(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071459
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 23/08 20060101AFI20240517BHJP
F25D 23/06 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
F25D23/08 E
F25D23/06 W
F25D23/08 P
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044528
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2021021704の分割
【原出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加納 奨一
(72)【発明者】
【氏名】津布久 正康
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩俊
(72)【発明者】
【氏名】内山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】安藤 弘晃
(57)【要約】
【課題】箱体の強度を確保しつつ、発泡断熱材の充填量を低減した冷蔵庫を提供する。
【解決手段】本発明の冷蔵庫は、外箱、内箱、現場発泡で充填される発泡断熱材、及び真空断熱材を有する断熱箱体を備え、前記断熱箱体の天面において、前記真空断熱材の上面は、前記外箱に接着されており、前記真空断熱材の下面の端部には、前記発泡断熱材が充填されており、前記真空断熱材の下面の中央側には、前記発泡断熱材とは異なる接着剤で前記内箱が接着されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外箱、内箱、現場発泡で充填される発泡断熱材、及び真空断熱材を有する断熱箱体を備え、
前記断熱箱体の天面において、
前記真空断熱材の上面は、前記外箱に接着されており、
前記真空断熱材の下面の端部には、前記発泡断熱材が充填されており、
前記真空断熱材の下面の中央側には、前記発泡断熱材とは異なる接着剤で前記内箱が接着されている、冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記断熱箱体の天面における前記真空断熱材の上面と前記外箱とは、シート状の両面テープにより接着されている、冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記断熱箱体の天面における前記真空断熱材の上面と前記外箱とは、ホットメルトにより接着されている、冷蔵庫。
【請求項4】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記断熱箱体の天面における前記内箱の中央側は、前記外箱側に凹んでいる、冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記断熱箱体の天面における前記内箱の下側に、天井パネルが取り付けられている、冷蔵庫。
【請求項6】
請求項5に記載の冷蔵庫において、
前記天井パネルの中央側には、前記内箱側に突出するリブが形成されている、冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
省スペース・大容量のニーズに応えるべく、冷蔵庫の壁厚を薄くし、内容積を拡大する冷蔵庫の技術が知られている。冷蔵庫の省エネ性能は、主に真空断熱材と発泡断熱材の2つの断熱材を併用することで成り立っている。そこで、昨今では、断熱性能の優れた真空断熱材のカバー率や厚さを向上させ、発泡断熱材の厚さを低減した冷蔵庫が提案されている。例えば、特許文献1には、背部断熱壁において発泡断熱材がない面積を、側部断熱壁において発泡断熱材がない面積よりも広くした冷蔵庫が開示されている(請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1など、発泡断熱材の充填量を少なくする冷蔵庫に関する従来の技術は、断熱箱体の背面のみを想定したものであり、断熱箱体の側面、天面、底面については想定されていない。そこで、本発明者らは、発泡断熱材が冷蔵庫の強度に与える影響が小さい部分を特定すれば、箱体のこれら部分であっても、発泡断熱材の充填量を低減できることに着目した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題に鑑み、本発明の冷蔵庫は、外箱、内箱、現場発泡で充填される発泡断熱材、及び真空断熱材を有する断熱箱体を備え、前記断熱箱体の天面において、前記真空断熱材の上面は、前記外箱に接着されており、前記真空断熱材の下面の端部には、前記発泡断熱材が充填されており、前記真空断熱材の下面の中央側には、前記発泡断熱材とは異なる接着剤で前記内箱が接着されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】冷蔵庫における断熱箱体の構成を示す斜視図。
【
図3】発泡断熱材の充填量ごとに、強度上必要な充填箇所を解析により示した図。
【
図11】冷蔵室の天井部の庫内灯付近を示す部分断面斜視図。
【
図12】外箱、内箱および真空断熱材を除いて、冷蔵室の天井部を上方から見たときの斜視図。
【
図13】冷蔵室の天井部を前方から見たときの部分断面図。
【
図14】冷蔵室の天井部を上方から見たときの平面図に、真空断熱材と、庫内灯と、庫内灯用の配線と、を透かせて表示させたもの。
【
図15】下段冷凍室と野菜室とを仕切る断熱仕切部の構成を示す斜視図。
【
図22】断熱仕切部のうち上ケースを除いた状態で、上方から見たときの平面図。
【
図24】実施例2における天井部の概略構成を示す図。
【
図26】棚の強度を確保している様子を示すイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。
【実施例0008】
実施例1に係る冷蔵庫に関し、添付の図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1は、冷蔵庫1の外観を示す正面図である。
【0009】
<冷蔵庫の基本構造>
図1に示すように、本実施例に係る冷蔵庫1は、上方から冷蔵室2、左右に並設された製氷室3と上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の順番で貯蔵室を有している。冷蔵庫1は、それぞれの貯蔵室の開口を開閉するドアを備えている。これらのドアは、冷蔵室2の開口を開閉する、左右に分割された回転式の冷蔵室ドア2a、2bと、製氷室3、上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の開口をそれぞれ開閉する引き出し式の製氷室ドア3a、上段冷凍室ドア4a、下段冷凍室ドア5a、野菜室ドア6aである。なお、本実施例では、6つのドアを有する冷蔵庫を例に挙げて説明するが、6ドアの冷蔵庫に限定されるものではない。引出式のドアにはそれぞれ、収納容器と、前後に延在するドア側レールが設けられており、冷蔵庫1の内箱8側のレールに例えば摺動可能である。
【0010】
冷蔵室2は、庫内を冷蔵温度帯の例えば平均的に4℃程度にした冷蔵貯蔵室である。製氷室3、上段冷凍室4および下段冷凍室5は、庫内を冷凍温度帯の例えば平均的に-18℃程度にした冷凍貯蔵室である。野菜室6は、庫内を冷蔵温度帯の例えば平均的に6℃程度にした冷蔵貯蔵室で、間接的な冷却により、食品の乾燥を抑えた冷蔵貯蔵室である。
【0011】
冷蔵室2の両側面に配された棚リブ13は、冷蔵庫1の前端から離間したところに前端が位置し、そこから後方に延在している。棚リブ13には、食品を載置可能な棚が載置され、本実施例では複数が上下に並んでいる。
【0012】
下段冷凍室5の後側には、各貯蔵室内を冷却する冷却器が配置されている。図示は省略するが、冷却器と、圧縮機と、凝縮器と、キャプラリーチューブと、は接続され、冷凍サイクルが構成される。そして、冷却器の上方には、冷却器にて冷却された冷気を循環させるための送風機が配置され、送風機の下流には貯蔵室内に冷気を吐出する吐出口が形成されている。なお、冷却器は複数あっても良く、配置は下段冷凍室5の後側に限定されるものではなく、冷蔵室2の後側に配置されてもよい。
【0013】
レール21は、引出式の扉に接続された扉側のレール(不図示)に接続し、扉を支持する。扉又は扉側レールには食品を収納可能な容器が取付けられ、扉とともに移動する。
【0014】
<断熱箱体の基本構造>
図2は、本実施例の冷蔵庫1における断熱箱体の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、断熱箱体は、天面、底面、両側面および背面からなり、前面は開口した箱型形状をしている。また、断熱箱体は、金属製の外箱7(
図2では不図示)と、合成樹脂製の内箱8と、を備え、外箱7と内箱8とによって形成される断熱箱体の内部の空間に、硬質ウレタンフォーム等の発泡断熱材9がいわゆる現場発泡で充填され、貯蔵室と外部とを断熱している。
【0015】
外箱7は、薄い鋼板を門型に折り曲げて形成された天面板および左右の側面板と、別部材で構成された背面板と、別部材で構成された底面板と、によって箱状に構成されている。一方、内箱8は、合成樹脂板を成形することにより、箱状に形成されている。天面板および左右の側面板は別体でもよい。
【0016】
また、冷蔵室2と、製氷室3および上段冷凍室4とは、略水平な面として配された断熱仕切部10によって隔てられている。また、下段冷凍室5と野菜室6とは、略水平な面として配された断熱仕切部11によって隔てられている。これらの断熱仕切部は、異なる温度帯の貯蔵室を区画する部分に設けられ、冷凍温度帯室の冷気によって冷蔵温度帯室内が冷え過ぎないようにする役割を果たす。
【0017】
さらに、外箱7と内箱8との間には、発泡断熱材9に加えて、発泡断熱材9よりも熱伝導率の低い真空断熱材12(
図2では不図示)が実装されており、食品収納容積を低下させることなく断熱性能が高められている。ここで、真空断熱材12は、ガスバリア性を確保するため、グラスウール等の芯材が、例えばアルミニウム等の金属層で形成される外包材で包んで構成されている。真空断熱材12は、外箱7の内壁面、すなわち、天面板、側面板、背面板および底面板のそれぞれの内壁面に、両面テープやホットメルトなどの接着剤を真空断熱材12の一部または全面に用いてそれぞれ貼り付けられる。
【0018】
現場発泡した発泡断熱材9は、熱伝導率の点で真空断熱材12より劣るが、その接着力により内箱8と外箱7を一体化できるので、断熱箱体の強度を向上させるのに有用である。発泡断熱材9となるウレタン断熱材の現場発泡時の注入方法は、冷蔵庫1の背面が鉛直上方を向くようにうつ伏せ状態にし、冷蔵庫1の外箱7の背面に設けられた例えば4点の注入口を介して、内箱8と外箱7の間の空間に注入するものである。注入されたウレタン断熱材は、断熱箱体内の側面前端あたりに滴下して、ここから発泡が開始され、側面を駆け上がり、背面側へと回り込むようにして、充填し固化する。
【0019】
つまり、真空断熱材12と内箱8との間は、基本的に、発泡断熱材9が注入発泡され、内箱8と固着され冷蔵庫の強度が確保される。しかし、本実施例では、強度に影響の小さい部分については、発泡断熱材9を非充填又は少充填にした(部分ウレタンレス)。具体的には、本実施例では、部分ウレタンレスの全域あるいは全周のウレタン流動厚み(内箱8と真空断熱材12との隙間。流動可能厚み。)を例えば6mm未満と小さくした。これにより、真空断熱材12の寸法バラツキなどに起因した意図せぬウレタン非充填(ボイド)ではなく、敢えてウレタン非充填又は少充填の領域を設けることが可能となり、結果的に、冷蔵庫1全体としてのウレタン断熱材の注入量を低減できる。発泡断熱材9を充填させる流動厚みが厚い部分(例えば8mm以上の部分)と敢えてウレタン非充填又は少充填にする薄い部分との接続は、例えば内箱8をテーパ状に外箱7側に近接させて流動厚みが連続的に変化するようにしている。これにより、剛性の急激な変化により発生する、荷重による応力の集中を回避できる。また冷気の流れる場所では風路の圧力損失を低減できる。一方、例えば内箱8を階段状に接続すれば貯蔵室の内容積を最大化することができ、流動厚みが確保できるため接続部のウレタン未充填のリスクを削減できる。
【0020】
なお、外箱7と内箱8との間に発泡断熱材9とともに埋設されるものは真空断熱材12に限らず、発泡断熱材9よりも熱伝導率λが小さいものであればよい。例えば、各実施例に記載の真空断熱材12を、
図25に示すような断熱構造体30と置き換えてもよい。断熱構造体30は、板厚0.5~2.0mmのステンレス鋼板やPCM鋼板、ガラス板等からなる第一の板材31aと第二の板材31bとの間に内部空間32ができるように重ね合わせたものである。第一の板材31aおよび第二の板材31bの外周を溶着や接着等で接合した接合部33を有し、内部空間32にはガラスやセラミック等の球状のスペーサ部材34を複数配置し、内部空間32の高さは2~5mm程度とする。第一の板材31aおよび第二の板材31bの何れか一方に設けられた排気口35から内部空間32を真空引きし、キャップ36で封止する。このように、断熱構造体30の内部空間32を真空雰囲気とすることで発泡断熱材9よりも熱伝導率λを小さくできる。
【0021】
<部分ウレタンレスの概要>
図3は、強度上必要な充填箇所を解析により示した図である。発泡断熱材9は、内箱8と外箱7、あるいは真空断熱材12などで構成される断熱空間に充填、固化し冷蔵庫の強度を確保するが、全ての空間で構造体として同様には寄与していない。冷蔵庫に求められる剛性に寄与しているウレタン部分を密度法による最適化手法にて求めた結果を
図3に示す。冷蔵庫として成立する前提となるため、棚リブ13に載置された棚や引出式の貯蔵室容器を支持するレール21に荷重がかけられている条件を課してある。
【0022】
断熱空間全てに充填した結果を基準に、左から10%、30%、70%のウレタン注入を行った場合、最も効果的なウレタン注入空間を図示している。少ない充填量で求められる空間は、主に側面部の前端(開口部)と前後中央であり、この部分が剛性に対する寄与が大きいことが示されている。充填量を増加させるに従い、前側の開口部近傍から充填部分が後方に広がって側面中央に接続するが、側面後方や、底面、天面、背面側の空間には充填量が大きくならないと広がらず、この部分の断熱空間ではウレタンの剛性に対する寄与が小さいことが示されている。側面中央であっても、最上段の棚リブ13より上方や、最下段のレール21より下方もまた、比較的寄与が小さいことが看取される。
【0023】
側面前端が重要であるという結果は、冷蔵庫1が略直方体形状であり前面に開口部があることから、開口した面を形成する辺の特に長辺部分での剛性の確保が必要なためである。相対的に短辺側(天面や底面の前端)の必要性は低い。また、回転式ドアを支持するヒンジ部22を備えた場合、ヒンジ部22近傍にもウレタンを充填し剛性を高める必要がある。よって側面前端は上下全域にウレタンを充填するのが好ましい。
【0024】
前面の開口部、すなわち断熱箱体の前端の、特に上下に延在する長辺に続いて、側面の前後中央側で、棚リブ13やレール21の設けられているところもウレタンの寄与が大きく、これらの部分が、強度上、重要であるという結果は、側面に配された、棚や容器に置かれる食品の荷重を受ける棚リブ13やレール21近傍の剛性が食品荷重の支持に必要なためである。この点、棚を支持する部分が他にある場合は、この部分はウレタンの量を削減できる。例えば棚を支持する部分が背面の或る場所に在る場合は、側面に代えて背面の棚を支持する部分にウレタンを多く充填させることで代えることができる。
【0025】
この解析結果に基づき、本実施例の断熱箱体(冷蔵庫1)の側面については、断熱箱体の前端、棚リブ13、レール21、の発泡断熱材9の流動厚みを大きくした。具体的には、側面前端には、冷蔵庫1の上下全域に亘って流動厚みを大きくもって充填された発泡断熱材9(前端断熱材91)を設けた。
図3には前端断熱材の位置イメージとして符号91’を付している。これにより、強度上重要な前端側は発泡断熱材9を充填しつつ、側面の後端側への発泡断熱材9の充填を省略することができる。そして、側面について、前端から所定距離後方の位置までを前端側(開口部側)と呼び、ここから後方にかけてを後端側と呼ぶことにすると、後端側よりも前端側の流動厚みが全体として大きいようにした。前端と後端の境目は、側面の上下位置で異なり得るが、例えば、前端断熱材91の後端又はこれより後方である。
【0026】
具体的に、
図2の左側面に例示するように、側面のうち、最上段の棚リブ13よりも上方の一部の領域81、最下段のレール21よりも下方の一部の領域84は、本実施例の冷蔵庫1において、流動厚みを小さくして発泡断熱材9を非充填又は少充填とした。その他、最上段の棚リブ13から最下段のレール21までの上下範囲であって前端断熱材91から棚リブ13又はレール21までの前後範囲の領域82、棚リブ13又はレール21で上下が挟まれた領域83、も、流動厚みを小さくして発泡断熱材9を非充填又は少充填とし得る。なお、領域83の前端は、
図2では棚リブ13又はレール21の前後中央より後方にして描いているが、棚リブ13又はレール21の前端まで拡げてもよい。
【0027】
前端側と後端側の境目としては、例えば、本実施例のように棚リブ13/レール21が設けられている冷蔵庫1の場合は、次のように考えることができる。
【0028】
第一に、棚リブ13/レール21が設けられている上下位置については、棚リブ13/レール21の前端よりも前や、棚リブ13/レール21の前後寸法中央にすることができる。棚リブ13及び/レール21の前端よりも前とすると、強度に影響の小さいところ(側面前端、棚リブ13、及びレール21以外のところ。)の流動厚みを小さくできる点で好ましいが、冷蔵庫1の背面の注入口からウレタン原液を注入する現場発泡方式だと、側面前端から棚リブ13/レール21への発泡経路を塞ぐことになりやすく、棚リブ13/レール21にボイドが発生しやすい。これに鑑みて本実施例では、領域82の流動厚みは、前端断熱材と同程度に大きくしている。
【0029】
一方、棚リブ13/レール21の前後寸法中央を境目とすると、これより前側においてウレタン充填量を低減できないが、強度への影響が大きい棚リブ13/レール21にも、比較的発泡断熱材9を充填させやすい。このため、例えば領域83の流動厚みを小さくしてもよい。
【0030】
第二に、最上段の棚リブ13よりも上側/最下段のレール21よりも下側の上下範囲については、上述の前端断熱材の後端又はこれより後方とすることができる。本実施例では、最上段の棚リブ13よりも上側については、前端断熱材91の後端から側面略後端まで流動厚みを小さくした領域81を設けている。領域81の後端位置は特に制限されない。また、最下段のレール21よりも下側については、前端断熱材の後端近傍に、流動厚みを小さくした矩形状の領域84を設けている。領域84の後端は、
図2の図示よりも後方にしてもよい。
【0031】
なお、領域81-84は、側面の正面視において、真空断熱材12に重なっていることができ、かつ、真空断熱材12の縁よりも内側に位置すると好ましい。
【0032】
次に、前端側と後端側の境目としては、棚リブ13及びレール21が設けられていない冷蔵庫の場合は、例えば前端から内箱背面までの前後寸法の1/3又は1/2の位置とすることができる。
【0033】
このように、冷蔵庫1の側面について、発泡断熱材9の流動厚みを大きくして充填した領域(例えば、前端断熱材91を設けた領域)と、流動厚みを小さくして非充填にした領域又は少充填にした領域との和に対する、流動厚みを大きくして充填した領域の割合は、側面前端側の方が側面後端側よりも高い。
図2中、左側面について、領域81-84それぞれは、流動厚みを小さくすることができ、その余の領域は流動厚みを大きくする。本実施例では、領域81,84については流動厚みを小さくしており、その余の領域は流動厚みを大きくしている。右側面は、左側面と同様に構成することができる。
【0034】
このように、冷蔵庫1の側面は、前端断熱材91が設けられている他、棚リブ13やレール21の投影面内もウレタン流動厚みを大きくとって発泡断熱材9(食品支持断熱材)が充填されている。棚リブ13とレール21の投影面に少なくとも発泡断熱材9を充填すれば食品荷重に対する重要なところは確保できる。
【0035】
食品支持断熱材を現場発泡するには、例えば、最上段の棚リブ13から最下段のレール21に亘る範囲の全域のウレタン流動厚みを大きくとって発泡断熱材9が充填されるようにすることもできるし、領域83のように棚リブ13やレール21に上下を挟まれた領域の流動厚みを小さくして発泡断熱材を非充填又は少充填にしてもよい。本実施例では前者を採用している。後者の場合、食品支持断熱材がいわば虫食い状態になる。
【0036】
冷蔵庫1の側面の前後方向については、上述の前端断熱材と食品支持断熱材との間には、これらを繋ぐように発泡断熱材9が充填されていてもよいし、流動厚みを小さくとって(例えば領域82の一部又は全部の流動厚みを小さくして)非充填又は少充填にしてもよい。前端断熱材91と食品支持断熱材との間(例えば領域82)に発泡断熱材9を充填すると、現場発泡の場合は食品支持断熱材を充填するのに容易であり、発泡断熱材9を非充填又は少充填にすると、冷蔵庫1の強度(剛性)への影響を抑えつつウレタン量を低減できる。領域82の一部の流動厚みを小さくする場合、上下に複数離間させて流動厚みが小さい領域を設けると、流動厚みが大きい領域も確保されるため、ここを発泡断熱材9が流動しやすいから、後側にむかって充填されやすい。すなわち、食品支持断熱材となるべき領域のボイドの発生を抑制できる点で好ましい。
【0037】
なお、充填固化された発泡断熱材9より高い剛性を有する別部品を、食品支持断熱材となるべき領域に取付けて補強すれば、食品支持断熱材となるべき領域に発泡充填する必要性がなくなる又は低減されるため、領域82のような前端断熱材と食品支持断熱材との間全域の流動厚みや、領域83をさらに広げて、棚リブ13やレール21に重なる領域全域の流動厚みも小さくすることができる。棚リブ13やレール21はあくまで食品荷重の支持を考慮した場合に重要であって、内箱及び外箱の構造体としての強度には、前端断熱材が重要であり、食品荷重の支持は発泡断熱材9でなく補強にて行うことが許容される。
図26は、内箱8と真空断熱材12との間に樹脂部品または金属部品の補強23を設けて棚の強度を確保している様子を示すイメージ図である。
【0038】
天面や底面について詳細は後述するが、上述のように前端の方が強度への寄与が大きいことから、流動厚みは前端側の方が後端側よりも大きくなるようにしている。本実施例の天面及び底面は、棚リブ及びレールが設けられていないため、前端から冷蔵庫1の前後寸法の例えば1/3又は1/2の位置を境目とすることができる。天面及び/又は底面についても前端には発泡断熱材9が充填されることができ、この場合、側面の前端断熱材91と連続していることができる。本実施例では天面及び底面の前端にも発泡断熱材9が充填されており、断熱箱体の前端全域、すなわち矩形状の領域は、流動厚みが大きい。
【0039】
ウレタン流動厚みを小さくとる方法としては、例えば、内箱8を外箱7側に凹ませることで実現できる。こうすると貯蔵室の内容積を拡張できる。冷蔵庫1の断熱性能は、発泡断熱材9よりもはるかに真空断熱材12が寄与するため、内容積の拡張やウレタン量の低減という観点からは、流動厚みを小さくとる領域では、発泡断熱材9が非充填となる程度まで流動厚みを小さくするのが好ましい。すなわち、真空断熱材12が設けられている領域の流動厚み(外箱7と内箱8との間の領域で真空断熱材12等の構造物がない距離)を小さくする場合、真空断熱材12が内箱8に取付けられているとき、流動厚みとしての真空断熱材12と外箱7間の距離は、例えば6mm以下、好ましくは3mm以下にすることができる。また、真空断熱材12が外箱7に取付けられているとき、真空断熱材12と内箱8間の距離は、やはり同様にすることができる。一方、流動厚みを大きくとる領域では、流動厚みとしての外箱7と内箱8との間の領域で構造物がない距離は、例えば8mm以上、10mm以上、12mm以上又は15mm以上とすることができる。また、前端断熱材91と略同一の流動厚みにしてもよい。
【0040】
なお、ウレタン重量の削減という観点からは、流動厚みを低減させる手段としては、内箱8と外箱7との間に何らかの別部品を配することで実現してもよい。また、例えば非充填又は少充填の領域を何らかの図形状にする場合、図形の中身の流動厚みを小さくする必要は必ずしもなく、図形の縁全体(すなわち、閉曲線)のみ、流動厚みを小さくしてもよい。この場合、内容積拡張の効果は低減されるもののウレタン量低減は実現される。
【0041】
その他、冷蔵庫1の天面や底面、背面については、真空断熱材12の支持や保護を考慮して発泡断熱材9の充填量を低減している。この点は後述する。
【0042】
<部分ウレタンレスの詳細>
次に、本実施例に係る冷蔵庫1における断熱箱体の各部の具体的な構造について説明する。
図4は、冷蔵庫1の内箱8の背面斜視図であり、
図5は、冷蔵庫1を上方から見た平面図(ただし、真空断熱材は透視したもの)である。また、
図6は、
図5のA-A断面矢視図であり、
図7は、
図5のB-B断面矢視図であり、
図8は、
図5のC-C断面矢視図であり、
図9は、
図5のD-D断面矢視図である。
【0043】
≪天井部≫
まず、断熱箱体の天面(天井部)の構造に関し、説明する。天井部の真空断熱材12の前側および後側には、
図6に示すように、発泡断熱材9が連続的に充填されている。ここで、真空断熱材12の下面と内箱8との間については、前端から庫内灯14に跨る前側領域と、後端から角部20(背面から天面へ繋がる後方上側の傾斜部)終端に跨る後側領域と、にのみ充填され、中央領域(前側領域と後側領域との間)には、発泡断熱材9が充填されていない。
【0044】
一方、天井部の真空断熱材12の左側および右側にも、
図7~
図9に示すように、発泡断熱材9が連続的に充填されている。ここで、真空断熱材12の下面と内箱8との間については、
図7に示すように、前側領域では、左端から右端に亘って発泡断熱材9が連続的に充填されているものの、
図8および
図9に示すように、中央領域では、左端から右端まで発泡断熱材9が充填されていない。
【0045】
このように、天井部の真空断熱材12の鉛直投影下方のうち中央領域(領域85)を部分ウレタンレスとすることで、ウレタン断熱材の注入量を低減できる。また、部分ウレタンレスとしても、天井部の真空断熱材12の周囲(前後左右の側面)については発泡断熱材9が存在し、特に、前側領域と後側領域では、発泡断熱材9が真空断熱材12の端部を下面から側面にかけて咥え込むように支持しているため、真空断熱材12の落下やヒートブリッジが防止される。同時に、ウレタンレス近傍に配置した庫内等14の周囲には少なくともウレタン断熱材が充填されていることで庫内灯14に関わる部品の固定強度も確保することができる。
【0046】
なお、真空断熱材12の左右領域において、発泡断熱材9にて咥え込むように支持をしても、同様の効果を得られるため、前側領域と後側領域の咥え込みに限られるものではない。
【0047】
天井部の部分ウレタンレス領域(領域85)は、本実施例のように例えば、真空断熱材12の投影面内であって、真空断熱材12の縁よりも内側に設けることができる。
また、
図9に示すように、内箱8の天面に配された真空断熱材12の幅寸法は、内箱8の天面の幅寸法よりも小さい。従って、内箱8の天面の左右コーナー部8aと真空断熱材12の左端および右端との間の領域9aにおいては、それぞれ、外箱7と内箱8との間に発泡断熱材9が充填されている。この範囲の発泡断熱材9厚みは、真空断熱材12と同等となっている。発泡断熱材9の熱伝達率は真空断熱材12より大きいため、この部分は断熱性能が小さい。断熱性能が不足すると、冷蔵庫庫内により外箱7が冷やされ、冷蔵庫外気の温度差により外箱7に結露が発生し好ましくない。本実施例の冷蔵庫では、外箱7と発泡断熱材9の間に設置されたホットガスパイプ(図示せず)の熱により外箱7が冷やされるのを防止し、外箱7と冷蔵庫外気との温度差が少なく、結露が発生しない。
このようにして、内箱8の天面(真空断熱材12および領域9aの鉛直投影下)を略同一平面形状としたため、真空断熱材12の投影面以外も内容積を拡大することが出来る。
【0048】
≪開口部≫
次に、断熱箱体の開口部の構造に関し、前述のとおり、ウレタン断熱材は、冷蔵庫1の背面を上方に向けた状態で載置され、背面に設けられた例えば4点の注入口から鉛直下方を向いた冷蔵庫1の正面に向かって注入される。本実施例では、冷蔵庫1の正面側(開口部)では、長辺に相当する左側面及び右側面の上下全域だけでなく、短辺に相当する天面及び底面の左右全域に亘って、流動厚みを大きくとっている。このため、冷蔵庫1(断熱箱体)の開口部において、発泡断熱材9を全周に亘って連続的に充填させることができる。このようにして前端断熱材を充填できる。
【0049】
≪棚リブ≫
次に、断熱箱体のうち棚リブ13が形成される部分の構造に関し、
図8および
図9を用いて説明する。冷蔵庫1の側面は、最上段の棚リブ13より上側は、内箱8が外箱7側に凹んだ凹領域(領域81)が形成されて、流動厚みが小さくとられている。凹領域(領域81)は、側面の前端には設けられていない(
図7参照)。
【0050】
冷蔵庫1の背面の注入口から注入されたウレタン断熱材は、上述のように冷蔵庫1の背面を鉛直上方にした状態で現場発泡が行われる。例えば前端断熱材を形成する領域から発泡が開始したウレタン断熱材は、次に、流動厚みが大きくとられた領域に充填されていく。このため、最上段の棚リブ13から最下段のレールを含む範囲の内箱8内を、冷蔵庫1の背面側へ向けて駆け上がるように発泡断熱材9が充填されていく。このようにして前端断熱材の領域から全体的に連続して、食品支持断熱材が充填されていく。
【0051】
一方、棚リブ13の支持に寄与しない、最上段の棚リブ13より
図8中の上方(冷蔵庫1使用時の上方)に位置する側面については、流動厚みが小さくとられている。本実施例ではウレタンが流動できない程度に小さい流動厚みのため、冷蔵庫1の前端からは、ウレタン断熱材がまったく駆け上がらない。
【0052】
<天井パネル>
図10は、冷蔵室2の天井部を正面から見たときの図であり、
図11は、冷蔵室2の天井部の庫内灯14付近を示す部分断面斜視図である。庫内灯14は、透光性のカバー部材によって覆われている。カバー部材の材質は、特に限定されるものではないが、透明の合成樹脂が望ましい。
【0053】
天井部の前側では、内箱8に庫内灯14が取り付けられるため、
図11に示すように、内箱8と真空断熱材12の間に発泡断熱材9が充填され、庫内灯14の支持強度を向上させている。一方、天井部の後側においては、真空断熱材12と内箱8との隙間が小さく(例えば1mm未満)、内箱8が高い位置にあるので、最上段の棚への食品収納スペースが大きくなっている。ただし、真空断熱材12と内箱8とは接触させずに、使用者が缶などを天井部にぶつけたときの緩衝材として、少しでも隙間はあった方が良い。
【0054】
このように真空断熱材12と内箱8との隙間が小さい領域には、発泡断熱材9が充填されないため、外箱7や真空断熱材12に対する発泡断熱材9を介した内箱8の固着はなされていない。その結果、内箱8が自重で垂れ下がってしまい、外観上好ましくない。そこで、本実施例では、ウレタンレス部分の内箱8の下方に、合成樹脂製の天井パネル16を取り付けた状態で、ウレタン断熱材の注入発泡が行われ、天井パネル16が冷蔵室2の天井面の一部を形成している。
【0055】
<天井パネルの支持構造>
天井パネル16は、前側が下方へ延びる傾斜面16aを有しており、この傾斜面16aに対して内箱8の外側からネジ17によって締結され、脱落が防止されているので、ネジ17の存在が使用者から視認し難い。また、ネジ17の頭は最終的に発泡断熱材9で覆われるので、ネジ17の緩みが抑制されるだけでなく、使用者がネジ17を外したり、ネジ17が真空断熱材12と接触して損傷させたりするのが防止されている。
【0056】
なお、天井パネル16の前側を傾斜面16aとすることで、冷蔵室2の後方から吐出された冷気が斜め下へ案内され、ドアポケット内の食品を冷却し易くなる。また、傾斜のない段差と比べて、食品を出し入れし易い利点や、ウレタン断熱材が流動し易い利点もある。
【0057】
図12は、外箱7、内箱8および真空断熱材12を除いて、冷蔵室2の天井部を上方から見たときの斜視図であり、
図13は、冷蔵室2の天井部を前方から見たときの部分断面図である。
図12に示すように、天井パネル16の後側には、左右方向の中央に爪部16bが形成されており、内箱8に対して係止される。この爪部16bは、内箱8と同程度の左右幅寸法を有する天井パネル16に対して、一部の左右幅にしか形成されていないため、天井パネル16の組み付け作業性が高い。
【0058】
天井パネル16の左右両端は、内箱8の側壁から前後方向に延びるリブ(図示せず)に載置されているのみであり、水平方向については拘束されていない。また、天井パネル16の後端についても、爪部16bによって上下方向が拘束されているのみである。このため、天井パネル16が、環境温度の変化に伴って熱変形したり、内箱8を介して受ける発泡断熱材9の発泡圧によってたわんだりするのを抑制できる。なお、天井パネル16の左右端と前後端のいずれかが、水平方向について非拘束であれば、天井パネル16を他の方法で支持しても良い。
【0059】
また、天井パネル16の上面には、左右中央を前後方向に延びる第1リブ16cと、前後中央を左右方向に延びる第2リブ16dと、が形成されており、天井パネル16の剛性が高められている。なお、第1リブ16cや第2リブ16dは複数形成されていても良い。また、天井パネル16の左右両端には、左右方向に延びる補強片16eが、前後方向に並んで複数形成されているため、左右の側面を形成する内箱8と外箱7との間に充填される発泡断熱材9の発泡圧によって天井パネル16が変形するのを抑制できる。
【0060】
ここで、内箱8と天井パネル16は接着されておらず、
図13に示すように、内箱8と天井パネル16との間には、隙間が形成されており、内箱8がある程度垂れ下がっても天井パネル16に負荷がかからないようになっている。なお、第1リブ16cや第2リブ16dは、内箱が垂れ下がっても、その全面が天井パネル16に接触するのを防ぐ役割も果たしている。また、本実施例の天井パネル16は、ガラスフィラー10質量%以下で成型しているため、成型時の反りが小さくなっている。なお、天井パネルの材質は合成樹脂に限定するものではなく、ウレタン断熱材の注入発泡後に取り付ける構造でもよい。
【0061】
<天井部の配線>
図14は、冷蔵室2の天井部を上方から見たときの平面図に、真空断熱材12と、庫内灯14と、庫内灯14用の配線(コード15)と、を透かせて表示させたものである。
図14に示すように、庫内灯14から引き出されたコード15は、真空断熱材12の側方を通って後方へ至り、さらに背面側を下降して図示しない制御基板に接続される。
【0062】
ここで、天井部の真空断熱材12の下面と内箱8との間には、
図6に示すように、前側領域と後側領域を除き、発泡断熱材9が充填されない。発泡断熱材9が充填されていない部分にコード15を配置すると、ウレタン断熱材の発泡時に内箱8側から治具で押さえる際に、内箱8が押し付けられてコード15の跡が付いたり、コード15が真空断熱材12を損傷したりする可能性がある。そのため、本実施例では、発泡断熱材9が充填される部分に、コード15を配置するようにした。すなわち、真空断熱材12の鉛直投影下方に配線するのは、発泡断熱材9の存在する部分である前側領域と後側領域のみとし、その途中は、真空断熱材12の鉛直投影外の発泡断熱材9の存在する部分に配線するようにした。
【0063】
ただし、予め発泡された発泡体などの介在部材をコード15と内箱8との間に設けたり、内箱8側や真空断熱材12側にコード15を避ける空間を設けたりすれば、発泡断熱材9が充填されていない部分であっても、コード15を配線することは可能である。
【0064】
<断熱仕切部>
次に、下段冷凍室5と野菜室6とを隔てる断熱仕切部11に関し、具体的に説明する。
図15は、下段冷凍室5(冷凍温度帯室)と野菜室6(冷蔵温度帯室)とを仕切る断熱仕切部11の構成を示す斜視図である。
図15に示すように、断熱仕切部11は、上ケース111と、下ケース112と、を組み合わせて構成される。さらに、断熱仕切部11は、上ケース111と下ケース112とで囲まれた空間内に、上から、真空断熱材12と、ヒータ113と、を備えている。そして、外箱7と内箱8の空間に発泡断熱材9を充填する際に、断熱箱体の背面側に設けられた前述の4点の注入口から注入されたウレタン断熱材が、断熱仕切部11の左右前側に形成されたウレタン流入口11aから断熱仕切部11の内部に流入する。断熱仕切部11の内部に流入したウレタン断熱材は、真空断熱材12の周囲を回り込んで充填されていき、最終的に上ケース111および下ケース112とともに、断熱箱体に対して固着される。
【0065】
≪上ケース≫
上ケース111は、下段冷凍室5と面しているが、
図15に示すように、左右に2つの上面凹部111aを有しているため、下段冷凍室5の内容積を大きくすることが可能となっている。なお、下ケース112の下面凹部112a(
図21参照)と、その上方に位置する真空断熱材12の屈曲部12a(
図18参照)の前側と、に対応する形で、上面凹部111aの前側は、後側と比べて底面が浅くなっている。また、左右の上面凹部111aで挟まれる部分には、上面凹部111aの周囲と同じ高さとなる架橋部111bが形成される。
【0066】
【0067】
図17および
図18に示すように、上ケース111の下方には、屈曲部12aを有する1枚の真空断熱材12が位置している。真空断熱材12の前後寸法は、上面凹部111aの前後寸法と同じか大きく、真空断熱材12の左端は、左側の上面凹部111aの左端と同じか左側にあり、真空断熱材12の右端は、右側の上面凹部111aの右端と同じか右側にある。ここで、上面凹部111aが形成された部分の下方(
図18参照)は、2つの上面凹部111aの間の部分である架橋部111bの下方(
図17参照)と比べて、上ケース111と真空断熱材12との間の隙間が小さい(例えば6mm未満)。したがって、ウレタン流入口11aから断熱仕切部11の内部に流入したウレタン断熱材は、上面凹部111aが形成された部分と真空断熱材12とで挟まれた空間へは流動できず、上面凹部111aが形成されていない部分と真空断熱材12とで挟まれた空間へ流動することになる。つまり、ウレタン断熱材の流動経路は、
図16上の点線Eで示すように、各上面凹部111aの周囲の下方に存在する隙間を流動して行き、最終的には、架橋部111bの下方を前後から突き当たる形となる。
【0068】
このように、断熱仕切部11の中央近傍において、上ケース111の架橋部111bの下方を前後に渡って発泡断熱材が充填されるので、上ケース111のたわみが低減されるなど、断熱仕切部11の剛性が高まり、真空断熱材12の損傷などが抑制される。また、ウレタン流入口11aより流入したウレタン断熱材は上面凹部111aによりウレタン断熱材の流れは複数方向へ分岐する。流れが分岐したウレタン断熱材は断熱仕切部11内で何れかの部分(最終充填部)でぶつかるためボイドのリスクがある。しかし、架橋部111bを設けることで、架橋部111bの下方の前端および後端へウレタン断熱材が流入する流れを作ることができる。架橋部111bの下方の前端および後端から流れてきたウレタンは突き当たるため、ボイドが発生したとしても架橋部111bの領域内にとどめることができる。さらに、架橋部111bの鉛直投影下には真空断熱材12が存在している。すなわち、仮にボイドが発生したとしても、ボイドが発生する位置は真空断熱材12の領域内にとどめることができるため、ボイドによる断熱仕切壁の断熱性能への影響を最小化することができる。なお、本実施例は、上面凹部111aが左右に並設され前後方向に架橋部111bが形成される構成であるが、上面凹部111aが上下に並設され左右方向に架橋部111bが形成される構成であっても良い。また、架橋部111bの高さはウレタンの流入の確保するため、上面凹部111aの下面よりも少なくとも高く形成されればよいので、本実施例に限るものではない。
【0069】
また、真空断熱材12の前側および後側には、
図17および
図18に示すように、発泡断熱材9が充填され、真空断熱材12の左側および右側にも、
図19および
図20に示すように、発泡断熱材9が充填される。一方、真空断熱材12の下面側の一部は、両面テープ(図示せず)が張られ、下ケース112と接着している。このため、真空断熱材12と下ケース112との間にも基本的には発泡断熱材9が充填されない。しかし、
図20に示すように、真空断熱材12の屈曲部12aの前側の下方には、下ケース112の前側に形成される下面凹部112aの領域を除き、下ケース112との間に比較的大きな隙間が生じるため、発泡断熱材9が充填される。
【0070】
このように、本実施例では、断熱仕切部11内の真空断熱材12の上面側および下面側が部分ウレタンレスとなっているため、冷蔵庫1全体として発泡断熱材9の充填量を低減できる利点がある。その上で、真空断熱材12の前後および左右には、発泡断熱材9が充填されるので、断熱仕切部11内で真空断熱材12を安定的に支持し、断熱仕切部11としての強度が確保されている。
【0071】
≪下ケース≫
図21は、断熱仕切部11を下方(野菜室6側)から見たときの斜視図である。
図21で破線および点線で示すように、下ケース112の上方にはヒータ113があり、ヒータ113の上方には真空断熱材12がある。また、図示していないが、本実施例の冷蔵庫1には、野菜室6の容器の上面を開閉可能な野菜室カバーが設置可能な構造となっている。この野菜室カバーは、容器の密閉度を高めることで、容器内の野菜の乾燥を抑制するものであり、断熱仕切部11の下ケース112に設けられた野菜室カバー取付部112bによって支持される。
【0072】
下ケース112は、前側に、野菜室カバー取付部112bと、当該野菜室カバー取付部112bの左右方向に並設された下面凹部112aと、を有している。下面凹部112aは、野菜室カバー取付部112bよりも後側において上方へ突出する形状となっており、真空断熱材12の位置を規制できるようになっている。このため、真空断熱材12が野菜室カバー取付部112bに当接して損傷するのを防止できる。また、下面凹部112aの後側の真空断熱材12との対向面は、傾斜面112cとしているため、真空断熱材12が下面凹部112aとの接触で損傷するのも抑制される。さらに、下面凹部112aは左右方向に複数並設され、下面凹部112aが左右方向の全域に跨って連続的には形成されていないため、ウレタン断熱材が流入し易く、結果的に、断熱仕切部11の前側の支持強度を向上させることができる。
【0073】
ヒータ113は、断熱仕切部11(下ケース112)が面する野菜室6を加熱して、野菜室6内を所定の温度帯に保つものであり、図示しないが、伝熱線と、伝熱線を覆うアルミシートと、伝熱線と接続されるリード線と、を備えて構成される。本実施例で用いられる平面状のヒータ113は、真空断熱材12のように屈曲部12aが形成できないため、下面凹部112aの傾斜面112cまで前方へ伸ばすことが難しい。しかし、ヒータ113が届かない前側の領域にも真空断熱材12が上方に位置しているので、結露の発生を防ぐことは可能である。
【0074】
本実施例では、下面凹部112aより後方において、下ケース112の上方に発泡断熱材9が充填されない領域が存在するため、下ケース112が自重やたわみで垂れ下がる可能性もある。しかし、下ケース112が面する野菜室6には、引き出し式の容器が存在しており、断熱仕切部11の下面は、使用者が目視し難い場所であることから、本実施例では、美観への悪影響を抑えつつ、発泡断熱材9の充填量の低減を図っている。
【0075】
既に述べたように、本実施例の断熱仕切部11には、上ケース111の上面凹部111aと、下ケース112の下面凹部112aと、が存在する。ここで、上ケース111が面する下段冷凍室5の方が、下ケース112が面する野菜室6よりも温度帯が低いので、冷気の循環流量を多くする必要がある。そのため、上面凹部111aの全体の凹み体積を、下面凹部112aの全体の凹み体積よりも大きくすることで、下段冷凍室5の底部を流れる冷気の風路寸法を優先的に確保することができる。
【0076】
≪コード仮収納部≫
図22は、断熱仕切部11のうち上ケース111を除いた状態で、上方(下段冷凍室5側)から見たときの平面図であり、
図23は、
図22の破線部Fの部分拡大斜視図である。ヒータ113のリード線など断熱仕切部11を通すコード類は、断熱仕切部11を断熱箱体に組み付けてウレタン断熱材を注入発泡する前に、所定の位置に配置する必要がある。そこで、本実施例では、断熱仕切部11を断熱箱体に組み付ける際の作業性を向上させるため、コード類を一時的に収納しておく凹形状の空間として、コード仮収納部11bが、下ケース112の前方側部に形成されている。一次的に収納されたコード類は、断熱仕切部11の組み付けが終わった段階で、コード仮収納部11bから取り出され、所定の位置に結線され、ウレタン断熱材の注入発泡が行われる。
【0077】
コード仮収納部11bは、
図23に示すように、コード類が真空断熱材12に接触して損傷するのを防ぐ内壁11b1と、コード類が外へ抜け出るのを防ぐ外壁11b2と、で区画されている。また、内壁11b1は前後方向に複数設けられ、その間に内側開口11b3が形成されているので、ウレタン断熱材が内側開口11b3を通じて流入できる。一方、外壁11b2の後側には、第1外側開口11b4が形成されており、コード類をコード仮収納部11b内へ引き込むことが可能となっている。また、外壁11b2の前側には、内側開口11b3と対向するように、第2外側開口11b5が形成されているため、断熱仕切部11へのウレタン流入口11aから注入されたウレタン断熱材が、コード仮収納部11b内を通過し易くなっている。なお、第2外側開口11b5と対向する位置だけでなく、第1外側開口11b4と対向する位置にもウレタン流入口11aが形成されているので、第1外側開口11b4からもウレタン断熱材が流入する。このように、コード仮収納部11bが、断熱仕切部11へのウレタン流入口11aと面する位置に形成されているので、凹形状の空間内には発泡断熱材9が充填され、断熱性が確保される。
【0078】
また、コード仮収納部11bの内壁11b1は、真空断熱材12がウレタン流入口11aを塞がないように、真空断熱材12の位置を規制する役割も果たしている。さらに、内壁11b1や外壁11b2は、下ケース112から上方へ延びるものの、上ケース111とは非接触とするのが望ましい。これにより、断熱仕切部11の上下にある異なる温度帯の貯蔵室の間で熱伝導が生じるのを抑制することが可能となる。なお、本実施例では、内壁11b1や外壁11b2を下ケース112に形成するものであるが、内壁11b1や外壁11b2を上ケース111に形成して下方へ延ばすような場合でも、内壁11b1や外壁11b2の下端を下ケース112とは離間させることで、断熱仕切部11を介した熱伝導を抑制できる。
また、接着剤18だけでは、内箱8のたわみに追従できず、真空断熱材12と内箱8とが剥離してしまう可能性がある。さらに、真空断熱材12には、厚さ、反りおよび表面凹凸のバラツキが存在し、内箱8や接着剤18にも、厚さのバラツキが必然的に存在する。そこで、本実施例では、内箱8のたわみや各部品の寸法バラツキを吸収し、真空断熱材12と内箱8とのクリアランスを一定に保つため、外箱7と真空断熱材12との間に、スペーサ19を設けた。スペーサ19は、ある程度の厚さを有する介在部材であり、かつ、外箱7と真空断熱材12とを接着させる機能を有しており、例えば、ポリエチレン等によりシート状に形成した両面テープなどが用いられる。なお、厚みを保てれば、スペーサ19としてホットメルトなどの接着剤を用いても良い。また、スペーサ19は真空断熱材12の上面全体に設ける必要はなく、ウレタンレス部の領域において少なくとも一部または全部に配置されていることが望ましい。
さらに、内箱8や発泡断熱材9などは、真空断熱材12と比べて、温度に対して変形し易いので、真空断熱材12の前後および左右を弾性部材で覆って保護し、内箱8などの変形によって真空断熱材12が損傷するのを防止しても良い。なお、真空断熱材12の上下方向については、スペーサ19がクッションとなり、外箱7や内箱8との隙間を埋めつつ真空断熱材12の損傷を防止している。