IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クアンタム−エスアイ インコーポレイテッドの特許一覧

特開2024-71462様々な検出時間の電荷貯蔵ビンを有する集積光検出器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071462
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】様々な検出時間の電荷貯蔵ビンを有する集積光検出器
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/77 20230101AFI20240517BHJP
   H04N 25/771 20230101ALI20240517BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
H04N25/77
H04N25/771
G01N21/64 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044749
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2020571379の分割
【原出願日】2019-06-20
(31)【優先権主張番号】62/688,669
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】サーストン、トム
(72)【発明者】
【氏名】チプリアニー、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク、ジョセフ ディ.
(72)【発明者】
【氏名】リアリック、トッド
(72)【発明者】
【氏名】ファイフ、キース ジー.
(57)【要約】
【課題】入射光子を受け取るように構成されている光検出領域を備える集積回路。
【解決手段】光検出領域は、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている。集積回路は、電荷キャリア貯蔵領域を備える。集積回路はさらに、前記複数の電荷キャリアのうちの電荷キャリアを、前記電荷キャリアが生成された時刻に基づいて、直接前記1つ以上の電荷キャリア貯蔵領域へと選択的に方向付けるように構成されている電荷キャリア分離構造を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路であって、
入射光子を受け取るように構成されている光検出領域であって、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている、光検出領域と、
電荷キャリア貯蔵領域と、
前記光検出領域と前記電荷キャリア貯蔵領域との間の境界にある1つ以上の電極と、を備え、
前記1つ以上の電極は、電位障壁を形成するように構成されている第1の電極を含み、前記電位障壁は、前記電位障壁が低下されているとき、前記光検出領域において生成された電荷キャリアが前記電荷キャリア貯蔵領域に移送されるように、低下されることが可能であり、
前記集積回路は、
(A)第1のそれぞれのトリガ・イベントに続く複数の第1の検出期間にわたって、第1の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約することであって、前記複数の第1の検出期間は前記第1のそれぞれのトリガ・イベントに対する第1のタイミングを個々に有する、ことと、
(B)(A)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第1の信号を読み出すことと、
(C)第2のそれぞれのトリガ・イベントに続く複数の第2の検出期間にわたって、第2の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約することであって、前記複数の第2の検出期間は前記第2のそれぞれのトリガ・イベントに対する第2のタイミングを個々に有する、ことと、
(D)(C)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第2の信号を読み出すことと、を行うように構成されている、集積回路。
【請求項2】
前記第1の電極は、前記第1の電極における電圧の変化に応じて前記電位障壁を上昇させるか又は下降させるように構成されている、請求項1に記載の集積回路。
【請求項3】
前記複数の第1の検出期間は、前記複数の第2の検出期間とは異なる開始時刻、終了時刻、持続期間のうちの1つ以上を有する、請求項1に記載の集積回路。
【請求項4】
少なくとも(A)~(D)を複数回繰り返すように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項5】
(A)~(D)を前記複数回繰り返すことにより読み出された前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記第1の信号の平均値および前記第2の信号の平均値を計算するように構成されている、請求項4に記載の集積回路。
【請求項6】
少なくとも部分的には前記第1の信号の前記平均値および前記第2の信号の前記平均値に基づいて分子の少なくとも一部分を識別するように構成されている、請求項5に記載の集積回路。
【請求項7】
(E)それぞれの第3のトリガ・イベントに続く複数の第3の検出期間にわたって、第3の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約することであって、前記複数の第3の検出期間は前記それぞれの第3のトリガ・イベントに対する第3のタイミングを個々に有する、ことと、
(F)(E)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第3の信号を読み出すことと、を行うようにさらに構成されており、
少なくとも(A)~(F)を複数回繰り返すように構成されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項8】
前記電荷キャリア貯蔵領域は、単一の電荷キャリア貯蔵領域である、請求項1~7のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項9】
前記電荷キャリア貯蔵領域は第1の電荷キャリア貯蔵領域であり、ピクセルは、前記第1の電荷キャリア貯蔵領域と、前記第1の電荷キャリア貯蔵領域から電荷を受け取る第2の電荷キャリア貯蔵領域と、を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の集積回路。
【請求項10】
光検出方法であって、
(A)第1のそれぞれのトリガ・イベントに続く複数の第1の検出期間にわたって、第1の光生成電荷キャリアを電荷キャリア貯蔵領域に集約する工程であって、光検出領域と前記電荷キャリア貯蔵領域との間の境界にある1つ以上の電極のうちの第1の電極によって形成された電位障壁を、前記電位障壁が低下されているとき、前記光検出領域において生成された前記第1の光生成電荷キャリアが前記電荷キャリア貯蔵領域に移送されるように、低下させることを含み、前記複数の第1の検出期間は前記第1のそれぞれのトリガ・イベントに対する第1のタイミングを個々に有する、工程と、
(B)(A)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第1の信号を読み出す工程と、
(C)第2のそれぞれのトリガ・イベントに続く複数の第2の検出期間にわたって、第2の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約する工程であって、前記電位障壁を、前記電位障壁が低下されているとき、前記光検出領域において生成された前記第2の光生成電荷キャリアが前記電荷キャリア貯蔵領域に移送されるように、低下させることを含み、前記複数の第2の検出期間は前記第2のそれぞれのトリガ・イベントに対する第2のタイミングを個々に有する、工程と、
(D)(C)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第2の信号を読み出す工程と、を備える方法。
【請求項11】
前記第1の電極における電圧を、前記第1の電極によって形成された前記電位障壁を上昇させるか又は下降させるように変化させる工程をさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の第1の検出期間は、前記複数の第2の検出期間とは異なる開始時刻、終了時刻、持続期間のうちの1つ以上を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも(A)~(D)を複数回繰り返す工程をさらに備える、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
(A)~(D)を前記複数回繰り返すことにより読み出された前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記第1の信号の平均値および前記第2の信号の平均値を計算する工程をさらに備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも部分的には前記第1の信号の前記平均値および前記第2の信号の前記平均値に基づいて分子の少なくとも一部分を識別する工程をさらに備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
(E)それぞれの第3のトリガ・イベントに続く複数の第3の検出期間にわたって、第3の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約する工程であって、前記複数の第3の検出期間は前記それぞれの第3のトリガ・イベントに対する第3のタイミングを個々に有する、工程と、
(F)(E)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第3の信号を読み出す工程と、
少なくとも(A)~(F)を複数回繰り返す工程と、をさらに備える、請求項10~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記電荷キャリア貯蔵領域は、単一の電荷キャリア貯蔵領域である、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記電荷キャリア貯蔵領域は第1の電荷キャリア貯蔵領域であり、ピクセルは、前記第1の電荷キャリア貯蔵領域と、前記第1の電荷キャリア貯蔵領域から電荷を受け取る第2の電荷キャリア貯蔵領域と、を備える、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
集積回路であって、
入射光子を受け取るように構成されている光検出領域であって、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている、光検出領域と、
電荷キャリア貯蔵領域と、
前記光検出領域と前記電荷キャリア貯蔵領域との間の境界にある1つ以上の電極と、を備え、
前記1つ以上の電極は、電位障壁を形成するように構成されている第1の電極を含み、前記電位障壁は、前記電位障壁が低下されているとき、前記光検出領域において生成された電荷キャリアが前記電荷キャリア貯蔵領域に移送されるように、低下されることが可能であり、
前記集積回路は、
第1のトリガ・イベントに対する第1の期間内に光検出領域によって受け取られた第1の電荷キャリアを、電荷貯蔵領域に集約することと、
第2のトリガ・イベントに対する第2の期間内に前記光検出領域によって受け取られた第2の電荷キャリアを、前記電荷貯蔵領域に集約することと、
前記第1の電荷キャリアの第1の量と前記第2の電荷キャリアの第2の量とを表す信号を読み出すことと、
前記光検出領域によって受け取られた光の時間的特性を取得するように、前記第1の電荷キャリアおよび前記第2の電荷キャリアを分析することと、を行うように構成されている、集積回路。
【請求項20】
前記第1の電極は、前記第1の電極における電圧の変化に応じて前記電位障壁を上昇させるか又は下降させるように構成されている、請求項19に記載の集積回路。
【請求項21】
前記光の放出に関連する分子の少なくとも一部分を識別するべく、前記時間的特性を分析するようにさらに構成されている、請求項19に記載の集積回路。
【請求項22】
方法であって、
第1のトリガ・イベントに対する第1の期間内に光検出領域によって受け取られた第1の電荷キャリアを、電荷貯蔵領域に集約する工程であって、光検出領域と前記電荷貯蔵領域との間の境界にある1つ以上の電極のうちの第1の電極によって形成された電位障壁を、前記電位障壁が低下されているとき、前記光検出領域において生成された前記第1の電荷キャリアが前記電荷貯蔵領域に移送されるように、低下させることを含む、工程と、
第2のトリガ・イベントに対する第2の期間内に前記光検出領域によって受け取られた第2の電荷キャリアを、前記電荷貯蔵領域に集約する工程であって、前記電位障壁を、前記電位障壁が低下されているとき、前記光検出領域において生成された前記第2の電荷キャリアが前記電荷貯蔵領域に移送されるように、低下させることを含む、工程と、
前記第1の電荷キャリアの第1の量と前記第2の電荷キャリアの第2の量とを表す信号を読み出す工程と、
前記光検出領域によって受け取られた光の時間的特性を取得するように、前記第1の電荷キャリアおよび前記第2の電荷キャリアを分析する工程と、を備える方法。
【請求項23】
前記第1の電極における電圧を、前記第1の電極によって形成された前記電位障壁を上昇させるか又は下降させるように変化させる工程をさらに備える、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光の放出に関連する分子の少なくとも一部分を識別するべく、前記時間的特性を分析する工程をさらに備える、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な検出時間の電荷貯蔵ビンを有する集積光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
光検出器は、様々な用途において光を検出するために使用されている。入射光の強度を示す電気信号を生成する集積光検出器が開発されている。イメージング用途の集積光検出器は、シーン全体から受け取られた光の強度を検出するためのピクセルのアレイを含む。集積光検出器の例は、電荷結合素子(CCD)および相補型金属酸化膜半導体(CMOS)画像センサを含む。
【発明の概要】
【0003】
集積回路は、入射光子を受け取るように構成されている光検出領域であって、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている、光検出領域と、電荷キャリア貯蔵領域と、電荷キャリア分離構造と、を備えてよく、前記電荷キャリア分離構造は、除去期間中に、前記複数の電荷キャリアのうちの1つまたは複数の第1の電荷キャリアを電荷キャリア除去領域へと方向付けることと、検出期間中に、前記複数の電荷キャリアのうちの1つまたは複数の第2の電荷キャリアを直接前記光検出領域から前記電荷キャリア貯蔵領域へと方向付けることと、を行うように構成されている。
【0004】
前記集積回路は、前記除去期間、前記検出期間、または前記除去期間と前記検出期間との両方のタイミングを変化させるように構成されてよい。
前記集積回路は、異なるフレームにおいて、前記除去期間、前記検出期間、または前記除去期間と前記検出期間との両方のタイミングを変化させるように構成されてよい。
【0005】
各フレームは、除去期間と、検出期間と、からなる複数の繰り返しを含んでよく、各フレームは、前記電荷キャリア貯蔵領域の読出をさらに含んでよい。
前記集積回路は、フレームにわたって電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約するように、また集約された前記電荷キャリアの量を示す信号を読み出すように構成されてよい。
【0006】
前記集積回路は、少なくとも、前記除去期間、前記検出期間、または前記除去期間と前記検出期間との両方の第1のタイミングを有する第1のフレームと、前記除去期間、前記検出期間、または前記除去期間と前記検出期間との両方の第2のタイミングを有する第2のフレームと、の間の切換を行うように構成されてよい。
【0007】
前記第1のフレームは第1の検出期間を有してよく、前記第2のフレームは前記第1の検出期間とは異なる第2の検出期間を有してよい。
前記集積回路は、前記第1のフレームおよび前記第2のフレームと、前記除去期間、前記検出期間、または前記除去期間と前記検出期間との両方の第3のタイミングを有する第3のフレームと、の間の切換を行うようにさらに構成されてよい。
【0008】
前記第1のフレームは、前記電荷キャリア貯蔵領域の第1の読出を含んでよく、前記第2のフレームは、前記電荷キャリア貯蔵領域の第2の読出を含む。
電荷キャリア分離構造は、前記光検出領域と前記電荷キャリア貯蔵領域との間の境界に1つ以上の電極を備えてよい。
【0009】
電荷キャリア分離構造は、前記光検出領域と前記第1の電荷キャリア貯蔵領域との間の前記境界に単一の電極を備えてよい。
前記電荷キャリア除去領域は、前記光検出領域に隣接してよい。
【0010】
前記集積回路は、前記光検出領域と前記電荷キャリア貯蔵領域との間に電荷キャリア捕獲領域が存在しなくてよい。
電荷キャリアは、前記光検出領域と前記電荷キャリア貯蔵領域との間において捕獲されることなく、前記電荷キャリア貯蔵領域に対し移送されてよい。
【0011】
廃棄された電荷キャリアは、キャリアが前記光検出領域から前記電荷キャリア貯蔵領域に向かって方向付けられる方向とは異なる方向に、前記光検出領域から取り除かれてよい。
【0012】
前記電荷キャリア除去領域は、前記光検出領域と前記電荷キャリア除去領域との間の境界における電極の電圧を変化させることによって、除去期間中に前記光検出領域において生成された電荷キャリアを廃棄してよい。
【0013】
複数の単一電子が前記電荷キャリア貯蔵領域に対し移送され、前記電荷キャリア貯蔵領域に集約されてよい。
前記電荷キャリア貯蔵領域は、単一の電荷キャリア貯蔵領域であってよい。
【0014】
前記集積回路は、直接前記光検出領域から光生成電荷キャリアを受け取るように構成されている他の電荷キャリア貯蔵領域を有しなくてよい。
前記電荷キャリア貯蔵領域は第1の電荷キャリア貯蔵領域であってよく、前記集積回路は、前記第1の電荷キャリア貯蔵領域から電荷キャリアを受け取るように構成されている第2の電荷キャリア貯蔵領域をさらに備えてよい。
【0015】
前記第2の電荷キャリア貯蔵領域は、ピクセル用の読出ノードであってよい。
光検出方法であって、光検出領域によって生成された複数の電荷キャリアのうちの1つまたは複数の第1の電荷キャリアを、除去期間中に電荷キャリア除去領域へと方向付ける工程と、前記複数の電荷キャリアのうちの1つまたは複数の第2の電荷キャリアを、検出期間中に直接前記光検出領域から電荷キャリア貯蔵領域へと方向付ける工程と、を備えてよい。
【0016】
集積回路は、入射光子を受け取るように構成されている光検出領域であって、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている、光検出領域と、電荷キャリア貯蔵領域と、を備え、(A)第1のそれぞれのトリガ・イベントに続く複数の第1の検出期間にわたって、第1の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約することであって、前記複数の第1の検出期間は前記第1のそれぞれのトリガ・イベントに対する第1のタイミングを個々に有する、ことと、(B)(A)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第1の信号を読み出すことと、(C)第2のそれぞれのトリガ・イベントに続く複数の第2の検出期間にわたって、第2の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約することであって、前記複数の第2の検出期間は前記第2のそれぞれのトリガ・イベントに対する第2のタイミングを個々に有する、ことと、(D)(C)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第2の信号を読み出すことと、を行うように構成されてよい。
【0017】
前記複数の第1の検出期間は、前記複数の第2の検出期間とは異なる開始時刻、終了時刻、持続期間の長さのうちの1つ以上を有してよい。
前記集積回路は、少なくとも(A)~(D)を複数回繰り返すように構成されてよい。
【0018】
前記集積回路は、(A)~(D)を前記複数回繰り返すことにより読み出された前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記第1の信号の平均値および前記第2の信号の平均値を計算するように構成されてよい。
【0019】
前記集積回路は、少なくとも部分的には前記第1の信号の前記平均値および前記第2の信号の前記平均値に基づいて分子の少なくとも一部分を識別するように構成されてよい。
前記集積回路は、(E)それぞれの第3のトリガ・イベントに続く複数の第3の検出期間にわたって、第3の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約することであって、前記複数の第3の検出期間は前記それぞれの第3のトリガ・イベントに対する第3のタイミングを個々に有する、ことと、(F)(E)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第3の信号を読み出すことと、を行うようにさらに構成されてよく、少なくとも(A)~(F)を複数回繰り返すようにさらに構成されている。
【0020】
前記電荷キャリア貯蔵領域は、単一の電荷キャリア貯蔵領域であってよい。
前記電荷キャリア貯蔵領域は第1の電荷キャリア貯蔵領域であってよく、ピクセルは、前記第1の電荷キャリア貯蔵領域と、前記第1の電荷キャリア貯蔵領域から電荷を受け取る第2の電荷キャリア貯蔵領域と、を備えてよい。
【0021】
光検出方法は、(A)第1のそれぞれのトリガ・イベントに続く複数の第1の検出期間にわたって、第1の光生成電荷キャリアを電荷キャリア貯蔵領域に集約する工程であって、前記複数の第1の検出期間は前記第1のそれぞれのトリガ・イベントに対する第1のタイミングを個々に有する、工程と、(B)(A)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第1の信号を読み出す工程と、(C)第2のそれぞれのトリガ・イベントに続く複数の第2の検出期間にわたって、第2の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約する工程であって、前記複数の第2の検出期間は前記第2のそれぞれのトリガ・イベントに対する第2のタイミングを個々に有する、工程と、(D)(C)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を示す第2の信号を読み出す工程と、を備えてよい。
【0022】
集積回路は、入射光子を受け取るように構成された光検出領域であって、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている、光検出領域と、電荷キャリア貯蔵領域と、を備えてよく、第1のトリガ・イベントに対する第1の期間内に光検出領域によって受け取られた第1の電荷キャリアを、電荷貯蔵領域に集約することと、第2のトリガ・イベントに対する第2の期間内に前記光検出領域によって受け取られた第2の電荷キャリアを、前記電荷貯蔵領域に集約することと、前記第1の電荷キャリアの第1の量と前記第2の電荷キャリアの第2の量とを表す信号を読み出すことと、前記光検出領域によって受け取られた光の時間的特性を取得するように、前記第1の電荷キャリアおよび前記第2の電荷キャリアを分析することと、を行うように構成されている。
【0023】
前記集積回路は、前記光の放出に関連する分子の少なくとも一部分を識別するべく、前記時間的特性を分析するようにさらに構成されてよい。
方法は、第1のトリガ・イベントに対する第1の期間内に光検出領域によって受け取られた第1の電荷キャリアを、電荷貯蔵領域に集約する工程と、第2のトリガ・イベントに対する第2の期間内に前記光検出領域によって受け取られた第2の電荷キャリアを、前記電荷貯蔵領域に集約する工程と、前記第1の電荷キャリアの第1の量と前記第2の電荷キャリアの第2の量とを表す信号を読み出す工程と、前記光検出領域によって受け取られた光の時間的特性を取得するように、前記第1の電荷キャリアおよび前記第2の電荷キャリアを分析する工程と、を備えてよい。
【0024】
前記方法は、前記光の放出に関連する分子の少なくとも一部分を識別するべく、前記時間的特性を分析する工程をさらに備えてよい。
光検出方法は、(A)それぞれのトリガ・イベントに続く複数の第1の検出期間にわたって、第1の光生成電荷キャリアを電荷キャリア貯蔵領域に集約する工程であって、前記複数の第1の検出期間は第1の期間を個々に有する、工程と、(B)(A)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を読み出す工程と、(C)それぞれのトリガ・イベントに続く複数の第2の検出期間にわたって、第2の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約する工程であって、前記複数の第2の検出期間は第2の持続期間を個々に有し、前記第1の持続期間は前記第2の持続期間とは異なる、工程と、(D)(C)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を読み出す工程と、を備える。
【0025】
集積回路は、入射光子を受け取るように構成された光検出領域であって、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている、光検出領域と、電荷キャリア貯蔵領域と、を備える。集積回路は、(A)それぞれのトリガ・イベントに続く複数の第1の検出期間にわたって、第1の光生成電荷キャリアを電荷キャリア貯蔵領域に集約することであって、前記複数の第1の検出期間は第1の持続期間を個々に有する、ことと、(B)(A)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を読み出すことと、(C)それぞれのトリガ・イベントに続く複数の第2の検出期間にわたって、第2の光生成電荷キャリアを前記電荷キャリア貯蔵領域に集約することであって、前記複数の第2の検出期間は第2の持続期間を個々に有し、前記第1の持続期間は前記第2の持続期間とは異なる、ことと、(D)(C)に続いて、前記電荷キャリア貯蔵領域に貯蔵された電荷を読み出すことと、を行うように構成されている。
【0026】
前記第1の持続期間は、前記第2の持続期間の半分未満であり、かつ、5分の1を超えてよい。
前記第1の検出期間および前記第2の検出期間は、前記トリガ・イベントに対して同一の時間に開始してよい。
【0027】
集積回路は、入射光子を受け取るように構成されている光検出領域であって、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている、光検出領域と、電荷キャリア貯蔵領域と、電荷キャリア分離構造と、を備え、前記電荷キャリア分離構造は、前記複数の電荷キャリアのうちの電荷キャリアを、前記電荷キャリアが生成された時刻に基づいて、電荷キャリア除去領域へとまたは直接前記電荷キャリア貯蔵領域へと選択的に方向付けるように構成されている。
【0028】
光検出方法は、(A)光検出領域にて入射光子を受け取る工程と、(B)前記複数の電荷キャリアのうちの電荷キャリアを、前記電荷キャリアが生成された時刻に基づいて、電荷キャリア除去領域へとまたは直接前記電荷キャリア貯蔵領域へと選択的に方向付ける工程と、を備える。
【0029】
集積回路は、入射光子を受け取るように構成されている光検出領域であって、前記入射光子に応答して複数の電荷キャリアを生成するように構成されている、光検出領域と、電荷キャリア貯蔵領域と、電荷キャリア分離構造と、を備え、前記電荷キャリア分離構造は、前記複数の電荷キャリアのうちの電荷キャリアを、除去期間中に電荷キャリア除去領域へと、または、検出期間中に前記電荷キャリア貯蔵領域へと選択的に方向付けるように構成されており、前記電荷キャリア分離構造は、前記検出期間を変化させるように制御される。
【0030】
光検出方法は、(A)入射光子を光検出領域にて受け取る工程と、(B)前記複数の電荷キャリアのうちの電荷キャリアを、除去期間中に電荷キャリア除去領域へと、または検出期間中に前記電荷キャリア貯蔵領域へと、選択的に方向付ける工程と、(C)前記検出期間を変化させる工程と、を備える。
【0031】
前記集積回路は、前記光検出領域と、前記電荷キャリア貯蔵領域と、前記電荷キャリア分離構造と、を備える直接ビニングピクセルをさらに備えてよい。
前記集積回路は、複数の直接ビニングピクセルを備えてよい。
【0032】
前記電荷キャリア貯蔵領域は、第1の検出期間を有する第1の複数の測定期間に生成された電荷キャリアを集約するように構成されてよい。
前記電荷キャリア貯蔵領域は、前記第1の測定期間の持続期間とは異なる持続期間の第2の検出期間を有する第2の複数の測定期間に生成された電荷キャリアを集約するように構成されてよい。
【0033】
前記第1のフレームは、前記第1の複数の測定期間と、前記電荷キャリア貯蔵領域の第1の読出と、を含んでよく、前記第2のフレームは、前記第2の複数の測定期間と、前記電荷キャリア貯蔵領域の第2の読出と、を含む。
【0034】
前記電荷キャリア分離構造は、前記第1のフレームと前記第2のフレームとの間を交互に行うように制御されてよい。
電荷キャリア分離構造は、前記光検出領域と前記電荷キャリア貯蔵領域との間の境界に1つ以上の電極を備えてよい。
【0035】
電荷キャリア分離構造は、前記光検出領域と前記第1の電荷キャリア貯蔵領域との間の前記境界に単一の電極を備えてよい。
いくつかの場合では、前記光検出領域と前記1つ以上の電荷キャリア貯蔵領域のうちの1つの電荷キャリア貯蔵領域との間に電荷キャリア捕獲領域が存在しない。
【0036】
電荷キャリアは、前記光検出領域と前記電荷キャリア貯蔵領域との間において捕獲されることなく、前記電荷キャリア貯蔵領域に対し移送されてよい。
廃棄された電荷キャリアは、キャリアが前記光検出領域から前記電荷キャリア貯蔵領域に向かって方向付けられる方向とは異なる方向に、前記光検出領域から取り除かれてよい。
【0037】
前記電荷キャリア除去領域は、前記光検出領域と前記電荷キャリア除去領域との間の境界における電極の電圧を変化させることによって、除去期間中に前記光検出領域において生成された電荷キャリアを廃棄してよい。
【0038】
複数の単一電子が前記電荷キャリア貯蔵領域に対し移送され、前記1つ以上の電荷キャリア貯蔵領域に集約されてよい。
前記電荷キャリア貯蔵領域は、前記光検出領域について単一の時間ビンを構成してよい。
【0039】
前記集積回路は、読出用の前記単一の時間ビンからの前記電荷を貯蔵するための読出領域をさらに備えてよい。
上記の概要は例示のために提供され、限定することは意図されていない。
【0040】
図面では、様々な図に示される同一またはほぼ同一の各コンポーネントは、同様の参照符号によって表される。明確にするため、すべてのコンポーネントがすべての図において標識付けされるわけではない。図面は必ずしも原寸に比例して描かれるのではなく、本明細書において記載される技法およびデバイスの様々な態様を例示することに重点が置かれる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】異なる寿命を有する2つのマーカについて時間の関数として光子が放出される確率をプロットする図。
図2】直接ビニングピクセルの一例を示す図。
図3】直接ビニングピクセルを動作させる方法のフローチャート。
図4A図3の方法の様々なステージにおける直接ビニングピクセルを示す図。
図4B図3の方法の様々なステージにおける直接ビニングピクセルを示す図。
図4C図3の方法の様々なステージにおける直接ビニングピクセルを示す図。
図5】直接ビニングピクセルの断面図。
図6A】複数の交互のフレームを行う工程を含む、ピクセル100を動作させる方法150のフローチャート。
図6B】異なるフレームにおいて異なる検出期間を有するピクセルを動作させるためのタイミング図。
図6C】異なるフレームにおいて異なる検出期間を有するピクセルを動作させるためのタイミング図。
図7】2つのフレーム間の切換を示すタイミング図。
図8A】ビンが読出ノードによって形成された直接ビニングピクセルの断面図。
図8B図8Aの直接ビニングピクセルの平面図。
図9】集積回路が作製され得る材料の例を示す図。
図10】光検出器を形成する例示的な処理と、4つの異なるピクセル設計n0~n3を示し、第1レベルを示す図。
図11】光検出器を形成する例示的な処理と、4つの異なるピクセル設計n0~n3を示し、第2レベルを示す図。
図12】光検出器を形成する例示的な処理と、4つの異なるピクセル設計n0~n3を示し、第3レベルを示す図。
図13】光検出器を形成する例示的な処理と、4つの異なるピクセル設計n0~n3を示し、第4レベルを示す図。
図14】光検出器を形成する例示的な処理と、4つの異なるピクセル設計n0~n3を示し、第5レベルを示す図。
図15】チップ・アーキテクチャの図。
図16】例示的なコンピューティング・デバイスのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書では、入射光子の到着のタイミングを正確に測定または「時間ビニング」することができる集積光検出器が記載される。いくつかの実施形態では、集積光検出器は、ナノ秒またはピコ秒の分解能で光子の到着を測定することができる。そうした光検出器は、核酸のシークエンシング(例えば、DNAシークエンシング)に適用され得る分子検出/定量化を含む様々な用途において用途を見出すことができる。そうした光検出器は、ヌクレオチドを標識するために使用される発光分子からの入射光子の到着の時間領域解析を容易にし、それにより、輝度寿命に基づくヌクレオチドの識別およびシークエンシングを可能にすることができる。集積光検出器の用途の他の例は、以下でさらに論じられるように蛍光寿命イメージングおよび飛行時間型イメージングを含む。
【0043】
分子検出/定量化のための時間領域測定の考察
生物学的サンプルの検出および定量化が、生物学的アッセイ(「バイオアッセイ」)を使用して行われ得る。バイオアッセイは従来、大型で高価な実験機器を伴い、機器を操作しバイオアッセイを行うために訓練された研究科学者を要する。バイオアッセイは従来、まとめて行われ、大量の特定の種類のサンプルが検出および定量化のために必要となっている。いくつかのバイオアッセイは、特定の波長の光を放出する発光性マーカを用いてサンプルにタグ付けすることによって行われる。サンプルは光源によって照射されて発光を生じ、発光性の光が光検出器によって検出され、マーカにより放出される光の量が定量化される。発光性タグおよび/またはレポータを使用するバイオアッセイは従来、サンプルを照射するための高価なレーザ光源、ならびに照射されたサンプルから光を収集するための複雑な発光性検出光学部品および電子部品を必要とする。
【0044】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるような集積光検出器は、励起に応答して生物学的および/または化学的サンプルの輝度特性を検出することができる。より詳細には、そうした集積光検出器は、サンプルから受け取られた光の時間的特性を検出することができる。そうした集積光検出器は、励起に応答して発光分子によって放出される光の輝度寿命(例えば、蛍光寿命)を検出および/または弁別することを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、輝度寿命の検出および/または弁別に基づいて、サンプルの識別および/または定量的測定が行われ得る。例えば、いくつかの実施形態では、核酸(例えば、DNA、RNA)のシークエンシングは、それぞれのヌクレオチドに付着された発光分子の輝度寿命を検出および/または弁別することによって行われ得る。各発光分子は、対応するヌクレオチドに対して直接的に付着(例えば、結合)されてもよく、または対応するヌクレオチドに対して、ヌクレオチドおよび発光分子に結合されたリンカー分子を介して間接的に付着されてよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、「ピクセル」と称される複数の光検出構造および関連する電子部品を有する集積光検出器は、並列で複数のサンプル(例えば、数百、数千、または数百万以上)の測定および分析を可能にすることができ、それにより、複雑な測定を行うコストを低減し、発見率を急速に高めることができる。いくつかの実施形態では、光検出器の各ピクセルは、単一分子または複数の分子であり得るサンプルからの光を検出してよい。いくつかの実施形態では、そうした集積光検出器は、核酸(例えば、DNA、RNA)シークエンシングなどの動的なリアルタイム用途に使用されることが可能である。
【0046】
輝度寿命を使用する分子の検出/定量化
本願の態様に係る集積光検出器を有する集積回路は、様々な検出およびイメージング用途に適切な機能を用いて設計され得る。以下にさらに詳細に記載されるように、そうした集積光検出器は、検出の期間(「検出期間」または「時間ビン」とも称される)内において光を検出する能力を有することが可能である。光の到着の時刻に関する情報を収集するために、入射光子に応答して電荷キャリアが生成され、入射光子の到着の時刻に基づいてそれぞれの時間ビンへと方向付けることが可能である。
【0047】
本願のいくつかの態様に係る集積光検出器は、フルオロフォアなどの発光分子を含む光放出源を区別するために使用されてよい。発光分子は、自身が放出する光の波長、自身が放出する光の時間的特性(例えば、自身の放出減衰期間)、および励起エネルギーに対する自身の応答において異なる。したがって、発光分子は、これらの属性の検出に基づいて、他の発光分子から識別または弁別されてよい。そうした識別または弁別の技法は、単独または任意の適切な組合せにて使用されてよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、本願に記載されるような集積光検出器は、蛍光寿命などの輝度寿命を測定または弁別することが可能である。蛍光寿命測定は、1つまたは複数の蛍光性分子を励起させ、放出された発光の時間変化を測定することに基づく。蛍光性分子が励起状態に到達した後に蛍光性分子が光子を放出する確率は、経時的に指数関数的に減少する。確率が減少する率は、蛍光性分子の特性であってよく、また異なる蛍光性分子に対して異なっていてよい。蛍光性分子によって放出される光の時間的特性を検出することにより、蛍光性分子の識別、および/または蛍光性分子の互いに対する弁別を可能としてよい。発光分子は、本明細書では発光性マーカまたは単に「マーカ」とも呼ばれる。
【0049】
励起状態に到達した後、マーカは、所与の時間に、ある確率で光子を放出し得る。励起したマーカから光子が放出される確率は、マーカの励起後に経時的に減少し得る。経時的な光子が放出される確率の減少は、指数関数的な減衰関数p(t)=e-t/τによって表されてよく、ここで、p(t)は時刻tにおける光子放出の確率であり、τはマーカの時間的パラメータである。時間的パラメータτは、励起後の、マーカが光子を放出する確率がある値であるときの時間を示す。時間的パラメータτは、マーカの吸収および発光スペクトル属性とは異なり得るマーカの属性である。そうした時間的パラメータτは、輝度寿命、蛍光寿命、または単純にマーカの「寿命」と呼ばれる。
【0050】
図1は、異なる寿命を有する2つのマーカについて時間の関数として光子が放出される確率をプロットしている。確率曲線Bによって表されるマーカの放出の確率は、確率曲線Aによって表されるマーカの放出の確率よりも速く減衰する。確率曲線Bによって表されるマーカは、確率曲線Aによって表されるマーカよりも短い時間パラメータτまたは寿命を有する。いくつかの実施形態では、マーカの蛍光寿命は、0.1~20nsの範囲であってよい。しかしながら、本明細書に記載される技法は、使用されるマーカの寿命に関して限定されない。
【0051】
マーカの寿命は、2つ以上のマーカを区別するように使用されてよく、および/またはマーカを識別するように使用されてよい。いくつかの実施形態では、異なる寿命を有する複数のマーカが励起源によって励起される蛍光寿命測定が行われてよい。一例として、それぞれ0.5、1、2、および3ナノ秒の寿命を有する4つのマーカが、選択された波長(例えば、例として635nm)を有する光を放出する光源によって励起されてよい。マーカは、マーカによって放出された光の寿命の測定に基づいて、互いに識別または区別されてよい。しかしながら、マーカによって放出された光の他の時間的特性がそのマーカ同士を区別するように用いられてよいため、寿命自身は計算される必要がない。
【0052】
蛍光寿命測定では、絶対強度値とは対照的に、経時的にどのように強度が変化するかを比較することによって相対強度測定を使用することができる。結果として、蛍光寿命測定は、絶対強度測定の難点のいくつかを回避することができる。絶対強度測定は、存在するフルオロフォアの濃度に応じて異なる場合があり、フルオロフォア濃度を変えるために較正工程が必要とされ得る。対照的に、蛍光寿命測定は、フルオロフォアの濃度に影響されないことが可能である。
【0053】
発光マーカは外因性または内因性であってよい。外因性マーカは、発光性標識化のためのレポータおよび/またはタグとして使用される外部発光性マーカであってよい。外因性マーカの例は、蛍光性分子、フルオロフォア、蛍光色素、蛍光染色剤、有機色素、蛍光タンパク質、酵素、および/または量子ドットを含んでよい。そうした外因性マーカは、特定の標的または成分に特異的に結合するプローブまたは官能基(例えば、分子、イオン、および/またはリガンド)にコンジュゲートされ得る。外因性のタグまたはレポータをプローブに付着することは、外因性のタグまたはレポータの存在の検出を通して標的の識別を可能にする。プローブの例は、タンパク質、DNA分子またはRNA分子などの核酸、脂質、および抗体プローブを含んでよい。外因性のマーカと官能基との組合せは、検出のために使用される任意の適切なプローブ、タグ、および/または標識を形成してよく、それらには、分子プローブ、標識プローブ、ハイブリダイゼーション・プローブ、抗体プローブ、タンパク質プローブ(例えば、ビオチン結合プローブ)、酵素標識、蛍光性プローブ、蛍光性タグ、および/または酵素レポータが含まれる。
【0054】
外因性マーカはサンプルまたは領域に対して追加され得るが、内因性マーカはすでにサンプルまたは領域の一部であり得る。内因性マーカは、励起エネルギーの存在下で発光または「自己蛍光」し得る、存在する任意の発光性マーカを含んでよい。内因性フルオロフォアの自己蛍光は、外因性フルオロフォアの導入を必要とすることなく、無標識で非侵襲的な標識化を提供してよい。そうした内因性フルオロフォアの例は、限定ではなく例として、ヘモグロビン、酸素ヘモグロビン、脂質、コラーゲンおよびエラスチン・クロスリンク、還元型ニコチンアミド・アデニン・ジヌクレオチド(NADH)、酸化フラビン(FADおよびFMN)、リポフスチン、ケラチン、ならびに/またはポルフィリン(prophyrin)を含んでよい。
【0055】
寿命測定によってマーカを区別することによって、マーカが発光スペクトルの測定によって区別されるときよりも少ない波長の励起光が使用されることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、より少ない波長の励起光および/または発光性の光を使用するとき、センサ、フィルタ、および/または回折光学部品は、数が減少するか除去されてよい。いくつかの実施形態では、異なる寿命を有するマーカを用いて標識化が行われてよく、マーカは、同じ励起波長またはスペクトルを有する光によって励起されてよい。いくつかの実施形態では、単一の波長またはスペクトルの光を放出する励起光源が使用されてよく、それによりコストを低減してよい。しかしながら、本明細書に記載されている技法は、これに関して限定されず、任意の数の励起光波長またはスペクトルが使用されてよい。いくつかの実施形態では、受け取られた光に関するスペクトル情報および時間情報の両方を決定するために、集積光検出器が使用されてよい。いくつかの実施形態では、存在する分子の種類の定量的分析は、マーカから放出された発光の時間的パラメータ、強度パラメータ、スペクトル・パラメータ、またはパラメータの組合せを決定することによって行われてよい。
【0056】
入射光子の到着時刻を検出する集積光検出器により、追加の光学フィルタリング(例えば、光学スペクトル・フィルタリング)要件を低減し得る。以下に記載されるように、本願に係る集積光検出器は、光生成されたキャリアを特定の時刻に取り除くためのドレインを備えてよい。光生成キャリアをこのように取り除くことによって、励起光パルスに応答して生成された望ましくない電荷キャリアが、光学フィルタリングを必要とせずに廃棄されて、励起パルスからの光の受光を防止してよい。そうした光検出器により、全体的な設計統合の複雑性、光学的および/またはフィルタリングコンポーネント、および/またはコストを低減し得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、時間の関数として輝度強度値を検出するために、集積光検出器の1つまたは複数の時間ビンにおいて収集された電荷キャリアを集約することによって、放出された発光の時間プロファイルを測定することによって、蛍光寿命が決定されてよい。いくつかの実施形態では、マーカが励起状態へと励起され次いで光子が放出される時刻が測定される、複数回の測定を行うことによって、マーカの寿命が決定されてよい。測定ごとに、励起源が、マーカに向けられた励起光のパルスを生成してよく、励起パルスとマーカからのその後の光子イベントとの間の時間が決定されてよい。これに加えてまたはこれに代えて、励起パルスが繰り返し周期的に発生する場合、光子放出イベントが発生した時とその後の励起パルスとの間の時間が測定されてよく、測定された時間が、励起パルス間の時間間隔(すなわち、励起パルス波形の周期)から差し引かれて、光子吸収イベントの時刻を決定してよい。
【0058】
複数の励起パルスを用いてそうした実験を繰り返すことによって、励起後のある時間間隔内に光子がマーカから放出される場合の数が決定されてよく、それは、励起後のそうした時間間隔内に光子が放出される確率を示す。収集される光子放出イベントの数は、マーカに対して放出される励起パルスの数に基づいてよい。測定期間にわたる光子放出イベントの数は、50~10,000,000またはそれより多い範囲になり得るが、しかしながら、いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている技法はこれに関して限定されない。励起後のある時間間隔内に光子がマーカから放出される場合の数は、一連の離散時間間隔内で発生する光子放出イベントの数を表すヒストグラムに投入されてよい。曲線フィッティングアルゴリズムが、記録されたヒストグラムに曲線をフィットさせるために使用されてよく、その結果、所与の時間におけるマーカの励起後に光子が放出される確率を表す関数が得られる。p(t)=e-t/τなどの指数関数的減衰関数が、ヒストグラムデータにほぼフィットするように使用されてよい。そうした曲線フィッティングから、時間的パラメータまたは寿命が決定されてよい。決定された寿命は、存在するマーカの種類を識別するために、マーカの既知の寿命と比較されてよい。しかしながら、前述されたように、直接測定されるまたは測定から得られる時間的特性などの他の時間的特性が、そのマーカ同士を区別するように用いられてよいため、マーカの寿命自身は計算される必要がない。
【0059】
いくつかの例では、光子放出イベントの確率、したがってマーカの寿命または他の時間的特性は、マーカの環境および/または条件に基づいて変化し得る。例えば、励起光の波長よりも小さい直径を有するボリュームに閉じ込められたマーカの寿命は、マーカがそのボリュームに存在しないときよりも小さくなり得る。マーカが標識化に使用されるときと同様の条件で、既知のマーカを用いた寿命測定が行われてよい。既知のマーカを用いたそうした測定から決定された寿命が、マーカを識別するときに使用されてよい。
【0060】
輝度寿命測定を使用するシークエンシング
集積光検出器の個々のピクセルは、分子または分子上の特定の位置などの1つまたは複数の標的を標識する蛍光タグおよび/またはレポータを識別するために使用される、蛍光寿命測定が可能であってよい。対象の任意の1つまたは複数の分子は、フルオロフォアによって標識されてよく、タンパク質、アミノ酸、酵素、脂質、ヌクレオチド、DNA、およびRNAが含まれる。放出された光のスペクトルの検出または他の標識技法と組み合わせると、蛍光寿命は、使用され得る蛍光タグおよび/またはレポータの総数を増加させ得る。寿命に基づく識別は、複雑な混合物における分子相互作用の特性に関する情報を提供するために、単一分子分析法に使用されてよく、この場合、そうした情報は、アンサンブル平均化において失われ、タンパク質間相互作用、酵素活性、分子動力学、および/または膜上の拡散を含んでよい。これに加えて、異なる蛍光寿命を有するフルオロフォアは、標識成分の存在に基づく様々なアッセイ方法において標的成分にタグ付けするために使用されてよい。いくつかの実施形態では、フルオロフォアの特定の寿命を検出することに基づいて、マイクロ流体システムを使用することによってなど、成分が分離されてよい。
【0061】
蛍光寿命の測定は、他の分析方法と組み合わせて使用されてよい。例えば、蛍光寿命は、1つまたは複数の分子に配置されたドナーおよびアクセプタ・フルオロフォアの状態および/または環境を弁別するために、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)技法と組み合わせて使用されてよい。そうした測定は、ドナーとアクセプタとの間の距離を決定するように使用されてよい。いくつかの例では、ドナーからアクセプタへのエネルギー移動は、ドナーの寿命を減少させる場合がある。別の例では、蛍光寿命測定は、DNAシークエンシング技法と組み合わせて使用されてよく、ここでは、異なる寿命を有する4つのフルオロフォアが、ヌクレオチドの未知の配列を有するDNA分子における4つの異なるヌクレオチド(A、T、G、C)を標識するために使用されてよい。フルオロフォアの発光スペクトルの代わりに蛍光寿命が、ヌクレオチドの配列を識別するために使用されてよい。ある技法で発光スペクトルの代わりに蛍光寿命または別の時間的特性を使用することにより、絶対強度測定のためアーチファクトが減少されるので、精度および測定分解能が増大し得る。これに加えて、寿命測定では、必要とされる励起エネルギー波長がより少なく、および/または検出される必要がある発光エネルギー波長がより少ないため、システムの複雑性および/または費用が低減し得る。
【0062】
本明細書に記載されている方法は、DNAシークエンシングまたはRNAシークエンシングなどの核酸のシークエンシングに使用されてよい。DNAシークエンシングは、標的核酸分子におけるヌクレオチドの順序および位置の決定を可能にする。DNAシークエンシングに使用される技術は、核酸配列を決定するために使用される方法において、また、シークエンシング処理中のレート、リード長、およびエラーの発生において大きく異なる。複数のDNAシークエンシング方法は、合成によるシークエンシングに基づいており、このシークエンシングでは、標的核酸分子に相補的な核酸の新しく合成された鎖へとヌクレオチドが組み込まれるときに、ヌクレオチドのアイデンティティが決定される。合成方法による多くのシークエンシングは、標的核酸分子の集団の存在(例えば、標的核酸のコピー)、または標的核酸の集団を実現するための標的核酸の増幅の工程を必要とする。単一の核酸分子の配列を決定するための改善された方法が所望されている。
【0063】
高精度かつ長いリード長で単一の核酸分子をシークエンシングすることに関して近年進歩している。単一分子シークエンシング技術、例えば、パシフィック・バイオサイエンス(Pacific Biosciences)によって開発されたSMRT技術において使用される標的核酸は、サンプル・ウェルの底などの固体支持体に固定または付着されたシークエンシング反応の1つ以上の成分(例えば、DNAポリメラーゼ)を含むサンプル・ウェルに添加される一本鎖DNA鋳型である。サンプル・ウェルはまた、フルオロフォアなどの検出標識にコンジュゲートされたアデニン、シトシン、グアニン、およびチミンdNTPを含む「dNTP」とも呼ばれるデオキシリボヌクレオシド三リン酸を含む。好ましくは、dNTPの各クラス(例えば、アデニンdNTP、シトシンdNTP、グアニンdNTPおよびチミンdNTP)は、信号の検出が、新たに合成された核酸へと組み込まれたdNTPのアイデンティティを示すように、異なる検出標識に各々コンジュゲートされる。検出標識は、検出標識の存在が、新たに合成された核酸鎖へのdNTPの組み込みまたはポリメラーゼの活性を阻害しないように、任意の位置でdNTPにコンジュゲートされ得る。いくつかの実施形態では、検出標識は、dNTPの末端リン酸塩(γリン酸塩)にコンジュゲートされる。
【0064】
標的核酸に相補的な核酸を合成することができる単一分子DNAシークエンシングのために、任意のポリメラーゼが使用されてよい。ポリメラーゼの例は、大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼψ29(プサイ29)DNAポリメラーゼ、およびその変異体を含む。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、単一のサブユニット・ポリメラーゼである。標的核酸の核酸塩基と相補的なdNTPとの塩基対合のときに、ポリメラーゼは、新しく合成された鎖の3’ヒドロキシル端部とdNTPのαリン酸塩との間にリン酸ジエステル結合を形成することによって、新しく合成された核酸鎖へとdNTPを組み込む。dNTPにコンジュゲートされた検出標識がフルオロフォアである例では、その存在が励起によって信号伝達され、組み込みの工程中に放出パルスが検出される。dNTPの末端(γ)リン酸塩にコンジュゲートされた検出標識に関して、新たに合成された鎖へのdNTPの組み込みの結果、βおよびγリン酸塩の解放をもたらし、サンプル・ウェル中に自由に拡散する検出標識が、フルオロフォアから検出される放出の減少をもたらす。
【0065】
本明細書に記載されている技法は、分子もしくは他のサンプルの検出もしくは定量化、またはシークエンシングを行うことに関して限定されない。いくつかの実施形態では、集積光検出器は、領域、物体、またはシーンに関する空間情報と、領域、物体、またはシーンを使用する入射光子の到着に関する時間的情報とを取得するためにイメージングを行ってよい。いくつかの実施形態では、集積光検出器は、蛍光寿命イメージングなどの、領域、物体、またはサンプルの発光寿命イメージングを行ってよい。
【0066】
光生成された電荷キャリアを時間ビニングするための集積光検出器
いくつかの実施形態は、入射光子に応答して電荷キャリアを生成する光検出器を有する集積回路であって、電荷キャリアが生成されたタイミングを弁別することができる、集積回路に関する。いくつかの実施形態では、集積回路は、光検出領域において生成された電荷キャリアを時間ビニングするための単一のビン(「ビン」、「電荷貯蔵ビン」または「電荷キャリア貯蔵領域」とも称される)を有してよい。検出期間中に生成された電荷キャリアは、ビンに対し移送される。検出期間外に生成された電荷キャリアは、ビンに対し移送されない。前述されたように、測定は複数回繰り返されてよく、ビンは複数の測定にわたって検出期間内に受け取られた電荷キャリアを集約してよい。次いで、貯蔵された電荷の量が、読み出される。読出に続いて、検出期間のタイミングが変化してよく、ビンの再設定後に、異なる検出期間によりタイミング測定の別の組の測定が行われてよい。電荷キャリアは、次いで、別の複数の測定にわたって集約され、貯蔵された電荷は再び読み出される。異なる検出期間に収集された電荷の量は、光検出器によって受け取られた光のタイミングおよび/または強度に関する情報を提供することが可能である。基準時刻に対する光子の到着の時刻に関するタイミング情報は、検出期間のタイミングを変えることによって単一のビンから取得されることが可能である。そうした集積回路は、本明細書に記載されるものなど、様々な用途のいずれかにおいて使用されることが可能である。単一のビンを備える直接ビニングピクセルを有する集積回路の例が記載される。いくつかの実施形態では、集積回路は、そうしたピクセルからなるアレイを備えてよい。
【0067】
直接ビニングピクセル
図2は、光子吸収/キャリア発生領域102(「光検出領域」とも称される)において発生した電荷キャリアが、電荷キャリア貯蔵領域108における電荷貯蔵ビンに対し、それらの間に中間の電荷キャリア捕獲領域がなく、直接移送され得る、ピクセル100の一例を示す。そうしたピクセルは、「直接ビニングピクセル」と称される。ビンは単一のビンであってよく、光子吸収/キャリア発生領域102から直接電荷キャリアを受け取るように構成されている他のビンは存在しない。図2は、電荷キャリア貯蔵領域108に単一のビンを有するピクセル100の一例を示す。複数のビンのピクセルに対する単一のビンのピクセルの利点は、励起光の改善された除去、複雑性の減少による設計の単純化、およびより少ない電極しか駆動する必要がないことに起因するより低い電力消費を含んでよい。ビンは、基準時刻またはトリガ・イベントに続く検出期間において受け取られた電荷キャリアを集約してよい。また、以下でさらに論じられるように、読出のためにビンに貯蔵された電荷を受け取るべく、1つまたは複数の追加の貯蔵領域が存在してよい。例えば、ビンに貯蔵された電荷を読出用の別の電荷貯蔵領域に対し移送することによって、電荷キャリアを受け取るためのビンの使用と電荷をその電荷が読み出される間保持するための別の電荷貯蔵領域との同時使用が可能である。
【0068】
ピクセル100は、例えばシリコンなどの任意の適切な半導体から形成され得る半導体領域を備えてよい。図2は、下部の半導体領域、およびその半導体領域の上部にわたって形成された電極206,203および213による平面図を示す。電極206および203を備える電荷キャリア分離構造は、光生成電荷キャリアを、異なる時刻にてビンにまたは除去領域105に選択的に方向付ける。いくつかの実施形態では、光子吸収/キャリア発生領域102は、ピン止め(pinned)フォトダイオードなどの、半導体領域に形成されたフォトダイオードを備えてよい。フォトダイオードは、完全に空乏化されていてよい。いくつかの実施形態では、フォトダイオードは、すべての時刻にて電子が本質的に空乏化されたままであってよい。いくつかの実施形態では、フォトダイオードは単一光子を収集するように構成されている。そうした実施形態では、単一光電子は、フォトダイオードにおいて発生し閉じ込められてよい。CMOS処理によって形成される場合、フォトダイオードはCMOS処理によって生成されるデバイス内において得られる電位によって完全に空乏化されてよい。電極203は、ダイオードの周囲を少なくとも部分的に囲むダイオードに結合されてよい。電極203は、閉じ込められたキャリアの急速な電荷移送を可能としてよい。ビンに対する電荷キャリアの移送を論じる前に、望ましくないキャリアの除去領域105への移送による望ましくないキャリアの除去が記載される。
【0069】
図2を再び参照すると、直接ビニングピクセル100は、光子吸収/キャリア発生領域102において除去期間中に生成された電荷キャリアを排出または廃棄するための除去領域105を備えてよい。除去期間は励起光パルスなどのトリガ・イベント中に発生するようにタイミングを取られてよい。励起光パルスが光子吸収/キャリア発生領域102において複数の望ましくない電荷キャリアを生成し得るため、除去期間中にそうした電荷キャリアを除去領域105へと排出するようにピクセル100に電位勾配が確立されてよい。一例として、除去領域105は、電子が供給電圧へと排出される高い電位拡散エリアを含んでよい。除去領域105は、電荷が領域102を除去領域105に直接結合する電極206を備えてよい。いくつかの実施形態では、電極206は半導体領域の上に位置してよい。電極206の電圧は、光子吸収/キャリア発生領域102に所望の電位勾配を確立するように変化してよい。除去期間中に、電極206の電圧は、キャリアを光子吸収/キャリア発生領域102から電極206へと引き込むレベルに、および供給電圧の外に設定されてよい。例えば、電極206の電圧は、電子が光子吸収/キャリア発生領域102から離れて除去領域105へと引き込まれるように、電子を引き付ける正の電圧に設定されてよい。除去期間中に、電極203は、望ましくない電荷キャリアがビンに到達するのを防止するように、電位障壁202を形成する電位に設定されてよい。除去領域105によってキャリアを領域102からドレインへと横方向に移送させることが可能であるため、除去領域105は「横方向除去領域」として考慮されてよい。いくつかの実施形態では、その除去は、電荷キャリアの光検出領域102からビンへの移送の方向(図2において下向き)に対して光検出領域102とは反対の方向(図2において上向き)にある。除去領域105と収集領域108との相対位置は、フォトダイオード102に関して反対側に限定されない。
【0070】
除去期間に続いて、光子吸収/キャリア発生領域102において生成された光生成電荷キャリアは、ビンに移送されてよい。検出期間中、電極203によって形成された電位障壁202は低下してよく、電極206によって形成された電位障壁は上昇してよく、光子吸収/キャリア発生領域102と電荷キャリア貯蔵領域108との間の半導体領域内の電位は、光生成電荷キャリアをビンに方向付ける電位勾配を確立してよい。検出期間の最後には、電位障壁202は、さらなる電荷キャリアがビンへと移送されるのを防止するように上昇する。したがって、ビンは、検出期間中にビンに受け取られた電荷キャリアを貯蔵する。貯蔵された電荷は、次いで、以下でさらに論じられるように、読み出されてよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、電荷キャリアのビンに対する移送を可能とするまたは防止する電位障壁202を制御するように、領域102とビンとの間の境界に、単一の電極203しか配置されない場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態では、電位障壁202は、2つ以上の電極によって生成されてよい。電極203は、電荷キャリアがビンに入るのを可能とするまたは防止するように、電位障壁202を制御してよい。電位障壁202は、領域102とビンとの間の単一の電位障壁であってよい。
【0072】
図3は、複数の交互のキャリア除去工程52と検出工程60とを行う工程を備え、読出工程58が続く、ピクセル100を動作させる方法50のフローチャートを示す。
除去工程52中のピクセル100の動作は、図4Aに示される。除去工程52は、除去期間の間に生じる。除去工程52では、ピクセル100は、領域102において生成された電荷キャリアを除去領域105に対し移送することによって、その電荷キャリアを除去するように動作する。例えば、除去工程52は、領域102において生成された電荷キャリアを除去領域105へと駆動させる電位勾配を生成するように、電極206を制御することを含んでよい。キャリアは、キャリアを図4Aの上向き方向に方向付けることによって除去される。ビンに対する電位障壁202は、望ましくない電荷がビンに入るのを防止するように上昇する。
【0073】
除去工程52は、トリガ・イベント中に発生するようにタイミングを取られてよい。トリガ・イベントは、光子の到着を時間ビニングするための時間基準としての役割をするイベントであってよい。トリガ・イベントは、例えば、光パルスまたは電気パルスであってよく、特異的イベントまたは反復する周期的イベントであることが可能である。蛍光寿命検出のコンテキストでは、トリガ・イベントは、フルオロフォアなどの発光分子を励起させるための励起光パルスの発生または受光であってよい。飛行時間型イメージングのコンテキストでは、トリガ・イベントは、集積光検出器を備えるイメージング・デバイスによって放出された(例えば、フラッシュからの)光のパルスであってよい。トリガ・イベントは、光子またはキャリアの到着のタイミングを取るための基準として使用される任意のイベントであることが可能である。
【0074】
励起光パルスの発生はかなりの数の光子を生成してよく、そのうちのいくつかはピクセル100に到達してよく、光子吸収/キャリア発生エリア102において電荷キャリアを生成してよい。励起光パルスからの光生成キャリアは、測定されることが望ましくないため、除去工程52においてその光生成キャリアをドレインへ方向付けることによって除去されてよい。これは、さらなる設計の複雑性および/またはコストを追加し得るシャッタまたはフィルタなどの複雑な光学コンポーネントによって、到着するのを防止する必要があり得る、不要な信号の量を減少させることが可能である。
【0075】
図3を再び参照すると、検出工程60が除去工程52に続く。図4Bに示されるように、検出工程60は、光生成電荷キャリアが廃棄されるのを防止するように、除去領域105に対する電位障壁を上昇させる(例えば、電極206の電圧を変更することによって)ことを含んでよい。除去領域105に対する電位障壁の上昇は、検出期間と称される持続期間を有する検出工程60の開始である。除去領域105に対する電位障壁の上昇と同時にまたはその後に、検出工程60は、電荷キャリアが領域102からビンに対し通過することが可能である期間に、領域102とビンとの間の電位障壁202を低下させる(例えば、電極203の電圧を変更することによって)ことを含む。除去領域105に対する電位障壁の上昇の後に電位障壁202が低下する場合、光検出領域102において光生成されたいずれの電荷キャリアも、電位障壁202が低下するまで光検出領域102に留まり、次いでこれらの電荷キャリアはビンへと通過する。したがって、検出期間は、電位障壁202が低下する期間と、電位障壁202が低下する前の除去領域105に対する電位障壁の上昇に続く任意の期間との両方の期間を含む。光子は、検出工程60中に光検出領域102に到着してもしなくてもよい。光子が光検出領域102に到着し、光生成電荷キャリアが検出期間中に生成される(工程54)と、図4Bに示されるように、電位勾配によって電荷キャリアがビンへと方向付けられる(工程56)。そうした電位勾配は、勾配ドーピング濃度および/または選択された電位にある1つまたは複数の電極を使用するなど、任意の適切な手法により確立されてよい。次いで、電位障壁202は、さらなる電荷キャリアがビンに対し移送されるのを防止するように、検出期間の最後に上昇し、それは検出期間の最後を示す。ビンに対する電位障壁202が上昇したまま光生成電荷キャリアが領域102において生成されると、電荷キャリアは、除去工程52が再び生じ電荷キャリアが廃棄されるまで、領域102に閉じ込められ得る。したがって、ビンは、検出期間中に、領域102において生成された光生成電荷キャリアを収集する。
【0076】
上述されたように、いくつかの用途では、トリガ・イベントに応答して光子を受け取ることとキャリアを発生させることとの確率は、低くてよい(例えば、約10000回に1回)。したがって、光子は、検出工程60において非常にまれにしか受け取られない場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態では、受け取られる光子の量および/または光子を受け取る確率はより高くてよく、本明細書に記載される技法は、少量の受け取られた光子に限定されない。
【0077】
工程56の後、除去工程52は、トリガ・イベント後に光子が到着する傾向がある期間に関する情報(例えば、統計情報)を取得するように、n-1回繰り返されてよい。検出工程60が繰り返されるとき、時間ビニングされた電荷キャリアがビンに集約されてよい。検出工程60を繰り返すことにより、統計的に有意な結果を提供するために充分な数の電荷キャリアをビンに集約することを可能としてよい。例えば、蛍光寿命測定のコンテキストでは、フルオロフォアから受け取られた光子に応答する光子吸収イベントが比較的まれ発生し得ることが予想され得る。例えば、そうしたイベントは、約1,0000回の測定において1回発生することが予想され得る。したがって、結果が統計的に有意であるか充分な信号対雑音比を有するかその両方であるように、充分な数の電荷キャリアをビンに集約するために、多数の測定(検出工程60)が行われる必要があり得る。いくつかの実施形態では、蛍光寿命測定のために行われ得るフルオロフォアの測定の数nは、充分な数(すなわち、いくつかの実施形態では数十または数百以上)の電荷キャリアを各ビンに捕獲してビニングすることを可能にするために、50,000以上、100,000以上、200,000以上、300,000以上、400,000以上、500,000以上、100万以上、200万以上、500万以上であってよい。測定は、50MHzと100MHzとの間、25MHzと200MHzとの間、10MHzと500MHzとの間、または1MHzと500MHzとの間などのMHz範囲(すべての範囲は端点を含む)の周波数で、または別の周波数で繰り返されてよい。いくつかの実施形態では、測定がn-1回繰り返された後、約100個のキャリア(例えば、電子)がビンに蓄積されてよい。しかしながら、これは受け取られた光子の数に依存する。いくつかの実施形態では、ビンに蓄積されるキャリアの数は、50と1,000との間など、10と10,000との間、または任意の他の適切な数であってよい。方法50は、光子が捕獲されることが所望される任意の適切な期間にわたって行われてよい。方法50が行われる期間は、「フレーム」と称される。蛍光寿命測定のコンテキストでは、フレームの適切な長さは、例えば、10ミリ秒であってよい。いくつかの実施形態では、検出工程60は、MHz範囲である周波数で繰り返されてよい。いくつかの実施形態では、ビンは、ピコ秒またはナノ秒のスケールで分解能を有してよい。
【0078】
割り当てられた数nの測定(工程60)が行われると、方法は、ビンを読み出す工程58に進む。工程58では、電荷はビンから、別の電荷キャリア貯蔵領域である読出ノード111に対して移送されてよい。読出ノード11は、浮遊拡散部を含んでよい。これに代えて、ビンはそれ自身、電荷貯蔵と読出との両方に用いられる浮遊拡散部であってよい。この場合、212/213は存在せず、111はビンである。ビンから読出ノード111に対する電荷の移送は、図4Cに示される。電荷を各ビンから移送させるために、電極213の電圧はビンと読出ノード111との間の電位障壁212を低下させるように変化してよい。電荷をビン0から読出ノード111へと流れさせる電位勾配が確立されてよい。これは図5に示される。読出ノード111に対して移送される電荷は、次いで、読出回路構成110を使用して、電圧へと変換され読み出されてよく、その一例が図5に示される。
【0079】
ピクセルタイミングの変化
いくつかの実施形態では、除去期間(除去工程52)のタイミング、検出期間(検出工程60)、またはその両方などのピクセルタイミングは、様々なフレーム(すなわち、方法50のそれぞれのインスタンス)について変化する。ピクセルタイミングを変化させることによって、ピクセルによって異なる期間に受け取られた光の特性を取得することが可能となる。ピクセルタイミングを変化させることは、単一の時間ビンが、トリガ・イベントに対して異なる期間に受け取られた光子に関する情報を捕獲することも可能とする。いくつかの実施形態では、第1のフレーム(方法50の第1のインスタンス)は第1のピクセルにより行われてよく、次いで第2のフレーム(方法50の第2のインスタンス)は異なるピクセルタイミングにより行われてよい。いくつかの実施形態では、タイミングは、図6Aに示されるように、2つ以上の異なるピクセルタイミング間において前後に変化する。
【0080】
図6Aは、異なるタイミングを有する異なるフレーム間において切り換えることを含む、ピクセル100を動作させる方法150のフローチャートを示す。工程152は、第1のピクセルタイミング、または第1のフレームにより方法50を行うことを含む。次いで、ピクセルタイミングは変化する。工程156は、第2のピクセルタイミング、または第2のフレームにより方法50を行うことを含む。工程152および156は、適切な期間にわたって(例えば、反応中の分子の発光の期間にわたって)情報を捕獲するように複数回繰り返されてよい。図6Aは、フレームが交替する前に一度各フレームを行うことを示すが、いくつかの実施形態では、フレームは別のフレームに切り換える前に複数回行われてよい。例えば、第1のフレームが工程152において複数回行われてよく(例えば、方法50は第1のタイミングにより複数回行われてよい)、次いで検出期間が変化してよく、第2のフレームが複数回行われてよい(例えば、方法50は第2のタイミングにより複数回行われてよい)。これに加えて、図6Aは、2つの異なるフレームを行うことを示し、いくつかの実施形態では、3つ以上のフレームが順に行われてよい。例えば、3つのフレームが行われる場合、フレーム2が工程156において行われた後、第1のフレームに戻る前に、ピクセルタイミングが再び変化し第3のフレームについて行われてよい。
【0081】
図6Bは、方法50が第1のタイミングにより行われる第1のフレームについての除去期間(除去工程52)および検出期間(検出工程60)のタイミングの一例を示す。図6Aの上部のプロットは、励起レーザパルスであり得るトリガ・イベントのタイミングを示す。レーザパルスは周期Tにより周期的であってよい。上部からの第2および第3のプロットは、それぞれ第1のフレーム中の工程52および60のタイミングを示す。
【0082】
この例では、除去工程52は、除去電極206の電圧VRejを高レベルに設定することを含む。除去工程52は、レーザパルス中に発生するように示される。除去期間Tと称される除去工程の期間は、VRejが高い時間である。除去期間は、レーザパルスの前に開始し、レーザ励起光により生成された望ましくないキャリアが廃棄されることを確実にするのを補助するように、レーザパルスの後に終了してよい。
【0083】
この例では、検出工程60は、電極203の電圧VBinを高レベルに設定することにより開始し、これによって光生成電荷がビンに入る。レーザパルス(例えば、レーザパルスの中心時刻)と検出工程60の開始との間の遅延は、遅延時間dとして示される。電極206の電圧VRejは、電極203の電圧VBinが高レベルに設定されるのと同時に低レベルに設定されてよい。第1のフレームでは、検出工程60は、検出期間TD1の間続く。この期間中に光検出領域102において生成された電荷キャリアは、ビンに対し移送される。1つの特定の非限定的な例として、TD1は2ナノ秒であってよい。検出期間の最後には、電極203の電圧VBinは、さらなる電荷キャリアがビンに入るのを防止するように低レベルに設定される。検出期間の後に生成された電荷キャリアは、ビンに対し移送されず、次の除去工程52中に廃棄されてよい。
【0084】
工程52および60をn-1回繰り返した後、ビンは、n個の励起レーザパルスに続く検出期間TD1内に受け取られた電荷キャリアを蓄積する。貯蔵されたキャリアは、次いで読み出されるか貯蔵ノードに対し移送されることが可能である。第1のフレームについて示されるタイミングは、時間において励起レーザパルスに対し比較的近い検出期間を有するため、第1のフレームにおいて貯蔵された電荷キャリアは、この例では、励起レーザパルスの後に比較的すぐに生成される傾向がある光子を示す。
【0085】
第1のフレームに続いて、タイミングが変化し、異なるタイミングにより第2のフレームについて方法50が行われる。この例では、第1のフレームと第2のフレームとの間の差は、検出期間TD2が検出期間TD1よりも長い。したがって、第2のフレームは、期間Tにおいて、より遅くに光生成電荷キャリアを捕獲することが可能である。1つの特定の非限定的な例として、TD2は7ナノ秒であってよい。
【0086】
工程52および60をn-1回繰り返した後、ビンは、励起レーザパルスに続く検出期間TD2内に電荷キャリアを貯蔵する。貯蔵されたキャリアは、次いで読み出されることが可能である。第2のフレームについて示されるタイミングは、第1のフレームにおけるよりも長い持続期間を有するため、第2のフレームにおいて貯蔵された電荷キャリアは、この例では、励起レーザパルスの後に比較的すぐに生成される傾向がある光子と、より遅い時刻に生成される傾向がある光子との両方を示す。
【0087】
図6Bは、除去期間のタイミング(例えば、開始時刻および持続期間)が第1のフレームと第2のフレームとの両方について同一であり、一方、検出期間の開始時刻を同一に保ちつつ、電荷キャリアがビンに入ることを可能とするようにVBinが設定される時間の量を変化させることによって、第1のフレームおよび第2のフレームに対する検出期間のタイミングが変化した、一例を示す。しかしながら、第1のフレームにおける除去期間Tのタイミングは、第2のフレームにおける除去期間Tのタイミングと同一である必要はなく、それらの除去期間Tは異なる持続期間、開始時刻および/または終了時刻を有してよい。いくつかの実施形態では、様々なタイミング特性がフレーム間において変化してよい。除去期間の開始時刻および/または終了時刻と、除去期間の持続期間と、検出期間の開始時刻および/または終了時刻と、検出期間の持続期間との任意の組合せは、異なるフレームにおいて変化してよい。
【0088】
図6Cは、第1のフレームおよび第2のフレームについてのタイミングの別の例を示す。この例では(また、図6Bの例と対照的に)、除去期間の開始時刻および終了時刻は、2つのフレーム間において変化している。第1のフレームでは、VRejは除去期間Tの間は高く設定される。第2のフレームでは、VRejは、レーザパルスに対してより早く開始する除去期間Tの間は高く設定される。この例では、第1のフレームにおける除去期間Tの持続期間は、第2のフレームにおける除去期間Tと同一である。しかしながら、第1のフレームにおける除去期間Tの持続期間は、第2のフレームにおける除去期間Tと同一である必要はなく、それらの除去期間Tは異なる期間を有してよい。例えば、第1のフレームにおける除去期間Tは、図6Cに示されるよりも早く開始されてよく、その場合、第1のフレームにおける除去期間Tは、第2のフレームにおける除去期間Tよりも長い。VRejが低く設定された後、光生成電荷は光検出領域に留まることが可能であり、これは第2のフレームにおいて第1のフレームにおけるよりも早く発生する。VBinのタイミングは両方のフレームにおいて同一であるが、除去期間がより早く終了するため、検出期間TD2は、第2のフレームにおいて第1のフレームよりも早く有効に開始し、光生成電荷は、VBinが高くなるまで除去領域に留まることが可能である。図6Cに示されるタイミングは、第1のフレームにおける検出期間TD1図6Bの例におけるよりも遅く開始するため、図6Bに示されるタイミングに対して低減された雑音の利点を有してよい。これによって、励起パルスにより生成される望ましくない光生成電荷キャリアがビンに対し移送される可能性が低減される。
【0089】
第1のフレームから第2のフレームまで、タイミングが異なり得る複数の手法が存在する。例えば、レーザパルス(例えば、レーザパルスの中心時刻)と検出工程60の開始との間の遅延である遅延時間dは、図6Bの例におけるように、両方のフレームにおいて同一である必要はなく、遅延時間(d)が第1のフレームの遅延時間(d)よりも短い第2のフレームを示す図6Cの例におけるように異なってよい。さらに、TD2は、除去期間同士の間の全持続期間に及ぶ必要がなく、図6Cに示されるように、除去期間同士の間の持続期間の一部にしか及ばなくてよい。さらに、フレームの順序が逆転して、第2のフレームが第1のフレームの前に発生してよい。フレームごとのレーザパルスの数は、第1のフレームと第2のフレームとについて同一であってよく、または異なる種類のフレームにおいて異なってよい。本明細書に特に記載されるもの以外の第1のフレームと第2のフレームの間の差が存在してよい。
【0090】
タイミングの変化について記載したが、タイミングを変化させることによって収集される情報について記載する。第1のフレーム中にビンに貯蔵された電荷の量はCと称され、第2のフレーム中にビンに貯蔵された電荷の量はCと称される。CおよびCは、両方とも、受け取られた光の強度特性および時間的特性を示す。強度特性および時間的特性を取得するための、CおよびCを処理する複数の手法が存在する。例として、Cは強度特性を表してよく、またはCとCとの和は強度特性を表してよい。さらに例として、CとCとの比は時間的特性を表してよい。これらの例は、CおよびCがタイミング強度特性を表す手法を示すためであるに過ぎない。そうした特性は、記載された手法により、またはより複雑な計算を用いて計算されてよいが、タイミングまたは強度特性を計算する必要はない。いくつかの実施形態では、ニューラルネットワークなどの機械学習アルゴリズムは、固有のタイミングおよび強度情報を含む未処理情報CおよびCに基づいて発光分子同士を区別するように訓練されてよい。機械学習アルゴリズムは、訓練された後、発光分子を未処理情報CおよびCに基づいて識別および/または区別するように使用されてよい。この情報は、例えば、核酸のシークエンシングを行うように用いられてよい。
【0091】
図7は、方法50が、フレーム1とフレーム2との間を交互に複数回行われてよいことを示す。図7は、ヌクレオチド組み込みイベント中に生じ得る蛍光パルスのタイミングを示す。2つのフレームについて示されるレベルは、それぞれCおよびCの値である。CおよびCの平均値は、任意の適切な計算(例えば、平均値、中央値など)を使用して、複数のフレームにわたって計算されてよい。平均値は蛍光パルスの強度および/または時間特性を取得するように使用されてよく、未処理平均値は発光分子を直接識別および/または弁別するように使用されてよく、またはその両方であってよい。図6および図7は、2つの異なるタイミングが使用される(フレーム1およびフレーム2)一例を示すが、2以上または3以上などの任意の数の異なるタイミングが使用されてよい。例えば、2つのフレーム、3つのフレーム、またはより多くが使用される。
【0092】
いくつかの実施形態では、集積デバイスは、ビンのタイミングを変化させることが可能であるようにプログラム可能であってよい。電極は、適切なタイミングを設定しフレーム間のタイミングを調節する制御回路によって制御されてよい。いくつかの実施形態では、時間ビンのタイミングは、測定60の測定期間を開始するトリガ・イベントのタイミングに基づいて設定されてよい。蛍光寿命測定のコンテキストでは、時間ビンのタイミングは、フルオロフォアを励起させる励起パルスのタイミングを検出することに応答して設定されてよい。例えば、励起光パルスがピクセル100に到達すると、キャリアのサージが光子吸収/キャリア発生領域102からドレインに対して移動してよい。励起パルスに応答するドレインにおける光生成キャリアの蓄積が、ドレインの電圧の変化を引き起こしてよい。したがって、いくつかの実施形態では、励起パルスは、ドレインの電圧を検出することによって検出されてよい。例えば、コンパレータは、ドレインの電圧を閾値と比較してよく、ドレインの電圧が閾値を超えたときにパルスを生成してよい。パルスのタイミングはトリガ・イベントのタイミングを示してよく、このタイミングに基づいて時間ビンのタイミングが設定されてよい。しかしながら、本明細書に記載されている技法はこれに関して限定されず、任意の適切な技法が測定の開始を検出するために使用されてよい。
【0093】
ピクセル100の動作のタイミングについて記載したが、ここで話題をピクセル100の構造および読出に戻す。図5は、図2における線A-A’に沿ったピクセル100の一例の断面図を示す。示されるように、電極206,203および213は半導体基板101上に、または半導体基板101の上方に形成されている。光は、光源120から光子吸収/キャリア発生エリア102で受け取られる。光源120は、限定ではなく例として(例えば、核酸に連結された)発光性サンプルまたはイメージングアプリケーションにおいてイメージングが行われる領域もしくはシーンを含む、任意の種類の光源であってよい。光源120は、不要な励起レーザ光を含んでよい。遮光体121は、例えば、迷励起光(stray excitation light)または他の迷光によって電荷がビンまたは読出ノードに直接発生するのを防止するように、光が基板の別の部分に到達するのを防止してよい。遮光体121は、限定ではなく例として、任意の適切な材料、すなわちそうした集積回路の金属層から形成されてよい。図5は、除去中の電荷移送の反対方向(左方への)とビンへの移送(右方)とを示す。
【0094】
図5に示されるように、ピクセル100は、ビンに貯蔵された電荷を読み出すことを可能にする読出回路構成110を備えてよい。ピクセル100は、読出回路構成110が読出増幅器を備えるようにアクティブ・ピクセルであってよく、または読出回路構成110が読出増幅器を備えないパッシブ・ピクセルであってよい。任意の適切な種類のアクティブ・ピクセルまたはパッシブ・ピクセル読出回路構成が使用されてよい。読出回路構成110が読出増幅器を備える場合、読出増幅器は、電荷貯蔵ビン(例えば、ビン0,ビン1)に蓄積された電荷を入力として取り込んでよく、電荷貯蔵ビン内の電荷を表す電圧を出力として生成してよい。
【0095】
読出回路構成110が読出増幅器を備える場合、任意の適切な種類の増幅器が使用されてよい。適切な増幅器の例は、共通ソース構成に落ちた増幅器、およびソースフォロワ構成に落ちた増幅器を含む。ソースフォロワ構成に基づく読出回路構成110の1つの例が図5に示される。図5に示されるように、読出領域110は、ソースフォロワバッファトランジスタsf、リセット・トランジスタrt、および行選択トランジスタrsを備えてよい。しかしながら、本明細書に記載されている技法は、いかなる特定の増幅器構成にも限定されない。いくつかの実施形態では、移送電極213は読出回路構成110の一部であってよい。
【0096】
ノイズ・リダクション技法を含む任意の適切な読出技法が使用されてよい。いくつかの実施形態では、読出回路構成110は、相関二重サンプリングを使用してビンを読み出してよい。相関二重サンプリングは、未定の量のノイズを含むリセット電圧レベルのノードの第1のサンプルが取り出され得るとともに、同じ未定のノイズを含むノードの信号レベルの第2のサンプルが取り出され得る、技法である。ノイズは、サンプリングされた信号レベルからサンプリングされたリセット・レベルを引くことによって差し引くことが可能である。
【0097】
ビンを読み出すことは、上述したように、ビンに集約された電荷の量を対応する電圧へと変換することを含んでよい。時間ビンからの読出は、50Hz~100Hz,10Hz~500Hz、または別のレートなどの、任意の適切なレートで行われてよい。
【0098】
移送電極213は、ビンに結合されている電荷であってよい。読出ノード111は、移送電極213に結合されている電荷であってよい。図5に示されるように、読出ノード111はリセット・トランジスタrtのソースに接続されてよい。リセット・トランジスタrtおよび行選択トランジスタrsのドレインは、高電圧源に接続されてよい。リセット・トランジスタrtおよび行選択トランジスタrsのゲートは、行駆動回路によって制御されてよい。いくつかの実施形態では、トランジスタsfのソースは、行選択トランジスタrsのドレインに接続されてよい。トランジスタsfのゲートは、読出ノード111に接続されてよい。いくつかの実施形態では、ソースフォロワのソースは、列線読出部に接続されてよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、ピクセルはビンと読出ノード11との両方を有する必要はない。図8Aは、ビンが読出ノード111によって形成されたピクセル200の一例の断面図を示す。読出ノード111は、上述したように、浮遊拡散部であってよい。読出ノード111のビンとしての使用は、電荷貯蔵領域および電極213を除去することによって、ピクセル設計および動作を単純化してよい。図8Bは、ピクセル200の平面図を示す。図8Aおよび図8Bに見られるように、ピクセル200では、電極203は、読出ノード111に対しアクセスするように電位障壁202を制御する。ピクセル200の動作は、電荷を別々のビンから読出ノード111に対し移送する必要性を避けることによって読出が単純化され得ることを除いて、ピクセル100について上述したものと同一であってよい。
【0100】
例示的な貯蔵ビン
電荷貯蔵ビンを半導体領域内のポテンシャル井戸(ウェル)として実装するいくつかの手法が存在する。いくつかの実施形態では、ポテンシャル井戸は、部分的に電極203内にあってよい。電荷を井戸の中および外に移動するための2つの種類の移送が存在する。蓄積の移送は電荷を井戸へと移動させる。読出部の移送は電荷を井戸の外に移動させる。
【0101】
以下はポテンシャル井戸の可能な特性である。すなわち、・井戸は、100個以上の電子の蓄積された電荷を30℃にて10ms間に貯蔵するのに充分な深さであってよい。・電極203は、領域102を井戸に対して電荷結合する。・井戸は、少なくとも部分的には電極203内にあってよい。・蓄積の移送中、井戸は領域102の完全な空乏電圧よりも高い電位にあってよい。・井戸の完全な空乏電圧は、読出の移送中の浮遊拡散部リセット・レベルよりも低い電位にあってよい。・井戸の電位は、蓄積の移送と読出の移送との両方の要求に適うように、動的に変調されてよい。
【0102】
ビン0またはビン1などのビンについてのポテンシャル井戸を作り出すために、いくつかの技法が存在する。1つの例として、電極203および213のうちの1または複数が相補的ドーピング(分割ドーピング)されてよい。第2の選択肢は、電極によって変調される井戸の位置に埋設されたチャネルのn型インプラントを置くことである。電極が高い電位にあるとき、井戸の電位は収集領域を超えて上昇する。第3の選択肢は、領域102のダイオードと同一であるレプリカのダイオードを生成することである。そのダイオードは、領域102のダイオードと同様に、同一のインプラントを有する埋設ダイオードであってよい。そのダイオードは、障壁202と移送電極213との間に形成されてよい。空乏電圧は、読出移送ゲートにわたって延びているn型インプラントにより調整されてよい。障壁202を形成する電極は、N+にドーピングされてよく、一方で読出移送電極はP+にドーピングされてよい。いくつかの実施形態では、ビンについてのポテンシャル井戸を形成するように上記の技法の組合せが用いられてよい。
【0103】
ビンの位置は、電極の下、電極によって覆われない領域、または電極の下と電極によって覆われない領域との両方であってよい。例えば、ビンは、電極203の下、電極203とt1に接続されているポリシリコン移送電極との間であって電極203の下でない領域、または電極203の下と電極203の下でない領域との両方にあってよい。
【0104】
材料の例
図9は、集積回路が作製され得る材料の例を示す。ピクセルは半導体領域に形成されてよく、いくつかの実施形態では半導体領域はシリコンであってよい。酸化シリコン領域などの絶縁領域は、集積回路のエリアを互いに絶縁してよい。電極(例えば、電極206,203および213)は、ポリシリコンまたは別の導体から形成されてよい。絶縁スペーサは電極の側に配置されてよい。例えば、絶縁領域は窒化シリコンから形成されてよい。アルミニウムなどの金属が電極に対して電気的に接触するように電極上に配置されてよい。しかしながら、本明細書に記載されるデバイスは、特定の材料に関して限定されないため、他の材料が用いられてよい。
【0105】
例示的な集積回路の実現および集積光検出器の形成方法
いくつかの実施形態では、図15におけるチップ1300は、標準的なCMOS(相補型金属酸化膜半導体)処理を使用してシリコン基板に形成されてよい。しかしながら、本明細書に記載されている技法はこれに関して限定されず、任意の適切な基板または製造処理が使用されてよい。図10図14は、光検出器を形成する例示的な処理と、4つの異なるピクセル設計n0~n3を示す図。図10は、半導体領域における拡散部およびNウェル領域、ならびに上に位置するポリ電極層とともにレベル0を示す。図11はレベル1を示し、図12はレベル2を示し、図13はレベル3を示し、図14はレベル4を示す。
【0106】
ピクセル・アレイ/チップ・アーキテクチャ
図15は、いくつかの実施形態に係るチップ・アーキテクチャの図を示す。図15に示されるように、集積回路またはチップ1300は、複数のピクセル100を含むピクセル・アレイ1302と、タイミング回路1306を含む制御回路1304と、電圧/電流バイアス発生回路1305と、インターフェース1308とを含んでよい。しかしながら、1つまたは複数のコンポーネントはオフチップであってよいため、これらのコンポーネントのすべてがチップ1300上にある必要はない。例えば、いくつかの実施形態では、ピクセル電極用の制御信号は、オフチップに配置された回路によって生成されてよい。
【0107】
ピクセル・アレイ1302は、例えば、矩形パターンなど任意の適切なパターンで配置されたピクセル100のアレイを含む。ピクセル・アレイ1302は、任意の適切な数のピクセルを有してよい。ピクセル・アレイは、ピクセル・アレイ1302の行または列を読み出すための行導体および/または列導体を有してよい。ピクセルは、並列、直列、またはこれらの組合せで読み出されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、ピクセルの行が並列に読み出されてよく、ピクセル・アレイの各行は順次読み出されてよい。しかしながら、本明細書に記載されている技法はこれに関して限定されず、ピクセルは任意の適切な方法で読み出されてよい。
【0108】
ピクセル・アレイ1302は制御回路1304によって制御される。制御回路1304は、ピクセル・アレイ1302の動作を含むチップ1300上の動作を制御するための任意の適切な種類の制御回路であってよい。いくつかの実施形態では、制御回路1304は、ピクセル・アレイ1302の動作およびチップ1300上の任意の他の動作を制御するようにプログラムされたマイクロプロセッサを含んでよい。制御回路は、そうした動作をマイクロプロセッサに行わせるためのコンピュータ可読命令(例えば、コード)を記憶するコンピュータ可読媒体(例えば、メモリ)を含んでよい。例えば、制御回路1304は、各ピクセルにおける電荷キャリア分離構造の電極に印加される電圧を生成するのを制御してよい。制御回路1304は、上述されたように、キャリアを捕獲し、キャリアを移送し、またピクセルおよびアレイの読出を行うように、1つまたは複数の電極の電圧を変化させてよい。制御回路は、記憶されたタイミング方式に基づいて電荷キャリア分離構造の動作のタイミングを設定してよい。記憶されたタイミング方式は、上述されたように、固定式、プログラム可能、および/または適応性であってよい。
【0109】
制御回路1304は、ピクセルの電荷キャリア分離構造の動作またはチップの他の動作のタイミングを取るためのタイミング回路1306を含んでよい。いくつかの実施形態では、タイミング回路1306は、電荷キャリアを精密に時間ビニングするために、電荷キャリア分離構造における電圧変化のタイミングを正確に制御するための信号の生成を可能にしてよい。いくつかの実施形態では、タイミング回路1306は、電荷キャリア分離構造に対して提供される信号のタイミングを正確に設定するための外部基準クロックおよび/または遅延ロック・ループ(DLL)を含んでよい。いくつかの実施形態では、2つのシングルエンド遅延線が使用されてよく、それぞれ段の半数は位相が180度ずれて配列される。しかしながら、任意の適切な技法が、チップ上の信号のタイミングを制御するために使用されてよい。
【0110】
チップ1300は、チップ1300からの信号を送る、チップ1300で信号を受け取る、またはその両方のためのインターフェース1308を備えてよい。インターフェース1308は、ピクセル・アレイ1302によって検知された信号を読み出すのを可能にしてよい。チップ1300からの読出は、アナログ・インターフェースおよび/またはデジタル・インターフェースを使用して行われてよい。チップ1300からの読出がデジタル・インターフェースを使用して行われる場合、チップ1300は、ピクセル・アレイ1302から読み出された信号をデジタル信号へと変換するための1つまたは複数のアナログ-デジタル・コンバータを有してよい。いくつかの実施形態では、読出回路は、プログラマブル利得増幅器を含んでよい。1つまたは複数の制御信号が、インターフェース1308を介して外部ソースからチップ1300に対して提供されてよい。例えば、そうした制御信号は、行われる測定の種類を制御してよく、これは、時間ビンのタイミングを設定することを含んでよい。
【0111】
ピクセル・アレイ1302から読み出された信号の分析は、オンチップまたはオフチップの回路構成によって行われてよい。例えば、蛍光寿命測定のコンテキストでは、光子到着のタイミングの分析は、フルオロフォアの蛍光寿命を近似することを含んでよい。任意の適切な種類の分析が行われてよい。ピクセル・アレイ1302から読み出された信号の分析がオンチップで行われる場合、チップ1300は、分析を行うための任意の適切な処理回路構成を有してよい。例えば、チップ1300は、制御回路1304の一部またはそれとは別個の、分析を行うためのマイクロプロセッサを有してよい。分析がオンチップで行われる場合、いくつかの実施形態では、分析の結果は、インターフェース1308を介して外部デバイスに送られてよく、または別様にオフチップに提供されてよい。いくつかの実施形態では、分析のすべてまたは一部がオフチップで行われてよい。分析がオフチップで行われる場合、ピクセル・アレイ1302から読み出された信号および/またはチップ1300によって行われた任意の分析の結果は、インターフェース1308を介して外部デバイスに提供されてよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、チップ1300は、以下のうちの1つまたは複数を含んでよい。
1)オンチップのデジタル制御されるピクセル・バイアス発生器(DAC)
2)シングルエンドのピクセル出力電圧信号を差動信号に変換し利得を信号に適用する、オンチップのデジタル・プログラマブル利得増幅器
3)出力レートで電力損失をスケーリングすることを可能にする、デジタル制御される増幅バイアス発生器(amplifier bias generators)。
【0113】
図16は、ピクセル・アレイを制御するため、またはピクセルからのデータの分析を行うための制御回路を実装するために使用され得る、例示的コンピューティング・デバイス1000のブロック図である。コンピューティング・デバイス1000は、1つまたは複数のプロセッサ1001、および1つまたは複数の有形の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体(例えば、メモリ1003)を備えてよい。メモリ1003は、実行時に上記の機能のいずれかを実装するコンピュータ・プログラム命令を有形の非一時的なコンピュータ記録可能媒体に記憶してよい。プロセッサ1001は、メモリ1003に結合されてよく、そうしたコンピュータ・プログラム命令を実行して機能を実現および実施させてよい。
【0114】
コンピューティング・デバイス1000はまた、コンピューティング・デバイスが(例えば、ネットワークを介して)他のコンピューティング・デバイスと通信し得るネットワーク入力/出力(I/O)インターフェース1005を含んでよく、また、1つまたは複数のユーザI/Oインターフェース1007を含んでよく、これを介して、コンピューティング・デバイスは、ユーザに対して出力を提供し、かつユーザから入力を受け取ってよい。ユーザI/Oインターフェースは、キーボード、マウス、マイクロフォン、ディスプレイ・デバイス(例えば、モニタまたはタッチ・スクリーン)、スピーカ、カメラ、および/または様々な他の種類のI/Oデバイスなどのデバイスを含んでよい。
【0115】
上述の実施形態は、多数の手法のいずれかで実装されることが可能である。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組合せを使用して実装されてよい。ソフトウェアで実装されるとき、ソフトウェア・コードは、単一のコンピューティング・デバイスに提供されるか、または複数のコンピューティング・デバイス間に分散されるかにかかわらず、任意の適切なプロセッサ(例えば、マイクロプロセッサ)またはプロセッサの集合において実行されることが可能である。上述された機能を実施する任意のコンポーネントまたはコンポーネントの集合は、上述された機能を制御する1つまたは複数のコントローラとして総称的に考慮され得ることが理解される。1つまたは複数のコントローラは、専用ハードウェアを用いる、または上記に列挙された機能を実施するためにマイクロコードまたはソフトウェアを使用してプログラムされた汎用ハードウェア(例えば、1つまたは複数のプロセッサ)を用いるなど、多くの手法で実装されることが可能である。
【0116】
これに関して、本明細書に記載されている実施形態の1つの実装は、1つまたは複数のプロセッサ上で実行されたとき、1つまたは複数の実施形態の上述された機能を実施するコンピュータ・プログラム(複数の実行可能命令)によりエンコードされた1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体(例えば、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュ・メモリもしくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)もしくは他の光ディスク・ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク・ストレージ、もしくは他の磁気記憶デバイス、または他の有形の非一時的なコンピュータ可読記憶媒体)を含むことが理解される。コンピュータ可読媒体は、本明細書に論じられた技法の態様を実装するために、媒体上に記憶されたプログラムが任意のコンピューティング・デバイス上にロードされ得るように可搬であってよい。これに加えて、実行時に上述された機能のいずれかを実施するコンピュータ・プログラムへの参照は、ホスト・コンピュータ上で動作するアプリケーション・プログラムに限定されないことが理解される。むしろ、コンピュータ・プログラムおよびソフトウェアという用語は、本明細書では一般的に、本明細書で論じられた技法の態様を実装するために1つまたは複数のプロセッサをプログラムするのに利用され得る任意の種類のコンピュータ・コード(例えば、アプリケーション・ソフトウェア、ファームウェア、マイクロコード、または他の任意の形態のコンピュータ命令)を参照するために使用される。
【0117】
追加の用途
本明細書に記載されている集積光検出器は、上述されたように、複数の生物学的および/または化学的サンプルの分析に適用されてよいが、集積光検出器は、例えば、イメージング用途などの他の用途に適用されてよい。いくつかの実施形態では、集積光検出器は、領域、物体、またはシーンのイメージングを行うピクセル・アレイを備えてよく、領域、物体、またはシーンの異なる領域から個々のピクセルで受け取られる光の時間的特性を検出してよい。例えば、いくつかの実施形態では、集積光検出器は、組織から受け取られた光の時間的特性に基づいて組織のイメージングを行ってよく、これにより、医師が処置(例えば、手術)を行って組織の異常または病変領域(例えば、癌または前癌部)を識別することを可能としてよい。いくつかの実施形態では、集積光検出器は、外科用イメージング・ツールなどの医療デバイスへと組み込まれてよい。いくつかの実施形態では、励起光パルスに応答して組織によって放出された光に関する時間領域情報が、組織のイメージングおよび/またはキャラクタリゼーションを行うために取得されてよい。例えば、蛍光寿命イメージングを使用して、組織または他の物体のイメージングおよび/またはキャラクタリゼーションが行われてよい。
【0118】
上述されたように、集積光検出器は、生物学的および/もしくは化学的サンプルのイメージングもしくは分析、または組織のイメージングを行うことによってなど、科学的または診断的コンテキストで適用されてよいが、そうした集積光検出器は、任意の他の適切なコンテキストで使用されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、そうした集積光検出器は、個々のピクセルで検出された光の時間的特性を使用してシーンのイメージングを行ってよい。シーンのイメージングを行う用途の一例は、光検出器に光が到達するのにかかる時間の量が分析されて、光検出器まで光により移動された距離を決定する、レンジ・イメージングまたは飛行時間型イメージングである。そうした技法は、シーンの3次元イメージングを行うために使用されてよい。例えば、集積光検出器に対して既知の位置から放出された光パルス、および光検出器によって検出された反射光によって、シーンが照射されてよい。アレイのそれぞれのピクセルで光が集積光検出器に到達するのにかかる時間の量が測定されて、シーンのそれぞれの部分から移動し光検出器のそれぞれのピクセルに到達する光の距離が決定される。いくつかの実施形態では、集積光検出器は、例えば、カメラ、携帯電話、またはタブレットコンピュータなどの家庭用電子デバイスへと組み込まれてよく、取得された範囲情報に基づいて、そうしたデバイスが画像またはビデオをキャプチャし処理することを可能にする。
【0119】
いくつかの実施形態では、本願に記載されている集積光検出器は、低い光強度を測定するために使用されてよい。そうした光検出器は、例えば、単一光子計数技法を現在使用し得る用途など、高感度の光検出器を必要とする用途に適し得る。しかしながら、本明細書に記載されている技法はこれに関して限定されず、本願に記載されている集積光検出器は、任意の適切な光強度を測定してよい。
【0120】
追加の発光寿命用途
寿命を使用するイメージングおよびキャラクタリゼーション
前述されたように、本明細書に記載されている技法は、外因性フルオロフォアを使用する標識化、検出、および定量化に限定されない。いくつかの実施形態では、領域、物体、またはサンプルは、集積光検出器の使用を通して、蛍光寿命イメージング技法を用いてイメージングおよび/またはキャラクタリゼーションが行われてよい。そうした技法では、領域、物体、またはサンプル自体の蛍光特性が、イメージングおよび/またはキャラクタリゼーションのために使用されてよい。外因性マーカまたは内因性マーカのいずれかが、寿命イメージングおよび/またはキャラクタリゼーションによって検出されてよい。特定の標的成分の存在および/または位置を検出するために、プローブに付着された外因性マーカが領域、物体、またはサンプルに提供されてよい。外因性マーカは、標識プローブのための標的を含む領域、物体、またはサンプルの部分を検出するために、標識プローブの一部としてのタグおよび/またはレポータの役割をしてよい。内因性マーカの自己蛍光は、内因性マーカの導入を必要とせずにイメージングに容易に利用され得る空間分解能のための無標識で非侵襲的なコントラストを提供してよい。例えば、生物学的組織からの自己蛍光信号は、組織の生化学的および構造的組成に依存し、それを示してよい。
【0121】
蛍光寿命測定は、フルオロフォアの周囲の条件の定量的尺度を提供してよい。条件の定量的尺度が検出またはコントラストに追加されてよい。フルオロフォアの蛍光寿命は、pHまたは温度などのフルオロフォアの周囲環境に応じて異なる場合があり、蛍光寿命の値の変化は、フルオロフォアの周囲の環境の変化を示し得る。一例として、蛍光寿命イメージングは、生物学的組織(例えば、組織切片または外科的切除)などにおけるサンプルの局所環境内の変化をマッピングしてよい。内因性フルオロフォアの自己蛍光の蛍光寿命測定が、組織における物理的および代謝的変化を検出するために使用されてよい。例として、サンプルからの自己蛍光を測定し、測定された自己蛍光から寿命を決定することによって、組織構造、形態、酸素化、pH、血管分布、細胞構造、および/または細胞代謝状態の変化が検出されてよい。そうした方法は、スクリーニング、画像誘導生検もしくは手術、および/または内視鏡検査などの臨床用途に使用されてよい。いくつかの実施形態では、本願の集積光検出器は、例えば蛍光寿命イメージングを行うために、手術器具などの臨床ツールへと組み込まれてよい。測定された自己蛍光に基づいて蛍光寿命を決定することは、臨床医が迅速に組織をスクリーニングし、裸眼には見えない小さな癌および/または前癌病変を検出することを可能にする無標識イメージング方法としての臨床的価値を提供する。蛍光寿命イメージングは、健常組織よりも長い蛍光寿命を有する発光を放出する腫瘍または癌細胞などの悪性細胞または組織の検出および線引きのために使用されてよい。例えば、蛍光寿命イメージングは、手術中に露出される消化管、膀胱、皮膚、または組織表面などの光学的にアクセス可能な組織における癌を検出するために使用されてよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、蛍光寿命は、異なる種類または状態のサンプル間のコントラストを提供するために顕微鏡技術で使用されてよい。蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)が、サンプルを光パルスで励起し、寿命を決定するために減衰するときに蛍光信号を検出し、得られた画像において減衰時間をマッピングすることによって実施されてよい。そうした顕微鏡画像では、画像におけるピクセル値は、視野を収集する光検出器における各ピクセルについて決定された蛍光寿命に基づいてよい。
【0123】
時間的情報を使用するシーンまたは物体のイメージング
上述されたように、本願に記載されているような集積光検出器は、科学的および臨床的コンテキストで使用されてよく、そうしたコンテキストでは、放出された光のタイミングが、領域、物体またはサンプルの検出、定量化、および/またはイメージングを行うために使用されてよい。しかしながら、本明細書に記載されている技法は、科学的および臨床的用途に限定されず、集積光検出器は、入射光子の到着の時刻に関する時間的情報が利用され得る任意のイメージング用途において使用されてよい。用途の一例は、飛行時間型イメージングである。
【0124】
飛行時間型用途
いくつかの実施形態では、飛行時間測定を含む散乱光または反射光の時間プロファイルを測定することに基づいて、イメージング技法において集積光検出器が使用されてよい。そうした飛行時間型測定では、光パルスが領域またはサンプル内に放出されてよく、散乱光が集積光検出器によって検出されてよい。散乱光または反射光は、領域またはサンプルの特性を示し得る別個の時間プロファイルを有してよい。サンプルによる後方散乱光は、サンプルにおける自身の飛行時間によって検出および解像されてよい。そうした時間プロファイルは、時間点広がり関数(TPSF)であってよい。時間プロファイルは、光パルスが放出された後の複数の期間にわたる積分強度を測定することによって取得されてよい。光パルスの繰り返しおよび散乱光の蓄積が、すべての以前のTPSFが後続の光パルスを生成する前に完全に消滅されることを確実にするために、特定の速度で実行されてよい。時間分解拡散光学イメージング方法は、サンプルにおいてさらなる深さでイメージングを行うために、光パルスが赤外光であり得る分光拡散光トモグラフィを含んでよい。そうした時間分解拡散光学イメージング方法は、生体内または人間の頭などの生体の一部において腫瘍を検出するために使用されてよい。
【0125】
これに加えてまたはこれに代えて、飛行時間型測定は、放出された光パルスと物体から反射された光の検出との間の光の速度および時間に基づいて、距離または距離範囲を測定するために使用されてよい。そうした飛行時間型技法は、カメラ、自動車内の近接検出センサ、ヒューマン-マシン・インターフェース、ロボット工学、およびそうした技法によって収集された3次元情報を使用し得る他の用途を含む、様々な用途で使用されてよい。
【0126】
追加の態様
本発明の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または上に記載された実施形態において特に議論されていない様々な構成で使用されてよく、したがって、その用途において、上の記載にて説明されまたは図面に示されているコンポーネントの詳細および構成に限定されない。例えば、1つの実施形態において記載された態様が、他の実施形態において記載された態様と任意の様式で組み合わされてよい。
【0127】
また、本発明は方法として実施されてよく、その一例が提供されている。方法の一部として行われる動作は、任意の適切な手法で順序付けられてよい。したがって、示されているのと異なる順序で動作が行われる実施形態が構築されてよく、それは、例示的な実施形態で連続的な動作として示されたとしても、いくつかの動作を同時に実施することを含んでよい。
【0128】
特許請求の範囲において請求項要素を修飾するための「第1の」、「第2の」、「第3の」などの序数用語の使用は、それ自体では、別の請求項要素に対する1つの請求項要素のいかなる優先度、順位、もしくは順序も含意しておらず、または方法の動作が実施される時間的な順序も含意しておらず、それらは、単に、特定の名前を有する1つの請求項要素を(序数用語の使用がなければ)同じ名前を有する別の要素から区別するための標識として使用されて、請求項要素を区別する。序数用語の使用は、追加の要素を妨げることを意図するものでもない。例えば、「第1の」および「第2の」の記載は、「第3の」要素または追加の要素の存在を妨げるものではない。
【0129】
また、本明細書で使用されている表現および用語は、記載のためのものであり、限定とみなされるものではない。本明細書における「含む(including)」、「備える(comprising)」、または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」およびそれらの変形の使用は、その後に列挙されるアイテムおよびその均等物、ならびに追加的なアイテムを包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書または図面に記載の発明。