、およびポンプ8を含み、これらは一連のチュービングおよびバルブ13を経由して第1のマトリックス3を収容している第1のクロマトグラフィーカラム1に接続されており、第1のクロマトグラフィーカラムは、一連のチュービングラインを介して、第2のマトリックス4を収容している第2のクロマトグラフィーカラム2に操作可能に連結されている。第2のクロマトグラフィーカラム2は、除去チャンバー9に操作可能に連結されている。除去チャンバー9は、一連のチュービングラインを介して細胞および流体を廃棄物容器10または培養槽12に方向付けるバルブ13に操作可能に連結されている。システムは、エンクロージャ14中に封入されている。
【
図1B】提供された方法の態様における使用のための閉鎖されたシステムの一態様の略図を提供する。示された例示的なシステムは、細胞試料5、洗浄緩衝液リザーバ6、溶出緩衝液リザーバ7、第1のFabリザーバ18、第2のFabリザーバ19、第3のFabリザーバ20、およびポンプ8を含み、これらは、一連のチュービングを経由して、第1のマトリックス3を収容している第1のクロマトグラフィーカラム1に接続されている。一連のチュービングに操作可能に連結されるバルブ13は、一連のチュービングを経由して流体を方向付ける。第1のクロマトグラフィーカラム1に操作可能に連結されるバルブ13は、第2のマトリックス4を収容している第2のクロマトグラフィーカラム2に細胞および流体を方向付け、第2のクロマトグラフィーカラム2は、除去チャンバー9に操作可能に連結されている。第1のクロマトグラフィーカラム1に操作可能に連結されるバルブ13は、第3のマトリックス16を収容している第3のクロマトグラフィーカラム15に操作可能に連結される除去チャンバー9にも細胞および流体を方向付ける。第3のクロマトグラフィーカラム15は、除去チャンバー9に操作可能に連結されている。除去チャンバー9は、一連のチュービングラインおよびバルブ13を介して第1の廃棄物容器10または培養槽12に操作可能に連結されている。システムは、エンクロージャ14中に封入されている。
【発明を実施するための形態】
【0048】
詳細な説明
特に定義しない限り、本明細書において使用される全ての専門用語、記号ならびに他の技術的および科学的な用語または術語は、特許請求の主題が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有することが意図される。場合によっては、一般に理解される意味を有する用語が、明確さおよび/または素早い参照のために本明細書において定義されるが、本明細書におけるそのような定義の包含は、必ずしも当技術分野において一般的に理解されるものとの実質的な差を表すものと解釈されるべきではない。
【0049】
本出願において参照される特許文書、科学文献およびデータベースを含めた全ての刊行物は、各個別の刊行物が個別に参照により組み入れられた場合と同程度に、全ての目的のためにそれらの全体で参照により組み入れられる。本明細書において示される定義が、参照により本明細書に組み入れられる特許、出願、公開された出願および他の刊行物に示される定義と正反対またはその他の点で矛盾するならば、参照により本明細書に組み入れられる定義よりも、本明細書において示される定義が優先される。
【0050】
本明細書において使用されるセクションの見出しは、単に構成のためであり、説明される主題を限定するものと見なされるべきではない。
【0051】
I. 養子療法用の細胞を単離、培養、および操作するための方法およびシステム
遺伝子操作および養子細胞療法のような治療法における使用のための細胞、例えばT細胞を調製する方法が、提供される。具体的には、一部の態様では、該方法は、複数の異なる細胞集団または細胞型、例えば単離されたCD4+およびCD8+ T細胞集団および亜集団を含む組成物を使用するまたは生成させる。一部の態様では、該方法は、1つまたは複数の細胞集団、概して複数の細胞集団を単離するための段階を含む。細胞は、概して、対象に由来する試料から単離される。
【0052】
一部の局面では、該方法は、複数の異なる細胞集団、例えばCD4+細胞またはCD8+細胞が、試料、例えば初代ヒトT細胞を含有する試料から選択、富化、および/または単離される、同時もしくは順次の選択または富化を用いることによって行われる。一部の態様では、そのような方法は、細胞の第1の集団、例えばCD4+細胞またはCD8+細胞、および細胞の第2の集団、例えばCD4+細胞またはCD8+細胞のもう一方が、選択、富化、および/または単離される、単一の加工流れを使用して行われ、その際、第1の集団からいかなる細胞も廃棄されず、その後、細胞の第2の集団の選択が行われる。一部の局面では、第1および第2の選択は、同時または順次に行うことができる。一部の態様では、選択方法は、第1の選択を行って、試料、例えば初代ヒトT細胞を含有する試料から細胞の第1の集団、例えばCD4+およびCD8+細胞の一方を富化すること、ならびに第1の選択からの選択されなかった細胞を、試料からのCD4+細胞またはCD8+細胞のもう一方のような、第2の選択のための細胞の供給源として使用することによって、単一の工程の流れとして行われる。
【0053】
一部の態様では、第1または第2の選択細胞のさらなる1つまたは複数の選択を行うことができる。一部の態様では、さらなる選択は、セントラルメモリーT(TCM)細胞上のマーカーを発現しているCD4+細胞もしくはCD8+細胞の亜集団を富化し、かつ/またはCD62L、CD45RA、CD45RO、CCR7、CD27、CD127、もしくはCD44を発現している細胞の亜集団を富化する。
【0054】
一部の態様では、選択方法は、閉鎖されたシステムまたは装置中で行われる。一部の態様では、閉鎖されたシステムまたは装置内で、同じ組成物中に、富化または選択されたCD4+集団およびCD8+集団の両方のような富化または選択された細胞集団を含有する、培養開始組成物のような組成物が生成する。
【0055】
例えば、一部の局面では、1つまたは複数の段階は、同じ組成物中に組み合わされた複数の細胞集団、あるいは同じ槽内、例えば、同じ閉鎖されたシステムもしくは装置中、または同じカラム、例えば磁気分離カラム、チューブ、チュービングセット、培養もしくは栽培チャンバー、培養槽、加工ユニット、細胞分離槽、遠心分離チャンバーのような、同じ槽、ユニット、もしくはチャンバー中に存在する複数の細胞集団を用いて、あるいは同じ分離マトリックス、媒体、および/または試薬、例えば同じ磁性もしくは磁気応答マトリックス、粒子、もしくはビーズ、同じ固体支持体、例えば親和性標識固体支持体、および/または同じ抗体および/または他の結合パートナー、例えば蛍光標識抗体および結合パートナーを複数の細胞集団のために使用して、実施される。一部の態様では、カラムのような1つまたは複数の槽、ユニットまたはチャンバーは、同じ閉鎖されたシステムまたは装置において操作可能に接続されることにより、単離、選択および/または富化する方法は、第1の選択からの選択されなかった細胞集団を第2の選択のための細胞の供給源として使用することができる単一の工程の流れの中で起こる。
【0056】
一部の態様では、細胞の1つまたは複数の特異的集団または亜集団、例えば養子療法用に培養または操作されるべきCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の単離または富化は、1つまたは複数の利点を提供する。例えば、単離されたCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の集団および亜集団のような、複数の異なる細胞集団または細胞型が富化された細胞を操作することは、有効性を改善する、または望まれない作用を軽減もしくは回避することができる。一部の局面では、単離または富化は、対象に最終的に投与される細胞が、インビボで、または対象に投与されたときに、持続、増大、活性化になる、および/または生着する能力を増加させる。一部の局面では、それは、1つまたは複数のエフェクター機能または活性化表現型を改善する、または増加させる。例えば、一部の局面では、CD8+ T細胞集団のようなT細胞集団のセントラルメモリー(TCM)細胞を富化することは、そのような利点を提供することができる。一部の局面では、1つまたは複数のそのような利点は、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞の単離された集団または亜集団、例えばTCMを富化されたCD8+集団およびCD4+集団のような、2つ以上の単離された集団またはサブタイプを組み合わせることによって提供される。例えば、そのような利点は、一部の局面では、CD8+集団単独と比較してCD4+集団およびCD8+集団を投与することによって成し遂げることができる。
【0057】
該方法は、一部の態様では、選択または富化されたCD4+細胞およびCD8+細胞の集団のような、複数の単離または選択された細胞集団を含有する、生成した組成物の加工を含む。一態様では、生成した組成物の加工は、細胞を刺激条件下でインキュベートして、例えば一部の局面では、操作もしくは形質導入のため、または細胞増大のために細胞を活性化させることを含む。該方法は、一部の態様では、単離され、培養開始組成物のようなインキュベートされた組成物中に存在する細胞のような、CD4+細胞およびCD8+細胞のような複数の細胞型を操作するための段階を含む。一部の局面では、操作することは、TCR、例えば高親和性TCR、またはキメラ抗原受容体(CAR)のような機能的非TCR抗原受容体のような遺伝子操作された抗原受容体を細胞に導入するために実施される。一部の局面では、該方法は、例えば37℃±2℃もしくは約37℃±2℃でのさらなるインキュベーションのようなさらなる加工、および/または細胞およびそれを含有する組成物の製剤化を含む。一部の態様では、加工は、遺伝子操作されたCD4+細胞およびCD8+細胞のような遺伝子操作された細胞を含有する、結果として生じたアウトプット組成物を産生する。一部の態様では、結果として生じた、加工されたアウトプット組成物は、該方法によって調製された細胞および組成物を、例えば養子細胞療法に関連して患者に投与するための方法に使用することができる。
【0058】
特定の態様では、単離または分離は、該方法の単離、細胞調製、分離、加工、インキュベーション、培養、および/または製剤化段階の1つまたは複数を実施するシステム、デバイス、または装置を使用して実施される。一部の局面では、システムは、これらの段階のそれぞれを閉鎖環境または無菌環境中で実施して、例えば誤差、ユーザの取り扱い、および/または汚染を最小限にするために使用される。一例では、システムは、国際特許出願公開番号WO2009/072003またはUS20110003380A1に記載のシステムである。一部の態様では、システムは、
図1Aまたは
図1Bに示されるような閉鎖された装置またはシステムである。一部の態様では、システムまたは装置は、自動化されており、かつ/または該方法に従って細胞を富化する選択段階を、自動化された様式で実施する。
【0059】
一部の態様では、システムまたは装置は、選択段階または富化段階のような単離を実施する。一部の態様では、閉鎖されたシステムまたは装置のようなさらなるシステムまたは装置は、該方法の細胞調製、加工、インキュベーション、培養および/または製剤化段階のような、1つまたは複数のその他の段階を実施するために使用することができる。一部の態様では、システムまたは装置は、統合型もしくは自己充足型システムで、および/または自動化もしくはプログラム可能な様式で、単離、加工、操作、および製剤化段階の1つまたは複数、例えば全てを実施する。一部の局面では、システムまたは装置は、システムまたは装置と通信しているコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含み、それは、ユーザに加工、単離、操作、および製剤化段階の様々な局面をプログラム、制御、結果の評価、および/または調整を可能にする。
【0060】
一部の態様では、培養開始組成物のような富化された組成物は、提供された方法によってCD4+およびCD8+のような異なる細胞集団を含有するように生成されることから、生成された組成物は、同じ条件下で一緒および同時に、かつ一部の局面では閉鎖されたシステム中で、加工することができる。したがって、一部の局面では、該方法は、単一の工程の流れの中で、CD4+細胞およびCD8+細胞のような細胞の異なる集団を含有する、選択、富化、または単離された細胞の集団を産生および加工するための工程を提供する。一部の局面では、これは、典型的には、各異なる細胞集団について少なくとも2つの工程の流れのような別々の工程の流れを含む、養子細胞療法用の操作のために細胞を加工する先行技術の方法を含めた、先行技術の方法と異なる。例えば、既存の方法の一部の局面では、CD4+ T細胞が、別々に単離、富化、および/または選択され、遺伝子操作のために刺激条件下で加工され、CD8+ T細胞が、別々に単離、富化、および/または選択され、遺伝子操作のために刺激条件下で加工され、別々の加工および操作されたCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が再び組み合わせられ、その後、対象に投与される。
【0061】
一部の態様では、該方法は、他の調製、単離、インキュベーション、および操作方法と比較して、コスト、時間、および/または資源節約のような1つまたは複数の利点を提供する。そのような利点は、所望の比で、またはその近くで存在する複数の細胞集団を、他の方法と比較して増大した効率、ならびに/または減少した複雑さ、時間、コスト、および/もしくは資源の使用で、単離、加工、例えばインキュベート、および/または操作できることを含むことができる。
【0062】
一部の態様では、そのような利点は、1つまたは複数の方法段階を合理化することによって達成される。例えば、一部の局面では、異なる集団の単離、培養、および/または操作は、同じ装置もしくは設備を使用して、かつ/または同時に実施される。一部の局面では、異なる集団の単離、培養、および/または操作は、同じ出発組成物に基づいて実施される。一部の局面では、該方法のそのような特徴は、細胞集団が別々の槽内で、別々の設備を使用して、別々の時間に、かつ/または異なる出発組成物で開始して、別々に単離、インキュベート、および/または操作される方法と比較して、時間、方法段階、コスト、複雑さの量、および/または資源の数を減少させる。
【0063】
一部の局面では、細胞を単離、インキュベート、および操作する方法は、CD4+細胞およびCD8+細胞のような異なる細胞集団または細胞型が、所望の比で、または所望の比のある程度の許容誤差内で、存在するアウトプット組成物を生じる。そのような比は、治療上の使用に最適と見なされる比、例えば、養子細胞療法に関連して患者への投与に適切または最適と見なされるアウトプット比を含む。例えば養子細胞療法に関連して、該方法によって調製された細胞および組成物を患者に投与するための方法も提供される。
【0064】
一部の態様では、単離または選択の方法は、CD4+細胞とCD8+細胞またはその亜集団との選択ばれた培養開始比で細胞の選択を達成するために行われる。一部の局面では、そのような比は、培養、インキュベーション、および/または操作段階の後のような、該方法または1つもしくは複数の段階の完了時に、アウトプット組成物における所望の比のような最適な比を達成するための最適な出発点と見なされる比を含む。一部の態様では、アウトプット組成物において所望の比を達成するために、細胞をCD4+細胞とCD8+細胞との比のような培養開始比で提供することは、異なる試薬を用いて刺激または活性化したときに起こる可能性があるCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の増大における差を説明する。
【0065】
一部の態様では、該方法は、所望のアウトプット比の特定のパーセンテージまたはそれ以内で、操作された細胞または操作用の細胞を生成する、または少なくとも特定のパーセンテージの時間で生成する。所望のアウトプット比は、典型的には、養子移入を介した患者への投与に最適と見なされている比である。一部の態様では、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞のような細胞の集団またはサブタイプは、所望の用量のT細胞のような、所望の用量の全細胞の許容差でまたはそれ以内で投与される。一部の局面では、所望の用量は、所望の細胞数、または細胞が投与される対象の体重1単位あたりの所望の細胞数、例えば個/kgである。一部の局面では、所望の用量は、最小細胞数または体重1単位あたりの最小細胞数以上である。一部の局面では、所望の用量で投与される全細胞の中に、個別の集団またはサブタイプが、所望のアウトプット比(例えばCD4+とCD8+との比)またはその近くで、例えばそのような比の特定の許容差または許容誤差内で存在する。
【0066】
一部の態様では、細胞は、所望の用量のCD4+細胞および/または所望の用量のCD8+細胞のような、所望の用量の1つまたは複数の個別の細胞集団またはサブタイプの許容差でまたはそれ以内で投与される。一部の局面では、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の細胞の所望の数、または細胞が投与される対象の体重1単位あたりのそのような細胞の所望の数、例えば個/kgである。一部の局面では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの最小細胞数、または体重1単位あたりの集団もしくはサブタイプの最小細胞数以上である。
【0067】
したがって、一部の態様では、投与量は、全細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、かつ/または個別のサブタイプもしくは亜集団の1つもしくは複数、例えばそれぞれの所望の固定用量に基づく。したがって、一部の態様では、投与量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量およびCD4+とCD8+細胞との所望の比に基づき、かつ/またはCD4+細胞および/もしくはCD8+細胞の所望の固定用量もしくは最小用量に基づく。
【0068】
一部の態様では、そのような最適なアウトプット比および/もしくは所望の用量、ならびに/または所望のアウトプット比もしくは所望の用量からの許容される分散水準、例えば許容差を決定するための方法が提供される。一部の態様では、所望のアウトプット比もしくは用量を達成するために(またはそのような比を、特定のパーセンテージの時間、もしくは特定の許容差内で達成するために)、細胞集団が、養子移入のための所望のアウトプット比を達成するように設計された比(例えば培養開始比)で組み合わせられる、またはインキュベートされる。
【0069】
そうするために所望のアウトプット比または用量を、特定の許容差および/または特定のパーセンテージの時間内に達成するように設計された培養開始比を決定するための方法も提供される。様々な方法段階の経過にわたる、例えばインキュベーションの間の1つまたは複数の期間のような、細胞集団の暫定の比または数を評価するための方法も提供される。そのような評価に基づき、培養条件のような様々な条件を調整するための方法も提供される。一部の局面では、調整は、特定のアウトプット比または用量が、達成される、または許容差内で達成されることを確認するために実施される。
【0070】
特定の態様では、養子細胞療法における使用のための遺伝子操作された抗原受容体の導入のための、CD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞集団(例えばセントラルメモリーT細胞のようなT細胞のサブタイプが富化されたCD8+集団)を所望のアウトプット比でまたはその近くで、ならびに/またはT細胞および/もしくはCD4+ T細胞とCD8+ T細胞とを所望の用量(例えば、数もしくは体重1単位あたりの数)でまたはその近くで有する組成物を調製するための合理化された方法が提供され、その際、細胞集団は、組み合わされて単離、インキュベート、および/または操作され、該方法は、集団が別々に単離、インキュベート、および/または操作される方法と比較して、増加した効率ならびに/または減少した複雑さ、時間、コスト、および/もしくは資源の使用に関連する。
【0071】
該方法によって調製される、薬学的組成物および製剤を含めた細胞および組成物、ならびに該方法を実施するためのキット、システム、およびデバイスも提供される。該方法によって調製された細胞および組成物の使用のための、養子細胞療法用の方法のような治療法、および対象への投与のための薬学的組成物を含む方法も、提供される。
【0072】
A. 単離、単離された細胞、および他の加工段階
試料から複数の細胞および細胞集団を単離するための方法、ならびにそのような方法によって産生される、富化された細胞のような単離された細胞も、提供された態様に含まれる。単離は、大きさ、密度、特定の試薬に対する感受性もしくは耐性、および/または抗体もしくは他の結合パートナーに対する親和性、例えば免疫親和性の1つまたは複数の性質に基づく分離を含む、1つまたは複数の様々な細胞調製および分離段階を含むことができる。一部の局面では、単離は、同じ装置または設備を使用して、単一の工程の流れの中で順次および/または同時に実施される。一部の局面では、異なる集団の単離、培養、および/または操作は、同じ試料からのような、同じ出発組成物または材料から実施される。
【0073】
一部の局面では、複数の細胞集団は、同じ閉鎖されたシステムもしくは装置の中で、および/または同じ槽もしくは槽のセット、例えば同じ(もしくは同じセットの)ユニット、チャンバー、カラム、例えば磁気分離カラム、チューブ、チュービングセット、培養もしくは栽培チャンバー、培養槽、加工ユニット、細胞分離槽、遠心チャンバーの中で単離される。例えば、場合によっては、複数の細胞集団の単離は、例えば1つの槽、例えばチュービングセットから別の槽に細胞集団、組成物、または懸濁物を移動させる必要なしに、単一のカラムもしくはカラムのセット、および/または同じチューブ、もしくはチュービングセットのような、単一のまたは同じ単離または分離槽または槽のセットを用いるシステムまたは装置で実施される。
【0074】
一部の局面では、そのような方法は、単一の工程の流れによって、例えば閉鎖されたシステムにおいて、初代ヒトT細胞を含有する試料のような試料からCD4+細胞またはCD8+細胞のような複数の異なる細胞集団が選択、富化、および/または単離される同時または順次の選択を用いることによって達成される。一態様では、細胞を含有する試料は、CD4+集団およびCD8+集団の両方の同時富化による選択に供される。一部の局面では、同じ槽または槽のセット、例えばチュービングセット中で分離または単離を実施することは、順次の正の選択および負の選択段階、前の段階からの陰性画分および/または陽性画分をさらなる選択に供するその後の段階を実施することによって達成され、その際、全工程は、同じチューブまたはチュービングセットの中で実施される。一態様では、選択されるべき細胞を含有する試料は、順次選択に供され、順次選択では、第1の選択が、CD4+集団またはCD8+集団の一方を富化するために行われ、第1の選択からの選択されなかった細胞は、CD4+集団またはCD8+集団のもう一方を富化するために第2の選択用の細胞の供給源として使用される。一部の態様では、さらなる1つまたは複数の選択は、CD4+集団またはCD8+集団の一方または両方の亜集団、例えばセントラルメモリーT(TCM)細胞を富化するために行うことができる。
【0075】
特定の一局面では、第1の選択段階は、CD4結合分子、例えば抗体(またはそのような分子を認識する第2の試薬)で標識したビーズを使用して実施され、第1の選択段階からの陽性画分および陰性画分が保持され、例えば続いてCD8結合分子で標識したビーズを使用することによって陰性画分のさらなる陽性選択または陰性選択を行って、CD8+細胞が富化され、任意で、CD8+画分からセントラルメモリーCD8+ T細胞および/またはマーカーCD62L、CD45RA、CD45RO、CCR7、CD27、CD127、もしくはCD44の1種もしくは複数種を発現している細胞のような細胞の亜集団が選択される。一部の態様では、選択の順序を逆転することができる。一部の態様では、CD4選択が、常に最初に行われ、第2の選択において、陰性画分(CD4-)から、例えばCD45RA+およびCD14の1つもしくは複数の負の選択、ならびに/またはCD62L、CCR7、および/もしくはセントラルメモリー細胞に発現される他のマーカーの1つもしくは複数の正の選択によって、CD8+画分が富化される。
【0076】
一部の態様では、複数の細胞集団、例えばCD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞集団が単離されて、例えば複数の細胞集団を含有する培養開始組成物が産生される。培養開始組成物は、典型的には、1つまたは複数のインキュベーション、培養、栽培、および/または操作段階の後に、CD4+とCD8+との特定の比のような2種以上の細胞型の特定の所望のアウトプット比をもたらすように設計された培養開始比で細胞を含有する。一部の態様における所望のアウトプット比は、例えば養子細胞療法において、患者への細胞の投与に最適であるように設計された比である。
【0077】
一部の局面では、単一のカラムもしくはカラムセット、および/または同じチューブもしくはチュービングセットのような単一のまたは同じ単離もしくは分離槽または槽のセットの中で複数の集団を単離すること、あるいは同じ磁気マトリックス、親和性標識固体支持体、もしくは抗体または他の結合パートナーのような同じ分離マトリックスもしくは媒体または試薬を使用することは、単離を合理化する特徴を含み、例えば、コスト、時間、複雑さ、試料の取り扱いの必要性、資源、試薬、または設備の使用の減少をもたらす。一部の局面では、そのような特徴は、それらが、方法に関連するコスト、効率、時間、および/もしくは複雑さを最小限にし、かつ/または感染、汚染、および/もしくは温度変化によって起こる害のような細胞産物への潜在的な害を回避する点で有利である。
【0078】
一部の態様では、本明細書における方法における使用のために得られた、単離された細胞集団は、無菌である。細胞分離産物の微生物汚染は、場合によっては、感染と闘うことができない免疫無防備状態のレシピエント患者のようなレシピエント対象の感染につながる可能性がある。一部の態様では、細胞、細胞集団、および組成物は、GMP(優良医薬品製造基準)の条件下で産生される。一部の態様では、GMP条件は、ストリンジェントなバッチ検査を含む。特定の態様では、組織適合試験は、例えば、ヒト白血球型抗原(HLA)のミスマッチを回避し、移植片対宿主病のような問題を防止するために、移植の前に行われる。一部の態様では、提供された方法は、個別のユーザによる取り扱いを減らし、様々な段階を自動化する。そのことは、一部の局面では、単離された細胞集団および組成物の一貫性を増加させ、誤差を減らすことによって、治療および安全性の一貫性を促進することができる。
【0079】
1. 細胞および細胞集団
一部の態様では、該方法は、初代ヒト細胞試料のような細胞試料の選択、単離および/または富化を行う段階を含む。単離された細胞集団は、典型的には、複数の細胞集団、通常、造血細胞、白血球細胞(白血球)、末梢血単核細胞(PBMC)のような血液もしくは血液由来細胞、ならびに/または免疫系の細胞、例えば、骨髄系もしくはリンパ系細胞、例えばリンパ球、典型的にはT細胞および/もしくはNK細胞のような自然もしくは適応免疫の細胞の集団を含む。一部の態様では、試料は、アフェレーシス試料は白血球アフェレーシス試料である。一部の態様では、選択、単離および/または富化は、試料からの細胞の正の選択または負の選択を含むことができる。
【0080】
一部の態様では、試料は、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のような初代ヒトT細胞を含有する試料である。特定の態様では、試料は、CD4+細胞の集団およびCD8+ T細胞の集団のような複数のT細胞集団が単離される試料である。したがって、一部の態様では、単離は、CD4を発現している細胞もしくはCD8を発現している細胞についての正の選択および/または骨髄性細胞マーカーもしくはB細胞マーカーのような非T細胞マーカーを発現している細胞についての負の選択、例えば、CD14、CD19、CD56、CD20、CD11b、および/もしくはCD16を発現している細胞についての負の選択を含む。
【0081】
一部の態様では、試料は、T細胞全体またはCD4+集団のようなT細胞集団およびNK細胞集団を含む複数の集団を含有する試料である。富化、単離および/または選択できるT細胞集団の中に、未分画T細胞、未分画CD4+細胞、未分画CD8+細胞の集団、ならびに特定のサブタイプの細胞または特定の表面マーカー発現プロファイルに基づく細胞の富化または枯渇によって生成したT細胞の亜集団を含む、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞の亜集団が含まれる。
【0082】
例えば、富化、単離および/または選択できるT細胞(例えばCD4+ T細胞またはCD8+ T細胞)のサブタイプの中に、機能、活性化状態、成熟度、分化能、増大、再循環、局在性、および/もしくは持続能、抗原特異性、抗原受容体の種類、特定の器官もしくは区画の存在、マーカーもしくはサイトカインの分泌プロファイル、ならびに/または分化度によって定義されるサブタイプが含まれる。
【0083】
富化、単離および/または選択できるT細胞および/またはCD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞のサブタイプならびに亜集団の中に、ナイーブT(TN)細胞、エフェクターT細胞(TEFF)、幹細胞メモリーT(TSCM)細胞、セントラルメモリーT(TCM)細胞、エフェクターメモリーT(TEM)細胞、または最終分化したエフェクターメモリーT細胞のようなメモリーT細胞およびそのサブタイプ、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、未熟T細胞、成熟T細胞、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、粘膜関連インバリアントT(MAIT)細胞、自然および適応制御性T(Treg)細胞、TH1細胞、TH2細胞、TH3細胞、TH17細胞、TH9細胞、TH22細胞、濾胞性ヘルパーT細胞、アルファ/ベータT細胞、およびデルタ/ガンマT細胞のようなヘルパーT細胞が含まれる。
【0084】
一部の態様では、提供された方法によって試料から富化、単離および/または選択された1つまたは複数のT細胞集団は、表面マーカーのような1種もしくは複数種の特定のマーカーが陽性(マーカー+)もしくはそれを高レベル発現する(マーカーハイ)、または1種もしくは複数種のマーカーが陰性(マーカー-)もしくはそれを相対的に低レベル発現する(マーカーロー)細胞である。場合によっては、そのようなマーカーは、特定集団のT細胞(例えば、非メモリー細胞)上に不在である、または相対的に低レベルで発現されるが、特定の他の集団のT細胞(例えば、メモリー細胞)上に存在する、または相対的に高レベルで発現されるマーカーである。一態様では、細胞(例えば、CD8+細胞またはT細胞、例えばCD3+細胞)から、CD45RO、CCR7、CD28、CD27、CD44、CD127、および/もしくはCD62Lが陽性の細胞、もしくはその高い表面レベルを発現している細胞が富化され(すなわち、正の選択をされ)、かつ/またはCD45RAが陽性の細胞、もしくはその高い表面レベルを発現する細胞が枯渇される(例えば負の選択をされる)。一部の態様では、細胞から、CD122、CD95、CD25、CD27、および/またはIL7-Rα(CD127)が陽性の細胞、またはその高い表面レベルを発現している細胞が富化または枯渇される。一部の例では、CD8+ T細胞のCD45RO陽性(またはCD45RA陰性)およびCD62L陽性の細胞が富化される。
【0085】
一部の態様では、CD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞亜集団、例えばセントラルメモリー(TCM)細胞を富化された亜集団。
【0086】
一部の態様では、細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。一部の態様では、細胞は、単球または顆粒球、例えば、骨髄性細胞、マクロファージ、好中球、樹状細胞、マスト細胞、好酸球、および/または好塩基球である。
【0087】
2. 試料
細胞および細胞集団は、典型的には、生物学的試料のような試料、例えば、特定の疾患もしくは状態を有する、または細胞療法を必要とする、または細胞療法が投与されるであろう対象のような、対象から得られる、または対象に由来する試料から単離される。一部の局面では、対象は、そのために細胞が単離、加工、および/または操作されている養子細胞療法のような、特定の治療的介入を必要とする患者である対象のような、ヒトである。したがって一部の態様では、細胞は、初代細胞、例えば初代ヒト細胞である。試料は、対象から直接採取された組織、流体、および他の試料、ならびに分離、遠心分離、遺伝子操作(例えばウイルスベクターを用いた形質導入)、洗浄、および/またはインキュベーションのような1つまたは複数の加工段階に起因する試料を含む。生物学的試料は、生物学的起源から直接得られた試料または加工された試料であり得る。生物学的試料には、非限定的に、血液、血漿、血清、脳脊髄液、滑液、尿および汗のような体液、組織ならびに器官試料が、それらに由来する加工された試料を含めて、含まれる。
【0088】
一部の局面では、試料は、血液もしくは血液由来試料である、またはアフェレーシスもしくは白血球アフェレーシス産物である、もしくはそれに由来する。例示的な試料は、全血、末梢血単核細胞(PBMC)、白血球細胞、骨髄、胸腺、組織生検、腫瘍、白血病、リンパ腫、リンパ節、腸管関連リンパ組織、粘膜関連リンパ組織、脾臓、他のリンパ組織、肝臓、肺、胃、腸、結腸、腎臓、膵臓、乳房、骨、前立腺、子宮頸部、精巣、卵巣、扁桃腺、もしくは他の器官、および/またはそれらに由来する細胞を含む。細胞療法、例えば、養子細胞療法に関連する試料は、自己および同種起源からの試料を含む。
【0089】
一部の態様では、細胞は、細胞系、例えばT細胞系に由来する。細胞は、一部の態様では、異種起源、例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、およびブタから得られる。
【0090】
3. 細胞の加工、調製、および親和性に基づかない分離
一部の態様では、細胞または集団の単離は、1つまたは複数の調製段階および/または親和性に基づかない細胞分離段階を含む。一部の例では、細胞は、洗浄、遠心分離、および/または1種もしくは複数種の試薬の存在下でインキュベートされて、例えば、望まれない成分が除去、所望の成分が富化、特定の試薬に感受性の細胞が溶解または除去される。一部の例では、細胞は、密度、接着性、大きさ、特定の成分に対する感受性および/または耐性のような1つまたは複数の性質に基づき分離される。
【0091】
一部の例では、対象の循環血からの細胞が、例えばアフェレーシスまたは白血球アフェレーシスにより得られる。試料は、一部の局面では、T細胞、単球、顆粒球、B細胞を含めたリンパ球、他の有核白血球、赤血球、および/または血小板を含有し、一部の局面では、赤血球および血小板以外の細胞を含有する。
【0092】
一部の態様では、対象から収集された血液細胞は、洗浄されて、例えば、血漿画分が除去され、細胞がその後の加工段階のために適切な緩衝液または媒体中に入れられる。一部の態様では、細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄される。一部の態様では、洗浄溶液は、カルシウムおよび/またはマグネシウムおよび/または多くもしくは全ての二価陽イオンを欠如する。一部の局面では、洗浄段階は、半自動「連続(flow-through)遠心分離(例えばCobe 2991 cell processor, Baxter)により、製造業者の説明書に従って達成される。一部の局面では、洗浄段階は、タンジェント流濾過(TFF)により、製造業者の説明書に従って達成される。一部の態様では、細胞は、洗浄後に、例えばCa++/Mg++不含PBSのような多様な生体適合性緩衝液中に再懸濁される。特定の態様では、血液細胞試料の成分が除去され、細胞が培地中に直接再懸濁される。
【0093】
一部の態様では、該方法は、赤血球を溶解することおよびPercollまたはFicoll勾配による遠心分離による末梢血から白血球の調製のような、密度に基づく細胞分離方法を含む。
【0094】
4. 親和性および/またはマーカーのプロファイルに基づく分離
一部の態様では、単離方法は、表面マーカー、例えば表面タンパク質、細胞内マーカー、または核酸のような、1種または複数種の特異的分子の細胞における発現または存在に基づく異なる細胞型の分離を含む。一部の態様では、そのようなマーカーに基づく分離のための任意の公知の方法が使用され得る。一部の態様では、分離は、親和性または免疫親和性に基づく分離である。例えば、一部の局面における単離は、細胞の1種または複数種のマーカー、典型的には細胞表面マーカーの発現または発現レベルに基づく細胞および細胞集団を、例えばそのようなマーカーと特異的に結合する抗体または結合パートナーと一緒にインキュベートすることによる分離に続いて、通常、洗浄段階、ならびに抗体または結合パートナーと結合しなかった細胞からの抗体または結合パートナーと結合した細胞の分離を含む。
【0095】
そのような分離段階は、試薬と結合した細胞がさらなる使用のために保持される正の選択、および/または抗体もしくは結合パートナーと結合しなかった細胞が保持される負の選択に基づくことができる。一部の例では、両方の画分がさらなる使用のために保持される。一部の局面では、不均一な集団中の細胞型を特異的に同定する抗体が入手不可能なことにより、所望の集団以外の細胞によって発現されるマーカーに基づいて分離が最良に実施される場合に、負の選択が特に有用であり得る。
【0096】
分離は、特定のマーカーを発現している特定の細胞集団または細胞の100%の富化または除去を生じる必要はない。例えば、マーカーを発現している細胞型のような、特定の細胞型の正の選択または富化は、そのような細胞の数またはパーセンテージを増加させることを表すが、該マーカーを発現していない細胞の完全な不在を生じる必要はない。同様に、マーカーを発現している細胞型のような、特定の細胞型の負の選択、除去、または枯渇は、そのような細胞の数またはパーセンテージを減少させることを表すが、そのような細胞の全てを完全に除去することを生じる必要はない。例えば、一部の局面では、CD4+集団またはCD8+集団の一方の選択は、該集団、すなわちCD4+集団またはCD8+集団のいずれかを富化するが、他の選択されなかった細胞のいくらかの残りまたはわずかなパーセンテージを含有する可能性もあり、選択されなかった細胞は、場合によっては、富化された集団中にまだ存在する、CD4集団またはCD8集団のもう一方を含む可能性がある。
【0097】
一部の例では、1つの段階から正または負の選択をされた画分が、その後の正または負の選択のような別の分離段階に供される、複数ラウンドの分離段階が実施される。一部の例では、例えば、それぞれが負の選択のためにターゲティングされたマーカーに特異的な複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数のマーカーを発現している細胞を、単一の分離段階で同時に枯渇することができる。同様に、様々な細胞型に発現される複数の抗体または結合パートナーと共に細胞をインキュベートすることによって、複数の細胞型に同時に正の選択をすることができる。
【0098】
例えば、一部の局面では、1種または複数種の表面マーカー、例えばCD28+、CD62L+、CCR7+、CD27+、CD127+、CD4+、CD8+、CD45RA+、および/またはCD45RO+ T細胞が陽性またはそれらを高レベル発現している細胞のような、T細胞の特定の亜集団が、正または負の選択技法によって単離される。
【0099】
例えばCD3+、CD28+ T細胞は、CD3/CD28コンジュゲート型磁気ビーズ(例えば、DYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 T Cell Expander)を使用して正の選択をすることができる。
【0100】
一部の態様では、単離は、正の選択による特定細胞集団の富化、または負の選択による特定細胞集団の枯渇によって実施される。一部の態様では、正または負の選択は、正または負の選択をされる細胞上にそれぞれ発現される(マーカー+)または相対的により高いレベルで発現される(マーカーhigh)、1種または複数種の表面マーカーと特異的に結合する1種または複数種の抗体または他の結合剤と共に細胞をインキュベートすることによって達成される。
【0101】
一部の態様では、T細胞は、B細胞、単球、または他の白血球のような非T細胞上に発現される、CD14のようなマーカーの負の選択によってPBMC試料から分離される。一部の態様では、該方法は、CD4+細胞およびCD8+細胞の単離、選択、および/または富化を含む。一例では、負の選択によりCD4+細胞を富化するために、モノクローナル抗体カクテルは、典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16およびHLA-DRに対する抗体を含む。一例では、負の選択によりCD8+集団を富化することは、CD14および/またはCD45RAを発現している細胞の枯渇によって実施される。一部の局面では、CD4についての正の選択およびCD8についての正の選択のようなCD4+またはCD8+の選択段階は、CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞を分離するために使用される。一部の局面におけるそのような選択は、同時に実施され、他の局面ではいずれかの順序で順次に実施される。
【0102】
一部の局面では、該方法は、CD4+細胞についての第1の正の選択を含み、その際、第1の選択からの選択されなかった細胞(CD4-細胞)は、CD8+細胞を富化するための第2の正の選択のための細胞の供給源として使用される。一部の局面では、該方法は、CD8+細胞についての第1の正の選択を含み、その際、第1の選択からの選択されなかった細胞(CD8-細胞)は、CD4+細胞を富化するための第2の正の選択のための細胞の供給源として使用される。そのようなCD4+集団およびCD8+集団は、1つまたは複数のナイーブ細胞、メモリー細胞、および/またはエフェクターT細胞亜集団上に発現される、または相対的により高い程度発現される、マーカーについての正の選択または負の選択によって、さらに亜集団に選別することができる。
【0103】
一部の態様では、CD4+細胞は、例えば、それぞれの集団に関連する表面抗原に基づく正の選択または負の選択により、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリーおよび/またはセントラルメモリー幹細胞が、さらに富化または枯渇される。CD4+ Tヘルパー細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することによって、ナイーブ、セントラルメモリー、およびエフェクター細胞に選別される。CD4+リンパ球は、標準方法により得ることができる。一部の態様では、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+ T細胞である。一部の態様では、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。一部の態様では、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45ROである。
【0104】
一部の態様では、CD8+細胞は、例えば、それぞれの亜集団に関連する表面抗原に基づく正の選択または負の選択により、ナイーブ、セントラルメモリー、エフェクターメモリー、および/またはセントラルメモリー幹細胞が、さらに富化または枯渇される。一部の態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化は、投与後の長期生存、増大、および/または生着を改善することのような有効性を増加させるために実施され、有効性は、一部の局面では、そのような亜集団において特に強い。Terakuraet al. (2012) Blood.1:72-82; Wang et al. (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。一部の態様では、TCMを富化されたCD8+ T細胞およびCD4+ T細胞を組み合わせることは、有効性をさらに高める。
【0105】
態様では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+サブセットおよびCD62L-サブセットの両方に存在する。例えば抗CD8抗体および抗CD62L抗体を使用して、PBMCは、CD62L-CD8+画分および/またはCD62L+CD8+画分を富化または枯渇することができる。
【0106】
一部の態様では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD27および/またはCD127陽性またはその高い表面発現に基づき;一部の局面では、それは、CD45RAおよび/またはグランザイムBを発現または高度に発現している細胞についての負の選択に基づく。
【0107】
一部の態様では、提供された方法は、CD8の表面発現に基づく正の選択などによる、試料からのCD8+細胞の単離、選択および/または富化を含む。一部の態様では、該方法は、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化する段階をさらに含むことができる。一局面では、富化されたCD8+細胞から、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD27および/またはCD127の1種または複数種のような、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現された1種または複数種のマーカーを選択することによって、セントラルメモリーT(TCM)細胞をさらに富化することができる。選択は、CD4+細胞の単離、選択および/または富化の前または後に行うことができる。一部の局面におけるそのような選択は、同時に実施され、他の局面ではいずれかの順序で順次に実施される。
【0108】
一部の局面では、該方法は、CD4+細胞についての第1の正の選択を含み、その際、第1の選択からの選択されなかった細胞(CD4-細胞)は、CD8+細胞を富化するための第2の選択用の細胞の供給源として使用され、富化または選択されたCD8+細胞は、第3の選択に使用されて、CD45RO+、CD62L+、CCR7+、CD28+、CD3+、CD27+および/またはCD127+細胞を富化するための第3の選択などにより、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現される1種または複数種のマーカーを発現している細胞がさらに富化される。一部の局面では、該方法は、CD8+細胞についての第1の正の選択を含み、その際、第1の選択からの選択されなかった細胞(CD8-細胞)は、CD4+細胞を富化するための第2の選択用の細胞の供給源として使用され、第1の選択から富化または選択されたCD8+細胞も、第3の選択に使用されて、CD45RO+、CD62L+、CCR7+、CD28+、CD3+、CD27+および/またはCD127+細胞を富化するための第3の選択などによって、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現される1種または複数種のマーカーを発現している細胞がさらに富化される。
【0109】
一部の局面では、TCM細胞が富化されたCD8+集団の単離は、CD4、CD14、CD45RAを発現している細胞の枯渇によって、およびCD62Lを発現している細胞の正の選択または富化によって実施される。一局面では、セントラルメモリーT(TCM)細胞の富化は、CD4の発現に基づいて選択された細胞の陰性画分で開始して実施され、陰性画分は、CD14およびCD45RAの発現に基づく負の選択およびCD62Lに基づく正の選択に供される。一部の局面におけるそのような選択は、同時に実施され、他の局面ではいずれかの順序で順次に実施される。一部の局面では、CD8+細胞集団または亜集団を調製することに使用される同じCD4の発現に基づく選択段階は、CD4+細胞集団または亜集団を生成させるためにも使用されることにより、CD4-に基づく分離からの陽性画分および陰性画分の両方が、任意で1つまたは複数のさらなる正または負の選択段階の後で、保持され、該方法のその後の段階に使用される。
【0110】
特定の一例では、PBMCの試料または他の白血球試料は、CD4+細胞の選択に供され、その際、陰性画分および陽性画分の両方が保持される。次に、陰性画分は、CD14およびCD45RAまたはCD19の発現に基づき負の選択に、およびCD62LまたはCCR7のようなセントラルメモリーT細胞のマーカー特性に基づき正の選択に供され、その際、正の選択および負の選択は、いずれかの順序で実施される。
【0111】
一部の態様では、例えば、1種または複数種の細胞表面マーカーの発現に基づく正の選択または負の選択により、例えば上記の任意の方法により、細胞を単離、選択および/または富化する方法は、免疫親和性に基づく選択を含むことができる。一部の態様では、免疫親和性に基づく選択は、CD4+細胞およびCD8+細胞を含有する初代ヒトT細胞のような細胞を含有する試料を、1種または複数種の細胞表面マーカーと特異的に結合する抗体または結合パートナーと接触させることを含む。一部の態様では、抗体または結合パートナーは、正の選択および/または負の選択用の細胞の分離を可能にするように、球体またはビーズ、例えばアガロースを含むマイクロビーズ、ナノビーズ、磁気ビーズまたは常磁性ビーズのような固体支持体またはマトリックスと結合している。一部の態様では、球体またはビーズは、イムノアフィニティクロマトグラフィーを行うためにカラム内に充填することができ、カラムの中で、CD4+細胞およびCD8+細胞を含有する初代ヒトT細胞のような細胞を含有する試料が、カラムのマトリックスと接触され、続いてそこから溶出または放出される。
【0112】
a. イムノアフィニティビーズ
例えば、一部の態様では、細胞および細胞集団は、免疫磁気(または親和性磁気)分離技法を使用して分離または単離される(Methods in Molecular Medicine, vol. 58: Metastasis Research Protocols, Vol. 2: Cell Behavior In Vitro and In Vivo, p 17-25 Edited by: S. A. Brooks and U. Schumacher(著作権)Humana Press Inc., Totowa, NJに総説されている)。
【0113】
一部の局面では、分離されるべき細胞の試料または組成物は、常磁性ビーズのような磁気応答性粒子またはマイクロ粒子のような、小型の磁化可能または磁気応答性材料と共にインキュベートされる。磁気応答性材料、例えば粒子は、通常、分離することが望ましい、例えば負または正の選択をすることが望ましい1種または複数種の細胞または細胞の集団上に存在する分子、例えば表面マーカーと特異的に結合する結合パートナー、例えば抗体に直接または間接的に結合される。そのようなビーズは公知であり、一部の局面ではDynabeads(登録商標)(Life Technologies, Carlsbad, CA)、MACS(登録商標)ビーズ(Miltenyi Biotec, San Diego, CA)またはStreptamer(登録商標)ビーズ試薬(IBA, Germany)を含めた様々な入手元から市販されている。
【0114】
一部の態様では、磁性粒子またはビーズは、抗体または他の結合パートナーのような特異的結合メンバーに結合した磁気応答性材料を含む。磁気分離方法に使用される多数の周知の磁気応答性材料がある。適切な磁性粒子には、Moldayの米国特許第4,452,773号および欧州特許明細書EP452342Bに記載されたものが含まれ、それらは、参照により本明細書に組み入れられる。Owenの米国特許第4,795,698号およびLibertiらの米国特許第5,200,084号に記載されている粒子のようなコロイドサイズの粒子は、他の例である。
【0115】
インキュベーションは、通常、磁性粒子またはビーズに結合された、抗体もしくは結合パートナー、またはそのような抗体もしくは結合パートナーと特異的に結合する二次抗体もしくは他の試薬のような分子は、試料内の細胞上の細胞表面分子(存在するならば)と特異的に結合する。
【0116】
一部の局面では、試料は磁場中に置かれ、磁気応答性または磁化可能な粒子を結合させた細胞が、磁石に引き寄せられ、未標識の細胞から分離される。正の選択のために、磁石に引き寄せられた細胞が保持され;負の選択のために、引き寄せられなかった細胞(未標識の細胞)が保持される。一部の局面では、正の選択および負の選択の組み合わせが同じ選択段階の間に行われ、その際、陽性画分および陰性画分が保持され、さらに加工される、またはさらなる分離段階に供される。
【0117】
特定の態様では、磁気応答性粒子は、一次抗体もしくは他の結合パートナー、二次抗体、レクチン、酵素、またはストレプトアビジンでコーティングされる。特定の態様では、磁性粒子は、1種または複数種のマーカーに特異的な一次抗体のコーティングを介して細胞に結合される。特定の態様では、ビーズではなく細胞が、一次抗体または結合パートナーで標識され、次に、細胞型に特異的な二次抗体または他の結合パートナー(例えばストレプトアビジン)でコーティングされた磁性粒子が添加される。特定の態様では、ストレプトアビジンでコーティングされた磁性粒子が、ビオチン化一次抗体または二次抗体と共に使用される。
【0118】
一部の態様では、磁気応答性粒子は、その後にインキュベート、培養および/または操作されるべき細胞に結合したままにされ;一部の局面では、粒子は、患者への投与のために細胞に結合したままにされる。一部の態様では、磁化可能粒子または磁気応答性粒子は、細胞から除去される。細胞から磁化可能な粒子を除去するための方法は、公知であり、例えば競合非標識抗体、磁化可能な粒子または切断可能なリンカーとコンジュゲートされた抗体などの使用を含む。一部の態様では、磁化可能な粒子は、生分解性である。
【0119】
一部の態様では、親和性に基づく選択は、磁気活性化細胞選別(MACS)(Miltenyi Biotech, Auburn, CA)である。磁気活性化細胞選別(MACS)システムは、磁化粒子を結合させた細胞の高純度選択が可能である。特定の態様では、MACSは、外部磁場の適用後に非ターゲット種およびターゲット種が順次溶出される方式で動作する。すなわち、磁化粒子に結合した細胞は、その場に保たれ、未結合の種は溶出される。次に、この第1の溶出段階が完了した後、磁場内に補足され、溶出が阻止された種を、溶出および回収できるような、あるやり方で、それらが遊離される。特定の態様では、非ターゲット細胞が標識され、不均一な細胞集団から枯渇される。
【0120】
一部の態様では、親和性に基づく選択は、一部の局面では、例えばストレプトアビジン変異体、例えばStrep-Tactin(登録商標)またはStrep-Tactin XT(登録商標)を介して、抗体のような結合パートナー性免疫親和性試薬にコンジュゲートされた、例えば1~2μMのナノビーズまたはマイクロビーズのような磁気ビーズであるStreptamers(登録商標)を用いる(例えば米国特許第6,103,493号、国際公開公報PCT出願WO/2013011011、WO2014/076277を参照されたい)。一部の態様では、ストレプトアビジン変異体は、ビーズ上に官能化、コーティングおよび/または固定化されている。
【0121】
一部の態様では、ストレプトアビジン変異体は、SEQ ID NO:11またはSEQ ID NO:14に示される未改変または野生型ストレプトアビジンのような、未改変または野生型ストレプトアビジンよりも、例えばSEQ ID NO:5および/またはSEQ ID NO:6(例えばStrep-tag II(登録商標))のようなSEQ ID NO:1~6のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むペプチドリガンドに対して高い結合親和性を示す。一部の態様では、ストレプトアビジン変異体は、同じペプチドに対する野生型ストレプトアビジンの結合親和性よりも5倍、10倍、50倍、100倍、または200倍以上大きい、そのようなペプチドに対する親和性定数としての結合親和性を示す。
【0122】
ストレプトアビジン変異タンパク質は、野生型ストレプトアビジンまたはそのフラグメントのような未改変ストレプトアビジンと比較して1つまたは複数のアミノ酸の差を含む。用語「未改変ストレプトアビジン」は、1つまたは複数の改変が行われる出発ポリペプチドを表す。一部の態様では、出発または未改変ポリペプチドは、SEQ ID NO:11に示される野生型ポリペプチドであり得る。一部の態様では、未改変ストレプトアビジンは、N末端および/またはC末端で短縮されている野生型ストレプトアビジンのフラグメントである。そのような最小のストレプトアビジンは、N末端がSEQ ID NO:11のアミノ酸位置10~16の領域から開始し、C末端がSEQ ID NO:11のアミノ酸位置133~142の領域に終止する任意のものを含む。一部の態様では、未改変ストレプトアビジンは、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を有する。一部の態様では、SEQ ID NO:14に示されるような未改変ストレプトアビジンは、SEQ ID NO:11に示される付番でAla13に対応する位置にN末端メチオニンをさらに含むことができる。本明細書提供のストレプトアビジンにおける残基番号の参照は、SEQ ID NO:11における残基の付番を参照する。
【0123】
用語「ストレプトアビジン変異タンパク質」、「ストレプトアビジン変異体」またはその変形は、SEQ ID NO:11またはSEQ ID NO:14に示されるストレプトアビジンのような、未改変または野生型のストレプトアビジンと比較して、1つまたは複数のアミノ酸差異を含むストレプトアビジンタンパク質を表す。1つまたは複数のアミノ酸差異は、1つまたは複数のアミノ酸の交換(置換)、挿入または欠失のようなアミノ酸変異であり得る。一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、野生型または未改変のストレプトアビジンと比較して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個のアミノ酸差を有することができる。一部の態様では、アミノ酸交換(置換)は、保存的または非保存的変異である。1つまたは複数のアミノ酸差を含むストレプトアビジン変異タンパク質は、ペプチドリガンド(Trp Arg His Pro Gln Phe Gly Gly; SEQ ID NO:5に示されるStrep-tag(登録商標)とも呼ばれる)に対して2.7×104M-1よりも大きな親和性定数として結合親和性を示す。一部の態様では、ストレプトアビジン変異体は、ペプチドリガンド(Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys; SEQ ID NO:6に示されるStrep-tag(登録商標)IIとも呼ばれる)に対して1.4×104M-1よりも大きな親和性定数として結合親和性を示す。一部の態様では、結合親和性は、下記のいずれかのような、当技術分野において公知の方法によって決定することができる。
【0124】
一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、1つまたは複数の残基44、45、46、および/または47に変異を含む。一部の態様では、ストレプトアビジン変異体は、SEQ ID NO:12またはSEQ ID NO:15に示される例示的なストレプトアビジン変異タンパク質に示されるような残基Val44-Thr45-Ala46-Arg47を含む。一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、SEQ ID NO:13または16に示される例示的なストレプトアビジン変異タンパク質に示されるような残基Ile44-Gly45-Ala-46-Arg47を含む。一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、SEQ ID NO: 12、13、15もしくは16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:12、13、15もしくは16に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくはそれ以上の配列同一性を表すアミノ酸配列を示し、ペプチドリガンド(Trp Arg His Pro Gln Phe Gly Gly; SEQ ID NO:5に示されるStrep-tag(登録商標)とも呼ばれる)に対して2.7×104M-1よりも大きく、かつ/またはペプチドリガンド(Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys; SEQ ID NO:6に示されるStrep-tag(登録商標)IIとも呼ばれる)に対して1.4×104M-1よりも大きな結合親和性を示す。
【0125】
一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、国際公開公報PCT出願WO2014/076277に記載の変異体である。一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸位置に関連してアミノ酸位置44~53の領域に少なくとも2つのシステイン残基を含む。一部の態様では、システイン残基は、位置45および52に存在して、これらのアミノ酸を連結しているジスルフィド架橋を作る。そのような一態様では、アミノ酸44は、典型的にはグリシンまたはアラニンであり、アミノ酸46は、典型的にはアラニンまたはグリシンであり、アミノ酸47は、典型的にはアルギニンである。一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸位置に関連してアミノ酸残基115~121の領域に少なくとも1つの変異またはアミノ酸差を含む。一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、アミノ酸位置117、120および121に少なくとも1つの変異ならびに/またはアミノ酸118および119の欠失ならびに少なくともアミノ酸位置121の置換を含む。
【0126】
一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、結果として生じるストレプトアビジン変異タンパク質が、ペプチドリガンド(Trp Arg His Pro Gln Phe Gly Gly; SEQ ID NO:5に示されるStrep-tag(登録商標)とも呼ばれる)に対して2.7×104M-1よりも大きな、および/またはペプチドリガンド(Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys; SEQ ID NO:6に示されるStrep-tag(登録商標)IIとも呼ばれる)に対して1.4×104M-1よりも大きな結合親和性を表す限り、上記変異のいずれかを任意の組み合わせで含むことができる。
【0127】
一部の態様では、ペプチドリガンド結合試薬に対するストレプトアビジン変異体の結合親和性は、5×104M-1、1×105M-1、5×105M-1、1×106M-1、5×106M-1または1×107M-1よりも大きいが、概して1×1013M-1、1×1012M-1または1×1011M-1未満である。
【0128】
一部の態様では、ストレプトアビジン変異体は、また、非限定的にビオチン、イミノビオチン、リポ酸、デスチオビオチン、ジアミノビオチン、HABA(ヒドロキシアゾベンゼン-安息香酸)または/およびジメチル-HABAのような他のストレプトアビジンリガンドに結合性を示す。一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質は、ビオチンまたはデスチオビオチンのような別のストレプトアビジンリガンドに対して、該ペプチドリガンド(Trp Arg His Pro Gln Phe Gly Gly; SEQ ID NO:5に示されるStrep-tag(登録商標)とも呼ばれる)または該ペプチドリガンド(Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys; SEQ ID NO:6に示されるStrep-tag(登録商標)IIとも呼ばれる)に対するストレプトアビジン変異タンパク質の結合親和性よりも大きな結合親和性を表す。
【0129】
一部の態様では、ストレプトアビジン変異タンパク質はマルチマーである。マルチマーは、米国特許出願公開第2004/0082012号に記載されたいずれかのような、当技術分野において公知の任意の方法を使用して生成させることができる。一部の態様では、変異タンパク質のオリゴマーまたはポリマーは、多糖、例えばデキストランへのカルボキシル残基の導入によって調製することができる。一部の局面では、次に、ストレプトアビジン変異タンパク質は、第2段階で、従来のカルボジイミド化学反応を使用して、内部リシン残基の一級アミノ基および/または遊離N末端を介してデキストラン主鎖内のカルボキシル基にカップリングされる。一部の態様では、カップリング反応は、デキストラン1モルあたりストレプトアビジン変異体約60モルのモル比で行われる。一部の態様では、オリゴマーまたはポリマーは、また、グルタルジアルデヒドのような二官能性リンカーを介した架橋によって、または当技術分野において公知の他の方法によって、得ることができる。
【0130】
一部の局面では、Streptamer(登録商標)または他の免疫親和性ビーズのような免疫親和性ビーズは、以下のようなハイブリドーマによって産生される、またはそれに由来する抗体を含むことができる:OKT3(αCD3)、13B8.2(αCD4)、OKT8(αCD8)、FRT5(αCD25)、DREG56(αCD62L)、MEM56(αCD45RA)。一部の態様では、任意の上記抗体は、高度可変CDR領域をターゲティングすることなく、重鎖および軽鎖可変領域のフレームワーク内に1つまたは複数の変異を含むことができる。そのような抗体の例には、一部の局面では、米国特許第7,482,000号およびBesら (2003) J. Biol. Chem., 278:14265-14273に記載の抗CD4抗体が含まれる。一部の態様では、Fabフラグメントのような抗原結合性フラグメントは、一部の局面では、適切な定常ドメインをコードする配列との組み合わせが可能な、重鎖および軽鎖の超可変配列の増幅ならびにクローニングのような当技術分野において公知の方法を使用して、そのような抗体から生成させることができる。一部の態様では、定常ドメインは、ヒトサブクラスIgG1/κである。そのような抗体は、SEQ ID NO:10に示されるようなペプチドであるストレプトアビジン結合分子とカルボキシ末端で融合させることができる。そのような抗体の例は、Stembergetら (2102) PLoS One, 7:35798および国際PCT出願WO2013/011011に記載されている。
【0131】
一部の態様では、ビーズまたは他の表面に関連するまたはそれにコーティングされた細胞表面マーカーと特異的に結合する抗体は、完全長抗体である、または(Fab)フラグメント、F(ab')2フラグメント、Fab'フラグメント、Fvフラグメント、抗原と特異的に結合可能な可変重鎖(VH)領域、単鎖可変フラグメント(scFv)、および単一ドメイン抗体(例えばsdAb、sdFv、ナノボディー(nanobody))フラグメントを含めた単鎖抗体フラグメントを含めた、その抗原結合性フラグメントである。一部の態様では、抗体はFabフラグメントである。一部の態様では、抗体は、一価、二価または多価であり得る。一部の態様では、Fabのような抗体はマルチマーである。一部の態様では、Fabマルチマーのような抗体は、細胞表面マーカーと多価複合体を形成する。
【0132】
一部の態様では、Streptamerに関連するFabのような抗体は、結合親和性の特定の動態尺度(例えば解離定数KD、結合定数KA、解離速度(off-rate)または結合親和性の他の速度パラメーター)を表す。そのような尺度は、技術者に公知の任意の結合アッセイを使用して決定することができる。特定の例では、親和性に基づくバイオセンサー技法が、結合親和性の測定として利用される。例示的なバイオセンサー技法には、例えばBiacore technologies、BioRad ProteOn、Reichert、GWC Technologies、IBIS SPIR Imaging、Nomadics SensiQ、Akubio RAPid、ForteBio Octet、IAsys、Nanofilmおよび他が含まれる(例えばRich et al. (2009) Analytical Biochemistry, 386:194-216を参照されたい)。一部の態様では、結合親和性は、蛍光滴定または滴定カロリメトリーによって決定される。
【0133】
一部の態様では、Fabのような抗体は、細胞上の細胞表面マーカーへの結合に関して、約0.5×10-4sec-1、約1×10-4sec-1、約2×10-4sec-1、約3×10-4sec-1、約4×10-4sec-1、約5×10-4sec-1、約1×10-3sec-1、約1.5×10-3sec-1、約2×10-3sec-1、約3×10-3sec-1、約4×10-3sec-1、約5×10-3sec-1、約1×10-2sec-1、もしくは約5×10-1sec-1以上またはそれよりも大きいk0ff速度(解離速度定数とも呼ばれる)を示す。個々のk0ff速度は、抗体試薬が、それと細胞表面マーカーとの結合を介した試薬と細胞との相互作用から解離することができる速度を決定することができる(例えば、国際公開公報PCT出願WO/2013011011を参照されたい)。例えば、一部の局面では、k0ffの範囲は、例えば結合している抗体を細胞表面から除去したいこと、細胞を培養またはインキュベーションする時間、細胞および他の因子に対する感受性のような要因を含めた、選択または富化された細胞の個々の適用または使用に応じた範囲内で選ぶことができる。一態様では、抗体は、例えば4.0×10-4sec-1よりも大きい、高いk0ff速度を有し、その結果、多価結合複合体の破壊後に、大部分の抗体は1時間以内に除去されることができる。それは、複合体の半減期T1/2を考慮する一部の局面では、再結合の効果を十分な希釈により無視できると仮定すると、56分以内に複合体の濃度が最初の濃度の25%まで減少するからである)。別の態様では、より低いk0ff速度、例えば1.0×10-4sec-1を有する抗体では、解離は、表面から抗体の75%を除去するために、より長く、例えば約もしくはおよそ212分または約3時間半を要し得る。
【0134】
一部の態様では、Fabのような抗体は、細胞上の細胞表面マーカーとの結合に関して、約10-2M~約10-8M、または約10-2M~約10-9M、または約10-2M~約0.8×10-9M、または約10-2M~約0.6×10-9M、または約10-2M~約0.4×10-9M、または約10-2M~約0.3×10-9M、または約10-2M~約0.2×10-9、または約10-2M~約0.15×10-9M、または約10-2~約10-10の範囲であり得る解離定数(Ka)を示す。一部の態様では、細胞上の細胞表面マーカーとの結合に関する解離定数(Ka)は、約10-7M~約10-10M、または約10-7M~約0.8×10-9M、または約10-7M~約0.6×10-9M、約10-7M~約0.3×10-9M、1.1×10-7M~約10-10M、または約1.1×10-7M~約0.15×10-9M、または約1.1×10-7M~約0.3×10-9M、または約1.1×10-7M~約0.6×10-9M、または約1.1×10-7M~約0.8×10-9Mの範囲であり得る。
【0135】
一部の態様では、抗体、例えばFabのような免疫親和性試薬は、ストレプトアビジン変異体と結合可能なペプチドリガンドのようなペプチドリガンドと直接または間接的に連結されている(例えば米国特許第5,506,121号参照)。一部の態様では、そのようなペプチドは、SEQ ID NO:1~6のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む。一部の態様では、抗体、例えばFabのような免疫親和性試薬は、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含むペプチドリガンドに直接または間接的に連結されている。
【0136】
一部の態様では、抗体、例えばFabのような免疫親和性試薬は、少なくとも2つのストレプトアビジン結合モジュールの連続配置を含むペプチド配列と直接または間接的に融合され、その際、2つのモジュールの間の距離は少なくとも0であり、アミノ酸50個以下であり、一方の結合モジュールは、アミノ酸3~8個を有し、かつ少なくとも配列His-Pro-Xaa(SEQ ID NO:1)[式中、Xaaはグルタミン、アスパラギン、またはメチオニンである]を含み、もう一方の結合モジュールは、SEQ ID NO:3に示されるような同じまたは異なるストレプトアビジンペプチドリガンドの配列を有する(例えば、国際公開公報PCT出願WO02/077018;米国特許第7,981,632号を参照されたい)。一部の態様では、免疫親和性試薬に直接または間接的に融合された、抗体、例えばFabのようなペプチドリガンドは、SEQ ID NO:7または8のいずれかに示される式を有する配列を含む。一部の態様では、ペプチドリガンドは、SEQ ID NO:9、10または17~19のいずれかに示されるアミノ酸配列を有する。
【0137】
あるいは、当技術分野において公知の他のストレプトアビジン結合性ペプチドは、例えばWilsonら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98 (2001), 3750-3755)に記載されたように使用され得る。一部の態様では、ペプチドは、タンパク質のN末端および/またはC末端に融合されている。
【0138】
一部の態様では、ストレプトアビジン変異体に結合可能なペプチドリガンドに融合されたFabのような抗体は、ビーズを抗体でコーティングするために、ビーズを含むストレプトアビジン変異体と接触される。一部の態様では、コーティングされたビーズは、そのようなビーズを、富化または選択されるべき細胞を含有する試料と接触させることによって、本明細書記載の富化方法および選択方法に使用することができる。
【0139】
一部の態様では、ペプチドリガンド結合パートナーとストレプトアビジン変異タンパク質結合試薬との間の結合は、可逆的である。一部の態様では、ペプチドリガンド結合パートナーとストレプトアビジン変異タンパク質結合試薬との間の結合は、上記のように高いが、ビオチンまたはビオチン類似体に対するストレプトアビジン結合試薬の結合親和性よりも低い。したがって、一部の態様では、結合を競合して、ビーズ上のストレプトアビジン変異タンパク質結合試薬と、表面上の細胞マーカーと特異的に結合している抗体に関連するペプチドリガンド結合パートナーとの間の結合相互作用を破壊するために、ビオチン(ビタミンH)またはビオチン類似体を添加することができる。一部の態様では、相互作用は、低濃度のビオチンまたは類似体の存在下で、例えば0.1mM~10mM、0.5mM~5mM、または1mM~3mM、例えば概して少なくともまたは少なくとも約1mMまたは少なくとも2mM、例えば2.5mMまたは約2.5mMの存在下で、逆転することができる。一部の態様では、ビオチンまたはビオチン類似体のような競合剤の存在下でのインキュベーションは、選択細胞からビーズを放出させる。
【0140】
b. イムノアフィニティクロマトグラフィー
一部の態様では、親和性に基づく選択は、イムノアフィニティクロマトグラフィーを用いる。イムノアフィニティクロマトグラフィー法は、一部の局面では、米国特許出願公開第2015/0024411号に記載の1種または複数種のクロマトグラフィーマトリックスを含む。一部の態様では、クロマトグラフィー法は、流体クロマトグラフィー、典型的には液体クロマトグラフィーである。一部の態様では、クロマトグラフィーは、単離されるべき細胞を含有する流体試料が、例えば重力流によって、またはクロマトグラフィーマトリックスを収容するカラムの一端にポンプによって添加され、そこで流体試料がカラムの他端でカラムから出る、フロースルー(flow through)モードで実施することができる。加えて、一部の局面では、クロマトグラフィーは、単離されるべき細胞を含有する流体試料が、例えば、ピペットチップ内に充填されたクロマトグラフィーマトリックスを収容するカラムの一端にピペットによって添加され、そこで流体試料が、クロマトグラフィーマトリックス/ピペットチップに入り、カラムのもう一方の端から出る「アップダウン」モードで実施することができる。一部の態様では、クロマトグラフィーは、クロマトグラフィー材料(固定相)が、細胞を含有する試料と共に、例えば振盪、回転または反復接触しながらインキュベートされ、例えばピペットにより流体試料が除去される、バッチモードで実施することもできる。
【0141】
一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは固定相である。一部の態様では、クロマトグラフィーはカラムクロマトグラフィーである。一部の態様では、任意の適切なクロマトグラフィー材料を使用することができる。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、固相または半固相の形態を有する。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、ポリマー樹脂または金属酸化物または半金属酸化物を含むことができる。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、非磁性材料または磁化不能材料である。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、誘導シリカ、または天然ポリマー、例えば多糖の形態のような架橋ゲルである。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、アガロースゲルである。クロマトグラフィーマトリックスにおける使用のためのアガロースゲルは、当技術分野において公知であり、一部の局面では、Superflow(商標)アガロースまたはSuperflow(商標)Sepharose(登録商標)のようなSepharose材料を含み、それらは、異なるビーズ径および孔径で市販されている。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、当技術分野において公知のいずれか、例えば一部の局面ではSephadex(登録商標)、Superdex(登録商標)またはSephacryl(登録商標)のような、デキストランが共有結合している特定の架橋アガロースマトリックスであり、それらは、異なるビーズ径および孔径で入手可能である。
【0142】
一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、合成ポリマー、例えばポリアクリルアミド、スチレン-ジビニルベンゼンゲル、アクリル酸/ジオールもしくはアクリルアミド/ジオール共重合体、多糖/アガロース共重合体、例えばポリアクリルアミド/アガロースコンポジット、多糖およびN,N'-メチレンビスアクリルアミド、または合成もしくは天然ポリマーとカップリングした誘導シリカから作られている。
【0143】
一部の態様では、アガロースビーズまたは他のマトリックスのようなクロマトグラフィーマトリックスは、少なくともまたは少なくとも約50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、120μmまたは150μm以上のサイズを有する。サイズ排除クロマトグラフィーマトリックスの排除限界は、試料中のターゲット細胞、例えばT細胞の最大幅未満であるように選択される。一部の態様では、マトリックスの体積は、少なくとも0.5mL、1mL、1.5mL、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mLまたはそれ以上である。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスは、カラム内に充填されている。
【0144】
一部の態様では、イムノアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであるクロマトグラフィーマトリックスは、それに固定化された抗体またはFabのような抗原結合性フラグメントのような親和性試薬を含む。抗体またはFabのような抗原結合性フラグメントは、一部の局面では、当技術分野において公知の抗体、特定のk0ff速度を有する抗体および/または特定の解離定数(Ka)を有する抗体を含めた、上記のいずれかであり得る。
【0145】
一部の態様では、抗体またはFabのような抗原結合性フラグメントのような親和性試薬は、固定化されている。一部の態様では、抗体またはFabのような抗原結合性フラグメントのような免疫親和性試薬は、マトリックスに固定化された結合試薬と相互作用する結合パートナーに融合または連結されている。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスの結合能は、少なくとも細胞1×107個/mL、5×107個/mL、1×108個/mL、5×108個/mL、または1×109個/ml以上を吸着するために十分である、または吸着可能であり、その際、細胞は、抗体またはFabのような親和性試薬によって特異的に認識される細胞表面マーカーを発現している細胞である。
【0146】
一部の態様では、結合試薬と結合パートナーとの間の相互作用は、マトリックスへの抗体の結合が可逆的であるように、可逆的結合を形成する。一部の態様では、可逆的結合は、ストレプトアビジン変異体結合パートナーと、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体もしくは変異タンパク質、アビジンまたはアビジン類似体もしくは変異タンパク質である、マトリックス上に固定化された結合試薬とによって媒介されることができる。
【0147】
一部の態様では、抗体またはFabのような抗原結合性フラグメントのような親和性試薬の可逆的結合は、免疫親和性ビーズに関して上に記載されたような、ペプチドリガンド結合試薬とストレプトアビジン変異タンパク質との相互作用を介する。クロマトグラフィーマトリックスの局面では、アガロースビーズまたは他のマトリックスのようなマトリックスは、上記のいずれか、例えばSEQ ID NO:12、13、15または16に示されるいずれかのような、ストレプトアビジン変異タンパク質で官能化される、またはそれとコンジュゲートされる。一部の態様では、抗体またはFabのような抗原結合性フラグメントは、上記のいずれかのような、ストレプトアビジン変異体と結合可能なペプチドリガンドと直接または間接的に融合または連結されている。一部の態様では、ペプチドリガンドは、SEQ ID NO:1~10または17~19のいずれかに示されるアミノ酸配列を含むペプチドのような、上記のいずれかである。一部の態様では、クロマトグラフィーマトリックスカラムは、抗体またはFabのような抗原結合性フラグメントのようなそのような親和性試薬と接触されて、親和性試薬をカラムに固定化または可逆的に結合させる。
【0148】
一部の態様では、イムノアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを、富化または選択されるべき細胞を含有する試料と接触させることによって、該マトリックスを本明細書記載の富化方法および選択方法に使用することができる。一部の態様では、選択細胞は、結合パートナー/結合試薬の相互作用を破壊することによってマトリックスから溶出または放出される。一部の態様では、結合パートナー/結合試薬は、ペプチドリガンドとストレプトアビジン変異体との相互作用によって媒介され、選択細胞は、可逆的結合の存在が原因で放出され得る。例えば、一部の態様では、ペプチドリガンド結合パートナーとストレプトアビジン変異タンパク質結合試薬との間の結合は、上記のように高いが、ビオチンまたはビオチン類似体に対するストレプトアビジン結合試薬の結合親和性よりも低い。したがって、一部の態様では、ビオチン(ビタミンH)またはビオチン類似体を添加して、結合を競合させ、マトリックス上のストレプトアビジン変異タンパク質結合試薬と、表面の細胞マーカーと特異的に結合している抗体に関連するペプチドリガンド結合パートナーとの間の結合相互作用を破壊することができる。一部の態様では、相互作用は、概して少なくともまたは少なくとも約1mMまたは少なくとも2mM、例えば2.5mMまたは約2.5mMのような、0.1mM~10mM、0.5mM~5mMまたは1mM~3mMの存在下のような、低濃度のビオチンまたは類似体の存在下で逆転させることができる。一部の態様では、ビオチンまたはビオチン類似体のような競合剤の存在下での溶出は、選択細胞をマトリックスから放出させる。
【0149】
一部の態様では、提供された方法におけるイムノアフィニティクロマトグラフィーは、操作可能に接続される少なくとも2つのクロマトグラフィーマトリックスカラムを使用して行われ、その際、抗体、例えばFabのような、CD4またはCD8の一方に対する親和剤または結合剤は、第1の選択カラム中の第1のクロマトグラフィーマトリックスとカップリングされ、抗体、例えばFabのような、CD4またはCD8のもう一方に対する親和剤または結合剤は、第2の選択カラム中の第2のクロマトグラフィーマトリックスとカップリングされる。一部の態様では、少なくとも2つのクロマトグラフィーマトリックスカラムは、閉鎖された系または装置、例えば無菌の閉鎖されたシステムまたは装置の中に存在する。
【0150】
一部の態様では、操作可能に接続される少なくとも2つのクロマトグラフィーマトリックスカラムを含む、閉鎖されたシステムまたは装置も本明細書において提供され、その際、抗体、例えばFabのような、CD4またはCD8の一方に対する親和剤または結合剤は、第1の選択カラム中の第1のクロマトグラフィーマトリックスとカップリングされ、抗体、例えばFabのような、CD4またはCD8のもう一方に対する親和剤または結合剤は、第2の選択カラム中の第2のクロマトグラフィーマトリックスとカップリングされる。そのようなシステムおよび方法の例は、
図1Aおよび
図1B、ならびに実施例に示される。
【0151】
一部の態様では、閉鎖されたシステムは自動化されている。一部の態様では、システムに関連する構成要素は、システムの様々な部分の間の流体の流動を制御するための統合型マイクロコンピュータ、蠕動ポンプ、およびピンチバルブのような様々なバルブ、またはストップコックを含むことができる。一部の局面における統合型コンピュータは、機器の全ての構成要素を制御し、反復手続きを標準化シーケンスで実行するようシステムに指令する。一部の態様では、蠕動ポンプは、チュービングセット全体の流速を制御し、ピンチバルブと一緒になって、システムを通過する緩衝液の制御流動を保証する。
【0152】
図1Aおよび
図1Bを参照して、一部の態様では、第1の選択カラム1中の第1の親和剤または結合剤を含む第1のアフィニティマトリックス3は、i)第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過しかつその上の第1の親和剤または結合剤と結合していない細胞が、第2のアフィニティマトリックス4内に入ることが可能なように、チュービングおよびバルブ13を介して、第2の選択カラム2中の第2の親和剤または結合剤を含む第2のアフィニティマトリックス4に操作可能に接続され、ii)第1のアフィニティマトリックス上の第1の親和剤または結合剤と結合している選択細胞を、例えば第1のアフィニティマトリックスから溶出および放出させた後に、そのような細胞を第1のアフィニティマトリックスから収集するために、培養槽12のようなアウトプット容器に操作可能に接続されている。一部の態様では、第2の選択カラム2中の第2の親和剤または結合剤を含む第2のアフィニティマトリックス4も、その上の第2の親和剤または結合剤と結合している選択細胞を、例えば第2のアフィニティマトリックスから溶出および放出させた後に、そのような細胞を第2のアフィニティマトリックスから収集するために、培養槽12のようなアウトプット容器に操作可能に接続されている。一部の態様では、ビオチンのような溶出試薬と10
-10M
-1よりも大きいのような高親和性で結合できる、ストレプトアビジン変異体のような結合試薬を収容する除去チャンバー9を経由して、第2の選択カラム2が、培養槽12のようなアウトプット容器と操作可能に接続されている。
【0153】
一部の態様では、第1の選択カラム1および第2の選択カラム2のサイズ、例えば長さおよび/または直径は、同じまたは異なることができる。一部の態様では、第1のカラム1または第2のカラム2の一方のサイズ、例えば長さおよび/または直径は、もう一方のカラムのサイズよりも少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、5倍、7倍、8倍、9倍、10倍またはそれ以上大きい。
【0154】
一部の態様では、第1の選択カラム1中の第1の親和剤または結合剤を含む第1のアフィニティマトリックス3は、チュービングおよびバルブ13を介して、第3の選択カラム15中の第3の親和剤または結合剤を含む第3のアフィニティマトリックス17にも操作可能に接続されており、そのため、第1のアフィニティマトリックス上の第1の親和剤または結合剤と結合している選択細胞を、例えば第1のアフィニティマトリックスから溶出および放出させた後に、そのような細胞が、第3のアフィニティマトリックス内に入ることが可能である。一部の態様では、ビオチンのような溶出試薬に10-10M-1よりも大きいような高親和性で結合可能な、ストレプトアビジン変異体のような結合試薬を収容する除去チャンバー9を経由して、第1の選択カラム1が、第3の選択カラム15に操作可能に接続されている。一部の態様では、第3のアフィニティマトリックス上の第3の親和剤または結合剤と結合している(および第1の親和剤または結合剤と以前に結合した)選択細胞を、例えば第3のアフィニティマトリックス(および以前には第1のアフィニティマトリックス)から溶出および放出させた後に、そのような細胞を第3のアフィニティマトリックスから収集するために、第3の選択カラム15中の第3の親和剤または結合剤を含む第3のアフィニティマトリックス17も、培養槽12のようなアウトプット容器と操作可能に接続されている。一部の態様では、ビオチンのような溶出試薬に対して10-10M-1よりも大きいような高親和性で結合可能な、ストレプトアビジン変異体のような結合試薬を収容する除去チャンバー9を経由して、第3の選択カラム15が、培養槽12のようなアウトプット容器に操作可能に接続されている。
【0155】
一部の態様では、第1の選択カラム1および第3の選択カラム15のサイズ、例えば長さおよび/または直径は、同じまたは異なることができる。一部の態様では、第1のカラム1または第3のカラム15の一方のサイズ、例えば長さおよび/または直径は、もう一方のカラムのサイズよりも少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、5倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上大きい。
【0156】
一部の態様では、第1の選択カラム1は、第1の選択カラム中に細胞試料を提供するために、例えばチュービング、バルブ、およびポンプ8を介して、細胞試料5を収容する貯蔵リザーバに操作可能に接続されている。
【0157】
一部の態様では、第1の選択カラム1は、第1の選択カラム中の第1のクロマトグラフィーマトリックスへ洗浄緩衝液または溶出緩衝液を通過させるために、例えばチュービングおよびバルブを経由して、それぞれ洗浄緩衝液を収容する洗浄リザーバ6および/または溶出液を収容する溶出リザーバ7にも操作可能に接続されている。一部の態様では、第1および第2の選択カラムの間の操作可能な接続に起因して、洗浄緩衝液および/または溶出緩衝液は、第2のカラム内に操作可能に入ることができる。一部の態様では、第1の選択カラムと第3の選択カラムとの間の操作可能な接続に起因して、洗浄緩衝液および/または溶出緩衝液は、第3の選択カラム内に操作可能に入ることができる。
【0158】
一部の態様では、第2の選択カラム2は、第1の選択カラム中の第1のクロマトグラフィーマトリックスへ洗浄緩衝液または溶出緩衝液を通過させるために、例えばチュービングおよびバルブを経由して、それぞれ洗浄緩衝液を収容する洗浄リザーバ6および/または溶出液を収容する溶出リザーバ7にも操作可能に接続されている。
【0159】
洗浄緩衝液は、リン酸緩衝食塩水のような、細胞と適合性の任意の生理学的緩衝液であり得る。一部の態様では、洗浄緩衝液は、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、または組換えヒト血清アルブミンを、例えば濃度0.1%~5%または0.2%~1%で、例えば0.5%または約0.5%で含有する。一部の態様では、溶出液は、例えば少なくともまたは少なくとも約0.5mM、1mM、1.5mM、2mM、2.5mM、3mM、4mM、または5mMのビオチンまたはデスビオチンのようなビオチン類似体である。
【0160】
一部の態様では、第1の選択カラム1の中の第1のアフィニティマトリックス3は、チュービングおよびバルブを経由して、例えば第1のアフィニティマトリックス上への固定化のための抗体、例えばFabのような、第1の親和剤または結合剤を収容する第1の親和性試薬リザーバ(例えばFabリザーバ)18に操作可能に接続されている。一部の態様では、第2のカラム2の中の第2のアフィニティマトリックス4は、チュービングおよびバルブを経由して、例えば第2のアフィニティマトリックス上への固定化のための抗体、例えばFabのような、第2の親和剤または結合剤を収容する第2の親和剤または結合剤リザーバ(例えばFabリザーバ)19に操作可能に接続されている。一部の態様では、第3の選択カラム15の中の第3のアフィニティマトリックス17は、チュービングおよびバルブを経由して、例えば第2のアフィニティマトリックス上への固定化のための抗体、例えばFabのような、第3の親和剤または結合剤を収容する第3の親和剤または結合剤リザーバ(例えばFabリザーバ)20に操作可能に接続されている。
【0161】
一部の態様では、第1および/または第2の親和性試薬は、CD4またはCD8と特異的に結合し、その際、第1および第2の親和性試薬は同じではない。一部の態様では、第3の親和性試薬は、ナイーブT細胞、休止T細胞、もしくはセントラルメモリーT細胞上のマーカーと特異的に結合し、またはCD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD27、および/もしくはCD127であるマーカーと特異的に結合する。
【0162】
5. 生成した組成物の富化および比
一部の態様では、上記方法を使用して第1および第2の選択を行うことにより、試料から、それぞれ第1の細胞表面マーカーを発現している細胞の第1の集団および第2の細胞表面マーカーを発現している細胞の第2の集団が富化される。特定の例では、富化された細胞の第1および/または第2の集団は、CD4+細胞を富化された細胞集団であり得、富化された細胞集団のもう一方、すなわち細胞の第1または第2の集団のもう一方は、CD8+を富化された集団であり得る。上記のように、一部の態様では、以前に第1、第2、またはその後の富化において富化された細胞の集団から、CD4+細胞の亜集団および/またはCD8+細胞の亜集団のようなさらなる細胞亜集団を富化するために、第3、第4またはその後の選択を行うことができる。
【0163】
一部の態様では、該方法は、CD4+細胞を富化された細胞集団およびCD8+細胞を富化された細胞集団のような、富化された細胞の第1および第2の集団を含有する富化された細胞組成物を産生する。一部の態様では、富化された細胞組成物は、培養開始組成物と称され、富化された細胞のインキュベーション、刺激、活性化、操作および/または製剤化を伴うその後の加工段階のような、その後の加工段階に使用される。一部の態様では、インキュベーション、刺激、活性化、操作および/または製剤化を伴う加工段階のようなさらなる加工段階の後に、一部の局面では、遺伝子操作された抗原受容体を発現しているCD4+細胞およびCD8+細胞を含む遺伝子操作された細胞を含有することができるアウトプット組成物が生成する。
【0164】
一部の態様では、富化された細胞組成物は、上記の出発試料からの富化された細胞であり、その際、出発試料中の細胞数は、培養開始組成物のような富化された組成物中の所望の細胞数も少なくとも大きい。一部の態様では、出発試料中の細胞数は、富化された組成物中の所望の細胞数よりも少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、500%、1000%、5000%またはそれより大きい。一部の例では、富化されたCD4+細胞、CD8+細胞またはその亜集団を含めた、富化された集団中の所望の細胞数は、少なくとも1×106個、2×106個、4×106個、6×106個、8×106個、1×107個、2×107個、4×107個、6×107個、8×107個、1×108個、2×108個、4×108個、6×108個、8×108個、1×109個、またはそれ以上である。一部の態様では、出発試料中の細胞数は、少なくとも1×108個、5×108個、1×109個、2×109個、3×109個、4×109個、5×109個、6×109細胞、7×109個、8×109個、9×109個、1×1010個、またはそれ以上である。
【0165】
一部の態様では、富化された組成物中の第1および/もしくは第2の集団またはその亜集団の収率、すなわち出発試料中の細胞集団または細胞亜集団の数と比較した、同じ集団または亜集団中の富化後の細胞数は、10%~100%、例えば20%~80%、20%~60%、20%~40%、40%~80%、40%~60%、または60%~80%である。一部の態様では、第1および/または第2の細胞集団またはその亜集団の収率は、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満または20%未満である。
【0166】
一部の態様では、富化された組成物中の第1および/もしくは第2の細胞集団またはその細胞亜集団の純度、すなわち富化された細胞集団中の全細胞に対する選択細胞表面マーカー陽性の細胞のパーセンテージは、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%であり、概して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上である。
【0167】
一部の態様では、培養開始組成物のような富化された細胞組成物は、CD4+細胞とCD8+細胞との比を培養開始比で含む。培養開始比は、2種類の細胞または単離された細胞集団が、インキュベーションおよび/もしくは操作段階もしくは他の加工段階の完了時に、ならびに/または解凍時にならびに/または対象への投与直前に、所望のアウトプット比もしくは用量、例えば患者への投与のための比もしくは用量を生じるように、またはその許容誤差率またはその許容差内になるように設計された培養開始組成物中に含まれる細胞の比または数である。本明細書提供の方法の態様では、第1および/もしくは第2の選択、またはその亜集団についての選択は、選ばれた培養開始比を生じる方式で行うことができる。そのような方法の例は、下および実施例に記載される。
【0168】
a. 培養開始比および数
一部の態様では、CD4+またはその亜集団とCD8+細胞またはその亜集団との培養開始比は、10:1もしくは約10:1と1:10もしくは約1:10との間、5:1もしくは約5:1と1:5もしくは約1:5との間、または2:1もしくは約2:1と1:2もしくは約1:2との間である。一部の態様では、CD4+細胞またはその亜集団とCD8+細胞またはその亜集団との培養開始比は、1:1または約1:1である。
【0169】
一部の態様では、CD4+とCD8+細胞、またはその亜集団との培養開始比は、対象からの試料中の、CD4+細胞とCD8+細胞またはその亜集団との比と異なる。一部の態様では、対象からの血液試料のような試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞との比は、1:1から14:1の間のCD4+細胞:CD8+細胞であり、概して、約1.5:1から約2.5:1の間のCD4+細胞:CD8+細胞であると報告されている。一部の態様では、血液試料のような試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞との比は、約2:1のCD4+細胞:CD8+細胞である。一部の態様では、血液試料のような試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞との比は、約1:1である。(例えば、Amadori, A et al., Nature Med. 1: 1279-1283, 1995; Chakravarti, A., Nature Med. 1: 1240-1241, 1995; Clementi, M., et al., Hum. Genet. 105: 337-342, 1999を参照されたい)。一部の態様では、対象の比は、1:1未満のCD4+細胞:CD8+細胞である(例えば、Muhonen, T. J Immunother Emphasis Tumor Immunol. 1994 Jan;15(1):67-73を参照されたい)。一部の態様では、CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比は、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞との比よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも100%、少なくとも125%、少なくとも150、少なくとも200%、少なくとも300%、少なくとも400%、または少なくとも500%大きいまたは小さい。
【0170】
一部の態様では、第1および/または第2の選択を行う前に、対象からの試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞との比が決定される。対象におけるCD4+ T細胞とCD8+ T細胞との特定の比(対象間で変動する可能性がある)に基づき、例えばクロマトグラフィーカラムのサイズ決定または免疫親和性試薬の量もしくは濃度の選択によって、特定の選択様式を対象に対して個別化して、所望の、または選ばれた培養開始比を達成することができる。対象における様々な細胞集団の相対レベルまたは頻度は、そのような集団または亜集団に存在する1種または複数種のマーカーの表面発現を評価することに基づいて決定することができる。親和性に基づく方法、例えば免疫親和性に基づく方法による検出のような、表面マーカーまたはタンパク質の発現レベルを評価するためのいくつかの周知の方法が、例えば、フローサイトメトリーにより、例えば細胞表面タンパク質の状況で使用され得る。
【0171】
状況によっては、特定の細胞型に適切な培養開始比は、例えば、例として細胞が由来する対象の特定の疾患、状態、もしくは以前の処置、および/もしくは細胞の特定の抗原特異性、様々な亜集団、例えばエフェクター細胞対メモリー細胞対ナイーブ細胞の特定の型の細胞(例えばCD8+ T細胞)間の相対表現ならびに/または培地、刺激剤、培養時間、緩衝剤、酸素含量、二酸化炭素含量、抗原、サイトカイン、抗体、および他の成分のような、細胞がインキュベートされる1つもしくは複数の条件についての状況に応じて、変動する可能性がある。したがって、別の細胞型よりも急速に増殖または増大することが典型的または一般に公知の細胞型が、あらゆる状況で常にそのような性質を有するわけではないことがあり得る。したがって、一部の局面では、培養開始比は、細胞もしくは該細胞が由来する対象の表現型もしくは状態の評価および/または経験的な根拠と結びつけて、正常または典型的な状況における細胞型の公知の能力に基づき決定される。
【0172】
一部の態様では、培養開始比は、該濃度であることが公知のまたは決定された特定の細胞型についての1つまたは複数のこれらの特徴の知識に基づく。一部の態様では、培養開始組成物中のCD4+細胞とCD8+細胞との比は、CD4+とCD8+との所望のアウトプット比よりもそれぞれ1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍以上または以下、大きいまたは小さい。
【0173】
一部の態様では、例えばCD4+細胞は、状況により、特定の刺激条件下でインキュベートした場合にCD8+細胞よりも低い程度または低速で増殖または増大することが公知である。例えば、Fouldsら(2002) J Immunol. 168(4): 1528-1532; Caggiariら(2001) Cytometry. 46(4) 233-237; Hoffmanら(2002) Transplantation. 74(6): 836-845;およびRabensteinら(2014) J Immunolを参照されたい。印刷前に2014年3月17日にオンラインで公開、doi: 10.4049/jimmunol.1302725。したがって、一部の例では、培養開始組成物中のCD4+細胞とCD8+細胞との比は、所望のアウトプット比の10倍または100倍である。例えば、1:1(または50%/50%)のCD4/CD8アウトプット比が所望であるならば、CD4+集団およびCD8+集団は、一例では、例えば特定の期間にわたる増大速度の差を説明するために、培養開始組成物中に2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、または100:1の比で含まれ得る。CD4+細胞もしくはCD8+細胞、またはその亜集団の一方の速度または増大または増殖におけるもう一方との差に応じて、技術者は、個々の刺激または活性化条件に従い所望のアウトプット比を達成するために、培養開始比を経験的に決定することができる。
【0174】
培養開始比は、必ずしも所望のアウトプット比と同一なわけではなく、またはそれに近似するわけでもない。例えば、1:1で、またはその特定の誤差内でCD4+およびCD8+操作(例えばCAR発現)T細胞を投与することが所望であるならば、CD4+およびCD8+細胞の培養開始比は多くの場合に1:1ではない。一部の態様では、所望のアウトプット比を生じる培養開始比は、例えば、細胞の供給源、培養されるべき細胞型、細胞が投与されるべき患者、細胞が単離されたまたは由来した1つまたは複数の対象、そのような対象がどんな疾患または状態を有するかなど、処置されるべき疾患、培養条件、および他のパラメーターに応じて変動する。
【0175】
一部の態様では、培養開始比は、細胞の各亜集団の組成に基づく。特定の態様では、培養開始比は、細胞集団が遺伝子操作される前にそれらが培養される時間の長さに基づく。一部の態様では、培養開始比は、各細胞集団の増殖速度に基づく。
【0176】
別の局面として、一部の態様では、該方法は、培養開始比または数を決定する段階をさらに含む。一部の態様では、提供された方法は、細胞、細胞型、および細胞集団の適切な比、用量、および数を決定するための方法および段階を含む。例えば、CD4+/CD8+細胞、集団、および/または亜集団の比を決定するための、およびそのような細胞およびサブタイプの適切な用量を決定するための方法が提供される。一部の態様では、所望の結果を達成するために、培養開始組成物のような組成物中に含まれるべき細胞型または培養細胞集団の適切な比または数を決定するための方法が提供される。一部の局面では、そのような比または数は、所望のアウトプット比または用量を達成するためにインキュベーション段階または操作する段階での使用のために設計される。一部の態様では、対象または患者への投与のための細胞、型、もしくは集団の所望の比、および/またはその細胞数を決定するための方法が提供される。
【0177】
一部の態様では、選ばれた培養開始比は、異なる細胞型または集団が、そのような条件でインキュベートされたときに培養状態で各細胞集団または細胞型(CD4+細胞対CD8+細胞など)の生存および/または増殖もしくは増大速度についての相対能力に基づく。したがって、一部の局面では、増殖速度、生存、および/またはアウトプット比は、培養開始に最適な比を決定するために、試験インキュベーション後に、例えばインキュベーション後、および/または凍結保存もしくは凍結段階後、および/またはそのような手順の後の解凍後、投与直前のような、例えばベッドサイドでの特定の1つまたは複数の時点で測定または評価される。インビトロまたはエクスビボ細胞増殖速度または生存の決定のための任意のいくつかの周知の方法は、カルボキシフルオセイン二酢酸サクシニミジルエステル(CFSE)または類似の蛍光色素を用いて標識し、その後インキュベーションし、続いてフローサイトメトリーにより蛍光強度を評価し、かつ/あるいは適切な細胞上もしくは細胞中のマーカーを認識するアネキシンVもしくは他の化合物への細胞の結合および/またはヨウ化プロピジウムもしくは7AADのようなDNA相互キレート剤の取込みを評価し、フローサイトメトリーにより増殖もしくはアポトーシスの尺度として取込みおよび/もしくは細胞周期のステージを評価するような、フローサイトメトリー法を含む。
【0178】
一部の態様では、特定の試験条件で試験組成物中に異なる比の範囲で2つの単離された細胞集団、例えば細胞亜集団をインキュベートし、特定の期間後に達成されたアウトプット比のような1つまたは複数の結果を評価することによって、培養開始比が決定される。一部の局面では、条件は、培養段階および/または操作段階のために培養開始組成物がインキュベートされるべき条件を近似している条件のような、刺激条件である。例えば、一部の局面における試験組成物は、例えば同じ刺激剤、媒体、緩衝液、気体含量のそれぞれの1つまたは複数の存在下で、ならびに/または同じ種類の容器もしくは槽の中で、ならびに/または投与用の操作された組成物のような最終的な組成物を調製または産生するために使用されるべきインキュベーション段階および/もしくは操作段階に使用されるべきパラメーターと同じもしくはほぼ同じ時間量の間、投与される。
【0179】
試験培養開始組成物のための例示的な試験比は、90%/10%、80%/20%、70%/30%、60/40%、50/50%、40/60%、30/70%、20%/80%、および10%/90%もしくは約その比、または1:1.5もしくは約1:1.5よりも0.1:1、0.5:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1:1.1、1:1.2.、1:1.3、1:1.4、1:1.5もしくはそれ以上、または1:0.1、1:0.4、1:0.7、1:0.8、1:0.8、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、もしくは1.5;1またはそれ以上を含むことができる。
【0180】
いくつかの状況では、産生の終わりに所望のCD4:CD8比を達成するためのCD4+細胞対CD8+細胞の適切な培養開始比は、特定の単離された組成物において表されるナイーブ、エフェクター、および様々な記憶区画の存在および/またはパーセンテージのような、特定の単離された細胞産物中のCD4+画分および/またはCD8+画分の亜集団に基づき決定される。そのような評価は、例えばフローサイトメトリーにより、細胞上の様々な表面マーカーの存在またはレベルを決定することによることができる。
【0181】
一部の態様では、培養開始比は、各細胞集団の表現型に基づく。特定の態様では、培養開始比は、培養条件(例えば、培地組成、成長因子、刺激薬、および/または他の薬剤の存在および/または不在、温度、通気条件など)に基づく。
【0182】
本明細書記載の方法の一部の態様では、培養開始比は、CD4+:CD8+細胞の比またはそのようなサブタイプの数または全細胞数を含むアウトプット組成物を産生し、それは、所望の比または用量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%または約50%以内である(これらの値の間の任意の範囲を含む)。本明細書記載の方法の一部の態様では、培養開始比は、CD4+細胞:CD8+細胞の所望の比またはそのような細胞の用量を有するアウトプット組成物を少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または95%よりも多い時間で産生する(これらの値の間の任意の範囲を含む)。該方法の特定の態様では、培養開始比は、アウトプット組成物中に、少なくとも80%の時間で所望のアウトプット比の20%以内であるCD4+細胞対CD8+細胞の比を産生する。本明細書記載の方法の一部の態様では、アウトプット組成物は、所望のアウトプット比の許容差内である、CD4+細胞とCD8+細胞との比を含み、許容差は、上記のように、例えば、CD4+細胞およびCD8+細胞を1つまたは複数の対象に複数の比で投与することによって、決定されたものである。
【0183】
b. アウトプット比および用量
一部の態様では、該方法は、細胞のインキュベーション、刺激、活性化、操作および/または製剤化のような、培養開始組成物の1つまたは複数の加工段階の後にアウトプット組成物を生じる。一部の態様では、該方法は、2:1もしくは約2:1から1:5もしくは約1:5、2:1もしくは約2:1から1:2もしくは約1:2、1.5:1もしくは約1.5:1から1:5もしくは約1:5、1.5:1もしくは約1.5:1から1:2もしくは約1:2、または1:1もしくは約1:1から1:2もしくは約1:2の間である、CD4+細胞およびCD8+細胞またはその亜集団の所望の比を達成するまたは生じるように行われる。一部の態様では、アウトプット組成物中のCD4+細胞とCD8+細胞との所望のアウトプット比は、1:1または約1:1である。
【0184】
一部の態様では、該方法は、遺伝子操作されたCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞またはその亜集団を含有する組成物のようなアウトプット組成物を産生または生成し、その際、組成物中のCD4+細胞およびCD8+細胞またはその亜集団のアウトプット比は、2:1もしくは約2:1から1:5もしくは約1:5、2:1もしくは約2:1から1:2もしくは約1:2、1.5:1もしくは約1.5:1から1:5もしくは約1:5、1.5:1もしくは約1.5:1から1:2もしくは約1:2、または1:1もしくは約1:1から1:2もしくは約1:2の間である。一部の態様では、該方法は、1:1または約1:1であるCD4+細胞とCD8+細胞とのアウトプット比を含有するアウトプット組成物を産生または生成する。
【0185】
一部の態様では、CD4+ T細胞とCD8+ T細胞とのアウトプット比は、例えば養子免疫療法に関連するような、免疫療法用のT細胞の投与量の一環として望まれる比である。
【0186】
一部の態様では、細胞型または集団の所望の細胞数および/または所望のアウトプット比のような所望の投与量(例えば、患者への治療的投与に最適な比)が決定される。一部の態様では、該方法は、所望のアウトプット比もしくは投与比または用量から許容誤差または許容差、すなわち所与の組成物、例えば操作された組成物における比が所望のアウトプット比から変動する可能性があるが、それでも対象もしくは患者における許容される安全度、または特定の疾患もしくは状態を処置する有効性または他の治療効果のような、所望の結果を達成する誤差範囲を決定するための段階を含む。
【0187】
一部の態様では、所望の用量、比および/または許容誤差は、処置されるべき疾患または状態、対象、細胞の供給源、例えば細胞が特定の状態または疾患を有する対象由来であるか、ならびに細胞が自己移植または同種移植用であるか、例えば、細胞が単離された対象が養子細胞療法において該細胞を受け入れる予定にもなっているか、ならびに/または対象が、別の処置および/もしくはそのような処置の同一物を受けたか、もしくは受けているかに依存する。一部の態様では、比、数、および/または許容差もしくは誤差は、増殖速度、生存能、特定のマーカーの発現もしくはサイトカインのような因子の分泌、またはインキュベーション段階および操作段階の前に単離された特定の亜集団のような、細胞の1つまたは複数の他の性質に依存する。一部の例では、所望の比および/または許容誤差もしくは差は、対象の年齢、性別、健康状態、および/または体重、疾患形質の指標としてのバイオマーカー、対象に同時に施行されるべきまたは以前に施行された処置に応じて変動する可能性がある。
【0188】
一部の態様では、所望の比、用量、および/または許容誤差は、それぞれ関心対象の細胞型または集団を異なる比または異なる数で含有する様々な試験組成物を試験対象に投与し、続いて安全性、治療有効性、細胞のインビボ濃度もしくは局在性、および/または他の所望の結果を示すパラメーターのような、1つまたは複数の結果またはパラメーターを評価することによって決定される。
【0189】
一部の態様における試験対象は、細胞の投与によって処置されるべき疾患または状態のような、正常な動物または疾患の動物モデルのような非ヒト動物である。一部の態様では、試験対象への投与のための様々な試験比は、例えば1つの細胞型またはサブタイプ(例えば、CD4+ T細胞またはそのサブタイプ)および別の細胞型(例えば、CD8+ T細胞もしくはNK細胞またはそのサブタイプ)のパーセンテージ、ならびに暫定値として表現された、90%/10%、80%/20%、70%/30%、60/40%、50/50%、40/60%、30/70%、20%/80%、および10%/90%またはおよそその値である。比は、相対パーセンテージとして、または比0.1:1、0.5:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1:1.1、1:1.2.、1:1.3、1:1.4、1:1.5もしくは約その値、または1:1.5より多いもしくは約1:1.5より多い、または1:0.1、1:0.4、1:0.7、1:0.8、1:0.8、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5;1もしくはそれ以上、もしくは約その値もしくは約その値以上(これらの値の間の任意の範囲を含める)のような、任意の他の形式で表現することができる。一部の態様では、試験対象はヒトである。一部の態様では、所望の比は、特別な最適効果を有する試験対象間の平均、平均値、または中央値の比である。一部の局面では、所望の比は、安全性対有効性のある最適な均衡を達成した比である。一部の局面では、所望の比または用量は、全ての試験比または用量のうち最高の有効性を達成するが、それでも依然として安全性のしきい度を維持している比または用量である。一部の局面では、所望の比または用量は、最高度の安全性を達成する一方で、有効性のしきい度を維持しているまたは有効性の範囲内である比または用量である。場合によっては、最適な比または用量は、一方の細胞型と別の細胞型とが1:1から1:2の間、または体重1kgあたり104から109個の間もしくは105から106個の間のような範囲として表現される。
【0190】
一部の態様では、許容誤差は、各パーセンテージの組み合わせの治療有効性および/または安全性を評価するために監視された、所望の平均的試験対象からの偏差に基づき決定される。一部の態様では、許容誤差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内である(これらの範囲の間の任意の値を含める)。
【0191】
6. 細胞を選択または富化する例示的な方法
a. 免疫磁気ビーズを使用する単一の工程の流れおよび/または同時選択
一部の態様では、分離および/または段階は、免疫磁気ビーズを使用して実施される。一部の態様では、初代ヒトT細胞試料のようなCD4+細胞およびCD8+細胞を含有する細胞試料は、CD4またはCD8と結合する第1の免疫親和性試薬を含む磁気ビーズおよびCD4またはCD8のもう一方と結合する第2の免疫親和性試薬を含む磁気ビーズと接触される。分離および/または段階は、同時および/または順次に起こることができる。
【0192】
一部の態様では、細胞を磁気ビーズと接触させることは同時に行われ、その際、表面マーカーCD4およびCD8を含む細胞の富化も、同時に行われる。一部のそのような局面では、該方法は、初代ヒトT細胞を含有する試料の細胞を、CD4と特異的に結合する第1の免疫親和性試薬およびCD8と特異的に結合する第2の免疫親和性試薬と、インキュベーション組成物中で、免疫親和性試薬が、試料中の細胞表面のCD4分子およびCD8分子とそれぞれ特異的に結合する条件で接触させる段階、ならびに第1および/または第2の免疫親和性試薬に結合している細胞を回収することによって、培養開始比のCD4+細胞およびCD8+細胞を含む富化された組成物を生成させる段階を含む。
【0193】
一部の態様では、第1および/または第2の免疫親和性試薬は、最適以下の収率濃度でインキュベーション組成物中に存在し、その際、富化された組成物は、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満および/またはインキュベーション組成物中のCD8+細胞の70%未満を含有することによって、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が富化された組成物を産生する。
【0194】
一部の態様では、親和性試薬の最適以下の収率濃度は、細胞を試薬と共にインキュベートすること、および試薬に結合した細胞を回収または分離することを伴う、所与の選択または富化において結合している細胞の最適または最大収率を達成するために使用される、または必要な、濃度未満の濃度である(「収率」とは、例えば、試薬によってターゲティングされる、または試薬が特異的な、または試薬が特異的であり結合することが可能なマーカーを有する、そのような回収または選択された細胞の数をインキュベーションにおける全細胞数と比較したものである)。最適以下の収率濃度は、概して、そのような工程または段階において、試薬に結合した細胞の回収の際に、結合している細胞の70%以下の収率を達成する試薬の濃度または量である。一部の態様では、50%、45%、40%、30%、もしくは25%または約その値以下の収率が、最適以下の濃度によって達成される。濃度は、細胞あたりの粒子もしくは表面の数もしくは質量および/または細胞あたりの薬剤(例えば、抗体フラグメントのような抗体)の質量もしくは分子の数により表現され得る。
【0195】
例えば、一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり薬剤(例えば抗体)30μM未満または約30μM未満である。一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、薬剤(例えば抗体)30μM未満または約30μM未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり薬剤(例えば抗体)20μM未満または約20μM未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、薬剤(例えば抗体)10μM未満または約10μM未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、薬剤(例えば抗体)15μM未満または約15μM未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、薬剤(例えば抗体)10μM未満または約10μM未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり薬剤(例えば抗体)5μM未満または約5μM未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、薬剤(例えば抗体)1μM未満または約1μM未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個、または20×109個あたり、薬剤(例えば抗体)0.5μM未満または約0.5μM未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、薬剤(例えば抗体)0.2μM未満または約0.2μM未満である。
【0196】
一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたりビーズ、粒子、表面、または試薬全体が15mg未満または約15mg未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたりビーズ、粒子、表面、または試薬全体が10mg未満または約10mg未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、ビーズ、粒子、表面、または試薬全体が5mg未満または約5mg未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、ビーズ、粒子、表面、または試薬全体が4mg未満または約4mg未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、ビーズ、粒子、表面、または試薬全体が、3mg未満または約3mg未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、ビーズ、粒子、表面、または試薬全体が2mg未満または約2mg未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109個あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、ビーズ、粒子、表面、または試薬全体が、1mg未満または約1mg未満であり;一部の態様では、最適以下の収率濃度は、インキュベーション組成物中に、細胞1×109あたり、2×109個あたり、3×109個あたり、4×109個あたり、5×109個あたり、10×109個あたり、15×109個あたり、または20×109個あたり、ビーズ、粒子、表面、または試薬全体が、0.5mg未満または約0.5mg未満である。
【0197】
一部の態様では、例えば、2つ以上のマーカーまたは細胞に対して親和性を有する2つ以上の選択試薬のそれぞれまたは1つもしくは複数について最適以下の収率濃度で作業するときに、1つまたは複数のそのような試薬は、もう一方の1つまたは複数のそのような試薬によって認識される細胞型と比較して、その試薬によって認識される細胞型の比を偏らせるために、もう一方よりも高い濃度で使用される。例えば、比を偏らせることが望まれるマーカーと特異的に結合する試薬は、比をどれだけ増加させることが望まれるかに応じて、1つまたは複数の他方と比較して半分、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍またはそれ以上増加した濃度(例えば、細胞あたりの薬剤または質量)で含まれ得る。
【0198】
一部の態様では、一方または両方の細胞集団を偏らせるために最適以下の収率濃度を達成することは、所望の、または選ばれた培養開始比を達成することができる。一部の態様では、選択は、少なくとも細胞1×109個、2×109個、3×109個、4×109個、5×109個、6×109個、7×109個、8×109個、1×1010個、2×1010個、3×1010個、4×1010個、は5×1010個またそれ以上のような高い細胞数を含有する、CD4+細胞およびCD8+細胞を含有する試料である試料から行われる。一部の態様では、高い細胞数は、試薬が特異的に結合する、CD4またはCD8のようなマーカーを発現している細胞に対する試料中の免疫親和性試薬の飽和を保証するために十分である。
【0199】
一部の態様では、最適以下の範囲で、かつ/または試薬の飽和を達成するために十分な細胞を用いて作業するときに、免疫親和性試薬の量は、富化された細胞のおよその収率に比例する。一態様では、CD4+細胞とCD8+細胞との約またはおよそ1:1の培養開始比を達成するために、CD4+細胞およびCD8+細胞の選択は、それぞれCD4およびCD8に対する免疫親和性試薬の、同じまたはほぼ同じ最適以下の収率濃度で行うことができる。別の例示的な態様では、CD4+細胞とCD8+細胞との約またはおよそ2:1の培養開始比を達成するために、CD4+細胞の選択は、CD8に対する免疫親和性試薬の最適以下の収率濃度と比較して約またはおよそ2倍大きい、CD4に対する免疫親和性試薬の最適以下の収率濃度で行うことができる。上記の例証を考慮して、富化または選択された細胞を含有する、生成した組成物の所望のまたは選ばれた培養開始比に応じて、免疫親和性試薬の適切な量または濃度を経験的に選択するまたは選ぶことは、技術者のレベルの範囲内である。
【0200】
一部の態様では、分離および/または段階は、例えば上記のストレプトアビジン変異タンパク質とのペプチドリガンドの相互作用を介して、免疫親和性試薬が可逆的に結合している磁気ビーズを使用して実施される。そのような磁気ビーズの例は、Streptamers(登録商標)である。一部の態様では、分離および/または段階は、Miltenyi Biotecから市販されているもののような磁気ビーズを使用して実施される。
【0201】
一部の局面では、分離および/または他の段階は、閉鎖された無菌システム中の臨床規模レベルでの細胞の自動分離のために実施される。構成要素は、統合型マイクロコンピュータ、磁気分離ユニット、蠕動ポンプ、および様々なピンチバルブを含むことができる。一部の局面における統合型コンピュータは、機器の全ての構成要素を制御し、反復手続きを標準化シーケンスで実行するようシステムに指令する。一部の局面における磁気分離ユニットは、可動式永久磁石および選択カラム用のホルダーを含む。蠕動ポンプは、チュービングセットを通過する流速を制御し、ピンチバルブと一緒になって、システムを通過する緩衝液の制御流動および細胞の連続的懸濁を保証する。一部の局面では、分離および/または他の段階は、CliniMACSシステム(Miltenyi Biotic)を使用して実施される。
【0202】
一部の態様では、CliniMACSシステムなどを使用する自動分離は、一部の局面では、無菌の非発熱原性溶液中に供給された抗体カップリング型の磁化可能粒子を使用する。一部の態様では、細胞を磁性粒子で標識した後に、細胞が洗浄され、過剰の粒子が除去される。次に、細胞調製バッグがチュービングセットに接続され、今度はチュービングセットが、緩衝液を収容しているバッグおよび細胞収集バッグに接続される。チュービングセットは、プレカラムおよび分離カラムを含めた組み立て済みの無菌チュービングからなり、1回のみの使用型である。分離プログラムの開始後に、システムは、細胞試料を分離カラム上に自動的に添加する。標識された細胞は、カラム内に保持され、一方で未標識の細胞は、一連の洗浄段階によって除去される。一部の態様では、本明細書記載の方法で使用するための細胞集団は、未標識であり、カラム内に保持されない。一部の態様では、本明細書記載の方法で使用するための細胞集団は、標識されており、カラム内に保持される。一部の態様では、本明細書記載の方法で使用するための細胞集団は、磁場の除去後にカラムから溶出され、細胞収集バッグ内に収集される。
【0203】
特定の態様では、分離および/または他の段階は、遠心分離により細胞の自動洗浄および分画を可能にする細胞加工ユニットを備えるシステムを使用して実施される。一部の局面では、分離および/または他の段階は、CliniMACS Prodigyシステム(Miltenyi Biotec)を使用して実施される。細胞加工ユニットを有するシステムは、供給源の細胞産物の肉眼的な層を見分けることによって最適な細胞分画エンドポイントを判定する搭載カメラおよび画像認識ソフトウェアも含むことができる。例えば、末梢血は、赤血球、白血球および血漿層に自動的に分離される。CliniMACS Prodigyシステムのような細胞加工システムは、例えば細胞分化および増大、抗原負荷、および長期細胞培養のような細胞培養プロトコールを成し遂げる統合型細胞栽培チャンバーも含むことができる。入力ポートは、培地の無菌除去および補充を可能にすることができ、細胞は、統合型顕微鏡を使用して監視することができる。例えば、Klebanoffら (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraら (2012) Blood.1:72-82、およびWangら (2012) J Immunother. 35(9):689-701を参照されたい。
【0204】
一部の態様では、本明細書記載の細胞集団は、複数の細胞表面マーカーが染色された細胞が流体流れで運ばれるフローサイトメトリーを介して収集および富化(または枯渇)される。一部の態様では、本明細書記載の細胞集団は、調製規模(FACS)の選別を介して収集および富化(または枯渇)される。特定の態様では、本明細書記載の細胞集団は、FACSに基づく検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップの使用により収集および富化(または枯渇)される(例えば、WO2010/033140、Cho et al. (2010) Lab Chip 10, 1567-1573;およびGodin et al. (2008) J Biophoton. 1(5):355-376を参照されたい)。どちらの場合も細胞を複数のマーカーで標識することができ、詳細に明らかにされたT細胞サブセットを高純度で単離することが可能である。
【0205】
一部の態様では、抗体または結合パートナーは、正および/または負の選択のための分離を容易にするために、1種または複数種の検出可能なマーカーで標識される。例えば、分離は、蛍光標識抗体への結合に基づき得る。一部の例では、1種または複数種の細胞表面マーカーに特異的な抗体または他の結合パートナーの結合に基づく細胞の分離は、調製規模(FACS)を含めた蛍光標示式細胞選別(FACS)および/または例えばフローサイトメトリー検出システムと組み合わせた微小電気機械システム(MEMS)チップによって流体流れ中で実施される。そのような方法は、複数のマーカーに基づく正および負の選択を同時に可能にする。
【0206】
b. イムノアフィニティクロマトグラフィーを使用する単一工程の流れおよび/または順次選択
一部の態様では、細胞集団の第1の選択または富化ならびに細胞集団の第2の選択および/または富化は、表面に抗体を固定化させた、少なくとも第1および第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスをそれぞれ含む、免疫親和性に基づく試薬を使用して行われる。一部の態様では、第1および/または第2の選択の一方または両方は、複数のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスおよび/または抗体を用いることができ、その際、同じ選択、すなわち第1の選択または第2の選択のために用いられた複数のマトリックスおよび/または抗体は、連続的に接続される。一部の態様では、第1および/または第2の選択に採用された1種または複数種のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスは、少なくとも細胞約50×106個/mL、100×106個/mL、200×106個/mLまたは400×106個/mLを吸着する、または選択もしくは富化することが可能である。一部の態様では、吸着能は、カラムの直径および/または長さに基づき調節することができる。一部の態様では、選択または富化された組成物の培養開始比は、例えば細胞を選択するための1つまたは複数のカラムの吸着能に基づき想定された培養開始比を達成するために十分な量のマトリックスをおよび/または十分な相対量で選ぶことによって達成される。
【0207】
例示的な一態様では、1種または複数種のマトリックスの吸着能は、第1の選択と第2の選択との間で同じであり、例えば両方について細胞1×108または約1×108個/mLであり、その際、第1の選択および第2の選択における細胞の富化または選択は、CD4+細胞とCD8+細胞とを約1:1の培養開始比で含有する組成物を生じる。別の例示的な態様では、第1の選択または第2の選択の一方に使用される1種または複数種のマトリックスの吸着能は、第1の選択または第2の選択のもう一方に使用される1種または複数種のマトリックスの吸着能の少なくとも1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、10.0倍またはそれ以上であることによって、より大きい吸着能を有して選択された細胞、例えばCD4+細胞またはCD8+細胞が、培養開始比中にもう一方の細胞集団の少なくとも1.5倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、10.0倍またはそれ以上である量で存在する培養開始比を生じる。富化または選択された細胞を含有する、生成した組成物の所望のまたは選ばれた培養開始比に応じて、第1および/または第2の選択のために適切な体積、直径または数のアフィニティマトリックスクロマトグラフィーカラムを選択するまたは選ぶことは、技術者の水準の範囲内である。
【0208】
提供された方法によって選択を実施するための例示的な工程は、実施例2に示される。一部の態様では、そのような工程は、富化または生成した組成物において所望の培養開始比を達成する。
【0209】
一部の態様では、提供された方法における第1および/または第2の選択は、CD4+またはCD8+細胞の一方を最初に富化する段階、および次に、例えば休止T細胞、ナイーブT細胞またはセントラルメモリーT細胞上に発現されるマーカー、例えばCD28、CD62L、CCR7、CD127またはCD27であるマーカーの表面発現に基づき、細胞亜集団を富化する段階を含む。一部の態様では、第1および/または第2の選択は、CD8+細胞を富化することを含み、該選択は、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することをさらに含み、その際、第1および/または第2の選択のもう一方は、CD4+細胞を富化することを含む。一部の態様では、該方法は、CD4+細胞を富化または選択するため、およびCD8+/CD28+、CD8+/CD62L+、CD8+/CCR7+、CD8+/CD127+またはCD8+/CD27+である細胞亜集団を富化または選択するために行われる。一部の態様では、第1の選択は、CD8+細胞を富化することを含み、第2の選択は、CD4+細胞を富化することを含み、その際、CD8+細胞が富化された細胞を含む第1の選択は、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化すること、またはCD28、CD62L、CCR7、CD127もしくはCD27であるマーカーを発現する細胞を富化することをさらに含むことによって、CD4+細胞およびセントラルメモリーT(TCM)細胞またはCD28、CD62L、CCR7、CD127もしくはCD27であるマーカーを発現している細胞を富化されたCD8+を含有する培養開始組成物のような組成物が生成する。一部の態様では、第1の選択は、CD4+細胞を富化することを含み、第2の選択は、CD8+細胞を富化することを含み、その際、CD8+細胞が富化された細胞を含む第2の選択は、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することまたはCD28、CD62L、CCR7、CD127もしくはCD27であるマーカーを発現する細胞を富化することをさらに含むことによって、CD4+細胞、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞またはCD28、CD62L、CCR7、CD127もしくはCD27であるマーカーを発現している細胞が富化されたCD8+を含有する培養開始組成物のような組成物が生成する。
【0210】
CD4+細胞またはその亜集団とCD8+細胞またはその亜集団との培養開始比を達成するために細胞亜集団のさらなる富化を伴う一部のそのような態様では、1種または複数種のカラムマトリックスの吸着能は、対象からの出発試料中のそれぞれのCD4+またはCD8+親集団の細胞頻度と比較した、亜集団の頻度、すなわち休止細胞、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞またはCD28、CD62L、CCR7、CD127もしくはCD27であるマーカーを発現している細胞が富化されたCD4+またはCD8+細胞の頻度における差を説明するように調整される。対象における様々な細胞集団の相対レベルまたは頻度は、そのような集団または亜集団に存在する1種または複数種のマーカーの表面発現を評価することに基づき決定することができる。親和性に基づく方法、例えば免疫親和性に基づく方法による検出のような、表面マーカーまたはタンパク質の発現レベルを評価するためのいくつかの周知の方法が、例えば細胞表面タンパク質の状況では、フローサイトメトリーによって使用され得る。
【0211】
例示的な一態様では、試料は、CD4+およびCD8+/CD62L+細胞が富化されて、CD4+とCD8+との比1:1が得られる。この例示的な態様では、第1の選択は、試料中に存在することが公知であるCD4+細胞とCD8+/CD62L+細胞との相対頻度に関して調整された吸着能を有するカラムを使用して、またはそのような試料中にあると概ね推定される比を使用して、CD8+細胞を富化することを含むことができる。例えば、ヒト対象から収集されたCD8+細胞のCD62L+亜集団は、時に、CD8+ T細胞の合計画分の約25%の可能性がある。例えば、Maldonado, Arthritis Res Ther. 2003; 5(2): R91-R96を参照されたい。そのような一態様では、カラムは、CD4+細胞と、さらにCD62L+細胞を含むCD8+亜集団との1:1の培養開始比を生成させるために、CD4+細胞よりも4倍多いCD8+細胞を収集するように配列することができる。したがって、各選択カラムについて類似の吸着能および効率を想定して、CD8+カラムは、CD4選択カラムまたはCD62L選択カラムよりも約またはおよそ4倍大きいことができる。カラムのサイズは、予想される収率について調整することもできる。例えば、各カラムが80%だけ効率的ならば、各カラムのサイズは、その後の各選択の効率を説明するように調整することができる。
【0212】
例えば所望のまたは選ばれた培養開始組成物は、200×106個のCD4+細胞および200×106個のCD8+/CD62L+細胞を含有する組成物であり得る。この例では、上に提示した比を想定して、富化されるべき試料は、少なくともまたは約200×106個のCD4+細胞および少なくともまたは約800×106個のCD8+細胞(そのおよそ25%(200×106個)は、CD62L+でもあり得る)を含有することができる。選択マトリックス各2mLが、約またはおよそ細胞200×106個を富化することができると想定して、選択マトリックス8mLを有するCD8選択カラムは、約またはおよそ800×106個のCD8+細胞と結合することができ、一方で通過画分は、CD4選択カラムに通過する。選択マトリックス2mLを有するCD4選択カラムは、約またはおよそ200×106個のCD4+細胞と結合することができる。CD8+細胞は、CD62L選択カラム中にCD8+細胞を溶出することによって、CD62Lをさらに富化することができる。この例示的な態様では、CD62L選択カラムは、選択マトリックス2mLを収容することができ、したがって、約またはおよそ200×106個のCD8+/CD62L+細胞を富化する。CD4およびCD8/CD62Lカラムから、培養槽内に溶出することにより、開始培養組成物または約もしくはおよそ1:1の培養開始比を有する組成物を得ることができる。
【0213】
別の例示的な態様では、試料は、CD4+およびCD8+/CCR7+細胞が富化されて、1:1のCD4+とCD8+との比がもたらされる。この例示的な態様では、第1の選択は、試料中に存在することが公知であるCD8+/CCR7+細胞に対するCD4+細胞の相対頻度に関して調整された吸着能を有するカラムを使用して、またはそのような試料中にあると概ね推定される比を使用して、CD8+細胞を富化することを含むことができる。例えば、ヒト対象から収集されたCD8+細胞のCCR7+亜集団は、時に、CD8+ T細胞の合計画分の約60%であり得る。例えばChen, Blood. 2001 Jul 1;98(1):156-64を参照されたい。カラムは、1:1の培養開始比を生成するために、CD4+細胞よりも31/3倍多いCD8+細胞を収集するように配列することができる。各選択カラムについて類似の吸着能および効率を想定して、CD8+カラムは、CD4選択カラムまたはCCR7選択カラムよりも約またはおよそ31/3倍大きいことができる。カラムのサイズは、予想される収率について調整することもできる。例えば、各カラムが80%だけ効率的ならば、各カラムのサイズは、その後の各選択の効率を説明するように調整することができる。
【0214】
例えば、所望の開始培養物は、200×106個のCD4+細胞および200×106個のCD8+/CCR7+細胞を含有することができる。この例では、上に提示された比を想定して、富化されるべき試料は、少なくとも200×106個のCD4+細胞および少なくともまたは約6.6×106個のCD8+細胞を含有することができ、そのおよそ60%(200×106個)は、CCR7+でもあり得る。選択マトリックスの各2mLが200×106個の細胞を富化することができると想定すると、選択マトリックス31/3mLを有するCD8選択カラムは、約またはおよそ6.6x106個のCD8+細胞と結合することができ、一方で通過画分は、CD4選択カラムに通過する。選択マトリックス2mLを有するCD4選択カラムは、約またはおよそ200×106個のCD4+細胞と結合することができる。CCR7選択カラム中にCD8+細胞を溶出することによって、CD8+細胞からCD62Lがさらに富化されることができる。この例示的な態様では、CCR7選択カラムは、選択マトリックス1mLを収容することができ、したがって、約またはおよそ200×106個のCD8+/CCR7+細胞を富化する。CD4およびCCCR7カラムは、培養槽内に溶出することができ、約もしくはおよそ200×106個のCD4+細胞および約もしくはおよそ200×106個のCD8+/CCR7+細胞、または1:1の培養開始比を含む開始培養物が得られる。
【0215】
富化または選択された細胞を含有する、生成した組成物の所望または選ばれた培養開始比、各亜集団の予想される頻度、各選択カラムの様々な効率、および技術者の水準の範囲内の他の要因に応じて、上記例証を考慮して、第1および/または第2および/または第3の選択に適切な容積、直径または数のアフィニティマトリックスクロマトグラフィーカラムを経験的に選択または選ぶことは、技術者の水準の範囲内である。
【0216】
B. 単離された細胞のインキュベーション
一部の態様では、提供された方法は、本明細書における方法に従って単離された集団のような単離された細胞および細胞集団をインキュベートするための1つまたは複数の様々な段階、例えば単離されたCD4+ T細胞集団、例えば未分画CD4+ T細胞集団またはその亜集団、および単離されたCD8+ T細胞集団、例えば、単離された未分画CD8+ T細胞集団またはその亜集団をインキュベートするための段階を含む。一部の態様では、細胞集団は、培養開始組成物中でインキュベートされる。
【0217】
複数の単離された細胞集団、例えば、CD4+細胞集団およびCD8+細胞集団(例えば、未分画またはその亜集団)は、通常、同じユニット、チャンバー、ウェル、カラム、チューブ、チュービングセット、バルブ、バイアル、培養皿、バッグ、または細胞を培養もしくは栽培するための他の容器のような、同じ培養槽内の培養開始組成物中に組み合わされた細胞集団と共にインキュベートされる。
【0218】
一部の局面では、細胞集団または細胞型は、培養開始組成物中に、例えば、インキュベーションおよび/もしくは操作段階の後に特定の所望のアウトプット比を、またはそのような所望のアウトプット比の許容誤差の特定の範囲内である比を達成するように設計された、あるいは特定のパーセンテージの時間でそうするように設計された培養開始比、例えばCD4+細胞とCD8+細胞との比で存在する。アウトプット比は、例えば、患者に、例えば養子細胞療法により投与したときに1つまたは複数の治療効果を達成するために最適な比であり得る。一部の局面では、培養開始比は、経験的に、例えば本明細書記載の決定法を使用して決定されて、例えば特定の状況で所望のアウトプット比を達成するために最適な培養開始比が決定される。
【0219】
インキュベーション段階は、刺激条件、例えば集団中の細胞の増殖、増大、活性化、および/もしくは生存を誘導するように、抗原曝露を模倣するように、ならびに/または遺伝子操作された抗原受容体の導入用のような遺伝子操作用に細胞を予備刺激するように設計された条件の存在下でのインキュベーションによるものを含む、培養、栽培、刺激、活性化、繁殖を含むことができる。
【0220】
条件は、特定の培地、温度、酸素含量、二酸化炭素含量、時間、薬剤、例えば栄養分、アミノ酸、抗生物質、イオン、ならびに/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、および細胞を活性化するように設計された任意の他の薬剤の1つまたは複数を含むことができる。一例では、刺激条件は、1種または複数種の薬剤、例えば、T細胞におけるTCR/CD3細胞内シグナル伝達カスケードを始めるまたは開始するリガンドを含む。そのような薬剤は、TCR成分および/もしくは共刺激受容体、例えば抗CD3、抗CD28、抗4-1BBに特異的な抗体のような、例えばビーズのような固体支持体に結合している抗体、ならびに/または1種もしくは複数種のサイトカインを含むことができる。任意で、増大方法は、培地に抗CD3および/または抗CD28抗体を(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)添加する段階をさらに含み得る。任意で、増大方法は、培地にIL-2および/またはIL-15および/またはIL-7および/またはIL-21を添加する段階をさらに含み得る(例えばその際、IL-2の濃度は、少なくとも約10単位/mlである)。
【0221】
一部の局面では、インキュベーションは、Riddellらの米国特許第6,040,177号、Klebanoffら (2012) J Immunother. 35(9): 651-660、Terakuraら (2012) Blood.1:72-82、および/またはWangら (2012) J Immunother. 35(9):689-701に記載されたような技法に従って実施される。
【0222】
一部の態様では、CD4+およびCD8+集団または亜集団のような細胞集団は、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)のような培養開始組成物フィーダー細胞に(例えば結果として生じる細胞集団が、増大されるべき出発集団中の各Tリンパ球について少なくとも約5、10、20、もしくは40個またはそれ以上のPBMCフィーダー細胞を含有するように)添加し;培養物を(例えばT細胞数を増大させるために十分な時間)インキュベートすることによって増大される。一部の局面では、非分裂フィーダー細胞は、ガンマ線照射PBMCフィーダー細胞を含むことができる。一部の態様では、PBMCは、細胞分裂を阻止するために約3000~3600radの範囲のガンマ線が照射される。一部の局面では、フィーダー細胞は、T細胞集団の添加前に培地に添加される。
【0223】
一部の態様では、刺激条件は、ヒトTリンパ球の成長に適切な温度、例えば少なくともセ氏約25度、通常少なくとも約30度、通常セ氏37度または約37度を含む。一部の態様では、培養の間に、セ氏37度からセ氏35度までのような温度の変化が、引き起こされる。任意で、インキュベーションは、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)をフィーダー細胞として添加することをさらに含み得る。LCLは、約6000~10,000radの範囲でガンマ線を照射することができる。LCLフィーダー細胞は、一部の局面では、少なくとも約10:1のLCLフィーダー細胞と出発Tリンパ球との比のような任意の適切な量で提供される。
【0224】
態様では、抗原特異的なCD4+およびCD8+集団は、ナイーブTリンパ球または抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することによって得ることができる。例えば、抗原特異的T細胞系またはクローンは、感染した対象からT細胞を単離し、該細胞をサイトメガロウイルス抗原でインビトロ刺激することによって、同抗原に対して生成させることができる。ナイーブT細胞も使用され得る。
【0225】
暫定的評価および調整
一部の態様では、該方法は、インキュベーションの間の時間のような、インキュベーションまたは培養の開始後の時間での、細胞または細胞を含有する組成物の評価および/または調整を含む。評価は、細胞を含有する組成物または槽の1つまたは複数の測定を行うこと、例えば増殖速度、生存度、表現型、例えばタンパク質もしくはポリヌクレオチドのような1種もしくは複数種の表面マーカーもしくは細胞内マーカーの発現について細胞を評価すること、ならびに/あるいは温度、培地成分、酸素含量、もしくは二酸化炭素含量、および/または1種もしくは複数種の因子、薬剤、成分、および/もしくはサブタイプを含めた細胞型の存在もしくは不在もしくは量もしくは相対量について組成物または槽を評価することを含むことができる。一部の態様において評価は、インキュベートされている組成物または槽内の、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞のような複数の、例えば2つの細胞型の中間の比を決定することを含む。一部の局面では、評価は、自動化された様式で、例えば本明細書記載のデバイスを使用して行われ、かつ/またはインキュベーションの間に特定の時点で実施されるべき時間よりも先に設定される。一部の局面では、2つの細胞型の決定された暫定比のような評価の結果は、1つまたは複数の細胞型の添加または除去のような調整を行うべきであることを示す。
【0226】
調整は、温度、インキュベーションまたはその段階が実施される長さ(時間)(インキュベーション期間)、インキュベートされている組成物中の1種または複数種の成分の補充、添加および/または除去、例えば培地または緩衝液またはその成分、薬剤、例えば栄養分、アミノ酸、抗生物質、イオン、および/または刺激因子、例えばサイトカイン、ケモカイン、抗原、結合パートナー、融合タンパク質、組換え可溶性受容体、または細胞もしくは細胞型もしくは細胞集団のような、任意の細胞培養因子またはパラメーターを調整することを含むことができる。一部の局面では、様々な成分の除去もしくは添加または他の調整は、例えば本明細書記載のデバイスまたはシステムを使用して、自動化された様式で実施される。一部の態様では、システムは、暫定の評価からの特定の読み出しに基づき調整が自動的に開始されるようにプログラムされる。例えば、場合によっては、システムまたはデバイスは、特定の時間に1つまたは複数の評価を実施するようにプログラムされ;そのような場合、システムまたはデバイスは、1つの細胞型と別の細胞型との特定の比のような、そのような評価の特定の結果が、1つまたは複数の細胞型の添加のような特定の調整を開始するように、さらにプログラムすることができる。
【0227】
一部の局面では、調整は、本明細書記載の1つまたは複数のデバイスまたはシステムなどにおける、無菌性を維持しながら成分を添加または除去するように設計された入力バルブおよび/または除去バルブなどによる、細胞および組成物を含む閉鎖環境を破壊しない方法での添加または除去によって実施される。
【0228】
特定の一態様では、CD4+ T細胞とCD8+ T細胞との暫定比は、インキュベーション期間中に評価される。一部の態様では、評価は、3日から5日の間のような1、2、3、4、5、6、または7日後に、および/または全ての細胞が細胞周期中にあるもしくはそれが疑われる時点などに実施される。一部の局面では、そのように決定された暫定の比は、CD4+ T細胞の単離された集団またはCD8+ T細胞の単離された集団(例えば、セントラルメモリーCD8+ T細胞のような亜集団)の細胞のようなCD4+ T細胞またはCD8+ T細胞が、培養槽内またはインキュベートされている組成物に添加または富化されるべきであることを示す。したがって、一部の局面では、評価の後に、そのような添加または除去、典型的には添加が続く。一部の局面では、複数の評価および可能な調整は、インキュベーション経過にわたり、例えば反復様式で実施される。
【0229】
例えば遺伝子操作された抗原受容体を導入するために細胞が操作される一部の態様では、1種または複数種の刺激剤の存在下でのインキュベーションが操作期の間に継続する。
【0230】
一部の態様では、細胞は、合計で、または操作前のいずれかに、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、もしくは14日間、または約その日数インキュベートされる。
【0231】
C. 操作、操作された抗原受容体、および操作された細胞
一部の態様では、該方法は、養子療法の状況で有用な受容体、例えば抗原受容体のような分子の発現のための組換え遺伝子を細胞に導入することのような、単離および/またはインキュベートされた細胞の遺伝子操作を含む。
【0232】
導入用の遺伝子の中に、移入された細胞の生存度および/または機能を促進することなどによって治療法の有効性を改善するための遺伝子;例えば、インビボ生存または局在性を評価するために、細胞の選択および/または評価用の遺伝子マーカーを提供するための遺伝子;例えば細胞をインビボの負の選択に感受性にすることによって安全性を改善するための遺伝子が含まれ、それは、Lupton S. D.ら、Mol. and Cell Biol., 11:6 (1991);およびRiddellら、Human Gene Therapy 3:319-338 (1992)によって記載されており;優性の正の選択マーカーを負の選択マーカーと融合することに由来する二機能性選択融合遺伝子の使用を記載している、Luptonらによる公報PCT/US91/08442およびPCT/US94/05601も参照されたい。これは、公知の技法(例えばRiddell et al., 米国特許第6,040,177号、14~17欄参照)、または本開示に基づき当業者に明らかであろうその変形に従って実施することができる。
【0233】
操作は、通常、遺伝子操作された抗原受容体の発現のための1種または複数種の遺伝子の導入を含む。そのような抗原受容体の中に、遺伝子操作されたT細胞受容体(TCR)およびそれらの成分、ならびにキメラ抗原受容体(CAR)のような機能的非TCR抗原受容体が含まれる。
【0234】
一部の態様において抗原受容体は、提供された方法および組成物でターゲティングするための本明細書記載のリガンドを含めた、がんもしくは他の疾患または状態のようなターゲティングされるべき細胞または疾患のリガンドと特異的に結合する。例示的な抗原は、オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、L1-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、およびB型肝炎ウイルス表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、0EPHa2、ErbB2、3、もしくは4、FBP、胎児型アセチルコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-アルファ、IL-13R-アルファ2、kdr、カッパ軽鎖、ルイスY、L1-細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、がん胎児性抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、胎児性がん抗原(CEA)、前立腺特異抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、およびMAGE A3ならびに/またはビオチン化分子、ならびに/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子である。
【0235】
抗原受容体
一態様では、操作抗原受容体はCARである。CARは、通常、1種または複数種の細胞内シグナル伝達成分と連結した細胞外リガンド結合ドメインを含む遺伝子操作された受容体を含む。そのような分子は、典型的には、天然抗原受容体を経由したシグナル、および/または共刺激受容体と一緒にそのような受容体を経由したシグナルを模倣または近似する。
【0236】
一部の態様では、CARは、養子療法によってターゲティングされるべき特定の細胞型において発現されるマーカー、例えば、ガンマーカーのような、特定のマーカーに対して特異性を有するように構築される。これは、一部の局面では、CARの細胞外部分に、1種または複数種の抗原結合性フラグメント、ドメイン、もしくは部分、または1種もしくは複数種の抗体可変ドメインおよび/もしくは抗体分子のような、1種または複数種の抗原結合分子を含めることによって達成される。一部の態様では、CARは、モノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)に由来する単鎖抗体フラグメント(scFv)のような、抗体分子の1つまたは複数の抗原結合性部分を含む。
【0237】
一部の態様では、CARは、本明細書記載または当技術分野において公知の任意のターゲット抗原のような、腫瘍細胞またはがん細胞のような、ターゲティングされるべき細胞または疾患の細胞表面抗原と特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含む。
【0238】
一部の態様では、腫瘍抗原または細胞表面分子は、ポリペプチドである。一部の態様では、腫瘍抗原または細胞表面分子は、同じ組織の非腫瘍細胞と比較して、腫瘍細胞上に選択的に発現または過剰発現される。
【0239】
一部の態様では、CARは、病原体特異抗原と結合する。一部の態様では、CARは、ウイルス抗原(例えば、HIV、HCV、HBVなど)、細菌抗原、および/または寄生虫抗原に特異的である。
【0240】
一部の局面では、抗原特異的結合または認識成分は、1つまたは複数の膜貫通ドメインおよび細胞内シグナル伝達ドメインと連結される。一部の態様では、CARは、CARの細胞外ドメインと融合された膜貫通ドメインを含む。一態様では、CARにおけるドメインの1つと自然に関連する膜貫通ドメインが使用される。場合によっては、膜貫通ドメインは、同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインへのそのようなドメインの結合を回避するために、アミノ酸置換によって選択または改変されて、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用が最小限にされる。
【0241】
一部の態様において膜貫通ドメインは、天然または合成起源のいずれかに由来する。起源が天然の場合、一部の局面においてドメインは、任意の膜結合型または膜貫通タンパク質に由来する。膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ、ベータまたはゼータ鎖、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154に由来する(すなわち、少なくともそれらの膜貫通領域を含む)領域を含む。あるいは、一部の態様において膜貫通ドメインは、合成である。一部の局面では、合成膜貫通ドメインは、ロイシンおよびバリンのような疎水性残基を主に含む。一部の局面では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンの三つ組は、合成膜貫通ドメインの各末端に見られる。
【0242】
一部の態様では、短鎖オリゴペプチドまたはポリペプチドリンカー、例えばグリシンおよびセリンを含むリンカーのような2から10アミノ酸長の間のリンカー、例えばグリシン-セリン二つ組が存在し、CARの膜貫通ドメインと細胞質シグナル伝達ドメインとの間の結合を形成する。
【0243】
CARは、一般的に1種または複数種の細胞内シグナル伝達成分を含む。一部の態様では、CARは、T細胞活性化および細胞傷害性を媒介するTCR CD3+鎖、例えばCD3ゼータ鎖のようなTCR複合体の細胞内成分を含む。したがって、一部の局面では、抗原結合分子は、1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールと連結される。一部の態様では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、および/または他のCD膜貫通ドメインを含む。一部の態様では、CARは、Fc受容体γ、CD8、CD4、CD25、またはCD16のような1種または複数種の追加的な分子の一部をさらに含む。例えば、一部の局面では、CARは、CD3-ゼータ(CD3-ζ)またはFc受容体γとCD8、CD4、CD25またはCD16との間のキメラ分子を含む。
【0244】
一部の態様では、CARのライゲーションの際に、CARの細胞質ドメインまたは細胞内シグナル伝達ドメインは、免疫細胞、例えば細胞を発現するように操作されたT細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つを活性化する。例えば、状況によっては、CARは、細胞傷害活性、またはサイトカインもしくは他の因子の分泌のようなTヘルパー活性のような、T細胞の機能を誘導する。一部の態様では、抗原受容体成分または共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインの短縮された部分。そのような短縮された部分は、一部の局面では、例えばそれがエフェクター機能シグナルを伝達するならば、無傷の免疫刺激鎖の代わりに使用される。一部の態様では、1種または複数種の細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞受容体(TCR)の細胞質配列を含み、一部の局面では、自然状況でそのような受容体と協調して作用して、抗原受容体の会合後にシグナル伝達を開始する共受容体の細胞質配列、および/またはそのような分子の任意の誘導体もしくは変異体、および/または同じ機能的能力を有する任意の合成配列も含む。
【0245】
天然TCRの状況で、完全活性化は、概して、TCRを経たシグナル伝達だけでなく、共刺激シグナルも必要とする。したがって、一部の態様では、完全活性化を促進するために、二次または共刺激シグナルを生成するための成分もCARに含まれる。T細胞活性化は、一部の局面では、2つのクラスの細胞質シグナル伝達配列、すなわちTCRを経由した抗原依存性一次活性化を開始する配列(一次細胞質シグナル伝達配列)、および抗原非依存的に作用して二次または共刺激シグナルを提供する配列(二次細胞質シグナル伝達配列)によって媒介されると記載されている。一部の局面では、CARは、そのようなシグナル伝達成分の一方または両方を含む。
【0246】
一次細胞質シグナル伝達配列は、一部の局面では、刺激的または抑制的のいずれかでTCR複合体の一次活性化を調節することができる。刺激的に作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、免疫受容活性化チロシンモチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含み得る。ITAM含有一次細胞質シグナル伝達配列の例は、TCRゼータ、FcRガンマ、FcRベータ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CDS、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来する配列を含む。一部の態様では、CARにおける細胞質シグナル伝達分子は、CD3ゼータに由来する細胞質シグナル伝達ドメイン、その部分、または配列を含む。
【0247】
一部の態様では、CARは、CD28、4-1BB、OX40、DAP10、およびICOSのような共刺激受容体のシグナル伝達ドメインおよび/または膜貫通部分を含む。
【0248】
特定の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3細胞内ドメインと連結されるCD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3細胞内ドメインと連結したCD28およびCD137キメラ共刺激ドメインを含む。一部の態様では、CARは、形質導入マーカー(例えばtEGFR)も含むことができる。一部の態様では、CD8+細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4+ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインと同じである。一部の態様では、CD8+細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4+ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインと異なる。
【0249】
一部の態様では、CARは、細胞質部分において活性化ドメイン、例えば一次活性化ドメインと一緒に2つ以上の共刺激ドメインを包含する。一例は、CD3-ゼータ、CD28、および4-1BBの細胞内成分を含む受容体である。
【0250】
CARならびにその産生および導入は、例えば、公開された特許開示WO200014257、US6451995、US2002131960、US7446190、US8252592、EP2537416、US2013287748、およびWO2013126726によって記載されたもの、ならびに/またはSadelainら、Cancer Discov. 2013 April; 3(4): 388-398; Davilaら (2013) PLoS ONE 8(4): e61338; Turtleら、Curr. Opin. Immunol., 2012 October; 24(5): 633-39; Wuら、Cancer, 2012 March 18(2): 160-75によって記載されたものを含むことができる。
【0251】
一部の態様では、T細胞は、組換えT細胞受容体が改変される。一部の態様では、組換えTCRは、抗原に、一般的には腫瘍特異抗原、自己免疫疾患もしくは炎症疾患に関連する特定の細胞型に発現される抗原、またはウイルス病原体もしくは細菌病原体に由来する抗原のようなターゲット細胞上に存在する抗原に、特異的である。
【0252】
一部の態様では、T細胞は、天然T細胞からクローニングされたT細胞受容体(TCR)を発現するように操作される。一部の態様では、ターゲット抗原(例えばがん抗原)に対する高親和性T細胞クローンが同定され、患者から単離され、細胞内に導入される。一部の態様では、ターゲット抗原に対するTCRクローンが、ヒト免疫系遺伝子(例えばヒト白血球型抗原系またはHLA)を用いて操作されたトランスジェニックマウスから生成されている。例えば、腫瘍抗原を参照されたい(例えば、Parkhurst et al. (2009) Clin Cancer Res. 15:169-180およびCohen et al. (2005) J Immunol. 175:5799-5808を参照されたい。一部の態様では、ターゲット抗原に対するTCRを単離するために、ファージディスプレイが使用される(例えば、Varela-Rohena et al. (2008) Nat Med. 14:1390-1395およびLi (2005) Nat Biotechnol. 23:349-354を参照されたい。
【0253】
一部の態様では、T細胞クローンが得られた後、TCRアルファ鎖およびベータ鎖が単離され、遺伝子発現ベクターにクローニングされる。一部の態様では、TCRアルファ遺伝子およびベータ遺伝子が、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドを介して連結されることにより、両方の鎖が共発現である。一部の態様では、TCRの遺伝的移入は、レトロウイルスもしくはレンチウイルスベクターを介して、またはトランスポゾンを介して果たされる(例えば、Baum et al. (2006) Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy. 13:1050-1063; Frecha et al. (2010) Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy. 18:1748-1757; an Hackett et al. (2010) Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy. 18:674-683を参照されたい。
【0254】
一部の態様では、遺伝子移入は、最初にT細胞の成長を刺激し、次に、活性化した細胞に形質導入し、臨床適用に十分な数まで培養して増大させることによって果たされる。
【0255】
状況によっては、刺激因子(例えばリンホカインまたはサイトカイン)の過剰発現は、対象に有毒であり得る。したがって、状況によっては、操作された細胞は、例えば養子免疫治療における投与時に、細胞をインビボで負の選択に感受性にする遺伝子セグメントを含む。例えば一部の局面では、細胞は、該細胞が投与される患者のインビボ状態における変化の結果として該細胞を排除できるように操作される。負の選択が可能な表現型は、投与された薬剤、例えば化合物に対する感受性を付与する遺伝子の挿入に起因し得る。負の選択が可能な遺伝子は、ガンシクロビル感受性を付与する単純ヘルペスウイルスI型チミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子(Wigler et al., Cell II :223, I977);細胞性ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞性アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、細菌性シトシンデアミナーゼを含む(Mullen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 89:33 (1992))。
【0256】
一部の局面では、細胞は、炎症性サイトカイン、例えばIL-2、IL-12、IL-7、IL-15、IL-21のようなサイトカインの発現を促進するようにさらに操作される。
【0257】
遺伝子操作された成分の導入
遺伝子操作された成分、例えば抗原受容体、例えばCARの導入のための様々な方法は、周知であり、提供された方法および組成物で使用され得る。例示的な方法は、ウイルス、例えばレトロウイルスもしくはレンチウイルスの形質導入、トランスポゾン、およびエレクトロポレーションを介した方法を含む、受容体をコードする核酸の移入のための方法を含む。
【0258】
一部の態様では、組換え核酸は、例えばシミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するベクターのような組換え感染性ウイルス粒子を使用して細胞内に移入される。一部の態様では、組換え核酸は、ガンマレトロウイルスベクターのような、組換えレンチウイルスベクターまたはレトロウイルスベクターを使用してT細胞内に移入される(例えば、Koste et al. (2014) Gene Therapy 2014 Apr 3. doi: 10.1038/gt.2014.25; Carlens et al. (2000) Exp Hematol 28(10): 1137-46; Alonso-Camino et al. (2013) Mol Ther Nucl Acids 2, e93; Park et al., Trends Biotechnol. 2011 November; 29(11): 550-557を参照されたい。
【0259】
一部の態様では、レトロウイルスベクターは、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、骨髄増殖性肉腫ウイルス(MPSV)、マウス胚性幹細胞ウイルス(MESV)、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)、脾フォーカス形成ウイルス(SFFV)、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)に由来するレトロウイルスベクターは、長い末端反復配列(LTR)を有する。大部分のレトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスに由来する。一部の態様では、レトロウイルスは、任意の鳥類または哺乳類細胞起源に由来するものを含む。レトロウイルスは、典型的には、ヒトを含めたいくつかの種の宿主細胞に感染可能であることを意味する両種指向性である。一態様では、発現されるべき遺伝子は、レトロウイルスのgag、polおよび/またはenv配列を置き換える。いくつかの例示的なレトロウイルスシステムが記載されている(例えば、米国特許第5,219,740号;同第6,207,453号;同第5,219,740号;Miller and Rosman (1989) BioTechniques 7:980-990; Miller, A. D. (1990) Human Gene Therapy 1:5-14; Scarpa et al. (1991) Virology 180:849-852; Burns et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:8033-8037;およびBoris-Lawrie and Temin (1993) Cur. Opin. Genet. Develop. 3:102-109。
【0260】
レンチウイルス形質導入法が公知である。例示的な方法は、例えば、Wangら (2012) J. Immunother. 35(9): 689-701; Cooperら (2003) Blood. 101:1637-1644; Verhoeyenら (2009) Methods Mol Biol. 506: 97-114;およびCavalieriら (2003) Blood. 102(2): 497-505に記載されている。
【0261】
一部の態様では、組換え核酸は、エレクトロポレーションによりT細胞内に移入される(例えば、Chicaybam et al, (2013) PLoS ONE 8(3): e60298およびVan Tedeloo et al. (2000) Gene Therapy 7(16): 1431-1437を参照されたい)。一部の態様では、組換え核酸は、遺伝子転位を介してT細胞に移入される(例えば、Manuri et al. (2010) Hum Gene Ther 21(4): 427-437; Sharma et al. (2013) Molec Ther Nucl Acids 2, e74;およびHuang et al. (2009) Methods Mol Biol 506: 115-126を参照されたい)。免疫細胞において遺伝物質を導入および発現させる他の方法は、リン酸カルシウムトランスフェクション(例えば、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York. N.Y.に記載)、プロトプラスト融合、陽イオンリポソーム媒介トランスフェクション;タングステン粒子促進微粒子銃(Johnston, Nature, 346: 776-777 (1990));およびリン酸ストロンチウムDNA共沈(Brash et al., Mol. Cell Biol., 7: 2031-2034 (1987))を含む。
【0262】
一部の態様では、CD4+ Tリンパ球およびCD8+ Tリンパ球のそれぞれに同じCARが導入される。一部の態様では、CD4+ Tリンパ球およびCD8+ Tリンパ球のそれぞれに異なるCARが導入される。一部の態様では、これらの集団のそれぞれにおけるCARは、同じ抗原と特異的に結合する抗原結合分子を有する。一部の態様では、これらの集団のそれぞれにおけるCARは、異なる分子と結合する。一部の態様では、これらの集団のそれぞれにおけるCARは、異なる細胞シグナル伝達モジュールを有する。一部の態様では、CD4+ Tリンパ球またはCD8+ Tリンパ球のそれぞれは、形質導入の前にナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞またはエフェクター細胞に選別されている。
【0263】
他の態様では、例えばインキュベーション段階の間にインビトロまたはエクスビボで培養された腫瘍浸潤リンパ球および/またはT細胞のような細胞、例えばT細胞は、組換え受容体を発現するように操作されず、それどころか、所望の抗原に特異的な天然の抗原受容体を含み、特定の抗原特異性を有する細胞の増大を促進する。例えば、一部の態様では、細胞は、腫瘍特異的T細胞、例えば自己腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の単離により、養子細胞療法用に産生される。自己腫瘍浸潤リンパ球を使用したヒト腫瘍の直接ターゲティングは、場合によっては腫瘍退縮を媒介することができる(Rosenberg SA, et al.(1988) N Engl J Med. 319:1676-1680を参照)。一部の態様では、リンパ球は切除された腫瘍から取り出される。一部の態様では、そのようなリンパ球は、インビトロで増大される。一部の態様では、そのようなリンパ球は、リンホカイン(例えばIL-2)と共に培養される。一部の態様では、そのようなリンパ球は、同種腫瘍でも自己正常細胞でもなく、自己腫瘍細胞の特異的溶解を媒介する。
【0264】
一部の局面では、インキュベーションおよび/または操作する段階および/または該方法は、概して、所望のアウトプット比(またはそのような比から許容誤差もしくは許容差内である比)を生じ、または該方法が行われる時間の特定パーセンテージ内でそうする。
【0265】
D. 凍結保存
一部の態様では、提供された方法は、単離、インキュベーションおよび/または操作の前または後のいずれかで細胞を凍結、例えば凍結保存するための段階を含む。一部の態様では、凍結およびその後の解凍段階は、細胞集団中の顆粒球およびある程度まで単球を除去する。一部の態様では、細胞は、例えば血漿および血小板を除去するための洗浄段階の後に、凍結溶液中に懸濁される。一部の局面において任意の多様な公知の凍結溶液およびパラメーターが、使用され得る。一例は、20% DMSOおよび8%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBSまたは他の適切な細胞凍結媒体を使用することを伴う。次に、これは、DMSOおよびHSAの終濃度がそれぞれ10%および4%となるように媒体で1:1に希釈される。次に、細胞は、分速1°で-80℃に凍結され、液体窒素貯蔵タンクの気相中で貯蔵される。
【0266】
II. キットおよびシステム
提供された方法を行うのに有用なシステム、装置、およびキットも提供される。一例では、該方法の単離、細胞調製、分離、例えば密度、親和性、1種もしくは複数種の成分に対する感受性、もしくは他の性質に基づく分離、洗浄、加工、インキュベーション、培養、および/または製剤化段階の1つまたは複数を実施する単一のシステムが提供される。一部の局面では、システムは、これらの段階のそれぞれを閉鎖または無菌環境中で実施するために、例えば誤差、使用者の取り扱いおよび/または汚染を最小限にするために、使用される。一例では、システムは、国際特許出願公開番号WO2009/072003、またはUS20110003380A1に記載されているようなシステムである。
【0267】
一部の態様では、システムまたは装置は、単離、加工、操作、および製剤化段階の1つまたは複数、例えば全てを、統合型もしくは自己充足型システムにおいて、および/または自動化されたもしくはプログラム可能な様式で、実施する。一部の局面では、システムまたは装置は、システムまたは装置と通信しているコンピュータおよび/またはコンピュータプログラムを含み、それは、加工、単離、操作、および製剤化段階の様々な局面をユーザにプログラム、制御、その結果を評価、および/または調整可能にする。
【0268】
提供された方法を実施するためのキットも提供される。一部の態様では、キットは、該方法の単離、例えば免疫親和性に基づく分離段階のために、一般的に固体支持体とカップリングした抗体または他の結合パートナーを含む。
【0269】
一部の態様では、キットは、磁気ビーズと結合した、正および負の選択用の抗体を含む。一態様では、キットは、PBMC試料のような試料から開始して、キットと共に提供された1種または複数種の抗体によって認識される第1の表面マーカーの発現に基づき選択すること、陽性および陰性画分の両方を保持することによって選択を実施するための説明書を含む。一部の局面では、説明書は、それに由来する陽性および/または陰性画分から開始して、例えば組成物を封じ込めた環境および/または同じ分離槽内に維持しながら、1つまたは複数の追加的な選択段階を実施するための説明書をさらに含む。
【0270】
一態様では、キットは、磁気ビーズと結合した抗CD4、抗CD14、抗CD45RA、抗CD14、および抗CD62L抗体を含む。一態様では、キットは、PBMC試料のような試料から開始して、CD4の発現に基づき選択し、陽性および陰性画分の両方を保持し、陰性画分に対して、該画分を、抗CD14抗体、抗CD45RA抗体を使用する負の選択および抗CD62L抗体を使用する正の選択にいずれかの順序でさらに供することによって、選択を実施するための説明書を含む。あるいは、成分および説明書は、本明細書記載の任意の分離の態様に従って調整される。
【0271】
一部の態様では、キットは、選択段階によって単離された集団の細胞を培養、栽培、または加工槽に移動させ、一方で細胞を自己充足型システム中に維持するための説明書をさらに含む。一部の態様では、キットは、単離された異なる細胞を特定の比で移動させるための説明書を含む。
【0272】
III. 細胞、組成物、および投与方法
細胞、細胞集団、ならびに提供された方法によって産生される該細胞および集団を含有する組成物(薬学的組成物および治療用組成物を含む)も提供される。対象、例えば患者に細胞および組成物を投与するための方法、例えば治療法も提供される。
【0273】
細胞、集団、および組成物を投与する方法、ならびにがんを含む疾患、状態、および障害を治療または予防するためのそのような細胞、集団、および組成物の使用が、提供される。一部の態様では、細胞、集団、および組成物は、例えば養子T細胞療法のような養子細胞療法により処置されるべき特定の疾患または状態を有する対象または患者に投与される。一部の態様では、操作された組成物ならびにインキュベーションおよび/または他の加工段階の後の産生終了組成物のような、提供された方法によって調製された細胞および組成物は、疾患または状態を有するまたはそのリスクのある対象のような、対象に投与される。一部の局面では、それによって該方法は、例えば操作されたT細胞によって認識される抗原を発現しているがんにおける全身腫瘍組織量を減らすことによって、疾患または状態の1つまたは複数の症状を処置する、例えば寛解させる。
【0274】
養子細胞療法用の細胞の投与のための方法は、公知であり、提供された方法および組成物に関連して使用され得る。例えば、養子T細胞療法の方法は、例えば、Gruenbergらの米国特許出願公開第2003/0170238号;Rosenbergの米国特許第4,690,915号;Rosenberg (2011) Nat Rev Clin Oncol. 8(10):577-85に記載されている)。例えば、Themeliら (2013) Nat Biotechnol. 31(10): 928-933; Tsukaharaら (2013) Biochem Biophys Res Commun 438(1): 84-9; Davilaら (2013) PLoS ONE 8(4): e61338を参照されたい。
【0275】
一部の態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞が、細胞療法を受ける予定の対象から、またはそのような対象に由来する試料から単離および/または他の方法で調製される、自己移入によって実施される。したがって、一部の局面では、細胞は、対象、例えば処置を必要とする患者に由来し、該細胞は、単離および加工の後に同じ対象に投与される。
【0276】
一部の態様では、細胞療法、例えば養子T細胞療法は、細胞療法を受けるまたは最終的に受ける予定の対象、例えば第1の対象、以外の対象から細胞が単離および/または他の方法で調製される、同種移入によって実施される。そのような態様では、細胞は、次に同じ種の異なる対象、例えば第2の対象に投与される。一部の態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に同一である。一部の態様では、第1および第2の対象は、遺伝的に類似である。一部の態様では、第2の対象は、第1の対象と同じHLAクラスまたはスーパータイプを発現する。
【0277】
一部の態様では、細胞、細胞集団、または組成物が投与される対象、例えば患者は、哺乳類、典型的にヒトのような霊長類である。一部の態様では、霊長類は、サルまたは類人猿である。対象は、男性または女性であることができ、乳児、年少児、若年、成体、および老体対象を含めた任意の適切な年齢であり得る。一部の態様では、対象は、げっ歯類のような非霊長類哺乳類である。
【0278】
そのような方法に使用するための薬学的組成物も提供される。
【0279】
提供された組成物、細胞、方法および使用を用いて処置するための疾患、状態、および障害の中に、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、および黒色腫を含めた腫瘍、ならびにウイルスまたは他の病原体、例えばHIV、HCV、HBV、CMVによる感染および寄生虫病のような感染症が含まれる。一部の態様では、疾患または状態は、腫瘍、がん、悪性腫瘍、新生物、または他の増殖性疾患である。そのような疾患は、非限定的に、白血病、リンパ腫、例えば慢性リンパ性白血病(CLL)、ALL、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、難治性濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、低悪性度B細胞リンパ腫、B細胞悪性腫瘍、結腸がん、肺がん、肝臓がん、乳房がん、前立腺がん、卵巣がん、皮膚(黒色腫を含む)がん、骨のがん、および脳がん、卵巣がん、上皮がん、腎細胞がん、膵臓腺がん、ホジキンリンパ腫、子宮頸がん、結腸直腸がん、神経膠芽腫、神経芽腫、ユーイング肉腫、髄芽腫、骨肉腫、滑膜肉腫、および/または中皮腫を含む。
【0280】
一部の態様では、疾患または状態は、非限定的にウイルス、レトロウイルス、細菌、および原虫感染、免疫不全症、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、BKポリオーマウイルスのような感染症または感染状態である。一部の態様では、疾患または状態は、関節炎、例えば関節リウマチ(RA)、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス(SLE)、炎症性腸疾患、乾癬、強皮症、自己免疫性甲状腺疾患、グレーブス病、クローン病、多発性硬化症、喘息のような自己免疫性もしくは炎症性の疾患もしくは状態、および/または移植に関連する疾患もしくは状態である。
【0281】
一部の態様では、疾患または障害に関連する抗原は、オーファンチロシンキナーゼ受容体ROR1、tEGFR、Her2、L1-CAM、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、およびB型肝炎ウイルス表面抗原、抗葉酸受容体、CD23、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44、EGFR、EGP-2、EGP-4、0EPHa2、ErbB2、3、もしくは4、FBP、胎児型アセチルコリンe受容体、GD2、GD3、HMW-MAA、IL-22R-アルファ、IL-13R-アルファ2、kdr、カッパ軽鎖、ルイスY、L1-細胞接着分子、MAGE-A1、メソテリン、MUC1、MUC16、PSCA、NKG2Dリガンド、NY-ESO-1、MART-1、gp100、がん胎児性抗原、ROR1、TAG72、VEGF-R2、胎児性がん抗原(CEA)、前立腺特異抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD123、CS-1、c-Met、GD-2、およびMAGE A3ならびに/またはビオチン化分子、ならびに/またはHIV、HCV、HBVもしくは他の病原体によって発現される分子からなる群より選択される。
【0282】
一部の態様では、細胞および組成物は、細胞または細胞集団および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む組成物のような、薬学的組成物の形態で対象に投与される。薬学的組成物は、一部の態様では、化学療法剤、例えばアスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、メトトレキサート、パクリタキセル、リツキシマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどのような他の薬学的活性剤または薬学的活性薬を追加的に含む。一部の態様では、薬剤は、塩、例えば薬学的に許容される塩の形態で投与される。適切な薬学的に許容される酸付加塩は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸のような無機酸、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸、例えばp-トルエンスルホン酸のような有機酸に由来する塩を含む。
【0283】
薬学的組成物中の担体の選択は、特定の操作されたCARもしくはTCR、ベクター、またはCARもしくはTCRを発現している細胞によって、およびベクターまたはCARを発現している宿主細胞を投与するために使用される特定の方法によって、一部決定される。したがって、様々な適切な製剤がある。例えば、薬学的組成物は、保存料を含有することができる。適切な保存料は、例えばメチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸ナトリウム、およびベンザルコニウム塩化物を含み得る。一部の局面では、2種以上の保存料の混合物が使用される。保存料またはその混合物は、典型的には全組成物の約0.0001重量%~約2重量%の量で存在する。
【0284】
加えて、一部の局面において緩衝剤が、組成物中に含まれる。適切な緩衝剤は、例えばクエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸カリウム、ならびに様々な他の酸および塩を含む。一部の局面では、2種以上の緩衝剤の混合物が使用される。緩衝剤またはその混合物は、典型的には全組成物の約0.001重量%~約4重量%の量で存在する。投与可能な薬学的組成物を調製するための方法は、公知である。例示的な方法は、例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott Williams & Wilkins; 21st ed. (May 1, 2005)により詳細に記載されている。
【0285】
特定の態様では、薬学的組成物は、シクロデキストリン包接複合体のような包接複合体として、またはリポソームとして製剤化される。リポソームは、宿主細胞(例えばT細胞またはNK細胞)を特定の組織にターゲティングするために役立つことができる。リポソームを調製するために、例えばSzokaら、Ann. Rev. Biophys. Bioeng., 9: 467 (1980)、ならびに米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、および同第5,019,369号に記載された方法のような、多数の方法が利用可能である。
【0286】
一部の態様では、処置されるべき部位の感作の前に、およびその感作を引き起こすために十分な時間で、組成物の送達が起こるように、薬学的組成物は、時間放出、遅延放出、および/または持続放出送達システムを用いる。多くのタイプの放出送達システムが当業者に利用可能であり、公知である。一部の局面においてそのようなシステムは、組成物の反復投与を回避することによって、対象および医師への利便性を高めることができる。
【0287】
一部の態様では、薬学的組成物は、治療有効量または予防有効量のような、疾患または状態を治療または予防するために有効な量の細胞または細胞集団を含む。したがって、一部の態様では、投与方法は、有効量での細胞および集団の投与を含む。一部の態様において治療または予防有効性は、処置された対象の定期的な評価によって監視される。数日以上にわたる反復投与について、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が起こるまで、処置が繰り返される。しかし、他の投与方式が有用であり得、決定されることができる。所望の投与量は、組成物の単一のボーラス投与、組成物の複数のボーラス投与、または組成物の連続注入投与によって送達することができる。
【0288】
一部の態様では、細胞は、一部の局面で、細胞もしくは細胞型の所望の用量もしくは数および/または細胞型の所望の比を含む、所望の投与量で投与される。したがって、細胞の投与量は、一部の態様では、全細胞数(または体重1kgあたりの数)およびCD4+とCD8+との比のような個別の集団またはサブタイプの所望の比に基づく。一部の態様では、細胞の投与量は、個別の集団または個別の細胞型の細胞の所望の合計数(または体重1kgあたりの数)に基づく。一部の態様では、投与量は、所望の全細胞数、所望の比、および個別の集団における所望の全細胞数のような、そのような特徴の組み合わせに基づく。
【0289】
一部の態様では、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞のような、細胞の集団またはサブタイプは、所望のT細胞用量のような、全細胞の所望の用量で、またはその許容差内で投与される。一部の局面では、所望の用量は、所望の細胞数、または細胞が投与される対象の体重1単位あたりの所望の細胞数、例えば細胞数/kgである。一部の局面では、所望の用量は、最小細胞数または体重1単位あたりの最小細胞数以上である。一部の局面では、所望の用量で投与される全細胞の間に、個別の集団またはサブタイプが、所望のアウトプット比(例えばCD4+とCD8+との比)で、またはその近くで、例えばそのような比の特定の許容差または誤差内で存在する。
【0290】
一部の態様では、細胞は、CD4+細胞の所望の用量および/またはCD8+細胞の所望の用量のような、1つまたは複数の個別の細胞集団または細胞サブタイプの所望の用量で、またはその許容差内で投与される。一部の局面では、所望の用量は、サブタイプもしくは集団の所望の細胞数、または細胞が投与される対象の体重1単位あたりのそのような細胞の所望の数、例えば個/kgである。一部の局面では、所望の用量は、集団もしくはサブタイプの最小細胞数以上、または体重1単位あたりの集団もしくはサブタイプの最小細胞数以上である。
【0291】
したがって、一部の態様では、投与量は、全細胞の所望の固定用量および所望の比に基づき、かつ/または個別のサブタイプまたは亜集団の1種もしくは複数種、例えばそれぞれの所望の固定用量に基づく。したがって、一部の態様では、投与量は、T細胞の所望の固定用量もしくは最小用量、およびCD4+細胞とCD8+細胞との所望の比に基づき、かつ/またはCD4+および/もしくはCD8+細胞の所望の固定用量または最小用量に基づく。
【0292】
特定の態様では、細胞または細胞のサブタイプの個別の集団は、例えば100万~約500億個など(例えば約500万個、約2500万個、約5億個、約10億個、約50億個、約200億個、約300億個、約400億個、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)、例えば約1000万~約1000億個(例えば約2000万個、約3000万個、約4000万個、約6000万個、約7000万個、約8000万個、約9000万個、約100億個、約250億個、約500億個、約750億個、約900億個、または前述の値の任意の2つによって定義される範囲)、場合によっては約1億個~約500億個(例えば約1億2000万個、約2億5000万個、約3億5000万個、約4億5000万個、約6億5000万個、約8億個、約9億個、約30億個、約300億個、約450億個)またはこれらの範囲の間の任意の値のような約100万~約1000億個の範囲で、対象に投与される。
【0293】
一部の態様では、全細胞の用量および/または個別の細胞亜集団の用量は、105から106個/kg体重の間、例えば1×105個/kg、1.5×105個/kg、2×105個/kg、もしくは1×106個/kg体重または約その値のような、104または約104から109または約109個/キログラム(kg)体重の間の範囲内である。例えば、一部の態様では、細胞は、T細胞105から106個/kg体重の間、例えば、T細胞1×105個/kg、T細胞1.5×105個/kg、T細胞2×105個/kg、もしくはT細胞1×106個/kg体重、または約その値のような、T細胞104または約104から109または約109個/キログラム(kg)体重の間で、またはその特定の誤差範囲内で投与される。
【0294】
一部の態様では、細胞は、CD4+および/またはCD8+細胞が105から106個/kg体重の間、例えば、CD4+細胞および/もしくはCD8+細胞が1×105個/kg、CD4+細胞および/もしくはCD8+細胞が1.5×105個/kg、CD4+細胞および/またはCD8+細胞が2×105個/kg、またはCD4+細胞および/もしくはCD8+細胞が1×106個/kg体重、または約その値のような、CD4+細胞および/またはCD8+細胞が104または約104から109または約109個/キログラム(kg)体重の間で、あるいはその特定の誤差範囲内で投与される。
【0295】
一部の態様では、細胞は、CD4+細胞が約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106、もしくは約9×106個よりも大きいおよび/もしくは少なくともその値、ならびに/またはCD8+細胞が少なくとも約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106、もしくは約9×106個、ならびに/またはT細胞が少なくとも約1×106、約2.5×106、約5×106、約7.5×106、もしくは約9×106個で、またはその特定の誤差範囲内で投与される。一部の態様では、細胞は、T細胞が約108から1012の間もしくは約1010から1011個の間、CD4+細胞が約108から1012個の間もしくは約1010から1011個の間、および/またはCD8+細胞が約108から1012個の間もしくは約1010個から1011個の間、またはその特定の誤差範囲内で投与される。
【0296】
一部の態様では、細胞は、CD4+細胞およびCD8+細胞またはサブタイプのような、複数の細胞集団またはサブタイプの所望のアウトプット比で、またはその許容範囲内で投与される。一部の局面では、所望の比は、特異的な比であることができ、または比の範囲であり得る。例えば、一部の態様では、所望の比(例えばCD4+細胞とCD8+細胞との比)は、5:1もしくは約5:1から5:1もしくは約5:1の間(または約1:5よりも大きく約5:1未満)、または1:3もしくは約1:3から3:1もしくは約3:1の間(または約1:3よりも大きく約3:1未満)、例えば2:1もしくは約2:1から1:5もしくは約1:5の間(または約1:5よりも大きく約2:1未満、例えば約5:1、4.5:1、4:1、3.5:1、3:1、2.5:1、2:1、1.9:1、1.8:1、1.7:1、1.6:1、1.5:1、1.4:1、1.3:1、1.2:1、1.1:1、1:1、1:1.1、1:1.2、1:1.3、1:1.4、1:1.5、1:1.6、1:1.7、1:1.8、1:1.9: 1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、もしくは1:5または約その比である。一部の局面では、許容差は、所望の比の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%以内である(これらの範囲の間の任意の値を含む)。
【0297】
細胞集団および組成物は、一部の態様では、経口、静脈内、腹腔内、皮下、肺、経皮、筋肉内、鼻腔内、口腔、舌下、または坐剤投与を含めた、標準投与技法を使用して対象に投与される。一部の態様では、細胞集団は、非経口的に投与される。本明細書に使用される用語「非経口」は、静脈内、筋肉内、皮下、直腸、膣、および腹腔内投与を含む。一部の態様では、細胞集団は、静脈内、腹腔内、または皮下注射による末梢全身送達を使用して対象に投与される。
【0298】
本明細書記載の方法を使用して得られた細胞集団は、一部の態様では、1種または複数種の追加的な治療剤と共に、または別の治療的介入に関連して、同時にまたは任意の順序で順次にのいずれかで、同時投与される。状況によっては、細胞は、細胞集団が1種または複数種の追加的な治療剤の効果を高めるまたはその逆になるように、十分に密接した時間で別の治療と同時投与される。一部の態様では、細胞集団は、1種または複数種の追加的な治療剤の前に投与される。一部の態様では、細胞集団は、1種または複数種の追加的な治療剤の後に投与される。
【0299】
細胞の投与後に、一部の態様では、操作された細胞集団の生物学的活性が、例えばいくつかの公知の方法のいずれかによって測定される。評価すべきパラメーターは、例えば画像化によるインビボ、または例えばELISAもしくはフローサイトメトリーによるエクスビボの、抗原への操作もしくは天然T細胞または他の免疫細胞の特異的結合を含む。特定の態様では、例えばKochenderferら、J. Immunotherapy, 32(7): 689-702 (2009)、およびHermanら J. Immunological Methods, 285(1): 25-40 (2004)に記載された細胞傷害アッセイのような、当技術分野において公知の任意の適切な方法を使用して、操作された細胞がターゲット細胞を破壊する能力を測定することができる。特定の態様では、細胞の生物学的活性は、CD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFのような1種または複数種のサイトカインの発現および/または分泌をアッセイすることによって測定される。一部の局面では、生物学的活性は、全身腫瘍組織量または腫瘍量における減少のような、臨床結果を評価することによって測定される。
【0300】
特定の態様では、操作された細胞は、それらの治療的または予防的有効性が増加するように、任意の数の方法でさらに改変される。例えば、集団によって発現される、操作されたCARまたはTCRを、直接的に、またはリンカーを経由して間接的にのいずれかで、ターゲティング部分にコンジュゲートすることができる。ターゲティング部分に化合物、例えばCARまたはTCRをコンジュゲートする実施は、当技術分野において公知である。例えば、Wadwaら、J. Drug Targeting 3: 1 1 1 (1995)、および米国特許第5,087,616号を参照されたい。
【0301】
IV. 定義
本明細書において使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、状況が明らかに別のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つもしくは複数」を意味する。
【0302】
本開示にわたり、特許請求の主題の様々な局面が、範囲の形式で提示される。範囲の形式での記載は、単に便宜および簡潔さのためであると理解すべきであり、特許請求の主題の範囲に対する確固たる限定として見なしてはならない。したがって、範囲の記載は、全ての可能な下位範囲およびその範囲内の個別の数値を具体的に開示したと見なすべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値および記載された範囲における任意の他の記載値または介在値が、特許請求の主題内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、より小さな範囲の中に独立して含まれ得、また、特許請求の主題内に包含されるが、記載された範囲における特に除外される任意の限界値に従うことを条件とする。記載された範囲が、これらの限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外する範囲も、特許請求の主題に含まれる。これは、範囲の広さに関わらずあてはまる。
【0303】
本明細書において使用される用語「約」は、当業者に容易に分かるそれぞれの値についての通常の誤差範囲を表す。本明細書における値またはパラメーターの「約」への言及は、その値またはパラメーター自体に向けられた態様を含む(および説明する)。
【0304】
本明細書において使用される単数形「a」、「an」、および「the」は、状況が明らかに別のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「a」または「an」は、「少なくとも1つ」または「1つもしくは複数」を意味する。
【0305】
本開示にわたり、特許請求の主題の様々な局面が、範囲の形式で提示される。範囲の形式での記載は、単に便宜および簡潔さのためであると理解すべきであり、特許請求の主題の範囲に対する確固たる限定として見なしてはならない。したがって、範囲の記載は、全ての可能な下位範囲およびその範囲内の個別の数値を具体的に開示したと見なすべきである。例えば、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限値と下限値との間の各介在値および記載された範囲における任意の他の記載値または介在値が、特許請求の主題内に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限値および下限値は、より小さな範囲の中に独立して含まれ得、また、特許請求の主題内に包含されるが、記載された範囲における特に除外される任意の限界値に従うことを条件とする。記載された範囲が、これらの限界値の一方または両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方または両方を除外する範囲も、特許請求の主題に含まれる。これは、範囲の広さに関わらずあてはまる。
【0306】
アミノ酸配列(参照ポリペプチド配列)に関して使用される場合に、本明細書において使用される「アミノ酸配列同一パーセント(%)」および「同一パーセント」は、最大配列同一パーセントを達成するために配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入し、配列同一性の一環としていかなる保存的置換も考慮しなかった後に、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一の、候補配列(例えばストレプトアビジン変異タンパク質)におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一パーセントを決定するための整列は、当技術分野における技能の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較されている配列の全長にわたり最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメーターを決定することができる。
【0307】
アミノ酸置換は、ポリペプチド中の1つのアミノ酸と別のアミノ酸との交換を含み得る。アミノ酸は、一般的に、以下の共通の側鎖性質に応じて群分けすることができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0308】
非保存的アミノ酸置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0309】
本明細書において使用される対象は、ヒトおよび他の哺乳類のような、任意の生物を含む。哺乳類は、非限定的に、ヒト、ならびに農用動物、スポーツ動物、げっ歯類およびペットを含めた非ヒト動物を含む。
【0310】
本明細書において使用される組成物は、細胞を含めた2つ以上の産物、物質、または化合物の任意の混合物を表す。それは、溶液、懸濁物、液体、粉末、ペースト、水性、非水性またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0311】
1つまたは複数の特定の細胞型または細胞集団を表すときの、本明細書において使用される「枯渇させること」は、例えば組成物中の全細胞数もしくは組成物の体積と比較して、または他の細胞型に対して、該集団もしくは細胞によって発現されるマーカーに基づく負の選択、または枯渇されるべき細胞集団もしくは細胞上に存在しないマーカーに基づく正の選択などによって、細胞型または集団の数またはパーセンテージを減少させることを表す。本用語は、組成物からの細胞、細胞型、または集団の完全な除去を要さない。
【0312】
1つまたは複数の特定の細胞型または細胞集団を表す場合に本明細書において使用される「富化すること」は、集団もしくは細胞によって発現されるマーカーに基づく正の選択、または枯渇されるべき細胞集団もしくは細胞上に存在しないマーカーに基づく負の選択などによって、例えば組成物中の全細胞数もしくは組成物の体積と比較して、または他の細胞型に対して、細胞型または集団の数またはパーセンテージを増加させることを表す。本用語は、組成物からの他の細胞、細胞型、または集団の完全な除去を要さず、そのように富化された細胞が、富化された組成物中に100%または100%近くにさえ存在することを要さない。
【0313】
本明細書において使用される用語「処置」、「処置する」、および「処置すること」は、疾患もしくは状態もしくは障害、または症状、有害作用もしくは結果、またはそれに関連する表現型の完全もしくは部分的な寛解または減少を表す。特定の態様では、効果は、疾患もしくは状態またはそれに起因する有害症状を部分的または完全に治癒するような治療的である。
【0314】
本明細書において使用される、化合物または組成物または組み合わせの「治療有効量」は、疾患、状態、もしくは障害の処置、および/または処置の薬物動態もしくは薬力学効果のような、投与量で必要期間、所望の治療的結果を達成するために有効な量を表す。治療有効量は、対象の病状、年齢、性別、および体重、および投与される細胞集団のような要因に応じて変動し得る。
【0315】
本明細書において使用される、細胞または細胞集団が特定のマーカーについて「陽性」であるという記載は、細胞上または細胞中に特定のマーカー、典型的には表面マーカーが検出可能に存在することを表す。表面マーカーに言及する場合、該用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーと特異的に結合する抗体を用いて染色し、抗体を検出することによって検出される表面発現の存在を表し、その際、染色は、フローサイトメトリーによって、アイソタイプがマッチする対照または蛍光マイナスワン(fluorescence minus one)(FMO)ゲーティング対照を用いて同じ手順を実施し、その他は同一の条件で検出された染色を実質的に超えるレベルで、および/または該マーカーについて陽性であることが公知の細胞と実質的に類似のレベルで、および/または該マーカーについて陰性であることが公知の細胞についてのレベルよりも実質的に高いレベルで、検出可能である。
【0316】
本明細書において使用される、細胞または細胞集団が、特定のマーカーについて「陰性」であるという記載は、細胞上または細胞中に特定のマーカー、典型的には表面マーカーが実質的に検出可能に存在しないことを表す。表面マーカーに言及する場合、該用語は、フローサイトメトリーによって、例えばマーカーと特異的に結合する抗体を用いて染色し、抗体を検出することによって検出される表面発現の不在を表し、その際、染色は、フローサイトメトリーによって、アイソタイプがマッチする対照または蛍光マイナスワン(FMO)ゲーティング対照を用いて同じ手順を実施し、その他は同一の条件で検出された染色を実質的に超えるレベルで、および/または該マーカーについて陽性であることが公知の細胞についてのレベルよりも実質的に低いレベルで、および/または該マーカーについて陰性であることが公知の細胞についてのレベルと比較して実質的に類似のレベルで、検出されない。
【0317】
一部の態様では、1つまたは複数のマーカーの発現における減少は、平均蛍光強度における1 log10の喪失および/または参照細胞集団と比較したとき、細胞の少なくとも約20%、細胞の25%、細胞の30%、細胞の35%、細胞の40%、細胞の45%、細胞の50%、細胞の55%、細胞の60%、細胞の65%、細胞の70%、細胞の75%、細胞の80%、細胞の85%、細胞の90%、細胞の95%、および細胞の100%ならびに20から100%の間の任意の%のマーカーを示す、細胞のパーセンテージの減少を表す。一部の態様では、1つまたは複数のマーカーが陽性の細胞集団は、参照細胞集団と比較したとき、細胞の少なくとも約50%、細胞の55%、細胞の60%、細胞の65%、細胞の70%、細胞の75%、細胞の80%、細胞の85%、細胞の90%、細胞の95%、および細胞の100%ならびに50から100%の間の任意の%のマーカーを表す細胞のパーセンテージを表す。
【0318】
V. 例示的な態様
本明細書提供の態様の中に、以下が含まれる:
1.
(a)閉鎖されたシステムにおいて第1の選択を行う段階であって、第1の選択が、初代ヒトT細胞を含有する試料から、(i)CD4+細胞および(ii)CD8+細胞の一方を富化することを含み、それによって、該富化が、第1の選択集団および選択されなかった集団を生成させる、段階;ならびに
(b)閉鎖されたシステムにおいて第2の選択を行う段階であって、第2の選択が、選択されなかった集団から、(i)CD4+細胞および(ii)CD8+細胞のもう一方を富化することを含み、それによって、該富化が、第2の選択集団を生成させる、段階
を含む、CD4+ T細胞またはCD8+ T細胞を富化するための方法であって、
CD4+細胞およびCD8+細胞が富化されかつ該第1の選択集団の細胞および該第2の選択集団の細胞を含む富化された組成物を産生する、方法。
2.
(c)第1の選択集団の細胞および第2の選択集団の細胞を組み合わせることによって、富化された組成物を産生する段階
をさらに含み、かつ/または
富化された組成物中のCD4+細胞およびCD8+細胞が、CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比で存在する、
態様1の方法。
3.
組み合わせることが、閉鎖されたシステムにおいて行われる、態様2の方法。
4.
(a)閉鎖されたシステムにおいて第1の選択を行う段階であって、第1の選択が、初代ヒトT細胞を含有する試料から、(i)CD4+細胞および(ii)CD8+細胞の一方を富化することを含み、それによって富化が第1の選択集団および選択されなかった集団を生成させる、段階;ならびに
(b)閉鎖されたシステムにおいて第2の選択を行う段階であって、第2の選択が、選択されなかった集団から、(i)CD4+細胞および(ii)CD8+細胞のもう一方を富化することを含み、それによって富化が第2の選択集団を生成させる、段階;
(c)該第1の選択集団の細胞および該第2の選択集団の細胞を含む培養開始組成物を培養槽内で刺激条件下にてインキュベートすることによって、被刺激細胞を生成させる段階;ならびに
(d)遺伝子操作された抗原受容体を、(c)において生成した該被刺激細胞に導入する段階
を含む、遺伝子操作されたT細胞を産生するための方法であって、
それによって、遺伝子操作された抗原受容体を発現しているCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含むアウトプット組成物を生成させる、方法。
5.
段階(c)の前に、第1および第2の選択細胞集団の細胞を組み合わせて、培養開始組成物を産生する段階をさらに含み、かつ/または培養開始組成物中のCD4+細胞およびCD8+細胞が、CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比で存在する、態様4の方法。
6.
組み合わせることが、閉鎖されたシステムにおいて行われる、態様5の方法。
7.
段階の1つまたは複数が、自動化された様式で実施され、かつ/または閉鎖されたシステムが自動化されている、態様1~6のいずれかの方法。
8.
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、10:1もしくは約10:1から1:10もしくは約1:10の間、5:1もしくは約5:1から1:5もしくは約1:5の間、または2:1もしく約2:1から1:2もしくは約1:2の間である、態様2~7のいずれかの方法。
9.
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、1:1または約1:1である、態様2~8のいずれかの方法。
10.
試料が、ヒト対象から得られ、
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞の比と異なり、かつ/または
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞の比より、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、もしくは少なくとも50%大きいかまたはそれ未満である、
態様2~6のいずれかの方法。
11.
第1および/または第2の選択において細胞を富化することが、細胞表面マーカーの発現に基づき正の選択または負の選択を行うことを含む、態様1~10のいずれかの方法。
12.
第1および/または第2の選択において細胞を富化することが、非T細胞表面マーカーを発現している細胞を枯渇させることを含む負の選択を含む、態様11の方法。
13.
非T細胞マーカーが、CD14を含む、態様12の方法。
14.
第1または第2の選択において細胞を富化することが、1種または複数種の細胞表面マーカーの発現に基づき複数の正または負の選択段階を行って、CD4+細胞またはCD8+細胞を富化することを含む、態様1~13のいずれかの方法。
15.
第1および/または第2の選択において細胞を富化することが、免疫親和性に基づく選択を含む、態様1~14のいずれかの方法。
16.
細胞表面マーカーと特異的に結合することが可能な抗体と細胞を接触させること、および該抗体と結合している細胞を回収することによって正の選択を行うこと、または該抗体と結合していない細胞を回収することによって負の選択を行うことによって、免疫親和性に基づく選択が行われ、該回収された細胞からCD4+細胞またはCD8+細胞が富化され、抗体が磁性粒子上に固定化されている、態様15の方法。
17.
第1の選択および第2の選択が、操作可能に接続される別々の分離槽内で実施される、態様1~13のいずれかの方法。
18.
分離槽が、チュービングによって操作可能に接続されている、態様17の方法。
19.
免疫親和性に基づく選択が、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスに固定化または結合された抗体と細胞を接触させることによって行われ、該抗体が、CD4+細胞またはCD8+細胞の正または負の選択を行うために細胞表面マーカーと特異的に結合することが可能である、態様15~18のいずれかの方法。
20.
抗体が、マトリックス上に固定化された結合試薬と可逆的結合を形成することが可能な1種または複数種の結合パートナーをさらに含み、その際、該抗体が、接触の間に該マトリックスと可逆的に結合され、かつ
該マトリックス上の該抗体によって特異的に結合された細胞表面マーカーを発現している細胞が、結合試薬と結合パートナーとの間の可逆的結合の破壊によって該マトリックスから回収されることが可能である、
態様19の方法。
21.
結合パートナーが、ビオチン、ビオチン類似体、および結合試薬と結合することが可能なペプチドより選択され、
該結合試薬が、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体または変異タンパク質、アビジン、およびアビジン類似体または変異タンパク質より選択される、
態様17の方法。
22.
結合パートナーが、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含み、かつ/または
結合試薬が、SEQ ID NO:12、13、15、もしくは16に示されるアミノ酸配列を含むストレプトアビジン変異タンパク質である、
態様21の方法。
23.
第1の選択および/または第2の選択において試料中の細胞をアフィニティクロマトグラフィーマトリックスと接触させた後に、競合試薬を添加して、結合パートナーと結合試薬との間の結合を破壊することによって、該マトリックスから選択細胞を回収する段階
をさらに含む、態様19~21のいずれかの方法。
24.
競合試薬が、ビオチンまたはビオチン類似体である、態様23の方法。
25.
第1および/または第2の選択における1種または複数種の抗体が、結合および細胞表面マーカーに関して3×10-5sec-1よりも大きいまたは約3×10-5sec-1よりも大きい解離速度定数(koff)を有する、態様20~24のいずれかの方法。
26.
第1および/または第2の選択における1種または複数種の抗体が、細胞表面マーカーに関して解離定数(Kd)が約10-3~10-7の範囲または約10-7~約10-10の範囲の親和性を有する、態様20~25のいずれかの方法。
27.
第1および/または第2の選択のクロマトグラフィーマトリックスが、カラムである分離槽内に充填されている、態様20~26のいずれかの方法。
28.
アフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、少なくともまたは少なくとも約50×106細胞/mL、100×106細胞/mL、200×106細胞/mL、または400×106細胞/mLを吸着する、および/または選択することが可能である、態様19~27のいずれかの方法。
29.
第1および第2の選択段階が、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスの使用を含み、第1および第2の選択段階において使用される該マトリックスが、培養開始比を達成するために十分な相対量である、態様19~28のいずれかの方法。
30.
CD4+細胞を富化することが、CD4の表面発現に基づく正の選択を含む、態様1~29のいずれかの方法。
31.
CD8+細胞を富化することが、CD8の表面発現に基づく正の選択を含む、態様1~29のいずれかの方法。
32.
CD8+細胞を富化することを含む第1および第2の選択の一方が、
セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化すること、ならびに/または
CD28、CD62L、CCR7、CD127、およびCD27より選択されるマーカーを発現している細胞を富化すること
をさらに含む、態様1~29のいずれかの方法。
33.
第1の選択が、CD8+細胞を富化することを含み、第2の選択が、CD4+細胞を富化することを含み、かつ
第1の選択が、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化すること、ならびに/またはCD28、CD62L、CCR7、CD127、およびCD27より選択されるマーカーを発現している細胞を富化することをさらに含む、
態様1~32のいずれかの方法。
34.
セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することおよび/またはマーカーを発現している細胞を富化することが、
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CD62Lを発現している細胞を選択すること、ならびに/または
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CD27を発現している細胞を選択すること、ならびに/または
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CCR7を発現している細胞を選択すること、ならびに/または
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CD28を発現している細胞を選択すること、ならびに/または
CD8+細胞が富化された第1および/もしくは第2の選択細胞集団から、CD127を発現している細胞を選択すること
を含む、態様32または態様33または態様35の方法。
35.
第1の選択が、CD4+細胞を富化することを含み、第2の選択が、CD8+細胞を富化することを含み、かつ
第2の選択が、セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することをさらに含む、
態様1~32のいずれかの方法。
36.
(i)第1の選択が、CD4の表面発現に基づく正の選択によりCD4+細胞を富化することによって、CD4+初代ヒトT細胞が富化された第1の選択集団および選択されなかった試料を生成させることを含み;
(ii)第2の選択が、CD8+細胞を富化することを含み、かつ第2の選択試料からセントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することをさらに含み、ここで該セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することが、
ナイーブT細胞上に存在する表面マーカーを発現している細胞を枯渇させるための負の選択、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択、または
セントラルメモリーT細胞上に存在しかつナイーブT細胞上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択
を含み、それによって、TCM細胞が富化されたCD8+初代ヒトT細胞を生成させる、
態様35の方法。
37.
ナイーブT細胞上に存在するマーカーが、CD45RAを含み、かつ
セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することが、CD45RAを発現している細胞を枯渇させるための負の選択、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択を含む、
態様36の方法。
38.
セントラルメモリーT細胞上に存在しかつナイーブT細胞上に存在しない表面マーカーが、CD45ROを含み;
セントラルメモリーT(TCM)細胞を富化することが、CD45ROを発現している細胞についての正の選択、およびセントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーを発現している細胞についての正の選択を含む、
態様37の方法。
39.
セントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーが、CD62L、CCR7、CD27、CD127、およびCD44からなる群より選択される、態様36~38のいずれかの方法。
40.
セントラルメモリーT(TCM)細胞上に存在しかつ別のメモリーT細胞亜集団上に存在しない表面マーカーが、CD62Lである、態様39の方法。
41.
富化された組成物または培養開始組成物中のCD8+集団が、セントラルメモリーT(TCM)細胞を少なくとも50%含む、またはナイーブT(TN)細胞を20%未満含む、またはCD62L+細胞を少なくとも80%含む、態様32~40のいずれかの方法。
42.
初代ヒトT細胞を含有する試料の細胞を、CD4と特異的に結合する第1の免疫親和性試薬およびCD8と特異的に結合する第2の免疫親和性試薬と、インキュベーション組成物中で、免疫親和性試薬が試料中の細胞表面のCD4分子およびCD8分子とそれぞれ特異的に結合する条件で、接触させる段階、ならびに
該第1および/または該第2の免疫親和性試薬と結合している細胞を回収することによって、CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む、富化された組成物を生成させる段階
を含む、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を富化するための方法であって、
該第1および/または該第2の免疫親和性試薬が、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、該富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満および/またはインキュベーション組成物中のCD8+細胞の70%未満を含有することによって、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が富化された組成物を産生する、方法。
43.
(a)初代ヒトT細胞を含有する試料から初代ヒトT細胞を富化する段階であって、
試料の細胞を、CD4と特異的に結合する第1の免疫親和性試薬およびCD8と特異的に結合する第2の免疫親和性試薬と、インキュベーション組成物中で、該免疫親和性試薬が該試料中の細胞の表面のCD4分子およびCD8分子とそれぞれ特異的に結合する条件で、接触させることと、
該第1および/または該第2の免疫親和性試薬と結合している細胞を回収することによって、CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む、富化された組成物を生成させることと
を含み、該第1および/または該第2の免疫親和性試薬が、該インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、該富化された組成物が、該インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満および/または該インキュベーション組成物中のCD8+細胞の70%未満を含有する、段階;ならびに
(b)培養開始組成物中の該富化された組成物の細胞を培養槽内で刺激条件にてインキュベートすることによって、被刺激細胞を生成させる段階であって、該細胞が、培養開始比または実質的に培養開始比である、段階;ならびに
(c)遺伝子操作された抗原受容体を(b)の被刺激細胞に導入することによって、遺伝子操作された抗原受容体を発現しているCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含むアウトプット組成物を生成させる段階
を含む、遺伝子操作されたT細胞を産生するための方法。
44.
初代ヒトT細胞を富化することが、閉鎖されたシステムにおいて行われる、態様42または態様43の方法。
45.
第1および第2の免疫親和性試薬が、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の70%未満、およびインキュベーション組成物中の全CD8+細胞の70%未満を含む、態様42~44のいずれかの方法。
46.
第1の免疫親和性試薬が、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD4+細胞の60%未満、50%未満、40%未満、30%未満もしくは20%未満を含み、かつ/または
第2の免疫親和性試薬が、インキュベーション組成物中に最適以下の収率濃度で存在し、その際、富化された組成物が、インキュベーション組成物中の全CD8+細胞の60%未満、50%未満、40%未満、30%未満もしくは20%未満を含む、
態様42~45のいずれかの方法。
47.
試料が、CD3+ T細胞を少なくとも1×109個含む、態様42~46のいずれかの方法。
48.
インキュベーション組成物中の第1および第2の免疫親和性試薬の一方の濃度が、もう一方の濃度よりも大きく、その際、より大きい濃度が、それぞれCD4+細胞またはCD8+細胞の富化された組成物において、CD4+細胞またはCD8+細胞のもう一方の収率と比較して、より高い収率を生じ、それによって、富化された組成物における培養開始比が生成される、態様42~47のいずれかの方法。
49.
第1および第2の免疫親和性試薬の一方の濃度が、第1および第2の免疫親和性試薬のもう一方の濃度と比較して、少なくとも1.2倍、1.4倍、1.6倍、1.8倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、または10倍大きく、かつ/または
富化された濃度におけるより高い収率が、1.2倍、1.4倍、1.6倍、1.8倍、2.0倍、3.0倍、4.0倍、5.0倍、6.0倍、7.0倍、8.0倍、9.0倍、または10倍大きい、
態様48の方法。
50.
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、10:1もしくは約10:1から1:10もしくは約1:10の間、5:1もしくは約5:1から1:5もしくは約1:5の間、または2:1もしくは約2:1から1:2もしくは約1:2の間である、態様42~49のいずれかの方法。
51.
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、1:1または約1:1である、態様42~50のいずれかの方法。
52.
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞との比と異なり、かつ/または
CD4+細胞とCD8+細胞の培養開始比が、対象からの試料中のCD4+細胞とCD8+細胞との比よりも少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、もしくは少なくとも50%大きいもしくは小さい、
態様42~51のいずれかの方法。
53.
培養開始組成物中の細胞の95%超または98%超が、CD4+細胞およびCD8+細胞である、態様42~52のいずれかの方法。
54.
免疫親和性試薬のそれぞれが、抗体を含む、態様42~53のいずれかの方法。
55.
抗体が、球体の外表面に固定化されている、態様54の方法。
56.
球体が、磁気ビーズである、態様55の方法。
57.
抗体が、球体に固定化された結合試薬と可逆的結合を形成することが可能な1種または複数種の結合パートナーを含み、その際、該抗体が、該球体に可逆的に固定化され、
前記方法が、試料中の細胞を第1および第2の免疫親和性試薬と接触させた後に、競合試薬を添加して、該結合パートナーと該結合試薬との間の結合を破壊することによって、該球体から選択細胞を回収する段階をさらに含む、
態様55または態様56の方法。
58.
結合パートナーが、ビオチン、ビオチン類似体、または結合試薬と結合することが可能なペプチドより選択され、
該結合試薬が、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体または変異タンパク質、アビジン、アビジン類似体または変異タンパク質より選択される、
態様57の方法。
59.
結合パートナーが、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含むペプチドを含み、かつ/または
結合試薬が、SEQ ID NO:12、13、15、もしくは16に示されるアミノ酸配列を含むストレプトアビジン変異タンパク質である、
態様58の方法。
60.
結合試薬が、ストレプトアビジンまたはストレプトアビジン変異タンパク質の1つまたは複数のモノマーを含むマルチマーであり、かつ
結合パートナーが、結合試薬の少なくとも1つのモノマーとそれぞれ可逆的に結合することが可能な少なくとも2つのモジュールの連続した配置を含むペプチドである、
態様58または態様59の方法。
61.
結合パートナーが、SEQ ID NO:7~10のいずれかに示されるアミノ酸配列を含む、態様60の方法。
62.
競合試薬が、ビオチンまたはビオチン類似体である、態様57~61のいずれかの方法。
63.
第1および/または第2の選択における1種または複数種の抗体が、抗体と細胞表面マーカーとの間の結合に関して3×10-5sec-1よりも大きい、または約3×10-5sec-1よりも大きい解離速度定数(koff)を有する、態様42~63のいずれかの方法。
64.
第1および/または第2の選択における1種または複数種の抗体が、約10-3~10-7の範囲内の解離定数(Kd)または約10-7~約10-10の範囲内の解離定数を有する親和性を有する、態様42~63のいずれかの方法。
65.
1つまたは複数の段階が、自動化された様式で実施され、かつ/または閉鎖されたシステムが、自動化されている、態様42~63のいずれかの方法。
66.
第1の選択および/または第2の選択を行う前に、試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の比を決定する段階、ならびに
CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む組成物を産生するように、該試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の該比に基づき、第1および/または第2の選択を調整する段階
を含む、
態様2、3および5~41のいずれかの方法。
67.
第1および/または第2の選択が、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスを含む免疫親和性に基づく選択を含み、
該第1および/または該第2の選択を調整する段階が、該第1および/または該第2の選択において培養開始比を達成するために十分な量の該アフィニティクロマトグラフィーマトリックスを選ぶことを含む、
態様66の方法。
68.
試料の細胞を、第1および第2の免疫親和性試薬と接触させる前に、試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の比を決定する段階;ならびに
CD4+細胞およびCD8+細胞を培養開始比で含む富化された組成物を産生するように、該試料中のCD4+ T細胞とCD8+ T細胞の比に基づき、該第1および/または該第2の免疫親和性試薬の濃度を選ぶ段階
を含む、態様42~65のいずれかの方法。
69.
2:1または約2:1から1:5または約1:5の間であるCD4+細胞とCD8+細胞の比を含むアウトプット組成物を生じる、態様1~68のいずれかの方法。
70.
アウトプット組成物中のCD4+細胞とCD8+細胞の比が、1:1または約1:1である、態様69の方法。
71.
試料が、対象から得られる、態様1~70のいずれかの方法。
72.
対象が、遺伝子操作されたT細胞または養子細胞療法用の細胞を投与される対象である、態様71の方法。
73.
対象が、遺伝子操作されたT細胞または養子療法用の細胞を投与される対象以外の対象である、態様72の方法。
74.
試料が、血液または血液由来試料である、態様1~73のいずれかの方法。
75.
試料が、白血球試料である、態様1~74のいずれかの方法。
76.
試料が、アフェレーシス、末梢血単核細胞(PBMC)、または白血球アフェレーシス試料である、態様1~75のいずれかの方法。
77.
組成物を培養槽内で刺激条件にてインキュベートすることが、遺伝子操作された抗原受容体を導入する前、間、および/または後に行われる、態様4~41または43~76のいずれかの方法。
78.
組成物を培養槽内で刺激条件にてインキュベートすることが、遺伝子操作された抗原受容体を導入する前、間、および後に行われる、態様4~41または43~76のいずれかの方法。
79.
刺激条件が、組成物のT細胞が増殖する条件を含む、態様4~41または43~78のいずれかの方法。
80.
刺激条件が、TCR複合体の1種または複数種の成分の1種または複数種の細胞内シグナル伝達ドメインを活性化することが可能な薬剤を含む、態様4~41または43~79のいずれかの方法。
81.
TCR複合体の1種または複数種の成分が、CD3ゼータ鎖を含む、態様80の方法。
82.
刺激条件が、抗CD3抗体、および抗CD28抗体、抗4-1BB抗体、および/またはサイトカインの存在を含む、態様4~41または43~81のいずれかの方法。
83.
抗CD3抗体および/または抗CD28抗体が、固体支持体の表面に存在する、態様82の方法。
84.
サイトカインが、IL-2、IL-15、IL-7、および/またはIL-21を含む、態様83の方法。
85.
遺伝子操作された抗原受容体が、T細胞受容体(TCR)または機能的非TCR抗原受容体を含む、態様4~41または43~84のいずれかの方法。
86.
受容体が、処置されるべき疾患または状態の細胞によって発現される抗原と特異的に結合する、態様85の方法。
87.
抗原受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、態様85または86のいずれかの方法。
88.
CARが、細胞外抗原認識ドメイン、およびITAM含有配列を含む細胞内シグナル伝達ドメイン、およびT細胞共刺激分子の細胞内シグナル伝達ドメインを含む、態様87の方法。
89.
(a)態様1~88のいずれかのCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含むアウトプット組成物を産生する段階;ならびに
(b)対象にアウトプット組成物の細胞を投与する段階
を含む、処置方法。
90.
細胞が単離される試料が、細胞が投与される対象に由来する、態様89の方法。
91.
態様1~88のいずれかの方法によって産生される細胞の組成物。
92.
薬学的に許容される担体を含む、態様91の組成物。
93.
態様91または92の細胞の組成物を対象に投与する段階を含む、処置方法。
94.
遺伝子操作された抗原受容体が、疾患または状態に関連する抗原と特異的に結合する、態様93の方法。
95.
疾患または状態が、がんである、態様94の処置方法。
96.
対象における疾患または状態を処置することに使用するための、態様91または態様92の組成物。
97.
対象における疾患または障害を処置するための医薬の製造のための、態様91または態様92の組成物の使用。
98.
遺伝子操作された抗原受容体が、疾患または状態に関連する抗原と特異的に結合する、態様96の組成物または態様97の使用。
99.
疾患または状態が、がんである、態様96~98のいずれかの組成物または使用。
100.
a)表面上に固定化された第1の結合剤を含む第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであって、結合剤が、第1の細胞上に存在する第1の細胞表面マーカーと特異的に結合し、ここで、
該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第1の操作可能な接続を介して細胞試料を含む貯蔵リザーバに操作可能に接続され、第1の操作可能な接続により、貯蔵リザーバから該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスへ細胞を通過させることが可能となり、
該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第2の操作可能な接続を介してアウトプット槽に操作可能に接続される、
第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス;ならびに
b)表面上に固定化された第2の結合剤を含む第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであって、第2の結合剤が、第2の細胞上に存在する第2の細胞表面マーカーと特異的に結合し、ここで、
該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第3の操作可能な接続を介して第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスに操作可能に接続され、第3の操作可能な接続により、該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過しかつ該第1の結合剤と結合しなかった細胞を、該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスへ通過させることが可能となり、
該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第4の操作可能な接続を介してアウトプット槽に操作可能に接続され、第4の操作可能な接続により、該第1および/または該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスと結合しかつそこから溶出した細胞を通過させることが可能となり、
該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、第5の操作可能な接続を介して廃棄物槽に操作可能に連結され、第5の操作可能な接続により、該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過しかつ該第1の結合剤と結合せずおよび該第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過しかつ該第2の結合剤と結合しなかった細胞を通過させることが可能となる、
第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス;
c)アウトプット槽;ならびに
d)廃棄物槽
を含む、ターゲット細胞の精製のための閉鎖された装置システムであって、
閉鎖されたシステム内で、
(i)該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスと結合し、そこから回収された細胞、および
(ii)該第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを通過し、それと結合せず、該第2のクロマトグラフィーマトリックスと結合し、そこから回収された細胞
の、該アウトプット槽内における単一組成物での収集を可能にするように構成された、
閉鎖された装置システム。
101.
操作可能な接続の1つまたは複数が、貯蔵リザーバ、第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス、第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス、および/または培養槽を接続しているチュービングを含む、態様100の閉鎖された装置。
102.
チュービングが、ストップコック、バルブまたはクランプに接続される、態様101の閉鎖された装置。
103.
(a)第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、CD4+アフィニティクロマトグラフィーマトリックスまたはCD8+アフィニティクロマトグラフィーマトリックスの一方であり、
(b)第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、CD4+アフィニティクロマトグラフィーマトリックスまたはCD8+アフィニティクロマトグラフィーマトリックスのもう一方である、
態様100~102のいずれかの閉鎖された装置システム。
104.
d)表面上に固定化された第3の結合剤を含む第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであって、結合剤が、第3の細胞表面マーカーと特異的に結合し、第3の結合剤が、第3の細胞表面マーカーを発現している細胞と結合することが可能であり、ここで、
第3の操作可能な接続が、第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを第1のマトリックスとさらに操作可能に接続し、
第6の操作可能な接続が、該第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスをアウトプット容器に操作可能に接続しており、そのため該第6の操作可能な接続により、第1のマトリックスと結合しかつそこから回収されおよび第3のマトリックスと結合しかつそこから回収された細胞を、該アウトプット容器へ通過させることが可能となり、
第5の操作可能な接続が、該第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを廃棄物容器とさらに操作可能に接続しており、そのため該第5の操作可能な接続により、第3のカラムを通過しかつそれと結合しなかった細胞を、該廃棄物容器に送ることが可能となる、
第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス
をさらに含む、態様100~103のいずれかの閉鎖された装置システム。
105.
d)表面上に固定化された第3の結合剤を含む第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスであって、結合剤が、第3の細胞表面マーカーと特異的に結合し、該第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、該第3の細胞表面マーカーを発現している細胞と結合することが可能であり、ここで、
第2の操作可能な接続が、該第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスを第1のマトリックスおよびアウトプット容器とさらに操作可能に接続しており、そのため該第2の操作可能な接続により、該第1のマトリックスと結合しかつそこから回収されおよび該第3のマトリックスと結合しかつそこから回収された細胞を、該アウトプット容器に送ることが可能となる、
第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス
をさらに含む、態様100~103のいずれかの閉鎖された装置システム。
106.
第1のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、CD8と特異的に結合する結合剤を含み、
第2のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、CD4と特異的に結合する結合剤を含み、
第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスが、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現したマーカーと特異的に結合する結合剤を含む、
態様104または105の閉鎖された装置システム。
107.
第3のアフィニティクロマトグラフィーマトリックスの結合剤が、CD62L、CD45RA、CD45RO、CCR7、CD27、CD127、およびCD44より選択される細胞表面マーカーと選択的に結合する、態様106の閉鎖された装置システム。
108.
アフィニティクロマトグラフィーマトリックスのうち1つまたは複数または全てが、1種または複数種の競合試薬を含む溶出緩衝液リザーバとさらに操作可能に接続されている、態様100~107のいずれかの閉鎖された装置システム。
109.
競合試薬が、ビオチン、ビオチン類似体、およびクロマトグラフィーマトリックスと結合することが可能なペプチドからなる群の1つまたは複数である、態様100~107のいずれかの閉鎖された装置システム。
110.
第3、第4、または第6の操作可能な接続のうち1つまたは複数または全てが、競合剤除去チャンバーをさらに含む、態様100~107のいずれかの閉鎖された装置システム。
111.
競合剤除去チャンバーが、結合試薬をさらに含む、態様110の閉鎖された装置システム。
112.
結合試薬が、ストレプトアビジン、ストレプトアビジン類似体または変異タンパク質、アビジン、およびアビジン類似体または変異タンパク質からなる群のうち1つまたは複数を含む、態様111の閉鎖された装置システム。
113.
結合剤のうち1種または複数種または全てが、抗体である、態様100~112のいずれかの閉鎖された装置システム。
114.
結合剤のうち1種または複数種または全てが、アフィニティクロマトグラフィーマトリックスと可逆的に結合している、態様100~112のいずれかの閉鎖された装置システム。
【実施例0319】
VI. 実施例
以下の実施例は、例証的な目的のためだけに含まれ、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0320】
実施例1:遺伝子操作および養子細胞療法のための免疫磁気分離による単一の工程の流れを使用したCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の組成物の生成
例示的な一方法において、アフェレーシス産物試料から、セントラルメモリーT細胞が富化されたCD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞集団を単離し、その後インキュベートし、操作し、続いて対象に投与する。単離手順を、CliniMACS(登録商標)Prodigyシステムを使用する免疫磁気分離により、単一の工程の流れを使用して実施する。本手順は他の方法と比較して合理化されており、CliniMACS(登録商標)Prodigyデバイスおよび3つの別々のチュービングセットを使用して、CD4+細胞が第1のアフェレーシス画分から分離され、CD8+細胞が第2のアフェレーシス画分から分離されかつさらに枯渇/富化される。
【0321】
合理化された工程は、CD4+およびCD8+細胞集団の単離のために1つのチュービングセットを使用して、細胞集団を1つの槽(例えばチュービングセット)から別の槽に移行させずに行われる。
【0322】
アフェレーシス試料をCliniMACS(登録商標)CD4試薬と共にインキュベートすることによって、CD4+細胞集団を単離する。次に、細胞を、富化プログラムを実行するように設定されたCliniMACS(登録商標)Prodigyデバイスによって分離し、両方の細胞画分(すなわち、免疫磁気的に選択された富化CD4+細胞画分および通過細胞画分)を保持する。富化された(陽性)画分は、単離されたCD4+ T細胞集団である。通過(陰性)画分をCliniMACS(登録商標)CD14試薬およびCliniMACS(登録商標)CD45RA試薬またはCD19試薬と共にインキュベートすることによって、CD8+ T細胞集団を単離する。枯渇プログラムを実行するようにCliniMACS(登録商標)Prodigyデバイスを設定する。次に、第1の分離段階で使用された同じチュービングセットを使用して、細胞/試薬混合物をCliniMACS(登録商標)Prodigyデバイスによって分離する。CD14+/CD45RA+またはCD14+/CD19+細胞が枯渇している通過(陰性)画分を、CliniMACS(登録商標)CD62L試薬と共にインキュベートする。同じチュービングセットを使用して、富化プログラムを実行しているCliniMACS(登録商標)Prodigyデバイスを使用して、細胞/試薬混合物を分離する。陽性画分は、セントラルメモリー細胞が富化された、単離されたCD8+細胞集団である。
【0323】
単離されたCD4+集団およびCD8+集団を、ある培養開始比の培養開始組成物の状態で同じ培養槽に入れて組み合わせる。インキュベーション段階および/もしくは操作段階の後に、特定の所望のアウトプット比、もしくはそのような所望のアウトプット比の許容誤差の特定範囲内である比を達成するように培養開始比を設計し、または、特定の時間パーセンテージでそうするように設計する。IL-2(100IU/mL)の存在下、37℃で72時間、Prodigyシステム内で抗CD3/抗CD28ビーズを使用するような刺激条件下で、細胞をインキュベートする。
【0324】
インキュベーションまたは培養の開始後に1回または複数回、例えばインキュベーション中のある時間に、細胞組成物を任意で定期的に評価および/または調整する。評価は、増殖速度を測定すること、生存率を測定すること、表現型、例えばタンパク質もしくはポリヌクレオチドのような1種もしくは複数種の表面マーカーもしくは細胞内マーカーの発現を決定すること、ならびに/あるいは温度、培地成分、酸素もしくは二酸化炭素含量、および/または1種もしくは複数種の因子、薬剤、成分、および/もしくはサブタイプを含めた細胞型の存在もしくは不在もしくは量もしくは相対量について、組成物または槽を調整することを含む。
【0325】
次に、そのようにインキュベートされた細胞を、キメラ抗原受容体(CAR)または組換えTCRのような組換え抗原受容体の発現用の組換え遺伝子を細胞内に導入することによって遺伝子操作する。同じ組成物および槽内に存在するCD4+細胞およびCD8+細胞を用いて、CliniMACS(登録商標)Prodigyデバイス内の封じ込めた環境で導入を行う。該方法は、操作されたCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を有するアウトプット組成物を生じる。
【0326】
実施例2:閉鎖されたシステムにおける順次精製によるCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の組成物の生成
この実施例は、対象から得られたアフェレーシス産物試料からCD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞集団を富化または選択する例示的な方法を説明する。同じ出発試料からCD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞集団を順次正の選択に供すために、複数のクロマトグラフィーカラムを有する閉鎖されたシステムを使用して工程を行う。
【0327】
A. CD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞集団の富化
図1Aに示す例示的な工程では、閉鎖された装置14中に、一連の免疫クロマトグラフィー選択カラムおよび除去カラムが配置され、これらは互いに、かつ様々なチュービングラインおよび液相の流動を制御するためのバルブ13を経由して蠕動ポンプ8と、操作可能に接続される。
【0328】
第1の選択カラム1は、選ばれた体積のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス3、例えばアガロース樹脂、例えばT細胞の単離のための米国特許出願公開第2015/0024411号に記載されるような樹脂、例えばT細胞のサイズよりも大きく設計された排除限界を有するもの、例えば排除サイズ6×106ダルトンを有するSuperflow(商標)アガロースよりも小さな排除サイズを有するAgarose Beads Technologies, Madrid, Spainから得られるようなアガロースを収容する。第1のカラム中のマトリックスは、Strep-Tactin(登録商標)マルチマー(例えば、SEQ ID NO:12、13、15もしくは16(IBA GmbH, Germany)のいずれかで示されるストレプトアビジン変異体、または国際公開公報PCT出願WO2014/076277に記載のストレプトアビジン変異体を含む)と結合している。第2の選択カラム2は、選ばれた体積のアフィニティクロマトグラフィーマトリックス4、例えばアガロース樹脂、例えば上記のような樹脂を収容し、該マトリックスも、Strep-Tactin(登録商標)マルチマーと結合している。
【0329】
抗CD8 Fabフラグメントを収容するリザーバ18に負荷してポンプ8、チュービング、およびバルブ13を通過させて流すことにより、抗CD8 Fabを第1の選択カラム1に添加し、それによって抗CD8 Fabが、Fabフラグメントにおいてその重鎖のカルボキシ末端に融合されているTwin Strep-Tag(登録商標)(例えばSEQ ID NO:10に示される;IBA GmbH)によってアフィニティマトリックス3上のStrep-Tactin(登録商標)に固定化されることになる。(例えば、米国特許出願公開第2015/0024411号を参照されたい)。一部の態様では、洗浄緩衝液リザーバ6からの洗浄緩衝液、例えば0.5%ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、または組換えヒト血清アルブミンを含有するリン酸緩衝食塩水(PBS)をロードして、操作可能に接続されたチュービングを介して第1の選択カラムを通過させて流す。通過画分を、第1の選択カラムと廃棄物容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、廃棄物容器10に向かわせる。一部の態様では、洗浄段階を複数回繰り返す。
【0330】
抗CD4Fabフラグメント19を収容するリザーバに負荷して、ポンプ8、チュービング、およびバルブ13を通過させて流すことにより、抗CD4 Fabを第2の選択カラム2に添加し、それによって抗CD8 Fabが、Twin Strep-Tag(登録商標)によってアフィニティマトリックス4上のStrep-Tactin(登録商標)に固定化されることになる。一部の態様では、洗浄緩衝液リザーバ6からの洗浄緩衝液を、操作可能に接続されたチュービングを介して第2の選択カラムを通過させて流す。通過画分を、第2の選択カラムと廃棄物容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、廃棄物容器10に向かわせる。一部の態様では、洗浄段階を複数回繰り返す。
【0331】
第1の選択カラムおよび第2の選択カラムに収容されるアフィニティマトリックス試薬の体積は、同じであっても、または異なっていてもよく、選択の所望の収率および/または選択後のCD4+細胞とCD8+細胞との所望の比に基づき選ぶことができる。そのように選ばれた体積は、充填済みカラムの容積各1mLあたり選択可能な平均収率が細胞1×108個である、という仮定に基づく。例示的な一工程では、カラム容積は同じであり、例えば、抗CD8 Fabフラグメント用のカラムについて容積2mLおよび抗CD4 Fabフラグメントについて2mLカラムを使用する。カラム長および/またはカラム直径は、所望の容積に適合するように、例えばCD4+細胞とCD8+細胞との所望の培養開始比を達成するために選ぶことができる。一部の態様では、アフィニティマトリックスの体積を適応させるために、同じFab試薬が固定化された複数のカラムを直接連続して追加し、チュービングラインを介して相互に操作可能に接続することができる。
【0332】
細胞の選択を達成するためにアフェレーシス試料が第1の選択カラム1に添加され、それによってCD8+ T細胞は、試料中に存在するならば第1のカラムの樹脂3に結合したままであり、選択されなかった細胞(CD8- 細胞を含有する)は、カラムを通過する。一部の例に使用される出発試料中の細胞数は、マトリックスの合計体積に基づいて選択されるべき細胞数を上回るように、例えば各選択についてカラムの能力よりも大きな量(例えば、CD8+細胞が2億個よりも多くCD4+細胞が2億個よりも多い、例えば少なくとも約10%または20%以上多い量)を選ぶ。次に、選択されなかった細胞を含有する通過画分(陰性画分)を、操作可能に接続されたチュービングを介して第1のカラムから第2の選択カラム2まで通過させる。CD4+ T細胞は、第2のカラム中の樹脂4に結合したままである。流体およびさらなる選択されなかった細胞(陰性細胞)を含有する通過画分を、第2の選択カラムと廃棄物容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、廃棄物容器10に向かわせる。
【0333】
一部の態様では、第1の選択カラムは、代替的に、抗CD4アフィニティクロマトグラフィーマトリックスであり得、第2の選択カラムは、抗CD8アフィニティクロマトグラフィーマトリックスであり得る。
【0334】
洗浄緩衝液リザーバ6から、洗浄緩衝液を、操作可能に接続されたチュービングを介して第1のカラムおよび第2のカラムを通過させて流す。第1および第2のカラムから洗い出された任意の細胞を含有する通過画分を、第2の選択カラムと廃棄物容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、廃棄物容器10に向かわせる。一部の態様では、洗浄段階を複数回繰り返す。
【0335】
溶出緩衝液リザーバ7から、低濃度のビオチンまたはその類似体、例えば2.5mMデスチオビオチンのような溶出液を含有する緩衝液をロードして、操作可能に接続されたチュービングを介して第1のカラムおよび第2のカラムを通過させて流す。一部の態様では、溶出液は、細胞培地を含有する。富化されたCD4+細胞およびCD8+細胞ならびに残留ビオチンまたは類似体を含有する通過画分を、除去チャンバー9に向かわせ、ビオチンまたはその類似体を除去する。除去チャンバー9は、試料からビオチンまたはビオチン類似体を除去するために十分な体積を有する、Strep-Tactin(登録商標)を固定化させたSuperflow(商標)Sepharose(登録商標)ビーズのカラム、例えばビオチン300ナノモル/mLの結合能で合計容積6mLを有するカラムである。CD4+およびCD8+について正の選択をされた富化細胞を含有する通過画分を、除去チャンバー9と培養槽を操作可能に接続しているバルブを介して、バッグのような培養槽12に向かわせる。一部の態様では、溶出段階を繰り返す。
【0336】
一部の態様では、溶出段階を行った後に、T細胞活性化試薬(例えば抗CD3、抗CD28、IL-2、IL-15、IL-7、および/またはIL-21)を含有する活性化緩衝液を洗浄緩衝液と置き換えて除去チャンバーを経由して向かわせ、通過画分を培養槽に向かわせる。培養槽内に収集された陽性画分は、単離されかつ組み合わされたCD4+細胞集団およびCD8+細胞集団である。
【0337】
B. セントラルメモリーT(T
CM)細胞上にマーカーを発現している細胞が富化された、CD4+ T細胞集団およびCD8+ T細胞集団の富化
図1Bに示す例示的な工程では、閉鎖された装置14中に、一連の免疫クロマトグラフィー選択カラムおよび除去カラムが配置され、これらは互いに、かつ様々なチュービングラインおよび液相の流動を制御するためのバルブ13を経由して蠕動ポンプ8と、操作可能に接続される。
【0338】
第1の選択カラム1および第2の選択カラム2は、実施例2Aに関して上に記載されたものと同じである。加えて、該工程は、選ばれた体積のアフィニティマトリックス17、例えばアガロース樹脂、例えばT細胞の単離のための米国特許出願公開第2015/0024411号記載の樹脂、例えば上記実施例2Aの中で記載された樹脂のようなものを収容する第3の選択カラム15をさらに含む。
【0339】
実施例2A記載の抗CD8 Fabおよび抗CD4 Fabを、それぞれ第1のカラムおよび第2のカラムに添加する。CD28、CD62L、CCR7、CD27またはCD127のうちの1種のような、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現されるマーカーに対するさらなるFabフラグメントを収容するリザーバ20に負荷して、ポンプ8、チュービング、およびバルブ13を通過させて流すことにより、さらなるFabを第3の選択カラム15に添加し、それによって、さらなるFabが、Fabフラグメントにおいて実施例2A記載のようにその重鎖のカルボキシ末端と融合されているTwin Strep-Tag(登録商標)(SEQ ID NO:10; IBA GmbH)によってアフィニティマトリックス17上のStrep-Tactin(登録商標)とコンジュゲートされることになる。一部の態様では、実施例2A記載の洗浄緩衝液をロードして、操作可能に接続されたチュービングを介して第3の選択カラムを通過させて流す。通過画分を、第3の選択カラムと廃棄物容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、廃棄物容器10に向かわせる。一部の態様では、洗浄段階を複数回繰り返す。
【0340】
第1の選択カラム、第2および/または第3の選択カラムに収容されるアフィニティマトリックス試薬の体積は、同じであっても、または異なっていてもよく、選択の所望の収率、および/または、選択後の、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現されるマーカーを発現している細胞を富化されたCD4+細胞とCD8+細胞との所望の比に基づき選ぶことができる。そのように選ばれた体積は、充填済みカラムの容積各1mLあたり選択可能な平均収率が細胞1×108個である、という仮定に基づく。また、特定の選ばれた培養開始比、例えば、CD4+細胞と、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現されるマーカーが富化されたCD8+細胞含有集団(例えば、CD28、CD62L、CCR7、CD27またはCD127のうちの1つについてのさらなる選択に基づき富化されたCD8+細胞の集団)との培養開始比1:1について、富化された集団、例えばCD8+細胞の親集団を選択するためのマトリックスの体積は、CD4+ T細胞集団またはCD8+ T細胞集団のもう一方、例えばCD4+集団を選択するために使用されるマトリックスと比較して大きい。さらなる富化集団の親集団について選択するために使用したマトリックス、例えば抗CD8 Fabフラグメントを含むマトリックスの体積が、もう一方のマトリックスまたは複数種の他マトリックスの体積よりも大きい量または程度は、試料中に存在する親集団、例えばCD8+細胞の割合またはパーセンテージと比較した、試料中のさらなる富化された細胞集団の割合またはパーセンテージ(例えばCD8+/CD28+、CD8+/CD62L+、CD8+/CCR7+、CD8+/CD27+またはCD8+/CD127+)に基づいて選ばれる。これは、患者もしくは健康なドナーの間の平均に基づき推定することができ、または使用すべきカラムのサイズを決定する前に、選択が行われている所与の患者についてそれを測定することができる。
【0341】
例示的な一工程では、工程に使用されるカラム容積は、例えば、抗CD4 Fabフラグメントを有する2mLカラム、抗CD8 Fabフラグメントを有する6mLカラム、および抗CD62L Fabフラグメントを有する2mLカラムである。例えばCD4+細胞と、セントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現されるマーカーを発現している細胞が富化されたCD8+細胞、例えばCD8+/CD28+、CD8+/CD62L+、CD8+/CCR7+、CD8+/CD27+またはCD8+/CD127+細胞との所望の培養開始比を達成するために、所望の容積に適合するように、カラム長および/またはカラム直径を選ぶことができる。一部の態様では、アフィニティマトリックスの体積を適応させるために、同じFab試薬が固定化された複数のカラムを直接連続して追加し、チュービングラインを介して相互に操作可能に接続することができる。
【0342】
細胞の選択を達成するために、アフェレーシス試料が第1の選択カラム1に添加され、それによってCD8+ T細胞は、試料中に存在するならば第1のカラムの樹脂に結合したままであり、選択されなかった細胞(CD8-細胞を含む)は、カラムを通過する。一部の例に使用される出発試料中の細胞数は、マトリックスの合計体積に基づいて選択されるべき細胞数を上回るように、例えば各選択についてカラムの能力よりも大きな量(例えば、CD8+/CD62L+細胞が2億個よりも多くCD4+細胞が2億個よりも多い、例えば少なくとも約10%または20%以上多い量)を選ぶ。選択されなかった細胞を含有する通過画分(陰性画分)を、第1のカラムと第2のカラムを操作可能に接続しているバルブ13を介して、第2のカラム2まで通過するように向かわせる。CD4+ T細胞は、第2のカラム中の樹脂に結合したままである。流体およびさらなる選択されなかった細胞(陰性細胞)を含有する通過画分を、第2の選択カラムと陰性画分容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、第1の廃棄物容器10に向かわせる。
【0343】
洗浄緩衝液リザーバ6から、実施例2Aに記載したような洗浄緩衝液をロードし、カラムを操作可能に接続しているバルブおよびチューブを介して、第1のカラムおよび第2のカラムを通過させて流す。第1および第2のカラムから洗い出された任意の細胞を含有する通過画分を、第2の選択カラムと廃棄物容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、廃棄物容器10に向かわせる。一部の態様では、洗浄段階を複数回繰り返す。
【0344】
溶出緩衝液リザーバ7から、ビオチンまたはその類似体、例えば2.5mMデスチオビオチンのような溶出剤を含有する緩衝液をロードして、溶出緩衝液リザーバと第2のカラムを操作可能に接続しているバルブ13およびチュービングを介して、第2のカラム2を通過させて流す。一部の態様では、溶出緩衝液は、細胞培地を含有する。富化されたCD4+細胞および残留ビオチンを含有する通過画分を、バルブ13およびチュービングを介して第2のカラムに操作可能に接続される除去チャンバー9に向かわせて、実施例2Aに記載のようにビオチンを除去する。CD4+について正の選択をされた富化細胞を含有する通過画分を、除去チャンバー9と培養槽を操作可能に接続しているバルブ13を介して、バッグのような培養槽12に向かわせる。一部の態様では、溶出段階を繰り返す。一部の態様では、溶出段階を行った後に、T細胞活性化試薬(例えば抗CD3、抗CD28、IL-2、IL-15、IL-7、および/またはIL-21)を含有する活性化緩衝液を洗浄緩衝液と置き換え、洗浄緩衝液リザーバからバルブおよびチュービングを介して、第2のカラム、除去チャンバーおよび培養槽に向かわせる。培養槽内に収集された陽性画分は、単離されたCD4+細胞集団である。
【0345】
溶出緩衝液リザーバ7から、ビオチンのような溶出剤を含有する緩衝液をロードして、溶出緩衝液リザーバと第1のカラム1を操作可能に接続しているバルブ13およびチュービングを介して第1のカラムを通過させて流す。一部の態様では、溶出緩衝液は、細胞培地を含有する。富化されたCD8+細胞および残留ビオチンまたはその類似体を含有する通過画分を、バルブ13およびチュービングを介して第1のカラムに操作可能に接続される除去チャンバー9に向かわせて、実施例2Aに記載のようにビオチンまたはビオチン類似体を除去する。CD8+について正の選択をされた富化細胞を含有する通過画分を、除去チャンバー9と第3のカラムを操作可能に接続しているバルブ13を介して、第3のカラム15を通過するように向かわせる。CD8+細胞のCD62L+サブセットは、第3のカラム中の樹脂に結合したままである。流体およびさらなる選択されなかった細胞(陰性細胞)を含有する通過画分を、第3の選択カラムと第2の廃棄物容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、第2の廃棄物容器11に向かわせる。
【0346】
洗浄緩衝液リザーバ6から、実施例2Aに記載したような洗浄緩衝液をロードし、洗浄緩衝液リザーバと第3のカラム15を操作可能に接続しているバルブ13およびチュービングを介して第3のカラムを通過させて流す。第3のカラムから洗い出された任意の細胞を含有する通過画分を、第3の選択カラムと第2の廃棄物容器を操作可能に接続しているバルブ13を介して、第2の廃棄物容器11に向かわせる。一部の態様では、洗浄段階を複数回繰り返す。
【0347】
溶出緩衝液リザーバ7から、ビオチンまたはその類似体、例えば2.5mMデスチオビオチンのような溶出剤を含有する緩衝液をロードして、溶出緩衝液リザーバと第3のカラムを操作可能に接続しているバルブ13およびチュービングを介して第3のカラム15を通過させて流す。一部の態様では、溶出緩衝液は、細胞培地を含有する。CD28、CD62L、CCR7、CD27またはCD127のうちの1つを発現しているセントラルメモリーT(TCM)細胞が富化されたCD8+細胞および残留ビオチンまたはその類似体を含有する通過画分を、バルブ13およびチュービングを介して第3のカラムに操作可能に接続される除去チャンバー9に向かわせ、実施例2Aに記載のようにビオチンまたはビオチン類似体を除去する。CD8について、およびCD28、CD62L、CCR7、CD27またはCD127のうちの1つのようなセントラルメモリーT(TCM)細胞上に発現されるマーカーについて正の選択をされた富化T細胞メモリー細胞を含有する通過画分を、除去チャンバー9と培養槽を操作可能に接続しているバルブ13を介してバッグのような培養槽12に向かわせる。一部の態様では、培養槽は、T細胞活性化試薬、細胞培地、またはその両方を収容する。一部の態様では、溶出段階を繰り返す。一部の態様では、溶出段階を行った後に、T細胞活性化試薬(例えば抗CD3、抗CD28、IL-2、IL-15、IL-7、および/またはIL-21)を含有する活性化緩衝液を洗浄緩衝液と置き換え、洗浄緩衝液リザーバからバルブおよびチュービングを介して、第1および/または第3のカラム、除去チャンバー、ならびに培養槽内に向かわせる。CD8+細胞、およびCD28、CD62L、CCR7、CD27またはCD127のうちの1つのようなセントラルメモリーT(TCM)細胞上のマーカーが陽性である細胞を含有する陽性画分を、予め収集したCD4+陽性画分と共に培養槽内に収集する。一部の態様では、工程の段階は、例えば、CD8+細胞、およびCD28、CD62L、CCR7、CD27またはCD127のうちの1つのような、セントラルメモリーT(TCM)細胞上のマーカーが陽性である細胞を含有する細胞を最初に富化し、その後CD4+細胞を富化することによって、異なる順序で行うことができる。
【0348】
実施例3:遺伝子操作および養子細胞療法における使用のための閉鎖されたシステムでの順次精製によるCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞の組成物の生成
本実施例は、養子細胞療法に関連する使用のための細胞の遺伝子操作に関連する方法におけるインキュベーション/活性化および形質導入のための、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を含有する細胞組成物、例えばある培養開始比で存在するCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を選択および生成させるための手順を説明する。
【0349】
実施例2A(CD4+およびCD8+)または実施例2B(CD4+およびCD62L+を富化されたCD8+)のいずれかに記載のように実施した、CD4+細胞およびCD8+細胞の選択によって生成した細胞の組成物を、刺激条件下で、例えばIL-2(100IU/mL)の存在下で抗CD3/抗CD28を使用し、例えば37℃で72時間、インキュベートする。次に、キメラ抗原受容体(CAR)または組換えTCRのような組換え抗原受容体の発現用の組換え遺伝子を、例えばウイルス形質導入により細胞内に導入することによって、刺激された細胞を遺伝子操作する。一部の態様では、導入に続いて、細胞を一般的には37℃でさらにインキュベートして、例えば細胞の増殖を可能にする。
【0350】
該方法は、操作されたCD4+ T細胞およびCD8+ T細胞を有するアウトプット組成物を生じる。一部の態様では、選択カラムの選ばれた容積に基づき、操作の前に刺激条件下でインキュベートされる組成物中のCD4+細胞とCD8+細胞との比(培養開始比)は、インキュベーション、刺激および/または操作段階に続いて、CD4+細胞とCD8+細胞との、もしくは操作されたCD4+細胞と操作されたCD8+細胞との特定の所望のアウトプット比、またはそのような所望のアウトプット比の許容誤差の特定の範囲内であるそのような比を生じる。一部の態様では、そのような所望のアウトプット比または許容誤差の範囲内の比は、許容される特定の時間パーセンテージで達成される。
【0351】
実施例4:Fabコーティング表面の最適以下の収率濃度を使用した細胞の選択
異なる細胞数の範囲のヒトアフェレーシス由来PBPC試料を、抗CD4 Fabとコンジュゲートした磁気マイクロビーズおよび抗CD8 Fabとコンジュゲートした磁気マイクロビーズと共に単一の組成物中で、穏やかに混合しながら約30分間インキュベートした。このインキュベーションに続いて、選択されなかった細胞の溶出、および上記のように実施した、磁場を使用した回収を行った。細胞100万個あたり各マイクロビーズ試薬0.05~1.5mLを使用したインキュベーションにより、それぞれ低い収率のCD4+細胞またはCD8+細胞(インキュベーションにおける陽性細胞と比較してそれぞれの選択について回収した細胞)、本研究では概ね15~70%の範囲であった)を産生した。平均して、そのような最適以下の収率濃度を使用した場合、細胞あたりの試薬濃度が高いほど、大きな収率が観察された。
【0352】
したがって、一例では、細胞数あたり最適以下の濃度の、CD4結合剤とカップリングしたビーズおよびCD8結合剤とカップリングしたビーズと共にPBMCをインキュベートし、磁場を使用して細胞を回収する選択を実施する。細胞あたりの試薬濃度と、使用するビーズについての収率との間に観測された関係に基づき、CD4結合試薬またはCD8結合試薬の一方またはもう一方を、より高い濃度で含ませる(例えば、より高い数のCd4結合分子またはCD8結合分子が細胞あたりに含まれる)ことによって、選択後に、1.5:1または2:1または3:1または1:1.5、1:2、または1:3のような、1よりも大きいまたは1未満であるCD8+細胞:CD4+細胞のアウトプット比を産生する。アウトプット比は、活性化、形質導入、および/または増殖のような1つまたは複数の追加的な段階の後に産生される予定の操作された細胞を含有する組成物中のCD8細胞とCD4細胞との所望の比に基づき選択され得る。
【0353】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> Juno Therapeutics, Inc.
<120> METHODS FOR ISOLATING, CULTURING, AND GENETICALLY ENGINEERING IMMUNE CELL
POPULATIONS FOR ADOPTIVE THERAPY
<150> US 61/983,415
<151> 2014-04-23
<160> 19
<170> FastSEQ for Windows Version 4.0
<210> 1
<211> 3
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Streptavidin-binding peptide
<220>
<221> VARIANT
<222> 3
<223> Xaa is selected from glutamine, asparagine and
methionine
<400> 1
His Pro Xaa
1
<210> 2
<211> 4
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Streptavidin-binding peptide
<400> 2
His Pro Gln Phe
1
<210> 3
<211> 8
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Streptavidin-binding peptide
<220>
<221> VARIANT
<222> 1
<223> Xaa = Trp, Lys or Arg
<220>
<221> VARIANT
<222> 2
<223> Xaa = any amino acid
<220>
<221> VARIANT
<222> 7
<223> Xaa = Gly or Glu
<220>
<221> VARIANT
<222> 8
<223> Xaa = Gly, Lys or Arg
<400> 3
Xaa Xaa His Pro Gln Phe Xaa Xaa
1 5
<210> 4
<211> 8
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Streptavidin-binding peptide
<220>
<221> VARIANT
<222> 2
<223> Xaa = any amino acid
<220>
<221> VARIANT
<222> 7
<223> Xaa = Gly or Glu
<220>
<221> VARIANT
<222> 8
<223> Xaa = Gly, Lys or Arg
<400> 4
Trp Xaa His Pro Gln Phe Xaa Xaa
1 5
<210> 5
<211> 8
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Streptavidin-binding peptide
<400> 5
Trp Arg His Pro Gln Phe Gly Gly
1 5
<210> 6
<211> 8
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Strep-tag (registered trademark) II
<400> 6
Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys
1 5
<210> 7
<211> 28
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Sequential modules of streptavidin-binding peptide
<220>
<221> VARIANT
<222> (9)...(20)
<223> Xaa at positions 9-20 may be any amino acid and 4
of them may be absent
<400> 7
Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa Xaa
1 5 10 15
Xaa Xaa Xaa Xaa Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys
20 25
<210> 8
<211> 28
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Sequential modules of streptavidin-binding peptide
<220>
<221> VARIANT
<222> (9)...(12)
<223> These amino acids may be absent
<400> 8
Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Ser
1 5 10 15
Gly Gly Gly Ser Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys
20 25
<210> 9
<211> 30
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Twin-Strep-Tag
<400> 9
Ser Ala Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys Gly Gly Gly Ser Gly Gly
1 5 10 15
Gly Ser Gly Gly Gly Ser Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys
20 25 30
<210> 10
<211> 30
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Twin-Strep-Tag
<400> 10
Ser Ala Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys Gly Gly Gly Ser Gly Gly
1 5 10 15
Gly Ser Gly Gly Ser Ala Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys
20 25 30
<210> 11
<211> 159
<212> PRT
<213> Streptomyces Avidinii
<220>
<223> Streptavidin
<400> 11
Asp Pro Ser Lys Asp Ser Lys Ala Gln Val Ser Ala Ala Glu Ala Gly
1 5 10 15
Ile Thr Gly Thr Trp Tyr Asn Gln Leu Gly Ser Thr Phe Ile Val Thr
20 25 30
Ala Gly Ala Asp Gly Ala Leu Thr Gly Thr Tyr Glu Ser Ala Val Gly
35 40 45
Asn Ala Glu Ser Arg Tyr Val Leu Thr Gly Arg Tyr Asp Ser Ala Pro
50 55 60
Ala Thr Asp Gly Ser Gly Thr Ala Leu Gly Trp Thr Val Ala Trp Lys
65 70 75 80
Asn Asn Tyr Arg Asn Ala His Ser Ala Thr Thr Trp Ser Gly Gln Tyr
85 90 95
Val Gly Gly Ala Glu Ala Arg Ile Asn Thr Gln Trp Leu Leu Thr Ser
100 105 110
Gly Thr Thr Glu Ala Asn Ala Trp Lys Ser Thr Leu Val Gly His Asp
115 120 125
Thr Phe Thr Lys Val Lys Pro Ser Ala Ala Ser Ile Asp Ala Ala Lys
130 135 140
Lys Ala Gly Val Asn Asn Gly Asn Pro Leu Asp Ala Val Gln Gln
145 150 155
<210> 12
<211> 159
<212> PRT
<213> Streptomyces Avidinii
<220>
<223> Mutein Streptavidin Val44-Thr45-Ala46-Arg47
<400> 12
Asp Pro Ser Lys Asp Ser Lys Ala Gln Val Ser Ala Ala Glu Ala Gly
1 5 10 15
Ile Thr Gly Thr Trp Tyr Asn Gln Leu Gly Ser Thr Phe Ile Val Thr
20 25 30
Ala Gly Ala Asp Gly Ala Leu Thr Gly Thr Tyr Val Thr Ala Arg Gly
35 40 45
Asn Ala Glu Ser Arg Tyr Val Leu Thr Gly Arg Tyr Asp Ser Ala Pro
50 55 60
Ala Thr Asp Gly Ser Gly Thr Ala Leu Gly Trp Thr Val Ala Trp Lys
65 70 75 80
Asn Asn Tyr Arg Asn Ala His Ser Ala Thr Thr Trp Ser Gly Gln Tyr
85 90 95
Val Gly Gly Ala Glu Ala Arg Ile Asn Thr Gln Trp Leu Leu Thr Ser
100 105 110
Gly Thr Thr Glu Ala Asn Ala Trp Lys Ser Thr Leu Val Gly His Asp
115 120 125
Thr Phe Thr Lys Val Lys Pro Ser Ala Ala Ser Ile Asp Ala Ala Lys
130 135 140
Lys Ala Gly Val Asn Asn Gly Asn Pro Leu Asp Ala Val Gln Gln
145 150 155
<210> 13
<211> 159
<212> PRT
<213> Streptomyces Avidinii
<220>
<223> Mutein Streptavidin Ile44-Gly45-Ala-46-Arg47
<400> 13
Asp Pro Ser Lys Asp Ser Lys Ala Gln Val Ser Ala Ala Glu Ala Gly
1 5 10 15
Ile Thr Gly Thr Trp Tyr Asn Gln Leu Gly Ser Thr Phe Ile Val Thr
20 25 30
Ala Gly Ala Asp Gly Ala Leu Thr Gly Thr Tyr Ile Gly Ala Arg Gly
35 40 45
Asn Ala Glu Ser Arg Tyr Val Leu Thr Gly Arg Tyr Asp Ser Ala Pro
50 55 60
Ala Thr Asp Gly Ser Gly Thr Ala Leu Gly Trp Thr Val Ala Trp Lys
65 70 75 80
Asn Asn Tyr Arg Asn Ala His Ser Ala Thr Thr Trp Ser Gly Gln Tyr
85 90 95
Val Gly Gly Ala Glu Ala Arg Ile Asn Thr Gln Trp Leu Leu Thr Ser
100 105 110
Gly Thr Thr Glu Ala Asn Ala Trp Lys Ser Thr Leu Val Gly His Asp
115 120 125
Thr Phe Thr Lys Val Lys Pro Ser Ala Ala Ser Ile Asp Ala Ala Lys
130 135 140
Lys Ala Gly Val Asn Asn Gly Asn Pro Leu Asp Ala Val Gln Gln
145 150 155
<210> 14
<211> 126
<212> PRT
<213> Streptomyces Avidinii
<220>
<223> Minimal streptavidin
<400> 14
Glu Ala Gly Ile Thr Gly Thr Trp Tyr Asn Gln Leu Gly Ser Thr Phe
1 5 10 15
Ile Val Thr Ala Gly Ala Asp Gly Ala Leu Thr Gly Thr Tyr Glu Ser
20 25 30
Ala Val Gly Asn Ala Glu Ser Arg Tyr Val Leu Thr Gly Arg Tyr Asp
35 40 45
Ser Ala Pro Ala Thr Asp Gly Ser Gly Thr Ala Leu Gly Trp Thr Val
50 55 60
Ala Trp Lys Asn Asn Tyr Arg Asn Ala His Ser Ala Thr Thr Trp Ser
65 70 75 80
Gly Gln Tyr Val Gly Gly Ala Glu Ala Arg Ile Asn Thr Gln Trp Leu
85 90 95
Leu Thr Ser Gly Thr Thr Glu Ala Asn Ala Trp Lys Ser Thr Leu Val
100 105 110
Gly His Asp Thr Phe Thr Lys Val Lys Pro Ser Ala Ala Ser
115 120 125
<210> 15
<211> 126
<212> PRT
<213> Streptomyces Avidinii
<220>
<223> Mutein Streptavidin Val44-Thr45-Ala46-Arg47
<400> 15
Glu Ala Gly Ile Thr Gly Thr Trp Tyr Asn Gln Leu Gly Ser Thr Phe
1 5 10 15
Ile Val Thr Ala Gly Ala Asp Gly Ala Leu Thr Gly Thr Tyr Val Thr
20 25 30
Ala Arg Gly Asn Ala Glu Ser Arg Tyr Val Leu Thr Gly Arg Tyr Asp
35 40 45
Ser Ala Pro Ala Thr Asp Gly Ser Gly Thr Ala Leu Gly Trp Thr Val
50 55 60
Ala Trp Lys Asn Asn Tyr Arg Asn Ala His Ser Ala Thr Thr Trp Ser
65 70 75 80
Gly Gln Tyr Val Gly Gly Ala Glu Ala Arg Ile Asn Thr Gln Trp Leu
85 90 95
Leu Thr Ser Gly Thr Thr Glu Ala Asn Ala Trp Lys Ser Thr Leu Val
100 105 110
Gly His Asp Thr Phe Thr Lys Val Lys Pro Ser Ala Ala Ser
115 120 125
<210> 16
<211> 126
<212> PRT
<213> Streptomyces Avidinii
<220>
<223> Mutein Streptavidin Ile44-Gly45-Ala-46-Arg47
<400> 16
Glu Ala Gly Ile Thr Gly Thr Trp Tyr Asn Gln Leu Gly Ser Thr Phe
1 5 10 15
Ile Val Thr Ala Gly Ala Asp Gly Ala Leu Thr Gly Thr Tyr Ile Gly
20 25 30
Ala Arg Gly Asn Ala Glu Ser Arg Tyr Val Leu Thr Gly Arg Tyr Asp
35 40 45
Ser Ala Pro Ala Thr Asp Gly Ser Gly Thr Ala Leu Gly Trp Thr Val
50 55 60
Ala Trp Lys Asn Asn Tyr Arg Asn Ala His Ser Ala Thr Thr Trp Ser
65 70 75 80
Gly Gln Tyr Val Gly Gly Ala Glu Ala Arg Ile Asn Thr Gln Trp Leu
85 90 95
Leu Thr Ser Gly Thr Thr Glu Ala Asn Ala Trp Lys Ser Thr Leu Val
100 105 110
Gly His Asp Thr Phe Thr Lys Val Lys Pro Ser Ala Ala Ser
115 120 125
<210> 17
<211> 28
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Twin Strep-tag
<400> 17
Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Ser
1 5 10 15
Gly Gly Gly Ser Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys
20 25
<210> 18
<211> 24
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Twin Strep-tag
<400> 18
Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Ser
1 5 10 15
Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys
20
<210> 19
<211> 28
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Synthetic
<220>
<223> Twin Strep-tag
<400> 19
Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Ser
1 5 10 15
Gly Gly Ser Ala Trp Ser His Pro Gln Phe Glu Lys
20 25