(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024071611
(43)【公開日】2024-05-24
(54)【発明の名称】定量噴射型エアゾール、定量噴射型エアゾールの噴射方法及び薬剤の効果の持続性向上方法
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
A01M7/00 S
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024051966
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2019559670の分割
【原出願日】2018-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2017238160
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優八
(72)【発明者】
【氏名】阿部 練
(57)【要約】
【課題】本発明は、薬剤の持続力を高め、効力を向上させた定量噴射型エアゾールを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の定量噴射型エアゾールは、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、エアゾール組成物は薬剤を含む原液と噴射剤とからなり、耐圧容器に充填されており、定量噴射型エアゾールは、1回の噴射量が1.0~3.0mLであり、且つ1回の噴射時間が0.8秒以内である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、
前記エアゾール組成物は薬剤を含む原液と噴射剤とからなり、耐圧容器に充填されており、
前記定量噴射型エアゾールは、1回の噴射量が1.0~3.0mLであり、且つ1回の噴射時間が0.8秒以内である定量噴射型エアゾール。
【請求項2】
前記1回の噴射時間が、0.20~0.75秒である、請求項1に記載の定量噴射型エアゾール。
【請求項3】
前記原液がさらに溶剤を含む、請求項1又は2に記載の定量噴射型エアゾール。
【請求項4】
前記薬剤の含有量が、前記原液中0.01~70質量/容量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の定量噴射型エアゾール。
【請求項5】
前記エアゾール組成物中の前記原液と前記噴射剤の体積比が、1:99~50:50である、請求項1~4のいずれか1項に記載の定量噴射型エアゾール。
【請求項6】
前記薬剤が、害虫防除成分、芳香成分、消臭成分及び除菌・殺菌成分からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の定量噴射型エアゾール。
【請求項7】
耐圧容器に薬剤を含む原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾールを用いて、1回の噴射操作で噴射量が1.0~3.0mL且つ噴射時間が0.8秒以内となるように噴射する定量噴射型エアゾールの噴射方法。
【請求項8】
定量噴射型エアゾールを用いて噴射されるエアゾール組成物中の薬剤の効力を向上させる方法であって、
1.0~3.0mLの範囲にある前記エアゾール組成物の一定量を、0.8秒以内に噴射する薬剤の効力向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量噴射型エアゾール、及びこれを用いた噴射方法、並びに定量噴射型エアゾールを噴射した際に吐出される薬剤の効力を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有効成分となる薬剤が含有された原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物を1回の噴射操作で一定量噴射する定量噴射型エアゾールが知られている。定量噴射型エアゾールは1回の噴射操作で所定量の薬剤が吐出されるので、使用者による操作方法の差(噴射ボタンの押し下げ方法や押し下げ時間による噴射量等の差)が生じにくく、効果のバラツキが少ないという利点がある。
【0003】
このような定量噴射型エアゾールとしては、例えば、特許文献1には、1回当たりの噴霧容量が0.35~0.9mLである定量噴霧用エアゾールバルブを備えた害虫防除用エアゾールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本国特開2010-280633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
殺虫剤エアゾールや芳香剤エアゾール等の空間に使用するための定量噴射型エアゾールは、上記したように効果のバラツキが少ないという利点があるが、1回当たりの噴射量が少ないと使用実感が十分に得られず、1回噴射により有効量の薬剤が吐出されているにもかかわらず複数回噴射してしまい過剰に消費してしまうことがあった。また、従来の定量噴射型エアゾールでは薬剤の効果の持続に限度があり、この効果を継続させるために噴射から一定時間経過後に噴射操作を繰り返さなければならず、その頻度が高かった。
そこで、本発明は、薬剤の効力を向上させてその効果の持続性を高め、使用実感が得られる定量噴射型エアゾールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、1.0mL以上の大量噴射が可能な定量噴射型エアゾールとすれば1回の噴射操作による噴射量が多くなるため使用実感を高めつつ薬剤の吐出量も多くすることができ、さらに、大量噴射する定量噴射型エアゾールでは1回の噴射操作による噴射時間により薬剤の効果の持続性が変化すること、そして1回の噴射操作当たりのエアゾール組成物の噴射量と噴射時間には薬剤の効果を持続させる最適なバランスがあることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は以下の(1)~(8)を特徴とする。
(1)1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射する定量噴射型エアゾールであって、前記エアゾール組成物は薬剤を含む原液と噴射剤とからなり、耐圧容器に充填されており、前記定量噴射型エアゾールは、1回の噴射量が1.0~3.0mLであり、且つ1回の噴射時間が0.8秒以内である定量噴射型エアゾール。
(2)前記1回の噴射時間が、0.20~0.75秒である、前記(1)に記載の定量噴射型エアゾール。
(3)前記原液がさらに溶剤を含む、前記(1)又は(2)に記載の定量噴射型エアゾール。
(4)前記薬剤の含有量が、前記原液中0.01~70質量/容量%である、前記(1)~(3)のいずれか1つに記載の定量噴射型エアゾール。
(5)前記エアゾール組成物中の前記原液と前記噴射剤の体積比が、1:99~50:50である、前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の定量噴射型エアゾール。
(6)前記薬剤が、害虫防除成分、芳香成分、消臭成分及び除菌・殺菌成分からなる群から選択される少なくとも1種である、前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の定量噴射型エアゾール。
(7)耐圧容器に薬剤を含む原液と噴射剤とからなるエアゾール組成物が充填された定量噴射型エアゾールを用いて、1回の噴射操作で噴射量が1.0~3.0mL且つ噴射時間が0.8秒以内となるように噴射する定量噴射型エアゾールの噴射方法。
(8)定量噴射型エアゾールを用いて噴射されるエアゾール組成物中の薬剤の効力を向上させる方法であって、1.0~3.0mLの範囲にある前記エアゾール組成物の一定量を、0.8秒以内に噴射する薬剤の効力向上方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の定量噴射型エアゾールによれば、エアゾール組成物を、1回の噴射操作により1.0~3.0mLの範囲にある所定量で大量噴射することができ、さらにエアゾール組成物中の薬剤の効果の持続性を高めることができる。よって、使用者による操作方法の差が生じないため効果のバラツキがなく、無駄な過剰使用を回避できるとともに、1回の噴射操作で薬剤の効果を持続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、試験例1で使用した試験室を説明するための平面図である。
【
図2】
図2は、試験例2の試験方法を説明するための斜視図である。
【
図3】
図3は、試験例4で使用した試験室を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
なお、本明細書において、「質量」は「重量」と同義である。
【0011】
本発明の定量噴射型エアゾールは、薬剤を含む原液と噴射剤とを含むエアゾール組成物が耐圧容器に充填されてなる。以下、各成分について説明する。
【0012】
(原液)
本発明のエアゾール組成物を構成する原液は、少なくとも有効成分である薬剤を含有する。有効成分とは、定量噴射型エアゾールを使用した時に、何らかの作用を発揮するものを言い、特に限定されないが、例えば、害虫防除成分、芳香成分、消臭成分、除菌・殺菌成分等が挙げられる。
【0013】
害虫防除成分は、対象害虫を殺虫、忌避、ノックダウン等することができる成分である。害虫防除成分の種類は、特に限定されず、公知の化合物を使用できる。
害虫防除成分としては、例えば、ペルメトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、ジメフルトリン、メパフルトリン等のピレスロイド系化合物;フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物;カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物;メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト、ブロフラニリド等の化合物;ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミン油、ネロリ油、ペパーミント油、ベルガモット油、ブチグレン油、レモン油、レモングラス油、シナモン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、シトラール、l-メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、cis-ジャスモン、リモネン、リナロール、1,8-シネオール、ゲラニオール、α-ピネン、p-メンタン-3,8-ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種精油成分;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
なお、害虫防除成分は、対象害虫の種類に合わせて適宜選択すればよい。対象害虫としては、例えば、蚊、ハエ、ガ、ハチ、カメムシ、ゴキブリ、アリ、クモ、ダンゴムシ、ダニ、シラミ、ムカデ、ケムシ、ヤスデ、クモ、アブ、ブユ、チョウバエ、シロアリ、ユスリカ、ヨコバイ、キクイムシ、ゴミムシ、ハサミムシ、シミ、カミキリムシ、カツオブシムシ、チャタテムシ、イガ、コイガ等が挙げられる。
蚊、ハエ、ガ、ハチ、アブ、ブユ、ユスリカ、ヨコバイ、チョウバエ、イガ、コイガ等の飛翔害虫に対しては、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、フタルスリン、プラレトリン、モンフルオロトリン等が好適である。また、ゴキブリ、カメムシ、アリ、クモ、ダンゴムシ、ダニ、シラミ、ムカデ、ケムシ、ヤスデ、クモ、シロアリ、キクイムシ、ゴミムシ、ハサミムシ、シミ等の匍匐害虫に対しては、フタルスリン、プラレトリン、イミプロトリン、ペルメトリン、フェノトリン等が好適である。
【0015】
芳香成分は、香気を発する成分である。芳香成分としては、例えば、上記した精油成分の他に、アニス油、ラベンダー油、ローズ油、ローズマリー油、グレープフルーツ油等の天然香料;カンフェン、p-シメン、シトロネロール、ネロール、ベンジルアルコール、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、クマリン、シネオール等の合成香料等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
消臭成分は、臭気を消すことができる成分である。消臭成分としては、例えば、緑茶エキス、柿タンニン、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、銀等の臭気成分を吸着する成分や、上記した芳香成分のような臭気成分をマスキングする成分等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
除菌・殺菌成分は、微生物、カビ、細菌を除去又は死滅させる成分である。除菌・殺菌成分としては、例えば、エタノール、ヒノキチオール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、トリホリン、p-クロロメタキシレノール、3-メチル-4-イソプロピルフェノール、オルト-フェニルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン、ポリリジンやキトサン、テトラヒドロリナロール、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
上記した薬剤は、効果の異なる成分同士を組み合わせて使用することができる。例えば、害虫防除成分と芳香成分を組み合わせて使用することや、芳香成分と芳香成分以外の消臭成分を組み合せて使用することができる。
【0019】
薬剤の含有量は、原液中0.01~70質量/容量%であることが好ましい。薬剤が原液中に0.01質量/容量%以上であることで、十分な薬剤の効果を得ることができ、70質量/容量%以下であると生産適性が向上される。薬剤の含有量は、下限は0.1質量/容量%以上であることがより好ましく、0.3質量/容量%以上がさらに好ましく、0.5質量/容量%以上が特に好ましく、また上限は65質量/容量%以下がより好ましく、50質量/容量%以下がさらに好ましく、25質量/容量%以下が特に好ましい。
【0020】
原液には、原液の粘度を調整するためや、生産適性を向上させるため、害虫に対する薬剤の浸透性を上げるため等の目的のために溶剤を含有することができる。このような溶剤としては、例えば、上記したグリコールエーテル類や、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。また、水や界面活性剤の使用もできる。
炭化水素系溶剤としては、例えば、パラフィン系炭化水素やナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素及び脂環式炭化水素が挙げられ、JIS 1号灯油等の灯油が好ましい。具体的にはノルマルパラフィン、イソパラフィン等が挙げられる。ノルマルパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、例えば、中央化成株式会社製のネオチオゾール、JXTGエネルギー株式会社製のノルマルパラフィンMA等が挙げられる。イソパラフィンとしては、炭素数が8~16のものが代表的で、例えば、出光興産株式会社製のIPクリーンLX、スーパーゾルFP25等が挙げられる。
アルコール系溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール(ノルマル、イソ)等の低級アルコール、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
芳香族系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
エステル系溶剤としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。
【0021】
溶剤の含有量は、原液中30~99.99質量/容量%であることが好ましい。溶剤が原液中に30質量/容量%以上であることで、生産適性を向上させることができ、99.99質量/容量%以下であると、十分な薬剤の効果を担保できるため好ましい。溶剤の含有量は、下限は35質量/容量%以上であることがより好ましく、50質量/容量%以上がさらに好ましく、また上限は99.9質量/容量%以下がより好ましく、99.5質量/容量%以下がさらに好ましい。
【0022】
原液には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含有させることができる。その他の成分としては、例えば、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、無機物、界面活性剤、溶解助剤等が挙げられる。
【0023】
エアゾール組成物中の原液の含有量は、定量噴射型エアゾールの使用目的や噴射剤との組み合わせに応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に1~50容量%とすることができる。エアゾール組成物中に原液が1容量%以上であると、十分な薬剤の効果を得ることができ、50容量%以下であると、原液を噴霧粒子として噴射することができるので、例えば室内で使用した場合に、原液による家具、床、壁等の汚染を少なくできる。原液の含有量は、エアゾール組成物中、下限は3容量%以上であることがより好ましく、5容量%以上がさらに好ましく、また、上限は40容量%以下であることがより好ましく、30容量%以下がさらに好ましい。
【0024】
(噴射剤)
噴射剤は、上記原液を噴射するための媒体であり、原液とともに耐圧容器に加圧充填される。
噴射剤としては、例えば、プロパン、プロピレン、n-ブタン、イソブタン等の液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)等の液化ガス、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気等の圧縮ガス、HFC-152a、HFC-134a、HFO-1234yf、HFO-1234ze等のハロゲン化炭素ガス等の1種又は2種以上を用いることができる。使用する噴射剤は、原液との相溶性やエアゾールバルブ等の容器部材に合わせて適宜選択すればよい。
【0025】
エアゾール組成物中の噴射剤の含有量は、定量噴射型エアゾールの使用目的や原液との組み合わせに応じて適宜変更可能であり、特に限定されないが、例えば、エアゾール組成物中に50~99容量%とすることができる。エアゾール組成物中に噴射剤が50容量%以上であると、原液を噴霧粒子として噴射することができるため薬剤がより拡散しやすくなり、薬剤の効果が持続しやすくなる。また、噴射剤が99容量%以下であると、十分な薬剤の効果を得ることができる。噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中、下限は60容量%以上であることがより好ましく、70容量%以上がさらに好ましく、また、上限は97容量%以下がより好ましく、95容量%以下がさらに好ましい。
【0026】
なお、エアゾール組成物中の原液と噴射剤の体積比は、1:99~50:50であることが好ましく、3:97~40:60がより好ましく、5:95~30:70がさらに好ましい。このような体積比とすることで、十分な薬剤の効果を得ることができる。
【0027】
(定量噴射型エアゾール)
本発明の定量噴射型エアゾールは、上記した原液と噴射剤がエアゾール用の耐圧容器に充填され、該耐圧容器がエアゾールバルブによりその開口を閉止されることにより構成される。
【0028】
なお、定量噴射型エアゾールとは、1回の噴射操作で一定量のエアゾール組成物を噴射するエアゾールである。定量噴射型エアゾールは、エアゾールバルブに取り付けられた噴射部材(以下、噴射ボタンともいう。)が使用者に操作されることにより、エアゾールバルブを通って耐圧容器内のエアゾール組成物(原液と噴射剤)の一定量が噴射され、原液は噴射剤によって粒子状とされて噴霧粒子として噴射される。
【0029】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、噴射部材が使用者に操作されることにより耐圧容器内と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングを耐圧容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。エアゾールバルブには、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔と、取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔とが形成されている。ハウジングには、耐圧容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔が形成されている。ステムには、ハウジング内に取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔が形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0030】
本発明において、エアゾールバルブは、噴射部材を1回操作することで定量噴射される定量型のエアゾールバルブである。エアゾールバルブの噴射量は、1回の噴射操作で1.0~3.0mLの範囲の所定の一定量とされている。1回当たりの噴射量が1.0~3.0mLの範囲の所定量となるエアゾール組成物を貯留できるハウジングを有するエアゾールバルブを用いることで、1回の噴射操作により1.0~3.0mLの範囲の所定の一定量を噴射することができ、薬剤の大量噴射が可能となる。エアゾールバルブの噴射量は、前記範囲であれば所定の噴射量を適宜設定することができる。
【0031】
(噴射部材)
噴射部材(噴射ボタン)は、エアゾールバルブを介して耐圧容器に取り付けられる部材である。噴射ボタンには、エアゾールバルブのステム孔を介して耐圧容器から取り込まれるエアゾール組成物が通過する操作部内通路とエアゾール組成物が噴射される噴口が形成されている。
【0032】
噴射ボタンの噴口の内径(噴口孔径)は、噴射時間を所望の範囲とするという観点から、φ0.45~3.0mmであることが好ましく、φ0.5~2.0mmがより好ましく、φ0.6~1.6mmがさらに好ましい。また、これらと等しい面積を有する複数の噴口を有していても問題ない。
【0033】
(噴射圧)
本発明の定量噴射型エアゾールは、上記したようにエアゾール用耐圧容器に原液と噴射剤、すなわちエアゾール組成物が充填され、噴射ボタンを押圧することにより、1回の押圧によって一定量のエアゾール組成物が噴射される。噴口から20cm離れた位置におけるエアゾール組成物の噴射圧は、5~40gfであることが好ましく、8~30gfがより好ましい。噴射圧が前記範囲であることで、噴射時間を所望の範囲とすることができる。
なお、前記噴射圧は、25℃の室温条件下で、定量噴射型エアゾールの噴口から20cmの距離を置いたところに横倒しにしたデジタルフォースゲージ(例えば、株式会社イマダ製、型番:DS2-2N)に装着した直径φ60mmの円状の平板の中心に向かってエアゾール組成物を噴射した際の最大値を噴射荷重とし、平均を算出することにより測定できる。
【0034】
(噴射時間)
本発明の定量噴射型エアゾールは、1回の噴射操作による噴射時間が0.8秒以内である。本発明の効果が得られる理由は定かではないが、1回当たりの噴射量が1.0~3.0mLの範囲の所定量であるエアゾール組成物を0.8秒以内で噴射させることにより、薬剤の揮散性を効率良く高めることができるため、薬剤の効力を向上させることができ、その効果の持続性が高まると考えられる。
1回の噴射操作による噴射時間は、0.75秒以内であることが好ましく、0.10~0.75秒がより好ましく、0.20~0.75秒がさらに好ましく、0.25~0.75秒が特に好ましい。
【0035】
本発明において、1回の噴射操作による噴射時間を調整する方法としては、例えば、噴射ボタンの噴口の大きさを調整する方法、定量噴射型エアゾールの噴射圧を調整する方法、エアゾールバルブのステム孔径を調整する方法、噴射剤の圧力を調整する方法、及びこれらの組み合せ等が挙げられる。
【0036】
本発明の定量噴射型エアゾールを用いて、1.0~3.0mLの範囲にあるエアゾール組成物の一定量を、0.8秒以内に噴射することで、噴射されたエアゾール組成物の薬剤の効力を向上させることができ、よって薬剤の効果の持続性を高めることができる。
【実施例0037】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0038】
<試験例1:アカイエカに対する殺虫効力確認試験>
1.原液の調製
表1に示す配合処方に従い、トランスフルトリンを測り取り、イソプロパノール(比重0.785(20℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液1~3を調製した。
【0039】
【0040】
2.定量噴射型エアゾールの作製
表2に従い、実施例1~5、比較例1~5の定量噴射型エアゾールを作製した。
【0041】
(実施例1)
エアゾール用耐圧缶(容量294mL)に、原液1を12.8mL充填し、エアゾールバルブ(1回噴射量1.0mL、ステム孔面積1.4mm2)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として液化石油ガス(0.49MPa(25℃))を187.2mL加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口孔径φ1.6mm)を取り付け、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0042】
(実施例2)
噴射ボタンを噴口孔径φ0.6mmのものに変更した以外は実施例1と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0043】
(比較例1)
噴射ボタンを噴口孔径φ0.4mmのものに変更した以外は実施例1と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0044】
(実施例3)
エアゾールバルブを、1回噴射量1.0mL、ステム孔面積0.5mm2のものに変更した以外は実施例1と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0045】
(実施例4)
エアゾールバルブを、1回噴射量1.0mL、ステム孔面積0.28mm2のものに変更した以外は実施例1と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0046】
(比較例2)
エアゾールバルブを、1回噴射量1.0mL、ステム孔面積0.13mm2のものに変更した以外は実施例1と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0047】
(実施例5)
エアゾール用耐圧缶(容量294mL)に、原液2を12.8mL充填し、エアゾールバルブ(1回噴射量2.2mL、ステム孔面積1.4mm2)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として液化石油ガス(0.49MPa(25℃))を187.2mL加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口孔径φ1.6mm)を取り付け、1プッシュ当たりの噴射量が2.2mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0048】
(比較例3)
噴射ボタンを噴口孔径φ0.6mmのものに変更した以外は実施例5と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が2.2mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0049】
(比較例4)
エアゾール用耐圧缶(容量59mL)に、原液3を3.2mL充填し、エアゾールバルブ(1回噴射量0.2mL、ステム孔面積0.4mm2)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として液化石油ガス(0.49MPa(25℃))を16.8mL加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口孔径φ0.6mm)を取り付け、1プッシュ当たりの噴射量が0.2mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0050】
(比較例5)
噴射ボタンを噴口孔径φ0.23mmのものに変更した以外は比較例4と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が0.2mL、トランスフルトリンの吐出量が16mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0051】
【0052】
3.噴射時間の測定
定量噴射型エアゾールの噴口から噴射方向(水平方向)に直線で5cm離れた位置に、レーザー光回析式粒度測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社製「LDSA-1400A」)を設置し、噴射方向に対して垂直方向からレーザー光が当たるようにした。噴射ボタンを1回操作(1プッシュ)して噴射し、その動画を撮影した。動画を再生し、0.01秒単位で、噴霧粒子によるレーザー光の点灯が確認できる最長の連続時間を測定した。なお、0.05秒以内のレーザー光の点灯の途切れについては連続と判断し、0.06秒以上のレーザー光が点灯しなかった時に測定を終了し、レーザー光が点灯していた最終の時間を測定時間とした。結果を表3、4それぞれに示す。
【0053】
4.アカイエカに対する殺虫効力確認試験
(噴射直後の殺虫効力の確認)
供試虫としてアカイエカ10匹を入れたケージ(縦25cm×横25cmの16メッシュゲージを二つ折りにし、まわりをホッチキスで止めて筒状に作製したもの)を用意した。
図1に示すように、8畳空間(容積31.1m
3)の試験室10の四隅(隅部B~E)の床(高さ0cm)と床から75cmの高さに、アカイエカを入れたケージを設置した。隅部Bの床から1mの高さより斜め上45度の角度で中央部Aに向けて、定量噴射型エアゾールの噴射ボタンを1回操作(1プッシュ)した。アカイエカがノックダウンする(転倒して動けなくなる)までの時間を計測し、プロビット法によりKT50(分)(アカイエカの5割がノックダウンするのに要する時間)を求めた。試験は3回行い、平均を求めた。結果を表3に示す。
【0054】
(噴射3時間後の殺虫効力の確認)
供試虫としてアカイエカ10匹を入れたケージ(縦25cm×横25cmの16メッシュゲージを二つ折りにし、まわりをホッチキスで止めて筒状に作製したもの)を用意した。
図1に示すように、8畳空間(容積31.1m
3)の試験室10の隅部Bの床から1mの高さより斜め上45度の角度で中央部Aに向けて、定量噴射型エアゾールの噴射ボタンを1回操作(1プッシュ)した。試験室10を密閉状態にして放置し、3時間経過後にアカイエカを入れたケージを、試験室10の四隅(隅部B~E)の床(高さ0cm)と床から75cmの高さに設置した。アカイエカがノックダウンするまでの時間を計測し、プロビット法によりKT50(分)を求めた。試験は3回行い、平均を求めた。結果を表4に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
表3に示したように、噴射直後はいずれの定量噴射型エアゾールにおいてもKT50の平均が3分程度であった。これに対し、表4に示したように、噴射3時間後ではKT50の平均に差がみられた。実施例1~4及び比較例1~2は1プッシュあたりの噴射量を1mLとして噴射ボタンの噴口孔径又はステム孔の面積を変化させた例であるが、実施例1、2は比較例1に比べてKT50の平均が顕著に短く、実施例3、4は比較例2に比べてKT50の平均が顕著に短かった。実施例5及び比較例3は1プッシュあたりの噴射量を2.2mLとして噴射ボタンの噴口孔径を変化させた例であるが、実施例5は比較例3に比べてKT50の平均が顕著に短かった。なお、比較例4~5は1プッシュあたりの噴射量を0.2mLとした例であるが、比較例4、5については、噴射3時間後においても噴射時間に関わらずKT50の平均は同程度であった。これらの結果から、1.0mL以上の大量噴射可能な定量噴射型エアゾールでは、噴射時間により薬剤の持続性が変化することが分かった。
【0058】
<試験例2:ゴキブリに対する殺虫効力確認試験>
1.原液の調製
イミプロトリン0.5g及びミリスチン酸イソプロピル10gを測り取り、1号灯油(ノルマルパラフィン、中央化成株式会社製「ネオチオゾール」、炭素数11~15、比重0.761(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液4を調製した。
【0059】
2.定量噴射型エアゾールの作製
表5に従い、実施例6~9、比較例6~7の定量噴射型エアゾールを作製した。
【0060】
(実施例6)
エアゾール用耐圧缶(容量294mL)に、原液4を46mL充填し、エアゾールバルブ(1回噴射量1.0mL、ステム孔面積1.4mm2)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤としてジメチルエーテル(DME)を154mL加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口孔径φ1.6mm)を取り付け、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、イミプロトリンの吐出量が1.2mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0061】
(実施例7)
噴射ボタンを噴口孔径φ0.6mmのものに変更した以外は実施例6と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、イミプロトリンの吐出量が1.2mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0062】
(比較例6)
噴射ボタンを噴口孔径φ0.4mmのものに変更した以外は実施例6と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、イミプロトリンの吐出量が1.2mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0063】
(実施例8)
エアゾールバルブを、1回噴射量1.0mL、ステム孔面積0.5mm2のものに変更した以外は実施例6と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、イミプロトリンの吐出量が1.2mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0064】
(実施例9)
エアゾールバルブを、1回噴射量1.0mL、ステム孔面積0.28mm2のものに変更した以外は実施例6と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、イミプロトリンの吐出量が1.2mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0065】
(比較例7)
エアゾールバルブを、1回噴射量1.0mL、ステム孔面積0.13mm2のものに変更した以外は実施例6と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、イミプロトリンの吐出量が1.2mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0066】
【0067】
3.噴射時間の測定
試験例1と同様の方法により、定量噴射型エアゾールの噴射時間を測定した。結果を表6に示す。
【0068】
4.クロゴキブリに対する殺虫効力確認試験
図2に示すように、ろ紙1を敷いた床に塩化ビニル製の円筒2(直径φ50cm、高さ15cm)を設置し、その内部を試験区とした。なお、円筒2の内側側壁には供試虫が這い上がれないように炭酸カルシウムを塗布した。試験区内のろ紙1上の、円筒2の内側側壁に近接する位置に、噴射のターゲットポイント3として印をつけた。
試験区の中に供試虫としてクロゴキブリ5の雌を1頭放ち、暫く放置して馴化させた後、クロゴキブリ5がターゲットポイント3に来た時に、50cm離れた距離からクロゴキブリ5に向けて定量噴射型エアゾールの噴射ボタンを1回操作(1プッシュ)した。クロゴキブリがノックダウンする(ひっくり返って動けなくなる)までの時間を計測した。試験は3回行い、平均を求めた。結果を表6に示す。
【0069】
【0070】
実施例6~7及び比較例6は1プッシュあたりの噴射量が1mLの定量噴射型エアゾールにおいて噴射ボタンの噴口孔径を変化させた例であり、実施例8~9及び比較例7はステム孔の面積を変化させた例である。表6の結果から、噴射時間が0.3秒、0.73秒である実施例6、7は、噴射時間が1.36秒の比較例6に比べて顕著にクロゴキブリのノックダウン時間が短く、噴射時間が0.58秒、0.73秒である実施例8、9は、噴射時間が1.2秒の比較例7に比べて顕著にクロゴキブリのノックダウン時間が短いことが分かった。
【0071】
<試験例3:イエバエに対する殺虫効力確認試験>
1.原液の調製
フタルスリン1.4gを測り取り、1号灯油(ノルマルパラフィン、中央化成株式会社製「ネオチオゾール」、炭素数11~15、比重0.761(15℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液5を調製した。
【0072】
2.定量噴射型エアゾールの作製
表7に従い、実施例10~11、比較例8の定量噴射型エアゾールを作製した。
【0073】
(実施例10)
エアゾール用耐圧缶(容量294mL)に、原液5を40mL充填し、エアゾールバルブ(1回噴射量1.0mL、ステム孔面積1.4mm2)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として液化石油ガス(0.29MPa(25℃))を160mL加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口孔径φ1.6mm)を取り付け、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、フタルスリンの吐出量が2.8mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0074】
(実施例11)
噴射ボタンを噴口孔径φ0.6mmのものに変更した以外は実施例10と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、フタルスリンの吐出量が2.8mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0075】
(比較例8)
噴射ボタンを噴口孔径φ0.4mmのものに変更した以外は実施例10と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、フタルスリンの吐出量が2.8mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0076】
【0077】
3.噴射時間の測定
試験例1と同様の方法により、定量噴射型エアゾールの噴射時間を測定した。結果を表8に示す。
【0078】
4.イエバエに対する殺虫効力確認試験
8畳空間(容積31.1m3)の試験室に供試虫としてイエバエの雌を1頭放った。イエバエが壁に止まったタイミングに合わせ、約50cm離れた距離からイエバエに向けて定量噴射型エアゾールの噴射ボタンを1回操作(1プッシュ)した。イエバエが落下してノックダウンするまでの時間を計測した。試験は3回行い、平均を求めた。結果を表8に示す。
【0079】
【0080】
表8の結果から、噴射時間が0.32秒、0.74秒である実施例10、11は、噴射時間が1.36秒の比較例8に比べて顕著にイエバエのノックダウン時間が短いことが分かった。
【0081】
<試験例4:芳香効力確認試験>
1.原液の調製
リナロール0.5gを測り取り、無水エタノール(比重0.785(25℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液6を調製した。
【0082】
2.定量噴射型エアゾールの作製
表9に従い、実施例12、比較例9の定量噴射型エアゾールを作製した。
【0083】
(実施例12)
エアゾール用耐圧缶(容量294mL)に、原液6を40mL充填し、エアゾールバルブ(1回噴射量1.0mL、ステム孔面積1.4mm2)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として液化石油ガス(0.29MPa(25℃))を160mL加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口孔径φ1.6mm)を取り付け、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、リナロールの吐出量が1.0mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0084】
(比較例9)
噴射ボタンを噴口孔径がφ0.4mmのものに変更した以外は実施例12と同様にして、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、リナロールの吐出量が1.0mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0085】
【0086】
3.噴射時間の測定
試験例1と同様の方法により、定量噴射型エアゾールの噴射時間を測定した。結果を表10に示す。
【0087】
4.芳香官能試験
(噴射10秒後の官能評価)
図3に示すように、6畳空間(容積25m
3)の試験室20の第1の壁21の中央位置Fの床から100cmの高さより床面とほぼ水平に第1の壁21に対向する第3の壁23に向けて、定量噴射型エアゾールの噴射ボタンを1回操作(1プッシュ)した。噴射10秒後に、噴射位置である第1の壁21の中央位置F、第1の壁21に直交する第2の壁22の中央位置G、及び第1の壁21に対向する第3の壁23の中央位置Hに立ち、6段階臭気強度表示法の評価基準に従って香りの強度を評価した。試験は3回行い、平均値を四捨五入して6段階の値とした。結果を表10に示す。
〔評価基準〕
0:無臭(平常の嗅覚の持ち主がにおいを感じない状態)
1:やっと感知できるにおい(検知閾値濃度)
2:何のにおいであるか分かる弱いにおい(認知閾値濃度)
3:楽に感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
【0088】
(噴射30分後の官能評価)
上記噴射10秒後の香りの強度を確認した後、試験室20を密閉状態で放置し、30分経過後に同様に各壁の中央位置F~Hに立ったときの香りの強度を評価した。試験は3回行い、平均値を四捨五入して6段階の値とした。結果を表10に示す。
【0089】
【0090】
表10の結果から、噴射時間が0.31秒である実施例12は、噴射時間が1.35秒の比較例9に比べて30分後における香りの広がり及び強度に優れており、30分経過後においても香りの持続性に優れることが分かった。
【0091】
<試験例5:除菌効力確認試験>
1.原液の調製
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)20gを測り取り、99.5%エタノール(比重0.785(25℃))を加えて100mLにまでメスアップすることにより、原液7を調製した。
【0092】
2.定量噴射型エアゾールの作製
(実施例13)
エアゾール用耐圧缶(容量294mL)に、原液7を60mL充填し、エアゾールバルブ(1回噴射量1.0mL、ステム孔面積1.4mm2)でエアゾール用耐圧缶を閉止した。続いて、噴射剤として液化石油ガス(0.49MPa(25℃))を140mL加圧充填した。
エアゾールバルブに噴射ボタン(噴口孔径φ1.6mm)を取り付け、1プッシュ当たりの噴射量が1.0mL、IPMPの吐出量が60mgの定量噴射型エアゾールを得た。
【0093】
3.噴射時間の測定
試験例1と同様の方法により、定量噴射型エアゾールの噴射時間を測定した。結果を表11に示す。
【0094】
4.効力確認試験
10軒の一般家庭の浴室において、浴室掃除を行い、ピンク色のヌメリ(主にRhodotorula(酵母)もしくはMethylobacterium(細菌)によって発生)や黒カビ(主にCladosporium(真菌)によって発生)を取り除いた。その後、ピンク色のヌメリや黒カビが頻繁に発生する場所を2ヶ所選定した。そのうち1ヶ所に向かって、定量噴射型エアゾールの噴射ボタンを1回操作(1プッシュ)し、処理した場所を処理区とした。もう1ヶ所については、薬剤が付着しないようにし、その場所を無処理区とした。浴室掃除及び検体処理を行った日から何日後にピンク色のヌメリもしくは黒カビが発生したかを家庭ごとに確認した。
試験期間はピンク色のヌメリや黒カビが発生しやすい時期(6~9月、日本)に行った。
結果を表11に示す。
【0095】
【0096】
表11の結果から、無処理区は1週間以内にピンク色のヌメリ又は黒カビが発生したのに対し、実施例13の定量噴射型エアゾールを噴射した処理区では、10日以上の除菌・防カビ効果が得られることがわかった。
【0097】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2017年12月12日出願の日本特許出願(特願2017-238160)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。