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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071515
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/08 20240101AFI20240517BHJP
   G06Q 10/047 20230101ALI20240517BHJP
【FI】
G06Q10/08
G06Q10/047
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047888
(22)【出願日】2024-03-25
(62)【分割の表示】P 2020554963の分割
【原出願日】2019-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2018205186
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】516314228
【氏名又は名称】丸市倉庫株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【弁理士】
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】堀内 信
(57)【要約】
【課題】所定商品の在庫を時間的かつ空間的に管理し、所定商品を在庫として保有する固定体や移動体を在庫拠点とすることで、短納期や即納期の要請、コストセーブの要請、及び品質維持の要請に柔軟に対応させた物流を実現させることを課題とする。
【解決手段】所定商品の在庫拠点を、時間的かつ空間的に管理して、前記所定商品の運送を効率化させる運送ルートを提案する情報処理装置における取得制御部104は、第1タイミングにおける、地域Aに存在する在庫拠点Kの位置と在庫とに関する第1情報を取得する制御を実行する。また、取得制御部104は、第1タイミングよりも後の第2タイミングにおける、地域Aに存在する在庫拠点Kの位置と在庫とに関する第2情報を取得する制御を実行する。生成部105は、取得された第1情報と第2情報とに基づいて、商品Iを効率良く運送することが可能となる運送ルートを生成する。これにより、上記の課題を解決する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定商品の在庫拠点を、時間的かつ空間的に管理して、前記所定商品の運送を効率化させる運送ルートを提案する情報処理装置であって、
前記所定商品を一定時間以上保持する1以上の保持施設、当該所定商品を搭載して移動する1以上の移動体であって管理されているものの夫々について、第1タイミングにおける所定空間内の当該保持施設及び当該移動体の夫々の存在場所を前記在庫拠点として、当該第1タイミングにおける、前記所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第1情報を取得する第1取得手段と、
第1タイミングよりも後の第2タイミングにおける、前記所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第2情報を取得する第2取得手段と、
取得された前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記第1タイミングと比較して前記第2タイミングにおいて前記在庫が一定以上減少している前記在庫拠点に対して、1以上の他の前記在庫拠点から前記所定商品を補充することが可能となる運送ルートを生成する生成手段と、
所定空間を有する所定場所又は所定移動体を前記在庫拠点に含めてもらうことの立候補を受け付けて、当該所定場所又は当該所定移動体を新たな前記在庫拠点として管理する拠点立候補受付手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記第1取得手段は、前記第1タイミングにおいて、さらに、納期に関する情報を含む前記第1情報を取得し、
前記第2取得手段は、前記第2タイミングにおいて、さらに、納期に関する情報を含む前記第2情報を取得し取得する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
所定商品の在庫拠点を、時間的かつ空間的に管理して、前記所定商品の運送を効率化させる運送ルートを提案する情報処理装置が実行する情報処理方法において、
前記所定商品を一定時間以上保持する1以上の保持施設、当該所定商品を搭載して移動する1以上の移動体であって管理されているものの夫々について、第1タイミングにおける所定空間内の当該保持施設及び当該移動体の夫々の存在場所を前記在庫拠点として、当該第1タイミングにおける、前記所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第1情報を取得する第1取得ステップと、
第1タイミングよりも後の第2タイミングにおける、前記所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第2情報を取得する第2取得ステップと、
取得された前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記第1タイミングと比較して前記第2タイミングにおいて前記在庫が一定以上減少している前記在庫拠点に対して、1以上の他の前記在庫拠点から前記所定商品を補充することが可能となる運送ルートを生成する生成ステップと、
所定空間を有する所定場所又は所定移動体を前記在庫拠点に含めてもらうことの立候補を受け付けて、当該所定場所又は当該所定移動体を新たな前記在庫拠点として管理する拠点立候補受付ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項4】
所定商品の在庫拠点を、時間的かつ空間的に管理して、前記所定商品の運送を効率化させる運送ルートを提案するコンピュータに、
前記所定商品を一定時間以上保持する1以上の保持施設、当該所定商品を搭載して移動する1以上の移動体であって登録されているものの夫々について、第1タイミングにおける所定空間内の当該保持施設及び当該移動体の夫々の存在場所を前記在庫拠点として、当該第1タイミングにおける、前記所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第1情報を取得する第1取得ステップと、
第1タイミングよりも後の第2タイミングにおける、前記所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第2情報を取得する第2取得ステップと、
取得された前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記第1タイミングと比較して前記第2タイミングにおいて前記在庫が一定以上減少している前記在庫拠点に対して、1以上の他の前記在庫拠点から前記所定商品を補充することが可能となる運送ルートを生成する生成ステップと、
所定空間を有する所定場所又は所定移動体を前記在庫拠点に含めてもらうことの立候補を受け付けて、当該所定場所又は当該所定移動体を新たな前記在庫拠点として管理する拠点立候補受付ステップと、
を含む制御処理を実行するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、荷主から顧客に対する商品の配送は、物流契約等の物流ルールに基づいて行われている。典型的な物流契約では、配送料と、受注の締め時間等が定められており、例えば図7に示すような配送が行われる。即ち、従来の物流ルールに基づいた商品の配送は、顧客による商品の注文、荷主による注文の集計、物流(例えば運送業者等)による梱包作業及び配送の順で行われる。
また、物流拠点となる倉庫で保有される在庫を管理する技術は従来から存在する。例えば、特許文献1には、店舗が受注した顧客からの製品の注文に対して在庫製品を引当て、店舗に注文に対する引当結果及び納期を送信する物流管理システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-136704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、物流拠点が複数存在し、かつ、その複数の物流拠点の夫々に同一種類の商品が在庫として保有されている場合には、各物流拠点の在庫の一括管理、及び当該商品の適切な物流拠点間の移送を管理することができない。
さらに、特許文献1に記載された技術を含め、従来の技術では、物流拠点は運送業者等が保有する大型建造物であることが前提となっている。このため、少量の商品を在庫として保有する店舗や、商品を運送するために移動中のトラックそのものが物流拠点になり得ることを想定していない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、所定商品の在庫を時間軸と空間軸とで管理し、所定商品を在庫として保有する固定体や移動体を在庫拠点とすることで、短納期や即納期の要請、コストセーブの要請、及び品質維持の要請に柔軟に対応させた物流を実現させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様である情報処理装置は、
所定商品の在庫拠点を、時間軸と空間軸とで管理して、前記所定商品の運送を効率化させる運送ルートを提案する情報処理装置であって、
第1タイミングにおける、所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第1情報を取得する第1取得手段と、
第1タイミングよりも後の第2タイミングにおける、前記所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第2情報を取得する第2取得手段と、
取得された前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記所定商品を効率良く運送することが可能となる運送ルートを生成する生成手段と、
を備える。
【0007】
また、前記第1手段は、前記第1タイミングにおいて、さらに、納期に関する情報を含む前記第1情報を取得し、
前記第2手段は、前記第2タイミングにおいて、さらに、納期に関する情報を含む前記第2情報を取得し取得することができる。
【0008】
また、前記在庫拠点として管理されることについての立候補と、前記立候補の対象となる空間に関する空間情報とを受け付ける受付手段と、
受け付けられた前記立候補の内容と、前記空間情報とに基づいて、前記空間が前記在庫拠点として管理できるか否かを決定する決定手段と、
をさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定商品の在庫を時間軸と空間軸とで管理し、所定商品を在庫として保有する固定体や移動体を在庫拠点とすることで、短納期や即納期の要請、コストセーブの要請、及び品質維持の要請に柔軟に対応させた物流を実現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1(A)】本発明の情報処理装置の一実施形態であるサーバが実行する各種処理により実現できる在庫拠点管理サービスの概要を示すイメージ図である。
図1(B)】本発明の情報処理装置の一実施形態であるサーバが実行する各種処理により実現できる在庫拠点管理サービスの概要を示すイメージ図である。
図1(C)】本発明の情報処理装置の一実施形態であるサーバが実行する各種処理により実現できる在庫拠点管理サービスの概要を示すイメージ図である。
図2】本発明の情報処理装置の一実施形態に係るサーバを含む、情報処理システムの構成を示す図である。
図3図2のサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4図3のサーバの機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5(A)】企業が製造販売する商品について、第1タイミングを「夏」とした場合における、各在庫拠点の在庫を示す図である。
図5(B)】企業が製造販売する商品について、第2タイミングを「冬」とした場合における、各在庫拠点の在庫を示す図である。
図6図1(A)乃至図1(C)に示す在庫拠点に、他の在庫拠点を加えた例を示す図である。
図7】従来からある、物流契約に基づいた商品の配送の流れを示す図である。
図8】本サービスにより実現される商品の配送の流れを示す図である。
図9】従来からある、物流契約に基づいた商品の配送の流れを示す図である。
図10】商品の品質維持を図りながら、急激な需要変動に柔軟に対応できる本サービスの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0012】
[サービス内容]
図1(A)乃至(C)は、本発明の情報処理装置の一実施形態であるサーバが実行する各種処理により実現できる在庫拠点管理サービス(以下、「本サービス」と呼ぶ)の概要を示すイメージ図である。
【0013】
(前提)
図1(A)乃至(C)の夫々に示す地域Aには、物流センターC1と、倉庫W1及びW2と、店舗M1乃至M6と、トラックT1乃至T5の夫々が存在する。
なお、以下、倉庫W1及びW2、店舗M1乃至M6、トラックT1乃至T5の夫々を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて、「倉庫W」、「店舗M」、「トラックT」の夫々と呼ぶ。
【0014】
物流センターC1は、運送業者L(図示せず)が保有する、東日本の需要者宛の商品Iを在庫として保有する大規模な在庫拠点である。なお、図示はしないが、西日本の需要者宛の商品Iを在庫として保有する物流センターC2(図示せず)も存在する。
ここで、「在庫拠点」とは、商品Iの需要者に対し、商品Iを効率良く配送するために、商品Iを在庫として保有する拠点のことをいう。以下、図示はしないが、上述の物流センターCや後述する倉庫W等を含め、このような拠点のことを「在庫拠点K」と呼ぶ。在庫拠点Kは、需要者に対する効率的な配送を実現すべく、一定範囲の地域内に複数存在する。在庫拠点Kは、商品Iを保管することができる空間であればよい。例えば、倉庫等の建物の内部、トラック等の車両の荷台等は、いずれも在庫拠点Kの一例である。
【0015】
倉庫W1及びW2は、運送業者Lが保有する、地域Aの需要者宛の商品Iを在庫として保有する小規模な在庫拠点Kである。倉庫W1は、地域Aの東側の地区(以下、「東地区」と呼ぶ)の運送を管轄し、倉庫W2は、地域Aの西地区の運送を管轄している。倉庫W1及びW2が保有する在庫は、通常であれば、物流センターC1から運送されてきたものとなる。
【0016】
店舗M1乃至M6は、地域Aの需要者に対し商品Iを販売する小売店舗であり、このうち店舗M1乃至M3は、地域Aの東地区に所在し、店舗M4乃至M6は、地域Aの西側の地区(以下、「西地区」と呼ぶ)に所在する。店舗M1乃至M3の夫々が販売する商品Iは、通常時は倉庫W1から運送される。また、店舗M4乃至M6の夫々が販売する商品Iは、通常時は倉庫W2から運送される。
【0017】
トラックT1乃至T5は、商品Iを運送するトラックである。
トラックT1は、商品Iの製造者(図示せず)と、物流センターC1との間における、商品Iの運送を担当する大型のトラックである。
トラックT2は、物流センターC1と倉庫W1との間における、商品Iの運送を担当する中型のトラックである。
トラックT3は、物流センターC1と倉庫W2との間における、商品Iの運送を担当する中型のトラックである。
トラックT4は、倉庫W1と、店舗M1乃至W3との間における、商品Iの運送を担当する小型のトラックである。
トラックT5は、倉庫W2と、店舗M4乃至W6との間における、商品Iの運送を担当する小型のトラックである。
【0018】
(従来型の在庫管理)
図1(A)は、従来型の在庫管理を示すイメージ図である。
地域Aにおける商品Iの運送は、商品Iの製造者D(図示せず)、物流センターC1、倉庫W1及びW2、店舗M1乃至M6の順で運送される。このため、従来型の在庫管理では、店舗M1乃至M6の在庫管理は、店舗M1乃至M6の夫々が独自に行っていた。
例えば、店舗M1において、ある年の8月の第1週の商品Iの販売見込が100個である場合には、店舗M1の在庫管理の一例として、その前月(7月)末の時点で、在庫が少なくとも100個になるように管理されていた。即ち、7月20日時点の店舗M1の在庫が80個であれば、7月の末日までに少なくとも20個を追加して在庫とするといった管理が行われていた。この場合、店舗M1は、製造者Dに対し、又は運送業者Lが商品Iの仲買人であれば運送業者Lに対し、7月の末日までに20個を納品するよう発注する。ここで、受注者が製造者Dである場合には、発注を受けた製造者Dは、運送業者Lに対し、20個の商品Iを、店舗M1宛で、7月の末日までに運送するよう依頼する。そして、製造者Dからの依頼を受けた運送業者Lは、地域Aの東地区を管轄する倉庫W1の在庫を確認し、在庫が十分にあれば、20個の商品Iを、倉庫W1から店舗M1に、7月の末日までに運送する運送スケジュールを立案する。これに対し、倉庫W1の在庫確認の結果、倉庫W1に十分な在庫がなければ、運送業者Lは、20個の商品Iを、7月の末日までに、物流センターC1、倉庫W1、店舗M1の順で運送する運送スケジュールを立案する。あるいは、倉庫W2に十分な在庫がある場合には、運送業者Lは、通常の運送ルートから外れることになるが、20個の商品Iを、7月の末日までに、倉庫W2から店舗M1に運送する運送スケジュール-を立案することもある。
このように、従来型の在庫管理では、店舗M1乃至M6の在庫管理は、店舗M1乃至M6の夫々が独自に行い、倉庫W1、倉庫W2、及び物流センターC1の在庫管理は、製造者Dの依頼、又は店舗M1乃至M6からの発注に基づき運送業者Lが行っていた。
【0019】
(本サービスによる在庫管理)
しかしながら、上述の例ように、7月末の時点の店舗M1の在庫が十分に確保されていない場合であっても、店舗M1と同じ地域Aの東地区に所在する店舗M2の在庫が有り余っていることがある。このようなときには、倉庫W1から店舗M1に不足分の商品Iを運送したり、物流センターC1から倉庫W1を介して店舗M1に不足分の商品Iを運送したりすることは迂遠となる。それよりも、店舗M2から店舗M1に不足分の商品Iを運送した方が、コストもかからず簡便である。
そこで、本サービスによれば、従来の在庫管理の手法では実現することができなかった、物流センターC、倉庫W、店舗M、さらにはトラックTを含む在庫管理をトータルで行うことが可能になる。
具体的には、本サービスでは、商品Iの在庫を時間的かつ空間的に管理し、商品Iを在庫として保有する固定体(例えば物流センターC1、倉庫W1及びW2、店舗M1乃至M6)や移動体(例えばトラックT1乃至T5)を、いずれも在庫拠点Kとして認識する。そして、全ての在庫拠点Kの在庫は、リアルタイムで管理されている。このため、店舗M1乃至M6の夫々の販売スケジュールに突発的な変更が生じた場合であっても、いずれかの在庫拠点Kから商品Iが効率良く補充される柔軟な運送スケジュールが立案される。その結果、短納期や即納期の要請に対応させた物流が実現する。
【0020】
本サービスによれば、商品Iの在庫を時間的かつ空間的にリアルタイムで管理される。例えば、図1(B)には、地域Aにおける、ある日の午後3:00の時点の在庫拠点K毎の位置と在庫とが示されている。また、図1(C)には、地域Aにおける、同日の午後4:00の時点の在庫拠点K毎の位置と在庫とが示されている。即ち、1時間という時間を隔てた2つのタイミングにおける、同地域(地域A)の在庫拠点毎の場所と在庫とが示されている。
【0021】
図1(B)に示すタイミングe1(午後3:00の時点)における各在庫拠点Kの在庫は、物流センターC1が50個、倉庫W1が200個、倉庫W2が250個、店舗M1乃至M6が夫々80個、120個、60個、90個、100個、50個であり、トラックT1乃至T5が夫々300個、100個、0個、50個、50個である。在庫が0(ゼロ)であるトラックT1及びT3は、いずれも商品Iの運送が完了し、帰りの途中の状態となっている。なお、図1(B)及び(C)において、各在庫拠点Kに表示されている数字は、その在庫拠点Kの在庫を示している。
【0022】
また、図1(B)に示すタイミングe1から1時間が経過した図1(C)に示すタイミングe2(午後4:00の時点)における各在庫拠点Kの在庫は、物流センターC1が350個、倉庫W1が300個、倉庫W2が250個、店舗M1乃至M6が夫々125個、10個、40個、0個、90個、20個であり、トラックT1乃至T5が夫々0個、0個、0個、0個、50個である。
【0023】
このように、各在庫拠点Kの在庫に変化が生じているのは、1時間の間に、各在庫拠点Kで以下のような事象が生じたためである。
即ち、各在庫拠点Kのうち、物流センターC1では、製造者Dから出荷された300個の商品Iを積載したトラックT1が到着したため、在庫が50個から350個に増加した。
また、倉庫W1及びW2のうち、倉庫W1では、物流センターC1から出荷された100個の商品Iを積載したトラックT2が到着したため、在庫が200個から300個に増加した。倉庫W2では、在庫の変化はなかった。
また、店舗M1乃至M6のうち、店舗M1では、50個の納品があったとともに5個売れたため在庫が80個から125個に増加した。店舗M2では、110個売れたため在庫が120個から10個に大幅に減少した。店舗M3では、20個売れたため在庫が60個から40個に減少した。店舗M4では、完売したため在庫がなくなった。店舗M5では、10個売れたため在庫が100個から90個に減少した。店舗M6では、30個売れたため在庫がなくなった。
また、トラックT1乃至T5のうち、トラックT1は、製造者Dから運送してきた300個すべてを物流センターC1で荷卸ししたため、在庫がなくなった。トラックT2は、物流センターC1から運送してきた100個をすべて倉庫W1で荷卸ししたため、在庫がなくなった。トラックT3は、倉庫W2から物流センターC1への帰り道であることに変わりはないため、在庫は0個のままである。トラックT4は、倉庫W1から運送してきた50個すべてを店舗M1で荷卸ししたため、在庫がなくなった。トラックT5は、倉庫W2から店舗M6に向けて50個を運送する途中であることに変わりがないため、在庫は50個のままである。
【0024】
ここで、午後4:00の時点で、東地区の店舗M2の在庫が10個に減少しているため、店舗M2の在庫を大至急補充しなければならない場合を想定する。
この場合、通常の運送ルートで在庫を補充するのであれば、店舗M2は、倉庫W1から商品IをトラックT4で運送してもらうことになる。しかしながら、トラックT4は、倉庫W1に帰る途中であるため、倉庫W1から店舗M2に向けて直ちに出発することができない。
そこで、店舗M2に比較的近い位置に所在する店舗M1の在庫の一部を、トラックT4で運送することにより、店舗M2の在庫を補充することができる。具体的には、店舗M1の在庫は、午後4:00の時点で125個であるが、例えばこのうち一部について、トラックT4で運送する運送ルートを生成することができる。
このように、各店舗の在庫も含めた在庫管理をリアルタイムで行うことができるため、各店舗における在庫の急激な変化に柔軟に対応することができる。
【0025】
また、午後4:00の時点で、西地区の店舗M4の在庫が0(ゼロ)個になっているため、店舗M4の在庫を大至急補充しなければならない場合を想定する。
この場合、通常の運送ルートで在庫を補充するのであれば、店舗M4は、倉庫W2の在庫の一部をトラックT5で運送してもらうことになる。しかしながら、トラックT5は、店舗M6に向けて運送中であるため、倉庫W2から店舗M4に向けて直ちに出発することができない。
ここで、本サービスでは、商品Iを運送する際の納期についても管理する。例えば、午後4:00の時点で、トラックT5は店舗M6に向けて運送中であるが、トラックT5が運送している50個の商品Iの納期に余裕があれば、トラックT5の行先を店舗M6から店舗M4に変更することもできる。これにより、トラックT5の在庫の一部を店舗M4で荷卸しすることができるので、店舗M4の在庫を補充することができる。即ち、トラックT5が積載している50個の商品Iの一部を、店舗M4の在庫の補充に用いることができる。具体的には、トラックT5の在庫は、午後4:00の時点で50個であるが、例えばこのうち一部について、店舗M4で荷卸しできる運送ルートを生成することができる。
このように、運送中のトラックが積載している荷物についても在庫としてリアルタイムで管理することができるとともに、その納期も一括で管理することができるため、各店舗における在庫の急激な変化に、より柔軟に対応することができる。
【0026】
さらに、本サービスには、現在は在庫拠点Kに含まれていないものの、今後、在庫拠点Kに含めてもらうことを立候補することができる立候補受付サービスが含まれる。
例えば、自宅に空いている部屋があれば、これらを在庫拠点Kとして立候補することもできるし、利用されていない空き家を買い上げて在庫拠点Kとして立候補することもできる。さらに、自家用車を在庫拠点Kとして立候補することもできる。
立候補受付サービスにより、在庫拠点Kが増加すれば、各店舗の在庫、運送中のトラックに加え、あらゆる在庫拠点Kをリアルタイムで管理することができるため、各店舗における在庫の急激な変化に、さらに柔軟に対応することができる。また、利用されていない空き家等の問題も解消し得る。
なお、本サービスの提供を実現させるための各種処理を実行するサーバ1が備える機能の詳細については、図4を参照して後述する。
【0027】
[システム構成]
次に、本サービスを提供するための各種処理を実行するサーバ1を含む、情報処理システムの構成について説明する。
図2は、本発明の情報処理装置の一実施形態に係るサーバを含む、情報処理システムの構成を示す図である。
【0028】
図2に示す情報処理システムは、サーバ1と、拠点端末2-1乃至2-n(nは1以上の任意の整数値)とが、インターネット等の所定のネットワークNを介して相互に接続されることで構成される。
【0029】
本実施形態における拠点端末2-1乃至2-nの夫々は、在庫拠点K1乃至Knの夫々に設置された情報処理装置であり、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等で構成される。拠点端末2-1乃至2-nの夫々は、在庫拠点K1乃至Knの夫々の担当者によって操作される。拠点端末2-1乃至2-nの夫々には、在庫拠点Kが管轄する配送地域における所定商品の在庫情報と、納期情報とが記憶されている。ここで、「在庫情報」とは、在庫拠点K1乃至Knの夫々における在庫の流れに関する情報のことをいう。「納期情報」とは、在庫拠点K1乃至Knの夫々における在庫の納期に関する情報のことをいう。
なお、以下、在庫拠点K1乃至Kn、拠点端末2-1乃至2-nの夫々を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて、「在庫拠点K」、「拠点端末2」の夫々と呼ぶ。
【0030】
このように、拠点端末2には、在庫拠点Kにおける在庫情報と納期情報とが蓄積されて記憶されている。サーバ1は、拠点端末2に蓄積された在庫情報と納期情報とを取得して、複数の在庫拠点Kの夫々で保持されている所定商品の在庫を、時間的かつ空間的に管理することにより、効率的かつ柔軟な物流を実現させる。
具体的には、サーバ1は、拠点端末2-1乃至2-nの夫々から、在庫拠点K1乃至Knの夫々における在庫情報と納期情報と取得し、これらの情報に基づいて、最も効率良く運送することができる運送ルートを生成する。これにより、短納期や即納期の要請に柔軟に対応させた物流を実現させることができる。
【0031】
[ハードウェア構成]
次に、本サービスを提供するための各種処理を実行するサーバ1のハードウェア構成について説明する。
図3は、図2のサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
【0032】
サーバ1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、入力部16と、出力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20とを備えている。
【0033】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0034】
CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、入力部16、出力部17、記憶部18、通信部19及びドライブ20が接続されている。
【0035】
なお、図示はしないが、拠点端末2も図3に示すハードウェア構成を有している。
【0036】
入力部16は、各種ハードウェア鉛等で構成され、各種情報を入力する。
出力部17は各種液晶ディスプレイ等で構成され、各種情報を出力する。
記憶部18は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置(例えば図2の拠点端末2-1乃至2-n)との間で行う通信を制御する。
【0037】
ドライブ20は、必要に応じて設けられる。ドライブ20には磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア30が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア30から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。またリムーバブルメディア30は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0038】
[機能的構成]
次に、このようなハードウェア構成を持つサーバ1の機能について、図4を参照して説明する。
図4は、図3のサーバの機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0039】
図4に示すように、サーバ1のCPU11においては、在庫拠点管理処理が実行される場合には、位置取得部101と、在庫取得部102と、納期取得部103と、取得制御部104と、生成部105とが機能する。立候補受付処理が実行される場合には、受付部106と、決定部107とが機能する。
記憶部18の一領域には、拠点DB401と、納期DB402とが設けられている。
【0040】
位置取得部101は、各在庫拠点Kの現在位置に関する情報(以下、「現在地情報」と呼ぶ)を取得する。取得された現在地情報は、拠点DB401に記憶されて管理される。
なお、位置取得部101が各在庫拠点Kの現在地情報を取得する具体的手法は特に限定されない。例えば、拠点端末2のGPS(Global Positioning System)機能を利用することで拠点端末2の位置情報を取得する手法を用いてもよい。また、拠点端末2に記憶されている運行計画から、各在庫拠点Kの現在位置を推定する手法を用いてもよいし、その他の手法を用いてもよい。
【0041】
在庫取得部102は、各在庫拠点Kの在庫情報を取得する。取得された在庫情報は、拠点DB401に記憶されて管理される。
なお、在庫取得部102が各在庫拠点Kの在庫情報を取得する具体的手法は特に限定されない。例えば、拠点端末2に記憶された在庫情報を取得する手法を用いてもよいし、その他の手法を用いてもよい。
【0042】
納期取得部103は、各在庫拠点Kの納期情報を取得する。取得された納期情報は、拠点DB401に記憶されて管理される。
なお、納期取得部103が各在庫拠点Kの納期情報を取得する具体的手法は特に限定されない。例えば、拠点端末2に記憶された納期情報を取得する手法を用いてもよいし、その他の手法を用いてもよい。
【0043】
取得制御部104は、第1タイミングにおける、所定空間に存在する在庫拠点Kの位置と在庫と納期とに関する第1情報を取得する。また、取得制御部104は、第1タイミングよりも後の第2タイミングにおける、所定空間に存在する在庫拠点Kの位置と在庫と納期とに関する第2情報を取得する。具体的には、取得制御部104は、任意のタイミングで、位置取得部101と、在庫取得部102と、納期取得部103との夫々が、現在地情報と、在庫情報と、納期情報との夫々を取得する制御を実行する。
【0044】
生成部105は、取得された第1情報と第2情報とに基づいて、所定商品を効率良く運送することが可能となる運送ルートを生成する。具体的には、生成部105は、取得制御部104により取得された現在地情報と、在庫情報と、納期情報とに基づいて、商品Iを効率良く運送することが可能となる運送ルートを生成する。
【0045】
受付部106は、在庫拠点Kとして管理されることについての立候補と、立候補の対象となる空間に関する空間情報とを受け付ける。具体的には、在庫拠点Kとして管理されることについての立候補があった場合に、立候補と、立候補の対象となる空間に関する情報を受け付ける。
【0046】
決定部107は、受け付けられた立候補の内容と、空間情報とに基づいて、空間が在庫拠点Kとして管理できるか否かを決定する。具体的には、決定部107は、受付部106により受け付けられた立候補の内容と、空間情報とに基づいて、対象となる空間が在庫拠点Kとして管理できるか否かを決定する。決定にあたっては、空間の位置、大きさ、範囲、所有者、管理者、環境、管理能力といった情報が考慮されるとともに、必要に応じてサービス提供者による現地調査が実施される。
決定部107により、立候補の対象となる空間が在庫拠点Kとして管理できる旨が決定されると、立候補の対象となる空間は、本サービスに置いて在庫拠点Kとして管理されることとなる。
なお、上述したように、立候補の対象となる空間は、倉庫やトラックに限らず、例えば自宅に空いている部屋があれば、これを立候補の対象とすることもできる。また、利用されていない空き家を買い上げて、これを在庫拠点Kとして立候補することもできる。さらに、自家用車を在庫拠点Kとして立候補することもできる。
【0047】
拠点DB401には、在庫拠点Kに関する各種情報が記憶されている。具体的には、現在地情報、在庫情報等が記憶されている。
【0048】
納期DB402には、納期に関する各種情報が記憶されている。具体的には、各在庫拠点Kにおける在庫情報に対応付けられた納期情報が記憶されている。
以上のような機能的構成を有するサーバ1により、上述の各種処理が実行される。これにより、商品Iの在庫を時間的かつ空間的に管理することができる。その結果、短納期や即納期の要請に柔軟に対応させた物流を実現させることができる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0050】
例えば、上述した実施形態では、各在庫拠点Kにおける在庫情報等の各種情報の取得を、午後3:00(タイミングe1)と午後4:00(タイミングe2)との2回行っているが、これは例示にすぎない。本実施形態のように、1時間を隔てた前後で各種情報を取得するようにしてもよいし、30分、10分、1分、あるいは1秒間隔で各種情報を取得するようにしてもよい。リアルタイムで取得してもよい。また、1日、1週間、1カ月、四半期、季節、半年、1年といった間隔で各種情報を取得するようにしてもよい。
【0051】
図5(A)は、企業Fが製造販売する商品Gについて、第1タイミングを「夏」とした場合における、各在庫拠点Kの在庫を示す図である。
図5(B)は、企業Fが製造販売する商品Gについて、第2タイミングを「冬」とした場合における、各在庫拠点Kの在庫を示す図である。
【0052】
商品Gは、夏は気温の高い地域で売れ行きが良く、冬は気温の低い地域で売れ行きが良い商品である。
各在庫拠点Kは、図5(A)及び(B)に示すように、東エリアEAと西エリアWAとに分かれて複数存在し、夫々管理されている。このうち、比較的冷涼な気候の東北地方を中心とする東エリアEAには、在庫拠点Kとして、物流センターC1、倉庫W1及びW2、及び店舗M1乃至M3が夫々存在する。また、比較的温暖な近畿地方を中心とする西エリアWAには、在庫拠点Kとして、物流センターC2、倉庫W3、及び店舗M4及びM5が夫々存在する。
【0053】
図5(A)は、ある年の夏のある日における、東エリアEAと西エリアWAとの夫々の各在庫拠点Kの在庫を示す図である。ここで、企業Fは、商品Gの過去の販売実績から、夏は気温の高い地域で売れ行きが良いことを認識していた。このため、企業Fは、夏が始まる前に、西エリアWAに存在する在庫拠点Kに多くの在庫を確保した。しかしながら、この年、西エリアWAは、記録的な猛暑に見舞われたこともあり、商品Gの需要は企業Fの当初の予想を大きく上回るものとなった。その結果、図5(A)に示すように、西エリアWAに存在する各拠点Kの在庫は、物流センターC2が50個、倉庫W3が20個、店舗M4が5個、店舗M5が10個となった。
これに対し、東エリアEAでは、例年の暑さはなく、過ごしやすい夏となったこともあり、商品Gの売れ行きは当初の予想を下回るものとなった。その結果、図5(A)に示すように、東エリアEAに存在する各拠点Kの在庫は、物流センターC1が300個、倉庫W1が150個、倉庫W2が200個、店舗M1が70個、店舗M2が80個、店舗M3が60個となった。
このように、図5(A)の例では、東エリアEAに存在する各拠点Kの在庫に比べ、西エリアWAに存在する各拠点Kの在庫が極端に少なくなった。
この場合、在庫に余裕のある東エリアEAの各在庫拠点Kから、在庫に余裕のない西エリアWAの在庫拠点Kに向けて、商品Gを効率良く補充するための運送スケジュールが立案される。
【0054】
図5(B)は、ある年の冬のある日における、東エリアEAと西エリアWAとの夫々の各在庫拠点Kの在庫を示す図である。ここで、企業Fは、商品Gの過去の販売実績から、冬は気温の低い地域で売れ行きが良いことを認識していた。このため、企業Fは、冬が始まる前に、東エリアEAに存在する在庫拠点Kに多くの在庫を確保した。しかしながら、この年、東エリアEAは、大寒波に見舞われたこともあり、商品Gの売れ行きは当初の予想を大きく上回るものとなった。その結果、東エリアEAに存在する各拠点Kの在庫は、物流センターC1が50個、倉庫W1が30個、倉庫W2が20個、店舗M1が10個、店舗M2が15個、店舗M3が5個となった。
これに対し、西エリアWAでは、例年の寒さはなく、過ごしやすい冬となったこともあり、商品Gの売れ行きは当初の予想を下回るものとなった。その結果、図5(B)に示すように、西エリアWAに存在する各拠点Kの在庫は、物流センターC2が400個、倉庫W3が150個、店舗M4が70個、店舗M5が60個となった。
このように、図5(B)の例では、西エリアWAに存在する各拠点Kの在庫に比べ、東エリアEAに存在する各拠点Kの在庫が極端に少なくなっている。
この場合、在庫に余裕のある西エリアWAの各在庫拠点Kから、在庫に余裕のない東エリアEAの在庫拠点Kに向けて、商品Gを効率良く補充するための運送スケジュールが立案される。
【0055】
また、上述した実施形態において、在庫拠点Kとして立候補できる空間の具体例として、倉庫やトラックの他に、ホテル、自宅の一部屋、空き家、自家用車、タクシー、オートバイ等を挙げることができる。
図6は、図1に示す在庫拠点Kに、他の在庫拠点Kを加えた例を示す図である。
なお、各在庫拠点Kに表示されている数字は、その在庫拠点Kの在庫を示している。
【0056】
図6に示すように、地域Aのあるタイミングにおける各在庫拠点Kの在庫は、物流センターC1が50個、倉庫W1が200個、倉庫W2が250個、店舗M1乃至M6が夫々80個、120個、60個、90個、100個、50個であり、トラックT1乃至T5が夫々300個、100個、0個、50個、50個となっている。上述したように、在庫拠点Kはこれらに限定されず、あらゆる空間を在庫拠点Kとすることができるので、例えば以下のような在庫拠点Kを地域Aに追加的に存在させることができる。即ち、自家用車J1及びJ2、タクシーY1乃至Y3、ホテルH1及びH2、自宅E1乃至E4、オートバイB1及びB2の夫々を在庫拠点Kとすることができる。
その結果、地域Aに存在する各在庫拠点Kの在庫は、上述の在庫拠点Kの在庫以外に、自家用車J1が2個、自家用車J2が2個、タクシーY1が2個、タクシーY2が2個、タクシーY3が3個、ホテルH1が60個、ホテルH2が80個、自宅E1乃至E4が夫々15個、10個、20個、5個とすることができる。
これにより、短納期や即納期の要請にさらに柔軟に対応させた物流を実現させることができる。
【0057】
また、本サービスによれば、物流契約の内容(例えば納期や費用)を遵守しながら、物流(例えば運送業者等)側で物流のデザインを行うことができる。
図7は、従来からある、物流契約に基づいた商品の配送の流れを示す図である。
図8は、本サービスにより実現される商品の配送の流れを示す図である。
【0058】
図7に示す、従来の物流契約に基づいた商品の配送の場合、例えば2.5トンの商品であれば4トン車のチャーター料金が発生し、6トンの商品であれば10トン車のチャーター料金が発生する。また、顧客から受注することができる時間帯は、物流リードタイム(ピッキングと梱包に要する作業時間、及び配送リードタイムとの合計)を逆算することで設定される。物流リードタイムの典型的な例として、東京で午前中に受注された商品は、その翌日に発送されるので、配送先が関東であれば発送日の翌日、配送先が関西であれば発送日の2日後、配送先が九州であれば発送日の3日後に到着する。
そこで、本サービスでは、図8に示すように、物流契約に定められた情報のみならず、顧客からの注文内容や、顧客の購買実績や、販売に要する時間等を含む情報が、複数の在庫拠点K(需要エリア倉庫)に集約される。そして、集約された情報(例えば納期情報)が総合的に考慮された効率的な配送が行われる。
これにより、短納期や即納期の要請やコストセーブの要請に柔軟に対応させた物流のマネジメントを物流側で実現させることができる。具体的には例えば、定期的な受注実績を有するレストランチェーン業界やスーパーマーケット業界など、季節的あるいは時期的な需要を読むことができる業界等では、物流のマネジメントを物流側で行うことが特に容易となる。
このため、従来の物流契約に基づいた商品の配送の場合、例えば6トンの発注に対して10トン車が手配されるので、4トン分の貨物スペースが空荷の状態になる。この空荷の状態が積載効率を悪くする要因の1つであった。
これに対して、本サービスによれば、物流側で物流がマネジメントされることで、空荷の状態にならない最大積載量による配送が実現される。具体的には例えば、以下のようなマネジメントが行われる。
即ち、顧客からの注文内容や、顧客の購買実績や、販売に要する時間等に基づいて、大規模な在庫拠点K(例えば物流センターC)から、商品需要が見込まれる地域の在庫拠点K(例えば倉庫W)に所定量の商品が移送される。具体的には例えば、3日分や1週間分など、商品需要が見込まれる地域の在庫拠点K(例えば倉庫W)の受入可能数に応じた量の商品が事前に移送される。
これにより、商品の移送先である在庫拠点K(例えば倉庫W)で梱包と配送とが行われるので、短納期や即納期の要請、及びコストセーブの要請に柔軟に対応させた物流を実現させることができる。
【0059】
また、本サービスによれば、短納期や即納期の要請、コストセーブの要請のみならず、商品の品質維持の要請に柔軟に対応させた物流マネジメントを、物流側で実現させることができる。
図9は、従来からある、物流契約に基づいた商品の配送の流れを示す図である。
【0060】
従来の物流契約に基づいた商品の配送は、東京の物流センターCから、商品が需要される地域の倉庫W1乃至W3の夫々に個別に配送されるものであった。このため、商品の品質の維持(例えば鮮度管理)は、配送地域を限定することで徹底されていた。
しかしながら、近年、個人の顧客による購買の手法に変化が現れ、いわゆるインフルエンサー等によりSNS(Social Networking Service)、TV(テレビジョン)等で紹介された商品の需要が急激に伸びる傾向にある。また、近年の自然環境は、商品需要に大きな影響を与える気候変動が生じ易い状況にある。このようなことから、倉庫W1乃至W3における在庫管理が予測困難な状況にある。
具体的には例えば、従来であれば、図9に示すように、島根県の松江市に所在する顧客に対する商品の配送は、大阪の倉庫W2から配送されていた。このため、大阪の倉庫W2の在庫に不足が出た場合には、まず、東京の物流センターCから大阪の倉庫W2に商品を移送することで大阪の倉庫W2の在庫が補充され、その後、大阪の倉庫W2から松江市の顧客に商品が届けられていた。このような商品配送の形態は、荷主と物流会社との間で締結される物流契約等で、物流費とともに物流ルールとして定められていた。即ち、仮に東京よりも距離的に松江市に近い九州の倉庫W3の在庫に十分な余裕があったとしても、物流側が独断で九州の倉庫W3から松江市の顧客に商品を配送することは、物流ルールに背くことになるおそれがあるため、行われていない状況にあった。
【0061】
ただし、本サービスによれば、物流ルールの範囲内で、在庫拠点K間の在庫状況に基づいた柔軟な対応が可能となるため、商品の品質維持を図りながら、上述した急激な需要変動に容易に対応することができる。
図10は、商品の品質維持を図りながら、急激な需要変動に柔軟に対応できる本サービスの具体例を示す図である。
【0062】
図10には、東京に所在する物流センターCと、大阪に所在する倉庫W2と、九州に所在する倉庫W3と、四国に所在する倉庫W4と、松江市に所在する顧客とが描画されている。また、あるタイミング(9月1日)における、物流センターC及び倉庫W2乃至W4の夫々の在庫情報と、顧客の購買履歴とが示されている。
即ち、9月1日の時点で、物流センターCの在庫は全部で25000ケースであり、その内訳は、賞味期限を10月20日とするものが10000ケース、賞味期限を10月3日とするものが10000ケース、賞味期限を9月15日とするものが5000ケースとなっている。
また、大阪の倉庫W2の在庫は全部で2100ケースであり、その内訳は、賞味期限を9月15日とするものが2000ケース、賞味期限を9月4日とするものが100ケースとなっている。
また、九州の倉庫W3の在庫は全部で1500ケースであり、その内訳は、賞味期限を10月20日とするものが1000ケース、賞味期限を9月15日とするものが500ケースとなっている。
また、四国の倉庫W4の在庫は全部で500ケースであり、その全てが賞味期限を9月15日とするものとなっている。
なお、前提として、松江市の顧客に対する商品の配送は、本来的には四国の倉庫W4が担当しているものとする。
【0063】
ここで、9月1日(第1タイミング)に、松江市の顧客から荷主に対して、納入期日(第2タイミング)を10月12日、数量を700ケースとする大口の発注が行われたとする。
この場合、本来であれば、四国の倉庫W4から商品が配送されることになるが、納入期日が10月12日で期日指定されているため、品質管理上、賞味期限は少なくとも10月12日以降でなければならない。しかしながら、四国の倉庫W4の在庫は、全て賞味期限を9月15日とするものであるため、9月1日(第1タイミング)の時点で10月12日(第2タイミング)に納品できる商品の在庫が存在しない。このため、従来であれば、四国の倉庫W4が、遅くとも納入期日の前日である10月11日までに、賞味期限が少なくとも10月12日以降の商品を在庫として補充しなければならなかった。または、東京の物流センターから、賞味期限が10月20日の商品700ケースを直接納品するしかなかった。
これに対して、本サービスによれば、東京の物流センターCと、四国の倉庫W4との夫々の在庫情報だけではなく、在庫拠点Kとしての大阪倉庫W2と、九州倉庫W3との夫々の在庫情報についても考慮される。これにより、例えば九州の倉庫W3の在庫として存在する、賞味期限を10月20日とする商品1000ケースのうち700ケースを、松江市の顧客に直接納品することも可能となる。その結果、短納期や即納期の要請、コストセーブの要請のみならず、品質維持の要請に柔軟に対応させた物流を実現させることができる。
【0064】
また、図3に示す各ハードウェア構成は、本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。
【0065】
また、図4に示す機能ブロック図は、例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が情報処理システムに備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは、特に図4の例に限定されない。
【0066】
また、機能ブロックの存在場所も、図4に限定されず、任意でよい。例えばサーバ1側の機能ブロックの少なくとも一部を拠点端末2側に設けてもよいし、その逆でもよい。
そして、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体との組み合わせで構成してもよい。
【0067】
各機能ブロックの処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
【0068】
このようなプログラムを含む記録媒体は、各ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される、リムーバブルメディアにより構成されるだけではなく、装置本体に予め組み込まれた状態で各ユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0069】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に添って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0070】
以上まとめると、本発明が適用される情報処理装置は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される情報処理装置(例えば図2のサーバ1)は、
所定商品(例えば商品I)の在庫拠点(例えば在庫拠点K)を、時間的かつ空間的に管理して、前記所定商品の運送を効率化させる運送ルートを提案する情報処理装置であって、
第1タイミング(例えば図1(B)のPM3:00の時点)における、所定空間(例えば図1の地域A)に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第1情報(例えば現在地情報及び在庫情報)を取得する第1取得手段(例えば図4の取得制御部104)と、
第1タイミングよりも後の第2タイミング(例えば図1(C)のPM4:00の時点)における、前記所定空間に存在する前記在庫拠点の位置と在庫とに関する第2情報(例えば現在地情報及び在庫情報)を取得する第2取得手段(例えば図4の取得制御部104)と、
取得された前記第1情報と前記第2情報とに基づいて、前記所定商品を効率良く運送することが可能となる運送ルートを生成する生成手段(例えば図4の生成部105)と、
を備える。
これにより、短納期や即納期の要請に柔軟に対応させた物流を実現させることができる。
【0071】
また、前記第1手段は、前記第1タイミングにおいて、さらに、納期に関する情報を含む前記第1情報を取得し、
前記第2手段は、前記第2タイミングにおいて、さらに、納期に関する情報を含む前記第2情報を取得し取得することができる。
これにより、短納期や即納期の要請にさらに柔軟に対応させた物流を実現させることができる。
【0072】
また、前記在庫拠点として管理されることについての立候補と、前記立候補の対象となる空間に関する空間情報とを受け付ける受付手段と、
受け付けられた前記立候補の内容と、前記空間情報とに基づいて、前記空間が前記在庫拠点として管理できるか否かを決定する決定手段と、
をさらに備えることができる。
これにより、あらゆる在庫拠点をリアルタイムで管理することができるため、各店舗における在庫の急激な変化に、さらに柔軟に対応することができる。また、利用されていない空き家等の問題も解消し得る。
【符号の説明】
【0073】
1:サーバ、2,2-1,2-n:拠点端末、11:CPU、12:ROM、13:RAM、14:バス、15:入出力インターフェース、16:入力部、17:出力部、18:記憶部、19:通信部、20:ドライブ、30:リムーバブルメディア、101:位置取得部、102:在庫取得部、103:納期取得部、104:取得制御部、105:生成部、106:受付部、107:決定部、401:拠点DB、402:納期DB、A:地域、C1,C2:物流センター、D:製造者、E1,E2:タイミング、I:商品、K:拠点、L:運送業者、M1乃至M6:店舗、N:ネットワーク、T1乃至T5:トラック、W1,W2:倉庫
図1(A)】
図1(B)】
図1(C)】
図2
図3
図4
図5(A)】
図5(B)】
図6
図7
図8
図9
図10