(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007159
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電動ハンド機構
(51)【国際特許分類】
B25J 15/10 20060101AFI20240111BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20240111BHJP
F16H 21/20 20060101ALI20240111BHJP
F16H 21/02 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B25J15/10
F16H25/20 E
F16H21/20 B
F16H21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108436
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】染谷 和志
【テーマコード(参考)】
3C707
3J062
【Fターム(参考)】
3C707ES03
3C707ES04
3C707ES05
3C707ET03
3C707HS27
3C707HT19
3J062AA38
3J062AB27
3J062CB02
3J062CB12
3J062CB27
3J062CB32
3J062CB45
3J062CD02
3J062CD22
(57)【要約】
【課題】軸方向寸法が抑えられた電動ハンド機構を提供する。
【解決手段】電動ハンド機構100は、回転電機の回転軸に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が内周面に形成され、外周面から径方向外側に突出した複数の腕部4aが周方向等間隔に形成されたナット4と、前記腕部の数と同数の、略L字状のフィンガー6とを備える。複数の前記フィンガーの一端部がそれぞれ複数の前記腕部に対し第1リンクピン5により接合され、複数の前記フィンガーの屈曲部が静止体3aに対し第2リンクピン7により接合されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機の回転軸に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が内周面に形成され、外周面から径方向外側に突出した複数の腕部が周方向等間隔に形成されたナットと、
前記腕部の数と同数の、略L字状のフィンガーと
を備え、
複数の前記フィンガーの一端部がそれぞれ複数の前記腕部に対し第1リンクピンにより接合され、複数の前記フィンガーの屈曲部が静止体に対し第2リンクピンにより接合されている、
電動ハンド機構。
【請求項2】
複数の前記フィンガーの先端部にそれぞれ取り付けられた複数の爪部をさらに備える請求項1に記載の電動ハンド機構。
【請求項3】
請求項1に記載の電動ハンド機構を複数備え、各電動ハンド機構において前記腕部及び前記フィンガーの数が異なり、複数の前記電動ハンド機構が同一の回転電機の回転軸に取付け可能に構成されている、電動ハンド機構のシリーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動ハンド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電動グリッパは、ワークを把持するグリッパ部と、該グリッパ部を開閉するための駆動源であるモータと、グリッパ部を開閉させるリンク機構と、モータからの回転駆動力を、リンク機構を構成する一対のリンク部材へと伝達する送りねじ部とを備える駆動機構を有する。送りねじ部は、一端側がモータの駆動軸に対して同軸上に外嵌され、その外周面に雄ねじが形成されたねじ軸と、内周側に雌ねじが形成され、ねじ軸の他端側に螺合される送りナットと、送りナットを軸線方向に摺動自在に収納したガイド筒とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電動グリッパにおいては、送りナットを軸線方向に摺動自在に収納するガイド筒と軸方向に並ぶように、グリッパ部を開閉させるリンク機構が配置される。そのため、電動グリッパの軸方向寸法が大きくなりやすい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み、軸方向寸法が抑えられた電動ハンド機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動ハンド機構は、回転電機の回転軸に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が内周面に形成され、外周面から径方向外側に突出した複数の腕部が周方向等間隔に形成されたナットと、前記腕部の数と同数の、略L字状のフィンガーとを備え、複数の前記フィンガーの一端部がそれぞれ複数の前記腕部に対し第1リンクピンにより接合され、複数の前記フィンガーの屈曲部が静止体に対し第2リンクピンにより接合されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、軸方向寸法が抑えられた電動ハンド機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】カバー部を取り外した状態の3爪電動ハンドの平面図である。
【
図4】カバー部を取り外した状態の3爪電動ハンド機構の斜視図である。
【
図5】カバー部を取り外した状態の3爪電動ハンド機構の側面図である。
【
図8】カバー部を取り外した状態の4爪電動ハンド機構の平面図である。
【
図9】カバー部を取り外した状態の4爪電動ハンド機構の側面図である。
【
図10】カバー部を取り外した状態の4爪電動ハンド機構の斜視図である。
【
図13】カバー部を取り外した状態の2爪電動ハンド機構の斜視図である。
【
図14】平行移動型の2爪電動ハンド機構の平面図である。
【
図21】回転軸に螺合した、2爪電動ハンド機構のナットの平面図である。
【
図26】モータに組みつけられた3爪電動ハンド機構の側面図である。
【
図27】平行移動型の2爪電動ハンド機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を以下に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0010】
<第1実施形態(3爪電動ハンド)>
図1~
図5に示すように、モータ1に対し、3爪電動ハンド機構100が組み付けられている。詳細を以下に説明する。
【0011】
モータ1の筐体の外形は略直方体であり、該筐体の一つの面(「取付面」と呼ぶ)に形成された穴部からモータ1の回転軸2が突出している。回転軸2の先端部には、外周面に雄ねじが形成されたねじ軸部2aが設けられている。
【0012】
3爪電動ハンド機構100は、ベース部3とナット4とフィンガー6と爪8とを備えている。ベース部3は、略板状であり、モータ1の筐体の取付面と軸方向に対向するように同取付面に取り付けられている。ベース部3には穴部が形成され、該穴部を回転軸2が貫通している。ベース部3の、モータ1と対向する面とは反対側の面に、回転軸2の突出方向と略同方向に延びる3個のフィンガー支持部3aが周方向等間隔に設けられている。
【0013】
ナット4は略筒状であり、内周面にねじ軸部2aの雄ねじを受け入れる雌ねじが形成されている。ナット4の外周面には、径方向外側に突出した3個の腕部4aが周方向等間隔に設けられている。3個の腕部4aはそれぞれ、3個のフィンガー支持部3aと周方向位置が対応している。3個の腕部4aの各々の径方向位置は、対応するフィンガー支持部3aの径方向位置よりも内側に位置している。
【0014】
3個のフィンガー6はいずれも同寸法で外形が略L字状であり、基端部6aと屈曲部と先端部6bとを有している。基端部から屈曲部までは略径方向外側に向かって延びており、屈曲部から先端部6bまでは回転軸2の突出方向と略同方向に延びている。
【0015】
3個の基端部6aの各々には、径方向に長い長穴部が略周方向に穿設されている。3個の腕部4aの各々には、径方向位置が上記長穴部と略一致する穴部が略周方向に穿設されている。そして、ナット4の腕部4aの穴部とフィンガー6の基端部6aの長穴部とを貫通するようにリンクピン5が設けられている。基端部6aは、腕部4aに対しリンクピン5のまわりに揺動可能なように接合されている。
【0016】
3個のフィンガー6の各々の屈曲部には、略周方向に穴部が穿設されている。3個のフィンガー支持部3aの各々には、フィンガー6の屈曲部の穴部と径方向位置が一致する穴部が略周方向に穿設されている。各フィンガー支持部3aの穴部と、当該フィンガー支持部に対応するフィンガー6の屈曲部の穴部とを貫通するようにフィンガー開閉ピン7が設けられている。フィンガー6の屈曲部は、静止体であるフィンガー支持部3aに対しフィンガー開閉ピン7のまわりに揺動可能なように接合されている。
【0017】
3個のフィンガー6の先端部6bにはそれぞれ、回転軸2の突出方向と略同方向に延びる爪8が取り付けられている。
【0018】
ベース部3には、ベース部3の穴部から突出した回転軸2と、ナット4と、フィンガー支持部3aと、フィンガー6の基端部6a及び屈曲部とを覆うように、カバー部3bが取り付けられている。このカバー部3bは、略筒状であって軸方向一端部が閉塞している。その閉塞部には、フィンガー6の屈曲部より先の部分が通り抜けることのできる開口部が形成されている。。
【0019】
続いて、3爪電動ハンド機構100の動作を説明する。
回転軸2のねじ軸部2aに螺合するナット4は、3つの腕部4aに周方向等間隔に配置された3つのフィンガー支持部3aにはそれぞれフィンガー開閉ピン7を介して3つのフィンガー6が接合されている。さらに、3つのフィンガー6と3つのナット4の腕部4aとはそれぞれリンクピン5を介して接合されている。このように、ナット4は回転が規制されている。モータ1の駆動により、回転軸2が周方向一方向に回転するとナット4は軸方向一方向に変位し、回転軸2が周方向他方向に回転するとナット4は軸方向他方向に変位する。
【0020】
ナット4が軸方向に往復運動すると、リンクピン5を介して腕部4aと連結された3つのフィンガー6の先端部6bは、フィンガー開閉ピン7を支点として、略径方向(矢印Y1及びY2の方向)に往復運動する。3つのフィンガーは、同じタイミングで径方向外側(矢印Y1の方向)及び径方向内側(矢印Y2の方向)に運動する。このような3つのフィンガー6の往復運動により、3つの爪8が開閉する。このように、一つのモータ2の駆動により、3爪電動ハンド機構としての開閉運動が実現する。
【0021】
上記の実施形態によれば、ナット4は回転軸2のねじ軸部2aに螺合しているとともに、フィンガー支持部3によって支持されたフィンガー6とナット4の腕部4aとが接合している。そのため、ナット4の径方向中心位置が保たれ、ナット4の軸方向の移動がスムーズに行われる。
【0022】
<第2実施形態(4爪電動ハンド)>
図6~
図10に、第1実施形態に係る3爪電動ハンド機構100を変形して成る4爪電動ハンド機構200を示す。3爪電動ハンド機構100における符号X(Xは、
図1~
図5に示したいずれかの符号)は、4爪電動ハンド機構200における符号20Xと対応している。ナット204の外周面には、径方向外側に突出した4個の腕部204aが周方向等間隔に設けられている。4個のフィンガー支持部203aは周方向等間隔に設けられている。このような4爪電動ハンド機構200においても、ナット204の径方向中心位置が保たれ、ナット204の軸方向の移動がスムーズに行われる。
【0023】
<第3実施形態(2爪電動ハンド)>
図11~
図13に2爪電動ハンド機構300を示す。3爪電動ハンド機構100における符号X(Xは、
図1~
図5に示したいずれかの符号)は、2爪電動ハンド機構300における符号30Xと対応している。ナット304の外周面には、径方向外側に突出した2個の腕部304aが周方向等間隔に設けられている。2個のフィンガー支持部303aは周方向等間隔に設けられている。2爪電動ハンド機構300は3爪電動ハンド機構100と基本的に同様の動作であり、ナット304の径方向中心位置が保たれ、ナット304の軸方向の移動がスムーズに行われる。
【0024】
フィンガー306は、屈曲部を有するL字状であり、同屈曲部を支点として動く。そのため、フィンガー306の先端部306b及び同先端部に取り付けられた爪308の動く方向は、回転軸2の径方向と平行ではない。
【0025】
3爪電動ハンド機構100及び4爪電動ハンド機構200とは異なり、2爪電動ハンド機構300においてはねじ軸部2aが2個のフィンガー306のバランスを取っている。そのため、ねじ軸部2aには、2個のフィンガー306のバランスをとるための強度が必要である。ねじ軸部2aの強度はフィンガー306の把持力に耐えられる程度であれば良い。このねじ軸部2aの強度により、従来は必要であった、ナットを軸線方向に摺動自在に収納するガイド筒を省くことができる構造となっている。
【0026】
<第4実施形態(平行移動型の2爪電動ハンド)>
図14及び
図15に、2個の爪413が回転軸2の径方向と平行に移動する平行移動型の2爪ハンド機構400を示す。符号403~405は、第3実施形態に係る2爪電動ハンド機構300の符号303~305と対応している。そして、2爪ハンド機構300のL字状のフィンガー306が、2爪電動ハンド機構400においてはL字状の中間ヒンジ406に置き換わっている。この中間ヒンジ406までは、
図11~
図13に示した2爪ハンド機構300と同様の動作になる。
【0027】
中間ヒンジ406は、基端部がリンクピン405を介してナット404の腕部に接合され、屈曲部がピン407を介してフィンガー支持部403aに接合されている。中間ヒンジ406の先端部には、略周方向に延びるフィンガー連結ピン408を介して、回転軸2の突出方向と同方向に延びる平行フィンガー410の基部が接合されている。平行フィンガー410の先端部には爪413が取り付けられている。
【0028】
平行フィンガー410はガイドブロック412へ締結されており、ガイドブロック412は回転軸2の径方向と平行に設けられたガイドレール411に沿って運動する。ガイドレール411はガイドベース409に締結されており、ガイドベース409はベース部403に締結されている。
【0029】
これにより、回転軸2及びねじ軸部2aが回転すると、ナット404を通じてフィンガー410まで動力が伝わりフィンガー410及び爪413が回転軸2の径方向と平行に開閉運動を行う。
【0030】
図16~
図20に、非平行移動タイプの2爪電動ハンド機構300を再び示す。この2爪電動ハンド機構300により、把持対象となるワークを把持しようとする場合を以下に説明する。
【0031】
2個の爪308の両方がワークに接触し、一方の爪308にかかる力LFと他方の爪308にかかる力RFとのバランスが取れている場合には、ナット304が軸方向に対して傾こうとするような偏った負荷がナット304に加わることはない。これに対し、いずれか一方の爪308がワークに接触し他方の爪308がワークに接触していない場合、ナット304が軸方向に対して傾こうとするような偏った負荷がナット304に加わる。
【0032】
例えば、
図17の紙面左側の爪308に力LFが加わり、紙面右側の爪308に力RFが加わっていない場合、紙面左側のフィンガー開閉ピン307を支点として紙面左側のフィンガー306から紙面左側のリンクピン305に力が伝わる。この力を
図19のベクトルFにより示す。
図20に示すように、ベクトルFは、径方向のベクトルFx(=Fcosθ)と軸方向のベクトルFy(=Fsinθ)とに分けることができる。ナット304の位置によってベクトルFと径方向とのなす角度θが変化し、それに応じてベクトルFの大きさが変化する。そのため、角度θが最小のときに径方向の力Fxが最大となる。
【0033】
しかし、角度θが最大のときは、ねじ軸2aを支えている支点O(回転軸2とねじ軸部2aとの境界面の中心)からベクトルFの始点までの軸方向の距離Lが比較的大きいため、回転軸2の撓み量が大きくなることも考えられる。
【0034】
そのため、角度θが最小、最大の双方で回転軸2の撓み量を確認する必要がある。撓み量は、回転軸2の材質や太さにもよる。材質は当然として、ヤング率が高い材質を使用すると回転軸2の撓み量を抑えることができる。
実際には、硬度がある鉄、ステンレス材等を回転軸2に用いれば撓み量を小さくすることができる。
【0035】
回転軸2の撓み量は次式により計算される。
【数1】
ただし、
Wmaxは、撓み量[mm]であり、
Pは、回転軸に対してのラジアル(軸方向)荷重[N]であり、
Lは、ねじ軸にかかるラジアル荷重点(ナットヒンジの爪側のネジ軸接触部)と、ねじ軸支点Oとの軸方向距離[mm]であり、
Eは、ヤング率[MPa]であり、
Iは、断面2次モーメント[mm
4]であり、
dは、ねじ軸直径(ねじの谷径)[mm]である。
ねじ軸部の撓み量は、爪の停止精度に影響することから、撓みを極力抑える必要がある。撓み量の少ない設計をすることにより、ナットを軸線方向に摺動自在に収納するガイド筒の無い滑りネジハンド機構が得られる。
ちなみに爪にかかる力LFはX´/Xで算出される。X´は、負荷地点(フィンガー開閉ピン307の中心)からの距離である。Xは、負荷地点とリンクピン305の中心との距離である。
【0036】
図21~
図24を参照してナット304の姿勢について説明する。
ナット304とねじ軸部2aのねじ隙間Hは、ナット304の姿勢に影響する。隙間Hが大きい程、一方の爪308から荷重がかかったときに、かかった荷重方向と略反対方向にナット304の傾きが発生する。力LFが一方の爪308に加わるとナットはベクトルFの方向に傾く。
従来のハンドはこの傾きをなくす、または少なくするために、ナットを軸線方向に摺動自在に収納するガイド筒が設けられていた。
【0037】
これに対し、本発明の実施形態に係る電動ハンド機構は、ねじ軸の強度と共にナットとねじ軸の隙間Hを極力小さくすることでナットの姿勢を保つものである。隙間Hが0.005mm~0.02mmであればグリースもよく循環し、引っ掛かりもなくスムーズにナットが変位できる。また、リンクピン305もねじ軸に極力近い場所に設置することで、ナットの傾きを最小限に抑えることができる。
図22に一例として示すように、2つのリンクピン305の中心間距離R305は、ねじ軸部2aの有効径R2aの2.5倍である。例えば、隙間Hが0.01mmの隙間ノズルの場合、ナットのリンクピン部は0.025(=0.01×2.5)mm程斜めに傾くが、これは、ガイド筒がある場合に近いガイドの精度である。更に隙間Hが0.005mmの場合、傾きが0.0125(=0.005×2.5)mmとなり、ガイド筒によりガイドした場合と略同等の精度である。
リンクピンをネジ軸中心に近づければ、ネジとナットの隙間の影響が更に小さくなり、ナットの姿勢をガイド筒無くして精度良くガイドできるようになる。
【0038】
また、ねじ軸部2aのリード角が45度以下の場合はナットが外力により動くことなくセルフロック機構が働く。つまり、モータの電源オフ時や停電時であってもフィンガーの位置が保持されるため、把持対象のワークが落下してしまうことはない。
【0039】
また、ねじ軸部のリードは、目的によって変えることもできる。速度を早くしたい場合は、リードの送り量を大きくすることができる。あるいは、分解能が必要な場合や把持力が必要な場合はリードを小さくすることができる。
【0040】
図25に非平行移動型の2爪電動ハンド機構300を再び示し、
図26に3爪電動ハンド機構100を再び示し、
図27に平行移動型の2爪電動ハンド機構400を再び示す。モータ1のインローや取付寸法、ねじ軸部2aの仕様が共通であれば、同一のモータ1に対して、電動ハンド機構100、300及び400並びに4爪電動ハンド機構200を、選択的に取り付けることができる。モータの共有化や取付寸法とねじ軸部の仕様の共通化により、目的に応じた電動ハンド機構を選択してモータと組み合わせて使用することが出来る。
【0041】
以上説明してきたように、本発明の上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)ナットを軸線方向に摺動自在に収納するガイド筒が不要となり、コンパクトな電動ハンド機構が得られる。
(2)ナットの径方向外側に最初のリンク機構を設けることにより、軸方向寸法がコンパクトな電動ハンド機構が実現できる。
(3)同一のモータに対し、取付部、ねじ部の仕様を合わせることで、複数の電動ハンド機構(3爪電動ハンド機構、4爪電動ハンド機構、非平行移動型の2爪電動ハンド機構、平行移動型の2爪電動ハンド機構)からなるシリーズからいずれかの電動ハンド機構を選択して取り付けることができる。
【0042】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
回転電機の回転軸に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が内周面に形成され、外周面から径方向外側に突出した複数の腕部が周方向等間隔に形成されたナットと、
前記腕部の数と同数の、略L字状のフィンガーと
を備え、
複数の前記フィンガーの一端部がそれぞれ複数の前記腕部に対し第1リンクピンにより接合され、複数の前記フィンガーの屈曲部が静止体に対し第2リンクピンにより接合されている、
電動ハンド機構。
[付記2]
複数の前記フィンガーの先端部にそれぞれ取り付けられた複数の爪部をさらに備える付記1に記載の電動ハンド機構。
[付記3]
付記1に記載の電動ハンド機構を複数備え、各電動ハンド機構において前記腕部及び前記フィンガーの数が異なり、複数の前記電動ハンド機構が同一の回転電機の回転軸に取付け可能に構成されている、電動ハンド機構のシリーズ。
【0043】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 モータ
2 回転軸
2a ねじ軸部
3、203、303、403 ベース部
3a、203a、303a、403a フィンガー支持部
3b、203b、303b、403b カバー部
4、204、304、404 ナット
4a、204a、304a、404a 腕部
5、205、305、405 リンクピン
6、206、306 フィンガー
6a 基端部
6b 先端部
7、207、307 フィンガー開閉ピン
8、208、308 爪