(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071451
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】少なくとも5質量%の酸化チタン、α-シアノジフェニルアクリレート誘導体、及び4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体を含む組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/40 20060101AFI20240517BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20240517BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240517BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K8/40
A61K8/29
A61K8/37
A61Q17/04
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024043608
(22)【出願日】2024-03-19
(62)【分割の表示】P 2022537166の分割
【原出願日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】1915117
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マルタン・ジョソ
(57)【要約】
【課題】効率が高く、且つ光安定性を有する、無機遮蔽剤をベースとする光防御組成物を提供すること。
【解決手段】1)酸化チタンから選択される少なくとも1種の無機UV遮蔽剤と;2)定められた式の少なくとも1種のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体と;3)定められた式の少なくとも1種の4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体と;を含む組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 酸化チタンから選択される少なくとも1種の無機UV遮蔽剤と;
- 次の式(I):
【化1】
(式中、
R1及びR2は、互いに独立に、水素原子、直鎖若しくは分岐のC1~C30アルキル基、又は直鎖若しくは分岐のC1~C30アルコキシ基を表し;
R3は、直鎖又は分岐のC1~C30、好ましくはC1~C24、更に優先的にはC1~12アルキル基を表す)
の少なくとも1種のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体と;
- 次の式(II):
【化2】
(式中、
Aは、カルボニル官能基を有する2個の1価の基を含む、UV放射を吸収する発色団基であり;
R4は、水素原子、直鎖若しくは分岐のC1~C8アルキル基、又は直鎖若しくは分岐のC1~C8アルコキシ基を表し;
R5は、水素原子又は直鎖若しくは分岐のC1~C8アルキル基を表す)
の少なくとも1種の4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体と;
を含む組成物。
【請求項2】
前記無機UV遮蔽剤は、被覆された又は被覆されていない酸化チタンから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記被覆された酸化チタンは、アミノ酸、蜜蝋、脂肪酸、脂肪アルコール、陰イオン性界面活性剤、レシチン、脂肪酸のナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、若しくはアルミニウム塩、(チタン又はアルミニウムの)金属アルコキシド、ポリエチレン、シリコーン、タンパク質(コラーゲン、エラスチン)、アルカノールアミン、酸化ケイ素、金属酸化物、又はヘキサメタリン酸ナトリウムなどの化合物を用いて、化学的性質、電子的性質、機械化学的性質、及び/又は機械的性質の1つ又は複数に対する表面処理が施された顔料である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記二酸化チタン粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)により決定された数平均一次粒子径は、100nm未満、優先的には50nm未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記酸化チタンは、前記組成物の総質量に対し、5質量%以上の量、好ましくは10質量%以上の量、更に優先的には15質量%以上の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)中、R1及びR2は、互いに独立に、水素原子及び直鎖又は分岐のC1~C30から、好ましくはC1~C8アルコキシ基から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)中、R1及びR2の一方は水素原子を表し、他方は直鎖C1~C8、好ましくはC1~C4アルコキシ基を表し、更に優先的には、R1は水素原子を表し、R2は直鎖C1~C4アルコキシ基、好ましくはメトキシ基を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
式(I)中、R3は、直鎖又は分岐のC2~C20アルキル基を表す、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
式(I)中、R3は、分岐C3~C10アルキル基、好ましくは2-エチルヘキシル基を表す、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
式(I)の化合物は、2-シアノ-3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニルプロペン酸2-エチルヘキシル(INCI名:エチルヘキシルメトキシクリレン(Ethylhexyl methoxycrylene))である、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
式(I)のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体は、前記組成物の総質量に対し、0.5質量%以上、好ましくは2質量%以上、更に優先的には3質量%以上の濃度で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
式(II)の化合物は、次の式(IIa):
【化3】
(式中、
R
4は、水素原子、直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルキル基又は直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルコキシ基を表し;
R
5は、水素原子又は直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルキル基を表し;
R
6は、-C(O)CH
3、-CO
2R
8、-C(O)NH
2、及び-C(O)N(R
9)
2から選択され;
R
7は、直鎖又は分岐のC
1~C
30アルキル基を表し;
R
8は、直鎖又は分岐のC
1~C
20アルキル基を表し;
R
9は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐のC
1~C
8アルキル基を表し;
Xは、O又はNHを表す)
の化合物から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
式(II)の化合物は、次の式(IIb)又は(IIc):
【化4】
(式中、
R
6は、-CO
2R
8を表し;
R
7は、直鎖又は分岐のC
1~C
8アルキルを表し;
R
8は、直鎖又は分岐のC
1~C
8アルキルを表し;
Xは、Oを表す)
の化合物から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
式(II)の化合物は、α-シアノ-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル、α-アセチル-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル、α-アセチル-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル、α-アセチル-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソアミル、α-アセチル-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジエチル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ビス(2-エチルヘキシル)、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジイソアミル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジドデシル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジパルミトイル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジイソプロピル、及びマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンから選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
式(II)の化合物は、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン(INCI名:Diethylhexyl syringylidenemalonate)である、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
式(II)の4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体は、前記組成物の総質量に対し、0.5質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、更に優先的には2.5質量%以上の濃度で存在する、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
有機UV遮蔽剤の量は、前記組成物の総質量に対し、5質量%未満、好ましくは2質量%未満である、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
酸化チタン以外の無機UV遮蔽剤の量は、前記組成物の総質量に対し、5質量%未満、好ましくは2質量%未満である、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
紫外線防御指数(SPF)の値が少なくとも30、好ましくは少なくとも50である、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
皮膚、特にヒトの皮膚に、UV放射に対抗する処置を施すための美容的方法であって、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物を皮膚に適用することから構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタンから選択される少なくとも1種の無機UV遮蔽剤を組成物の総質量に対し少なくとも5質量%と、定められた式の少なくとも1種のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体と、定められた式の少なくとも1種のヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体と、を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はまた、前記組成物を用いて皮膚にUV放射に対抗する処置を施すための美容的方法にも関する。
【0003】
波長が280~400nmの間にある光の放射は、ヒトの表皮を褐色化させることが可能である。UVB線として知られている波長280~320nmの光線は、皮膚に紅斑及び熱傷を引き起こし、これは褐色化の進行に不利となり得る。UVA光として知られている波長320~400nmの光線は、皮膚に有害な変化を起こす力があり、特に弾力性の喪失やシワの出現による早期の老化を招く。
【0004】
したがって、UV線は遮断すべきである。UVA及びUVB放射の遮断に関し活性を示すUV遮蔽剤を含有する、ヒトの表皮を保護するための化粧用組成物は、現時点においても存在する。
【0005】
UVA及びUVB線を遮断するための様々な種類の日焼け止めとして、鉱物顔料及び有機遮蔽剤が市販されている。これらの遮蔽剤は、日光の有害な光線を吸収又は遮断することが可能であると同時に、使用者にとっては無害なままでなければならない。
【0006】
これに従い、化粧品分野において、有害なUV線をある程度選択的に吸収することができる有機日焼け止めが今日までに数多く提案されてきた。しかし、これらの遮蔽剤は、様々な理由から、完全に満足できるものにはなっていない。
【0007】
そのため、主としてUV線を散乱/反射することによって日焼け止めとしても作用すると同時に、使用者にとってより高い安全性を提供する鉱物顔料の使用を優先することで、こうした有機遮蔽剤の使用を回避することが一層強く求められている。
【0008】
この点で現在最も広く使用されている鉱物顔料は酸化チタンであり、その遮蔽特性についてはよく知られている。
【0009】
更に、酸化亜鉛などの他の鉱物遮蔽剤は環境に有害であるため、酸化チタンを含む日光防御(sun protection)製品を日焼け止めとして提案することが特に望ましい。
【0010】
しかし、好適な防御係数を得るためには、日光防御(antisun)組成物にTiO2を高比率で、特に5質量%以上導入できることが必要である。
【0011】
ところが、TiO2をこのような含有量で用いると、これらの顔料を無酸素媒体中に含む組成物が光に対し不安定になり、青色の呈色として現れることが観察されている。この、光によって誘起される、フォトブルーイングとしても知られる呈色は、美的観点から明らかに望ましくない。
【0012】
詳細に説明すると、日焼け止めとして使用される二酸化チタンは半導体の性質を有している。これが紫外光に曝された際にフォトブルーイング現象が認められることは、皮膚に有害な作用を引き起こす可能性があるフリーラジカルを生成させ得る化学反応が起こっていることを表している。
【0013】
したがって、二酸化チタンを単独の日焼け止めとして高含有量で含み、フォトブルーイングを一切起こすことなく、高水準で防御を行う日光防御製品を提案することが望ましい。
【0014】
(特許文献1)には、酸化チタンを含む日光防御組成物のフォトブルーイングを制限するために、変形可能な中空粒子を使用することが提案されている。しかしながら、このような粒子はマイクロプラスチックと見なされ、日光防御製品には望ましくない成分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そのため、効率が高く、且つ光安定性を有する、無機遮蔽剤をベースとする光防御組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
これに従い、本発明者らは、定められた式のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体と、定められた式のヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体とを、TiO2顔料を含有する組成物に導入することにより、前記組成物に本来付随するフォトブルーイングが大幅に低減されることを見出した。
【0018】
この発見が本発明の基礎を構成する。
【0019】
したがって、本発明の一主題は、特に、
1)酸化チタンから選択される少なくとも1種の無機UV遮蔽剤と;
2)次の式(I):
【化1】
(式中、
R1及びR2は、互いに独立に、水素原子、直鎖若しくは分岐のC1~C30アルキル基、又は直鎖若しくは分岐のC1~C30アルコキシ基を表し;
R3は、直鎖又は分岐のC1~C30、好ましくはC1~C24、更に優先的にはC1~12アルキル基を表す)の少なくとも1種のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体と;
3)次の式(II):
【化2】
(式中、
Aは、カルボニル官能基を有する2個の1価の基を含む、UV放射を吸収する発色団基であり;
R4は、水素原子、直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルキル基、又は直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルコキシ基を表し;
R5は、水素原子又は直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルキル基を表す)
の少なくとも1種の4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体と;を含む組成物、好ましくは化粧用組成物にある。
【0020】
本発明による組成物は、UV線を高い効率で遮断することが可能であり、それにより、皮膚をより良好に保護する。
【0021】
本発明による組成物は、光安定性を有し、このような酸化チタン種の顔料を無酸素媒体中に含む組成物が青色の呈色を示さない。
【0022】
更に本発明の組成物は、長時間に亘り安定である。
【0023】
更に本発明の組成物は、作業性が良好である。これは容易に広がり、皮膚上に白っぽい膜を出現させることなく、均一に適用することが可能である。
【0024】
更に本発明の組成物は、特に、皮膚に適用した後に光沢がありすぎず、油っぽくならず、且つべたつかない仕上がりという観点で良好な美容特性を有する。
【0025】
本発明の主題はまた、皮膚、特にヒトの皮膚に、UV放射に対抗する処置を施すための美容的方法であって、前記皮膚に本発明による組成物を適用することから構成される、方法にもある。
【0026】
第1の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、ピセイド(ポリダチン)を含まない。
【0027】
第2の特定の実施形態によれば、本発明による組成物がピセイド(ポリダチン)、2-シアノ-3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニルプロペン酸2-エチルヘキシル、及びマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンを含む場合、ピセイド(ポリダチン)、2-シアノ-3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニルプロペン酸2-エチルヘキシル、及びマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンの総質量は、組成物の総質量に対し3質量%ではない。
【0028】
第3の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、ピセイド(ポリダチン)も、レスベラトロールも、ピセアタンノールも、プテロスチルベンも含まない。
【0029】
第4の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、スチルベノイドを含まない。
【0030】
スチルベノイドは樹木の心材形成において副生する物質であり、ファイトアレキシンの性質を有する。化学的観点では、これらはスチルベン誘導体であり、多くの場合、1個又は複数個のフェノール性官能基を含む。生化学的観点では、これらは、フェニルプロパノイドとしても知られるフェニルアラニン誘導体の群に属する。これらの生合成経路の大部分は、カルコンなどの芳香族カルコノイドのそれと共通している。
【0031】
植物性スチルベノイドの中で十分に特徴付けられているものの一つがレスベラトロール(3,5,4’-トリヒドロキシ-trans-スチルベン)であり、これは、1939年に最初にバイケイソウ(ベラチュラム・アルバム(Veratrum album))から単離されたレゾルシノール誘導体であり、赤ブドウの皮や、漿果及び落花生を含む他の果実及び堅果中に見られる。スチルベノイドの非限定的な例として、ピセイド(ポリダチン)、レスベラトロール、ピセアタンノール、プテロスチルベン、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の他の主題、特徴、態様、及び利点は、以下の説明及び実施例を読むことにより一層明らかになるであろう。
【0033】
以下の本文では、別段の指定がない限り、値の範囲の境界値は、その範囲、とりわけ「~の間」及び「~から~の範囲」の表現に包含される。
【0034】
更に、本明細書で使用される「少なくとも1の」及び「少なくとも」という表現は、それぞれ「1又は複数の」及び「~以上」という表現と均等である。
【0035】
紫外線防御指数(SPF)により定められる日光防御の程度は、UV遮蔽剤を使用しなかった場合に紅斑閾値に到達させるまでに必要な曝露時間に対する、UV遮蔽剤を使用した場合に紅斑閾値に到達させるまでに必要な曝露時間の比として数値で表される。
【0036】
これは特に、ISO 24444の方法に準拠してin vivoで評価することができる。
【0037】
これはまた、B.L.Diffey in J.Soc.Cosmet.Chem.40,127-133,(1989)に記載されているin vitro法に準拠して測定することもできる。
【0038】
本特許出願の目的のための「効率の高い遮蔽組成物」という用語は、紫外線防御指数(SPF)の値を少なくとも30、好ましくは少なくとも50に到達させることができる組成物を指す。
【0039】
青色の出現は、程度の差はあるが、組成物が光に曝露されている最中に認められる。評価の原理は、試験品を、その分光分布が十分に定義されており、放出されるエネルギーが十分に定量されている照射光源で露光することから構成される。CPS-Sun-Test装置を使用し、これを用いて300~800nmのキセノンランプで照射を行う。
【0040】
次いで、フォトブルーイングを肉眼で評価することができる。
【0041】
フォトブルーイングは、Minolta CM1000測色計を使用して測定される測色値により評価することもできる:1回目の測定値はUVに曝露する直前(T0)に記録し、2回目はUVに曝露してから1時間後(T1H)に記録する。
【0042】
結果は(L,a,b)系で表される。ここでLは明度を表し、aは赤-緑軸を表し(-a=緑、+a=赤)、bは黄-青軸を表す(-b=青、+b=黄)。
【0043】
フォトブルーイングの評価で注目する値は、青色の変化を示すΔb、組成物の暗色化を示すΔL、及び色全体の変化を示すΔEである。より正確には、Δb及びΔLは、Δb=b
T1H-b
T0及びΔL=L
T1H-L
T0で定義される。Δbの値が小さいほど、フォトブルーイングに対する保護効果が高い。
ΔEは、変化ΔL、Δa、及びΔbから、次に示す式に従い求められる:
【数1】
【0044】
本発明による「長時間に亘り安定」という用語は、組成物を4℃~45℃の範囲の温度で保存してから1ヵ月後、好ましくは2ヵ月後も、色にも、匂いにも、粘度にも巨視的な変化が見られず、pHも変化していないことに加えて、微視的な外観も変化していないことを指す。
【0045】
本発明による組成物は、局所的に適用することが意図されており、したがって、生理学的に許容される媒体を含む。「生理学的に許容される媒体」という用語は、本明細書においては、ケラチン物質と適合性を有する媒体を意味する。
【0046】
本発明に関連する、「ケラチン物質」という用語は、特に、皮膚、頭皮、睫毛、眉毛、頭髪、体毛などのケラチン繊維、爪、及び口唇などの粘膜、より詳細には、皮膚(身体、顔、眼の周りの領域、又は瞼の、好ましくは身体又は顔の)を意味する。
【0047】
鉱物UV遮蔽剤
本発明による組成物は、酸化チタンから選択される1種又は複数種の鉱物UV遮蔽剤を含む。
【0048】
本発明による「UV遮蔽剤」という用語は、「光防御剤」という用語と同義である。
【0049】
酸化チタン顔料は、被覆されていてもよいし、又は被覆されていなくてもよい。
【0050】
被覆された顔料とは、アミノ酸、蜜蝋、脂肪酸、脂肪アルコール、陰イオン性界面活性剤、レシチン、脂肪酸のナトリウム、カリウム、亜鉛、鉄、若しくはアルミニウム塩、(チタン又はアルミニウムの)金属アルコキシド、ポリエチレン、シリコーン、タンパク質(コラーゲン、エラスチン)、アルカノールアミン、酸化ケイ素、金属酸化物、又はヘキサメタリン酸ナトリウムなどの化合物を用いて、化学的性質、電子的性質、機械化学的性質、及び/又は機械的性質の1つ又は複数に対する表面処理が施された顔料である。
【0051】
被覆された顔料は、より詳細には、次に示すもので被覆された酸化チタンである:
- シリカ、例えば、池田物産株式会社(Ikeda)からの製品サンベール(Sunveil)、Merck社からの製品Eusolex T-AVO、及びSunjin社からの製品Sunsil TIN 50;
- シリカ及び酸化鉄、例えば、池田物産株式会社からの製品サンベール F;
- シリカ及びアルミナ、例えば、テイカ株式会社(Tayca)からの製品Microtitanium Dioxide MT 500 SA及びMicrotitanium Dioxide MT 100 SA、並びにCroda社からの製品Tioveil;
- アルミナ、例えば石原産業株式会社からの製品タイペーク(Tipaque)TTO-55(B)及びタイペークTTO-55(A)、並びにSachtleben Pigments社からのUVT 14/4;
- ステアリン酸及び水酸化アルミニウム、例えば、テイカ株式会社からの製品Microtitanium Dioxide MT 100 TV、MT 100 TX、MT 100 Z、MT-01、及びMT 900Z;
- ステアリン酸及びアルミナ、例えば、Croda社からの製品Solaveil XT-300-LQ;
- ステアリン酸アルミニウム及びアルミナ、例えば、Croda社からの製品Solaveil CT-10 W、Solaveil CT 100-LQ、Solaveil CT 200-LQ、及びSolaveil CT-300 LQ;
- シリカ、アルミナ、及びアルギン酸、例えば、テイカ株式会社からの製品MT-100 AQ;
- アルミナ及びラウリン酸アルミニウム、例えば、テイカ株式会社からの製品Microtitanium Dioxide MT 100 S;
- 酸化鉄及びステアリン酸鉄、例えば、テイカ株式会社からの製品Microtitanium Dioxide MT 100 F、
- シリカ及びアルミナ(且つシリコーンで処理されている)、例えば、テイカ株式会社からの製品Microtitanium Dioxide MT 600 SAS、Microtitanium Dioxide MT 500 SAS、又はMicrotitanium Dioxide MT 100 SAS;
- シリカ、アルミナ、及びステアリン酸アルミニウム(且つシリコーンで処理されている)、例えば、チタン工業株式会社(Titan Kogyo)の製品STT-30-DS、
- シリカ(且つシリコーンで処理されている)、例えば、Sachtleben Pigments社からの製品UV-Titan X 195及びDSM Nutritional Products社からのParsol TX;
- アルミナ(且つシリコーンで処理されている)、例えば、石原産業株式会社からの製品タイペークTTO-55(S)又はSachtleben Pigments社からの製品UV Titan M 262;
- トリエタノールアミン、例えば、チタン工業株式会社からの製品STT-65-S;
- ステアリン酸、例えば、石原産業株式会社からの製品タイペークTTO-55(C)、
- ヘキサメタリン酸ナトリウム、例えば、テイカ株式会社からの製品Microtitanium Dioxide MT 150 W;
- オクチルトリメチルシランで処理されたTiO2、特に、Degussa Silices社からT 805の商品名で販売されているもの;
- ポリジメチルシロキサンで処理されたTiO2、特にCardre社から70250 Cardre UF TiO2SI3の商品名で販売されているもの;
- ポリジメチルハイドロジェンシロキサンで処理されたアナターゼ/ルチル型TiO2、特に、Color Techniques社からMicrotitanium Dioxide USP Grade Hydrophobicの商品名で販売されているもの。
【0052】
少なくとも1種の遷移金属、例えば、鉄、亜鉛、又はマンガン、より詳細にはマンガンがドープされたTiO2顔料も挙げることができる。好ましくは、前記ドープされた顔料は、油性分散体の形態にある。油性分散体中に存在する油は、好ましくは、カプリン酸/カプリル酸のトリグリセリドなどのトリグリセリドから選択される。
【0053】
酸化チタン粒子の油性分散体は、1種又は複数種の分散剤、例えばソルビタンエステル、例えばイソステアリン酸ソルビタン、又はポリオキシアルキレン化されたグリセロールの脂肪酸エステル、例えばクエン酸トリPPG-3ミリスチル、及びポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3を含むこともできる。好ましくは、酸化チタン粒子の油性分散体は、ポリオキシアルキレン化されたグリセロールの脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種の分散剤を含む。より詳細には、マンガンをドープしたTiO2粒子をクエン酸トリPPG-3ミリスチル及びポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3の存在下、並びにイソステアリン酸ソルビタンの存在下にカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド中に分散させた油性分散体(INCI名:酸化チタン(titanium dioxide)(及び)クエン酸トリPPG-3ミリスチル(tri-PPG-3 myristyl ether citrate)(及び)ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3(polyglyceryl-3 ricinoleate)(及び)イソステアリン酸ソルビタン(sorbitan isostearate))、特に、Croda社からOptisol TD50の商品名で販売されている製品などを挙げることができる。
【0054】
被覆されていない酸化チタン顔料は、例えば、テイカ株式会社からMicrotitanium Dioxide MT 500 B又はMicrotitanium Dioxide MT 600 Bの商品名で、Degussa社からP 25の名称で、Wackher社からTransparent titanium oxide PWの名称で、三好化成株式会社(Miyoshi Kasei)からUFTRの名称で、株式会社トーメン(Tomen)からITSの名称で、及びTioxide社からTioveil AQの名称で販売されている。
【0055】
本発明の特定の実施形態によれば、二酸化チタンナノ粒子が利用されるであろう。
【0056】
好ましい実施形態によれば、この二酸化チタン粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査型電子顕微鏡(SEM)により決定される数平均一次粒子径は、100nm未満、優先的には50nm未満である。
【0057】
本組成物に、その白く着色する性質を利用するように、より大きなサイズの二酸化チタンを、任意選択的に酸化鉄と組み合わせて含むことにより、ファンデーションタイプの薄い色が付いた製品又は皮膚を白く塗るコンシーラー製品を得ることもできる。
【0058】
酸化チタンは、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対し、5質量%以上の量、好ましくは10質量%以上の量、更に優先的には15質量%以上の量で存在する。
【0059】
本発明の特定の実施形態によれば、酸化チタンは、組成物の総質量に対し、5質量%~25質量%の範囲、好ましくは10質量%~20質量%の範囲、更に優先的には12質量%~18質量%の範囲の量で存在する。
【0060】
本発明の特定の実施形態によれば、組成物は、組成物の総質量に対し、有機UV遮蔽剤を、5質量%未満、好ましくは2質量%未満の量で含む。有利には、本発明による組成物は、有機UV遮蔽剤を含まない。
【0061】
本発明の他の特定の実施形態によれば、組成物は、酸化チタン以外の無機UV遮蔽剤を、組成物の総質量に対し、5質量%未満、好ましくは2質量%未満の量で含む。有利には、本発明による組成物は、酸化チタン以外の無機UV遮蔽剤を含まない。
【0062】
α-シアノジフェニルアクリレート誘導体
本組成物は、次の式(I):
【化3】
(式中、
R1及びR2は、互いに独立に、水素原子、直鎖若しくは分岐のC1~C30アルキル基、又は直鎖若しくは分岐のC1~C30アルコキシ基を表し;
R3は、直鎖又は分岐のC1~C30、好ましくはC1~C24、更に優先的にはC1~12アルキル基を表す)で表される少なくとも1種のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体を含む。
【0063】
本発明の特定の実施形態によれば、R1及びR2は、互いに独立に、水素原子及び直鎖又は分岐のC1~C30、好ましくはC1~C8アルコキシ基から選択される。
【0064】
好ましい実施形態によれば、R1基及びR2基の一方は水素原子を表し、他方は直鎖のC1~C8、好ましくはC1~C4アルコキシ基を表す。更に優先的には、R1は水素原子を表し、R2は直鎖C1~C4アルコキシ基、好ましくはメトキシ基を表す。
【0065】
本発明の他の特定の実施形態によれば、R3は、直鎖又は分岐のC2~C20アルキル基を表す。
【0066】
好ましい実施形態によれば、R3は、分岐C3~C10アルキル基を表す。好ましくは、R3は、2-エチルヘキシル基を表す。
【0067】
本発明に関連して使用することができるα-シアノジフェニルアクリレート誘導体の例として、R1が水素原子であり、R2がメトキシ基であり、R3が2-エチルヘキシル基であり、INCI名エチルヘキシルメトキシクリレン(Ethylhexyl methoxycrylene)を有する2-シアノ-3-(4-メトキシフェニル)-3-フェニルプロペン酸2-エチルヘキシル、例えば、The Hallstar Company社から販売されている製品であるSolastay(登録商標)R1を挙げることができる。
【0068】
式(I)のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対し0.5質量%以上、好ましくは2質量%以上、更に優先的には3質量%以上の濃度で存在することができる。
【0069】
特定の実施形態によれば、式(I)のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対し、0.5質量%~5質量%、好ましくは2質量%~4質量%、更に優先的には、2.5質量%~3.5質量%の濃度で存在することができる。
【0070】
4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体
本組成物は、次の式(II):
【化4】
(式中、
Aは、カルボニル官能基を有する2個の1価の基を含む、UV放射を吸収する発色団基であり;
R4は、水素原子、直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルキル基、又は直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルコキシ基を表し;
R5は、水素原子又は直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルキル基を表す)の少なくとも1種の4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体を含む。
【0071】
本発明の特定の実施形態によれば、次の式(IIa):
【化5】
(式中、
R
4は、水素原子、直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルキル基又は直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルコキシ基を表し;
R
5は、水素原子又は直鎖若しくは分岐のC
1~C
8アルキル基を表し;
R
6は、-C(O)CH
3、-CO
2R
8、-C(O)NH
2、及び-C(O)N(R
9)
2から選択され;
R
7は、直鎖又は分岐のC
1~C
30アルキル基を表し;
R
8は、直鎖又は分岐のC
1~C
20アルキル基を表し;
R
9は、それぞれ独立に、直鎖又は分岐のC
1~C
8アルキル基を表し;
Xは、O又はNHを表す)の化合物が使用されるであろう。
【0072】
これらの化合物の中でも、より優先的には、次の式(IIb)又は(IIc):
【化6】
(式中、
R
6は、-CO
2R
8を表し;
R
7は、直鎖又は分岐のC
1~C
8アルキルを表し;
R
8は、直鎖又は分岐のC
1~C
8アルキルを表し;
Xは、Oを表す)の化合物が使用されるであろう。
【0073】
使用可能な式(II)の化合物の例として、α-シアノ-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル、α-アセチル-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル、α-アセチル-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル、α-アセチル-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソアミル、α-アセチル-3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジエチル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ビス(2-エチルヘキシル)、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジイソアミル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジドデシル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジパルミトイル、3,5-ジメトキシ-4-ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジイソプロピル、及びマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデンを挙げることができる。
【0074】
特に、次の式:
【化7】
を有するマロン酸ジエチルヘキシルシリンギリデン(INCI名:Diethylhexyl Syringylidenemalonate)、例えば、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル中に活性物質を90%含有する、商品名Oxynex STでMerck社から市販されている製品が使用されるであろう。
【0075】
式(II)の4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対し、0.5質量%以上、好ましくは1.5質量%以上、更に優先的には、2.5質量%以上の濃度で存在することができる。
【0076】
特定の実施形態によれば、式(II)の4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体は、本発明による組成物中に、組成物の総質量に対し、0.5質量%~5質量%、好ましくは2質量%~4質量%、更に優先的には2.5質量%~3.5質量%の濃度で存在することができる。
【0077】
提供形態
本発明による組成物は、水溶液、水性ゲル、無水製品、又は水中油型若しくは油中水型エマルジョン形態とすることができる。
【0078】
油性相の量は、概して、組成物の総質量に対し、1質量%~100質量%の範囲、好ましくは5質量%~90質量%の範囲、より優先的には10質量%~80質量%の範囲にある。
【0079】
第1の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は水性であり、水溶液又は水性ゲルの形態にある。
【0080】
本発明の目的のための「水性」という用語は、組成物の総質量に対し、脂肪性相を5質量%未満、好ましくは2質量%未満の量で含む組成物を指す。有利には、本発明による組成物は基本的に水性である、即ち脂肪性相を含まない。
【0081】
第2の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は無水である。
【0082】
「無水」という用語は、特に、水は組成物に故意に添加されていないことが好ましいが、組成物に使用されている様々な化合物中に微量の水が存在し得ることを意味する。
【0083】
第3の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、連続水性相中に分散した油の小滴を含む、水中油エマルジョン(正エマルジョン(direct emulsion)としても知られる、又はO/Wエマルジョンと略記される)の形態にある。
【0084】
第4の特定の実施形態によれば、本発明による組成物は、連続油性相中に分散した水性相の小滴を含む、油中水エマルジョン(逆エマルジョンとしても知られる、又はW/Oエマルジョンと略記される)の形態にある。
【0085】
好ましくは、本発明による組成物は、油中水エマルジョンの形態にある。
【0086】
水性相
本発明に係る組成物は、有利には、少なくとも1つの水性相を含む。
【0087】
水性相は、水及び任意選択的に少なくとも1種の水溶性又は水混和性有機溶媒を含む。
【0088】
本発明に使用するのに好適な水性相は、例えば、La Roche-Posayの水、Vittelの水、若しくはVichyの水などの天然湧水又はフローラルウォーターから選択される水を含み得る。
【0089】
本発明における使用に適した水溶性又は水混和性溶媒は、短鎖モノアルコール、例えば、エタノール又はイソプロパノールなどのC1~C4モノアルコール;エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、グリセロール(グリセリン)、ソルビトールなどのジオール又はポリオール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル、及びこれらの混合物を含む。
【0090】
好ましい実施形態によれば、より詳細には、エタノール、プロピレングリコール、グリセロール、1,3-プロパンジオール、又はこれらの混合物を使用することができる。
【0091】
本発明の特定の実施形態によれば、水性相は、組成物の総質量に対し、10質量%~90質量%、優先的には20質量%~70質量%、より良好には30質量%~50質量%を占める。
【0092】
油性相
本発明による組成物は、少なくとも1つの油性相を含むことができる。
【0093】
本発明の目的のための「油性相」という用語は、少なくとも1種の油と、本発明の組成物を配合するために使用されるあらゆる脂溶性成分及び親油性成分並びに脂肪性物質とを含む相を意味する。
【0094】
「油」という用語は、室温(20~25℃)の大気圧(760mmHg)下に液体形態である任意の脂肪性物質を意味する。本発明における使用に適した油は、揮発性又は不揮発性であり得る。
【0095】
この油は、炭化水素系油、シリコーン油、及びフッ素系油、並びにこれらの混合物から選択することができる。本発明における使用に適した炭化水素系油は、動物性炭化水素系油、植物性炭化水素系油、鉱物系炭化水素系油、又は合成炭化水素系油であり得る。本発明における使用に適した油は、有利には、無機炭化水素系油、植物性炭化水素系油、合成炭化水素系油、及びシリコーン油、並びにこれらの混合物から選択することができる。
【0096】
本発明の目的のための「シリコーン油」という用語は、少なくとも1個のケイ素原子を含み、特に、少なくとも1個のSi-O基を含む油を意味する。
【0097】
「炭化水素系油」という用語は、主として水素及び炭素原子を含む油を意味する。
【0098】
「フッ素系油」という用語は、少なくとも1個のフッ素原子を含む油を意味する。
【0099】
本発明における使用に適した炭化水素系油は、任意選択的に、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、及び/又はリン原子を、例えば、ヒドロキシル、アミン、アミド、エステル、エーテル、又は酸基の形態で、特に、ヒドロキシル、エステル、エーテル、又は酸基の形態で含むこともできる。
【0100】
本発明の目的のための「揮発性油」という用語は、皮膚又はケラチン繊維と接触すると、室温の大気圧下において1時間未満で蒸発することが可能な油を意味する。本発明の揮発性油は、室温下で液体であり、室温及び大気圧下、特に0.13Pa~40000Pa(10-3~300mmHg)の範囲、特に1.3Pa~13000Pa(0.01~100mmHg)の範囲、より詳細には1.3Pa~1300Pa(0.01~10mmHg)の範囲における蒸気圧がゼロではない、揮発性化粧用油である。
【0101】
「不揮発性油」という語は、室温の大気圧下において皮膚又はケラチン繊維上に少なくとも数時間残存する、特に蒸気圧が10-3mmHg(0.13Pa)未満である油を意味する。
【0102】
炭化水素系油
本発明に従い使用することができる不揮発性炭化水素系油として、特に、以下に示すものを挙げることができる。
(i)植物起源の炭化水素系油、例えば、グリセリドトリエステル(一般には、脂肪酸とグリセロールとのトリエステルであり、この脂肪酸は、C4~C24の間で変化し得る鎖長を有し、これらの鎖は直鎖又は分岐の飽和又は不飽和であってもよい)。これらの油は、特に、コムギ胚芽油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ゴマ種子油、トウモロコシ油、アンズ油、ヒマシ油、シア脂油、アボカド油、オリーブ油、大豆油、スイートアーモンド油、パーム油、菜種油、綿実油、ヘーゼルナッツ油、マカデミア油、ホホバ油、アルファルファ油、ケシ油、カボチャ油、ゴマ種子油、マロー油、菜種油、クロフサスグリ種子油、月見草油、キビ油、オオムギ油、キノア種子油、ライムギ油、紅花油、キャンドルナッツ油、トケイソウ油、及びモスカータバラ油;又はトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、例えば、Stearinerie Duboisから販売されているもの、若しくはSasol社からMiglyol810、812、及び818の名称で販売されているものがある;
(ii)10~40個の炭素原子を含む合成エーテル;
(iii)鉱物又は合成起源の直鎖又は分枝炭化水素、例えば、ワセリン、ポリデセン、Parleamなどの水添ポリイソブテン、スクアラン、及びこれらの混合物;
(iv)合成エステル、例えば式RCOOR’の油(式中、Rは、1~40個の炭素原子を含む直鎖又は分枝脂肪酸残基を表し、R’は、特に分枝の、1~40個の炭素原子を含む炭化水素系鎖を表し、但し、R+R’は>10である)、例えば、パーセリン油(オクタノン酸セトステアリル)、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、安息香酸アルキル(C12~C15)、例えば、Innospec Active Chemicals社からFinsolv TN若しくはWitconol TNの商品名で、又はEvonik Goldschmidt社からTegosoft TNの商品名で販売されている製品、安息香酸2-エチルフェニル、例えば、ISP社からX-Tend 226の名称で市販されている製品、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、アジピン酸ジイソプロピル、イソノナン酸イソノニル、エルカ酸オレイル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、イソステアリン酸イソステアリル、セバシン酸ジイソプロピル、例えば、Dub Disの名称でStearinerie Dubois社から販売されている製品、アルコール又はポリアルコールのオクタン酸エステル、デカン酸エステル、又はリシノール酸エステル、例えばプロピレングリコールジオクタノエート;ヒドロキシル化エステル、例えば、乳酸イソステアリル又はリンゴ酸ジイソステアリル;並びにペンタエリトリトールエステル;クエン酸エステル又は酒石酸エステル、例えば、酒石酸ジ(直鎖C12~C13アルキル)エステル、例えば、Cosmacol ETIの名称でSasol社から販売されているもの、及び酒石酸ジ(直鎖状C14~C15アルキル)エステル、例えば、Cosmacol ETLの名称で同社から販売されるもの;アセテート;
(v)室温下で液体であり、12~26個の炭素原子を含む分岐及び/又は不飽和の炭素系鎖を有する脂肪アルコール、例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、2-ブチルオクタノール、又は2-ウンデシルペンタデカノール;
(vi)高級脂肪酸、例えば、オレイン酸、リノール酸、又はリノレン酸;
(vii)カーボネート、例えば、炭酸ジカプリリル、例えば、BASF社からCetiol CCの名称で販売される製品;
(viii)脂肪アミド、例えば、N-ラウロイルサルコシンイソプロピル、例えば、味の素株式会社からエルデュウ(Eldew)SL 205の商品名で販売されている製品、並びにこれらの混合物。
【0103】
本発明に従い使用することができる不揮発性炭化水素系油の中でも、より詳細には、グリセリドトリエステル、特に、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、合成エステル、特に、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジイソプロピル、安息香酸アルキル(C12-15)、安息香酸2-エチルフェニル、及び脂肪アルコール、特に、オクチルドデカノールが好ましいであろう。
【0104】
本発明に従い使用することができる揮発性炭化水素系油としては、特に、8~16個の炭素原子を有する炭化水素系油、特に分岐C8~C16アルカン、例えば、石油由来のC8~C16イソアルカン(イソパラフィンとしても知られる)、例えば、イソドデカン(2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンとしても知られる)、イソデカン又はイソヘキサデカン、Isopar又はPermethylの商品名で販売されている油、分岐C8~C16エステル、ネオペンタン酸イソヘキシル、及びこれらの混合物が挙げられ得る。
【0105】
Cognisの特許出願である国際公開第2007/068 371号パンフレット又は国際公開第2008/155 059号パンフレットに記載されているアルカン(炭素数が少なくとも1個異なる、異なるアルカンの混合物)も挙げられ得る。これらのアルカンは、脂肪アルコールから得られ、脂肪アルコール自体はヤシ核油又はパーム油から得られる。Cognis社の特許出願である国際公開第2008/155059号パンフレットの実施例1及び2で得られるn-ウンデカン(C11)及びn-トリデカン(C13)の混合物が挙げられ得る。
【0106】
Sasolからそれぞれ商品記号Parafol 12-97及びParafol 14-97で販売されているn-ドデカン(C12)及びn-テトラデカン(C14)に加えて、これらの混合物も挙げられ得る。
【0107】
他の揮発性炭化水素系油、例えば石油蒸留物、特に、Shell社からShell Solの名称で販売されているものも使用され得る。
【0108】
一実施形態によれば、この揮発性油は、8~16個の炭素原子を含む揮発性炭化水素系油及びこれらの混合物から選択される。
【0109】
シリコーン油
不揮発性シリコーン油は、特に不揮発性ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコーン鎖に懸垂している、及び/若しくはシリコーン鎖の末端に位置するアルキル基若しくはアルコキシ基(これらの基はそれぞれ2~24個の炭素原子を含む)を含むポリジメチルシロキサン、又はフェニルシリコーン、例えば、フェニルトリメチコン、フェニルジメチコン、フェニルトリメチルシロキシジフェニルシロキサン、ジフェニルジメチコン、ジフェニルメチルジフェニルトリシロキサン、若しくは2-フェニルエチルトリメチルシロキシシリケートから選択することができる。
【0110】
揮発性シリコーン油としては、例えば、揮発性直鎖又は環状シリコーン油、特に粘度が8センチストークス(8.10×10-6m2/s)であり、特に2~7個のケイ素原子を含むものを挙げることができ、これらのシリコーンは、任意選択で1~10個の炭素原子を含むアルキル基又はアルコキシ基を含む。本発明において使用され得る揮発性シリコーン油として、特に、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、及びドデカメチルペンタシロキサン、並びにこれらの混合物が挙げられ得る。
【0111】
一般式(III):
【化8】
(式中、Rは、その1個又は複数個の水素原子がフッ素又は塩素原子に置き換わっていてもよい、2~4個の炭素原子を含むアルキル基を表す)の揮発性直鎖アルキルトリシロキサン油も挙げることができる。
【0112】
一般式(III)の油の中でも、Rがそれぞれ、ブチル基、プロピル基、又はエチル基である一般式(III)の油に相当する:
3-ブチル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、3-プロピル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサン、及び3-エチル-1,1,1,3,5,5,5-ヘプタメチルトリシロキサンを挙げることができる。
【0113】
フッ素系油
ノナフルオロメトキシブタン、デカフルオロペンタン、テトラデカフルオロヘキサン、ドデカフルオロペンタン、及びこれらの混合物などの揮発性フッ素系油も使用され得る。
【0114】
油性相は他の脂肪性物質を含むこともできる。油性相中に存在することができる他の脂肪性物質として、例えば、次に示すものがある:
- 8~30個の炭素原子を含む脂肪酸、例えばステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、及びオレイン酸から選択される脂肪酸;
- ラノリン、蜜蝋、カルナウバ若しくはカンデリラロウ、コメヌカロウ、パラフィンワックス、モンタンロウ、ミクロクリスタリンワックス、セレシン若しくはオゾケライト、又は合成ワックス、例えば、ポリエチレンワックス若しくはフィッシャー・トロプシュワックスから選択されるワックス;
- シリコーンゴム(ジメチコノール)から選択されるゴム;
- ペースト状化合物、例えば高分子又は非高分子シリコーン化合物、グリセロールオリゴマーのエステル、プロピオン酸アラキジル、脂肪酸トリグリセリド及びその誘導体;
- 並びにこれらの混合物。
【0115】
優先的には、油性相は、組成物の総質量に対し、5質量%~95質量%、優先的には10質量%~80質量%、より良好には20質量%~50質量%を占める。
【0116】
高効率増強剤
本発明に係る組成物はまた、任意選択的に、1種又は複数種の高効率増強剤も含むことができる。
【0117】
本出願の目的のための「高効率増強剤」という用語は、それ自体はUV放射を遮断しないが、本発明の組成物の遮蔽性能を増強することができる原料を意味する。
【0118】
高効率増強剤の例としては、スチレンとアクリレートとのコポリマーの粒子、例えば、Dow ChemicalsからSunspheres Powderの名称で販売されているもの;ワックス、例えば、ポリメチレンワックス(Cirebelleから販売されているCirebelle 303);親油性ゲル化ポリマー、例えば、Interlimer IPA 13-1、Interlimer IPA 13-6、又はUniclear 100 VGの名称で販売されている半結晶性ポリアクリレート;及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0119】
不溶性粒子
本発明による組成物は、任意選択的に、UV遮蔽性も高効率増強性も有しない1種又は複数種の不溶性粒子も含むことができる。
【0120】
これらの粒子は、組成物を皮膚に適用した後に優れた官能特性又は光学特性を得ることを可能にする。
【0121】
これらの粒子は、ナイロン、例えば、Arkemaから販売されているOrgasol 2002;ポリメチルシルセスキオキサン、例えば、Momentive Performance Materials社からTospearl 145Aの名称で販売されているメチルシルセスキオキサン樹脂マイクロビーズ;ポリメチルメタクリレート、例えば、Sensient社からCovabeads LH 85の名称で販売されている中空PMMA球;デンプン、例えば、コーンスターチ;タルク;シリカ;架橋ポリアクリレート微小球、例えば、住友精化株式会社(Sumitomo Seika)から販売されているAquakeep 10 SH-NFC;パーライト、例えば、World Minerals社から販売されているOptimat 2550 OR;酸化鉄顔料又は酸化チタン顔料;及びこれらの混合物から選択することができる。
【0122】
好ましくは、本発明による組成物はまた、Orgasol 2002などのナイロン粒子も含む。
【0123】
添加剤
本発明による組成物は、任意選択的に、化粧品、特に日光防御製品、ケア製品、及びメーキャップ製品に通常使用される、本発明の化合物とは異なる1種又は複数種の添加剤も含むことができる。
【0124】
水性相は、任意選択的に、界面活性剤;活性剤;塩;有機粒子;両性ポリマー、例えば、Lubrizol社から販売されているPemulens TR1若しくはTR2又はCarbopol ETD2020;親水性ポリマー、例えば、ポリ(N-ビニルピロリドン);多糖類、例えば、グアーガム、キサンタンガム、及びセルロース系誘導体;水溶性又は水分散性シリコーン誘導体、例えば、アクリルシリコーン、ポリエーテルシリコーン、及びカチオン性シリコーン;並びにこれらの混合物を含むことができる。
【0125】
活性剤としては、特に、単独で又は混合物としてのビタミン類(A、C、E、K、PP等)に加えてその誘導体;角質溶解剤及び/又は角質剥離剤(サリチル酸及びその誘導体、α-ヒドロキシ酸、アスコルビン酸及びその誘導体);抗炎症剤;鎮静剤;脱色素剤;合成ポリマーなどの引き締め剤;植物性タンパク質;任意選択的にミクロゲルの形態にある植物由来の多糖類;ワックス分散体;混合ケイ酸塩及び無機フィラーのコロイド粒子;艶消剤;脱毛予防及び/又は育毛のための薬剤;抗シワ剤;並びにこれらの混合物が挙げられ得る。
【0126】
油性相はまた、任意選択的に、親油性ゲル化剤;界面活性剤;有機又は無機粒子;及びこれらの混合物も含むことができる。
【0127】
言うまでもなく、当業者であれば、想定される添加により本発明による組成物に本質的に付随する有利な特性が悪影響を受けないか又は実質的に悪影響を受けないように、この又はこれらの任意選択的な追加の化合物を慎重に選択するであろう。
【0128】
上述の添加剤は、一般に、それぞれ、組成物の総質量に対し0~20質量%の量で存在し得る。
【0129】
本発明の主題はまた、皮膚、特にヒトの皮膚に、UV放射に対抗する処置を施すための美容的方法であって、本発明による組成物を皮膚に適用することから構成される、方法にもある。
【0130】
好ましくは、UV放射は太陽放射に相当する。
【0131】
より具体的には、本発明の主題は、皮膚の暗色化を制限し、並びに/又は顔色及び/若しくは顔色の均一性を改善するための美容的方法であって、上に定義した少なくとも1種の組成物を皮膚の表面に適用することを含む、方法にある。
【0132】
本発明の主題はまた、皮膚の老化の徴候を予防及び/又は処置するための非治療的美容的方法であって、上に定義した少なくとも1種の組成物を皮膚の表面に適用することを含む、方法にもある。
【0133】
本発明の主題はまた、上に定義した組成物の、UV放射に対する、特に太陽放射に対抗する使用にも関する。
【0134】
本発明の主題はまた、上に定義した式(I)のα-シアノジフェニルアクリレート誘導体と、式(II)の4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体との組合せの、酸化チタンから選択される少なくとも1種の無機UV遮蔽剤を含む組成物の、フォトブルーイングを低減するための使用にもある。
【0135】
以下に示す実施例は本発明を説明する役割を果たすが、その本質を限定するものではない。
【実施例0136】
量は、特段の指定がない限り、組成物の総質量に対する出発物質(SM)の質量百分率として示す。化合物の名称は、化学名又はINCI名として与える。
【0137】
エマルジョンを調製するための方法
脂肪性相の成分を、加熱せずに混合する。二酸化チタンを加え、均一な混合物が得られるまで全体を均質化する。
水性相の成分を、加熱せずに混合する。アルコールを加える。
脂肪性相及び水性相を、加熱せずに乳化する。
【0138】
フォトブルーイングを評価するための手順
この試験の原理は、試験品を、その分光分布が十分に定義されており、放出されるエネルギーが十分に定量されている照射光源で露光することから構成される。一般に使用される光源は、キセノンランプであり:
- 赤外放射の進行方向を逸らし、装置上部を通じて除去する、白金めっきされた石英フィルター;
- 及び短波長側の紫外線を吸収することにより、ショーウィンドウ(presentation window)越しに受ける放射を模擬することを可能にする、ガラスフィルターを介して放射される。
CPS Sun-Test装置を使用する:
- キセノンランプによる300~800nmの間の放射照度を765W/m2に設定する(製造業者が設定した値);
- 光学フィルターによる分離を、IRコーティングを有する石英フィルター及び特殊ガラス板を用いて行う)。
【0139】
次いで、光に曝露する前後の各フラスコの色を肉眼で観察する。
【0140】
【0141】
【0142】
α-シアノジフェニルアクリレート誘導体(Oxynex ST)及び4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体(Solastay S1)の組合せを含む本発明による組成物Dは、透明なガラスフラスコ内で2時間光に曝露した後も有意なフォトブルーイングを示さず、α-シアノジフェニルアクリレート誘導体(Oxynex ST)も、4-ヒドロキシベンジリデンマロネート若しくは4-ヒドロキシシンナメート誘導体(Solastay S1)のどちらも含まないか、又はα-シアノジフェニルアクリレート(Oxynex ST)及び4-ヒドロキシベンジリデンマロネート若しくは4-ヒドロキシシンナメートの誘導体(Solastay S1)のうちの1種のみを含む、比較用組成物A~Cとは対照的である。
【0143】
したがって、α-シアノジフェニルアクリレート誘導体及び4-ヒドロキシベンジリデンマロネート又は4-ヒドロキシシンナメート誘導体を組み合わせて使用することにより、酸化チタンを含む組成物のフォトブルーイングを大幅に低減することが可能になる。