(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071536
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】耐火性樹脂組成物、及び熱膨張性シート
(51)【国際特許分類】
C09K 21/12 20060101AFI20240517BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20240517BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240517BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240517BHJP
C08K 5/521 20060101ALI20240517BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240517BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C09K21/12
C09K21/02
C08L101/00
C08K3/04
C08K5/521
C08K3/013
C08L27/06
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024048574
(22)【出願日】2024-03-25
(62)【分割の表示】P 2022130136の分割
【原出願日】2018-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【弁理士】
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】島本 倫男
(57)【要約】
【課題】長時間の耐火性に優れる耐火性樹脂組成物、及び該耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性シートを提供する。
【解決手段】本発明の耐火性樹脂組成物は、樹脂、熱膨張性黒鉛、及び難燃剤を含有する耐火性樹脂組成物であって、前記難燃剤の分解温度と前記熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差(難燃剤の分解温度-熱膨張性黒鉛の膨張開始温度)が100℃以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、熱膨張性黒鉛、及び難燃剤を含有する耐火性樹脂組成物であって、前記難燃剤の分解温度と前記熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差(難燃剤の分解温度-熱膨張性黒鉛の膨張開始温度)が100℃以上であり、前記難燃剤がリン系スピロ化合物であることを特徴とする耐火性樹脂組成物。
【請求項2】
前記難燃剤の含有量が、前記熱膨張性黒鉛の含有量に対して質量比で0.05~1である、請求項1に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項3】
前記難燃剤がリン系難燃剤及び臭素系難燃剤からなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項4】
さらに、前記難燃剤以外の有機リン系化合物を含有する、請求項1~3のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機リン系化合物がリン酸エステル系化合物である、請求項4に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに無機充填剤を含有する、請求項1~5のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項7】
前記樹脂100質量部に対して、無機充填剤を10~200質量部含有する、請求項6に記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂100質量部に対して、前記熱膨張性黒鉛を50~200質量部含有する、請求項1~7のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂がポリ塩化ビニル樹脂である、請求項1~8のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐火性樹脂組成物、及び該耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
建築分野では、防火のために、建具、柱、壁材等の建築材料に耐火材が用いられる。耐火材としては、樹脂に、難燃剤、無機充填剤などに加えて、熱膨張性黒鉛が配合された耐火シート等が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このような耐火材は、加熱により膨張して燃焼残渣が耐火断熱層を形成し、耐火断熱性能を発現する。
耐火材は、用途によって求められる性能が異なり、一般には、サッシやドアなどの防火設備は20分程度の耐火性が求められ、柱、梁、壁等に用いる場合は45~180分程度の長時間の耐火性が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱膨張性黒鉛を含有する耐火材は、比較的短時間での耐火性能は良好であるものの、長時間の炎にさらされると、熱膨張性黒鉛が徐々に灰になることで強度が低下し、これにより耐火性が低下してしまうという課題があった。
そこで、本発明は、長時間の耐火性に優れる耐火性樹脂組成物、及び該耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者は、樹脂、熱膨張性黒鉛、及び難燃剤を含む耐火性樹脂組成物において、該耐火性樹脂組成物に含有される難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差を一定以上に調整することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]樹脂、熱膨張性黒鉛、及び難燃剤を含有する耐火性樹脂組成物であって、前記難燃剤の分解温度と前記熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差(難燃剤の分解温度-熱膨張性黒鉛の膨張開始温度)が100℃以上であることを特徴とする耐火性樹脂組成物。
[2]前記難燃剤の含有量が、前記熱膨張性黒鉛の含有量に対して質量比で0.05~1である、上記[1]に記載の耐火性樹脂組成物。
[3]前記難燃剤がリン系難燃剤及び臭素系難燃剤からなる群から選択される1種以上である、上記[1]又は[2]に記載の耐火性樹脂組成物。
[4]さらに、前記難燃剤以外の有機リン系化合物を含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物。
[5]前記有機リン系化合物がリン酸エステル系化合物である、上記[4]に記載の耐火性樹脂組成物。
[6]さらに無機充填剤を含有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物。
[7]前記樹脂100質量部に対して、無機充填剤を10~200質量部含有する、上記[6]に記載の耐火性樹脂組成物。
[8]前記樹脂100質量部に対して、前記熱膨張性黒鉛を50~200質量部含有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物。
[9]前記樹脂がポリ塩化ビニル樹脂である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物。
[10]上記[1]~[9]のいずれかに記載の耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長時間の耐火性に優れる耐火性樹脂組成物、及び該耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[耐火性樹脂組成物]
本発明の耐火性樹脂組成物は、樹脂、熱膨張性黒鉛、及び難燃剤を含有し、前記難燃剤の分解温度と前記熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差(難燃剤の分解温度-熱膨張性黒鉛の膨張開始温度)が100℃以上である。なお、本明細書において、難燃剤の分解温度と前記熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差とは、難燃剤の分解温度から熱膨張性黒鉛の膨張開始温度を差し引いた値である。
本発明の耐火性樹脂組成物が長時間の耐火性に優れる理由は、定かではないが、次のように推定される。耐火性樹脂組成物に含有される熱膨張性黒鉛は、膨張開始温度以上の温度になると膨張し膨張断熱層を形成する。熱膨張性黒鉛が十分に膨張しない状態で難燃剤が分解してしまうと、膨張断熱層表面の難燃特性の均一性が保てず、膨張断熱層の形状保持性が時間と共に低下し、耐火性が悪くなる。これに対して、難燃剤の分解温度が、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度に比べて十分に高い場合は、熱膨張性黒鉛が十分に膨張したのちに、難燃剤が分解するため、膨張断熱層表面のまわりに均一な難燃層が形成される。その結果、長時間にわたって膨張断熱層の形状が保持しやすくなり、耐火性が高まるものと考えられる。
【0008】
本発明の耐火性樹脂組成物は、難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度の差が100℃以上である。難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度の差が100℃未満であると、耐火性樹脂組成物の耐火性が低下する。耐火性樹脂組成物の耐火性を向上させる観点から、難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度の差が120℃以上であることが好ましく、140℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましい。また燃焼時に難燃剤が適切に分解して、難燃効果を発現させる観点から、難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張温度の差は、500℃以下であることが好ましく、400℃以下であることがより好ましい。
【0009】
難燃剤の分解温度は、示差熱-熱重量同時測定(TG-DTA)により、難燃剤の質量が10%減少したときの温度を測定し、これを分解温度とする。
また、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は、温度調整機能及び法線方向の力を計測する装置にて、熱膨張性黒鉛を一定温度で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、法線方向の応力を測定できるものであれば限定はされないが、例えば、レオメーターを用いることができる。
【0010】
(難燃剤)
本発明の耐火性樹脂組成物に含有される難燃剤は、該難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差が100℃以上であるのものから適宜選択して使用することができる。すなわち、使用する熱膨張性黒鉛の膨張開始温度を考慮し、適宜選択することができる。
難燃剤としては、好ましくは分解温度が250~600℃、より好ましくは320~550℃、更に好ましくは350~500℃のものから選択することができる。難燃剤の分解温度がこれら下限値以上であると、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差を一定以上にしやすくなり、分解温度がこれら上限値以下であると、難燃剤が分解することにより、耐火性を向上させやすくなる。
【0011】
難燃剤の種類は、該難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差が100℃以上であれば、特に限定されるものではなく、リン系難燃剤、含窒素難燃剤、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤等から適宜選択すればよい。耐火性をより高める観点から、難燃剤としては、リン系難燃剤及び臭素系難燃剤からなる群から選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0012】
リン系難燃剤としては、使用する熱膨張性黒鉛との膨張温度との差が100℃以上のものであれば、特に制限されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリメタリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム、リン系スピロ化合物、ホスファゼン系化合物などが挙げられる。これらの中でも、高い分解温度を有し、熱膨張性黒鉛の膨張温度との差を一定以上に調整しやすい観点から、ホスファゼン系化合物、リン系スピロ化合物などがより好ましい。
リン系難燃剤は、有機リン系難燃剤、無機リン系難燃剤のいずれも用いることができるが、有機リン系難燃剤を用いることが好ましい。
ホスファゼン系化合物は、分子中に-P=N-結合を有する有機化合物である。ホスファゼン系化合物としては、比較的高い分解温度を有することより、好ましくは、下記一般式(1)で表されるものが好ましい。
【化1】
上記式(1)中、R
1~R
6はそれぞれ独立に、炭素数1~12のアルキル基、炭素数1~12のアルコキシ基、炭素数6~12のアリールオキシ基、アミノ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。
このようなホスファゼン系化合物の例としては、大塚化学社から市販されている「SPB-100」等が挙げられる。
【0013】
リン系スピロ化合物としては、リン原子を有するスピロ化合物であれば特に限定されない。なお、スピロ化合物とは、二つの環状化合物が一つの炭素を共有した構造を有する化合物であり、リン原子を有するスピロ化合物とは、上記二つの環状化合物を構成する元素の少なくとも一つがリン原子である化合物である。
リン系スピロ化合物としては、例えば、分子内に、以下の式(2)で表される構成単位を有する化合物を用いることが好ましい。
【化2】
【0014】
臭素系難燃剤としては、該難燃剤の分解温度と、使用する熱膨張性黒鉛との膨張温度との差が100℃以上のものであれば、特に制限されず、脂肪族系の臭素系難燃剤であっても、芳香族系の臭素系難燃剤であってもよい。脂肪族系の臭素系難燃剤としては、例えば、テトラブロモシクロオクタン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリスジブロモプロピルホスフェートなどが挙げられる。芳香族系の臭素系難燃剤としては、デカブロムジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、臭素化ビスフェノールA系難燃剤、臭素化ビスフェノールS系難燃剤などが挙げられる。これらの中でも、高い分解温度を有し、熱膨張性黒鉛の膨張温度との差を一定以上に調整しやすい観点から、芳香族系難燃剤が好ましく、中でも臭素化ビスフェノールA系難燃剤がより好ましい。
臭素化ビスフェノールA系難燃剤としては、少なくとも1つの水素原子が臭素原子に置換されたビスフェノールA由来の構成単位を有する化合物であればよい。臭素化ビスフェノールA系難燃剤は、上記構成単位は1つでもよいが、構成単位が複数ある臭素化ポリカーボネートであることが好ましい。
臭素化ビスフェノールA系難燃剤は、比較的高い分解温度を有する観点から、以下の式(3)で表される構成単位を有する化合物を用いることが好ましい。
【0015】
【0016】
上記式(3)で表される構成単位を有する化合物の中でも、高い分解温度を有し、熱膨張性黒鉛の膨張温度との差を一定以上に調整しやすい観点から、特に下記式(4)、下記式(5)で表される化合物を用いることが好ましい。
【化4】
【化5】
上記式(4)、(5)において、nは1~50であるが、nは好ましくは1~30であり、より好ましくは5~20である。
【0017】
このような臭素化ビスフェノールA系難燃剤としては、帝人株式会社から市販されているファイヤガード7000、ファイヤガード7500、ファイヤガード8500などが挙げられる。
上記した難燃剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、難燃剤の含有量は、熱膨張性黒鉛の含有量に対して質量比で0.05~1であることが好ましく、0.20~0.95であることがより好ましく、0.40~0.90であることが更に好ましく、0.60~0.90が更に好ましい。難燃剤の含有量を上記のとおり調整することにより、熱膨張性黒鉛が膨張して形成される膨張断熱層の形状を保ちやすくなり、耐火性樹脂組成物及びこれよりなる熱膨張性シートの耐火性が向上しやすくなる。
【0019】
耐火性樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、特に限定されず、例えば、樹脂100質量部に対して、難燃剤が5~300質量部であることが好ましく、20~200質量部であることがより好ましく、40~150質量部であることが更に好ましい。難燃剤の含有量を5質量部以上とすることにより、耐火性樹脂組成物の耐火性が向上し、300質量部以下とすることにより、耐火性樹脂組成物の加工性などが良好になりやすい。
【0020】
(熱膨張性黒鉛)
本発明の耐火性樹脂組成物は、熱膨張性黒鉛を含有する。熱膨張性黒鉛は、上記した難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差が100℃以上であるとの要件を満足するものから適宜選択すればよい。
熱膨張性黒鉛は、加熱時に膨張する従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の原料粉末を、強酸化剤で酸処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。強酸化剤としては、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等が挙げられる。熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0021】
熱膨張性黒鉛は中和処理されてもよい。つまり、上記のように強酸化剤などで処理して得られた熱膨張性黒鉛を、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和してもよい。
【0022】
熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は、難燃剤の分解温度との差を一定以上とする観点から、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以上であると、耐熱性樹脂組成物を熱膨張性シートなどに成形する際に、不要な熱膨張を防ぎやすくなり、これら上限値以下であると、難燃剤の分解温度との差を一定以上調整しやすくなる。
【0023】
熱膨張性黒鉛の粒度は、20~200メッシュが好ましい。粒度が200メッシュかそれより小さいと、黒鉛の膨張度が膨張断熱層を得るのに十分であり、また粒度が20メッシュかそれより大きいと、樹脂に配合する際の分散性が良く、物性が良好である。なお、粒度は、JISZ8801-1に準拠した篩によって測定されたものである。
【0024】
熱膨張性黒鉛の含有量は、特に限定されないが、樹脂100質量部に対して、50~200質量部であることが好ましく、60~150質量部であることがより好ましい。50質量部以上であると、火の通過を阻止するのに適した膨張を得やすくなり、200質量部以下であると、耐火性樹脂組成物、及びこれよりなる熱膨張性シートの加工性が良好になる。
【0025】
(樹脂)
本発明の耐火性樹脂組成物に含まれる樹脂は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂が挙げられる。
【0026】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリイソシアヌレート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
【0027】
エラストマーとしてはオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー等が挙げられる。
【0028】
ゴムとしては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2-ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム等が挙げられる。
これらの中でも、耐火性の点で含有炭素の割合を低くする観点から、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが好ましく、シリコーンゴムがより好ましい。
【0029】
上記の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、及びゴムの中でも、加工性を良好にする観点からは、特に熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂、エラストマー、及びゴムの少なくともいずれかと併用してもよいが、単独で使用してもよい。
また、熱可塑性樹脂の中でも、ポリエチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、(EVA)、及びポリ塩化ビニル樹脂から選択される少なくとも1種が好ましい。これらの中でも、耐火性の点で含有炭素の割合を低くする観点から、ポリ塩化ビニル樹脂がより好ましい。
【0030】
ポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体であってもよいし、塩化ビニル系共重合体でよい。塩化ビニル系共重合体は、塩化ビニル及び塩化ビニルと共重合可能な不飽和結合を有する単量体の共重合体であって、塩化ビニル由来の構成単位を50質量%以上含有する。
塩化ビニルと共重合可能な不飽和結合を有する単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、エチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリロニトリル、スチレン等の芳香族ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
また、ポリ塩化ビニル樹脂は、ポリ塩素化塩化ビニル樹脂でもよい。ポリ塩素化塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単独重合体、塩化ビニル系共重合体などを塩素化したポリ塩素化塩化ビニル樹脂である。
ポリ塩化ビニル樹脂は、上記したものの中から1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
ポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は特に限定されないが、好ましくは、400~3000である。平均重合度を400以上にすることで、熱膨張性シートの機械的特性が良好となる。また、平均重合度を3000以下とすることで、加工性が良好になりやすい。これら観点から、平均重合度は、より好ましくは700~1500である。なお、平均重合度は、JIS K6720-2に準拠して測定したものである。
【0032】
上記した難燃剤、熱膨張性黒鉛、及び樹脂の合計の含有量は、耐火性樹脂組成物全量基準で、20質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、そして、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることが好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
(難燃剤以外の有機リン系化合物)
本発明の耐火性樹脂組成物は、分散剤として、難燃剤以外の有機リン系化合物を含有することが好ましい。該有機リン系化合物を含有することにより、耐火性樹脂組成物の耐火性が向上する。これは、有機リン系化合物を含有することにより、熱膨張性黒鉛の周囲に難燃剤が適切に配置されるようになり、膨張残渣である膨張断熱層の形状を保持しやすくなるからと考えられる。
有機リン系化合物の中でも、耐火性樹脂組成物の耐火性をより向上させる観点から、リン酸エステル系化合物が好ましい。
【0034】
リン酸エステル化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリクロロエチルホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、ビス(2,3-ジブロモプロピル)-2,3-ジクロロプロピルホスフェート、ビス(クロロプロピル)モノオクチルホスフェート、トリス(2エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等が挙げられる。これらの中でも、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)が特に好ましい。
【0035】
有機リン系化合物の含有量は、特に限定されないが、難燃剤の分散性を高めて、耐火性樹脂組成物の耐火性をより向上させる観点から、樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~15質量部であることが好ましく、2~10質量部であることが更に好ましい。
【0036】
(無機充填剤)
本発明の耐火性樹脂組成物は、無機充填剤を含有することが好ましい。無機充填剤は、加熱されて膨張断熱層が形成される際、熱容量を増大させ伝熱を抑制しつつ、骨材的に働いて膨張断熱層の強度を向上させる。無機充填剤としては特に限定されず、例えば、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト等の金属酸化物、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト等の金属水酸化物、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩、硫酸カルシウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカルシウム塩、シリカ、珪藻土、ドーソナイト、硫酸バリウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルーン、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュなどが挙げられる。無機充填剤は一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
これらの中では、金属酸化物、金属炭酸塩から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0037】
無機充填剤の粒径は、0.5~100μmが好ましく、より好ましくは1~50μmである。これら下限値以上とすることで、二次凝集が起こったりすることを防止して分散性が良好になる。また、下限値以上とすると、耐火性樹脂組成物の粘度を低下させることができ、加工性が良好になりやすい。また、上限値以下とすることで、耐火性樹脂組成物により形成される熱膨張性シートの表面性や力学的性能が良好になる。
なお、無機充填剤の粒径は、SEM(走査型電子顕微鏡像)を観察して粒径分布を求め、そこから得られる体積基準粒度分布において、小粒径側からの通過分積算50%の粒子径を平均粒子径として求める。
【0038】
無機充填剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、10~200質量部であることが好ましく、15~150質量部であることがより好ましい。無機充填剤の含有量が10質量部以上であると、耐火性樹脂組成物の耐火性が向上する。200質量部以下であると、加工性が向上し、また機械的物性を良好に維持しやすくなる。
【0039】
(可塑剤)
本発明の耐火性樹脂組成物は可塑剤を含有してもよい。可塑剤を含有することで、耐火性樹脂組成物により形成される熱膨張性シートなどの柔軟性を高めることができ、加工性を良好にしやすくなる。可塑剤は、上記した樹脂として熱可塑性樹脂を使用する場合に好適であり、ポリ塩化ビニル樹脂を使用する場合に特に好ましく使用される。
なお、可塑剤は、一般的に常温(23℃)、常圧(1気圧)で液状となる液状成分が使用される。
【0040】
可塑剤の具体例としては、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジ-n-オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、又は炭素原子数10~13程度の高級アルコール又は混合アルコールのフタル酸エステル等のフタル酸エステル系可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)、ジ-n-オクチルアジペート、ジ-n-デシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等の脂肪族エステル系可塑剤、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリ-n-オクチルトリメリテート、トリデシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート、ジ-n-オクチル-n-デシルトリメリレート等のトリメリット酸エステル系可塑剤、2,3,3',4'-ビフェニルテトラカルボン酸テトラヘプチルエステル等のビフェニルテトラカルボン酸テトラアルキルエステル系可塑剤、ポリエステル系高分子可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油、液状エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤、塩素化パラフィン、及び五塩化ステアリン酸アルキルエステル等の塩素化脂肪酸エステル等が挙げられる。
これら可塑剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上の可塑剤を組み合わせて使用してもよい。
上記の可塑剤のうち、フタル酸系可塑剤が難燃性と経済的な点で好ましい。フタル酸系可塑剤は、フタル酸系可塑剤単独で使用してもよいが、リン酸エステル系可塑剤と併用してもよい。
【0041】
可塑剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、30~130質量部であることが好ましく、40~120質量部であることがより好ましく、50~100質量部であることが更に好ましい。可塑剤の含有量がこれら下限値以上であると、耐火性樹脂組成物から形成されるシートなどの柔軟性を高め、シートの加工性を良好にすることができ、これら上限値以下であると、シートが柔らくなり過ぎるのを防止することができる。
【0042】
本発明の耐火性樹脂組成物は、上記以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、その物性を損なわない範囲で、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料等の各種添加剤が挙げられる。
【0043】
[熱膨張性シート]
本発明の熱膨張性シートは、上記した耐火性樹脂組成物からなるものである。
熱膨張性シートは、加熱により熱膨張性黒鉛が膨張して、膨張断熱層を形成する。熱膨張性シートは、このような膨張断熱層により、火災時などの高温にさらされた際に断熱し、耐火材として機能する。熱膨張性シートは、例えば、600℃で120分間加熱した後の膨張倍率が3~50倍となる。なお、膨張倍率は、熱膨張性シートの試験片の(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)として算出される。
【0044】
熱膨張性シートの厚さは特に限定されないが、耐火性及び取扱い性の観点から、0.2~10mmが好ましく、0.5~3.0mmがより好ましい。
【0045】
(熱膨張性シートの製造方法)
本発明の熱膨張性シートは例えば下記のようにして製造することができる。
まず、所定量の樹脂、熱膨張性黒鉛、難燃剤、及びその他の必要に応じて配合される添加剤を、混練ロールなどの混練機で混練して、耐火性樹脂組成物を得る。
次に、樹脂が熱可塑性樹脂、ゴム、エラストマー、又はこれらの組み合わせである場合、得られた耐火性樹脂組成物を、例えば、プレス成形、カレンダー成形、押出成形等、公知の成形方法によりシート状に成形することで熱膨張性シートを得る。
樹脂が熱硬化性樹脂を含む場合、得られた耐火性樹脂組成物を、例えばプレス成形などで加熱かつ加圧することで、シート状にしつつ熱硬化して熱膨張性シートを得るとよい。
【0046】
(積層シート)
本発明の熱膨張性シートは、他のシート部材や粘着剤層が積層され積層シートを構成してもよい。積層シートは、例えば、基材と、基材の片面又は両面に積層される熱膨張性シートとを備える。基材は通常、織布又は不織布である。織布又は不織布に使用される繊維としては、特に限定はされないが、不燃性材料又は準不燃材料が好ましく、例えば、ガラス繊維、セラミック繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、熱硬化性樹脂繊維等が好ましい。
上記積層シートは、例えば、耐火性樹脂組成物を基材の上にシート状に成形し、また、必要に応じて耐火性樹脂組成物を熱硬化するなどして得ることができる。
【0047】
また、積層シートは、熱膨張性シートと粘着剤層を備えるものであってもよい。粘着剤層は、例えば、熱膨張性シートの片面又は両面に積層されてもよい。
さらに、積層シートは、熱膨張性シートと、基材と、粘着剤層とを備えてもよい。そのような積層シートは、基材の一方の面に熱膨張性シート、他方の面に粘着剤層が設けられてもよいし、基材の一方の面の上に、熱膨張性シート及び粘着剤層がこの順に設けられてもよい。粘着剤層は、例えば、離型紙に塗工した粘着剤を積層シートに転写することで形成できる。
【0048】
本発明の耐火性樹脂組成物、該耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性シート及び積層シートはそれぞれ、耐火材として使用できるものである。これらはそれぞれ、具体的には、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の各種の建築物、自動車、電車などの各種車両、船舶、航空機などに使用できるが、これらの中では建築物に使用されることが好ましい。建築物としては、具体的には、壁、梁、柱、床、レンガ、屋根、板材、窓、障子、扉、ドア、戸、ふすま、欄間、配線、配管などに使用することができるが、これらに限定されない。本発明の耐火性樹脂組成物は、長時間の耐火性に優れるため、特に、特定防火設備、壁、梁、柱、床などに使用することが好ましい。
【実施例0049】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0050】
[評価方法]
難燃剤の分解温度、熱膨張性黒鉛の膨張開始温度は以下のとおり測定した。
(難燃剤の分解温度)
JIS 7120に基づいて測定を実施した。難燃剤を10mg採取して試料とし、示差熱-熱重量同時測定装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、「示差熱熱重量同時測定装置 STA7200」)により、窒素ガス量75ml/分、昇温速度10℃/分、測定温度100~800℃の条件下で、難燃剤の質量が10%減少したときの温度を分解温度とした。
(熱膨張性黒鉛の膨張開始温度)
熱膨張性黒鉛を100mg採取して試料とし、レオメーター(TAインスツルメント社製、「Discovery HR2」)を用いて、昇温温度10℃/分で、昇温させて、法線方向の力が立ち上がる温度を測定し、これを膨張開始温度とした。
【0051】
実施例、比較例で得られた熱膨張性シートについて、膨張倍率、残渣硬さを測定した。なお、残渣硬さは、加熱後の試験片の硬さを表しており、この値が高いほど、耐火性に優れることを意味する。
(膨張倍率)
得られた実施例及び比較例の熱膨張性シートから作製した試験片(長さ100mm、幅100mm、厚さ1.6mm)をステンレス製のホルダー(101mm角・高さ80mm)の底面に設置し、電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した。その後、試験片の高さ(一番高い部分)横幅・縦幅・厚さを測定し、((加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ))により、膨張倍率を算出した。
(残渣硬さ)
膨張倍率を測定した加熱後の試験片を圧縮試験機(カトーテック社製、「フィンガーフイリングテスター」)に供給し、直径1mmの3点圧子で0.1cm/秒の速度で圧縮し、残渣上面からの10mm圧縮までの最大応力を測定し、燃焼後の試験片の圧縮強度を測定した。
(耐火性)
耐火炉にてエーアンドエーマテリアル社製の50mmのケイ酸カルシウム板を1180mm×1180mmに切り出し、その中央部に幅20mm長さ200mmの目地を作成した。目地側面部に厚さ1.6mmで10mm×200mmに熱膨張性シートをステーブルガンを用い、鉄針にて貼り付けた。鉄針の固定位置は上下端およびその中央部の3ヶ所固定し、試験体を作成した。この試験体をISO834の標準加熱曲線に従い、温度を調整し、かつ、炉圧を20Paの設定で、120分間の耐火試験を実施した。耐火試験中の試験体を観察し、試験体に貼り付けした膨張材の残渣が120分間崩れなかったものを〇、崩れて炉内貫通したものを×とした。
【0052】
(実施例1~14、比較例1)
下記表1に示す配合にて、樹脂、難燃剤、熱膨張性黒鉛、無機充填剤、可塑剤、分散剤をロールに投入して130℃で5分間混練して、耐火性樹脂組成物を得た。得られた耐火性樹脂組成物をプレス成型により、130℃で3分間プレス成形して、厚さ1.6mmの熱膨張性シートを得た。各実施例、比較例で使用した各成分は下記のとおりである。
(実施例15~16)
液状シリコーンゴム(旭化成ワッカーシリコーン社製「ELASTOSHIL M4600」)の主剤と硬化剤を10:1(質量比)で混合し、23℃で12時間硬化させて、樹脂を得た。下記表1に示す配合にて、上記樹脂、難燃剤、熱膨張性黒鉛、無機充填剤、可塑剤、分散剤をカップに配合し、遊星式撹拌機で攪拌した。得られた混合物を23℃でプレスし、1.6mmのシート状に成型し、12時間23℃で静置することで厚さ1.6mmの熱膨張性シートを得た。
【0053】
(1)樹脂
・PVC:ポリ塩化ビニル樹脂、信越化学工業株式会社製、商品名「TK-1000」、平均重合度1030
・シリコーンゴム:液状シリコーンゴム、旭化成ワッカーシリコーン社製、商品名「ELASTOSIL M4600」
(2)難燃剤
・ホスファゼン系化合物:大塚化学株式会社製、商品名「SPB-100」 分解温度380℃
・有機リン系難燃剤:帝人社製、商品名「FCX-210」 分解温度360℃
・臭素化ビスフェノールA系難燃剤:帝人株式会社製、商品名「ファイヤガード7000」 分解温度451℃
・臭素化ビスフェノールA系難燃剤:帝人株式会社製、商品名「ファイヤガード7500」 分解温度454℃
・臭素化ビスフェノールA系難燃剤:帝人株式会社製、商品名「ファイヤガード8500」 分解温度458℃
・ポリリン酸アンモニウム:クラリアントジャパン株式会社製、商品名「AP422」 分解温度300℃
(3)熱膨張性黒鉛
・熱膨張性黒鉛:エアウォーター社製、商品名「CA-60N」 膨張開始温度230℃
・熱膨張性黒鉛:ADT社製、商品名「ADT501」 膨張開始温度150℃
(4)無機充填剤
・炭酸カルシウム:白石カルシウム株式会社製、商品名「BF300」
・酸化亜鉛:堺化学工業株式会社製、商品名「酸化亜鉛1種」
(5)可塑剤
・DOP:ジ-2-エチルヘキシルフタレート、株式会社ジェイプラス製DOP
(6)分散剤
・TCP:トリクレジルホスフェート、大八化学株式会社製TCP
【0054】
【0055】
以上の実施例に示すように、本発明の耐火性樹脂組成物からなる熱膨張性シートは、難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差が100℃以上であるため、600℃で120分加熱した後の残渣硬さの値が高く、長時間の耐火性に優れることが分かった。これに対して、比較例の熱膨張性シートは、難燃剤の分解温度と熱膨張性黒鉛の膨張開始温度との差が100℃未満であるため、残渣硬さの値が低く、長時間の耐火性に劣ることが分かった。