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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007154
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】中敷きおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A43B 17/08 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A43B17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108429
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】波多野 元貴
(72)【発明者】
【氏名】岡本 利彰
(72)【発明者】
【氏名】楠見 浩行
(72)【発明者】
【氏名】▲崎▼山 亮太
(72)【発明者】
【氏名】高島 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】河合 裕太
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悟
(72)【発明者】
【氏名】谷口 憲彦
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050EA15
4F050HA53
4F050HA56
4F050HA58
4F050HA59
4F050HA60
4F050HA63
(57)【要約】
【課題】高性能でありつつも足当たりがよくかつ耐久性に優れた中敷きを提供する。
【解決手段】中敷き1Aは、立体格子構造および立体壁構造のうちの少なくともいずれかを単位構造としかつ当該単位構造が繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体からなる基層部10と、基層部10の上面を覆うシート状構造体からなり、複数の孔24からなる貫通孔群が設けられた上層部20とを備える。複数の孔24の各々は、上層部20の周縁に達することなく上層部20の周縁から内側に入り込んだ位置に配設される。上層部20の周縁と上層部20の周縁から内側に向けて4.0mmオフセットした位置との間に含まれる領域を周囲領域とした場合に、貫通孔群は、当該周囲領域に重なるとともに上層部20の周縁に沿って並ぶように上層部20の最も周縁寄りの部分に配置された複数の孔からなる最外孔群を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部と、使用者の足の踏まず部を支持する中足部と、使用者の足の踵部を支持する後足部とを含み、履き物の内底面に装着されて使用される中敷きであって、
装着状態においてその下面が履き物の内底面に面するように配置される基層部と、
前記基層部の上面を覆う上層部とを備え、
前記基層部は、立体格子構造および立体壁構造のうちの少なくともいずれかを単位構造としかつ当該単位構造が繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体からなり、
前記上層部は、その厚み方向において当該上層部を貫通する複数の孔からなる貫通孔群が設けられてなるシート状構造体からなり、
前記貫通孔群に含まれる複数の孔の各々は、前記上層部の周縁に達することなく当該上層部の周縁から内側に入り込んだ位置に配設され、
前記上層部の周縁と当該上層部の周縁から内側に向けて4.0mmオフセットした位置との間に含まれる領域を周囲領域とした場合に、前記貫通孔群が、前記周囲領域に重なるとともに前記上層部の周縁に沿って並ぶように前記上層部の最も周縁寄りの部分に配置された複数の孔からなる最外孔群を含んでいる、中敷き。
【請求項2】
前記貫通孔群に含まれる複数の孔が、前記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、前記上層部の全域にわたって略均等に配置されている、請求項1に記載の中敷き。
【請求項3】
前記貫通孔群に含まれる複数の孔のうち、前記前足部の前端側の領域に位置する孔が、前記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、略放射状に点列して配置され、
前記貫通孔群に含まれる複数の孔のうち、前記後足部の後端側の領域に位置する孔が、前記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、略放射状に点列して配置され、
前記貫通孔群に含まれる複数の孔のうち、前記前足部の後端側の領域に位置する孔と、前記中足部に位置する孔と、前記後足部の前端側の領域に位置する孔とが、前記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、いずれも略行列状に点列して配置されている、請求項1に記載の中敷き。
【請求項4】
前記貫通孔群に含まれる複数の孔が、前記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、前記上層部の周縁側に位置するものほどその開口面積が概ね大きくなるように構成されている、請求項1に記載の中敷き。
【請求項5】
前記貫通孔群に含まれる複数の孔が、円柱状または楕円柱状の形状を有している、請求項1に記載の中敷き。
【請求項6】
前記上層部の上面の表面積をSaとし、当該上層部の上面上における前記貫通孔群に含まれる複数の孔の総開口面積をSbとした場合に、0.15≦Sb/(Sa+Sb)≦0.70の条件を満たしている、請求項1に記載の中敷き。
【請求項7】
前記基層部の占積率が、5%以上50%以下である、請求項1に記載の中敷き。
【請求項8】
前記上層部の厚みが、非一様である、請求項1に記載の中敷き。
【請求項9】
前記上層部のうちの使用者のMP関節に対応する部位の足裏を支持する部分の厚みが、前記上層部のうちの当該部分に隣接する部分の厚みよりも大きい、請求項8に記載の中敷き。
【請求項10】
前記後足部に含まれる部分の前記上層部の厚みが、前記上層部のうちの当該部分に隣接する部分の厚みよりも大きい、請求項8に記載の中敷き。
【請求項11】
前記上層部のうちの使用者の足裏の外足側の部位を支持する部分の厚みが、前記上層部のうちの使用者の足裏の内足側の部位を支持する部分の厚みよりも大きい、請求項8に記載の中敷き。
【請求項12】
前記基層部および前記上層部が、単一の部材にて構成されている、請求項1に記載の中敷き。
【請求項13】
単一の部材からなる前記基層部および前記上層部が、光造形方式の三次元積層造形法によって製作された単一の造形物からなる、請求項12に記載の中敷き。
【請求項14】
前記上層部の上面を覆うライナーをさらに備え、
前記ライナーが、織布または不織布からなる、請求項1から13のいずれかに記載の中敷き。
【請求項15】
前記ライナーが、前記上層部側に位置する主面に設けられた粘着剤層を含み、
前記粘着剤層を介して前記ライナーが前記上層部の上面に貼り付けられることにより、前記ライナーが前記上層部に固定されている、請求項14に記載の中敷き。
【請求項16】
請求項13に記載の中敷きを製造するための製造方法であって、
前記基層部が製作される工程と、
前記上層部が製作される工程とを備え、
前記基層部が製作される工程および前記上層部が製作される工程が、光造形方式の三次元積層造形法により、前記後足部の後端側から前記前足部の前端側に向けて、前記基層部および前記上層部の各々が同時に順次積層造形されることにより、前記造形物が造形される工程を含んでいる、中敷きの製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の中敷きを製造するための製造方法であって、
前記基層部が製作される工程と、
前記上層部が製作される工程とを備え、
前記基層部が製作される工程および前記上層部が製作される工程が、光造形方式の三次元積層造形法により、前記基層部の下面と直交する方向に沿って前記基層部の下面側から前記基層部の少なくとも一部が順次積層造形され、その後これに引き続き、前記上層部の少なくとも一部が順次積層造形されることにより、前記造形物が造形される工程を含んでいる、中敷きの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴等の履き物の内底面に装着されて使用される中敷きおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば米国特許出願公開第2018/228401号明細書(特許文献1)には、三次元積層造形法によって製造された中敷きが開示されている。当該中敷きは、立位時における使用者の足裏の位置毎の足圧を測定し、予め準備された立体格子構造等からなる複数のセルのうちから、測定された足圧に対応するもの選択してこれを足裏の位置に応じた部位毎にマッピングすることにより、中敷きの三次元メッシュデータを生成し、生成した三次元メッシュデータに基づいて中敷きを三次元積層造形法によって造形することで製造されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/228401号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された中敷きは、上述した製造方法に従って製造されることにより、その内部において多数の孔が存在するばかりでなく、その外表面の全域において多数の孔が外部に向けて露出した状態で位置するものとなる。この多数の孔は、緩衝性能の向上や軽量化といった中敷きの性能面での向上には寄与するものの、何らの対策も施さなかった場合には、履き心地の点において悪影響を与え兼ねないものである。
【0005】
すなわち、上記特許文献1に開示された中敷きにおいては、足裏に接触する部分である中敷きの上面にも、大小様々な大きさの多数の孔が存在することになるため、当該中敷きが装着された履き物を使用者が着用した場合において、いわゆる足当たりが良好なものとはなり難い問題がある。
【0006】
加えて、上記上面を平面視した場合における中敷きの周縁は、着用時において履き物に対して常時擦れ合う部分にもなるため、この周縁に達するように多数の孔が設けられていることにより、当該周縁を起点として中敷きに破損が生じ易くなり、結果として耐久性に劣るものとなってしまう問題も生じ得る。
【0007】
一方で、これらの問題を解決すべく中敷きの周縁部に孔を一切設けないように構成した場合には、当該周縁部が履き物の内底面の形状に馴染むように薄く形成されることを考慮した場合に、当該周縁部において十分な緩衝性能が発揮されることがなくなってしまうばかりでなく、当該部分が他の部分に比して高剛性になるため、着用時において使用者が違和感を感じてしまうことにもなり兼ねない。
【0008】
したがって、本発明は、このような問題を解消すべくなされたものであり、高性能でありつつも足当たりがよくかつ耐久性に優れた中敷きおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に基づく中敷きは、使用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部と、使用者の足の踏まず部を支持する中足部と、使用者の足の踵部を支持する後足部とを含むとともに、履き物の内底面に装着されて使用されるものであって、装着状態においてその下面が履き物の内底面に面するように配置される基層部と、上記基層部の上面を覆う上層部とを備えている。上記基層部は、立体格子構造および立体壁構造のうちの少なくともいずれかを単位構造としかつ当該単位構造が繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体からなり、上記上層部は、その厚み方向において当該上層部を貫通する複数の孔からなる貫通孔群が設けられてなるシート状構造体からなる。上記貫通孔群に含まれる複数の孔の各々は、上記上層部の周縁に達することなく当該上層部の周縁から内側に入り込んだ位置に配設されている。上記本発明に基づく中敷きにあっては、上記上層部の周縁と当該上層部の周縁から内側に向けて4.0mmオフセットした位置との間に含まれる領域を周囲領域とした場合に、上記貫通孔群が、上記周囲領域に重なるとともに上記上層部の周縁に沿って並ぶように上記上層部の最も周縁寄りの部分に配置された複数の孔からなる最外孔群を含んでいる。
【0010】
本発明の第1の局面に基づく中敷きの製造方法は、上記本発明に基づく中敷きであって、かつ、上記基層部および上記上層部が単一の部材にて構成されているとともに、単一の部材からなる上記基層部および上記上層部が光造形方式の三次元積層造形法によって製作された単一の造形物からなる中敷きを製造するための製造方法であって、上記基層部が製作される工程と、上記上層部が製作される工程とを備えている。上記本発明の第1の局面に基づく中敷きの製造方法にあっては、上記基層部が製作される工程および上記上層部が製作される工程が、光造形方式の三次元積層造形法により、上記後足部の後端側から上記前足部の前端側に向けて、上記基層部および上記上層部の各々が同時に順次積層造形されることにより、上記造形物が造形される工程を含んでいる。
【0011】
本発明の第2の局面に基づく中敷きの製造方法は、上記本発明に基づく中敷きであって、かつ、上記基層部および上記上層部が単一の部材にて構成されているとともに、単一の部材からなる上記基層部および上記上層部が光造形方式の三次元積層造形法によって製作された単一の造形物からなる中敷きを製造するための製造方法であって、上記基層部が製作される工程と、上記上層部が製作される工程とを備えている。上記本発明の第2の局面に基づく中敷きの製造方法にあっては、上記基層部が製作される工程および上記上層部が製作される工程が、光造形方式の三次元積層造形法により、上記基層部の下面と直交する方向に沿って上記基層部の下面側から上記基層部の少なくとも一部が順次積層造形され、その後これに引き続き、上記上層部の少なくとも一部が順次積層造形されることにより、上記造形物が造形される工程を含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高性能でありつつも足当たりがよくかつ耐久性に優れた中敷きおよびその製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1に係る中敷きの使用態様を説明するための模式図である。
図2図1に示す中敷きを右斜め上方前方側から見た斜視図である。
図3図1に示す中敷きを左斜め下方後方側から見た斜視図である。
図4図1に示す中敷きの平面図である。
図5図1に示す中敷きを外足側から見た側面図である。
図6図1に示す中敷きの図2図4および図5中に示すVI-VI線に沿った一部破断斜視図である。
図7図1に示す中敷きの基層部が有する立体構造を説明するための模式図である。
図8図1に示す中敷きの上層部のみの平面図である。
図9図8中に示す領域IXの拡大図である。
図10図1に示す中敷きの上層部の厚み分布を示す模式図である。
図11図1に示す中敷きの上層部に設けられる複数の孔のマッピング方法を示す模式図である。
図12】実施の形態1に係る中敷きの製造方法における三次元積層造形法による中敷きの造形の開始時の状態を示す模式図である。
図13】実施の形態1に係る中敷きの製造方法における三次元積層造形法による中敷きの造形の途中段階の状態を示す模式図である。
図14】実施の形態1に係る中敷きの製造方法における三次元積層造形法による中敷きの造形の終了時の状態を示す模式図である。
図15】実施の形態1に係る中敷きの他の製造方法を示す模式図である。
図16】第1変形例に係る中敷きの上層部の厚み分布を示す模式図である。
図17】第2変形例に係る中敷きの上層部の厚み分布を示す模式図である。
図18】第3変形例に係る中敷きの上層部に設けられる複数の孔のマッピング方法を示す模式図である。
図19】第4変形例に係る中敷きの基層部が有する立体構造を説明するための模式図である。
図20】実施の形態2に係る中敷きを右斜め上方前方側から見た斜視図である。
図21図20に示す中敷きの図20中に示すXXI-XXI線に沿った模式断面図である。
図22図21中に示す領域XXIIの拡大図である。
図23図20に示す中敷きの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0015】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る中敷きの使用態様を説明するための模式図であり、図2および図3は、それぞれ図1に示す中敷きを右斜め上方前方側および左斜め下方後方側から見た斜視図である。図4は、図1に示す中敷きの平面図であり、図5は、図1に示す中敷きを外足側から見た側面図である。また、図6は、図1に示す中敷きの図2図4および図5中に示すVI-VI線に沿った一部破断斜視図である。まず、これら図1ないし図6を参照して、本実施の形態に係る中敷き1Aの概略的な構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、中敷き1Aは、履き物としてのたとえば靴100に装着されて使用される。靴100は、ソール110およびアッパー120を備えており、使用に際しては、中敷き1Aが、アッパー120に設けられた履き口121を介して靴100の内部に挿入される。これにより、中敷き1Aは、その下面が靴100の内底面に面するように当該内底面上に載置されることになり、これによって中敷き1Aが靴100に装着されることになる。
【0017】
靴100を使用者が着用した着用時においては、使用者の足裏が、中敷き1Aの上面上に配置されることになる。そのため、中敷き1Aは、靴100のソール110と使用者の足裏とによって挟み込まれることになり、これによって中敷き1Aは、使用者の足を支持することになる。
【0018】
図2ないし図5に示すように、中敷き1Aは、偏平な形状を有しており、その平面視した場合における外形は、概ね靴100の内底面の外形に合致している。中敷き1Aは、単一の部材にて構成されており、後述する光造形方式の三次元積層造形法にて製作された造形物2からなる。
【0019】
図4および図5に示すように、中敷き1Aは、平面視した場合に、使用者の足の足長方向に合致する前後方向(図4における図中上下方向、図5における図中左右方向)に沿って、使用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部R1と、使用者の足の踏まず部を支持する中足部R2と、使用者の足の踵部を支持する後足部R3とに区画される。
【0020】
また、図4に示すように、中敷き1Aは、平面視した場合に、使用者の足の足幅方向に合致する左右方向(図中における左右方向)に沿って、足のうちの解剖学的正位における正中側(すなわち正中に近い側)に対応する内足側の部分(図中に示すS1側の部分)と、足のうちの解剖学的正位における正中側とは反対側(すなわち正中に遠い側)に対応する外足側の部分(図中に示すS2側の部分)とに区画される。
【0021】
なお、後述する中敷き1Aの上下方向とは、偏平な形状を有する当該中敷き1Aの厚み方向(すなわち、図5における図中上下方向)に合致する方向を意味しており、より特定的には、上述した使用者の足の足長方向に合致する方向である前後方向ならびに上述した使用者の足の足幅方向に合致する方向である左右方向の双方に直交する方向である。
【0022】
図2ないし図6に示すように、中敷き1Aは、各々が層を成すように構成された基層部10および上層部20を備えている。基層部10は、上面11(特に図6参照)、下面12および周面13を有しており、中敷き1Aの下部側の部分を構成している。上層部20は、上面21、下面22(特に図6参照)および周面23を有しており、基層部10の上面11を覆うことで中敷き1Aの上部側の部分を構成している。すなわち、中敷き1Aは、基層部10および上層部20からなる2層構造を有している。
【0023】
上述したように、中敷き1Aは、単一の部材にて構成されているため、基層部10の上面11と上層部20の下面22とは、互いに連続するように構成されている。すなわち、基層部10の上面11と上層部20の下面22とは、これら基層部10および上層部20が有する後述する構造上の差が生じる境界面のことを意味している。
【0024】
基層部10は、立体格子構造を単位構造としかつ当該単位構造が繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体にて構成されている。ここで、本実施の形態に係る中敷き1Aにおいては、上記単位構造が、概ね上述した前後方向、左右方向および上下方向の直交三軸方向に沿って繰り返し連続的に複数配列されており、これにより、基層部10の内部およびその外表面には、多数の孔が設けられている。なお、基層部10が有する立体構造の詳細については、後述することとする。
【0025】
基層部10の下面12は、中敷き1Aが靴100に装着された装着状態において、靴100の内底面に面するように配置される。この基層部10の下面12は、上述した多数の孔が設けられることで凹凸形状を有しているものの、全体として見た場合には、概ね平坦に構成されている。ここで、基層部10の下面12には、必要に応じて文字やロゴ、模様、認証識別コードといったシンボル部または意匠部がさらに造形によって設けられていてもよい。
【0026】
一方、上層部20は、シート状構造体にて構成されている。当該シート状構造体からなる上層部20には、その厚み方向(すなわち、中敷き1Aの上下方向)において当該上層部20を貫通する複数の孔24からなる貫通孔群が設けられている。なお、上層部20に設けられた複数の孔24からなる貫通孔群の詳細については、後述することとする。
【0027】
上層部20の上面21は、着用時において使用者の足裏にフィットすることとなるように、前足部R1に対応する部分が全体として概ね平坦な形状を有するように構成されており、中足部R2および後足部R3に対応する部分が全体として概ね凹状の形状を有するように構成されている。上層部20の上面21には、上述したように複数の孔24が位置してはいるものの、全体としてこれを見た場合に、滑らかな形状を有している。なお、上層部20の上面21は、使用者が靴100を着用する際に、使用者の足がスムーズに靴100の内部に挿入されることとなるように、滑り易く構成されていることが好ましいが、この点については後述することとする。
【0028】
中敷き1Aの材質としては、特にこれが制限されるものではないが、光造形方式の三次元積層造形法にて造形が可能な材質であるとともに、造形後の中敷き1Aが相応の柔軟性、伸び性、耐久性、弾性力、安定性等を有することとなるように、樹脂材料またはゴム材料であることが好ましい。より具体的には、中敷き1Aを樹脂製とする場合には、たとえばポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリアミド系熱可塑性エラストマ(TPA、TPAE)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)とすることができる。一方、中敷き1Aをゴム製とする場合には、たとえばブタジエンゴム(BR)とすることができる。
【0029】
中敷き1Aは、ポリマー組成物にて構成することもできる。その場合にポリマー組成物に含有させるポリマーとしては、たとえばオレフィン系エラストマやオレフィン系樹脂等のオレフィン系ポリマーが挙げられる。オレフィン系ポリマーとしては、たとえばポリエチレン(たとえば直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体のポリオレフィン等が挙げられる。
【0030】
また、上記ポリマーは、たとえばアミド系エラストマやアミド系樹脂等のアミド系ポリマーであってもよい。アミド系ポリマーとしては、たとえばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド66、ポリアミド610等が挙げられる。
【0031】
また、上記ポリマーは、たとえばエステル系エラストマやエステル系樹脂等のエステル系ポリマーであってもよい。エステル系ポリマーとしては、たとえばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0032】
また、上記ポリマーは、たとえばウレタン系エラストマやウレタン系樹脂等のウレタン系ポリマーであってもよい。ウレタン系ポリマーとしては、たとえばポリエステル系ポリウレタン、ポリエーテル系ポリウレタン等が挙げられる。
【0033】
また、上記ポリマーは、たとえばスチレン系エラストマやスチレン系樹脂等のスチレン系ポリマーであってもよい。スチレン系エラストマとしては、スチレン-エチレン-ブチレン共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS))、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン共重合体(SEPS))、スチレン-イソブチレン-スチレン共重合体(SIBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン(SBSB)、スチレン-ブタジエン-スチレン-ブタジエン-スチレン(SBSBS)等が挙げられる。スチレン系樹脂としては、たとえばポリスチレン、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)等が挙げられる。
【0034】
また、上記ポリマーは、たとえばポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系ポリマー、ウレタン系アクリルポリマー、ポリエステル系アクリルポリマー、ポリエーテル系アクリルポリマー、ポリカーボネート系アクリルポリマー、エポキシ系アクリルポリマー、共役ジエン重合体系アクリルポリマーならびにその水素添加物、ウレタン系メタクリルポリマー、ポリエステル系メタクリルポリマー、ポリエーテル系メタクリルポリマー、ポリカーボネート系メタクリルポリマー、ポリエステル系ウレタンアクリレート、ポリカーボネート系ウレタンアクリレート、ポリエーテル系ウレタンアクリレート、エポキシ系メタクリルポリマー、共役ジエン重合体系メタクリルポリマーならびにその水素添加物、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系エラストマ、ブタジエンゴム、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等であってもよい。
【0035】
前述のとおり、中敷き1Aは、柔軟性のある材料にて構成されていることが好ましいことから、上述した材料種の中でも、特にウレタンアクリレートにてこれが構成されていることが好ましい。ウレタンアクリレートにて中敷き1Aを構成した場合には、耐久性や伸び性に優れたものになるばかりでなく、十分な弾性力を有するものにもなる。なお、前述のとおり、中敷き1Aは、光造形方式の三次元積層造形法にて製作されるものであるため、当該中敷き1Aには、副成分としての硬化剤が含まれることになる。
【0036】
ここで、本実施の形態に係る中敷き1Aは、上述したような材料的な面のみならず、構造的な面においても緩衝性能の向上が図られたものである。より詳細には、構造的な面における緩衝性能の向上は、主として上述した基層部10によって発揮される。一方、上層部20は、主として履き心地の向上の観点から設けられたものである。以下、この点について詳細に説明する。
【0037】
図7は、図1に示す中敷きの基層部が有する立体構造を説明するための模式図である。一方、図8は、図1に示す中敷きの上層部のみの平面図であり、図9は、図8中に示す領域IXの拡大図である。また、図10は、図1に示す中敷きの上層部の厚み分布を示す模式図である。
【0038】
図7に示すように、中敷き1Aの基層部10は、立体格子構造からなる単位構造4Aが繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体3Aにて構成されている。より具体的には、複数の単位構造4Aは、幅方向(図中に示すX方向)、奥行き方向(図中に示すY方向)および高さ方向(図中に示すZ方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。図7においては、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造4Aのみを抜き出して示しており、その破断面には、濃い色を付している。
【0039】
立体格子構造からなる単位構造4Aは、所定方向に沿って延在する複数の柱が相互に接続されてなる立体的形状を有している。単位構造4Aとしては、様々な構造のものが利用でき、たとえば直方体格子、ダイヤモンド格子、八面体格子、ダブルピラミッド格子、あるいは、これら格子に各種のサポートが付加されたもの等、各種の構造の適用が可能である。なお、図示する単位構造4Aは、直方体格子に中央サポートが付加されたものである。
【0040】
中敷き1Aの基層部10を上述した如くの三次元メッシュ構造体3Aにて構成する際には、必要に応じて個々の単位構造4Aを歪めることで当該三次元メッシュ構造体3Aの外形形状が中敷き1Aの外形形状に合致した形状となるようにすることが好ましい。このようにすれば、中敷き1Aの外側表面を滑らかな形状にすることが可能になる。
【0041】
このように構成された基層部10を中敷き1Aの下部側の部分に配置することにより、中敷き1Aに高い変形能をもたせることが可能になるため、緩衝性能に優れた履き心地のよい中敷きとすることができるとともに、着用時の安定性が高められた中敷きとすることも可能になる。また、基層部10が上記構成を有していることにより、その大きさに比して軽量の中敷きとすることもでき、さらには、通気性に優れた中敷きとすることもできる。
【0042】
基層部10の占積率は、5%以上50%以下とすることが好ましい。このように構成すれば、中敷き1Aに高い変形能をもたせることが可能になり、さらには、軽量化や通気性の向上も図られることになる。
【0043】
なお、基層部10の占積率は、中敷き1Aの部位毎にこれを異ならしめることとしてもよい。たとえば、使用者の足のアーチをサポートする観点からは、中足部R2における基層部10の占積率を、前足部R1および後足部R3における基層部10の占積率よりも高めることが好ましく、プロネーションと呼ばれる使用者の着地時の踵部の倒れ込みに対するサポートを行なう観点からは、外足側における基層部10の占積率を、内足側における基層部10の占積率よりも高めることが好ましい。
【0044】
ここで、基層部10の占積率を中敷き1Aの部位毎に異ならしめる方法としては、たとえば上述した単位構造4Aの大きさを中敷き1Aの部位毎に変えたり、単位構造4Aが有する柱の太さを中敷き1Aの部位毎に変えたり、単位構造4Aの構造自体を中敷き1Aの部位毎に変更したりすることが想定される。
【0045】
図8に示すように、シート状構造体にて構成された上層部20には、その厚み方向に沿って貫通する複数の孔24からなる貫通孔群が設けられている。当該貫通孔群に含まれる複数の孔24の各々は、上層部20の上面21において露出しているとともに、上層部20の下面22において基層部10に面している。これら複数の孔24のうちの大部分は、上層部20と基層部10との境界面において、基層部10の内部および外表面に設けられた孔に対して連通している。
【0046】
ここで、貫通孔群に含まれる複数の孔24の各々は、上層部20の周縁(より特定的には、周面23)に達することなく、当該上層部20の周縁から内側に入り込んだ位置に配設されている。すなわち、複数の孔24は、中敷き1Aの上下方向(すなわち上層部20の厚み方向)に沿って見た場合に、そのすべてが周面23から距離をもって内側に位置しており、当該上下方向と直交する方向において完全に閉じられた状態とされている。
【0047】
また、貫通孔群に含まれる複数の孔24は、中敷き1Aの上下方向に沿って見た場合に、上層部20の全域にわたって略均等に配置されている。すなわち、複数の孔24は、中敷き1Aの部位ごとに偏在して設けられておらず、概ね一定の密度で設けられている。
【0048】
より具体的には、本実施の形態に係る中敷き1Aにあっては、複数の孔24のうち、前足部R1の前端側の領域に位置する孔が、前足部R1の略中央位置P1を基点として略放射状に点列して配置されており、後足部R3の後端側の領域に位置する孔が、後足部R3の略中央位置P2を基点として略放射状に点列して配置されている。また、前足部R1の後端側の領域に位置する孔と、中足部R2に位置する孔と、後足部R3の前端側の領域に位置する孔とは、略行列状に配置されている。これにより、本実施の形態に係る中敷き1Aにあっては、複数の孔24が上層部20の全域にわたって略均等に配置されている。
【0049】
また、見方を変えれば、本実施の形態に係る中敷き1Aにあっては、前足部R1の略中央位置P1と後足部R3の略中央位置P2とを略直線状に結ぶように複数の孔24が点列状に設けられているとともに、これら略直線状に配置された複数の孔24をさらに幾重にも取り囲む閉曲線上の位置に他の複数の孔24が点列状に設けられている。これにより、本実施の形態に係る中敷き1Aにあっては、複数の孔24が上層部20の全域にわたって略均等に配置されている。
【0050】
図8および図9に示すように、上述した複数の孔24からなる貫通孔群は、上層部20の周縁と当該上層部20の周縁から内側に向けて4.0mmオフセットした位置(図9中に示す境界線BL上の位置)との間に含まれる領域を周囲領域A1とした場合に、当該周囲領域A1に重なるとともに上層部20の周縁に沿って並ぶように上層部20の最も周縁寄りの部分に配置された複数の孔24aからなる最外孔群を含んでいる。
【0051】
これら最外孔群に含まれる複数の孔24aの各々は、上述したように、上層部20の周縁に達することなく、当該上層部20の周縁から内側に入り込んだ位置に配設されてはいるものの、上記周囲領域A1に重なるように配置されることにより、上層部20の周縁(すなわち上層部20の周面23)に近接して設けられている。
【0052】
ここで、最外孔群に含まれる複数の孔24aの各々は、図示するようにその一部分が周囲領域A1に重なっていてもよく、そのすべての部分が周囲領域A1に重なっていてもよい。これにより、最外孔群に含まれる複数の孔24aは、周囲領域A1よりも内側に位置する内側領域A2に完全に重なるように配設された複数の孔24よりも、いずれも上層部20の周縁に近接して位置することになる。
【0053】
したがって、このように構成された上層部20を中敷き1Aの上部側の部分に配置することにより、内部および外表面に多数の孔が存在することでその上面11に微細な多数の凹凸が形成されてなる基層部10が、当該上層部20によって覆われることになるとともに、使用者の足裏に接触する部分である中敷き1Aの上面が、シート状構造体からなる上層部20の滑らかに形成された上面21にて構成されることになるため、足当たりが良好で履き心地のよい中敷きとすることが可能になる。
【0054】
この点、本実施の形態に係る中敷き1Aにあっては、上述したように上層部20に複数の孔24が設けられてはいるものの、これら複数の孔24が上層部20に略均等に設けられているため、着用時において使用者が違和感を感じることなく良好な履き心地とすることができる。特に、上述したように、貫通孔群のうち、最外孔群に含まれる複数の孔24aが、上記周囲領域A1に重なるように位置しており、しかもこれら複数の孔24aがいずれも上層部20の周縁に達していないため、中敷きの周縁部に孔を一切設けないように構成した場合に比べ、当該周囲領域A1においても高い緩衝性能が得られるばかりでなく、着用時において使用者が違和感を感じてしまうことも大幅に抑制できることになる。
【0055】
加えて、本実施の形態に係る中敷き1Aにあっては、上層部20に設けられた複数の孔のいずれもが当該上層部20の周縁に達していないため、着用時において靴100に対して常時擦れ合う部分である当該周縁に破損が生じことが大幅に抑制できることになり、結果として耐久性に優れた中敷きとすることも可能になる。
【0056】
また、このように構成された上層部20を中敷き1Aの上部側の部分に配置することにより、着用時における使用者の足裏との接触面積が増加することにもなるため、着用時の安定性が高められた中敷きとすることができるとともに、さらには足圧を効果的に分散させることができる中敷きとすることが可能になる。さらには、三次元メッシュ構造体3Aからなる基層部10が上層部20によって保護されることにもなるため、この点においても耐久性に優れた中敷きとすることができる。
【0057】
また、中敷き1Aの上層部20に上述した如くの複数の孔24を設けた場合には、当該中敷き1Aを光造形方式の三次元積層造形法によって製造するに際し、形状欠陥が生じ難くなる効果が得られ、高精度に中敷き1Aを製造することが可能になるが、この点については後において詳述することとする。
【0058】
ここで、貫通孔群に含まれる複数の孔24は、円柱状または楕円柱状の形状を有していることが好ましい。しかしながら、これら複数の孔24の形状は、これに限定されるものではなく、三角柱状や四角柱状等の多角柱状とされてもよいし、その他の形状とされてもよい。また、貫通孔群に含まれる複数の孔24の大きさは、特にこれが制限されるものではないが、たとえば平面視した場合の最大外形寸法が、概ね1.0mm以上5.0mm以下とされることが好ましく、一例としては2.0mm程度とされる。
【0059】
また、貫通孔群に含まれる複数の孔24は、中敷き1Aの上下方向に沿って見た場合に、上層部20の周縁側に位置するものほどその開口面積が概ね大きくなるように構成されていることが好ましい。このように構成すれば、中敷き1Aの上層部20の中央と周縁とで極端に大きな剛性差が生じてしまうことが防止可能となる。
【0060】
さらに、上層部20の上面21の表面積をSaとし、当該上層部20の上面21上における貫通孔群に含まれる複数の孔24の総開口面積をSbとした場合に、これらSa,Sbが、0.15≦Sb/(Sa+Sb)≦0.70の条件を満たしていることが好ましい。このように構成することにより、上層部20の柔軟性を担保しつつ、軽量化ならびに耐久性の確保が実現可能になる。
【0061】
一方、上層部20の厚みとしては、0.5mm以上2.0mm以下とされることが好ましい。これは、上層部20の柔軟性を担保しつつ、軽量化ならびに耐久性の確保を実現するためである。ここで、上層部20の厚みは、全域において同じ厚みであってもよいが、部位毎に厚みを異ならしめることとしてもよい。本実施の形態に係る中敷き1Aにあっては、上層部20の厚みは、非一様であり、具体的には0.8mm以上1.4mm以下の範囲の厚み分布を有するように構成されている。
【0062】
具体的には、図10に示すように、中敷き1Aにおいては、上層部20のうちの使用者のMP関節に対応する部位の足裏を支持する部分(図中において符号MPで示す部分)を含む領域である、前足部R1の前後方向における略中央の領域において、上層部20の厚みが、上層部20のうちの当該領域に隣接する領域の厚みよりも大きく構成されている。
【0063】
このように構成した場合には、着地時において相対的に大きな足圧が印加されることとなる中敷き1Aの、上述した使用者のMP関節に対応する部位の足裏を支持する部分における耐久性を高めることが可能になるととともに、当該足圧を効果的に分散させることが可能になり、高い緩衝性能を得ることが可能になる。
【0064】
図11は、図1に示す中敷きの上層部に設けられる複数の孔のマッピング方法を示す模式図である。次に、この図11を参照して、本実施の形態に係る中敷き1Aの製造に際して、上層部20に設けられる複数の孔24のマッピング方法について説明する。
【0065】
本実施の形態に係る中敷き1Aは、足のサイズ毎に予め準備された標準的な足裏の形状データに基づいて製造されるものであってもよいが、実際の使用者の足裏を計測することで得られる足裏の形状データに基づいて当該使用者の足に適合したものとして製造されるものであってもよい。以下においては、実際の使用者の足裏を計測することで得られる足裏の形状データに基づいて複数の孔24を中敷き1Aにマッピングする方法について説明する。
【0066】
まず、図11(A)に示すように、撮像手段等によって取得された使用者の足裏の形状データに基づいて中敷きモデルMが生成される。この中敷きモデルMには、上面、下面および周面が含まれ、このうちの上面が、上述した上層部20の上面21に対応することになる。なお、中敷きモデルMの上面は、1つまたは2つ以上の曲面または平面あるいはそれらの組み合わせのいずれによって構成されていてもよいが、通常は、使用者の足裏の形状に合わせた立体的な面として構成される。
【0067】
次に、図11(B)に示すように、生成された中敷きモデルMの上面の領域分割が行なわれる。具体的には、本マッピング方法では、中敷きモデルMの上面を互いに隣接する複数の四角形状の分割領域DAに分割する。これにより、中敷きモデルMの上面は、多数の四角形状の分割領域DAによって敷き詰められた状態となる。
【0068】
ここで、上記領域分割の際に使用されるアルゴリズムとしては、種々のものが想定されるが、たとえば四角形状の分割領域DAの各々の面積や辺の長さ、各頂点の内角等が、予め定めた所定の範囲内に収まることとなるように、その領域分割が実行されるものであることが好ましい。このようにすれば、中敷きモデルMの上面が、その全域において概ね均等に領域分割されることになる。
【0069】
次に、図11(C)に示すように、多数の四角形状の分割領域DAの各々の中心位置に、所定の大きさの円形状または楕円形状の描線24’がプロットされる。この描線24’が、上層部20に設けられる複数の孔24の輪郭線に対応するものとなり、これによって上層部20に設けられる複数の孔24のマッピングが完了することになる。
【0070】
このようなマッピング方法を適用することにより、上述した貫通孔群に含まれる複数の孔24が、上層部20の厚み方向に沿って見た場合に、当該上層部20の全域にわたって略均等に配置された中敷き1Aを容易に製造することが可能になる。
【0071】
なお、ここではその詳細な説明は行なわないものの、上述したアルゴリズムを適切に設定することにより、上層部20の周縁に沿って並ぶように上層部20の最も周縁寄りの部分に配置されることとなる複数の孔24a(すなわち、最外孔群に含まれる複数の孔)の各々を、上述した周囲領域A1(すなわち、上層部20の周縁と当該上層部20の周縁から内側に向けて4.0mmオフセットした位置との間に含まれる領域)に重ねて配置することが可能になる。
【0072】
図12ないし図14は、実施の形態1に係る中敷きの製造方法を示す模式図であり、それぞれ三次元積層造形法による中敷きの造形の開始時の状態、途中段階の状態および終了時の状態を示している。次に、これら図12ないし図14を参照して、本実施の形態に係る中敷きの製造方法について説明する。
【0073】
上述したように、本実施の形態に係る中敷き1Aは、光造形方式の三次元積層造形法にて製作された単一の部材からなる造形物2にて構成されている。中敷き1Aは、たとえば図12ないし図14に示す如くの三次元積層造形装置1000を用いることで造形できる。
【0074】
三次元積層造形装置1000は、光造形方式の三次元積層造形法にて造形物の製作を行なうものである。ここで、光造形方式の三次元積層造形法は、特定の波長の光によって硬化する光硬化性の液状樹脂または液状ゴムを主原料として、これに当該特定の波長の光を照射することで硬化部分を順次積層することにより、所望の形状の造形物を製作する造形法である。特定の波長の光としては、たとえば紫外線が利用され、その場合、主原料としては、紫外線硬化樹脂またはゴムが用いられることになる。なお、主原料としての上述した液状樹脂または液状ゴムは、一液性のものに限られず二液性のもの等であってもよい。
【0075】
図12ないし図14に示すように、三次元積層造形装置1000は、光源(不図示)と、貯留槽1001と、プラットフォーム1002と、昇降機構1003とを備えている。貯留槽1001は、原料としての液状樹脂200等を貯留する部位であり、プラットフォーム1002は、造形物2を保持して移動させるためのものである。昇降機構1003は、プラットフォーム1002を上下方向に移動させるものである。
【0076】
図12に示すように、三次元積層造形装置1000においては、まず、昇降機構1003によってプラットフォーム1002が移動させられることにより、当該プラットフォーム1002の下面が液状樹脂200等の液面に接触配置された状態とされ、この状態において光源から出射された特定の波長の光が液状樹脂200等の液面近傍に所定のパターンを描くように照射されることで露光される。これにより、液面近傍に位置する部分の液状樹脂200等がプラットフォーム1002の下面に付着した状態で層状に硬化し、第1硬化層が形成される。
【0077】
次に、昇降機構1003によってプラットフォーム1002が上方(すなわち図中矢印DR1方向)に所定量だけ移動され、第1硬化層の下面が液状樹脂200等の液面に接触配置された状態とされ、この状態において光源から出射された特定の波長の光が液状樹脂200等の液面近傍に所定のパターンを描くように照射されることで露光される。これにより、液面近傍に位置する部分の液状樹脂200等が第1硬化層の下面に付着した状態で層状に硬化し、第2硬化層が形成される。
【0078】
この第2硬化層の形成のための工程(すなわち、プラットフォーム1002の移動工程ならびに液状樹脂200等の露光工程)と同様の工程が繰り返されることにより、図13に示すように複数の硬化層が下方(すなわち図中に示す矢印DR2方向)に向けて順次積層され、これによって中敷き1Aの造形が進行する。この造形の進行課程においては、基層部10および上層部20の各々が同時に順次積層造形される。
【0079】
そして、図14に示すように、中敷き1Aのすべての部分が造形された後は、昇降機構1003によってプラットフォーム1002がさらに上方にリフトアップされ、中敷き1Aが貯留槽1001に貯留された液状樹脂200等から引き離されて三次元積層造形装置1000から取り出される。ここで、造形が完了した後の中敷き1Aは、未だ硬化が十分ではなく、比較的軟質な状態にある。そのため、取り出された中敷き1Aには、別途洗浄および熱処理が施されてその本硬化が行なわれ、さらに洗浄および乾燥処理が施されることにより、中敷き1Aの製作が完了する。
【0080】
このように、本実施の形態に係る中敷きの製造方法にあっては、光造形方式の三次元積層造形法により、後足部R3の後端側から前足部R1の前端側に向けて、基層部10および上層部20の各々が同時に順次積層造形される。すなわち、本実施の形態に係る中敷きの製造方法にあっては、中敷き1Aの前後方向が、複数の硬化層が順次積層されて中敷き1Aが積層造形される方向(すなわち、図中に示す矢印DR2方向)に合致することになる。
【0081】
このような製造方法に従って中敷き1Aを製造する場合には、プラットフォーム1002上における中敷き1Aの造形に必要なフットプリントが相対的に小さくなるため、図示するように、複数の中敷き1Aを同時に造形することが可能になる。したがって、当該製造方法に従って中敷き1Aを製造することにより、タクトタイムを短くすることが可能になるため、製造コストの削減が可能となって量産に適した中敷き1Aの製造方法とすることができる。
【0082】
なお、本実施の形態に係る中敷きの製造方法を採用した場合には、造形する中敷き1Aの形状とその造形時における中敷き1Aの姿勢(すなわち向き)との関係に起因し、造形中において、比較的軟質の中敷き1Aの形状が維持されることとなるように、図13および図14に示す如くの支持部2’を中敷き1Aとは別に形成することが必要になる。この支持部2’は、中敷き1Aの造形後において当該中敷き1Aから切り離して除去されるものである。
【0083】
図15は、実施の形態1に係る中敷きの他の製造方法を示す模式図である。次に、この図15を参照して、本実施の形態に係る中敷きの他の製造方法について説明する。
【0084】
図15に示すように、本実施の形態に係る中敷きの他の製造方法は、上述した本実施の形態に係る中敷きの製造方法(すなわち、図12ないし図14を参照して説明した中敷きの製造方法)と同様に、光造形方式の三次元積層造形法にて単一の部材からなる中敷き1Aを三次元積層造形装置1000を用いて製造するものである。しかしながら、本実施の形態に係る中敷きの他の製造方法は、中敷き1Aを積層造形する方向が、上述した本実施の形態に係る中敷きの製造方法のそれとは異なっている。
【0085】
具体的には、本実施の形態に係る中敷きの他の製造方法にあっては、光造形方式の三次元積層造形法により、基層部10の下面12と直交する方向に沿って基層部10の下面12側から基層部10の一部が順次積層造形され、その後これに引き続き、基層部10の残る一部と上層部20の一部とが同時に順次積層造形され、さらにその後これに引き続き、上層部20の残る一部が順次積層造形される。すなわち、本実施の形態に係る中敷きの製造方法にあっては、中敷き1Aの上下方向が、複数の硬化層が順次積層される方向(図中に示す矢印DR2方向)に合致することになる。
【0086】
このような製造方法に従って中敷き1Aを製造する場合には、プラットフォーム1002上における中敷き1Aの造形に必要なフットプリントが相対的に大きくなるため、複数の中敷き1Aを同時に造形することが困難になる。その一方で、図13および図14に示す如くの支持部2’が不要になるため、この点においてタクトタイムを短くすることが可能になるとともに、廃材(すなわち、中敷き1Aから切り離し後の支持部2’)が発生するといった問題も生じないことになり、この意味において製造コストの削減を図られることになる。
【0087】
ここで、上述した本実施の形態に係る中敷きの製造方法(すなわち、図12ないし図14を参照して説明した中敷きの製造方法)ならびに本実施の形態に係る他の中敷きの製造方法(すなわち、図15を参照して説明した中敷きの製造方法)のいずれにおいても、中敷き1Aは、光造形方式の三次元積層造形法にて造形される。その造形の際、中敷き1Aの上層部20には、上述した如くの複数の孔24が設けられることになる。
【0088】
この複数の孔24のうちの大部分は、前述のとおり、上層部20と基層部10との境界面において、基層部10の内部および外表面に設けられた孔に対して連通している。そのため、当該複数の孔24は、上述した洗浄処理の際に、基層部10の内部に残留する未硬化の液状樹脂を排出するための抜き孔となる。したがって、洗浄処理の後に行なわれる熱処理の際に、基層部10の内部に未硬化の液状樹脂が残留していることが抑制可能になることで形状欠陥が発生し難くなり、結果として意図した形状の中敷き1Aを製造することが可能になる。
【0089】
以上において説明したように、本実施の形態に係る中敷き1Aおよびその製造方法を採用することにより、高性能でありつつも足当たりがよくかつ耐久性に優れた中敷きおよびその製造方法とすることが可能になる。
【0090】
<第1および第2変形例>
図16および図17は、それぞれ第1ないし第2変形例に係る中敷きの上層部の厚み分布を示す模式図である。以下、これら図16および図17を参照して、上述した実施の形態1に基づいた第1および第2変形例に係る中敷き1A1,1A2について説明する。
【0091】
図16および図17に示すように、第1および第2変形例に係る中敷き1A1,1A2は、上述した実施の形態1に係る中敷き1Aと比較した場合に、上層部20が異なる厚み分布を有している点においてのみ、その構成が相違している。
【0092】
具体的には、図16に示す第1変形例に係る中敷き1A1においては、上層部20のうちの使用者のMP関節に対応する部位の足裏を支持する部分(図中において符号MPで示す部分)を含む領域である、前足部R1の前後方向における略中央の領域において、上層部20の厚みが、上層部20のうちの当該領域に隣接する領域の厚みよりも大きく構成されているのみならず、後足部R3においても、上層部20の厚みが、上層部20のうちの当該後足部R3に隣接する部分の厚みよりも大きく構成されている。この後足部R3は、前述のとおり、使用者の踵部を支持する部分である。
【0093】
したがって、このように構成した場合には、着地時において相対的に大きな足圧が印加されることとなる中敷き1Aの、上述した使用者のMP関節に対応する部位の足裏および踵部を支持する部分における耐久性を高めることが可能になるととともに、当該足圧を効果的に分散させることが可能になり、高い緩衝性能を得ることが可能になる。
【0094】
一方、図17に示す第2変形例に係る中敷き1A2においては、上層部20のうちの使用者の足裏の外足側の部位を支持する部分の厚みが、上層部20のうちの使用者の足裏の内足側の部位を支持する部分の厚みよりも大きく構成されている。
【0095】
このように構成した場合には、中敷き1Aの内足側の部分に対して外足側の部分における剛性が高くなるため、プロネーションと呼ばれる使用者の着地時の踵部の倒れ込みを効果的に抑制することが可能になり、サポート性能を高めることが可能になる。
【0096】
なお、中敷きの上層部20の厚み分布は、これら以外にも適宜変更が可能であり、当該中敷きに求められる性能に応じてその最適化を図ることとすればよい。ここで、中敷きに求められる性能は、当該中敷きが装着された履き物が使用される場面(日常的なウォーキング、トレーニング、スポーツの試合等)によって異なるものであり、たとえば当該場面がスポーツである場合には、その具体的なスポーツの種類に応じて要求されることとなる各種の動作(たとえば蹴り出し動作、切り返し動作、横移動動作等)に起因して必要とされる性能のことである。また、ここではその詳細な説明は省略するが、基層部10の厚み分布についても、同様に適宜変更が可能であり、当該中敷きに求められる性能に応じてその最適化を図ることとすればよい。
【0097】
<第3変形例>
図18は、第3変形例に係る中敷きの上層部に設けられる複数の孔のマッピング方法を示す模式図である。以下、この図18を参照して、上述した実施の形態1において説明した、上層部20に設けられる複数の孔24のマッピング方法とは異なる他のマッピング方法の一例について説明する。
【0098】
図18(A)に示すように、本変形例に係るマッピング方法においても、まずは、撮像手段等によって取得された使用者の足裏の形状データに基づいて中敷きモデルMが生成される。
【0099】
次に、図18(B)に示すように、生成された中敷きモデルMの上面の領域分割が行なわれることになるが、その際、本変形例に係るマッピング方法においては、中敷きモデルMの上面を互いに隣接する複数の三角形状の分割領域DAに分割する。これにより、中敷きモデルMの上面は、多数の三角形状の分割領域DAによって敷き詰められた状態となる。
【0100】
次に、図18(C)に示すように、多数の三角形状の分割領域DAの各々の中心位置に、所定の大きさの円形状または楕円形状の描線24’がプロットされる。この描線24’が、上層部20に設けられる複数の孔24の輪郭線に対応するものとなり、これによって上層部20に設けられる複数の孔24のマッピングが完了することになる。
【0101】
このようなマッピング方法を採用した場合にも、上述した実施の形態1の場合と同様に、上述した貫通孔群に含まれる複数の孔24が、上層部20の厚み方向に沿って見た場合に、当該上層部20の全域にわたって略均等に配置された中敷き1A3を容易に製造することが可能になる。
【0102】
<第4変形例>
図19は、第4変形例に係る中敷きの基層部が有する立体構造を説明するための模式図である。以下、この図19を参照して、上述した実施の形態1に基づいた第4変形例に係る中敷き1A4について説明する。
【0103】
第4変形例に係る中敷き1A4は、上述した実施の形態1に係る中敷き1Aと比較した場合に、基層部10が異なる立体構造を有している点においてのみ、その構成が相違している。
【0104】
具体的には、図19に示すように、第4変形例に係る中敷き1A4の基層部10は、立体壁構造からなる単位構造4Bが繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体3Bにて構成されている。より具体的には、複数の単位構造4Bは、幅方向(図中に示すX方向)、奥行き方向(図中に示すY方向)および高さ方向(図中に示すZ方向)の各々に沿って規則的にかつ連続的に繰り返し配列されている。図19においては、幅方向、奥行き方向および高さ方向においてそれぞれ隣接する3つの単位構造4Bのみを抜き出して示しており、その破断面には、濃い色を付している。
【0105】
立体壁構造からなる単位構造4Bは、並行する一対の曲面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状を有している。ここで、図示する単位構造4Bは、数学的に定義される三重周期極小曲面の一種であるシュワルツP構造を基準にこれに厚みを付けたものである。なお、極小曲面とは、与えられた閉曲線を境界にもつ曲面の中で面積が最小のものと定義される。
【0106】
このように構成された基層部10を中敷き1A4の下部側の部分に配置することにより、中敷き1A4に高い変形能をもたせることが可能になるため、緩衝性能に優れた履き心地のよい中敷きとすることができるとともに、着用時の安定性が高められた中敷きとすることも可能になる。また、基層部10が上記構成を有していることにより、その大きさに比して軽量の中敷きとすることもでき、さらには、通気性に優れた中敷きとすることもできる。
【0107】
なお、立体壁構造からなる単位構造4Bとしては、この他にも、ジャイロイド構造、シュワルツD構造等の三重周期極小曲面を基準にこれに厚みを付けたもの等が利用できる。さらには、立体壁構造からなる単位構造4Bとしては、並行する一対の平面によって外形が規定される壁にて形作られた立体的形状のものを利用してもよく、その場合の具体例としては、オクテット構造やキュービック構造等に厚みを付けたものが挙げられる。
【0108】
<実施の形態2>
図20は、実施の形態2に係る中敷きを右斜め上方前方側から見た斜視図である。図21は、図20に示す中敷きの図20中に示すXXI-XXI線に沿った模式断面図であり、図22は、図21中に示す領域XXIIの拡大図である。また、図23は、図20に示す中敷きの分解斜視図である。以下、これら図20ないし図23を参照して、本実施の形態に係る中敷き1Bについて説明する。なお、本実施の形態に係る中敷き1Bは、上述した実施の形態1に係る中敷き1Aに代えて、靴100に装着されて使用されるものである。
【0109】
図20および図21に示すように、中敷き1Bは、基層部10と、上層部20と、ライナー30とを備えている。基層部10および上層部20は、上述した実施の形態1に係る中敷き1Aと同様に単一の部材にて構成されており、光造形方式の三次元積層造形法にて製作された造形物2からなる。ライナー30は、この単一の部材からなる造形物2に固定されている。
【0110】
ライナー30は、織布または不織布からなる基布部31と、この基布部31の下面に設けられた粘着剤層32とを含んでいる。ここで、図23に示すように、ライナー30は、その粘着剤層32が上層部20の上面21に貼り付けられることにより、上層部20に固定されている。これにより、上層部20の上面21は、ライナー30によって覆われることになり、これに伴い、上層部20に設けられた複数の孔24からなる貫通孔群もまた、ライナー30によって覆われることになる(特に図21および図22参照)。
【0111】
これにより、着用時において使用者の足裏に接触する部分である中敷き1Bの上面は、ライナー30の基布部31にて構成されることになる。この基布部31は、上層部20よりも柔軟であるため、このように構成することにより、上述した実施の形態1に係る中敷き1Aに比較して、より足当たりが良好で履き心地のよい中敷きとすることができる。また、織布または不織布からなる基布部31は、上層部20よりもその表面が滑り易いものであるため、このように構成することにより、使用者が靴100を着用する際に、使用者の足がスムーズに靴100の内部に挿入されることになる。
【0112】
ここで、粘着剤層32は、基布部31の下面に予め塗布された糊にて構成されることが好ましい。このようにすれば、粘着剤層32が上層部20に設けられた孔24の内部に入り込んで当該孔24を塞いでしまうことが未然に防止できることになり、通気性の低下を抑制することができる。また、粘着剤層32を基布部31の下面の全域ではなく部分的に設けることとすれば、基布部31を上層部20に固定しつつも上層部20に設けられた複数の孔24のうちの一部を粘着剤層32によって覆わないようにすることが可能になるため、より確実に通気性を確保することが可能になる。
【0113】
この点、基布部31を接着剤にて上層部20に固定することとした場合には、接着剤が上層部20に設けられた孔24の内部に入り込むおそれがあり、通気性の低下が懸念される。しかしながら、接着剤を基布部31の下面の全域ではなく部分的に塗布することとすれば、基布部31を上層部20に固定しつつも上層部20に設けられた複数の孔24のうちの一部に接着剤が入り込まないようにすることは可能であり、通気性の低下を相当程度に抑制することは可能である。
【0114】
基布部31の材質としては、特にこれが制限されるものではないが、たとえば、通気性、放熱性、耐摩耗性等に優れた合成繊維であるポリエステル繊維、ナイロン繊維や、通気性、吸湿性等に優れた天然繊維である綿等が挙げられる。また、基布部31の厚みは、特にこれが制限されるものではないが、足裏と基布部31との間の摩擦や質感の向上を図るために、これを上層部20の厚みよりも小さくすることが好ましく、たとえば0.1mm以上2.0mm以下とすることが好ましく、一例としては1.0mm程度とされる。
【0115】
粘着剤層32の材質としては、特にこれが制限されるものではないが、たとえばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ゴム等を主成分とするものが好適に利用できる。また、粘着剤層32の厚みは、特にこれが制限されるものではないが、たとえば0.01mm以上0.5mm以下であることが好ましく、一例としては0.1mm程度とされる。
【0116】
このように構成された中敷き1Bとした場合にも、上述した実施の形態1に係る中敷き1Aと同様に、高性能でありつつも足当たりがよくかつ耐久性に優れた中敷きとすることができる。
【0117】
<実施の形態等における開示内容の要約>
上述した実施の形態1,2およびそれらの変形例等において開示した特徴点を要約すると、以下のとおりとなる。
【0118】
[付記1]
使用者の足の足趾部および踏付け部を支持する前足部と、使用者の足の踏まず部を支持する中足部と、使用者の足の踵部を支持する後足部とを含み、履き物の内底面に装着されて使用される中敷きであって、
装着状態においてその下面が履き物の内底面に面するように配置される基層部と、
上記基層部の上面を覆う上層部とを備え、
上記基層部は、立体格子構造および立体壁構造のうちの少なくともいずれかを単位構造としかつ当該単位構造が繰り返し複数配列されてなる三次元メッシュ構造体からなり、
上記上層部は、その厚み方向において当該上層部を貫通する複数の孔からなる貫通孔群が設けられてなるシート状構造体からなり、
上記貫通孔群に含まれる複数の孔の各々は、上記上層部の周縁に達することなく当該上層部の周縁から内側に入り込んだ位置に配設され、
上記上層部の周縁と当該上層部の周縁から内側に向けて4.0mmオフセットした位置との間に含まれる領域を周囲領域とした場合に、上記貫通孔群が、上記周囲領域に重なるとともに上記上層部の周縁に沿って並ぶように上記上層部の最も周縁寄りの部分に配置された複数の孔からなる最外孔群を含んでいる、中敷き。
【0119】
[付記2]
上記貫通孔群に含まれる複数の孔が、上記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、上記上層部の全域にわたって略均等に配置されている、付記1に記載の中敷き。
【0120】
[付記3]
上記貫通孔群に含まれる複数の孔のうち、上記前足部の前端側の領域に位置する孔が、上記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、略放射状に点列して配置され、
上記貫通孔群に含まれる複数の孔のうち、上記後足部の後端側の領域に位置する孔が、上記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、略放射状に点列して配置され、
上記貫通孔群に含まれる複数の孔のうち、上記前足部の後端側の領域に位置する孔と、上記中足部に位置する孔と、上記後足部の前端側の領域に位置する孔とが、上記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、いずれも略行列状に点列して配置されている、付記1または2に記載の中敷き。
【0121】
[付記4]
上記貫通孔群に含まれる複数の孔が、上記上層部の厚み方向に沿って見た場合に、上記上層部の周縁側に位置するものほどその開口面積が概ね大きくなるように構成されている、付記1から3のいずれかに記載の中敷き。
【0122】
[付記5]
上記貫通孔群に含まれる複数の孔が、円柱状または楕円柱状の形状を有している、付記1から4のいずれかに記載の中敷き。
【0123】
[付記6]
上記上層部の上面の表面積をSaとし、当該上層部の上面上における上記貫通孔群に含まれる複数の孔の総開口面積をSbとした場合に、0.15≦Sb/(Sa+Sb)≦0.70の条件を満たしている、付記1から5のいずれかに記載の中敷き。
【0124】
[付記7]
上記基層部の占積率が、5%以上50%以下である、付記1から6のいずれかに記載の中敷き。
【0125】
[付記8]
上記上層部の厚みが、非一様である、付記1から7のいずれかに記載の中敷き。
【0126】
[付記9]
上記上層部のうちの使用者のMP関節に対応する部位の足裏を支持する部分の厚みが、上記上層部のうちの当該部分に隣接する部分の厚みよりも大きい、付記8に記載の中敷き。
【0127】
[付記10]
上記後足部に含まれる部分の上記上層部の厚みが、上記上層部のうちの当該部分に隣接する部分の厚みよりも大きい、付記8または9に記載の中敷き。
【0128】
[付記11]
上記上層部のうちの使用者の足裏の外足側の部位を支持する部分の厚みが、上記上層部のうちの使用者の足裏の内足側の部位を支持する部分の厚みよりも大きい、付記8から10のいずれかに記載の中敷き。
【0129】
[付記12]
上記基層部および上記上層部が、単一の部材にて構成されている、付記1から11のいずれかに記載の中敷き。
【0130】
[付記13]
単一の部材からなる上記基層部および上記上層部が、光造形方式の三次元積層造形法によって製作された単一の造形物からなる、付記12に記載の中敷き。
【0131】
[付記14]
上記上層部の上面を覆うライナーをさらに備え、
上記ライナーが、織布または不織布からなる、付記1から13のいずれかに記載の中敷き。
【0132】
[付記15]
上記ライナーが、上記上層部側に位置する主面に設けられた粘着剤層を含み、
上記粘着剤層を介して上記ライナーが上記上層部の上面に貼り付けられることにより、上記ライナーが上記上層部に固定されている、付記14に記載の中敷き。
【0133】
[付記16]
付記13に記載の中敷きを製造するための製造方法であって、
上記基層部が製作される工程と、
上記上層部が製作される工程とを備え、
上記基層部が製作される工程および上記上層部が製作される工程が、光造形方式の三次元積層造形法により、上記後足部の後端側から上記前足部の前端側に向けて、上記基層部および上記上層部の各々が同時に順次積層造形されることにより、上記造形物が造形される工程を含んでいる、中敷きの製造方法。
【0134】
[付記17]
付記13に記載の中敷きを製造するための製造方法であって、
上記基層部が製作される工程と、
上記上層部が製作される工程とを備え、
上記基層部が製作される工程および上記上層部が製作される工程が、光造形方式の三次元積層造形法により、上記基層部の下面と直交する方向に沿って上記基層部の下面側から上記基層部の少なくとも一部が順次積層造形され、その後これに引き続き、上記上層部の少なくとも一部が順次積層造形されることにより、上記造形物が造形される工程を含んでいる、中敷きの製造方法。
【0135】
<その他の形態等>
上述した実施の形態1,2およびそれらの変形例においては、単一の部材からなる基層部10および上層部20を光造形方式の三次元積層造形法にて製作した場合を例示して説明を行なったが、これらを他の方式の三次元積層造形法にて製作することも当然に可能である。また、これら基層部10および上層部20を必ずしも単一の部材にて構成する必要はなく、これらをそれぞれ別個に製作した後に接合することとしてもよい。その場合に、基層部10については、その構造上、三次元積層造形法にて製作することが好ましいが、上層部20については、その構造上、必ずしも三次元積層造形法にて製作する必要はなく、射出成形やシート成形等、各種の方法にて製作することが可能である。
【0136】
また、上述した実施の形態1,2およびそれらの変形例においては、貫通孔群に含まれる複数の孔24を上層部20の全域にわたって略均等に設けた場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこれらを均等に設ける必要はなく、上層部20の一部の領域に偏在させて設けることとしてもよい。たとえば、前足部R1および後足部R3に複数の孔24を設ける一方、中足部R2には複数の孔24を設けないこととしてもよい。ただし、その場合にも、前足部R1および後足部R3に設けられた複数の孔24からなる貫通孔群に、周囲領域A1に重なるとともに上層部20の周縁に沿って並ぶ複数の孔24aからなる最外孔群を含ませることは必要である。さらには、上層部20に設けられた貫通孔群に含まれる複数の孔24のすべてを、周囲領域A1に重なるとともに上層部20の周縁に沿って並ぶ複数の孔24aからなる最外孔群にて構成する(すなわち、内側領域A2にのみ重なる孔24を一切設けない)こととしてもよい。
【0137】
また、上述した実施の形態1,2およびそれらの変形例において示した基層部10の造形の際に、その外側表面に必要に応じてたとえば文字やロゴ、模様、認証識別コードといったシンボル部または意匠部をさらに造形することとしてもよい。ただし、その場合には、これらシンボル部や意匠部が足当たりや緩衝性能に悪影響を及ぼすことがないように、これらを基層部10の周面13に設けたり、基層部10の厚みが相対的に大きい部分やあるいは上層部20の厚みが大きい部分に対応した部分(たとえば、前足部R1の後端寄りの部分、中足部R2の前端寄りの部分、中足部R2の後端から後足部R3の前端寄りにかけての部分等)に設けたりすることが好ましい。
【0138】
加えて、上述した実施の形態2においては、ライナー30をこれに設けた粘着剤層32を用いて上層部20に貼り付けるように構成した場合を例示して説明を行なったが、たとえば接着剤の塗布による接合に代表されるような他の手法によって基布部31を上層部20に固定することとしてもよい。
【0139】
さらには、上述した実施の形態およびそれらの変形例において開示した特徴的な構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、相互に組み合わせることが可能である。
【0140】
このように、今回開示した上記実施の形態およびそれらの変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0141】
1A,1A1~1A4,1B 中敷き、2 造形物、2’ 支持部、3A,3B 三次元メッシュ構造体、4A,4B 単位構造、10 基層部、11 上面、12 下面、13 周面、20 上層部、21 上面、22 下面、23 周面、24 (貫通孔群に含まれる)孔、24a (最外孔群に含まれる)孔、24’ 描線、30 ライナー、31 基布部、32 粘着剤層、100 靴、110 ソール、120 アッパー、121 履き口、200 液状樹脂、1000 三次元積層造形装置、1001 貯留槽、1002 プラットフォーム、1003 昇降機構、A1 周囲領域、A2 内側領域、BL 境界線、DA 分割領域、M 中敷きモデル、R1 前足部、R2 中足部、R3 後足部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
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図23