(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071499
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】プレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、部品移動プログラム
(51)【国際特許分類】
B25J 13/08 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
B25J13/08 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047383
(22)【出願日】2024-03-23
(62)【分割の表示】P 2019172466の分割
【原出願日】2019-09-24
(31)【優先権主張番号】P 2018186606
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】390017385
【氏名又は名称】宮川工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155549
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】林 弘
(72)【発明者】
【氏名】畔上 歩
(57)【要約】
【課題】 板状の部品を好適に移動可能な板状部品移動装置、板状部品移動装置の制御装置、及び、板状部品移動プログラムを提供する。
【解決手段】 積込手段(積込部70)の動作を制御して、加工部品(部品13a等)を移動する場合に、加工部品支持手段(部品支持部40)によって支持された加工部品に付された複数種類の方向識別情報(共通記号22)に基づいて加工部品の種類と向きを識別して、加工部品を移動する制御を行うことが可能な構成とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の材料を複数に分断可能な加工装置によって加工された加工部品を移動する移動手段と、
前記加工部品における、厚み方向を向く少なくとも一面に、当該加工部品の向きを識別可能な識別情報を付す識別情報付加手段と、
その識別情報付加手段によって付された識別情報を入力するための情報入力装置と、
その情報入力装置によって入力された識別情報に基づいて前記移動手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記識別情報として複数種類の識別情報が設定され、
前記識別情報付加手段は、前記加工装置の制御によって加工された前記加工部品に対して、前記識別情報として設定された複数種類の識別情報の一部を、前記加工部品に付すことを特徴とする板状部品移動装置。
【請求項2】
前記識別情報として、1つの方向を特定可能な1つの漢字によって構成される漢字識別情報が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の板状部品移動装置。
【請求項3】
前記複数種類の識別情報として、1の文字又は図形によって構成される第1識別情報と、
その第1識別情報と同一の文字又は図形を用いて前記第1識別情報とは大きさが異なる第2識別情報とが含まれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の板状部品移動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の板状部品移動装置の動作を制御する制御装置であって前記制御手段を備えていることを特徴とする板状部品移動装置の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の板状部品移動装置の制御装置における、前記識別情報に基づいて前記移動手段の動作を制御する演算処理を実行させることが可能に構成されている板状部品移動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状部品移動装置、板状部品移動装置の制御装置、及び、板状部品移動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築物には、柱や梁等の棒状の部材と共に、屋根を形成する屋根部材又はその屋根部材を敷き詰める下地となる下地部材、外壁や区画空間の内壁を形成する壁部材、区画空間の床を形成する床部材等として板状の部材(部品)が用いられている。このような部材は、建築物における使用場所に応じて予め切削や切断等によって多様な形状に加工された後、所謂プレカット加工が行われた後に、複数の層に積み重なった状態とされ、施工現場に配送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多様な形状の板状の部材(部品)が製造される場合において、板状の部材を移動したり、積み重なった状態とする場合に利用可能な装置(板状部品移動装置)の構成について、改良の余地のある可能性があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、板状の部品を好適に移動可能な板状部品移動装置、板状部品移動装置の制御装置、及び、板状部品移動プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に記載の板状部品移動装置は、
板状の材料を複数に分断可能な加工装置によって加工された加工部品を移動する移動手段と、
前記加工部品における、厚み方向を向く少なくとも一面に、当該加工部品の向きを識別可能な識別情報を付す識別情報付加手段と、
その識別情報付加手段によって付された識別情報を入力するための情報入力装置と、
その情報入力装置によって入力された識別情報に基づいて前記移動手段の動作を制御する制御手段とを備え、
前記識別情報として複数種類の識別情報が設定され、
前記識別情報付加手段は、前記加工装置の制御によって加工された前記加工部品に対して、前記識別情報として設定された複数種類の識別情報の一部を、前記加工部品に付すことを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の板状部品移動装置によれば、移動手段によって加工部品を移動する場合に、各加工部品に付された複数種類の識別情報(方向識別情報)の一部(複数種類のうちのいずれか又は複数の識別情報)に基づいて加工部品の向きを識別し、その識別した加工部品の向きに応じて移動手段の動作を制御して加工部品を、予め設定された位置に適切な向きにして移動する。この場合において、加工部品に付された識別情報を制御手段が識別し、加工部品に付された識別情報の種類に応じた加工部品の移動の制御が行われる。
【0008】
請求項2に記載の板状部品移動装置は、請求項1に記載の板状部品移動装置であって、前記識別情報として、1つの方向を特定可能な1つの漢字によって構成される漢字識別情報が含まれている。
【0009】
請求項3に記載の板状部品移動装置は、請求項1又は2に記載の板状部品移動装置であって、前記複数種類の識別情報として、1の文字又は図形によって構成される第1識別情報と、その第1識別情報と同一の文字又は図形を用いて前記第1識別情報とは大きさが異なる第2識別情報とが含まれている。
【0010】
請求項4に記載の板状部品移動装置の制御装置は、請求項1から3のいずれかに記載の板状部品移動装置の動作を制御する制御装置であって前記制御手段を備えている。
【0011】
請求項5に記載の板状部品移動プログラムは、請求項4に記載の板状部品移動装置の制御装置における、前記識別情報に基づいて前記移動手段の動作を制御する演算処理を実行させることが可能に構成されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の板状部品移動装置によれば、加工部品に付された識別情報の種類に応じた加工部品の移動の制御を制御手段に実行させることができる。このため、情報入力装置による識別情報の入力を簡易化して加工部品の移動完了までの時間を短くしたり、情報入力装置のコストを低減するなど、加工部品の向きを識別可能な識別情報を用いて移動制御を好適に行うことができる。よって、板状の部品を好適に移動可能な板状部品移動装置を提供することができる。
【0013】
請求項2に記載の板状部品移動装置によれば、請求項1に記載の板状部品移動装置の奏する効果に加え、識別情報として設定し得る対象を多様にして識別情報として適切な情報を設定(選定)し易くすることができ、また、制御手段に対する識別情報の設定や識別の制御の設定等を行い易くすることができる。
【0014】
請求項3に記載の板状部品移動装置によれば、請求項1又は2に記載の板状部品移動装置の奏する効果に加え、文字又は図形の大きさの違いによって異なる識別情報を設定することができる。よって、限られた文字や図形を用いて、多種の識別情報を用いた制御を行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の板状部品移動装置の制御装置によれば、請求項1から3のいずれかに記載の板状部品移動装置と同様の効果を奏する板状部品移動装置の制御装置を提供することができる。
【0016】
請求項5に記載の板状部品移動プログラムによれば、請求項4に記載の板状部品移動装置の制御装置の演算処理を実行させることが可能な板状部品移動プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】(A)は、積層体の一部の部分分解斜視図であり、(B)及び(C)は、層内での部品及び桟部材の配置を示す上面図
【
図3】(A)は、撮像機器の動作を示す模式図、(B)及び(C)は、保持機器の動作を示す模式図
【
図4】(A)は、桟部材支持部を示す模式図、(B)は、(C)は、単一の桟部材を供給する動作を示す模式図であり、(D)は、複数の桟部材を同時に供給する動作を示す模式図
【
図5】共通記号として、文字及び記号を利用した場合を例示した図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、板状部品製造装置1の構成の一例を示す模式図である。また、
図2(A)は、所定数の部品及び桟部材が複数の層に積み重なった状態とした積層体の一例を部分的に分解して示す斜視図であり、
図2(B)は、上下に重なる2層のうちの上層における部品及び桟部材の配置の一例を示す上面図であり、
図2(C)は、その下層における部品及び桟部材の配置の一例を示す上面図である。
【0019】
板状部品製造装置1は、板状の材料を加工する加工装置、加工装置によって加工された加工部品等を含む所定数の板状の部品が複数の層に積み重なった状態とすることが可能な板状部品移動装置とを備え、板状の材料に対する加工と、その加工により切り出される部品の積み重ねとを連動して行える装置である。具体的には、板状部品製造装置1は、
図1に示すように、材料支持部10と、識別情報付加部20と、加工部30と、部品支持部40と、積層支持部50と、桟部材支持部60と、積込部70と、残材回収部80と、制御部90とを備えている。加工部30は、加工装置としての機能部分と、板状部品移動装置としての機能部分とを含んでおり、加工部30の一部を含む各部位が板状部品移動装置を構成する。
【0020】
材料支持部10は、加工前の板状の材料12を多段に積み重ねられた状態で支持し、後述する識別情報付加部20を介して、その材料12を1つずつ加工部30に供給する。材料支持部10には、作業者によって、製造する部品に適した材質及び大きさの板状の材料12が供給される。
【0021】
識別情報付加部20は、材料支持部10から加工部30へ材料12を搬送する搬送経路において、各材料12に対して、製造予定(積層予定)の所定数の部品13を互いに識別可能な個体識別情報と、各部品13の向きを識別可能な方向識別情報とを含む所定の識別情報を付すことが可能な装置であって、具体的には、各材料12の一面(上面)に、文字、記号、バーコード、QRコード(登録商標)等の識別情報を印刷可能な印刷機(印字機)を備えている。
【0022】
識別情報付加部20は、個体識別情報としての建築物における各部品の使用位置との対応を示す使用位置情報等を含むコード情報としてバーコード21を印刷する。また、識別情報付加部20は、バーコード21の位置に対して予め定めた方向へ一定の距離だけ離れた所定の位置には、各材料12から切り出される予定の各部品13の向きを示す方向識別情報として利用可能で、各部品13に共通な共通記号22(
図3(C)参照)を印刷する。共通記号22が付される位置としては、各部品13において重心から離れた縁部分に付されるよりも、重心に近い一定範囲(例えば、10cm)内の位置に付されることが好ましく、各部品13の重心に重なる位置に付すようにしてもよい。
【0023】
識別情報付加部20によって識別情報が付加される各部品13には、加工部30による加工によって形成される部品13a~13d(加工部品:以下においては部品13a等と略記する)があり、また、加工部30による加工が不要な部品(加工不要部品)が含まれる。加工部30による加工によって分離された一部分であって、部品13として利用不能な廃材(残材15)については、識別情報付加部20が識別情報を付加しないように構成されている。
【0024】
なお、バーコード21には、個体識別情報に加えて、積層体11を構成する複数の層のいずれの層に配置されるかを指定する層情報と、配置すべき層内における配置の位置を指定する層内位置情報を含む構成であってもよい。この構成の場合、後述する制御部90において、積層体11の積層態様を記憶した制御機器と、後述する積込部70による積み込みを管理する制御機器とが異なる場合に、後者の管理機器に積層態様に関する情報がなくても、バーコード21と共通記号22との情報に基づいて、所定数の部品13を適切に積み重ねることができる。また、個体識別情報を1つのバーコード21によって付加する必要はなく、これに代えて、又はこれに加えて、QRコードなどの別のコード情報を付加してもよいし、2以上のコード情報を付加してもよい。また、共通記号22を必ずしも付加する必要はなく、個体識別情報を、特定の方向を識別可能な形のみを利用して付加し、その個体識別情報を方向識別情報としても利用するようにしてもよい。
【0025】
また、識別情報付加部20は、識別情報を材料12に印刷する構成に限らず、これに代えて、又は、これに加えて、識別情報を印刷したシールや識別情報を記憶したICチップを材料12に貼着する構成であってもよい。また、識別情報付加部20は、加工部30による加工前に、識別情報を材料12に付加する構成に限らず、加工部30による加工後において、識別情報を各部品13に付加する構成であってもよい。また、少なくとも一部の部品13に、識別情報の少なくとも一部(例えば、共通記号22)が付加されないようにしてもよく、例えば、加工不要部品は、加工が行われない分、移動に際しての位置ずれを少なく抑え易く、また、一定の大きさ以下(例えば、最長の辺の長さが30cm以下)の小型の部品については回転のズレがあっても積み込みに際してのズレ量の大きさは小さいため、バーコード21のみを利用して積み込みを行うようにしてもよい。
【0026】
加工部30は、板状の材料12を切削加工する加工装置と、材料12及び部品13を搬送する搬送装置とで構成されており、例えば、図示しないが、電動鋸やカッター等の切断機器と、切断機器と材料12及び部品13を移動させる移動機構と、それら移動機構を駆動させる駆動機器とを含む構成である。加工部30は、材料支持部10から順次に供給される材料12を加工し、各材料12から1又は複数の部品13を製造し、製造された1又は複数の部品13を部品支持部40へ搬送する。加工不要部品については、材料12を未加工のまま、部品支持部40へ移動する。
【0027】
また、加工部30における加工は、制御部90の制御により施工順や歩留まり等を考慮して、材料12に対して1又は複数の部品13を割り当てて加工を行う。この割り当てによって、部品13として利用不能な残り部分は、廃材(残材15)としてもよいし、部品13を積層する場合に部品13の間に介在させる桟部材14(以下において、加工桟部材14Rとも称す)に利用してもよい。この材料12の残り部分を加工桟部材14Rとする場合の加工や使用の詳細については、まとめて後述する。
【0028】
部品支持部40は、板状の材料12を配置可能な大きさに設定されて部品13a等を支持可能な部品支持領域40Aに、加工部30によって加工された部品13a等を、バーコード21及び共通記号22が上下方向(高さ方向、又は鉛直方向)の少なくとも一方側を向いた状態にして支持することが可能な構成である。また、部品支持部40は、加工不要部品についても、バーコード21及び共通記号22が上下方向の少なくとも一方側を向いた状態にして支持する。
【0029】
ここで、本実施形態では、全てのバーコード21及び共通記号22を上方から読み取る場合について主に説明し、バーコード21及び共通記号22が上方向を向くように印刷され、部品支持領域40Aにてバーコード21及び共通記号22が上方向を向く場合について説明するが、バーコード21及び共通記号22が下方向を向くように印刷し、部品支持部40において、例えば、透明な支持面によって部品13a等の下側を支持し、部品13a等の下側からバーコード21及び共通記号22を読み取るようにしてもよい。
【0030】
また、部品支持部40は、加工部30から受け取った各部品13を所定の方向(
図1の下方向)に移送可能な構成であって、加工部30から搬送されてくる部品13を順次に受け取る。この受け取りにおいては、1つの材料12から部品13の全てを切削加工した後に一括して搬送してもよいし、各部品13が互いに離間して支持され易いように、例えば、1つの材料12から複数の部品13が順に切断される場合に、早く切断されたものを早い段階で部品支持部40へ搬送してもよい。
【0031】
部品支持部40は、具体的には、動力によって駆動する複数の駆動ローラ41と、複数の駆動ローラ41の間に配置され、空転可能な複数の空転ローラ42と、複数の駆動ローラ41及び複数の空転ローラ42の外縁の一部に接触するように、環状に巻回された支持ベルト43と、複数の駆動ローラ41に動力を供給し、支持ベルト43を周回移動させる駆動モータ44とを含む構成である。部品支持部40は、材料12から部品13a等を製造した後に残る残材15も支持するが、その残材15は、支持ベルト43の周回移動によって、後述する残材回収部80に搬送される。
【0032】
積層支持部50は、
図2(A)に示すような積層体11の下側を支持可能に構成された部位である。積層支持部50には、部品支持部40に支持された部品13が順に積み重ねられる。その積み重ねによって、一定の高さの積層体11に積み重ねられると、その積層体11が別の位置にまとめて搬送される。
【0033】
積層支持部50に積み重ねられる積層体11には、加工部30によって加工された部品13a~13dが含まれ、加工不要部品が含まれる場合があり、桟部材14が含まれる場合がある。積層体11を構成する複数の層としては、1つの部品13で構成される層、複数の部品13で構成される層、又は、少なくとも1つの部品13及び少なくとも1つの桟部材14とで構成される層などがあり、製造が必要な部品13の数及び大きさ等によって複数の層の構成が制御部90によって決定される。
【0034】
桟部材支持部60は、積層支持部50において部品13を安定的に積み重ねるために必要な桟部材14を多段に積み重ねた状態で支持可能な構成であって、形状の異なる2種類の桟部材14、例えば、長辺が積層支持領域50Aの短い方の一辺と同じ長さであり、短辺が積層支持領域50Aの短い方の一辺より短い帯板状の桟部材14(以下、長桟部材14Lとも称す)と、一辺が長桟部材14Lの長辺よりも短く、かつ、その短辺よりも長い正方形の桟部材14(以下、短桟部材14Sとも称す)とを支持している。
【0035】
積込部70(積込手段)は、加工された部品13a等を含む所定数の板状の部品13が複数の層に積み重なった状態とすることが可能な構成であって、部品13a等(加工部品)に接触して部品13a等を吊り上げるための接触部と、当該接触部を基部74に対して移動可能に動作させる動作部とを備える構成である。具体的には、積込部70は、部品13や桟部材14を吊り上げるために、部品13に吸着する又は部品13を把持する接触部によって部品13を保持する保持機器71と、保持機器71を移動させるための多関節ロボットやクレーン等の動作機器73(動作部)とを備えている。動作機器73は、各部品13が保持機器71によって保持されている場合に、部品支持部40に配置された部品13や、桟部材支持部60に支持された桟部材14を積層支持部50へ移動させる。
【0036】
積込部70には、共通記号22(方向識別情報)を含む識別情報を制御部90(制御手段)に入力するための情報入力装置が、動作機器73(動作部)に対して保持機器71(接触部)が位置する先端部側に取り付けられている。具体的には、情報入力装置は、CCDカメラ等の識別情報を読み取ることが可能な撮像機器72で構成されている。
【0037】
積込部70は、部品支持部40の部品支持領域40Aに支持された1又は複数の部品13を、撮像機器72によってバーコード21及び共通記号22を検出することによって検知し、検知された部品13を、共通記号22に基づく重心位置を考慮した態様、例えば、重心を含む範囲に接触して吊り上げ、吊り上げた部品13を、バーコード21の情報に基づいて、積層支持部50における積層支持領域50A内の予定された位置に移動させる。また、この移動の過程において、積込部70は、共通記号22の向きに基づいて、必要であれば、部品13の向きを予定された向きに合わせるように回転させる。なお、積込部70の詳細な動作については、後述する。
【0038】
残材回収部80は、材料12から部品13を切り出した残りの残材15を回収して保持する構成であって、例えば、ベルトコンベアや、車輪を有する移動可能な回収槽で構成される。なお、残材回収部80は、残材15を所定の大きさ以下に破断する機器等の他の機器を含む構成であってもよく、更に、残材15を配置しておく空間のみが確保されている構成であってもよい。
【0039】
ここで、材料支持部10、部品支持部40、積層支持部50、及び、残材回収部80は、必ずしも板状部品製造装置1の一部とする必要はない。各部位には、材料12、部品13、又は、残材15を配置可能なスペースが設けられていればよく、例えば、残材15を床面の上に排出して後から回収したり、部品13a等を薄板状のパレットによって支持するようにしたり、移動可能な台車の上に材料12を配置したりして、板状部品製造装置1を構成してもよい。
【0040】
制御部90は、例えば、パーソナルコンピュータによって構成され、記憶装置としての各種のプログラム及び各種のデータを記憶するROM(ICチップ)又はRAM(磁気ディスクやSSD)や一時的に各種のデータを記憶するRAM、演算処理装置としてのCPU、入力装置としての記録媒体や他の制御装置から取得するための通信装置や各種の動作指示を入力するキーボード及びマウス、出力装置としての稼働状況を出力するディスプレイを備えて構成される。
【0041】
制御部90は、所定数の多様な形状の部品13及び部品13の安定的な支持を補助する各種の桟部材14の積層態様(荷姿)を決定するための積層態様決定プログラム(配置決定手段)と、加工部30における材料12の加工を制御する材料加工プログラムと、所定数の部品13及び桟部材14を複数の層に積み重ねるための板状部品移動プログラム(部品移動プログラム)とを記憶している。制御部90には、製造予定の各部品13の形状及び建築現場にての施工順に関する部品データが入力され、制御部90は、積層態様決定プログラムの実行によって、材料加工プログラムによって参照される各部品の加工に関する加工データと、板状部品移動プログラムで参照される積層態様に関する積層データとを生成する。
【0042】
制御部90は、積層態様決定プログラムの実行による積層態様の決定において、各部品13に対して、配置する層と、その層内での位置や向きを、部品データに基づいて決定すると共に、各層において必要となる桟部材14の位置や向きを決定する。この場合に、桟部材14の配置の決定においては、複数種類の大きさに設定された桟部材14としての短桟部材14S、長桟部材14Lを必要に応じて選択して設定し、使用する部材数を減らすことを可能としている。なお、必ずしも制御部90において、部品13及び桟部材14の積層態様(荷姿)を決定する構成とする必要はなく、例えば、積層態様決定プログラムを省略し、制御部90に積層態様(荷姿)に関するデータを入力する構成とし、その入力されたデータに基づいて部品13及び桟部材14を積層するようにしてもよい。
【0043】
次に、部品支持部40に関する構成について、更に詳細に説明する。
【0044】
部品支持部40は、部品支持領域40Aとして、1つの材料12から切り出された加工部品を、上下に重ならせることなく少なくとも配置できる領域を確保した構成である。
【0045】
なお、部品支持部40は、部品支持領域40Aとして、1つの材料12から切り出され、順次に搬送されてくる加工部品を少なくとも配置できる領域に加えて、後続して加工される少なくとも1つの材料12から切り出された加工部品をも配置できる領域を確保可能な構成であってもよい。この構成の場合、部品支持部40は、先行する材料12に基づく各部品13が積込部70によって移動させられる前に、後続する材料12に基づく各部品13が搬送されて来たとしても、それらを受け入れることができ、先行する材料12に基づく各部品13の積み込みの進捗によって、後続する材料12を加工する加工部30の動作を一時的に停止しなければならなくなることを抑制可能になる。また、部品支持部40に、連続して加工される材料12から切り出される部品13を1つの層に、容易に配置可能とすることができる。
【0046】
また、部品支持部40は、識別情報付加部20で付加された各種の情報(方向識別情報を含む)が上下方向の少なくとも一方側(
図3においては上側)を向いた状態を保ち、加工部30における加工や、加工部30から部品支持部40への受け渡しや、部品支持部40による移動において、それらの位置や向きに所定の基準位置や所定の基準方向に対してズレが生じたとしても、その各種の情報を部品支持部40の上側から読み取ることができるように、各部品13の表裏を反転させることなく所定の方向(
図3(A)及び(B)における右側であって
図3(C)の下側)に移動させる。
【0047】
また、制御部90(制御手段)は、部品支持部(加工部品支持手段)によって支持された加工部品に付された方向識別情報に基づいて加工部品の向きを識別し、制御部90(配置記憶手段)によって決定された部品の向きとなるように積込部(積込手段)の動作を制御して所定数の板状の部品を複数の層に積み重なった状態とすることが可能に構成されている。
【0048】
具体的には、積込部70は、動作機器73(動作部)の先端に設けられた保持機器71(接触部)及び撮像機器72を、
図1に破線の円で示す範囲において、自由に移動可能に構成とされており、また、保持機器71による保持中心(例えば、吸着パッドによる吸着中心)を通る上下方向(部品13や桟部材14の表面に垂直な方向:鉛直方向)の軸を中心軸として回動可能に構成されている。
【0049】
なお、保持機器71と撮像機器72とは、一体的に(相対的な位置や向きが変化することなく)移動や回転を行う場合について説明するが、それらが個別に移動や回転を行う構成であってもよい。また、以下においては、説明の便宜のために、制御部90が、保持機器71や撮像機器72の移動や回動を直接に制御するかのように記載するが、保持機器71や撮像機器72の移動や回動は、動作機器73により間接的に行われ、制御部90が動作機器73の動作を制御することによって実現する。
【0050】
制御部90は、
図3(A)に実線で示すように、撮像機器72を、移動対象とする部品13aの重心が位置することが推定される位置の近傍であって、部品13aの上面(共通記号やバーコードが付加されている面)から所定の距離だけ上方に離れた位置に移動させる。その後、制御部90は、撮像機器72により撮像された画像に基づいて、方向識別情報としての共通記号22を探索する。
【0051】
制御部90は、その位置からの探索によって共通記号22の有無を識別可能である認識範囲(以下において、広域認識範囲72Hとも称す)において、共通記号22を検出できれば、
図3(A)に破線で示すように、その共通記号22に近づくように撮像機器72を移動させる。
【0052】
具体的には、制御部90は、撮像機器72を、広域認識範囲72Hの中央近くに共通記号22が位置するように水平面(上下方向を垂線とする平面)内で移動させて(
図3(C)参照)、再度、共通記号22を撮影し、その撮影された画像に基づいて、共通記号22の向きを認識する。このように、広域認識範囲72Hの中で、再度の移動による位置調整を行った後に共通記号22を撮影することで、共通記号22の向き、すなわち、部品支持領域40Aに支持された状態での部品13の向きを高精度で検出することができる。制御部90は、認識した部品13aの向きと、積層支持部50において配置すべき向きとの差を検知して、
図3(B)に示すように、その差分の角度だけ、上下方向を軸として回転させる。
【0053】
なお、共通記号22に近づくように撮像機器72を移動させる再度の移動による位置調整の制御は、水平面内における移動に限らず、これに加えて、広域認識範囲72Hよりも、共通記号22を識別可能である認識範囲を狭めた狭域認識範囲72Lとなるようにしてもよい。具体的には、実線で示す高位置よりも部品13aの表面からの距離が短く低い位置となるように高さ方向にも移動させてから、共通記号22を撮影し、共通記号22の向きを認識するようにしてもよい。また、共通記号22に近づくように撮像機器72を移動させる制御は、広域認識範囲72Hにおける最初の撮影において中央に近い等の一定の範囲内に共通記号22が位置している場合であれば、再度の撮影を省略してもよい。
【0054】
また、制御部90は、撮像機器72の画像から個体識別情報であるバーコード21に含まれる情報を読み出し、移動対象である部品13aであるかを判断する。このバーコード21の情報の読み出しは、バーコード21を小さく表示したり、多くの情報を含ませたりするためには、撮像機器72をバーコード21に近づけて撮影した画像を使用することが好ましく、共通記号22の撮影とは別に撮影を行うようにしてもよく、撮像機器72をバーコード21に近付けてから撮影するようにしてもよい。
【0055】
制御部90は、検出したバーコード21が、移動対象である部品13aのバーコード21であった場合には、保持機器71を部品13aに接触するまで下方に移動させる。なお、バーコード21の認識と、共通記号22の認識は、1回の撮影による画像に基づいて行ってもよい。
【0056】
その後、制御部90は、保持機器71を、部品13aを持ち上げ可能な状態で保持するように作動させる。この場合において、制御部90は、検出したバーコード21が、移動対象である部品13のものであったとしても、移動対象である部品13が所定の保持態様で支持できない場合、例えば、
図3(C)に示す部品13bのように、その重心(矢印の先端)が支持ベルト43の両端近傍の所定の領域40Bに位置しており、その重心を保持機器71の中心となるように保持しようとすると、保持機器71が支持ベルト43からの部品13の落下を防止する落下防止壁45と干渉してしまうような位置に支持されている場合には、標準(基準、又は最適)として初期設定された保持すべき向きから重心を通る上下方向の軸周りに回転させて保持できるか判断し、保持できる場合には、標準とは異なる向きで保持し、それでも保持できない場合には、標準の保持すべき位置から所定の方向に離れた位置で保持する。この場合には、制御部90は、標準の保持態様からの変更を特定する情報、例えば、標準の保持角度からの差分の回転角度や、標準の保持位置からの差分の距離を記憶し、その保持ズレを差し引いて、保持機器71の移動や回転の制御を行う。
【0057】
なお、制御部90は、部品13を所定の保持位置及び保持角度で保持できない場合の候補となる保持位置や保持角度を予め複数設定して記憶しておき、それらの候補から選択する構成であってもよい。
【0058】
制御部90は、部品13aを保持した保持機器71を所定の高さまで上昇させ、
図3(C)に示すように、共通記号22(部品13a)の向きを基準方向(
図3(C)における下向き)に合わせるように回転させる。その後、制御部90は、保持機器71を前後左右に移動させて、部品13aを部品支持領域40Aの上方から、積層支持領域50Aにおいて配置が予定されている予定積込位置の上方に移動させる。制御部90は、部品13aを予定積込位置の上方に移動させた後に、保持機器71を下降させて、下層に配置された部品13dや短桟部材14Sや長桟部材14Lに接触させる。制御部90は、保持機器71による部品13aの保持状態を解除させる。これによって、部品13aに対する所定の位置及び向きでの積み重ねが完了する。制御部90は、他の部品13b,13cに対しても同様の制御を繰り返し、それらを順次に積み重ねる。
【0059】
なお、制御部90は、移動対象である部品13の共通記号22の位置に応じた経路で、移動対象の部品13の共通記号を探索するように、撮像機器72の移動を制御する構成について説明したが、移動対象である部品13の位置に応じた経路で、撮像機器72の移動を制御する構成であってもよく、この場合でも、結果的に移動対象である部品13に付加された共通記号22の位置に応じた経路にて撮像機器72を共通記号22に近付けることができる。
【0060】
また、制御部90は、共通記号22の位置に応じない予め定められた1つの経路に沿って、撮像機器72を移動させて共通記号22を探索する機能を有するようにしてもよい。例えば、移動対象である部品13に依らない規定の経路を設定しておき、例えば、左端の後側から前側までを移動し、その後、中央の後側から前側までを移動し、その後、右端の後側から前側までを移動するジグザクの経路を設定しておき、移動対象となる部品13に依らずに一定の経路で、撮像機器72の移動を制御部90が制御する構成であってもよい。制御部90が、広域認識範囲72Hの画像から共通記号22を検出できない特殊な状況において、部品支持部40において上方側から共通記号22を認識可能な範囲内に、探索している部品13があるのか、どこにもないのかを確認することができる。
【0061】
また、制御部90が、移動対象となる部品13を予め設定しないで撮像機器72を一定の経路に沿って移動させ、認識した共通記号を有する部品13を、認識した順序で積層支持部50に移動させることもできる。
【0062】
また、広域認識範囲72Hの画像から共通記号22を検出できない特殊な状況が発生した場合、例えば、移動対象の部品13の位置が部品支持部40(部品支持領域40A)において、大きくズレてしまったり、他の部品13の下に入り込んでしまうような状況が生じた場合には、予め定めた別処理を制御部90が行うようにしてもよい。例えば、エラーの発生を制御部90の音や表示によって作業者に報知し、作業者が移動対象の部品13を確認可能にしてもよく、また、広域認識範囲72Hに対して予め定めた方向(例えば、部品支持部40において部品13や桟部材14を移動させることが可能な移動方向)に沿って所定の距離だけ撮像機器72を移動させて、再度、共通記号22を探索するようにしてもよい。このとき、制御部90は、その移動前後において、共通記号22を認識できる認識範囲の一部が重複するように、撮像機器72を移動させることが好ましく、この移動によっても共通記号22を検出できなかった場合には、制御部90は、更に、同一方向への撮像機器72の移動と共通記号22の探索とを繰り返すようにしてもよい。また、同一方向への移動によっては、共通記号22を検出できなかった場合には、その移動方向に交差する方向に沿って所定の距離だけ移動させた後に、上記と同様に移動方向に沿った位置を変化させながら共通記号22の探索を行うようにしてもよい。
【0063】
また、例えば、広域認識範囲72Hの画像から検知したバーコード21が、移動対象である部品(例えば、部品13a)でなく別の部品(例えば、部品13b,13c)のみであった場合に、当該別の部品を移動させたとしても、予定積込位置が設定された層への全ての部品の積み込みが可能であれば、その検知したバーコード21に対応する別の部品を予定積込位置へ移動する制御を行うように、すなわち識別情報の検知結果に応じて移動対象を変更する制御を制御部90が行うようにしてもよい。また、別の部品(例えば、部品13b,13c)については、積層支持部50とは別に仮置きが可能な別の支持台(仮置き部)を予め設定しておいて、その別の部品を仮置きするようにしてもよい。
【0064】
このように、板状部品製造装置1によれば、積込部70の動作を制御して、部品13a等を少なくとも含む所定数の板状の部品13を複数の層に積み重なった状態とする場合に、部品支持部40によって支持された部品13a等に付された共通記号22に基づいて部品13の向きを識別し、部品13の向きを制御部90の積層態様決定プログラムによって決定された向きに合わせる制御が行われる。これによって、材料12から加工される際の部品13の向きと、積み重なった状態とされる場合に配置される向きとが異なる場合や、加工時や積込部70による積み重ね前に部品13の向きにずれが生じていた場合であっても、その向きを共通記号22(方向識別情報)に基づいて調整することができ、部品13を所望の位置に所望の向きで高精度に配置することができる。したがって、部品13を好適に積み重なった状態とすることができ、積み重ねられた部品13の向きのずれに基づく荷崩れの発生を抑制できる。また、部品13が所定数の部品13を積み重ねる積層支持領域50Aからはみ出すことを防止でき、はみ出した部分が建築現場への搬送途中や、建築現場にて容易に破損してしまうといったことも抑制できる。
【0065】
また、板状部品製造装置1であれば、加工部30によって加工されることで多様な形状となる各部品13の向きを、方向識別情報を認識することによって特定できるために、そのような多様な形状の各部品13の外形を個別に認識してその向きを特定する場合に比べて、部品13の向きを簡素な板状部品移動プログラムに基づき高速に特定でき、各部品13を所望の位置に所望の向きで簡便かつ高速に配置することができる。
【0066】
また、板状部品製造装置1によれば、部品支持領域40Aの中で、移動対象である部品13又はそれに付された共通記号22が位置している可能性の高い推定位置に応じた異なる経路にて、部品支持領域40Aに保持機器71と撮像機器72とが近付くように、積込部70の動作が制御される。これによって、共通記号22が位置している可能性の高い位置の近傍から移動対象である部品13の共通記号22を探索することができ、移動対象である部品13の共通記号22を効率良く認識することができる。したがって、各部品13を所望の位置に所望の向きで効率良く配置することが可能になる。
【0067】
なお、制御部90の制御によって、部品13a等に付された共通記号22に基づいて部品13の向きを識別して板状の部品13を複数の層に積み重なった状態とする装置としては、加工装置を含む板状部品製造装置1に限らず、加工装置を含まない板状部品移動装置として構成しても、同様の効果を奏するものとすることができ、この場合、制御部90における材料12の加工に関する制御部分を省略してもよい。
【0068】
次に、材料12の残り部分を加工桟部材14Rとする場合の加工や使用に関する板状部品製造装置1の構成について詳細に説明する。
【0069】
制御部90は、加工部30(加工装置)によって加工される板状の材料12に対して部品13a等(加工部品)と加工桟部材14R(桟部材)とを割り当てて加工部30(加工装置)に部品13a等と加工桟部材14Rとを加工させる加工制御を行うことが可能な構成である。具体的には、制御部90は、上記の積層態様決定プログラムの実行に基づいて、各層において必要となる桟部材14の位置や向きを決定する。このとき、制御部90は、各材料12から切り出される1又は2以上の部品13a等の全てに対する割り当て領域を決定した後に、各材料12においていずれの部品13a等も割り当てられていない領域に、加工桟部材14Rを割り当てる。また、制御部90は、材料12に所定の大きさよりも小さい加工桟部材14Rを割り当てる場合には、その外形を、個体を識別する必要がないように特定の形状、例えば、短桟部材14Sと同一の形状に決定する。なお、小さい加工桟部材14Rの形状を短桟部材14Sと同一の形状として、それらを兼用又は併用できるようにしているが、同一の形状でなくてもよい。
【0070】
識別情報付加部20は、制御部90の制御に基づいて、部品13a等の場合と同様に、加工桟部材14Rにおける厚み方向を向く少なくとも一面に、部品13等であるか加工桟部材14Rであるかを識別可能な識別情報を付す。具体的には、識別情報付加部20は、所定の大きさよりも大きな加工桟部材14Rに対しては、個体識別情報としてのバーコード21と同様な桟部材14に対応したバーコードと、方向識別情報としての部品13a等と同一の共通記号22を印刷し、所定の大きさよりも小さい加工桟部材14Rに対しては、方向識別情報としての部品13a等と同一の共通記号22のみを印刷する。なお、加工桟部材14Rに付す方向識別情報は、部品13a等と同一の共通記号でなくてもよく、部品13a等に採用できる上述のような他の形態であってもよく、更に、部品13a等に採用しない専用の形態であってもよい。
【0071】
部品支持部40は、加工桟部材14Rについても、部品13a等の場合と同様に、共通記号22(方向識別情報)が上下方向の少なくとも一方側を向いた状態にして支持する。更に、部品支持部40は、部品13等の場合と同様に、加工桟部材14Rが各部品13等や他の加工桟部材14Rと離間させて支持する。
【0072】
制御部90は、移動対象である部品13a等やそれに付された共通記号22の撮像機器72による探索において、共通記号22の存在は認識できたが、その共通記号22に対する所定の位置にバーコード21の存在を認識できない場合には、特定の形状に加工された小さい加工桟部材14Rであると判断する。また、制御部90は、認識したバーコード21が移動対象である部品13aのものでなく、大きい加工桟部材14Rのものである場合や、バーコード21が認識されない小さい加工桟部材14Rのものであったとしても、移動対象である部品13aの移動を完了する前に移動させたとしても、他のいずれかの部品13や桟部材14を正常に配置できなくなることがない場合には、認識された加工桟部材14Rを移動させる。
【0073】
このように、板状部品製造装置1によれば、制御部90が、材料12に対して部品13a等と加工桟部材14Rとを割り当てて加工部30に部品13a等と加工桟部材14Rとを加工させ、識別情報付加部20により、部品13a等と加工桟部材14Rとを識別可能な識別情報としてのバーコード及び共通記号22を、部品13a等や加工桟部材14Rの厚み方向を向く少なくとも一面に付加させる。これにより、材料12から加工された部品13a等と加工桟部材14Rとの向きを識別情報に基づいて調整して積み込みをすることが可能となる。
【0074】
また、加工桟部材14Rには、方向識別情報としての共通記号22が付加されるので、制御部90(積層態様決定プログラム)によって決定された位置と向きに高精度で合わせて配置することが可能となる。したがって、部品13a等や加工桟部材14Rを好適に積み重ねていくことができ、積み重ねられた部品13a等や加工桟部材14Rの向きのずれに基づく荷崩れの発生を抑制できる。
【0075】
また、板状部品製造装置1であれば、部品13a等を安定に支持することを補助するために用いられる加工桟部材14Rを、材料12において部品13a等を加工した残りの部分から加工することが可能となるために、部品13a等や加工桟部材14Rの加工に係る歩留まりを向上させることができる。
【0076】
また、板状部品製造装置1であれば、上記のように部品13a等や加工桟部材14Rの向きを共通記号22に基づいて調整することが可能となるために、1つの材料12に部品13a及び加工桟部材14Rを含む複数の加工対象を割り当てる場合に、材料12における複数の加工対象の向きを制御部90(積層態様決定プログラム)によって決定された向きに合わせなくてもよく、1つの材料12に割り当てることができる複数の加工対象の組み合わせの自由度が高くなる。これによって、材料12における複数の加工対象の向きを制御部90によって決定された向きに合わせる場合に比べて、部品13a等や加工桟部材14Rの加工に係る歩留まりを向上させることができる。
【0077】
また、板状部品製造装置1として、制御部90(積層態様決定プログラム)によって複数の層のうちいずれの層に部品13a等と加工桟部材14Rとが配置されるかが決定された後に、その決定された層の位置に応じて部品13a等と加工桟部材14Rとの割り当てを行ってそれらの加工を行う構成を採用することができる。この構成を採用した場合には、複数の層における各層に配置される部品13a等と加工桟部材14Rとは、同じ材料12から加工することになり、材料12に部品13a等や加工桟部材14Rを割り当てる制御を簡素化できると共にその処理負荷を低減できる。更に、各材料12における部品13a等と加工桟部材14Rとを、その配置が各層を構成する部品13a等と加工桟部材14Rとの配置と同一となるように割り当てるようにしてもよい。
【0078】
次に、桟部材支持部60について詳細に説明する。
図4(A)は、桟部材支持部60の構成の一例を示す模式的な上面図であり、(B)は、その模式的な正面図であり、(C)は、単一の桟部材14(長桟部材14L)を供給する動作態様の一例を示す模式的な側面図であり、(D)は、複数の桟部材14(長桟部材14L)を同時に供給する動作態様の一例を示す側面図である。
【0079】
桟部材支持部60は、
図1、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、長桟部材14L(帯板状の桟部材)を、上面視において、その長手方向における端部の位置をずらし、長手方向に交差する短手方向に並べた横並び状態にして支持する構成である。
【0080】
具体的には、桟部材支持部60は、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、開口61a~開口61cを有する中間壁61から上方に突設される壁として、手前側(
図4(A)における下側であって
図4(B)における紙面に垂直な方向の表側)に支持される長桟部材14Lの長手方向の両端位置を規制する長手側規制壁62a,63aと、その長桟部材14Lの短手方向の両端位置を規制する短手側規制壁64aとを備えている。同様に、奥側に支持される長桟部材14Lの長手方向の両端位置を規制する長手側規制壁62b,63bと、その長桟部材14Lの短手方向の両端位置を規制する短手側規制壁64bとを備えており、長手側規制壁62b,63bは、長手側規制壁62a,63aに対して長桟部材14Lの長手方向に沿ってずらして設けられている。桟部材支持部60は、各種の規制壁に沿った方向に長桟部材14Lが積み重なる状態で支持する。
【0081】
更に、桟部材支持部60は、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、底壁65の上方に形成されて中間壁61を支持し、開口61a(開口61b,61c)に連通する開口66a(開口66b,66c)を有する支持枠66と、底壁65に固定され、積み重さなった状態において最下層に位置する手前側(奥側)の長桟部材14Lの下面に接触し、積み重さなった手前側(奥側)の長桟部材14Lを一体的に上下方向に移動可能である規制板67a(規制板67b)と、規制板67a(規制板67b)を駆動するシリンダ68a(シリンダ68b)とを備えている。
【0082】
制御部90は、保持機器71(接触部)に、2以上の桟部材14を接触させて吊り上げ、複数の層(積層体11を構成する層)の少なくとも一部の層に、2以上の桟部材14をまとめて移動させる制御を行うことが可能な構成である。例えば、2以上の長桟部材14Lをまとめて移動させる制御を行う構成であっても、2以上の短桟部材14Sをまとめて移動させる制御を行う構成であってもよく、更に、1以上の長桟部材14Lと1以上の短桟部材14Sをまとめて移動させる制御を行う構成であってもよい。
【0083】
また、制御部90は、桟部材支持部60(桟部材支持手段)によって横並び状態にして支持された2以上の長桟部材14L(帯板状の桟部材)に対して保持機器71(接触部)が上側に位置するように積込部70(積込手段)の動作を制御し、2以上の長桟部材14Lと前記接触部とが接触した後に当該2以上の長桟部材14Lを吊り上げて、複数の層の少なくとも一部の層にまとめて移動させる複数桟部材移動制御を行う構成である。更に、保持機器71(接触部)に、長桟部材14L(帯板状の桟部材)を1つだけ接触させて吊り上げ、複数の層の少なくとも一部の層に、1つの長桟部材14Lを移動させる単一桟部材移動制御も行う構成である。
【0084】
具体的には、制御部90は、シリンダ68a,68bの動作を制御することによって、規制板67a,67bの位置を、最上層の長桟部材14Lの上面の位置を一定の高さH1に保つように構成されており、最上層の長桟部材14Lが取り出された場合には、残りの積み重なった長桟部材14Lを一体的に、長桟部材14Lの厚み分だけ上昇させるように制御する。また、制御部90は、最上層の長桟部材14Lを保持機器71によって保持させる場合に、保持機器71を、手前側と奥側の長桟部材14Lがその長手方向に沿って重複する部分の中央であって、最上層の長桟部材14Lの上面と保持機器71の下端とが所定の距離H2(例えば、長桟部材14Lの厚み)となる位置(以下において保持待機位置と称す)に移動させる。その後、制御部90は、シリンダ68a,68bの制御によって、規制板67a,67bを、最上層の長桟部材14Lの上面と保持機器71の下端とが接触するまで上昇させる。制御部90は、シリンダ68aとシリンダ68bとを個別に制御可能な構成であり、
図4(C)に示すように、シリンダ68a又はシリンダ68bを作動させることによって(図中はシリンダ68bを作動した場合)、手前側又は奥側の長桟部材14Lを上昇させたり、
図4(D)に示すように、シリンダ68a及びシリンダ68bを同時に作動させて、手前側及び奥側の長桟部材14Lを一括して上昇させたりすることができる。これによって、制御部90は、単一の長桟部材14Lのみを保持機器71に保持させることも、複数(図中は2つ)の長桟部材14Lを保持機器71に保持させることもできる。また、図示は省略するが、短桟部材14Sに関しても、長桟部材14Lの場合と同様に、制御部90は、単一の短桟部材14Sのみを保持機器71に保持させることも、複数(図中は2つ又は4つ)の短桟部材14Sを保持機器71に保持させることもできる。
【0085】
ここで、桟部材支持部60は、上面視において、長桟部材14Lが長手方向に交差する短手方向に並ぶようにして設けられている。このため、一方の手前側の長桟部材14Lは、その長手方向の右側の端部(奥側の長桟部材14Lと対向しない側の端部:以下において右端部と略記する)が長手側規制壁62aに揃うように支持させ、他方の奥側の長桟部材14Lは、その長手方向の左側の端部(奥側の長桟部材14Lと対向しない側の端部:以下において左端部と略記する)を長手側規制壁62bによって揃うように支持させることが可能な構成である。これにより、手前側や奥側の長桟部材14Lの長手方向の長さが不均一であったとしても、手前側の長桟部材14Lの右端部と奥側の長桟部材14Lの左端部とが隔たる長さ(以下において、ずらし配置全長と称す)を一定に保つことができる。また、桟部材支持部60において、そのずらし配置全長が、積層支持領域50A(
図1及び
図2参照)の長辺に対応する長さに設定されており、制御部90は、桟部材支持部60で支持された相対位置を保ちながら2つの長桟部材14Lを移動させれば、それらを積層支持領域50Aの長辺に渡って過不足なく配置させることができる。
【0086】
桟部材支持部60は、手前側と奥側との長桟部材14Lを、その長手方向が積層支持領域50Aの長辺と略平行となるように支持する構成であり、長桟部材14Lを積層支持領域50Aの長辺に沿って配置する場合に、保持機器71による保持状態が直線的な移動に比べて解除され易い回転を伴わずに、長桟部材14Lを移動させることを可能としている。これによって、長桟部材14Lを、回転を伴って移動させる場合に比べて、高速で移動させることができる。
【0087】
なお、桟部材支持部60は、手前側と奥側との長桟部材14Lをその短手方向に近接させた状態で支持する構成に限らず、それらを短手方向に所定の間隔で離間させた状態で支持する構成であってもよい。
【0088】
また、制御部90は、2つの長桟部材14Lを移動する場合に、必ずしも同時に保持させる必要はなく、別々に保持するようにしてもよい。すなわち、手前側と奥側との一方の長桟部材14Lを保持機器71によって保持させた後に、その長桟部材14Lを動作機器73によって他方の長桟部材14Lに近接させるように移動させてから、他方の長桟部材14Lを保持機器71によって保持させてもよい。
【0089】
また、桟部材支持部60は、手前側や奥側等、長桟部材14Lが積み重なった積層物を複数並べて設ける場合に限らず、1つの積層物のみを設ける構成であってもよい。この構成を採用する場合には、制御部90は、1つの長桟部材14Lを保持機器71によって保持させた後に、その長桟部材14Lを動作機器73によって移動させてから、他の長桟部材14Lを、保持機器71によって、先に保持した長桟部材14Lを保持している部分とは異なる部分で保持させる構成とする。長桟部材14Lを動作機器73によって移動させる際に、長桟部材14Lの長手方向に沿った移動量によって、保持機器71によって保持される2つの長桟部材14Lに対するずらし配置全長を調整し、また、長桟部材14Lの短手方向に沿った移動量によって、それらの長桟部材14Lの間隔を調整する。更に、桟部材支持部60を、長桟部材14Lの長手方向の一端部を揃えて支持する構成とし、制御部90を、先に保持される長桟部材14Lを保持させた後に、長桟部材14Lの表裏方向を中心軸として180度回転させてから、保持された長桟部材14Lにおいて支持状態で揃えられていた一端部が次に保持される長桟部材14Lに対向しないように、他の長桟部材14Lを保持させる構成とすることが好ましい、この構成を採用すれば、長桟部材14Lの長手方向の長さが不均一であったとしても、保持される2つの長桟部材14Lのずらし配置全長を一定に保つことができる。
【0090】
また、制御部90は、単一桟部材移動制御と複数桟部材移動制御とを行う構成に限らず、単一桟部材移動制御を行わない構成であってもよい。この構成を採用する場合には、桟部材支持部60は、手前側と奥側の長桟部材14Lを個別に移動させることができない構成、例えば、シリンダ68a及びシリンダ68bが連動してしか動作しない構成や、手前側と奥側の長桟部材14Lを1つの規制板で支持する構成であってもよい。制御部90は、単一桟部材移動制御によって、1つの長桟部材14Lを移動させる場合には、手前側の長桟部材14Lと奥側の長桟部材14Lとが均等に利用されるように、それらを交互に選択して移動させる構成とすることが好ましい。また、制御部90は、1つの長桟部材14Lを移動させる場合には、複数の長桟部材14Lを保持する場合とは異なる位置、例えば、各長桟部材14Lの中央(重心)の位置を保持機器71によって保持させるように、保持機器71により保持させる位置を変更する構成であることが好ましい。
【0091】
また、制御部90は、保持機器71によって1又は2以上のものを保持させる場合に、それらを保持機器71における保持可能な領域の中央側(保持中心)に寄せて保持させる構成に限らず、一端側に寄せて保持させる構成であってもよい。この場合、制御部90は、保持機器71によって保持したものを、中央側に寄せて保持させた場合よりも基部74(
図1参照)に対して離れた範囲にまで、動作機器73によって移動させることができる。
【0092】
このように、板状部品製造装置1であれば、積込手段(積込部70)の動作を少なくとも制御し、部品13と長桟部材14Lや短桟部材14Sとを複数の層に積み重なった状態とする場合に、接触部(保持機器71)に、2以上の長桟部材14Lや短桟部材14Sを接触させて吊り上げ、複数の層の少なくとも一部の層に、2以上の長桟部材14Lや短桟部材14Sをまとめて移動させる制御を行うことが可能である。これによって、2以上の桟部材14Lを吊り上げて所望の位置に一度で移動させることができ、各層に桟部材を配置する時間効率を向上させることができる。これによって、効率良く、板状又は棒状の部品を複数の桟部材を含めて積み重なった状態とすることができる。
【0093】
また、板状部品製造装置1であれば、2以上の桟部材14Lを同時に吊り上げることができ、桟部材14L,14Sを吊り上げる時間効率を向上させることができる。また、複数の桟部材14Lを予め移動場所における相対位置と同一の相対位置となるようにずらしておくことによって、層上に移動させた後にそれらの少なくとも1つの桟部材14Lを更に移動させたりすることなく、2以上の桟部材14Lを同時に所望の位置に配置させることも可能になる。
【0094】
また、板状部品製造装置1であれば、単一の桟部材を移動させるか、複数の桟部材を移動させるかを選択できるために、1つの桟部材しか必要の無い層に対しても、複数の桟部材が必要な層に対して、所定数の桟部材を簡便に移動させることができる。
【0095】
なお、制御部90の制御によって、接触部(保持機器71)に、2以上の桟部材14を接触させて吊り上げ、複数の層の少なくとも一部の層に、2以上の桟部材14をまとめて移動させる制御を行う装置としては、加工装置を含む板状部品製造装置1に限らず、加工装置を含まない板状部品移動装置として構成しても、同様の効果を奏するものとすることができる。また、この板状部品移動装置として、識別情報付加部20、及び、加工部30の少なくともいずれかを省略してもよいし、制御部90における材料12の加工に関する制御部分を省略してもよい。
【0096】
また、制御部90の制御によって、2以上の桟部材14をまとめて移動させる制御を行う装置としては、積込部70による移動対象の部品が板状の部品13である場合に限らず、棒状の部品を移動対象とする部品移動装置として構成してもよく、例えば、建築物の骨格を形成する柱材や横架材等の構造材又は羽柄材等の補助部材に使用される桟部材14として利用してもよい。この場合に、上記した長桟部材14Lを利用し、棒状の部品を複数並べて複数段に積み重ねた状態の一部に長桟部材14Lを配置し、トラックの荷台の幅に合わせて2つの長桟部材14Lの端部位置のズレ量を異ならせて長手方向における重なり代を調整してもよく、これにより、多様なトラックの荷台の幅に調整可能な桟部材14として長桟部材14Lを利用することができる。
【0097】
また、制御部90は、単一桟部材移動制御と複数桟部材移動制御とを行う構成に限らず、複数桟部材移動制御は行わずに単一桟部材移動制御のみを行う構成としてもよい。
【0098】
次に、識別情報付加部20によって部品13及び桟部材14に付加する方向識別情報に関する構成について、
図5を参照して、更に説明する。
図5は、方向識別情報として用いられる共通記号22に、文字及び記号を利用した場合を例示した図である。具体的には、1つの材料12を用いて製造される複数の加工部品(部品13及び桟部材14)に対して識別情報付加部20によって識別情報としてのバーコード21と共通記号22とを付加した形態を模式的に示している。
【0099】
方向識別情報として利用可能な共通記号22は、
図5に示すように、文字や図形を用いて付加してもよい。共通記号22は、制御部90としてのパーソナルコンピュータによって利用可能な文字や記号、図形を用いることが好ましい。文字としては、平仮名、片仮名、アルファベット、数字、漢字等が例示され、記号としては、「¥」、「&」等が例示される。この共通記号22に用いる方向識別情報としては、漢字のみや、記号のみの一種類の分類に属するもののみを用いるようにしてもよいし、2以上の分類に属するものを用いるようにしてもよい。
【0100】
また、文字及び記号の情報のうち、共通記号22として、いずれの情報を、方向識別情報として用いてもよいが、部品13の番号や部品13の配置位置等、部品13の特定に使用している情報(以下、「使用情報」ともいう)とは別の情報(以下、「非使用情報」ともいう)を用いることが好ましい。これにより、使用情報を誤って、方向識別情報として認識してしまう事態を回避することができる。
【0101】
また、方向識別情報として利用可能な非使用情報としては、漢字を利用することは好ましい。漢字は、数多くの種類があり、それらの中から非使用情報を容易に選択可能であるし、後から変更や追加をする場合の対象も多数あって、容易に変更や追加をすることができる。
【0102】
ここで、共通記号22は、制御部90によって識別情報付加部20が制御されて印字される。このため、制御部90に、共通記号22として予め使用可能な1又は複数種類の非使用情報を記憶(設定)させておき、その非使用情報を、制御部90によって識別情報付加部20を制御して付加するものとしてもよいし、未設定の非使用情報を制御部90に対して入力(追加)することで、共通記号22として利用可能な新たな非使用情報を追加可能に構成してもよい。
【0103】
方向識別情報として利用する漢字としては、特定の一方向を識別可能な形をした漢字が利用可能である。例えば、「土」、「円」、「山」、「出」、といった漢字が利用可能である。この漢字の設定において、方向識別情報として利用する漢字は、単純すぎると、木製の材料を加工して部品13を製造する場合における部品13の木目や汚れ等によって誤認識を生じる可能性がある。一方、複雑すぎると、識別情報の識別を正確に行うために、高解像度のカメラを必要としたり、距離が遠いと正確な識別がし難くなるなど情報入力の可能な位置が限定される可能性がある。このため、方向識別情報として利用する漢字は、例えば、画数として、三画以上にして単純すぎないような漢字が好ましく、また、五画以下といった複雑過ぎない漢字を用いることが好ましい。
【0104】
また、方向識別情報として利用する漢字は、複数の方向を向く直線状の部位を有する漢字を用いることが好ましく、例えば、漢数字の「三」といった漢字を用いるよりも、「工」や「土」といった漢字の方が好ましい。これにより、一定の方向に向かって多数並んだ状態となりやすい木目が、誤って方向識別情報と認識されてしまう事態を回避し易くすることができる。
【0105】
また、直線部分の長さが僅かに変化すると別の方向の文字と認識され得る漢字(例えば、「工」)より、直線部分の長さが僅かに変化しても方向が一方向に限定可能な形をした漢字(例えば、「土」)を用いることが好ましい。これにより、一部の直線状の部分に、木目や汚れが重なることで向きが逆になるなど、誤認識されてしまう事態を回避し易くすることができる。
【0106】
また、複数の方向のうち少なくともいずれかの方向(例えば、縦方向)を向く直線状の部位が2以上平行して設けられる漢字(例えば、「山」)を方向識別情報として利用することが、誤認識を回避し易くすることができて好ましい。また、直線状の部位が2以上平行する方向が2つの方向に設けられる漢字(例えば、「円」)を方向識別情報として利用することが好適である。
【0107】
また、方向識別情報として、識別情報付加部20によって付加する共通記号22は、複数種類が設定されることが好ましい。例えば、方向識別情報としての漢字を、予め複数種類設定しておいて、板状の材料が切断された場合に分断される複数の部品13に対して、別々の文字を割り当てて、識別情報付加部20によって付加することが好ましい。これにより、制御部90によって共通記号22が検知された場合に、移動対象となる1つの部品を特定し易くすることができ、共通記号22のみを検知して、部品13の移動先を制御部90によって簡易に識別し、積込部70を制御して部品13を移動することができる。
【0108】
方向識別情報として複数種類の識別情報を利用する場合には、識別情報付加部20によって付加する文字又は記号を異なる大きさで印字し、その文字等の大きさの相違によって異なる方向識別情報であることを制御部90によって識別して制御するようにしてもよい。例えば、板状の材料が切断された場合に複数に分断される部品13に対して、同一の漢字を異なる大きさで付加するようにし、その漢字の種類と大きさとによって、部品13を特定するようにしてもよい。
図5には、「¥」及び「山」の方向識別情報が異なる大きさで共通記号22として用いられる場合を例示している。
【0109】
また、方向識別情報を設定する種類の数としては、1つの材料から分断されて移動が必要となる数分を設定しておくことは好ましい。例えば、最大で6個の部品13が1つの材料12から製造され得る場合には、6以上の異なる方向識別情報を予め設定しておくことが好ましい。
図5には、3種類の部品13a~13cに対して異なる方向識別情報が共通記号22として付加された場合を例示している。
【0110】
また、方向識別情報として、同一の部品13(形状及び大きさが同一の部品13)が1つの材料12から複数製造される場合には、当該同一の部品13に対しては、同一の方向識別情報を付加するようにしてもよい。
図5には、同一の形状及び大きさの加工部品である桟部材14に対して、同一の方向識別情報である「山」が共通記号22として付加された場合を例示している。
【0111】
また、方向識別情報として、同一の方向識別情報を、1つの材料12を切断して製造される複数の部品13に付加するようにしてもよい。この場合には、複数の部品13に対して印字される同一の方向識別情報が予め定めた一定の距離以上に離間する場合に限って、同一の方向識別情報を付加するようにすることが好ましい。例えば、上記した広域認識範囲72Hの中に、同一の方向識別情報が配置されない距離分以上に離間した位置に対しては、同一の方向識別情報を付加する制御を行うようにしてもよい。
【0112】
また、方向識別情報として、色が異なる方向識別情報を複数の部品13に付加し、付加された識別情報の色を含めた方向識別情報の種類を制御部90によって識別することで、方向識別情報を判別するようにしてもよい。
【0113】
また、1つの部品13に対して付加する共通記号22は、1つの文字又は記号を方向識別情報として付加してもよいし、複数の異なる識別情報(例えば、文字又は記号の種類と大きさとのいずれか又は両方が異なる識別情報)を付加してもよい。
図5には、3種類の部品13a~13cに対して、それぞれ2種類の方向識別情報が付加された場合を例示している。
【0114】
1つの部品13に対して複数種類の異なる識別情報を共通記号22として付加する場合、同一の文字又は記号(例えば、漢字)を異なる大きさで複数箇所に付加してもよいし、異なる文字又は記号(例えば、2種類の漢字)を付加してもよい。この場合には、1つの部品13に対して付加された複数種類の識別情報に対して、制御部90において、部品13の重心位置と印字位置との相対位置関係を記憶させておき、いずれかの識別情報が検知できれば、積込部70を制御して部品13を移動可能とすることが好ましい。
図5には、1つの部品13に対して異なる大きさの方向識別情報を、共通記号22として付加する場合を例示している。
【0115】
ここで、1つの部品13に対して、複数の文字又は記号を方向識別情報として付加する場合の制御例について説明する。まず、複数の方向識別情報が付加された部品13の画像を情報入力装置(撮像機器72)を介して制御部90に入力し、その画像の中に、1つの方向識別情報が検知できた場合には、その方向識別情報に基づいて、部品13の移動の制御を実行する。複数の方向識別情報が検知できた場合には、予め記憶されている理想形の方向識別情報のデータと比較して、正しい部分の割合(スコア)が高い一方の識別情報を、移動の制御に利用する方向識別情報として制御を実行する。この場合に、複数種類の方向識別情報を、複数回の撮影によって制御部90に入力してもよいが、撮像機器72による1回の撮影によって情報の入力が可能な程度に近接した位置に、複数種類の方向識別情報を付加するようにすることが好ましい。これにより、複数種類の方向識別情報を、数少ない情報入力(撮影)によって制御部90に入力することができるので、部品13の移動の制御を高速化し易くすることができる。
【0116】
このように、識別情報付加手段としての識別情報付加部20は、加工装置としての加工部30の制御によって加工された加工部品としての部品13及び桟部材14に対して、識別情報として設定された複数種類の漢字又は記号の一部(いずれか又は複数)を、共通記号22として加工部品に付すように構成されている。このため、加工部品に付された漢字又は記号の種類と大きさとを制御部90が識別し、この加工部品に付された漢字又は記号の種類と大きさの組合せで構成される方向識別情報の種類に応じた加工部品の移動の制御を制御部90に実行させることができる。
【0117】
すなわち、1枚の材料12から複数の加工部品が製造される場合において複数の加工部品に対して異なる方向識別情報を付すことができ、この場合、バーコード21などの個体識別情報を情報入力装置(撮像機器72)によって制御部90へ入力しなくても、複数の加工部品のいずれであるかを、共通記号22によって特定して加工部品を移動することができる。よって、情報入力装置による識別情報の入力を簡易化して加工部品の移動を完了するまでの時間を短くしたり、方向識別情報を入力するための情報入力装置として低解像度の撮像機器72を利用可能にして板状部品製造装置1のコストを低減するなど、加工部品の向きを識別可能な識別情報(方向識別情報)を用いた移動制御を好適に行うことができる。
【0118】
また、制御部90に設定される方向識別情報として、パーソナルコンピュータなどで一般的に利用可能な漢字の情報が含められている。これにより、識別情報として設定し得る対象を多様にして適切な識別情報を設定(選定)し易くすることができ、また、既存の文字を利用することで、制御部90に対する識別情報の設定や、情報入力装置(撮像機器72)の情報入力に基づく識別情報の識別制御の設定等を行い易くすることができる。
【0119】
また、制御部90に設定される方向識別情報として、文字の大きさが異なることで異なる種類とした方向識別情報が含められている。よって、限られた文字や図形を用いて、多種の識別情報を用いた制御を行うことができる。
【0120】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものであり、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよい。
【0121】
上記実施形態においては、板状部品製造装置1において、加工部30によって加工が不要であり材料12そのものを部品13として使用する加工不要部品であったとしても、識別情報付加部20、加工部30及び部品支持部40を通して、積層支持部50に移動する構成について説明したが、加工不要部品となる材料12については、材料支持部10から直接に積層支持部50に移動させる構成であってもよい。
【0122】
また、上記実施形態において、板状部品製造装置1は、積込部70によって部品13や桟部材14を移動させる構成であるが、動作機器73によって材料12も移動させる構成、例えば、材料支持部10から識別情報付加部20へ移動させる構成や、材料12を識別情報付加部20から加工部30へ移動させる構成であってもよい。更に、板状部品製造装置1は、積込部70によって加工部30による加工が不要である材料12を、材料支持部10や識別情報付加部20から積層支持部50へ移動させる構成であってもよい。
【0123】
また、上記実施形態においては、板状部品製造装置1の積込部70を制御部90により制御し、方向識別情報(共通記号22)に基づいて、加工部品としての部品13や桟部材14を複数の層に積み重なった状態とする構成であったが、方向識別情報を、必ずしも複数の層に積み重なった状態とする場合に利用する必要はなく、これに代えて、又は、これに加えて、方向識別情報を用いて加工部品の移動をするようにしてもよく、例えば、仮置きが可能な支持台に加工部品を移動する場合の制御部90の制御において方向識別情報を利用してもよい。
【0124】
また、上記実施形態から抽出可能な発明として、以下のように板状部品移動装置を構成してもよい。
【0125】
板状の材料を複数に分断可能な加工装置によって加工された加工部品であって、厚み方向を向く少なくとも一面に当該加工部品の向きを識別可能な識別情報(方向識別情報)が付された加工部品を移動する移動手段と、
その移動手段によって前記部品を前記移動する場合における前記部品の位置と向きとを記憶する配置記憶手段と、
前記板状の材料を配置可能な大きさに設定された加工部品支持領域に、前記加工装置によって加工された前記加工部品を、前記識別情報が上下方向の少なくとも一方側を向いた状態にして支持する加工部品支持手段と、
その加工部品支持手段によって支持された前記加工部品に付された前記識別情報に基づいて前記加工部品の向きを識別し、前記配置記憶手段によって記憶された前記加工部品の向きとなるように前記移動手段の動作を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする板状部品移動装置。
【0126】
この板状部品移動装置によれば、移動手段の移動の前に、加工部品の向きにずれやバラツキが生じた場合であっても、加工部品の向きを識別情報(方向識別情報)に基づいて調整することができ、加工部品を予め設定した位置に高精度に配置することができる。
【0127】
また、加工装置によって加工されることで多様な形状となる各加工部品の向きを、識別情報(方向識別情報)を認識することによって特定できるために、多様な形状の各加工部品の外形を個別に認識して向きを特定する場合に比べて、加工部品の向きを簡易な方向認識制御に基づいて高速に特定でき、各加工部品を所望の位置に所望の向きで簡便かつ高速に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
以上説明したように、この発明は、板状部品移動装置、板状部品移動装置の制御装置、及び、板状部品移動プログラムに適している。
【符号の説明】
【0129】
1…板状部品製造装置、11…積層体、12…材料、13,13a~13d…部品、14,14L,14R,14S…桟部材、10…材料支持部、20…識別情報付加部(識別情報付加手段、印字装置)、21…バーコード(識別情報、個体識別情報)、22…共通記号(識別情報、方向識別情報)、30…加工部(加工装置)、40…部品支持部(加工部品支持手段)、50…積層支持部、60…桟部材支持部(桟部材支持手段)、70…積込部(積込手段、移動手段)、71…保持機器(接触部)、72…撮像機器(情報入力装置)、80…残材回収部、90…制御部(制御手段)
【手続補正書】
【提出日】2024-04-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料に対して切削加工または切断加工を行って、建築物に用いられる板状又は棒状の部品と、前記部品を複数の層に積み重なった状態とする場合において前記部品の間に介在させることが可能な桟部材とを製造する加工手段と、
前記加工手段によって加工される複数の前記部品を、前記桟部材を含めて複数の層に積み重なった状態とする積込手段と、
前記加工手段によって加工される前記部品を識別可能な個体識別情報を付加する識別情報付加手段とを備えていることを特徴とするプレカット加工装置。
【請求項2】
前記加工手段は、前記桟部材として、大きさの異なる桟部材を加工し、
前記積込手段は、前記大きさの異なる桟部材を含めて、複数の前記部品を複数の層に積み重なった状態とすることが可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレカット加工装置。
【請求項3】
前記識別情報付加手段は、前記個体識別情報とは別に、前記部品に対して前記部品の向きを識別可能な方向識別情報を付加することを特徴とする請求項1に記載のプレカット加工装置。
【請求項4】
前記積込手段によって前記部品を前記複数の層に積み重なった状態とする場合における前記部品の位置と向きとを記憶する配置記憶手段と、
材料を配置可能な大きさに設定された加工部品支持領域に、前記加工手段によって加工された前記部品を、前記方向識別情報が上下方向の少なくとも一方側を向いた状態にして支持する加工部品支持手段とを備え、
前記加工部品支持手段によって支持された前記部品に付された前記方向識別情報に基づいて前記部品の向きを識別し、前記配置記憶手段によって記憶された前記部品の向きとなるように前記積込手段の動作を制御して前記部品を複数の層に積み重なった状態とすることが可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載のプレカット加工装置。
【請求項5】
前記積込手段は、前記部品に接触して前記部品を吊り上げるための接触部と、当該接触部を基部に対して移動可能に動作させる動作部とを有し、
前記積込手段の動作を制御して前記部品を前記複数の層に積み重なった状態とする場合において、
前記接触部に、前記部品を接触させて吊り上げ、当該部品を移動することによって、1つの層に対して2以上の前記部品を配置する制御と、
前記接触部に、前記桟部材を接触させて吊り上げ、前記複数の層の少なくとも一部の層に、前記桟部材を移動させる制御とを少なくとも行い、
前記加工手段によって加工される、大きさの異なる前記部品を含む複数の前記部品を、複数の前記桟部材を含めて複数の層に積み重なった状態とすることが可能に構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプレカット加工装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプレカット加工装置における前記加工手段と前記積込手段の動作を制御することが可能に構成されているプレカット加工装置の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のプレカット加工装置の制御装置における前記加工手段と前記積込手段を動作させる制御の演算処理を実行させることが可能に構成されている部品移動プログラム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、部品移動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の建築物には、柱や梁等の棒状の部材と共に、屋根を形成する屋根部材又はその屋根部材を敷き詰める下地となる下地部材、外壁や区画空間の内壁を形成する壁部材、区画空間の床を形成する床部材等として板状の部材(部品)が用いられている。このような部材は、建築物における使用場所に応じて予め切削や切断等によって多様な形状に加工された後、所謂プレカット加工が行われた後に、複数の層に積み重なった状態とされ、施工現場に配送される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建築物に用いられる板状又は棒状の部品を複数の層に積み重なった状態とする場合に利用可能な装置の構成について、改良の余地のある可能性があった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、部品を好適に積み重なった状態とすることが可能なプレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、部品移動プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1に記載のプレカット加工装置は、材料に対して切削加工または切断加工を行って、建築物に用いられる板状又は棒状の部品と、前記部品を複数の層に積み重なった状態とする場合において前記部品の間に介在させることが可能な桟部材とを製造する加工手段と、前記加工手段によって加工される複数の前記部品を、前記桟部材を含めて複数の層に積み重なった状態とする積込手段と、前記加工手段によって加工される前記部品を識別可能な個体識別情報を付加する識別情報付加手段とを備えていることを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載のプレカット加工装置は、請求項1に記載のプレカット加工装置であって、前記加工手段は、前記桟部材として、大きさの異なる桟部材を加工し、前記積込手段は、前記大きさの異なる桟部材を含めて、複数の前記部品を複数の層に積み重なった状態とすることが可能に構成されている。
【0008】
請求項3に記載のプレカット加工装置は、請求項1に記載のプレカット加工装置であって、前記識別情報付加手段は、前記個体識別情報とは別に、前記部品に対して前記部品の向きを識別可能な方向識別情報を付加する。
【0009】
請求項4に記載のプレカット加工装置は、請求項3に記載のプレカット加工装置であって、前記積込手段によって前記部品を前記複数の層に積み重なった状態とする場合における前記部品の位置と向きとを記憶する配置記憶手段と、材料を配置可能な大きさに設定された加工部品支持領域に、前記加工手段によって加工された前記部品を、前記方向識別情報が上下方向の少なくとも一方側を向いた状態にして支持する加工部品支持手段とを備え、前記加工部品支持手段によって支持された前記部品に付された前記方向識別情報に基づいて前記部品の向きを識別し、前記配置記憶手段によって記憶された前記部品の向きとなるように前記積込手段の動作を制御して前記部品を複数の層に積み重なった状態とすることが可能に構成されている。
【0010】
請求項5に記載のプレカット加工装置は、請求項1から4のいずれかに記載のプレカット加工装置であって、前記積込手段は、前記部品に接触して前記部品を吊り上げるための接触部と、当該接触部を基部に対して移動可能に動作させる動作部とを有し、前記積込手段の動作を制御して前記部品を前記複数の層に積み重なった状態とする場合において、前記接触部に、前記部品を接触させて吊り上げ、当該部品を移動することによって、1つの層に対して2以上の前記部品を配置する制御と、前記接触部に、前記桟部材を接触させて吊り上げ、前記複数の層の少なくとも一部の層に、前記桟部材を移動させる制御とを少なくとも行い、前記加工手段によって加工される、大きさの異なる前記部品を含む複数の前記部品を、複数の前記桟部材を含めて複数の層に積み重なった状態とすることが可能に構成されている。
【0011】
請求項6に記載のプレカット加工装置の制御装置は、請求項5に記載のプレカット加工装置における前記加工手段と前記積込手段の動作を制御することが可能に構成されている。
【0012】
請求項5に記載の部品移動プログラムは、請求項6に記載のプレカット加工装置の制御装置における前記加工手段と前記積込手段を動作させる制御の演算処理を実行させることが可能に構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、個体識別情報によって部品を識別することができ、桟部材を含めて、複数の部品を好適に積み重なった状態することが可能なプレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、部品移動プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】(A)は、積層体の一部の部分分解斜視図であり、(B)及び(C)は、層内での部品及び桟部材の配置を示す上面図
【
図3】(A)は、撮像機器の動作を示す模式図、(B)及び(C)は、保持機器の動作を示す模式図
【
図4】(A)は、桟部材支持部を示す模式図、(B)は、(C)は、単一の桟部材を供給する動作を示す模式図であり、(D)は、複数の桟部材を同時に供給する動作を示す模式図
【
図5】共通記号として、文字及び記号を利用した場合を例示した図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、板状部品製造装置1の構成の一例を示す模式図である。また、
図2(A)は、所定数の部品及び桟部材が複数の層に積み重なった状態とした積層体の一例を部分的に分解して示す斜視図であり、
図2(B)は、上下に重なる2層のうちの上層における部品及び桟部材の配置の一例を示す上面図であり、
図2(C)は、その下層における部品及び桟部材の配置の一例を示す上面図である。
【0016】
板状部品製造装置1は、板状の材料を加工する加工装置、加工装置によって加工された加工部品等を含む所定数の板状の部品が複数の層に積み重なった状態とすることが可能な板状部品移動装置とを備え、板状の材料に対する加工と、その加工により切り出される部品の積み重ねとを連動して行える装置である。具体的には、板状部品製造装置1は、
図1に示すように、材料支持部10と、識別情報付加部20と、加工部30と、部品支持部40と、積層支持部50と、桟部材支持部60と、積込部70と、残材回収部80と、制御部90とを備えている。加工部30は、加工装置としての機能部分と、板状部品移動装置としての機能部分とを含んでおり、加工部30の一部を含む各部位が板状部品移動装置を構成する。
【0017】
材料支持部10は、加工前の板状の材料12を多段に積み重ねられた状態で支持し、後述する識別情報付加部20を介して、その材料12を1つずつ加工部30に供給する。材料支持部10には、作業者によって、製造する部品に適した材質及び大きさの板状の材料12が供給される。
【0018】
識別情報付加部20は、材料支持部10から加工部30へ材料12を搬送する搬送経路において、各材料12に対して、製造予定(積層予定)の所定数の部品13を互いに識別可能な個体識別情報と、各部品13の向きを識別可能な方向識別情報とを含む所定の識別情報を付すことが可能な装置であって、具体的には、各材料12の一面(上面)に、文字、記号、バーコード、QRコード(登録商標)等の識別情報を印刷可能な印刷機(印字機)を備えている。
【0019】
識別情報付加部20は、個体識別情報としての建築物における各部品の使用位置との対応を示す使用位置情報等を含むコード情報としてバーコード21を印刷する。また、識別情報付加部20は、バーコード21の位置に対して予め定めた方向へ一定の距離だけ離れた所定の位置には、各材料12から切り出される予定の各部品13の向きを示す方向識別情報として利用可能で、各部品13に共通な共通記号22(
図3(C)参照)を印刷する。共通記号22が付される位置としては、各部品13において重心から離れた縁部分に付されるよりも、重心に近い一定範囲(例えば、10cm)内の位置に付されることが好ましく、各部品13の重心に重なる位置に付すようにしてもよい。
【0020】
識別情報付加部20によって識別情報が付加される各部品13には、加工部30による加工によって形成される部品13a~13d(加工部品:以下においては部品13a等と略記する)があり、また、加工部30による加工が不要な部品(加工不要部品)が含まれる。加工部30による加工によって分離された一部分であって、部品13として利用不能な廃材(残材15)については、識別情報付加部20が識別情報を付加しないように構成されている。
【0021】
なお、バーコード21には、個体識別情報に加えて、積層体11を構成する複数の層のいずれの層に配置されるかを指定する層情報と、配置すべき層内における配置の位置を指定する層内位置情報を含む構成であってもよい。この構成の場合、後述する制御部90において、積層体11の積層態様を記憶した制御機器と、後述する積込部70による積み込みを管理する制御機器とが異なる場合に、後者の管理機器に積層態様に関する情報がなくても、バーコード21と共通記号22との情報に基づいて、所定数の部品13を適切に積み重ねることができる。また、個体識別情報を1つのバーコード21によって付加する必要はなく、これに代えて、又はこれに加えて、QRコードなどの別のコード情報を付加してもよいし、2以上のコード情報を付加してもよい。また、共通記号22を必ずしも付加する必要はなく、個体識別情報を、特定の方向を識別可能な形のみを利用して付加し、その個体識別情報を方向識別情報としても利用するようにしてもよい。
【0022】
また、識別情報付加部20は、識別情報を材料12に印刷する構成に限らず、これに代えて、又は、これに加えて、識別情報を印刷したシールや識別情報を記憶したICチップを材料12に貼着する構成であってもよい。また、識別情報付加部20は、加工部30による加工前に、識別情報を材料12に付加する構成に限らず、加工部30による加工後において、識別情報を各部品13に付加する構成であってもよい。また、少なくとも一部の部品13に、識別情報の少なくとも一部(例えば、共通記号22)が付加されないようにしてもよく、例えば、加工不要部品は、加工が行われない分、移動に際しての位置ずれを少なく抑え易く、また、一定の大きさ以下(例えば、最長の辺の長さが30cm以下)の小型の部品については回転のズレがあっても積み込みに際してのズレ量の大きさは小さいため、バーコード21のみを利用して積み込みを行うようにしてもよい。
【0023】
加工部30は、板状の材料12を切削加工する加工装置と、材料12及び部品13を搬送する搬送装置とで構成されており、例えば、図示しないが、電動鋸やカッター等の切断機器と、切断機器と材料12及び部品13を移動させる移動機構と、それら移動機構を駆動させる駆動機器とを含む構成である。加工部30は、材料支持部10から順次に供給される材料12を加工し、各材料12から1又は複数の部品13を製造し、製造された1又は複数の部品13を部品支持部40へ搬送する。加工不要部品については、材料12を未加工のまま、部品支持部40へ移動する。
【0024】
また、加工部30における加工は、制御部90の制御により施工順や歩留まり等を考慮して、材料12に対して1又は複数の部品13を割り当てて加工を行う。この割り当てによって、部品13として利用不能な残り部分は、廃材(残材15)としてもよいし、部品13を積層する場合に部品13の間に介在させる桟部材14(以下において、加工桟部材14Rとも称す)に利用してもよい。この材料12の残り部分を加工桟部材14Rとする場合の加工や使用の詳細については、まとめて後述する。
【0025】
部品支持部40は、板状の材料12を配置可能な大きさに設定されて部品13a等を支持可能な部品支持領域40Aに、加工部30によって加工された部品13a等を、バーコード21及び共通記号22が上下方向(高さ方向、又は鉛直方向)の少なくとも一方側を向いた状態にして支持することが可能な構成である。また、部品支持部40は、加工不要部品についても、バーコード21及び共通記号22が上下方向の少なくとも一方側を向いた状態にして支持する。
【0026】
ここで、本実施形態では、全てのバーコード21及び共通記号22を上方から読み取る場合について主に説明し、バーコード21及び共通記号22が上方向を向くように印刷され、部品支持領域40Aにてバーコード21及び共通記号22が上方向を向く場合について説明するが、バーコード21及び共通記号22が下方向を向くように印刷し、部品支持部40において、例えば、透明な支持面によって部品13a等の下側を支持し、部品13a等の下側からバーコード21及び共通記号22を読み取るようにしてもよい。
【0027】
また、部品支持部40は、加工部30から受け取った各部品13を所定の方向(
図1の下方向)に移送可能な構成であって、加工部30から搬送されてくる部品13を順次に受け取る。この受け取りにおいては、1つの材料12から部品13の全てを切削加工した後に一括して搬送してもよいし、各部品13が互いに離間して支持され易いように、例えば、1つの材料12から複数の部品13が順に切断される場合に、早く切断されたものを早い段階で部品支持部40へ搬送してもよい。
【0028】
部品支持部40は、具体的には、動力によって駆動する複数の駆動ローラ41と、複数の駆動ローラ41の間に配置され、空転可能な複数の空転ローラ42と、複数の駆動ローラ41及び複数の空転ローラ42の外縁の一部に接触するように、環状に巻回された支持ベルト43と、複数の駆動ローラ41に動力を供給し、支持ベルト43を周回移動させる駆動モータ44とを含む構成である。部品支持部40は、材料12から部品13a等を製造した後に残る残材15も支持するが、その残材15は、支持ベルト43の周回移動によって、後述する残材回収部80に搬送される。
【0029】
積層支持部50は、
図2(A)に示すような積層体11の下側を支持可能に構成された部位である。積層支持部50には、部品支持部40に支持された部品13が順に積み重ねられる。その積み重ねによって、一定の高さの積層体11に積み重ねられると、その積層体11が別の位置にまとめて搬送される。
【0030】
積層支持部50に積み重ねられる積層体11には、加工部30によって加工された部品13a~13dが含まれ、加工不要部品が含まれる場合があり、桟部材14が含まれる場合がある。積層体11を構成する複数の層としては、1つの部品13で構成される層、複数の部品13で構成される層、又は、少なくとも1つの部品13及び少なくとも1つの桟部材14とで構成される層などがあり、製造が必要な部品13の数及び大きさ等によって複数の層の構成が制御部90によって決定される。
【0031】
桟部材支持部60は、積層支持部50において部品13を安定的に積み重ねるために必要な桟部材14を多段に積み重ねた状態で支持可能な構成であって、形状の異なる2種類の桟部材14、例えば、長辺が積層支持領域50Aの短い方の一辺と同じ長さであり、短辺が積層支持領域50Aの短い方の一辺より短い帯板状の桟部材14(以下、長桟部材14Lとも称す)と、一辺が長桟部材14Lの長辺よりも短く、かつ、その短辺よりも長い正方形の桟部材14(以下、短桟部材14Sとも称す)とを支持している。
【0032】
積込部70(積込手段)は、加工された部品13a等を含む所定数の板状の部品13が複数の層に積み重なった状態とすることが可能な構成であって、部品13a等(加工部品)に接触して部品13a等を吊り上げるための接触部と、当該接触部を基部74に対して移動可能に動作させる動作部とを備える構成である。具体的には、積込部70は、部品13や桟部材14を吊り上げるために、部品13に吸着する又は部品13を把持する接触部によって部品13を保持する保持機器71と、保持機器71を移動させるための多関節ロボットやクレーン等の動作機器73(動作部)とを備えている。動作機器73は、各部品13が保持機器71によって保持されている場合に、部品支持部40に配置された部品13や、桟部材支持部60に支持された桟部材14を積層支持部50へ移動させる。
【0033】
積込部70には、共通記号22(方向識別情報)を含む識別情報を制御部90(制御手段)に入力するための情報入力装置が、動作機器73(動作部)に対して保持機器71(接触部)が位置する先端部側に取り付けられている。具体的には、情報入力装置は、CCDカメラ等の識別情報を読み取ることが可能な撮像機器72で構成されている。
【0034】
積込部70は、部品支持部40の部品支持領域40Aに支持された1又は複数の部品13を、撮像機器72によってバーコード21及び共通記号22を検出することによって検知し、検知された部品13を、共通記号22に基づく重心位置を考慮した態様、例えば、重心を含む範囲に接触して吊り上げ、吊り上げた部品13を、バーコード21の情報に基づいて、積層支持部50における積層支持領域50A内の予定された位置に移動させる。また、この移動の過程において、積込部70は、共通記号22の向きに基づいて、必要であれば、部品13の向きを予定された向きに合わせるように回転させる。なお、積込部70の詳細な動作については、後述する。
【0035】
残材回収部80は、材料12から部品13を切り出した残りの残材15を回収して保持する構成であって、例えば、ベルトコンベアや、車輪を有する移動可能な回収槽で構成される。なお、残材回収部80は、残材15を所定の大きさ以下に破断する機器等の他の機器を含む構成であってもよく、更に、残材15を配置しておく空間のみが確保されている構成であってもよい。
【0036】
ここで、材料支持部10、部品支持部40、積層支持部50、及び、残材回収部80は、必ずしも板状部品製造装置1の一部とする必要はない。各部位には、材料12、部品13、又は、残材15を配置可能なスペースが設けられていればよく、例えば、残材15を床面の上に排出して後から回収したり、部品13a等を薄板状のパレットによって支持するようにしたり、移動可能な台車の上に材料12を配置したりして、板状部品製造装置1を構成してもよい。
【0037】
制御部90は、例えば、パーソナルコンピュータによって構成され、記憶装置としての各種のプログラム及び各種のデータを記憶するROM(ICチップ)又はRAM(磁気ディスクやSSD)や一時的に各種のデータを記憶するRAM、演算処理装置としてのCPU、入力装置としての記録媒体や他の制御装置から取得するための通信装置や各種の動作指示を入力するキーボード及びマウス、出力装置としての稼働状況を出力するディスプレイを備えて構成される。
【0038】
制御部90は、所定数の多様な形状の部品13及び部品13の安定的な支持を補助する各種の桟部材14の積層態様(荷姿)を決定するための積層態様決定プログラム(配置決定手段)と、加工部30における材料12の加工を制御する材料加工プログラムと、所定数の部品13及び桟部材14を複数の層に積み重ねるための板状部品移動プログラム(部品移動プログラム)とを記憶している。制御部90には、製造予定の各部品13の形状及び建築現場にての施工順に関する部品データが入力され、制御部90は、積層態様決定プログラムの実行によって、材料加工プログラムによって参照される各部品の加工に関する加工データと、板状部品移動プログラムで参照される積層態様に関する積層データとを生成する。
【0039】
制御部90は、積層態様決定プログラムの実行による積層態様の決定において、各部品13に対して、配置する層と、その層内での位置や向きを、部品データに基づいて決定すると共に、各層において必要となる桟部材14の位置や向きを決定する。この場合に、桟部材14の配置の決定においては、複数種類の大きさに設定された桟部材14としての短桟部材14S、長桟部材14Lを必要に応じて選択して設定し、使用する部材数を減らすことを可能としている。なお、必ずしも制御部90において、部品13及び桟部材14の積層態様(荷姿)を決定する構成とする必要はなく、例えば、積層態様決定プログラムを省略し、制御部90に積層態様(荷姿)に関するデータを入力する構成とし、その入力されたデータに基づいて部品13及び桟部材14を積層するようにしてもよい。
【0040】
次に、部品支持部40に関する構成について、更に詳細に説明する。
【0041】
部品支持部40は、部品支持領域40Aとして、1つの材料12から切り出された加工部品を、上下に重ならせることなく少なくとも配置できる領域を確保した構成である。
【0042】
なお、部品支持部40は、部品支持領域40Aとして、1つの材料12から切り出され、順次に搬送されてくる加工部品を少なくとも配置できる領域に加えて、後続して加工される少なくとも1つの材料12から切り出された加工部品をも配置できる領域を確保可能な構成であってもよい。この構成の場合、部品支持部40は、先行する材料12に基づく各部品13が積込部70によって移動させられる前に、後続する材料12に基づく各部品13が搬送されて来たとしても、それらを受け入れることができ、先行する材料12に基づく各部品13の積み込みの進捗によって、後続する材料12を加工する加工部30の動作を一時的に停止しなければならなくなることを抑制可能になる。また、部品支持部40に、連続して加工される材料12から切り出される部品13を1つの層に、容易に配置可能とすることができる。
【0043】
また、部品支持部40は、識別情報付加部20で付加された各種の情報(方向識別情報を含む)が上下方向の少なくとも一方側(
図3においては上側)を向いた状態を保ち、加工部30における加工や、加工部30から部品支持部40への受け渡しや、部品支持部40による移動において、それらの位置や向きに所定の基準位置や所定の基準方向に対してズレが生じたとしても、その各種の情報を部品支持部40の上側から読み取ることができるように、各部品13の表裏を反転させることなく所定の方向(
図3(A)及び(B)における右側であって
図3(C)の下側)に移動させる。
【0044】
また、制御部90(制御手段)は、部品支持部(加工部品支持手段)によって支持された加工部品に付された方向識別情報に基づいて加工部品の向きを識別し、制御部90(配置記憶手段)によって決定された部品の向きとなるように積込部(積込手段)の動作を制御して所定数の板状の部品を複数の層に積み重なった状態とすることが可能に構成されている。
【0045】
具体的には、積込部70は、動作機器73(動作部)の先端に設けられた保持機器71(接触部)及び撮像機器72を、
図1に破線の円で示す範囲において、自由に移動可能に構成とされており、また、保持機器71による保持中心(例えば、吸着パッドによる吸着中心)を通る上下方向(部品13や桟部材14の表面に垂直な方向:鉛直方向)の軸を中心軸として回動可能に構成されている。
【0046】
なお、保持機器71と撮像機器72とは、一体的に(相対的な位置や向きが変化することなく)移動や回転を行う場合について説明するが、それらが個別に移動や回転を行う構成であってもよい。また、以下においては、説明の便宜のために、制御部90が、保持機器71や撮像機器72の移動や回動を直接に制御するかのように記載するが、保持機器71や撮像機器72の移動や回動は、動作機器73により間接的に行われ、制御部90が動作機器73の動作を制御することによって実現する。
【0047】
制御部90は、
図3(A)に実線で示すように、撮像機器72を、移動対象とする部品13aの重心が位置することが推定される位置の近傍であって、部品13aの上面(共通記号やバーコードが付加されている面)から所定の距離だけ上方に離れた位置に移動させる。その後、制御部90は、撮像機器72により撮像された画像に基づいて、方向識別情報としての共通記号22を探索する。
【0048】
制御部90は、その位置からの探索によって共通記号22の有無を識別可能である認識範囲(以下において、広域認識範囲72Hとも称す)において、共通記号22を検出できれば、
図3(A)に破線で示すように、その共通記号22に近づくように撮像機器72を移動させる。
【0049】
具体的には、制御部90は、撮像機器72を、広域認識範囲72Hの中央近くに共通記号22が位置するように水平面(上下方向を垂線とする平面)内で移動させて(
図3(C)参照)、再度、共通記号22を撮影し、その撮影された画像に基づいて、共通記号22の向きを認識する。このように、広域認識範囲72Hの中で、再度の移動による位置調整を行った後に共通記号22を撮影することで、共通記号22の向き、すなわち、部品支持領域40Aに支持された状態での部品13の向きを高精度で検出することができる。制御部90は、認識した部品13aの向きと、積層支持部50において配置すべき向きとの差を検知して、
図3(B)に示すように、その差分の角度だけ、上下方向を軸として回転させる。
【0050】
なお、共通記号22に近づくように撮像機器72を移動させる再度の移動による位置調整の制御は、水平面内における移動に限らず、これに加えて、広域認識範囲72Hよりも、共通記号22を識別可能である認識範囲を狭めた狭域認識範囲72Lとなるようにしてもよい。具体的には、実線で示す高位置よりも部品13aの表面からの距離が短く低い位置となるように高さ方向にも移動させてから、共通記号22を撮影し、共通記号22の向きを認識するようにしてもよい。また、共通記号22に近づくように撮像機器72を移動させる制御は、広域認識範囲72Hにおける最初の撮影において中央に近い等の一定の範囲内に共通記号22が位置している場合であれば、再度の撮影を省略してもよい。
【0051】
また、制御部90は、撮像機器72の画像から個体識別情報であるバーコード21に含まれる情報を読み出し、移動対象である部品13aであるかを判断する。このバーコード21の情報の読み出しは、バーコード21を小さく表示したり、多くの情報を含ませたりするためには、撮像機器72をバーコード21に近づけて撮影した画像を使用することが好ましく、共通記号22の撮影とは別に撮影を行うようにしてもよく、撮像機器72をバーコード21に近付けてから撮影するようにしてもよい。
【0052】
制御部90は、検出したバーコード21が、移動対象である部品13aのバーコード21であった場合には、保持機器71を部品13aに接触するまで下方に移動させる。なお、バーコード21の認識と、共通記号22の認識は、1回の撮影による画像に基づいて行ってもよい。
【0053】
その後、制御部90は、保持機器71を、部品13aを持ち上げ可能な状態で保持するように作動させる。この場合において、制御部90は、検出したバーコード21が、移動対象である部品13のものであったとしても、移動対象である部品13が所定の保持態様で支持できない場合、例えば、
図3(C)に示す部品13bのように、その重心(矢印の先端)が支持ベルト43の両端近傍の所定の領域40Bに位置しており、その重心を保持機器71の中心となるように保持しようとすると、保持機器71が支持ベルト43からの部品13の落下を防止する落下防止壁45と干渉してしまうような位置に支持されている場合には、標準(基準、又は最適)として初期設定された保持すべき向きから重心を通る上下方向の軸周りに回転させて保持できるか判断し、保持できる場合には、標準とは異なる向きで保持し、それでも保持できない場合には、標準の保持すべき位置から所定の方向に離れた位置で保持する。この場合には、制御部90は、標準の保持態様からの変更を特定する情報、例えば、標準の保持角度からの差分の回転角度や、標準の保持位置からの差分の距離を記憶し、その保持ズレを差し引いて、保持機器71の移動や回転の制御を行う。
【0054】
なお、制御部90は、部品13を所定の保持位置及び保持角度で保持できない場合の候補となる保持位置や保持角度を予め複数設定して記憶しておき、それらの候補から選択する構成であってもよい。
【0055】
制御部90は、部品13aを保持した保持機器71を所定の高さまで上昇させ、
図3(C)に示すように、共通記号22(部品13a)の向きを基準方向(
図3(C)における下向き)に合わせるように回転させる。その後、制御部90は、保持機器71を前後左右に移動させて、部品13aを部品支持領域40Aの上方から、積層支持領域50Aにおいて配置が予定されている予定積込位置の上方に移動させる。制御部90は、部品13aを予定積込位置の上方に移動させた後に、保持機器71を下降させて、下層に配置された部品13dや短桟部材14Sや長桟部材14Lに接触させる。制御部90は、保持機器71による部品13aの保持状態を解除させる。これによって、部品13aに対する所定の位置及び向きでの積み重ねが完了する。制御部90は、他の部品13b,13cに対しても同様の制御を繰り返し、それらを順次に積み重ねる。
【0056】
なお、制御部90は、移動対象である部品13の共通記号22の位置に応じた経路で、移動対象の部品13の共通記号を探索するように、撮像機器72の移動を制御する構成について説明したが、移動対象である部品13の位置に応じた経路で、撮像機器72の移動を制御する構成であってもよく、この場合でも、結果的に移動対象である部品13に付加された共通記号22の位置に応じた経路にて撮像機器72を共通記号22に近付けることができる。
【0057】
また、制御部90は、共通記号22の位置に応じない予め定められた1つの経路に沿って、撮像機器72を移動させて共通記号22を探索する機能を有するようにしてもよい。例えば、移動対象である部品13に依らない規定の経路を設定しておき、例えば、左端の後側から前側までを移動し、その後、中央の後側から前側までを移動し、その後、右端の後側から前側までを移動するジグザクの経路を設定しておき、移動対象となる部品13に依らずに一定の経路で、撮像機器72の移動を制御部90が制御する構成であってもよい。制御部90が、広域認識範囲72Hの画像から共通記号22を検出できない特殊な状況において、部品支持部40において上方側から共通記号22を認識可能な範囲内に、探索している部品13があるのか、どこにもないのかを確認することができる。
【0058】
また、制御部90が、移動対象となる部品13を予め設定しないで撮像機器72を一定の経路に沿って移動させ、認識した共通記号を有する部品13を、認識した順序で積層支持部50に移動させることもできる。
【0059】
また、広域認識範囲72Hの画像から共通記号22を検出できない特殊な状況が発生した場合、例えば、移動対象の部品13の位置が部品支持部40(部品支持領域40A)において、大きくズレてしまったり、他の部品13の下に入り込んでしまうような状況が生じた場合には、予め定めた別処理を制御部90が行うようにしてもよい。例えば、エラーの発生を制御部90の音や表示によって作業者に報知し、作業者が移動対象の部品13を確認可能にしてもよく、また、広域認識範囲72Hに対して予め定めた方向(例えば、部品支持部40において部品13や桟部材14を移動させることが可能な移動方向)に沿って所定の距離だけ撮像機器72を移動させて、再度、共通記号22を探索するようにしてもよい。このとき、制御部90は、その移動前後において、共通記号22を認識できる認識範囲の一部が重複するように、撮像機器72を移動させることが好ましく、この移動によっても共通記号22を検出できなかった場合には、制御部90は、更に、同一方向への撮像機器72の移動と共通記号22の探索とを繰り返すようにしてもよい。また、同一方向への移動によっては、共通記号22を検出できなかった場合には、その移動方向に交差する方向に沿って所定の距離だけ移動させた後に、上記と同様に移動方向に沿った位置を変化させながら共通記号22の探索を行うようにしてもよい。
【0060】
また、例えば、広域認識範囲72Hの画像から検知したバーコード21が、移動対象である部品(例えば、部品13a)でなく別の部品(例えば、部品13b,13c)のみであった場合に、当該別の部品を移動させたとしても、予定積込位置が設定された層への全ての部品の積み込みが可能であれば、その検知したバーコード21に対応する別の部品を予定積込位置へ移動する制御を行うように、すなわち識別情報の検知結果に応じて移動対象を変更する制御を制御部90が行うようにしてもよい。また、別の部品(例えば、部品13b,13c)については、積層支持部50とは別に仮置きが可能な別の支持台(仮置き部)を予め設定しておいて、その別の部品を仮置きするようにしてもよい。
【0061】
このように、板状部品製造装置1によれば、積込部70の動作を制御して、部品13a等を少なくとも含む所定数の板状の部品13を複数の層に積み重なった状態とする場合に、部品支持部40によって支持された部品13a等に付された共通記号22に基づいて部品13の向きを識別し、部品13の向きを制御部90の積層態様決定プログラムによって決定された向きに合わせる制御が行われる。これによって、材料12から加工される際の部品13の向きと、積み重なった状態とされる場合に配置される向きとが異なる場合や、加工時や積込部70による積み重ね前に部品13の向きにずれが生じていた場合であっても、その向きを共通記号22(方向識別情報)に基づいて調整することができ、部品13を所望の位置に所望の向きで高精度に配置することができる。したがって、部品13を好適に積み重なった状態とすることができ、積み重ねられた部品13の向きのずれに基づく荷崩れの発生を抑制できる。また、部品13が所定数の部品13を積み重ねる積層支持領域50Aからはみ出すことを防止でき、はみ出した部分が建築現場への搬送途中や、建築現場にて容易に破損してしまうといったことも抑制できる。
【0062】
また、板状部品製造装置1であれば、加工部30によって加工されることで多様な形状となる各部品13の向きを、方向識別情報を認識することによって特定できるために、そのような多様な形状の各部品13の外形を個別に認識してその向きを特定する場合に比べて、部品13の向きを簡素な板状部品移動プログラムに基づき高速に特定でき、各部品13を所望の位置に所望の向きで簡便かつ高速に配置することができる。
【0063】
また、板状部品製造装置1によれば、部品支持領域40Aの中で、移動対象である部品13又はそれに付された共通記号22が位置している可能性の高い推定位置に応じた異なる経路にて、部品支持領域40Aに保持機器71と撮像機器72とが近付くように、積込部70の動作が制御される。これによって、共通記号22が位置している可能性の高い位置の近傍から移動対象である部品13の共通記号22を探索することができ、移動対象である部品13の共通記号22を効率良く認識することができる。したがって、各部品13を所望の位置に所望の向きで効率良く配置することが可能になる。
【0064】
なお、制御部90の制御によって、部品13a等に付された共通記号22に基づいて部品13の向きを識別して板状の部品13を複数の層に積み重なった状態とする装置としては、加工装置を含む板状部品製造装置1に限らず、加工装置を含まない板状部品移動装置として構成しても、同様の効果を奏するものとすることができ、この場合、制御部90における材料12の加工に関する制御部分を省略してもよい。
【0065】
次に、材料12の残り部分を加工桟部材14Rとする場合の加工や使用に関する板状部品製造装置1の構成について詳細に説明する。
【0066】
制御部90は、加工部30(加工装置)によって加工される板状の材料12に対して部品13a等(加工部品)と加工桟部材14R(桟部材)とを割り当てて加工部30(加工装置)に部品13a等と加工桟部材14Rとを加工させる加工制御を行うことが可能な構成である。具体的には、制御部90は、上記の積層態様決定プログラムの実行に基づいて、各層において必要となる桟部材14の位置や向きを決定する。このとき、制御部90は、各材料12から切り出される1又は2以上の部品13a等の全てに対する割り当て領域を決定した後に、各材料12においていずれの部品13a等も割り当てられていない領域に、加工桟部材14Rを割り当てる。また、制御部90は、材料12に所定の大きさよりも小さい加工桟部材14Rを割り当てる場合には、その外形を、個体を識別する必要がないように特定の形状、例えば、短桟部材14Sと同一の形状に決定する。なお、小さい加工桟部材14Rの形状を短桟部材14Sと同一の形状として、それらを兼用又は併用できるようにしているが、同一の形状でなくてもよい。
【0067】
識別情報付加部20は、制御部90の制御に基づいて、部品13a等の場合と同様に、加工桟部材14Rにおける厚み方向を向く少なくとも一面に、部品13等であるか加工桟部材14Rであるかを識別可能な識別情報を付す。具体的には、識別情報付加部20は、所定の大きさよりも大きな加工桟部材14Rに対しては、個体識別情報としてのバーコード21と同様な桟部材14に対応したバーコードと、方向識別情報としての部品13a等と同一の共通記号22を印刷し、所定の大きさよりも小さい加工桟部材14Rに対しては、方向識別情報としての部品13a等と同一の共通記号22のみを印刷する。なお、加工桟部材14Rに付す方向識別情報は、部品13a等と同一の共通記号でなくてもよく、部品13a等に採用できる上述のような他の形態であってもよく、更に、部品13a等に採用しない専用の形態であってもよい。
【0068】
部品支持部40は、加工桟部材14Rについても、部品13a等の場合と同様に、共通記号22(方向識別情報)が上下方向の少なくとも一方側を向いた状態にして支持する。更に、部品支持部40は、部品13等の場合と同様に、加工桟部材14Rが各部品13等や他の加工桟部材14Rと離間させて支持する。
【0069】
制御部90は、移動対象である部品13a等やそれに付された共通記号22の撮像機器72による探索において、共通記号22の存在は認識できたが、その共通記号22に対する所定の位置にバーコード21の存在を認識できない場合には、特定の形状に加工された小さい加工桟部材14Rであると判断する。また、制御部90は、認識したバーコード21が移動対象である部品13aのものでなく、大きい加工桟部材14Rのものである場合や、バーコード21が認識されない小さい加工桟部材14Rのものであったとしても、移動対象である部品13aの移動を完了する前に移動させたとしても、他のいずれかの部品13や桟部材14を正常に配置できなくなることがない場合には、認識された加工桟部材14Rを移動させる。
【0070】
このように、板状部品製造装置1によれば、制御部90が、材料12に対して部品13a等と加工桟部材14Rとを割り当てて加工部30に部品13a等と加工桟部材14Rとを加工させ、識別情報付加部20により、部品13a等と加工桟部材14Rとを識別可能な識別情報としてのバーコード及び共通記号22を、部品13a等や加工桟部材14Rの厚み方向を向く少なくとも一面に付加させる。これにより、材料12から加工された部品13a等と加工桟部材14Rとの向きを識別情報に基づいて調整して積み込みをすることが可能となる。
【0071】
また、加工桟部材14Rには、方向識別情報としての共通記号22が付加されるので、制御部90(積層態様決定プログラム)によって決定された位置と向きに高精度で合わせて配置することが可能となる。したがって、部品13a等や加工桟部材14Rを好適に積み重ねていくことができ、積み重ねられた部品13a等や加工桟部材14Rの向きのずれに基づく荷崩れの発生を抑制できる。
【0072】
また、板状部品製造装置1であれば、部品13a等を安定に支持することを補助するために用いられる加工桟部材14Rを、材料12において部品13a等を加工した残りの部分から加工することが可能となるために、部品13a等や加工桟部材14Rの加工に係る歩留まりを向上させることができる。
【0073】
また、板状部品製造装置1であれば、上記のように部品13a等や加工桟部材14Rの向きを共通記号22に基づいて調整することが可能となるために、1つの材料12に部品13a及び加工桟部材14Rを含む複数の加工対象を割り当てる場合に、材料12における複数の加工対象の向きを制御部90(積層態様決定プログラム)によって決定された向きに合わせなくてもよく、1つの材料12に割り当てることができる複数の加工対象の組み合わせの自由度が高くなる。これによって、材料12における複数の加工対象の向きを制御部90によって決定された向きに合わせる場合に比べて、部品13a等や加工桟部材14Rの加工に係る歩留まりを向上させることができる。
【0074】
また、板状部品製造装置1として、制御部90(積層態様決定プログラム)によって複数の層のうちいずれの層に部品13a等と加工桟部材14Rとが配置されるかが決定された後に、その決定された層の位置に応じて部品13a等と加工桟部材14Rとの割り当てを行ってそれらの加工を行う構成を採用することができる。この構成を採用した場合には、複数の層における各層に配置される部品13a等と加工桟部材14Rとは、同じ材料12から加工することになり、材料12に部品13a等や加工桟部材14Rを割り当てる制御を簡素化できると共にその処理負荷を低減できる。更に、各材料12における部品13a等と加工桟部材14Rとを、その配置が各層を構成する部品13a等と加工桟部材14Rとの配置と同一となるように割り当てるようにしてもよい。
【0075】
次に、桟部材支持部60について詳細に説明する。
図4(A)は、桟部材支持部60の構成の一例を示す模式的な上面図であり、(B)は、その模式的な正面図であり、(C)は、単一の桟部材14(長桟部材14L)を供給する動作態様の一例を示す模式的な側面図であり、(D)は、複数の桟部材14(長桟部材14L)を同時に供給する動作態様の一例を示す側面図である。
【0076】
桟部材支持部60は、
図1、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、長桟部材14L(帯板状の桟部材)を、上面視において、その長手方向における端部の位置をずらし、長手方向に交差する短手方向に並べた横並び状態にして支持する構成である。
【0077】
具体的には、桟部材支持部60は、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、開口61a~開口61cを有する中間壁61から上方に突設される壁として、手前側(
図4(A)における下側であって
図4(B)における紙面に垂直な方向の表側)に支持される長桟部材14Lの長手方向の両端位置を規制する長手側規制壁62a,63aと、その長桟部材14Lの短手方向の両端位置を規制する短手側規制壁64aとを備えている。同様に、奥側に支持される長桟部材14Lの長手方向の両端位置を規制する長手側規制壁62b,63bと、その長桟部材14Lの短手方向の両端位置を規制する短手側規制壁64bとを備えており、長手側規制壁62b,63bは、長手側規制壁62a,63aに対して長桟部材14Lの長手方向に沿ってずらして設けられている。桟部材支持部60は、各種の規制壁に沿った方向に長桟部材14Lが積み重なる状態で支持する。
【0078】
更に、桟部材支持部60は、
図4(A)及び
図4(B)に示すように、底壁65の上方に形成されて中間壁61を支持し、開口61a(開口61b,61c)に連通する開口66a(開口66b,66c)を有する支持枠66と、底壁65に固定され、積み重さなった状態において最下層に位置する手前側(奥側)の長桟部材14Lの下面に接触し、積み重さなった手前側(奥側)の長桟部材14Lを一体的に上下方向に移動可能である規制板67a(規制板67b)と、規制板67a(規制板67b)を駆動するシリンダ68a(シリンダ68b)とを備えている。
【0079】
制御部90は、保持機器71(接触部)に、2以上の桟部材14を接触させて吊り上げ、複数の層(積層体11を構成する層)の少なくとも一部の層に、2以上の桟部材14をまとめて移動させる制御を行うことが可能な構成である。例えば、2以上の長桟部材14Lをまとめて移動させる制御を行う構成であっても、2以上の短桟部材14Sをまとめて移動させる制御を行う構成であってもよく、更に、1以上の長桟部材14Lと1以上の短桟部材14Sをまとめて移動させる制御を行う構成であってもよい。
【0080】
また、制御部90は、桟部材支持部60(桟部材支持手段)によって横並び状態にして支持された2以上の長桟部材14L(帯板状の桟部材)に対して保持機器71(接触部)が上側に位置するように積込部70(積込手段)の動作を制御し、2以上の長桟部材14Lと前記接触部とが接触した後に当該2以上の長桟部材14Lを吊り上げて、複数の層の少なくとも一部の層にまとめて移動させる複数桟部材移動制御を行う構成である。更に、保持機器71(接触部)に、長桟部材14L(帯板状の桟部材)を1つだけ接触させて吊り上げ、複数の層の少なくとも一部の層に、1つの長桟部材14Lを移動させる単一桟部材移動制御も行う構成である。
【0081】
具体的には、制御部90は、シリンダ68a,68bの動作を制御することによって、規制板67a,67bの位置を、最上層の長桟部材14Lの上面の位置を一定の高さH1に保つように構成されており、最上層の長桟部材14Lが取り出された場合には、残りの積み重なった長桟部材14Lを一体的に、長桟部材14Lの厚み分だけ上昇させるように制御する。また、制御部90は、最上層の長桟部材14Lを保持機器71によって保持させる場合に、保持機器71を、手前側と奥側の長桟部材14Lがその長手方向に沿って重複する部分の中央であって、最上層の長桟部材14Lの上面と保持機器71の下端とが所定の距離H2(例えば、長桟部材14Lの厚み)となる位置(以下において保持待機位置と称す)に移動させる。その後、制御部90は、シリンダ68a,68bの制御によって、規制板67a,67bを、最上層の長桟部材14Lの上面と保持機器71の下端とが接触するまで上昇させる。制御部90は、シリンダ68aとシリンダ68bとを個別に制御可能な構成であり、
図4(C)に示すように、シリンダ68a又はシリンダ68bを作動させることによって(図中はシリンダ68bを作動した場合)、手前側又は奥側の長桟部材14Lを上昇させたり、
図4(D)に示すように、シリンダ68a及びシリンダ68bを同時に作動させて、手前側及び奥側の長桟部材14Lを一括して上昇させたりすることができる。これによって、制御部90は、単一の長桟部材14Lのみを保持機器71に保持させることも、複数(図中は2つ)の長桟部材14Lを保持機器71に保持させることもできる。また、図示は省略するが、短桟部材14Sに関しても、長桟部材14Lの場合と同様に、制御部90は、単一の短桟部材14Sのみを保持機器71に保持させることも、複数(図中は2つ又は4つ)の短桟部材14Sを保持機器71に保持させることもできる。
【0082】
ここで、桟部材支持部60は、上面視において、長桟部材14Lが長手方向に交差する短手方向に並ぶようにして設けられている。このため、一方の手前側の長桟部材14Lは、その長手方向の右側の端部(奥側の長桟部材14Lと対向しない側の端部:以下において右端部と略記する)が長手側規制壁62aに揃うように支持させ、他方の奥側の長桟部材14Lは、その長手方向の左側の端部(奥側の長桟部材14Lと対向しない側の端部:以下において左端部と略記する)を長手側規制壁62bによって揃うように支持させることが可能な構成である。これにより、手前側や奥側の長桟部材14Lの長手方向の長さが不均一であったとしても、手前側の長桟部材14Lの右端部と奥側の長桟部材14Lの左端部とが隔たる長さ(以下において、ずらし配置全長と称す)を一定に保つことができる。また、桟部材支持部60において、そのずらし配置全長が、積層支持領域50A(
図1及び
図2参照)の長辺に対応する長さに設定されており、制御部90は、桟部材支持部60で支持された相対位置を保ちながら2つの長桟部材14Lを移動させれば、それらを積層支持領域50Aの長辺に渡って過不足なく配置させることができる。
【0083】
桟部材支持部60は、手前側と奥側との長桟部材14Lを、その長手方向が積層支持領域50Aの長辺と略平行となるように支持する構成であり、長桟部材14Lを積層支持領域50Aの長辺に沿って配置する場合に、保持機器71による保持状態が直線的な移動に比べて解除され易い回転を伴わずに、長桟部材14Lを移動させることを可能としている。これによって、長桟部材14Lを、回転を伴って移動させる場合に比べて、高速で移動させることができる。
【0084】
なお、桟部材支持部60は、手前側と奥側との長桟部材14Lをその短手方向に近接させた状態で支持する構成に限らず、それらを短手方向に所定の間隔で離間させた状態で支持する構成であってもよい。
【0085】
また、制御部90は、2つの長桟部材14Lを移動する場合に、必ずしも同時に保持させる必要はなく、別々に保持するようにしてもよい。すなわち、手前側と奥側との一方の長桟部材14Lを保持機器71によって保持させた後に、その長桟部材14Lを動作機器73によって他方の長桟部材14Lに近接させるように移動させてから、他方の長桟部材14Lを保持機器71によって保持させてもよい。
【0086】
また、桟部材支持部60は、手前側や奥側等、長桟部材14Lが積み重なった積層物を複数並べて設ける場合に限らず、1つの積層物のみを設ける構成であってもよい。この構成を採用する場合には、制御部90は、1つの長桟部材14Lを保持機器71によって保持させた後に、その長桟部材14Lを動作機器73によって移動させてから、他の長桟部材14Lを、保持機器71によって、先に保持した長桟部材14Lを保持している部分とは異なる部分で保持させる構成とする。長桟部材14Lを動作機器73によって移動させる際に、長桟部材14Lの長手方向に沿った移動量によって、保持機器71によって保持される2つの長桟部材14Lに対するずらし配置全長を調整し、また、長桟部材14Lの短手方向に沿った移動量によって、それらの長桟部材14Lの間隔を調整する。更に、桟部材支持部60を、長桟部材14Lの長手方向の一端部を揃えて支持する構成とし、制御部90を、先に保持される長桟部材14Lを保持させた後に、長桟部材14Lの表裏方向を中心軸として180度回転させてから、保持された長桟部材14Lにおいて支持状態で揃えられていた一端部が次に保持される長桟部材14Lに対向しないように、他の長桟部材14Lを保持させる構成とすることが好ましい、この構成を採用すれば、長桟部材14Lの長手方向の長さが不均一であったとしても、保持される2つの長桟部材14Lのずらし配置全長を一定に保つことができる。
【0087】
また、制御部90は、単一桟部材移動制御と複数桟部材移動制御とを行う構成に限らず、単一桟部材移動制御を行わない構成であってもよい。この構成を採用する場合には、桟部材支持部60は、手前側と奥側の長桟部材14Lを個別に移動させることができない構成、例えば、シリンダ68a及びシリンダ68bが連動してしか動作しない構成や、手前側と奥側の長桟部材14Lを1つの規制板で支持する構成であってもよい。制御部90は、単一桟部材移動制御によって、1つの長桟部材14Lを移動させる場合には、手前側の長桟部材14Lと奥側の長桟部材14Lとが均等に利用されるように、それらを交互に選択して移動させる構成とすることが好ましい。また、制御部90は、1つの長桟部材14Lを移動させる場合には、複数の長桟部材14Lを保持する場合とは異なる位置、例えば、各長桟部材14Lの中央(重心)の位置を保持機器71によって保持させるように、保持機器71により保持させる位置を変更する構成であることが好ましい。
【0088】
また、制御部90は、保持機器71によって1又は2以上のものを保持させる場合に、それらを保持機器71における保持可能な領域の中央側(保持中心)に寄せて保持させる構成に限らず、一端側に寄せて保持させる構成であってもよい。この場合、制御部90は、保持機器71によって保持したものを、中央側に寄せて保持させた場合よりも基部74(
図1参照)に対して離れた範囲にまで、動作機器73によって移動させることができる。
【0089】
このように、板状部品製造装置1であれば、積込手段(積込部70)の動作を少なくとも制御し、部品13と長桟部材14Lや短桟部材14Sとを複数の層に積み重なった状態とする場合に、接触部(保持機器71)に、2以上の長桟部材14Lや短桟部材14Sを接触させて吊り上げ、複数の層の少なくとも一部の層に、2以上の長桟部材14Lや短桟部材14Sをまとめて移動させる制御を行うことが可能である。これによって、2以上の桟部材14Lを吊り上げて所望の位置に一度で移動させることができ、各層に桟部材を配置する時間効率を向上させることができる。これによって、効率良く、板状又は棒状の部品を複数の桟部材を含めて積み重なった状態とすることができる。
【0090】
また、板状部品製造装置1であれば、2以上の桟部材14Lを同時に吊り上げることができ、桟部材14L,14Sを吊り上げる時間効率を向上させることができる。また、複数の桟部材14Lを予め移動場所における相対位置と同一の相対位置となるようにずらしておくことによって、層上に移動させた後にそれらの少なくとも1つの桟部材14Lを更に移動させたりすることなく、2以上の桟部材14Lを同時に所望の位置に配置させることも可能になる。
【0091】
また、板状部品製造装置1であれば、単一の桟部材を移動させるか、複数の桟部材を移動させるかを選択できるために、1つの桟部材しか必要の無い層に対しても、複数の桟部材が必要な層に対して、所定数の桟部材を簡便に移動させることができる。
【0092】
なお、制御部90の制御によって、接触部(保持機器71)に、2以上の桟部材14を接触させて吊り上げ、複数の層の少なくとも一部の層に、2以上の桟部材14をまとめて移動させる制御を行う装置としては、加工装置を含む板状部品製造装置1に限らず、加工装置を含まない板状部品移動装置として構成しても、同様の効果を奏するものとすることができる。また、この板状部品移動装置として、識別情報付加部20、及び、加工部30の少なくともいずれかを省略してもよいし、制御部90における材料12の加工に関する制御部分を省略してもよい。
【0093】
また、制御部90の制御によって、2以上の桟部材14をまとめて移動させる制御を行う装置としては、積込部70による移動対象の部品が板状の部品13である場合に限らず、棒状の部品を移動対象とする部品移動装置として構成してもよく、例えば、建築物の骨格を形成する柱材や横架材等の構造材又は羽柄材等の補助部材に使用される桟部材14として利用してもよい。この場合に、上記した長桟部材14Lを利用し、棒状の部品を複数並べて複数段に積み重ねた状態の一部に長桟部材14Lを配置し、トラックの荷台の幅に合わせて2つの長桟部材14Lの端部位置のズレ量を異ならせて長手方向における重なり代を調整してもよく、これにより、多様なトラックの荷台の幅に調整可能な桟部材14として長桟部材14Lを利用することができる。
【0094】
また、制御部90は、単一桟部材移動制御と複数桟部材移動制御とを行う構成に限らず、複数桟部材移動制御は行わずに単一桟部材移動制御のみを行う構成としてもよい。
【0095】
次に、識別情報付加部20によって部品13及び桟部材14に付加する方向識別情報に関する構成について、
図5を参照して、更に説明する。
図5は、方向識別情報として用いられる共通記号22に、文字及び記号を利用した場合を例示した図である。具体的には、1つの材料12を用いて製造される複数の加工部品(部品13及び桟部材14)に対して識別情報付加部20によって識別情報としてのバーコード21と共通記号22とを付加した形態を模式的に示している。
【0096】
方向識別情報として利用可能な共通記号22は、
図5に示すように、文字や図形を用いて付加してもよい。共通記号22は、制御部90としてのパーソナルコンピュータによって利用可能な文字や記号、図形を用いることが好ましい。文字としては、平仮名、片仮名、アルファベット、数字、漢字等が例示され、記号としては、「¥」、「&」等が例示される。この共通記号22に用いる方向識別情報としては、漢字のみや、記号のみの一種類の分類に属するもののみを用いるようにしてもよいし、2以上の分類に属するものを用いるようにしてもよい。
【0097】
また、文字及び記号の情報のうち、共通記号22として、いずれの情報を、方向識別情報として用いてもよいが、部品13の番号や部品13の配置位置等、部品13の特定に使用している情報(以下、「使用情報」ともいう)とは別の情報(以下、「非使用情報」ともいう)を用いることが好ましい。これにより、使用情報を誤って、方向識別情報として認識してしまう事態を回避することができる。
【0098】
また、方向識別情報として利用可能な非使用情報としては、漢字を利用することは好ましい。漢字は、数多くの種類があり、それらの中から非使用情報を容易に選択可能であるし、後から変更や追加をする場合の対象も多数あって、容易に変更や追加をすることができる。
【0099】
ここで、共通記号22は、制御部90によって識別情報付加部20が制御されて印字される。このため、制御部90に、共通記号22として予め使用可能な1又は複数種類の非使用情報を記憶(設定)させておき、その非使用情報を、制御部90によって識別情報付加部20を制御して付加するものとしてもよいし、未設定の非使用情報を制御部90に対して入力(追加)することで、共通記号22として利用可能な新たな非使用情報を追加可能に構成してもよい。
【0100】
方向識別情報として利用する漢字としては、特定の一方向を識別可能な形をした漢字が利用可能である。例えば、「土」、「円」、「山」、「出」、といった漢字が利用可能である。この漢字の設定において、方向識別情報として利用する漢字は、単純すぎると、木製の材料を加工して部品13を製造する場合における部品13の木目や汚れ等によって誤認識を生じる可能性がある。一方、複雑すぎると、識別情報の識別を正確に行うために、高解像度のカメラを必要としたり、距離が遠いと正確な識別がし難くなるなど情報入力の可能な位置が限定される可能性がある。このため、方向識別情報として利用する漢字は、例えば、画数として、三画以上にして単純すぎないような漢字が好ましく、また、五画以下といった複雑過ぎない漢字を用いることが好ましい。
【0101】
また、方向識別情報として利用する漢字は、複数の方向を向く直線状の部位を有する漢字を用いることが好ましく、例えば、漢数字の「三」といった漢字を用いるよりも、「工」や「土」といった漢字の方が好ましい。これにより、一定の方向に向かって多数並んだ状態となりやすい木目が、誤って方向識別情報と認識されてしまう事態を回避し易くすることができる。
【0102】
また、直線部分の長さが僅かに変化すると別の方向の文字と認識され得る漢字(例えば、「工」)より、直線部分の長さが僅かに変化しても方向が一方向に限定可能な形をした漢字(例えば、「土」)を用いることが好ましい。これにより、一部の直線状の部分に、木目や汚れが重なることで向きが逆になるなど、誤認識されてしまう事態を回避し易くすることができる。
【0103】
また、複数の方向のうち少なくともいずれかの方向(例えば、縦方向)を向く直線状の部位が2以上平行して設けられる漢字(例えば、「山」)を方向識別情報として利用することが、誤認識を回避し易くすることができて好ましい。また、直線状の部位が2以上平行する方向が2つの方向に設けられる漢字(例えば、「円」)を方向識別情報として利用することが好適である。
【0104】
また、方向識別情報として、識別情報付加部20によって付加する共通記号22は、複数種類が設定されることが好ましい。例えば、方向識別情報としての漢字を、予め複数種類設定しておいて、板状の材料が切断された場合に分断される複数の部品13に対して、別々の文字を割り当てて、識別情報付加部20によって付加することが好ましい。これにより、制御部90によって共通記号22が検知された場合に、移動対象となる1つの部品を特定し易くすることができ、共通記号22のみを検知して、部品13の移動先を制御部90によって簡易に識別し、積込部70を制御して部品13を移動することができる。
【0105】
方向識別情報として複数種類の識別情報を利用する場合には、識別情報付加部20によって付加する文字又は記号を異なる大きさで印字し、その文字等の大きさの相違によって異なる方向識別情報であることを制御部90によって識別して制御するようにしてもよい。例えば、板状の材料が切断された場合に複数に分断される部品13に対して、同一の漢字を異なる大きさで付加するようにし、その漢字の種類と大きさとによって、部品13を特定するようにしてもよい。
図5には、「¥」及び「山」の方向識別情報が異なる大きさで共通記号22として用いられる場合を例示している。
【0106】
また、方向識別情報を設定する種類の数としては、1つの材料から分断されて移動が必要となる数分を設定しておくことは好ましい。例えば、最大で6個の部品13が1つの材料12から製造され得る場合には、6以上の異なる方向識別情報を予め設定しておくことが好ましい。
図5には、3種類の部品13a~13cに対して異なる方向識別情報が共通記号22として付加された場合を例示している。
【0107】
また、方向識別情報として、同一の部品13(形状及び大きさが同一の部品13)が1つの材料12から複数製造される場合には、当該同一の部品13に対しては、同一の方向識別情報を付加するようにしてもよい。
図5には、同一の形状及び大きさの加工部品である桟部材14に対して、同一の方向識別情報である「山」が共通記号22として付加された場合を例示している。
【0108】
また、方向識別情報として、同一の方向識別情報を、1つの材料12を切断して製造される複数の部品13に付加するようにしてもよい。この場合には、複数の部品13に対して印字される同一の方向識別情報が予め定めた一定の距離以上に離間する場合に限って、同一の方向識別情報を付加するようにすることが好ましい。例えば、上記した広域認識範囲72Hの中に、同一の方向識別情報が配置されない距離分以上に離間した位置に対しては、同一の方向識別情報を付加する制御を行うようにしてもよい。
【0109】
また、方向識別情報として、色が異なる方向識別情報を複数の部品13に付加し、付加された識別情報の色を含めた方向識別情報の種類を制御部90によって識別することで、方向識別情報を判別するようにしてもよい。
【0110】
また、1つの部品13に対して付加する共通記号22は、1つの文字又は記号を方向識別情報として付加してもよいし、複数の異なる識別情報(例えば、文字又は記号の種類と大きさとのいずれか又は両方が異なる識別情報)を付加してもよい。
図5には、3種類の部品13a~13cに対して、それぞれ2種類の方向識別情報が付加された場合を例示している。
【0111】
1つの部品13に対して複数種類の異なる識別情報を共通記号22として付加する場合、同一の文字又は記号(例えば、漢字)を異なる大きさで複数箇所に付加してもよいし、異なる文字又は記号(例えば、2種類の漢字)を付加してもよい。この場合には、1つの部品13に対して付加された複数種類の識別情報に対して、制御部90において、部品13の重心位置と印字位置との相対位置関係を記憶させておき、いずれかの識別情報が検知できれば、積込部70を制御して部品13を移動可能とすることが好ましい。
図5には、1つの部品13に対して異なる大きさの方向識別情報を、共通記号22として付加する場合を例示している。
【0112】
ここで、1つの部品13に対して、複数の文字又は記号を方向識別情報として付加する場合の制御例について説明する。まず、複数の方向識別情報が付加された部品13の画像を情報入力装置(撮像機器72)を介して制御部90に入力し、その画像の中に、1つの方向識別情報が検知できた場合には、その方向識別情報に基づいて、部品13の移動の制御を実行する。複数の方向識別情報が検知できた場合には、予め記憶されている理想形の方向識別情報のデータと比較して、正しい部分の割合(スコア)が高い一方の識別情報を、移動の制御に利用する方向識別情報として制御を実行する。この場合に、複数種類の方向識別情報を、複数回の撮影によって制御部90に入力してもよいが、撮像機器72による1回の撮影によって情報の入力が可能な程度に近接した位置に、複数種類の方向識別情報を付加するようにすることが好ましい。これにより、複数種類の方向識別情報を、数少ない情報入力(撮影)によって制御部90に入力することができるので、部品13の移動の制御を高速化し易くすることができる。
【0113】
このように、識別情報付加手段としての識別情報付加部20は、加工装置としての加工部30の制御によって加工された加工部品としての部品13及び桟部材14に対して、識別情報として設定された複数種類の漢字又は記号の一部(いずれか又は複数)を、共通記号22として加工部品に付すように構成されている。このため、加工部品に付された漢字又は記号の種類と大きさとを制御部90が識別し、この加工部品に付された漢字又は記号の種類と大きさの組合せで構成される方向識別情報の種類に応じた加工部品の移動の制御を制御部90に実行させることができる。
【0114】
すなわち、1枚の材料12から複数の加工部品が製造される場合において複数の加工部品に対して異なる方向識別情報を付すことができ、この場合、バーコード21などの個体識別情報を情報入力装置(撮像機器72)によって制御部90へ入力しなくても、複数の加工部品のいずれであるかを、共通記号22によって特定して加工部品を移動することができる。よって、情報入力装置による識別情報の入力を簡易化して加工部品の移動を完了するまでの時間を短くしたり、方向識別情報を入力するための情報入力装置として低解像度の撮像機器72を利用可能にして板状部品製造装置1のコストを低減するなど、加工部品の向きを識別可能な識別情報(方向識別情報)を用いた移動制御を好適に行うことができる。
【0115】
また、制御部90に設定される方向識別情報として、パーソナルコンピュータなどで一般的に利用可能な漢字の情報が含められている。これにより、識別情報として設定し得る対象を多様にして適切な識別情報を設定(選定)し易くすることができ、また、既存の文字を利用することで、制御部90に対する識別情報の設定や、情報入力装置(撮像機器72)の情報入力に基づく識別情報の識別制御の設定等を行い易くすることができる。
【0116】
また、制御部90に設定される方向識別情報として、文字の大きさが異なることで異なる種類とした方向識別情報が含められている。よって、限られた文字や図形を用いて、多種の識別情報を用いた制御を行うことができる。
【0117】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものであり、例えば、以下に記載するように変形して実施してもよい。
【0118】
上記実施形態においては、板状部品製造装置1において、加工部30によって加工が不要であり材料12そのものを部品13として使用する加工不要部品であったとしても、識別情報付加部20、加工部30及び部品支持部40を通して、積層支持部50に移動する構成について説明したが、加工不要部品となる材料12については、材料支持部10から直接に積層支持部50に移動させる構成であってもよい。
【0119】
また、上記実施形態において、板状部品製造装置1は、積込部70によって部品13や桟部材14を移動させる構成であるが、動作機器73によって材料12も移動させる構成、例えば、材料支持部10から識別情報付加部20へ移動させる構成や、材料12を識別情報付加部20から加工部30へ移動させる構成であってもよい。更に、板状部品製造装置1は、積込部70によって加工部30による加工が不要である材料12を、材料支持部10や識別情報付加部20から積層支持部50へ移動させる構成であってもよい。
【0120】
また、上記実施形態においては、板状部品製造装置1の積込部70を制御部90により制御し、方向識別情報(共通記号22)に基づいて、加工部品としての部品13や桟部材14を複数の層に積み重なった状態とする構成であったが、方向識別情報を、必ずしも複数の層に積み重なった状態とする場合に利用する必要はなく、これに代えて、又は、これに加えて、方向識別情報を用いて加工部品の移動をするようにしてもよく、例えば、仮置きが可能な支持台に加工部品を移動する場合の制御部90の制御において方向識別情報を利用してもよい。
【0121】
また、上記実施形態から抽出可能な発明として、以下のように板状部品移動装置を構成してもよい。
【0122】
板状の材料を複数に分断可能な加工装置によって加工された加工部品であって、厚み方向を向く少なくとも一面に当該加工部品の向きを識別可能な識別情報(方向識別情報)が付された加工部品を移動する移動手段と、
その移動手段によって前記部品を前記移動する場合における前記部品の位置と向きとを記憶する配置記憶手段と、
前記板状の材料を配置可能な大きさに設定された加工部品支持領域に、前記加工装置によって加工された前記加工部品を、前記識別情報が上下方向の少なくとも一方側を向いた状態にして支持する加工部品支持手段と、
その加工部品支持手段によって支持された前記加工部品に付された前記識別情報に基づいて前記加工部品の向きを識別し、前記配置記憶手段によって記憶された前記加工部品の向きとなるように前記移動手段の動作を制御する制御手段とを備えていることを特徴とする板状部品移動装置。
【0123】
この板状部品移動装置によれば、移動手段の移動の前に、加工部品の向きにずれやバラツキが生じた場合であっても、加工部品の向きを識別情報(方向識別情報)に基づいて調整することができ、加工部品を予め設定した位置に高精度に配置することができる。
【0124】
また、加工装置によって加工されることで多様な形状となる各加工部品の向きを、識別情報(方向識別情報)を認識することによって特定できるために、多様な形状の各加工部品の外形を個別に認識して向きを特定する場合に比べて、加工部品の向きを簡易な方向認識制御に基づいて高速に特定でき、各加工部品を所望の位置に所望の向きで簡便かつ高速に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明したように、この発明は、プレカット加工装置、プレカット加工装置の制御装置、及び、部品移動プログラムに適している。
【符号の説明】
【0126】
1…板状部品製造装置(プレカット加工装置)、11…積層体、12…材料、13,13a~13d…部品、14,14L,14R,14S…桟部材、10…材料支持部、20…識別情報付加部(識別情報付加手段、印字装置)、21…バーコード(識別情報、個体識別情報)、22…共通記号(識別情報、方向識別情報)、30…加工部(加工手段)、40…部品支持部(加工部品支持手段)、50…積層支持部、60…桟部材支持部(桟部材支持手段)、70…積込部(積込手段、移動手段)、71…保持機器(接触部)、72…撮像機器(情報入力装置)、73…動作機器(動作部)、80…残材回収部、90…制御部(配置記憶手段)