(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071604
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】組成物、及びポリカーボネートポリシロキサン
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240517BHJP
C08G 64/00 20060101ALI20240517BHJP
C08G 64/18 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C08L69/00
C08G64/00
C08G64/18
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051241
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2022099349の分割
【原出願日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】63/023,904
(32)【優先日】2020-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20196451
(32)【優先日】2020-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー トーマス ピンギトーレ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー フランク ニーマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ アラン マフード
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン フィリップ ギント
(57)【要約】
【課題】10μm未満の厚さを有するフィルムとして押し出される改善された能力を示す押出組成物を提供すること。
【解決手段】組成物の全重量に対して、第1のビスフェノールモノマー由来の第1のカーボネート単位、および第2のビスフェノールモノマー由来の第2のカーボネート単位を含む、65~99.95重量%のコポリカーボネートと、ISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される5μm超および10μm以下のメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む、0.05~2重量%の粗面化剤とを含むことを特徴とする組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の全重量に対して、
第1のビスフェノールモノマーのホモポリカーボネートがASTM E1640-13に従って1℃/分の加熱速度で動的機械分析により決定される155℃未満のガラス転移温度を有するような前記第1のビスフェノールモノマー由来の第1のカーボネート単位、および
第2のビスフェノールモノマーのホモポリカーボネートがASTM E1640-13に従って1℃/分の加熱速度で動的機械分析により決定される155℃以上のガラス転移温度を有するような前記第2のビスフェノールモノマー由来の第2のカーボネート単位
を含む、65~99.95重量%のコポリカーボネートと、
ISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される5μm超および10μm以下のメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む、0.05~2重量%の粗面化剤と
を含むことを特徴とする組成物。
【請求項2】
ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して
35~64.95モル%の第1のカーボネート単位と、
35~64.95モル%の第2のカーボネート単位と、
各々が2価のカーボネート基および2価のポリシロキサン基を含み、前記2価のポリシロキサン基が
【化1】
(式中、各出現のR
3は、独立して、C
1~C
13ヒドロカルビル基である)
の構造を有する5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む、0.05~0.16モル%の第3のカーボネート単位と
を含む、ポリカーボネートポリシロキサンであって、
前記第1のカーボネート単位が、
【化2】
の構造を有するビスフェノールAカーボネート単位であり、
前記第2のカーボネート単位が、
【化3】
の構造を有するビスフェノールイソホロンカーボネート単位であり、
前記ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される18,000~30,000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とするポリカーボネートポリシロキサン。
【請求項3】
請求項2に記載のポリカーボネートポリシロキサンであって、第3のカーボネート単位が
【化4】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、 R
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
13ヒドロカルビル基であり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)である)
の構造を有することを特徴とするポリカーボネートポリシロキサン。
【請求項4】
請求項2に記載のポリカーボネートポリシロキサンであって、
前記ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される20,000~30,000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とするポリカーボネートポリシロキサン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、いずれもその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年5月13日出願の米国仮特許出願第63/023,904号の利益を主張する、2020年9月16日出願の欧州特許出願第20196451.7号に対する優先権を主張する。
【0002】
本出願は、耐熱性押出フィルム、押出フィルムを含むフィルムコンデンサおよび押出フィルムを形成するのに有用な耐熱性ポリカーボネートポリシロキサンに関する。
【背景技術】
【0003】
高い体積エネルギー密度、高い動作温度および長寿命を有する静電フィルムコンデンサは、パルスパワー、自動車および産業用電子機器に不可欠な部品である。コンデンサは、電気絶縁(誘電)フィルムの薄層により分離された2つの平行な導電板を有する、本質的にエネルギーを蓄える装置である。電圧が板を横切って印加されると、誘電体中の電場が電荷を移動させ、したがってエネルギーが蓄えられる。コンデンサに蓄えられるエネルギーの量は、フィルムを形成するために使用した絶縁材料の比誘電率および絶縁破壊電圧、ならびにフィルムの寸法(総面積および厚さ)に依存する。コンデンサが蓄積できるエネルギー量を最大化するために、フィルムの比誘電率および絶縁破壊電圧は最大化され、フィルムの厚さは最小化される。コンデンサにおける誘電材料の物性は、コンデンサの性能の決定因子であるため、コンデンサにおける誘電材料の物性のうちの1つまたは複数の改善は、コンデンサ部品において対応する性能の改善をもたらすことができ、通常、電子機器システムまたはこれが埋め込まれた製品の性能および寿命を増強する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高温ポリカーボネートコポリマーは、静電フィルムコンデンサの形成に用いられてきた。例えば、マフード(Mahood)らの米国特許出願公開第2016/0060403A1号および米国特許出願公開第2019/0153217A1号を参照のこと。しかし、10μm未満の厚さを有するフィルムとして押し出される改善された能力を示す押出組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して
【化1】
(式中、R
1はC
6~C
16の2価の芳香族基である)
の構造を有する20~69.95モル%の第1のカーボネート単位と、
【化2】
[式中、R
2は
【化3】
(式中、R
fおよびR
gは、各々独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキル、C
1~C
12アルコキシルまたはC
2~C
12アルケニルであり、各R
hは水素であるか、または2回出現のR
hはこれらが結合する炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、各出現のR
iは、独立して、C
1~C
6アルキルであり、R
jは水素、C
1~C
6アルキルまたは1、2、3、4もしくは5個のC
1~C
6アルキル基で任意に置換されているフェニルであり、R
kは、独立して出現ごとに、C
1~C
3アルキルまたはフェニル、好ましくはメチルであり、X
bはC
6~C
12アリーレン、C
4~C
18シクロアルキレン、C
4~C
18シクロアルキリデンまたは-C(R
m)(R
n)-(式中、R
mは水素、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
12アリールであり、R
nはC
6~C
10アルキル、C
6~C
8シクロアルキルまたはC
6~C
12アリールである)であるか、またはX
bは-(Q
a)
x-G-(Q
b)
y-(式中、Q
aおよびQ
bは、各々独立して、C
1~C
3アルキレンであり、GはC
3~C
10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1である)であり、j、mおよびnは、各々独立して、0、1、2、3または4である)
の構造を有するC
17~C
40の2価の芳香族基である]
の構造を有する30~79.95モル%の第2のカーボネート単位と、2価のカーボネート基および2価のポリシロキサン基を含み、2価のポリシロキサン基が
【化4】
(式中、各出現のR
3は、独立して、C
1~C
13ヒドロカルビル基である)
の構造を有する5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む、0.05~0.4モル%の第3のカーボネート単位とを含む、ポリカーボネートポリシロキサンであって、ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される18,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリカーボネートポリシロキサンが70~79.95モル%の第2のカーボネート単位を含む場合、ポリカーボネートポリシロキサンが18,000~24,000g/モルの重量平均分子量を有する、前記ポリカーボネートポリシロキサンである。
【0006】
別の実施形態は、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して
【化5】
(式中、R
1はC
6~C
16の2価の芳香族基である)
の構造を有する20~69.95モル%の第1のカーボネート単位と、
【化6】
[式中、R
2は
【化7】
(式中、R
fおよびR
gは、各々独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキル、C
1~C
12アルコキシルまたはC
2~C
12アルケニルであり、各R
hは水素であるか、または2回出現のR
hはこれらが結合する炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、各出現のR
iは、独立して、C
1~C
6アルキルであり、R
jは水素、C
1~C
6アルキルまたは1、2、3、4もしくは5個のC
1~C
6アルキル基で任意に置換されているフェニルであり、R
kは、独立して出現ごとに、C
1~C
3アルキルまたはフェニル、好ましくはメチルであり、X
bはC
6~C
12アリーレン、C
4~C
18シクロアルキレン、C
4~C
18シクロアルキリデンまたは-C(R
m)(R
n)-(式中、R
mは水素、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
12アリールであり、R
nはC
6~C
10アルキル、C
6~C
8シクロアルキルまたはC
6~C
12アリールである)であるか、またはX
bは-(Q
a)
x-G-(Q
b)
y-(式中、Q
aおよびQ
bは、各々独立して、C
1~C
3アルキレンであり、GはC
3~C
10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1である)であり、j、mおよびnは、各々独立して、0、1、2、3または4である)
の構造を有するC
17~C
40の2価の芳香族基である]
の構造を有する30~79.95モル%の第2のカーボネート単位と、各々が2価のカーボネート基および2価のポリシロキサン基を含み、2価のポリシロキサン基が
【化8】
(式中、各出現のR
3は、独立して、C
1~C
13ヒドロカルビル基である)
の構造を有する5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む、0.05~0.4モル%の第3のカーボネート単位とを含む、ポリカーボネートポリシロキサンを含む組成物であって、ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される18,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリカーボネートポリシロキサンが70~79.95モル%の第2のカーボネート単位を含む場合、ポリカーボネートポリシロキサンが18,000~24,000g/モルの重量平均分子量を有する、前記組成物である。
【0007】
別の実施形態は、本明細書に記載のその変形形態のいずれかの組成物を含む押出フィルムである。
【0008】
別の実施形態は、押出フィルムと、押出フィルムと接触している導電性金属層とを含む、コンデンサである。
【0009】
これらおよび他の実施形態は以下に詳細に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、特定の量のポリシロキサンカーボネート単位および2種類の芳香族カーボネート単位を含む、ポリカーボネートポリシロキサンをその主成分として含む押出組成物が、10μmの厚さを有するフィルムとして押し出される改善された能力を示すと判断した。
【0011】
一実施形態は、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して
【化9】
(式中、R
1はC
6~C
16の2価の芳香族基である)
の構造を有する20~69.95モル%の第1のカーボネート単位と、
【化10】
[式中、R
2は
【化11】
(式中、R
fおよびR
gは、各々独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキル、C
1~C
12アルコキシルまたはC
2~C
12アルケニルであり、各R
hは水素であるか、または2回出現のR
hはこれらが結合する炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、各出現のR
iは、独立して、C
1~C
6アルキルであり、R
jは水素、C
1~C
6アルキルまたは1、2、3、4もしくは5個のC
1~C
6アルキル基で任意に置換されているフェニルであり、R
kは、独立して出現ごとに、C
1~C
3アルキルまたはフェニル、好ましくはメチルであり、X
bはC
6~C
12アリーレン、C
4~C
18シクロアルキレン、C
4~C
18シクロアルキリデンまたは-C(R
m)(R
n)-(式中、R
mは水素、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
12アリールであり、R
nはC
6~C
10アルキル、C
6~C
8シクロアルキルまたはC
6~C
12アリールである)であるか、またはX
bは-(Q
a)
x-G-(Q
b)
y-(式中、Q
aおよびQ
bは、各々独立して、C
1~C
3アルキレンであり、GはC
3~C
10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1である)であり、j、mおよびnは、各々独立して、0、1、2、3または4である)
の構造を有するC
17~C
40の2価の芳香族基である]
の構造を有する30~79.95モル%の第2のカーボネート単位と、各々が2価のカーボネート基および2価のポリシロキサン基を含み、2価のポリシロキサン基が
【化12】
(式中、各出現のR
3は、独立して、C
1~C
13ヒドロカルビル基である)
の構造を有する5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む、0.05~0.4モル%の第3のカーボネート単位とを含む、ポリカーボネートポリシロキサンであって、ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される18,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリカーボネートポリシロキサンが70~79.95モル%の第2のカーボネート単位を含む場合、ポリカーボネートポリシロキサンが18,000~24,000g/モルの重量平均分子量を有する、前記ポリカーボネートポリシロキサンである。本明細書で使用する用語「ヒドロカルビル」は、それ自体で、または接頭辞、接尾辞もしくは別の用語のフラグメントとして用いられるかにかかわらず、「置換ヒドロカルビル」として具体的に特定されない限り、炭素および水素のみを含有する残基を指す。ヒドロカルビル残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和または不飽和であってよい。これは、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和および不飽和炭化水素部分の組み合わせも含有できる。ヒドロカルビル残基が置換として示される場合、これは、炭素および水素に加えてヘテロ原子を含有できる。
【0012】
ポリカーボネートポリシロキサンは第1のカーボネート単位、第2のカーボネート単位および第3のカーボネート単位を含む。第1(低熱)のカーボネート単位は
【化13】
(式中、R
1はC
6~C
16の2価の芳香族基である)の構造を有する。「低熱」は、第1のカーボネート単位のホモポリマーが、ASTM D3418-15に従って20℃/分の加熱速度で示差走査熱量測定により決定される、135℃~155℃未満のガラス転移温度を有することを意味する。
【0013】
いくつかの実施形態において、第1のカーボネート単位は
【化14】
(式中、R
aおよびR
bは、各々独立してハロゲン(すなわち、F、Cl、BrまたはI)、C
1~C
3アルキルまたはC
1~C
3アルコキシルであり、cは0または1であり、pおよびqは、各々独立して、0または1であり、X
aは単結合、-O-、-S-、-S(O)-、-S(O)
2-、-C(O)-またはC
1~C
4の2価のヒドロカルビレン基であり、これは環式または非環式、芳香族または非芳香族であってよく、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、ケイ素およびリンから選択される1つまたは複数のヘテロ原子をさらに含んでいてもよい)
の構造を有する。いくつかの実施形態において、cは0である。他の実施形態において、cは1である。いくつかの実施形態において、cは1であり、X
aはC
3~C
6シクロアルキレン(例えば、1,4-シクロヘキシレン)、C
3~C
6シクロアルキリデン(例えば、シクロヘキシリデン)、式-C(R
c)(R
d)(式中、R
cおよびR
dは、各々独立して水素、C
1~C
5アルキルである)のC
1~C
6アルキリデン、または式-C(=R
e)(式中、R
eは2価のC
1~C
5炭化水素基である)の基から選択される。X
aおよび第1のカーボネート単位の各末端結合は、互いにオルト、メタまたはパラ(好ましくはパラ)配置されてもよい。いくつかの実施形態において、pおよびqは各々0である。いくつかの実施形態においてcは1であり、pおよびqは各々1であり、R
aおよびR
bは各々X
aにメタ配置されたメチルである。第1のカーボネート単位を形成するために使用できるジヒドロキシ化合物のいくつかの例示的な例は、サン(Sun)らの米国特許出願公開第2014/0295363A1号およびチェン(Chen)らの国際特許出願公開第2013/175448A1号およびフェルナンデス(Fernandez)らの国際公開第2014/072923A1号に記載されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、第1のカーボネート単位は、
【化15】
の構造を有するビスフェノールAに由来し、ビスフェノールAカーボネート単位と称される。
【0015】
ポリカーボネートポリシロキサンは、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して20~69.95モル%の量で第1(低熱)のカーボネート単位を含む。この範囲内で、第1のカーボネート単位の量は30~69.95モル%、35~64.95モル%または45~64.95モル%であってよい。
【0016】
第1(低熱)のカーボネート単位に加えて、ポリカーボネートポリシロキサンは、
【化16】
(式中、R
2はC
17~C
40の2価の芳香族基である)
の構造を有する第2(高熱)のカーボネート単位を含む。「高熱」は、第2のカーボネート単位のホモポリマーが、ASTM D3418-15に従って20℃/分の加熱速度で示差走査熱量測定により決定される、155℃以上または155~300℃のガラス転移温度を有することを意味する。第2のカーボネート単位の例としては
【化17】
(式中、R
fおよびR
gは、各々独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキル、C
1~C
12アルコキシルまたはC
2~C
12アルケニルであり、各R
hは水素であるか、または2回出現のR
hはこれらが結合する炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、各出現のR
iは、独立して、C
1~C
6アルキルであり、R
jは水素、C
1~C
6アルキルまたは1、2、3、4もしくは5個のC
1~C
6アルキル基で任意に置換されているフェニルであり、R
kは、独立して出現ごとに、C
1~C
3アルキルまたはフェニル、好ましくはメチルであり、X
bはC
6~C
12アリーレン、C
4~C
18シクロアルキレン、C
4~C
18シクロアルキリデンまたは-C(R
m)(R
n)-(式中、R
mは水素、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
12アリールであり、R
nはC
6~C
10アルキル、C
6~C
8シクロアルキルまたはC
6~C
12アリールである)であるか、またはX
bは-(Q
a)
x-G-(Q
b)
y-(式中、Q
aおよびQ
bは、各々独立して、C
1~C
3アルキレンであり、GはC
3~C
10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1である)であり、j、mおよびnは、各々独立して、0、1、2、3または4である)
の構造を有するものが挙げられる。いくつかの実施形態において、R
fおよびR
gは、各々独立して出現ごとに、C
1~C
3アルキルまたはC
1~C
3アルコキシルであり、各R
iはC
1~C
3アルキルであり、R
jはメチルまたはフェニルであり、各R
kはメチルである。
【0017】
例示的な第2のカーボネート単位は
【化18】
(式中、R
f、R
g、R
j、mおよびnは上に定義されており、R
mは、独立して出現ごとに、水素またはC
1~C
4アルキルであり、gは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10である)
の構造を有するものを含む。いくつかの実施形態において、R
fおよびR
gは、各々独立して、C
1~C
3アルキルまたはC
1~C
3アルコキシルであり、各R
mはメチルであり、mおよびnは、各々独立して、0または1である。
【0018】
いくつかの実施形態において、第2のカーボネート単位は
【化19】
の構造またはこれらの組み合わせを有し、上記第1の構造は、2-フェニル-3,3’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジンカーボネートまたはPPPBPカーボネートと称され、上記第2の構造はビスフェノールイソホロンカーボネートまたはBPIカーボネートと称される。
【0019】
ポリカーボネートポリシロキサンは、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して30~79.95モル%の量で第2(高熱)のカーボネート単位を含む。この範囲内で、第2のカーボネート単位の量は30~69.95モル%、35~64.95モル%または35~54.95モル%であってよい。
【0020】
第1(低熱)のカーボネート単位および第2(高熱)のカーボネート単位に加えて、ポリカーボネートポリシロキサンはさらに第3の(ポリシロキサン含有)カーボネート単位を含む。第3のカーボネート単位は各々2価のカーボネート基(-OC(O)O-)および2価のポリシロキサン基を含み、2価のポリシロキサン基は、
【化20】
(式中、各出現のR
3は、独立して、C
1~C
14ヒドロカルビル基である)
の構造を有する5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む。
【0021】
C1~C14ヒドロカルビル基は脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和または不飽和であってよい。これはまた脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐、飽和および不飽和炭化水素部分を含有していてもよい。R3基の例としては、C1~C14アルキル、C1~C14アルコキシル、C2~C14アルケニル、C2~C14アルケニルオキシル、C6~C14アリール、C6~C14アリールオキシル、C7~C14アリールアルキルおよびC6~C14アルキルアリールが挙げられる。いくつかの実施形態において、各出現のR3はメチルである。
【0022】
第3のカーボネート単位は各々5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む。この範囲内で、ジオルガノシロキサン単位の数は10~60、20~60、30~60または35~55であってよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、第3のカーボネート単位は
【化21】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン(すなわち、F、Cl、BrまたはI)、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5およびR
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)または(35-n-q)から(55-n-q)である)
の構造を有する。
【0024】
Ar基の例としては、1,3-フェニレン、1,4-フェニレンおよび2,2-ビス(4-フェニレニル)プロパンが挙げられる。各出現のm、nおよびqが0である場合、各出現のArはC6~C24ジヒドロキシアリーレン化合物、例えば、レゾルシノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4-ヒドロキシフェニル)プロパンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパンなどに由来し得る。
【0025】
R4基の例としては、例えばジメチレン(-(CH2)2-)、トリメチレン(-(CH2)3-)、ヘキサメチレン(-(CH2)6-)および1,4-シクロヘキシレンが挙げられる。いくつかの実施形態において、各出現のR4はトリメチレンである。
【0026】
R5およびR6基の例としては、例えばメチル、エチル、1-プロピル、シクロヘキシルおよびフェニルが挙げられる。いくつかの実施形態において、各出現のR5およびR6はメチルである。
【0027】
いくつかの実施形態において、各出現のm、nおよびqは0である。他の実施形態において、各出現のm、nおよびqは1である。いくつかの実施形態において、pは(35-n-q)から(55-n-q)である。
【0028】
いくつかの実施形態において、第3のカーボネート単位は
【化22】
(式中、rは5~60、5~60、10~60、20~60、30~60または35~55である)
の構造を有する。
【0029】
他の実施形態において、第3のカーボネート単位は
【化23】
(式中、rは5~60、5~60、10~60、20~60、30~60または35~55である)
の構造を有する。
【0030】
さらに他の実施形態において、第3のカーボネート単位は
【化24】
(式中、sは3~58、8~58、18~58、28~58または33~53である)
の構造を有する。sが43の場合、構造はD45カーボネートと称される。
【0031】
ポリカーボネートポリシロキサンは、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して0.05~0.4モル%の量で第3のカーボネート単位を含む。この範囲内で、第3のカーボネート単位は0.05~0.35モル%、0.05~0.3モル%または0.05~0.25モル%での量で存在できる。
【0032】
いくつかの実施形態において、ポリカーボネートポリシロキサンは、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して30~69.95モル%の第1のカーボネート単位、30~69.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.35モル%の第3のカーボネート単位を含む。
【0033】
他の実施形態において、ポリカーボネートポリシロキサンは、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して35~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~64.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.3モル%の第3のカーボネート単位を含む。
【0034】
他の実施形態において、ポリカーボネートポリシロキサンは、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して45~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~54.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.25モル%の第3のカーボネート単位を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、ポリカーボネートポリシロキサンは、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される10,000~50,000g/モルの重量平均分子量を有する。この範囲内で、重量平均分子量は、15,000~40,000g/モルまたは24,000~30,000g/モルであってよい。
【0036】
ポリカーボネートポリシロキサンのいくつかの実施形態において、第1のカーボネート単位は
【化25】
の構造を有し、第2のカーボネート単位は
【化26】
の構造またはその組み合わせを有する。
【0037】
ポリカーボネートポリシロキサンのいくつかの実施形態において、第3のカーボネート単位は
【化27】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5およびR
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)または(35-n-q)から(55-n-q)である)
の構造を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、ポリカーボネートポリシロキサンは、35~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~64.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.3モル%の第3のカーボネート単位を含む。
【0039】
ポリカーボネートポリシロキサンの非常に特定の実施形態において、第1のカーボネート単位は
【化28】
の構造を有し、第2のカーボネート単位は
【化29】
の構造またはこれらの組み合わせを有し、第3のカーボネート単位は
【化30】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5およびR
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)または(35-n-q)から(55-n-q)である)
の構造を有し、ポリカーボネートポリシロキサンは、35~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~64.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.3モル%の第3のカーボネート単位を含み、ポリカーボネートポリシロキサンは、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される20,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0040】
ポリカーボネートポリシロキサンの別の非常に特定の実施形態において、第1のカーボネート単位は
【化31】
の構造を有し、第2のカーボネート単位は
【化32】
の構造またはこれらの組み合わせを有し、第3のカーボネート単位は
【化33】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5およびR
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)または(35-n-q)から(55-n-q)である)
の構造を有し、ポリカーボネートポリシロキサンは、45~69.95モル%の第1のカーボネート単位、30~54.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.16モル%の第3のカーボネート単位を含み、ポリカーボネートポリシロキサンは、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される20,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0041】
ポリカーボネートポリシロキサンは、例えばボーン(Vaughn)に対する米国特許第3,419,634号および第3,419,635号、メリット(Merritt)らに対する第3,821,325号、メリット(Merritt)に対する第3,832,419号およびフーバー(Hoover)に対する第6,072,011号に記載されるものを含む、ポリカーボネートコポリマーを合成する公知の方法を用いて調製できる。ポリカーボネートポリシロキサンを合成するための詳細な手順は以下の実施例に含まれる。
【0042】
別の実施形態は、その上記の変形形態のいずれかにおけるポリカーボネートポリシロキサンを含む組成物である。したがって、一実施形態は、ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して
【化34】
(式中、R
1はC
6~C
16の2価の芳香族基である)
の構造を有する20~69.95モル%の第1のカーボネート単位と、
【化35】
(式中、R
2はC
17~C
40の2価の芳香族基である)
の構造を有する30~79.95モル%の第2のカーボネート単位と、2価のカーボネート基(-OC(O)O-)および2価のポリシロキサン基を含み、2価のポリシロキサン基が
【化36】
(式中、各出現のR
3は、独立して、C
1~C
13ヒドロカルビル基である)
の構造を有する5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む、0.05~0.4モル%の第3のカーボネート単位とを含む、ポリカーボネートポリシロキサンであって、ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される18,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリカーボネートポリシロキサンが70~79.95モル%の第2のカーボネート単位を含む場合、ポリカーボネートポリシロキサンが18,000~24,000g/モルの重量平均分子量を有する、前記ポリカーボネートポリシロキサンである。
【0043】
組成物は押出フィルムを形成するのに有用である。この目的に用いられる場合、組成物は、典型的には、組成物の全重量に対して70~100重量%のポリカーボネートポリシロキサンを含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、組成物は粗面化剤をさらに含む。粗面化剤は、表面粗さ、すなわち物理的テクスチャを有する押出フィルムを提供する。好適な粗面化剤としては、例えば合成または天然シリカ、石灰石、タルク、ゼオライト、架橋シリコーン、環式オレフィンコポリマーおよびこれらの組み合わせを含む粒子状材料が挙げられる。
【0045】
粗面化剤は架橋シリコーン、好ましくは架橋シルセスキオキサン、より好ましくは架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含んでいてもよい。シルセスキオキサンは、Si-O-Si結合および四面体Si頂点を有するかご状構造である。シルセスキオキサンは6、8、10または12個のSi頂点を有するかごとして分子の形態、およびポリマーの形態であってよい。かごは各々T6、T8、T10およびT12でラベル付けされる場合がある(T=四面体頂点)。T8かごは、式[R-SiO1.5]8または同等にR8Si8O12を有する。各Si中心は3個のオキソ基に結合し、次にこれは他のSi中心と結合する。Si上の第4の基はR基である。各R基は、独立して、C1~C8アルキル、C1~C8アルケニル、アクリレート、メタクリレート、ヒドロキシルまたはエポキシドであってよい。架橋ポリメチルシルセスキオキサン粒子は球状であり、柔軟なゲル様稠度を有することで、微細なフィルターを用いた加工に適したものとなっている。例えば、組成物をメルトフィルター(例えば、5μmのフィルター)に通す場合、粗面化剤はフィルターを目詰まりさせず、無機微粒子を粗面化剤として使用する場合に遭遇する問題が回避される。いくつかの実施形態において、粗面化剤は、ISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される0.1~10μm、0.1~5μm、0.1~3μmまたは0.2~2μmのメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む。粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンは、例えばMomentive Performance Chemicalsから商品名TOSPEARLで市販されている。
【0046】
組成物中に存在する場合、粗面化剤は、組成物の全重量に対して0.05~2重量%の量で使用できる。この範囲内で、粗面化剤の量は0.05~1重量%、0.1~0.8重量%または0.15~0.6重量%であってよい。
【0047】
組成物は、任意には、有機滑り剤を含んでいてもよい。有機滑り剤は押出フィルムの操作性を改善する。好適な有機滑り剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、グリセロールトリステアレート、高密度ポリエチレン、ポリメチルペンテンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、有機滑り剤は、組成物の全重量に対して0.1~15重量%の量で使用できる。この範囲内で、有機滑り剤の量は0.1~5重量%、0.1~2重量%または0.1~1重量%であってよい。
【0048】
組成物は、任意には、熱可塑性分野で公知の1つまたは複数の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば安定剤、離型剤、潤滑剤、加工助剤、ドリップ防止剤、核剤、紫外線吸収剤、着色剤(染料および顔料を含む)、抗酸化剤、静電防止剤、発泡剤、金属不活性剤、ブロッキング防止剤およびこれらの組み合わせが挙げられる。存在する場合、このような添加剤は、典型的には、組成物の全重量に対して10重量%以下、5重量%以下または1重量%以下の全量で使用される。
【0049】
非常に特定の実施形態において、組成物は70~99.95重量%のポリカーボネートポリシロキサンを含み、0.05~2重量%の粗面化剤をさらに含み、ポリカーボネートポリシロキサンは35~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~64.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.3モル%の第3のカーボネート単位を含み、第1のカーボネート単位は
【化37】
の構造を有し、第2のカーボネート単位は
【化38】
の構造またはこれらの組み合わせを有し、第3のカーボネート単位は
【化39】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5およびR
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)である)の構造を有し、ポリカーボネートポリシロキサンは、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いてゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される20,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有し、粗面化剤はISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される0.1~10μmのメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む。
【0050】
別の実施形態は、その上記の変形形態のいずれかの組成物を含む押出フィルムである。組成物は、フラットダイを使用する熱可塑性組成物のために従来用いられる押出機を用いて押し出すことができる。押出キャストフィルム方法は、組成物を押出機内で溶融し、溶融した組成物を小さなリップ間隙分離のフラットダイを通して運搬し、任意には、比較的高い巻取速度によりフィルムを延伸し、フィルム形成組成物を冷却/固化して最終フィルムを形成する工程を含んでいてよい。押出機は一軸または二軸設計であってよく、溶融ポンプを使用して、ダイを通してポリマーの一定な、脈動しない流れを提供できる。ダイリップ間隙は100~200μmほどの小さいものであってよく、巻取ローラーは、最大200m/分の速度で動作できる。設計は、加熱ロールを追加して、フィルムをテンパー/アニールし、それにより凍結した内部応力の発生を最小化することを含んでいてよい。フィルムの縁は切りそろえられてもよく、フィルムは、張力制御巻回メカニズムを使用してロール上に巻き取られる。ダイを通る溶融ポリマーの一定で均一な流れを送達させる正確さ、フィルムを製造するために使用されるポリマーのレオロジー特性、ポリマーと装置の両方の清浄さ、および巻取メカニズムの機械特性はすべて、比較的小さな厚さの押出フィルムの調製の成功に寄与する。いくつかの実施形態において、フィルムの厚さは2~15μm、2~10μm、2~8μmまたは2~6μmである。
【0051】
いくつかの実施形態において、押出フィルムは2~15μmの厚さを有し、組成物は、組成物の全重量に対して70~99.95重量%のポリカーボネートポリシロキサンと、ISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される0.1~10μmのメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む、0.05~2重量%の粗面化剤とを含む。
【0052】
別の実施形態は、その上記の変形形態のいずれかの組成物を含む押出フィルムと、押出フィルムと接触している導電性金属層とを含む、金属化フィルム(例えばフィルムコンデンサ)である。様々な金属および金属合金が、フィルムの使用目的に応じて導電性金属層に使用できる。いくつかの実施形態において、導電性金属層は、銅、アルミニウム、銀、金、ニッケル、亜鉛、チタン、クロム、バナジウム、白金、タンタル、ニオブ、黄銅およびこれらの組み合わせからなる群から選択される金属を含む。ポリマーフィルムの金属化の方法は公知であり、該方法としては例えば真空金属蒸着、金属スパッタリング、プラズマ処理、電子ビーム処理、化学酸化または還元反応ならびに無電解湿式化学蒸着が挙げられる。押出フィルムは従来の無電解メッキにより両側が金属化されてもよい。あるいは、パターン化金属層が、例えばインクジェット印刷によりフィルムの表面に形成されてもよい。導電性金属層の厚さは金属化フィルムの使用目的により決定され、例えば0.1~1000nm、0.5~500nmまたは1~10nmであってよい。
【0053】
別の実施形態は、組成物の全重量に対して、第1のビスフェノールモノマーのホモポリカーボネートが、ASTM E1640-13に従って1℃/分の加熱速度で動的機械分析により決定される155℃未満のガラス転移温度を有するような第1のビスフェノールモノマー由来の第1のカーボネート単位、および第2のビスフェノールモノマーのホモポリカーボネートがASTM E1640-13に従って1℃/分の加熱速度で動的機械分析により決定される155℃以上のガラス転移温度を有するような第2のビスフェノールモノマー由来の第2のカーボネート単位を含む、65~99.95重量%のコポリカーボネートと、ISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される5μm超および10μm以下のメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む、0.05~2重量%の粗面化剤とを含む、組成物である。コポリカーボネートは、いずれも本願に引用して援用する2018年11月14日出願の欧州特許出願第18206355.2号および2019年11月14日出願の国際特許出願PCT/US第19/061477号の「高熱コポリカーボネート」に対応する。
【0054】
本明細書に開示されるすべての範囲はエンドポイントを含み、エンドポイントは独立して互いに組み合わせることができる。本明細書に開示される各範囲は、開示される範囲内にある任意の点または下位範囲の開示を構成する。
【0055】
本発明は少なくとも以下の態様を含む。
【0056】
態様1:ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して
【化40】
(式中、R
1はC
6~C
16の2価の芳香族基である)
の構造を有する20~69.95モル%の第1のカーボネート単位と、
【化41】
[式中、R
2は
【化42】
(式中、R
fおよびR
gは、各々独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキル、C
1~C
12アルコキシルまたはC
2~C
12アルケニルであり、各R
hは水素であるか、または2回出現のR
hはこれらが結合する炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、各出現のR
iは、独立して、C
1~C
6アルキルであり、R
jは水素、C
1~C
6アルキルまたは1、2、3、4もしくは5個のC
1~C
6アルキル基で任意に置換されているフェニルであり、R
kは、独立して出現ごとに、C
1~C
3アルキルまたはフェニル、好ましくはメチルであり、X
bはC
6~C
12アリーレン、C
4~C
18シクロアルキレン、C
4~C
18シクロアルキリデンまたは-C(R
m)(R
n)-(式中、R
mは水素、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
12アリールであり、R
nはC
6~C
10アルキル、C
6~C
8シクロアルキルまたはC
6~C
12アリールである)であるか、またはX
bは-(Q
a)
x-G-(Q
b)
y-(式中、Q
aおよびQ
bは、各々独立して、C
1~C
3アルキレンであり、GはC
3~C
10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1である)であり、j、mおよびnは、各々独立して、0、1、2、3または4である)
の構造を有するC
17~C
40の2価の芳香族基である]
の構造を有する30~79.95モル%の第2のカーボネート単位と、各々が2価のカーボネート基および2価のポリシロキサン基を含み、2価のポリシロキサン基が
【化43】
(式中、各出現のR
3は、独立して、C
1~C
13ヒドロカルビル基である)
の構造を有する5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む、0.05~0.4モル%の第3のカーボネート単位とを含む、ポリカーボネートポリシロキサンであって、ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される18,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリカーボネートポリシロキサンが70~79.95モル%の第2のカーボネート単位を含む場合、ポリカーボネートポリシロキサンが18,000~24,000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とするポリカーボネートポリシロキサン。
【0057】
態様2:態様1に記載のポリカーボネートポリシロキサンであって、第1のカーボネート単位が
【化44】
の構造を有し、第2のカーボネート単位が
【化45】
の構造またはこれらの組み合わせを有することを特徴とするポリカーボネートポリシロキサン。
【0058】
態様3:態様1または2に記載のポリカーボネートポリシロキサンであって、第3のカーボネート単位が
【化46】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5およびR
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)である)
の構造を有することを特徴とするポリカーボネートポリシロキサン。
【0059】
態様4:態様1~3のいずれか1つに記載のポリカーボネートポリシロキサンであって、35~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~64.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.3モル%の第3のカーボネート単位を含むことを特徴とするポリカーボネートポリシロキサン。
【0060】
態様5:態様1に記載のポリカーボネートポリシロキサンであって、第1のカーボネート単位が
【化47】
の構造を有し、第2のカーボネート単位が
【化48】
の構造またはこれらの組み合わせを有し、第3のカーボネート単位が
【化49】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5およびR
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)である)
の構造を有し、ポリカーボネートポリシロキサンが35~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~64.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.3モル%の第3のカーボネート単位を含み、ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される20,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とするポリカーボネートポリシロキサン。
【0061】
態様6:ポリカーボネートポリシロキサン中の全カーボネート単位100モル%に対して
【化50】
(式中、R
1はC
6~C
16の2価の芳香族基である)
の構造を有する20~69.95モル%の第1のカーボネート単位と、
【化51】
[式中、R
2は
【化52】
(式中、R
fおよびR
gは、各々独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキル、C
1~C
12アルコキシルまたはC
2~C
12アルケニルであり、各R
hは水素であるか、または2回出現のR
hはこれらが結合する炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し、各出現のR
iは、独立して、C
1~C
6アルキルであり、R
jは水素、C
1~C
6アルキルまたは1、2、3、4もしくは5個のC
1~C
6アルキル基で任意に置換されているフェニルであり、R
kは、独立して出現ごとに、C
1~C
3アルキルまたはフェニル、好ましくはメチルであり、X
bはC
6~C
12アリーレン、C
4~C
18シクロアルキレン、C
4~C
18シクロアルキリデンまたは-C(R
m)(R
n)-(式中、R
mは水素、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
12アリールであり、R
nはC
6~C
10アルキル、C
6~C
8シクロアルキルまたはC
6~C
12アリールである)であるか、またはX
bは-(Q
a)
x-G-(Q
b)
y-(式中、Q
aおよびQ
bは、各々独立して、C
1~C
3アルキレンであり、GはC
3~C
10シクロアルキレンであり、xは0または1であり、yは0または1である)であり、j、mおよびnは、各々独立して、0、1、2、3または4である)
の構造を有するC
17~C
40の2価の芳香族基である]
の構造を有する30~79.95モル%の第2のカーボネート単位と、各々が2価のカーボネート基(-OC(O)O-)および2価のポリシロキサン基を含み、2価のポリシロキサン基が
【化53】
(式中、各出現のR
3は、独立して、C
1~C
13ヒドロカルビル基である)
の構造を有する5~60個のジオルガノシロキサン単位を含む、0.05~0.4モル%の第3のカーボネート単位とを含む、ポリカーボネートポリシロキサンを含む組成物であって、ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される18,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有し、ポリカーボネートポリシロキサンが70~79.95モル%の第2のカーボネート単位を含む場合、ポリカーボネートポリシロキサンが18,000~24,000g/モルの重量平均分子量を有することを特徴とする組成物。
【0062】
態様7:態様6に記載の組成物であって、ポリカーボネートポリシロキサンが35~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~64.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.3モル%の第3のカーボネート単位を含むことを特徴とする組成物。
【0063】
態様8:態様6または7に記載の組成物であって、組成物の全重量に対して70~99.95重量%のポリカーボネートポリシロキサンと0.05~2重量%の粗面化剤とを含むことを特徴とする組成物。
【0064】
態様9:態様8に記載の組成物であって、粗面化剤がISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される0.1~10μmのメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含むことを特徴とする組成物。
【0065】
態様10:態様6に記載の組成物であって、組成物が70~99.95重量%のポリカーボネートポリシロキサンを含み、0.05~2重量%の粗面化剤をさらに含み、ポリカーボネートポリシロキサンが35~64.95モル%の第1のカーボネート単位、35~64.95モル%の第2のカーボネート単位および0.05~0.3モル%の第3のカーボネート単位を含み、第1のカーボネート単位が
【化54】
の構造を有し、第2のカーボネート単位が
【化55】
の構造またはこれらの組み合わせを有し、第3のカーボネート単位が
【化56】
(式中、Arは、独立して出現ごとに、1、2、3または4個の置換基で任意に置換されているC
6~C
24の2価の芳香族基であり、各置換基は、独立して、ハロゲン、C
1~C
6アルキルおよびC
1~C
6アルコキシルからなる群から選択され、R
4は、独立して出現ごとに、C
2~C
8の2価の脂肪族基であり、R
5およびR
6は、独立して出現ごとに、C
1~C
12アルキルまたはC
6~C
18アリールであり、m、nおよびqは、独立して出現ごとに、0または1であり、pは(30-n-q)から(60-n-q)である)
の構造を有し、ポリカーボネートポリシロキサンが、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィーにより決定される20,000~35,000g/モルの重量平均分子量を有し、粗面化剤がISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される0.1~10μmのメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含むことを特徴とする組成物。
【0066】
態様11:態様6~10のいずれか1つに記載の組成物を含むことを特徴とする押出フィルム。
【0067】
態様12:態様11に記載の押出フィルムであって、押出フィルムが2~15μmの厚さを有し、組成物が、組成物の全重量に対して70~99.95重量%のポリカーボネートポリシロキサンと、ISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される0.1~10μmのメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む0.05~2重量%の粗面化剤とを含むことを特徴とする押出フィルム。
【0068】
態様13:態様6~10のいずれか1つに記載の組成物を含む押出フィルムと、押出フィルムと接触している導電性金属層とを含むことを特徴とするコンデンサ。
【0069】
態様14:態様6~10のいずれか1つに記載の組成物を含む押出フィルムと、押出フィルムと接触している導電性金属層とを含むことを特徴とする金属化フィルム。
【0070】
態様15:組成物の全重量に対して、第1のビスフェノールモノマーのホモポリカーボネートがASTM E1640-13に従って1℃/分の加熱速度で動的機械分析により決定される155℃未満のガラス転移温度を有するような第1のビスフェノールモノマー由来の第1のカーボネート単位、および第2のビスフェノールモノマーのホモポリカーボネートがASTM E1640-13に従って1℃/分の加熱速度で動的機械分析により決定される155℃以上のガラス転移温度を有するような第2のビスフェノールモノマー由来の第2のカーボネート単位を含む、65~99.95重量%のコポリカーボネートと、ISO13320:2009に従ってレーザー回折により決定される5μm超および10μm以下のメジアン等価球径を有する粒子状架橋ポリメチルシルセスキオキサンを含む、0.05~2重量%の粗面化剤とを含むことを特徴とする組成物。
【0071】
本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに例示する。
【実施例0072】
これらの実験で使用した材料が表1に要約されている。
【0073】
以下は約62.5モル%のビスフェノールイソホロン(BPI)カーボネート単位、約37.34モル%のビスフェノールA(BPA)カーボネート単位および約0.16モル%のD45カーボネート単位を含有するポリカーボネートコポリマーを合成するための手順である。同じカーボネート単位を異なる割合で含有するポリカーボネートコポリマーは、各モノマーの割合を変えることにより合成できる。反応器にオーバーヘッドコンデンサ、撹拌機および循環ポンプを装備した。塩化メチレン(18L)、BPI(3157g)、BPA(1393g)、D45(91g)、水(10L)、トリエチルアミン(30g)およびグルコン酸ナトリウム(10g)を反応器に導入した。塩化メチレン(800g)中のパラクミルフェノール(PCP、112g)溶液を、反応器に200g/分で供給した。ホスゲンガス(2650g)を、反応器を通して90g/分でバブリングし、溶液を勢いよく撹拌しながら、33重量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加することによりpHを9~10で維持した。ホスゲンの添加が完了したら、反応混合物を10分間撹拌して、pHを9で安定させた。反応生成物の試料を、ビスフェノールAポリカーボネート標準品を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析し、これが28,665g/モルの重量平均分子量(M
w)および10,254g/モルの数平均分子量(M
n)を有することが判明した。反応器を窒素で5分間パージし、次いで内容物を供給タンクに排出した。混合物を一連の液体-液体遠心分離機に供給し、そこでブライン相を塩化メチレン中のポリマー溶液から分離した。トリエチルアミンを、ポリマー溶液を1重量%の塩酸水溶液で洗浄することにより除去し、残留イオンを、水で洗浄することにより除去した。精製ポリマー溶液を供給ポットに移した。ポリマー溶液を沈殿ジェットからの蒸気と接触させて、塩化メチレンをフラッシュオフすることにより、樹脂を単離し、白色湿潤ケーキを残した。樹脂を円錐形ドライヤーに入れ、加熱窒素を粉末に4時間通すことにより、水を樹脂から除去した。単離した樹脂粉末の収率は10.2kgであった。単離した樹脂のGPC分析では、M
wが28,256g/モルとなり、コポリマー加水分解物(ターポリマーと水酸化カリウムとの反応により得られた)の超高速液体クロマトグラフィー分析では、BPI含有量が63モル%となった。
【表1】
【0074】
表2には、フィルム押出組成物の特性およびフィルムの特性が要約されている。表2において、「コポリマー」は、フィルム押出組成物に使用したコポリマーを指し(コポリマーの説明は表1にある)、「ポリシロキサンカーボネート(モル%)」は、コポリマー中の全カーボネート単位の合計に対するモル%のポリシロキサンカーボネート単位であり、「BPIカーボネート(モル%)」は、コポリマー中の全カーボネート単位の合計に対するモル%のBPIカーボネート単位であり、「BPAカーボネート(モル%)」は、コポリマー中の全カーボネート単位の合計に対するモル%のBPAカーボネート単位であり、「Mw(kg/モル)」はコポリマーの重量平均分子量である。各フィルム押出組成物は99.34重量%の特定のコポリマー、0.3重量%のPETS、0.3重量%のPMSS-2および0.06重量%のAOを含有していた。すべての組成物を、30:1の長さ対直径の比およびダイフェースの近くに位置する真空ポートを有するWerner&Pfleiderer共回転二軸押出機で配合した。配合を285~330℃の温度で行った。
【0075】
脈動メルトフローを除去するために溶融ポンプを利用する25mmの一軸押出機を用いて、フィルムを押し出した。溶融ポンプを、330~360℃の温度でダイの溶融圧が最適になるように調整した。溶融物を、100~300μmのダイ間隙クリアランスを有する450mm幅の縦型tダイから押し出した。溶融カーテンを研磨された冷却ロール上にキャストし、機械方向で表2に示す厚さまで引き下げた。ゲージを、下流設備の溶融ポンプの出力速度と巻取速度を一致させることにより制御して、ムラのない均一なフィルムの厚さにした。
【0076】
表2には、フィルムの特性が要約されている。「加工性」は、いかに簡単にフィルムを押出組成物から押し出すことができるかを示す。評価0は、組成物を加工して、厚さ5μmの押出フィルムを形成することができなかったことを意味し、評価1は、組成物を加工して、厚さ5μmの押出フィルムを形成するのが困難であったことを意味し、評価2は、組成物を一貫加工して、厚さ5μmの押出フィルムを形成することができたことを意味し、評価3は、組成物を一貫加工して、厚さ3μmの押出フィルムを形成することができたことを意味する。評価2または3が好ましく、コンデンサ用途の薄いゲージフィルムを形成するためのロバストな加工ウィンドウが予測される。
【0077】
引張伸び(%ゲージ長の単位を有する)、引張破断応力(MPa)および引張弾性率(MPa)を、ASTM D882-02に従って、厚さ5μmの押出フィルムに対して23℃で、機械方向および横方向で評価した。高い引張破断応力からは、フィルムコンデンサ製作の押出、金属化およびキャップ巻回プロセスによる良好なフィルムの操作が予測される。
【0078】
引裂強度(N/mmの単位を有する)を、ISO6383-1に従って、厚さ5μmの押出フィルムに対して23℃で、機械方向および横方向で評価した。試験パラメータは以下の通りであった:(1)試験速度:200mm/秒、(2)試験伸び:50mm、(3)ロードセル:10N、(4)1試料あたり5回のランが報告された、(5)Bluehill3ソフトウェアを備えたInstron Test Rack、(6)フィルム試料サイズ:25mm×200mmのストリップ、(7)引裂部位を開始するために、試料の短い端部に30mmの切り込みを入れた、(8)試料の各脚部を含気性グリップを用いて設置した、(9)静電気を、脱イオン化空気銃を用いて試料から除去した、(10)平均引裂強度を、オペレーターにより選択されたロード/伸び曲線の面積から計算した。高い引裂強度からは、フィルムコンデンサ製作の押出、金属化およびキャップ巻回プロセスによる良好なフィルムの操作が予測される。
【0079】
「滑り性評価」および「滑り性ランク」は押出フィルムの表面の滑りやすさの主観的尺度である。滑り性評価は1(粘着性)から3(滑りやすい)までの範囲であり、表示値は5人の評価者による評価の平均である。滑り性ランクは、18個の試料の間での強制的ランク付けであり、1は最高で、18は最低であり、表示値は5人の評価者によるランク付けの平均である。滑り性は、押出プロセス、金属化、コンデンサの巻回およびコンデンサの平坦化プロセスによるフィルムウェブの良好な操作に必須である。滑り性が低すぎると、押出プロセス中にブロッキングおよびしわが発生したり、コンデンサ巻回体を平坦化できなくなる。滑り性が高すぎると、金属化操作における問題、ならびに金属化における巻出しおよび巻戻し中のテレスコーピングおよびトラッキングの問題が生じる。
【0080】
表面粗さは、滑り性に直接影響を与えるフィルムの重要な物性であり、押出プロセス、フィルムの金属化およびコンデンサの巻回による良好なフィルムウェブの操作に必須である。表面粗さが不十分な場合、押出中、マスタロール内の後続層のフィルムの巻回体間でブロッキング、また空気巻き込みが発生する可能性がある。捕集ガスは、金属化中のテレスコーピングの主要な原因である。過剰な表面粗さは巻回型コンデンサ(体積対エネルギーの評価)の効率を低下させ、フィルムの絶縁破壊強度を低下させる。表面粗さ特性(すべてμmの単位を有する)をJIS B0601:1994に従って決定した。「Ra」は算術平均粗さであり、「Ry」は最大高さであり、「Rz」は十点平均高さであり、「S」は局部山頂の平均間隔であり、「Sm」は凹凸の平均間隔であり、「RMS」は二乗平均平方根粗さである。表2の値は5つの試料からの平均値を表す。表面粗さ特性をKeyence共焦点顕微鏡を用いて決定した。1次粗さ画像を50倍対物を用いてKeyence VK-200で捕らえた。試料を、平らなポリカーボネートプラークに設置し、表面離脱を最小化した。レーザー測定モードでステージ高さ調整を用いて、フィルムの上面に焦点を合わせた。スキャン範囲をフィルム上面から1μm超からフィルム上面から1μm未満に手動で設定した。全スキャン範囲はフィルムの厚さを超えなかった。目標Zスキャン範囲は、フィルムの底面がデータ収集中に確実に撮像されないようにするために2~4μmであった。視野全体を、目標スキャン範囲内に捕らえることができなかった場合、平坦な画像が確実に得られるように、試料をXおよびY方向で動かした。スキャン範囲を設定したら、オートゲインを実行して、全スキャン範囲にわたって許容される輝度およびコントラスト設定を確立した。二重スキャンオプションを高精度設定下で使用した。Z段差は0.1μmであった。これらの設定下で、280~300mm×200mmの視野を提供する50倍対物を用いて、データ分析のために測定を行った。5つの個別の測定を、1つの50mm×100mmの試料を様々な位置で用いて行った。表面粗さ測定を、JIS B0601:1994標準計算に従って各画像に対して行った。マルチラインスキャン分析のためのテンプレートを使用して、5つの個々のスキャン各々に対して求められる平均値を計算および報告した。分析は、機械方向で各画像にわたって60本の線を含み、Ra(算術平均粗さ)、Ry(最大高さ)、Rz(十点平均高さ)およびRMS(二重平均平方根粗さ)の平均として報告された。得られた画像の前加工はKeyenceの推奨に従って以下の工程:自動傾き補正;自動ノイズ除去;高さカットレベル;およびDCL/BCLレベルを含んでいた。粗さ曲線補正:高さデータを、傾き補正した表面上で粗さ測定を行うことにより生成した。これにより、表面粗さを、線粗さの断面曲線から決定できた。表面粗さでは、高さデータに対して最小二乗法を使用してベースラインを求め、各高さデータ点のベースラインからの距離を求めた。Ra計算では、基準面と測定面との間の高低差の絶対値を求め、次いで粗さ曲面の各点と基準面との間の距離の平均を求めた。Ry計算は、基準面と粗さ曲面の各点との間の距離を比較することにより、最も高いピークの高さ(Yp)と最も低い谷の深さ(Yv)との和を求めることにより行った。Rz値は、5つの最も高いピークの高さの絶対値の平均と5つの最も低い谷の深さの絶対値の平均の和から求めた。RMS計算は基準面と粗さ曲面との間の差の和の平方根を示した。
【0081】
電気的特性を、Bosch試験を用いて決定した。Bosch試験は、1単位厚さあたり特定の電圧で発生するフィルムにおける絶縁破壊数を測定できる連続電気絶縁破壊試験手順および装置である。各電圧レベルでのクリアカウントが低ければ低いほど、フィルムの質が高くなる(すなわち、欠陥、スクラッチ、しわおよび不均一な厚さが減少する)。電気クリアカウントを150、200、250、300、350、400、450および500V/μmで決定した。被験フィルムを、対向電極フィルム上の接地金属化層と研磨鋼ローラーとの間に挟んだ。被験フィルムおよび対応する接地金属化フィルム(対向電極)を、ロールツーロールプロセスで1分あたり10mで装置を介して巻回した。高電位ローラーの電位を、TREK 20/20C増幅器と共にBK Precision 1788B電源を使用して制御した。Labviewソフトウェア制御インターフェースをNational Instruments Ni-9223電圧入力モジュールと共に使用して、電圧/電流スパイクを特定の電圧で測定し、絶縁破壊カウント数を決定した。絶縁破壊カウント数および位置を各電圧で1m2のフィルムに対して記録した。表2のクリアカウント値は1試料あたり5つの試験の平均を表す。比較例2については、19μmより薄いフィルムを押し出すことができなかったため、結果が示されていない。例5~7については、450および500V/μmの電圧については結果が示されていない。これらの試料については、オペレーターが試験を停止した400V/μmで、非常に多くのカウントが観察された。
【0082】
表2の特性結果は、本発明の例が、良好な加工性だけでなく、加工性、引張強度、引裂強度、表面粗さおよび電気抵抗の望ましいバランスも示すことを例示している。ポリカーボネートポリシロキサンが高いポリシロキサン含有量を有する比較例に対して、本発明の例は全般的に改善された加工性を示す。ポリシロキサン含有量が少ないポリカーボネートコポリマーを組み込む比較例に対して、ポリカーボネートポリシロキサン、特にBPIカーボネートの含有量が少ないポリカーボネートポリシロキサンの本発明の例は、全般的に改善された加工性、電気性能および滑り性を示す。
【表2】
【0083】
この実験において、引張特性を、押し出したままのおよび150℃で170時間のエージング後のフィルムについて測定した。結果を表3に示す。ここではパーセント変化値を、(エージング後の値-押し出したままの値)÷押し出したままの値×100として計算した。結果を多応答最適化モデルで使用し、これにより、良好な加工性およびエージングに対する物性の最小限の変化を示すコポリマー組成物のうちの1つが、すべてコポリマー中のカーボネート単位の全モルに対して61.3モル%のビスフェノールAカーボネート単位、38.6モル%のBPIカーボネート単位および0.078モル%のポリシロキサンカーボネート単位を含むことが予測された。
【表3】